互いに光路長の異なる複数の光路を生じさせるために配置される光学レンズ系は、精密な研磨加工を要する多重焦点レンズや球体レンズ等によって構成される。このため、一般に高価であり、また精密な組み立てを必要とするものである。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成としながらも、物体までの距離を正確に測定することができる光学的測定装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る光学的測定装置は、物体に光を照射して反射させ、その反射光に基づいて物体までの距離を測定する光学的測定装置であって、物体に照射する光を発生させる光源と、前記光源と前記物体との間に配置され、前記光源からの光を前記物体の被測定点に集光させる集光手段と、前記被測定点からの反射光の一部が直接入射するように配置された平坦面である第一受光面と、前記反射光の一部を更に反射して前記第一受光面に入射させるよう、前記第一受光面に対して垂直に配置された第一反射面と、前記第一受光面に生じた干渉縞の縞間隔を測定する第一干渉縞測定手段と、を備え、前記第一干渉縞測定手段で測定された縞間隔に基づいて、前記第一受光面を含む平面から前記被測定点までの距離を算出することを特徴としている。
本発明に係る光学的測定装置は、物体に光を照射して反射させ、その反射光によって生じた干渉縞の縞間隔に基づいて、物体までの距離を測定するものである。本発明に係る光学的測定装置は、光源と、集光手段と、第一受光面と、第一反射面とを備えている。
光源は、物体に照射する光を発生させるものである。光源で発生する光はコヒーレント光である。集光手段は、例えば凸レンズであって、光源で発生した光を物体の一点(被測定点)に集光するためのものである。このため、物体からの光の反射(散乱)は、被測定点の一点においてのみ行われる。すなわち、物体の被測定点は、干渉縞を生じさせるためのコヒーレント光を発生させる点光源とみなすことができる。
第一受光面は、被測定点からの反射光の一部が直接入射するように配置された平坦面である。また、第一反射面は、第一受光面に対して垂直に配置されており、被測定点からの反射光の一部を更に反射して第一受光面に入射させるように配置されている。このような構成により、第一受光面には、被測定点から第一受光面に直接到達する反射光と、被測定点から第一反射面に到達し、第一反射面で反射した後で第一受光面に到達する反射光とが重ねられる。これら二つの反射光が第一受光面に到達するまでにそれぞれ辿る光路は、その光路長が互いに異なっている。このため、第一受光面には、光路差に起因して干渉縞が生じることとなる。
本発明に係る光学的測定装置は、第一受光面に生じた干渉縞の縞間隔を測定する第一干渉縞測定手段を更に備えている。干渉縞の縞間隔は、反射光の波長、第一反射面と被測定点との距離、及び第一受光面と被測定点との距離によって定まるものであり、特に、第一受光面と被測定点との距離に比例した大きさとなる。このため、第一干渉縞測定手段で測定された縞間隔に基づけば、第一受光面と被測定点との距離を算出することができる。
以上のように、本発明に係る光学的測定装置においては、第一反射面と第一受光面とを備えるという簡単な構成によって、光路差及び干渉縞を生じさせている。物体までの距離、すなわち、第一受光面と被測定点との距離(第一受光面を含む平面から被測定点までの距離)は、当該干渉縞の縞間隔に基づいて正確に測定される。
また、本発明に係る光学的測定装置では、前記反射光の一部が直接入射するように配置された平坦面であって、前記第一受光面を含む平面と同一の平面内に配置された第二受光面と、前記反射光の一部を更に反射して前記第二受光面に入射させるよう、前記第二受光面に対して垂直に配置された第二反射面と、前記第二受光面に生じた干渉縞の縞間隔を測定する第二干渉縞測定手段と、を更に備え、前記第一受光面を含む平面に対して垂直であり、且つ前記被測定点を通る直線を中間線と定義したときにおいて、前記第一受光面と前記第二受光面とは、前記中間線を間に挟むように並んで配置されており、前記第一反射面と前記第二反射面とは、互いに平行であって、且つ、前記中間線を間に挟むように対向して配置されており、前記第一干渉縞測定手段で測定された縞間隔と、前記第二干渉縞測定手段で測定された縞間隔との平均値に基づいて、前記第一受光面及び前記第二受光面を含む平面から前記被測定点までの距離を算出することも好ましい。
この好ましい態様では、第二受光面と、第二反射面と、第二干渉縞測定手段とを更に備えている。第二受光面は、被測定点からの反射光の一部が直接入射するように配置された平坦面であって、第一受光面を含む平面と同一の平面内に配置されている。また、第二反射面は、第二受光面に対して垂直に配置されており、被測定点からの反射光の一部を更に反射して第二受光面に入射させるように配置されている。このような構成により、第二受光面には、被測定点から第二受光面に直接到達する反射光と、被測定点から第二反射面に到達し、第二反射面で反射した後で第二受光面に到達する反射光とが重ねられる。これら二つの反射光が第二受光面に到達するまでにそれぞれ辿る光路は、その光路長が互いに異なっている。このため、第二受光面には、光路差に起因して干渉縞が生じることとなる。このように、この好ましい態様では、第一受光面と第二受光面とのそれぞれに干渉縞が生じる。
尚、以下では説明の便宜上、第一受光面に生じた干渉縞の縞間隔、すなわち、第一干渉縞測定手段で測定された縞間隔を「第一縞間隔」と称することがある。また、第二受光面に生じた干渉縞の縞間隔、すなわち、第二干渉縞測定手段で測定された縞間隔を「第二縞間隔」と称することがある。
ここで、第一受光面を含む平面に対して垂直であり、且つ被測定点を通る直線(仮想的な直線である)を「中間線」と定義する。この好ましい態様においては、第一受光面と第二受光面とが、この中間線を間に挟むように並んで配置されている。また、第一反射面と第二反射面とは、互いに平行であって、且つ、上記中間線を間に挟むように対向して配置されている。
上述のように、第一縞間隔は、反射光の波長、第一反射面と被測定点との距離、及び第一受光面と被測定点との距離によって定まるものである。換言すれば、第一反射面と被測定点との距離(第一反射面と中間線との距離といってもよい)が変化すると、第一縞間隔もそれに伴って変化してしまう。同様に、第二反射面と被測定点との距離(第二反射面と中間線との距離といってもよい)が変化すると、第二縞間隔もそれに伴って変化してしまう。
従って、例えば外力による衝撃が光学的測定装置に加えられ、第一反射面及び第二反射面が第一受光面等に対して変位してしまったような場合には、被測定点までの距離が変化していないにも拘わらずそれぞれの縞間隔が変化してしまうこととなる。すなわち、干渉縞の縞間隔に基づいて算出された被測定点までの距離が、実際の距離とは異なってしまう場合が生じ得る。
そこで、この好ましい態様では、第一縞間隔と第二縞間隔との平均値に基づいて被測定点までの距離(第一受光面及び第二受光面を含む平面から被測定点までの距離)を算出することにより、距離の算出に対して第一反射面等の変位が与える影響を低減している。
例えば、第一反射面が中間線に近づくように変位する一方、第二反射面が中間線から遠ざかるように変位するような場合について説明する。この場合、当該変位に伴って第一縞間隔は大きくなり、第二縞間隔は小さくなる。その結果、第一縞間隔と第二縞間隔との平均値についてはさほど変化しない。
このように、第一反射面と第二反射面との変位(上記のような並行移動の他、両者が回転するような変位であってもよい)が互いに同様なものであれば、第一縞間隔の変化と第二縞間隔の変化とは互いに逆向きとなる。すなわち、一方が増加すれば他方が減少するような関係となる。
従って、第一縞間隔と第二縞間隔との平均値に基づいて距離を算出することにより、距離の算出に対して第一反射面等の変位が与える影響が低減される。このように、この好ましい態様によれば、距離の測定精度を更に向上させることができる。
また、本発明に係る光学的測定装置では、前記第一反射面と前記第二反射面とは、それぞれから前記中間線までの距離が互いに等しくなる位置に配置されていることも好ましい。
この好ましい態様では、第一反射面と第二反射面とは、それぞれから中間線までの距離が互いに等しくなる位置に配置されている。換言すれば、被測定点までの距離を測定するように光学的測定装置を配置した状態において、第一反射面と中間線との距離、及び第二反射面と中間線との距離が互いに等しくなるように、光学的測定装置の内部における第一反射面の位置及び第二反射面の位置が決定されている。
第一反射面及び第二反射面をこのように配置することにより、第一反射面及び第二反射面が変位してしまった場合における、第一縞間隔と第二縞間隔との平均値の変化が更に抑制される。当該平均値に基づいて距離を算出する際における、第一反射面等の変位の影響を低減することができ、距離の測定精度を更に向上させることができる。
また、本発明に係る光学的測定装置では、前記光源から発生する光に対して透明な材質からなり、前記反射光がその内部を通過するように配置された透明体を備えており、前記第一反射面及び前記第二反射面は、いずれも、前記透明体の表面に形成された平坦面であることも好ましい。
この好ましい態様では、光源から発生する光に対して透明な材質からなる透明体を、被測定点からの反射光がその内部を通過するように配置している。被測定点からの反射光は、透明体の内部を通過した後に第一受光面又は第二受光面に到達する。
また、第一反射面及び第二反射面は、いずれも、上記透明体の表面に形成された平坦面である。換言すれば、透明体はその表面において互いに平行且つ対向している二つの平坦面を有しており、それぞれの平坦面が第一反射面及び第二反射面となっている。
このような構成とすることにより、第一反射面と第二反射面との相対的な位置関係は常に一定に維持される。すなわち、第一反射面と第二反射面とは常に一体であるから、両者に生じる変位は常に同一となる。このため、透明体が変位したとしても、第一縞間隔と第二縞間隔との平均値はほとんど変化しない。その結果、当該平均値に基づいて距離を算出する際における、第一反射面等の変位の影響を殆ど無くすことができ、距離の測定精度を更に向上させることができる。
また、本発明に係る光学的測定装置では、前記第一反射面及び前記第一受光面に到達する全ての前記反射光が前記被測定点と前記第一反射面との間における一点を通過するように、前記反射光を集光させる集光手段を更に備えたことも好ましい。
物体や光学的測定装置が配置される環境等の制約によって、第一受光面から被測定点までの距離は自由に設定できない場合が多い。例えば、真空チャンバー内に配置された物体までの距離を測定する場合には、光学的測定装置を真空チャンバーの内部に配置することができないため、第一受光面から被測定点までの距離をある程度長くとる必要がある。
ところで、既に述べたように、第一縞間隔は第一受光面と被測定点との距離によって定まるものであり、第一反射面と被測定点との距離が長いほど第一縞間隔は広くなる。
このため、第一受光面から被測定点までの距離に対する制約によっては、(当該距離を短くできないために)第一縞間隔が第一受光面の大きさに比べて大きくなり過ぎてしまい、第一縞間隔を正確に測定することが困難となってしまう場合がある。逆に、(当該距離を長くできないために)第一縞間隔が第一干渉縞測定手段の測定分解能に比べて小さくなり過ぎてしまい、やはり第一縞間隔を正確に測定することが困難となってしまう場合もある。
このように、環境等の制約を満たすように物体及び光学的測定装置を配置することと、第一受光面から被測定点までの距離を所望の精度で測定することとを、両立できない場合が生じ得る。また、環境等の制約によって測定可能な距離の範囲が固定されるということであるから、第一受光面から被測定点までの距離が大きく変動した際に、距離の測定が不可能になってしまう場合も生じ得る。
これを解決するために、この好ましい態様では、反射光を集光させる集光手段を更に備えている。集光手段は、第一反射面及び第一受光面に到達する全ての反射光が、被測定点と第一反射面との間における一点(以下、「集光点」とも称する)を通過するように、反射光を集光させるものである。
このような構成とした場合、上記集光点の位置が、第一受光面に干渉縞を生じさせる点光源の位置ということになる。すなわち、第一縞間隔に基づいて直接的に算出される点光源までの距離は、第一受光面から上記集光点までの距離ということになる。従って、第一受光面から被測定点までの距離は、第一受光面から集光点までの距離に対し、集光点から被測定点までの距離を加算することにより算出することができる。尚、集光点から被測定点までの距離は、例えば凸レンズである集光手段の焦点距離と、集光手段から集光点までの距離に基づいて算出される。
集光点から被測定点までの距離は、集光手段の選び方によって自由に設定することができる。これにより、第一受光面を含む面から被測定点までの距離を変更することなく、第一縞間隔の大きさを適切なものとすることができる。換言すれば、環境等の制約を満たすように物体及び光学的測定装置を配置することと、第一受光面から被測定点までの距離を所望の精度で測定することとを両立させることができる。
また、例えば凸レンズである集光手段の縦倍率を変更することにより、集光手段から被測定点までの距離の変動と、集光点の位置変動との関係を変更することができる。このような関係は、第一受光面から被測定点までの距離の変動と、第一縞間隔の変動との関係ということもできる。縦倍率を大きくすれば、距離の測定分解能が向上する。縦倍率を小さくすれば、距離の測定分解能は下がるが、測定可能な距離の範囲は広くなる。これを利用すれば、第一受光面から被測定点までの距離が大きく変動するような場合であっても、当該変動範囲の全体を測定可能な範囲に収めることができる。
また、本発明に係る光学的測定装置では、前記第一反射面、前記第二反射面、前記第一受光面、及び前記第二受光面に到達する全ての前記反射光が前記被測定点と前記第一反射面との間における一点を通過するように、前記反射光を集光させる集光手段を更に備えたことも好ましい。
このような態様とすることにより、第二反射面及び前記第二受光面を備えた構成の光学的測定装置においても、第一受光面(及び第二受光面)から被測定点までの距離を変更することなく、第一縞間隔及び第二縞間隔の大きさを適切なものとすることができる。換言すれば、環境等の制約を満たすように物体及び光学的測定装置を配置することと、第一受光面(及び第二受光面)から被測定点までの距離を所望の精度で測定することとを両立させることができる。
本発明によれば、簡単な構成としながらも、物体までの距離を正確に測定することができる光学的測定装置が提供される。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本実施形態に係る光学的測定装置1は、物体Mに光を照射して反射させ、その反射光に基づいて物体Mまでの距離を測定する装置である。図1(A)は、光学的測定装置1の構成を模式的に示している。図1(A)に示したように、光学的測定装置1は、光源10と、集光レンズ11と、CCDイメージセンサ20と、ミラー30とを備えている。尚、光学的測定装置1はこれらを内部に収納するケーシングを更に備えているが、図1(A)ではその図示を省略している。
光源10は、単一波長の光(単色光)を発し、当該光を物体Mの表面に向けて照射する装置である。光源10としては、半導体レーザー装置やヘリウムネオンレーザ等、コヒーレントな光を発する種々の装置を用いることができる。
集光レンズ11は凸レンズであって、光源10が発した光を、物体Mの表面における一点(以下、「被測定点」と称する)に集光させる。集光レンズ11は、必ずしも凸レンズである必要はなく、光源10が発した光を被測定点Aに集光させる種々の光学素子を用いることができる。
集光レンズ11は本発明の「集光手段」に該当するものである。尚、本発明を実施するに当たっては、単色光を物体Mの一点に照射することができればよく、集光手段と光源とを必ずしも別体として備える必要はない。例えば、光源10が半導体レーザー装置であって、一点に向けて直進するレーザー光が光源10から放射されるのであれば、集光レンズ11は配置する必要がない。この場合には、当該半導体レーザー装置は、本発明の「光源」と「集光手段」とを一体化したものということができる。
CCDイメージセンサ20は、平坦な受光面SSを有しており、当該受光面SSを被測定点Aに向けて配置されている。光源10から発せられて被測定点Aに到達し被測定点Aで反射(拡散反射)された光(反射光)の一部は、CCDイメージセンサ20の受光面SSに直接到達する。
ここで、受光面SSを含む平面に対して垂直であり、且つ被測定点Aを通る直線(仮想的な直線である)を、説明の便宜のために中間線LCと定義する。尚、図1では、中間線LCと受光面SSとが受光面SSの中央において交わるような配置の例を示しているが、中間線LCと受光面SSとが交わらないような配置もありうる。
ミラー30は、平坦な反射面SRを有しており、当該反射面SRがCCDイメージセンサ20の受光面SSに対して垂直となるように配置されている。反射面SRは中間線LCと平行であって、且つ中間線LCと対向するように配置されている。このため、光源10から発せられて被測定点Aに到達し被測定点Aで反射(散乱)された光(反射光)の一部は、ミラー30の反射面SRで更に反射されてから、CCDイメージセンサ20の受光面SSに到達する。
このように、CCDイメージセンサ20の受光面SSには、被測定点Aから直接到達する光と、ミラー30の反射面SRから到達する光とが重ねて照射される。これらはいずれも光源10から発せられた光であるが、受光面SSに到達するまでにそれぞれが辿る光路の光路長は互いに異なっている。このため、受光面SSには、光路差に起因して干渉縞が生じることとなる。当該干渉縞の縞間隔(ピッチ)は、受光面SSから被測定点Aまでの距離に比例した大きさとなる。
CCDイメージセンサ20には、図示しない画像処理装置が接続されている。画像処理装置は、CPU、RAM等により構成されたコンピュータシステムであって、CCDイメージセンサ20から出力される画像データを解析(例えばフーリエ変換)することにより、受光面SSに形成された干渉縞の縞間隔を算出するものである。画像処理装置は更に、算出された縞間隔に基づいて、受光面SSと被測定点Aとの距離を算出し、これを物体Mまでの距離として外部に出力する。尚、受光面SSと被測定点Aとの距離を算出するための具体的な方法については、後に説明する。
尚、本実施形態では、干渉縞を取得するためのセンサとしてCCDイメージセンサ20を用いた例を示すが、CCDイメージセンサ20に替えて、CMOSイメージセンサ、フォトダイオードアレイ、リニアイメージセンサ等を用いてもよい。リニアイメージセンサを用いる場合には、その配列方向が干渉縞の並ぶ方向に沿うよう配置する必要がある。
図1(A)では、光源10から被測定点Aに到達する光の光路と、被測定点Aから受光面SSに到達する光の光路とが完全に分離されている例を示したが、本発明の実施形態としてはこのようなものに限られない。例えば図1(B)に示したように、被測定点Aから受光面SSに到達する光の光路上にハーフミラー12を配置し、光源10から当該ハーフミラー12に向けて光を照射することとしてもよい。この場合には、光源10から発せられた光はハーフミラー12で反射され、被測定点Aに照射される。また、被測定点Aで反射(散乱)された光の一部は、ハーフミラーを透過して受光面SSに到達する。
また、受光面SSにおいて形成される干渉縞をより明瞭なものとするために、光源と被測定点Aとの間の光路上、又は被測定点Aと受光面SSとの間の光路上に、偏光板を配置してもよい。
続いて、図2を参照しながら、受光面SSと被測定点Aとの距離を算出するための具体的な方法について説明する。図2は、光学的測定装置1によって物体Mまでの距離を測定する方法を説明するための図であって、物体Mの被測定点Aで反射された光の経路を模式的に示している。
図2では、中間線LCに沿って被測定点Aから受光面SSに向かう方向をx方向としている。また、x方向に垂直であって、被測定点Aから反射面SRを含む面に向かう方向をy方向としている。また、被測定点Aから反射面SRを含む面に下した垂線の足を原点Oとし、当該原点Oからx方向に沿ってx座標軸を設定している。同様に、原点Oからy方向に沿ってy座標軸を設定している。
図2には、被測定点Aから受光面SSに直接到達する反射光のうち、受光面SS上の一点である点Bに到達する光の光路を特に示している。受光面SSを含む面から被測定点Aまでの距離をdとし、反射面SRを含む面から被測定点Aまでの距離をW/2とすれば、この光路の光路長Laと点Bのy座標(y)との関係は以下の式(1)で表される。
また、被測定点Aからミラー30の反射面SRに到達し、反射面SRで更に反射されてから受光面SS上の点Bに到達する光について検討する。このような光が辿る光路の光路長Lbは、反射面SRを含む面について被測定点A(0,−W/2)と対称となる点A1(0,W/2)から発せられ、直線的な光路を辿って点B(d,y)に到達するような光路の光路長と同一である。従って、この光路長Lbと点Bのy座標(y)との関係は以下の式(2)で表される。
従って、点Bに到達する二つの光の光路差は、
となる。
上記光路差に起因して、点Bにおいて光の干渉が生じる。上記のように、光路差はyの関数となっているため、yの値によって当該部分(点B)における干渉縞の明暗が変化する。光源10から発せられる光の波長をλとすれば、上記の光路差によって受光面SSに生じる干渉縞の縞間隔p1は、
となる。ここで、光路長La及びLbはいずれもWに比べて十分に大きく、それぞれdに等しいと近似することができる。このため、上記の式(4)を変形することによって以下の式(5)が得られる。
このように、受光面SSに生じる干渉縞の縞間隔p1(画像処理装置によって算出される値)がわかれば、受光面SSを含む面から被測定点Aまでの距離(d)を、より詳しくは、受光面SSを含む面に対する法線ベクトルのうち被測定点Aを通るものを想定したとき、当該法線ベクトルと受光面SSを含む面との交点から被測定点Aまでの長さを、受光面SSを含む面から被測定点Aまでの距離(d)として、式(5)によって算出することができる。
以上のように、本実施形態に係る光学的測定装置1では、反射面SR(第一反射面)と受光面SS(第一受光面)とを備えるという簡単な構成によって、光源10から発せられた光の光路差及び干渉縞を生じさせている。物体Mまでの距離、すなわち、受光面SSを含む平面から被測定点Aまでの距離は、当該干渉縞の縞間隔に基づいて正確に測定される。
ところで、上記の式(5)を見れば明らかなように、受光面SSを含む面から被測定点Aまでの距離(d)の算出値は、Wの値に応じて変化してしまう可能性がある。例えば、光学的測定装置の組み立て時におけるミスや、外力による衝撃が光学的測定装置1に加えられ、光学レンズ系の位置が当初の設計位置からずれてしまう、例えば反射面SRがy方向に変位してしまった場合(Wが当初よりも大きくなってしまった場合)には、干渉縞の縞間隔に基づいて算出される距離と、実際の距離との関係が変化することとなるため、dと縞間隔p1との関係が変化してしまう。その結果、受光面SSを含む平面から被測定点Aまでの距離(d)を正確に算出することができなくなってしまう。
そこで、このような問題を解決することのできる実施形態として、以下では本発明の第二実施形態に係る光学的測定装置1aについて説明する。図3は、光学的測定装置1aの構成を模式的に示した図であって、物体Mの被測定点Aで反射された光の経路を模式的に示している。図2と図3とを対比すれば明らかなように、光学的測定装置1aは、CCDイメージセンサ20aが一対の受光面(第一受光面SS1、第二受光面SS2)を有する点、及び、一対のミラー(第一ミラー31、第二ミラー32)を備えた点において光学的測定装置1と異なっており、その他の構成については光学的測定装置1と同様である。
図3に示したように、光学的測定装置1aのCCDイメージセンサ20aは、一対の受光面である第一受光面SS1及び第二受光面SS2を有している。これらはいずれも平坦な受光面であって、同一平面上においてy方向に並んで配置されている。中間線LCは、第一受光面SS1と第二受光面SS2との境界部分においてCCDイメージセンサ20aと交わっている。第一受光面SS1は中間線LCよりも+y方向側(図3では下方側)に配置されており、第二受光面SS2は中間線LCよりも−y方向側(図3では上方側)に配置されている。
CCDイメージセンサ20aはその受光面(第一受光面SS1及び第二受光面SS2)を被測定点Aに向けて配置されている。光源10から発せられて被測定点Aに到達し被測定点Aで反射(散乱)された光(反射光)は、その一部が第一受光面SS1に直接到達し、その一部が第二受光面SS2に直接到達する。
第一ミラー31は、平坦な反射面(第一反射面SR1)を有しており、第一反射面SR1がCCDイメージセンサ20aの第一受光面SS1に対して垂直となるように配置されている。第一反射面SR1は中間線LCと平行であって、中間線LCよりも+y方向側において中間線LCと対向するように配置されている。このため、光源10から発せられて被測定点Aに到達し被測定点Aで反射(散乱)された光(反射光)の一部は、第一ミラー31の第一反射面SR1で更に反射されてから、CCDイメージセンサ20aの第一受光面SS1に到達する。
第二ミラー32は、平坦な反射面(第二反射面SR2)を有しており、第二反射面SR2がCCDイメージセンサ20aの第二受光面SS2に対して垂直となるように配置されている。第二反射面SR2は中間線LCと平行であって、中間線LCよりも−y方向側において中間線LCと対向するように配置されている。このため、光源10から発せられて被測定点Aに到達し被測定点Aで反射(散乱)された光(反射光)の一部は、第二ミラー32の第二反射面SR2で更に反射されてから、CCDイメージセンサ20aの第二受光面SS2に到達する。
被測定点Aまでの距離を測定するように光学的測定装置1aを配置した状態(図3の状態)においては、第一反射面SR1から中間線LCまでの距離が、第二反射面SR2から中間線LCまでの距離と等しくなっている。換言すれば、光学的測定装置1aの内部における第一ミラー31及び第二ミラー32の位置は、このような条件を満たすように決定されている。
尚、上記のような第一ミラー31及び第二ミラー32は、互いに別体である二つのミラーをそれぞれ配置してもよい。しかし、本実施形態においては、一本のガラスロッドGLのうち互いに対向する二つの表面を、それぞれ第一ミラー31、第二ミラー32として用いている。
図4を参照しながら説明する。図4はガラスロッドGLを示す斜視図である。ガラスロッドGLは直方形状のガラスであって、その長手方向における一端側の端面SFを、物体Mの被測定点Aに向けて配置されている。また、長手方向における他端側の端面SBには、CCDイメージセンサ20aがその第一受光面SS1及び第二受光面SS2を当接させた状態で取り付けられている。このため、被測定点Aからの反射光は、端面SFから入射し、ガラスロッドGLの内部を通って第一受光面SS1及び第二受光面SS2に到達する。尚、ガラスロッドGLの材質はガラスに限られず、光源10が発する光に対して透明な種々の材質を用いることができる。
図4に示したように、ガラスロッドGLでは、y方向に沿って対向する二つの平坦な表面がそれぞれ第一反射面SR1(第一ミラー31)及び第二反射面SR2(第二ミラー32)となっている。端面SFからガラスロッドGLの内部に入射した光の一部は、第一反射面SR1に入射して全反射された後、第一受光面SS1に到達する。同様に、端面SFからガラスロッドGLの内部に入射した光の一部は、第二反射面SR2に入射して全反射された後、第二受光面SS2に到達する。尚、ガラスロッドGLの表面のうち第一反射面SR1及び第二反射面SR2となるそれぞれの面には、金属蒸着による薄膜が形成されていてもよい。
尚、本実施形態における第一ミラー31及び第二ミラー32は上記のようなもの(ガラスロッドGLの一面)であるから、その厚さが観念できないものである。しかし、図3等においては説明の便宜上、それぞれが一定の厚さを有する板状のミラーであるように描いている。また、図3等においては、ガラスロッドGLのうち第一ミラー31及び第二ミラー32以外の部分の図示を省略している。
このように、本実施形態においては、第一ミラー31及び第二ミラー32は互いに別体ではなく一体の物であるから、第一ミラー31と第二ミラー32との相対的な位置関係は常に一定に維持される。すなわち、外力の衝撃によってガラスロッドGLが変位したとしても、第一反射面SR1と第二反射面SR2とに生じる変位は常に同一となる。
図3に戻って説明を続ける。図3では、中間線LCに沿って被測定点Aから第一受光面SS1を含む面に向かう方向をx方向としている。また、x方向に垂直であって、被測定点Aから第一反射面SR1を含む面に向かう方向をy方向としている。また、変位する前の時点における第一反射面SR1を含む面に対し、被測定点Aから下した垂線の足を原点Oとしている。当該原点Oからx方向に沿ってx座標軸を設定している。同様に、原点Oからy方向に沿ってy座標軸を設定している。以降の図面においても、上記と同様にしてx座標軸、y座標軸、及び原点Oを設定している。
既に説明したように、CCDイメージセンサ20aの第一受光面SS1には、被測定点Aから直接到達する光と、第一ミラー31の第一反射面SR1から到達する光とが重ねて照射される。これらはいずれも光源10から発せられた光であるが、第一受光面SS1に到達するまでにそれぞれが辿る光路の光路長は互いに異なっている。このため、第一受光面SS1には、光路差に起因して干渉縞が生じることとなる。当該干渉縞の縞間隔p1は、第一受光面SS1から被測定点Aまでの距離に比例した大きさとなる。
同様に、CCDイメージセンサ20aの第二受光面SS2には、被測定点Aから直接到達する光と、第二ミラー32の第二反射面SR2から到達する光とが重ねて照射される。これらはいずれも光源10から発せられた光であるが、第二受光面SS2に到達するまでにそれぞれが辿る光路の光路長は互いに異なっている。このため、第二受光面SS2には、光路差に起因して干渉縞が生じることとなる。当該干渉縞の縞間隔p2は、第二受光面SS2から被測定点Aまでの距離に比例した大きさとなる。
ここで、第一受光面SS1と第二受光面SS2とが同一平面上に配置されていることと、第一反射面SR1から中間線LCまでの距離が第二反射面SR2から中間線LCまでの距離と等しいこととに鑑みれば明らかなように、縞間隔p1と縞間隔p2とは互いに等しくなる(式(5)を参照のこと)。
ところが、例えば、外力による衝撃が光学的測定装置1に加えられ、反射面SRが図3の状態から変位してしまった場合には、縞間隔p1と縞間隔p2とはそれぞれ変化し、以下に説明するように互いに異なる大きさとなってしまう。
このような変位の例として、ガラスロッドGLがy方向にΔyだけ変位した場合の例を説明する。すなわち、第一反射面SR1がy方向にΔyだけ並行移動し、第二反射面SR2もy方向にΔyだけ並行移動した場合の例を説明する。このとき、物体Mの位置、及びCCDイメージセンサ20aの位置は変わらないものとする。
図5は、光学的測定装置1aによって物体Mまでの距離を測定する方法を説明するための図である。図5では、上記のようにガラスロッドGLがΔyだけ変位した場合における、第一受光面SS1に到達する光の経路を模式的に示している。尚、同図においては、第二ミラー32の図示を省略している。また、CCDイメージセンサ20aのうち第二反射面SR2の図示を省略している。
図5には、被測定点Aから第一受光面SS1に直接到達する反射光のうち、第一受光面SS1上の一点である点Bに到達する光の光路を特に示している。図2を参照しながら説明した場合と同様に、第一受光面SS1を含む面から被測定点Aまでの距離をdとし、変位する前の時点における第一反射面SR1を含む面から被測定点Aまでの距離をW/2とすれば、この光路の光路長La1と点Bのy座標(y)との関係は以下の式(6)で表される。
次に、被測定点Aから第一ミラー31の第一反射面SR1に到達し、第一反射面SR1で更に反射されてから第一受光面SS1に到達する光について検討する。このような光が辿る光路の光路長Lb1は、点A2(0,W/2+2Δy)から発せられ、直線的な光路を辿って点B(d,y)に到達するような光路の光路長と同一である。従って、この光路長Lb1と点Bのy座標(y)との関係は以下の式(7)で表される。
従って、点Bに到達する二つの光の光路差は、
となる。
上記光路差に起因して、点Bにおいて光の干渉が生じる。上記のように、光路差はyの関数となっているため、yの値によって当該部分(点B)における干渉縞の明暗が変化する。光源10から発せられる光の波長をλとすれば、上記の光路差によって第一受光面SS1に生じる干渉縞の縞間隔p1は、
となる。ただし、上記式(9)の導出に当たっては、yに比べてΔyが微小であること、及び、光路長La1及びLb1はいずれもWに比べて十分に大きく、それぞれdに等しいとみなせること、を考慮している。
第二受光面SS2に生じる干渉縞の縞間隔をp2とすると、p2についても、上記と同様の手順によって以下のように求めることができる。
ここで、p1とp2の平均値をpとすれば、
となるが、Δyが微小量であることを考慮すれば、
となる。
以上のように、第一反射面SR1と第二反射面SR2とがそれぞれy方向に変位すると、当該変位によって縞間隔p1、p2の大きさはそれぞれ変化してしまう。しかし、p1とp2の平均値pの変化は無視することができる程度である。当該平均値pに基づけば、式(5)と同様の式(12)によって、第一受光面SS1を含む面から被測定点Aまでの距離(d)を算出することができる。
次に、図6を参照しながら、ガラスロッドGLが微小回転した場合の例を説明する。すなわち、x座標軸及びy座標軸のいずれに対しても垂直な一つの軸を回転軸として、第一反射面SR1及び第二反射面SR2が微小回転した場合の例を説明する。図6では、点C(x1,0)を通り且つx座標軸及びy座標軸のいずれに対しても垂直な回転軸の周りに、ガラスロッドGLが角度θだけ回転した状態を示している。回転方向は、図6において反時計回りである。すなわち、第一反射面SR1のうち物体M側の端部が+y方向側に変位し、CCDイメージセンサ20a側の端部が−y方向側に変位するような回転方向である。一方、ガラスロッドGLが変位する前後で、物体Mの位置、及びCCDイメージセンサ20aの位置は変わらないものとする。
図5の場合と同様に、図6においては第二ミラー32の図示を省略している。また、CCDイメージセンサ20aのうち第二反射面SR2の図示を省略している。図6には、被測定点Aから第一受光面SS1に直接到達する反射光のうち、第一受光面SS1上の一点である点Bに到達する光の光路を特に示している。点Bは、被測定点Aから点Cに到達した光が、第一反射面SR1で反射された後に第一受光面SS1に到達する点である。
点Bのy座標をyと表記すれば、被測定点Aから第一受光面SS1に直接到達する反射光が辿る光路の光路長La1は以下の式(13)で表される。
次に、被測定点Aから第一ミラー31の第一反射面SR1に到達し、第一反射面SR1で更に反射されてから第一受光面SS1上の点Bに到達する光について検討する。このような光が辿る光路の光路長Lb1は、図6の点A3から発せられ、直線的な光路を辿って点B(d,y)に到達する場合の光路長と同一である。点A3は、変位後の第一受光面SS1を含む面について被測定点A(0,−W/2)と対称となる位置の点であり、その座標は(Wtanθ+2x1tan2θ,W/2+2x1tanθ)である。
従って、点A3と点B(d,y)との距離である光路長Lb1を求め、これと式(13)とを下記の式(14)に代入すれば、第一受光面SS1に生じる干渉縞の縞間隔p1が得られる。
θが微小であることを考慮し、tanθ=θとする等の近似を行えば、p1は以下のように算出される。
第二受光面SS2に生じる干渉縞の縞間隔をp2とすると、p2についても、上記と同様の手順によって以下のように求めることができる。
ここで、p1とp2の平均値をpとすれば、
となるが、θが微小量であることを考慮すれば、
となる。
以上のように、第一反射面SR1と第二反射面SR2とがそれぞれ微小回転すると、当該回転によって縞間隔p1、p2の大きさはそれぞれ変化してしまう。しかし、p1とp2の平均値pの変化は無視することができる程度である。当該平均値pに基づけば、式(5)と同様の式(18)によって、第一受光面SS1を含む面から被測定点Aまでの距離(d)を算出することができる。
図5及び図6を参照しながら、ガラスロッドGLが並行移動するように変位した場合と、回転するように変位した場合とを説明した。以上の説明で明らかなように、いずれの場合であっても、第一反射面SR1と第二反射面SR2との変位が互いに同様なものであれば、縞間隔p1の変化と縞間隔p2の変化とは互いに逆向きとなる。すなわち、一方が増加すれば他方が減少するような関係となる。このため、p1とp2の平均値pの変化は無視することができる程度となり、平均値pに基づいて、第一受光面SS1を含む面から被測定点Aまでの距離(d)を算出することができる。
これは、上記のようにガラスロッドGLの並行移動や回転が個別に生じた場合のみならず、複合的に生じた場合でも成立する。また、第一反射面SR1と第二反射面SR2との変位が互いに同様なものである限り、上記以外の複雑な変位が生じた場合でも成立する。
本実施形態では、第一反射面SR1の変位と第二反射面SR2の変位とを互いに同様なものとするために、両者をガラスロッドGLの対向する二つの表面としている。但し、本発明の実施形態としてはこのようなものに限られない。例えば、第一ミラー31及び第二ミラー32をそれぞれ別体として構成し、両者の相対変位を固定する何らかの手段(例えば、両者間に介在する支柱等)を設けてもよい。
尚、本実施形態では、ガラスロッドGLの長手方向に対して第一受光面SS1(及び第二受光面SS2)の法線方向が一致するように、CCDイメージセンサ20aを配置している。本発明の実施形態としてはこのような態様の他、第一受光面SS1等の法線方向がガラスロッドGLの長手方向に対して僅かに傾斜するよう、CCDイメージセンサ20aを配置してもよい。このような配置とすれば、CCDイメージセンサ20aに備え付けられたカバーガラス内における多重反射や、カバーガラスとガラスロッドGLとの間における多重反射等が生じるような場合であっても、干渉縞の測定に対する当該多重反射等の影響を抑えることができる。
このようにCCDイメージセンサ20aを傾斜配置した場合、縞間隔p1、p2は当該傾斜の影響によりそれぞれ変化してしまう。しかし、CCDイメージセンサ20aの傾斜角度は既知であるから、縞間隔p1、p2に基づいてdを算出する式(18)を適宜補正して用いればよい。
また、本実施形態に係る光学的測定装置1aは、上記のように物体の表面までの距離を測定することの他、薄膜の厚さをも測定することが可能である。この場合、薄膜の表面で反射した反射光による干渉縞と、薄膜の裏面で反射した反射光による干渉縞とが、第一受光面SS1及び第二受光面SS2にそれぞれ重なって生じることとなる。
第一受光面SS1等に重なって生じた干渉縞の縞間隔は、画像処理装置で行う演算処理(例えばフーリエ変換)によって、それぞれ算出することができる。このため、第一受光面SS1を含む面から薄膜の表面までの距離と、第一受光面SS1を含む面から薄膜の裏面までの距離とを同時に測定し、両者の差である薄膜の厚さを算出することができる。
続いて、本発明の第三実施形態に係る光学的測定装置1bについて、図7を参照しながら説明する。図7は、光学的測定装置1bを模式的に示す図であって、物体Mの被測定点Aで反射された光の経路を模式的に示している。光学的測定装置1bは、物体Mと第一ミラー31との間に集光レンズ40が配置されている点において光学的測定装置1aと異なっており、その他の構成については光学的測定装置1aと同様である。但し、図7においては第二ミラー32の図示を省略している。また、CCDイメージセンサ20aのうち第二反射面SR2の図示を省略している。
式(12)や式(18)等に示したように、CCDイメージセンサ20aの出力として得られる縞間隔p1、p2の大きさ(及びこれらの平均値p)は、第一受光面SS1を含む面から被測定点Aまでの距離(d)に比例した値となっている。
このため、第二実施形態に係る光学的測定装置1aで距離を測定しようとすると、dが大きい場合には縞間隔p1が第一受光面SS1の大きさに比べて大きくなり過ぎてしまい、縞間隔p1を正確に測定することが困難となってしまうことがある。逆に、dが小さい場合には縞間隔p1がCCDイメージセンサ20aの測定分解能に比べて小さくなり過ぎてしまい、やはり縞間隔p1を正確に測定することが困難となってしまうことがある。
しかしながら、物体Mや光学的測定装置1aが配置される環境等の制約によって、第一受光面SS1から被測定点Aまでの距離は自由に設定できない場合が多い。例えば、真空チャンバー内に配置された物体Mまでの距離を測定する場合には、光学的測定装置1aを真空チャンバーの内部に配置することができないため、第一受光面SS1から被測定点Aまでの距離をある程度長くとる必要がある。
その結果、環境等の制約を満たすように物体M及び光学的測定装置1aを配置することと、第一受光面SS1から被測定点Aまでの距離を所望の精度で測定することとを、両立できない場合が生じ得る。また、環境等の制約によって測定可能な距離の範囲が固定されるということであるから、第一受光面SS1から被測定点Aまでの距離が大きく変動した際に、距離の測定が不可能になってしまう場合も生じ得る。
そこで、本実施形態に係る光学的測定装置1bでは、物体Mと第一ミラー31との間に集光レンズ40を配置することによって上記の問題を解決している。以下、集光レンズ40を配置したことの効果について説明する。
集光レンズ40は薄肉単レンズであって、被測定点AからCCDイメージセンサ20aに向かう全ての反射光を一点(集光点FP)に集光させる。集光レンズ40の主面は中間線LCに対して垂直であり、集光点FPは中間線LC上に位置している。被測定点Aから第一反射面SR1、第二反射面SR2、第一受光面SS1、及び第二受光面SS2に到達する全ての反射光は、集光レンズ40を通過した後に集光点FPを通過する。
図7を見れば明らかなように、上記のような構成においては、集光点FPの位置を、第一受光面SS1に干渉縞を生じさせる点光源の位置とみなすことができる。従って、第一受光面SS1を含む面と集光点FPとの距離d1は、式(12)や式(18)によりdを算出した場合とまったく同様の手順により算出することができる。
また、光学的測定装置1bにおける集光レンズ40の位置、すなわち、第一受光面SS1を含む面と集光レンズ40の主面との距離は既知である。従って当該距離から距離d1を差し引くことにより、集光点FPと集光レンズ40の主面との距離d2を算出することができる。
更に、集光レンズ40の焦点距離fも既知であるから、集光レンズ40の主面と被測定点Aとの距離d3は、以下に示すレンズの結像公式により算出することができる。
第一受光面SS1を含む面から被測定点Aまでの距離(d)は、以上のように算出されたd1、d2、d3の総和として容易に求めることができる。
集光点FPから被測定点Aまでの距離(d2+d3)は、集光レンズ40の選び方によって自由に設定することができる。換言すれば、第一受光面SS1を含む面と集光点FPとの距離d1を自由に設定することができる。
これにより、第一受光面SS1を含む面から被測定点Aまでの距離を変更することなく、縞間隔p1の大きさを適切なものとすることができる。換言すれば、環境等の制約を満たすように物体M及び光学的測定装置1bを配置することと、第一受光面SS1から被測定点Aまでの距離を所望の精度で測定することとを両立させることができる。
また、例えば集光レンズ40の縦倍率を変更することにより、集光レンズ40から被測定点Aまでの距離d3の変動と、集光点FPの位置変動(距離d2の変動)との関係を変更することができる。このような関係は、第一受光面SS1から被測定点Aまでの距離dの変動と、縞間隔p1の変動との関係ということもできる。縦倍率を大きくすれば、距離dの測定分解能が向上する。縦倍率を小さくすれば、距離dの測定分解能は下がるが、測定可能な距離dの範囲は広くなる。これを利用すれば、第一受光面SS1から被測定点Aまでの距離dが大きく変動するような場合であっても、当該変動範囲の全体を測定可能な範囲に収めることができる。
尚、集光レンズ40は、必ずしも薄肉単レンズである必要はなく、被測定点Aからの反射光を集光点FPに集光させる種々の光学素子を用いることができる。また、上記のような集光レンズ40は、図2に示した光学的測定装置1に対して配置した場合にも、同様の効果を奏することは言うまでもない。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
例えば、第一受光面SS1及び第二受光面SS2が一つのCCDイメージセンサ20aの受光面となっている例を説明したが、このような態様に替えて、二つのCCDイメージセンサを備える構成としてもよい。この場合、一方のCCDイメージセンサの受光面を第一受光面SS1とし、他方のCCDイメージセンサの受光面を第二受光面SS2として用いればよい。