ところで、従来の吸着熱交換器の製造方法では、熱交換器本体を原料液に浸漬する塗布工程と、熱交換器本体を回転させて余剰の原料液を飛散させる飛散工程とが、別々の機器を用いて行われる。このため、従来の製造方法では、原料液が付着した熱交換器本体を、塗布工程を行う機器から飛散工程を行う機器へ作業者が運ばなければならない。
作業者が熱交換器本体を運ぶ際には、原料液の付着した熱交換器本体が比較的長時間(例えば、数分間)に亘って外気に曝される。熱交換器本体が外気に曝されている間には、熱交換器本体に付着した原料液中の溶媒が蒸発する。原料液中の溶媒の割合が減少すると、粘度等の原料液の性状が変化する。従って、仮に飛散工程において熱交換器本体から飛散した原料液を回収しても、回収した原料液の性状は当初から変化しており、飛散工程において回収した原料液を塗布工程で再利用することはできない。このため、従来の製造方法では、飛散工程において熱交換器本体から飛散した原料液を廃棄せざるを得ず、吸着層を形成せずに無駄になる原料液の量が多いという問題があった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸着熱交換器の製造時に廃棄される原料液の量を削減し、吸着熱交換器の製造コストを低減することにある。
第1の発明は、伝熱管(13)およびフィン(12)を有する熱交換器本体(11)と、上記熱交換器本体(11)の表面に形成されて吸着剤を含有する吸着層(16)とを備えた吸着熱交換器(10)の製造方法を対象とする。そして、上記熱交換器本体(11)をケーシング(21)に囲われた収容空間(28)に収容する収容工程と、粉末状の吸着剤とバインダと溶媒との混合物であるスラリー状の原料液を、上記収容空間(28)に収容された上記熱交換器本体(11)に掛けて付着させる付着工程と、上記付着工程を経た上記熱交換器本体(11)を上記収容空間(28)において回転させて余剰の原料液を該熱交換器本体(11)から飛散させる飛散工程と、上記付着工程および上記飛散工程と並行して行われ、上記付着工程中に上記熱交換器本体(11)から流れ落ちた原料液と上記飛散工程中に上記熱交換器本体(11)から飛散した原料液とを回収容器(45)に回収する回収工程と、上記飛散工程を経た上記熱交換器本体(11)を上記収容空間(28)から取り出して乾燥させることによって上記吸着層(16)を形成する乾燥工程とを備えるものである。
第1の発明の製造方法では、収容工程と、付着工程と、飛散工程と、乾燥工程とが順に行われる。この製造方法では、ケーシング(21)に囲われた収容空間(28)において、付着工程と飛散工程とが行われる。また、この製造方法では、付着工程および飛散工程の実行中に、これらの工程と並行して回収工程が行われる。回収工程において、付着工程中に熱交換器本体(11)から流れ落ちた原料液と、飛散工程中に熱交換器本体(11)から飛散した原料液とは、収容空間(28)から回収容器(45)へ直接流れ込む。つまり、これらの原料液は、ケーシング(21)の外部の空気に触れることなく回収容器(45)に回収される。このため、原料液が熱交換器本体(11)に掛けられてから回収容器(45)へ流れ込むまでの間における溶媒の蒸発量が減少し、この間における原料液の性状の変化が抑えられる。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記付着工程では、上記回収容器(45)に貯留された原料液を上記熱交換器本体(11)に掛けるものである。
第2の発明では、回収工程において回収容器(45)に回収された原料液が、付着工程において再利用される。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記収容工程では、複数の板状のフィン(12)が所定の間隔をおいて対面するように配置された上記熱交換器本体(11)を、上記フィン(12)の配列方向が水平方向となる姿勢で上記収容空間(28)に収容し、
上記付着工程では、上記熱交換器本体(11)に対して上方から原料液を掛けるものである。
第3の発明では、フィン(12)の配列方向が水平方向となる姿勢で設置された熱交換器本体(11)に対して、原料液が上方から掛けられる。このため、所定の間隔をおいて配列された熱交換器本体(11)のフィン(12)の間に原料液が入り込み、各フィン(12)の表面に原料液が付着する。
第4の発明は、上記第3の発明において、上記付着工程の開始時には、原料液を下向きに常に流出させる液供給部材(50)を、該液供給部材(50)から流出した原料液を受けて上記回収容器(45)へ導くためのガイド部材(40)の上方の位置である待機位置から上記熱交換器本体(11)の上方の位置である供給位置へ移動させる一方、上記付着工程の終了時には、上記液供給部材(50)を上記供給位置から上記待機位置へ移動させるものである。
第4の発明では、液供給部材(50)から原料液が常に流出する。付着工程の開始時に液供給部材(50)が待機位置から供給位置へ移動すると、液供給部から流出した原料液が熱交換器本体(11)に対して上方から掛けられる。一方、付着工程の終了時には、液供給部材(50)が供給位置から待機位置へと移動する。液供給部材(50)が待機位置に存在する場合、液供給部材(50)から流出した原料液は、ガイド部材(40)に受けられて回収容器(45)へ導かれる。従って、待機位置に存在する液供給部材(50)から流出した原料液は、粘度等の性状を保ったまま回収容器(45)へ流入する。
第5の発明は、上記第3又は第4の発明において、上記飛散工程では、各フィン(12)が長方形板状に形成された上記熱交換器本体(11)を、該熱交換器本体(11)から所定の距離だけ離れた鉛直方向の回転中心軸(38)周りに、上記フィン(12)の長辺(12a)が上記回転中心軸(38)側を向く姿勢で回転させるものである。
第5の発明の飛散工程において、鉛直方向の回転中心軸(38)周りに回転する熱交換器本体(11)は、フィン(12)の配列方向が水平方向となり且つフィン(12)の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢となっている。熱交換器本体(11)のフィン(12)に付着した余剰の原料液に作用する遠心力は、フィン(12)の短辺(12b)方向に作用する。このため、熱交換器本体(11)が回転中心軸(38)周りに回転すると、フィン(12)に付着した余剰の原料液は、回転中の熱交換器本体(11)の外方へ飛散してゆく。
第6の発明は、上記第5の発明において、上記収容工程と、上記付着工程と、上記飛散工程と、上記乾燥工程とを順に複数回ずつ繰り返し行い、毎回の上記付着工程および上記飛散工程と並行して上記回収工程を行う一方、二回目以降の上記飛散工程では、上記熱交換器本体(11)を、前回の上記飛散工程において上記回転中心軸(38)側を向いていた上記フィン(12)の長辺(12a)が該回転中心軸(38)とは反対側を向く姿勢で、上記回転中心軸(38)周りに回転させるものである。
第6の発明では、付着工程と飛散工程と乾燥工程とが順に複数回ずつ繰り返し行われる。また、この発明では、二回目以降の飛散工程において、熱交換器本体(11)が前回の飛散工程とは逆向きに設置される。
ここで、飛散工程において熱交換器本体(11)が回転すると、フィン(12)に付着した原料液は、遠心力によって外側(即ち、回転中心軸(38)とは逆側)へ向かって流れる。このため、飛散工程の終了時の各フィン(12)では、回転中心軸(38)とは逆側寄りの部分に付着した原料液の量が、回転中心軸(38)寄りの部分に付着した原料液の量よりも多くなる。従って、毎回の飛散工程においてフィン(12)の一方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で熱交換器本体(11)を回転させると、フィン(12)の一方の長辺(12a)寄りの部分に形成された吸着層(16)に比べて、他方の長辺(12a)寄りの部分に形成された吸着層(16)の方が厚くなる。
これに対し、第6の発明では、二回目以降の飛散工程において、熱交換器本体(11)が前回の飛散工程とは逆向きに設置される。例えば、前回の飛散工程においてフィン(12)の一方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で熱交換器本体(11)が回転した場合、今回の飛散工程では、フィン(12)の他方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で熱交換器本体(11)が回転する。その結果、今回の飛散工程の終了時において、熱交換器本体(11)の各フィン(12)では、前回の乾燥工程の終了時における吸着層(16)の厚さが比較的薄かった部分に、比較的多くの原料液が残存することになる。従って、この発明によれば、完成品である吸着熱交換器(10)のフィン(12)の各部における吸着層(16)の厚さを均一化でき、吸着熱交換器(10)の品質を向上させることができる。
第7の発明は、第1〜第6のいずれか一つの発明において、上記回収工程では、上記熱交換器本体(11)の下方に配置されて該熱交換器本体(11)から流れ落ちた原料液が上記回収容器(45)へ流れるように傾斜した受け皿部材(24)を、該受け皿部材(24)上の原料液が流動するように振動させるものである。
第7の発明において、付着工程中に熱交換器本体(11)から流れ落ちた原料液と、飛散工程中に熱交換器本体(11)から飛散した原料液とは、受け皿部材(24)の上に落下する。回収工程では、受け皿部材(24)に振動が与えられる。受け皿部材(24)が振動すると、受け皿部材(24)の上に落下した原料液は、傾斜した受け皿部材(24)の上を下方に向かって流れ、最終的に回収容器(45)へ流入する。
第8の発明は、伝熱管(13)およびフィン(12)を有する熱交換器本体(11)と、上記熱交換器本体(11)の表面に形成されて吸着剤を含有する吸着層(16)とを備えた吸着熱交換器(10)の製造装置を対象とする。そして、上記熱交換器本体(11)を収容するための収容空間(28)を形成するケーシング(21)と、粉末状の吸着剤とバインダと溶媒との混合物であるスラリー状の原料液を、上記収容空間(28)に収容された上記熱交換器本体(11)に掛ける液供給部材(50)と、上記液供給部材(50)が上記原料液を掛けた上記熱交換器本体(11)を、該熱交換器本体(11)から余剰の原料液が飛散するように、上記収容空間(28)内で回転させる回転部材(30)と、上記液供給部材(50)から上記熱交換器本体(11)に掛けられて該熱交換器本体(11)に付着しなかった原料液が流入する回収容器(45)とを備えるものである。
第8の発明の製造装置(20)では、ケーシング(21)内の収容空間(28)に熱交換器本体(11)が収容される。収容空間(28)内の熱交換器本体(11)には、液供給部材(50)によって原料液が掛けられる。また、回転部材(30)は、原料液が掛けられた熱交換器本体(11)を、収容空間(28)内において回転させる。熱交換器本体(11)が回転すると、熱交換器本体(11)に付着していた余剰の原料液が飛散する。液供給部材(50)から上記熱交換器本体(11)に掛けられて該熱交換器本体(11)に付着しなかった原料液は、回収容器(45)へ流入する。
本発明の製造方法では、ケーシング(21)に囲われた収容空間(28)において、熱交換器本体(11)に原料液を掛ける付着工程と、熱交換器本体(11)を回転させて余剰の原料液を飛散させる飛散工程とが行われる。そして、付着工程および飛散工程の実行中に回収工程が行われ、付着工程および飛散工程において熱交換器本体(11)に付着しなかった原料液が、ケーシング(21)の外部の空気に触れずに回収容器(45)へ流入する。このため、原料液が熱交換器本体(11)に掛けられてから回収容器(45)へ流れ込むまでの間における溶媒の蒸発量を削減でき、この間における原料液の性状の変化を抑えることができる。従って、本発明によれば、回収容器(45)に回収された原料液を再び吸着熱交換器(10)を製造するために利用することが可能となり、廃棄される原料液の量を削減して吸着熱交換器(10)の製造コストを低減することができる。
上記第2の発明によれば、回収工程において回収容器(45)に回収された原料液を付着工程において再利用でき、廃棄される原料液の量を確実に削減できる。
上記第3の発明では、フィン(12)の配列方向が水平方向となる姿勢で設置された熱交換器本体(11)に対して、原料液が上方から掛けられる。従って、この発明によれば、熱交換器本体(11)に原料液を上方から掛けるだけで、各フィン(12)の表面に原料液を確実に付着させることができ、不良品の発生率を低減することができる。
上記第4の発明では、液供給部材(50)から原料液が常に流出する。このため、原料液は、常に流動して掻き混ぜられた状態となり、その性状が一定に保たれる。従って、この発明によれば、一定の性状の原料液を熱交換器本体(11)へ安定して供給することが可能となり、吸着熱交換器(10)の品質を安定させることができる。また、この発明では、待機位置に存在する液供給部材(50)から流出した原料液が、粘度等の性状を保ったまま回収容器(45)へ回収される。従って、液供給部材(50)から原料液を常に流出させる場合でも、熱交換器本体(11)に付着せずに無駄になる原料液の量を低く抑えることができる。
上記第5の発明の飛散工程では、フィン(12)の配列方向が水平方向となり且つフィン(12)の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢の熱交換器本体(11)が、鉛直方向の回転中心軸(38)周りに回転する。従って、この発明によれば、熱交換器本体(11)を回転させることによって、熱交換器本体(11)のフィン(12)に付着した余剰の原料液を、熱交換器本体(11)から確実に取り除くことができる。
ここで、飛散工程において熱交換器本体(11)が回転すると、フィン(12)に付着した原料液は、遠心力によって外側(即ち、回転中心軸(38)とは逆側)へ向かって流れる。このため、飛散工程の終了時の各フィン(12)では、回転中心軸(38)とは逆側寄りの部分に付着した原料液の量が、回転中心軸(38)寄りの部分に付着した原料液の量よりも多くなる。従って、毎回の飛散工程においてフィン(12)の一方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で熱交換器本体(11)を回転させると、フィン(12)の一方の長辺(12a)寄りの部分に形成された吸着層(16)に比べて、他方の長辺(12a)寄りの部分に形成された吸着層(16)の方が厚くなる。
これに対し、第6の発明では、二回目以降の飛散工程において、熱交換器本体(11)が前回の飛散工程とは逆向きに設置される。例えば、前回の飛散工程においてフィン(12)の一方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で熱交換器本体(11)が回転した場合、今回の飛散工程では、フィン(12)の他方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で熱交換器本体(11)が回転する。その結果、今回の飛散工程の終了時において、熱交換器本体(11)の各フィン(12)では、前回の乾燥工程の終了時における吸着層(16)の厚さが比較的薄かった部分に、比較的多くの原料液が残存することになる。従って、この発明によれば、完成品である吸着熱交換器(10)のフィン(12)の各部における吸着層(16)の厚さを均一化でき、吸着熱交換器(10)の品質を向上させることができる。
上記第7の発明では、受け皿部材(24)を振動させることによって、受け皿部材(24)の上の原料液を確実に回収容器(45)へ向かって流すことができる。従って、この発明によれば、回収容器(45)へ回収される原料液の量を増やすことができ、熱交換器本体(11)に付着せずに無駄になる原料液の量を一層低く抑えることができる。
上記第8の発明の製造装置(20)は、ケーシング(21)内の収容空間(28)において、熱交換器本体(11)に原料液を掛ける工程と、熱交換器本体(11)を回転させて余剰の原料液を飛散させる工程とを行い、これらの工程において熱交換器本体(11)に付着しなかった原料液を回収容器(45)に回収する。このため、原料液が液供給部材(50)によって熱交換器本体(11)に掛けられてから回収容器(45)へ流れ込むまでの間における溶媒の蒸発量を削減でき、この間における原料液の性状の変化を抑えることができる。従って、この発明によれば、回収容器(45)に回収された原料液を再び吸着熱交換器(10)を製造するために利用することが可能となり、廃棄される原料液の量を削減して吸着熱交換器(10)の製造コストを低減することができる。
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本実施形態の製造装置(20)は、吸着熱交換器(10)を製造するための装置である。吸着熱交換器(10)は、本実施形態の製造装置(20)を用いた製造方法によって製造される。
−吸着熱交換器−
吸着熱交換器(10)について、図1〜3を参照しながら説明する。
吸着熱交換器(10)は、二つのサブユニット(10a,10b)を備えている(図1を参照)。各サブユニット(10a,10b)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器である熱交換器本体(11)と、熱交換器本体(11)の表面を覆うように形成された吸着層(16)とを備えている(図4を参照)。吸着熱交換器(10)では、二つのサブユニット(10a,10b)が互いに重なり合うように配置されている。
熱交換器本体(11)は、円管状の伝熱管(13)と、多数のフィン(12)とを備えている。各フィン(12)は、長方形の板状に形成されたアルミニウム製の部材である。各フィン(12)は、互いに対面する姿勢で、互いに一定の間隔をおいて一列に配置されている。配列された各フィン(12)のピッチは、例えば1.2mm以上2mm以下に設定されている。また、フィン(12)の板厚は、例えば0.1mm程度である。伝熱管(13)は、直管部(14)とU字管部(15)が交互に形成された蛇行する形状となっている。この伝熱管(13)は、その直管部(14)が配列された各フィン(12)を貫通するように設けられている。伝熱管(13)の直管部(14)は、フィン(12)と接合されており、その外周面がフィン(12)と密着している。
図4に示すように、吸着層(16)は、フィン(12)の両側面を覆うように形成されている。この吸着層(16)の厚さは、例えば100μm以上200μm以下である。なお、吸着層(16)は、フィン(12)の表面だけでなく、伝熱管(13)のうちフィン(12)に覆われていない部分(U字管部(15)など)の表面にも形成されている。
吸着層(16)は、微粒子状の吸着剤を含有している。この吸着剤は、吸湿性を有する有機高分子材料からなる。具体的に、この吸着剤では、分子中に親水性の極性基(親水基)を有する複数の高分子主鎖が互いに架橋されており、互いに架橋された複数の高分子主鎖が三次元構造体を形成している。
この吸着剤は、水蒸気を捕捉(即ち、吸湿)することによって膨潤する。この吸着剤が吸湿することによって膨潤するメカニズムは、以下のようなものと推測される。つまり、この吸着剤が吸湿する際には、親水性の極性基の周りに水蒸気が吸着され、親水性の極性基と水蒸気が反応することで生じた電気的な力が高分子主鎖に作用し、その結果、高分子主鎖が変形する。そして、変形した高分子主鎖同士の隙間へ水蒸気が毛細管力によって取り込まれ、水蒸気が入り込むことによって複数の高分子主鎖からなる三次元構造体が膨らみ、その結果、吸着剤の体積が増加する。
このように、本実施形態の吸着層(16)に設けられた吸着剤では、水蒸気が吸着剤に吸着される現象と、水蒸気が吸着剤に吸収される現象の両方が起こる。つまり、この吸着剤には、水蒸気が収着される。また、この吸着剤に捕捉された水蒸気は、互いに架橋された複数の高分子主鎖からなる三次元構造体の表面だけでなく、その内部にまで入り込む。その結果、この吸着剤には、表面に水蒸気を吸着するだけのゼオライト等に比べ、多量の水蒸気が捕捉される。
−吸着熱交換器の製造装置−
吸着熱交換器(10)の製造装置(20)について、図4を参照しながら説明する。この製造装置(20)は、半製品である熱交換器本体(11)の表面に原料液を付着させるための装置である。
本実施形態の製造装置(20)は、収容空間(28)を形成するケーシング(21)と、熱交換器本体(11)を回転させるための回転部材(30)と、熱交換器本体(11)に原料液を掛けるための液供給部材(50)と、原料液を貯留するための貯留タンク(45)と、原料液を液供給部材(50)へ送るためのポンプ(55)とを備えている。なお、図4(A)では、貯留タンク(45)及びポンプ(55)の図示を省略している。
ケーシング(21)は、概ね直方体の箱状の部材である。ケーシング(21)の内部空間は、半製品である熱交換器本体(11)を収容するための収容空間(28)となっている。ケーシング(21)の天板(22)は、その一部(図4(B)における概ね左半分)が開閉可能な扉(23)となっている。ケーシング(21)の底板(24)には、底板(24)を貫通する貫通孔である排出口(25)が形成されている。排出口(25)は、底板(24)の周縁付近の一箇所に形成されている。また、底板(24)には、排出口(25)の周縁部から下方へ突出した排出管部(26)が形成されている。底板(24)は、排出口(25)が最も低くとなるように傾斜している。この底板(24)は、上方から落下してきた原料液を受けて排出口(25)へ導くための受け皿部材を構成している。
ケーシング(21)の底板(24)には、加振器(29)が取り付けられている。この加振器(29)は、底板(24)の外側面(即ち、下面)に固定されている。図示しないが、加振器(29)は、小型の電気モータと、電気モータの出力軸に取り付けられて偏心回転する錘部材とを備えている。加振器(29)の電気モータが回転すると、錘部材が偏心回転することによって加振力が発生し、この化新緑によって底板(24)が振動する。製造装置(20)の運転中には、この加振器(29)が常に作動する。
ケーシング(21)には、ガイド部材(40)が設けられている。このガイド部材(40)は、ケーシング(21)の一つの側板(27)の内側面に取り付けられている。また、ガイド部材(40)は、排出口(25)に最も近い側板(27)に取り付けられている。ガイド部材(40)は、ケーシング(21)の側板(27)に沿って延びる縦樋部(41)と、縦樋部(41)の上端に連続して形成された横樋部(42)とを備えている。横樋部(42)は、縦樋部(41)の上端から庇状に突出した部分である。この横樋部(42)の底面は、縦樋部(41)の上端から横樋部(42)の突端へ向かって斜め上方に傾斜している。横樋部(42)の突端側の縁部は、ケーシング(21)の側板(27)と実質的に平行になっている。
回転部材(30)は、半製品である熱交換器本体(11)を保持するための保持用部材(31)と、保持用部材(31)を回転駆動するための電動機(35)とを備えている。
保持用部材(31)は、ケーシング(21)内の収容空間(28)に配置される。この保持用部材(31)は、平面視で概ねH字状に形成された部材であって、一つの支持板部(32)と、二つのアーム部(33a,33b)とを備えている。支持板部(32)と各アーム部(33a,33b)は、いずれも細長い長方形板状の部材である。各アーム部(33a,33b)の長さは、互いに等しい。一方のアーム部(33a)は支持板部(32)の一端に、他方のアーム部(33b)は支持板部(32)の他端に、それぞれ接合されている。各アーム部(33a,33b)の長手方向は、支持板部(32)の長手方向と直交する。また、各アーム部(33a,33b)は、それぞれの長手方向の中央部が支持板部(32)に接合されている。
保持用部材(31)の各アーム部(33a,33b)には、熱交換器本体(11)を固定するための固定具(34a,34b)が二つずつ設けられる。固定具(34a,34b)は、各アーム部(33a,33b)の一端と他端に一つずつ配置される。各固定具(34a,34b)は、断面が概ねコ字状となった柱状の部材であって、アーム部(33a,33b)の上面に起立した姿勢で取り付けられている。また、各アーム部(33a,33b)の一端に設けられた固定具(34a,34a)は互いに向かい合い、各アーム部(33a,33b)の他端に設けられた固定具(34b,34b)は互いに向かい合っている。
保持用部材(31)は、二つの熱交換器本体(11a,11b)を保持できるように構成されている。保持用部材(31)では、各アーム部(33a,33b)の一端に設けられた固定具(34a,34a)によって一方の熱交換器本体(11a)が保持され、各アーム部(33a,33b)の他端に設けられた固定具(34b,34b)によって他方の熱交換器本体(11b)が保持される。一方の熱交換器本体(11a)は、フィン(12)の配列方向の両側の端部が固定具(34a,34a)に挟み込まれる。他方の熱交換器本体(11b)は、フィン(12)の配列方向の両側の端部が固定具(34b,34b)に挟み込まれる。
保持用部材(31)に取り付けられた各熱交換器本体(11a,11b)は、それぞれのフィン(12)の配列方向が各アーム部(33a,33b)の長手方向と直交し、それぞれのフィン(12)の長辺(12a)が互いに向かい合う姿勢となっている。また、保持用部材(31)に取り付けられた各熱交換器本体(11a,11b)は、それぞれのフィン(12)の配列方向が水平方向となっている。
保持用部材(31)には、二つのカバー部材(37a,37b)が取り付けられている。カバー部材(37a,37b)は、側部がやや外側に傾斜した長方形のトレイ状の部材である。一方のカバー部材(37a)は、その開口部が一方の熱交換器本体(11a)側を向く姿勢で、各アーム部(33a,33b)の一端に設けられた固定具(34a,34a)に取り付けられる。このカバー部材(37a)は、熱交換器本体(11a)の回転中心軸(38)とは逆側の面を覆っている。他方のカバー部材(37b)は、その開口部が他方の熱交換器本体(11b)側を向く姿勢で、各アーム部(33a,33b)の他端に設けられた固定具(34b,34b)に取り付けられる。このカバー部材(37b)は、熱交換器本体(11b)の回転中心軸(38)とは逆側の面を覆っている。
電動機(35)は、その出力軸(36)が鉛直方向となる姿勢で、ケーシング(21)の外部に配置されている。ただし、電動機(35)の出力軸(36)は、ケーシング(21)の底板(24)の中央部を貫通して収容空間(28)に入り込んでいる。出力軸(36)の先端部は、保持用部材(31)の支持板部(32)に連結されている。この出力軸(36)は、支持板部(32)の長手方向の中央部に連結されている。出力軸(36)の中心軸は、支持板部(32)の長手方向と直交している。この出力軸(36)の中心軸は、回転部材(30)によって回転駆動される熱交換器本体(11a,11b)の回転中心軸(38)である。従って、回転中心軸(38)は、鉛直方向となっている。
保持用部材(31)に取り付けられた各熱交換器本体(11a,11b)は、それぞれのフィン(12)の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢となっている。また、回転中心軸(38)から第1の熱交換器本体(11a)までの距離L1は、回転中心軸(38)から第2の熱交換器本体(11b)までの距離L2と等しい。
液供給部材(50)は、両端が閉塞された筒状の本体部(51)と、後述するホース(56)を接続するための接続部(53)とを備えている。この液供給部材(50)は、本体部(51)の軸方向が水平方向となり且つケーシング(21)のガイド部材(40)が設けられた側板(27)と平行になる姿勢で、収容空間(28)の上部に配置されている。液供給部材(50)は、図外の部材に案内されることによって、本体部(51)の軸方向と直交する水平方向へ直線的に移動自在となっている。この液供給部材(50)は、本体部(51)が熱交換器本体(11)の上方の供給位置(図4に二点鎖線で示す位置)と、後述するガイド部材(40)の上方の待機位置(図4に実線で示す位置)との間を往復移動する。
液供給部材(50)の本体部(51)は、その長さが熱交換器本体(11)の有効長(即ち、フィン(12)の配列方向の長さ)と概ね等しい。本体部(51)の下面には、原料液を流出させるための流出口(52)が形成されている。この流出口(52)は、本体部(51)の長手方向に延びるスリット状の開口であって、本体部(51)のほぼ全長に亘って形成されている。液供給部材(50)の接続部(53)は、本体部(51)の上面から上方に突出した円筒状の部分である。この円筒部は、後述するホース(56)を本体部(51)の内部空間に連通させる。
貯留タンク(45)は、上面が開口したタンク本体(46)と、タンク本体(46)の上面を覆う蓋(47)とを備えている。貯留タンク(45)は、ケーシング(21)の下方に配置されている。ケーシング(21)の排出管部(26)は、貯留タンク(45)の蓋(47)を貫通して貯留タンク(45)の内部空間へ延びている。この貯留タンク(45)は、熱交換器本体(11)に付着しなかった原料液を回収するための回収容器を構成している。
ポンプ(55)は、その吸込口がパイプ(57)を介して貯留タンク(45)に接続され、その吐出口が可撓性のホース(56)を介して液供給部材(50)に接続されている。製造装置(20)の運転中には、このポンプ(55)が常に作動する。パイプ(57)は、貯留タンク(45)の蓋(47)を貫通して貯留タンク(45)の内部空間へ延び、その入口端部が原料液に浸かっている。ホース(56)の出口端は、液供給部材(50)の接続部(53)の上端に接続されている。
原料液は、粉末状の吸着剤と、バインダーと、アルコールからなる溶媒とを混合して得られるスラリーである。吸着剤の平均粒径は、例えば約50μmである。例えば、原料液は、100質量部の吸着剤と、30質量部のバインダーと、30質量部の水と、220質量部のアルコールとを含有している。バインダーと水は、水系樹脂を構成している。溶媒としては、エタノールを主成分とし、他の複数のアルコールを添加した工業用アルコールを用いることができる。
−吸着熱交換器の製造方法−
本実施形態の製造装置(20)を用いて行われる吸着熱交換器(10)の製造方法について説明する。
本実施形態の製造方法では、収容工程と、付着工程と、飛散工程と、乾燥工程とが順に複数回(例えば、5〜7回)ずつ繰り返し行われる。また、この製造方法では、毎回の付着工程および飛散工程と並行して回収工程が行われる。
〈収容工程〉
収容工程について、図5を参照しながら説明する。
収容工程において、作業者は、最初にケーシング(21)の扉(23)を開き(図5(a)を参照)、収容空間(28)に半製品である熱交換器本体(11a,11b)を収容する(図5(b)を参照)。つまり、作業者は、第1の熱交換器本体(11a)を、保持用部材(31)の固定具(34a,34a)に上方から差し込む。固定具(34a,34a)への熱交換器本体(11a)の取り付けが完了すると、保持用部材(31)が電動機(35)によって駆動されて180°回転する(図5(c)を参照)。続いて、作業者は、第2の熱交換器本体(11a)を保持用部材(31)の固定具(34b,34b)に上方から差し込み、その後に扉(23)を閉じる。
この収容工程において、液供給部材(50)は、常に待機位置に位置する。また、収容工程中には、ポンプ(55)が常に作動する。このため、収容工程中には、貯留タンク(45)の原料液がポンプ(55)によって液供給部材(50)へ供給され続け、液供給部材(50)の流出口(52)から原料液が流出し続ける。液供給部材(50)の流出口(52)から流出した原料液は、ガイド部材(40)の横樋部(42)の上に流れ落ち、その縦樋部(41)に案内されて底板(24)の排出口(25)へ導かれ、排出管部(26)を通って貯留タンク(45)へ戻る。
〈付着工程と回収工程〉
収容工程が終了すると、付着工程が行われる。付着工程について、図6を参照しながら説明する。
付着工程が開始すると、液供給部材(50)が待機位置から供給位置へと移動する(図6(a)を参照)。上述したように、製造装置(20)の運転中は、ポンプ(55)が常に作動し、液供給部材(50)の流出口(52)から原料液が常に流出する。このため、液供給部材(50)が供給位置に到達すると、その下方に位置する第1の熱交換器本体(11a)に対して原料液が上方から降り注ぐ。液供給部材(50)から流出した原料液は、その一部が第1の熱交換器本体(11a)の表面に付着し、残りは底板(24)の上へ流れ落ちる。
底板(24)の上に流れ落ちた原料液は、排出口(25)へ向かって流れ、その後に排出管部(26)を通って貯留タンク(45)へ戻る。その際、加振器(29)が作動しているため、底板(24)は振動している。このため、底板(24)上における原料液の流動が促進され、原料液が排出口(25)へ向かって流れ易くなる。このように、製造装置(20)では、第1の熱交換器本体(11a)に付着しなかった原料液を貯留タンク(45)に回収する回収工程が、付着工程と並行して行われる。
液供給部材(50)は、例えば20秒間に亘って供給位置に留まり、その後に待機位置へ戻る(図6(b)を参照)。その後、保持用部材(31)が電動機(35)によって駆動されて180°回転し、第1の熱交換器本体(11a)と第2の熱交換器本体(11b)の位置が入れ替わる。
続いて、液供給部材(50)が再び待機位置から供給位置へと移動する(図6(c)を参照)。液供給部材(50)が供給位置に到達すると、その下方に位置する第2の熱交換器本体(11b)に対して原料液が上方から降り注ぐ。液供給部材(50)から流出した原料液は、その一部が第2の熱交換器本体(11b)の表面に付着し、残りは底板(24)の上へ流れ落ちる。
底板(24)の上に流れ落ちた原料液は、排出口(25)へ向かって流れ、その後に排出管部(26)を通って貯留タンク(45)へ戻る。その際、加振器(29)が作動しているため、底板(24)は振動している。このため、底板(24)上における原料液の流動が促進され、原料液が排出口(25)へ向かって流れ易くなる。このように、製造装置(20)では、第2の熱交換器本体(11b)に付着しなかった原料液を貯留タンク(45)に回収する回収工程が、付着工程と並行して行われる。
液供給部材(50)は、例えば20秒間に亘って供給位置に留まり、その後に待機位置へ戻る(図6(d)を参照)。この時点において、付着工程が終了する。
上述したように、付着工程中においても、ポンプ(55)は常に作動し、液供給部材(50)から原料液が流出し続ける。そして、待機位置に位置する液供給部材(50)から流出した原料液は、収容工程中と同様に、ガイド部材(40)に案内されて排出口(25)へ向かって流れ、排出管部(26)を通って貯留タンク(45)へ戻る。
〈飛散工程と回収工程〉
付着工程が終了すると、飛散工程が行われる。
図7(a)に示すように、飛散工程では、電動機(35)によって保持用部材(31)が回転駆動され、保持用部材(31)に取り付けられた熱交換器本体(11a,11b)が回転中心軸(38)周りに回転する。その際、電動機(35)は、例えば毎分350回転程度の比較的高速で回転する。また、電動機(35)は、例えば10秒間に亘って回転する。
熱交換器本体(11a,11b)が回転すると、熱交換器本体(11a,11b)に付着している原料液に遠心力が作用し、余剰の原料液が熱交換器本体(11a,11b)から外方へ向かって飛散する。熱交換器本体(11a,11b)から飛散した原料液は、カバー部材(37a,37b)に衝突する。カバー部材(37a,37b)に衝突した原料液は、下方へ流れ落ちる。カバー部材(37a,37b)から底板(24)の上に流れ落ちた原料液は、排出口(25)へ向かって流れ、その後に排出管部(26)を通って貯留タンク(45)へ戻る。その際、加振器(29)が作動しているため、底板(24)は振動している。このため、底板(24)上における原料液の流動が促進され、原料液が排出口(25)へ向かって流れ易くなる。このように、製造装置(20)では、熱交換器本体(11a,11b)から飛散した原料液を貯留タンク(45)に回収する回収工程が、飛散工程と並行して行われる。
〈乾燥工程〉
飛散工程が終了すると、乾燥工程が行われる。乾燥工程について、図7及び図8を参照しながら説明する。
乾燥工程において、作業者は、ケーシング(21)の扉(23)を開き、一方の熱交換器本体(11a)を収容空間(28)から取り出す(図7(b)を参照)。熱交換器本体(11a)の取出しが完了すると、保持用部材(31)が電動機(35)によって駆動されて180°回転する(図7(c)を参照)。その後、作業者は、残りの熱交換器本体(11b)を収容空間(28)から取り出す(図7(d)を参照)。
続いて、作業者は、収容空間(28)から取り出した熱交換器本体(11a,11b)を、図外の乾燥装置に収容する。図8に示すように、乾燥装置は、熱交換器本体(11a,11b)に温風を吹き付けることによって、熱交換器本体(11a,11b)を乾燥させる。つまり、熱交換器本体(11a,11b)に温風が吹き付けられると、熱交換器本体(11a,11b)の表面に付着した原料液中の溶媒(アルコール)が蒸発し、熱交換器本体(11a,11b)の表面に吸着層(16)が形成される。
〈二回目以降の収容工程と飛散工程〉
上述したように、本実施形態の製造方法では、収容工程と、付着工程と、飛散工程と、乾燥工程とが順に複数回ずつ繰り返し行われる。そして、二回目以降の収容工程において、作業者は、乾燥工程を経た熱交換器本体(11)を、前回の収容工程とは逆向きの姿勢で保持用部材(31)に取り付ける。
例えば、前回の収容工程において、熱交換器本体(11)は、フィン(12)の一方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で保持用部材(31)に取り付けられていたとする。この場合、今回の収容工程において、作業者は、熱交換器本体(11)のフィン(12)の他方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で、熱交換器本体(11)を保持用部材(31)に取り付ける。そして、二回目以降の飛散工程では、このような姿勢で保持用部材(31)に取り付けられた熱交換器本体(11)が、回転中心軸(38)周りに回転する。
ここで、飛散工程において熱交換器本体(11)が回転すると、フィン(12)に付着した原料液は、遠心力によって外側(即ち、回転中心軸(38)とは逆側)へ向かって流れる。このため、飛散工程の終了時の各フィン(12)では、回転中心軸(38)とは逆側寄りの部分に付着した原料液の量が、回転中心軸(38)寄りの部分に付着した原料液の量よりも多くなる。従って、毎回の飛散工程においてフィン(12)の一方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で熱交換器本体(11)を回転させると、フィン(12)の一方の長辺(12a)寄りの部分に形成された吸着層(16)に比べて、他方の長辺(12a)よりの部分に形成された吸着層(16)の方が厚くなる。
これに対し、本実施形態の製造方法では、二回目以降の収容工程において、熱交換器本体(11)が前回の収容工程とは逆向きの姿勢で保持用部材(31)に取り付けられ、続く飛散工程において、この姿勢で保持用部材(31)に取り付けられた熱交換器本体(11)が回転する。例えば、前回の飛散工程においてフィン(12)の一方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で熱交換器本体(11)が回転した場合、今回の飛散工程では、フィン(12)の他方の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢で熱交換器本体(11)が回転する。
その結果、今回の飛散工程の終了時において、熱交換器本体(11)の各フィン(12)では、前回の乾燥工程の終了時における吸着層(16)の厚さが比較的薄かった部分に、比較的多くの原料液が残存することになる。そして、このように各回の飛散工程において熱交換器本体(11)の姿勢を入れ替えれば、完成品である吸着熱交換器(10)のフィン(12)の各部における吸着層(16)の厚さが均一化する。
−実施形態の効果−
本実施形態の製造方法および製造装置(20)では、ケーシング(21)に囲われた収容空間(28)において、熱交換器本体(11)に原料液を掛ける付着工程と、熱交換器本体(11)を回転させて余剰の原料液を飛散させる飛散工程とが行われる。そして、付着工程および飛散工程の実行中に回収工程が行われ、付着工程および飛散工程において熱交換器本体(11)に付着しなかった原料液が、ケーシング(21)の外部の空気に触れずに貯留タンク(45)へ流入する。このため、原料液が熱交換器本体(11)に掛けられてから貯留タンク(45)へ流れ込むまでの間における溶媒の蒸発量を削減でき、この間における原料液の性状の変化を抑えることができる。
更に、本実施形態の製造方法および製造装置(20)では、熱交換器本体(11)に掛けられた後に貯留タンク(45)に回収された原料液が、再び付着工程において熱交換器本体(11)に掛けられる。従って、本実施形態によれば、貯留タンク(45)に回収された原料液を再び吸着熱交換器(10)を製造するために利用することができ、廃棄される原料液の量を例えば20%以下にまで削減して吸着熱交換器(10)の製造コストを低減することができる。
また、本実施形態の製造方法および製造装置(20)では、フィン(12)の配列方向が水平方向となる姿勢で設置された熱交換器本体(11)に対して、原料液が上方から掛けられる。従って、本実施形態によれば、熱交換器本体(11)に原料液を上方から掛けるだけで、各フィン(12)の表面に原料液を確実に付着させることができ、不良品の発生率を低減することができる。
また、本実施形態の製造方法および製造装置(20)では、液供給部材(50)から原料液を常に流出させている。このため、原料液は、常に流動して掻き混ぜられた状態となり、その性状が一定に保たれる。従って、本実施形態によれば、一定の性状の原料液を熱交換器本体(11)へ安定して供給することが可能となり、吸着熱交換器(10)の品質を安定させることができる。
また、本実施形態の製造方法および製造装置(20)において、待機位置に存在する液供給部材(50)から流出した原料液は、ケーシング(21)の外部の空気に触れることなく貯留タンク(45)へ流れ込む。つまり、待機位置に存在する液供給部材(50)から流出した原料液は、粘度等の性状を保ったまま貯留タンク(45)へ回収される。従って、液供給部材(50)から原料液を常に流出させる場合でも、熱交換器本体(11)に付着せずに無駄になる原料液の量を低く抑えることができる。
また、本実施形態の製造方法の飛散工程では、フィン(12)の配列方向が水平方向となり且つフィン(12)の長辺(12a)が回転中心軸(38)側を向く姿勢の熱交換器本体(11)が、鉛直方向の回転中心軸(38)周りに回転する。従って、本実施形態によれば、熱交換器本体(11)を回転させることによって、熱交換器本体(11)のフィン(12)に付着した余剰の原料液を、熱交換器本体(11)から確実に取り除くことができる。
また、本実施形態の製造方法では、二回目以降の収容工程において、熱交換器本体(11)が前回の収容工程とは逆向きの姿勢で保持用部材(31)に取り付けられ、続く飛散工程において、この姿勢で保持用部材(31)に取り付けられた熱交換器本体(11)が回転する。このため、本実施形態によれば、完成品である吸着熱交換器(10)のフィン(12)の各部における吸着層(16)の厚さを均一化でき、吸着熱交換器(10)の品質を向上させることができる。
また、本実施形態の製造方法および製造装置(20)によれば、ケーシング(21)の底板(24)を振動させることによって、底板(24)の上の原料液を確実に貯留タンク(45)へ向かって流すことができる。従って、本実施形態によれば、貯留タンク(45)へ回収される原料液の量を増やすことができ、熱交換器本体(11)に付着せずに無駄になる原料液の量を一層低く抑えることができる。