JP2014125728A - 壁体の構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】防波堤、防潮堤などコンクリート構造物において、部材の厚さを薄くすることができ、大幅なコンクリート量の削減を図ることができる壁体を提供する。
【解決手段】壁体は、平面壁1とアーチ壁2とによって構成される。平面壁1は、基礎の上に立てた2本の支柱31と、その間に設置した平板11とによって構成し、アーチ壁2は、基礎の上に立てた2本の支柱32と、その間に設置したアーチ板21とによって構成し、平面壁1の平板11と、アーチ壁2のアーチ板21とは、アーチ板21の凸部において、平板11に作用した外力を、アーチ板21に伝達できる。
【選択図】図1

Description

本発明は壁体の構造に関するものである。
以下、発明の説明を容易にするために防潮堤を実施例として目的、構成、効果を説明するが、本発明の構造は防潮堤に限定するものではなく、陸上の法面の崩壊の防止など広い範囲で利用できるものである。
近年の地震、特に東日本大震災による津波の被害から、想定する津波の規模が劇的に大型化した。
そのために従来の防潮堤の構造を単に大型にしたものではなく、その延長上にはない、基本的に異なる構造の防潮堤の開発が求められている。
特開2006−233463号公報
しかし上記した特許文献1、および図8に見られるように従来の防波堤、防潮堤aは波の力に対してコンクリートの重量によって抵抗する構造物であった。(特許文献1の[0002]、図7などの記載)そのために以下のような問題があった。
<1> 要求された耐力を確保するためには、躯体の断面を大きくとる必要がある。
<2> しかし防潮堤は弱点を残さないために非常に長い延長にわたって連続して構築しなければならないから、わずかな断面の増加でも膨大なコンクリート量が必要となり不経済なものとなる。
上記のような課題を解決する本発明の壁体の構造は、平面壁とアーチ壁とによって構成し、平面壁は、基礎の上に立てた2本の支柱と、その間に設置した平板とによって構成し、アーチ壁は、基礎の上に立てた2本の支柱と、その間に設置したアーチ板とによって構成し、平面壁の平板と、アーチ壁のアーチ板とは、アーチ板の凸部において、平板に作用した外力を、アーチ板に伝達できるように構成したことを特徴とするものである。
また上記の壁体の構造において、支柱も平板もアーチ板も、水平方向に複数に分割してあることを特徴とするものである。
また上記の壁体の構造において、平面壁の支柱と、アーチ壁の支柱が、少なくともその一部において一体のコンクリート製品であることを特徴とするものである。
また上記の壁体の構造において、平面壁とアーチ壁の接触部には、鉛直方向の接続ブロックを介在させて、両者が鉛直の面接触となるよう構成したことを特徴とするものである。
また上記の壁体の構造において、アーチ板は最凸部において縦方向に分割した2枚の板で構成し、分割部ではヒンジ構造で接続したことを特徴とするものである。
また上記の壁体の構造において、平板とアーチ板との接触部は、接続ブロックを貫通した水平方向のボルトで締結したことを特徴とするものである。
また上記の壁体の構造において、支柱、平板、アーチ板はプレキャストコンクリートで構成したことを特徴とするものである。
また上記の壁体の構造において、分割した支柱は、鉛直方向の鋼材を介してプレストレスを導入したことを特徴とするものである。
また上記の壁体の構造において、平板の厚さは、下方では厚く、上方では薄く構成したことを特徴とするものである。
本発明の壁体の構造は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 津波や土砂の崩壊などの外力を、平板とアーチ板とで受けることによって部材の厚さを薄くすることができ、大幅なコンクリート量の削減を図ることができる。
<2> その理由は、平板に作用する外力をアーチで受けることにより、平板に対して支配的な曲げモーメントを低減し、アーチ板を介して軸力を支柱に伝達できるからである。
<3> したがって津波に対する防潮堤だけでなく、地山の崩壊を防止する擁壁など陸上での施設にも利用することができる。
本発明の壁体の構造の実施例の全体の説明図。 壁体の構造の実施例の一部の説明図。 平板の実施例の断面図。 支柱の実施例の分解説明図。 支柱の他の実施例の分解説明図。 アーチ板と平板の接合部の説明図。 アーチ板を分割した実施例の説明図。 従来の防波堤の一例の説明図。
以下図面を参照にしながら本発明の壁体の構造の好適な実施の形態を詳細に説明する。
<1>全体の構成
本発明の壁体の構造は、外力の方向に直交する方向に立設した平面壁1と、その後方に位置させたアーチ壁2とによって構成する。
なお本明細書では、津波などの外力の来る方向を「前方」、その反対側を「後方」と称して説明する。
<2>平面壁
平面壁1は、基礎の上に立てた2本の平板用支柱31と、その間に設置した平板11とによって構成する。
平板11は、コンクリート製の矩形の板体である。
平板11は、単なる密実の矩形のコンクリート板以外に、内部に中空の空洞を形成したものを採用できる。
あるいはその一面に、支柱の縦溝34への挿入部分を残して、長手方向のリブを突設したものを採用することもできる。(図3)
平板11を、後述する平板用支柱31の縦溝34の内部に挿入して両者を一体化する。
想定している平面壁1の高さは、例えば十数メートルであるから、平板11は水平方向に分割したものを使用する。
平板11の厚さは、支柱間に設置した場合に、下方で使用する平板11の厚さは厚く、上方で使用する平板11の厚さは薄く構成することもできる。
<3>アーチ壁
アーチ壁2は、基礎の上に立てた2本のアーチ板用支柱32と、その間に設置したアーチ板21とによって構成する。
アーチ板21は、コンクリート製の曲線状の板体である。
アーチ板21も、アーチ板用支柱32の縦溝34の内部に挿入して両者を一体化する。
そしてアーチ板21も、水平方向に複数に分割したものを使用する。
アーチ板21の厚さも、アーチ板用支柱32間に設置した場合に、下方で使用する平板11の厚さは厚く、上方で使用する平板11の厚さは薄く構成することもできる。
<4>アーチ板の鉛直分割
アーチ板21は曲線状の板体であるが、最も突出した凸部において縦方向に分割した2枚の板で構成することもできる。
その際に分割部ではヒンジ構造で接続して両分割片の一体化を図る。(図6)
<5>支柱
支柱3は基礎の上に直立、あるいは傾斜して設置するコンクリート製の長尺の柱体である。
ただし1本の柱としてではなく、水平面で複数段に分割した支柱ブロック33として構成する。
すなわち、多数の支柱ブロック33を鉛直方向に積み重ねたものが支柱3を構成する。
さらに前記の平板用支柱31とアーチ板用支柱32とは一体で構成する。 そのために支柱3を構成する各支柱ブロック33は、平面的に見た場合にその機能が前後で分かれており、前方が平板用支柱31として、後方がアーチ板用支柱32として機能する。
さらに支柱ブロック33の側面には縦溝34を形成する。
平板11を受ける平板用支柱31の側面には、平板11を挿入する縦溝34を凹設する
アーチ板21を受けるアーチ板用支柱32の側面には、アーチ板21を挿入する縦溝34を凹設する。
アーチ板21を挿入する縦溝34の後方の壁面は、前方に向けて傾斜する斜面として形成して、アーチ板21の端部を受け止めやすく構成することもできる。
<6>上方の支柱ブロック
前記の実施例では平面壁1の支柱とアーチ壁2の支柱3を一体のコンクリート製品として構成するものであった。
しかし平面壁1の上方には、その下方ほど大きな外力が作用しないと考えられる。
そこで平面壁1の上方には、その後方にアーチ壁2を設けない構造を採用することも可能である。
その場合には支柱ブロック33の後方のアーチ板用支柱32は不要となり、上方に設置する支柱ブロック33は、平板用支柱31だけで構成することもできる。
すると、支柱ブロック33を積み上げた後の支柱は、前方は高く、後方は低い支柱として形成することになる。
<7>両者の接触部
平面壁1の平板11と、アーチ壁2のアーチ板21とは、アーチ板21の凸部において、平板11に作用した外力を、アーチ板21に伝達できるように構成する。
その場合に直線と曲線とでは平面的に点接触になり、平板11に作用した力がアーチ板21の点に集中する。
そこで平板11とアーチ板21の接触部には、鉛直方向の接続ブロック4を介在させて、両者が鉛直の面接触となるよう構成することもできる。(図5)
この接続ブロック4は、両者の組み立てが完了した後に、現場打ちのコンクリートで製造すると、平面板とアーチ板21とを、広い面で接触させることができる。
さらに平板11とアーチ板21との接触部は、接続ブロック4をも貫通した水平方向のボルト41で締結することもできる。
<8>プレキャスト製
支柱3、平板11、アーチ板21のような部材は、一般の鉄筋コンクリートで構成することもできるが、内部にPC鋼線を配置して緊張して工場生産したプレキャストコンクリートで構成することもできる。
さらにすべての部材を高強度コンクリートで構成することができる。
するとプレキャストコンクリートや高強度コンクリートの利点を利用することができる。
<9>構築方法
次に上記の部材を使用した、壁体の構築方法について説明する。
<10>基礎の構築
まず支柱3を設置するための基礎5を構築する。
この基礎5は水中に構築する場合も、陸上に構築する場合もあるが、基礎5は鋼管杭51などによって支持する。
<11>支柱の設置
基礎5の上に支柱ブロック33を積み重ねて支柱3を設置する。
壁面を斜面の安定化に使用する場合などは、支柱3を山側に傾けて設置することも考えられる。
分割した支柱ブロック33を積み上げるだけでは強度は出ないから、鉛直方向の鋼材を介してプレストレスを導入して、支柱3として一体化する。
前記したように、壁体の高い位置では外力が小さくなるから、アーチ壁2を省略することもできる。
その場合には、平板用支柱31だけで構成した支柱ブロック33のみを、アーチ受け支柱部を備えた支柱ブロック33よりも高く積み重ねることになる。
<12>平板、アーチ板の挿入
支柱ブロック33の縦溝34内へ平板11とアーチ板21の両端部を挿入する。
この作業は、支柱ブロック33を1段積み上げるごとに行うと作業は容易である。
その結果、アーチ板21の前方へ向けた凸部と、平板11の後方の面が接近して位置することになる。
<13>接続ブロックの設置
アーチ板21と平板11との間に、一定の幅で型枠を設置してコンクリートを打設する。するとアーチ板21と平板11とを、接続ブロック4を介して接触させることができる。
<14>止水
縦溝34と平板11やアーチ板21との両端の隙間に無収縮モルタルを充填して止水を行う。
平板11やアーチ板21の水平の重ね部分にも同様の処理を施すこともできる。
<15>壁体の完成
上記の作業によって、前方には外力側に向けてほぼ直交する平板11を配置し、その後方にはアーチ板21を配置して平板11に作用する支配的な曲げモーメントを低減できる、経済的な壁体が完成する。
1:平面壁
11:平板
2:アーチ壁
21:アーチ板
3:支柱
31:平板用支柱
32:アーチ板用支柱
33:支柱ブロック
34:縦溝
4:接続ブロック

Claims (9)

  1. 平面壁とアーチ壁とによって構成し、
    平面壁は、基礎の上に立てた2本の支柱と、その間に設置した平板とによって構成し、
    アーチ壁は、基礎の上に立てた2本の支柱と、その間に設置したアーチ板とによって構成し、
    平面壁の平板と、アーチ壁のアーチ板とは、アーチ板の凸部において、
    平板に作用した外力をアーチ板に伝達できるように構成したことを特徴とする壁体の構造。
  2. 請求項1記載の壁体の構造において、
    支柱も平板もアーチ板も、
    水平方向に複数に分割してあることを特徴とする壁体の構造。
  3. 請求項1記載の壁体の構造において、
    支柱を、水平面で分割した支柱ブロックの積み上げで構成し、
    支柱ブロックの平板受け支柱部と、アーチ板受け支柱部とが、
    一体のコンクリート製品であることを特徴とする壁体の構造。
  4. 請求項1記載の壁体の構造において、
    平面壁とアーチ壁の接触部には、鉛直方向の接続ブロックを介在させ、
    両者が鉛直の面接触となるよう構成したことを特徴とする壁体の構造。
  5. 請求項1記載の壁体の構造において、
    アーチ板は最凸部において縦方向に分割した2枚の板で構成し、
    分割部ではヒンジ構造で接続したことを特徴とする壁体の構造。
  6. 請求項1記載の壁体の構造において、
    平板とアーチ板との接触部は、
    接続ブロックを貫通した水平方向のボルトで締結したことを特徴とする壁体の構造。
  7. 請求項1記載の壁体の構造において、
    支柱、平板、アーチ板はプレキャストコンクリートで構成したことを特徴とする壁体の構造。
  8. 請求項1記載の壁体の構造において、
    分割した支柱は、鉛直方向の鋼材を介してプレストレスを導入したことを特徴とする壁体の構造。
  9. 請求項1記載の壁体の構造において、
    各平板の厚さは、下方に設置する平板では厚く、上方に設置する平板では薄く構成したことを特徴とする壁体の構造。
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