JP2014117630A - 湿式排煙脱硫装置と方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】品質の良くない石灰石スラリを効果的に排煙脱硫設備で利用し、磨耗を促進するシリカ濃度の高い粗大粒子を除去しつつ、連続的に混合状態の石灰石スラリを脱硫吸収塔へ供給する湿式排煙脱硫方法を提供すること。
【解決手段】粉砕した石灰石と水の混合物である石灰石スラリを、垂直方向に長い形状としたスラリタンク41に上部から供給し、タンク41の下方であって、底面に接さない位置に設置したノズル42から流体(排ガス、空気又はスラリタンク41内の中間部から抜き出したスラリ)を低流速でタンク41内に供給する。ノズル42よりも下方に沈降した粒子を底部から排出除去し、ノズル42よりも上方で混合状態となっているスラリを抜き出して脱硫吸収塔2へ連続供給することによりシリカなどの不純分が少ない石灰石スラリを用いて脱硫反応を行うことができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、火力発電ボイラの排ガス処理装置に関し、特に湿式排煙脱硫設備と該湿式排煙脱硫設備における脱硫剤スラリの供給方法に関するものである。
火力発電ボイラで燃焼される石炭は、硫黄分を含んでいることから、その燃焼排ガス中には硫黄酸化物(主にSO)が含まれる。SOは強い酸性であるため、煙突から大気へ排出される前に排煙脱硫装置によって除去する必要がある。排煙脱硫装置には各種の方法があるが、石灰石−石膏法湿式排煙脱硫方法はSO除去効率が最も高い方法の一つであり、副生物である石膏をセメント材料等として有効利用することもできる優れた技術である。従来の石灰石−石膏法湿式排煙脱硫設備について、構成を図6に模式的に示して説明する。
図示していないボイラから排出される数百〜数千ppmのSOを含むボイラ排ガス1は、脱硫吸収塔2に導入され、塔内を上昇する。これに対して、脱硫吸収液循環ポンプ3によって循環ライン4で送られる石灰石(主成分:炭酸カルシウム(CaCO))のスラリが吸収液としてスプレノズル5、6、7から噴射され、細かな液滴となる。この液滴状の吸収液が排ガスと気液接触することによってSOを吸収し、下式のように亜硫酸カルシウム(CaSO)が生成し、排ガス中からSOが効率良く除去される。
CaCO+SO+1/2HO→CaSO・1/2HO+CO
脱硫吸収塔2内を落下した吸収液は循環タンク8に溜まる。循環タンク8内の吸収液は常に攪拌機9によって攪拌されており、空気供給ライン10から供給される空気に含まれる酸素によって、下式のように亜硫酸カルシウムが酸化され、硫酸カルシウム(CaSO:石膏)を生成する。
CaSO・1/2HO+1/2O+3/2HO→CaSO・2H
亜硫酸カルシウムが酸化され、吸収液中から減少することにより、新たなSO吸収が可能となることから、酸化速度が大きい方が脱硫効率は向上する。亜硫酸の酸化効率はpHが低い方が良い。一方、吸収液はSOを吸収するとpHが低下してSO吸収性が低下するが、pHが高い、すなわちアルカリであるCaCO濃度が高い方がSOの吸収効率は良くなる。このため、SO吸収と亜硫酸酸化を両立させるべく、吸収液のpHが5〜6の範囲となるように、石灰石スラリ供給ラインから新たな石灰石スラリを供給する。
石灰石スラリは、ミルで粉砕した石灰石の微粉と水を混合して調整する。図6に示した従来技術では、石灰石供給ライン12から粗く破砕した石灰石を、水供給ライン13から水を湿式ミル14にそれぞれ供給して粉砕し、生じた石灰石スラリを湿式サイクロン15に送る。湿式サイクロン15では、旋回によって所定のサイズ以上の粒子をアンダーフロー側に、それ以下のサイズの粒子をオーバーフロー側に分離することができる。
こうして、湿式サイクロン15のアンダーフロー16には粗粒の石灰石が含まれるため、これを返送ライン17によって湿式ミル14に戻し、さらに粉砕する。主に細粒の石灰石を含むオーバーフロー18は脱硫用の石灰石スラリとしてスラリ貯槽19に送られる。スラリ貯槽19の内部のスラリは、石灰石粒子が沈殿するのを防ぐため攪拌機20によって常に攪拌されており、懸濁状態のスラリはスラリポンプ21によってスラリ供給ライン11から脱硫吸収塔2の循環タンク8へ供給される。このときの石灰石スラリの濃度は、通常20〜40wt%である。スラリ貯槽19のサイズは、石灰石の粉砕系・運搬系にトラブルが発生した際も、脱硫吸収塔2に対して数時間は石灰石スラリを供給し続けられるスラリ量を貯留できるように設定されている。排ガス量や排ガス中のSO濃度によって異なるが、通常、循環タンク8の容量に対して概ね1/3〜1/4の容量となっている場合が多い。
石灰石スラリの調製方法は、プラントによって異なる場合がある。例えば、上記の他に以下のような方法があり、立地や他設備との関係によって選択される。
・湿式ミルで粉砕し、ハイドロサイクロンで粗粒を分離せずにスラリタンクに送る(図示しない)。
・乾式ミルで粉砕し、スラリタンクで水と混合する(図示しない)
・予め粉砕された石灰石を受け入れ、スラリタンクで水と混合する(図示しない)。
未反応の炭酸カルシウム及び生成した石膏が共存する循環タンク8内の吸収液の一部は、吸収液循環ポンプ3によって循環ライン4を経由して再びスプレノズル5、6、7に送られ、一部は抜き出しライン22から抜き出され、石膏脱水系に送られる。
石膏脱水系では、まず、ハイドロサイクロン23によって固液分離が行われる。このハイドロサイクロン23は、前述のハイドロサイクロン15が比較的弱い旋回で固形物を粒子サイズで分離していたのに対し、より強い旋回によって、微粒子をわずかに含むオーバーフロー(希薄液)24と固形分を多量に含むアンダーフロー(濃厚液)25とに分離する。オーバーフロー24は廃水タンク27に送られて溜められる。アンダーフロー25は脱水器(ベルトフィルタ)26で脱水され、固形分として石膏28を回収し、ろ液29は廃水タンク27に溜められる。廃水タンク27に溜められた廃水は、処理後に放流されたり、プラント内で再利用されたりする。プラントによっては、ハイドロサイクロンを使用せずに、抜き出し吸収液を直接脱水器26にかける場合もある。また、脱水器26としてはベルトフィルタではなく、遠心分離機等、他の方式を用いる場合もある。
スプレノズル5、6、7から噴射された吸収液のうち、液滴径の特に小さいものは排ガスに同伴されて吸収塔2の上部から排出されるが、出口ダクトに設けられたミストエリミネータ30によって捕集される。吸収塔2から排出する排ガスはその後、処理済排ガスライン31を通り、ファン32によって煙突33から大気中へ排出される。
なお、排煙脱硫技術分野で、日本国内では排煙脱硫反応に寄与しない不純物を多量に含む石灰石を用いることは無かったが、海外では地域によってはシリカを多く含む石灰石を排煙脱硫に利用しなければならない場合はある。
従来技術としては石灰石の中に含まれ石膏を分離除去する技術(特許文献1)又は石灰石の粗粒を微粒と分離すること(特許文献2)は知られているが、シリカを多く含む石灰石を石灰石スラリとして排煙脱硫技術に利用したことはなかった。
特開平6−31196号公報 特開2002−191934号公報
前述の図6に示す従来技術においては、以下のような課題がある。
例えば、新興国では、電力需要の増加に伴って環境規制の制定も徐々に進み、排煙脱硫装置の需要も高まると予想されている。沿岸部では安価な海水脱硫が採用される場合もあるが、内陸部や石膏需要のある地域では石灰石−石膏法も選択肢の一つとなる。日本の石灰石の多くはCaCO純度が99%前後と高く、不純物をほとんど含まないため、湿式排煙脱硫に好適であるのに対し、海外においてはCaCO純度が低く大量の不純物を含んだ低品質石灰石を使用する場合がある。例えば、インド西部のある地域の石灰石はCaCO純度が60%程度と低く、約20%のSiO(シリカ)、約5%のAlを不純物として含んでいる。残りの不純物は鉄、マグネシウム等である。国や地域によって、産出する石灰石のCaCO純度は異なり、不純物の種類やその含有率も変化する。不純物の種類や含有率によって脱硫に対する影響は異なる。
この中でシリカは、他の不純物と比較して含有率が高い場合が多いが、不活性であるため、脱硫、石膏生成反応そのものを阻害することはないと考えられている。しかし、石灰石中にシリカが混合している分だけ、CaCO濃度が低くなるため脱硫装置に供給する石灰石の量が増大し、石膏にもシリカが混入することになるため製品石膏の品質が低下する。また、シリカは硬度が高いためポンプインペラ、攪拌機インペラ、スプレノズル、配管等の磨耗が加速されることから、高級材料の使用や頻繁な交換が必要になるという問題がある。
このため、脱硫吸収塔に供給する前に石灰石からシリカを除去できることが望ましい。シリカは砂の主成分であり、石灰石への混入状態は、産地・鉱床によって異なる。石灰石の層とシリカの層が明確に分かれて存在する場合は、採掘の際にシリカ層を除去することが可能である。しかし、石灰石層とシリカ層が混在する場合は、採掘時に分離除去することは難しい。
また、石灰石内部にシリカが含まれる場合は、シリカは細かい粒子として分散しているため、細かく粉砕しなければ石灰石粒子とシリカ粒子を分離することができない。粉砕によって石灰石とシリカを別々の粒子に分離できたとしても、石灰石の主成分であるCaCOの密度が鉱物形態により2.7〜2.9であるのに対し、シリカの主成分であるSiOの密度は鉱物形態により2.2〜2.7と近い。このため、比重の差を利用した分離回収は困難である。
石灰石内部に含まれるシリカは、通常細かい粒子として分散しているため、細かく粉砕することにより、石灰石とシリカの粒子がある程度分離する。図5に、シリカ含有率が約20%と高い石灰石を粉砕した試料の電子顕微鏡写真と、同じ視野のX線表面分析によるCaとSiの元素分布を示す。白く表示されている部分に、対象とする元素が高濃度で存在している。篩い分け前の試料では、ほぼ全体にCaが分布しており、一部の粒子にSiが検出された。このとき、高濃度のSiを含む粒子はCa量が少ないことがわかる。この試料を篩い分けした38μm以下の微細粒子では、ほとんどの粒子はCaを含んでおり、Siを含む粒子は比較的少ない。
一方、106μm以上の粗大粒子では、Caを高濃度で含む粒子の数は減少し、Siを含む粒子の数は顕著に増加した。また、高Ca粒子と高Si粒子は明確に分かれている。すなわち、シリカ濃度が高い粒子は硬度が高い(モース硬度はシリカで7、石灰石で4)ため粉砕されにくく、粗大粒子でシリカ濃度が高くなる傾向があることが確認された。
粒子の硬度が高くサイズが大きいほど、脱硫装置における磨耗が促進されることから、粗大粒子を分離除去することにより、磨耗を軽減することができると考えられる。前述のように高Ca粒子と高Si粒子を比重の違いで分けることは難しいが、スラリを静置することによる単純な重力沈降によれば、比較的大きな粒子から先に沈降することから、ある程度分離することは可能である。しかしこの場合、粒子から成る沈殿層と、粒子をほとんど含まない上澄が明確に分かれるため、脱硫吸収塔へ所定の石灰石濃度で混合状態となったスラリを連続的に供給することができない。
本発明の課題は、上述のような従来技術の問題に対し、品質の良くない石灰石スラリを効果的に排煙脱硫設備で利用し、磨耗を促進するシリカ濃度の高い粗大粒子を除去しつつ、連続的に混合状態の石灰石スラリを脱硫吸収塔へ供給する湿式排煙脱硫装置と方法を提供することである。
上記本発明の課題は、以下の方法により達成される。
請求項1記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガス(1)を脱硫吸収塔(2)に導入し、粉砕した石灰石と水を混合して調製したスラリ状の吸収液をスプレノズル(5、6、7)から噴射し、気液接触させて排ガス中の硫黄酸化物を吸収して除去する脱硫吸収塔(2)と、落下した吸収液を溜める循環タンク(8)と、該循環タンク(8)から抜き出した吸収液を循環して前記スプレノズル(5、6、7)へ供給する吸収液循環経路(4)から構成される湿式排煙脱硫装置において、
前記循環タンク(8)に脱硫吸収液を供給する吸収液スラリ供給ライン(11)と、該吸収液スラリ供給ライン(11)に吸収液スラリを供給するスラリタンク(41)を設け、該スラリタンク(41)は、該スラリタンク(41)の下方であって底面に接さない位置に設置されて吸収液スラリ中に流体を供給するノズル(42)と、該ノズル(42)よりも下方に沈降した粗大粒子を含むスラリを抜き出す排出ライン(50)を備えたことを特徴とする湿式排煙脱硫装置である。
請求項2記載の発明は、前記スラリタンク(41)は水平断面の幅に比べて高さ方向の長さを長くした形状としたことを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置である。
請求項3記載の発明は、スラリタンク(41)の下方であって底面に接さない位置に設置して吸収液スラリ中に流体を供給するノズル(42)には、吸収液から排出される排煙処理後の排ガスおよび/または空気を導入する排ガスおよび/または空気の導入ライン(43および/または54)を接続したことを特徴とする請求項1、2に記載の湿式排煙脱硫装置である。
請求項4記載の発明は、スラリタンク(41)の下方であって底面に接さない位置に設置して吸収液スラリ中に流体を供給するノズル(42)には、該ノズル(42)よりも上方から抜き出したスラリを供給する抜き出しスラリ供給ライン(56)を接続することを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置である。
請求項5記載の発明は、前記スラリタンク(41)内の前記ノズル(42)よりも下方に沈降した粗大粒子を含むスラリを抜き出して高濃度の沈降した粗大粒子を含むスラリを固液分離する固液分離装置(51)と、該固液分離装置(51)で分離して得た液状分を、スラリタンク(41)の頂部へ供給する液状分循環ライン(52)を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の湿式排煙脱硫装置である。
請求項6記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガス(1)を脱硫吸収塔内(2)に導入し、粉砕した石灰石と水を混合して調製したスラリ状の吸収液と気液接触させて排ガス(1)中の硫黄酸化物を吸収して除去し、気液接触後の吸収液を循環タンク(8)に溜めた後、該循環タンク(8)から抜き出した吸収液を再び脱硫吸収塔(2)内に循環して排ガス(1)と気液接触させる湿式排煙脱硫方法において、
前記循環タンク(8)に脱硫吸収液を供給するために、一旦吸収液スラリを溜めるために設けたスラリタンク(41)の下方であって底面に接さない位置からスラリタンク(41)内に流体を供給し、スラリタンク(41)の前記流体を供給する位置より下方の位置に沈降した粗大粒子を含むスラリを抜き出すことを特徴とする湿式排煙脱硫方法である。
請求項7記載の発明は、前記スラリタンク(41)の下方であって底面に接さない位置からスラリタンク(41)内に供給する流体として、吸収液から排出される排煙処理後の排ガスおよび/または空気を用いることを特徴とする請求項6に記載の湿式排煙脱硫方法である。
請求項8記載の発明は、スラリタンク(41)の下方であって底面に接さない位置よりも上方から抜き出したスラリを、前記スラリタンク(41)の下方であって底面に接さない位置からスラリタンク(41)内に供給する流体として用いることを特徴とする請求項6記載の湿式排煙脱硫方法である。
請求項9記載の発明は、スラリタンク(41)の前記流体を供給する位置より下方の位置に沈降した粗大粒子を含むスラリを抜き出して高濃度の沈降した粗大粒子を含むスラリを固液分離し、固液分離して得た液状分を、スラリタンク(41)の頂部に供給する供給水として用いることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の湿式排煙脱硫方法である。
請求項1、6記載の発明によれば、スラリタンク41内では比較的微細な粒子がノズル42から供給された流体によって巻き上げられ、ノズル42よりも上方で水と混合した状態で維持される。一方、粗大粒子は巻き上げられることなくノズル42よりも下方に沈降する。シリカ含有量の高い石灰石を湿式排煙脱硫に利用する際、硬度が高く粗大な粒子にはシリカ濃度の高いものが多いことから、この沈降した粗大粒子をスラリタンク41より排出することにより、機器の摩耗を促進する硬度が高く粗大なシリカ粒子が除去される。一方、ノズル42よりも上部で均一な混合状態となっている石灰石スラリからは粗大粒子が沈降によって除かれているので、この上部スラリを抜き出して脱硫吸収塔2へ供給することにより、粗大シリカ含有率の低いスラリを所定の石灰石濃度で連続的に供給することができる。
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、粗大粒子にはシリカ濃度の高いものが多いことから、硬度が高く粗大なシリカ粒子の多くがスラリタンク41の底部から除去され、シリカ粒子の多くを除去した石灰石スラリを脱硫吸収塔2に供給可能となり、脱硫吸収塔2内の各種機器(例えば、ポンプインペラ、攪拌機インペラ、スプレノズル、配管塔の機器)の摩耗を1/3以下に軽減することができ、機器のメンテナンスや交換にかかるコストを従来よりも低減できる。
請求項3、7記載の発明によれば、請求項1、2、6記載の発明の効果に加え、スラリタンク41の下部に排ガス抜き出しライン43から供給する流体として燃焼装置から排出される排ガスを使用することにより、排ガスに含まれるCOが吸収液に溶解して炭酸が生じ、pHが低下するため、CaCOの溶解量が増加し、脱硫効率が向上する。また、スラリタンク41の下部に供給する流体としてガス取り込みライン54からの空気を使用することにより、空気に含まれるOが吸収液に溶解して溶存O濃度が高くなり、高O濃度となった吸収液スラリが吸収液スラリ供給ライン11を介して循環タンク8に供給されるため、循環タンク8内での亜硫酸カルシウムの酸化が促進され、脱硫効率が向上する。
さらに、スラリタンク41の下部に供給する流体として空気を使用する場合には、燃焼装置から排出される排ガスを使用する場合に使用する排ガス抜き出しライン43を設置する必要がないため、設備構成をシンプルにすることができる。
請求項4、8記載の発明によれば、請求項1、6記載の発明の効果に加え、スラリタンク41内に供給する石灰石スラリとして抜き出しスラリ供給ライン56からスラリタンク41に繰り返し循環供給することにより、粗大シリカ粒子が確実にスラリタンク41の下部に沈降し、純度の高い石灰石スラリを脱硫吸収塔2に供給することが可能であり、脱硫効率が向上する。
請求項5、9記載に発明によれば、請求項1ないし4、6ないし8のいずれかに記載の発明の効果に加え、スラリタンク41の下部に沈降した粗大粒子を含むスラリを固液分離することにより得た液状分を供給水として再度スラリタンク41の頂部から供給することにより水の使用量を減らすことが可能であり、また、固液分離により得た液状分には炭酸カルシウムが含有されているので、石灰石の使用量をも削減することが可能である。
本発明による石灰石−石膏法湿式排煙脱硫装置の実施例を示すフロー図である。 本発明による石灰石スラリ中の粒子のサイズ分布の変化を示すグラフである。 本発明による石灰石−石膏法湿式排煙脱硫装置の他の実施例を示すフロー図である。 本発明による石灰石−石膏法湿式排煙脱硫装置のさらに他の実施例を示すフロー図である。 シリカ含有率が約20%の石灰石を粉砕した試料の電子顕微鏡写真と、同じ視野のX線表面分析によるCaとSiの元素分布を示す。 従来技術による石灰石−石膏法湿式排煙脱硫装置を示すフロー図である。
本発明の実施例を、図1を用いて説明する。ただし、脱硫吸収塔本体および石膏脱水系については、従来技術と同様のため説明を省略する。
石灰石の調製方法としては、従来技術として示した図6と同様に、湿式ミル14およびハイドロサイクロン15を使用した構成としているが、乾式ミルを使用しハイドロサイクロンを使用せずに水と混合する場合、あるいは予め粉砕された石灰石を受け入れて水と混合する場合にも適用可能である。
本実施例において、脱硫用の石灰石スラリ18は、高さ方向に細長い形状としたスラリタンク41に上部から供給されて貯留される。スラリタンク41の下部には、底面に接しない位置に流体供給ノズル42が設置されている。脱硫吸収塔2の出口の排ガスライン31から分岐した排ガス抜き出しライン43、ポンプ44によって、排ガスの一部が流体供給ノズル42からスラリタンク41内へ供給される。
流体供給ノズル42は、通常、水平方向に分岐した複数の管に複数の噴出孔を開けたものであり、スラリタンク41内の水平断面に対して均一に排ガスなどを供給することができるようになっている。一時的に流体供給を停止した時などに噴出口からノズル管内に石灰石スラリが流入し、石灰石粒子が管内に沈殿して蓄積するのを防ぐため、噴出口は管の下面に開口しているのが望ましい。
スラリタンク41内の石灰石スラリの体積に対して、排ガスの供給量を所定の範囲に設定することにより、比較的微細な石灰石粒子は沈降することなく常に巻き上げられた状態となり、流体供給ノズル42よりも上方は、全体で水と石灰石粒子が均一に混合した濃度分布のない状態で維持される。これを混合部45と呼ぶ。
一方、粗大粒子は巻き上げられることなく流体供給ノズル42よりも下方に沈降し、底部に沈殿部46を形成する。このときの流体供給ノズル42を設置する位置およびガス供給量については、事前の実験によって最適化を図った。
その結果、スラリタンク41内の石灰石スラリの液深に対し、底面から3〜5%の高さに流体供給ノズル42を設置し、石灰石スラリ1mに対し、排ガスなどのガス供給量を0.3〜0.7m/min程度とすることにより、石灰石スラリに含まれる100μm以上の粗大粒子を、効果的に沈殿として分離することが可能となった。
また、排ガスなどのガス供給量が0.7m/minよりも多いと、粒径に関わらずほぼ全ての粒子が巻き上げられて完全な混合状態となる。また排ガスなどのガス供給量が0.3m/minよりも少ないと沈殿する粒子が増加してしまい、混合部45の石灰石濃度が大きく低下してしまう。
図2に、本実施例による粒子サイズ分離前と分離後の沈殿部と混合部の粒径分布測定結果を示す。図5に示したように、100μm以上の粗大粒子は硬度の高いSiを高濃度で含む場合が多いため、機器磨耗の原因となる。粒径分布測定の結果、100μm以上の粗大粒子の体積割合は、分離前には全体の7%程度であったのに対し、分離後の沈殿部では20%程度に増加しており、粗大粒子が沈殿部に濃縮されていることが確認できる。
一方、混合部では、100μm以上の粗大粒子の体積割合は2%程度に低下しており、粗大粒子の多くが除去されていることが確認できる。分離前の粗大粒子割合7%と比較すると、粗大粒子が量は1/3以下にまで減少しているということである。
このように、この混合部45からスラリ供給ライン11を経由して、ポンプ21によって脱硫吸収塔2へスラリを供給することにより、従来技術に比べて高硬度シリカ濃度の高い粗大粒子の割合が1/3以下と低いスラリを、所定の石灰石濃度で連続的に供給することができる。
この結果、スラリが接触する機器の摩耗量が、従来の1/3以下に低減され、材料のグレードダウンやメンテナンス、部品交換費用の低減が可能となる。なお、流体供給ノズル42から供給されてスラリタンク41内を攪拌しながら上昇したガスは、タンク上部の排気ライン48から排出される。スラリタンク41の底面は傾斜して、ホッパ状となっており、沈殿部46の粗大粒子を多く含む高濃度スラリは、バルブ49を介して排出ライン50から排出し、脱水器51において微粒子を含む液と粗大粒子に分離される。
本実施例では、脱水器51として簡便なスクリーンを用いているが、固液分離が可能であれば他の形式でも構わない。分離された液は循環ライン52により水供給ライン13を通って湿式ミル14へ送られ、供給水として利用される。このように、固液分離された液は循環ライン52を経由して再度スラリタンク41に供給されることにより水の使用量を減らすことが可能であり、また、固液分離により得た液状分には炭酸カルシウムが含有されているので、石灰石の使用量をも削減することが可能である。なお、粗大粒子は廃棄ライン53から抜き出して廃棄される。
スラリタンク41の容量は、図6に示した従来技術のスラリ貯槽19と同程度で、循環タンク8の容量の1/3〜1/4程度である。しかし、従来のスラリタンクが通常、水平断面の幅と高さが同程度の場合が多いのに対し、図1に示すスラリタンク41は水平断面の幅を短くした分、より高さ方向に長い形状としている。水平断面幅と高さの比は特に限定されないが、上述したように、底部からできるだけ均一に流体を供給できるようにするため、また粗大粒子の沈殿による分離効率を良くするため、タンク41の強度、コスト、流体供給用ポンプ44の動力の許す範囲で、できるだけ水平断面積を小さく、高さ方向に長く製作するのが望ましい。
前述のように、粗大粒子にはシリカ濃度の高いものが多いことから、本操作によって、硬度が高く粗大なシリカ粒子の多くが除去された石灰石スラリを脱硫吸収塔2に供給可能となることにより、ポンプインペラ、攪拌機インペラ、スプレノズル、配管等の機器の摩耗が軽減される。また、スラリタンク41の下部に供給する流体として、排ガスを使用することにより、以下のような付加的な効果がある。
排ガス中には12〜15%程度のCOが含まれているが、COが吸収液に溶解すると炭酸が生じてpHが低下するため、CaCOの溶解量が増加し、脱硫効率の向上につながる。
本発明の他の実施例を、図3を用いて説明する。ただし、脱硫吸収塔本体および石膏脱水系については、図6に示す従来技術と同様のため、当該部分の図および説明は省略する。石灰石調製方法としては、乾式ミル34で石灰石供給ライン12から供給される石灰石を粉砕し、水供給ライン13から供給される水と混合する構成としている。
本実施例では、スラリタンク41の下部からノズル42より供給する流体を、ガス取り込みライン54から取り込んだ空気とする。流体としての空気の供給量と粒子のサイズ分離方法は、前述の実施例1と同様である。空気中のCO濃度は0.3%程度と排ガスに比べて非常に低いため、CaCOの溶解を促進する効果は得られない。
しかし一方、空気はO濃度が21%と高いため、スラリタンク41内に空気を供給することにより吸収液スラリ中にOが溶解し、溶存O濃度が上昇する。高O濃度となった吸収液スラリがスラリ供給ライン11を介して循環タンク8に供給されるため、循環タンク8内での亜硫酸カルシウムの酸化が促進され、脱硫効率が向上するというメリットがある。
なお、ガス取り込みライン54から取り込むガスは空気に限るものではなく、不活性ガスでも構わない。吸収液スラリのCaCOの溶解促進、循環タンク8内での酸化促進といった反応面での効果は得られないが、磨耗の原因となるシリカ濃度の高い粗大粒子を分離除去する効果は同様である。
また、本実施例2では、前記実施例1のように処理済排ガスライン31を分岐して排ガス抜き出しライン43を設置する必要がないため、設備構成をシンプルにするこができる。
本発明のさらに他の実施例を、図4を用いて説明する。ただし、脱硫吸収塔本体および石膏脱水系については、図6に示す従来技術と同様のため、当該部分の図および説明は省略する。石灰石調製方法としては、粉砕済みの石灰石55を受け入れ、水供給ライン13から供給される水と混合する構成としている。
本実施例では、スラリタンク41の混合部45からスラリ循環ライン56、スラリ循環ポンプ57を介して石灰石スラリを一部抜き出し、スラリタンク41の下部からノズル42で供給する。
本実施例の場合は、スラリタンク41内にスラリ循環ライン56から供給する石灰石スラリをスラリタンク41に繰り返し循環供給する間に粗大シリカ粒子が確実にスラリタンク41の下部に沈降するので、比較的純度の高い石灰石スラリを排煙脱硫反応に利用できる。
1:ボイラ排ガス 2:脱硫吸収塔
3:脱硫吸収液循環ポンプ 4:脱硫吸収液循環ライン
5:スプレノズル(一段目) 6:スプレノズル(二段目)
7:スプレノズル(三段目) 8:循環タンク
9:攪拌機 10:攪拌用空気供給ライン
11:吸収液スラリ供給ライン 12:石灰石供給ライン
13:水供給ライン 14:湿式ミル
15:ハイドロサイクロン 16:アンダーフロー(粗粒)
17:返送ライン 18:オーバーフロー(細粒)
19:スラリ貯槽 20:攪拌機
21:吸収液スラリ供給ポンプ 22:抜き出しライン
23:ハイドロサイクロン 24:オーバーフロー(希薄液)
25:アンダーフロー(濃厚液) 26:脱水器(ベルトフィルタ)
27:廃水タンク 28:石膏
29:ろ液 30:ミストエリミネータ
31:処理済排ガスライン 32:ファン
33:煙突 41:スラリタンク
42:流体供給ノズル 43:排ガス抜き出しライン
44:ポンプ 45:混合部
46:沈殿部 48:排気ライン
49:バルブ 50:排出ライン
51:脱水器 52:循環ライン
53:廃棄ライン 54:ガス取り込みライン
55:粉砕済み石灰石 56:スラリ循環ライン
57:スラリ循環ポンプ

Claims (9)

  1. ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを脱硫吸収塔に導入し、粉砕した石灰石と水を混合して調製したスラリ状の吸収液をスプレノズルから噴射し、気液接触させて排ガス中の硫黄酸化物を吸収して除去する脱硫吸収塔と、落下した吸収液を溜める循環タンクと、該循環タンクから抜き出した吸収液を循環して前記スプレノズルへ供給する吸収液循環経路から構成される湿式排煙脱硫装置において、
    前記循環タンクに脱硫吸収液を供給する吸収液スラリ供給ラインと、該吸収液スラリ供給ラインに吸収液スラリを供給するスラリタンクを設け、該スラリタンクは、該スラリタンクの下方であって底面に接さない位置に設置されて吸収液スラリ中に流体を供給するノズルと、該ノズルよりも下方に沈降した粗大粒子を含むスラリを抜き出す排出ラインを備えたことを特徴とする湿式排煙脱硫装置。
  2. 前記スラリタンク(41)は水平断面の幅に比べて高さ方向の長さを長くした形状としたことを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置。
  3. スラリタンクの下方であって底面に接さない位置に設置して吸収液スラリ中に流体を供給するノズルには、吸収液から排出される排煙処理後の排ガスおよび/または空気を導入する排ガスおよび/または空気の導入ラインを接続したことを特徴とする請求項1、2に記載の湿式排煙脱硫装置。
  4. スラリタンクの下方であって底面に接さない位置に設置して吸収液スラリ中に流体を供給するノズルには、該ノズルよりも上方から抜き出したスラリを供給する抜き出しスラリ供給ラインを接続することを特徴とする請求項1記載の湿式排煙脱硫装置。
  5. 前記スラリタンク内の前記ノズルよりも下方に沈降した粗大粒子を含むスラリを抜き出して高濃度の沈降した粗大粒子を含むスラリを固液分離する固液分離装置と、該固液分離装置で分離して得た液状分を、スラリタンクの頂部へ供給する液状分循環ラインを設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の湿式排煙脱硫装置。
  6. ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを脱硫吸収塔内に導入し、粉砕した石灰石と水を混合して調製したスラリ状の吸収液と気液接触させて排ガス中の硫黄酸化物を吸収して除去し、気液接触後の吸収液を循環タンクに溜めた後、該循環タンクから抜き出した吸収液を再び脱硫吸収塔内に循環して排ガスと気液接触させる湿式排煙脱硫方法において、
    前記循環タンクに脱硫吸収液を供給するために、一旦吸収液スラリを溜めるために設けたスラリタンクの下方であって底面に接さない位置からスラリタンク内に流体を供給し、スラリタンクの前記流体を供給する位置より下方の位置に沈降した粗大粒子を含むスラリを抜き出すことを特徴とする湿式排煙脱硫方法。
  7. 前記スラリタンクの下方であって底面に接さない位置からスラリタンク内に供給する流体として、吸収液から排出される排煙処理後の排ガスおよび/または空気を用いることを特徴とする請求項6に記載の湿式排煙脱硫方法。
  8. スラリタンクの下方であって底面に接さない位置よりも上方から抜き出したスラリを、前記スラリタンクの下方であって底面に接さない位置からスラリタンク内に供給する流体として用いることを特徴とする請求項6記載の湿式排煙脱硫方法。
  9. スラリタンクの前記流体を供給する位置より下方の位置に沈降した粗大粒子を含むスラリを抜き出して高濃度の沈降した粗大粒子を含むスラリを固液分離し、固液分離して得た液状分を、スラリタンクの頂部に供給する供給水として用いることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の湿式排煙脱硫方法。
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