JP2014117524A - 浄化装置及び浄化方法 - Google Patents

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智之 齋藤
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健一 佐藤
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Abstract

【課題】気相中、液相中を問わず離れた位置に存在する対象に対しても浄化効果を発揮する浄化装置及び浄化方法を提供する。
【解決手段】本発明の浄化装置は、少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させるガス発生手段を備えるものである。そして、気相中又は液相中において、発生した硝酸及び亜硝酸を、ガス発生手段から離間して存在する作用対象に作用させ、作用対象の表面又は内部において、硝酸及び亜硝酸の少なくとも一方が分解する分解反応が進行することにより、作用対象が浄化されることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、放電により対象物質を浄化する浄化装置及び方法に関する。
放電により浄化を行う技術としては、例えば特許文献1に記載の殺菌・脱臭・VOC除去を行う装置が提案されている。特許文献1に記載の装置は、放電により、積極的にオゾンを発生させ、このオゾンの強力な殺菌作用ないし分解作用により殺菌・脱臭・VOC除去を行うものである。以下、殺菌・脱臭・VOC除去を行うことを浄化と総称する。
また、その他の浄化技術としては、例えば特許文献2に記載の装置が提案されている。当該装置は、放電によりヒドロキシラジカル等の短寿命なラジカルを発生させ、これらのラジカルを対象物質に作用させることで浄化を行うものである。
特開2003−257589号公報 特開2005−249252号公報
特許文献1に記載の装置では、浄化に寄与する物質として非常に強力な酸化力を有するオゾンを発生させる。それゆえ、浄化効果を高めるべくオゾンを高濃度で発生させた場合、オゾンが人体に対して及ぼす影響を無視できず、その浄化効率にも限界がある。さらに、オゾンは水等の液相に対する溶解度が低く、液相中に存在する対象にはほとんど浄化効果を発揮できない。また、特許文献2に記載の装置のように、ラジカルを用いる場合は、やはりその反応性の高さゆえに短寿命であることが欠点となりうる。すなわち、短寿命なラジカルを用いる場合は、放電電極近傍(到達時間数百μsecオーダー)でしか浄化効果を発揮しえず、電極から離れた対象物質に作用させることは現実的でないという問題がある。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、気相中、液相中を問わず離れた位置に存在する対象に対しても浄化効果を発揮する浄化装置及び浄化方法を提供することにある。
本発明の第1の態様に係る浄化装置は、ガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させるガス発生手段を備える。そして、気相中又は液相中において、上記発生した硝酸及び亜硝酸を、上記ガス発生手段から離間して存在する作用対象に作用させ、当該作用対象の表面又は内部において、硝酸及び亜硝酸の少なくとも一方が分解する分解反応が進行することにより、作用対象が浄化されることを特徴とする。
本発明の第2の態様に係る浄化装置は、上記ガス発生手段が、ガス状の二酸化窒素をさらに発生させ、当該二酸化窒素から硝酸及び亜硝酸が生成される第一の反応が進行することを特徴とする。
本発明の第3の態様に係る浄化装置は、上記ガス発生手段が、不平等電界を形成するための形状を有する一対の放電電極と、放電電極間に直流又は交流の高電圧を印加する電源と、を備えるものである。さらに、上記放電電極間における放電状態が負性抵抗特性を示す領域で維持されることにより、少なくともガス状の一酸化窒素、二酸化窒素、硝酸及び亜硝酸が生成されることを特徴とする。
本発明の第4の態様に係る浄化装置は、オゾンを発生させるオゾン発生手段をさらに備えるものである。そして、上記オゾンと上記一酸化窒素との反応により二酸化窒素が生成される第二の反応が進行することによって、上記二酸化窒素、硝酸及び亜硝酸の少なくともいずれか一方の生成量を増加させることを特徴とする。
本発明の第5の態様に係る浄化装置は、浄化作用空間の雰囲気を制御する雰囲気制御手段をさらに備えるものである。そして、上記制御により、上記分解反応、第一の反応及び第二の反応の少なくともいずれか一方が促進されることを特徴とする。
本発明の第6の態様に係る浄化装置は、上記雰囲気制御手段が、ブラックライト、紫外線LED及び太陽光の少なくともいずれか一方を照射する照射手段を含むことを特徴とする。
本発明の第7の態様に係る浄化装置は、雰囲気制御手段が、前記雰囲気の湿度条件を調整する湿度調整手段を含むことを特徴とする。
本発明の第8の態様に係る空調装置は、上記第1〜7の態様に係る浄化装置と、当該浄化装置に併設され、温度を調整する気温制御手段と、を備える。そして、気温制御手段内部の結露を生ずる部分に適用される上記浄化装置が、当該結露部分における微生物を作用の対象として不活化することを特徴とする。
本発明の第9の態様に係る浄化方法は、少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させる工程と、気相中又は液相中において、上記発生した硝酸及び亜硝酸を、作用対象に対して作用させる工程と、を備える。そして、作用対象の表面又は内部において、上記硝酸及び亜硝酸の少なくとも一方が分解することにより、作用対象が浄化されることを特徴とする。
本発明の態様に係る浄化装置は、少なくともガス状の亜硝酸及び硝酸を発生させ、これらにより作用対象を浄化する構成を有する。亜硝酸及び硝酸はオゾンと比べて水等の液相に対する溶解度が極めて高いため、気相のみならず、液相においても浄化効果を発揮することができる。また、離れた対象に対して作用できるだけでなく、気相中、液相中を問わず広範な作用対象に対して浄化効果を発揮する浄化装置とすることができる。
本発明の態様に係る有害物質の空調装置は、気温制御手段に加えて、上記浄化装置を備えている。上記した浄化装置が液相たる結露部分においても浄化効果を発揮することができるため、装置内部の微生物汚染を防止しつつ、空調効果を発揮できる空調装置とすることができる。
本発明の態様に係る有害物質の浄化方法は、少なくともガス状の亜硝酸及び硝酸を発生させ、これらを作用対象に対して作用させる構成を有する。そのため、本発明の方法によれば、離れた対象に対しても作用できるだけでなく、気相中、液相中を問わず広範な作用対象を浄化することができる。
本発明の一実施形態に係る浄化装置の構成例を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る浄化装置が有する放電手段の回路図である。 図2に示す回路を用い、直流電源で放電を行った例において、測定された亜硝酸ガス、硝酸ガス、二酸化窒素及び一酸化窒素の発生量と放電電流値との関係を示すグラフである。 図2に示す回路を用い、交流電源で放電を行った例において、測定された亜硝酸ガス、硝酸ガス、二酸化窒素及び一酸化窒素の発生量と放電電流値との関係を示すグラフである。 枯草菌を作用対象の例とし、本発明の一実施形態に係る浄化装置を用いて浄化を行った場合の、殺菌率と生成ガスへの暴露時間との関係を浄化条件ごとに示すグラフである。 クロカワカビを作用対象の例とし、本発明の一実施形態に係る浄化装置を用いて浄化を行った場合の、殺菌率と生成ガスへの暴露時間との関係を浄化条件ごとに示すグラフである。 後述する殺菌試験3において、本発明の一実施形態に係る浄化装置を用いて浄化を行う際の放電系を示す概略図である。 後述する殺菌試験4において、本発明の一実施形態に係る浄化装置を用いて浄化を行う際の放電系を示す概略図である
以下、本発明の一実施形態に係る浄化装置及び浄化方法について、図面に基づき詳細に説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
[浄化装置]
図1に例示するように、本実施形態に係る浄化装置は、少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させるガス発生手段を備えるものである。本形態において、ガス状の硝酸又は亜硝酸は、作用対象に直接的又は間接的に作用するものである。「直接的」は、特に気相中での態様を想定しており、ガス状の硝酸及び亜硝酸そのものが後述する分解反応を進行させて浄化を行うものである。また、「間接的」は、特に液相中での反応を想定しており、液相中に溶解した硝酸又は亜硝酸が、後述する分解反応を進行させて浄化を行うものである。すなわち、上記の亜硝酸、硝酸は発生時においてガス状であるが、実際に作用対象に作用する際はガス状に限られず、液体状等、種々の状態のものであってもよい。そして、発生したガスが作用する作用対象の例として示した殺菌対象は、ガス発生手段から離れた位置に存在する。図1の例では、発生した亜硝酸ガス及び硝酸ガスを、殺菌対象の位置まで気流によって運搬し、少なくとも硝酸ガス及び亜硝酸ガスが殺菌対象に作用する構成となっている。もちろん、硝酸ガス及び亜硝酸ガスは広範に自然拡散するものであるから、当該ガスが作用対象に届く構成である限り、同図の形態に限定されない。
本形態の浄化装置において発生した亜硝酸及び硝酸は、作用対象の表面又は内部において分解反応を起こし、これにより作用対象が浄化される。その原理については、次のように説明される。すなわち、亜硝酸については以下の反応式(1)に示す反応が、硝酸については以下の反応式(2)に示す反応が、気相又は液相において、それぞれ進行することによりヒドロキシラジカル(OH)が生成される。なお、硝酸ガスよりも亜硝酸ガスの方が自己分解しやすく、ヒドロキシラジカルを放出しやすい。また、後に詳述するが、種々の物理条件を制御することで反応式(1),(2)の分解反応を人為的に促進することも可能である。
Figure 2014117524
Figure 2014117524
上記のようにして生成されるヒドロキシラジカルは、作用対象の表面又は内部においてその高い酸化力を発揮し、電子を奪うものである。そのため、作用対象は表面又は内部を侵され、殺菌、分解、除去等されることとなる。ヒドロキシラジカルは非常に反応性が高く、寿命が短いものであるが、本形態の浄化装置で生成されるガス状の硝酸及び亜硝酸は、離れた作用対象に届いた時点でも直接的又は間接的に作用対象に作用する。すなわち、ガス発生手段からの到達時間が数百μsec以上かかる程に離間した位置であっても、作用対象に到達した時点でラジカルを生成し、浄化を行うことができる。硝酸及び亜硝酸は、ヒドロキシラジカルよりも安定に存在できるのみならず、上記のようにラジカルを生成できるため、ラジカルキャリアとしての役割を担うものと評価できる。したがって、ガス発生手段近傍の作用対象でも、ガス発生手段から離れた作用対象であっても、少なくともガス状の亜硝酸ないし硝酸が届く限り、浄化効果を発揮することができる。例えば、単に放電電極近傍で短寿命なラジカルを発生させる構成では、作用対象に到達するまでに数百μsec以上の時間を要するほどに離間した作用対象の殺菌等は困難であった。しかし、本形態の浄化装置であれば、このような作用対象であっても十分に浄化効果を発揮できる。
さらに、オゾン(O)と亜硝酸ガス(HONO)と硝酸ガス(HONO)のヘンリー定数を比較すると、Oが2.2×10−4[M/atm]であり、HONOが49[M/atm]であり、HONOが2.1×10[M/atm]である。すなわち、HONOのほうがOよりも約22万倍も水に溶けやすく、HONOは、HONOよりも、さらに約4300倍も溶けやすいといえる。したがって、オゾンに比べ、亜硝酸ガス及び硝酸ガスは表面吸着水や水中等、液相に存在する対象に対しても、高い浄化効果を発揮できるものといえる。以上のとおり、亜硝酸ガス及び硝酸ガスは、オゾンよりも表面や水に吸収されやすく、さらに分解してOHラジカルを放出しやすいものと評価できる。
ところで、上記からもわかるように、ここでいう浄化とは、主に、微生物、臭気成分、VOC、アレルゲン等の有害物質に作用し、殺菌、脱臭又は除去することを意味する。なお、ここでいう殺菌とは、制菌、殺菌、分解等を包含するものである。また、ここでいう作用対象は、特に微生物、臭気成分、VOC、アレルゲン等の有害物質を想定しているが、亜硝酸や硝酸が生成するヒドロキシラジカルが作用して浄化されるものである限り特に限定されない。なお、微生物としては、真菌類、細菌類、ウィルス等を挙げることができる。
本実施形態に係る浄化装置において、ガス発生手段が、ガス状の二酸化窒素をさらに発生させることが好ましい。二酸化窒素ガスが生成すると、物体表面に吸着された水分子などと反応する。すなわち、次の反応式(3)に示す表面反応が進行する。
Figure 2014117524
反応式(3)は、二酸化窒素ガスと水との反応を示しているが、主に水と空気の界面で起こる反応である。例えば、ある程度湿度が高い雰囲気中にある材料の表面や、吸湿性の材料の表面であっても反応の進行には十分な水分が存在する。すなわち、二酸化窒素ガスは、作用対象表面に存在する水分や気中に浮遊するミストなどと反応し、亜硝酸、硝酸を生ずることがわかる。このようにして生じた亜硝酸及び硝酸の浄化効果は上述したとおりであり、二酸化窒素ガスをさらに多く発生させることで、亜硝酸及び硝酸の量をより多く確保することができ、浄化効果をさらに向上させることができる。
なお、気相においては、湿度が高くなるとほとんどの材料の表面に薄い水膜が形成される。また、空気中のイオンや帯電粒子には水分子が集まり易く、さらにこれらの表面にも水分が存在することとなる。したがって、湿度がある程度高い環境では、反応式(3)に示す表面反応が非常に進行しやすくなる。このような観点から、気相の相対湿度は高いほど好ましく、50%以上とすることが特に好ましい。
本実施形態に係る浄化装置において、ガス発生手段が、不平等電界を形成するための形状を有する一対の放電電極と、放電電極間に直流又は交流の高電圧を印加する電源と、を備えていることが好ましい。このような放電手段としての役割を有するガス発生手段とすれば、放電電極間における放電状態が負性抵抗特性を示す領域で維持されることにより、少なくともガス状の一酸化窒素、二酸化窒素、硝酸及び亜硝酸が生成されることとなる。
なお、放電の詳細な条件としては、次のとおりである。すなわち、電源としては、直流電源、交流電源、高周波発振電源のいずれかであって、高電圧を印加するものを用いることができる。また、電極としては、不平等電界を形成する形状であれば特に限定されないが、針形状の電極同士が対向する針対針電極、針形状の電極と平板状の電極が相対向する針対平板電極、端部が球面状の電極同士を対向させる球面対球面電極等を採用することができる。
なお、一般的には、電流を大きくすると、電圧は高くなっていくものである。これに対し、上記負性抵抗特性とは、放電電流が増加するにしたがって放電電圧が低下するという特性をいうものである。例えば、1〜10kVの放電電圧に対して、0.1mA〜5mA程度の値で適宜制御することができるが、これに限定されない。このような領域で放電を維持することにより、本形態の浄化装置は、例えばコロナ放電のような放電形態のものよりも高い放電電流を与えることができ、一酸化窒素を効率よく安定に生成することができる。このように放電がなされると、反応式(4)、(5)に示すように、原子状窒素と原子状酸素が生成される。
Figure 2014117524
(式中、eは電子を示す。)
Figure 2014117524
(式中、eは電子を示す。)
次いで、原子状窒素と原子状酸素が生成されると、以下の反応式(6)〜(11)に示す各反応が進行することにより、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO)が生成される。なお、初期の生成量は一酸化窒素の方が多い。
Figure 2014117524
Figure 2014117524
Figure 2014117524
(式中、Mは第三体を示す。第三体は大気中では一般的にNやOである。)
Figure 2014117524
(式中、Mは第三体を示す。)
Figure 2014117524
Figure 2014117524
このようにして一酸化窒素が発生すると、例えば、反応式(9),(10),(11)に示す反応が進行する以外にも、一酸化窒素は空気中の酸素を含む化合物と反応して二酸化窒素(NO)を生成する。二酸化窒素が発生すると、当該二酸化窒素から亜硝酸及び硝酸が生成される反応が後続することは前述したとおりである。すなわち、少なくともガス状の一酸化窒素を発生させる態様としたことで、二酸化窒素生成量が増加し、浄化効果を発揮する亜硝酸及び硝酸の生成量をさらに増やすことができる。その結果、浄化効果をさらに向上させることができる。
なお、本形態の浄化装置が有する上記放電形態として、さらに、放電により流れる電流が、連続的に放電電極間に流れるように維持されるものとすることが好ましい。なお、ここでいう連続的とは、次のような意味である。すなわち、直流電源を用いる場合は、電流値が0となる点が存在せず、放電操作中は常に電流が流れている状態をさす。また、交流電源を用いる場合は、電流の正負が反転する際を除き、各半周期において電流値が0とならず、常に電流が流れている状態をさす。このように放電を維持することにより、本形態の浄化装置においては、連続的に放電電流が流すことができるため、間欠的な放電形態のもの等に比して無駄がなく、一酸化窒素を効率よく安定に生成することができる。
ところで、上記した負性抵抗特性を示す領域での放電ないし連続的な放電を実現する観点から、放電電極と電源との間に設けられた高抵抗素子をさらに備え、当該高抵抗素子により、放電状態を負性抵抗特性を示す領域で維持する態様とすることが好ましい。なお、高抵抗素子については、いわば限流抵抗と称することもでき、これによって電流が制限される。すなわち、火花放電に至るほどの大電流が流れることがなく、安定した放電とすることができるため好ましい。なお、この限流抵抗については、低すぎると不安定となり、高すぎると電源電圧が高くなり損失も増えるため、放電特性に応じ適宜選定することができる。
なお、高周波発振電源を用いて放電を行う場合は、少なくとも次の基準を満たすものを採用することが好ましい。すなわち、発振周波数が15kHz以上、出力インピーダンスが大きく、さらに出力静電容量が小さいもの採用できる。なお、発振周波数は、好ましくは20kHz以上とする。出力静電容量は周波数にほぼ反比例し、出力静電容量を小さくするには周波数を高くする。周波数が上記のような値である場合、平滑用のコンデンサーの容量を少なくでき、火花放電に至らないように制御することが容易となる。なお、高周波になるに伴って、出力インピーダンスも大きくなる。大きい出力インピーダンスは、トランスの巻き線抵抗のみならず、磁束の結合度合い等にも関係するが、これが上記の限流抵抗と同等の役割を果たし、上述の連続的な放電を安定して維持することができる。したがって、高周波発振電源を用いる場合は、特に限流抵抗を設けなくとも、効率よく安定して一酸化窒素を発生させることができる。また、高周波発振式電源を用いることで、直流電源や交流電源を用いた場合と比較して限流抵抗を小さくすることができ、消費電力を低減することができる。
本実施形態に係る浄化装置においては、前述の放電手段に加えて、オゾンを発生させるオゾン発生手段をさらに備えるものとすることが好ましい。オゾン発生手段としては、特に限定されないが、例えば、コロナ放電式の放電器や紫外線ランプ等を用いることができる。オゾン発生手段から発生したオゾンは、前述のように発生した一酸化窒素と反応することで、二酸化窒素を生成することができる。この反応を次の反応式(12)に示す。
Figure 2014117524
(kは反応速度定数であり、k=1.8×10−14 [cm/molecule/s]である。)
このように、ガス状の一酸化窒素の発生に加えて、オゾンをも発生させることとしたため、反応式(12)に示すように、二酸化窒素の生成量を増加させることができる。その結果、反応式(3)に示すように、さらに硝酸、亜硝酸の生成量も増加させることができる。また、オゾンと空気中の水分とで生じたヒドロキシラジカルやオゾン発生の際に行う放電により発生したヒドロキシラジカルが、上記のように発生する一酸化窒素や二酸化窒素と反応する場合も考えられる。すなわち、反応式(1)ないし反応式(2)の逆反応により、さらに硝酸ないし亜硝酸が生成されることとなる。このように硝酸及び亜硝酸の生成量が増加することで、前述した浄化効果がより高くなる。
本実施形態に係る浄化装置において、浄化作用空間の雰囲気を制御する雰囲気制御手段をさらに備えるものとすることが好ましい。本形態の浄化装置は、いずれの態様においても、前段落までにおいて説明した種々の反応式に基づいて浄化効果が発揮される。すなわち、上記したいずれかの反応の反応速度を増加させるように浄化作用空間の雰囲気を制御することで、各反応が進行しやすくなるものといえる。このような制御を行えば、本形態の浄化装置が奏する浄化効果はさらに高くなる。なお、浄化作用空間については、浄化作用すなわち上記した種々の反応が進行する空間をさしており、閉鎖系、開放系の別を問わない。また、次に雰囲気制御手段の具体例について言及するが、上記のように反応速度を増加させるための手段である限り、特に限定されるものではない。次に示す態様の他にも、反応速度を増大させるための手段としては例えば温度を調整することも有効であるため、雰囲気制御手段として温度調整手段を採用することもできる。また、雰囲気制御手段は、一種類のみだけを採用するのではなく、採用しうるあらゆる手段を組み合わせて、浄化作用空間の雰囲気を適宜制御する態様とすることが好ましい。
本実施形態に係る浄化装置において、上記雰囲気制御手段が、ブラックライト、紫外線LED及び太陽光の少なくともいずれか一方を照射する照射手段を含むものとすることが好ましい。反応式(1),(2)の反応に関しては、例えば、ブラックライトの紫外線波長である360nm付近の光を照射すると、さらに下記反応式(13),(14)に示す反応がそれぞれ促進される。
Figure 2014117524
(式中、hはプランク定数を示し、νは振動数を示す。また、kは反応速度定数であり、k=1.99×10−1 [1/s]である。)
Figure 2014117524
(式中、hはプランク定数を示し、νは振動数を示す。また、kは反応速度定数であり、k=3.52×10−5 [1/s]である。)
上記に示した各反応の反応速度定数は、いずれも15Wのブラックライトを1cmの距離から照射した場合の数値を示しており、これらの反応速度定数を比較すると、反応式(13)の方が進行しやすいことがわかる。もっとも、特に亜硝酸ガスは撹拌や噴霧等の物理的衝撃によって分解しやすい。上記の測定条件を例にしてkとkを比較すると、亜硝酸ガスは硝酸ガスよりも約5650倍分解しやすく、ヒドロキシラジカルを放出しやすいことがわかる。したがって、本形態の浄化装置は、より高い浄化効果を得ることができる。なお、照射手段としては、反応式(13),(14)及びこれらに関する上記説明の趣旨に鑑み、適切な波長の光を照射できるものである限り、上記の例に限定されず、種々のものを適用することができる。
本実施形態に係る浄化装置において、雰囲気制御手段が、浄化作用空間の湿度条件を調整する湿度調整手段を含むものとすることが好ましい。反応式(3)に示す反応に関しては、浄化作用空間中の水分が多いほど反応の進行が促進されることは前述したとおりである。そのため、湿度を調整することで、浄化作用空間に適切な量の水分を与え、反応式(3)の反応を促進することができる。その結果、浄化効果を発揮する硝酸及び亜硝酸の生成量が増加する。したがって、本形態の浄化装置は、より高い浄化効果を発揮することができる。なお、湿度調整手段としては、特に限定されないが、例えば、噴霧機、バブラー式加湿器、超音波式加湿器等、種々の態様を採用することができる。
[空調装置]
本発明の一実施形態に係る空調装置は、上記の形態に係る浄化装置と、当該浄化装置に併設され、温度を調整する気温制御手段と、を備えるものである。さらに、気温制御手段内部の結露を生ずる部分に適用される浄化装置が、結露部分における微生物を作用の対象として不活化するものである。ここでいう不活化とは、主に、微生物などの有害物質を制菌、殺菌、分解又は除去等することを意味する。また、気温制御手段としては、特に限定されず、従来公知のものを適宜適用することができる。なお、本形態の空調装置を構成する各部材において、部材表面とその周辺雰囲気との温度差により結露が生ずるものであり、典型的なのは、フィン等の部材であるが、当該箇所に限られない。例えば、ドレンパン等における微生物に対しても不活化効果を発揮できる。そして、本形態の空調装置は、上記形態の浄化装置を用いて少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させる。したがって、少なくとも反応式(1),(2)に示す反応が起こり、ヒドロキシラジカルを微生物に作用させることができる。微生物が繁殖しやすい気温制御手段における結露が生ずる部分での殺菌は困難を極めるものであるが、本形態の空調装置によれば、効率よく不活化を実現することができる。もちろん、前述したような放電形態を採用する等により、さらに一酸化窒素ないし二酸化窒素を生成させ、反応式(3)〜(12)に示すような反応を進行する態様とすることもできる。この場合、硝酸及び亜硝酸の生成量が増加し、不活化効果が高くなるため好ましい。また、前述したオゾン発生手段や雰囲気制御手段をさらに備える構成とすることも好ましい。これらを備えることで、反応式(1)〜(14)に示す反応を適宜促進させることができ、不活化効果はさらに高くなる。なお、空調装置は、その機能上、気温はもちろん、湿度等も制御できるように構成することができる。このように、空調装置の機能自体が前述した雰囲気制御手段としての役割を果たすため、当該役割に鑑みた運転態様とすることで、さらに不活化を促進させることも可能である。
本形態に係る空調装置の具体的な構成としては、特に限定されるものではなく、前述した作用に基づき、少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸が結露部分に届く構成であればよい。なお、結露部分に存在する微生物を特に作用対象としたが、もちろん結露部分周辺に付着又は浮遊する微生物等に対しても不活化効果を発揮できる。また、本形態に示す構成を満足する空調装置であれば、アレルゲンの不活化効果も奏することができる。
[浄化方法]
本発明の一実施形態に係る浄化方法は、少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させる工程と、気相中又は液相中において、硝酸及び亜硝酸が、作用対象に対して作用する工程とを備えるものである。そして、作用対象の表面又は内部において、硝酸及び亜硝酸の少なくとも一方が分解することにより、作用対象が浄化されるものである。本形態の浄化方法により発生する亜硝酸及び硝酸が、作用対象の表面又は内部において、分解反応を起こし、これにより作用対象が浄化されることは前述のとおりであり、反応式(1),(2)に示す反応に基づくものである。すなわち、ヒドロキシラジカルを、当該ラジカルよりも安定した、少なくともガス状の亜硝酸ないし硝酸の形で離れた作用対象まで運搬し、作用対象に到達した時点においてもヒドロキシラジカルを放出し、浄化を実現する。さらに、これらガス状の亜硝酸ないし硝酸は、水等の液相への溶解度が高いため、液相中の対象に対しても浄化効果を発揮できる。すなわち、本形態の浄化方法によれば、離れた対象に対しても作用するのみならず、気相中、液相中を問わず広範な作用対象に対して浄化効果を発揮することができる。
少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させる工程については、前述のように二酸化窒素を発生させ、反応式(3)の反応により発生させるものとすることが好ましい。このような工程とすれば、前述のとおりガス状の二酸化窒素をさらに多く発生させることで、亜硝酸及び硝酸の量をより多く確保することができる。その結果、浄化効果をさらに向上させることができる。
また、少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させる工程については、前述した放電の形態により、少なくともガス状の一酸化窒素、二酸化窒素、硝酸及び亜硝酸が生成される工程とすることが好ましい。例えば、上記ガス状物質を発生させるための手段として、放電電極間において不平等電界を形成し、放電電極間に直流又は交流の高電圧を印加する放電形態とすることができる。このような放電形態において、前述のように放電電極間における放電状態が負性抵抗特性を示す領域で維持されるように制御することとすれば、前述の反応式(4)〜(11)に示す反応が進行し、一酸化窒素を効率よく安定して生成することができる。その結果、反応式(1)〜(3)に示す反応がさらに進行することになるため、浄化効果はより高くなる。
本形態の浄化方法において、さらに浄化作用空間を前述のように制御することが好ましい。例えば、ブラックライト等の光を照射することで、反応式(13),(14)の反応を促進させることができる。また、浄化作用空間において、前述のようにさらにオゾンを発生させ、反応式(12)の反応を進行させることで、二酸化窒素生成量を増やす構成とすることもできる。このようにすれば、反応式(1)〜(3)に示す反応がさらに進行するため、さらに浄化効果が高くなる。前述のように、浄化作用空間の制御等を単独又は複数組み合わせて行うことで、本形態の浄化方法は、相乗的に浄化効果を高めることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[放電による硝酸ガス、亜硝酸ガス、二酸化窒素ガスの発生]
硝酸ガス、亜硝酸ガス及び二酸化窒素ガスの発生量と放電電流値の関係について検討するべく、図2に示す回路10を用いて放電試験を行った。すなわち、放電電極1としては線の太さ0.3mm、極間距離6mmの針対針電極を用い、電流計A、抵抗成分Rをそれぞれ介して電源2に接続する構成とした。そして、直流電源を用いた場合と50Hzの交流電源を用いた場合のそれぞれについて、負性抵抗特性を示す領域で放電を行い、放電電流値及びガス発生量を測定した。
直流電源を用いた結果を、図3のグラフに示す。なお、亜硝酸(HONO)、硝酸(HONO)を分けて測定するのが困難であったため、同グラフにおいてはHONOとHONOの合計値であるHONOとして表記した。後に示す図4のグラフ及び表1においても同様である。図3からわかるように、電流値を大きくするにしたがって、HONOの生成量が増加する。また、一酸化窒素(NO)については、放電電流値が少ない値であっても、多量に生成されていることがわかる。なお、0.5mAのときの二酸化窒素(NO)の値が特異的に大きいが、これは放電エネルギーが低く、反応式(4),(8)に示す反応が活発になり、オゾンも発生していることに起因するものと考えられる。つまり、オゾン量が増加したため、反応式(12)に示す反応が促進され、二酸化窒素(NO)が多量に生成されたものと考えられる。
交流電源を用いた結果を、図4のグラフに示す。図4から、一酸化窒素(NO)については、放電電流値が少ない値であっても、多量に生成されていることがわかる。また、0.5〜1mA程度までは、電流値を大きくするにしたがってNOの生成量が増加している。これも前述と同じ理由で、放電エネルギーが低くオゾンも発生しているため、反応式(12)の反応により二酸化窒素(NO)が多量に生成されたものと考えられる。
[殺菌試験1]
作用対象の例として、土壌や空気中における常在細菌として一般的な枯草菌を取り上げ、浄化装置を用いて殺菌効果を確認するべく以下の試験を行った。
まず、放電によるガス発生手段を備える浄化装置を、清浄空気が流れる送風ダクトの上流側に配置させた。風速1m/sで通気させることとし、放電に曝された空気が4秒後に届く位置に試験用に調整した枯草菌を設置した。ダクトに流す空気の温度条件は25℃とし、湿度条件は70〜80%とした。
試験用の枯草菌は、次の要領で調整した。すなわち、滅菌された約1cm四方の薄いPP製フィルムを複数枚用意し、所定の生菌数濃度に調整した枯草菌液を等量(40μL)滴下し、常温で乾燥させた。なお、枯草菌は乾燥に強いため、乾燥が生菌数に及ぼす影響は無視できる。
このように枯草菌が付着したフィルムを、前述のダクト中の所定位置に設置し、浄化装置を運転させた状態で気流に所定時間暴露させた。次いで、計量された滅菌蒸留水が入った試験管に、上記のように暴露された枯草菌をフィルムごと入れ、よく撹拌し、フィルムについた枯草菌を水中に懸濁させた。この懸濁液をSCD培地に塗布、培養し、コロニー数を数え、フィルム上で生き残った菌数Aを調べた。一方、枯草菌のついたフィルムを試験雰囲気に暴露せずに、そのまま滅菌蒸留水にフィルムごと入れ、同様にフィルム上にいる枯草菌の生菌数Bを調べたものをバックグラウンドとした。このようにして、以下の数式1に基づき殺菌率を求めることとした。
[数1]
殺菌率(%)={1−(A/B)}×100
(実施例1〜4、比較例1)
なお、本発明の実施例に係る浄化装置としては、雰囲気制御手段を使用しないものを実施例1とし、雰囲気制御手段としてブラックライト(BL)のみを使用するものを実施例2とした。さらに、同じく実施例に係る浄化装置として、O発生手段のみを雰囲気制御手段とするものを実施例3、BLとO発生手段を併用して雰囲気制御手段とするものを実施例4とした。なお、BL照射については、4WのBLを照射距離5cmで1時間おきに5分間照射するものとした。また、これらに対して、BLを照射するのみの態様を比較例1とし、試験を行った。
上記試験の結果を図5に示す。図5に示すグラフ中、「HONO放電」は実施例1を示し、「HONO放電+O発生」は、実施例3を示すものである。後に示す表1においても同様である。図4からわかるように、比較例1では、ほとんど殺菌効果がみられないことがわかる。これに対して、各実施例1〜4の浄化装置を用いた場合は殺菌効果がみられ、暴露時間が増加するにしたがって殺菌率も高くなることがわかる。また、実施例1では殺菌効果を発揮するまでに2時間以上の暴露時間を必要としているが、実施例2では、1時間以上の暴露時間で効果を発揮し、殺菌効果が向上していることがわかる。また、実施例3は、1時間の暴露時間効果を発揮するだけでなく、殺菌率は初期から90%を超え、3時間で99%を超えるものであり、非常に殺菌効果が高い。さらに、実施例4では、暴露初期から殺菌率が99%近くまでにも上っており、実施例中最も高い殺菌効果を発揮している。このように、HONO放電のみならず、これにBL照射、O発生を適宜組み合わせることにより、殺菌効果が相乗的に高まることがわかる。
本試験において、枯草菌が暴露される雰囲気におけるNO、HONO濃度は、NOx濃度計(日本サーモ製:Model 42i)を用いて測定した。なお、大阪府環境情報センター所報(第24号)における「大気中ガス状亜硝酸濃度の簡便な測定法」に提示されているポリアミドパウダー法に準拠して測定を行った。NOx及びHONOx濃度はほぼ一定であった。その結果を次の表1に示す。
Figure 2014117524
表1から、比較例と実施例との上記殺菌効果の違いは、NO濃度ないしHONO濃度の差に基づくものであることが示唆されている。なお、湿度条件が70〜80%であるため、ダクト表面や枯草菌をつけたフィルム表面に薄い水膜が形成され、そこにHONOxが溶け込むほか、反応式(3)の反応によってもHONOxが生成される。比較例1に示すようにBL照射のみのでは殺菌効果が認められないが、HONOxが表面に取り込まれた状態でBLを照射すると、反応式(13),(14)によりHONOxが分解し、ヒドロキシラジカルが生成されて殺菌効果を及ぼすことができる。また、BL照射をしなくても実施例1,3のみでも殺菌効果があることから、HONOxの自己分解によりヒドロキシラジカルが生成していることが考えられる。また、実施例3での各測定時においては、反応式(12)に示す反応が完全に終了しているわけではなく、未反応のオゾンと生成されたNOとが共存した状態と考えられる。もちろん、オゾンそのものも殺菌効果を有するものであるから、このような状態において、殺菌効果が相乗的に高まったということも考えられる。
[殺菌試験2]
空調装置のフィンやドレンパンに発生するカビを想定して、水中の真菌に対して殺菌試験を行った。ここでは真菌の例として、空調装置に発生しやすいクロカワカビ(C.Cladosporioides)を取り上げ、浄化装置を用いた殺菌効果を次のように確認した。なお、浄化装置と作用対象の位置関係等、特記しない事項については殺菌試験1の場合と同様である。
まず、浄化装置としては、大気環境学会誌(第45巻 第2号(2010))における「多孔性ポリテトラフルオロエチレンチューブを用いたガス状亜硝酸の連続発生法」に準拠して亜硝酸ガスの発生装置を準備した。この装置を清浄空気が流れる試験用送風ダクトの上流側に配置させ、発生させた亜硝酸ガスがダクト内を流通するように構成した。送風ダクトでは清浄空気と発生装置から導入した亜硝酸ガスとが混合されるが、亜硝酸ガスの濃度としてはダクト内で均一になるように制御した。そして、送風ダクトの下流側に試験用に調整したクロカワカビを設置した。
試験用のクロカワカビは、以下の要領で調整した。すなわち、滅菌されたおよそ1cm四方の薄いPP製のフィルムを複数枚用意し、それぞれ所定の生菌数濃度に調整したクロカワカビの胞子懸濁液を、同量(50μL)滴下した。
このようにクロカワカビの胞子懸濁液の水滴が付着したフィルムを、前述のダクト中の所定位置に設置し、亜硝酸ガスを含んだ空気に暴露させた。ダクトに流す空気の温度条件は25℃とし、湿度条件は70〜80%とした。任意の時間暴露させた後、計量された滅菌蒸留水が入った試験管に、暴露されたクロカワカビ胞子懸濁液滴が付着したフィルムごと入れ、よく撹拌し、フィルムに付着したクロカワカビ胞子を水中に懸濁させた。この液をPDA培地に塗布、培養し、コロニー数を数え、フィルム上で生き残った菌数Cを調べた。また、クロカワカビ胞子懸濁液滴が付着したフィルムを試験雰囲気に暴露せずに、そのまま滅菌蒸留水にフィルムごと入れて、同様にフィルム上に生存するクロカワカビの生菌数Dを調べたものをバックグラウンドとした。このようにして、以下の数式2に基づき殺菌率を求めた。
[数2]
殺菌率(%)={1−(C/D)}×100
上記試験の結果を図6に示す。図6に示すグラフ中、「HONO:10ppm」は、試験ダクト中の亜硝酸ガス濃度を10ppmに調整して暴露させた場合を示す(実施例5)。また、「HONO:10ppm+BL」は、実施例5の条件に加えて、クロカワカビ胞子懸濁液が付着したフィルムの50mm上方に設置した6Wのブラックライトを照射した場合を示している(実施例6)。これに対して、「BL照射のみ」は、亜硝酸ガスを発生させずにブラックライトを照射した場合を示す(比較例2)。また、「O:155ppm」は、亜硝酸ガスを発生させずに、ダクトの上流側にオゾン発生機を設置し、ダクト中のオゾン濃度を155ppmにした場合を示している(比較例3)。比較例2,3では、ほとんど殺菌効果がみられないことがわかる。これに対して、実施例5,6では高い殺菌効果がみられ、暴露時間が増加するにしたがって殺菌率も高くなることがわかる。また、実施例5では3時間の暴露時間で殺菌率99.8%、実施例6では3時間の暴露時間で殺菌率99.999%を超えるものであり、非常に高い殺菌効果が認められた。このように、亜硝酸ガスに暴露させると殺菌効果が表れ、さらに、これにBL照射を組み合わせることにより、殺菌効果が相乗的に高まることがわかる。
すなわち、水中のカビ胞子に対して亜硝酸ガスが効果的に作用していることがわかる。これに対して、オゾンによる水中の対象に対する浄化作用は、オゾンが水に溶けにくいため対象まで届かず、効果が薄くなっていることが示唆される。亜硝酸ガスによる水中の対象に対する浄化作用については、亜硝酸ガスが水に対する溶解度の高さゆえ、浄化効果を発揮しうるオゾン濃度に比べて非常に低濃度の気中濃度であっても、作用対象に届いて高い浄化効果を発揮するものといえる。また、亜硝酸ガスに暴露されていない対象にBLを照射しても全く浄化効果がなかった。しかし、亜硝酸ガスに暴露されている対象にBLを照射することで、水中においても反応式(13)に示すヒドロキシルラジカルの生成が促進され、浄化効果が格段に向上することがわかる。
[殺菌試験3]
作用対象の例として、エアコン等の室内環境にて高頻度で検出されるカビ3種と、赤色酵母と、土壌や空気中における常在細菌として一般的な枯草菌と、殺菌試験に頻繁に用いられている大腸菌と、を取り上げた。これらの微生物を対象として、浄化装置を用いた殺菌効果を確認するべく、次の試験を行った。
前述の放電による浄化装置としては、図7のように、容器13中の蒸留水16の水面から1mm上方に針電極11Aを配置し、ここに定電圧端子14から+5kVの直流高電圧を印加した。このようにして、針電極11Aと水面側の針電極11Bとの間において無風状態での放電を6時間行った。なお、針電極11Bは接地端子15に接続された導電線12に設けられている。次いで、容器13中の蒸留水16に対して放電を行った後の水(以降、「放電水」と称する)を採取し、各微生物に所定量を噴霧した後、24時間室温にて放置した。その後、各微生物をPDA培地あるいはSCD培地に塗布、培養し、コロニー数を数え、生き残った微生物数Eを求めた。その他、未処理の蒸留水を準備し、放電水の場合と同様に、各微生物に蒸留水を噴霧し、室温で24時間放置した。その後、各微生物をSCDあるいはPDA培地に塗布、培養し、コロニー数を数え、生き残った微生物数Eを求めた。これらに対して、各微生物に蒸留水を滴下した直後に、各微生物をSCDあるいはPDA培地に塗布し、培養し、コロニー数を数え、生き残った微生物数Fを求めてバックグラウンドとした。このようにして、以下の数式3に基づき、放電水を噴霧した場合と蒸留水を噴霧した場合の各殺菌率を求めた。上記試験の結果を表2に示す。
[数3]
殺菌率(%)={1−(E/F)}×100
Figure 2014117524
蒸留水を噴霧しただけでは、いずれの微生物に対しても殺菌効果はほとんど認められないことがわかる。一方、放電水を噴霧すると、各種微生物に対して90%以上の高い殺菌効率が認められた。
また、本試験で用いた蒸留水及び放電水中におけるNO 、NO 濃度を測定したところ、蒸留水ではいずれも全く検出されなかったのに対し、放電水では80ppm以上のNO 、500ppm以上のNO と、それぞれ高濃度で検出された。図7に示す放電の形態によれば、針電極11Bがほぼ水面に位置するため、放電によって生成したHONOやHONO等が空中に拡散することなく水中に溶け込むものと考えられる。このようにして、放電前の蒸留水が高濃度の硝酸水及び亜硝酸水となったことにより、殺菌しづらいカビに対しても殺菌効果を得ることができたと考えられる。
[殺菌試験4]
作用対象として、殺菌試験3と同様の6種の微生物を取り上げ、浄化装置を用いた殺菌効果を確認するべく以下の試験を行った。
前述の放電による浄化装置としては、図8のように、容器13中の蒸留水16の水面11Dから3mm上方に針電極11Cを配置し、ここに定電圧端子14から+5kVの直流高電圧を印加した。蒸留水16は導電線12を介して接地端子15に接続することとした。このようにして、水面11Dを平板の対向電極とみなし、針電極11Cと水面11Dとの間で無風状態での放電を6時間行った。殺菌試験3の場合と同様に、放電により生成した放電水を採取し、各種微生物に噴霧した後、24時間室温で放置した。その後、各微生物をPDA培地あるいはSCD培地に塗布、培養し、コロニー数を数え、生き残った微生物数Gを求めた。これに対して、各微生物に蒸留水を滴下した直後に、SCDあるいはPDA培地に塗布、培養し、コロニー数を数え、生き残った微生物数Hを求めてバックグラウンドとした。このようにして、以下の数式4に基づき殺菌率を求めた。上記試験の結果を表3に示す。
[数4]
殺菌率(%)={1−(G/H)}×100
Figure 2014117524
水面と針電極との間で放電させることとした本試験の方法においても、各種微生物に対して90%以上の殺菌効果が見られた。本結果により、放電電極の一方が水面でも殺菌効果のある水を作製できるという結論が得られた。また、水中の針の設置が不要となるため、殺菌効果のある水をより容易に作製できたとも評価できる。
なお、本試験で用いた放電水中におけるNO 、NO 濃度を測定したところ、NO 濃度は0ppmであったのに対して、NO 濃度は500ppm以上の高い値が得られた。本試験では水面と針電極の間で放電しているため、放電により生成したガスが非常に効率よく水中に溶け込み、その結果、カビにも殺菌効果のある高濃度の硝酸水を作製することができたと考えられる。
以上の実施例から得た結果から、本発明の装置ないし方法を用いることにより、離れた位置に存在する対象に対しても浄化効果を発揮することが確認された。
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。

Claims (9)

  1. 少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させるガス発生手段を備え、
    気相中又は液相中において、前記発生した硝酸及び亜硝酸を、前記ガス発生手段から離間して存在する作用対象に作用させ、
    前記作用対象の表面又は内部において、前記硝酸及び亜硝酸の少なくとも一方が分解する分解反応が進行することにより、前記作用対象が浄化されることを特徴とする浄化装置。
  2. 前記ガス発生手段が、ガス状の二酸化窒素をさらに発生させ、
    前記二酸化窒素から硝酸及び亜硝酸が生成される第一の反応が進行することを特徴とする請求項1に記載の浄化装置。
  3. 前記ガス発生手段が、不平等電界を形成するための形状を有する一対の放電電極と、前記放電電極間に直流又は交流の高電圧を印加する電源と、を備えており、
    前記放電電極間における放電状態が負性抵抗特性を示す領域で維持されることにより、少なくともガス状の一酸化窒素、二酸化窒素、硝酸及び亜硝酸が生成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の浄化装置。
  4. オゾンを発生させるオゾン発生手段をさらに備え、
    前記オゾンと前記一酸化窒素との反応により二酸化窒素が生成される第二の反応が進行することによって、前記二酸化窒素、硝酸及び亜硝酸の少なくともいずれか一方の生成量を増加させることを特徴とする請求項3に記載の浄化装置。
  5. 浄化作用空間の雰囲気を制御する雰囲気制御手段をさらに備え、
    前記制御により、前記分解反応、第一の反応及び第二の反応の少なくともいずれか一方が促進されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の浄化装置。
  6. 前記雰囲気制御手段が、ブラックライト、紫外線LED及び太陽光の少なくともいずれか一方を照射する照射手段を含むことを特徴とする請求項5に記載の浄化装置。
  7. 前記雰囲気制御手段が、前記雰囲気の湿度条件を調整する湿度調整手段を含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の浄化装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の浄化装置と、
    前記浄化装置に併設され、温度を調整する気温制御手段と、
    を備え、
    前記気温制御手段内部の結露を生ずる部分に適用される前記浄化装置が、前記結露部分における微生物を作用の対象として不活化することを特徴とする空調装置。
  9. 少なくともガス状の硝酸及び亜硝酸を発生させる工程と、
    気相中又は液相中において、前記発生した硝酸及び亜硝酸を、作用対象に対して作用させる工程と、
    を備え、
    前記作用対象の表面又は内部において、前記硝酸及び亜硝酸の少なくとも一方が分解することにより、前記作用対象が浄化されることを特徴とする浄化方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110094840A (zh) * 2018-01-31 2019-08-06 青岛海尔智能技术研发有限公司 一种空调室内机的杀菌方法及杀菌空调

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