本発明において、好適には、前記変速機は、常時噛み合う複数対の変速ギヤを2軸間に備える公知の同期噛合型平行2軸式変速機などの手動変速機、種々の自動変速機などである。この自動変速機は、自動変速機単体、流体式伝動装置を有する自動変速機、或いは副変速機を有する自動変速機などにより構成される。
また、好適には、前記エンジンは、例えば燃料の燃焼によって動力を発生するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、そのエンジンと前記電動機との間の動力伝達経路に設けられた前記クラッチは、湿式或いは乾式の係合装置である。
図1は、本発明が適用される車両10に備えられた動力伝達装置12の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。また、図2は、特に、図1のエンジン14の概略構成を説明する図であると共に、車両10における制御系統のうちでエンジン14における出力制御等の為の制御系統の要部を説明する図である。
図1において、車両10は、走行用駆動力源として機能するエンジン14及び電動機MGを備えたハイブリッド車両である。動力伝達装置12は、非回転部材としてのトランスミッションケース20内において、エンジン14側から順番に、エンジン断接用クラッチK0(以下、断接クラッチK0という)、トルクコンバータ16、及び自動変速機18等を備えている。また、動力伝達装置12は、自動変速機18の出力回転部材である変速機出力軸24に連結されたプロペラシャフト26、そのプロペラシャフト26に連結されたディファレンシャルギヤ28、そのディファレンシャルギヤ28に連結された1対の車軸30等を備えている。このように構成された動力伝達装置12は、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型の車両10に好適に用いられる。動力伝達装置12において、エンジン14の動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義)は、断接クラッチK0が係合された場合に、エンジン14のクランク軸15(図2参照)と断接クラッチK0とを連結するエンジン連結軸32から、断接クラッチK0、トルクコンバータ16、自動変速機18、プロペラシャフト26、ディファレンシャルギヤ28、及び1対の車軸30等を順次介して1対の駆動輪34へ伝達される。このように、動力伝達装置12は、エンジン14から駆動輪34までの動力伝達経路を構成する。
トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16aに入力された動力を流体を介して伝達することでタービン翼車16bから出力する流体式伝動装置である。ポンプ翼車16aは、断接クラッチK0を介してエンジン連結軸32と連結されていると共に、直接的に電動機MGと連結されている。タービン翼車16bは、自動変速機18の入力回転部材である変速機入力軸36と直接的に連結されている。ポンプ翼車16aにはオイルポンプ22が連結されている。オイルポンプ22は、エンジン14(及び/又は電動機MG)によって回転駆動されることにより、自動変速機18の変速制御や断接クラッチK0の係合解放制御などを実行する為の作動油圧を発生する機械式のオイルポンプである。
自動変速機18は、エンジン14及び電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路の一部を構成し、走行用駆動力源(エンジン14及び電動機MG)からの動力を駆動輪34側へ伝達する変速機である。自動変速機18は、例えば変速比(ギヤ比)γ(=変速機入力回転速度Nin/変速機出力回転速度Nout)が異なる複数の変速段(ギヤ段)が選択的に成立させられる公知の遊星歯車式多段変速機、或いはギヤ比γが無段階に連続的に変化させられる公知の無段変速機などである。自動変速機18では、例えば油圧アクチュエータが油圧制御回路40によって制御されることにより、運転者のアクセル操作や車速V等に応じて所定のギヤ段(ギヤ比)が成立させられる。
電動機MGは、電気エネルギから機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的なエネルギーから電気エネルギを発生させる発電機としての機能を有する所謂モータジェネレータである。電動機MGは、動力源であるエンジン14の代替として、或いはそのエンジン14と共に走行用の動力を発生させる走行用駆動力源として機能する。電動機MGは、エンジン14により発生させられた動力や駆動輪34側から入力される被駆動力から回生により電気エネルギを発生させ、その電気エネルギをインバータ42を介して蓄電装置44に蓄積する等の作動を行う。電動機MGは、断接クラッチK0とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路に連結されており(すなわち作動的にポンプ翼車16aに連結されており)、電動機MGとポンプ翼車16aとの間では、相互に動力が伝達される。従って、電動機MGは、断接クラッチK0を介することなく自動変速機18の変速機入力軸36と動力伝達可能に連結されている。
断接クラッチK0は、例えば互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型の油圧式摩擦係合装置であり、オイルポンプ22が発生する油圧を元圧とし油圧制御回路40によって係合解放制御される。その係合解放制御においては、例えば油圧制御回路40内のリニヤソレノイドバルブ等の調圧により、断接クラッチK0のトルク容量(以下、K0トルクという)が変化させられる。断接クラッチK0の係合状態では、エンジン連結軸32を介してポンプ翼車16aとエンジン14とが一体的に回転させられる。一方で、断接クラッチK0の解放状態では、エンジン14とポンプ翼車16aとの間の動力伝達が遮断される。すなわち、断接クラッチK0を解放することでエンジン14と駆動輪34とが切り離される。電動機MGはポンプ翼車16aに連結されているので、断接クラッチK0は、エンジン14と電動機MGとの間の動力伝達経路に設けられて、その動力伝達経路を断接するクラッチとしても機能する。
図2において、エンジン14は、例えば各気筒(シリンダ)50内に燃料を直接噴射する直噴式の公知の4サイクルガソリンエンジンである。このエンジン14は、シリンダヘッドとピストンとの間に設けられた燃焼室52と、燃焼室52の吸気ポートに接続された吸気管54と、燃焼室52の排気ポートに接続された排気管56と、シリンダヘッドに設けられ燃焼室52に燃料Fを直接噴射する燃料噴射装置58と、燃焼室52内の混合気に点火する点火装置60と、燃焼室52の吸気ポートを開放又は閉塞させる吸気弁62と、燃焼室52の排気ポートを開放または閉塞させる排気弁64と、吸気弁62をクランク軸15の回転に同期して往復運動させることにより開閉作動させる吸気弁駆動装置66と、排気弁64をクランク軸15の回転に同期して往復運動させることにより開閉作動させる排気弁駆動装置68とを備えている。
エンジン14の吸気管54内には、電子スロットル弁70が設けられており、その電子スロットル弁70はスロットルアクチュエータ72により開閉作動させられる。このエンジン14では、吸気管54から燃焼室52に吸入される吸入空気に燃料噴射装置58から燃料Fが噴射供給されて混合気が形成され、その混合気が点火装置60により点火されて燃焼する。これにより、エンジン14は駆動され、燃焼後の混合気は排気ガスとして排気管56内へと送り出される。
吸気弁駆動装置66は、吸気弁62のタイミング(以下、吸気バルブタイミングという)VT等を適宜変更する機能も備えており、例えば吸気バルブタイミングを変更する吸気バルブタイミング変更装置としても機能する。吸気弁駆動装置66の作動原理としては種々のものが一般的に知られているが、例えば、吸気弁駆動装置66は、クランク軸15の回転に連動するカム機構であって、互いに異なる形状の複数のカムの何れかを油圧制御又は電動制御により選択的に用いて吸気弁62を開閉作動させる機構であっても良く、或いはクランク軸15の回転に連動するカム機構とそのカム機構のカムの動作を油圧制御又は電動制御で修正する機構とを併せて活用し吸気弁62を開閉作動させるものであっても良い。要するに、吸気弁駆動装置66は例えば上記カム機構を主体として構成されており、吸気弁62の開時期と閉時期との両方(すなわち開閉時期)を進角させ又は遅角させる吸気バルブタイミング変更装置としての機能を有する。
図3は、吸気バルブタイミングを説明する為の図である。図3において矢印AR01及び矢印AR11は、吸気弁62が開いているクランク角度Acrの範囲すなわち吸気弁62の開放期間を示している。また、矢印AR01は、吸気弁駆動装置66により吸気バルブタイミングVTが進角方向へ最大ずらされた最進角状態(最進角位置)を示している一方で、矢印AR11は、吸気弁駆動装置66により吸気バルブタイミングVTが遅角方向へ最大ずらされた最遅角状態(最遅角位置)を示している。上記最遅角位置は、例えばエンジン停止時の基準位置である。本実施例では、例えばエンジン14を停止させる際には次のエンジン始動に備えて吸気バルブタイミングVTが基準位置へずらされ、例えばエンジン14の低中回転域での高負荷時には吸気バルブタイミングVTが進角方向へずらされる。このように、本実施例のエンジン14においては、吸気弁駆動装置66により吸気バルブタイミングVTを矢印ARの範囲内で変更することができる。
車両10には、例えば断接クラッチK0の係合解放制御や吸気バルブタイミングVTの変更制御などに関連する車両10の制御装置を含む電子制御装置90が備えられている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置90は、エンジン14の出力制御、電動機MGの回生制御を含む電動機MGの駆動制御、自動変速機18の変速制御、断接クラッチK0のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や電動機制御用や油圧制御用等に分けて構成される。電子制御装置90には、図1,2に示すように、各種センサ(例えばエンジン回転速度センサ74、タービン回転速度センサ76、出力軸回転速度センサ78、電動機回転速度センサ80、アクセル開度センサ82、スロットルセンサ84、エアフローメータ(吸入空気量センサ)86、吸気弁側カムポジションセンサ88、バッテリセンサ89など)による検出値に基づく各種信号(例えばエンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Ne及びクランク角度Acr、タービン回転速度Ntすなわち変速機入力軸36の回転速度である変速機入力回転速度Nin、車速Vに対応する変速機出力軸24の回転速度である変速機出力回転速度Nout、電動機MGの回転速度である電動機回転速度Nm、運転者による車両10に対する駆動要求量に対応するアクセル開度θacc、電子スロットル弁70の開き角度を表すスロットル弁開度θth、エンジン14の吸入空気量Qair、カムシャフト角度Aca、蓄電装置44の充電状態(充電容量)SOCなど)が、それぞれ供給される。電子制御装置90からは、図1,2に示すように、例えばエンジン14の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、電動機MGの作動を制御する為の電動機制御指令信号Sm、断接クラッチK0や自動変速機18の油圧アクチュエータを制御する為に油圧制御回路40に含まれる電磁弁(ソレノイドバルブ)等を作動させる為の油圧指令信号Spなどが、燃料噴射装置58、点火装置60、吸気弁駆動装置66、スロットルアクチュエータ72等のエンジン制御装置、インバータ42、油圧制御回路40などへそれぞれ出力される。
図4は、電子制御装置90による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4において、変速制御手段すなわち変速制御部92は、例えば車速Vと駆動要求量(例えばアクセル開度θacc等)とを変数として予め定められた公知の関係(変速線図、変速マップ;不図示)から車両状態(例えば実際の車速V及びアクセル開度θacc等)に基づいて、自動変速機18の変速を実行すべきか否かを判断し、その判断したギヤ段(ギヤ比)が得られる為の変速指令値を油圧制御回路40へ出力して、自動変速機18の自動変速制御を実行する。この変速指令値は、前記油圧指令信号Spの1つである。
ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部94は、エンジン14の駆動を制御するエンジン駆動制御部としての機能と、インバータ42を介して電動機MGによる駆動力源又は発電機としての作動を制御する電動機作動制御部としての機能を含んでおり、それら制御機能によりエンジン14及び電動機MGによるハイブリッド駆動制御等を実行する。例えば、ハイブリッド制御部94は、アクセル開度θaccや車速Vに基づいて運転者による車両10に対する駆動要求量(すなわちドライバ要求量)としての要求駆動トルクTouttgtを算出し、伝達損失、補機負荷、自動変速機18のギヤ比γ、蓄電装置44の充電容量SOC等を考慮して、その要求駆動トルクTouttgtが得られる走行用駆動力源(エンジン14及び電動機MG)の出力トルクとなるようにその走行用駆動力源を制御する指令信号(エンジン出力制御指令信号Se及び電動機制御指令信号Sm)を出力する。特に、エンジン14の出力トルク(エンジントルク)Teの制御では、ハイブリッド制御部94は、スロットル弁開度θth、燃料噴射装置58による燃料噴射量(燃料供給量)、及び点火装置60による点火時期を各々制御する他に、吸気弁駆動装置66による吸気バルブタイミングVTを制御するエンジン出力制御指令信号Seを出力する。前記駆動要求量としては、駆動輪34における要求駆動トルクTouttgt[Nm]の他に、駆動輪34における要求駆動力[N]、駆動輪34における要求駆動パワー[W]、変速機出力軸24における要求変速機出力トルク、及び変速機入力軸36における要求変速機入力トルク、走行用駆動力源(エンジン14及び電動機MG)の目標トルク等を用いることもできる。また、駆動要求量として、単にアクセル開度θacc[%]やスロットル弁開度θth[%]や吸入空気量Qair[g/sec]等を用いることもできる。
具体的には、ハイブリッド制御部94は、例えば要求駆動トルクTouttgtが電動機MGの出力トルク(MGトルク)Tmのみで賄える範囲の場合には、走行モードをモータ走行モード(以下、EVモード)とし、電動機MGのみを走行用の駆動力源として走行するモータ走行(EV走行)を行う。一方で、ハイブリッド制御部94は、例えば上記要求駆動トルクTouttgtが少なくともエンジントルクTeを用いないと賄えない範囲の場合には、走行モードをエンジン走行モードすなわちハイブリッド走行モード(以下、EHVモード)とし、少なくともエンジン14を走行用の駆動力源として走行するエンジン走行すなわちハイブリッド走行(EHV走行)を行う。尚、要求駆動トルクTouttgtをMGトルクTmのみで賄える場合であっても、例えば蓄電装置44の充電容量SOC及び/又は蓄電装置温度に応じた放電可能な電力(パワー)すなわち出力制限Woutに基づいて放電が制限された為にEV走行できない場合、蓄電装置44の充電が要求された場合、或いはエンジン14やエンジン14に関連する機器の暖機が必要な場合等には、EHV走行が行われる。
ハイブリッド制御部94は、EV走行を行う場合には、断接クラッチK0を解放させてエンジン14とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路を遮断すると共に、電動機MGにEV走行に必要なMGトルクTmを出力させる。一方で、ハイブリッド制御部94は、EHV走行を行う場合には、断接クラッチK0を係合させてエンジン14とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路を接続すると共に、エンジン14にEHV走行に必要なエンジントルクTeを出力させつつ必要に応じて電動機MGにアシストトルクとしてMGトルクTmを出力させる。
ハイブリッド制御部94は、EHV走行中に、例えばアクセル戻しなどによって要求駆動トルクTouttgtがMGトルクTmのみで賄える範囲となった場合、出力制限Woutに基づいた放電の制限が解除された場合、蓄電装置44の充電が完了した為に充電要求が解除された場合、或いはエンジン14やエンジン14に関連する機器の暖機が完了した場合等には、走行モードをEHVモードからEVモードへ切り換え、断接クラッチK0を解放させると共にエンジン14を停止させてEV走行を行う。
ここで、ショックを抑制してエンジン14を停止する為には、断接クラッチK0の解放時にエンジントルクTeを零乃至零付近とすることが望ましい。例えば、エンジントルクTeを正側で且つできるだけ零として、断接クラッチK0を解放すると、効果的にショックを低減できることが分かった。その為、EHVモードからEVモードへの切換えに伴ってエンジン14を停止する際には、エンジントルクTeを速やかに且つ精度良く零に向けて低減することが望まれる。
そこで、本実施例では、電子制御装置90は、エンジン14を作動させた走行中(EHV走行中)に断接クラッチK0を解放する際は、吸気バルブタイミングVTを遅角側へ変更すると共に、所定条件の成立後にエンジン14の点火遅角を開始して、エンジントルクTeを所定トルクTethまで低下させてから断接クラッチK0を解放する。
より具体的には、図4に戻り、フラグ設定手段すなわちフラグ設定部96は、エンジン停止処理実行要求フラグ、K0解放制御実行要求フラグ、吸気バルブタイミング戻し制御実行要求フラグ、停止前制御実行要求フラグ、及びフューエルカット(F/C)要求フラグの各種フラグのオン(ON)とオフ(OFF)とを切り替える。
フラグ設定部96は、EHV走行中に、例えば要求駆動トルクTouttgtがMGトルクTmのみで賄える範囲となったか、蓄電装置44の放電制限が解除されたか、蓄電装置44の充電要求が解除されたか、或いはエンジン14等の暖機が完了したか等によって、エンジン14の運転が必要なくなった場合には、一連のエンジン14の停止処理を実行する為のエンジン停止処理実行要求フラグを立てる(オンとする)。フラグ設定部96は、一連のエンジン14の停止処理が完了した場合には、エンジン停止処理実行要求フラグを解除する(オフとする)。
フラグ設定部96は、エンジン14の停止処理の実行中は、断接クラッチK0の解放が完了されるまで、吸気バルブタイミングVTを最遅角位置へ戻す為の吸気バルブタイミング戻し制御実行要求フラグ、及びスロットル弁開度θthをエンジン停止前の所定開度に設定する為の停止前制御実行要求フラグをオンとする。フラグ設定部96は、断接クラッチK0の解放が完了されると、エンジン14のフューエルカット制御を実行する為のF/C要求フラグをオンとすると共に、吸気バルブタイミング戻し制御実行要求フラグ及び停止前制御実行要求フラグをオフとする。
フラグ設定部96は、エンジン14の停止処理の実行中は、エンジントルクTeが所定トルクTeth以下に低下させられるまで、断接クラッチK0の解放を実際に実行する為のK0解放制御実行要求フラグをオフとする。フラグ設定部96は、エンジントルクTeが所定トルクTeth以下に低下させられると、K0解放制御実行要求フラグをオンとする。フラグ設定部96は、断接クラッチK0の解放が完了されると、K0解放制御実行要求フラグをオフとする。
走行状態判定手段すなわち走行状態判定部98は、エンジン停止処理実行要求フラグがオンであるか否かを判定する。走行状態判定部98は、K0解放制御実行要求フラグがオフであるか否かを判定する。走行状態判定部98は、エンジン停止処理実行要求フラグがオンであり且つK0解放制御実行要求フラグがオフである場合には、上記所定条件が成立したか否かを判定する。走行状態判定部98は、上記所定条件が成立したと判定した場合には、エンジントルクTeが所定トルクTeth以下に低下したか否かを判定する。一方で、走行状態判定部98は、K0解放制御実行要求フラグがオンである場合には、断接クラッチK0の解放が完了したか否かを判定する。
前記所定条件は、例えばエンジン14の点火遅角を実行すればエンジントルクTeを所定トルクTethまで低下させることができるとして予め定められた所定空気量までエンジン14の筒内空気量が低下したかである。エンジン14の筒内空気量は、例えば所定のマップ或いは所定の算出式から吸入空気量Qair等に基づいて電子制御装置90により求められる。或いは、エンジン14の筒内空気量は、例えば所定のマップ或いは所定の算出式から、サージタンク圧PM(例えばセンサ値)、吸気バルブタイミングVT(例えば指令値)、及びエンジン回転速度Ne等に基づいて電子制御装置90により求められる。また、吸気バルブタイミングVTが例えば最遅角位置へ戻されて一定であることを勘案すれば、サージタンク圧PM(例えばセンサ値)に基づいてエンジン14の筒内空気量を求めても良いなど、筒内空気量は種々の方法で求められる。
前記所定トルクTethは、例えば断接クラッチK0を解放してもショックの発生が抑制されるエンジントルクTeとして予め定められた零(=0)乃至零近傍(=0+α;α≧0)の値である。本実施例の車両10は自動変速機18を備えており、高車速側のギヤ段(ギヤ比)であるハイギヤ段(ハイギヤ比)程、断接クラッチK0の解放ショックが抑制され易い(許容され易い)と考えられる。
一方で、所定トルクTethが大きい程、断接クラッチK0の解放を開始する時期を早められて、燃費を向上することができる。そこで、図5に示すように、自動変速機18のギヤ段がハイギヤ段である程、所定トルクTethを大きくしても良い。このようにギヤ段(ギヤ比)に応じて所定トルクTethを変更する場合には、この所定トルクTethの変更に応じて上記所定空気量を変更しても良い。
或いは、前記所定条件は、断接クラッチK0の解放が要求されてから(すなわちエンジン停止処理実行要求フラグがオンとされてから)エンジン14の点火遅角の開始を待機している時間として予め定められた所定時間が経過したかであっても良い。この所定時間は、例えば所定のマップ或いは所定の算出式から、断接クラッチK0の解放時のエンジン回転速度Ne、スロットル弁開度θth、及び吸気バルブタイミングVTの少なくとも1つを含むパラメータに基づいて決定される時間(すなわち点火遅角開始までの待機時間)である。例えば、所定時間は、図6に示すような所定のマップ(待機時間マップ)から断接クラッチK0の解放開始時の予測エンジン回転速度Ne及び予測スロットル弁開度θthに基づいて算出される。この待機時間マップは、エンジン14の筒内空気量が所定空気量まで低下するのを待機する時間を、エンジン回転速度Ne、スロットル弁開度θth、及び吸気バルブタイミングVT等に基づいて予め定めた適合値である。図6の待機時間マップは、例えばエンジン14の筒内空気量の減り易さに関連しており、エンジン回転速度Neが高い程、点火遅角開始までの待機時間が短くされ、スロットル弁開度θthが大きい程、点火遅角開始までの待機時間が長くされている。また、断接クラッチK0が実際に解放されるまではエンジン回転速度Neは略一定であると見れば、予測エンジン回転速度Neはエンジン停止処理実行要求フラグがオンとされたときの実際値を用いれば良い。また、予測スロットル弁開度θthは、後述するようにエンジン回転速度Neに基づいて算出されるエンジン停止前スロットル弁開度θthを用いれば良い。
ハイブリッド制御部94は、フラグ設定部96によりエンジン停止処理実行要求フラグがオンとされて、吸気バルブタイミング戻し制御実行要求フラグがオンとされた場合には、次のエンジン始動に備える為に、吸気バルブタイミングVTを最遅角位置へ戻すエンジン出力制御指令信号Seを吸気弁駆動装置66へ出力する。
ハイブリッド制御部94は、走行状態判定部98により上記所定条件が成立したと判定された場合には、エンジン14の点火時期を遅角する点火遅角制御を開始し、その点火遅角制御によってエンジントルクTeを所定トルクTethに向けて所定の勾配で漸減する(スイープダウンする)エンジン出力制御指令信号Seを点火装置60へ出力する。ハイブリッド制御部94は、車両10の再加速に備える為に、この点火遅角制御を開始するまでは少なくとも、断接クラッチK0のスリップを抑制することができるとして予め定められた所定トルク容量以上にK0トルクを保持する油圧指令信号Spを油圧制御回路40へ出力する。ハイブリッド制御部94は、エンジン回転速度Neが低回転のときに筒内吸気量を速やかに所定空気量まで低下させる為に、及びエンジン回転速度Neが高回転のときにエンジントルクTeが負トルクとなることによるショックを抑制する為に、この点火遅角制御を開始するまでは少なくとも、スロットル弁開度θthを所定スロットル弁開度とするエンジン出力制御指令信号Seをスロットルアクチュエータ72へ出力する。この所定スロットル弁開度は、例えば図7の予め定められたスロットル弁開度マップに示すように、エンジン回転速度Neが高い程大きくされる。
ハイブリッド制御部94は、走行状態判定部98によりエンジントルクTeが所定トルクTeth以下に低下したと判定されてフラグ設定部96によりK0解放制御実行要求フラグがオンとされた場合には、断接クラッチK0の解放に向けてK0トルクを低下させる油圧指令信号Spを油圧制御回路40へ出力する。
ハイブリッド制御部94は、走行状態判定部98により断接クラッチK0の解放が完了したと判定されてフラグ設定部96によりF/C要求フラグがオンとされた場合には、エンジン14への燃料Fの供給を停止するフューエルカット制御を実行するエンジン出力制御指令信号Seを燃料噴射装置58へ出力する。
図8は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわちEHV走行中における断接クラッチK0の解放に際して点火遅角の実行時間を短くして燃費を向上させる為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。図9は、図8のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートである。
図8において、先ず、走行状態判定部98に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、例えばエンジン停止処理実行要求フラグがオンであるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合は、例えば一連のエンジン14の停止処理が開始され(図9のt1時点)、走行状態判定部98に対応するS20において、例えばK0解放制御実行要求フラグがオフであるか否かが判定される。このS20の判断が肯定される場合はフラグ設定部96に対応するS30,S40(順不同)において、例えば吸気バルブタイミング戻し制御実行要求フラグ及び停止前制御実行要求フラグが共にオンとされる。そして、次のエンジン始動に備えて吸気バルブタイミングVTが最遅角位置へ戻される(図9のt1時点乃至t1’時点)。また、スロットル弁開度θthがエンジン回転速度Neに応じた所定スロットル弁開度とされる(図9のt1時点以降)。また、車両10の再加速に備えてK0トルクが所定トルク容量以上に保持される(図9のt1時点乃至t3時点)。次いで、走行状態判定部98に対応するS50において、例えば前記所定条件が成立したか否かが判定される。例えば、エンジン14の筒内空気量が所定空気量まで低下したか否かが判定される。このS50の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが肯定される場合は走行状態判定部98に対応するS60において、例えばエンジントルクTeが所定トルクTeth以下に低下したか否かが判定される(図9のt2時点)。このS60の判断が否定される場合はハイブリッド制御部94に対応するS70において、エンジン14の点火遅角制御が開始され、このS60の判断が肯定されるまで、その点火遅角制御によってエンジントルクTeが所定トルクTethに向けてスイープダウンさせられる(図9のt2時点乃至t3時点)。上記S60の判断が肯定される場合はフラグ設定部96に対応するS80において、K0解放制御実行要求フラグがオンとされる(図9のt3時点)。上記S20の判断が否定されるか或いは上記S80に次いで、走行状態判定部98に対応するS90において、断接クラッチK0の解放が完了したか否かが判定される。このS90の判定が否定される場合はハイブリッド制御部94に対応するS100において、断接クラッチK0の解放に向けてK0トルクが低下させられる(図9のt3時点以降)。断接クラッチK0が解放されて上記S90の判定が肯定される場合はフラグ設定部96に対応するS110,S120,S130(順不同)において、例えばF/C要求フラグがオンとされ、吸気バルブタイミング戻し制御実行要求フラグ及び停止前制御実行要求フラグが共にオフとされる。そして、エンジン14のフューエルカット制御が実行される(図9のt3’時点)。次いで、フラグ設定部96に対応するS140において、例えばエンジン停止処理実行要求フラグがオフとされる(図9のt3’時点)。
図9のタイムチャートは、例えばエンジン低回転からエンジン14を停止する場合の一例を示したものである。図9において、例えばアクセル戻しによって一連のエンジン14の停止処理が開始され(t1時点)、筒内空気量を低下させる為に電子スロットル弁70が閉じられる。このときのスロットル弁開度θthはエンジン回転速度Neに応じて定められる(t1時点以降)。また、吸気バルブタイミングVTは次のエンジン始動に備えて最遅角位置へ戻される(t1時点乃至t1’時点)。筒内空気量が十分に低下するのを待ってから点火時期が遅角されてエンジントルクTeが所定トルクTethまで低下させられる(t2時点乃至t3時点)。エンジントルクTeが所定トルクTethまで低下させられた後に、断接クラッチK0が解放される(t3時点以降)が、それまでは車両10の再加速に備えてK0トルクが十分に高いトルク容量に維持される(t1時点乃至t3時点)。このような一連のエンジン14の停止処理を実行することで、点火遅角を直ぐに開始するような比較例(線分の短い破線参照)と比べて、点火遅角の実行時間が短くされ、点火遅角により低下させられなかったエンジントルク分を充電パワーや駆動パワーとして使用することができるので、燃費が向上させられる。
上述のように、本実施例によれば、所定条件が成立するまで点火遅角を遅らせることで、点火遅角の開始後はその点火遅角により速やかにエンジントルクTeを所定トルクTethまで低下させられる。つまり、点火遅角によって速やかにエンジントルクTeを所定トルクTethまで低下させられるようになるまでは点火遅角を行わないことで、不要な点火遅角が抑制される。従って、点火遅角により低下させられなかったエンジントルク分を充電パワーや駆動パワーとして使用することができる。よって、EHV走行中における断接クラッチK0の解放に際して、点火遅角の実行時間を短くして燃費を向上させることができる。
また、本実施例によれば、前記所定条件は、予め定められた所定空気量までエンジン14の筒内空気量が低下したかであるので、所定条件の成立後は点火遅角により確実にエンジントルクTeを所定トルクTethまで低下させられる。
また、本実施例によれば、前記所定条件は、断接クラッチK0の解放が要求されてから(すなわちエンジン14の停止が要求されてから)点火遅角の開始を待機している時間として予め定められた所定時間が経過したかであり、前記所定時間は、断接クラッチK0の解放時のエンジン回転速度Ne、スロットル弁開度θth、及び吸気バルブタイミングVTの少なくとも1つを含むパラメータによって決まる時間であるので、所定条件の成立後は点火遅角により確実にエンジントルクTeを所定トルクTethまで低下させられる。
また、本実施例によれば、点火遅角を開始するまでは、K0トルクを、断接クラッチK0のスリップを抑制することができるとして予め定められた所定トルク容量以上に保持するので、解放に向けて制御中の断接クラッチK0を例えば駆動力要求等により再係合する際に、エンジントルクTeを速やかに立ち上げても、スリップを抑制しつつ断接クラッチK0を完全係合に向けて制御できるので、再加速時の車両応答性を向上できる。従って、車両の再加速等による急なエンジントルクTeの増加に備えることができる。
また、本実施例によれば、点火遅角を開始するまでのスロットル弁開度θthは、エンジン回転速度Neが高い程大きくされるので、点火遅角を開始するまでの筒内空気量を適切なものとすることができる。つまり、エンジン回転速度Neが低いときは、スロットル弁開度θthを閉じることで、所望する筒内空気量に追従し易くなる。一方で、エンジン回転速度Neが高いときは、スロットル弁開度θthをある程度開いておかないとエンジントルクTeが負トルクとなってショックを生じさせる可能性があることを抑制できる。
また、本実施例によれば、前記所定トルクは、予め定められた零乃至零近傍の値であるので、エンジントルクTeを所定トルクTethまで低下させてから断接クラッチK0を解放することで、解放ショックが適切に抑制される。
また、本実施例によれば、前記所定トルクは、自動変速機18のギヤ比γがハイギヤ比である程大きくされるので、解放ショックが許容されやすい程、断接クラッチK0が早く解放される。従って、断接クラッチK0の解放後にエンジン14をフューエルカットする場合、燃費を向上させることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、エンジントルクTeが所定トルクTeth以下に低下した場合に断接クラッチK0の解放を開始したが、これに限らない。所定条件が成立した以降(例えば筒内空気量が所定空気量まで低下した以降)に断接クラッチK0の解放を開始しても良い。つまり、エンジントルクTeが所定トルクTeth以下に低下しなくとも、点火遅角を実行すればエンジントルクTeが所定トルクTeth以下にできることが分かったときに、断接クラッチK0の解放を開始しても良い。ことらの方がより早く断接クラッチK0を解放することができる。図8のフローチャートにおいては、例えばS50が肯定される場合に、S60及びS80が実行されることになる。図9のタイムチャートにおいては、例えばt2時点で断接クラッチK0の解放が開始される。また、F/C信号のON、エンジン回転速度Neの低下時期、エンジントルクTeの負トルクへの低下時期についても、断接クラッチK0の解放開始に整合して、前出しされる。
また、前述の実施例では、吸気弁駆動装置66は、吸気バルブタイミング(吸気弁62の開閉時期)を適宜変更するものであったが、これに限らない。つまり、前述の実施例では、吸気バルブタイミングを、吸気弁62の開時期と閉時期との両方としたが、これに限らない。吸気バルブタイミングには、例えば開時期と閉時期との両方はもちろんのこと、開時期のみ、閉時期のみも含まれる。例えば、電磁式の機構等により開時期と閉時期とを各々独立に変更できるものであれば、開時期のみ、或いは閉時期のみの変更も可能である。本発明は、吸気弁62のタイミングとして少なくとも閉時期を変更することができるエンジン14であれば、適用され得る。
また、前述の実施例では、エンジン14は直噴式のエンジンであったが、これに限らない。例えば、燃料噴射装置58が吸気管54に設けられる形式のエンジンであっても良い。
また、前述の実施例では、流体式伝動装置としてトルクコンバータ16が用いられていたが、トルク増幅作用のない流体継手などの他の流体式伝動装置が用いられても良い。また、この流体式伝動装置は必ずしも設けられなくても良い。
また、前述の実施例において、車両10には、自動変速機18が設けられていたが、自動変速機18のギヤ比γに応じて前記所定トルクを変更するという態様を除き、この自動変速機18は必ずしも設けられなくても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。