JP2014112068A - 質量分析におけるピーク検出方法及びそのシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】以下の工程を含んだマススペクトルからのイオンピークの検出を行う。質量分析計を使用して取得され、質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得する工程、前記取得したマススペクトルデータ内のピークを、前記ピークの強度に応じた複数のクラスに分類する工程、前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいて、ピークをイオンピークかノイズピークかを同定する。
【選択図】図3
Description
計測の様々な要因が実験結果に影響を与えることにより、ピーク形状が理想的な形状から歪んでいる場合、またはノイズピーク内に埋もれている場合、スペクトル内に記録されているピークを同定するのは困難になる。コンピュータプログラムの点からは、これら変動を反映するように正確なモデルを構築するのは非常に難しい。スペクトルからイオンピークを同定するために使用される方法は制限されているため、ピークリストが、分解された形状から著しい強度を有するピークだけを含む場合、一部のイオン情報は失われることがある。対照的に、強度の低いイオンピークを検出するには、より多くのノイズピークが含まれてしまう。どちらの場合も、ピークリストは質量分析実験で得られたスペクトルから本来得られるはずの最良の解析結果とは異なる。
十分な品質のピークリストは、強度の高いピークだけでなく、強度の低いピークも含み、誤ったピークの数を最小に抑えたリストである。これには、スペクトル内に存在する正確なノイズレベルを判定するピーク検出方法を必要とする。しかし、ノイズの分布を見出すにはいくつかの不確かな要因が存在するため、これはピーク検出方法において決して些細な仕事ではなかった。ノイズは、どの計器が使用されるか、またはどの質量もしくは強度範囲が選択されるかに応じて変動する。ノイズレベルの同定が適切でなければ、ピークリスト内に、誤りを招くような信号を生成する。既存のソフトウェアでは、イオンピークの選択を最適化するために、様々なパラメータおよび公差値が適用される。したがって、これらの方法には通常、より多くのパラメータが求められる。一般に使用されるパラメータとしては、信号対雑音比、強度閾値、極大値およびピーク幅などをである。ピーク検出においてピークの形状および分布も考慮される場合、追加の基準を使用して、提案されたモデルが選択されたピークに適合しているかどうかを判断する。これらのパラメータは、プログラム内で設定され、または経験豊富なユーザによって判定されてインターフェースを通じて入力される。最適化されたパラメータの組合せは、特定のスペクトルにとって妥当な結果を与えることもあるが、他のスペクトルに適用するには適当でないこともある。非特許文献3の試験報告によれば、これらのピーク検出プログラムを使用することによって感度を増大できなければ、誤り発見率が高くなることが分かった。これは、より多くのノイズピークがピークリスト内に現れることを意味する。
マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する方法であって、
質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得する工程と、
前記取得したマススペクトルデータ内のピークを、ピーク強度に応じた複数のクラスに分類する、ピーク強度分類工程と、
前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、イオンピーク検出工程とを含む、イオンピーク検出方法。
前記ピーク強度に応じた複数のクラスが、高強度のクラス、中強度のクラス、及び低強度のクラスを含む、(1)に記載のイオンピーク検出方法。
前記低強度のクラスに分類されたピークからノイズレベルを判定し、該ノイズレベルに基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、(2)に記載のイオンピーク検出方法。
前記低強度のクラスに分類されたピークとともに、前記中強度のクラスに分類されたピークからノイズレベルを判定する、(3)に記載のイオンピーク検出方法。
前記高強度のクラスには、前記低強度のクラスからの孤立値であるピークを分類する、(2)に記載のイオンピーク検出方法。
前記孤立値は、Zスコア法を使用して求める、(5)に記載のイオンピーク検出方法。
前記低強度のクラスに分類されたピークからのノイズレベルの判定が、
前記低強度のクラスのクラスに分類されたピークの中央位置と、前記低強度のクラスに分類されたピークの平均信号雑音比とを比較することにより、前記低強度のクラスに分類されたピークの強度分類を修正する工程と、
前記修正された、低強度に分類されたピークから、ノイズレベルを判定する工程とを含む、(3)に記載のイオンピーク検出方法。
マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する方法であって、
質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得する工程と、
前記取得したマススペクトルデータを所与の質量範囲へ分割する、質量範囲分割工程と、
前記分割された質量範囲内のピークを、ピーク強度に応じた複数のクラスに分類する、ピーク強度分類工程と、
前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、イオンピーク検出工程とを含む、イオンピーク検出方法。
前記質量範囲の分割が、100Da〜300Daから選択される範囲に設定される、(8)に記載のイオンピーク検出方法。
マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出するシステムであって、
質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得し、マススペクトルデータ内のピークを、前記ピーク強度に応じた複数のクラスに分類する、ピーク強度分類手段と、
前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいてノイズレベルの判定を行うノイズレベル判定手段と、
前記判定したノイズレベルに基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、イオンピーク検出手段と、
を備えることを特徴とするイオンピーク検出システム。
前記ピーク強度分類手段における前記ピークの強度に応じた複数のクラスが、高強度のクラス、中強度のクラス、及び低強度のクラスを含む、(10)に記載のイオンピーク検出システム。
前記ノイズレベル判定手段において、該低強度のクラスに分類されたピークからノイズレベルを判定し、該ノイズレベルに基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、(11)に記載のイオンピーク検出システム。
前記ノイズレベル判定手段において、前記低強度のクラスに分類されたピークとともに、前記中強度のクラスに分類されたピークからノイズレベルを判定する、(12)に記載のイオンピーク検出システム。
前記ピーク強度分類手段において、前記高強度のクラスには、前記低強度のクラスからの孤立値であるピークを分類する、(11)に記載のイオンピーク検出システム。
前記ピーク強度分類手段において、前記孤立値は、Zスコア法を使用して求める、(14)に記載のイオンピーク検出システム。
前記マススペクトルデータを所与の質量範囲へ分割する、質量範囲分割手段とを更に含む、(10)に記載のイオンピーク検出システム。
前記質量範囲分割手段が、マススペクトルを100Da〜300Daから選択される範囲に分割する、(16)に記載のイオンピーク検出システム。
コンピュータに、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する手順を実行させるためのプログラムであって、
質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得する手順と、
前記取得したマススペクトルデータ内のピークを、ピーク強度に応じた複数のクラスに分類する、ピーク強度分類手順と、
前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、イオンピーク検出手順とを含む、イオンピーク検出プログラム。
前記ピーク強度に応じた複数のクラスが、高強度のクラス、中強度のクラス、及び低強度のクラスを含む、(18)に記載のイオンピーク検出プログラム。
当該低強度のクラスに分類されたピークからノイズレベルを判定し、当該ノイズレベルに基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、(19)に記載のイオンピーク検出プログラム。
前記低強度のクラスに分類されたピークとともに、前記中強度のクラスに分類されたピークからノイズレベルを判定する、(20)に記載のイオンピーク検出プログラム。
前記高強度のクラスには、前記低強度のクラスからの孤立値であるピークを分類する、(19)に記載のイオンピーク検出プログラム。
前記孤立値は、Zスコア法を使用して求める、(22)に記載のイオンピーク検出プログラム。
前記低強度のクラスに分類されたピークからのノイズレベルの判定が、
前記低強度のクラスに分類されたピークの中央位置と、前記低強度のクラスに分類されたピークの平均信号雑音比とを比較することにより、前記低強度のクラスに分類されたピークの強度分類を修正する手順と、
前記修正された、低強度のクラスに分類されたピークから、ノイズレベルを判定する手順とを含む、(20)に記載のイオンピーク検出プログラム。
コンピュータにマススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する手順を実行させるためのプログラムであって、
質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得する手順と、
前記取得したマススペクトルデータを所与の質量範囲へ分割する、質量範囲分割手順と、
前記分割された質量範囲内のピークを、ピーク強度に応じた複数のクラスに分類する、ピーク強度分類手順と、
前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、イオンピーク検出プログラム。
前記質量範囲の分割が、100Da〜300Daから選択される範囲に設定される、(22)に記載のイオンピーク検出プログラム。
ここで、生のマスペクトルデータには、質量電荷比及び強度情報を有するピークが多数存在する。そのピークには、ノイズピーク及びイオンピークが含まれる。ここで、イオンピークは、イオン由来の信号ピーク、ノイズピークはノイズ(雑音)由来のピークである。本工程では、マススペクトルデータに多数存在するピークの強度による分類を行う。まず、設定された質量範囲内に含まれるすべてのピークが、強度の昇順に並べられる。これは昇順に限定されるものではなく、降順のような代替の順序を適用することもできる。ピークは、これらのピークの強度値に応じて3つのクラスに分類される。クラス(A)には、他のクラスに比べてかなり高強度のピークが分類され、クラス(B)には中程度の強度値を有するピークが分類され、クラス(C)には低強度のピークが分類される。クラス(C)に分類されるピーク強度は、クラス(B)に分類されるピークと近い強度を持つが、クラス(A)のものよりはるかに低い。
(数1) Zi=(|Ii−Im|)/Isd ・・・(1)
式(1)で、Imは全てのデータ点の強度値の平均値であり、Isdはすべてのデータ点の強度値から計算された標準偏差である。Isdの代わりに式(2)に示す中央絶対偏差Imadを使用して数1に示す式から修正した式(修正Z式)を使用することができる。(修正Z式の計算方法は、例えば、Iglewicz, B.; Hoaglin, D.: How to Detect and Handle Outliers, The ASQC Basic References in Quality Control: Statistical Techniques, Volume 16, Edward F. Mykytka, Ph.D., Editor 1993.に説明される)。
(数2)Imad=median(|Ii−Imedian|) ・・・(2)
ここで、Imedianはデータ点iが属している範囲内に存在するピークの中央値である。
ノイズレベルは、すべてのノイズピークの平均値を計算することによって見出すことができる。そのため、クラス(A)に分類されたピークはノイズレベル判定のための計算から除去され、前工程で分類されたクラス(C)内のピークを、ノイズレベルの判定のための計算に使用する。ここで、上述の通り、前工程で分類されたクラス(C)内のピーク点には、ノイズピークではなく、クラス(B)に分類されるべき、強度の低いイオンピークのピークが含んでいる可能性がある。それは、中程度の強度を持つピークを、クラス(B)に分類するか、クラス(C)に分類するかの判定が困難であるためである。本工程により、このような中程度の強度を持つピークの、クラス(B)あるいはクラス(C)への分類分けの判断も行うことができる。結果、強度の低いイオンピークも、ノイズピークから識別され、イオンピークとして検出することができる。本プログラム内では、イオンピーク検出工程を開始するための基準として、信号対雑音比(S/N)が初期化される。次いでこの基準は、後述する強度配列の中央位置とRmeanの比較によって検出される状態に応じてプログラム内で調整される。即ち、後述のイオンピーク検出工程(ステップ306)は、当該質量範囲内に検出されたノイズレベルに応じて実行されるが、ここでは、イオンピーク選択のための信号対雑音(SN)比の閾値と同等のパラメータが用いられる。該閾値より大きな強度を有するピークは信号ピーク(イオンピーク)とみなす。
実用上は、このイオンピーク選択のための信号対雑音比閾値に関するパラメータは、ノイズレベル判定工程(ステップ305)の前に初期化される。ノイズレベルの判定の後、判定された結果に従って、当該パラメータが調整される。詳細を以下に述べる。
(数4) Ri= Ii/Imean ・・・(4)
である。
各ピークに対して計算された値Riを強度の昇順で整列した強度配列上で、1.0の値に最も近い比Riの位置は、当該強度配列の中央位置と同じになるはずである。1.0の値に最も近い比Riの位置が当該強度配列の中央位置から下へ動いた場合、計算内にクラス(B)内に分類されるべきイオンピークが含まれている可能性があると考えられる。これを図6に図示する。
上述の実施例では、設定された質量範囲毎に、ノイズレベルの判定(ステップ305)の後、当該質量範囲に存在するイオンピークを検出する工程(ステップ306)に進む。ここで、ノイズレベル判定(ステップ305)は、ピークの強度分類後、ノイズレベルの判定を含む。しかし上述の通り、ノイズレベル判定に係る計算により、(i)ピークの強度分類工程でなされたピーク分類の修正を行うことができる。この計算により、ノイズピークはすべてクラス(C)に分類され、同時に、クラス(C)はノイズピークのみから構成されることになる。これを利用し、イオンピーク検出工程(ステップ306)の別の態様として、分類修正後のクラス(A)及び(B)に属するピークをイオンピークとして検出することができる。この態様の場合、ノイズレベルを判定することなくイオンピークを検出することができる。以下に、具体的に、ピークの強度分類工程でクラス(C)に分類されたピークの分類修正方法を述べる。
本発明は、質量スペクトルからイオンピークを検出する。アルゴリズム内で使用される一般原則は、他のタイプの計器にも拡張することができる。さらに、本発明の概念は、ノイズレベルを判定する他の信号処理にも適していることがある。
202・・・質量範囲設定手段
203・・・ピーク強度分類手段
204・・・強度の低いピーク及び同位体ピーク除去手段
205・・・ノイズレベル判定手段
206・・・イオンピークの検出手段
207・・・コンピュータ
Claims (11)
- マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する方法であって、
質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得する工程と、
前記取得したマススペクトルデータ内のピークを、ピーク強度に応じた複数のクラスに分類する、ピーク強度分類工程と、
前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、イオンピーク検出工程とを含む、イオンピーク検出方法。 - 前記ピーク強度に応じた複数のクラスが、高強度のクラス、中強度のクラス、及び低強度のクラスを含む、請求項1に記載のイオンピーク検出方法。
- 前記低強度のクラスに分類されたピークからノイズレベルを判定し、当該ノイズレベルに基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、請求項2に記載のイオンピーク検出方法。
- 前記低強度のクラスに分類されたピークとともに、前記中強度のクラスに分類されたピークからノイズレベルを判定する、請求項3に記載のイオンピーク検出方法。
- 前記高強度のクラスには、前記低強度のクラスからの孤立値であるピークを分類する、請求項2に記載のイオンピーク検出方法。
- 前記孤立値は、Zスコア法を使用して求める、請求項5に記載のイオンピーク検出方法。
- 前記低強度のクラスに分類されたピークからのノイズレベルの判定が、
前記低強度のクラスに分類されたピークの中央位置と、前記低強度のクラスに分類されたピークの平均信号雑音比とを比較することにより、前記低強度のクラスに分類されたピークの強度分類を修正する工程と、
前記修正された、低強度のクラスに分類されたピークから、ノイズレベルを判定する工程とを含む、請求項3に記載のイオンピーク検出方法。 - マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する方法であって、
質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得する工程と、
前記取得したマススペクトルデータを任意の質量範囲へ分割する、質量範囲分割工程と、
前記分割された質量範囲内のピークを、ピーク強度に応じた複数のクラスに分類する、ピーク強度分類工程と、
前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、イオンピーク検出工程とを含む、イオンピーク検出方法。 - 前記任意の質量範囲が、100Da〜300Daから選択される範囲に設定される、請求項8に記載のイオンピーク検出方法。
- マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出するシステムであって、
質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得し、マススペクトルデータ内のピークを、前記ピーク強度に応じた複数のクラスに分類する、ピーク強度分類手段と、
前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいてノイズレベルの判定をイズレベル判定手段と、
前記判定したノイズレベルに基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、イオンピーク検出手段と、
を備えることを特徴とするイオンピーク検出システム。 - コンピュータに、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する手順を実行させるためのプログラムであって、
質量電荷比及び強度情報を有するピークから構成されるマススペクトルデータを取得する手順と、
前記取得したマススペクトルデータ内のピークを、ピーク強度に応じた複数のクラスに分類する、ピーク強度分類手順と、
前記複数のクラスに分類されたピークの強度情報に基づいて、マススペクトルデータ内に存在するピークからイオンピークを検出する、イオンピーク検出手順とを含む、イオンピーク検出プログラム。
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