JP2014106022A - シンチレータパネル - Google Patents
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Abstract
【課題】大面積に細幅の隔壁を高精度に形成し、発光輝度が高く、鮮明な画質を実現するシンチレータパネルを提供すること。
【解決手段】本発明は、平板上の基板、該基板の上に設けられた隔壁、および、上記隔壁により区画されたセル内に充填された蛍光体からなるシンチレータ層を有するシンチレータパネルであり、上記隔壁は、単位厚み当たりの光透過率の異なる複数の層からなる、シンチレータパネルを提供する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、平板上の基板、該基板の上に設けられた隔壁、および、上記隔壁により区画されたセル内に充填された蛍光体からなるシンチレータ層を有するシンチレータパネルであり、上記隔壁は、単位厚み当たりの光透過率の異なる複数の層からなる、シンチレータパネルを提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は、医療診断装置、非破壊検査機器等に用いられる放射線検出装置を構成するシンチレータパネルに関する。
従来、医療現場において、フィルムを用いたX線画像が広く用いられてきた。しかし、フィルムを用いたX線画像はアナログ画像情報であるため、近年、コンピューテッドラジオグラフィ(computed radiography:CR)やフラットパネル型の放射線ディテクタ(flat panel detector:FPD)等のデジタル方式の放射線検出装置が開発されている。
平板X線検出装置(FPD)においては、放射線を可視光に変換するために、シンチレータパネルが使用される。シンチレータパネルは、ヨウ化セシウム(CsI)等のX線蛍光体を含み、照射されたX線に応じて、該X線蛍光体が可視光を発光して、その発光をTFTやCCDで電気信号に変換することにより、X線の情報をデジタル画像情報に変換する。しかし、FPDは、S/N比が低いという問題があった。これは、X線蛍光体が発光する際に、蛍光体自体によって可視光が散乱してしまうことなどに起因する。この光の散乱の影響を小さくするために、隔壁で仕切られたセル内に蛍光体を充填する方法が提案されてきた(特許文献1〜4)。
しかし、そのような隔壁を形成する方法として、従来用いられてきた方法は、シリコンウェハをエッチング加工する方法、あるいは、顔料又はセラミック粉末と低融点ガラス粉末との混合物であるガラスペーストをスクリーン印刷法を用いて多層にパターン印刷した後に焼成して、隔壁パターンを形成する方法などである。シリコンウェハをエッチング加工する方法では、形成できるシンチレータパネルのサイズが、シリコンウェハのサイズによって限定され、500mm角のような大サイズのものを得ることはできなかった。大サイズのものを作るには小サイズのものを複数並べて作ることになるが、その製作は精度的に難しく、大面積のシンチレータパネルを作製することが困難であった。
また、ガラスペーストを用いた多層スクリーン印刷法では、スクリーン印刷版の寸法変化などにより、高精度の加工が困難である。また多層スクリーン印刷を行う際に、隔壁パターンの崩壊欠損を防ぐために、隔壁パターンの強度を高くするために、一定の隔壁幅が必要になる。隔壁パターンの幅が広くなると、相対的に隔壁間のスペースが狭くなり、蛍光体を充填できる体積が小さくなる上に、充填量が均一とならない。そのため、この方法で得られたシンチレータパネルは、X線蛍光体の量が少ないために、発光が弱くなる、発光ムラが生じるといった欠点がある。これは、低線量での撮影において、鮮明な撮影を行うには障害となってくる。
つまり、発光効率が高く、鮮明な画質を実現するシンチレータパネルを作製するためには、大面積を高精度で加工して隔壁の幅を細くできる技術が必要であり、かつ、発光した可視光を隔壁外部へと漏らさない技術が必要である。
本発明は上記欠点を解消し、大面積に細幅の隔壁を高精度に形成し、発光輝度が高く、鮮明な画質を実現するシンチレータパネルを提供することを課題にする。
この課題は次の技術手段の何れかによって達成される。
(1) 平板上の基板、該基板の上に設けられた隔壁、および、上記隔壁により区画されたセル内に充填された蛍光体からなるシンチレータ層を有するシンチレータパネルであり、上記隔壁は、単位厚み当たりの光透過率の異なる複数の層からなる、シンチレータパネル。
(2) 上記隔壁は、最上層の単位厚み当たりの光透過率が最低である、上記(1)に記載のシンチレータパネル。
(3) 上記隔壁は、最上層が黒色である、上記(1)又は(2)に記載のシンチレータパネル。
(4) 上記隔壁は、アルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料により構成されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシンチレータパネル。
(5) 上記隔壁は、最上層がRu、Mn、Ni、Cr、Fe、CoおよびCu並びにそれら金属の酸化物からなる群から選ばれる、黒色金属化合物を含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシンチレータパネル。
(6) 上記隔壁は、最上層が上記金属化合物を1〜20%重量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料により構成されている、上記(5)に記載のシンチレータパネル。
(7) 上記隔壁表面に反射層が形成されている、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のシンチレータパネル。
(1) 平板上の基板、該基板の上に設けられた隔壁、および、上記隔壁により区画されたセル内に充填された蛍光体からなるシンチレータ層を有するシンチレータパネルであり、上記隔壁は、単位厚み当たりの光透過率の異なる複数の層からなる、シンチレータパネル。
(2) 上記隔壁は、最上層の単位厚み当たりの光透過率が最低である、上記(1)に記載のシンチレータパネル。
(3) 上記隔壁は、最上層が黒色である、上記(1)又は(2)に記載のシンチレータパネル。
(4) 上記隔壁は、アルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料により構成されている、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシンチレータパネル。
(5) 上記隔壁は、最上層がRu、Mn、Ni、Cr、Fe、CoおよびCu並びにそれら金属の酸化物からなる群から選ばれる、黒色金属化合物を含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシンチレータパネル。
(6) 上記隔壁は、最上層が上記金属化合物を1〜20%重量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料により構成されている、上記(5)に記載のシンチレータパネル。
(7) 上記隔壁表面に反射層が形成されている、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のシンチレータパネル。
本発明により、大面積で高精度に隔壁を形成できることから、大サイズで発光輝度が高く、かつ、発光した可視光を外部へ漏らすことなく鮮明な撮影を実現するためのシンチレータパネルおよびその製造方法が提供できる。
以下、図を用いて本発明のシンチレータパネルおよびそれを用いた放射線検出装置の好ましい構成について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
図1は、本発明のシンチレータパネルを含む放射線検出装置の構成を模式的に表した断面図である。図2は、本発明のシンチレータパネルの構成を模式的に表した斜視図である。放射線検出装置1は、シンチレータパネル2、出力基板3、および電源部12からなる。シンチレータパネル2は、蛍光体からなるシンチレータ層7を含み、X線等の入射された放射線のエネルギーを吸収して、波長が300〜800nmの範囲の電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる範囲の電磁波(光)を発光する。
シンチレータパネル2は、基板4と、その上に形成された、単位厚み当たりの光透過率の異なる複数の層からなる、セルを仕切るための格子状の隔壁6と、その隔壁で形成された空間内に、充填された蛍光体からなるシンチレータ層7とから構成される。 また、基板4と隔壁6の間に、緩衝層5をさらに形成することで、隔壁6の安定的な形成が可能になる。さらに、隔壁6の表面に反射層13を形成されていれば、シンチレータ層7で発光した可視光を反射させて、効率良く出力基板上3の光電変換層9に到達させることができる。
出力基板3は、基板11上にフォトセンサとTFTからなる画素が2次元状に形成された光電変換層9および出力層10を有する。シンチレータパネル2の出光面と出力基板3の光電変換層9をポリイミド樹脂等からなる隔膜層8を介して、接着あるいは密着させることで放射線検出装置1となる。シンチレータ層7で発光した光が光電変換層9に到達し、光電変換層9で光電変換を行い、出力する。本発明のシンチレータパネルは各セルを隔壁が仕切っているので、格子状に配置された光電変換素子の画素の大きさおよびピッチと、シンチレータパネルのセルの大きさおよびピッチを一致させることにより、蛍光体によって光が散乱されても、散乱光が隣のセルに到達するのを防ぐことができる。これによって光散乱による画像のボケが低減でき、高精度の撮影が可能になる。
隔壁6は、単位厚み当たりの光透過率の異なる、複数の層からなる(例えば、図1の6Aおよび6B)。これにより、隔壁中に単位厚み当たりの光透過率が相対的に低い層が形成され、隔壁を透過した発光光が検出器側に漏れるのを防止でき、より高精度の撮影が可能となる。特に、隔壁の最上層の単位厚み当たりの光透過率が最低であることが、検出器側への発光光の漏れを効果的に抑止できるため、好ましい。隔壁の最上層の単位厚み、すなわち厚み10μm当たりの光透過率は、10%以下であることが好ましく、3%以下のであることがより好ましい。また、隔壁の最上層の明度L*値が、40以下であることが好ましく、L*値が30以下であることがより好ましい。L*値が30以下であると、隔壁の当該層は見かけ上黒色となる。すなわち、隔壁の最上層は、黒色であることがより好ましい。隔壁の最上層が黒色であれば、発光光が隔壁上面で散乱することを抑止でき、コントラストを向上させることもできる。
なお、隔壁の各層の単位厚み当たりの光透過率は、厚み10μmの層における、波長550nmの光の透過率を測定する。また、隔壁の各層の明度L*値は、厚み10μmにおける明度L*値を測定する。より具体的には、例えば、隔壁の各層を形成するための感光性ペーストを用いてガラス基板上に厚み10μmのベタ膜を作製し、その光透過率をU−4100UVVIS測定装置(日立製作所製)を用いて測定することができる。また、光透過率の測定同様に、ガラス基板上に厚み10μmのベタ膜を作成し、比色計CM2002(コニカミノルタ製)を用いて測定することができる。
隔壁の特定の層を黒色にするための方法としては、例えば、隔壁の当該層を形成するための感光性ペーストに黒色顔料を含有させた、黒色層形成用感光性ペーストを用いる方法が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Co若しくはCu等の金属又はそれら金属の酸化物が好ましい。すなわち、黒色顔料としては、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、CoおよびCu並びにそれら金属の酸化物からなる群から選ばれる、黒色金属化合物が好ましい。これら黒色金属化合物を直接感光性ペーストに含有させても構わないが、これら黒色金属化合物を含有する低融点ガラス粉末を感光性ペーストに含有させることで、黒色層形成用感光性ペーストとすることができる。
また、隔壁の成分となる低融点ガラスの粉末の表面に、黒色金属化合物を付着又は被覆させたものを含有させても構わない。例えば、黒色金属化合物を低融点ガラス粉末の表面に化学メッキしてから、400〜500℃で30分〜数時間焼成することで、黒色の低融点ガラス粉末を得ることができる。より具体的には、所望の金属塩又は金属錯体の水溶液に低融点ガラス粉末を分散させておき、そこへ還元剤を添加して低融点ガラス粉末の表面に金属化合物を析出させ、その後の焼成により金属を酸化させることで、黒色の低融点ガラス粉末を得ることができる。用いる低融点ガラス粉末の平均粒径は、被覆がし易いため、0.5〜5μmが好ましい。また、用いる金属塩又は金属錯体としては水溶性であることが好ましいが、例えば、ハロゲン化合物、シアン化合物、硫酸塩、硝酸塩、アミン錯体、ニトロシル錯体、カルボニル錯体又はアクア錯体が挙げられる。
黒色層形成用感光性ペーストが含有する黒色顔料の割合は、黒色の度合いを適度なものとし、十分なコントラスト向上効果およびパターン加工性を保持するため、0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。また、黒色層形成用感光性ペーストが含有する低融点ガラス粉末の熱特性(ガラス転移点、ガラス軟化点など)は、隔壁成分となる低融点ガラスに類似していることが好ましい。
また、黒色の隔壁の層は、隔壁パターン形成後の隔壁上部に黒色層形成用ペーストを塗布することで形成することもできる。ここで黒色層形成用ペーストとは、黒色顔料と有機成分等とを混合混錬して得られるペーストをいう。隔壁パターン形成後に黒色層を形成するので、黒色顔料の含有量に特に制限はないが、好適な塗工性を得るため、60質量%以下が好ましい。
本発明のシンチレータパネルに用いる基板としては、各種のガラス、高分子材料、金属等を用いることができる。例えば、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどのガラスからなる板ガラス;サファイア、チッ化珪素、チッ化アルミ、炭化珪素などのセラミックからなるセラミック基板;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素などの半導体からなる半導体基板;セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、炭素繊維強化樹脂シート等の高分子フィルム(プラスチックフィルム);アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート;金属酸化物の被覆層を有する金属シートやアモルファスカーボン基板などを用いることができる。中でも、板ガラスは、平坦性および耐熱性の点で望ましい。さらに、シンチレータパネルの持ち運びの利便性の点でシンチレータパネルの軽量化が進められていることから、板ガラスは厚み2.0mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0mm以下である。
本発明のシンチレータパネルは各セルを隔壁が仕切っているので、格子状に配置された光電変換素子の画素の大きさおよびピッチと、シンチレータパネルのセルの大きさおよびピッチを一致させることにより、蛍光体によって光が散乱されても、散乱光が隣接セルに到達するのを防ぐことができる。
隔壁のパターン形状は、特に限定されないが、格子状もしくはストライプ状が好ましい。格子状のパターンを形成する場合、隔壁のピッチ(P)は60μm〜1000μmであることが好ましい。ピッチが60μm未満であると、加工時のパターン形成が困難となる。また、ピッチが大きすぎると、得られるシンチレータパネルを用いて高精度の画像撮影を行うことが困難となる。
隔壁のパターン形状は、特に限定されないが、格子状もしくはストライプ状が好ましい。格子状のパターンを形成する場合、隔壁のピッチ(P)は60μm〜1000μmであることが好ましい。ピッチが60μm未満であると、加工時のパターン形成が困難となる。また、ピッチが大きすぎると、得られるシンチレータパネルを用いて高精度の画像撮影を行うことが困難となる。
隔壁の高さ(H)は、100〜3000μmが好ましく、160〜500μmがより好ましく、250〜500μmがさらに好ましい。隔壁の高さが3000μmを超える高さでは、加工時のパターン形成が困難になる。一方、隔壁の高さが低くなると、充填可能な蛍光体の量が少なくなるため、得られるシンチレータパネルの発光輝度が低下して、鮮明な撮影が困難になる。
隔壁の底部幅(Lb)は15μm〜150μm、隔壁の頂部幅(Lt)は10μm〜80μmであることが好ましい。隔壁の底部幅が15μm未満であると、焼成時に隔壁の欠陥が生じやすくなる。一方、隔壁の底部幅が大きくなると、隔壁により区画された空間に充填できる蛍光体量が減ってしまう。隔壁の頂部幅が10μm未満であると隔壁の強度が低下する。一方、隔壁の頂部幅が80μmを超えると、シンチレータ層の発光光を取り出せる領域が狭くなってしまう。隔壁底部幅(Lb)に対する隔壁高さ(H)のアスペクト比(H/Lb)は1.0〜25.0であることが好ましい。隔壁底部幅に対するアスペクト比(H/Lb)が高い隔壁ほど、隔壁により区画された1画素あたりの空間が広く、より多くの蛍光体を充填することができる。
隔壁ピッチ(P)に対する隔壁高さ(H)のアスペクト比(H/P)は0.1〜3.5であることが好ましい。隔壁ピッチに対するアスペクト比(H/P)が高い隔壁ほど、高精細に区画された1画素となり、かつ、1画素あたりの空間により多くの蛍光体を充填することができる。
格子状の隔壁により区画されたセルの形状としては、正方形、長方形、平行四辺形、台形などの形状が、適宜選択可能である。本発明のシンチレータパネルにおいては、隔壁底部幅の均一性や、1画素内における蛍光体発光強度の均一性の観点から、セルの形状が正方形となるような格子状の隔壁が好ましいが、これに限定されるものではない。
隔壁の高さおよび幅は、基板に対して垂直な隔壁断面を露出させ、走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S2400)で断面を観察し、測定した。隔壁と基板の接触部における隔壁の幅を底部幅(Lb)として測定した。隔壁と基板の間に緩衝層がある場合は、隔壁と緩衝層の接触部における隔壁の幅を底部幅(Lb)として測定した。また、隔壁最頂部の幅を頂部幅(Lt)として測定した。
隔壁は耐久性および耐熱性の点から、ガラス材料から構成されることが好ましい。本発明のシンチレータパネルでは、隔壁は、アルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料により構成されていることが好ましい。アルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料は、適切な屈折率と軟化温度を有し、細幅の隔壁を大面積に高精度に形成するのに適している。なお、本発明において、低融点ガラスとは、軟化温度が700℃以下のガラスのことである。また、低融点ガラスを主成分とするとは、隔壁を構成する材料の50質量%〜100質量%が低融点ガラス粉末であることをいう。
本発明のシンチレータパネルの製造方法では、基板上に、アルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラス粉末と感光性有機成分を含有する感光性ペーストとを塗布し、感光性ペースト塗布膜を形成する工程、得られた感光性ペースト塗布膜を所定の開口部を有するフォトマスクを介して露光する露光工程、露光後の感光性ペースト塗布膜の現像液に可溶な部分を溶解除去する現像工程、現像後の感光性ペースト塗布膜パターンを高温に加熱して有機成分を除去すると共に低融点ガラスを軟化および焼結させ、隔壁を形成する焼成工程を含むことが好ましい。露光工程においては、露光により感光性ペースト塗布膜の必要な部分を光硬化させ、もしくは、感光性ペースト塗布膜の不要な部分を光分解させて、感光性ペースト塗布膜の現像液に対する溶解コントラストをつける。現像工程においては、露光後の感光性ペースト塗布膜の不要部分が現像液で除去され、必要な部分のみが残存した感光性ペースト塗布膜パターンが得られる。
焼成工程においては、得られた感光性ペースト塗布膜パターンを、好ましくは500〜700℃、より好ましくは500〜650℃の温度で焼成することにより、有機成分が分解留去されると共に、低融点ガラス粉末が軟化および焼結されて、上記低融点ガラスを含む隔壁が形成される。有機成分を完全に除去するために、焼成温度は500℃以上が好ましい。また、焼成温度が700℃を超えると、基板として一般的なガラス基板を用いた場合、基板の変形が大きくなるため、焼成温度は700℃以下が望ましい。
上記の方法によれば、ガラスペーストを多層スクリーン印刷によって積層印刷した後に焼成する加工方法よりも、高精度の加工が可能である。
本発明で用いる感光性ペーストは、感光性有機成分を含有する有機成分とアルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラス粉末を含む無機粉末から構成される。有機成分は、焼成前の感光性ペースト塗布膜パターンを形成するために一定量が必要であるが、有機成分が多すぎると、焼成工程で除去する物質の量が多くなり、焼成収縮率が大きくなるため、焼成工程でのパターン欠損を生じやすい。一方、有機成分が過少になると、ペースト中での無機微粒子の混合および分散性が低下するため、焼成時に欠陥が生じやすくなるばかりでなく、ペーストの粘度の上昇のためペーストの塗布性が低下し、さらにペーストの安定性にも悪影響があり好ましくないことがある。そこで、感光性ペースト中の無機粉末の含有量が30質量%〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは、40質量%〜70質量%である。また、無機粉末の全体に対して、低融点ガラス粉末は50質量%〜100質量%であることが好ましい。低融点ガラス粉末が無機粉末の50質量%未満であると、焼成工程において焼結が良好に進まず、得られる隔壁の強度が低下するので好ましくない。
焼成工程において、有機成分をほぼ完全に除き、かつ、得られる隔壁が一定の強度を有するようにするためには、低融点ガラス粉末として、軟化温度が480℃以上の低融点ガラスからなるガラス粉末を用いることが好ましい。焼成工程における焼成温度は、500〜700℃が好ましく、500〜650℃がより好ましいため、低融点ガラスの軟化温度は480〜700℃が好ましく、480〜640℃がより好ましく、480〜620℃がさらに好ましい。
軟化温度は、示差熱分析装置(DTA、株式会社リガク製「差動型示差熱天秤TG8120」)を用いて、サンプルを測定して得られるDTA曲線から、吸熱ピークにおける吸熱終了温度を接線法により外挿して求められる。具体的には、示差熱分析装置を用いて、アルミナ粉末を標準試料として、室温から20℃/分で昇温して、測定サンプルとなる無機粉末を測定し、DTA曲線を得る。得られたDTA曲線より、吸熱ピークにおける吸熱終了温度を接線法により外挿して求めた軟化点Tsを軟化温度と定義する。
低融点ガラスの熱膨張係数は40〜90×10−7(/K)が好ましく、さらに好ましくは40〜65×10−7である。基板上に、低融点ガラスを含む感光性ペースト塗布膜を形成して焼成した際、熱膨張係数が90×10−7より大きいと、パネルが大幅に反るため、放射線検出装置として組み立てることが困難となる。また、パネルの反りが発生した放射線検出装置は、パネル面内で発光光のクロストークが発生したり、発光光量の検出感度のバラつきが発生するため、高精細な画像検出が難しくなる。また、熱膨張係数が40×10−7より小さい場合は、低融点ガラスの軟化温度を十分に下げることができない。
低融点ガラスを得るためには、ガラスを低融点化するために有効な材料である、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛およびアルカリ金属酸化物から選ばれた金属酸化物を用いることができる。中でも、アルカリ金属酸化物を用いて、ガラスの軟化温度を調整することが望ましい。なお、一般にはアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムをいうが、本発明において用いられるアルカリ金属酸化物とは、酸化リチウム、酸化ナトリウムおよび酸化カリウムから選ばれた金属酸化物をいう。
低融点ガラス中のアルカリ金属酸化物の含有量X(M2O)は、2〜20質量%の範囲内とすることが必要である。アルカリ金属酸化物の含有量が2質量%未満では、軟化温度が高くなることによって、焼成工程を高温で行うことが必要となる。そのため、基板としてガラス基板を用いた場合に、焼成工程において基板が変形することにより、得られるシンチレータパネルにゆがみが生じたり、隔壁に欠陥が生じたりしやすいので適さない。また、アルカリ金属酸化物の含有量が20質量%よりも多い場合は、焼成工程においてガラスの粘度が低下しすぎる。そのため、得られる隔壁の形状にゆがみが生じやすい。また、得られる隔壁の空隙率が小さくなりすぎることにより、得られるシンチレータパネルの発光輝度が低くなる。
さらに、アルカリ金属酸化物に加えて、高温でのガラスの粘度の調製のために、酸化亜鉛を3〜10質量%添加することが望ましい。酸化亜鉛の含有量が3質量%以下では、高温でのガラスの粘度が高くなり、10質量%以上添加すると、ガラスのコストが高くなる傾向がある。
さらには、低融点ガラスに、前記のアルカリ金属酸化物、および酸化亜鉛に加えて、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、アルカリ土類金属の酸化物等を含有させることにより、低融点ガラスの安定性、結晶性、透明性、屈折率、熱膨張特性等を制御することができる。低融点ガラスの組成としては、以下に示す組成範囲とすることにより、本発明に適した粘度特性を有する低融点ガラスを作製できるので好ましい。
アルカリ金属酸化物:2〜20質量%
酸化亜鉛:3〜10質量%
酸化ケイ素:20〜40質量%
酸化ホウ素:25〜40質量%
酸化アルミニウム:10〜30質量%
アルカリ土類金属酸化物:5〜15質量%
なお、アルカリ土類金属とは、マグネシウム、カルシウム、バリウムおよびストロンチウムから選ばれる1種類以上の金属をいう。
酸化亜鉛:3〜10質量%
酸化ケイ素:20〜40質量%
酸化ホウ素:25〜40質量%
酸化アルミニウム:10〜30質量%
アルカリ土類金属酸化物:5〜15質量%
なお、アルカリ土類金属とは、マグネシウム、カルシウム、バリウムおよびストロンチウムから選ばれる1種類以上の金属をいう。
低融点ガラス粉末を含む無機粒子の粒子径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「MT3300」)を用いて評価した。測定方法としては、水を満たした試料室に無機粉末を投入し、300秒間、超音波処理を行った後に測定を行った。
低融点ガラス粉末の粒子径は、50%体積平均粒子径(D50)が1.0〜4.0μmの範囲内であることが望ましい。D50が1.0μm未満では、粒子の凝集が強くなり、均一な分散性を得られにくくなり、ペーストの流動性が不安定になる。このような場合は、ペーストを塗布した際の厚み均一性が低下する。また、D50が4.0μmを越えると、得られる焼結体の表面凹凸が大きくなり、後工程で隔壁パターンが破砕する原因となりやすい。
本発明で用いる感光性ペーストは、上述の低融点ガラス粉末以外に、700℃でも軟化しない高融点ガラスや酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等のセラミックス粒子をフィラーとして含んでも構わない。フィラーは、低融点ガラス粉末と共に用いることにより、ペースト組成物の焼成収縮率の制御や形成される隔壁の形状を保持する効果がある。ただし、無機粉末全体に占めるフィラーの割合が50質量%を越えると、低融点ガラス粉末の焼結を阻害して、隔壁の強度が低下などの問題が生じるので好ましくない。また、フィラーは、低融点ガラス粉末と同様の理由で、平均粒子径0.5〜4.0μmであることが好ましい。
本発明で用いる感光性ペースト組成物は、低融点ガラス粉末の平均屈折率n1と感光性有機成分の平均屈折率n2が、−0.1<n1−n2<0.1を満たすことが好ましく、−0.01≦n1−n2≦0.01を満たすことがより好ましく、−0.005≦n1−n2≦0.005を満たすことがさらに好ましい。この条件を満たすことにより、露光工程において、低融点ガラス粉末と感光性有機成分の界面における光散乱が抑制され、高精度のパターン形成を行うことができる。低融点ガラス粉末を構成する酸化物の配合比率を調整することで好ましい熱特性、および、好ましい平均屈折率を兼ね備えた低融点ガラス粉末を得ることができる。
低融点ガラス粉末の屈折率はベッケ線検出法により測定することができる。25℃での波長436nm(g線)における屈折率を本発明における低融点ガラス粉末の屈折率とした。また、感光有機成分の平均屈折率は、感光性有機成分からなる塗膜をエリプソメトリーにより測定することで求めることができる。25℃での波長436nm(g線)における屈折率を感光性有機成分の平均屈折率とした。
本発明で用いる感光性ペーストは、有機成分として感光性有機成分を含むことによって、上記のような感光性ペースト法でパターン加工することができる。感光性有機成分として、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーあるいは光重合開始剤などを用いることにより、反応性を制御することができる。ここで、感光性モノマー、感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーにおける感光性とは、ペーストが活性光線の照射を受けた場合に、感光性モノマー、感光性オリゴマーあるいは感光性ポリマーが、光架橋、光重合などの反応を起こして化学構造が変化することを意味する。
感光性モノマーとは、活性な炭素−炭素2重結合を有する化合物であり、官能基としてビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基を有する単官能化合物および多官能化合物が挙げられる。特に、多官能アクリレート化合物および多官能メタクリレート化合物から選ばれた化合物を有機成分中に10〜80質量%含有させたものが、光反応により硬化時の架橋密度を高くし、パターン形成性を向上させる点で好ましい。多官能アクリレート化合物および多官能メタクリレート化合物としては、多様な種類の化合物が開発されているので、反応性、屈折率などを考慮して、それらの中から適宜選択することが可能である。
感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーとしては、活性な炭素−炭素2重結合を有するオリゴマーおよびポリマーが好ましく用いられる。感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸又はこれらの酸無水物等のカルボキシル基含有モノマーおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシアクリレート等のモノマーを共重合することにより得られる。活性な炭素−炭素不飽和二重結合をオリゴマーもしくはポリマーに導入する方法としては、オリゴマーもしくはポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド又はアリルクロライド、マレイン酸等のカルボン酸を反応させて作る方法等を用いることができる。
感光性モノマーや感光性オリゴマーとして、ウレタン構造を有するモノマーあるいはオリゴマーを用いることにより、焼成工程においてパターン欠損しにくい感光性ペーストを得ることができる。本発明においては、ガラス粉末として低融点ガラス粉末を用いることにより、焼成工程後期のガラス粉末の焼結が進行する過程で、急激な収縮を生じにくいことがパターン欠損を抑制する。それに加えて、有機成分にウレタン構造を有する化合物を用いた場合には、焼成工程初期の有機成分が分解および留去する過程における応力緩和が生じ、パターン欠損を生じにくい。これらの両方の効果により、広い温度領域でパターン欠損を抑制することができる。
光重合開始剤は、活性光源の照射によってラジカルを発生する化合物である。具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。また、これらを2種以上組み合わせて使用しても良い。
感光性ペーストは、バインダーとして、カルボキシル基を有する共重合ポリマーを含有することができる。カルボキシル基を有する共重合体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸又はこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有モノマー、およびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシアクリレートなどのその他のモノマーを選択し、アゾビスイソブチロニトリルのような開始剤を用いて共重合することにより得られる。カルボキシル基を有する共重合体としては、焼成時の熱分解温度が低いことから、アクリル酸エステル又はメタアクリル酸エステルおよびアクリル酸又はメタアクリル酸を共重合成分とする共重合体が好ましく用いられる。
感光性ペーストは、カルボキシル基を有する共重合ポリマーを含有することにより、アルカリ水溶液への溶解性に優れたペーストとなる。カルボキシル基を有する共重合体の酸価は50〜150mgKOH/gが好ましい。酸価が150mgKOH/g以下とすることで、現像許容幅を広くとることができる。また、酸価が50mgKOH/g以上とすることで、未露光部の現像液に対する溶解性が低下することがない。従って現像液濃度を濃くする必要がなく、露光部の剥がれを防ぎ、高精細なパターンを得ることができる。さらに、カルボキシル基を有する共重合体が側鎖にエチレン性不飽和基を有することも好ましい。エチレン性不飽和基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
感光性ペーストは、低融点ガラス粉末と感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマー、光重合開始剤などからなる感光性有機成分に必要に応じ、有機溶媒およびバインダーを加えて、各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーや混練機で均質に混合分散し作製する。
感光性ペーストの粘度は、無機粉末、増粘剤、有機溶媒、重合禁止剤、可塑剤および沈降防止剤などの添加割合によって適宜調整することができるが、その範囲は2〜200Pa・sの範囲内が好ましい。例えば、感光性ペーストの基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、2〜5Pa・sの粘度が好ましい。感光性ペーストの基板への塗布をスクリーン印刷法で行い、1回の塗布で膜厚10〜40μmを得るには、50〜200Pa・sの粘度が好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は、10〜50Pa・sの粘度が好ましい。
かくして得られた感光性ペーストを基板上に塗布し、フォトリソグラフィ法により所望のパターンを形成し、さらに焼成することによって隔壁を形成することができる。フォトリソグラフィ法により、上記感光性ペーストを用いて単位厚み当たりの光透過率の異なる2つの層からなる隔壁を形成する一例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
基板上に、感光性ペーストを焼成後高さが所定の高さになるように、全面に、又は、部分的に塗布して、1層目の感光性ペースト塗布膜を形成する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター又はブレードコーターなどの方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュおよびペーストの粘度を選ぶことによって調整できる。
次に、黒色金属化合物を含有する黒色層形成用感光性ペーストを焼成後の高さが所定の高さになるように、1層目の感光性ペースト塗布膜の上に、全面に、又は、部分的に塗布して、2層目の感光性ペースト塗布膜を形成する。
続いて、露光工程を行う。通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、フォトマスクを用いずに、レーザー光などで直接描画する方法を用いてもよい。露光装置としては、プロキシミティ露光機などを用いることができる。また、大面積の露光を行う場合は、基板上に感光性ペーストを塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。この際、使用される活性光線は、例えば、近赤外線、可視光線、紫外線などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも、超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みにより異なるが、通常、1〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.01〜30分間露光を行う。なお、黒色金属化合物を含有する感光性ペーストの塗布膜の光透過率が低い場合には、1層目と2層目とを個別に露光することで、より高精度な露光をすることができる。
露光後、感光性ペースト塗布膜の露光部分と未露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して現像を行い、所望の格子形状の感光性ペースト塗布膜パターンを得る。現像は、浸漬法やスプレー法、ブラシ法で行う。現像液には、ペースト中の有機成分が溶解可能である溶媒を用いることができる。現像液は、水を主成分とすることが好ましい。ペースト中にカルボキシル基などの酸性基をもつ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム等の無機アルカリ水溶液も使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、パターン部を剥離させ、また非可溶部を腐食させるおそれがある。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
次に焼成炉にて焼成工程を行う。焼成工程の雰囲気や温度は、感光性ペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成は通常500〜700℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行うことが好ましい。焼成温度は500〜650℃がより好ましい。以上の工程により、格子形状の感光性ペースト塗布膜パターンから有機成分が除去されると共に、該塗布膜パターンに含まれる低融点ガラスが軟化および焼結され、基板上に実質的に無機物からなり、かつ単位厚み当たりの光透過率の異なる複数の層からなる、格子状の隔壁が形成された隔壁部材が得られる。
なお、隔壁パターンを形成した後、その上部に単位厚み当たりの光透過率の異なる層を印刷等により別形成することも、本発明の有効な方法の一つである。
なお、隔壁パターンを形成した後、その上部に単位厚み当たりの光透過率の異なる層を印刷等により別形成することも、本発明の有効な方法の一つである。
隔壁は、感光性ペーストに含まれる無機粉末が焼結されて形成されている。隔壁を形成する無機粉末同士は、融着しているが、その間に空隙部分が残存している。隔壁に含まれる、この空隙の比率は、隔壁を焼成する焼成工程の温度設計によって調整することができる。隔壁全体に占める空隙部分の比率(空隙率)を2〜25%とすることにより、可視光の反射特性と強度を両立する隔壁を形成することができるので好ましい。空隙率が2%未満では、隔壁の反射率が低いことにより、得られるシンチレータパネルの発光輝度が低くなる。空隙率が25%を超えると、隔壁の強度が不足して、崩壊しやすくなる。反射特性と強度を両立するためには、空隙率を5〜25%とすることがより好ましく、5〜20%がさらに好ましい。
空隙率の測定方法は、隔壁の断面を精密研磨した後に、電子顕微鏡で観察し、無機材料部分と空隙部分を2階調に画像変換し、空隙部分の面積が隔壁断面の面積に閉める割合を計算する。
また、隔壁と基板の間に、低融点ガラスおよびセラミックスから選ばれた無機成分からなる緩衝層を設けることが好ましい。緩衝層は、焼成工程において、隔壁にかかる応力を緩和して、安定的な隔壁形成を実現する効果がある。また、緩衝層が高反射率であると、蛍光体によって発光した可視光を光電変換素子の方向に反射することによってシンチレータパネルの発光輝度を高くすることができ、好ましい。反射率を高くするために、緩衝層は、低融点ガラスおよびセラミックスからなることが好ましい。低融点ガラスとしては、隔壁と同様のものを用いることができる。セラミックスとしては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム等が好ましい。
緩衝層を形成するには、有機成分と、低融点ガラス粉末、セラミックス粉末等の無機粉末を溶媒に分散したペーストを基材に塗布および乾燥して、緩衝層用ペースト塗布膜を形成する。次に、緩衝層用ペースト塗布膜を、好ましくは500〜700℃、より好ましくは500〜650℃の温度で焼成することで、緩衝層を形成できる。
また、該緩衝層の焼成と隔壁の焼成を同時に済ませることも可能である。この同時焼成を用いることで、焼成工程数の削減が可能になり、焼成工程に消費されるエネルギーを低減することが可能になる。緩衝層と隔壁の同時焼成を用いる場合は、緩衝層用ペーストの有機成分として前記の隔壁用感光性ペーストと同様の感光性有機成分を用い、緩衝層用ペースト塗布膜を形成した後に、緩衝層用ペースト塗布膜を全面露光し、塗布膜を硬化することが好ましい。また、緩衝層用ペーストの有機成分として重合性モノマー、重合性オリゴマーおよび重合性ポリマーから選ばれるいずれかの重合性化合物および熱重合開始剤を含有する熱硬化性有機成分を用い、緩衝層ペースト塗布膜を形成した後に、熱硬化することも好ましい。これらの方法によって、緩衝層用ペースト塗布膜が溶媒に不溶になるので、その上に隔壁用感光性ペーストを塗布する工程において、緩衝層用ペースト塗布膜が溶解したり剥がれたりすることを防止することができる。
熱硬化性緩衝層用ペーストには、上記成分以外にエチルセルロース等のバインダー、分散剤、増粘剤、可塑剤および沈降防止剤等を適宜添加することができる。
緩衝層の550nmの波長に対する反射率は60%以上であることが好ましい。緩衝層の反射率を60%以上とすることで、パネルの発光光が緩衝層を透過せず、出力基板側へ発光光を有効的に取り出すことができる。
隔壁からの光漏れを防止するために、隔壁の表面に、反射層が形成されていることが好ましい。また、基板上の隔壁の形成されていない面にも、反射層が形成されていることがより好ましい。反射層の材質としては、X線を透過し、かつ蛍光体が発光した300〜800nmの発光光を反射する材料を使用することができる。そのような材料としては、例えば、Al、Pd、Ag、Au又はPtが挙げられるが、より低コストであるため、Al、Pd又はAgが好ましい。
次に、隔壁により区画されたセル内に、蛍光体を充填することで、シンチレータパネルを完成することができる。ここで、セルとは、格子状の隔壁により区画された空間のことを言う。また、該セルに充填された蛍光体を、シンチレータ層と呼ぶ。
蛍光体としては、X線から可視光への変換率が高いため、CsI、Gd2O2S、Lu2O2S、Y2O2S、LaCl3、LaBr3、LaI3、CeBr3、CeI3、LuSiO5、又はBa(Br、F、Z)が好ましい。また、さらに発光効率を高めるために、賦活剤を添加しても構わない。賦活剤としては、例えばCsIの場合には、ヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したもの、インジウム(In)、タリウム(Tl)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)又はナトリウム(Na)が好ましい。また、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)又はフッ化タリウム(TlF、TlF3)等のタリウム化合物も、賦活剤として使用することができる。
シンチレータ層の形成は、例えば、真空蒸着により、結晶性CsI(この場合、臭化タリウム等のタリウム化合物を共蒸着することも可)を蒸着する方法、水に分散させた蛍光体スラリーを基板に塗布する方法、蛍光体粉末と、エチルセルロースやアクリル樹脂等の有機バインダーと、テルピネオールやγ―ブチロラクトン等の有機溶媒と混合して作製した蛍光体ペーストをスクリーン印刷やディスペンサーで塗布する方法を用いることができる。
隔壁により区画されたセル内に充填する蛍光体として量は、以下の式1で計算される1セル当たりの空間体積(V)に占める蛍光体の体積分率が、50%〜100%であることが好ましい。
V={(P−Lb)×(P−Lt)+(P−Lb)2+(P−Lt)2}×H/3
・・・式1
蛍光体の体積分率が50%より小さいと、入射するX線を効率的に可視光に変換することができない。入射するX線の変換効率を上げるためには、隔壁ピッチに対する隔壁高さのアルペクト比を上げることで可視光に変換する効率を向上させることは可能であるが、セルの空間に対して高密度に蛍光体を充填することで、より効率を上げることができるため好ましい。
V={(P−Lb)×(P−Lt)+(P−Lb)2+(P−Lt)2}×H/3
・・・式1
蛍光体の体積分率が50%より小さいと、入射するX線を効率的に可視光に変換することができない。入射するX線の変換効率を上げるためには、隔壁ピッチに対する隔壁高さのアルペクト比を上げることで可視光に変換する効率を向上させることは可能であるが、セルの空間に対して高密度に蛍光体を充填することで、より効率を上げることができるため好ましい。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(隔壁用感光性ペーストの原料)
実施例の隔壁用感光性ペーストに用いた原料は次のとおりである。
感光性モノマーM−1 : トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマーM−2 : テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマー:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30の質量比からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(BASF社製 IC369)。
重合禁止剤:1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
紫外線吸収剤溶液:スダンIV(東京応化工業株式会社製)のγ―ブチロラクトン0.3質量%溶液
バインダーポリマー:エチルセルロース(ハーキュレス社製)
粘度調整剤:フローノンEC121(共栄社化学社製)
溶媒A:γ−ブチロラクトン
低融点ガラス粉末A:
SiO2 27質量%、B2O3 31質量%、ZnO 6質量%、Li2O 7質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al2O3 23質量%、屈折率(ng):1.56、ガラス軟化温度588℃、熱膨張係数70×10−7、平均粒子径2.3μm
高融点ガラス粉末:
SiO2 30質量%、B2O3 31質量%、ZnO 6質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al2O3 27質量%、屈折率(ng):1.55、軟化温度790℃、熱膨張係数32×10−7、平均粒子径2.3μm
(隔壁用感光性ペーストの作製) 隔壁用感光性ペースト:感光性モノマーM−1を4質量部、感光性モノマーM−2を6質量部、感光性ポリマー24質量部、光重合開始剤6質量部、重合禁止剤0.2質量部および紫外線吸収剤溶液12.8質量部を、溶媒A38質量部に、温度80℃で加熱溶解した。得られた溶液を冷却した後、粘度調整剤を9質量部添加して、有機溶液1を作製した。有機溶液1をガラス基板に塗布して乾燥することにより得られた有機塗膜の屈折率(ng)1.555であった。
実施例の隔壁用感光性ペーストに用いた原料は次のとおりである。
感光性モノマーM−1 : トリメチロールプロパントリアクリレート
感光性モノマーM−2 : テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性ポリマー:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/40/30の質量比からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(BASF社製 IC369)。
重合禁止剤:1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
紫外線吸収剤溶液:スダンIV(東京応化工業株式会社製)のγ―ブチロラクトン0.3質量%溶液
バインダーポリマー:エチルセルロース(ハーキュレス社製)
粘度調整剤:フローノンEC121(共栄社化学社製)
溶媒A:γ−ブチロラクトン
低融点ガラス粉末A:
SiO2 27質量%、B2O3 31質量%、ZnO 6質量%、Li2O 7質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al2O3 23質量%、屈折率(ng):1.56、ガラス軟化温度588℃、熱膨張係数70×10−7、平均粒子径2.3μm
高融点ガラス粉末:
SiO2 30質量%、B2O3 31質量%、ZnO 6質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al2O3 27質量%、屈折率(ng):1.55、軟化温度790℃、熱膨張係数32×10−7、平均粒子径2.3μm
(隔壁用感光性ペーストの作製) 隔壁用感光性ペースト:感光性モノマーM−1を4質量部、感光性モノマーM−2を6質量部、感光性ポリマー24質量部、光重合開始剤6質量部、重合禁止剤0.2質量部および紫外線吸収剤溶液12.8質量部を、溶媒A38質量部に、温度80℃で加熱溶解した。得られた溶液を冷却した後、粘度調整剤を9質量部添加して、有機溶液1を作製した。有機溶液1をガラス基板に塗布して乾燥することにより得られた有機塗膜の屈折率(ng)1.555であった。
次に、作製した有機溶液1の60質量部に、低融点ガラス粉末Aを30質量部、高融点ガラス粉末Aを10質量部添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、隔壁用感光性ペーストを作製した。
(緩衝層用ペーストの原料)
隔壁用感光性ペーストの作製に用いた原料以外について、以下に記載する。
バインダーポリマー:エチルセルロース(ハーキュレス社製)
重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製)
熱重合開始剤: アゾビスイソブチロニトリル
酸化チタン粉末:酸化チタン粉末、平均粒子径0.3μm。
隔壁用感光性ペーストの作製に用いた原料以外について、以下に記載する。
バインダーポリマー:エチルセルロース(ハーキュレス社製)
重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学社製)
熱重合開始剤: アゾビスイソブチロニトリル
酸化チタン粉末:酸化チタン粉末、平均粒子径0.3μm。
(緩衝層用ペーストの作製)
エチルセルロースを10質量%含有するテルピネオール溶液40質量部、重合性モノマー15質量部、熱重合開始剤1質量部、隔壁用低融点ガラス粉末Aを40質量部および酸化チタン粉末4質量部を混合および混練して、熱硬化型の緩衝層用ペーストを作製した。
エチルセルロースを10質量%含有するテルピネオール溶液40質量部、重合性モノマー15質量部、熱重合開始剤1質量部、隔壁用低融点ガラス粉末Aを40質量部および酸化チタン粉末4質量部を混合および混練して、熱硬化型の緩衝層用ペーストを作製した。
(黒色層形成用感光性ペーストの原料)
隔壁用ペーストおよび緩衝層用ペーストの作製に用いた原料以外について、以下に記載する。
低軟化点ガラス粉末B:
NaO 2質量%、SiO2 12質量%、TiO2 2質量%、B2O3 15質量%、Cr2O3 4質量%、Fe2O3 5質量%、Co2O3 3質量%、Al2O3 1質量%、ZnO 14質量%、Bi2O3 39質量%、ZrO2 3質量%
酸化コバルト粉末:酸化コバルト粉末、平均粒径0.2μm
(黒色層形成用感光性ペーストの作製)
上記材料を用いて、黒色層形成用感光性ペーストを以下の方法で作製した。
黒色層形成用感光性用ペーストA:有機溶液1の60質量部に、低融点ガラス粉末Bを30質量部および高融点ガラス粉末Aを10質量部添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、黒色層形成用感光性用ペーストAを作製した。
黒色層形成用感光性用ペーストB:有機溶液1の60質量部に、低融点ガラス粉末Aを28質量部および酸化コバルト粉末を12質量部添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、黒色層形成用感光性用ペーストBを作製した。
黒色層形成用ペースト:エチルセルロースを10質量%含有するテルピネオール溶液45質量部、重合性モノマー15質量部、熱重合開始剤1質量部および酸化コバルト粉末40質量部を混合、混練して熱硬化型の黒色層形成用ペーストを作製した。
隔壁用ペーストおよび緩衝層用ペーストの作製に用いた原料以外について、以下に記載する。
低軟化点ガラス粉末B:
NaO 2質量%、SiO2 12質量%、TiO2 2質量%、B2O3 15質量%、Cr2O3 4質量%、Fe2O3 5質量%、Co2O3 3質量%、Al2O3 1質量%、ZnO 14質量%、Bi2O3 39質量%、ZrO2 3質量%
酸化コバルト粉末:酸化コバルト粉末、平均粒径0.2μm
(黒色層形成用感光性ペーストの作製)
上記材料を用いて、黒色層形成用感光性ペーストを以下の方法で作製した。
黒色層形成用感光性用ペーストA:有機溶液1の60質量部に、低融点ガラス粉末Bを30質量部および高融点ガラス粉末Aを10質量部添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、黒色層形成用感光性用ペーストAを作製した。
黒色層形成用感光性用ペーストB:有機溶液1の60質量部に、低融点ガラス粉末Aを28質量部および酸化コバルト粉末を12質量部添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、黒色層形成用感光性用ペーストBを作製した。
黒色層形成用ペースト:エチルセルロースを10質量%含有するテルピネオール溶液45質量部、重合性モノマー15質量部、熱重合開始剤1質量部および酸化コバルト粉末40質量部を混合、混練して熱硬化型の黒色層形成用ペーストを作製した。
(単位厚み当たりの光透過率の測定)
隔壁用感光性ペースト又は黒色層形成用感光性ペーストを用いて、ガラス基板上に厚み10μmのベタ膜を作製し、U−4100UVVIS測定装置(日立製作所製)を用いて波長550nmの光透過率を測定した。
隔壁用感光性ペースト又は黒色層形成用感光性ペーストを用いて、ガラス基板上に厚み10μmのベタ膜を作製し、U−4100UVVIS測定装置(日立製作所製)を用いて波長550nmの光透過率を測定した。
(明度L*値の測定)
隔壁用感光性ペースト又は黒色層形成用感光性ペーストを用いて、ガラス基板上に厚み10μmのベタ膜を作製し、比色計CM2002(コニカミノルタ)を用いて明度L*値を測定した。
隔壁用感光性ペースト又は黒色層形成用感光性ペーストを用いて、ガラス基板上に厚み10μmのベタ膜を作製し、比色計CM2002(コニカミノルタ)を用いて明度L*値を測定した。
(発光輝度の測定)
作製したシンチレータパネルを、PaxScan2520にセットして放射線検出装置を作製した。管電圧80kVpのX線をシンチレータパネルの基板側から照射し、蛍光体層から発光された光の発光量を検出した。輝度の評価は、比較例2の結果に対する相対評価で行った。
(画像欠陥の評価)
作製したシンチレータパネルを、PaxScan2520にセットして放射線検出装置を作製した。管電圧80kVpのX線をシンチレータパネルの基板側から照射し、ベタ画像を撮影した。これを画像再生装置によって画像として再生し、得られたプリント画像を観察して、画像欠陥、クロストークや線状ノイズの有無、発光部と非発光部のコントラストを評価した。発光部と非発光部のコントラスト評価は、比較例2の結果に対する相対評価で行った。
作製したシンチレータパネルを、PaxScan2520にセットして放射線検出装置を作製した。管電圧80kVpのX線をシンチレータパネルの基板側から照射し、蛍光体層から発光された光の発光量を検出した。輝度の評価は、比較例2の結果に対する相対評価で行った。
(画像欠陥の評価)
作製したシンチレータパネルを、PaxScan2520にセットして放射線検出装置を作製した。管電圧80kVpのX線をシンチレータパネルの基板側から照射し、ベタ画像を撮影した。これを画像再生装置によって画像として再生し、得られたプリント画像を観察して、画像欠陥、クロストークや線状ノイズの有無、発光部と非発光部のコントラストを評価した。発光部と非発光部のコントラスト評価は、比較例2の結果に対する相対評価で行った。
(実施例1)
500mm×500mm×厚さ0.7mmのガラス基板(日本電気硝子社製OA−10G、熱膨張係数38×10−7、基板厚さ0.7mm)に、緩衝層用ペーストを15μmスクリーン印刷で塗布し、乾燥して熱硬化させ、厚さ10μmの緩衝層用ペースト塗布膜を形成した。その表面に隔壁用感光性ペーストを乾燥厚さ490μmになるように、ダイコーターで塗布し、乾燥して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を形成した。次に、所望の隔壁パターンに対応する開口部を形成したフォトマスク(縦横ともピッチ160μm、線幅20μmの格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を超高圧水銀灯で600mJ/cm2で露光した。露光後の隔壁用感光性ペースト塗布膜の表面に、黒色層形成用感光性ペーストAを乾燥厚さ10μmになるように塗布し、乾燥して、黒色形成用感光性ペースト塗布膜を形成した。次に、隔壁用感光性ペースト塗布膜を露光したのと同一のフォトマスクを介して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を超高圧水銀灯で600mJ/cm2で露光した。露光後の2層の塗布膜を、0.5%のエタノールアミン水溶液中で現像し、未露光部分を除去して、格子状の感光性ペースト塗布膜パターンを形成した。さらに585℃で15分間、空気中で感光性ペースト塗布膜パターンを焼成し、隔壁ピッチ160μm、隔壁頂部幅25μm、隔壁底部幅45μm、隔壁高さ300μmで、480mm×480mmの大きさの格子状であり、最上層が黒色である隔壁を有する隔壁部材を得た。このときの最上層の厚みは、5μmであった。
500mm×500mm×厚さ0.7mmのガラス基板(日本電気硝子社製OA−10G、熱膨張係数38×10−7、基板厚さ0.7mm)に、緩衝層用ペーストを15μmスクリーン印刷で塗布し、乾燥して熱硬化させ、厚さ10μmの緩衝層用ペースト塗布膜を形成した。その表面に隔壁用感光性ペーストを乾燥厚さ490μmになるように、ダイコーターで塗布し、乾燥して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を形成した。次に、所望の隔壁パターンに対応する開口部を形成したフォトマスク(縦横ともピッチ160μm、線幅20μmの格子状開口部を有するクロムマスク)を介して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を超高圧水銀灯で600mJ/cm2で露光した。露光後の隔壁用感光性ペースト塗布膜の表面に、黒色層形成用感光性ペーストAを乾燥厚さ10μmになるように塗布し、乾燥して、黒色形成用感光性ペースト塗布膜を形成した。次に、隔壁用感光性ペースト塗布膜を露光したのと同一のフォトマスクを介して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を超高圧水銀灯で600mJ/cm2で露光した。露光後の2層の塗布膜を、0.5%のエタノールアミン水溶液中で現像し、未露光部分を除去して、格子状の感光性ペースト塗布膜パターンを形成した。さらに585℃で15分間、空気中で感光性ペースト塗布膜パターンを焼成し、隔壁ピッチ160μm、隔壁頂部幅25μm、隔壁底部幅45μm、隔壁高さ300μmで、480mm×480mmの大きさの格子状であり、最上層が黒色である隔壁を有する隔壁部材を得た。このときの最上層の厚みは、5μmであった。
500mm×500mm×厚さ0.7mmのガラス基板(日本電気硝子社製OA−10G)に、隔壁用感光性ペーストを乾燥厚さ17μmになるように、ダイコーターで塗布し、乾燥した。次に、基板全面を700mJ/cm2で露光し、さらに585℃で15分間、空気中で感光性ペースト塗布膜パターンを焼成し、厚み10μmのベタ膜を作製した。このベタ膜の光透過率は、40%であり、明度L*値は53であった。同様に、黒色層形成用感光性用ペーストAのベタ膜を作製して光透過率および明度L*値を測定したところ、それぞれ10%および28であった。
その後、蛍光体として粒径10μmの酸硫化ガドリニウム粉末とエチルセルロースとの混合物を隔壁により区画された空間に充填し、シンチレータパネル1を作製した。
作製したシンチレータパネル1とPaxScan2520からなる放射線検出装置を評価した結果、線状ノイズを含む欠陥も無く、相対輝度120%、鮮鋭度120%の良好な画像が得られた。
(実施例2)
黒色層形成用感光性用ペーストBを用いた以外は、実施例1と同様の方法で隔壁パターンを形成した。最上層の厚みは、5μmであった。また、黒色層形成用感光性用ペーストAのベタ膜を作製して光透過率および明度L*値を測定したところ、それぞれ5%および18であった。
黒色層形成用感光性用ペーストBを用いた以外は、実施例1と同様の方法で隔壁パターンを形成した。最上層の厚みは、5μmであった。また、黒色層形成用感光性用ペーストAのベタ膜を作製して光透過率および明度L*値を測定したところ、それぞれ5%および18であった。
次に、隔壁の表面および基板上の隔壁の形成されていない面に、バッチ式スパッタリング装置(アルバック社製SV−9045)にてアルミ膜を隔壁頂部での厚みが300nmになるよう成膜をして、反射層を形成した。この時、隔壁側面のアルミ膜の厚みは100nmであり、基板上の隔壁の形成されていない面のアルミ膜の厚みは200nmであった。
その後、粒径10μmの酸硫化ガドリニウム粉末とエチルセルロースとの混合物を隔壁により区画された空間に充填し、シンチレータパネル2を作製した。
作製したシンチレータパネル2とPaxScan2520からなる放射線検出装置を評価した結果、線状ノイズを含む欠陥も無く、相対輝度140%、鮮鋭度180%の良好な画像が得られた。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、格子状の感光性ペースト塗布膜パターンを形成した。さらに585℃で15分間、空気中で感光性ペースト塗布膜パターンを焼成し、隔壁ピッチ160μm、隔壁頂部幅25μm、隔壁底部幅45μm、隔壁高さ295μmで、480mm×480mmの大きさの格子状の隔壁を有する隔壁部材を得た。
実施例1と同様の方法で、格子状の感光性ペースト塗布膜パターンを形成した。さらに585℃で15分間、空気中で感光性ペースト塗布膜パターンを焼成し、隔壁ピッチ160μm、隔壁頂部幅25μm、隔壁底部幅45μm、隔壁高さ295μmで、480mm×480mmの大きさの格子状の隔壁を有する隔壁部材を得た。
次に、黒色層用ペーストを隔壁の最上部のみに、乾燥後厚み5μmとなるように塗布および乾燥して、最上層が黒色である隔壁を有する隔壁部材を得た。また、黒色層形成用ペーストのベタ膜を作製して光透過率および明度L*値を測定したところ、それぞれ1%および12であった。
その後、粒径10μmの酸硫化ガドリニウム粉末とエチルセルロースとの混合物を隔壁により区画された空間に充填し、シンチレータパネル3を作製した。
作製したシンチレータパネル3とPaxScan2520からなる放射線検出装置を評価した結果、線状ノイズを含む欠陥も無く、相対輝度120%、鮮鋭度180%の良好な画像が得られた。
(比較例1)
隔壁用感光性ペーストを乾燥厚さ500μmになるようにダイコーターで塗布した以外は、実施例1と同様の方法で、格子状隔壁を有する隔壁部材を得た。
隔壁用感光性ペーストを乾燥厚さ500μmになるようにダイコーターで塗布した以外は、実施例1と同様の方法で、格子状隔壁を有する隔壁部材を得た。
その後、粒径10μmの酸硫化ガドリニウム粉末とエチルセルロースとの混合物を隔壁により区画された空間に充填し、シンチレータパネル4を作製した。
作製したシンチレータパネル4とPaxScan2520からなる放射線検出装置を評価した結果、線状ノイズを含む欠陥は無いものの、相対輝度93、鮮鋭度100%と改善が見られなかった。
(比較例2)
シンチレータパネルに隔壁を形成せず、蛍光体ベタ膜を形成した以外は、実施例1と同じ方法で放射線検出装置を作製した。
シンチレータパネルに隔壁を形成せず、蛍光体ベタ膜を形成した以外は、実施例1と同じ方法で放射線検出装置を作製した。
以上の評価結果より、本発明の放射線検出装置は、発光輝度が高く、高精細な画像が実現可能であることが分かる。
1 放射線検出装置
2 シンチレータパネル
3 出力基板
4 基板
5 緩衝層
6A 隔壁の層
6B 黒色の最上層
7 シンチレータ層
8 隔膜層
9 光電変換層
10 出力層
11 基板
12 電源部
13 反射層
2 シンチレータパネル
3 出力基板
4 基板
5 緩衝層
6A 隔壁の層
6B 黒色の最上層
7 シンチレータ層
8 隔膜層
9 光電変換層
10 出力層
11 基板
12 電源部
13 反射層
Claims (7)
- 平板上の基板、該基板の上に設けられた隔壁、および、前記隔壁により区画されたセル内に充填された蛍光体からなるシンチレータ層を有するシンチレータパネルであり、
前記隔壁は、単位厚み当たりの光透過率の異なる複数の層からなる、シンチレータパネル。 - 前記隔壁は、最上層の単位厚み当たりの光透過率が最低である、請求項1記載のシンチレータパネル。
- 前記隔壁は、最上層が黒色である、請求項1又は2記載のシンチレータパネル。
- 前記隔壁は、アルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料により構成されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のシンチレータパネル。
- 前記隔壁は、最上層がRu、Mn、Ni、Cr、Fe、CoおよびCu並びにそれら金属の酸化物からなる群から選ばれる、黒色金属化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか一項記載のシンチレータパネル。
- 前記隔壁は、最上層が前記金属化合物を1〜20質量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料により構成されている、請求項5記載のシンチレータパネル。
- 前記隔壁表面に反射層が形成されている、請求項1〜6のいずれか一項記載のシンチレータパネル。
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