以下、図を用いて本発明のシンチレータパネルおよびそれを用いた放射線検出装置の好ましい構成について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
図1は、本発明のシンチレータパネルを含む放射線検出装置の構成を模式的に表した断面図である。図2は、本発明のシンチレータパネルの構成を模式的に表した斜視図である。放射線検出装置1は、シンチレータパネル2、出力基板3、および電源部12からなる。シンチレータパネル2は、蛍光体からなるシンチレータ層7を含み、X線等の入射された放射線のエネルギーを吸収して、波長が300nmから800nmの範囲の電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる範囲の電磁波(光)を発光する。
シンチレータパネル2は、基板4と、その上に形成されたセルを仕切るための隔壁6と、その隔壁で形成された空間内に、充填された蛍光体からなるシンチレータ層7とから構成される。上記セルの、上記基板に対して水平方向の断面の形状は、六角形である必要がある。ここで六角形には、厳密な意味での六角形のみならず、例えば、六角形の角部が面取りされたような形状、または、六角形の各辺が直線でなく波線状のもの等、見た目上六角形状に見える略六角形が含まれる。
上記の断面形状を六角形とすることで、隔壁の機械強度を顕著に向上させることができる。これら断面の形状が六角形のセルは、図2に示されるように、互いの辺を共有する形で蜂の巣状に連続的に形成されていること、すなわち、密に配列されていることが好ましい。
隔壁の中央頂部幅Lt1は、10〜50μmであることが好ましい。ここで隔壁の中央頂部幅とは、図4に示されるように、隔壁の中央の位置における、隔壁の頂部の幅をいう。隔壁の中央とは、図4に示されるように、六角形を構成する辺が、直線S1と交わる点である。なお、直線S1は、六角形の6つの辺の内、互いに対向する2つの辺を、それぞれ等分する直線である。
隔壁の中央底部幅Lb1は、15〜70μmであることが好ましい。すなわち、Lt1と、Lb1とは、Lt1+5μm ≦ Lb1 ≦ Lt1+20μmの関係を満たすことが好ましい。ここで隔壁の中央底部幅とは、図4に示されるように、隔壁の中央の位置における、隔壁の底部の幅をいう。隔壁の底部幅が15μm未満であると、焼成時に隔壁の欠陥が生じやすくなる。一方、隔壁の底部幅が大きくなると、隔壁により区画された空間に充填できる蛍光体量が減ってしまう。隔壁の頂部幅が10μm未満であると隔壁の強度が低下する。一方、隔壁の頂部幅が50μmを超えると、シンチレータ層の発光光を取り出せる領域が狭くなってしまう。
隔壁の機械強度をさらに向上させるためには、上記のように、Lb1をLt1よりも大きくすることが有効である。この点、セルの断面の形状が六角形ではなく四角形であると、底部幅を大きくしようとした際に、縦横の隔壁の交差部が過度に太くなってしまう問題があったが、例えばセルの断面の形状を略正六角形とすれば隔壁の交差角度が120°と大きくなることから、隔壁の交差部における露光光の干渉は緩和される。このため、隔壁の交差部が過度に太くなってしまう問題を抑制しながら、隔壁の機械強度をさらに向上させることができる。
Lb1と、隔壁の交差部底部幅Lb2とは、Lb2/Lb1 ≦ 2の関係を満たすことが好ましい。Lb2/Lb1の値が2を超えると、セルの開口率が減少して発光輝度が低下し、鮮明な撮影が困難になる。ここで隔壁の交差部底部幅とは、図4に示されるように、六角形を構成する3つの辺が完全に交差した部分に形成される、三角形の一の辺を延伸した直線S2と重複する、隔壁の底部の幅をいう。なお、この場合の六角形の辺とは、該辺におけるLb1に相当する直線を、その長手方向に対して垂直に移動させることにより形成される、幅Lb1の直線をいう。
上記のように、隔壁の交差部が過度に太くなってしまう問題を効果的に抑制しながら、隔壁の機械強度をさらに向上させるため、セルの断面の形状は略正六角形とすることが好ましいが、セルの断面は図3および4に示されるような、略正六角形以外の六角形であっても構わない。この場合、六角形のピッチPxは、50〜290μmであり、Lb1/Px≦0.4、六角形のピッチPyは、0.7≦Py/Px≦1.5であることが好ましい。ここでPxは、六角形の6つの辺の内、互いに対向する2つの辺の間の距離をいう。またPyは、Pxと直行方向で、六角形の6つの頂点の内、六角形の重心を挟んで対向する2つの頂点の間の距離をいう。Pxが50μm未満であると、パターン形成が困難となり、ピッチが過度に大きいと、鮮明な撮影が困難になる。なお、Pxが200μm以下になるような場合には、現像性を向上させるため、セルの断面は図3および4に示されるような六角形であることがむしろ好ましく、PyがPxよりも10μm以上大きいことがより好ましい。さらに、Pxが150μm以下になるような場合には、1.1 ≦ Py/Px ≦ 1.5であることがさらに好ましい。
隔壁におけるLt1、Lb1、Lb2、Px及びPyといった各種の線幅は、走査電子顕微鏡(例えば、株式会社日立製作所社製「S−4800」)を用いて、形成された隔壁の任意の箇所25点を繰り返し測定し、その平均値を求めることによってそれぞれ算出することができる。
走査電子顕微鏡を用いた測定は、より具体的には、次のように測定することができる。まず、隔壁の断面が図4等のようになるように、隔壁の長手方向と水平方向に又は垂直方向に隔壁を切断し、走査電子顕微鏡での観察が可能なサイズに加工する。測定倍率としては、2〜5カ所の隔壁が視野に入る倍率を選ぶようにする。例えば、Pxが160μmである場合には、200〜300倍の倍率を選ぶようにすればよい。その後、隔壁の線幅と同等の大きさの標準試料で縮尺を校正した後に写真撮影をして、縮尺から線幅を算出することができる。
基板1と隔壁6の間には、緩衝層5を形成することで、隔壁6をさらに安定的に形成することが可能になる。また、この緩衝層5の可視光に対する反射率を高くすることにより、シンチレータ層7で発光した光を効率良く出力基板上3の光電変換層9に到達させることができる。
出力基板3は、基板11上にフォトセンサとTFTからなる画素が2次元状に形成された光電変換層9および出力層10を有する。シンチレータパネル2の出光面と出力基板3の光電変換層9をポリイミド樹脂等からなる隔膜層8を介して、接着あるいは密着させることで放射線検出装置1となる。シンチレータ層7で発光した光が光電変換層9に到達し、光電変換層9で光電変換を行い、出力する。本発明のシンチレータパネルは各セルを隔壁が仕切っているので、セルに相対して配置された光電変換素子の画素の大きさおよびピッチと、シンチレータパネルのセルの大きさおよびピッチを一致させることにより、蛍光体によって光が散乱されても、散乱光が隣のセルに到達するのを防ぐことができる。これによって光散乱による画像のボケが低減でき、高精度の撮影が可能になる。
本発明のシンチレータパネルに用いる基板としては、放射線の透過性を有する材料であれば、各種のガラス、高分子材料、金属等を用いることができる。例えば、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどのガラスからなる板ガラス;サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミックからなるセラミック基板;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素などの半導体からなる半導体基板;セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、炭素繊維強化樹脂シート等の高分子フィルム(プラスチックフィルム);アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート;金属酸化物の被覆層を有する金属シートやアモルファスカーボン基板などを用いることができる。中でも、板ガラスは、平坦性および耐熱性の点で望ましい。さらに、シンチレータパネルの持ち運びの利便性の点でシンチレータパネルの軽量化が進められていることから、板ガラスは厚み2.0mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.0mm以下である。
この基板上に、隔壁を形成するが、隔壁は、耐久性および耐熱性の点から、ガラス材料から構成されることが好ましい。本発明のシンチレータパネルでは、隔壁は、アルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料により構成されていることを特徴とする。アルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラスを主成分とする材料は、適切な屈折率と軟化温度を有し、細幅の隔壁を大面積に高精度に形成するのに適している。なお、本発明において、低融点ガラスとは、軟化温度が700℃以下のガラスのことである。また、低融点ガラスを主成分とするとは、隔壁を構成する材料の50質量%〜100質量%が低融点ガラス粉末であることを言う。
本発明のシンチレータパネルの製造方法では、基板上に、アルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラス粉末と感光性有機成分を含有する感光性ペーストを塗布し、感光性ペースト塗布膜を形成する工程、得られた感光性ペースト塗布膜を所定の開口部を有するフォトマスクを介して露光する露光工程、露光後の感光性ペースト塗布膜の現像液に可溶な部分を溶解除去する現像工程、現像後の感光性ペースト塗布膜パターンを高温に加熱して有機成分を除去すると共に低融点ガラスを軟化および焼結させ、隔壁を形成する焼成工程を含む。露光工程においては、露光により感光性ペースト塗布膜の必要な部分を光硬化させ、もしくは、感光性ペースト塗布膜の不要な部分を光分解させて、感光性ペースト塗布膜の現像液に対する溶解コントラストをつける。現像工程においては、露光後の感光性ペースト塗布膜の不要部分が現像液で除去され、必要な部分のみが残存した感光性ペースト塗布膜パターンが得られる。
焼成工程においては、得られた感光性ペースト塗布膜パターンを、好ましくは500〜700℃、より好ましくは500〜650℃の温度で焼成することにより、有機成分が分解留去されると共に、低融点ガラス粉末が軟化および焼結されて、低融点ガラスを含む隔壁が形成される。有機成分を完全に除去するために、焼成温度は500℃以上が好ましい。また、焼成温度が700℃を超えると、基板として一般的なガラス基板を用いた場合、基板の変形が大きくなるため、焼成温度は700℃以下が望ましい。
本発明の方法は、ガラスペーストを多層スクリーン印刷によって積層印刷した後に焼成する加工方法よりも、高精度の加工が可能である。
本発明で用いる感光性ペーストは、感光性有機成分を含有する有機成分とアルカリ金属酸化物を2〜20質量%含有する低融点ガラス粉末を含む無機粉末から構成される。有機成分は、焼成前の感光性ペースト塗布膜パターンを形成するために一定量が必要であるが、有機成分が多すぎると、焼成工程で除去する物質の量が多くなり、焼成収縮率が大きくなるため、焼成工程でのパターン欠損を生じやすい。一方、有機成分が過少になると、ペースト中での無機微粒子の混合および分散性が低下するため、焼成時に欠陥が生じやすくなるばかりでなく、ペーストの粘度の上昇のためペーストの塗布性が低下し、さらにペーストの安定性にも悪影響があり好ましくないことがある。そこで、感光性ペースト中の無機粉末の含有量が30質量%〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは、40質量%〜70質量%である。また、無機粉末の全体に対して、低融点ガラス粉末は50質量%〜100質量%であることが好ましい。低融点ガラス粉末が無機粉末の50質量%未満であると、焼成工程において焼結が良好に進まず、得られる隔壁の強度が低下するので好ましくない。
焼成工程において、有機成分をほぼ完全に除き、かつ、得られる隔壁が一定の強度を有するようにするためには、用いる低融点ガラス粉末として、軟化温度が480℃以上の低融点ガラスからなるガラス粉末を用いることが好ましい。軟化温度が480℃未満では、焼成時に有機成分が十分に除かれる前に、低融点ガラスが軟化してしまい、有機成分の残存物がガラス中に取り込まれてしまう。この場合は、後々に有機成分が徐々に放出されて、製品品質を低下させる懸念がある。また、ガラス中に取り込まれた有機成分の残存物がガラスの着色の要因となる。軟化温度が480℃以上の低融点ガラス粉末を用い、500℃以上の温度で焼成することにより、有機成分を完全に除去することができる。前述のように、焼成工程における焼成温度は、500〜700℃が好ましく、500〜650℃がより好ましいため、低融点ガラスの軟化温度は480〜700℃が好ましく、480〜640℃がより好ましく、480〜620℃がさらに好ましい。
軟化温度は、示差熱分析装置(DTA、株式会社リガク製「差動型示差熱天秤TG8120」)を用いて、サンプルを測定して得られるDTA曲線から、吸熱ピークにおける吸熱終了温度を接線法により外挿して求められる。具体的には、示差熱分析装置を用いて、アルミナ粉末を標準試料として、室温から20℃/分で昇温して、測定サンプルとなる無機粉末を測定し、DTA曲線を得る。得られたDTA曲線より、吸熱ピークにおける吸熱終了温度を接線法により外挿して求めた軟化点Tsを軟化温度と定義する。
低融点ガラスの熱膨張係数は40〜90×10−7(/K)が好ましく、さらに好ましくは40〜65×10−7である。基板上に、低融点ガラスを含む感光性ペースト塗布膜を形成して焼成した際、熱膨張係数が90×10−7より大きいと、パネルが大幅に反るため、放射線検出装置として組み立てることが困難となる。また、パネルの反りが発生した放射線検出装置は、パネル面内で発光光のクロストークが発生したり、発光光量の検出感度のバラつきが発生するため、高精細な画像検出が難しくなる。また、熱膨張係数が40×10−7より小さい場合は、低融点ガラスの軟化温度を十分に下げることができない。
低融点ガラスを得るためには、ガラスを低融点化するために有効な材料である、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化亜鉛およびアルカリ金属酸化物から選ばれた金属酸化物を用いることができる。中でも、アルカリ金属酸化物を用いて、ガラスの軟化温度を調整することが望ましい。なお、一般にはアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムを指すが、本発明において用いられるアルカリ金属酸化物とは、酸化リチウム、酸化ナトリウムおよび酸化カリウムから選ばれた金属酸化物を指す。
本発明において、低融点ガラス中のアルカリ金属酸化物の含有量X(M2O)は、2〜20質量%の範囲内とすることが必要である。アルカリ金属酸化物の含有量が2質量%未満では、軟化温度が高くなることによって、焼成工程を高温で行うことが必要となる。そのため、基板としてガラス基板を用いた場合に、焼成工程において基板が変形することにより、得られるシンチレータパネルにゆがみが生じたり、隔壁に欠陥が生じたりしやすいので適さない。また、アルカリ金属酸化物の含有量が20質量%よりも多い場合は、焼成工程においてガラスの粘度が低下しすぎる。そのため、得られる隔壁の形状にゆがみが生じやすい。また、得られる隔壁の空隙率が小さくなりすぎることにより、得られるシンチレータパネルの発光輝度が低くなる。
さらに、アルカリ金属酸化物に加えて、高温でのガラスの粘度の調製のために、酸化亜鉛を3〜10質量%添加することが望ましい。酸化亜鉛の含有量が3質量%以下では、高温でのガラスの粘度が高くなり、10質量%以上添加すると、ガラスのコストが高くなる傾向がある。
さらには、低融点ガラスに、上記のアルカリ金属酸化物、および酸化亜鉛に加えて、酸化ケイ素、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、アルカリ土類金属の酸化物等を含有させることにより、低融点ガラスの安定性、結晶性、透明性、屈折率、熱膨張特性等を制御することができる。低融点ガラスの組成としては、以下に示す組成範囲とすることにより、本発明に適した粘度特性を有する低融点ガラスを作製できるので好ましい。
アルカリ金属酸化物:2〜20質量%
酸化亜鉛:3〜10質量%
酸化ケイ素:20〜40質量%
酸化ホウ素:25〜40質量%
酸化アルミニウム:10〜30質量%
アルカリ土類金属酸化物:5〜15質量%
なお、アルカリ土類金属とは、マグネシウム、カルシウム、バリウムおよびストロンチウムから選ばれる1種類以上の金属を指す。
低融点ガラス粉末を含む無機粒子の粒子径は 粒度分布測定装置(日機装株式会社製「MT3300」)を用いて評価した。測定方法としては、水を満たした試料室に無機粉末を投入し、300秒間、超音波処理を行った後に測定を行った。
低融点ガラス粉末の粒子径は50%体積平均粒子径(D50)が1.0〜4.0μmの範囲内であることが望ましい。D50が1.0μm未満では、粒子の凝集が強くなり、均一な分散性を得られにくくなり、ペーストの流動性が不安定になる。このような場合は、ペーストを塗布した際の厚み均一性が低下する。また、D50が4.0μmを越えると、得られる焼結体の表面凹凸が大きくなり、後工程でパターンが破砕する原因となりやすい。
本発明で用いる感光性ペーストは、上述の低融点ガラス粉末以外に、700℃でも軟化しない高融点ガラスや酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等のセラミックス粒子をフィラーとして含んでも良い。フィラーは、低融点ガラス粉末と共に用いることにより、ペースト組成物の焼成収縮率の制御や形成される隔壁の形状を保持する効果がある。ただし、無機粉末全体に占めるフィラーの割合が50質量%を越えると、低融点ガラス粉末の焼結を阻害して、隔壁の強度が低下などの問題が生じるので好ましくない。また、フィラーは、低融点ガラス粉末と同様の理由で、平均粒子径0.5〜4.0μmであることが好ましい。
本発明で用いる感光性ペースト組成物は、低融点ガラス粉末の平均屈折率n1と感光性有機成分の平均屈折率n2が、−0.1<n1−n2<0.1を満たすことが好ましく、−0.01≦n1−n2≦0.01を満たすことがより好ましく、−0.005≦n1−n2≦0.005を満たすことがさらに好ましい。この条件を満たすことにより、露光工程において、低融点ガラス粉末と感光性有機成分の界面における光散乱が抑制され、高精度のパターン形成を行うことができる。低融点ガラス粉末を構成する酸化物の配合比率を調整することで好ましい熱特性、および、好ましい平均屈折率を兼ね備えた低融点ガラス粉末を得ることができる。
低融点ガラス粉末の屈折率はベッケ線検出法により測定することができる。25℃での波長436nm(g線)における屈折率を本発明における低融点ガラス粉末の屈折率とした。また、感光有機成分の平均屈折率は、感光性有機成分からなる塗膜をエリプソメトリーにより測定することで求めることができる。25℃での波長436nm(g線)における屈折率を感光性有機成分の平均屈折率とした。
本発明で用いる感光性ペーストは、有機成分として感光性有機成分を含むことによって、上記のような感光性ペースト法でパターン加工することができる。感光性有機成分として、感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマーあるいは光重合開始剤などを用いることにより、反応性を制御することができる。ここで、感光性モノマー、感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーにおける感光性とは、ペーストが活性光線の照射を受けた場合に、感光性モノマー、感光性オリゴマーあるいは感光性ポリマーが、光架橋、光重合などの反応を起こして化学構造が変化することを意味する。
感光性モノマーとは、活性な炭素−炭素2重結合を有する化合物であり、官能基としてビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基を有する単官能化合物および多官能化合物が挙げられる。特に、多官能アクリレート化合物および多官能メタクリレート化合物から選ばれた化合物を有機成分中に10〜80質量%含有させたものが、光反応により硬化時の架橋密度を高くし、パターン形成性を向上させる点で好ましい。多官能アクリレート化合物および多官能メタクリレート化合物としては、多様な種類の化合物が開発されているので、反応性、屈折率などを考慮して、それらの中から適宜選択することが可能である。
感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーとしては、活性な炭素−炭素2重結合を有するオリゴマーおよびポリマーが好ましく用いられる。感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物等のカルボキシル基含有モノマーおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシアクリレート等のモノマーを共重合することにより得られる。活性な炭素−炭素不飽和二重結合をオリゴマーもしくはポリマーに導入する方法としては、オリゴマーもしくはポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライド、マレイン酸等のカルボン酸を反応させて作る方法等を用いることができる。
感光性モノマーや感光性オリゴマーとして、ウレタン構造を有するモノマーあるいはオリゴマーを用いることにより、焼成工程においてパターン欠損しにくい感光性ペーストを得ることができる。本発明においては、ガラス粉末として低融点ガラス粉末を用いることにより、焼成工程後期のガラス粉末の焼結が進行する過程で、急激な収縮を生じにくいことがパターン欠損を抑制する。それに加えて、有機成分にウレタン構造を有する化合物を用いた場合には、焼成工程初期の有機成分が分解および留去する過程における応力緩和が生じ、パターン欠損を生じにくい。これらの両方の効果により、広い温度領域でパターン欠損を抑制することができる。
光重合開始剤は、活性光源の照射によってラジカルを発生する化合物である。具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。また、これらを2種以上組み合わせて使用しても良い。
感光性ペーストは、バインダーとして、カルボキシル基を有する共重合ポリマーを含有することができる。カルボキシル基を有する共重合体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有モノマー、およびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシアクリレートなどのその他のモノマーを選択し、アゾビスイソブチロニトリルのような開始剤を用いて共重合することにより得られる。カルボキシル基を有する共重合体としては、焼成時の熱分解温度が低いことから、アクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルおよびアクリル酸またはメタアクリル酸を共重合成分とする共重合体が好ましく用いられる。
感光性ペーストは、カルボキシル基を有する共重合ポリマーを含有することにより、アルカリ水溶液への溶解性に優れたペーストとなる。カルボキシル基を有する共重合体の酸価は50〜150mgKOH/gが好ましい。酸価が150mgKOH/g以下とすることで、現像許容幅を広くとることができる。また、酸価が50mgKOH/g以上とすることで、未露光部の現像液に対する溶解性が低下することがない。従って現像液濃度を濃くする必要がなく、露光部の剥がれを防ぎ、高精細なパターンを得ることができる。さらに、カルボキシル基を有する共重合体が側鎖にエチレン性不飽和基を有することも好ましい。エチレン性不飽和基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
感光性ペーストは、低融点ガラス粉末と感光性モノマー、感光性オリゴマー、感光性ポリマー、光重合開始剤などからなる感光性有機成分に必要に応じ、有機溶媒およびバインダーを加えて、各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーや混練機で均質に混合分散し作製する。
感光性ペーストの粘度は、無機粉末、増粘剤、有機溶媒、重合禁止剤、可塑剤および沈降防止剤などの添加割合によって適宜調整することができるが、その範囲は2〜200Pa・sの範囲内が好ましい。例えば、感光性ペーストの基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、2〜5Pa・sの粘度が好ましい。感光性ペーストの基板への塗布をスクリーン印刷法で行い、1回の塗布で膜厚10〜40μmを得るには、50〜200Pa・sの粘度が好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は、10〜50Pa・sの粘度が好ましい。
かくして得られた感光性ペーストを基板上に塗布し、フォトリソグラフィ法により所望のパターンを形成し、さらに焼成することによって隔壁を形成することができる。フォトリソグラフィ法により、上記感光性ペーストを用いて隔壁の製造を行う一例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
基板上に、感光性ペーストを全面に、もしくは部分的に塗布して感光性ペースト塗布膜を形成する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュおよびペーストの粘度を選ぶことによって調整できる。
つづいて、露光工程を行う。通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、フォトマスクを用いずに、レーザー光などで直接描画する方法を用いてもよい。露光装置としては、プロキシミティ露光機などを用いることができる。用いるフォトマスクの開口幅は、所望のLt1と同じか、または、プロキシミティギャップに応じた露光光の広がり分、小さいことが好ましい。例えば、プロキシミティギャップが100〜200μmである場合は、Lt1よりも3〜6μmだけ小さいことが好ましい。また、上記のように、隔壁の交差部は過度に太くなる傾向があるため、フォトマスクの交差部開口幅W2と、フォトマスクの中央開口幅W1とは、W1 > W2の関係を満たすこと、すなわち、W2はW1よりも小さいことが好ましく、W1の2〜50%小さいことがより好ましく、W1の5〜30%小さいことがさらに好ましい。ここでW1は、図3に示される直線S1と、フォトマスクの開口部とが重なった部分の幅をいう。またW2は、図5に示されるような、3辺の開口部が交差する部分における、開口部の最小の幅をいう。
また、大面積の露光を行う場合は、基板上に感光性ペーストを塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。この際、使用される活性光線は、例えば、近赤外線、可視光線、紫外線などが挙げられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも、超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みにより異なるが、通常、1〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.01〜30分間露光を行う。
露光後、感光性ペースト塗布膜の露光部分と未露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して現像を行い、所望の格子形状の感光性ペースト塗布膜パターンを得る。現像は、浸漬法やスプレー法、ブラシ法で行う。現像液には、ペースト中の有機成分が溶解可能である溶媒を用いることができる。現像液は、水を主成分とすることが好ましい。ペースト中にカルボキシル基などの酸性基をもつ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム等の無機アルカリ水溶液も使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、パターン部を剥離させ、また非可溶部を腐食させるおそれがある。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
次に焼成炉にて焼成工程を行う。焼成工程の雰囲気や温度は、感光性ペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成は通常500〜700℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行うことが好ましい。焼成温度は500〜650℃がより好ましい。以上の工程により、感光性ペースト塗布膜パターンから有機成分が除去されると共に、該塗布膜パターンに含まれる低融点ガラスが軟化および焼結され、基板上に実質的に無機物からなる隔壁が形成された隔壁部材が得られる。
隔壁の高さ(H)は、100〜1000μmが好ましく、160〜500μmがより好ましく、250〜500μmがさらに好ましい。隔壁の高さが1000μmを超える高さでは、加工時のパターン形成が困難になる。一方、隔壁の高さが低くなると、充填可能な蛍光体の量が少なくなるため、得られるシンチレータパネルの発光輝度が低下して、鮮明な撮影が困難になる。
Lb1に対する隔壁高さ(H)のアスペクト比(H/Lb1)は1.0〜25.0であることが好ましい。隔壁底部幅に対するアスペクト比(H/Lb1)が高い隔壁ほど、隔壁により区画された1画素あたりの空間が広く、より多くの蛍光体を充填することができる。
Pxに対する隔壁高さ(H)のアスペクト比(H/Px)は0.1〜3.5であることが好ましい。Pxに対するアスペクト比(H/Px)が高い隔壁ほど、高精細に区画された1画素となり、かつ、1画素あたりの空間により多くの蛍光体を充填することができる。
隔壁の高さおよび幅は、Lt1等と同様に測定することができる。
隔壁は、感光性ペーストに含まれる無機粉末が焼結されて形成されている。隔壁を形成する無機粉末同士は、融着しているが、その間に空隙部分が残存している。隔壁に含まれる、この空隙の比率は、隔壁を焼成する焼成工程の温度設計によって調整することができる。隔壁全体に占める空隙部分の比率(空隙率)を1〜25%とすることにより、可視光の反射特性と強度を両立する隔壁を形成することができるので好ましい。空隙率が1%未満では、隔壁の反射率が低いことにより、得られるシンチレータパネルの発光輝度が低くなる。空隙率が25%を超えると、隔壁の強度が不足して、崩壊しやすくなる。反射特性と強度を両立するためには、空隙率を2〜25%とすることがより好ましく、3〜20%がさらに好ましい。
空隙率の測定方法は、隔壁の断面を精密研磨した後に、電子顕微鏡で観察し、無機材料部分と空隙部分を2階調に画像変換し、空隙部分の面積が隔壁断面の面積に閉める割合を計算する。
また、隔壁と基板の間に、低融点ガラスおよびセラミックスから選ばれた無機成分からなる緩衝層を設けることが好ましい。緩衝層は、焼成工程において、隔壁にかかる応力を緩和して、安定的な隔壁形成を実現する効果がある。また、緩衝層が高反射率であると、蛍光体によって発光した可視光を光電変換素子の方向に反射することによってシンチレータパネルの発光輝度を高くすることができ、好ましい。反射率を高くするために、緩衝層は、低融点ガラスおよびセラミックスからなることが好ましい。低融点ガラスとしては、隔壁と同様のものを用いることができる。セラミックスとしては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等が好ましい。
緩衝層を形成するには、有機成分と、低融点ガラス粉末、セラミックス粉末等の無機粉末を溶媒に分散したペーストを基材に塗布および乾燥して、緩衝層用ペースト塗布膜を形成する。次に、緩衝層用ペースト塗布膜を、好ましくは500〜700℃、より好ましくは500〜650℃の温度で焼成することで、緩衝層を形成できる。
また、該緩衝層の焼成と隔壁の焼成を同時に済ませることも可能である。この同時焼成を用いることで、焼成工程数の削減が可能になり、焼成工程に消費されるエネルギーを低減することが可能になる。緩衝層と隔壁の同時焼成を用いる場合は、緩衝層用ペーストの有機成分として上記の隔壁用感光性ペーストと同様の感光性有機成分を用い、緩衝層用ペースト塗布膜を形成した後に、緩衝層用ペースト塗布膜を全面露光し、塗布膜を硬化することが好ましい。また、緩衝層用ペーストの有機成分として重合性モノマー、重合性オリゴマーおよび重合性ポリマーから選ばれるいずれかの重合性化合物および熱重合開始剤を含有する熱硬化性有機成分を用い、緩衝層ペースト塗布膜を形成した後に、熱硬化することも好ましい。これらの方法によって、緩衝層用ペースト塗布膜が溶媒に不溶になるので、その上に隔壁用感光性ペーストを塗布する工程において、緩衝層用ペースト塗布膜が溶解したり剥がれたりすることを防止することができる。
熱硬化性緩衝層用ペーストには、上記成分以外にエチルセルロース等のバインダー、分散剤、増粘剤、可塑剤および沈降防止剤等を適宜添加することができる。
緩衝層の550nmの波長に対する反射率は60%以上であることが好ましい。緩衝層の反射率を60%以上とすることで、パネルの発光光が緩衝層を透過せず、出力基板側へ発光光を有効的に取り出すことができる。
次に、隔壁により区画されたセル内に、蛍光体を充填することで、シンチレータパネルを完成することができる。ここで、セルとは、格子状の隔壁により区画された空間のことを言う。また、該セルに充填された蛍光体を、シンチレータ層と呼ぶ。
蛍光体としては、種々の公知の蛍光体材料を使用することができる。特に、X線から可視光に対する変換率が比較的高く、蛍光体の結晶による反射率が高いCsIが好ましい。また、発光効率を高めるために、CsIに各種の賦活剤を添加してもよい。例えば、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものや、インジウム(In)、タリウム(Tl)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)などの賦活物質を含有するCsIが好ましい。また、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)、またはフッ化タリウム(TlF、TlF3)等のタリウム化合物を賦活剤として使用することができる。
シンチレータ層の形成は、例えば、真空蒸着により、結晶性CsI(この場合、臭化タリウム等のタリウム化合物を共蒸着することも可)を蒸着する方法、水に分散させた蛍光体スラリーを基板に塗布する方法、蛍光体粉末と、エチルセルロースやアクリル樹脂等の有機バインダーと、テルピネオールやγ―ブチロラクトン等の有機溶媒と混合して作製した蛍光体ペーストをスクリーン印刷やディスペンサーで塗布する方法を用いることができる。
隔壁により区画されたセル内に充填される蛍光体の量は、セル内の空間体積に対して、蛍光体が占める体積分率(以下、蛍光体体積充填率と呼ぶ)が55%〜100%であることが好ましく、60%〜100%がより好ましく、70%〜100%がさらに好ましい。蛍光体体積分率が55%より小さいと、入射するX線を効率的に可視光に変換することができない。入射するX線の変換効率を上げるため、セルの空間に対して蛍光体を高密度に充填することが好ましい。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
(隔壁用感光性ペーストの原料)
実施例の感光性ペーストに用いた原料は次の通りである。
感光性モノマーM−1 : テトラプロピレングリコールジメタクリレート
感光性モノマーM−2 : 下記式(A)において、R1、R2は水素、R3はエチレンオキサイド−プロピレンオキサイドコオリゴマー、R4はイソフォロンジイソシアネート残基、分子量は19,000
R1−(R4−R3)n−R4−R2 (A)
感光性ポリマー:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/30/30の質量比からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもの(重量平均分子量43000、酸価100)
光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(BASF社製 IC369)。
重合禁止剤:1,6−ヘキサンジオール−ビス[(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])
紫外線吸収剤溶液:スダンIV(東京応化工業株式会社製)のγ―ブチロラクトン0.3質量%溶液
バインダーポリマー:エチルセルロース(ハーキュレス社製)
粘度調整剤:フローノンEC121(共栄社化学社製)
溶媒A:γ−ブチロラクトン
溶媒B:テルピネオール
低融点ガラス粉末A:
SiO2 27質量%、B2O3 31質量%、ZnO 6質量%、Li2O 7質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al2O3 23質量%、屈折率(ng):1.56、軟化温度588℃、熱膨張係数68×10−7、平均粒子径2.3μm
高融点ガラス粉末A:
SiO2 30質量%、B2O3 31質量%、ZnO 6質量%、MgO 2質量%、CaO 2質量%、BaO 2質量%、Al2O3 27質量%、屈折率(ng):1.55、軟化温度790℃、熱膨張係数32×10−7、平均粒子径2.3μm
(隔壁用ペーストの作製)
上記材料を用いて、隔壁ペーストを以下の方法で作製した。
隔壁用感光性ペーストA:感光性モノマーM−1を6質量部、感光性モノマーM−2を4質量部、感光性ポリマー24質量部、光重合開始剤6質量部、重合禁止剤0.1質量部および紫外線吸収剤溶液5質量部を、溶媒A38質量部に、温度80℃で加熱溶解した。得られた溶液を冷却した後、粘度調整剤を9質量部添加して、有機溶液1を作製した。有機溶液1をガラス基板に塗布して乾燥することにより得られた有機塗膜の屈折率(ng)は1.555であった。
次に、作製した有機溶液1の60質量部に、低融点ガラス粉末Aを30質量部、高融点ガラス粉末Aを10質量部添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、隔壁用感光性ペーストAを作製した。
隔壁用感光性ペーストB:感光性モノマーM−1を6質量部、感光性モノマーM−2を4質量部、感光性ポリマー24質量部、光重合開始剤6質量部、重合禁止剤0.1質量部および紫外線吸収剤溶液5質量部を、溶媒A26質量部に、温度80℃で加熱溶解した。得られた溶液を冷却した後、粘度調整剤を9質量部添加して、有機溶液2を作製した。有機溶液2をガラス基板に塗布して乾燥することにより得られた有機塗膜の屈折率(ng)は1.555であった。
次に、作製した有機溶液2の60質量部に、低融点ガラス粉末A38質量部、高融点ガラス粉末Aを2質量部添加した後、3本ローラー混練機にて混練し、隔壁用感光性ペーストBを作製した。
隔壁用スクリーン印刷用ペーストA:エチルセルロールを10質量%含有するテルピネオール溶液50質量部および低融点ガラス粉末A50質量部を混合してスクリーン印刷用ペーストAを作製した。エチルセルロールを10質量%含有するテルピネオール溶液をガラス基板に塗布して乾燥することにより得られた有機塗膜の屈折率(ng)は1.49であった。
(緩衝層用ペーストの原料)
隔壁用ペーストに用いた原料以外について、以下に記載する。
重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製)
熱重合開始剤:アゾビスイソブチロニトリル
酸化チタン粉末:酸化チタン粉末、平均粒子径0.1μm。
(緩衝層用ペーストの作製)
隔壁用感光性ペーストA 97質量部に、上記の酸化チタン粉末3質量部を添加して、再混練することにより、光硬化型の緩衝層用ペーストAを作製した。
また、エチルセルロースを10質量%含有するテルピネオール溶液40質量部、重合性モノマー15質量部、熱重合開始剤1質量部と低融点ガラス粉末Aを40質量部、および酸化チタン粉末4質量部を混合、混練して熱硬化型の緩衝層用ペーストBを作製した。
また、エチルセルロースを10質量%含有するテルピネオール溶液40質量部、重合性モノマー15質量部、熱重合開始剤1質量部と低融点ガラス粉末Dを40質量部、および酸化チタン粉末4質量部を混合、混練して熱硬化型の緩衝層用ペーストCを作製した。
(緩衝層の反射率測定)
基板上に緩衝層および隔壁が形成された隔壁部材について、緩衝層のみが形成された部分を分光測色計(コニカミノルタ社製「CM−2002」)SCEモードで測定し、波長550nmの光の反射率を評価した。
(発光輝度の測定)
作製したシンチレータパネルを、PaxScan1313、PaxScan2520、PaxScan4336およびPaxScan3030(Varian社製FPD)のいずれかにセットして放射線検出装置を作製した。管電圧80kVpのX線をシンチレータパネルの基板側から照射し、蛍光体層から発光された光の発光量をPaxScan2520、PaxScan4336およびPaxScan3030のいずれかで検出した。輝度の評価は、実施例1の結果に対する相対評価で行った。
(画像欠陥の評価)
作製したシンチレータパネルをPaxScan2520、PaxScan4336およびPaxScan3030のいずれかにセットし、放射線検出装置を作製した。管電圧80kVpのX線をシンチレータパネルの基板側から照射し、ベタ画像を撮影した。これを画像再生装置によって画像として再生し、得られたプリント画像を目視により観察して、画像欠陥、クロストークや線状ノイズの有無を評価した。なお、Pxが127μm未満のものについては、シンチレータパネルを光学顕微鏡で観察して、欠陥等の有無を評価した。
実施例1
500mm×500mmのガラス基板(日本電気硝子社製OA−10、熱膨張係数38×10−7、基板厚さ0.7mm)に、緩衝層用ペーストAを15μmバーコーターで塗布し、乾燥した後に、超高圧水銀灯で500mJ/cm2の全面光照射を行い、厚さ12μmの緩衝層用ペースト塗布膜を形成した。
次に、該緩衝層用ペースト塗布膜の上に、隔壁用感光性ペーストAを乾燥厚さ450μmになるように、ダイコーターで塗布し、乾燥して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を形成した。次に、所望の隔壁パターンに対応する開口部を形成したフォトマスク(Pxが127μm、Pyが177μm、線幅20μmの六角形を密に配列した開口部を有するクロムマスク)を介して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を超高圧水銀灯で600mJ/cm2で露光した。露光後の隔壁用感光性ペースト塗布膜を、0.5%のエタノールアミン水溶液中で現像し、未露光部分を除去して、感光性ペースト塗布膜パターンを形成した。さらに585℃で15分間、空気中で、緩衝層用ペースト塗布膜と感光性ペースト塗布膜パターンとを同時焼成し、頂部のPxが127μm、頂部のPyが180μm、Lt1が25μm、Lb1が45μm、Lb2が65μm、隔壁高さ340μm、Py/Px=1.42、480mm×480mmの大きさの隔壁を有する隔壁部材を得た。緩衝層のみを形成した部分の波長550nmの光に対する反射率は、65%であった。隔壁の空隙率は、8.3%となった。
その後、蛍光体として、CsI:Tl(CsI:TlI=1mol:0.003mol)を隔壁により区画された空間に充填し、580℃で焼成し、蛍光体体積充填率85%のシンチレータパネル1を作製した。作製したシンチレータパネル1とPaxScan2520からなる放射線検出装置を評価した結果、線状ノイズを含む欠陥も無く、輝度バラつき2.5%の良好な画像が得られた。
実施例2
フォトマスクをPxが194μm、線幅25μmの正六角形を密に配列した開口部を有するクロムマスクに変更した以外は、実施例1と同様に隔壁部材を作製した。得られた隔壁部材の隔壁は、頂部のPxが194μm、Lt1が35μm、Lb1が48μm、Lb2が85μm、隔壁高さ340μmで、Py/Px=1.15、480mm×480mmの大きさであった。緩衝層のみを形成した部分の波長550nmの光に対する反射率は、65%であった。隔壁の空隙率は、8.0%となった。
その後、蛍光体として、CsI:Tl(CsI:TlI=1mol:0.003mol)を隔壁により区画された空間に充填し、580℃で焼成し、蛍光体体積充填率85%のシンチレータパネル2を作製した。作製したシンチレータパネル2とPaxScan3030からなる放射線検出装置を評価した結果、線状ノイズを含む欠陥も無く、輝度バラつき3.5%の良好な画像が得られ、輝度は実施例1の130%であった。
実施例3
フォトマスクをPxが139μm、線幅15μmの正六角形を密に配列した開口部を有するクロムマスクに変更した以外は、実施例1と同様に隔壁部材を作製した。得られた隔壁部材の隔壁は、頂部のPxが139μm、Lt1が18μm、Lb1が35μm、Lb2が50μm、隔壁高さ340μmで、480mm×480mmの大きさであった。緩衝層のみを形成した部分の波長550nmの光に対する反射率は、65%であった。であった。また、隔壁の空隙率は、7.8%となった。
その後、蛍光体として、CsI:Tl(CsI:TlI=1mol:0.003mol)を隔壁により区画された空間に充填し、580℃で焼成し、蛍光体体積充填率85%のシンチレータパネル3を作製した。
作製したシンチレータパネル3とPaxScan4336からなる放射線検出装置を評価した結果、線状ノイズを含む欠陥も無く、輝度バラつき2.2%の良好な画像が得られ、輝度は実施例1の140%であった。
実施例4
150mm×150mmのガラス基板(日本電気硝子社製OA−10、熱膨張係数38×10−7、基板厚さ0.7mm)に、緩衝層用ペーストAを15μmバーコーターで塗布し、乾燥した後に、超高圧水銀灯で500mJ/cm2の全面光照射を行い、厚さ12μmの緩衝層用ペースト塗布膜を形成した。
次に、該緩衝層用ペースト塗布膜の上に、隔壁用感光性ペーストAを乾燥厚さ300μmになるように、ダイコーターで塗布し、乾燥して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を形成した。次に、所望の隔壁パターンに対応する開口部を形成したフォトマスク(Pyが60μm、頂部のPxが50μm、W1が10μm、W2が7μmのテーパー状である六角形を密に配列した開口部を有するクロムマスク)を介して、隔壁用感光性ペースト塗布膜を超高圧水銀灯で800mJ/cm2で露光した。露光後の隔壁用感光性ペースト塗布膜を、0.5%のエタノールアミン水溶液中で現像し、未露光部分を除去して、感光性ペースト塗布膜パターンを形成した。さらに585℃で15分間、空気中で、緩衝層用ペースト塗布膜と感光性ペースト塗布膜パターンとを同時焼成し、Pyが64μm、Pxが50μm、Lt1が13μm、Lb1が18μm、Lb2が24μm、隔壁高さ220μmで、130mm×130mmの大きさの隔壁を有する隔壁部材を得た。緩衝層のみを形成した部分の波長550nmの光に対する反射率は、65%であった。隔壁の空隙率は、8.3%となった。
その後、蛍光体として、CsI:Tl(CsI:TlI=1mol:0.003mol)を隔壁により区画された空間に充填し、580℃で焼成し、蛍光体体積充填率85%のシンチレータパネル4を作製した。作製したシンチレータパネル4は、顕微鏡で観察して、欠陥がないことを確認した。作製したシンチレータパネル4とPaxScan1313からなる放射線検出装置を評価した結果、輝度バラつき2.2%の良好な画像が得られ、輝度は実施例1の82%であった。
実施例5
隔壁用感光性ペーストBを用い、焼成温度を575℃とした以外は、実施例4と同様に隔壁部材を作製した。得られた隔壁部材の隔壁は、Pyが60μm、頂部のPxが50μm、Lt1が12μm、Lb1が17μm、Lb2が25μm、隔壁高さ200μmで、130mm×130mmの大きさであった。緩衝層のみを形成した部分の波長550nmの光に対する反射率は、68%であった。隔壁の空隙率は、5.5%となった。
その後、蛍光体として、CsI:Tl(CsI:TlI=1mol:0.003mol)を隔壁により区画された空間に充填し、570℃で焼成し、蛍光体体積充填率85%のシンチレータパネル5を作製した。作製したシンチレータパネル5は、顕微鏡で観察して、欠陥がないことを確認した。作製したシンチレータパネル5とPaxScan1313からなる放射線検出装置を評価した結果、輝度バラつき3.8%の良好な画像が得られ、輝度は実施例1の85%であった。
比較例1
500mm×500mmのガラス基板(日本電気硝子社製OA−10)に、前述の緩衝層用スクリーン印刷用ペーストBを、スクリーン印刷により15μmの膜厚で塗工し、乾燥させて、緩衝層用ペースト塗布膜を形成した。その後、縦方向および横方向のピッチ160μm、開口長さ130μm×130μm、隔壁幅35μmで所定の画素数に見合う大きさの格子状パターンを用いて隔壁用スクリーン印刷用ガラスペーストAをスクリーン印刷によって、膜厚40μmでの塗布および乾燥を12層繰り返した。その後、550℃の空気中で焼成を行い、隔壁の中央頂部幅35μm、隔壁の中央底部幅65μm、隔壁高さ450μmで、480mm×480mmの大きさの隔壁を形成した。緩衝層のみを形成した部分の550nmの光に対する反射率は、69%であった。また、隔壁の空隙率は、2%となった。
その後、蛍光体として、CsI:Tl(CsI:TlI=1mol:0.003mol)を隔壁により区画された空間に充填し、580℃で焼成し、蛍光体体積充填率60%のシンチレータパネル28を作成した。隔壁パターン構造の歪みのため、隔壁により区画された空間にこれ以上は蛍光体充填することはできなかった。
作製したシンチレータパネル6とPaxScan2520からなる放射線検出装置を評価した結果、輝度は実施例1の78%であった。画像に関しても、画像欠陥が面内に40箇所以上発生した。
比較例2
フォトマスクをピッチ55μm、線幅10μmの格子状の開口部を有するクロムマスクに変更した以外は、実施例4と同様に隔壁部材を作製した。隔壁の中央頂部幅13μm、隔壁の中央底部幅25μm、隔壁高さ220μmで、130mm×130mmの大きさの格子状隔壁を有する隔壁部材を得た。隔壁交点部の底部幅は残渣が残り、交点がR形状となったため正確な隔壁の交差部底部幅は計測不可であった。隔壁の空隙率は、8.3%となった。
その後、蛍光体として、CsI:Tl(CsI:TlI=1mol:0.003mol)を隔壁により区画された空間に充填を試みたが、隔壁の残渣が多く、セルの開口の度合いのバラツキが大きいため、充填ができないセルが多数発生した。
作製したシンチレータパネル7の評価の結果、輝度は実施例1の50%しかなかった。また、輝度バラつきが10%発生し、画像欠陥が面内に1000箇所以上発生した。