以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態のシステム構成例を示す図である。図1において、混雑情報出力装置10と一以上のクライアント装置20とは、LAN(Local Area Network)又はインターネット等のネットワークを介して通信可能とされている。
混雑情報出力装置10は、或る鉄道路線において運行される各列車の混雑度合を示す情報を推定すると共に、該情報を出力する処理を実行するコンピュータである。以下、混雑度合を示す情報を、「混雑情報」という。混雑情報の一例として、列車に座れる確率が挙げられる。
クライアント装置20は、特定の列車に関して、混雑情報出力装置10によって推定された混雑情報を、ユーザが閲覧するために利用するコンピュータである。クライアント装置20の一例として、PC(Personal Computer)、タブレット型端末、スマートフォン、又は携帯電話等が挙げられる。
図2は、本発明の実施の形態における混雑情報出力装置のハードウェア構成例を示す図である。図2の混雑情報出力装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有する。
混雑情報出力装置10での処理を実現するプログラムは、記録媒体101によって提供される。プログラムを記録した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って混雑情報出力装置10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
なお、記録媒体101の一例としては、CD−ROM、DVDディスク、又はUSBメモリ等の可搬型の記録媒体が挙げられる。また、補助記憶装置102の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ等が挙げられる。記録媒体101及び補助記憶装置102のいずれについても、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に相当する。
図3は、本発明の実施の形態における混雑情報出力装置の機能構成例を示す図である。図3において、混雑情報出力装置10は、混雑情報推定部11、要求受付部12、対象列車検索部13、混雑情報取得部14、及び出力部15等を有する。これら各部は、混雑情報出力装置10にインストールされたプログラムが、CPU104に実行させる処理により実現される。
混雑情報出力装置10は、また、乗降情報記憶部121、計算用テーブル群122、着席可能率記憶部123、累積着席可能率記憶部124、着席可能人数記憶部125、車内状態記憶部126、及び運行予定情報記憶部127等を利用する。これら各記憶部は、補助記憶装置102、又は混雑情報出力装置10にネットワークを介して接続される記憶装置等を用いて実現可能である。計算用テーブル群122については、メモリ装置103を用いて実現されてもよい。
混雑情報推定部11は、列車の混雑情報を推定するための処理、例えば、列車に座れる確率を停車駅ごとに推定するための処理を実行する。座れる確率とは、始発駅における空席、又は停車駅において乗客が降りることにより発生する空席に対して座れる確率である。本実施の形態では、便宜上、乗客による空席の奪い合いを、椅子取り競争に喩える。或る停車駅の椅子取り競争前の状態は、当該停車駅において乗客が降車し、降車によって空席が発生した状態である。この状態で、椅子取り競争が行われる。すなわち、降車によって発生した空席の取り合いが、車内に居て降車しなかった乗客と、当該停車駅で乗車する乗客との間で行われる。
図3において、混雑情報推定部11は、乗客数算出部111、空席数算出部112、参加人数算出部113、着席可能率算出部114、着席可能人数算出部115、車内状態算出部116、及び保存処理部117等を含む。
乗客数算出部111は、乗降情報記憶部121が記憶する乗降情報に基づいて、列車ごとに、当該列車の各停車駅の発車時における乗車駅別の乗客数と、乗車駅別の乗客数の合計とを算出する。乗車駅別の乗客数の合計とは、列車に乗車している乗客の総数である。
空席数算出部112は、椅子取り競争前の列車内の空席数を算出する。参加人数算出部113は、停車駅ごとの、椅子取り競争の参加人数を算出する。或る列車について、或る停車駅における椅子取り競争の参加者は、当該停車駅より前の停車駅で当該列車に乗車している乗客であって、当該停車駅で降車していない乗客と、当該停車駅で当該列車に乗車する乗客との合計である。
着席可能率算出部114は、椅子取り競争において、空席に座れる確率、すなわち、椅子取り競争の参加人数の中で、空席に座れる人数の割合を算出する。着席可能人数算出部115は、椅子取り競争において、空席に座れる人数を算出する。車内状態算出部116は、椅子取り競争後に、列車内において立っている乗客の人数、及び座っている乗客の人数を算出する。保存処理部117は、着席可能率算出部114、着席可能人数算出部115、又は車内状態算出部116によって算出された情報を、着席可能率記憶部123、累積着席可能率記憶部124、着席可能人数記憶部125、又は車内状態記憶部126に保存する。保存される情報は、いずれも、混雑情報の一例である。
要求受付部12は、クライアント装置20から、累積着席可能率の検索要求を受け付ける。本実施の形態において、椅子取り競争において座れる確率を「着席可能率」という。単に、着席可能率というとき、停車駅ごとの椅子取り競争において座れる確率をいう。累積着席可能率とは、或る停車駅までに座れる確率をいう。すなわち、累積着席可能率とは、乗車してから或る停車駅までの各停車駅における椅子取り競争で座れる確率が累積的に加算された値である。したがって、着席可能率は、停車駅ごとに上下動するが、累積着席可能率は、後の停車駅ほど高くなる。停車駅が後になればなるほど、椅子取り競争の回数は増加し、椅子取り競争の回数が増加すればするほど、座れるチャンスは増加するからである。なお、着席可能率及び累積着席可能率の概念又は定義の詳細については、後述される。
検索要求には、列車を特定するための情報が検索条件として指定される。対象列車検索部13は、検索条件に合致する列車を、運行予定情報記憶部127に記憶されている運行予定情報に基づいて特定する。運行予定情報は、例えば、ダイヤ情報等、各列車の停車駅ごとの発着予定時刻を示す情報である。
混雑情報取得部14は、検索要求に合致した列車に関して算出されている累積着席可能率を、累積着席可能率記憶部124より取得する。出力部15は、取得された累積着席可能率を出力するための処理を実行する。本実施の形態では、クライアント装置20における画面表示よって、累積着席可能率が出力される。したがって、出力部15は、累積着席可能率をクライアント装置20に表示させる画面データを生成する。
計算用テーブル群122は、混雑情報推定部11が実行する計算処理において利用されるテーブル群である。
以下、混雑情報出力装置10が実行する処理手順について説明する。まず、一つの列車について、混雑情報を推定するための処理について説明する。本実施の形態において、混雑情報の推定は、以下の前提条件に基づいて行われる。
(1)乗客の乗車距離によって、座りたい意識は変わらない。例えば、始発駅において、長距離乗車する乗客が、始発駅で座れるまで待つなどにより、長距離乗客ほど始発駅で座るといったような傾向は無いこととする。
(2)乗車位置による混雑度合の相違等の偏在性は考慮されない。
(3)乗客各人の身体能力、思考性は考慮しない。
(4)座席は全て定員通りに埋まることとする。例えば、7人掛けの座席には必ず7人が座り、6人が座るといった状態は無いこととする。
(5)空いている席が有れば、いずれかの乗客が必ず座ることとする。
(6)一旦座った乗客は、降車駅まで立たないこととする。例えば、席を譲ったりすることは無いこととする。
(7)停車駅において、停車前から乗っている乗客の着席可能率は、当該停車駅で乗車する乗客の着席可能率の10倍であるとする。
(8)混雑情報の推定対象とされ列車は予約対象とされない自由席を有する列車である。したがって、本実施の形態において、「乗客」とは、座席予約をしていない乗客をいう。
図4は、一つの列車に関する混雑情報を推定する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。図4において処理対象とされる列車を「列車A」とする。列車Aの座席の定員は、30人であるとする。
ステップS101において、乗客数算出部111は、乗降情報記憶部121に記憶されている乗降情報を、例えば、メモリ装置103に読み込む。
図5は、乗降情報記憶部の構成例を示す図である。図5において、乗降情報記憶部121は、列車Aに関して、乗客の乗車駅別に、各停車駅での乗車人数及び降車人数を記憶する。乗車人数は、当該停車駅で乗車した、すなわち、列車Aに乗り込んだ乗客の人数である。降車人数は、当該停車駅で降車した乗客の人数である。
図5では、列車Aの停車駅は、駅1、駅2、駅3、駅4であることが示されている。駅1〜駅4は、便宜上、駅名又は駅の識別情報を示す。このうち駅1は、列車Aの始発駅である。なお、図5では、乗降情報記憶部121には、駅4の次の停車駅である終着駅に関する乗降情報は、記憶されていない。終着駅では、乗客の全員が降車し、乗車する人は居ないことが自明であるからである。
図5では、駅1において140が乗車し、当該140人のうちの10人が駅2で降車し、40人が駅3で降車し、40人が駅4で降車したことが示されている。また、駅2において10人が乗車し、当該10人のうちの2人が駅3で降車し、4人が駅4で降車したことが示されている。また、駅3において5人が乗車し、当該5人のうち2人が駅4で降車したことが示されている。更に、駅4において5人が乗車したことが示されている。
なお、図5に示される情報は、列車Aの或る日(例えば、2012年M月D日)の運行に関する情報である。すなわち、図5に示される乗降情報は、運行単位ごとに計測又は推定される乗客数に基づいて生成され、各日の日付に関連付けられて乗降情報記憶部121に記憶される。運行単位とは、一つの列車について、運行の開始から終了までの単位をいう。基本的に、運行単位ごとに、運行予定情報は異なる。本実施の形態において、「列車」とは、一つの運行単位に係る列車いう。すなわち、使用される車両が同じであったとしても、運行単位が異なれば、異なる列車として扱われる。「列車A」は、一つの特定の運行単位に係る列車の識別名である。
列車A以外の各列車についても、同様の乗降情報が生成され、乗降情報記憶部121に記憶される。乗降情報記憶部121に記憶される乗降情報の生成方法は、所定の方法に限定されない。後述されるように、自動改札機の改札情報を用いて生成されてもよい。
なお、乗降情報が毎日生成される場合、図4の処理も、例えば、全ての列車の運行の終了後に、毎日実行されてもよい。または一つの列車の運行が終了するたびに、当該列車に関して図4の処理が実行されてもよい。但し、乗降情報の生成や、図4の処理が毎日実行されるのは、図4の処理によって得られる混雑情報の精度又は信頼性を向上させるためである。したがって、混雑情報を得るために、乗降情報の生成や図4の処理が毎日実行されることは、必須事項ではない。例えば、或る1日のみに関して乗降情報の生成及び図4の処理が実行され、その結果得られる値が、ユーザに対して出力される混雑情報とされてもよい。
続いて、乗客数算出部111は、メモリ装置103に読み込んだ乗降情報に基づいて、列車Aの発車時における、乗車駅別の乗客数と、乗車駅別の乗客数の合計とを算出する(S102)。乗客数算出部111は、算出結果を、計算用テーブル群122を構成する乗車駅別乗客数テーブルT1に記憶する。なお、本実施の形態において「乗客数」とは、列車の車内にいる乗客の人数をいう。
図6は、乗車駅別乗客数テーブルの構成例を示す図である。図6に示されるように、乗車駅別乗客数テーブルT1は、列車Aの発車時における、乗車駅別の乗客数と、乗車駅別の乗客数の合計とを記憶する。
図6によれば、例えば、駅1で乗車した乗客について、駅1における乗客数は140人、駅2における乗客数は130人、駅3における乗客数は90人、駅4における乗客数は50人であることが分かる。また、駅1、駅2、駅3、駅4の順に、乗車駅別の乗客数の合計は、140人、140人、103人、62人であることが分かる。なお、「発車時の乗客数」とは、停車駅における椅子取り競争の終了後に車内に居る人数をいう。また、乗車駅別の乗客数の合計を、以下、「合計乗客数」という。
各停車駅での発車時の乗客数は、例えば、図7に示されるように算出される。図7は、各停車駅での発車時の乗客数の算出処理の一例を説明するための図である。
図7では、乗降情報記憶部121及び乗車駅別乗客数テーブルT1のそれぞれのセル(升目)に記憶される値がパラメータ化されている。各パラメータの意味は以下の通りである。
In(i) : 駅iでの乗車人数
Exit(i,j) : 駅iで乗車した乗客について駅jでの降車人数
Passenger(i,j) : 駅iで乗車した乗客について駅jの発車時の乗客数
TotalPass(j) : 駅jの発車時の乗客数の合計
以上において、駅iで乗車した乗客について、駅nの発車時の乗客数(Passeger(i,n))は、以下の式(2−1)の通り、駅nの一つ前の停車駅である駅n−1の発車時の乗客数から、駅nでの降車人数を減ずることで求まる。
Passeger(i,n)=Passnger(i,n−1)−Exit(i,n) ・・・(2−1)
例えば、駅1乗車の乗車客について、駅3の発車時の乗客数は、以下の通り求まる。
130−40=90(人)
また、駅nの合計乗客数は、以下の式(2−2)によって求まる。
続いて、混雑情報推定部11は、始発駅である駅1を、ステップS104以降のループ処理における処理対象とする(S103)。すなわち、S104以降は、停車駅ごとのループ処理となる。処理対象とされている停車駅を、以下「対象駅」という。
ステップS104において、空席数算出部112は、対象駅における椅子取り競争前の空席数を乗車駅別に算出する。乗車駅別の空席数とは、空席を作った乗客数についての乗車駅別の内訳である。空席数算出部112は、算出された空席数を、計算用テーブル群122を構成する空席数テーブルT2に記憶する。
図8は、空席数テーブルの構成例を示す図である。図8に示されるように、空席数テーブルT2には、ステップS104以降の処理の進行に応じ、椅子取り競争前の状態における各停車駅の空席数が記憶される。空席数テーブルT2において、最終行には、各停車駅の椅子取り競争前の空席数の合計が記憶される。最終行以外の行は、乗車駅別に、空席を作った乗客数が記憶される。例えば、駅1乗車の乗客は、駅2において、2.14人分の空席を作ったことが示されている。但し、ステップS104が最初に実行される場合は、対象駅は始発駅の駅1である。したがって、この場合、駅1の列の最終行のセルに対して、列車Aの座席の定員数である30が記憶される。
続いて、参加人数算出部113は、対象駅における椅子取り競争の参加人数を算出する(S105)。参加人数算出部113は、算出された参加人数を、計算用テーブル群122を構成する参加人数テーブルT3に記憶する。
図9は、参加人数テーブルの構成例を示す図である。図9に示されるように、参加人数テーブルT3には、ステップS104以降の処理の進行に応じ、各停車駅における椅子取り競争の参加人数が記憶される。参加人数テーブルT3において、最終行には、各停車駅の参加人数の合計が記憶される。最終行以外の行は、乗車駅別の参加人数が記憶される。ステップS105が最初に実行される場合は、対象駅は始発駅の駅1である。したがって、この場合、駅1の列の始発駅の行のセルと、最終行のセルとに対して、駅1での乗車人数が記憶される。
続いて、着席可能率算出部114は、対象駅の到着前に車内に居た乗客と、対象駅から乗車する乗客との間の優劣を無視して、対象駅における着席可能率を算出する(S106)。着席可能率算出部114は、算出された確率を、計算用テーブル群122を構成する優劣無視着席可能率テーブルT4に記憶する。なお、優劣とは、椅子取り競争に対する有利又は不利における優劣をいう。
図10は、優劣無視着席可能率テーブルの構成例を示す図である。図10に示されるように、優劣無視着席可能率テーブルT4には、ステップS104以降の処理の進行に応じ、各停車駅において、各停車駅の到着前に車内に居た乗客と、各停車駅から乗車する乗客との間の優劣を無視した場合の各停車駅における着席可能率が記憶される。
対象駅の到着前に車内に居た乗客と、対象駅から乗車する乗客との間の優劣を無視した場合の対象駅における着席可能率は、対象駅の空席数÷対象駅の参加人数によって求めることができる。ステップS106が最初に実行される場合は、対象駅は始発駅の駅1である。したがって、以下の演算によって、対象駅における着席可能率が算出される。
30(始発駅の空席数)÷140(始発駅の参加人数)×100=21.43(%)
続いて、着席可能率算出部114は、対象駅の到着前に車内に居た乗客と、対象駅から乗車する乗客との間の優劣を考慮して、対象駅における着席可能率を算出する(S107)。着席可能率算出部114は、算出された確率を、計算用テーブル群122を構成する優劣考慮着席可能率テーブルT5に記憶する。ここで、優劣の考慮とは、「停車駅において、停車前から乗っている乗客が着席可能率は、当該停車駅で乗車する乗客が着席可能率の10倍であるとする。」という前提(7)を考慮することをいう。
図11は、優劣考慮着席可能率テーブルの構成例を示す図である。図11に示されるように、優劣考慮着席可能率テーブルT5には、ステップS104以降の処理の進行に応じ、各停車駅において、各停車駅の到着前に車内に居た乗客と、各停車駅から乗車する乗客との間の優劣を考慮した場合の各停車駅における着席可能率が記憶される。優劣が考慮されるため、優劣考慮着席可能率テーブルT5は、乗車駅別に着席可能率を記憶可能とされている。
但し、ステップS107が最初に実行される場合は、対象駅は始発駅の駅1である。始発駅では、車内に乗客は居ない。したがって、椅子取り競争の参加者の間に優劣は発生しない。よって、この場合、ステップS106において算出された着席可能率である21.43%が、駅1乗車の乗客について、駅1における着席可能率として優劣考慮着席可能率テーブルT5に記憶される。
なお、ステップS107以降に関して、単に「着席可能率」というとき、優劣考慮の着席可能率をいう。
続いて、着席可能率算出部114は、対象駅での累積着席可能率を、乗車駅別に算出する(S108)。対象駅での累積着席可能率とは、乗車駅において乗車してから対象駅における椅子取り競争の終了時までに座れる確率をいい、対象駅における着席可能率とは異なる概念である。例えば、対象駅が駅3である場合、駅1乗車の乗客が対象駅対象駅での累積着席可能率は、駅1、駅2、又は駅3のいずれかの停車駅で座れている確率をいう。したがって、対象駅までに座れる確率は、終着駅に近付くにつれて増加する。
図12は、対象駅での累積着席可能率を説明するための図である。図12の上部のテーブルには、駅1乗車の乗客について、各停車駅における着席可能率が示されている。図12の説明において、単に「乗客」というとき、駅1乗車の乗客をいう。なお、図12における各確率は、便宜上、図11とは異なる。
駅1における着席可能率が75%である場合、乗客が、駅2での椅子取り競争前に立っている確率は25%である。駅2では、この25%のうちから新たに座れる乗客が発生する。駅2における着席可能率は20%であるのだから、駅2まで立っている乗客の駅2における着席可能率は、0.25×0.2×100=5%である。したがって、駅2での累積着席可能率は、75%+5%=80%となる。
また、駅2での椅子取り競争前に立っていた乗客の駅2における着席可能率が80%であるということは、駅2での椅子取り競争前に立っていた乗客が駅3まで立っている確率は、20%である。駅3では、この80%のうちから新たに座れる乗客が発生する。駅3における着席可能率は25%であるのだから、駅3まで立っている乗客の駅3における着席可能率は、0.25×0.8×0.25×100=5%である。したがって、駅3での累積着席可能率は、80%+5%=85%となる。駅4での累積着席可能率についても同様に算出される。
着席可能率算出部114は、ステップS108において算出された累積着席可能率を、計算用テーブル群122を構成する累積着席可能率テーブルT6に記憶する。
図13は、累積着席可能率テーブルの構成例を示す図である。図13に示されるように、累積着席可能率テーブルT6には、ステップS104以降の処理の進行に応じ、乗車駅別の累積着席可能率が記憶される。但し、テップS107が最初に実行される場合、対象駅は始発駅の駅1である。始発駅では、前駅までに座れる確率は無い。したがって、ステップS108において優劣考慮着席可能率テーブルT5に記憶された値である21.4%が、駅1乗車の乗客の累積着席可能率として、累積着席可能率テーブルT6に記憶される。
続いて、着席可能人数算出部115は、対象駅での椅子取り競争後に座れる人数を、乗車駅別に算出する(S109)。着席可能人数算出部115は、算出された人数を、計算用テーブル群122を構成する着席可能人数テーブルT7に記憶する。
図14は、着席可能人数テーブルの構成例を示す図である。図14に示されるように、着席可能人数テーブルT7には、ステップS104以降の処理の進行に応じ、各停車駅で座れる人数が、乗車駅別に記憶される。但し、テップS107が最初に実行される場合、対象駅は始発駅の駅1である。始発駅については、乗車人数が、座席の定員数以上であれば、座席の定員数が座れる人数となる。また、乗車人数が、座席の定員未満であれば、乗車人数が座れる人数となる。本実施の形態では、駅1における乗車人数は140人であり、列車Aの座席の定員数以上である。したがって、30(人)が、駅1乗車の乗客について駅1での座れる人数として、着席可能人数テーブルT7に記憶される。
続いて、車内状態算出部116は、椅子取り競争後における列車Aの車内において、立っている乗客数と、座っている乗客数とを、乗車駅別に算出する(S110)。車内状態算出部116は、算出結果を、計算用テーブル群122を構成する車内状態テーブルT8に記憶する。
図15は、車内状態テーブルの構成例を示す図である。図15に示されるように、車内状態テーブルT8には、ステップS104以降の処理の進行に応じ、各停車駅での椅子取り競争後に、車内で立っている乗客数と、座っている乗客数とが、乗車駅別に記憶される。また、車内状態テーブルT8には、各停車駅での、立っている乗客数の合計値と、座っている乗客数の合計値とが記憶される。
但し、ステップS107が最初に実行される場合、対象駅は始発駅の駅1である。始発駅については、乗車人数が、座席の定員数以上であれば、座席の定員数が椅子取り競争後に座っている乗客数となる。また、乗車人数から座っている乗客数を減じた値が、立っている乗客数となる。一方、乗車人数が、座席の定員未満であれば、乗車人数が、椅子取り競争後に座っている人数となり、立っている人数は0となる。本実施の形態では、駅1における乗車人数は140人であり、列車Aの座席の定員数以上である。したがって、30(人)が、駅1乗車の乗客について駅1での椅子取り競争後に座っている乗客数として、着席可能人数テーブルT7に記憶される。また、140−30=110(人)が、駅1乗車の乗客について駅1での椅子取り競争後に立っている乗客数として、着席可能人数テーブルT7に記憶される。また、座っている人数及び立っている人数の合計値は、それぞれ、30(人)、110(人)である。
続いて、混雑情報推定部11は、対象駅の次の停車駅が終着駅であるか否かを判定する(S111)。当該判定は、例えば、乗降情報記憶部121に登録されている停車駅の中で、対象駅が最後の停車駅であるか否かに基づいて行われてもよい。対象駅の次の停車駅が終着駅でない場合(S111でNo)、混雑情報推定部11は、対象駅の次の停車駅を新たな処理対象とし(S112)、ステップS104以降を実行する。すなわち、続くステップS104以降では、当該次の停車駅が、対象駅となる。
対象駅が始発駅の次の停車駅以降である場合のステップS104以降について説明する。
ステップS104における、椅子取り競争前の乗車駅別の空席数の算出は、例えば、次のように行われる。
図16は、椅子取り競争前の乗車駅別の空席数の算出処理の一例を説明するための図である。図16では、乗降情報記憶部121、空席数テーブルT2、及び累積着席可能率テーブルT6それぞれのセルに記憶される値がパラメータ化されている。図7において説明されていないパラメータの意味は以下の通りである。
Vacant(i,j) : 駅i乗車の乗客が降車することにより、駅jで発生する空席数、すなわち、駅i乗車で座っていた乗客が駅nで降車する人数
TotalVac(j) : 駅jで発生する空席数の合計値
TotalDifP(i,j) : 駅i乗車の乗客に関して、駅jまでに座れる確率(すなわち、駅jでの累積着席可能率)
駅nにおいて、乗客が降りることで発生する空席数を算出するには、座っている乗客が何人降車するかを考えればよい。本実施の形態では、座っている乗客と立っている乗客との間で、降車する割合は同じであるとする。そうすると、以下の式(3−1)が成立する。
空席数=降車人数×座っている乗客の割合 ・・・(3−1)
=降車人数×{座っている乗客数/{(座っている乗客数+立っている乗客数)}
ここで注意すべき点は、座っている乗客の割合は、駅n−1の発車時の割合を使うという点である。換言すれば、座っている乗客の割合は、駅nでの降車が発生する前の割合である。何故ならば、駅nの降車に関して考察する場合、考察対象は車内に居る乗客であり、ホームで待っている人は考察の対象外となるからである。
この点を踏まえて式(3−1)を一般化すると、駅i乗車で座っていた乗客が駅nで降車する人数であるVacant(i,n)は、以下の式(3−2)で求まる。
Vacant(i,n)=Exit(i,n)×TotalDifP(i,n−1) ・・・(3−2)
また、駅nの乗客数の合計であるTotalVac(n)は、以下の式(3−3)で求まる。
例えば、ステップS104において、駅2が対象駅である場合、駅1乗車の乗客が降りることにより、駅2で発生する空席数であるVacant(1,2)が算出される必要が有る。したがって、式(3−2)に基づいて、以下の演算が行われる。
Vacant(1,2)=Exit(1,2)×TotalDifP(1,1)=10×0.214=2.14(人)
駅2の椅子取り競争前の空席数の合計であるTotalVac(2)は、Vacant(1,2)と同じ値であるから、2.14(人)となる。
また、ステップS104において、駅3が対象駅である場合、駅1乗車の乗客が降りることにより、駅3で発生する空席数であるVacant(1,3)が算出される必要が有る。また、駅2乗車の乗客が降りることにより、駅3で発生する空席数であるVacant(2,3)が算出される必要が有る。したがって、式(3−2)に基づいて、以下の演算が行われる。
Vacant(1,3)=Exit(1,3)×TotalDifP(1,2)=40×0.2306≒9.22(人)
Vacant(2,3)=Exit(2,3)×TotalDifP(1,2)=2×0.0021≒0.00(人)
なお、駅4が対象駅である場合に実行される演算については、上記より自明であるため、省略する。
続いて、対象駅が始発駅の次の停車駅以降である場合のステップS105について説明する。
図17は、椅子取り競争の参加人数の算出処理の一例を説明するための図である。図17では、乗車駅別乗客数テーブルT1、参加人数テーブルT3、及び累積着席可能率テーブルT6のそれぞれのセルに記憶される値がパラメータ化されている。上記において説明されていないパラメータの意味は以下の通りである。
StandPre(i,j) : 駅i乗車の乗客の中で、駅jでの椅子取り競争前に立っている人数
TotalStandPre(i) : 駅jでの椅子取り競争前に立っている人数の合計(すなわち、椅子取り競争の参加人数)
駅i乗車の乗客の中で、駅nでの椅子取り競争前に立っている乗客数であるStandPre(i,n)は、以下の式(4−1)で求まる。
StandPre(i,n)=駅nにおける椅子取り競争前の駅i乗車の乗客数×駅i乗車の乗客の中で駅nにおける椅子取り競争前に立っている乗客数の割合 ・・・(4−1)
立っている乗客の割合は、(1−座っている乗客の割合)である。ここで、座っている乗客の割合は、駅n−1の発車時の割合を使うという点は、ステップS104と同じである。したがって、式(4−1)を一般化すると、StandPre(i,n)は、以下の式(4−2)で求まる。
StandPre(i,n)=Passenger(i,n)×{1−TotalDifP(i,n−1)} ・・・(4−2)
したって、駅nにおける椅子取り競争の参加人数は、以下の式(4−3)で求まる。
例えば、ステップS105において、駅2が対象駅である場合、駅1乗車の乗客の中で、駅2の椅子取り競争前に立っている人数であるStandPre(1,2)が算出される必要が有る。したがって、式(4−2)に基づいて、以下の演算が行われる。
StandPre(1,2)=Passenger(1,2)×{1−TotalDifP(1,1)}=130×(1−0.2143)≒102.14(人)
なお、StandPre(2,2)=In(2)=10(人)である。
したがって、駅2における椅子取り競争の参加人数であるTotalStandPre(2)は、式(4−3)に基づいて、以下のように求まる。
TotalStandPre(2)=102.14+10=112.14(人)
また、ステップS105において、駅3が対象駅である場合、駅1乗車の乗客の中で、駅3の椅子取り競争前に立っている人数であるStandPre(1,3)が算出される必要が有る。また、駅2乗車の乗客の中で、駅3の椅子取り競争前に立っている人数であるStandPre(2,3)が算出される必要が有る。したがって、式(4−2)に基づいて、以下の演算が行われる。
StandPre(1,3)=Passenger(1,3)×{1−TotalDifP(1,2)}=90×(1−0.2306)≒69.25(人)
StandPre(2,3)=Passenger(2,3)×{1−TotalDifP(2,2)}=8×(1−0.0021)≒7.98(人)
なお、StandPre(3,3)=In(3)=5(人)である。
したがって、駅3における椅子取り競争の参加人数であるTotalStandPre(3)は、式(4−3)に基づいて、以下のように求まる。
TotalStandPre(3)=69.25+7.98+5=82.23
なお、駅4が対象駅である場合に実行される演算については、上記より自明であるため、省略する。
続いて、対象駅が始発駅の次の停車駅以降である場合のステップS106について説明する。
図18は、対象駅における優劣無視の着席可能率の算出処理の一例を説明するための図である。図18では、空席数テーブルT2、参加人数テーブルT3、及び優劣無視着席可能率テーブルT4のそれぞれのセルに記憶される値がパラメータ化されている。上記において説明されていないパラメータの意味は以下の通りである。
P(i) : 駅iにおける優劣無視での着席可能率
駅nにおける優劣無視での着席可能率は、以下の式(5.1−1)で求めることができる。
駅nにおける優劣無視での着席可能率=駅nでの空席数÷駅nでの参加人数 ・・・(5.1−1)
すなわち、駅nにおける優劣無視での着席可能率であるP(n)は、以下の式(5.1−2)で求まる。
P(n)=TotalVac(n)÷TotalStandPre(n) ・・・(5.1−2)
なお、式(5.1−2)に基づく、P(2)、P(3)、P(4)の演算例については、自明であるため、省略する。
続いて、対象駅が始発駅の次の停車駅以降である場合のステップS107について説明する。
図19は、対象駅における優劣考慮の着席可能率の算出処理の一例を説明するための図である。図19では、空席数テーブルT2、参加人数テーブルT3、及び優劣考慮着席可能率テーブルT5のそれぞれのセルに記憶される値がパラメータ化されている。
列車Aが対象駅に到着した際、座っている乗客が降車することで空席が発生する。その空席をめぐり、前駅までに乗車している乗客と当該対象駅から乗車する乗客とで椅子取り競争が行われる。前駅までに乗車している乗客と、対象駅で乗車する乗客とでは、一般的に、前者の方が着席できる確率は高い。このような事情を考慮して、ステップS107では、優劣考慮での着席可能率が算出される。なお、上記したように、ステップS107以降の説明に関する「着席可能率」は、優劣考慮での着席可能率をいう。
駅nにおいて新たに発生する空席数は、TotalVac(n)である。TotalVac(n)分の席を、椅子取り競争の参加者で奪い合うため、
TotalVac(n)=参加人数×着席可能率 ・・・(5.2−1)
となる。
式(5.2−1)を一般化すると、式(5.2−2)となる。
ここで、DifP(i,n)は、駅i乗車の乗客に関する駅nにおける着席可能率である。
また、駅n−1までに乗車している乗客の方が、R倍有利であるとすると、駅nでの椅子取り競争において、乗車駅別の着席可能率の間には、以下の式(5.2−3)が成立する。
DifP(1,n)=DifP(2,n)=・・・=DifP(n−1,n)=DifP(n,n)×R ・・・(5.2−3)
すなわち、駅1から駅n−1までの乗車駅別の着席可能率は同じである。一方、駅n−1までに乗車している乗客の着席可能率は、駅nで乗車する乗客の着席可能率のR倍である。
式(5.2−3)を考慮して式(5.2−2)を書き換えると、以下の式(5.2−4)となる。
式(5.2−4)を、DifP(n,n)について解くことで、以下の式(5.2−5)が得られる。
すなわち、駅nでの椅子取り競争において、駅nで乗車する乗客の着席可能率は、式(5.2−5)で求まる。
また、上記より、駅n−1までに乗車している乗客の着席可能率は、以下の演算によって求まる。
DifP(i,n)=DifP(n,n)×R
例えば、ステップS107において、駅2が対象駅である場合、駅1乗車の乗客の着席可能率であるDifP(1,2)と、駅2乗車の乗客の着席可能率であるDifP(2,2)とが算出される必要が有る。DifP(2,2)については、式(5.2−5)に基づいて、以下の演算が行われる。なお、本実施の形態において、R=10である。
DifP(2,2)=TotalVac(2)÷(StandPre(1,2)×10+StandPre(2,2))=2.14÷(102.14×10+10)≒0.21(%)
また、DifP(1,2)=DifP(2,2)×10であるから、
DifP(1,1)=2.14÷(102.14×10+10)×10=2.07(%)
なお、2.07は、図11において、DifP(1,2)に対応する値である2.08に完全に一致しないが、これは、小数点以下の計算の扱い方の違いによる誤差である。
また、ステップS107において、駅3が対象駅である場合、駅1乗車の乗客の着席可能率であるDifP(1,3)と、駅2乗車の乗客の着席可能率であるDifP(2,3)と、駅3乗車の乗客の着席可能率であるDifP(3,3)とが算出される必要が有る。DifP(3,3)については、式(5.2−5)に基づいて、以下の演算が行われる。
DifP(3,3)=TotalVac(3)÷(StandPre(1,3)×10+StandPre(2,3)×10+StandPre(3,3))=9.22÷(6925×10+7.89×10+5)≒1.19(%)
DifP(1,3)=DifP(2,2)=DifP(3,3)×10であるから、
DifP(1,3)=DifP(2,2)=9.22÷(6925×10+7.89×10+5)≒11.87(%)
なお、駅4が対象駅である場合に実行される演算については、上記より自明であるため、省略する。
ところで、DifP(i,n)は、確率であるところ、計算上、1を超えてしまう場合がある。例えば、本実施の形態において、DifP(n,n)が、1/Rを超える場合、DifP(n,n)×Rによって算出されるDifP(n−1,n)は、1を超えてしまう。
DifP(i,n)が1以上である状態を許容することにより、椅子取り競争後も空席が有ることを表現することも考えられるが、本実施の形態では、確率であるDifP(i,n)の上限値は、1であるとする。
そこで、着席可能率算出部114は、ステップS107内において、DifP(n,n)×Rが1を超える場合に、着席可能率の補正処理を行う。当該補正処理を、「第一の補正処理」という。
また、本実施の形態では、一旦座った乗客は、降車駅まで立たないこととするという前提(6)が有る。したがって、例えば、駅1乗車の乗客について、駅2において着席可能率が1(=100%)となった場合、駅1乗車の乗客については、駅3以降においても着席可能率は1となるはずである。すなわち、DifP(i,n−1)=1の場合、DifP(i,n)=1となるはずである。しかしながら、計算上、DifP(i,n)<1と算出される場合がある。そこで、着席可能率算出部114は、このような場合についても、ステップS107内において、着席可能率の補正処理を行う。当該補正処理を「第二の補正処理」という。
図20は、着席可能率の補正処理の一例を説明するためのフローチャートである。
ステップS201は、ステップS107のメインの処理である。すなわち、ステップS201では、対象駅での着席可能率が、乗車駅別に算出される。なお、図20において、対象駅は、駅nである。
続いて、着席可能率算出部114は、DifP(n,n)×Rの値が、1以下であるか否かを判定する(S202)。すなわち、対象駅で乗車する乗客の着席可能率が1以下であるか否かが判定される。
DifP(n,n)×Rの値が1を超える場合(S202でNo)、着席可能率算出部114は、第一の補正処理を行う(S203)。具体的には、着席可能率算出部114は、ステップS201において算出され、優劣考量着席可能率テーブルに記憶されているDifP(i,n)(1≦i≦n−1)の値を1で上書きし、DifP(n,n)の値を再計算する(S203)。すなわち、対象駅より前の駅を乗車駅とする乗客の乗車駅別の着席可能率が1に補正される。また、DifP(n,n)の値の再計算は、式(5.2−1)に対して、DifP(i,n)=1(1≦i≦n−1)を代入することによって得られる式に基づいて行われる。
具体的には、式(5.2−1)に対して、DifP(i,n)=1(1≦i≦n−1)を代入すると、以下の式(5.2−6)が得られる。
式(5.2−6)を、DifP(n,n)について解くと、以下の式(5.2−7)が得られる。
ステップS203では、式(5.2−7)に基づいて、DifP(n,n)の値の再計算が行われる。
ステップS202でYesの場合、又はステップS203に続くステップS204以降は、第二の補正処理に関するステップである。
S204において、着席可能率算出部114は、乗車駅を示す変数iを0に初期化する。続いて、着席可能率算出部114は、iに1を加算する(S205)。続いて、着席可能率算出部114は、iがn未満であるか否かを判定する(S206)。なお、nは、対象駅に対する識別子である。
iがn未満である場合、すなわち、乗車駅が対象駅より前である場合(S206でYes)、着席可能率算出部114は、優劣考慮着席可能率テーブルT5に記憶されている、DifP(i,n−1)の値が1であるか否かを判定する(S207)。すなわち、駅i乗車の乗客に関して、対象駅の一つ前の停車駅での着席可能率が1であるか否かが判定される。当該判定は、優劣考慮着席可能率テーブルT5を参照することにより行うことができる。
DifP(i,n−1)の値が1である場合(S207でYes)、着席可能率算出部114は、優劣考慮着席可能率テーブルT5に記憶されているDifP(i,n)の値を1で上書きする(S208)。すなわち、駅i乗車の乗客に関する対象駅での着席可能率が1に補正される。
iの値がnに一致するまでステップS205〜S207が繰り返されると、図20の処理は終了する。
続いて、対象駅が始発駅の次の停車駅以降である場合のステップS108について説明する。
図21は、対象駅での累積着席可能率の算出処理の一例を説明するための図である。図21では、優劣考慮着席可能率テーブルT5、及び累積着席可能率テーブルT6のそれぞれのセルに記憶される値がパラメータ化されている。なお、図21の説明においても、「着席可能率」は、優劣考慮での着席可能率をいう。
駅i乗車の乗客に関する駅nでの累積着席可能率は、以下の式(6−1)で求まる。
駅i乗車の乗客に関する駅nでの累積着席可能率=駅i乗車の乗客に関する駅n−1での累積着席可能率+駅i乗車の乗客に関する駅nでの着席可能率 ・・・(6−1)
したがって、駅i乗車の乗客に関する駅nでの累積着席可能率であるTotalDifP(i,n)は、以下の式(6−2.1)又は(6−2.2)で求まる。
i<nの場合、すなわち、対象駅よりも前の駅で乗車した乗客の対象駅での累積着席可能率は、式(6−2.1)で求まる。
TotalDifP(i,n)=TotalDifP(i,n−1)+{1−TotalDifP(i,n−1)}×DifP(i,n) ・・・(6−2.1)
i=nの場合、すなわち、対象駅で乗車した乗客の対象駅での累積着席可能率は、式(6−2.2)で求まる。
TotalDifP(i,n)=DifP(n,n)
例えば、ステップS108において、駅2が対象駅である場合、駅1乗車の乗客の累積着席可能率であるTotalDifP(1,2)が算出される必要が有る。また、駅2乗車の乗客の累積着席可能率であるTotalDifP(2,2)が算出される必要が有る。TotalDifP(1,2)ついては、式(6−2.1)に基づいて、以下の演算が行われる。
TotalDifP(1,2)=TotalDifP(1,1)+(1−TotalDifP(1,1))×DifP(1,2)=0.2143+(1−0.2143)×0.0208≒23.06(%)
TotalDifP(2,2)については、式(6−2.2)に基づいて、以下のように求まる。
TotalDifP(2,2)=0.21%
また、ステップS108において、駅3が対象駅である場合、駅1乗車の乗客の累積着席可能率であるTotalDifP(1,3)と、駅2乗車の乗客の累積着席可能率であるTotalDifP(2,3)とが算出される必要が有る。また、駅3乗車の乗客の累積着席可能率であるTotalDifP(3,3)が算出される必要が有る。
TotalDifP(1,3)及びTotalDifP(2,3)ついては、式(6−2.1)に基づいて、以下の演算が行われる。
TotalDifP(1,3)=TotalDifP(1,2)+(1−TotalDifP(1,2))×DifP(1,3)=0.2306+(1−0.2306)×0.1187≒32.19(%)
TotalDifP(2,3)=TotalDifP(2,2)+(1−TotalDifP(2,2))×DifP(2,3)=0.0021+(1−0.0021)×0.1187≒12.06(%)
TotalDifP(3,3)については、式(6−2.2)に基づいて、以下のように求まる。
TotalDifP(3,3)=1.19%
なお、駅4が対象駅である場合に実行される演算については、上記より自明であるため、省略する。
続いて、対象駅が始発駅の次の停車駅以降である場合のステップS109について説明する。
図22は、対象駅での椅子取り競争後に座れる人数の算出処理の一例を説明するための図である。図22では、参加人数テーブルT3、優劣考慮着席可能率テーブルT5、及び着席可能人数テーブルT7のそれぞれのセルに記憶される値がパラメータ化されている。上記において説明されていないパラメータの意味は以下の通りである。
NewSit(i,j) : 駅i乗車の乗客について駅jでの着席可能人数
TotalNewSit(j) : 駅jでの着席可能人数の合計
駅i乗車の乗客について駅jでの着席可能人数は、以下の式(7−1)で求まる。
駅i乗車の乗客について駅jでの着席可能人数=駅i乗車の乗客の中で駅jでの椅子取り競争前に立っている乗客数×駅i乗車の乗客の駅jでの着席可能率 ・・・(7−1)
式(7−1)を一般化すると、駅i乗車の乗客について駅nでの着席可能人数であるNewSit(i,n)は、以下の式(7−2)で求まる。
NewSit(i,n)=StandPre(i,n)×DifP(i,n) ・・・(7−2)
また、駅nでの着席可能人数の合計であるTotalNewSit(n)は、以下の式(7−3)で求まる。
例えば、ステップS108において、駅2が対象駅である場合、駅1乗車の乗客の着席可能人数であるNewSit(1,2)と、駅2乗車の乗客の着席可能人数であるNewSit(2,2)とが算出される必要が有る。また、TotalNewSit(2)が算出される必要が有る。
NewSit(1,2)及びNewSit(2,2)については、式(7−2)に基づいて、以下の演算が行われる。
NewSit(1,2)=StandPre(1,2)×DifP(1,2)=102.14×0.0208≒2.12(人)
NewSit(2,2)=StandPre(2,2)×DifP(2,2)=10×0.0021=0.02(人)
TotalNewSit(2)については、式(7.3)に基づいて、以下の演算が行われる。
TotalNewSit(2)=NewSit(1,2)+NewSit(2,2)=2.12+0.02=2.14
なお、駅3又は駅4が対象駅である場合に実行される演算については、上記より自明であるため、省略する。
続いて、対象駅が始発駅の次の停車駅以降である場合のステップS110について説明する。
図23は、対象駅での椅子取り競争後において立っている乗客数及び座っている乗客数の算出処理の一例を説明するための図である。図23では、乗車駅別乗客数テーブルT1、優劣考慮着席可能率テーブルT5、及び車内状態テーブルT8のそれぞれのセルに記憶される値がパラメータ化されている。上記において説明されていないパラメータの意味は以下の通りである。
Stand(i,j) : 駅i乗車の乗客の中で駅j発車時に立っている乗客数
Sit(i,j) : 駅i乗車の乗客の中で駅j発車時に座っている乗客数
TotalStand(j) : 駅j発車時に立っている乗客数の合計
TotalSit(j) : 駅j発車時に座っている乗客数の合計
駅i乗車の乗客の中で駅n発車時に立っている乗客数及び座っている乗客数は、それぞれ、以下の式(8−1)又は式(8−2)で求まる。
駅i乗車の乗客の中で駅n発車時に立っている乗客数=駅j発車時における駅i乗車の乗客数×(1−駅i乗車の乗客に関する駅jでの累積着席可能率) ・・・(8−1)
駅i乗車の乗客の中で駅n発車時に座っている乗客数=駅j発車時における駅i乗車の乗客数×駅i乗車の乗客に関する駅jでの累積着席可能率 ・・・(8−2)
式(8−1)を一般化すると、駅i乗車の乗客のうち駅n発車時に立っている乗客数であるStand(i,n)は、以下の式(8−3)で求まる。
Stand(i,n)=Passenger(i,n)×{1−TotalDifP(i,n)} ・・・(8−3)
式(8−2)を一般化すると、駅i乗車の乗客のうち駅n発車時に座っている乗客数であるSit(i,n)は、以下の式(8−4)で求まる。
Sit(i,n)=Passenger(i,n)×TotalDifP(i,n) ・・・(8−4)
したがって、TotalStand(n)及びTotalSit(n)は、以下の式(8−5)又は(8−6)で求まる。
例えば、ステップS110において、駅2が対象駅である場合、駅1乗車の乗客の中で駅2発車時に立っている乗客数であるStand(1,2)と、駅2乗車の乗客の中で駅2発車時に立っている乗客数であるStand(2,2)とが算出される必要がある。また、駅1乗車の乗客の中で駅2発車時に座っている乗客数であるSit(1,2)と、駅2乗車の乗客の中で駅2発車時に座っている乗客数であるSit(2,2)とが算出される必要がある。更に、駅2発車時に立っている乗客数の合計であるTotalStand(2)と、座っている乗客数の合計であるTotalSit(2)とが算出される必要がある。
Stand(1,2)及びStand(2,2)については、式(8−3)に基づいて、以下の演算が行われる。
Stand(1,2)=Passenger(1,2)×{1−TotalDifP(1,2)}=130×(1−0.2306)≒100.002(人)
Stand(2,2)=Passenger(2,2)×{1−TotalDifP(2,2)}=10×(1−0.0021)≒9.98(人)
Sit(1,2)及びSit(2,2)については、式(8−4)に基づいて、以下の演算が行われる。
Sit(1,2)=Passenger(1,2)×TotalDifP(1,2)=130×0.2306≒29.98(人)
Sit(2,2)=Passenger(2,2)×TotalDifP(2,2)=10×0.0021≒0.02(人)
TotalStand(2)については、式(8−5)に基づいて、以下の演算が行われる。
TotalStand(2)=Stand(1,2)+(Stand2,2)=100.02+9.98=110(人)
TotalSit(2)については、式(8−6)に基づいて、以下の演算が行われる。
TotalSit(2)=Sit(1,2)+(Sit2,2)=29.98+0.02=30(人)
なお、駅3又は駅4が対象駅である場合に実行される演算については、上記より自明であるため、省略する。
ステップS104以降が、始発駅から終発駅の一つ前までの各停車駅について実行されると(S111でYes)、保存処理部117は、図4の処理結果を保存する(S113)。例えば、優劣考慮着席可能率テーブルT5の内容は、列車Aの識別情報に関連付けられて着席可能率記憶部123に保存される。各列車、すなわち、各運行単位の識別情報を、以下「列車ID」という。着席可能人数テーブルT7の内容は、列車Aの列車IDに関連付けられて着席可能人数記憶部125に保存される。車内状態テーブルT8の内容は、列車Aの列車IDに関連付けられて車内状態記憶部126に保存される。各テーブルの内容は、例えば、図4の処理が行われた日付ごとに保存されてもよい。すなわち、着席可能率記憶部123、着席可能人数記憶部125、及び車内状態記憶部126には、毎日の処理結果が累積的に保存されてもよい。
又は、保存に際し、統計処理が実行されてもよい。例えば、同じ日付ごと、同じ曜日ごと、季節ごと、又はダイヤごと等に、着席可能率記憶部123、着席可能人数記憶部125、及び車内状態記憶部126において、同一の列車IDに関連付けられて記憶され情報について、平均値等の統計情報が算出されてもよい。ダイヤごととは、平日と休日とでダイヤが異なるのであれば、平日又は休日ごとである。
また、上記では、混雑情報の一例として、着席可能率や累積着席可能率等を算出する例を示したが、混雑率が、混雑情報の一例として算出されてもよい。混雑率とは、「乗客数÷列車の輸送力」によって算出される、混雑の程度を示す指標値である。輸送力とは、座席の定員とは異なる概念であり、混雑率が100%である場合の、各車両の乗客数の合計をいう。したがって、混雑率は、例えば、乗車駅別乗客数テーブルT1(図6)に記憶されている乗客数の合計を、列車Aの輸送力で除することにより算出することができる。この場合、乗車駅別乗客数テーブルT1において、各停車駅に対して記憶されている乗客数の合計を列車Aの輸送力で除することにより得られる混雑率は、当該停車駅と当該停車駅の次の停車駅の区間における混雑率を示す。例えば、図6において、駅3に対して記憶されている乗客数の合計は、103である。103を、列車Aの輸送力で除することにより得られる混雑率は、駅3と駅4との区間における混雑率を示す。
このように算出された混雑率についても、同じ日付ごと、同じ曜日ごと、季節ごと、又はダイヤごと等に、平均値等の統計情報が算出され、所定の記憶部に記憶されてもよい。
なお、図4の処理は、列車A以外の各列車についても実行される。
続いて、上記のように算出され、各記憶部に記憶されている情報を利用することにより提供できるサービスについて説明する。例えば、ユーザに対して、或る時間帯に或る区間において運行される列車ごとに、停車駅ごとに累積着席可能率を提示することができる。
図24は、指定された区間の累積着席可能率を提示する処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
ステップS301において、要求受付部12は、クライアント装置20より送信された、累積着席可能率の検索要求を受信する。当該検索要求には、累積着席可能率の表示対象とする列車を絞り込むための検索条件等が指定される。当該検索条件は、例えば、クライアント装置20が表示させる、図25に示されるような検索条件入力画面を介して入力される。
図25は、検索条件入力画面の表示例を示す図である。図25に示される検索条件入力画面510は、区間指定領域511、時間帯指定領域512、及び検索ボタン513等を含む。
区間指定領域511は、検索条件を構成する乗車駅及び降車駅の駅名を入力させるための領域である。乗車駅及び降車駅に加え、経由駅が指定されてもよい。
時間帯指定領域512は、検索条件を構成する、列車の運行時間の時間帯情報を指定させるための領域である。具体的には、時間帯指定領域512は、日時指定領域514及びラジオボタン515等を含む。日時指定領域514は、日時を指定させるための領域である。日付ではなく、曜日、又は平日若しくは休日の別等の指定が可能とされてもよい。ラジオボタン515のうち、「出発」及び「到着」は、日時指定領域514において指定された日時の意味を選択させるための選択肢である。すなわち、「出発」は、指定された日時が、乗車駅での出発時刻を示す場合に選択される。「到着」は、指定された日時が、降車駅への到着時刻を示す場合に選択される。
ラジオボタン515のうち、「終電」及び「始発」は、乗車駅での終電又は始発を検索対象とする場合の選択肢である。したがって、「終電」又は「始発」が選択される場合、日時選択領域514において指定される時刻は、無効となる。
検索条件入力画面510において、上記した検索条件が入力され、検索ボタン513が押下又はタッチされると、クライアント装置20は、入力された検索条件を指定して、累積着席可能率の検索要求を、混雑情報出力装置10に送信する。ステップS301では、当該検索要求が受信される。
続いて、対象列車検索部13は、受信された検索要求に指定されている検索条件に合致する列車の列車IDを、運行予定情報記憶部127より検索する(S302)。
図26は、運行予定情報記憶部の構成例を示す図である。図26において、運行予定情報記憶部127は、列車Aが属する路線である路線Aにおいて運行予定の各列車の列車IDに対応付けて、運行予定情報を記憶する。運行予定情報には、各停車駅の到着時刻及び発車時刻等が含まれる。
なお、図26では、上り又は下り方向の一部の運行情報のみが示されているが、逆方向の運行情報についても運行予定情報記憶部127に記憶されている。
また、図26に示される運行予定情報記憶部127には、最後の行に、各列車の輸送力が記憶されている。混雑率の算出には、当該輸送力が用いられてもよい。また、各列車の輸送力を記憶する記憶部は、別途設けられてもよい。
また、運行予定情報記憶部127には、複数路線の運行予定情報が記憶されていてもよい。
検索条件に合致する列車IDの検索処理の内容は、一般的な、乗り換えルートを探索するソフトウェアにおいて行われている探索処理の内容と同様でもよい。
例えば、ステップS302では、検索条件に指定された乗車駅から降車駅への経路が探索される。経路の探索には、複数路線に関する運行予定情報が用いられてもよい。すなわち、複数路線が混在する経路が探索されてもよい。
続いて、探索された経路を構成する一以上の列車の組み合わせが、運行予定情報記憶部127を参照して特定される。探索された経路を構成する列車の組み合わせとは、例えば、検索条件に指定された乗車駅及び降車駅の双方を停車駅に含む列車をいう。すなわち、列車が一つしか含まれない組み合わせも存在しうる。または、複数の列車を接続することによって、当該経路を構成することが可能である場合、当該複数の列車が、探索された経路を構成する列車の組み合わせに該当する。例えば、乗車駅に停車するが降車駅には停車しない急行列車Bが、途中駅において、降車駅に停車する各停列車Cに接続する場合、急行列車Bの列車IDと各停列車Cの列車IDとの組み合わせが、特定されてもよい。
続いて、特定された組み合わせの中から、検索条件に含まれている時間帯情報に合致する組み合わせが抽出される。抽出された組み合わせに含まれる列車IDが、ステップS302における検索結果となる。
時間帯情報に合致する組み合わせとは、当該時間帯情報の内容によって異なる。当該時間帯情報が、検索条件に指定された乗車駅での出発時刻を示す場合、当該乗車駅に対して運行予定情報記憶部127に記憶されている出発時刻が、検索条件に指定された出発時刻以前又は出発時刻前後の所定の時間内である組み合わせが、当該時間帯情報に合致する。当該時間帯情報が、検索条件に指定された降車駅への到着時刻を示す場合、当該降車駅に対して運行予定情報記憶部127に記憶されている到着時刻が、検索条件に指定された到着時刻以前又は到着時刻前後の所定の時間内である組み合わせが、当該時間帯情報に合致する。
当該時間帯情報が、始発列車を示す場合、抽出された組み合わせの中で、乗車駅での出発時刻が最も早い組み合わせが、当該時間情報に合致する。但し、当該最も早い組み合わせのみならず、当該列車の出発時刻から所定時間内に、乗車駅を出発する組み合わせの列車IDが抽出されてもよい。
当該時間帯情報が、終電列車を示す場合、抽出された組み合わせの中で、乗車駅での出発時刻が最も遅い列車の列車IDが、当該時間情報に合致する。但し、当該最も遅い組み合わせのみならず、当該列車の出発時刻までの所定時間内に、乗車駅を出発する組み合わせの列車IDが抽出されてもよい。
なお、ステップS302の処理は、例えば、インターネット等を介して提供されている経路探索サービス等に委譲されてもよい。すなわち、既存のソフトウェアが利用されてもよい。
続いて、混雑情報取得部14は、ステップS302において検索された組み合わせごとに、当該組み合わせに含まれる列車IDに関連付けられて記憶されている累積着席可能率を、累積着席可能率記憶部124より取得する(S303)。累積着席可能率記憶部124の構成は、例えば、図11と同様であるとする。この際、検索条件に指定されている時間帯情報に含まれている日付又は曜日に対応する累積着席可能率が取得される。また、検索条件に指定された乗車駅及び降車駅の区間の各停車駅に対する累積着席可能率が取得される。また、乗車駅別に記憶されている累積着席可能率のうち、検索条件に指定された乗車駅に対応する累積着席可能率が取得される。
続いて、出力部15は、ステップS302における検索結果及びステップS303において取得された累積着席可能率等に基づいて、画面データを生成する(S304)。当該画面データは、検索条件に合致する列車ごとに、検索条件に指定された区間の各停車駅の累積着席可能率を表示させる混雑情報表示画面を表示させる画面データである。続いて、出力部15は、生成された画面データを、検索要求元のクライアント装置20に返信する(S305)。
なお、ステップS302とステップS303との間において、ステップS302で検索された列車について、図4において説明した処理が実行されてもよい。この場合、図4の処理は、バッチ的に実行されなくてもよい。
クライアント装置20は、当該画面データを受信すると、当該画面データに基づいて、混雑情報表示画面を表示させる。
図27は、混雑情報表示画面の第一の表示例を示す図である。図27に示される混雑情報表示画面520aには、水平方向に時間軸を有し、垂直方向に、組み合わせ別の行が配列されている。各組み合わせには、当該組み合わせに含まれる列車ごとの長方形が示されている。各長方形は、当該長方形に対応する列車の乗車駅から降車駅までの所要時間に応じた幅を有する。また、各長方形は、累積着席可能率に応じた態様によって塗りつぶされている。図27では、累積着席可能率に応じた網掛けが施されている。累積着席可能率は、停車駅ごとに変化する。したがって、各長方形に対して施されている網掛けは、当該長方形に対応する列車の停車駅の出発時刻又は到着時刻を区切りに対応して変化している。なお、図27においては、累積着席可能率を、便宜上、網掛けの態様によって表現しているが、色、形状、又はその他の表示態様によって、累積着席可能率の違いが表現されてもよい。例えば、各列車に対応する図形は線分であり、線種によって累積着席可能率の違いが表現されてもよい。また、各列車に対応する図形は波線であり、振幅の違いによって累積着席可能率の違いが表現されてもよい。
また、図28は、混雑情報表示画面の第二の表示例を示す図である。図28に示される混雑情報表示画面520bでは、更に、累積着席可能率が、各接続列車に対応する図形の高さ方向においても表現されている。すなわち、混雑情報表示画面520bでは、組み合わせごとに、垂直方向に、累積着席可能率を示す座標軸を有する。その結果、各組み合わせに含まれる列車に対応した図形は、必ずしも長方形ではなく、階段状の形状を有することになる。
ユーザは、図27又は図28に示されるような混雑情報表示画面520a又は520bを参照して、検索条件に合致する列車について、検索条件に指定した乗車駅から乗車した場合の累積着席可能率を容易に把握することができる。
例えば、ユーザは、自らの通勤時間帯に関する混雑情報表示画面520a又は520bを閲覧して、毎日利用している乗車している列車に乗車時間帯が近い列車の中で、毎日利用している列車よりも座り易い列車、又は空いている列車を確認することができる。このようなユーザが、多数発生することにより、オフピーク通勤に寄与することができる。すなわち、列車の混雑の回避の貢献することができる。
また、例えば、まさにこれから列車に乗車しようとしているユーザが、混雑情報表示画面520a又は520bを閲覧することで、座り易い列車を確認することができ、座り易さを基準として、乗車する列車を選択することができる。
また、高齢者等の交通弱者が、いずれの列車であれば座れる可能性が高いのかを知ることがで、列車を利用した外出に対する抵抗感が低下するのを期待することができる。
また、新たな住居を探しているユーザは、どの駅で乗車すれば座れる確率が高いのかを知ることによって、自らの通勤や通学にとって快適な居住地区を選択するために有用な情報を得ることができる。
また、不動産会社が、混雑情報出力装置10によるサービスを利用することにより、住宅購入を検討している客に対して、近隣駅を利用した場合の累積着席可能率を示すことで、どの駅地域を居住地として選択すべきかの参考情報を提供することができる。すなわち、同じ列車を利用する場合でも乗車した駅によって累積着席可能率が異なることを、住宅購入を検討している客に対して示すことで、どの駅地域を居住地として選択すべきかの参考情報を提供することができる。
また、図27又は図28に示されるような混雑情報表示画面520a又は520bを参照することで、ユーザは、座れる可能性についての情報を得ることができる。例えば電車の場合、ある駅Aで多くの乗客が降車するとともに、新たに多くの乗客が乗車する場合、混雑率(又は混雑度)という観点で見ると駅A前後の混雑率は高い状態ということになる。しかし、駅Aよりも前からその電車に乗っていた乗客については、座れる可能性が高い可能性もある。即ち、混雑率と座れる確率とは、必ずしも比例関係にない場合がある。本願の仕組によれば、ユーザは座れる可能性についての情報を得ることができるので、ユーザに対してより有用な情報を提供できるといえる。
なお、出力部15は、混雑情報表示画面520又h520aにおいて、各組み合わせに含まれる列車の累積着席可能率に基づいて、表示対象とする組み合わせを限定してもよい。例えば、各停車駅の累積着席可能率が閾値以上である列車のみを含む組合せが表示対象とされてもよい。当該閾値は、検索条件入力画面510において入力可能とされてもよい。または、混雑情報表示画面520又h520aにおいて、列車に対応する図形が選択可能とされてもよい。選択された図形に対応する列車の累積着席可能率が、閾値とされてもよい。
そうすることにより、座れる可能性の高い列車を容易に特定可能とすることができる。
また、検索条件に指定される日時は、過去の日時でもよいし未来の日時でもよいし、過去及び未来が特定されない日時であってもよい。過去の日時が指定された場合、ステップS303では、指定された日付に関連付けて記憶されている累積着席可能率が取得されてもよい。未来の日時が指定された場合、ステップS303では、日付ごとの平均値のうち指定された日付の平均値、又は曜日ごとの平均値のうち当該日付が属する曜日ごとの平均値等が、取得されてもよい。
また、上記では、累積着席可能率が検索及び表示される例を示したが、優劣考慮又は優劣無視の着席可能率、停車駅ごとの座れる人数、停車駅ごとの車内で立っている人数及び座っている人数が、混雑度合いを示す情報として、検索対象及び表示対象とされてもよい。また、混雑率が、検索対象及び表示対象とされてもよい。
また、上記では、累積着席可能率が検索及び表示される例を示したが、累積着席可能率に代えて、ある駅での座れる確率、もしくは混雑率を、ユーザからの指定入力に応じて切り替えて表示しても構わない。
また、図28において、累積着席可能率、ある駅での座れる確率、混雑率のうちの複数のパラメータを組み合わせて表示しても構わない。例えば、各列車に対応する図形の高さの高低で累積着席可能率を表現し、網掛け表示の種別の違いにより混雑率を示すことができる。
また、本実施の形態では、列車を乗り物の一例として説明したが、バスや船舶等、予約対象とされない座席を有する乗り物であれば、他の乗り物に関して本実施の形態が適用されてもよい。パスであれば、バス停ごとに混雑情報を把握することができる。一日に複数運航される船舶であれば、どの船舶であれば座れる可能性が高いのか等を把握することができる。また、乗り物以外に本実施の形態を適用することもできる。例えば、フードコート等における席取りや、レンタルビデオのように、先着順でない人の「待ち」が発生する状況にたいして、本実施の形態が適用されてもよい。
続いて、乗降情報記憶部121が記憶する乗降情報の生成方法の一例について説明する。乗降情報は、例えば、図29に示されるようなシステムによって生成されてもよい。
図29は、本発明の実施の形態における乗降情報生成システムの構成例を示す図である。図29の乗降情報生成システム1において、路線Aにおける各駅に設置された自動改札機70は、ネットワークを介して乗降情報生成装置50に接続されている。
自動改札機70は、乗客の切符又は定期券等の乗車券に記録されている情報を読み取るたびに、入場記録又は退場記録等の改札情報を乗降情報生成装置50に転送する。入場記録は、乗客が駅に入場したことを示す記録である。退場記録は、乗客が駅から退場したことを示す記録である。
乗降情報生成装置50は、乗降情報を生成するコンピュータである。乗降情報の生成に際し、乗降情報生成装置50は、まず、各自動改札機70より転送される入場記録及び退場記録と、列車の運行情報等に基づいて、各乗車券の利用者である乗客が、いずれの列車に乗車したかを推定する。各乗客の乗車駅及び降車駅は、入場記録又は退場記録より特定可能である。したがって、各乗客がいずれの列車に乗車したかを推定することができれば、当該推定結果から、乗降情報を導出することができる。
ここで、列車の運行情報は、運行実績情報であることが望ましいが、ダイヤが乱れることを考えると、運行実績情報を入手することが困難な場合は運行予定情報を利用しても構わない。入場記録及び退場記録には、各乗車券の識別子、入場記録又は退場記録を記録した自動改札機70が設置された駅の駅名、及び入場時刻若しくは退場時刻等が含まれている。したがって、同一の乗車券の識別子に対する入場記録及び退場記録と、運行情報とに基づいて、当該乗車券に係る乗客の乗車駅及び降車駅を推定することができる。乗降情報生成装置50は、当該乗車駅における入場時刻、当該降車駅における退場時刻と、ダイヤ情報とに基づいて、次の条件を満たす列車を、当該乗車券を利用した乗客が乗車した列車であるとして推定する。なお、或る乗車券について乗車した列車であると推定された列車を、以下「乗車列車」という。
(1)入場記録に係る駅における発車時刻が入場時刻より後である。
(2)退場記録に係る駅における到着時刻が退場記憶より前である。
但し、上記(1)及び(2)を満たす列車は複数存在する可能性がある。そこで、乗降情報生成装置50は、入場記録を記録した自動改札機70の設置された改札口から乗車位置までの所要時間、及び降車位置から退場記録を記録した自動改札機70が設置された改札口までの所要時間等を考慮して、乗車列車を推定する。また、各所要時間は、乗客ごとの属性を考慮して補正される。例えば、移動速度が速い乗客については、各所要時間は短くされる。移動速度が遅い乗客については、各所要時間は長くされる。
なお、以下において、同一の乗車券の識別子に対する入場記録と退場記録との組を、「乗車履歴」という。乗車列車の推定は、例えば、1日等、所定期間内における乗車履歴ごとに実行される。以下、乗車券の識別子を、「乗車券ID」という。
図30は、本発明の実施の形態における乗降情報生成装置の機能構成例を示す図である。図30において、乗降情報生成装置50は、入退場記録受信部51、乗車列車推定部52、及び乗降情報生成部53等を有する。これら各部は、乗降情報生成装置50にインストールされたプログラムが、乗降情報生成装置50のCPUに実行させる処理により実現される。乗降情報生成装置50は、また、乗車履歴記憶部61、運行情報記憶部62、構内情報記憶部63、乗客情報記憶部64、移動速度情報記憶部65、及び推定結果記憶部66、及び乗降情報記憶部67等を利用する。これら各記憶部は、乗降情報生成装置50の補助記憶装置、又は乗降情報生成装置50にネットワークを介して接続される記憶装置等を用いて実現可能である。
入退場記録受信部51は、各駅の自動改札機70より転送される入場記録又は退場記録を受信する。入退場記録受信部51は、受信された入場記録又は退場記録を乗車履歴記憶部61に記憶する。なお、乗車履歴記憶部61では、同一の乗車券IDに係る入場記録と退場記録との組は一つのレコード内に記憶される。したがって、乗車履歴記憶部61は、乗車履歴の一覧を記憶する。
運行情報記憶部62は、路線Aにおいて運行される列車ごとに、運行情報、例えば、ダイヤ情報を記憶する。運行情報には、各停車駅の到着時刻及び発車時刻等が含まれる。但し、始発駅に関して到着時刻は含まれない。また、終着駅に関して発車時刻は含まれない。運行情報記憶部62に記憶される運行情報は、運行実績であることが望ましい。但し、ダイヤが乱れたりするなどの理由により運行実績情報を入手することが困難な場合は、運行予定情報を利用しても構わない。
構内情報記憶部63は、路線Aの各駅の構内に関する情報を記憶する。例えば、構内情報記憶部63は、各改札口からホームまでの所要時間等を記憶する。
乗客情報記憶部64は、乗車券IDごとに、当該乗車券IDに係る乗客の属性情報を記憶する。乗客の属性情報には、乗客の移動能力も含まれる。移動能力とは、移動速度を示す情報であり、本実施の形態では、移動速度に応じて3つの区分又は段階に分類された値によって表現される。移動速度情報記憶部65は、移動速度の区分ごとに、移動速度の具体的な値を記憶する。
乗車列車推定部52は、乗車履歴記憶部61が記憶する乗車履歴ごとに、乗車列車である可能性が高いと推定される列車を特定する。すなわち、乗車列車推定部52によって、各乗車履歴に係る乗車列車が推定される。以下、乗車列車である可能性が高いと推定される列車の特定を、単に、「乗車列車の推定」という。乗車列車の推定には、運行情報記憶部62、構内情報記憶部63、及び乗客情報記憶部64等も用いられる。
推定結果記憶部66は、乗車列車推定部52による乗車列車の推定結果を乗車履歴に対応付けて記憶する。
乗降情報生成部53は、推定結果記憶部66が記憶する、乗車列車の推定結果に基づいて、乗降情報を生成する。生成された乗降情報は、乗降情報記憶部67に記憶される。なお、乗降情報記憶部67は、乗降情報記憶部121と共通であってもよい。また、乗降情報生成装置50と混雑情報出力装置10とは、同一のコンピュータを利用して実現されてもよい。
以下、乗降情報生成装置50が実行する処理手順について説明する。図31は、乗車列車の推定処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図31において、乗車履歴記憶部61には、例えば、一日分等の所定期間の乗車履歴が記憶されていることとする。但し、所定期間は、一日に満たなくてもよい。
ステップS401において、乗車列車推定部52は、乗車履歴記憶部61より、一つの乗車履歴をメモリ装置103に読み込む。以下、読み込まれた乗車履歴を、「対象乗車履歴」という。
図32は、乗車履歴記憶部の構成例を示す図である。図32に示されるように、乗車履歴記憶部61は、乗車履歴ごとに、乗車券ID、入場時刻、入場駅名、入場口ID、退場時刻、退場駅名、及び退場口ID等を記憶する。
乗車券IDは、入場時又は退場時に、自動改札機70によって乗車券より読み取られた乗車券IDである。入場時刻は、当該乗車券に関して自動改札機70によって駅への入場が記録された時刻である。入場駅名は、当該乗車券に関して入場を記録した自動改札機70が設置されている駅の駅名等の識別情報である。入場口IDは、当該自動改札機70が設置されている改札口の識別名等の識別情報である。退場時刻は、当該乗車券に関して自動改札機70によって駅からの退場が記録された時刻である。退場駅名は、当該乗車券に関して退場を記録した自動改札機70が設置されている駅の駅名等の識別情報である。退場口IDは、当該自動改札機70が設置されている改札口の識別名等の識別情報である。
乗車履歴記憶部61が記憶する乗車履歴は、入退場記録受信部51が各駅の各自動改札機70より受信する入場記録及び退場記録に基づく。すなわち、入退場記録受信部51は、入場記録を受信した場合、乗車履歴記憶部61に新たなレコードを追加し、当該入場記録に含まれている乗車券ID、入場時刻、入場駅名、及び入場口IDを、当該レコードに記憶する。入退場記録受信部51は、退場記録を受信した場合、当該退場記録に含まれている乗車券IDを含むレコードであって、退場時刻、退場駅名、及び退場口IDが記憶されていないレコードを検索する。該当するレコードが検索された場合、入退場記録受信部51は、受信された退場記録に含まれている退場時刻、退場駅名、及び退場口IDを、当該レコードに記憶する。該当するレコードが複数検索された場合、最新のレコードに退場記録が記憶される。該当するレコードが検索されない場合、入退場記録受信部51は、乗車履歴記憶部61に新たなレコードを追加し、受信された退場記録に含まれている退場時刻、退場駅名、及び退場口IDを、当該レコードに記憶する。
退場記録に含まれている乗車券IDを含むレコードが検索されない場合の一例として、乗客が、他の路線から乗り入れている列車に乗車していた場合が挙げられる。すなわち、乗客が他の路線の駅において入場し、路線Aの駅において退場した場合である。同様に、乗客が他の路線に乗り入れている列車に乗車した場合、退場記録が記録されないレコードが発生する。
なお、図32では、便宜上、入場時刻及び退場時刻の最小単位は分であるが、入場時刻及び退場時刻の最小単位は、秒であるのが望ましい。
続いて、乗車列車推定部52は、運行情報を運行情報記憶部62からメモリ装置103に読み込む(S402)。本実施の形態において、運行情報記憶部の構成は、便宜上、図26に示した運行予定情報記憶部127と同じであるとする。すなわち、運行情報記憶部が記憶する運行情報には、運行した、又は運行予定の各列車の列車IDに対応付けて、運行情報を記憶する。運行情報には、各停車駅の到着時刻及び発車時刻等が含まれる。
なお、図26では、便宜上、到着時刻及び発車時刻の最小単位は分であるが、到着時刻及び発車時刻の最小単位は、秒であるのが望ましい。
ステップS402では、全ての列車の運行情報が読み込まれる。
続いて、乗車列車推定部52は、対象乗車履歴に関して、入場駅名に係る駅の改札口から乗車場所に到達するまでの所要時間と、退場駅名に係る駅の降車場所から改札口までの所要時間とを算出する(S403)。各所要時間は、乗客情報記憶部64及び構内情報記憶部63等を用いて算出される。以下、入場駅名に係る駅における改札口から乗車場所に到達するまでの所要時間を、「乗車時所要時間」という。また、退場駅名に係る駅における降車場所から改札口までの所要時間を、「降車時所要時間」という。
図33は、乗客情報記憶部の構成例を示す図である。図33において、乗客情報記憶部64は、各乗車券IDに対応付けて、年齢、性別、障がい者フラグ、及び移動能力等の、乗客の属性情報を記憶する。障がい者フラグは、障がい者であるか否かを示す情報である。障がい者フラグは、自動改札機70が障がい者フラグに対応する情報を乗車券より読み取ることにより、乗車券IDに対応付けて、乗客情報記憶部64に記憶されてもよい。本実施の形態では、「1」は障がい者であることを示し、「0」は障がい者でないことを示す。移動能力は、「遅い」、「普通」、又は「速い」の3区分によって、乗客の移動能力を示す情報である。移動能力の各区分の移動速度の相対的な関係は、「遅い」<「普通」<「速い」である。
なお、移動能力については、年齢及び性別、並びに障がい者フラグの有無等に基づいて、自動的に判定されてもよい。例えば、障がい者フラグが「1」である乗客については、移動能力は「遅い」と判定される。障がい者フラグが「0」であり、年齢が70歳以上又は10歳以下の乗客については、移動能力は「遅い」と判定される。障がい者フラグが「0」の男性で、かつ、年齢が18歳以上40歳以下である乗客については、移動能力は「速い」と判定される。上記以外の乗客については、移動能力は「普通」と判定される。
また、図34は、構内情報記憶部の構成例を示す図である。図34において、構内情報記憶部63は、路線Aの各駅の各改札口から各乗降場所までの乗車方向及び降車方向ごとに、駅名、改札口ID、ホーム区分、乗降区分、距離情報、及び所要時間等の情報を記憶する。
駅名は、改札口が設置されている駅の名前である。改札口IDは、当該改札口の識別名である。ホーム区分は、乗降場所であるホームに関して、上り列車のホームであるか下り列車のホームであるかの区分である。乗降区分は、乗車方向及びは降車方向の区分である。乗車方向とは、当該改札口から当該ホームへの移動方向をいう。降車方向とは、当該ホームから当該改札口への移動方向をいう。距離情報は、当該移動方向における移動距離を示す情報であり、例えば、メートルを単位とする歩行距離と、段数を単位とする階段数等の情報を含む。所要時間は、当該移動方向における所要時間である。所要時間の単位は、例えば、秒である。図34において、所要時間は、移動能力の区分ごとに記憶されている。但し、構内情報記憶部63には、例えば「普通」等、一つの移動能力の区分に関する所要時間のみが記憶されていてもよい。この場合、「普通」の所要時間に対する「遅い」の所要時間及び「速い」の所要時間の相対的な関係を示す情報が設定されてもよい。相対的な関係を示す情報の一例として、「普通」の所要時間に対して乗ぜられる係数が挙げられる。この場合、「遅い」に対する係数は、1.0より大きくなり、「速い」に対する係数は、1.0より小さくなる。
また、所要時間は、例えば、図35に示されるような移動速度情報記憶部65と、構内情報記憶部63の距離情報とに基づいて算出されてもよい。
図35は、移動速度情報記憶部の構成例を示す図である。図35に示されるように、移動速度情報記憶部65は、移動速度の区分である、「速い」、「普通」、「遅い」ごとに、平坦速度、階段上り速度、及び階段下り速度等を記憶する。平坦速度は、階段以外の場所の移動速度をいい、例えば、m/秒の単位で示される。階段上り速度及び階段下り速度は、階段の上り方向又は下り方向の移動速度をいい、例えば、段数/秒の単位で示される。
例えば、構内情報記憶部63における歩行距離を平坦速度で除した値と、構内情報記憶部63における階段数を階段上り速度又は階段下り速度で除した値との和によって、構内情報記憶部63における所要時間が算出されてもよい。
ステップS403では、まず、対象乗車履歴(図32)の入場駅名と退場駅名とを運行情報記憶部62に当てはめることにより、対象乗車履歴に係る進行方向が特定される。対象乗車履歴に係る進行方向とは、対象乗車履歴に関する乗車列車の進行方向が、上り方向であるか下り方向であるかをいう。すなわち、運行情報記憶部62には、上り方向又は下り方向の順番に駅名が記憶されている。したがって、入場駅名と退場駅名とを運行情報記憶部62に当てはめることにより、対象乗車履歴に係る進行方向が特定される。続いて、構内情報記憶部63において、対象乗車履歴の入場駅名及び入場口IDに一致する駅名及び改札口IDを含み、乗降区分が「乗」であり、かつ、ホーム区分が対象乗車履歴に係る進行方向に一致するレコードが検索される。検索されたレコードの所要時間の中で、対象乗車履歴の乗車券IDに対して乗客情報記憶部64に記憶されている移動能力に対応する所要時間が、乗車時所要時間である。また、構内情報記憶部63において、対象乗車履歴の退場駅名及び退場口IDに一致する駅名及び改札口IDを含み、乗降区分が「降」であり、かつ、ホーム区分が対象乗車履歴に係る進行方向に一致するレコードが検索される。検索されたレコードの所要時間の中で、対象乗車履歴の乗車券IDに対して乗客情報記憶部64に記憶されている移動能力に対応する所要時間が、降車時所要時間である。
このように、乗車時所要時間及び降車時所要時間は、対象乗車履歴の乗車券IDに係る乗客の移動能力に応じて求められる。
続いて、乗車列車推定部52は、対象乗車履歴に退場時刻が含まれているか否かを判定する(S404)。上記したように、他の路線に乗り入れている列車に関する乗車履歴には、退場記録が含まれない可能性がある。すなわち、ステップS404では、路線A内で降車したか、他の路線で降車したかが判定される。
対象乗車履歴に退場時刻が含まれている場合(S404でYes)、乗車列車推定部52は、運行情報記憶部62に記憶されている運行時刻の遅い列車から順に、一つずつ処理対象として、対象乗車履歴と当該列車の運行情報との突き合わせを実行する(S405)。したがって、最初は運行時刻が最も遅い列車が処理対象とされる。すなわち、図A7において、最右端の列の列車が処理対象とされる。以下、処理対象とされた列車を、「対象列車」という。なお、運行時刻とは、各駅の発車時刻及び到着時刻の少なくともいずれか一方をいう。
ステップS406において、乗車列車推定部52は、対象乗車履歴の退場時刻が、対象乗車履歴の退場駅名における対象列車の到着時刻に降車時所要時間を加算した時刻以後であるか否かを判定する。対象乗車履歴と対象列車とが当該条件を満たす場合(S406でYes)、乗車列車推定部52は、対象乗車履歴の乗車時刻が、対象乗車履歴の乗車駅名における対象列車の発車時刻から乗車時所要時間を減算した時刻以前であるか否かを判定する(S407)。対象乗車履歴と対象列車とが当該条件を満たす場合(S407でYes)、乗車列車推定部52は、対象列車の列車IDを、乗車列車の推定結果としてメモリ装置103に記憶し(S408)、ステップS412に進む。すなわち、対象乗車履歴の退場駅への到着時刻が、対象乗車履歴の退場時刻から降車時所要時間を差し引いた時刻以前であり、かつ、対象乗車履歴の入場駅からの発車時刻が、対象乗車履歴の入場時刻に乗車時所要時間を加算した時刻以後である列車が、乗車列車として推定される。
ステップS412において、乗車列車推定部52は、乗車列車として特定された列車の列車IDを対象乗車履歴に対応付けて、推定結果記憶部66に記憶する。
図36は、推定結果記憶部の構成例を示す図である。図36に示されるように、推定結果記憶部66は、図32に示される乗車履歴に対応付けて、乗車列車の列車IDを記憶する。
ステップS406及びS407の条件のうち、少なくともいずれか一方の条件が満たされない場合、次に運行時刻の遅い列車が処理対象とされ、ステップS406以降が実行される。対象乗車履歴と全ての列車の運行情報とを突き合わせても、乗車列車を推定できなかった場合、ステップS413に進む。
ステップS413において、乗車列車推定部52は、対象乗車履歴の乗車IDに対して乗客情報記憶部64が記憶する移動能力が、最も早い区分である「速い」であるか否かを判定する。当該移動能力が、「速い」でない場合(S413でNo)、乗車列車推定部52は、対象乗車履歴の乗車IDに対して乗客情報記憶部64が記憶する移動能力を、一段階速い方向に変更する(S414)。具体的には、「遅い」は、「普通」に変更され、「普通」は「速い」に変更される。変更後の移動能力に基づいて、ステップS403以降が実行される。
すなわち、乗車列車を推定できない場合の原因の一つとして、対象乗車履歴に係る乗客の移動能力が、乗客情報記憶部64が記憶する移動能力よりも高いことが考えられる。したがって、移動能力が一段階補正されて、乗車列車の推定が行われる。
一方、対象乗車履歴の乗車IDに対して乗客情報記憶部64が記憶する移動能力が「速い」であるにも拘わらず、列車IDが特定されなかった場合(S413でYes)、乗車列車推定部52は、推定結果として乗車列車の列車IDは不定であることを示す値をメモリ装置103に記憶する(S415)。この場合、ステップS413では、不定を示す値が、対象乗車履歴に対応付けられて推定結果記憶部66に記憶される。
なお、本実施の形態では、退場駅における退場時刻と対象列車の到着時刻との突き合わせ(S406)が、入場駅における乗車時刻と対象列車の発車時刻との突き合わせ(S407)よりも先に実行される。これは、大部分の乗客に関して、降車してから駅を退場するまでの時間の方が、駅に入場してから乗車するまでの時間の方より予測可能性が高いであろうという考えに基づく。具体的には、乗車時には、入場してからホームまで移動した後、列車が到着するまでの待ち時間が発生する。当該待ち時間は、乗客によってばらつきが大きいと考えられる。余裕を持ってホームに到着する乗客もいれば、発車間際にホームに到着する乗客もいる。また、座席を確保するために1本以上の列車を待つ乗客もいる。一方、降車時は、降車後特段の待ち時間を要することなく、改札口から退場することができる。したがって、降車してから退場するまでの時間の方が、入場してから乗車するまでの時間よりも予測可能性が高いと考えられる。そこで、本実施の形態では、まず、予測可能性の高い方を基準として、対象乗車履歴において乗車対象とされた列車を絞り込んでいるのである。また、退場時刻と到着時刻との突き合わせを基準とするために、運行時刻の遅い列車から、対象乗車履歴との突き合わせが行われているのである。すなわち、仮に、対象乗車履歴の乗車対象が終電であった場合、運行時刻の早い列車から対象乗車履歴との突き合わせが行われると、全ての列車がステップS406の条件を満たしてしまう。したがって、結果的に、入場駅における入場時刻と到着時刻との突き合わせによって、乗車列車が推定されてしまうからである。
一方、対象乗車履歴に退場時刻が含まれていない場合(S404でNo)、乗車列車推定部52は、運行情報記憶部62に記憶されている運行時刻の早い列車から順に、一つずつ処理対象として、対象乗車履歴と当該列車の運行情報との突き合わせを実行する(S409)。以下、処理対象とされた列車を、「対象列車」という。続いて、乗車列車推定部52は、対象乗車履歴の乗車時刻が、対象乗車履歴の乗車駅名における対象列車の発車時刻から乗車時所要時間を減算した時刻以前であるか否かを判定する(S410)。対象乗車履歴と対象列車とが当該条件を満たす場合(S410でYes)、乗車列車推定部52は、対象列車の列車IDを、乗車列車の推定結果としてメモリ装置103に記憶し(S411)、ステップS412に進む。ステップS410の条件が満たされない場合(S410でNo)、次に運行時刻の早い列車が処理対象とされ、ステップS410以降が実行される。対象乗車履歴と全ての列車の運行情報とを突き合わせても、乗車列車を推定できなかった場合、ステップS413に進む。
なお、図31の処理は、乗車履歴記憶部61が記憶する各乗車履歴について実行される。その結果、処理対象とされた全ての乗車履歴について、乗車列車が推定される。
続いて、推定結果記憶部66等が記憶する情報を利用して、乗降情報生成部53が実行する乗降情報の生成処理について説明する。図37は、乗降情報生成処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
ステップS501において、乗降情報生成部53は、図A7における運行情報記憶部62の列方向に記憶されている列車IDの一つの処理対象として取得する。以下、当該列車IDを、「対象列車ID」という。
続いて、乗降情報生成部53は、対象列車IDが「乗車列車」の値として記憶されているレコード群を、推定結果記憶部66より取得する(S502)。続いて、乗降情報生成部53は、取得されたレコード群に基づいて、対象列車IDに係る列車の停車駅ごとに、乗車人数及び降車人数を算出する(S503)。すなわち、対象列車IDに係る列車の各停車駅は、運行情報記憶部62に基づいて特定することができる。特定された停車駅ごとに、上記レコード群の中で、当該停車駅の駅名が入場駅名として記憶されているレコードの数を集計することにより、当該停車駅の乗車人数を算出することができる。同様に、特定された停車駅ごとに、上記レコード群の中で、当該停車駅の駅名が退場駅名として記憶されているレコードの数を集計することにより、当該停車駅の降車人数を算出することができる。
続いて、乗降情報生成部53は、算出結果を、乗降情報記憶部67に記憶する(S504)。これにより、対象列車IDに関して、図5に示したような、乗降情報が生成されたことになる。
運行情報記憶部62に記憶された各列車IDに関して、ステップS501〜S504が実行されることにより(S505)、運行される各列車に関して、乗降情報が生成される。
このように、乗降情報は、改札情報に基づいて生成されてもよい。また、他の方法によって生成されてもよい。例えば、列車内に人体等を検知するセンサを設置し、当該センサによって、車内の乗車人数が計数されることにより、列車ごとに、各停車駅の乗車人数及び降車人数が算出されてもよい。すなわち、本実施の形態では、乗車券IDごとに、乗車列車が推定されたが、乗降情報の生成には、必ずしも、各個人がいずれの列車に乗車したのかまで推定又は特定されなくてもよい。各停車駅間の車内の人数が推定又は特定されれば、乗降情報は導出されうる。
なお、本実施の形態において、停車駅は、乗降地点の一例である。混雑情報推定部11は、算出部の一例である。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。