以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について図面を参照しながら説明する。
〈第1の実施の形態〉
図1A、BおよびCは第1の実施の形態による放射性物質および放射線対応高清浄環境システムを示す。図1Aは上面図、図1Bは正面図、図1Cは右側面図である。
図1A、BおよびCに示すように、この放射性物質および放射線対応高清浄環境システムは全体として直方体形状の箱状の密閉可能な包囲体11を有する。この包囲体11の一つの側壁および上壁は、所定の間隔をおいて互いに平行に設けられた外壁11aと内壁11bとからなる二重壁により構成されている。包囲体11の内部は、この二重壁の間の空間により構成される気体流路12と、この気体流路12以外の空間からなる高清浄環境室13とに分割されている。包囲体11の側壁部の内壁11bの下端と包囲体11の底面11cとの間には所定の高さの通風孔14がスリット状に設けられている。
包囲体11の上壁部の内壁11bに放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が設置されている。この内壁11bには、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の出口(排出口)に対応する部分にこの出口と同一形状の開口(図示せず)が形成されており、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の出口から排出される空気が高清浄環境室13に供給されるようになっている。
包囲体11の上壁部の内壁11bの直ぐ下方(高清浄環境室13の天井の直ぐ下方)にはこの内壁11bに平行に均一流形成板16が設けられている。この均一流形成板16は好適にはこの上壁部の内壁11bの全体あるいはほぼ全体に亘って設けられる。図2にこの均一流形成板16の一例を示す。図2に示すように、この均一流形成板16には円形の通気孔16aが多数設けられている。放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット13の塵埃フィルターの出口から出てくる空気は、この均一流形成板16と包囲体11の上壁部の内壁11bとの間の空間を通って水平方向に広がりながら、通気孔16aを通って下方に流れる。この場合、均一流形成板16と包囲体11の上壁部の内壁11bとの間の空間を通る空気は塵埃フィルターから遠くなるほど到達しにくくなることから、均一流形成板16の全ての場所の通気孔16aから出てくる空気の流れが面内で均一となるように、均一流形成板16の通気孔16aの大きさは塵埃フィルターの出口から離れるに従って徐々に大きくなっている。具体的には、塵埃フィルターの出口の面積をA1 、塵埃フィルターの出口から出てくる空気の風量をF1 、均一流形成板16の全体の面積をA2 、均一流形成板16の通気孔16aを通って下方に流れる空気の風量をF2 とすると、F1 A1 =F2 A2 が成立するから、F2 =(A1 /A2 )F1 となる。そこで、均一流形成板16を通って下方に流れる空気の風量がこの式で決まるF2 になり、かつ均一流形成板16の単位面積当たりの通気孔16aの総面積が均等になるように通気孔16aの大きさおよび密度を決める。この場合、好適には、均一流形成板16を通って下方に流れる空気の風量に対する、高清浄環境室13の均一流形成板16の下側の空間の体積の比が1/2.5以下になるようにする。また、この均一流形成板16の別の形成方法としては、テープを格子状に張る方法を用いることも可能である。その際、テープ幅(テープ間隔)を中央部から外側に行くにつれて小さく(大きく)することで、均一流を形成することができる。
包囲体11の、二重壁が形成された側壁と対向するもう一方の側壁には、高清浄環境室13に対する人の出入り口となる一対の障子17(引き戸)が取り付けられ、この障子17を引いて開けることにより人が出入りすることができるようになっている。この場合、この障子17の障子紙に相当するものは、ダスト微粒子を100%は通さないが、気体は通す隔壁(ガス交換膜)17aにより構成されている。この隔壁17aにより、高清浄環境室13の内外のガス濃度の平衡を保つことができるようになっている。
この放射性物質および放射線対応高清浄環境システムは、図1B中の矢印で示すように、送風ファンの作動により、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の出口から出て高清浄環境室13に入る空気の100%が通風孔14から気体流路12を通って放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の入口に入り、再び放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の出口から出て高清浄環境室13に入るという動作が繰り返される100%密閉循環系を構成する。
高清浄環境室13の清浄度を恒常的に保つには、障子17の手前に、もう一段、床面積は小さくても良いので、高清浄環境室13と同様の循環システムを備えた部屋(前室)を設けるのが望ましい。
図3A、BおよびCに放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の構成を示す。図3Aは上面図、図3Bは正面図、図3Cは右側面図である。
図3A、BおよびCに示すように、この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15は直方体形状の箱状の筐体151を有する。筐体151は放射線遮蔽材料からなる。筐体151の内部に送風ファン152および塵埃フィルター153が設けられている。塵埃フィルター153としては、例えば、HEPAフィルター、ULPAフィルターなどのほか、ダスト微粒子の捕集効率がこれらのHEPAフィルター、ULPAフィルターより低い、例えば捕集効率が99%以下、あるいはさらに95%以下のフィルターを用いてもよい。筐体151の上壁154にはスリット状の長方形の開口155が互いに平行に複数設けられている。筐体151の上壁154と送風ファン152との間の空間には、各開口155に面して、各開口155より大きい長方形のスリット状の放射線遮蔽部材156が設けられている。この放射線遮蔽部材156は、上壁154に垂直な方向から各開口155を見たときに筐体151の内部が見えないように設けられる。同様に、筐体151の下壁157には長方形のスリット状の開口158が互いに平行に複数設けられ、筐体151の下壁157と塵埃フィルター153との間の空間には、各開口158に面して、各開口158より大きい長方形のスリット状の放射線遮蔽部材159が設けられている。この放射線遮蔽部材159は、下壁157に垂直な方向から各開口158を見たときに筐体151の内部が見えないように設けられる。この場合、放射線遮蔽部材156、159は、塵埃フィルター153のどの位置に捕集される放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線も、筐体151の各開口155、158から直接外部に出ないように形成される。また、筐体151の壁および放射線遮蔽部材156、159の厚さは、塵埃フィルター153のどの位置に捕集される放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から任意の方向に向かう直線について、その直線が筐体151の壁および/または放射線遮蔽部材156、159を横断する距離の合計が、放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線群の最大飛程または吸収長のうちの最も大きいもの以上になるように設定されている。筐体151の内部で塵埃フィルター153の近傍には、好適には、CsI(Tl)シンチレーター、NaI(Tl)シンチレーター、Bi4 Ge3 O12シンチレーター、Si/CdTeコンプトンカメラ等の放射線モニターが設置される。この放射線モニターにより、塵埃フィルター153への放射性物質の蓄積量をモニターすることができる。また、この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の筐体151、塵埃フィルター153の外枠、あるいはこれらの表面コート材には、不安定放射性同位元素を持たない元素による素材を用いることが望ましい。筐体151を構成する素材はむき出しでなく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのコーティングや塗装等による表面保護が施されていることが望ましい。また、図1には図示していないが、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の筐体151の外部近傍にも上記と同様な放射線モニターを設置して、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が正常に動作していることを常時モニターしておくことが望ましい。
この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の筐体151の構造は、放射線は散乱がない限り直進し、気流は流路に沿って方向が制御できることに基づいて考案されている。遮蔽は考慮すべき放射線の飛程に関する考察により、図7に関連して後述するように、β線よりも(エネルギー数百keV〜2MeV程度の)γ線を抑えることが必要であることが分かる。このエネルギー領域のγ線は、非特許文献4より、コンプトン散乱によりエネルギーを失うことが分かる。この散乱断面積は非特許文献4のp.62に与えられており、この結果に基づき、たとえ散乱により進行方向が変わっても、十分に高い確率で(ほぼ100%)筐体151の壁または放射線遮蔽部材156、159を横切るように設計することができる。すなわち、この筐体151においては、上壁154の各開口155から入った空気は、図3B中の矢印で示すように放射線遮蔽部材156により流路が水平方向および垂直方向に繰り返して曲げられた後に送風ファン152を通って塵埃フィルター153に入る。そして、この塵埃フィルター153から出た空気は、放射線遮蔽部材159により流路が水平方向および垂直方向に繰り返して曲げられ、下壁157の各開口158から外部に出るようになっている。放射線遮蔽部材156と上壁154とのオーバーラップ長さは、放射線遮蔽部材156の間隔に対する比を、好適には1以上、例えば3程度に設定する。同様に、放射線遮蔽部材159と下壁157とのオーバーラップ長さは、放射線遮蔽部材159の間隔に対する比を、好適には1以上、例えば3程度に設定する。ここで、上壁154の開口155、放射線遮蔽部材156、下壁157の開口158および放射線遮蔽部材159の面積および位置は、上壁154の開口155から入る空気が円滑に流れて送風ファン152に入り、塵埃フィルター153から出た空気が円滑に流れて下壁157の開口158から出るように選択される。また、この塵埃フィルター153のフィルター材(ろ材)に捕集された放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線は、どの方向に放射される放射線であっても、筐体151の放射線遮蔽材料からなる壁および/または放射線遮蔽部材156、159に当たって確実に遮蔽され、筐体151の外部には放射されない。
筐体151および放射線遮蔽部材156、159を構成する放射線遮蔽材料の具体例について説明する。例えば、原子炉の事故に伴い外部に放出される放射性同位元素は、図4(非特許文献4参照。)および図5(非特許文献5参照。)に示すように、その崩壊の過程(β崩壊、γ崩壊)は、エネルギーを含め同定されている。
図4に示すように、ヨウ素131( 131I)では、約90%がβ崩壊して606keVのβ線を放射した後、γ崩壊して364keVのγ線を放射し、約10%がβ崩壊して334keVのβ線を放射した後、γ崩壊して637keVのγ線を放射する。一方、図5に示すように、セシウム137( 137Cs)では、約95%がβ崩壊して512keVのβ線を放射した後、γ崩壊して662keVのγ線を放射し、約5%がβ崩壊して1.17MeVのβ線を放射する。
以下においては、特にヨウ素131およびセシウム137について述べるが、図6(種々の放射性同位元素から放射されるβ線のエネルギーと吸収係数との関係)などの知見により、崩壊過程のエネルギーを勘案することにより、他の放射性同位元素にも適用することができる。
上述のように、ヨウ素131およびセシウム137のβ崩壊に対しては、606keVのβ線を遮蔽すれば、ヨウ素131では100%、セシウム137でも95%β線を遮蔽することができる。さらに、1.17MeVのβ線を遮蔽すれば、セシウム137についても100%β線を遮蔽することができる。
図7(非特許文献6参照。)はβ線のエネルギーと最大飛程Rとの関係を示す。ここで、最大飛程Rは、入射したβ線が物質中で電離や励起でエネルギーを失ってエネルギーが0となるまでの距離であり、
のように定義される。ただし、この式においてEはβ線のエネルギーであり、xはβ線の飛跡に沿った距離を示す。
図7より、約640keVのβ線の最大飛程は、約250mg/cm2 と分かる。放射線遮蔽材料として、例えば鉛(Pb)を用いるとすると、その密度は11.3g/cm3 であるので、厚さが0.3mm程度あれば、640keVのβ線を十分遮蔽することができることが分かる。1.2MeVのβ線を遮蔽するには、最大飛程が約500mg/cm2 であることより、厚さが0.6mmあればよい。ストロンチウム90(90Sr)は中性子過剰であるためβ崩壊によりイットリウム90(90Y)を生成し、これは半減期が64時間と不安定でさらにβ崩壊して安定なジルコニウム90(90Zr)となる。90Srは半減期が28.79年であり、90Yのβ崩壊エネルギーは2279.783±1.619keVと、90Srのβ崩壊エネルギー545.908±1.406keVよりもかなり高いが、図7より、1.3g/cm2 程度の飛程であるので、厚さ1.5mmの鉛を用いて遮蔽することができる。このように、一般に荷電粒子である電子(β線)は、荷電中性である光子(γ線)に比べて電磁相互作用が大きくなり、その分飛程が小さくなるので、より薄い遮蔽物質(金属板、コンクリートスラブ等)で抑えることができる。
他方、ヨウ素131およびセシウム137のγ崩壊に対しては、662keVのγ線を遮蔽すれば、ヨウ素131では100%、セシウム137でも100%γ線を遮蔽することができる。
図8(非特許文献7参照。)はγ線のエネルギー、すなわち光子エネルギーと種々の物質のγ線の吸収長との関係を示す。図8より、662keVのγ線の吸収長は約9g/cm2 である。放射性物質としてセシウム137およびセシウム134を考慮に入れても、筐体151の壁および放射線遮蔽部材156、159の吸収長が10g/cm2 以上であれば、これらのセシウム137およびセシウム134からのγ線を遮蔽することができる。放射線遮蔽材料として例えば鉛(Pb)を用いるとすると、その密度は11.3g/cm3 であるので、(9/11.3)cm≒8mm程度あれば、ヨウ素131、セシウム137およびセシウム134からのγ線を十分遮蔽することができることが分かる。
β崩壊の後にγ崩壊が起こるというシリアル性を加味して、0.6mm+8mm〜9mmの厚さの鉛板を用いると良い。特に、図8から分かるように、光子エネルギー対吸収長プロットにおいて、600keVから1MeVにかけての光子エネルギーに対し、吸収長は、水素を除く元素で、狭い領域に収束してくるので、鉛以外の他の物質でも、その密度が小さければ、それに反比例して厚さを大きくすることで、鉛板に代えて用いることができる。例えば、部屋の側壁に用いるにはコンクリートでも良く、コンクリートの密度が2.3g/cm3 であることから、その厚さを9mm×(11.3/2.3)〜5cmとすれば良い。
図9(非特許文献8参照。)は1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所の事故後の残存放射線の経時変化を示すグラフである。図9より、事故後、100日以降は、ヨウ素131は残存せず、3年目以降はセシウム137およびセシウム134から放射されるβ線およびγ線の影響を考えれば良いことが分かる。図10(非特許文献9参照。)はセシウム134の崩壊系統図、図11(非特許文献10参照。)はセシウム134およびセシウム137の特性を示す。
セシウム134からの寄与は、事故後600〜800日を越えると相対的に減ってくるが、この寄与も抑えることが望ましい。図11より、セシウム134からは、セシウム137からのγ線より高いエネルギー(796keV、802keV、1.365MeV)のγ線が出てくる。これらのγ線を抑えるには、図8より、20g/cm2 の吸収長を持つ遮蔽板を用いれば良い。鉛では、18mm程度の厚さになる。特に、図8より分かるように、光子エネルギー対吸収長プロットにおいて、600keVから1MeVにかけての光子エネルギーに対し、吸収長は、水素を除く元素で、15〜30g/cm2 でほぼ一致するので、2MeV以下のエネルギーのγ線(従って、図7に関連して述べた事実と合わせると、図9に現れるほとんどの放射性物質からの寄与)を抑える上で、この吸収長は(水素を除いて)物質を選ばぬ普遍的な値となる。
次に、この放射性物質および放射線対応高清浄環境システムの動作方法について説明する。ここでは、最初、この放射性物質および放射線対応高清浄環境システムの周囲の環境の空気中に放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が含まれ、この放射性物質および放射線対応高清浄環境システムの包囲体11の内部の空気も同じく放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が含まれていて通常の室内環境のような低清浄度であるとする。
ファンフィルターユニット15を作動させると、図1B中矢印で示すように、包囲体11の内部の空気は、通風孔14から二重壁の間の気体流路12を通ってファンフィルターユニット15の入口に入る。こうしてファンフィルターユニット15の内部に入った空気は送風ファン152により塵埃フィルター153に送られ、塵埃フィルター153を通過することで放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が除去される。こうして放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が除去された空気は、ファンフィルターユニット15の出口から出た後、均一流形成板16を通って流れが均一化され、通気孔16aから下方に流れる。こうして、均一流形成板16を通って均一化された空気は再び、通風孔14から気体流路12に戻り、上記のことが繰り返される。これを繰り返すことにより高清浄環境室13の内部の空気から放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が除去されて清浄化が行われる。また、この際、既に述べたように、この清浄化の過程で塵埃フィルター153のフィルター材に捕集された放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線が筐体151の外部に放射されるのを防止することができる。
この放射性物質および放射線対応高清浄環境システムの高清浄環境室13内のダスト微粒子のカウント数の時間依存性の測定を行った一例を図12に示す。図12において、縦軸は1立方フィート(cf)当たりのダスト微粒子数を対数で示したものであり、横軸はファンフィルターユニット15の運転を開始してからの時間を示す。ダスト微粒子数は、粒径0.5μmより大きいものと、粒径0.3μmより大きいものとに分けて表示した。放射性物質および放射線対応高清浄環境システムは通常環境の部屋に設置した。放射性物質および放射線対応高清浄環境システムの包囲体11は密閉されており、高清浄環境室13の床面にダストカウンターを設置した。ただし、高清浄環境室13の内部の空間の大きさは奥行き約2m、幅約2m、高さ約2.3mである。この場合、高清浄環境室13の内部の空間の体積は約9m3 である。二重壁を構成する外壁11aと内壁11bとの間の空間の厚さは約15cmである。ファンフィルターユニット15の送風ファン152としては、寸法が約30cmφ×9cmの軸流ファンを用い、風量は4〜11m3 /分で4段階に切替可能である。包囲体11はアルミニウム製フレームに透明なアクリル板をはめこんだものを用いた。塵埃フィルター153としては、寸法が65cm×65cm×6cm、粒径0.3μmのダスト微粒子の捕集効率が99.97%以上のHEPAフィルターを用いた。
図12から分かるように、包囲体11内のダスト微粒子は運転開始後、急速に減少し、粒径0.5μmより大きいダスト微粒子も粒径0.3μmより大きいダスト微粒子も、7分程度でゼロカウントに到達し、その後もゼロカウントを維持している。ただし、図12においては、便宜上、ゼロカウントは0.01の線上にプロットしている。この清浄度はISOクラス100〜1程度であり、高清浄度空気環境が実現されていることが分かる。なお、ダストカウンターとしては、Lasair310を使用した。
以上のように、この第1の実施の形態による放射性物質および放射線対応高清浄環境システムによれば、密閉可能な包囲体11の内部の高清浄環境室13は、ファンフィルターユニット15の出口から高清浄環境室13に入った空気が100%、気体流路12を通ってファンフィルターユニット15の入口に戻る密閉循環系を構成するため、高清浄環境室13の内部を短時間で高清浄空気環境にすることができ、放射性物質および/または放射性物質含有微粒子を大幅に低減することができる。また、ファンフィルターユニット15は、壁が放射線遮蔽材料から構成された筐体151および放射線遮蔽材料から構成された放射線遮蔽部材156、159により覆われているため、塵埃フィルター153に捕集された放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線が高清浄環境室13の内部に放射されるのを確実に防止することができる。さらに、高清浄環境室13の側壁に出入り口となる障子17が取り付けられており、この障子17は、ダスト微粒子を100%は通さないが、気体は通す隔壁(ガス交換膜)17aを有する。このため、この隔壁17aにより、高清浄環境室13の内外のガス濃度の平衡を保つことができるため、高清浄環境室13の内部の酸素濃度や二酸化炭素濃度などを高清浄環境室13の外部の酸素濃度や二酸化炭素濃度などと平衡に保つことができる。
また、既に述べたように、塵埃フィルター153のダスト捕集効率γは、例えばHEPAフィルターのように99.99%以上とする必要はなく、例えば95%程度でも十分に高い清浄度を得ることができる。例えば、図13は、塵埃フィルター153としてγ=95%の中性能フィルター(障子紙ガス交換膜を用いたもの)を使った放射性物質および放射線対応高清浄環境システムの高清浄環境室13内のダスト微粒子のカウント数の時間依存性の測定を行った一例を示す。図13の縦軸は各粒径の粒子数を対数で示したものであり、横軸はファンフィルターユニット15の運転を開始してからの時間を示す。図13の挿入図の縦軸は粒径0.5μm以上の総粒子数を対数で示したものであり、横軸はファンフィルターユニット15の運転を開始してからの時間を示す。図13より、塵埃フィルター153としてγ=95%の中性能フィルターを使っても、クラス100を切る良好な清浄度が得られていることが分かる。このため、塵埃フィルター153のフィルター材(ろ材)として例えば樹脂のような非ガラス繊維質材、またフレームとしても木材等の廃棄処理が容易なものを用いることができる。これによって、フィルター材としてガラス繊維を用いるHEPAフィルターでは、廃棄する際には埋め立て等の対処が必要であり、大量に廃棄物が発生するときはその対処が事実上不可能であったのに対し、フィルター材として樹脂のような非ガラス繊維質材、フレームとして木材等を用いた塵埃フィルター153は使用後の廃棄処理が、フィルター、フレーム一括焼却等が容易であり、廃棄物処理という静脈産業的見地の効率向上に絶大な効果がある。また、ダスト捕集効率γが例えば95%程度と小さい塵埃フィルター153を用いることにより、HEPAフィルターに比べて目詰まりが起きにくく、長期間使用することができるという利点を得ることができる。
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態による放射性物質および放射線対応高清浄環境システムにおいては、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15として図14A、BおよびCに示すものを用いる点が、第1の実施の形態による放射性物質および放射線対応高清浄環境システムと異なる。ここで、図14Aは上面図、図14Bは正面図、図14Cは右側面図である。
図14A、BおよびCに示すように、この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15は直方体形状の箱状の筐体151を有する。筐体151は放射線遮蔽材料からなる。筐体151の内部に送風ファン152および塵埃フィルター153が収容されている。筐体151の上壁154にはスリット状の長方形の開口155が互いに平行に複数設けられている。筐体151の上壁154と送風ファン152との間の空間には、各開口155に面して、各開口155より大きい細長い長方形状の平面形状を有する水平部156aとこれに垂直な垂直部156bとからなる逆T字型の断面形状を有する放射線遮蔽部材156が設けられている。放射線遮蔽部材156の垂直部156bは筐体151の上壁154の開口155を貫通して設けられており、各開口155に入る気体の流路を垂直部156bの両側に分割している。同様に、筐体151の下壁157には長方形のスリット状の開口158が互いに平行に複数設けられ、筐体151の下壁157と塵埃フィルター153との間の空間には、各開口158に面して、各開口158より大きい細長い長方形状の平面形状を有する水平部159aとこれに垂直な垂直部159bとからなる逆T字型の断面形状を有する放射線遮蔽部材159が設けられている。放射線遮蔽部材159の垂直部159bは筐体151の下壁157の開口158を貫通して設けられており、各開口158に入る気体の流路を垂直部159bの両側に分割している。この場合、放射線遮蔽部材156、159は、塵埃フィルター153のどの位置に捕集される放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線も、筐体151の各開口155、158から直接外部に出ないように形成される。また、筐体151の壁および放射線遮蔽部材156、159の厚さは、最も単純には、透過力の最大の放射線の飛程あるいは吸収長とすることで、塵埃フィルター153のどの位置に捕集される放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から任意の方向に向かう直線について、その直線が筐体151の壁および/または放射線遮蔽部材156、159を横断する距離の合計が、放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線群の最大飛程または吸収長のうちの最も大きいもの以上とすることができる。例えば、事故後3000日後の残存放射性物質であるセシウム137に対しては、661keVのγ線を抑えるべく、鉛の場合で厚さ約9mmの板を用いれば良い。ここでも、放射線遮蔽部材156の水平部156aと上壁154とのオーバーラップ長さは、流路幅(水平部156aの間隔)に対する比を、好適には1以上、例えば3程度に設定することが望ましい。例えば、流路幅が5mm(1cm)程度とすると、オーバーラップ長さは5mm〜15mm(1cm〜3cm)程度とする。この構造で開口155を形成すると、図14Bでは3列の場合を示しているが、例えば、65cm角の塵埃フィルター153を用いる場合で、流路幅が5mmの時、最大で650mm/(5mm+5mm+5mm+5mm+5mm+5mm)〜20列程度の開口155を設けることができる。流路幅が1cmの時、最大で65cm/(1cm+1cm+1cm+1cm+1cm+1cm)〜10列程度の開口155を設けることができる。事故後3000日以前では、セシウム134からのγ線も抑える能力を持つべきであり、1.365MeVのγ線を抑えるべく、図8より、20g/cm2 の吸収長を持つ遮蔽板を用いれば良い。鉛では、18mm程度の厚さになる。1〜2MeVのγ線を抑える吸収長は、炭素(C)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、錫(Sn)、鉛(Pb)等の物質を問わず20g/cm2 に収束しているので、密度が異なる分、物質毎に厚さは異なるものの、必要な厚さは、この吸収長を物質の密度で割った値として普遍的に得ることができる。また、上壁154の開口155、放射線遮蔽部材156、下壁157の開口158および放射線遮蔽部材159の面積および位置は、上壁154の開口155から入る空気が円滑に流れて送風ファン152に入り、塵埃フィルター153から出た空気が円滑に流れて下壁157の開口158から出るように選択される。また、この塵埃フィルター153のフィルター材(ろ材)に捕集された放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線は、どの方向に放射される放射線であっても、筐体151の放射線遮蔽材料からなる壁および/または放射線遮蔽部材156、159に当たって確実に遮蔽され、筐体151の外部には放射されない。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができることに加えて、図13A、BおよびCに示すファンフィルターユニット15を用いていることにより次のような利点を得ることができる。すなわち、上壁154の開口155に面して設けられた放射線遮蔽部材156はこの開口155から突出した垂直部156bを有し、同様に、下壁157の開口158に面して設けられた放射線遮蔽部材159はこの開口158から突出した垂直部158bを有するため、塵埃フィルター153のフィルター材に捕集された放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から開口155、158に向かって放射される放射線を放射線遮蔽部材156、159の水平部156a、159aまたは垂直部156b、159bにより確実に遮蔽することができる。
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態による放射性物質および放射線対応高清浄環境システムにおいては、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15として図15A、BおよびCに示すものを用いる点が、第1および第2の実施の形態による放射性物質および放射線対応高清浄環境システムと異なる。ここで、図15Aは上面図、図15Bは正面図、図15Cは右側面図である。
図15A、BおよびCに示すように、この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット13は直方体形状の箱状の筐体151を有する。筐体151は放射線遮蔽材料からなる。筐体151の内部に塵埃フィルター153が収容されているが、送風ファン152は筐体151の内部ではなく、筐体151の上壁154に設けられている。筐体151の上壁154にはスリット状の長方形の開口155が互いに平行に複数設けられている。筐体151の上壁154と塵埃フィルター153との間の空間においては、上壁154の各開口155の一方の側の部分の内側に、この上壁154に対して角度θ1 傾斜した方向に各開口155の中心に向かって延びて長方形状の放射線遮蔽部材156cが設けられているとともに、各開口155の他方の側の部分の内側にはこの上壁154に対して角度θ2 傾斜した方向に各開口155の中心に向かって延びて長方形状の放射線遮蔽部材156dが設けられている。ここで、θ1 、θ2 は、減容時の上下方向の圧力に対して容易に屈曲することを旨としているので、例えば30°以上60°以下であるが、これに限定されるものではない。また、放射線遮蔽部材156dは、放射線遮蔽部材156cと接触せず、かつ放射線遮蔽部材156cの先端とこの放射線遮蔽部材156dとの間にこの放射線遮蔽部材156dに沿った空気の流路が形成されるように、放射線遮蔽部材156cより幅が広く形成されている。また、筐体151の下壁157には長方形のスリット状の開口158が互いに平行に複数設けられ、筐体151の下壁157と塵埃フィルター153との間の空間には、各開口158に面して、水平な放射線遮蔽部材159が設けられている。この場合、放射線遮蔽部材156c、156d、159は、塵埃フィルター153のどの位置に捕集される放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線も、筐体151の各開口155、158から直接外部に出ないように形成される。また、筐体151の壁および放射線遮蔽部材156c、156d、159の厚さは、塵埃フィルター153のどの位置に捕集される放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から任意の方向に向かう直線について、その直線が筐体151の壁および/または放射線遮蔽部材156c、156d、159を横断する距離の合計が、放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線群の最大飛程または吸収長のうちの最も大きいもの以上になるように設定される。また、上壁154の開口155、放射線遮蔽部材156、下壁157の開口158および放射線遮蔽部材159の面積および位置は、上壁154の開口155から入る空気が円滑に流れて送風ファン152に入り、塵埃フィルター153から出た空気が円滑に流れて下壁157の開口158から出るように選択される。また、この塵埃フィルター153のフィルター材(ろ材)に捕集された放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線は、どの方向に放射される放射線であっても、筐体151の放射線遮蔽材料からなる壁および/または放射線遮蔽部材156、159に当たって確実に遮蔽され、筐体151の外部には放射されない。
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができることに加えて、この放射性物質および放射線対応高清浄環境システムを所定期間使用した後には、ファンフィルターユニット15から、塵埃フィルター153を含む筐体151を取り外し、この筐体151を減容システムで減容すれば良いので、送風ファン152と塵埃フィルター153とを含むファンフィルターユニット15全体を含む筐体151を減容する場合に比べ、また直角部を含むH形構造材やT形構造材に比べて、減容時の抵抗を下げることができるとともに、減容対象物の容積を減少させることができる。
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態においては、放射性物質含有廃棄物の減容処理システムについて説明する。
図16にこの放射性物質含有廃棄物の減容処理システムを示す。図16に示すように、この減容処理システムは放射線遮蔽容器201を有する。放射線遮蔽容器201は、遮蔽すべき放射線の最大飛程または吸収長のうちの大きいもの以上の厚さの壁を有する。この放射線遮蔽容器201の壁は、例えば、十分に厚い鋼鉄やコンクリートあるいはそれらを組み合わせたものなどにより形成することができる。放射線遮蔽容器201の内部においては、軸202の先端に設けられた押圧部材203を上下動可能になっている。
この放射性物質含有廃棄物の減容処理システムの使用方法について説明する。まず、押圧部材203を放射線遮蔽容器201の上方に上昇させた状態で、放射線遮蔽容器201の内部に減容処理を行う放射性物質含有廃棄物を入れる。図16においては、放射性物質含有廃棄物が使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット15である場合が示されているが、これに限定されるものではなく、例えば使用済み塵埃フィルター153であってもよい。次に、放射線遮蔽容器201の上から押圧部材203を下降させて放射線遮蔽容器201の内部に入れ、軸202を上方から押すことにより、押圧部材203により放射性物質含有廃棄物、例えば使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット15を押圧し、十分に圧縮して厚さを減少させることにより減容する。この後、軸202を上昇させることにより放射線遮蔽容器201内から押圧部材203を取り出し、減容された放射性物質含有廃棄物、例えば使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット15を取り出す。こうして放射性物質含有廃棄物の減容処理を行うことができる。
以上のように、この第4の実施の形態によれば、使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット15などの放射性物質含有廃棄物を容易に減容処理することができるので、廃棄処理が容易であり、あるいは、放射性物質含有廃棄物の貯蔵スペースが小さくて済む。
〈第5の実施の形態〉
第5の実施の形態においては、放射性物質含有廃棄物の減容処理システムについて説明する。
図17にこの放射性物質含有廃棄物の減容処理システムを示す。図17に示すように、この減容処理システムは放射線遮蔽容器201を有する。放射線遮蔽容器201は、遮蔽すべき放射線の最大飛程または吸収長のうちの大きいもの以上の厚さの壁を有する。この放射線遮蔽容器201の壁は、例えば、十分に厚い鋼鉄やコンクリートあるいはそれらを組み合わせたものなどにより形成することができる。放射線遮蔽容器201の内部においては、軸202の先端に設けられた押圧部材203を上下動可能になっている。放射線遮蔽容器201の上部には着脱自在の蓋204がはめられている。放射線遮蔽容器21と蓋204との間は封止することができるようになっている。蓋204には軸202を通す孔が設けれ、この孔の中に軸202が通されている。蓋204と軸202との間は封止することができるようになっている。放射線遮蔽容器201内における蓋204と押圧部材203との間の空間には、外部に設置された酸素ボンベ205から配管206を通って酸素が供給されるようになっている。配管206は蓋204に設けられた孔を通って設けられている。また、放射線遮蔽容器201の底壁の下側には加熱ヒーター207が設けられており、この加熱ヒーター207により放射線遮蔽容器201を加熱することができるようになっている。
放射線遮蔽容器201の外部に、減容処理の過程で放射線遮蔽容器201内の蓋204と押圧部材203との間の空間に放出された放射性物質および/または放射性物質含有微粒子を含む空気を一旦収容するための中間槽(バッファー槽)208が設けられている。放射線遮蔽容器201内の蓋204と押圧部材203との間の空間と中間槽208との間には配管209が接続されている。中間槽208の壁には、第1〜第3の実施の形態において用いたファンフィルターユニット15が取り付けられている。
この放射性物質含有廃棄物の減容処理システムの使用方法について説明する。まず、押圧部材203を放射線遮蔽容器201の上方に上昇させた状態で、放射線遮蔽容器201の内部に減容処理を行う放射性物質含有廃棄物を入れた後、放射線遮蔽容器201に蓋204をする。図17においては、放射性物質含有廃棄物が使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット15である場合が示されているが、これに限定されるものではなく、例えば使用済み塵埃フィルター153であってもよい。次に、放射線遮蔽容器201の上から押圧部材203を下降させ、この押圧部材203により放射性物質含有廃棄物、例えば使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット15を押圧し、十分に圧縮して厚さを減少させることにより減容する。この際、必要に応じて、加熱ヒーター207により放射線遮蔽容器2011を下から加熱して放射性物質含有廃棄物を加熱する。あるいは、加熱ヒーター207により放射線遮蔽容器201を下から加熱し、あるいはさらに放射線遮蔽容器201内の蓋204と押圧部材203との間の空間に酸素ボンベ205から酸素を供給することにより放射性物質含有廃棄物の少なくとも一部を燃焼させ、軸202を上方から押して押圧部材203により放射性物質含有廃棄物、例えば使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット15を押圧し、十分に圧縮して厚さを減少させることにより減容する。
一方、この減容処理の過程で放射性物質含有廃棄物、例えば使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット15から放出され、放射線遮蔽容器201内の蓋204と押圧部材203との間の空間に移動した放射性物質および/または放射性物質含有微粒子を含む空気は蓋204に接続された配管209を通って中間槽208に入り、ファンフィルターユニット15により清浄化されてから外部に放出される。
この後、軸202を上昇させることにより放射線遮蔽容器201内から押圧部材203を取り出し、減容処理された放射性物質含有廃棄物を取り出す。こうして放射性物質含有廃棄物の減容処理を行うことができる。
以上のように、この第5の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様な利点に加えて、使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット15の処理の過程で放出される放射性物質および/または放射性物質含有微粒子を含む空気を中間槽208に送ってファンフィルターユニット15で再び清浄化するので、処理システムの外部に放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が放出されるのを防止することができる。
〈第6の実施の形態〉
第6の実施の形態においては、放射性物質含有廃棄物減容処理システムについて説明する。
図18にこの放射性物質含有廃棄物減容処理システムを示す。図18に示すように、この放射性物質含有廃棄物減容処理システムは、全体として直方体の箱状の形状を有する密閉可能な包囲体301を有する。この包囲体301の下部は、地面302に掘られた穴302aに設置されている。包囲体301の内部に放射性物質含有廃棄物を燃焼または圧縮するための燃焼/圧縮装置303が設置されている。燃焼/圧縮装置303には包囲体301を貫通して給気管304が接続されており、この燃焼/圧縮装置303の内部に酸素または空気を供給することができるようになっている。この燃焼/圧縮装置303には、排気管305を介して、第1〜第3の実施の形態において用いた放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が接続されており、この燃焼/圧縮装置303の内部の空気をこの放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15により清浄化することができるようになっている。この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15には包囲体301を貫通して排気管306が接続されており、この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15により清浄化された空気を包囲体301の外部に排気することができるようになっている。一方、包囲体301の一つの側壁は、所定の間隔をおいて互いに平行に設けられた外壁301aと内壁301bとからなる二重壁により構成されている。この二重壁の間の空間により気体流路12が形成されている。この内壁301bの下端と包囲体301の底面との間には所定の高さの通風孔(図示せず)が設けられている。この通風孔に合わせて放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が設置されており、この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の出口から出る空気がこの通風孔を通って気体流路12に入るようになっている。包囲体301の上壁の直ぐ下に均一流形成板16が設置されている。そして、包囲体301の上壁と均一流形成板16との間の空間に気体流路12が接続されるようになっている。このため、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の出口から出て空気は気体流路12を通って上昇した後、包囲体301の上壁と均一流形成板16との間の空間に入り、均一流形成板16の通気孔16aから包囲体301の内部に戻される。包囲体301の二重壁を構成する外壁301aの少なくとも一部は、ダスト微粒子を100%は通さないが、気体は通す隔壁(ガス交換膜)により構成されている。このため、包囲体301の内部の過剰な気体成分はこの隔壁(ガス交換膜)を通して外部に排出され、逆に包囲体301の内部の不足した気体成分はこの隔壁(ガス交換膜)を通して内部に供給されるため、包囲体301の内部と外部とで気体濃度を平衡に保つことができる。
包囲体301の壁および燃焼/圧縮装置303の壁は、除去しようとする放射性物質から放射される放射線の最大飛程あるいは吸収長のうち最も大きいもの以上の厚さを有する放射線遮蔽材料、例えば鉛、あるいはコンクリートなどにより構成されている。こうすることで、包囲体301の外部および燃焼/圧縮装置303の外部に放射線が放射されるのを防止することができる。また、図18には図示していないが、燃焼/圧縮装置303は外部に放射線が漏れ出ないように構成されているものの念のために、燃焼/圧縮装置303の内部および燃焼/圧縮装置303の外部近傍にも第1の実施の形態と同様な放射線モニターを設置して、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が正常に動作していることを常時観測しておくことが望ましい。
この第6の実施の形態によれば、放射性物質含有廃棄物、例えば、使用済み放射性物質含有ファンフィルターユニット、使用済み放射性物質含有塵埃フィルター、放射性物質を含有した各種の瓦礫などを燃焼/圧縮装置303の内部で燃焼あるいは圧縮することにより減容することができる。また、この減容処理の際に発生する放射性物質含有気体は放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15により除去しているため、放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が外部に放出されるのを防止することができる。さらに、包囲体301の内部の気体も放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15を通して外部に排出しているため、例えば、燃焼/圧縮装置303の開閉時に放射性物質および/または放射性物質含有微粒子を含む空気が包囲体301の内部に放出されても、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15により直ちに放射性物質および/または放射性物質含有微粒子を除去することができ、放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が外部に放出されるのを防止することができる。
〈第7の実施の形態〉
第7の実施の形態においては、放射性物質含有廃棄物減容処理システムについて説明する。
図19にこの放射性物質含有廃棄物減容処理システムを示す。図19に示すように、この放射性物質含有廃棄物減容処理システムにおいては、燃焼/圧縮装置303および放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の全体が包囲体307の内部に収容されている。包囲体307の壁および燃焼/圧縮装置303の壁は、除去しようとする放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線の最大飛程あるいは吸収長のうち最も大きいもの以上の厚さを有する放射線遮蔽材料により構成されている。こうすることで、包囲体307の外部、ひいては包囲体301の外部に放射線が放射されるのを防止することができる。また、図19には図示していないが、燃焼/圧縮装置303は外部に放射線が漏れ出ないように構成されているものの念のために、燃焼/圧縮装置303の内部および燃焼/圧縮装置303の外部近傍にも第1の実施の形態と同様な放射線モニターを設置して、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が正常に動作していることを常時観測しておくことが望ましい。その他のことは第6の実施の形態による放射性物質含有廃棄物減容処理システムと同様である。
この第7の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様な利点に加えて、包囲体301の外部に放射線が放出されるのをより確実に防止することができるという利点を得ることができる。
〈第8の実施の形態〉
第8の実施の形態においては、放射性物質含有廃棄物減容処理システムについて説明する。
図20にこの放射性物質含有廃棄物減容処理システムを示す。図20に示すように、この放射性物質含有廃棄物減容処理システムにおいては、燃焼/圧縮装置303および放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の全体が包囲体307の内部に収容されている。この場合、この包囲体307の一つの側壁は、所定の間隔をおいて互いに平行に設けられた外壁307aと内壁307bとからなる二重壁により構成されている。この二重壁の間の空間により気体流路12が形成されている。この内壁307bの下端と包囲体307の底面との間には所定の高さの通風孔(図示せず)が設けられている。この通風孔に合わせて放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が設置されており、この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の出口から出る空気がこの通気孔を介してこの気体流路12に入るようになっている。包囲体307の上壁の直ぐ下に均一流形成板16が設置されている。そして、包囲体307の上壁と均一流形成板16との間の空間に気体流路12が接続されるようになっている。このため、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の出口から出た空気は気体流路12を通って上昇した後、包囲体307の上壁と均一流形成板16との間の空間に入り、均一流形成板16の通気孔16aから包囲体307の内部に戻される。また、図20には図示していないが、燃焼/圧縮装置303は外部に放射線が漏れ出ないように構成されているものの念のために、燃焼/圧縮装置303の内部および燃焼/圧縮装置303の外部近傍にも第1の実施の形態と同様な放射線モニターを設置して、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が正常に動作していることを常時観測しておくことが望ましい。その他のことは第6および第7の実施の形態による放射性物質含有廃棄物減容処理システムと同様である。
この第8の実施の形態によれば、第7の実施の形態と同様な利点に加えて、包囲体307の内部の空気から放射性物質および/または放射性物質含有微粒子を除去して清浄化することができ、ひいては包囲体301の外部に放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が放出されるのをより確実に防止することができるという利点を得ることができる。
〈第9の実施の形態〉
第9の実施の形態においては、放射性物質含有水から放射性物質を除去するための水洗除染装置について説明する。
図21にこの水洗除染装置を示す。図21に示すように、この水洗除染装置は、密閉可能な水洗容器401を有する。水洗容器401の下部には、砂などを通さないが水は通す孔が開いたメッシュ板402が設置されている。水洗容器401の側壁の上部には配管403が接続されている。この配管403から除染を行う放射性物質含有水が水洗容器401内に供給されるようになっている。水洗容器401の側壁には注水管404が取り付けられており、この注水管404から水洗容器401内に水洗用の水を注入することができるようになっている。水洗容器401の底部の排水口には筐体405が接続されている。筐体405の内部に二段の放射性物質および放射線対応濾過フィルター406a、406bが取り付けられている。筐体405の上壁には、第1〜第3の実施の形態において用いた放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の筐体151と同様に、水を通すための開口および放射線遮蔽部材が設けられている。加えて、筐体151の下壁にも、水を通すための開口および放射線遮蔽部材が設けられている。筐体151の下部はドレーン407と接続されている。ドレーン407には開閉バルブ408を介して排水管409が接続されている。このドレーン407にはまた、第1の実施の形態と同様な放射線モニター410が取り付けられている。この放射線モニター410により、ドレーン407に溜まった水の放射線の強度を測定することができるようになっている。放射線モニター410は放射線遮蔽材料からなる筐体411により外側から覆われている。
水洗容器401、配管402、筐体405、ドレーン407、排水管409などは、除去の対象とする放射性物質から放射される放射線を遮蔽することができるように、除去しようとする放射性物質から放射される放射線の最大飛程あるいは吸収長のうち最も大きいもの以上の厚さを有する放射線遮蔽材料、例えば鉛や鉄鋼、あるいはコンクリートなどにより構成されている。こうすることで、水洗除染装置の外部に放射線が放射されるのを防止することができる。また、図21には図示していないが、筐体405は外部に放射線が漏れ出ないように構成されているものの念のために、筐体405の内部および筐体405の外部近傍にも放射線モニター410と同様な放射線モニターを設置して、放射性物質および放射線対応濾過フィルター406a、406bが正常に動作していることを常時観測しておくことが望ましい。
次に、この水洗除染装置の使用方法について説明する。まず、除染を行う放射性物質含有水を配管403から水洗容器401内に注入する。この放射性物質含有水には、水のほかに大小様々な各種の瓦礫が含まれている。水洗容器401への放射性物質含有水の注入と同時あるいは注入の前後に、注水管404から水洗容器401内に水を注入し、水洗を行う。このとき、放射性物質含有水に含まれていた瓦礫412はメッシュ板402上に留まり、放射性物質を含む水だけが、筐体405に入り、放射性物質および放射線対応濾過フィルター406a、406bを通ることにより放射性物質が除去される。こうして放射性物質が除去された水413がドレーン407に溜まる。開閉バルブ408を開いておくことによりドレーン407に溜まった水は排水管409に流される。このとき、放射線モニター410により、ドレーン407に溜まった水から放射される放射線の強度を測定する。この測定の結果、放射線の強度が予め設定された目標値以下であれば、除染が完了したと判断することができる。放射線の強度が目標値を超えていれば、排水管409に流した水の除染処理を放射線の強度が目標値以下になるまで行う。
使用後の放射性物質および放射線対応濾過フィルター203は、例えば、第4〜第8の実施の形態による廃棄物減容処理システムを用いて減容処理することができる。
以上のように、この第9の実施の形態によれば、瓦礫を含む放射性物質含有水を容易に除染することができる。また、この際、水洗除染装置の外部に放射線が放射されるのを防止することができ、除染作業を安全に行うことができる。
〈第10の実施の形態〉
第10の実施の形態においては、高清浄部屋システムについて説明する。
まず、この高清浄部屋システムで用いられる壁(間仕切り壁)について説明する。図22AおよびBは、この壁509を示す。図22Aに示すように、この壁509は、内壁509aと外壁509bとが一定距離を置いて互いに対向して設けられ、この2枚の壁が対向することによって壁の周縁部に形成された開口面4面を全て塞ぐようにして側壁509c〜509fが設けられている。さらに、内壁509a、外壁509bおよび側壁509c〜509fが隙間無く接合されることによって直方体が形成され、この内部に内部空間(中空部)509gが形成されている。また、内壁509aは閉空間である部屋501の居住空間に接して設けられる。この壁509を、例えば、高強度材で構成することによって、全体としては頑健な構造体でありながら外気を導入できる内部空間(中空部)509gを内包する。壁509を構成する側壁509dの両端部には、通気口511が設けられている。この場合、側壁509dの上端部に設けられた通気口511は外気の導入口(インレット)、下端部に設けられた通気口511は排気口(アウトレット)である。また、内壁509aの少なくとも一部はガス交換膜526によって構成されている。また、内部空間509gには、内壁509aと外壁509bとに挟まれるようにして、側壁509cと一定間隔を置いて互いに対向するようにしてC型断面鋼515aが設けられ、側壁509dと一定間隔を置いて互いに対向するようにしてH型断面鋼515bが設けられている。また、C型断面鋼515aおよびH型断面鋼515bは側壁509cおよび側壁509dに平行に設けられている。C型断面鋼515aおよびH型断面鋼515bは、例えば、ガス交換膜526の端部と接するようにして設けられることが好ましく、このようにして設けられることで部屋501を支える十分な強度を確保することができる。また、C型断面鋼515aと側壁509cとの間には、側壁509cの上端部とC型断面鋼515aの下端部とを結ぶようにして筋交い516が設けられている。また、H型断面鋼515bと側壁509bとの間にも、側壁509bの上端部とH型断面鋼515bの下端部とを結ぶようにして筋交い516が設けられている。これにより、部屋501を支えるのに十分な強度を確保することができる。また、C型断面鋼515aおよびH型断面鋼515bの柱材を構成する部材のうち、ガス交換膜526と直交する方向の部材の面には、孔515cが設けられ、この孔515cを通して、自由に気体が流れるよう構成されている。壁509はこのように構成されることで、通気口511を介して、壁509の内部空間である内部空間509gと側壁509dに隣接する廊下533などの家屋オープンスペースとの間で空気のやり取りをする。この空気のやり取りは、好適には、例えば、機械換気により、側壁509dの上端部に設けられた通気口511から強制的に外気(フレッシュエア)を導入し、側壁509dの下端部に設けられた通気口511よりこれを排気する。部屋501の居住空間に接する内壁509aにはガス交換膜526が設けられており、これにより、部屋501内部の空気と、内部空間509gの中の気体とを、気流の流れとしてのやり取りがないようにして隔てている。部屋501の居住空間と内部空間509gとの間で、直接の気流マスフローのやり取りはないものの、空気を構成するガス分子(酸素、窒素、二酸化炭素など)および、人の生活や活動と共に出るアンモニア等の微量化学物質は、上記ガス交換膜526の両側に濃度差が生じた場合には、濃度拡散が生じ、このガス交換膜526を介して当該分子を交換することで、この壁509の接する部屋501内部の空気を人が居住したり活動したりするのに適した環境に維持できる。また、ガス交換膜526を、ガス交換膜を織り込むことで得られる2次元状構造体に置き換えて構成することもできる。部屋501の構造を支える壁509の外壁509bを構成する部材は、例えば、厚みと強度の十分な板材である高強度材を用いることが好ましく、これに、断熱、防音機能を追加した材料を用いることがより好ましい。このように構成することで、壁509全体として、断熱、断音性能の高い構造体としての機能を担保する。一方、図22Bに示す壁509は、二つの通気口511が、上部側壁である側壁509eに設けられている。それ以外は、図22Aに示す壁509と同様な構成となっている。このように壁509を構成することにより、内部空間509gと壁509eと接する天井裏等の家屋オープンスペースとの間で空気のやり取りをすることができる。
ここで、内壁509aに設けられるガス交換膜526の面積について考える。ガス交換膜526(あるいは2次元状構造体)の面積をAとすると、閉空間である部屋501の居住空間の体積をV、部屋501の居住空間内部の酸素消費レートをB、外界と平衡状態にあり部屋501の居住空間内部で酸素消費の無い時の酸素体積をVO2、ガス交換膜526(あるいは2次元状構造体)の酸素の拡散定数をD、上記居住空間内における目標酸素濃度をη(η>0.18)とした時、ガス交換膜526(あるいは2次元状構造体)の面積Aが、少なくとも
を満たすように、ガス交換膜526が設定されている。ガス交換膜526を、例えば、2次元状構造体に置き換える場合において、2次元状構造体が、例えば、九十九折りのような折りたたまれた構造(複数の曲面および/または平面を有する構造)を有する場合には、その構造を引き伸ばし、展開した際の2次元的面積を面積Aとする。これにより、この壁509と接する部屋501の酸素濃度は、目標値であるη以上に保つことができる。
上述のように、外壁509bと内壁509aとを一定距離を置いて互いに対向するようにして設け、その開口面を塞ぐようにして側壁509c〜509fを設け、内壁509aの少なくとも一部をガス交換膜526で構成することで壁509を構成しているので、これらの外壁509b、内壁509aおよび側壁509c〜509fを高強度材などで構成することによって、全体としては頑健な構造体でありながら外気を導入できる内部空間(中空部)509gを内包する構造とすることができる。また、この壁509の内壁509aを閉空間である居住空間を形成する部屋501に接するようにして設けることで、この壁509を壁全体として、十分な強度、断熱および断音性能の高い構造体としての機能を担保しつつも、部屋501の居住空間と壁509の内部空間509gとの間で、直接の気流マスフローのやり取りをすることなく、気体分子のやり取りをすることができる。つまり、空気を構成する気体分子(酸素、窒素、二酸化炭素など)および、人の生活や活動と共に出るアンモニア等の微量化学物質が、ガス交換膜526が仕切る空間の両側において濃度差が生じた場合に、濃度拡散が生じ、ガス交換膜526を介して当該分子を交換することで、この壁509が接する部屋501の内部の空気を人が居住したり活動したりするのに適した環境に維持することができる。
図23は第10の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。
図23に示すように、この高清浄部屋システム510は、互いに異なる二つの独立な部屋が隣り合って構成されている。図23は、これらの部屋の内部構成を透視して示している。隣り合う部屋のうち、図面右側には部屋501a、左側には部屋R1 が設けられている。図23において、一点鎖線で表される部屋R1 は仮想的な部屋であって、部屋501aと独立した構成を有していればその構成は限定されない。また、図23中、破線部は、部屋501a内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501aの内部の構成は実線で示している。
部屋501aは直方体形状を有し、高清浄部屋システム510において最も外側の構造であり、閉空間を形成している。この閉空間を構成する部分空間として居住空間506と天井裏505とを有する。天井裏505は、2重天井によって形成される内部空間である。この2重天井は、部屋501aの頂面と、この頂面から一定距離を置いて互いに対向するようにして設けられた天井壁502aとによって構成されている。即ち、居住空間506と天井裏505とは、天井壁502aによって隔てられている。居住空間506を構成する側壁のうち、図中向って右側の壁509が、第1の実施の形態で示した壁509と同様な構成を有しており、第1の実施の形態で示した壁509の内部空間509gと同様な構成を有する内部空間507を内包している。具体的には、一定間隔をおいて互いに平行に設けられた外壁509bと内壁509aとによって構成された二重壁により内部空間507を内包する壁509が構成されている。図22Aに示した壁509を構成する側壁509c〜509fは部屋501aを構成する側壁502e、側壁502c、天井壁502aおよび床壁502gによって構成される。この内部空間507には気体流路524が設けられ、内壁509aの少なくとも一部には開口523が設けられている。この開口523は、天井壁502aの天井裏505側の面上に設置された、ファンフィルターユニット521の吸入口に対応している。ファンフィルターユニット521としては、第1の実施の形態で用いた放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15と同様なものが用いられる。開口523は、例えば、複数有していてもよい。内部空間507の厚み、即ちここでは内壁509aと外壁509bとの距離は、具体的には、例えば、5cm以上40cm以下であることが好ましく、10cm以上20cm以下であることがより好ましい。居住空間506と内部空間507とを隔てる、壁509の内壁509aには、ガス交換膜526が張られている。このガス交換膜526はダスト微粒子は通さず気体分子は通すようにして構成されており、居住空間506と内部空間507との隔壁である内壁509aの一部を構成している。ガス交換膜526は、居住空間506が、例えば、和風あるいは和室様であれば、障子紙を利用することが好適である。ダスト微粒子は通さず気体分子は通す能力を持つ壁構造は、例えば、内壁509aに居住空間506と内部空間507とを連通させる開口部を設け、然る後、ガス交換膜526を、この開口部を完全に塞ぐように貼り付けることで得られる。また、ガス交換膜526はガス交換膜を織り込むことで得られる2次元状構造体とすることもできる。また、壁509の内壁509aによって隔てられた居住空間506内と内部空間507内とにおいて流れる空気の方向が一致するように構成することが好ましく、また、流れの速さも一致するように構成することが好ましい。この構成としては、例えば、居住空間506内に送風機を設けることが好ましい。このように構成することで、ガス交換膜526によるガス交換をスムーズに行うことができる。また、居住空間506内には、部屋501aの左奥隅を構成する側壁502bおよび502eと、これらの側壁に互いに対向して設けられた側壁519aおよび519bと、天井壁502aとによって囲まれた閉空間であるユーティリティースペース519を有する。このユーティリティースペース519は、例えば、トイレやお風呂、洗面台などに利用される。
ファンフィルターユニット521が設けられる部分の天井壁502aには、ファンフィルターユニット521の吹き出し口に対応する開口が設けられ、この開口とファンフィルターユニット521の吹き出し口とが気密性を持って接続されることによって吹き出し口522が形成されている。この吹き出し口522とファンフィルターユニット521の吹き出し口とは、気密性よく一体化されている。ファンフィルターユニット521の吹き出し口から気流が出射されることで居住空間506へ清浄気体が供給される。また、ファンフィルターユニット521は壁509の内部空間507の内部にも設置することができる、
壁509内に形成された内部空間507においては、ガス交換膜526の面から、壁509の厚みの半分程、例えば、5cm以上10cm以下の長さで後退させて、開口523とファンフィルターユニット521への気体流入口とを気密性を持って連通する気体流路524が設けられている。これにより、ガス交換膜526の両側に十分な気体の存在が可能な体積を確保することができる。気体流路524は、例えば、5cm以上15cm以下の厚みで、幅約90cmのダクト構造とする。開口523は、居住空間56内部の空気を気体流路524内部へ導入する吸入口である。開口523から入った気体は気体流路524を通ってその全量が、ファンフィルターユニット521の吸入口へ還流する。こうして、100%循環フィードバック系が完成する。一つの壁509の内部空間507をして、ガス交換能力と100%循環フィードバック系を構成する気体流路の格納の二つの機能を備えさせることで、内部のスペースを有効利用できる。ファンフィルターユニット521は、一般に、居住空間506に付属する100%還流路のどの場所にあっても良く、上述の天井配置のみならず、例えば、壁509内部に床置きの形で格納することもできる。このようにして、図23に示す状況から明らかなように、従来の住宅の部屋に比べ何ら狭小化することなく、極めて清浄な部屋システムを構成することができる。
天井裏505と内部空間507とは、内部空間507を構成する天井壁502aに開口が設けられることで連通して構成されている。天井裏505に接する側壁502eには通気口511aが設けられている。部屋501aの居住空間506に接する側壁502eには、人間が居住空間506と外部空間とを出入り可能な出入り口508を有しており、例えば、廊下(図示せず)と居住空間506との間を自由に行き来することができる。また、内部空間507に接する側壁502cには通気口511bが設けられている。この通気口511aおよび511bが外気導入のインレットとアウトレットの役目を果たす。これは、例えば、通気口511aから流入するフレッシュエアは、天井裏505を経由して、部屋501aの壁509の内部空間507へ導入される。ガス交換膜526を介して、居住空間506などで発生した二酸化炭素は、内部空間507側へ、また、酸素は、壁509の内部空間507から、酸素が消費される居住空間506側へと濃度拡散され、以って、ガス交換がなされる。ガス交換後の空気は、通気口511bから排出される。また部屋で発生したガスや化学物質分子も同様にして、壁509の内部空間507を経由して外部へ排出される。通気口511aと通気口511bとのインレットとアウトレットの役目は、建物全体の送風機構により逆転させることもできる。即ち、通気口511bを経由して外部からフレッシュエアを導入し、通気口511aを経由して上外部へ汚れたエアを放出することもできる。また、通気口511aが複数設けられている場合にあってはインレットとアウトレットとの組み合わせは適宜選択することができ、通気口511bも同様に適宜選択することができる。また、天井壁502aに開口を設けないことで天井裏505と内部空間507とは連通しないように構成することもでき、その場合には通気口511aと通気口511bとを完全に独立した通気口とすることができる。
天井裏505と内部空間507との連通の有無に関わらず、壁509中の内部空間507と居住空間506との間で、ガス交換膜526を介して気体分子のやり取りがされる。すなわち、酸素や二酸化炭素、あるいは生活臭の元となる化学物質分子が、ガス交換膜526が隔てる内外の濃度差に応じて濃度勾配による拡散が行われ、居住空間506の内部の空気を生活・活動に好適なものに保つことができる。ガス交換膜526の面積は、平坦な障子紙様の2次元膜(障子紙)を利用する場合、例えば、135cm×135cmとすると良い。ファンフィルターユニット521の吹き出し口522から空気が下向きに吹き出されることで居住空間506に空気が供給される。居住空間506内における空気中の塵埃を下方へと押しやると共に、内部空間507を形成する壁509の内壁509aの下部に設けられた開口523から、開口523とファンフィルターユニット521の吸入口とを気密性を持って連通する気体流路524に流入し、この気体流路524を通って、ファンフィルターユニット521へ全量が還流する。このようにして、ファンフィルターユニット521から居住空間506内部へ流出する気体の全部が、ファンフィルターユニット521へ還流するよう構成されることで100%循環流路が完成する。また、上述したように、部屋501aの側壁の少なくとも一つを上述の壁509で構成することによって、この壁509に内包された内部空間507に、ガス交換と100%循環フィードバック系を構成する気体流路の格納との両方の機能を備えさせることできる。これにより、部屋501a内部のスペースを有効利用でき、従来の住宅の部屋にくらべ、何ら部屋を狭くすること無く、外見上も部屋 側面にはめ込み式の障子様デザインを持った部屋として極めて自然に超高清浄環境を実現できる。この側壁に設けた障子様のガス交換膜526の裏に照明器具を設置することで、壁自体が光る間接照明の役を果たすことも可能で、この場合、壁509は一人3役の高機能壁として機能する。
また、塵埃除去のみならず、臭い等も分解したい場合には、光触媒561を気体流路524の中に設けるとよい。光触媒561は、光触媒単体の他に、例えば、光触媒と塵埃フィルターとを組み合わせたものであってもよい。光触媒561は、例えば、気体流路524の内部に設けられ、この実施の形態においては、例えば、ファンフィルターユニット521の塵埃フィルターの上流にファンフィルターと直列に設けられるが、この設置形態に限定されるものではない。この光触媒561は、この高清浄部屋システムの下では、殆ど無塵状態の中で作動するので、目詰まりの問題から開放され、本来の光触媒機能のみに特化したオペレーションが可能で、光触媒機能が極めて長く維持されることになる。光触媒装置は、一般に利用されている、シャープ株式会社製のプラズマクラスター(登録商標)やパナソニック株式会社製のナノイー(登録商標)等の機能性装置と同じく、本発明の100%循環システムと極めて相性のよいシステムといえる。
この第10の実施の形態によれば、部屋501aの側壁の少なくとも一つを上記の壁509で構成したので、壁509を用いることによる既に述べた利点を得ることができるとともに、一つの内部空間を、ガス交換と100%循環フィードバック系を構成する気体流路の格納との両方の機能を備えさせることで、部屋501a内部のスペースを有効利用でき、従来の住宅の部屋に比べ何ら狭小化することなく、高清浄化システムの基幹部分を埋め込むことができる。また、100%還流路を一つしか設ける必要が無いので、簡便に高清浄部屋システムを低コストで構築することができるという利点を得ることができる。部屋501aの出入りの頻度が少なく、相対的に居住空間506の内部に滞在する時間が長い場合に、好適なシステムとすることができる。
〈第11の実施の形態〉
図24は第11の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。
図24に示すように、この高清浄部屋システム510は、隣り合う部屋のうち、図面左側には部屋501b、右側には部屋R2 が設けられている。図24において、一点鎖線で表される部屋R2 は仮想的な部屋であって、部屋501bと独立した構成を有していればその構成は限定されない。また、図24中、破線部は、部屋501b内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501bの内部の構成は実線で示している。
高清浄部屋システムについては、第10の実施の形態において示した高清浄部屋システムよりも更なる高性能を求めるニーズが高まることも起こりうる。例えば、病院における免疫不全治療、養護老人ホームにおける、より完全な感染症予防、一般家庭における自宅療養の際などに適用される場合である。このときは、例えば、病室、養護室となる居住空間506と戸外や廊下との間で出入りするその瞬間にも、この空間の清浄度を劣化させない工夫が必要である。そのためには、第10の実施の形態の部屋501aの構成を利用しつつ、更に追加の構成を導入する。
即ち、部屋501bは、第10の実施の形態において示した部屋501aを構成する側壁である壁509と対向する側壁を、壁509と同様に構成された内部空間512を内包する壁513としたものである。即ち、部屋501bを構成する側壁のうち、出入り口508を有さない側の、互いに対向する側壁のいずれもが内部空間を内包する壁509および壁513で構成され、壁509に内包される内部空間507と壁513に内包される内部空間512とは互いに独立している。また、壁513および内部空間512の構成は、壁509および内部空間507と同様な構成とすることができる。部屋501bは図中向かって左手の壁が、上述の壁509と同様な構成を有する壁513で構成されており、この壁513は、外壁513bと内壁513aとによって構成されている。壁513は第2の内部空間である内部空間512を有しており、この内部空間512はガス交換膜526を介して居住空間506に隣接する空間となっている。内部空間512の厚みは、具体的には、例えば、5cm以上40cm以下であることが好ましく、10cm以上20cm以下であることがより好ましい。これは、後述するように、内部空間512内には気体流路524を内部に格納しなくて良いので、内部空間512の厚みを15cm以下という薄い構造とすることもできる。
内部空間507内部に設けられる気体流路524は内壁509a上に設けられていてもよい。これは、内壁509aの一部をガス交換膜526で構成していないからである。また、壁509および壁513は、壁そのものを気体流路とすることもできる。ただし、壁そのものを還流路とする場合には、壁509に設けられている通気口511bは閉じておく。また、気体流路524の厚みは、上述したものと同様に5cm以上10cm以下であることが好ましいが、内部空間507の厚さまで、気体流路524の厚みを厚くして断面流量を向上させ流れのコンダクタンスを上げることもできる。壁513の内壁513aの一部はその一部がガス交換膜526で構成されている。
また、天井裏505と、二重壁によって構成される内部空間507と内部空間512とは、天井裏505を介して互いに連通していてもよいし、していなくともよい。また、内部空間507および内部空間512は、いずれか一方が天井裏505と連通していてもよい。内部空間507および512への外気の導入は第10の実施の形態と同様に行うことができ、通気口511aおよび511bのインレットおよびアウトレットの組み合わせは用途によって適宜選択することができる。例えば、部屋501bでは、天井裏505に接する側壁502eに設けられた二つの通気口511aをインとアウトのペアにしているが、上述したように、例えば、通気口511aを共にインとして、アウトは側壁下部の通気口511bに担わせるということも可能である。
居住空間506の部分空間である前室540は、出入り口508に対向するように間仕切りが設けられることで形成される。具体的には、出入り口508を有する部屋501bの側壁502eと、壁513の内壁513aと、ユーティリティースペース519の隔壁519bと、天井壁502aとで囲まれる空間の開口面を塞ぐようにして引き戸547が設けられることで構成される。この引き戸547が間仕切りとして機能する。また、引き戸547は、当該開口面を塞ぐようにして設けられた間仕切り壁の一部に設けられる構成を有していてもよい。また、居住空間506の前室540以外の空間は主室520を構成している。即ち、引き戸547は、前室540と主室520とを仕切る間仕切りの機能を有する。引き戸547を開く時は、ユーティリティースペース519を構成する側壁519aに沿って開くよう設定し、引き戸547の開閉に伴って、無用のデッドスペースの発生がないように配置する。引き戸547が開いたときは、前室540と主室520とは連通するが、引き戸547を閉じることで前室540と主室520とは完全に隔絶される。また、この引き戸547の主面の少なくとも一部は、ガス交換膜526で構成されることが好ましい。ガス交換膜526としては、例えば、障子紙あるいは障子紙様の濾布や不織布フィルター材を選ぶことで、日本古来の書院造りの趣をかもし出しながら、引き戸547にガス交換能を付与することができる。ガス交換膜526を引き戸547に設ける場合には、具体的には、例えば、引き戸547に裏表両面が連通した開口を設け、この開口全体を完全に塞ぐ形態でガス交換膜526を張る。このように構成することで、前室540の内部と外部との間において気流としての出入りが無くても前室540の内部と外部とにおいてガス交換を行うことができる。
前室540を形成する図中左手の壁は壁513によって構成されている。前室540と壁513の内部空間512とを隔てる内壁513aには、ガス交換膜526が張られており、このガス交換膜526が内壁513aの一部を構成している。また、この内部空間512には、ガス交換膜526と平行に、この膜から、内壁513aと外壁513bとの距離の半分程度の距離、即ち5cm以上20cm以下の距離を後退して、気体流路543が格納されている。気体流路543は、内壁513aの最下部に設けられた開口546と、天井裏505の内部の天井壁502a上に設けられたファンフィルターユニット544の気体流入口とを気密性を持って連通している。ファンフィルターユニット544は、前室540内部に気体が送り出されるように吹き出し口545に接続されている。吹き出し口545は、吹き出し口522と同様に構成される。気体流路543は、気体流路524と同様にして構成することができるが、例えば、矩形断面のダクトの使用の他、蛇腹パイプを複数並列して連結することが挙げられる。気体流路543は気密性を持って開口546に接続される。前室540内部の空気は、開口546を通じて気体流路543内部へ導入され、その全量が吹き出し口545から前室540の内部に再び戻る。
また、より簡便なタイプとして、この前室540内部の内壁513aに設けられたガス交換膜526を省き、引き戸547を構成するガス交換膜526(障子紙)の機能により代替させることが可能である。気体流路543は、内部空間512の内部に、内部空間512と隔絶して構成されてさえいればよく、例えば、単純に、上記の蛇腹パイプで連結するということでも実現できる。また、この実施の形態では、ガス交換能をできるだけ付与するべく、主室520を構成する天井壁502aの少なくとも一部やユーティリティースペース519を構成する天井壁502aの少なくとも一部などもガス交換膜526で構成されるが、ガス交換膜526の設置の有無や、設置する面積などは、部屋内部の酸素等使用量に応じて適宜設計、選択することができる。
次に、この高清浄部屋システム510の動作について説明する。廊下などの外部空間から、出入り口508を経て入る人は、一旦前室540において、例えば、数十秒〜数分待った後、引き戸547を開けて主室520へ入る。こうすることで、居住するスペースの清浄度を一切劣化させること無く、入ることができる。一方で、人間などが退出するときも、主室520から前室540に入った後、引き戸547を閉じ、然る後、出入り口508から外部へ出ることで、主室520の清浄度を一切劣化させること無く、廊下・戸外へ出ることができる。その他のことは、第10の実施の形態と同様である。
〈実施例〉
第11の実施の形態による高清浄部屋システムは、新築の建築物、例えば、家屋、ビル等は勿論のこと、既存の建築物の改築等にも対応できる。この実施例においては、一般的な家屋の部屋に高清浄部屋システムの機構を組み込み、高清浄部屋システム510とした。
図25は高清浄部屋システムの機構を組み込む前の部屋を示した上面図である。
図25に示すように、部屋501は3600mm四方で、高さ約2300mmの直方体形状を有する。また、この部屋501の廊下(図示せず)に面した側壁のうち一方の角部に接する部分には出入り口508が設けられている。また、もう一方の角部には、部屋501内に幅1800mm、奥行き900mm、高さ2300mmの直方体の収納部519cが形成されている。この空間を、上記に示した、この第11の実施の形態のユーティリティースペース519に相当する一角とみなせば、本実施例は、新築の住宅などに高清浄環境システムを適用するモードであるこの第11の実施の形態と同等の性能を、既に極普通に一般に存在する住宅などの部屋を改築して高清浄環境システムを適用するモードで実施することができる。つまり、部屋501は、出入り口508を有する部屋501の一角に収納部519cというユーティリティースペース519を有するとみなすことができ、例えば、第10の実施の形態において示した部屋501aと同等な空間とみなすことができる。そして、この部屋を改築することによって、高清浄部屋システム510の構成を付与し、この第11の実施の形態で説明した高清浄部屋システムと同等の性能を、既に、ごく普通に一般に存在する住宅などの部屋に対して適用することができる。ここで、部屋501の内部の構成について説明する。部屋501の出入り口508が設けられた側面と対向する側面には、幅1690mm、高さ1170mmの窓部554が設けられている。部屋501内の収納部519c以外の空間である居住空間506は、大きさの異なる二つの直方体空間が連結されることで構成されている。この二つの直方体空間のうち、一方は、収納部519cの側壁519bと、側壁502bのうち側壁519bに互いに対向する部分と、側壁502cのうち側壁519bと側壁502bとに挟まれる部分とによって囲まれる直方体空間であって、出入り口508から居住空間6に入って直ぐのスペースである。この直方体空間の具体的な寸法は、奥行き×幅×高さ=900mm×1800mm×2300mmである。また、この直方体空間は、以下に述べる改築の後、前室540と内部空間557とを構成する。また、他方は、側壁502eと収納部519cの側壁519aと、側壁502dのうち側壁502eと側壁519aとに挟まれる部分と、この側壁502dの部分と対向する側壁502bの部分とによって囲まれる直方体空間であって、部屋501の窓側のスペースである。この直方体空間の具体的な寸法は、奥行き×幅×高さ=2700mm×3600mm×2300mmである。この直方体空間は、以下に述べる改築の後、主室520と内部空間512とを構成する。
図26は、高清浄部屋システムの機構を組み込んだ後の部屋501を示した上面図である。また、図27は、側壁502b側から見た断面図(透視図) である。図28は、側壁502c側から見た断面図( 透視図) である。
図26〜図28に示すように、部屋501の内部には居住空間506が形成されている。改装後は、上記の二つの直方体空間が間仕切り541と引き戸547とによって間仕切りされることで、居住空間506は主室520および内部空間507とを有する空間と、前室540および内部空間557を有する空間とに分割される。また、ファンフィルターユニット521の収納部550は、部屋501の天井壁527と平行にパネルを設け、天井壁527と当該パネルとで形成される空間を気密性を持って囲むことでファンフィルターユニット521と気体流路524とが収納されたファンフィルターユニット収納部550が形成される。また、側壁(在来壁)502dから約15cm離間して、平行に壁509aを設置することで、側壁(在来壁)502dと内壁509aとが一体となった中空壁である壁509となる。この壁509は図22AおよびBに関連して説明した構成を有していることが好ましい。側壁502dの厚みが約10cmで、内壁509aの厚みが約0.6cmであるので、内部空間を有する二重壁である壁509の全体の厚みは、約26cmとなる。また、上記構成により、この新たな壁509が有する中空スペースであるところの内部空間507の厚みは15cmとなる。また、側壁502bと、出入り口508を有する側壁(在来壁)502cと、側壁(在来壁)502bに対向する部屋501の側壁(在来壁)519bと、間仕切り541と、引き戸547とで囲まれて成る空間は、隔壁556で間仕切りされることで、前室540と内部空間557とに分割される。隔壁556は、側壁502cのドア508側の端部と間仕切り541との間を塞ぐようにして側壁(在来壁)519bと対向して設けられる。前室540は、人が外部空間から部屋501に入る場合に最初に入る空間である。一方、内部空間557は、前室540における100%循環フィードバック流路を格納する空間となる。
引き戸547は、間仕切り541の面上をスライドするようにして設けられ、引き戸547が閉鎖される場合においては、主室520と前室540とを形成するそれぞれの空間とは完全に隔絶される。また、引き戸547の開放時には、引き戸547は、スライドすることで主室520の間仕切り541の主面上の位置に移動する。また、引き戸547は、閉鎖時において前室540が気密性を保つようにして構成されている。また、間仕切り541および引き戸547は、側壁519aと同一平面上に設けられることで、主室520にできるだけ凹凸の無いように設定することが、デッドスペースを減少させ、居住性能も高まるので、望ましい。出入り口508と引き戸547との両方が閉鎖されると前室540は、塵埃微粒子の出入りの無い密閉された状態となる。外部から部屋501へは出入り口508を開けることによって入ることができる。天井裏505内の天井壁502aには、ファンフィルターユニット544が設けられている。前室540においては、壁556の最下部にファンフィルターユニット544の吸入口に対応した開口546が設けられ、ファンフィルターユニット544の吹き出し口545から前室540の内部に流出する気体の全部が、開口546を通過し、ファンフィルターユニット544の吸入口と開口546とを気密性を持って連通する気体流路543を通って、ファンフィルターユニット544へ還流することで、100%循環フィードバック系が構成されている。
内壁509aは、上述の通り、部屋501の側壁502dに一定間隔をおいて平行に設けられており、壁509は、主室520にガス交換膜526を介して接する空間507を内包している。壁509は、その端面に気流のインレットとアウトレットとを有しており、内部空間507と外部空間である廊下とは、パイプ555aおよび555bによって接続されている。このように、外部空間と内部空間507との間で気体が交換可能となることで、内部空間507が外気導入空間として機能する。パイプ555aは吸入口511cを有するインレットパイプであり、パイプ555bは排出口511dを有するアウトレットパイプとなる。その外径は10cmである。また、吸入口511cおよび/または排出口511dには、例えば、機械換気装置を設けることが望ましい。この機械換気装置は、具体的には、例えば、主室520内の空気が2時間で1回転以上する程度の風量生成能力を有するものが好ましい。2時間で1回転とは、2時間で主室520内の空気が全て換気されるということである。内壁509aの少なくとも一部はガス交換膜526である障子紙で構成されている。これにより、主室520は、一般の壁材あるいはガス交換膜526を一部に含む側壁で囲まれた閉空間となり、内部空間507と外部空間との間において気流としての空気の出入りが無いが、主室520と、外部に連通した内部空間507との間で気体分子の交換をすることができる。これにより、主室520と、外部に連通した内部空間507との間において、空気を構成するガス成分に濃度差がある場合に、ガス交換膜526を介して、内部空間507と主室520との間において気体を構成するガス分子や、部屋内部での生活や作業に付随して発生する、部屋の空気中に含まれる種々の分子の濃度拡散が生じ、主室520の空気の構成ガス成分は、その濃度が外部のそれと平衡に達する様に移動する。即ち、主室520内の酸素濃度が下がれば、内部空間507よりガス交換膜526を介して、酸素が供給され、主室520内の二酸化炭素濃度が上がれば、内部空間507よりガス交換膜526を介して二酸化炭素が排出される。また、主室520内にて、種々の臭いや化学物質が発生した場合は、その元となる分子は、上記の機構に従って、外界に排出される。
また、主室520には、ファンフィルターユニット521と気密性を有する気体流路524とで構成された100%循環フィードバック系が接続されている。主室520と内部空間507とを隔てる内壁509aには、100%循環フィードバック系を構成する吸入口である開口523が設けられている。開口523から吸引された気体は、開口523とファンフィルターユニット521との間を気密性を持って連通する気体流路524を通って、ファンフィルターユニット521の吸入口に入り、その内部で濾過された後、吹き出し口522を経て、主室520に押し出(排出)され、この空気が部屋内部の塵埃を取り込みながら、再び、開口523へ戻ることにより100%循環フィードバック系が形成される。気体流路524は、本実施例では、直径約10cmの蛇腹パイプである。また、これらの図26〜図28において示したこの実施例は、コンセプトを示すに留め、厳密に寸法や距離をスケールして描いていないが、気体流路524は、ガス交換膜526からは約5cm後退し、壁502dにほぼ接する形となっている。また、主室520と内部空間507とを隔てる内壁509aの少なくとも一部をガス交換膜526の一つの例である障子紙で構成することで、内壁509aによって内部空間507と主室520との間で気体の交換が可能となる。
また、出入り口508によって外部空間と前室540との間で出入りがあった際には、出入り口508と引き戸547とを両方とも閉めた状態で、前室540内の清浄化を行う。具体的には、前室540を閉空間とした後に、上述のファンフィルターユニット544を用いた100%循環フィードバック系を運転することにより行う。また、後述する図39、図40に示すように、ファンフィルターユニット544の運転から40数十秒〜数分の後には、前室540の清浄度が格段に高まるので、この後、引き戸547をあけて、前室540から主室520に入ることができる。また、引き戸547は、少なくとも一部を障子紙等ガス交換能を持つ膜で構成することにより、主室520と前室540との間で気流としての空気の出入りが無くとも上述の気体ガス成分のやり取りをすることができる。
図29は、この実施例による高清浄部屋システム510の完成した姿を示した、デジタルスチルカメラによって撮影された写真である。図29に示すように、奥の壁である壁509がこの実施例において示した壁509であり、この壁509を側壁の一つとして組み込んだ部屋501の主室520内部の写真となっている。窓部554を有する部屋501には、天井部に収納部550に格納されたファンフィルターユニット521と気体流路524とが設けられ、吹き出し口522より清浄エアが下方へ射出される。壁509は主室520と内部空間507とを隔てる内壁509aを有し、壁509aにはファンフィルターユニット収納部550が延びて接している。内壁509aの一部は、135cm×135cmの面積を持つ、ガス交換膜526となっており、ガス交換膜526である障子紙で構成されている。また、壁509aの下端部には、吸入口である開口523が設けられている。この開口523には、気体流路524内に大きなごみが侵入しないように網が設けられている。
障子紙面積の決定(order estimation)は、以下の考察に基づく。ガス交換膜526として用いる障子紙は、市販の民生用、汎用品(株式会社アサヒペン製の無地障子紙)であり、通気度等の物性値は提示されていない。そこで、使用する障子紙の通気度を、非特許文献3に示された濾布の通気度の典型的な値の中でも、控えめに見積もった値[〜1l/(dm2 ・min)]:200Pa)を有しているものとして用いる障子紙の形状、大きさなどを設計をし、その面積を決定した。これは、後で述べる様に、実際に主室20の中に人が入って実験を行うので、通気度を控えめに見積もり、面積Aを大きめに設定することは、安全性の面からも好ましいからである。また、上記に示した、式(12)の第2項が、単位時間当たり、ガス交換膜を介して拡散して来る酸素分子の占める体積F(単位は、例えば[m3 /min])を示しているので、これを濃度差の関数としての式から、圧力(分圧)差の関数としてのものとして勘案し、上記、通気度が単位時間、単位面積当たり、当該圧力差において拡散して来るガス分子の占める体積であることを踏まえると、上記において示した式(12)に現れる、ガス交換膜のD/Lを、通気度から算出することができる。安全性の面からターゲット酸素濃度η=20.8%と設定すると、ガス交換膜526の面積Aの満たすべき条件は、
となる。また、式(18)の中途導出式に示すように、D/Lは同式における分母の前係数に相当し、上記通気度の値を基に、約5[m/min]と算定される。
また、ガス交換膜526を、写真に示すように、木枠で格子状に構成された障子窓とすることにより、主室520内部を極めて高い清浄度とすることができるにもかかわらず、主室520に和風の雰囲気を醸し出すことができる。また、内壁509aの最下部に設けられた開口523へは、ファンフィルターユニット521の気体流入口とを気密性を持って連通する気体流路524が接続され、同流路が内部空間507内を走っている。このように、高清浄部屋システム510は、従来の部屋空間と比較しても何ら違和感なく、和風の外観を伴いながら、同時に極めて高い清浄度を達成することができる。
上記に示したような、主室520と前室540とを連結する構成としては、上記のような例に限らず、例えば、日本伝統の和室や和風旅館の部屋が挙げられる。日本伝統の和風旅館の部屋は、入り口を入ると障子等で奥の部屋(主室520)と仕切られた、所謂、踏み込み(靴・下駄脱ぎスペース)がある。このスペースに上記の前室540の構成を導入することができる。靴を脱ぐことは、まさに、奥の主室520に塵埃を持ち込まない、日本古来の知恵であるが、これに本発明の清浄技術を加えることで、名実共に、日本和室は、世界最高級の清浄度を、伝統の姿を全く失うことなく、世界に冠たる姿を持って指し示すと共に、実用に供することができる。また、日本伝統の住居などであれば、外部を外気導入空間である内部空間507への外気導入源とし、三和土スペースを前室540とし、奥の室を主室520とすることができる。また、近代日本の部屋(マンションなどの部屋)などであれば、外部を外気導入空間である内部空間507への外気導入源とし、玄関スペース(靴・下駄脱ぎ)を前室540とし、奥の室を主室520とすることができる。また、欧米式の一戸建ての住居などであれば、廊下や外部を外気導入空間である内部空間507への外気導入源とし、日本式に玄関スペース(靴・下駄脱ぎ)を新たに設け、前室540とし、残りの部屋スペースを主室520とすることで、花粉症等の対策を打つことができる。
次に、この実施例による高清浄部屋システム510の動作について説明する。まず、主室520内に備えられているファンフィルターユニット521を単独で運転した場合の主室520内の空気清浄度の変化について説明する。
図30は、主室520内に備えられた100%循環フィードバック系を構成するファンフィルターユニット521を運転した場合についてのダスト粒子数の時間変化を、短い時間スケールにおいて示した略線図、図31は、同時間変化を長い時間スケールにおいて示した略線図である。
図30および図31に示すように、ファンフィルターユニット521の運転開始時は、粒径が0.5μm以上の塵埃の総和が10万個/立方フィートを超え(US209Dクラス10万)、0.3μmの以上の塵埃の総和は、立方フィート当り100万を超える、極めて塵埃粒子数の多い、決して清浄とはいえない環境である。ファンフィルターユニット521の運転開始後は、主室520内の塵埃の粒子数が、運転開始からおよそ5分で1000個程度まで減少し、10分を超えたあたりで、1立方フィートあたり100個以下、即ち、US209Dクラス100以上の良好な清浄度となる。さらに、特に図31に示すように、運転開始から10時間程度経つと、粒径0.5μm以上の塵埃の総和は勿論、0.3μmの以上の塵埃の総和までもが、0カウントを呈することが示された。ここで、図31において示した略線図の縦軸は、対数プロットを行っているため、測定値ゼロは(縦軸、下方無限遠に飛ぶことから)プロットすることができない。よって便宜上、ここでは、測定で得られたゼロカウントは、便宜上、0.01のところにプロットした。また、粒径とは一次粒子の平均粒径のことをいう(以下同様。)。この結果は、US209Dクラス1級の、高品位半導体工場などで用いられているスーパークリーンルームの清浄度に匹敵し、本実施例において示したような極普通の一般家庭風の外観を持つ部屋で達成できる清浄度としては、世界初であり、日常生活環境上の視覚的な親和性と超高清浄環境の両立ということで、極めて意義深いことと考えられる。
次に、主室520内に人間が滞在することなどによって酸素が消費される場合について説明する。図32は、主室520内において酸素を消費する実験を行った様子を示した図面代用写真である。図32に示すように、主室520内においてカセットコンロによってブタンガスを燃焼させ、さらに、主室520内に人間を2人滞在させることにより、室内の酸素を消費しつつ、主室520内の酸素濃度を計測した。
図33Aは、この実験の開始から80分までのブタン(C4 H10)ガス燃焼量と、主室520内の酸素濃度とを示した略線図である。図33Bは、図33Aのグラフにおける酸素濃度の変化を20%付近において拡大して示した略線図である。
ブタンの燃焼反応の反応式は下記の通りである。
反応式(1)より、ブタンが1モル58g、酸素は同32gであることを考えると、ブタンガスが毎分2g燃焼される際には、酸素の消費量は、約5[l/min.]であることが分かる。これは、人間の約20人分の酸素消費量に相当する。本実施例において用いられる部屋501の広さである約6畳の居住スペースに対しては、入りきれないくらいの人数であり、酸素供給能力を見るには十分な消費量である。この計測に使用したガスコンロは部屋のほぼ真ん中ながら、ファンフィルターユニットの直下からは外した位置に載置した。また、この計測に使用した酸素濃度計は、ガス交換膜と対向する壁の位置、したがって、ガス交換膜から最も遠い位置に置いた。
また、図33AおよびBに示すように、主室520内の酸素濃度は、20分から60分に至るまでに0.3%ほど減少し、一時的に、20.6%となるが、その後増加に転じる。これは、上記において示した式(16)においてターゲット酸素濃度とした数値20.8%と良い一致を示す。酸素濃度が一時的に、20.6%まで下がるのは、想定内のアンダーシュートであり、以下のように説明できる。ガスコンロの位置と酸素濃度計の位置の兼ね合いにより、式(9)〜(15)による解析では、簡単の為、濃度の場所依存性はないとしている。即ち、酸素濃度に空間分布があるのは構成上当然であるが、天井に設置したファンフィルターユニットの送風動力の効果により、「部屋の中の空気は十分早くかき回されていて、酸素濃度に場所ムラがない」という近似で解いている。そのため、このアンダーシュートは想定内であり、その後、増加に転じた到達点は、20.8%になると考えられ、計算と実験結果の一致はかなり良いと考えられる。このように主室520内の酸素濃度は、居住スペースと、外界と連通している壁509の内部空間507の間に濃度差ができると、これを消す方向に酸素分子の濃度拡散が生じる。これにより、酸素濃度としては、主室520内部で多量の酸素消費があるにもかかわらず、ほぼ、上記に置いて示した式(15)に基づいた、20.9%に近い値を実現できることが示された。135cm×135cmの正方形形状のガス交換膜526の素材である障子紙を有する壁509に接する主室520内には人間522人が長時間滞在しても酸素が欠乏することがない。これは、主室520と壁509の内部空間507とを隔てるガス交換膜526である障子紙が、内部空間507に導入された外気と主室520の気体の間の各種分子濃度成分をガス交換膜526の両側で平衡化する膜として十分機能していることを示している。
また、上述の、主室520内の酸素濃度が減少し始めて約40分経つと下げ止まるという実験結果より、D/Lを算出することもできる。即ち、この系の酸素濃度の変化を記述する微分方程式である式(12)は、式(3)の微分方程式と同一の形をしており、厳密解は、式(4)と同様の形を取る(特に時間依存性としては、両者等しく、tに対し指数関数的変化を示す。より詳細に見ると、式(4)のγF/Vを、式(12)のAD/VLで置き換えれば良く、系の時間的振る舞いを把握できる)。指数関数的振る舞いが落ち着くのは、式(4)に関連して説明した通り、式(4)の指数関数の肩における時間tの係数の逆数のほぼ10倍程度経った時間である。このことから、図33Bの結果に基づいて、{1/(AD/VL)}×10〜40minとすることができる。A=1.35m×1.35m=1.8m2 、また、図26より約6畳の広さで、天井高さが約2.5mであることから、主室520の容積V=24m3 であるので、D/L〜(24m3 /1.8m2 )・10・(1/40min)〜3.3m/minとなり、段落[ 0104] で求めたD/L〜5m/minと良い一致を示す。即ち、ダスト粒子は通さず分子の濃度拡散は可能な膜とこれに接する内部空間を有する壁509とこの壁509が接する部屋に100%循環フィードバックシステムを採用したシステムでは、内部で酸素消費実験(ガス燃焼実験)を行うことで、当該膜の重要なパラメータであるD/Lを求めることができる。一旦、この値を求めた後は、この高清浄部屋システムでは、式(12)が良い近似で成り立ち、この系を特徴付けるパラメータはVL/ADであることに基づき、このVL/ADを{(V/A)/(D/L)}と書き換えることで、ガス交換膜526の性質だけで決まるD/Lというパラメータをもとに、スケーリングに則って、このガス交換膜52の接する部屋の設計(VとAの設定、他)を、極めて見通し良く行う方法を新しく提示していることが分かる。つまり、ガス交換に関する、部屋の奥行き、或いは“実効アスペクト比”、V/Aと、ガス交換の“機能空間”における抽象的アスペクト比D/Lとの比率をとっている(次元解析を行うと、(V/A)/(D/L)は、m3 /m2 の次元を持つ分子を、m2 /( m/s) の次元を持つ分母で除している)。空間次元を取り出すと、3D(次元)と2Dの比を、機能空間での2D/1Dで除すことで空間次元が相殺し、残る分母の(1/時間)の次元が、最終的に、全体で時間の次元を持つ量を与えており、これが即ち、系のガス交換の時定数となっている。このように(V/A)/(D/L)でスケールすることから、図26の実施例をさらに高機能化する手段として、塵埃対策的には、ファンフィルターユニットから射出される空気流を、天井面一面で均一化する(例えば、ファンフィルターユニットの下には目の細かいメッシュを、これから離れた所には、“目の粗い”メッシュをおく)ことが有効なことが分かっているが、更に、(V/A)/(D/L)の比に基づく、ガス交換能的に追加の改良点として、ファンフィルターユニットを壁509よりは、壁509に対抗する壁の方に近づけると共に、上記の“目の粗さ”に関しても、壁509から遠い方では、より粗く、壁に近いほうは、むしろやや小さくすることが良いことが分かる。このように、スケーリングに則って、部屋の設計を高清浄度およびガス交換能的に極めて見通し良く的確に行う上で、従来に無い新しい方法を与えている。
上述したように、上記の式(15)を用いることにより、主室520の酸素消費量が異なるときでも、ガス交換膜526の面積を計算することができる。同様の膜微細構造を有するガス交換膜で拡散定数が同一の場合には、厚みが異なるガス交換膜を使用する場合でも、式(15)により、やはり適正な面積を計算できる。また、通気度等の性能不明のガス交換膜であっても、ガス交換膜の面積と厚みを押さえた上で、ここに述べた実験を一度行うことで、その性能を把握し、内部で行う作業に応じてガス交換膜の面積を種々の様態に応じて計算し、以降は、自由に主室520を設計することができる。また、式(12)は、部屋内の気流の回転がよく、空間依存性を考えなくてよい場合の式である。よって、このような機構を備えていない部屋、或いは、機構を備えていてもその機構を止めている場合には、位置依存性を考慮した考察が必要である。しかしながら、このような場合でも、一旦、実験による計測により、面積Aと或る一つの酸素消費レートにおける、部屋内酸素濃度の実験値を得ることができれば、その後は、異なる酸素消費状況下にあっても、上記に示した式(15)の、L依存性、B依存性、D依存性に従って、必要なガス交換膜526の面積Aを求めることができることは重要である。また、こうして算出した面積Aは、図26の壁502dがガス交換膜526から無限に離れている、即ち、2重壁509の空洞幅が非常に大きい場合、言い換えると、実質的にガス交換膜526が、外界(例えば戸外や廊下の空間)に直接接している場合にも、主室520への適切な酸素供給能を与える値であることに注意されたい。即ち、2重壁509の厚みが実質的に無限大の場合として、主室520と外界との界面にガス交換膜526が単独で存在する場合も本発明の実施例に含まれる。
このように、障子戸や障子窓を有する和風の空間を構成し、従来の和風建築と何ら違和感の無い部屋を維持し、かつ、多量の酸素消費を伴う作業や活動を行った際でも、部屋内の空気環境を人間の生存に好適なもの維持しつつ、同時に、部屋内の空気清浄度はUS209Dクラス100を優に超え、同クラス1にも迫る極めて良好な清浄空間を得ることができる。このように、ガス交換膜526を日本古来の障子紙とすることで、伝統的な「書院造り」の端正な佇まいを、現代的な高清浄環境特性を備えさせつつ、再登場させることができ、例えば、レストランや居酒屋などに好適である。また、これらの空間において受動喫煙の弊害を低減することができると期待される。世界の住宅や、レストラン、病院、養護施設へと展開されることで、地球人類の未来の安寧に大いに資すると期待してやまない。
図34は、本実施例の、高清浄部屋システム510において、更に、気体流路524の内部において、ファンフィルターユニット521の上流側に、直列に光触媒フィルター(セントラル空調用光触媒脱臭ユニットMKU40:日本トーカンパッケージ株式会社製)を配置し、主室520内においてアルコールを一定量揮発させてから、送風量11[m3 /min.]にて、ファンフィルターユニット521を運転した場合の、主室520内の空気に含まれるアルコールの濃度変化を示した略線図である。図34に示すように、ファンフィルターユニット521の運転開始から1分後には、主室520内の空気に含まれ、人間の感じるアルコールの異臭は運転開始前の半分となり、3分後には、ほぼゼロとなる。
図35は、上記と同様な構成にて、主室520内において芳香剤を一定量揮発させて運転した場合の、主室520内の空気に含まれる芳香剤の異臭の度合いを示した略腺図である。図35に示すように、ファンフィルターユニット521の運転開始から1分後には、主室520内の空気に含まれる芳香剤(プロピレングリコールなど)に関し、人間の感じる臭気は、運転開始前の5分の1となり、2分後には、ほぼゼロとなる。このように、主室520内における臭いの原因となる物質の濃度をかなり短時間に、低減することができる。
図34および図35に示した結果は、光触媒が、内外で空気の出入りが無い状況で、Sσを化学物質の発生量、nを化学物質濃度、γを光触媒のフィルター一回通過当たり分解効率と読み替えた、上記に示した式(3)、および、その解が示す指数関数的濃度減少の効果(式(4)を参照)と、もう一つは、ガス交換膜526を通じての外界との平衡状態へ達しようとする効果の相乗効果の現れであり、本発明の極めて効率的な作用の証左となっている。
このように、内部に光触媒フィルターを設けた100%循環フィードバック系を用いると、この閉空間内で発生し、内部に滞在する化学物質などの濃度を極めて素早く低下させることが可能となる。これは、上述の通り、この閉空間内の化学物質が100%循環フィードバック系によって繰り返し光触媒と接触することで指数関数的に減少するという、光触媒と100%循環フィードバック系との相乗効果と、ガス交換膜526のガス交換機能に由来する。すなわち、密閉循環フィードバック系の構成を有しない従来型のクリーンユニットに光触媒を組み込んでも、開放系では、光触媒効果は小さい一方、本実施例の高清浄部屋システム510においては、密閉循環による塵埃減少によって、光触媒の機能が本来の化学物質等分解の役割に特化することができる。これらのことにより、本実施例の高清浄部屋システム510では、塵埃フィルターと光触媒との両方において長寿命性と高機能性との両立を実現することができる。
これらのことから、例えば、臭いの発生しやすい、介護ホーム、養護ホーム、病院室内などの閉空間において、この高清浄部屋システム510を適用することによって、室内で臭いの発生があっても瞬時に分解できることから、居住環境を飛躍的に向上させることができる。また、例えば、外部からの化学物質の侵入や内部での化学物質の発生などがあっても、空間を密閉した後に100%循環フィードバック系を運転することによって閉空間内部の化学物質濃度を数分でほぼ0にすることができる。特に、この実施例では、部屋501内、特に、主室520内を無菌かつ無塵にして有害ガス/異臭フリーの環境が実現できるので、この主室520の中に、例えば、小ぶりの樹木、観葉植物やハーブ等の、人間にとって好ましい効能を有する植物を置くことにより、例えば、都会の真ん中であっても、場所を選ばず居ながらにして、最高クラスの“森林浴”が体験できる。更に、積極的にラベンダーやその他、ユーザーそれぞれのニーズに合致したアロマの香りを導入することで、これからの現代人の最大の贅沢である、環境、中でも空気の品質を最大限に引上げることで、リラクゼーション等、人々の体に纏わるポジティブな効果を最大限に引上げることが可能となる。また、例えば、この密閉空間の内壁の一部をガス交換膜526で構成することなどにより、特定の化学物質に対してアレルギー症状を引き起こす化学物質過敏症の患者や、喘息の患者であっても、この空間内であれば、喘息やアレルギー症状を重症化することなく長時間滞在することができる。また、例えば、無塵・無菌環境にて呼吸器を、例えば就寝時の一日約8時間、“無負荷運転”することで、消化器官に対する短期間の断食が効果を奏するとされているのと同様の効果が期待できる。また、例えば、居住・治療空間内を、例えば、クラス1〜10程度の高清浄空間とすることで、無塵かつ無化学物質環境という“バックグラウンドノイズの少ない" 環境で、呼吸器、特に肺を経由した薬の投与を行えば、上述の“S/N比”を飛躍的に向上させた状況での、治療ができると期待される。つまり、在来環境の10億を超える塵埃の影響なく投薬等の医療プロセスを実行できる。老齢人口の増加する日本や、今後同様のことが予測される世界各国において、この高清浄部屋システム510の病院応用や在宅医療応用は極めて大きな可能性を秘めている。
ファンフィルターユニット521の内部に備えられた塵埃フィルターに対して、光触媒フィルターを流れ方向に直列に備えた100%循環フィードバック系を密閉された閉空間に接続して運転すると、この閉空間内の化学物質の分解効果が飛躍的に向上する。その一方で、塵埃フィルターと光触媒フィルターとを流れ方向に直列に備えるので流れに対する圧力損失が大きくなり、閉空間内に供給できる風量が低下する。この問題に対処するには、ファンフィルターユニット521のファンを最大静圧の大きいハイパワーなものとすることや、塵埃を除去するフィルターの圧力損失を小さくすることが挙げられる。前者は、コストが増大するとともに消費電力も増大し省エネルギーの観点からできれば避けたい形態である。また後者では、フィルターの塵埃捕集率を下げることによってフィルターによる圧力損失を小さくするため、フィルターの塵埃捕集率に大きく依存する従来型空気清浄システムでは塵埃の捕集性能が下がる。即ち、従来型クリーン系ではこの後者は採用できないが、上記において示した式(4)に従うこの高清浄部屋システム510では、これを採用することができ、しかも高性能を発揮させることができる。
図36は、主室520において、ファンフィルターユニット21の内部に備えられた塵埃フィルターを塵埃捕集率γが0.95の中性能フィルターとして数分間運転し、主室520内における塵埃の数を各粒径ごとに示した略線図である。図37は、この実験において計測された主室520内における塵埃のうち、粒径が0.5[μm]以上の塵埃の1立方フィート当りの総数を示した略線図で、そのままUS FED−STD−209 D規格で評価した際の、主室20の清浄度に対応する。
図36に示すように、ファンフィルターユニット521の運転開始から4分後における主室520内の塵埃の数は、粒径が0.3[μm]の塵埃は1000個を下回る程度に留まるものの、粒径が0.5[μm]の塵埃は100個を大きく下回り、粒径が0.5[μm]以上の塵埃は10個以下となる。粒径が0.5[μm]以上の塵埃の1立方フィート当りの総数に着目すると、図16に示すように、運転開始から10分で、主室520内における粒径が0.5[μm]以上の塵埃の1立方フィート当りの総数は100個以下となり始め、運転開始から40分を過ぎるとこの塵埃の1立方フィート当りの総数は10個前後となり、その後この値が維持されることで、US209Dクラス10級の清浄度の良好な空間が得られる。
このように、塵埃捕集率γが0.95であっても、US209Dクラス10級の清浄度という高品位な清浄環境を得ることができる。このことから、この高清浄部屋システム510では、フィルターの塵埃捕集率に対する「1に近くあるべし」との要求レベルを格段に下げることができるので、これにより生じるマージンを光触媒機能等の付加価値付与に充てることができる。これによって、塵埃フィルターの目詰まりが起きにくくなり寿命が飛躍的に延びる。また、この場合、主室520に、複数の100%循環フィードバック系を接続してもよい。この複数の100%循環フィードバック系のうち、例えば、一方は、塵埃捕集率は低いが光触媒を有し化学物質分解に特化したフィルターを備えたファンフィルターユニット521を有する100%循環フィードバック系、もう一方は、塵埃の捕集に特化したフィルターを備えたファンフィルターユニット521を有する100%循環フィードバック系とすることで、両者の利点を最大限に生かすことができる。ここでは、メインの100%循環フィードバック系が、上述のように、吸入口とファンフィルターユニット521への気体流入口とを気密性を持って連通する気体流路524を伴い、吹き出し口522と、隔壁下部に設けられた吸入口である開口523との間に距離があり、よって、室内の空気を" ショートサーキット" させずに、全体に亘って動かすことのできるしっかりしたものであれば、この“主”の100%循環フィードバック系に付随する“従”の循環フィードバック系は、100%循環フィードバック系といっても、メインのループのような厳密な気体流路を必ずしも必要とせず、単に、射出量と吸引量が一致している空気清浄器を、メインの循環システムにより風の動く室内の部位に置くことも推奨され、例えば、当該装置を準オープンスペースにて動作させた場合には到底実現できないような高清浄度が達成される。
図38は、本実施例において、主室520内に設けられる100%循環フィードバック系を構成するファンフィルターユニット521を、市販の光触媒や金属ラジカルを利用した空気清浄装置(富士フィルム社製 KPD1000)として数十分間運転し、主室520内における塵埃の数を各粒径ごとに示した略線図である。図39は、この実験において計測された主室520内における塵埃のうち、粒径が0.5[μm]以上の塵埃の1立方フィート当りの総数を示した略線図である。KPD1000は風量を0.55[m3 /min.]として運転した。
図38に示すように、粒子数の減少率は式(1)において示したγに依存する。これは、式(4)からも明らかである。図中、粒径が大きい10[μm]のものに対しては、粒子数減少は速く、これに対しては、γ〜1というのは良い近似で成立している。しかし粒径が、5[μm]、1[μm]、0.7[μm]、0.5[μm]、0.5[μm]に向かって小さくなるにつれ、粒子数の減少レートが小さくなっていることが分かる。つまり、このKPD1000は、粒径により、捕集率γが異なっていることが分かる。図38で示されたデータより得られた粒子数の減少レートと、式(4)の指数関数部の時間tに掛かる係数とを比較することにより、VとFは分かっているので、γを算定することができる。この算定により、例えば、粒径5[μm]に対しては、γ=0.75、粒径1[μm]と粒径0.7[μm]とに対しては、γ=0.37、粒径0.5[μm]に対しては、γ=0.33、粒径0.3[μm]に対しては、γ=0.29と求まる。このように、1[μm]より小さい粒径の粒子に対するγは、粒径が10[μm]の粒子に対するγの数分の一程度であることが分かる。KPD1000はダチョウ卵フィルターを装備し、ウイルス除去、臭い除去に主眼を置いたフィルターであり、捕集効率γは、特に、粒径の小さい方で、1をかなり下回るが、この程度のγしか持たないフィルターであっても、US209Dクラス200の比較的良好な清浄度を達成しうることを示している。本実施例の、低価格ながら相応に低性能なフィルターや光触媒システムを、100%循環フィードバックシステムに組み込むことで、高性能なフィルターに匹敵する性能を出させ得るというユニークな特徴が遺憾なく発揮されている。
また、ここに述べたγの算定法は、上述した障子紙面積の決定において、必要な面積をオーダーエスティメーション(order estimation)した障子紙に対しても適用することができる。即ち、そこで用いた障子紙を折り込んでフィルターを作製し、これを組み込んだファンフィルターユニットを一定容積の閉空間内で100%循環フィードバック動作させて、各粒径の粒子数がどう変化するかを測定することで、障子紙フィルターを用いた場合においても、図17で示されたものとほぼ同様な性能を示すことがわかった。例えば、株式会社大直の障子紙“直兵衛”を障子紙フィルターとした場合では、粒径0.3[μm]、0.5[μm]、0.7[μm]、1. 0[μm]、5. 0[μm]および10[μm]に対し、γは、各々、0.12、0.14、0.18、0.28、0.56および〜1であった。また、株式会社アサヒペンの障子紙“無地No.5641”を障子紙フィルターとした場合では、粒径0.3[μm]、0.5[μm]、0.7[μm]、1. 0[μm]、5. 0[μm]および10[μm]に対し、γは、各々、0.18、0.21、0.24、0.42、0.71および〜1であった。このように、従来、低〜中級フィルターでは、集塵効率に関して、粒子数がディケイ(decay) するところまで見ることができず、重量法や比色法しか用いられていなかった(従って精度の良い測定ができなかった)のに対し、100%循環フィードバックシステムと結合して測定するこの方法は、粒径弁別しつつ、しかも一気に同時測定できるという特長から、測定法としても新しい手法を提供しているということができる。一方、上述した(V/A)/(D/L)で部屋をスケールすることも、また、別の側面で垣間見えた新しい手法であり、優れた特長である。今後、この二つ特長が合わさって、相乗効果をもたらすことを考えるとこの実施例において示したシステムが、清浄環境の技術開発・解析において果たす役割、意義は極めて大きいといえる。
上記のUS209Dクラス200級の清浄度は、0.5μm粒子の捕集効率γが1に遠く及ばないフィルターを以って出した値としては、驚異的であるといってよい。例えば、通常のクリーンルームの使い方でこの空気清浄装置(KPD1000:富士フィルム社製)を使っても、塵埃量は、雰囲気塵埃数密度N0 の高々半分程度(数十万個/立方フィート)にしか落ちないのに対し、図39に示したグラフから明らかなように、上述した本実施例のシステム構成で用いれば、N0 より3桁程度小さい値にまで減少させることができる。これこそが、上記において示した式(5)の直接の帰結であるといえる。また、図38に示すように、同時に計測される酢酸とNH3 の濃度も運転開始から10分後には両者ともに濃度が1ppm以下となる。このように、空気清浄装置と100%循環フィードバック系とを同時に運転させることで、空気清浄装置の性能を飛躍的に向上させることができる。
このように、密閉循環系の空気清浄システムである高清浄部屋システム510においては、塵埃の捕集効率がフィルターの塵埃捕集率には大きく依存しない。そのため、フィルターの塵埃捕集率を下げても開放系の空気清浄システムのときに見られたような塵埃捕集効率の著しい低下が見られない。高清浄部屋システム510では、塵埃補集率が1に近くなくても良いことでできたマージンを殺菌性、減菌性へ振り向けることができる。また、100%循環フィードバック系が接続された密閉空間に、装置に送風口と吸気口とが集積されているようなファンフィルターユニット、例えば、市販の空気清浄機などを設置するだけでも高清浄環境を得ることができ、さらに、このファンフィルターユニットに装備されているフィルターの寿命も延ばすことができる。また、100%循環フィードバック系が備えられた主室520の内部に、KPD1000などの市販の光触媒や金属ラジカルを利用した空気清浄装置を独立に設置することも極めて有効である。このような、塵埃抑制よりもウイルス抑制や臭い取りに特化した空気清浄装置を、低塵埃環境に設置することにより、塵埃によるフィルターの詰まりによる性能劣化がほぼゼロに抑えられ、本来のウイルス不活化や脱臭等の役割に特化することができる。さらに、フィルターの目詰まりが殆ど起こらないので長期信頼性を得ることができる。このように、100%循環フィードバック系を具備した本実施例の系に加えて、市販の清浄機・空調機を併用するシステムは、清浄化の能力を、和でなく積でエンハンスでき、当該併用システムの新品時の性能を半永久的に維持することができる。
次に、前室540内に備えられているファンフィルターユニット544(ピュアスペース1、吐出風量=[1m3 /min]:アズワン社製)を単独で運転した場合の前室540内の空気清浄度について説明する。
図40は、前室540内に接続された100%循環フィードバック系を構成するファンフィルターユニット544を運転した場合についてのダスト粒子数の短時間における変化を示した略線図である。図40に示すように、ファンフィルターユニット544を運転後の、前室540内の粒径0.5[μm]以上の塵埃の1立方フィート当りの総数は、運転開始前には数十万個であったものが、運転開始からおよそ5分で3分の1の、1立方フィート当り4万個程度まで減少し、10分を超えたあたりで1立方フィート当り1000個程度に減少する。その後、この清浄度が長時間に亘って保たれる。このように、前室540は、ファンフィルターユニット544の運転開始からおよそ5分で前室540内部の塵埃の量を効果的に減少させることができる。
図41は、前室540に備えられているファンフィルターユニット544を、大容量のファンフィルターユニットであるアズワン社製のピュアスペース510(最大吐出流量=11[1m3 /min])に変更し、吐出風量=11[m3 /min]として運転し、得られた結果を示した略線図である。図41に示すように、前室540内の塵埃粒子数のうち、粒径が0.5[μm]以上の塵埃粒子の総数は、運転開始前においては、1立方フィート当り百万個程度であったものが、ピュアスペース510の運転開始から2分半で、ほぼ0になる。また、粒径が0.3[μm]以上の塵埃粒子の総数は、運転開始前においては1立方フィート当り一千万個程度であったものが、ピュアスペース510の運転開始から2分程度で10個以下となる。このように、前室540の容積に応じて使用するファンフィルターユニット544を適宜設定することで、前室540内を極めて短時間に超高清浄環境とすることができる。以上のことから、本実施例の高清浄部屋システム510の前室540は、前室としての性能が極めて高いものが得られることが実証できた。これは、例えば、和風旅館の“踏み込み”(靴脱ぎスペース)に腰掛けて、革靴の靴紐をゆっくりと解いている間のごく短時間(約1〜2分の間)に、当該靴脱ぎスペース(前室)の清浄度は、US209Dクラス0.1程度に向上することができることを示している。
次に、高清浄部屋システム510の主室520に前室540を経由して人間が入る場合について説明する。主室520に人間が入る前においては、出入り口508および引き戸547は完全に閉じられており、外部と前室540と主室520とは完全に隔絶されている。また、主室520は、100%循環フィードバック系によって、あらかじめ内部がクリーンに保たれている。
ここで、出入り口508から人間が前室540に入り、出入り口508を閉め、前室540の100%循環フィードバック系を始動すると、上述したように前室540の塵埃が素早くフィルターに捕集され、前室540の清浄度が急速に向上する。この時、人の呼吸によって前室540の酸素は消費されるが、引き戸547にはガス交換膜526として障子紙が張られていることで、上述のガス交換機能で酸素が供給されるので、前室540での滞在には何ら問題は生じない。
このように、出入り口508、引き戸547を閉めた状態で、前室540にて、約2分間待機し、その後、引き戸547を開けて、主室520へ入ることで、主室520の清浄度を下げることなく、外部から主室520に人などが出入りすることができる。
図42は、引き戸547を経由して前室540から主室520へ人が入った時の主室520の相対清浄度の変化について示した略線図である。図42に示すように、出入り口508、前室540、引き戸547を経て、外部空間から主室520へ入った前後での主室520の清浄度に変化はないことが実証された。これは、前室540と主室520との間に設けられた出入り口が引き戸547で構成されているため、開け閉めの際の体積変化がなく、従って、圧力変化や空気送り効果(ピストン効果)も無く、人間の出入りの際に、主室520に対して、気流としての空気の出入りが無い。従って、塵埃の多い外気の流入もないので、主室520の清浄度が常に良好に保たれることを示している。このように、高清浄部屋システム510を前室540と主室520とで構成し、前室540と主室520とを隔てる出入り口を引き戸547としたことで、主室520内の清浄度を保ったまま、主室520と外部との間を行き来することができる。また、出入り口508も、最小限の改装に留めるべく扉のまま維持することもできるが、上記の圧力生成や空気送り効果(ピストン効果)を避ける意味と、病院や特別養護ホーム等では、廊下を通過する人や車椅子との衝突を避けたりする上でも、また、新築等でつくる場合にも、出入り口508も引き戸にすることがより好適である。その他のことは、第2の実施の形態と同様である。
この第11の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、居住空間506を前室540と主室520とに引き戸547によって分割し、前室540側に外部から人間などが出入りする出入り口508を設けたので、外部空間から、出入り口508を経て入った人間などは、一旦、前室540において、数十秒〜2分待った後、引き戸547をあけて、主室520へ入ることで、主室520内の清浄度を一切劣化させること無く、外部空間から主室520へたどり着くことができるという利点を得ることができる。また、この引き戸547には、障子紙等のガス交換膜526を張ることで、日本古来の障子の趣をかもし出しながら、ガス交換能を付与することができる。このように、部屋501を構成する壁509の一部を成すガス交換膜526を障子様濾布、或いは障子紙で構成し、出入り口、並びに、主室と前室(踏み込み)の間仕切りを引き戸とすることで、居住空間506を和風に構成することが可能となり、日本の千年数百年以上に亘る歴史に培われた様式を現代技術と理論解析式である式(1)〜(16)(18)を通じて洗練されたものとし、単に、単に長期優良住宅のコンセプトやエネルギーマネジメントにとどまることなく、更に清浄な空気環境という、古代の日本には普通にあった最上の空気環境を普通に日常で味わえるものとして現代に蘇らせることができる。また、障子、襖、引き戸などの日本古来のライフスタイルが、本発明を通じて、おしつけではなく、恒常的な清浄空間を実現するための自然かつ必然的な準備・手続きとして再認識されることで、障子紙ガス交換膜と内部空間も持つ壁と100%循環フィードバック系を伴うところの引戸様式の和室を、最先端21世紀型優良生活空間として世界に発信することができる。さらに、一般居住空間内でどうしても発生するダストを塵埃フィルターなどによって能動的に除去できるので、部屋内で発生するダストを単に外部に押し出していた従来のクリーンルームなどと比べて、部屋内を飛躍的に高清浄にできるとともに、内部でダストの発生があっても高い清浄度を維持できる。
〈第12の実施の形態〉
図43は第12の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。図中、破線部は、部屋501aおよび501b内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501aおよび501bの内部の構成は実線で示している。
図43に示すように、この高清浄部屋システム510は、互いに異なる二つの独立な部屋が隣り合って構成されている。隣り合う部屋のうち、図面右側には第10の実施の形態における部屋501a、左側には第11の実施の形態における部屋501bが設けられている。部屋501aと部屋501bとは壁509を隔てて線対称の位置にそれぞれの部屋のユーティリティースペース519が配置されている。ユーティリティースペース519がこのように配置されることによって病院や養護ホームに限らず、ホテルやマンション等でも一般的に用いることができる。そのため、既存の建築物に対して、この高清浄部屋システム510を容易に適用することができる。また、入退室が2段式になっているところならいずれも極めてよく作用し、既存の建築物としては、例えば、公衆浴場、プール、陶板浴、岩盤浴、岩盤浴、ネイルサロン、マッサージ等の身体ケア産業、養護ホーム、特老ホーム、病院、幼稚園、学校などに適用が可能なものである。
このように、多数の部屋を有する集合住宅、介護ホーム、病院などに対し必要に応じて、上記システムの構成を組み込むことで簡易に低塵埃空間を得られるだけでなく、化学物質、臭いなども瞬時に分解できる超高清浄空間を得ることができる。また、例えば、部屋501の壁509の内部空間507を連結することで共通の空間としてもよい。この形態は、後述する第29の実施の形態において詳しく説明する。また、部屋501を複数連結し、複数の居住空間または主室の空気の連通がある部位に一つ或は少数のファンフィルターユニット521を配置した集中システムにより、複数の部屋の一括清浄化を行うこともできる。即ち、各部屋501に備えられた複数の気体流路524を気密性を持って連結し、一つ或は少数のファンフィルターユニット521で複数の部屋501に清浄空気を供給する。この連結は、例えば、ダクトなどによって行われ、例えば、各部屋501の壁509の内部空間507を順に連結し、ファンフィルターユニット521を連結した後に、各部屋501の居住空間506または主室520に空気が送風されるように、部屋501にそれぞれ設けられた送風機を連結するようにして構成される。この形態は、後述する第21の実施の形態において詳しく説明する。その他のことは、第10および第11の実施の形態のいずれかと同様である。
この第12の実施の形態によれば、第10および第11の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、既存の建築物に対して容易に適用可能な高清浄部屋システム10を得ることができる。
〈第13の実施の形態〉
図44は第13の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。
図44に示すように、この高清浄部屋システム510は、互いに異なる二つの独立な部屋が隣り合って構成されている。隣り合う部屋のうち、図面左側には部屋501c、右側には部屋R3 が設けられている。この図において、一点鎖線で表される部屋R3 は仮想的な部屋であって、部屋501cと独立した構成を有していればその構成は限定されない。また、図中、破線部は、部屋501c内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501cの内部の構成は実線で示している。
部屋501cは第10の実施の形態において示した部屋501aの図面向かって右側の壁9が、ガス交換のみに特化する壁として与えられている。具体的には、この壁509の内壁509aの一部に、第1の内部空間である内部空間507と居住空間506とが連通するような開口が設けられ、この開口を完全に塞ぐようにしてガス交換膜526が設けられ、一つの内部空間がガス交換のみに特化させて構成される。また、居住空間506内部に、壁509に対向して設けられた側壁である壁513によって形成される第2の内部空間である内部空間512は、天井裏505および外部から完全に隔絶されている。壁513の内壁513aに開口523を設け、内部空間512とファンフィルターユニット544の吸入口とを気体流路524によって気密性を持って接続することで、内部空間512全体が、気体流路524の一部として構成され、一つの内部空間が100%循環フィードバックのみに特化されて構成される。また、例えば、開口523の横幅は壁509の一方の側部から他方の側部までの範囲であればどのような幅であってもよいが、開口の横幅を広くすることによって居住空間506内の空気全体を一様に吸引することができる。このような構成とすることによって、構成の単純化ができ、また、壁全体を循環路とすることで、側壁下部から一様に気流を吸引して、フィードバックすることができ、居住空間506内全体を一様でムラのない清浄化が可能となる。このように、一つの内部空間を、ガス交換と100%循環フィードバックとの両方の機能を備えさせず、個別化することで、循環路の断面流量を大幅に増加させ、流れのコンダクタンスを大きくしたり、ガス交換効率を向上させたりすることができる。その他のことは、第10〜第13の実施の形態のいずれかと同様である。
この第13の実施の形態によれば、第10〜第12の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、一つの内部空間を、ガス交換と100%循環フィードバックとの両方の機能を備えさせず、個別化することで、循環路の断面流量を大幅に増加させ、流れのコンダクタンスを大きくしたり、ガス交換効率を向上させたりすることができる。
〈第14の実施の形態〉
図45は第14の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。
図45に示すように、この高清浄部屋システム510は、互いに異なる二つの独立な部屋が隣り合って構成されている。隣り合う部屋のうち、図面左側には部屋501d、右側には部屋R4 が設けられている。この図において、仮想線である一点鎖線で表される部屋R4 は仮想的な部屋であって、部屋501dと独立した構成を有していればその構成は限定されない。また、図中、破線部は、部屋501d内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501dの内部の構成は実線で示している。
部屋501dは第11の実施の形態において示した部屋501bの図面向かって右側の側壁である壁509と壁509によって形成される第1の内部空間である内部空間507とが、第13の実施の形態において示した部屋501c内に設けられる壁513と、壁513によって形成される第2の内部空間である内部空間512と同様な構成を有する。これによって、内部空間507全体が、気体流路524の一部として構成され、一つの内部空間が100%循環フィードバックのみに特化されて構成される。このような構成とすることで、構成の単純化ができ、壁全体を循環路とすることができる。また、側壁下部から一様に気流を吸引して、フィードバックすることができ、居住空間506内全体で一様でムラのない清浄化が可能となる。その他のことは、第10〜第13の実施の形態のいずれかと同様である。
この第14の実施の形態によれば、第10〜第13の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈第15の実施の形態〉
図46は第15の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。図中、破線部は、部屋501cおよび501d内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501cおよび501d内部の構成は実線で示している。
図46に示すように、この高清浄部屋システム510は、互いに異なる二つの独立な部屋が隣り合って構成されている。隣り合う部屋のうち、図面右側には第13の実施の形態において示した部屋501c、左側には第14の実施の形態において示した部屋501dとが、両室を隔てる壁に対して線対称に気体流路524が配置されるようにして設けられている。
図47は、この実施の形態の変形例である2ダクト壁埋め込みタイプの循環路を示した断面図である。図47に示すように、部屋501cの内部空間512と部屋501dの内部空間507とを共通の空間として内部空間507とし、この内部空間507に、部屋501cおよび部屋501dにそれぞれ設けられる2本の気体流路524を収納したものである。この場合においては、壁509は間仕切り壁としての機能を有し、壁509は2枚の内壁509aが互いに対向するようにして設けられることで構成されている。中心円が黒の二重円の記号は、気流が紙面上向きに流れていることを示す。内部空間507には、上述したように、気体流路524を、例えば入れ子のようにして収納して100%循環フードバック系が構成される。また、気体流路524が設けられた部分の壁材563の一部をガス交換膜526で構成し、ガス交換膜526を隔てる空間である部屋501cの居住空間506と部屋501dの居住空間506との間においてガス交換可能に構成される。内部空間507に気体を流すと、部屋501cおよび部屋501dの両部屋の居住空間506を、両部屋を一切狭くすることなく一気に高清浄部屋とすることができる。すなわち、この構造は、この部屋の狭小化を極限まで抑えることができる究極の構造である。在来の部屋の構造に対し、付加的に体積を消費する部分を皆無にすることができ、建物全体に対する清浄居住環境スペース( 部屋) の床面積や体積比率を下げることなく、かつ当該清浄居住部屋から外部空間への塵埃排出を伴わず、当該部屋501の居住空間506を極めて高い清浄度に保つことができる。また、この実施の形態は、居住空間506を主室520、前室540などに置き換えて構成することもできる。
また、例えば、隣接する部屋501の壁509の内部空間507の外気導入空間を連結することで共通の空間としてもよい。また、複数の部屋501を連結して、複数の居住空間6との空気の連通がある部位、即ち、居住空間506に接する一面と、もう一つの上記条件を満たす面である開口523とを結ぶ、気体流路524の両端或は途中部に一つ或は少数のファンフィルターユニット521を配置した集中システムにより、複数の部屋501の一括清浄化を行うこともできる。この形態は、前室540と主室520とで構成されるような、部屋501の入退室が2段式になっているところならいずれも極めてよく作用し、公衆浴場、プール、岩盤浴、ネイルサロン、マッサージ等の身体ケア産業、養護ホーム、特老ホーム、病院、幼稚園、学校などに適用が可能なものである。その他のことは、第10〜第14の実施の形態のいずれかと同様である。
この第15の実施の形態によれば、第12〜第14の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、隣接する部屋501に背中合わせで設けられた気体流路524を、2ダクト壁埋め込みタイプの循環路とすることで、在来の部屋の構造に対し、付加的に体積を消費する部分を皆無とすることができ、建物全体に対する清浄居住環境スペース(部屋) の床面積や体積比率を下げることなく、かつまた当該清浄居住部屋から外部空間への塵埃排出を伴わず、当該部屋の内部空間を極めて高い清浄度に保つことができる。
〈第16の実施の形態〉
図48は第16の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す斜視図である。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図48に示すように、この高清浄部屋システム510は、密閉された直方体状の部屋501に対して100%循環フィードバック系を組み込むことで構成されている。この中空壁503は、上述した実施の形態における、内壁509aと外壁509bとを有する壁509のうち、一体に形成されており、壁503によって形成される内部空間507は完全に中空となっているものである。部屋501は、壁502によって密閉して包囲されることで構成され、具体的には、天井壁502aと、床壁502gと、複数の側壁502b〜eとによって密閉して包囲されることで構成されている。部屋501を構成する側壁502のうちの少なくとも1枚の側壁は中空壁503によって構成されている。また、中空壁503は、矩形の中空断面を有する筒形状を有している。中空壁503および側壁502bは、天井壁502aと床壁502gとに挟まれるようにして設けられる。即ち、側壁502bと互いに対向する側面502dは天井壁502aの主面上と床壁502gの主面上とにそれぞれ接して設けられている。また、中空壁503は、底面および頂面が筒の開口部となるように設けられ、この二つの開口が天井壁502aの主面と床壁502gの主面とにそれぞれ塞がれることで閉空間を形成する。部屋501は、このように複数の壁によって囲まれることで密閉された閉空間である居住空間506を形成している。また、上述した中空壁503と天井壁502aと床壁502gとで形成される空間が内部空間507を構成している。また、部屋501には、外部から人間が出入り可能な出入り口508が設けられている。また、部屋501の頂面は頂壁502hで構成され、部屋501の天井壁502aと頂壁502hとで挟まれる空間が天井裏505を形成している。
天井裏505内の天井壁502a上には、図中において斜線で示したファンフィルターユニット521が設けられる。天井壁502aにはファンフィルターユニット521の吹き出し口に対応する開口が設けられており、この開口とファンフィルターユニット521の吹き出し口とが気密性を持って接続されることで、居住空間506内に空気を排出する吹き出し口522が形成される。また、ファンフィルターユニット521が天井壁502aの居住空間506側に設置されることで、ファンフィルターユニット521の吹き出し口を吹き出し口522とすることもできる。また、中空壁503の居住空間506側の面には居住空間506内の空気を回収する開口523が設けられる。開口523は、好ましくは中空壁503の面の最下部に設けられる。また、中空壁503の頂部には、天井裏505内に設けられた気体流路524の入口が気密性を持って接続され、気体流路524の出口がファンフィルターユニット521の吸入口と気密性を持って接続される。さらに、中空壁503の開口を塞いでいる天井壁502aに開口525を設けることによって、内部空間507と気体流路524とが気密性を持って挿通し、開口523とファンフィルターユニット521の吸入口とが気密性を持って接続される。このように、内部空間507を気体流路524の一部として構成し、居住空間506に対して開口523と吹き出し口522とを設けることによって居住空間506に対して100%循環フィードバック系が形成される。また、ファンフィルターユニット521とそれに接続されている気体流路524とは、居住空間506側の天井壁502aに設けられていてもよく、この場合にあっては中空壁503の居住空間506側の面に開口が設けられ、その開口に気体流路524が気密性を持って接続されることによって、内部空間507と気体流路524とが挿通する。また、居住空間506内にファンフィルターユニット521が設けられる場合には、例えば、密閉されて構成されたファンフィルターユニット収納部内に設けられる。
居住空間506は人間などが滞在などする閉空間であって、部屋501を構成する側壁に設けられた出入り口508は、居住空間506に外部から人間などが出入り可能なように設けられている。出入り口508が閉められているとき、居住空間506は外部から完全に密閉されている。また、居住空間506に入るための出入り口508の気密性は高められており、居住空間506は、出入り口508を通じて直接外気が流出および流入する以外には、外気の流出および流入(居住空間6内外における気体導通)が無いエアタイトな構造を有している。また、出入り口508を引き戸547とすることが好ましく、これにより、出入り口508の開閉による外部と居住空間506との圧力変動を最小限にすることができる。このように、居住空間506は、出入り口508が閉じられている場合においては外部空間から完全に密閉されているので、居住空間506に酸素の供給をする機構が必要となる。そこで、中空壁503の外部空間に接する面の少なくとも一部は、図中において斜線で示したガス交換膜526で構成される。これにより、内部空間507と廊下533を構成する空間との間で、気体分子の交換が行われ、例えば、居住空間506と外部空間との間で酸素、二酸化炭素などのやり取りが行われる 。
気体流路524と内部空間507とが気密性を持って接続され、中空壁503の居住空間506側の面に開口523が設けられることで、吹き出し口522から排出された気体の全てが開口523、内部空間507、気体流路524を経てファンフィルターユニット521を通過し、再び空気が居住空間506に排出するようにして構成される。これは、上述したように、100%循環フィードバックを形成している。このように、居住空間506に対して100%循環フィードバック系を形成し、100%循環フィードバック系を構成するファンフィルターユニット521を運転すると、居住空間506内の空気清浄度は上述したように飛躍的に向上する。このように、部屋501は、気体流路524を、中空壁503などによって形成された内部空間507をその一部に構成することで、部屋501と比較して狭くなることなく、高清浄部屋システム510として構成することができる。
また、気体流路の流路内には、例えば、必要に応じて光触媒が設けられる。この気体流路の流路内は、内部空間507の内部と気体流路524の流路内とを含む。光触媒フィルターが設けられる場所は基本的には限定されないが、採光可能な場所であることが好ましく、例えば、気体流路524を構成する壁面を透明材料で構成される透明体で構成することが好ましい。また、例えば、気体流路524と対向する部屋501の壁面を透明体で構成することが好ましい。透明体の材料としては、ガラスなどの透明無機材料、アクリルなどの透明樹脂材料などが挙げられる。また、部屋501に設けられる透明体としては、例えば、出窓などが挙げられる。また、例えば、レンズ、プリズム、光ファイバなどの導波光路を用いて光触媒フィルターに光を供給する構成を有していてもよい。また光触媒フィルターとして、例えば、可視光を利用できるタングステン酸化物系の素材を用いることも好適である。
気体流路524の形状は、内部空間507から導入された気体が全て吹き出し口522から排出されるような外部から完全に密閉した構成を有していれば基本的には限定されないが、例えば、流れの損失の少ない形状であることが好ましい。気体流路524の形状は、具体的には、例えば、矩形形状、正方形形状、円形状、楕円形形状などの断面形状を有する筒形状であることが好ましく、また、例えば、これらの形状を有する気体流路524を組み合わせて構成してもよい。また、筒形状は、例えば、筒が直線的に伸びた形状が好ましい。また、気体流路524は複数の気体流路を並列に構成したものを用いてもよい。また、気体流路524は、例えば、中空壁503の断面と同様な形状を有していることが好ましい。
気体流路524の設置位置は基本的には限定されないが、例えば、内部空間507と接続される位置が中空壁503の開口の中央の領域であることが好ましい。気体流路524は、具体的には、例えば、天井裏505側の天井壁502a上に、天井壁502aの面の一辺に平行に延在するようにして設けられ、内部空間507と気密性を持って接続されることで90度曲がり部を有する気体流路524が構成される。このように構成することで、気体流路524は、内部空間507からは完全に隔絶される。また、気体流路524は、例えば、開口523の位置に対して吹き出し口522が互いに平行な位置となるように設けられることが好ましい。
ガス交換膜526が設けられる位置は、基本的には限定されるものではなく、部屋501を構成する壁の少なくとも一部を構成することができるが、ガス交換膜526が設けられる位置は、例えば、雨、風などの影響を受けない場所であることが好ましい。また、ガス交換膜526が中空壁503の外部空間と接する面の少なくとも一部を構成する場合には、ガス交換膜526を介して流れる気体の流れの方向と流速とが一致するような機構を設けることが好ましい。具体的には、ガス交換膜526に関して内部空間507と対向する領域に、内部空間507に流れる気体に対して流れ方向と流速とが等しくなるように気体を流すことが挙げられる。また、部屋501の内壁面の一部を構成するガス交換膜526を、例えば、障子様に構成することによって、居住空間506を和室として構成することができる。また、このとき、例えば、出入り口508を引き戸として障子戸で構成してもよい。
廊下などの外部空間から内部空間507を経て居住空間506へ酸素が供給される際には、ガス交換膜526は内部空間507内へダストを通さない。また、内部空間507と気体流路524とは密閉されて形成されており、さらに内部空間507と気体流路524とが気密性を持って接続されているので、気体流路524内に天井裏505内などに導入された外気が侵入することはない。これらのことにより、居住空間506内に酸素が供給されても、居住空間506内にダストは供給されず、清浄度は保たれる。
開口523および吹き出し口522の形状は基本的には限定されるものではないが、具体的には、例えば、矩形形状、正方形形状、円形状、楕円形状を有することが好ましい。また、開口523が設けられる位置は、中空壁503の一部に設けられるのであれば基本的には限定されないが、底壁502gになるべく近い位置に設けられることが好ましい。また、吹き出し口522が設けられる位置は基本的には限定されないが、なるべく高い位置に設けられることが好ましく、また、天井壁502aの中心部に近い位置に設けられることが好ましい。また、開口523と吹き出し口522とは、例えば、上述したように互いに平行な位置に設けられることが好ましい。
また、気体流路524の開口523と吹き出し口522との距離は十分な距離を有していることが好ましい。開口523と吹き出し口522との距離は、例えば、開口523と吹き出し口522との間隔分布のうち最も距離が長いものxが、xが定義される方向の居住空間506の距離Xに対して、その比x/Xが0.3よりも大きく、好ましくはx/Xが0.35以上、最も好ましくはx/Xが0.4以上であって、1.0以下の範囲にある方向が少なくともひとつあるように構成されていることが好ましい。
内部空間507の容積は基本的には限定されないが、内部空間507の容積は、できるだけ小さい方がよい。中空壁503が矩形の中空断面を有する壁で構成される場合には、断面の中空部の短辺の長さ(厚み) は、典型的には8〜20cm程度で、5cm以上40cm以下であることが好ましい。中空部に隣り合う部分には、筋交いやCの字状の断面をもつ鋼材を用い、壁としての強度を持たせることが望ましい。また、内部空間507の厚みとしては、部屋501の構造を支える最小限の厚みとすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
ガス交換膜526は、高清浄部屋システム510を構成する壁の少なくとも一部を構成するように設けられれば、基本的にはどのような位置に設けられてもよいが、例えば、高清浄部屋システム510を構成する壁のうち風雨に晒されるような外壁以外の壁に設けられることが好ましく、また、例えば、通気口511の近傍に設けられることが好ましい。また、通気口511から導入される外気の流れが気体流路524によって妨げられない位置に設けられることが好ましい。
また、ガス交換膜526の形状は基本的には限定されないが、例えば、正方形、長方形などであることが好ましい。また、ガス交換膜526の大きさは基本的には限定されないが、例えば、一枚の大きさが135cm×135cmであることが好ましい。また、居住空間506に滞在する人間1人に対する居住空間506に接する部分のガス交換膜526の面積の合計が500cm2 /人以上であることが好ましく、700cm2 /人以上であることがより好ましく、900cm2 /人以上であることが最も好ましい。
また、ガス交換膜526は、このガス交換膜526によって隔てる両空間において、ダスト微粒子の交換はせず気体分子の交換をする機能を有していれば基本的には限定されないが、例えば、このガス交換膜526によって隔てる空間の間に3%の酸素濃度差が生じた際に0.25L/min以上の酸素分子拡散能を有していることが好ましい。ガス交換膜526としては、具体的には、例えば、布、不織布、障子紙、和紙などであることが好ましい。ガス交換膜526を障子紙で構成する場合にあっては、木組みの格子と組み合わせ障子様の窓である障子窓とすることができる。このように構成することで、廊下533を和風に構成することができる。また、例えば、部屋501を構成する壁の一部に障子窓を設けることもでき、部屋501の内装を和風に構成することができる。
また、出入り口508は、外部空間と居住空間506との間で人間が出入り可能で、さらに両空間を遮断する機能を有していれば、基本的には限定されるものではなく、出入り口として上記に挙げたものを適宜選択することができるが、開閉時における両空間の圧力差が小さい引き戸であることが好ましい。また、引き戸は、例えば、ガス交換膜526である障子紙と組み合わせることで、障子戸とすることができる。
図49A〜Cは、高清浄部屋システム510に用いる、内部空間を内包した壁である中空壁の例を示した断面図である。
図49Aに示すように、この中空壁503は一体に成形されており、矩形の断面を有する筒形状を有している。図49Bに示すように、この中空壁503は、一定間隔を置いて互いに対向して設けられた内壁503aと外壁503bとの間に2本の間柱503cを設けることによって、中空部を有する壁となる。2本の間柱503cは、例えば、中空壁503の互いに対向する側面をそれぞれ構成するようにして設けられる。図49Cに示すように、この中空壁503は、一定間隔を置いて互いに対向して設けられた内壁503aと外壁503bの対向する両側部に柱503dが設けられていることで、両側部の開口が塞がれる。このように、中空壁503は、単一の材料で形成されるだけでなく、複数の材料を組み合わせて構成することもできる。また、部屋501の側壁502に一定間隔をおいて新たな隔壁を設けることによって中空壁を構成するようにしてもよく、この場合、両側部に天井壁、床壁などの壁が設けられることで両側部の開口が塞がれる。このように、例えば、新築の住宅とする場合には、部屋を構成する間仕切りなどを中空壁で構成することで内部空間507を構成し高清浄部屋システム510を構成することができる。部屋を仕切る間仕切りであれば、それほどの強度を要することがないので、内部に補強材などを有さない中空壁503であってもよい。また、例えば、既存の住宅をリフォームする場合にあっては、既存の壁を交換または既存の壁にパネルを追加するなどして中空壁を構成し、これによって内部空間507を構成し高清 浄部屋システム510を構成することができる。
図50は第16の実施の形態による高清浄部屋システム510が適用された住居を示す断面斜視図である。
図50に示すように、この住居530は、高清浄部屋システム510と既存の部屋である部屋531と床下空間534とを有し、高清浄部屋システム510と部屋531との間に廊下533を有している。
部屋501は、図48において示したものと同様に壁502を有して包囲された閉空間を構成する。部屋501は、側壁502bと、側壁502c(図示せず)、間仕切り壁502iと、中空壁503と、天井壁502aと、床壁502gとで囲まれることによって構成される。間仕切り壁502iは住居530の内部に部屋501を形成するために設けられる壁であり、出入り口508を有して構成されている。間仕切り壁502iは固体壁で構成されている。また、中空壁503も間仕切り壁として設けられており、間仕切り壁502iと中空壁503とは廊下533に面して設けられている。
部屋531は、壁532で囲まれることによって構成され、具体的には、天井壁532aと、床壁532cと、2枚の側壁532bと、2枚の間仕切り壁532dとによって包囲されることで構成されている。間仕切り壁32dは間仕切り壁502iと同様に固体壁で構成されている。2枚の間仕切り壁532dのうち一方の間仕切り壁532dには出入り口535が設けられている。部屋531はその構成に中空壁503を有さないことを除けば、基本的には部屋501と同様な構成を有する。
廊下533は、人間が往来することができる空間である。廊下533は、部屋501を構成する中空壁503と部屋531を構成する間仕切り壁532dと天井壁532aと床壁532cとで囲まれた空間を有する。また、廊下533は、間仕切り壁502iと天井壁532aと床壁532cとを有して囲まれた空間を有し、さらに、出入り口535を有する間仕切り壁532dと天井壁532aと床壁532cとを有して囲まれた空間を有する。このように廊下533が形成されることによって、人間などが、出入り口535を通じて廊下とそれぞれの部屋との間を出入りすることができる。また、廊下533を形成する中空壁503の面にはガス交換膜526が設けられている。
床下空間534は、部屋501、部屋531および廊下533の下方に床壁を介して形成される空間である。床下空間534は、例えば、住居530の外壁などによって囲まれることによって形成される。この外壁には、例えば、外気の導入を行う外気導入口などが設けられている。また、天井裏505は、部屋501、部屋531および廊下533の上方に天井壁を介して形成される空間である。天井裏505は、例えば、頂壁である屋根504と天井壁502aとで挟まれ、住居の外壁などで囲まれることによって形成される。この外壁にも、例えば、同様に外気導入口などが設けられている。部屋501と、床下空間534および天井裏505とは隔絶されて構成されており、床下空間534および天井裏505と部屋501との間で直接空気のやり取りをすることはない。一方で、例えば、部屋531および廊下533には、天井裏505、床下空間534などから適宜外気が導入される。
高清浄部屋システム510は、図47において示したものと同様に100%循環フィードバック系を部屋501に適用することによって構成されている。高清浄部屋システム510を構成する部屋501の天井壁502aにファンフィルターユニット521が設けられている。この天井壁502aにはファンフィルターユニット521の吹き出し口に対応する開口が設けられており、この開口とファンフィルターユニット521の吹き出し口とが気密性を持って接続されることで、居住空間506内に空気を排出する吹き出し口522が形成される。また、中空壁503の居住空間506側の面には居住空間506内の空気を回収する開口523が設けられる。開口523は、好ましくは中空壁503の居住空間506側の面の最下部に設けられる。また、中空壁503の最上部の側壁には、天井裏505内に設けられた気体流路524の入口が気密性を持って接続され、気体流路524の出口がファンフィルターユニット521の吸入口と気密性を持って接続される。さらに、中空壁503の最上部に側壁が開口することによって、中空壁503の中空部と気体流路524とが気密性を持って挿通し、開口523とファンフィルターユニット521の吸入口とが気密性を持って接続される。このように、中空壁503が気体流路524の一部として構成されることによって居住空間506に対して100%循環フィードバック系が形成される。また、中空壁503の廊下533に面する面の少なくとも一部は、ガス交換膜526で構成されており、中空壁503の中空部と廊下533を構成する空間との間で、気体分子の交換が行われる。これによって、居住空間506と外部空間である廊下533との間で酸素、二酸化炭素などのやり取りが行われる。図47のガス交換膜526は外界(この場合は廊下空間)と直に接しており、上記段落0181で述べた、ガス交換膜526が外界に直接接する場合の一つの例と理解できる構成であることに注意されたい。
図51は第16の実施の形態による高清浄部屋システム510の動作を示した断面図である。
図51に示すように、高清浄部屋システム510は、開口523から居住空間506内の空気が吸入され、内部空間507を経て気体流路524内に達し、ファンフィルターユニット521によって濾過された空気は、吹き出し口522から居住空間506内に排出される。居住空間506内に排出された空気は再び開口523から吸入され、このような回流が繰り返されることによって、居住空間506内の清浄度が上述したように飛躍的に向上する。中空壁503の外気に接する面の少なくとも一部はガス交換膜526で構成されている。このガス交換膜526によって、外部空間と内部空間507との間で気体の交換が行われる。具体的には、内部空間507内に酸素が供給され、内部空間507内の二酸化炭素が外部へ放出される。また、気体の交換が行われる際には外部空間からダストが侵入しない。内部空間507内に供給された酸素は、内部空間507内を流れる空気によって居住空間506に供給される。また居住空間506から吸入され内部空間507内を通る二酸化炭素はガス交換膜526によって外部空間に放出される。その他のことは第1〜7の実施の形態のいずれかと同様である。
この第16の実施の形態によれば、第10〜第15の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、部屋を密閉して構成し、密閉された部屋501によって形成される居住空間506に100%循環フィードバック系を設けたので、居住空間506内を高清浄環境に維持することができる。また、部屋501を構成する壁の少なくとも一部をガス交換膜526で構成したので、居住空間506内部の酸素濃度を一定に維持することができる。また、天井裏505内の天井壁502a上にファンフィルターユニット521とそれに接続される気体流路524を設け、さらに、部屋501を構成する壁の少なくとも1枚を中空壁503とし、この中空壁503の中空部を気体流路524の一部として100%循環フィードバック系を構成したので、このように部屋501の一部の構成を利用することで100%循環フィードバック系を極めてコンパクトに構成することができ、部屋501を狭くすることなく、また居住者が違和感を覚えることなく居住空間506を高清浄環境に維持することができる。
〈第17の実施の形態〉
図52は第7の実施の形態による高清浄部屋システム510を示したものである。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。また、以下においては、図中における壁面などの厚さは図の明瞭化のため省略するものとする。
図52に示すように、この高清浄部屋システム510は、内部空間507を外気導入空間とし、内部空間507の内部に独立して密閉して構成された気体流路524を設けたものである 。
内部空間507は、居住空間506内部に第1の隔壁である隔壁517が側壁502bに一定間隔をおいて設けられることによって形成されている。このように、以下の実施の形態においては、図面の明瞭化のために、内部空間507を中空壁ではなく居住空間506内に隔壁であるパネルを設置することによって形成するが、これに限定されるものではなく、例えば、同様な構成を有する中空壁で内部空間507を構成することができる。
隔壁517は、部屋501を構成する側壁のうち、出入り口508を有さない側壁の一枚に一定距離をおいて平行に設けられることで二重壁を構成し、これによって挟まれる空間が内部空間507を構成する。
また、居住空間506には、居住空間506とは隔絶して構成されている内部空間507からフレッシュエアのみを導入することができる。これは、内部空間507内に外気を導入可能に構成し、隔壁517の少なくとも一部をガス交換膜526で構成することで実現される。内部空間507内への外気の導入は、内部空間507を形成する側壁502bに少なくとも一つの通気口511が設けられることによって外気が内部空間507内に導入される。このとき側壁502bの外面は外部空間と接している。また、内部空間507を中空壁で構成する場合にあっては、中空壁の側壁のうち外部空間と接する部分に少なくとも一つの通気口511が設けられる 。
また、内部空間507内には、密閉されて構成された気体流路524が内部空間507と隔絶して設けられている。気体流路524は、内部空間507内に入れ子のようにして形成されており、部屋501の頂壁502h上に設けられる気体流路524に気密性を持って接続され、この気体流路524は気密性を持ってファンフィルターユニット521に接続される。ファンフィルターユニット521とそれに接続される気体流路524を、居住空間506内の頂壁502hの面上に設ける場合には、例えば、隔壁517に開口を設けて接続する。このように構成されることで、気体流路524は外気導入空間である内部空間507と隔絶し気体流路524内に外気が直接流れ込むことがない。
図53は、隔壁517を、居住空間506内から見た平面図である。
図53に示すように、部屋501には、図中断面斜線部で示された側壁502cに設けられた出入り口508である引き戸547と頂壁502hに設けられた吹き出し口522を有する気体流路524とを有する。気体流路524の内部にはファンフィルターユニット521が内蔵されている。隔壁517は、少なくとも一部がガス交換膜526で構成されている。また、隔壁517の上部に設けられた開口には気体流路524が接続され、下部には開口である開口523を有する。ガス交換膜526は、障子紙526aと木組格子526bとで障子様に構成されている。また、引き戸547は和風の障子戸に構成されており、居住空間506を和風に構成することができる。
また、気体流路524は、内部空間507の内部と居住空間506とに亘って設けられる。また、ファンフィルターユニット521は気体流路524内に設けられる。
気体流路524の設置位置は気体流路524の一部が内部空間507内に設けられていれば基本的には限定されないが、例えば、気体流路524の天井裏505内または居住空間506内に設けられる部分は、部屋501の頂壁502hに設けられることが好ましい。気体流路524が、例えば、居住空間506内の頂壁502hに設けられる場合にあっては、図52に示すような、隔壁517に設けられた気体流路524が気密性を持って挿通もしくは接続可能な開口525を通じて居住空間506内から内部空間507内に至る。気体流路524は、具体的には、例えば、部屋501の頂壁502hに閉じた気体流路524が頂壁502hの一辺に平行に延在するようにして設けられ、開口525に達した気体流路524は開口525に気密性を持って接続され、内部空間507側の開口525には、部屋501の底面から垂直上方に延在して設けられ閉じた気体流路524が気密性を持って接続されることで、90度曲がり部を有する気体流路524が構成される。このとき、部屋501側の気体流路524の端部には、垂直下方に気体が排出可能なように設けられた吹き出し口522に接続され、内部空間507側の気体流路524は、隔壁517の最下部に設けられた開口523と気密性を持って接続することで100%循環フィードバック系を構成する。このように構成することで、気体流路524は、内部空間507からは完全に隔絶される。また、気体流路524は、例えば、開口523の位置に対して吹き出し口522が互いに平行な位置となるように設けられることが好ましく、例えば、気体流路524の形状が矩形形状の断面形状を有する筒形状の場合には、気体流路524は、二つの直方体を組み合わせたL字形状の曲がり管路によって構成される。
内部空間507を構成する部屋501の壁面には、内部空間501内に外気を導入および排出をする通気口511が設けられる。また、隔壁517の少なくとも一部は、ガス交換膜526によって構成されている。このようにして構成されることで、内部空間507内に導入された外気は、ガス交換膜526を通じて居住空間506内に酸素を供給する。また、居住空間506内で発生した二酸化炭素などの不要なガスは、ガス交換膜526を通じて内部空間507内に排出される。また、例えば、居住空間506の内壁面を構成するガス交換膜526を、障子様に構成することによって居住空間506を和室として構成することができる。また、このとき、例えば、出入り口508を引き戸としてもよい。
内部空間507から居住空間506へ酸素が供給される際には、ガス交換膜526は居住空間506内へダスト微粒子を通さない。また、内部空間507内に設けられている気体流路524は気密性を保っているので、気体流路524内に内部空間507内に導入された外気が侵入することはない。これらのことにより、内部空間507内に外気が導入されることで居住空間506内に酸素が供給されても、居住空間506内の清浄度は保たれる。
また、例えば、内部空間507を、気密性を持って仕切ることにより気体流路524を構成することもできる。具体的には、例えば、内部空間507を2枚の隔壁で気密性を持って仕切ることで、開口525と開口523とを有する閉空間を形成する。
開口523および吹き出し口522の形状は基本的には限定されるものではないが、具体的には、例えば、矩形形状、正方形形状、円形状、楕円形状を有することが好ましい。また、部屋501において開口523が設けられる位置は、隔壁517の一部に設けられるのであれば基本的には限定されないが、部屋501の底面になるべく近い位置に設けられることが好ましい。また、部屋501において吹き出し口522が設けられる位置は基本的には限定されないが、なるべく高い位置が好ましく、また、部屋501の中心部に近い位置に設けられることが好ましい。また、開口523と吹き出し口522とは、例えば、上述したように互いに平行な位置に設けられることが好ましい。
また、気体流路524の開口523と吹き出し口522との距離は十分な距離を有していることが好ましい。開口523と吹き出し口522との距離は、例えば、開口523と吹き出し口522との間隔分布のうち最も距離が長いものxが、xが定義される方向の居住空間506の距離Xに対して、その比x/Xが0.3よりも大きく、好ましくはx/Xが0.35以上、最も好ましくはx/Xが0.4以上であって、1.0以下の範囲にある方向が少なくともひとつあるように構成されていることが好ましい。
内部空間507の容積は基本的には限定されるものではなく、適宜設計選択することができる。内部空間507の厚みとしては、典型的には、例えば、10cm以上40cm以下であることが好ましく、また、例えば、8cm以上20cm以下であることがより好ましい。内部空間507の幅としては、用いるファンフィルターユニット521の横幅程度からこの数倍程度とし、この中空部に隣り合う部分には、筋交いやCの字状の断面をもつ鋼材を用い、壁としての強度を持たせることが望ましい。また、内部空間507の厚みとしては、建築構造上、部屋501の構造を支える最小限の厚みとすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
通気口511が設けられる位置は、内部空間507を構成する部屋501の外壁の中であれば基本的には限定されないが、例えば、内部空間507内に風雨が侵入しないように、内部空間507を構成する部屋501の側壁に設けられる。また、通気口511の形状は基本的には限定されないが、例えば、長方形形状であることが好ましい。また、通気口511の大きさは基本的には限定されないが、400cm2 以上であることが好ましい。また、通気口511には必要に応じて気体を加速させる装置が設けられる。気体を加速させる装置としては、具体的には、例えば、ファンなどが挙げられる。また、通気口511には、外部からの雨、塵、虫などが内部空間507内に侵入しないように、例えば、柵、網、フィルターなどが設けられる。
外気導入空間である内部空間507と居住空間506とは、ガス交換膜526によって気体分子の交換が行われる。例えば、内部空間507を構成する側壁502bに複数の通気口511が設けられる場合にあっては、複数の通気口511のうち、例えば、一方を外気導入口、もう一方を排出口とすると、外気導入口より内部空間507内に取り込まれた酸素を含む外気は、気体分子のみがガス交換膜526を透過して居住空間506に酸素を供給する。また、居住空間506からガス交換膜526を透過して内部空間507に放出された二酸化炭素は、排出口から外部に排出される。
この場合、内部空間507内に1時間当たりに取り込まれる空気の体積流量F0 は、例えば、居住空間506の容積をVとすると、F0 >V/2h[m3 /h]であることが好ましいが、このことに限定されるものではない。また、居住空間506内に発生した二酸化炭素などの人間にとって不要なガスは、気体分子のみがガス交換膜526を透過して居住空間506から内部空間507へ排出され、排出口から外部に放出される。また、例えば、気体流路524を構成する壁面の一部をガス交換膜526で構成することもできる。このように、ガス交換膜526を介して、酸素、二酸化炭素などの気体がやり取りされることで、居住空間506内で酸素の消費があっても居住空間506内の酸素濃度を一定に保つことができ、また、居住空間506内で二酸化炭素などの、人間の生活に不要なガスが発生しても内部空間507を通じて外部に放出することができる。その他のことは、第10〜第16の実施の形態のいずれかと同様である。
この第17の実施の形態によれば、第10〜第16の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、内部空間507を外気導入空間とし、内部空間507の内部に独立して密閉して構成された気体流路524を設けたので、居住空間506内への外気導入を、100%循環フィードバック系を介さずに行うことができる。また、内部空間507を構成する側壁に複数の通気口を設けることができ、この場合にあっては、複数の通気口511のうち、例えば、一方を外気導入口、もう一方を排出口とすると、外気導入口より内部空間507内に取り込まれた酸素を含む外気は、気体分子のみがガス交換膜526を透過して居住空間506に酸素を供給することができる。また、居住空間506からガス交換膜526を透過して内部空間507に放出された二酸化炭素は、排出口から外部に排出することができる。
〈第18の実施の形態〉
図54は第18の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図54に示すように、この高清浄部屋システム510は、天井裏505を内部空間507とし、天井裏505内部にファンフィルターユニット521と気体流路524の一部を設けたものである。
内部空間である天井裏505は外気が導入される外気導入空間として構成される。天井裏505は、頂壁502hと天井壁502aと少なくとも1枚の側壁504aとで囲まれることで形成される空間である。側壁504aには、少なくとも一つの通気口511が設けられることで、天井裏505に外気が導入される。天井壁502aには、少なくとも1枚のガス交換膜526が設けられており、天井裏505と居住空間506とは、ガス交換膜526を介して気体分子のやり取りを行う。
気体流路524は、天井裏505内の天井壁502a上に設けられ、同様に天井裏505内の天井壁502aに設けられたファンフィルターユニット521と接続される。ファンフィルターユニット521は吹き出し口522と気密性を持って接続される。気体流路524のうち、天井壁502aから下の部分は、基本的には限定されないが、例えば、内部空間507が気体流路524の一部を形成することによって第16の実施の形態に示したものと同様に構成される。また、例えば、居住空間506内の側壁502b上に独立して気体流路524を構成することもできる。その他のことは、第10〜第17の実施の形態のいずれかと同様である。
この第18の実施の形態によれば、第10〜第17の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、天井裏505をファンフィルターユニット521および気体流路524の一部の収納空間とし、さらに外気導入空間としたので、高清浄部屋システム510をコンパクトに構成することができる。
〈第19の実施の形態〉
図55は第19の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図55に示すように、この高清浄部屋システム510は、第17の実施の形態の高清浄部屋システム510において、部屋501を構成する側壁のうち、気体流路524を構成する側壁502bと対向する側壁502dに、外気導入機構および/または内気排出機構として第2の内部空間である内部空間512を設けたものである。この場合、内部空間507は第1の内部空間となる。
外気導入機構および/または内気排出機構である内部空間512は、気体流路524が設けられた側壁と対向する側壁に設けられる。また、例えば、内部空間507が、気体流路524の一部を構成する場合にあっては、側壁502dに内部空間512が形成され、この内部空間512が外気導入空間として構成することができる。この内部空間512は居住空間506とは隔絶して構成されている。内部空間512は、内部空間として上述したものと同様にして構成できるが、例えば、居住空間506内において、側壁502dに一定間隔を置いて第2の隔壁である隔壁518を設ける方法が挙げられる。また、側壁502dを中空壁として内部空間512を構成してもよい。内部空間512を構成する側壁502dには少なくとも一つの通気口511が設けられることにより、内部空間512に外部空間から外気が導入され、また、内部空間512から外部空間に内部気体が排出される。また、通気口511は、内部空間512に接する側壁502cに設けられてもよい。また、隔壁518の少なくとも一部がガス交換膜526で構成されることにより、居住空間506内に、上述したものと同様にして酸素などが供給され、内部空間512へは居住空間506より二酸化炭素などが排出される。
天井裏505と内部空間512とは、例えば、連通させることで共通の外気導入・内気排出機構とすることもできる。一方で、天井裏505と内部空間512とを二つの独立した外気導入・内気排出機構として構成する場合にあっては、一方を外気導入機構、もう一方を内気排出機構とすることができる。この場合、例えば、天井裏505を形成する側壁502c〜502eの少なくとも1枚に設けられる通気口511aを外気導入口、内部空間512を形成する側壁502c〜502eの少なくとも1枚に設けられる通気口511bを内気排出口とすることができる。
通気口511aと、通気口511bとには、例えば、ファンなどが設けられることによって気体が加速され、強制的に外気導入・内気排出空間内に外気の導入および外気導入・内気排出空間内からの気体の排出が行われる。通気口511aと通気口511bとにおける、外気導入口と排出口との組み合わせは、用途に応じて適宜設計選択される。通気口511aを例えば、外気導入口として用いる場合には、通気口511aに設けられるファンは、外部から内部空間512内に向かって気体が加速するように設けられ、排出口として用いられる通気口511bには、例えば、内部空間512内から外部に向かって気体が加速するようにして設けられる。その他のことは、第10〜第18の実施の形態のいずれかと同様である。
この第19の実施の形態によれば、第10〜第18の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、気体流路524が設けられた側壁に対向する側壁に外気導入機構を設けたので、居住空間506の内部への酸素の供給、外部への不要なガス排出などを素早くできる。これによって、通常の居住空間と何ら変わらない形態のまま、居住空間506の素早い換気、居住空間506への潤沢な酸素の供給などができる高清浄部屋システム510を得ることができる。
〈第20の実施の形態〉
図56は第20の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図56に示すように、この高清浄部屋システム510は、第17の実施の形態の高清浄部屋システム510の天井裏505の部分の構成を、第18の実施の形態の高清浄部屋システム510の天井裏505の部分の構成に置き換えたものである。具体的には、天井裏505と側壁502bに形成された内部空間507とをそれぞれ独立した外気導入・内気排出空間とし、天井裏505内から内部空間507内にかけて、天井裏505および内部空間507とは隔絶し、密閉されて構成された気体流路524を設けたものである。
外気導入機構および/または内気排出機構である天井裏505と内部空間507とは、例えば、連通させることで共通の外気導入機構および/または内気排出機構とすることもできる。一方で、天井裏505と内部空間507とを二つの独立した外気導入機構または内気排出機構として構成する場合にあっては、一方を外気導入機構、もう一方を内気排出機構とすることができる。この場合、例えば、天井裏505を形成する側壁502cに設けられる通気口511aを外気導入口とし、内部空間512を形成する側壁502dに設けられる通気口511bは内気排出口とすることができる。その他のことは、第10〜第19のいずれかの実施の形態と同様である。
この第20の実施の形態によれば、第10〜第19のいずれかの実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、第17の実施の形態の高清浄部屋システム510の天井裏505の部分の構成を、第18の実施の形態の高清浄部屋システム510の天井裏505の部分の構成に置き換えて構成したので、居住空間506と外気導入空間との間に設けられるガス交換膜26の面積の総計を大幅に増加させることができる。これにより、居住空間506と外気導入空間との間において、外気導入空間から居住空間506への酸素の供給、居住空間506内で発生などした不要なガスの外気導入空間への排出などの効率が飛躍的に向上し、通常の居住空間506と何ら変わらない形態のまま、居住空間506における素早い換気、居住空間506への潤沢な酸素の供給などができ、居住空間506に多くの人間が長期に亘って滞在可能な高清浄部屋システム510とすることができ、さらに、気体流路524が設けられる空間と外気導入空間とを共通の空間で構成したので、上記の作用を発揮しつつも、省スペース化を図ることができ部屋のうちの居住空間506が占める割合を大きくすることができる。
〈第21の実施の形態〉
図57は第21の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図57に示すように、この高清浄部屋システム510は、第20の実施の形態による高清浄部屋システム510の構成に、第19の実施の形態による高清浄部屋システム510の第2の内部空間512内の構成を組み合わせたものである。
外気導入・内気排出機構である天井裏505と内部空間507と内部空間512とは、例えば、天井裏505といずれか少なくとも一つの内部空間とを連通させることで共通の外気導入・内気排出機構とすることもできる。一方で、天井裏505と内部空間507と内部空間512とを三つの独立した外気導入機構および/または内気排出機構として構成する場合にあっては、これらの空間のうち少なくとも一つの空間を外気導入機構、少なくとも一つの空間を内気排出機構とすることができる。この場合、例えば、天井裏505を形成する側壁502cに設けられる通気口511aを外気導入口、内部空間507および内部空間512を形成するそれぞれの側壁に設けられる通気口511bは内気排出口として機能する。その他のことは、第10〜第19のいずれかの実施の形態と同様である。
この第21の実施の形態によれば、第10〜第20の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、通常の居住空間と何ら変わらない形態のまま、居住空間506の素早い換気、居住空間506への潤沢な酸素の供給などをさらに高めることができる高清浄部屋システム510を得ることができる。
〈第22の実施の形態〉
図58は第22の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図58に示すように、この高清浄部屋システム510は、第16の実施の形態による高清浄部屋システム510において、居住空間506の内部に100%循環フィードバック系を備えた前室540を設けたものである。
前室540は、人間が一定時間待機することのできる閉空間であって、居住空間506を隔壁541aおよび541bで仕切ることで形成される。隔壁541aおよび541bは、具体的には、例えば、上述した間仕切り壁などが用いられる。前室540は、具体的には、部屋501の側壁502b、502c、2枚の隔壁541a、541b、底面502gおよび天井壁502aで囲まれることによって形成されている。このように、居住空間506内には、人などが出入り可能な閉空間である前室540を有し、前室540は、居住空間506の内部に新たな閉空間を形成するように隔壁541aおよび541bが設けられている。前室540を構成する部屋1の側壁502cには第1の出入り口である出入り口508を有する。また、出入り口508に対向して設けられた隔壁541aには、第2の出入り口である引き戸547を有する。引き戸547は、例えば、隔壁541aおよび541bのいずれか一方に設置してもよいし、両方に設置してもよい。このように仕切られた居住空間506のうち前室540以外の部分は主室520を構成しており、引き戸547は前室540と主室520との間で出入りが可能なように構成されている。出入り口508と引き戸547とによって、主室520と部屋501の外部との間を前室540を介して出入り可能となっている。
また、前室540は、居住空間506と同様に前室540の内部と外部との間において空気の気流としての出入りが無い。前室540の内部と外部との間とは、前室540の内部と外部空間との間のみならず、前室540の内部と主室520の内部との間も含む。また、前室540の内部に気体が排出されるように、第2のファンフィルターユニットであるファンフィルターユニット544が設けられている。また、一定間隔を置いて互いに対向して設けられた隔壁517と側壁502bとで構成された内部空間507内には、第2の気体流路である気体流路543が設けられている。このように、内部空間507内には内部空間507とは隔絶して、2本の独立した気体流路524および気体流路543が形成されている。前室540を形成する隔壁517には、ファンフィルターユニット544の吸入口に対応した開口546が設けられ、ファンフィルターユニット544の吹き出し口から前室540の内部に流出する気体の全部が、開口546を通過し、開口546と吹き出し口545とを気密性を持って気体流路543が連通することによってファンフィルターユニット544へ還流するよう構成されている。
第2のファンフィルターユニットであるファンフィルターユニット544は、例えば、ファンフィルターユニット521と同様な構成を有する。ファンフィルターユニット544は、例えば、ファンフィルターユニット521よりも吐出流量の小さい前室540の容積に応じた吐出流量のものが選ばれる。天井壁502aには、ファンフィルターユニット544の吹き出し口に対応する開口が設けられており、この開口とファンフィルターユニット544の吹き出し口とが気密性を持って接続されることで、吹き出し口545が構成されている。また、開口546は、ファンフィルターユニット544の吸入口と気密性を持って接続されて構成されており、例えば、内部空間507を構成する隔壁517または中空壁の領域のうち底面502gに接する領域に形成される。開口546と吹き出し口545とが密閉して接続されることで、前室540に対して100%循環フィードバック系が設けられる。100%循環フィードバック系を構成するファンフィルターユニット544を運転すると、前室540内の空気清浄度は上述したように飛躍的に向上する。また、内部空間507は、さらに仕切られることで、気体流路543および/または気体流路524の一部を形成することもできる。具体的には、内部空間507を分割するように2枚の仕切り壁を、一定間隔を置いて互いに対向するようにして設けることで筒状の包囲部が形成される。この筒状の包囲部が、例えば、気体流路543の一部を構成する場合には、前室540に隣接する内部空間507内に形成される。また、内部空間507の上部開口全体を塞ぐようにして天井壁502aが設けられることで、この気体流路543の一部を構成する筒状の包囲部は内部空間507の他の領域から隔絶される。この筒状の包囲部を塞ぐ天井壁502aの領域に開口が設けられた天井裏505内に設けられる気体流路543と気密性を持って接続され、さらにファンフィルターユニット544と気密性を持って接続される。また、内部空間507に外気が導入されるように通気口511aおよび511bが設けられる。
また、この筒状の包囲部が、例えば、気体流路524の一部を構成する場合には、主室520に隣接する内部空間507内に形成される。この筒状の包囲部は主室520に対して設けられた100%循環フィードバック系を構成する気体流路524の一部として形成される。即ち、この筒状の包囲部は天井裏505内に設けられた気体流路524の一部と気密性を持って接続され、気体流路524は同様に気密性を持ってファンフィルターユニット521と接続される。ファンフィルターユニット521は上記と同様に吹き出し口522と気密性を持って接続されることで主室520に対して100%循環フィードバック系が形成される。
また、前室540に対して設けられた100%循環フィードバック系を構成する気体流路543は、例えば、第16の実施の形態による高清浄部屋システム510の気体流路524と同様に構成することができる。この場合、居住空間506を前室540と読み替え、気体流路524が隙間なく挿通もしくは接続可能な開口571を、気体流路543が隙間なく挿通もしくは接続可能な開口525と読み替えることができる。
また、前室540の天井壁502cの少なくとも一部をガス交換膜526で構成することにより、前室540と天井裏505との間で気体のやり取りが行われ、天井裏505には、通気口511cから外気が導入されるので、前室540には天井裏505から酸素などが供給され、前室540から天井裏505には二酸化炭素などが排出される。また、隔壁541の少なくとも一部をガス交換膜526で構成して、居住空間506と前室540とで気体のやり取りができるようにしてもよい。
引き戸547は、人が出入りする方向に垂直な方向に設けられたレール548上をスライドすることで開閉する。引き戸547は、前室540から主室520に人が出入り可能な形態を有し、人が出入りする方向に垂直な方向にスライドする形態を有していれば基本的には限定されないが、開閉の際に前室540と主室520とに対して圧力の変動をなるべく起こさない構成を有するものが好ましい。引き戸547は、具体的には、例えば、手動の引き戸、自動のスライド出入り口、半自動のスライド出入り口、巻き取り式のシャッターなどが挙げられる。このような構成を有する出入り口を引き戸547とすることで、開閉の際における前室540と主室520との間の空気流の発生を最小限とすることができる。また、引き戸547によって前室540と主室520とを出入りする際においては、開閉扉としたときに生じる衝突事故を防ぐことができ、狭い空間を有効に利用することができる。また、車椅子などで前室540と主室520とを出入りする際においても、その出入りをスムーズに行うことができる。また、引き戸547の少なくとも一部をガス交換膜526で構成してもよく、この引き戸547としては、具体的には、例えば、障子戸などが挙げられる。
図59は、前室540の一例を、前室540のみを引き戸547である障子戸から見た斜視図である。
図59に示すように、この前室540は、一方の角部を構成する側壁502b、天井壁502a、底面502gによって構成され、もう一方の角部を構成する側面が隔壁541によって構成されており、これらの壁が気密性を持って接合されることで閉空間が形成されている。
前室540は、天井裏505を外気導入空間とし、前室540の内部に設けられた開口546には、ファンフィルターユニット544に接続された気体流路543が気密性を持って接続されており、ファンフィルターユニット544の吹き出し口と、天井壁502aに設けられた吹き出し口545とが気密性を持って接続されることによって前室540に対して100%循環フィードバック系が構成されている。気体流路543のうち、気体流路543の折れ曲がり部よりも上流の部分が天井裏505内に設けられ、下流の部分は内部空間507内に設けられる。天井裏505を構成する側壁には通気口511aが設けられ、天井裏505内に外気が導入される。また、天井壁502aは、その一部がガス交換膜526で構成されることで、天井裏505と前室540との間で、ダスト微粒子を交換することなく酸素などの気体粒子を交換することができる。また、内部空間507を構成する側壁502cには通気口511bが設けられ、前室540を形成する隔壁517の一部がガス交換膜526で構成されることによって、内部空間507と前室540との間で、ダスト微粒子を交換することなく酸素などの気体粒子を交換することができる。
また、側壁502cに設けられた出入り口508に対向して設けられた隔壁541には、引き戸547である障子戸547aが設けられる。障子戸547aは、レール548上をスライドすることによって開閉する。障子戸547aは、格子状の木組とガス交換膜526とで構成された障子様の引き戸である。障子戸547aに用いられるガス交換膜526は、好適には障子紙であるが、これに限定されるものではない。
図60は、前室540の他の一例を、前室540のみを前室540の障子戸547aから見た斜視図である。
図60に示すように、この前室540は、図58において示した前室540と基本的には同様な構成を有するが、2重天井壁を有さず、気体流路543が前室540内の頂壁502h上に設けられている。また、側壁502bに設けられた出入り口508に対向して設けられた隔壁541には障子戸547aを収納する戸袋549が設けられている。戸袋549には、障子戸547aが収納されることで高まる戸袋549内の圧力を、例えば、吸入口である開口546などにパイパスするなどして逃がす機構を設けることが好ましい。これによって、障子戸547aの開閉による前室540および前室540が接続される空間における空気の流れを最小限とすることができる。
次に、この高清浄部屋システム510の動作について説明する。外部から、主室520に人間が入る場合、まず出入り口508を通じて前室540に入る。前室540に人間が入るとファンフィルターユニット544が一定時間動作して、例えば、人間から湧き出る塵埃、前室540内に外部から入った塵埃などを100%循環フィードバック系によって除去する。次に、例えば、前室540内の塵埃の粒子数が一定値以下になったら、引き戸547を開放して主室520に人間が出入り可能となるようにする。主室520においても100%循環フィードバック系が装備されているので、主室520内を常に高い空気清浄度に保つことができる。このように、この高清浄部屋システム510は、外部から人が主室520に出入りする際に、前室540を経由して主室520に出入りするように構成したので、外部と主室520との人の出入りによって主室520の清浄度が著しく低下することがなくなる。その他のことは、第10〜第21のいずれか実施の形態と同様である。
この第22の実施の形態によれば、第10〜第21のいずれかの実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、居住空間506内に新たに100%循環フィードバック系が設けられた前室540を設け、外部から人が主室520に人間などが出入りする際には、前室540を経由しなければ主室520に出入りできないように構成したので、外部と主室520との人の出入りの際に、主室520にダストを含む外気が直接流れ込むことよる主室520の清浄度の著しい低下が起こらない。また、前室540と主室520との出入りを可能にする出入り口を引き戸547としたので、主室520と前室540とを出入りする場合において圧力の変動を最小限とすることができ、これによって、引き戸547の開閉の際において、ダストを含む外気が主室520内に流れ込むような空気流の発生を最小限とすることができる。また、無機質的なクリーンルーム内にいるという感覚を全く生じさせない中、見た目全く通常の純和風の外観を有する部屋そのものが、実は、病院無菌室(US209Dクラス100)以上の清浄度をもつといった空間・住環境にて生活することができるようになる。
〈第23の実施の形態〉
図61は第23の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図61に示すように、この高清浄部屋システム510は、第17の実施の形態による高清浄部屋システム510において、気体流路524を側壁502d側に設け、気体流路524の折れ曲り部よりも下の部分を主室520内に設けたものである。このように、開口523および気体流路524が、内部空間507が形成された側壁502bとは反対側の側壁502dに設けられることにより、内部空間507を形成する壁面に設けられるガス交換膜526の面積を大幅に増加させることができる。これにより、内部空間507と居住空間506との気体の交換量が大幅に増加し、居住空間506に多数の人間が長時間滞在することになっても安全性を担保できる。この高清浄部屋システム510のその他のことは、第14の実施の形態の高清浄部屋システム10と同様である。
この第23の実施の形態によれば、第22の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、内壁517におけるガス交換膜526の割合を大幅に増加させることができるので、内部空間507を外気導入空間としたときに、内部空間507と居住空間506との間で交換できる気体の量を大幅に増加することができる。これにより、居住空間506に多数の人間が長時間滞在することになっても安全性を担保できる。
〈第24の実施の形態〉
図62は第24の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図62に示すように、この高清浄部屋システム510は、第18の実施の形態による高清浄部屋システム510において、外気導入空間である内部空間507、天井裏505および内部空間512のうち少なくとも1箇所を連通させて外気導入空間を構成し、気体流路524を、この外気導入空間の内部に外気導入空間とは隔絶するようにして密閉して構成することで開口523と吹き出し口522とを密閉して接続したものである。また、外気導入空間を形成している部屋501の側壁502cの天井裏505を構成する部分には通気口511a、天井裏505を構成する部分には通気口511bが形成され、外気導入空間である内部空間507を構成する天井壁502aおよび隔壁517の少なくとも一部をガス交換膜526で構成したものである。
気体流路524は、例えば、第20の実施の形態による高清浄部屋システム510における気体流路524と同様に構成することができる。この高清浄部屋システム510のその他のことは、第10〜第22のいずれかの実施の形態の高清浄部屋システム510と同様に構成することができる。
この第24の実施の形態によれば、第22の実施の形態と同様な利点を得ることがで
きるとともに、内部空間507と内部空間512とを外気導入空間とし、それぞれの外気導入空間と居住空間506とを隔てる壁の少なくとも一部をガス交換膜526で構成したので、外気導入空間と居住空間506とで交換できる気体の量を大幅に増加することができる。これにより、居住空間506に多数の人間が長時間滞在することになっても安全性を担保できる。
〈第25の実施の形態〉
図63は第25の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図63に示すように、この高清浄部屋システム510は、第23の実施の形態による高清浄部屋システム510において、内部空間507と天井裏505と内部空間512とを連通させないようにして構成し、それぞれの空間に独立して通気口511aおよび通気口511bを設けたものである。
内部空間507と天井裏505と内部空間512とは、互いに独立した閉空間を構成しているので、それぞれの空間において、居住空間506と独立して期待のやり取りをすることができる。これにより、通気口511aを、例えば、外気導入口、通気口511bを、例えば、排出口として独立して構成することができ、居住空間506への外気の導入および排出を独立した複数の外気導入空間を通じて行うことができるので、居住空間506に外気の導入のみをする経路および居住空間506から外部へ不要なガスを排出のみをする経路を構成することができる。その他のことは、第18の実施の形態の高清浄部屋システム510と同様である。
この第25の実施の形態によれば、第22の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、内部空間507と天井裏505と内部空間512とは、互いに独立した閉空間を構成しているので、居住空間506との気体のやり取りを、それぞれ独立してすることができる。これにより、外気導入口と排出口とを独立して構成することができ、居住空間506への外気の導入および排出を独立した複数の外気導入空間を通じて行うことができる。これにより、居住空間506に外気の導入のみをする経路および居住空間506から外部へ不要なガスを排出のみをする経路を構成することができる。
〈第26の実施の形態〉
図64は第26の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。なお、図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋501内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋501の内部の構成は実線で示している。
図64に示すように、この高清浄部屋システム510は、第10〜第25のいずれかの実施の形態による高清浄部屋システム510の外壁の外部に接するようにして100%循環フィードバック系を有する前室540を設けたものである。
前室540は100%循環フィードバック系を有する密閉空間であれば基本的にはどのように構成されていても良いが、具体的には、例えば、第22の実施の形態による高清浄部屋システム510において構成された前室540と同様に構成することができる。
前室540を第10〜第21のいずれかの実施の形態による高清浄部屋システム510の外部に設置する場合には、前室540は、高清浄部屋システム510の部屋501を構成する側面のうち、出入り口508を有する面に設けられる。前室540を構成する側面のうち部屋501と対向する面は、前室540と主室520との間で人間が出入りできるように構成されることが好ましく、例えば、前室540に出入り口508に対応した開口を設けてもよいし、前室540の出入り口508に対向する全面を開放にしてもよい。また、例えば、出入り口508を引き戸とすることが好ましい。前室540と主室520との接続は、前室540と主室520とが密閉されて接続されていれば基本的には限定されないが、前室540が部屋501の出入り口508を有する側面を覆うようにして密閉して設けられることが好ましい。また、第21〜第24のいずれかの実施の形態による高清浄部屋システム510の外部に前室540を設置する場合には、部屋501の内部に前室を有するので、前室540は第2の前室として外部に設置される。
また、部屋501と主室520との間には、例えば、それぞれが形成する閉空間の内部に形成された外気導入空間を繋ぐ連結路である貫通口577を設けることが好ましい。この貫通口577を設けることにより、前室540の設置によって、部屋501に設けられた通気口511が塞がれてしまっても、部屋501内部に形成された外気導入空間に外気を導入することができる。また、例えば、主室520と前室540とを隔てる部屋501の少なくとも一部をガス交換膜526で構成したり、出入り口508の主要な面の少なくとも一部をガス交換膜526で構成したり、障子戸547で構成したりすることにより主室520と前室540との間で気体を交換可能にすることもできる。
図65は第26の実施の形態の変形例である高清浄部屋システム510を示す。図中の斜線部は高清浄部屋システム510の構成を明確にするために示したものであり、断面を示すものではない。図中、破線部は、部屋1内部に設けられた、隔壁、天井壁などの壁を示し、その他の部屋1の内部の構成は実線で示している。
図65に示すように、この高清浄部屋システム510は、第26の実施の形態による高清浄部屋システム510の前室540を、部屋501の外部に設けられた廊下533に設置したものである。
前室540は基本的には第22の実施の形態による高清浄部屋システム510における前室540と同様な構成を有するが、気体流路543は、例えば、部屋501の側面のうち廊下533が延びる方向と平行に設けられる。隔壁517aが前室540の内部に設けられることによって、内部空間507aが内部空間507と同様に形成される。また、例えば、部屋501の側面のうち廊下533が延びる方向とする2枚の側面に引き戸547cが設置されることで、前室540は通り抜け可能となる。その他のことは、第10〜第24の実施のいずれかの形態による高清浄部屋システム510と同様である。
この第26の実施の形態によれば、第10〜第25の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、内部に前室540を設置できないような狭い部屋であっても、外部に前室540を設置することによって、高清浄環境を常に維持できる部屋とすることができる。また、例えば、屋内部屋であれば、部屋に通じる廊下を隔壁などによって仕切ることによって前室540にすることができる。
〈第27の実施の形態〉
図66は第27の実施の形態による高清浄部屋システム510を示す。
図66に示すように、この高清浄部屋システム510は、第10〜第26のいずれかの実施の形態による高清浄部屋システム510において、内部空間507もしくは天井裏505に送風ファンを2系統備えるガス交換装置580を設けたものである。内部空間507と天井裏505とは空気が連通する構成を有している。ガス交換装置580は、ガス交換部570の一方の側面に外気導入口571と内気回収口572とを有し、もう一方の側面に排出口573と還流口574とを有する。外気導入口571は、内部空間507に通気口511aから導入された外気をガス交換部570内に導入する。また、内気回収口572は吸入管575に接続され、吸入管575は天井壁502aを気密性を持って挿通されることで居住空間506内に達し、吸入管575の先端部に設けられた開口から、居住空間506内において人576などによって発せられた臭いのきつい空気や汚染された空気を回収する。ガス交換装置580に接続された吸入管575と還流口574とは、居住空間506内においてそれぞれの開口が対になって設けられている。排出口573は、ガス交換装置580によって塵埃・菌等の粒子は交換することなく、ガス成分のみ外気と平衡状態に近づけられた、臭い分子等の濃度の小さい清浄化された空気を内部空間507に還流する。また、還流口574にはノズル577が接続され、ノズル577は天井壁502aに、ノズル577の出口に対応する開口に気密性を持って接続され、ガス交換装置580によって清浄化された空気が居住空間506内に戻される。また、居住空間506内にはスタンドアローンの空気清浄装置578あるいは光触媒脱臭装置が設置される。この場合、空気清浄装置578の目詰まりが皆無となるので、スタンドアローンの空気清浄器の装置寿命を伸ばし、そのフィルター能力を本来の能力の1000倍以上に引上げることができる。即ち、ダスト捕集効率γ=0.5では、ゴミ密度n=(1−0.5)×N0 よりn=3×105 程度となる。一方で、図38に示すように、スタンドアローンの空気清浄装置はクラス300が達成されている。よって、その比は、3×105 /300〜1000となる。また、ガス交換装置580に代えて、例えば、空気濾過器或いは空気清浄機を同様な構成で設置して用いてもよい。
図67〜図70は、ガス交換装置580の例を示した斜視図である。
図67〜図70に示すように、ガス交換装置580の内部にガス交換膜526を複数枚備えることによって、酸素が減少した空気や二酸化炭素が増加した空気、或いは、臭気や化学物質を含む汚れた部屋501内部の空気が、外気との間のガス交換・分子の相互濃度拡散により、濃度を外気と同じ濃度に極めて近い値に戻されて、部屋501内に還流する。この際、正味の空気流の交換はないので、塵埃の外気からの紛れ込みは無く、空気は分子成分的にのみ清浄化される。即ち、導入口571から導入された外気と内気回収口572から導入される部屋501内部の気体が、多重に配されたガス交換膜526を介してガス成分の交換を行うことで、内気のガス成分は、外気のそれにほぼ等しくなって、再び、室内に還流する。
ガス交換装置580を個別に説明する。図67に示すように、ガス交換装置580Aは、外気、内気の導入、送出を平行に行うことで、気流のハンドリングが容易なタイプであり、ガス交換膜526をジグザグ状に、一筆書きの要領でボックス内に配置するので、作製上、ガス交換膜526は一枚膜で構成できるメリットがある。また、図68に示すように、ガス交換装置580Bは、ガス交換装置580Aと同じく外気、内気の導入、送出を平行に行う構造を有し、さらに、ガス交換膜526を平行に多数枚並べるタイプで、各スロット毎に、外気と内気を別々に導入する。このように構成されることで、ガス交換膜526の面間隔が一定で気流に淀み層が少なくできるメリットがある。また、図69に示すように、ガス交換装置580Cもガス交換膜526を平行に多数枚並べるタイプであるが、外気導入と内気の導入方向を直交させることで、導入口571をひとまとめにでき、構造を簡単にすることができる。また、図70に示すように、ガス交換装置580Dは、ガス交換装置580Bおよび580Cの構造の利点を組み合わせたもので、外気、内気の導入、送出を平行に行いつつ、且つ、外気、部屋501内の空気について、各々、その導入口をひとまとめにできるメリットがある。ガス交換装置580Dのガス交換部570の寸法は、具体的には、例えば、高さ45[cm]、幅が90[cm]で長さが180[cm]程度であり、ガス交換膜526は、例えば、3[mm]以上60[mm]以下程度の間隔dで張る。これにより、12[m2 ]以上240[m2 ]以下の極めて広い実効面積においてガス交換が可能となる。但し、dは、上記に限定されるものでなく、1〜2[mm]もガス交換時間短縮上、大変有効である。従って、ガス交換装置580Dは、前述の図32において示したガス交換膜526のガス交換能力の数十倍乃至数百倍の性能を有する。ガス交換装置580Dは、上述の通り、外気用と部屋還流空気(内気)用に2系統の送風ファンを装備し、これらが空気を能動的に送り出すので、ガス交換面を挟んでの二つの気流の速さを加味すると、更に、この10倍程度のガス交換能力向上も可能である。
上記、ガス交換装置580内のガス交換膜526の総面積は、最低限、式(15)を満たせば、人が内部で活動するに十分な酸素濃度が担保され、この面積が大きければ大き
いほど、これに加えて、脱臭や有害ガス排出機能も高まっていく。即ち、(V/A)/(D/L)}によるスケーリングは、また、ガス交換装置580のガス交換部570が有する“ガス交換膜/内気/ガス交換膜/外気”という繰り返し構造の“単位胞”についても当てはめることができる。例えば、図29或いは図32に示した高清浄部屋システム510の場合、V(〜24[m3 ])/A(〜1.8[m2 ])〜13[m]程度であるのに対し、図66〜図70に示したガス交換装置580では、ガス交換膜526の面間隔dが典型的には数[mm]オーダーであるので、V(=A×d)/A=d〜3[mm]となる。両者の比13[m]/3[mm]〜4000[mm]より、ガス交換装置580のガス交換の時定数は、例えば図33Bで観測された“40分”のオーダーの量から、その4000分の1の短さ、即ち、約1秒弱のオーダーの時間であると分かる。例えば、体積30[m3 ]の居住空間に対しては、ガス交換装置580へ流入する外気、内気の風量は、定常時か緊急時かに応じて、0.25[m3 /min]〜数十[m3 /min]程度の値をとる(この値は、部屋の体積に対してスケールする)ので、上記のガス交換装置580の典型的サイズ(0.45×0.9×1.8[m3 ]〜0.8[m3 ])からすると、装置内を気流が通過する時間は、数秒〜約1分程度の時間となる。これは、上記のガス交換装置580のガス交換時定数の数倍以上であるので、外気と内気は、ガス交換装置580の内部を流れる間には十分にガス交換を行い、出口の部分では、両者はほぼ平衡状態に達しうることがわかる。このように、外気と、部屋501内の空気とのガス交換を、各ガス交換面の中央部で面を挟んで流れる二つの気流の間で、効率的に分子の相互濃度拡散を行わせることができる。ガス交換装置580に流れ込む内気の風量に対し、同じく流れ込む外気の風量を等しいかそれ以上とすることが望ましい。好適には、ガス交換装置580内を流れる内気の風量に対し、数倍乃至10倍以上とするが、この際には、同時に、ガス交換膜を挟んで流れる、内気と外気の二つの気流の速度ベクトルにおいて、平行成分が大きい配置をとることで、ベルヌーイの定理に従って、ガス交換膜を介する圧力差をほぼゼロにすることが望ましい。この二つの気流の速度ベクトルは完全に平行であることがベストであるが、各ガス交換面の中央部で面を挟んで対角線状にクロスさせることもこれに次いで大変有効である。このため、外気の流れる部分の断面積を、内気のそれより、上記の風量の比と相殺する様に大きくすることが肝要である。即ち、ガス交換装置580における、外気流量/内気流量の比を、外気流路におけるガス交換膜間隔/内気流路におけるガス交換膜間隔の比に一致させることが好ましい。また、上記ガス交換膜526の両側の空気流が平行、或いは準平行である場合には、この流れの方向に直交する面で切ったガス交換膜526の断面を、ジグザグ(山折り谷折り)形状として実効面積を増やし、ガス交換能を高めることも有効である。
また、例えば、この実施の形態において示した高清浄部屋システム510に設けられるガス交換装置580を、ガス交換装置580Dとすると、ガス交換装置580Dのガス交換部570の内部に設けられたガス交換膜526は、天井壁502aに対して垂直に並ぶことになる。即ち、ガス交換膜526の面の法線ベクトルは、重力方向と直交する。従って、外気が含む多様な塵埃は、ガス交換膜526の面上に降下するのではなく、ガス交換部570を構成する壁面上、例えば、図71向かって手前の面上に留まるのみである。従って、ガス交換装置580Dのガス交換膜526のガス交換能力は、目詰まりの問題から格段に開放される。
高清浄部屋システム510を上述のようにして構成することで、局所排気系を備えた高清浄部屋システム510を実現することができる。例えば、養護ホームのオムツ交換時等の局所排気が望ましいときにこの高清浄部屋システム510を用いることで、内部の清浄度を犠牲にせず、且つ、局所的な異臭の発生にも対応できるようになる。また、この高清浄部屋システム510は、溶剤などを使う塗装工程を清浄環境を維持しながら、安全に行うことができる。その他のことは、第10〜第26のいずれかの実施の形態の高清浄部屋システム510と同様である。
この第27の実施の形態によれば、第10〜第26の実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、局所排気系を備えた高清浄部屋システム510を実現することができる。例えば、養護ホームのオムツ交換時等の局所排気が望ましいときにこの高清浄部屋システム510を用いることで、内部の清浄度を犠牲にせず、且つ、局所的な異臭の発生にも対応できるようになる。また、この高清浄部屋システム510は、溶剤などを使う塗装工程を清浄環境を維持しながら、安全に行うことができる。
〈第28の実施の形態〉
図71は第28の実施の形態である高清浄部屋システム510を示す。この高清浄部屋システム510は、第12の実施の形態で示した高清浄部屋システム510と同様に複数の部屋501を連結した形態を有している。図71に示すように、高清浄部屋システム510は、主室520と前室540とを有する部屋501が廊下533に沿って四つ連結されているが、連結数は4に限られることなく、適宜選択することができる。部屋501の左側の側壁が、内部空間を内包する構造を有する壁509となっている。また、それぞれの部屋501は、前室540を備えており、主室520の清浄度を破ることなく、主室520と外部の間を行き来できる。
部屋501は、前室540と主室520とを有する。前室540は廊下533に面する側壁に出入り口508を有し、ユニットバスなどのユーティリティースペース519に接し、出入り口508と互いに対向するようにして設けられた障子戸547aによって部屋501の内部が仕切られることによって形成される。各部屋501の図中向かって左側の側壁は、第10の実施の形態において示した壁509の構造を有している。また、図71に示す構造から分かるように、ここに用いられる壁509は、重力に沿う方向で内部空間597へのフレッシュエアの出し入れを行う図22Bのタイプであり、壁509の頂面には外気導入口511eと内気排出口511fとが設けられており、壁509の頂面は天井壁502aと同一平面上にあるように設けられている。前室540の構成は、第11および第22〜第26のいずれかの実施の形態において示した前室540の構成を適宜選択することが可能である。部屋501の内部の構成のうち、前室540以外の部分は主室520を構成するため、部屋501内に前室540を備えることで、主室520の清浄度を破ることなく、主室520と外部との間を行き来できる。主室520の構成は、図66において示した第27の実施の形態による部屋501(居住空間506)と同様な構成を有しており、例えば、気体流路524の内部にはさらに光触媒561が設けられている。この光触媒561の設置の有無は、主室520の用途に応じて、適宜選択することができる。部屋501の主室520側の構成は、具体的には、主室520上の天井裏505に、主室520に空気が吹き出し可能なようにファンフィルターユニット521が設けられており、主室520と内部空間507とを隔てる壁509aの一部がガス交換膜526で構成されており、内部空間507内の空気と主室520内の空気とがやり取り可能となっている。
主室520における天井裏505側の天井壁502a上には、外気導入ダクト583aと排気ダクト583bとが設けられている。外気導入ダクト583aは、四つの連なる部屋501を横断するようにして設けられ、外気導入ダクト583aの一方の端部である外気吸気口585にはシロッコファンなどの送風機構582を有する。排気ダクト583bも、外気導入ダクト583aと同様に設けられ、排気ダクト583bの外気吸気口585側の端部である排気口586にはシロッコファンなどの送風機構582を有する。また、外気導入ダクト583aと、排気ダクト583bとは一定間隔を置いて互いに平行に設けられている。外気導入ダクト583aは、各々の部屋501の外気導入口511eを気密性を持って順に連結するようにして設けられ、各々の部屋501の外気導入口511eには内部空間507内に外気を導入する管583cが接続される。また、排気ダクト583dは、各々の部屋501の内気排出口511fを気密性を持って順に連結するようにして設けられ、各々の部屋501の内気排出口511fには内部 空間507内から気体を排出する管583dが接続されている。このように構成されることで、外気吸気口585から吸入された外気は、外気導入ダクト583aを通り外気導入口511eを介して各部屋501の壁509の内部空間507に順に導入され、各部屋501の壁509の内部空間507から内気排出口511fを経て排出される内気は、順に排出され、排気ダクト583bを通って排気口586から排出される。また、管583cは外気導入口となる先端開口部が、部屋501の床近傍となるように構成され、管583dは内気排出口となる先端開口部が天井壁502aの近傍となるように構成される。この構成は、例えば、夏など外気吸気口585から導入される空気が暖かい場合に、空気の循環効率が高まるが、これに限られるものではなく、例えば、管583cと管583dの長さを逆転させることで、冬など外気吸気口585から導入される空気が冷たい場合に、空気の循環効率の高まる構造とすることができる。特に後者は、ガス交換膜526を挟む二つの気流の速度ベクトルにおいて平行成分が大きくなることからも推奨される配置である。内部空間507内の外気導入部および排出部は、内部空間507内の領域のうち気体流路524が形成されていない領域から少なくとも一部が選ばれる。
主室520内の内壁509a側の角部502箇所には、二つのファンフィルターユニット578が載置されている。ファンフィルターユニット578は、風量がファンフィルターユニット521の風量の少なくとも数分の一、望ましくは一桁以上小さく、除塵能力と送風能力を有する機器であれば基本的には限定されるものではないが、例えば、主室520の容積をVとすると、V/2h[m3 /h]以上であることが好ましく、空気供給量が15[m3 /h]以上66[m3 /h]以下の小流量ファンフィルターユニットであることが好ましい。小流量ファンフィルターユニットとしては、例えば、ブルーエア社製のブルーエアミニ(商品名)が好適である。図53は、この小流量ファンフィルターユニットの概観を示した斜視図である。この小流量ファンフィルターユニットは、本体部578aに、フィルター部578bが組み合わされて構成され、フィルター部578bの背面部から吸入された空気は本体部578aの前面から吹き出されるようにして、本体部578aの内部に送風機構が設けられる。この小流量ファンフィルターユニットは、その外寸は幅が160[mm]、奥行き95[mm]、高さ190[mm]、重量が0.7kg(フィルター含む)、運転音が44[dB]、清浄空気供給量が29[m3 /h]、定格消費電力は5[W]である。また、この小流量ファンフィルターユニットは、主室520の内部で設置位置を変更することが可能である。また、内部空間507と主室520との境界にファンフィルターユニット578を二つ設置し、一方のファンフィルターユニット578が外気の導入をするように、もう一方のファンフィルターユニット578を内気の排気をするように設置することで主室と外部との換気機構とすることもできる。この場合、二つのファンフィルターユニット578は一方が外気を吸気し、もう片方は内気を排気するため、この場合においても、内気排気用のファンフィルターユニット578の寿命・効率を、開放系で用いる場合に比べ数百倍以上に高めることができることは維持される。また、この二つのファンフィルターユニット578は、主室520と廊下や戸外等との間に設置してもよい。このことにより、例えば、時を経た場合のこれら小流量ファンフィルターユニットの交換の“ロータリー交換”が可能となる。即ち、老朽化した外気吸気口585側の送風機構582をそれまで内気排気に用いていたファンフィルターユニット578で置き換え、新品のファンフィルターユニット578を内気排気用に設置することが勧められる。その他のことは、第10〜第27のいずれかの実施の形態と同様である。
この第28の実施の形態によれば、第10〜第27のいずれかの実施の形態と同様な利点を得ることができるとともに、部屋501を複数連結し、各部屋501の外気導入部をダクトによって連結し、各部屋501の排出部を別のダクトによって連結し、それぞれのダクトに送風機構を設けたので、複数連結された部屋501への外気導入および内気排出を一括で行うことができる。また、多数の部屋501を有する集合住宅、介護ホーム、病院、或いは塗装工場などに対し必要に応じて、高清浄部屋システム10の構成を適宜選択し、さらに、ガス交換装置580を組み込むなどすることで、簡易に低塵埃空間を得られるだけでなく、化学物質、臭い、有機溶剤分子なども短時間に排出・分解できる超高清浄空間を得ることができる。高清浄部屋システム510をこのように構成することで、中で療養する人の健康回復を早めたり、或いは、中で塗装作業等に従事する人々の胆管ガン罹患リスク等を低減したりすることができる。
〈第29の実施の形態〉
図72は第29の実施の形態である高清浄部屋システム510を示す。この高清浄環境システム510は、第28の実施の形態において示した高清浄部屋システム510の、連結された複数の部屋501の居住空間を連通させ、この連通した部位に一つ或は少数のファンフィルターユニット521を配置した集中システムである。
図72に示すように、高清浄環境システム510は、主室520と前室540とを有する部屋501が四つ連結されており、図71において示した高清浄環境システム510と基本的に同様な構成を有する。天井裏505側の天井壁502a上には、吸気側ダクト587aと送風側ダクト587bと吸気側ダクト587aと送風側ダクト587bとを連結する連結ダクト587cをさらに有する。吸気側ダクト587aと送風側ダクト587bとは一定距離を置いて互いに対向して設けられ、外気導入ダクト583aと排気ダクト583bとで挟まれる領域に設けられる。この場合、吸気側ダクト587aおよび送風側ダクト587bは、外気導入ダクト583aおよび排気ダクト583bと離れて設けられることが好ましいがこれに限定されるものではない。
各部屋501の壁509の内部空間507内には、天井壁502aに設けられた開口である、吹き出し口522が設けられており、吸気側ダクト587aは、各部屋501の吹き出し口522を順に接続するようにして設けられる。また、吹き出し口522の上流部には部屋501に風が送り出されるようにして各部屋501ごとに送風部588が設ける形態を有してもよく、その場合には、吸気側ダクト587aは、各部屋501の送風部588を気密性を持って順に接続される。また、各部屋501を構成する壁509の頂壁には、外気導入口511eおよび内気排出口511fに加えて、開口525が設けられている。開口525は、外気導入口511eと内気排出口511fとの間に設けられ、開口525と、内壁509aに設けられた開口523とは、気体流路524によって気密性を持って接続されている。吸気側ダクト587aは、各部屋501の開口525を順に接続するようにして設けられている。吸気側ダクト587aの下流側の端部と送風側ダクト587bの上流側の端部とは、部屋501の外部に設けられた連結ダクト587cで連結されており、連結ダクト587cの内部には光触媒561とファンフィルターユニット521とが設けられている。ファンフィルターユニット521は、例えば、集中空気濾過器、集中空気清浄機などで構成されるが、例えば、上記に示した、ガス交換装置580を用いることが好ましい。光触媒561は、例えば、光触媒材料を用いたフィルター、このフィルターを用いた空気清浄装置などが好適である。また、ファンフィルターユニット521は、例えば、大容量ファンフィルターユニットであることが好ましく、例えば、主室520の容積が45m3 の場合、各部屋当たり空気供給量が4[m3 /min]以上22[m3 /min]以下であることが好ましい。また、吸気側ダクト587aには、各部屋501の端に設けられた壁509に格納された気体流路524を通じて順に空気が送り出され、全ての部屋501からダクト587a内に空気が送り出され合流した後に、連結ダクト587cに内部に入って90度方向を転換する。連結ダクト587cに内部に入った後はファンフィルターユニット521と光触媒561とを順次通過し、送風側ダクト587bの内部に入ってさらに90度方向転換をして、各部屋501に設けられた吹き出し口522から、各主室520に気体が送り出される。このとき、吸気側ダクト587aの上流端部に接続される気体流路524と送風側ダクト587bの下流端部に接続される吹き出し口522とが、同じ主室520内部に設けられているので、各部屋501において、当該部屋内気を取り込む気体流路524下端の開口523と、当該吸引空気を清浄化処理後、その吸引気体全量を、ファンフィルターユニット521と光触媒561で処理後、再び、上記部屋内部に戻す吹き出し口522とが、対となって設けられており、全体として密閉されて構成されている。このように構成されることで、各部屋501のそれぞれに設けられた吸入口である気体流路524下端の開口523と、吹き出し口522とが、部屋501の外部に設置されたファンフィルターユニット521と連通する。このことから、上述した100%循環フィードバック系を、一つのファンフィルターユニット521で四つの部屋501に同時に設けることができ、一つのファンフィルターユニット521で複数の部屋501に清浄空気を供給することができる。
図73は第29の実施の形態である高清浄部屋システム510の変形例を示す。この高清浄部屋システム510は、図72において示した高清浄部屋システム510のうち前室540の構成を省略したものである。その他の構成は、図72において示した高清浄部屋システム510と同様に構成することができる。この形態は、部屋501の出入りの頻度が少なく、相対的に居住空間内部に滞在する時間が長い場合に、好適なシステムである。その他のことは、第10〜第28のいずれかの実施の形態と同様である。
この第29の実施の形態によれば、第10〜第28のいずれかの実施の形態と同様な利点を有するとともに、100%循環フィードバック系を一つのファンフィルターユニット521で複数の部屋501に同時に設けることができ、一つのファンフィルターユニット521で複数の部屋501に清浄空気を供給することができ、このような集中システムにより、複数の部屋501の一括清浄化を行うことができる。
〈第30の実施の形態〉
図75A、BおよびCは、野菜や果物などの各種の農作物の生産に使用される農業用ビニールハウスや温室などとして用いられる第30の実施の形態による放射性物質および放射線対応高清浄環境システムを示す。図75Aは上面図、図75Bは正面図、図75Cは右側面図である。
図75A、BおよびCに示すように、この放射性物質および放射線対応高清浄環境システムは、直方体形状の箱の上部が丸屋根となった箱状の密閉可能な包囲体11を有する。この包囲体11の一つの側壁および上壁は、所定の間隔をおいて設けられた外壁11aと内壁11bとからなる二重壁により構成されている。包囲体11の内部は、この二重壁の間の空間により構成される気体流路12と、この気体流路12以外の空間からなる高清浄環境室13とに分割されている。包囲体11の側壁部の内壁11bの下端と包囲体11の底面との間には所定の高さの通風孔14がスリット状に設けられている。包囲体11の底部は開放されており、包囲体11を地面に設置した時には、包囲体11の底部に地面が露出するようになっている。
包囲体11および内壁11bは、農作物の生育に必要な太陽光を高清浄環境室13の内部に取り込むため、太陽光に対して透明な材料により構成されている。この透明材料としては、農業用ビニールハウスや温室などに従来より用いられている各種の透明材料を用いることができ、必要に応じて選ばれるが、具体例を挙げると、農業用ポリ塩化ビニルフィルム、農業用ポリオレフィン系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂フィルムなどの各種の樹脂製のフィルムのほか、ガラスなどである。包囲体11は、典型的には、鋼材などの発塵が少ない構造用材料からなる骨格(躯体)にこれらのフィルムを被覆したものである。包囲体11が地面に設置される時には、包囲体11の外周部下端と地面との間の隙間から外気が流入しないようにするために、例えば、包囲体11の外周部下端を地面に埋め込む。この際、風によって包囲体11の外周部下端が地面から容易に離れないようにするために、包囲体11の外周部下端を杭などの固定具を用いて地面に埋め込むようにすることが望ましい。また、高清浄環境室13の内部の酸素濃度を人が中で安全に作業することができるように十分に高く保つために、包囲体11の少なくとも一部、例えば包囲体11の互いに対向する一対の側面は、ダスト微粒子を100%は通さないが、気体は通す隔壁(ガス交換膜)により構成され、この隔壁により高清浄環境室13の内外のガス濃度の平衡を保つことができるようになっている。この隔壁の総面積は、高清浄環境室13の容積や高清浄環境室13の中に入って作業をする人数などに応じて適宜選ばれるが、一例を挙げると、包囲体11の互いに対向する一対の側面に1m×1mの大きさの隔壁をそれぞれ設け、その時の隔壁の総面積は2m2 である。この隔壁の材料としては、例えばPTFEフィルムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
包囲体11の上壁部の内壁11bに放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が設置されていること、この放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の出口から排出される空気が高清浄環境室13に供給されること、包囲体11の内壁11bに平行に均一流形成板16が設けられていることは、第1の実施の形態と同様である。ただし、均一流形成板16は、農作物の生育に必要な太陽光を高清浄環境室13の内部に取り込むため、太陽光に対して透明な材料、例えばアクリル樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)などや農業用ポリ塩化ビニル、農業用ポリオレフィン系材料、フッ素樹脂などにより構成する。
包囲体11の一端には、包囲体11と一体的に前室18が設けられている。前室18の前面18aはファスナー19の開け閉めにより開閉可能になっており、このファスナー19を開けた状態で外部から人が前室18に入ることができるようになっている。前室18に人が入った後にファスナー19を閉め、前室18の内部を外気から分離する。前室18から外部に人が出る場合も同様である。包囲体11と前室18との間は包囲体11の側壁11dにより互いに分離されている。側壁11dはファスナー20の開け閉めにより開閉可能になっており、このファスナー20を開けた状態で人が前室18から高清浄環境室13の内部に入ることができるようになっている。高清浄環境室13に人が入った後にファスナー20を閉め、高清浄環境室13の内部を前室18から分離する。高清浄環境室13から前室18に人が出る場合も同様である。
この放射性物質および放射線対応高清浄環境システムの運転方法は、第1の実施の形態と同様である。
この第30の実施の形態による放射性物質および放射線対応高清浄環境システムによれば、大気が放射能で汚染される事故が発生しても、高清浄環境室13内においては、放射性物質および/または放射性物質含有微粒子が大幅に低減され、ファンフィルターユニット15の塵埃フィルター153に捕集された放射性物質および/または放射性物質含有微粒子から放射される放射線による被曝も防止することができる高清浄空気環境を維持することができる。このため、この高清浄環境室13内の高清浄空気環境で農作物を生産することができ、これによって放射性物質および/または放射性物質含有微粒子フリーの安全安心な農作物を生産することができる。
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、第1の実施の形態においては、図1に示すように、包囲体11の上壁部の内壁11b上に放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15が設置されているが、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の筐体151や放射線遮蔽部材156、159の重量が内壁11bに与える負荷をなくすべく、例えば通風孔14の前または後ろに床置きにして設置することも可能である。また、図18〜図20に示す放射性廃棄物の減容処理システムは、例えば、生レバーの放射線による殺菌システムに用いることができる。これ以外の放射線利用産業における突発的事態に遭遇しても、空気中浮遊の放射性物質を急速に捕捉し、かつそこからの外部への放射線をシャットアウトすることができる。また、第6〜第8の実施の形態において用いた燃焼/圧縮装置303は、第1〜第3の実施の形態において用いた放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15の使用後の処理自体にも用いることができる。すなわち、例えば、図3Bに示す筐体151の両側面部をヒンジ等で跳ね上げ可能に構成しておき、燃焼/圧縮装置303の内部において、例えば遠隔TVモニターにて観察しつつ、ロボットアーム等で、筐体151の両側面部をヒンジ等で跳ね上げた後に露出した塵埃フィルター153を図3Bの左右方向にところてん式に押し出すことで、筐体151と塵埃フィルター153とを互いに分離する。筐体151は、残留放射線等が無いことを確認することができれば、燃焼/圧縮装置303の外部に取り出し再利用する。残留放射線等が観測されたり筐体151の放射化が見られる場合には、例えば、第4または第5の実施の形態と同様にして圧縮により減容処理を行うことができる。この場合、筐体151が例えば図15Bに示すような構造を有する場合には、圧縮による減容処理を効率的に行うことができる。あるいは、燃焼/圧縮装置303内で使用済み塵埃フィルター153を減容処理することもできる。
また、例えば、図1A〜Cに示す第1の実施の形態による放射性物質および放射線対応高清浄環境システム(出入り口は引き戸式、ドア式を問わず)は、PETや造影などの放射線医療室に用いて好適である。失禁等による突発的事態の収束において、空気中浮遊の放射性物質を急速に捕捉し、閉じ込めることができ、極めて有効である。
また、第10〜第29の実施の形態で示した壁509は、必ずしも部屋501の側壁に限られることなく、天井壁や床壁の一部であってもよい。また、こうして算出したガス交換膜526の面積Aが、主室520への適切な酸素供給能を与える値である場合には、ガス交換膜526は、外界(例えば戸外、廊下の空間、或いは、ガス交換膜よりなるテント状構造である[その側面・天井面の一角または全てを占めるガス交換膜の面積が上で述べた必要面積の条件を満たす]場合には、このテントが置かれる部屋そのもの)に直接接していても良い。
また、部屋501は、部屋501の内部と外部との間においては、予めHEPAフィルター等を備えたファンフィルターユニットで塵埃を除去した空気を、部屋501内の空気が2時間で一回転する程度の低風量で導入し、同じ機種のもう一台のファンフィルターユニットにより、部屋1より同量を外部へ放出することも良い。
また、上記において示したガス交換装置580の外気導入口571を、例えば図71〜図73に示した高清浄部屋システム510の外気吸気口585に繋ぐとともに、ガス交換装置580の排出口573を同排気口586に繋ぐことで、ガス交換機構とすることができる。この場合、ガス交換装置580に流れ込む内気の流量を少なくとも2時間で居住空間506の空気が一回転する以上の風量とすることが好ましい。また、当該高清浄部屋システム510を構成する部屋501の内部には、当該部屋の内気を取り込む開口と、この取り込まれた吸引空気を清浄化処理後、その全量を、再び、上記部屋内部に戻す吹き出し口とが、対となって設けられている循環フィードバック機構を有する。このように、高清浄部屋システム510が、ガス交換機構と循環フィードバック機構との2要件を持つことを特徴とする居住空間(高清浄部屋)を少なくとも一つ有することも有効である。これは、部屋501において、壁509の外界と連通した内部空間507が、ガス交換膜526を介して居住空間506と接するという、“外気/膜/内気”の3層構造を“切り出し”て、吸入管575、気体流路583等を通じて、天井裏等の別の場所に“貼り付け”たものと理解できる。この3層構造は、できるだけ、面積と体積の比(膜の総面積/装置体積)を大きくとったものとすることが望ましい。また、この“貼り付け先”或いは、当該機能部位の“移動先”は、内気還流路(例えば、気体流路524)が居住空間506と連通し、また、外気の吸排気口(例えば、外気吸気口585、排気口586)が外界と連通さえしていれば、居住空間506に対するその相対位置は問わない。つまり、ガス交換能が存在さえしていれば、“外気/膜/内気”の3層構造の存在位置自体は、居住空間506の外縁部に居住空間506に接して存在する必要は必ずしも無く、上記ガス交換能さえ担保できれば、気流配管(例えば、吸入管575、気体流路583等)を通じて、その場所を任意の所に“移動”し、設定することができる。上記、ガス交換装置580内のガス交換膜26の総面積は、最低限、式(15)を満たさしめることで人が内部で活動するに十分な酸素濃度を担保し、さらに、この面積ができるだけ大きくとることで、以上に加えて、脱臭や有害ガス排出機能も高めることができる。また、上記の、居住空間506の内気を取り込む開口と、この取り込まれた吸引空気を清浄化処理後、その全量を、再び、居住空間506の内部に戻す吹き出し口としては、例えば、図26〜図28、あるいは、図71〜図73において示した高清浄部屋システム510における吸気口523や吹き出し口522の構造を持たせたりすることが有効である他、最も単純には、居住空間506内に連通して、上記ガス交換装置580を設置した上で、居住空間506内に、吸引した空気の全量を濾過後、再び気流出射口より噴出す壁据付掛けの空気調和機やスタンドアローンの空気清浄装置あるいは光触媒脱臭装置を設置して、これらを稼動させるということでも良い。
また、例えば、常時の機械換気設備の構造として、居住空間に換気上有効な高清浄フィルター着き給気機(機械)および同排気機(機械)を有するよう設定することで、第1種換気設備を備えさせることが挙げられる。また、上述において示した各高清浄部屋システム510においても、図71〜図73において示したような、系に風量的に殆ど影響を与えない吐出風量のHEPAフィルターつきの少風量ファンフィルターユニットを吸入側(イン)と排出側(アウト)とに2個ペアで主室と廊下との間や主室と外部との間などに機械換気用として設けても良い。
また、日常生活を想定して居住空間と記載した上記の部屋501の内部空間は、単なる居住にかぎらず、塵埃のない漆塗りスペース、あるいは、塵埃による歩留まり低下の心配の無い、漆塗りを含む、高品位の塗装作業スペースなどの、高度作業スペースとして用いることができることは言うまでもない。特に、塗装作業を行う場合は、特に有害な有機溶剤等を用い際に、上に述べた塵埃は通さずガス成分のみを交換するガス交換装置による、局所排気システムを用いることが、作業者の安全と健康維持上、望ましい。
また、ファンフィルターユニット521の吹き出し口から流出する気体の全量が、内壁509aの一部に設けられた開口523を通過し、当該開口523とファンフィルターユニット521への気体流入口とを気密性を持って連通する気体流路524を通って、ファンフィルターユニット521へ還流させるのは、部屋の広さが減少することをいとわなければ、内壁509aに沿って設置した蛇腹等の後付ダクトを以って行っても良い。また、主室520に隣接する外部空間を外気導入空間とすることもできる。これは、主室520の側壁502をガス交換膜526とすることで、これを介して戸外の空間(外部空間)へ直接接続することができる。この場合、外気導入空間は半無限のオープンスペースということになる。
また、主室520に、HEPAフィルターを備えたファンフィルターユニットをインレットとアウトレット用に計2個、2時間で主室内の空気が一回転するような風量を以って設置するのも良い。
部屋501は、ガス交換膜526を一部に含む隔壁とすることで、外界に対し完全な閉空間を作り、しかも部屋501の内外で圧力差が無いことで、電源喪失時のクリーン性・無菌性維持に関し、フェールセーフ機構をビルトインすることができる。
ファンフィルターユニット521は、主室520または居住空間506と内部空間507との界面に用いることが望ましいが、到達清浄度を多少犠牲にすることを許せば、この配置を必ずしもとる必要はなく、当該内部空間507と主室520または居住空間506との間に設けられた隔壁の一部をガス交換膜とする構造を備え、内部空間507内にフレッシュエアを取り込むことさえ満たせば、メインのファンフィルターユニット521としては、在来の壁据付掛けの空気調和機をそのまま用いることも可能である。
また、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料
などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、
材料などを用いても良い。特に、放射性物質および放射線対応ファンフィルターユニット15において、図6〜図8に示した対象とする放射線エネルギーに対応する吸収長の3倍程度の厚みを筐体151に持たせると、当該放射線強度が(eを自然対数の底として)e-3倍程にまで減衰され、より好適である。