本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、単なる説明例である。
<1.検査システム3の概略構造>
本発明の第一実施形態を説明する。図1及び図2を参照して、検査システム3の概略構造について説明する。本第一実施形態の検査システム3は、液体である検体及び試薬を収容可能な検査チップ2と、検査チップ2を用いて検査を行う検査装置1とを含む。検査装置1は、検査チップ2から離間した垂直軸線を中心とした回転によって、検査チップ2に遠心力を作用させることができる。検査装置1は、水平軸線を中心に検査チップ2を回転させることによって、検査チップ2に作用する遠心力の方向である遠心方向を切り替え可能である。
<2.検査装置1の詳細構造>
図1〜図3を参照して、検査装置1の詳細構造について説明する。以下の説明では、図1及び図2の上方、下方、右方、左方、紙面手前側、及び紙面奥側を、それぞれ、検査装置1の上方、下方、右方、左方、後方、及び前方とする。図3の上方、下方、右方、左方、紙面手前側、及び紙面奥側を、それぞれ、検査装置1の前方、後方、右方、左方、上方、及び下方とする。本実施形態では、垂直軸線の方向は上下方向であり、水平軸線の方向は検査チップ2が垂直軸線を中心とした回転の際の速度の方向である。なお、理解を容易にするために、図1及び図2では上部筐体30を仮想線によって示し、図3では上部筐体30の天板が取り除かれた状態を示す。
図1〜図3に示すように、検査装置1は、上部筐体30、下部筐体31、ターンテーブル33、角度変更機構34、及び制御装置90を備える。ターンテーブル33は、下部筐体31の上面側に設けられる円盤状の回転体である。検査チップ2は、ターンテーブル33の上方に保持される。角度変更機構34は、ターンテーブル33に設けられた駆動機構である。この駆動機構は、水平軸線を中心に検査チップ2を回転させる。上部筐体30は、下部筐体31の上側に固定されており、検査チップ2に対して光学測定を行う測定部7が内部に設けられている。制御装置90は、検査装置1の各種処理を制御するコントローラである。
下部筐体31の詳細構造を説明する。図1及び図2に示すように、下部筐体31は、枠部材を組み合わせた箱状のフレーム構造を有する。下部筐体31の上面には、長方形の板材である上板32が設けられている。上板32の上側には、ターンテーブル33が回転自在に設けられている。下部筐体31の内部には、垂直軸線を中心にターンテーブル33を回転させる駆動機構が、次のように設けられている。
下部筐体31内の左方寄りに、ターンテーブル33を回転させるための駆動力を供給する主軸モータ35が設置されている。主軸モータ35の軸36は、上方に突出しており、プーリ37が固定されている。下部筐体31の中央部には、下部筐体31の内部から上方に延びる垂直な主軸57が設けられている。主軸57は、上板32を貫通して、下部筐体31の上側に突出している。主軸57の上端部は、ターンテーブル33の中央部に接続されている。
主軸57は、上板32の直下に設けられた支持部材53によって、回転自在に保持されている。支持部材53の下側では、主軸57にプーリ38が固定されている。プーリ37、38に亘って、ベルト39が掛け渡されている。主軸モータ35が軸36を回転させると、プーリ37、ベルト39、及びプーリ38を介して駆動力が主軸57に伝達される。このとき、主軸57の回転に連動して、ターンテーブル33が主軸57を中心に回転する。
下部筐体31内の右方寄りに、下部筐体31の内部において上下方向に延びるガイドレール56が設けられている。T型プレート48は、ガイドレール56に沿って下部筐体31内において上下方向に移動可能である。T型プレート48の前側、すなわち図1及び図2では紙面奥側の面には、左右方向に長い溝部80が形成されている。
先述の主軸57は、内部が中空の筒状体である。内軸40は、主軸57の内部において上下方向に移動可能な軸である。内軸40の上端部は、主軸57内を貫通して後述のラックギア43に接続されている。T型プレート48の左端部には、軸受41が設けられている。軸受41の内部では、内軸40の下端部が回転自在に保持される。
T型プレート48の前方には、T型プレート48を上下動させるためのステッピングモータ51が固定されている。ステッピングモータ51の軸58は後方、すなわち図1及び図2では紙面手前側に向けて突出している。軸58の先端には、円盤状のカム板59が固定されている。カム板59の後側の面には、円柱状の突起70が設けられている。突起70の先端部は、先述の溝部80に挿入されている。突起70は、溝部80内を摺動可能である。ステッピングモータ51が軸58を回転させると、カム板59の回転に連動して突起70が上下動する。このとき、溝部80に挿入されている突起70に連動して、T型プレート48がガイドレール56に沿って上下動する。
角度変更機構34の詳細構造を説明する。角度変更機構34は、ターンテーブル33の上面に固定された一対のL型プレート60を有する。各L型プレート60は、ターンテーブル33の中心近傍に固定された基部から上方に延び、且つ、その上端部がターンテーブル33の径方向外側に向けて延びている。一対のL型プレート60の間には、内軸40に固定されたラックギア43が設けられている。ラックギア43は、上下方向に長い金属製の板状部材であり、両端面にギアが各々刻まれている。
各L型プレート60の延設方向の先端側では、ギア45を有する水平な支軸46が回転自在に軸支されている。支軸46は図示外の装着用ホルダを介して検査チップ2に固定されている。このため、ギア45の回転に連動して検査チップ2も支軸46を中心に回転する。ギア45とラックギア43との間には、L型プレート60によって水平軸線を中心に回転自在に支持されたピニオンギア44が介在している。ピニオンギア44は、ギア45及びラックギア43にそれぞれ噛合している。ラックギア43の上下動に連動して、ピニオンギア44、及びギア45がそれぞれ従動回転し、ひいては検査チップ2が支軸46を中心に回転する。
本実施形態では、主軸モータ35がターンテーブル33を回転駆動するのに伴って、検査チップ2が垂直軸である主軸57を中心に回転して、検査チップ2に遠心力が作用される。検査チップ2の垂直軸線を中心とした回転を、公転と呼ぶ。一方、ステッピングモータ51が内軸40を上下動させるのに伴って、検査チップ2が水平軸である支軸46を中心に回転して、検査チップ2に作用する遠心力の方向が相対変化する。検査チップ2の水平軸線を中心とした回転を、自転と呼ぶ。
図1に示すように、T型プレート48が可動範囲の最下端まで下降した状態では、ラックギア43も可動範囲の最下端まで下降する。このとき、検査チップ2は、自転角度が0度(°)の定常状態になる。図2に示すように、T型プレート48が可動範囲の最上端まで上昇した状態では、ラックギア43も可動範囲の最上端まで上昇する。このとき、検査チップ2は、定常状態から水平軸線を中心に180度回転した状態になる。つまり、本実施形態では検査チップ2が自転可能な角度幅は、自転角度0度〜180度である。
上部筐体30の詳細構造を説明する。図3に示すように、上部筐体30は、枠部材を組み合わせた箱状のフレーム構造を有し、上板32の左部上側に設置されている。より詳細には、上部筐体30は、ターンテーブル33の回転中心にある主軸57からみて、検査チップ2が回転される範囲の外側に設けられている。
上部筐体30の内部に設けられた測定部7は、測定光を発光する光源71と、光源71から発せられた測定光を検出する光センサ72とを有する。光源71及び光センサ72は、検査チップ2の回転範囲の外側において、ターンテーブル33の前後両側に配置されている。本実施形態では、検査チップ2の公転可能範囲のうちで主軸57の左側位置が、検査チップ2に測定光が照射される測定位置である。検査チップ2が測定位置にある場合、光源71と光センサ72とを結ぶ測定光が、検査チップ2の前後面に対して略垂直に交差する。
<3.検査チップ2の構造>
図4〜図6を参照して、第一実施形態に係る検査チップ2の詳細構造を説明する。以下の説明では、図4の上方、下方、左下方、右上方、右下方、及び左上方を、それぞれ、検査チップ2の上方、下方、前方、後方、右方、及び左方とする。図5及び図6では、シート29の図示は省略している。後述の図8〜図18も同様である。
図4に示すように、検査チップ2は一例として前方から見た場合に正方形状であり、所定の厚みを有する透明な合成樹脂の板材20を主体とする。板材20の前面は、透明の合成樹脂の薄板から構成されたシート29によって封止されている。板材20とシート29との間には、検査チップ2に封入された液体が流動可能な液体流路25が形成されている。液体流路25は、板材20の前面側に所定深さに形成された凹部であり、板材20の厚み方向である前後方向と直交する方向に延びる。すなわち、シート29は、板材20の流路形成面を封止する。
図4及び図5に示すように、液体流路25は、第一試薬定量流路13A,13B,13C、第二試薬定量流路15A,15B,15C、検体定量流路11、及び混合部170A,170B,170Cを含む。第一試薬定量流路13Aは、検査チップ2の右上部に設けられている。第一試薬定量流路13Bは、第一試薬定量流路13Aの左斜め下方に設けられている。第一試薬定量流路13Cは、検査チップ2の左上部に設けられている。第二試薬定量流路15Aは、第一試薬定量流路13Aの下方に設けられている。第二試薬定量流路15Bは、第一試薬定量流路13Bの下方に設けられている。第二試薬定量流路15Cは、第一試薬定量流路13Cの下方に設けられている。検体定量流路11は、第一試薬定量流路13Cと第二試薬定量流路15Cとの右側、且つ、第一試薬定量流路13Bと第二試薬定量流路15Bとの左側に設けられている。
混合部170Aは、検査チップ2の右下部に設けられている。混合部170Bは、混合部170Aの左方に設けられている。混合部170Cは、混合部170Bの左方に設けられている。詳細は後述するが、図16に示すように、混合部170Aでは、第一試薬定量流路13Aにおいて定量された第一試薬18と、第二試薬定量流路15Aにおいて定量された第二試薬19と、後述する検体定量部114Aにおいて定量された検体17とが混合され、混合液26となる。混合部170Bでは、第一試薬定量流路13Bにおいて定量された第一試薬18と、第二試薬定量流路15Bにおいて定量された第二試薬19と、後述する検体定量部114Bにおいて定量された検体17とが混合され、混合液26となる。混合部170Cでは、第一試薬定量流路13Cにおいて定量された第一試薬18と、第二試薬定量流路15Cにおいて定量された第二試薬19と、後述する検体定量部114Cにおいて定量された検体17とが混合され、混合液26となる。
本実施形態の検体17は、例えば、血液、血漿、又は血球などが挙げられる。第一試薬定量流路13A,13B,13Cにおいて定量される第一試薬18の種類は、それぞれ異なっていてもよい。また、第二試薬定量流路15A,15B,15Cにおいて定量される第二試薬19の種類はそれぞれ異なっていてもよい。この結果、混合部170A,170B,170Cでは、混合液26が用いられてそれぞれ異なる検査項目について検査が行われる。
第一試薬定量流路13A,13B,13Cについて説明する。第一試薬定量流路13A,13B,13Cの構成は互いに略同じ構成である。このため、第一試薬定量流路13Aについて詳述し、第一試薬定量流路13B,13Cについては簡単に説明する。
図4及び図5に示すように、第一試薬定量流路13Aは、第一試薬保持部131A、第一試薬供給部132A、第一試薬案内部133A、第一試薬定量部134A、通路135A、通路137A、及び第一試薬余剰部136Aを含む。第一試薬保持部131Aは、上方に開口する凹部である。第一試薬保持部131Aは、第一試薬18が注入及び貯留される部位である。第一試薬保持部131Aは、隔壁141から右斜め上方に延びる保持部壁面138Aと、隔壁141との間に形成されている。隔壁141は、検査チップ2の上側の壁面である上辺部21から下方に延び、第一試薬定量流路13Aと第一試薬保持部131Aとを隔てる壁部である。第一試薬供給部132Aは、第一試薬保持部131Aの右上部分から下方向に延びる第一試薬18の流路である。第一試薬供給部132Aの下端部は、流路が狭く形成された第一試薬案内部133Aに接続する。第一試薬案内部133Aの下方には、第一試薬定量部134Aが設けられている。第一試薬定量部134Aは、第一試薬18を定量する部位であり、上側に開口する凹部である。
第一試薬案内部133Aと第一試薬定量部134Aとが連通する部位から、通路137Aが右方向に延び、通路135Aが左方向に延びている。通路137Aは、混合部170Aに繋がっている。通路135Aは、第一試薬定量部134Aの左下方に設けられた第一試薬余剰部136Aまで延びている。第一試薬余剰部136Aは、第一試薬定量部134Aから溢れ出た第一試薬18が貯留される部位であり、通路135Aの下端部から右方向に設けられた凹部である。
第一試薬定量流路13B及び第一試薬定量流路13Cについて説明する。第一試薬定量流路13Bは、第一試薬保持部131B、保持部壁面138B、第一試薬供給部132B、第一試薬案内部133B、第一試薬定量部134B、通路135B、通路137B、及び第一試薬余剰部136Bを含む。第一試薬定量流路13Cは、第一試薬保持部131C、保持部壁面138C、第一試薬供給部132C、第一試薬案内部133C、第一試薬定量部134C、通路135C、通路137C、及び第一試薬余剰部136Cを含む。第一試薬保持部131B,131C及び保持部壁面138B,138Cの構成は、それぞれ第一試薬保持部131A及び保持部壁面138A、第一試薬供給部132Aの構成と略同じである。第一試薬供給部132B,132Cの構成は、第一試薬供給部132Aの構成と略同じである。第一試薬案内部133B,133Cの構成は、第一試薬案内部133Aの構成と略同じである。第一試薬定量部134B,134Cの構成は、第一試薬定量部134Aの構成と略同じである。通路135B,135Cの構成は、通路135Aの構成と略同じである。通路137B,137Cの構成は、通路137Aの構成と略同じである。第一試薬余剰部136B,136Cの構成は、第一試薬余剰部136Aの構成と略同じである。なお、通路137Bは、混合部170Bに繋がっている。通路137Cは、混合部170Cに繋がっている。
第二試薬定量流路15A,15B,15Cについて説明する。第二試薬定量流路15A,15B,15Cの構成は互いに略同じ構成である。このため、第二試薬定量流路15Aについて詳述し、第二試薬定量流路15B,15Cについては簡単に説明する。
第二試薬定量流路15Aは、第二試薬保持部151A、第二試薬供給部152A、第二試薬案内部153A、第二試薬定量部154A、通路155A、通路157A、及び第二試薬余剰部156Aを含む。第二試薬保持部151Aは、上方に開口する凹部である。第二試薬保持部151Aは、第二試薬19が注入及び貯留される部位である。第二試薬保持部151Aは、隔壁141から右斜め上方に延びる保持部壁面158Aと、隔壁141との間に形成されている。第二試薬供給部152Aは、第二試薬保持部151Aの右上部分から下方向に延びる第二試薬19の流路である。第二試薬供給部152Aの下端部は、流路が狭く形成された第二試薬案内部153Aに接続する。第二試薬案内部153Aの下方には、第二試薬定量部154Aが設けられている。第二試薬定量部154Aは、第二試薬19を定量する部位であり、上側に開口する凹部である。
第二試薬案内部153Aと第二試薬定量部154Aとが連通する部位から、通路157Aが右方向に延び、通路155Aが左方向に延びている。通路157Aは、混合部170Aに繋がっている。通路155Aは、第二試薬定量部154Aの左下方に設けられた第二試薬余剰部156Aまで延びている。第二試薬余剰部156Aは、第二試薬定量部154Aから溢れ出た第二試薬19が貯留される部位であり、通路155Aの下端部から右方向に設けられた凹部である。
第二試薬定量流路15B及び第二試薬定量流路15Cについて説明する。第二試薬定量流路15Bは、第二試薬保持部151B、保持部壁面158B、第二試薬供給部152B、第二試薬案内部153B、第二試薬定量部154B、通路155B、通路157B、及び第二試薬余剰部156Bを含む。第二試薬定量流路15Cは、第二試薬保持部151C、保持部壁面158C、第二試薬供給部152C、第二試薬案内部153C、第二試薬定量部154C、通路155C、通路157C、及び第二試薬余剰部156Cを含む。第二試薬保持部151B,151C及び保持部壁面158B,158Cは、それぞれ、第二試薬保持部151A及び保持部壁面158Aの構成と略同じである。第二試薬供給部152B,152Cの構成は、第二試薬供給部152Aの構成と略同じである。第二試薬案内部153B,153Cの構成は、第二試薬案内部153Aの構成と略同じである。第二試薬定量部154B,154Cの構成は、第二試薬定量部154Aの構成と略同じである。通路155B,155Cの構成は、通路155Aの構成と略同じである。通路157B,157Cの構成は、通路157Aの構成と略同じである。第二試薬余剰部156B,156Cの構成は、第二試薬余剰部156Aの構成と略同じである。なお、通路157Bは、混合部170Bに繋がっている。通路157Cは、混合部170Cに繋がっている。
検体定量流路11について説明する。以下の説明では、後述する検体定量部114A,114B,114Cを総称する場合、又はいずれかを特定しない場合、検体定量部114と記載する。後述する第一壁面123A,123B,123Cと第二壁面124A,124B,124Cと第三壁面125A,125B,125Cと定量面126A,126B,126Cと通路120A,120B,120Cと開口部127A,127B,127Cと仮想面128A,128B,128Cとについても同様に記載する。
後述する第一仮想線751,752を総称する場合、又はいずれかを特定しない場合、第一仮想線75と言う。後述する第二仮想線761,762を総称する場合、又はいずれかを特定しない場合、第二仮想線76と言う。後述する第三仮想線77A,77B,77Cを総称する場合、又はいずれかを特定しない場合、第三仮想線77と言う。なお、図4〜図6及び図8〜図16において、各構成の符号75,76,77,114,120,123,124,125,126,127については、1箇所又は2箇所のみ図示している。後述する図17及び図18も同様である。また、「N」は自然数であるとする。
図4〜図6に示すように、検体定量流路11は、検体保持部111、検体供給部112、検体案内部113、検体定量部114A,114B,114C、通路115A,115B,115C、通路117A,117B,117C、及び検体余剰部116を含む。検体保持部111は、上方に開口する凹部である。検体保持部111は、検体17が注入及び貯留される部位である。検体保持部111は、隔壁142から右斜め上方に延びる保持部壁面118と、隔壁142との間に形成されている。隔壁142は、上辺部21から下方に延び、検体定量流路と第一試薬定量流路13Cとを隔てる壁部である。検体供給部112は、検体保持部111の右上部分から下方に延びる検体17の流路である。検体供給部112の下端部には、流路が狭く形成された通路である検体案内部113に接続する。
検体案内部113の下方には、複数段の検体定量部114A,114B,114Cが設けられている。検体定量部114A,114B,114Cは、検体17を定量する部位であり、上側に開口する凹部である。検体定量部114A,114B,114Cは、左斜め下方に並んでいる。検体定量部114Aは、1段目の検体定量部である。検体定量部114Bは、2段目の検体定量部である。検体定量部114Cは、3段目の検体定量部である。本実施形態では、N段目の検体定量部114において余った検体17が、N+1段目の検体定量部114に供給される。すなわち、1段目の検体定量部114Aは、検体17の流れの最上流側の検体定量部である。また、3段目の検体定量部114Cは、検体17の流れの最下流側の検体定量部である。
1段目の検体定量部114Aは、検体案内部113の下方に位置する。すなわち、検体案内部113は、1段目の検体定量部114Aに対して2段目の検体定量部114B側とは反対側である上側に位置している。検体案内部113は、検体供給部112の下端部から、1段目の検体定量部114Aに接続された後述する第二壁面124A側に延びる。検体案内部113は、1段目の検体定量部114Aに接続された第二壁面124A側である下側に開口部129を有する。検体案内部113及び開口部129は、1段目の検体定量部114Aの上流側に位置している。
検体案内部113と検体定量部114Aとが連通する部位から、通路117Aが右方向に延び、通路115Aが左方向に延びている。通路117Aは、右方向に延びた後、下方向に延び、混合部170Aに繋がっている。通路115Aは、流路が狭く形成された通路120Aに繋がっている。通路120Aと検体定量部114Bとが連通する部位から、通路117Bが右方向に延び、通路115Bが左方向に延びている。通路117Bは、右方向に延びた後、下方に延び、混合部170Bに繋がっている。通路115Bは、流路が狭く形成された通路120Bに繋がっている。
通路120Bと検体定量部114Cとが連通する部位から、通路117Cが右方向に延び、通路115Cが左方向に延びている。通路117Cは、右方向に延びた後、下方に延び、混合部170Cに繋がっている。通路115Cは、通路120Cに繋がっている。通路120Cは、検体余剰部116に繋がっている。検体余剰部116は、N段目の検体定量部114からN+1段目の検体定量部114に向かう方向と交差する方向のうち、後述する第一壁面123側の方向に設けられている。このため、検体余剰部116は、検体定量部114Cの下方に設けられている。
図6に示すように、検体定量部114A,114B,114Cの右端部には、それぞれ第一接続部121A,121B,121Cが位置している。第一接続部121A,121B,121Cには、それぞれ第一壁面123A,123B,123Cが接続されている。第一壁面123A,123B,123Cは、それぞれ通路117A,117B,117Cの一部を形成する。検体定量部114A,114B,114Cの左端部には、それぞれ、第二接続部122A,122B,122Cが位置している。第二接続部122A,122B,122Cには、それぞれ第二壁面124A,124B,124Cが接続されている。第二壁面124A,124B,124Cは、それぞれ通路115A,115B,115Cの一部を形成する。第一接続部121Aと第二接続部122Aとを結んだ面を定量面126Aと言う。第一接続部121Bと第二接続部122Bとを結んだ面を定量面126Bと言う。第一接続部121Cと第二接続部122Cとを結んだ面を定量面126Cと言う。定量面126A,126B,126Cは互いに平行であり、左右方向に延びている。定量面126A,126B,126Cのそれぞれから延びる、定量面126に平行な面を、仮想面128A,128B,128Cと言う。仮想面128A,128B,128Cは、仮想面126A,126B,126Cより左右方向外側の面である。
N段目の検体定量部114に接続された第一壁面123は、定量面126に平行な仮想面128よりN+1段目の検体定量部114側とは反対側である上側に傾いている。より詳細には、1段目の検体定量部114Aに接続された第一壁面123Aは、仮想面128Aより、2段目の検体定量部114B側とは反対側である上方に傾いている。2段目の検体定量部114Bに接続された第一壁面123Bは、仮想面128Bより、3段目の検体定量部114C側とは反対側である上側に傾いている。なお、最終段である3段目の検体定量部114Cの下側には、検体余剰部116が設けられており、他の検体定量部114は配置されていない。しかし、第一壁面123A,123Bと同様に、3段目の検体定量部114Cに接続された第一壁面123Cは、仮想面128Cより上側に傾いている。第一壁面123A,123B,123Cは互いに平行であり、それぞれ第一接続部121A,121B,121Cから右斜め上方に延びている。
N段目の検体定量部114に接続された第二壁面124は、仮想面128よりN+1段目の検体定量部114側である下側に傾いている。より詳細には、1段目の検体定量部114Aに接続された第二壁面124Bは、仮想面128Bより、2段目の検体定量部114B側である下方に傾いている。2段目の検体定量部114Bに接続された第二壁面124Bは、仮想面128Bより、3段目の検体定量部114C側である下側に傾いている。最終段である3段目の検体定量部114Cに接続された第二壁面124Bは、第二壁面124A,124Bと同様に、仮想面128Cより下側に傾いている。第二壁面124A,124B,124Cは互いに平行であり、それぞれ第二接続部122A,122B,122Cから左斜め下方に延びている。なお、第一壁面123と仮想面128とのなす角は、第二壁面124と仮想面128とのなす角より大きい。
第二壁面124A,124B,124Cの第二接続部122A,122B,122C側の端部とは反対側の端部である左端部には、それぞれ第三壁面125A,125B,125Cが接続されている。第三壁面125A、125B,125Cは、それぞれ、通路120A,120B,120Cに含まれる。通路120は、N+1段目の検体定量部114に接続された第二壁面124側に延びる。通路120は、N+1段目の検体定量部114に接続された第二壁面124側に開口部127を有する。より詳細には、通路120Aは、2段目の検体定量部114B側に接続された第二壁面124Bに向かう方向である下方向に延びる。通路120Aは、2段目の検体定量部114Bに接続された第二壁面124B側である下側に開口部127Aを有する。通路120Bは、3段目の検体定量部114Cに接続された第二壁面124Bに向かう方向である下方向に延びる。通路120Aは、3段目の検体定量部114Cに接続された第二壁面124B側である下側に開口部127Bを有する。通路120Cは、通路120A,120Bと同様に下方に延び、下側に開口部127Cを有する。
第一壁面123、第二壁面124、検体定量部114、開口部127、及び開口部129等の位置関係について詳述する。以下の説明では、開口部127Aにおける第三壁面125Aの先端から1段目の検体定量部114Aに接続された第二壁面124Aと直交する方向に引いた線を第一仮想線751と言う。開口部127Bにおける第三壁面125Bの先端から2段目の検体定量部114Bに接続された第二壁面124Bと直交する方向に引いた線を第一仮想線752と言う。
開口部127Aにおける第三壁面125Aの先端と、2段目の検体定量部114Bの第一接続部121Bとを結んだ線を第二仮想線761と言う。開口部127Bにおける第三壁面125Bの先端と、3段目の検体定量部114Cの第一接続部121Cとを結んだ線を第二仮想線762と言う。
1段目の検体定量部114Aの第二接続部122Aから仮想面128に直交する方向に引いた線を第三仮想線77Aと言う。2段目の検体定量部114Bの第二接続部122Bから仮想面128Bに直交する方向に引いた線を第三仮想線77Bと言う。3段目の検体定量部114Cの第二接続部122Cから仮想面128Cに直交する方向に引いた線を第三仮想線77Cと言う。
開口部127における第三壁面125の先端からN段目の検体定量部114に接続された第二壁面124と直交する方向に引いた第一仮想線75は、開口部127における第三壁面125の先端とN+1段目の検体定量部114とを結んだ第二仮想線76より、N+1段目の定量部に接続された第一壁面123側に位置する。なお、本実施形態では、開口部127における第三壁面125の先端からN段目の検体定量部114に接続された第二壁面124と直交する方向に延びる線のうち、第三壁面125よりN+1段目の検体定量部114側である下側の線が、第一仮想線75である。
本実施形態では、第一仮想線751は、第二仮想線761より、2段目の検体定量部114Bに接続された第一壁面123B側である右側に位置する。第一仮想線751は、第一接続部121Bと交差している。また、第一仮想線752は、第二仮想線762より、3段目の検体定量部114Cに接続された第一壁面123C側である右側に位置する。第一仮想線752は、第一接続部121Cと交差している。
また、本実施形態では、開口部127は、N+1段目の検体定量部114の第二接続部122から仮想面128に直交する方向に引いた第三仮想線77より、N+1段目の検体定量部114に接続された第二壁面124側に位置する。より詳細には、開口部127Aは、第三仮想線77Bより、第二壁面124B側である左側に位置する。また、開口部127Bは、第三仮想線77Cより、第二壁面124C側である左側に位置する。また、検体案内部113の開口部129は、1段目の検体定量部114の第二接続部122Aから仮想面128Aに直交する方向に引いた第三仮想線77Aより、1段目の検体定量部114Aに接続された第二壁面124A側である左側に位置する。
<4.検査チップ2のその他構造>
図1に示すように、L型プレート60から延びる支軸46は、図示外の装着用ホルダを介して板材20の後面中央に垂直に連結される。支軸46の回転に伴って、検査チップ2が支軸46を中心に自転する。検査チップ2は図4〜図6に示す定常状態である場合、上辺部21及び下辺部24が重力Gの方向と直交し、右辺部22及び左辺部23が重力Gの方向と平行、且つ、左辺部23が右辺部22よりも主軸57側に配置される。定常状態の検査チップ2が測定位置に配置されている状態において、光源71と光センサ72とを結ぶ測定光を混合部170A,170B,170Cに選択的に通過させることで、検査装置1は光学測定による検査を行う。
<5.検査方法の一例>
図5〜図16を参照して、検査装置1及び検査チップ2を用いた検査方法について説明する。尚、図7に示す、検査チップ2の自転、公転、及び回転数の制御は、それぞれ、時間T1〜T5が経過したか否かで制御される。時間T1〜T5の情報は制御装置90の図示しない記憶装置に予め記憶されている。
ユーザは、第一試薬保持部131A,131B,131Cに第一試薬18が配置され、第二試薬保持部151A,151B,151Cに第二試薬19が配置され、検体保持部111に検体17が配置された状態にする。第一試薬18、第二試薬19、及び検体17の配置方法は限定されない。例えば、シート29における第一試薬保持部131A,131B,131C、第二試薬保持部151A,151B,151C、及び検体保持部111に対応する位置に穴が開いており、ユーザが穴から、第一試薬18、第二試薬19、及び検体17を注入し、さらにシールをして封止してもよい。また、予め、第一試薬18が第一試薬保持部131A,131B,131Cに配置され、第二試薬19が第二試薬保持部151A,151B,151Cに配置されて、シート29によって封止されていてもよい。この場合、シート29における検体保持部111に対応する位置に穴が開いており、ユーザが穴から検体17を注入し、さらにシールをして封止してもよい。また、上辺部21における検体保持部111の上側の部位が開口しており、ユーザが開口から検体17を注入し、開口を封止してもよい。
次いで、ユーザが検査チップ2を支軸46に取り付けて、制御装置90に処理開始のコマンドを入力すると、以下の測定動作が実行される。処理開始のコマンドが入力された時間が図7に示すタイミングチャートの時間T0である。なお、検査装置1は二つの検査チップ2を同時に検査可能であるが、以下では説明の便宜のため、1つの検査チップ2を検査する手順を説明する。以下の説明では、図5に示す検査チップ2の定常状態を自転角度0度とし、定常状態から82.4度反時計回りに回転した状態を「自転角度82.4度」と言う。自転角度82.4度からさらに7.6度反時計回りに回転した状態を「自転角度90度」と言う。
まず、時間T0から主軸モータ35が制御装置90の指示に基づき、ターンテーブル33の駆動を開始する。この結果、自転角度が0度の検査チップ2が公転する。主軸モータ35は、制御装置90の指示に基づき、ターンテーブル33の回転速度を上げる。回転速度が3000rpmに達すると、主軸モータ35はこの回転速度を保持する。3000rpmの回転速度でターンテーブル33が回転している状態を、以下高速駆動と記載する。尚、高速駆動時の回転速度は、3000rpmに限られず、他の回転速度でもよい。
図8に示すように、時間T0〜時間T1において、左辺部23から右辺部22に向けて、検査チップ2に遠心力Xが作用する。遠心力Xの作用によって検体17は検体保持部111から検体供給部112に移動する。同様に、第一試薬18は、第一試薬保持部131A,131B,131Cから第一試薬供給部132A,132B,132Cに移動する。第二試薬19は、第二試薬保持部151A,151B,151Cから第二試薬供給部152A,152B,152Cに移動する。時間T1は、検体17、第一試薬18、及び第二試薬19が、上述した移動を行うのに十分な時間として制御装置90の図示しない記憶装置に予め記憶されている。
時間T1において、制御装置90の指示に基づくステッピングモータ51の駆動制御によって、図9〜図11に示すように、高速駆動によって公転中の検査チップ2が前方からみて反時計回りに82.4度自転される。これによって、検査チップ2の自転角度が82.4度に変化する。この結果、上辺部21と遠心力の方向との成す角度が82.4度になるように検査チップ2に遠心力Xが作用する。なお、本実施形態では、自転角度「82.4度」は、第二壁面124に直交する方向に遠心力Xを作用させることができる自転角度である。
図9に示すように、遠心力Xの作用によって、検体17は検体案内部113を介して検体定量部114Aに供給される。このとき、N段目の検体定量部114において余った検体17が、第二壁面124を介してN+1段目の検体定量部114に供給される。すなわち、1段目の検体定量部114Aにおいて余った検体17が、2段目の検体定量部114Bに供給される。2段目の検体定量部114Bにおいて余った検体17が、3段目の検体定量部114Cに供給される。3段目の検体定量部114Cにおいて余った検体17が検体余剰部116に供給される。
また、遠心力Xの作用によって、第一試薬18は、第一試薬案内部133A,133B,133Cを介して第一試薬定量部134A,134B,134Cに供給される。第一試薬定量部134A,134B,134Cにおいて余った第一試薬18は、第一試薬余剰部136A,136B,136Cに流入する。図9においては、第一試薬18が第一試薬案内部133Bを介して第一試薬定量部134Bに供給され、余った第一試薬18が第一試薬余剰部136Bに流入している。図示しないが、同様に、第二試薬19は、第二試薬案内部153A,153B,153Cを介して第二試薬定量部154A,154B,154Cに流入する。第二試薬定量部154A,154B,154Cにおいて余った第二試薬19は、第二試薬余剰部156A,156B,156Cに流入する。
図7に示すように、時間T1〜T2の間に、主軸モータ35が制御装置90の指示に基づき、ターンテーブル33の回転速度を下げる。回転速度が1000rpmに達すると、主軸モータ35は、この回転速度を保持する。1000rpmの回転速度でターンテーブル33が回転している状態を、以下低速駆動と記載する。尚、低速駆動時の回転速度は、高速駆動時の回転速度よりも遅ければ、1000rpmに限られず、他の回転速度でもよい。低速駆動時の遠心力Xは高速駆動時の遠心力Xより弱い。すなわち、時間T2における遠心力Xは、検体定量部114、第一試薬定量部134A,134B,124C、及び第二試薬定量部154A,154B,154Cへの各液の注入開始時の遠心力Xより弱い。これによって、検体定量部114A,114B,114C、第一試薬定量部134A,134B,134C、及び第二試薬定量部154A,154B,154Cへの注入開始時は、強い遠心力によって、効率よく各液が注入される。そして、注入終了時に遠心力を弱めることによって、気泡の混入を防止すると共に、各液の液面の凹みを抑えることができる。時間T2は、検体17、第一試薬18、及び第二試薬19が、各定量部への移動を行うのに十分な時間として制御装置90の図示しない記憶装置に予め記憶されている。
図10に示すように、検体定量部114A,114B,114Cにおいて余った検体17が検体余剰部116に貯留される。ここで、図11に示すように、検体17は検体定量部114の容積と第一壁面123側に第一接続部121を超えて溢れている量との合計量になる。図10に示すように、第一試薬定量部134A,134B,134C及び第二試薬定量部154A,154B,154Cにおいても同様である。図7に示す時間T1〜T2において、主軸モータ35がターンテーブル33を低速駆動することによって、遠心力を高速駆動時の遠心力より弱めるのは、遠心力が強いと液面が遠心力方向に凹み、前記合計量の検体17の液量が減るからである。
次に、図7に示す時間T2において、制御装置90の指示に基づくステッピングモータ51の駆動制御によって、低速駆動によって公転中の検査チップ2が前方からみて反時計回りに7.6度自転される。これによって、図12〜図14に示すように検査チップ2の自転角度が90度に変化する。図12に示すように、定量面126に対して作用する遠心力Xは、定量面126と仮想面128に対して直交する方向である。故に、定量面126を超えて、第一壁面123側に第一接続部121を超えて溢れていた検体17が第二壁面124側に溢れ出す。
ここで、開口部127は、N段目の検体定量部114の第二接続部122から仮想面128に直交する方向に引いた第三仮想線77より、N+1段目の検体定量部114に接続された第二壁面124側に位置する。このため、開口部127の遠心力Xが作用する方向側に、第二壁面124が位置する。よって、N段目の検体定量部114から溢れ出た検体17は、N+1段目の検体定量部114に接続された第二壁面124に供給される。よって、図12に示すように、N段目の検体定量部114から溢れ出た検体17は、N+1段目の検体定量部114には供給されない。
全ての検体定量部114A,114B,114Cから溢れ出した検体17は、検体余剰部116に貯留される。この結果、図13及び図14に示すように、検体定量部114A,114B,114Cにおいて所定量の検体17が正確に定量される。ここで、定量面126と検体定量部114を形成する壁とによって囲まれる体積が、所望の定量量である。図16に示すように、検体定量部114において定量された体積の検体17と第一試薬18と第二試薬19とが混合されて、混合液26となる。この混合液26が、光学測定され、検査が行われる。このため、検体定量部114において定量された検体17の体積が、所望の体積からずれると、光学測定に基づく検査精度が低下する。同様に、第一試薬定量部134A,134B,134Cでは、所定量を超える第一試薬18が通路135A,135B,135Cに溢れ出す。溢れ出した第一試薬18は、第一試薬余剰部136A,136B,136Cに貯留される。この結果、所定量の第一試薬18が正確に定量される。また、第二試薬定量部154A,154B,154Cでは、所定量を超える第二試薬19が通路155A,155B,155Cに溢れ出す。溢れ出した第二試薬19は、第二試薬余剰部156A,156B,156Cに貯留される。この結果、所定量の第二試薬19が正確に定量される。
図7に示す時間T2からT3の間に、制御装置90の指示に基づき、主軸モータ35がターンテーブル33を高速駆動する。この結果、自転角度が90度の検査チップ2が公転する。この高速駆動によって、低速駆動時の遠心力よりも強い遠心力が検体17に作用するため、血液、血漿、又は血球等の粘性のある検体17がより正確に定量される。時間T3は、検体17、第一試薬18、及び第二試薬19が、各定量部において定量されるのに十分な時間として制御装置90の図示しない記憶装置に予め記憶されている。
次に、図7に示す時間T3において、制御装置90の指示に基づくステッピングモータ51の駆動制御によって、図15に示すように、公転中の検査チップ2が前方からみて時計回りに90度自転される。これによって、検査チップ2の自転角度が0度に戻り、左辺部23から右辺部22に向けて検査チップ2に遠心力Xが作用する。遠心力Xの作用によって、検体定量部114A,114B,114Cにおいて定量された検体17が通路117A,117B,117Cに移動する。一方、検体余剰部116は右方向に閉じる凹部であるため、余剰の検体17は検体余剰部116に留まる。
同様に、第一試薬定量部134A,134B,134Cにおいて定量された第一試薬18が通路135A,135B,135Cに移動する。一方、第一試薬余剰部136A,136B,136Cは右方向に閉じる凹部であるため、余剰の第一試薬18は第一試薬余剰部136A,136B,136Cに留まる。第二試薬定量部154A,154B,154Cにおいて定量された第二試薬19が通路157A,157B,157Cに移動する。一方、第二試薬余剰部156A,156B,156Cは右方向に閉じる凹部であるため、余剰の第二試薬19は第二試薬余剰部156A,156B,156Cに留まる。
次に、図7に示す時間T4において、制御装置90の指示に基づくステッピングモータ51の駆動制御によって、図16に示すように、公転中の検査チップ2が前方からみて反時計回りに90度自転される。これによって、検査チップ2の自転角度が90度に変化し、上辺部21から下辺部24に向けて検査チップ2に遠心力Xが作用する。遠心力Xの作用によって、検体17は通路117A,117B,117Cから混合部170A,170B,170Cに流入する。第一試薬18は通路137A,137B,137Cから混合部170A,170B,170Cに流入する。第二試薬19は通路157A,157B,157Cから混合部170に流入する。一方、余剰の検体17、第一試薬18、及び第二試薬19は、検体余剰部116、第一試薬余剰部136A,136B,136C、及び第二試薬余剰部156A,156B,156Cに留まる。混合部170A,170B,170Cに流入した検体17、第一試薬18、及び第二試薬19は、遠心力Xの作用によって混合され、混合液26が生成される。
次に、図7に示す時間T5において、制御装置90の指示に基づくステッピングモータ51の駆動制御によって、公転中の検査チップ2が前方からみて時計回りに90度自転される。これによって、検査チップ2の自転角度が0度に変化する。その後、主軸モータ35の駆動制御によって、主軸モータ35が減速駆動され、主軸モータ35が停止する。故に、検査チップ2の公転が終了する。
上記遠心処理の実行後、主軸モータ35の駆動制御によって、検査チップ2を測定位置の角度まで回転移動させる。光源71が発光すると、測定光が混合部170に貯溜された混合液26を通る。光センサ72が受光した測定光の変化量に基づいて、混合液26の光学測定が行われ、測定データが取得される。次いで、取得された測定データに基づいて、検体17の測定結果が算出される。測定結果に基づく検体17の検査結果が表示される。その後、メイン処理が終了される。
<6.第一実施形態の主たる作用・効果>
以上説明したように、検査装置1は液体である検体17、第一試薬18、及び第二試薬19が注入された検査チップ2を使用可能である。本実施形態では、図12に示すように、第一壁面123側に第一接続部121を超えて溢れていた検体17、すなわち、余った検体17が第二壁面124側に溢れ出し、通路120を通る。このとき、N段目の検体定量部114において余った検体17は、N+1段目の検体定量部114に接続された第二壁面124に供給される。このため、余った検体17は、N+1段目の検体定量部114には供給されない。よって、N段目の検体定量部114において余った検体17が、N+1段目の検体定量部114に流入した場合に流入時の衝撃によって検体定量部114から検体17が漏れることが防止される。よって、検体定量部114において定量される検体17が不足することがなく、検体定量部114における定量精度が向上する。よって、検査精度が向上する。
また、仮に、図9に示すように検体17が流れている状態から、図11に示すように検体17が流れていない状態に変化する前、すなわち、検体17が流路を移動し終わる前に検査チップ2が自転され、図12〜図14に示すような状態に変化するとする。この場合でも、流路を移動し終わっていない余った検体17は、N+1段目の検体定量部114に接続された第二壁面124に供給される。このため、余った検体17が、N+1段目の検体定量部114に流入した場合に流入時の衝撃によって検体定量部114から検体17が漏れることが防止される。よって、検体定量部114において定量される検体17が不足することがなく、検体定量部114における定量精度が向上する。よって、検査精度が向上する。
また、図14に示すように、検体定量部114において検体17が定量されている状態において、振動など、何らかの影響によってN段目の検体定量部114から検体17が溢れ出す場合がある。この場合でも、第一壁面123側に第一接続部121を超えて溢れていた検体17が第二壁面124側に溢れ出した場合と同様に、N段目の検体定量部114から溢れ出た検体17は、N+1段目の検体定量部114に接続された第二壁面124に供給される。このため、溢れ出た検体17は、N+1段目の検体定量部114には供給されない。よって、N段目の検体定量部114から溢れ出た検体17が、N+1段目の検体定量部114によって定量される検体17の量に影響を及ぼすことを防止できる。よって、検体17の定量精度が向上し、検査精度が向上する。
また、本実施形態では、検体案内部113の開口部129は、1段目の検体定量部114の第二接続部122Aから仮想面128Aに直交する方向に引いた第三仮想線77Aより、1段目の検体定量部114Aに接続された第二壁面124A側である左側に位置する。例えば、検体17が検体供給部112から無くなる前に、図12〜図14に示すように検査チップ2の自転角度が90度に自転されるなど、何らかの影響によって、検体17が検体案内部113を通過することになったとする。この場合でも、開口部129が第三仮想線77Aより第二壁面124A側に位置するので、仮想面128に直交する方向に遠心力が加えられた状態において検体案内部113を通過することになった検体17は、1段目の検体定量部114に接続された第二壁面124Aに供給される。すなわち、検体17は、1段目の検体定量部114には供給されない。このため、1段目の検体定量部114によって定量される検体17の定量精度が向上し、検査精度が向上する。
また、第一仮想線75は、開口部127における第三壁面125の先端からN段目の検体定量部114に接続された第二壁面124と直交する方向に引いた線である。また、第一仮想線75は、検体定量部114の第一接続部121と交差する。このため、本実施形態のように遠心力Xの方向と、第二壁面124とが直交する方向となるように自転された場合、検体定量部114への検体17の供給時に、N段目の検体定量部114において余った検体17は、遠心力Xの作用によって第一仮想線75が延びる方向に流れる。このため、図9に示すように、検体17は、N+1段目の検体定量部114の第一接続部121に当たる。よって、N段目の検体定量部114において余った検体17がN+1段目の検体定量部114の第一接続部121より第一壁面123側に供給される場合に比べて、供給される検体17が第一壁面123を乗り越えて混合部170側に流れる可能性を低減できる。このため、例えば、定量後の検体17が第一壁面123側から混合部170に供給されて検査が行われる場合に、定量後の検体17と、検体定量部114への供給時に第一壁面123を乗り越えた検体17とが混ざることを防止できる。よって、ユーザは、精度の良い検査結果を得ることができる。また、N段目の検体定量部114において余った検体17がN+1段目の検体定量部114の第一接続部121より第二壁面124側に供給される場合に比べて、供給される検体17が検体定量部114に供給されずに第二壁面124側に流れる可能性を低減できる。このため、より確実に検体定量部114に検体17を供給することができる。
<7.その他>
本実施形態において、検体定量部114が本実施形態の「定量部」に相当する。通路120が本発明の「通路」に相当する。開口部127が本発明の「開口部」に相当する。開口部129が本発明の「上流開口部」に相当する。通路120が本発明の「通路」に相当する。検体案内部113が本発明の「上流通路」に相当する。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、検体定量部114の段数は3段であったが、段数は限定されない。検体定量部114の段数は、例えば、2段でもよいし、8段でもよい。
また、検体17が複数段の検体定量部114において定量され、第一試薬18及び第二試薬19は複数段の定量部において定量されていなかったが、これに限定されない。例えば、検体17を定量するための構成と同様の構成によって第一試薬18と第二試薬19とが定量されてもよい。すなわち、複数段の定量部において、第一試薬18及び第二試薬19のそれぞれが、定量されてもよい。この場合、検体17が定量される場合と同様の効果を得ることができる。
また、開口部129が第三仮想線77Aより第二壁面124A側である左側に位置していたが、これに限定されない。例えば、開口部129が第三仮想線77Aより第一壁面123A側である右側に位置してもよい。
また、第一実施形態では、第一仮想線75は、第一接続部121と交差していたが、これに限定されない。例えば、第一仮想線75は、N+1段目の検体定量部114の第一接続部121とN+1段目の検体定量部114に接続された第一壁面123との少なくとも一方と交差してもよい。例えば、第一仮想線75が第一壁面123と交差する場合、図6に示す開口部127の位置を第一壁面123側である右側に移動させてもよい。また、第二壁面124と仮想面128とがなす角度を大きくして、第二壁面124に直交する方向に延びる第一仮想線751の傾きを変更して、第一仮想線75が第一壁面123と交差するようにしてもよい。第一仮想線75が、第一接続部121と第一壁面123との少なくとも一方と交差する場合において、遠心力Xの方向と第二壁面124とが直交する方向となるように検査チップ2が自転されて検体17が検体定量部114に供給されるとする。この場合、検体17は第一仮想線75が延びる方向に流れ、第一接続部121と第一壁面123との少なくとも一方に当たる。よって、第一接続部121より第二壁面124側に検体17が供給される場合に比べて、供給される検体17が検体定量部114に供給されずに第二壁面124側に流れる可能性を低減できる。よって、より確実に検体定量部114に検体17又は試薬を供給することができる。なお、第一仮想線75は、N+1段目の検体定量部114と交差してもよい。
また、図7に示す時間T1〜T2の区間では、図9〜図11に示すように第二壁面124に直交する方向に遠心力Xが作用するように、検査チップ2の自転角度が設定されていたが、これに限定されない。例えば、開口部127における第三壁面125の先端から遠心力Xが作用する方向に引いた線が第二接続部122と交差する状態における検査チップ2の自転角度と、当該線が第一壁面123と交差する状態における検査チップ2の自転角度との間で、自転角度を変更してもよい。この場合でも、検体17が開口部127から遠心力Xが作用する方向に移動するので、検体定量部114に検体17を供給することが可能である。
<8.検査チップの第二実施形態>
また、第一壁面123A,123B,123Cは互いに平行であったが、これに限定されない。例えば、N段目の検体定量部114における仮想面128とN段目の検体定量部114に接続された第一壁面123とがなす角度が、N+1段目の検体定量部114における仮想面128とN+1段目の検体定量部114に接続された第一壁面123とがなす角度より大きくてもよい。図17に示す第二実施形態に係る検査チップ102では、1段目の検体定量部114Aにおける仮想面128Aと第一壁面123Aとのなす角度R1が、2段目の検体定量部114Bにおける仮想面128Bと第一壁面123Bとのなす角度R2より大きい。2段目の検体定量部114Bにおける仮想面128Bと第一壁面123Bとのなす角度R2は、3段目の検体定量部114Cにおける仮想面128Cと第一壁面123Cとのなす角度R3より大きい。
<9.第二実施形態の主たる作用・効果>
ここで、N段目の検体定量部114に供給された検体17がN+1段目の検体定量部114に供給される場合、検体17は、N段目の検体定量部114において定量される量分少なくなる。このため、Nの値が小さいほど、すなわち、上流側の検体定量部114であればあるほど、検体定量部114に供給される検体17の量が多くなる。検体定量部114に供給される検体17の量が多くなれば、検体17が検体定量部114に供給される場合に、検体17が第一壁面123を乗り越える可能性が高くなる。図17に示す検査チップ102では、Nの値が小さくなるほど、仮想面128と第一壁面123とがなす角度が大きくなる。仮想面128と第一壁面123とがなす角度が大きくなれば、検体17が第一壁面123を乗り越え難くなる。すなわち、Nの値が小さく、検体定量部114に供給される検体17の量が多くても、検体17が第一壁面123を乗り越えることを防止できる。このため、例えば、定量後の検体17が第一壁面123側から混合部170に供給されて検査が行われる場合に、定量後の検体17と、検体定量部114への供給時に第一壁面123を乗り越えた検体17とが混ざることを防止できる。よって、ユーザは、精度の良い検査結果を得ることができる。
<10.検査チップの第三実施形態>
また、N段目の検体定量部114における仮想面128と第二仮想線76とのなす角度が、N+1段目の定量部における仮想面128と第二仮想線76とのなす角度よりも小さくてもよい。図18に示す第三実施形態に係る検査チップ103では、2段目の検体定量部114Bにおける仮想面128Bと第二仮想線761とのなす角度R4は、3段目の検体定量部114Cにおける仮想面128Cと第二仮想線762とのなす角度R5より小さい。
<11.第二実施形態の主たる作用・効果>
先述したように、Nの値が小さいほど、検体定量部114に供給される検体17の量が多くなり、検体17が第一壁面123を乗り越える可能性が高くなる。図18に示す検査チップ103では、Nの値が小さくなるほど、仮想面128と第二仮想線76とのなす角度が小さくなる。この場合、第一接続部121と第二接続部122とを結んだ方向である左右方向において、Nの値が小さくなるほど、開口部127における第三壁面125の先端と、検体定量部114との間の距離が大きくなる。よって、N段目の検体定量部114において余った検体17がN+1段目の検体定量部114に供給される場合に、Nの値が小さくなるほど、供給される検体17は、第二接続部122に近づく。供給される検体17が第二接続部122に近くなれば、検体定量部114を挟んで第二接続部122の反対側に位置する第一壁面123を、検体17が乗り越え難くなる。すなわち、Nの値が小さく、検体定量部114に供給される検体17の量が多くても、検体17が第一壁面123を乗り越えることを防止できる。このため、例えば、定量後の検体17が第一壁面123側から混合部170に供給されて検査が行われる場合に、定量後の検体17と、検体定量部114への供給時に第一壁面123を乗り越えた検体17とが混ざることを防止できる。よって、ユーザは、精度の良い検査結果を得ることができる。