JP2014087941A - 転がり軸受用冠形保持器の製造方法、転がり軸受用冠形保持器、及び転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受用冠形保持器の製造方法、転がり軸受用冠形保持器、及び転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】保持器強度の低下を抑制することが可能な転がり軸受用冠形保持器の製造方法を提供する。
【解決手段】転がり軸受用冠形保持器1を、ゲート50と転がり軸受用冠形保持器1の中心軸Oとを通る仮想平面Pで第1及び第2の領域1A、1Bに分けたとき、第1及び第2の領域1A、1Bは、仮想平面Pに対して非対称の形状であり、且つ体積が異なるように設定した。したがって、ゲート50から射出された溶融樹脂が、第1及び第2の領域1A、1Bに流れ込んだとき、体積が小さい第1の領域1Aでは流速が速くなり、体積が大きい第2の領域1Bでは流速が遅くなるので、溶融樹脂の合流位置がポケット30底からずれる。このように、ポケット30底でのウェルド部Wの形成が回避され、保持器1の強度の低下を抑制することが可能である。
【選択図】図1

Description

本発明は、転がり軸受用冠形保持器の製造方法、転がり軸受用冠形保持器、及び転がり軸受に関する。
一般的に、転がり軸受用樹脂製保持器は、通常、射出成形により製造される。具体的には、図7に示すように、成形金型に成形体である転がり軸受用樹脂製保持器に対応する環状のキャビティ140を形成し、このキャビティ140の周縁部に設けた樹脂射出ゲート150から溶融された樹脂材料を注入し、冷却固化することによって製造される。
キャビティ140に注入された溶融樹脂は、キャビティ140内を左右に二つの流れとなって流動し、樹脂射出ゲート150と対向する反対側の位置で再び合流し、相互に接合され、ウェルド部100Wが形成される。一般に、この様に射出成形された軸受用樹脂製保持器は、溶融樹脂が融着一体化しただけのものであるため、溶融樹脂の均一な混合が起こらず、ウェルド部100Wにおいて強度が低下することがよく知られている。
また、溶融樹脂に、強化材料として、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の強化繊維を添加したものでは、ウェルド部100Wにおいて強化繊維が溶融樹脂の流動方向に対し垂直に配向するため、補強効果が発現しない。さらに、ウェルド部100W以外の部分では、強化繊維が溶融樹脂の流動方向に対し平行に配向するため、当該部分とウェルド部との強度差が大きくなってしまう。
このように、射出成形により製造された軸受用樹脂製保持器は、強度が弱いウェルド部から破損することが多いため、以下に示すような対策がなされてきた。
例えば、特許文献1記載のプラスチックシールの射出成形方法では、射出された樹脂がキャビティ内を満たしウェルド部が形成された後、樹脂溜まり部に樹脂を流入させることにより、ウェルド部における強化繊維の配向を乱し、該ウェルド部の強度を改善することを図っている。
また、特許文献2記載の樹脂製リング形状品の射出成形型では、射出された樹脂がキャビティ内に充填されてウェルド部を形成した後で、ウェルド部に近い樹脂溜り部から順に樹脂を充填させることにより、ウェルド部の補強繊維材の配向を乱して、ウェルドライン発現の抑制を図っている。
また、特許文献3記載の樹脂製連結ロッドでは、ロッド状部分の長手方向に直交する方向にロッド状部分を断面にしたときの断面形状を、筒状部分の軸線に沿った線で左右2つの断面部分に分けたときに左右非対称に、且つ左右の断面積が略等しくなるように形成することによって、ウェルドラインの位置をコントロールすることを図っている。
特許第3731647号公報 特許第4679203号公報 特許第3682261号公報
しかしながら、特許文献1又は2に記載の方法で射出成形を行った場合、製品を金型から取り出した後、樹脂溜り部を廃棄しなければならないため、材料コストの上昇や環境への負荷の原因となる虞がある。
そこで、樹脂溜り部を必要としない特許文献3記載の発明を用いることが考えられるが、冠形樹脂製保持器のように形状の制約が大きい樹脂製品では、樹脂射出ゲートを設置可能な位置が、保持器柱部に限定されてしまう。ここで、特許文献3記載の発明のように、中心軸線に対して左右の形状を断面積の等しい形状とした場合、ウェルド部の移動量が限定的であるため、特に、一点ゲート方式でポケット数が奇数の保持器を成形する場合や、複数ゲート方式で隣り合うゲート間のポケット数が奇数である保持器を成形する場合には、ポケット底にウェルド部が形成されてしまい、保持器強度の低下を招くという問題がある。
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、保持器強度の低下を抑制することが可能な転がり軸受用冠形保持器の製造方法、転がり軸受用冠形保持器、及び転がり軸受を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 成形金型内に形成した環状のキャビティの周縁部に設けられた1つの樹脂射出ゲートから、溶融樹脂を前記キャビティ内に射出することによって成形される転がり軸受用冠形保持器の製造方法であって、
前記転がり軸受用冠形保持器は、
略円環状の基部と、
前記基部の軸方向一端側面から、周方向に所定の間隔で軸方向に突出する奇数個の柱部と、
隣り合う一対の前記柱部の互いに対向する面と前記基部の軸方向一端側面とによって形成された奇数個のポケットと、
を有し、
前記樹脂射出ゲートは、前記柱部と周方向にオーバーラップする位置に配置され、
前記転がり軸受用冠形保持器を、前記樹脂射出ゲートと前記転がり軸受用冠形保持器の中心軸とを通る仮想平面で第1及び第2の領域に分けたとき、
前記第1及び第2の領域は、前記仮想平面に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
ことを特徴とする転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(2) 前記第1及び第2の領域における前記柱部は、前記仮想平面に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
ことを特徴とする(1)に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(3) 前記第1及び第2の領域のうち、一方の領域においては、前記基部の軸方向他端側面から少なくとも1つの柱部の内部に向かう肉盗みが凹設される
ことを特徴とする(2)に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(4) 前記第1及び第2の領域における前記基部の前記ポケットと周方向にオーバーラップする部分は、前記仮想平面に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なることを特徴とする(1)に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(5) 前記第1及び第2の領域のうち、一方の領域においては、前記基部の前記ポケットと周方向にオーバーラップする部分に軸方向他端側面から軸方向に向かう突部が凸設される
ことを特徴とする(4)に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(6) 成形金型内に形成した環状のキャビティの周縁部に、周方向に所定の間隔で設けられた複数の樹脂射出ゲートから、溶融樹脂を前記キャビティ内に射出することによって成形される転がり軸受用冠形保持器の製造方法であって、
前記転がり軸受用冠形保持器は、
略円環状の基部と、
前記基部の軸方向一端側面から、周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部と、
隣り合う一対の前記柱部の互いに対向する面と前記基部の軸方向一端側面とによって形成された複数のポケットと、
を有し、
前記樹脂射出ゲートは、前記柱部と周方向にオーバーラップする位置に配置され、
隣り合う前記樹脂射出ゲートの間には、前記ポケットが奇数個配置され、
前記転がり軸受用冠形保持器における隣り合う前記樹脂射出ゲートの間の領域を、隣り合う前記樹脂射出ゲートの中間位置で第1及び第2の領域に分けたとき、
前記第1及び第2の領域は、前記中間位置に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
ことを特徴とする転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(7) 前記第1及び第2の領域における前記柱部は、前記中間位置に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
ことを特徴とする(6)に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(8) 前記第1及び第2の領域のうち、一方の領域においては、前記基部の軸方向他端側面から少なくとも1つの柱部の内部に向かう肉盗みが凹設される
ことを特徴とする(7)に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(9) 前記第1及び第2の領域における前記基部の前記ポケットと周方向にオーバーラップする部分は、前記中間位置に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
ことを特徴とする(6)に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(10) 前記第1及び第2の領域のうち、一方の領域においては、前記基部の前記ポケットと周方向にオーバーラップする部分に、軸方向他端側面から軸方向に向かう突部が凸設される
ことを特徴とする(9)に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
(11) (1)〜(10)の何れか1つに記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法によって製造された
ことを特徴とする転がり軸受用冠形保持器。
(12) (11)に記載の転がり軸受用冠形保持器を備える
ことを特徴とする転がり軸受。
本発明の転がり軸受用冠形保持器の製造方法によれば、上述の従来技術と異なり、樹脂溜り部を設けないので、樹脂材料に無駄がなくなり、材料コスト及び環境負荷を低減できる。
また、一点ゲート方式でポケット数が奇数の保持器を成形する場合、転がり軸受用冠形保持器を、樹脂射出ゲートと転がり軸受用冠形保持器の中心軸とを通る仮想平面で第1及び第2の領域に分けたとき、第1及び第2の領域は、仮想平面に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なるように設定した。したがって、樹脂射出ゲートから射出された溶融樹脂が、第1及び第2の領域に流れ込んだとき、体積が小さい一方の領域では流速が速くなり、体積が大きい一方の領域では流速が遅くなるので、溶融樹脂の合流位置がポケット底からずれる。このように、ポケット底でのウェルド部の形成が回避され、保持器強度の低下を抑制することが可能である。
また、複数ゲート方式で隣り合うゲート間のポケット数が奇数である保持器を成形する場合、転がり軸受用冠形保持器における隣り合う樹脂射出ゲートの間の領域を、隣り合う樹脂射出ゲートの中間位置で第1及び第2の領域に分けたとき、第1及び第2の領域は、中間位置に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なるように設定した。したがって、樹脂射出ゲートから射出された溶融樹脂が、第1及び第2の領域に流れ込んだとき、体積が小さい一方の領域では流速が速くなり、体積が大きい一方の領域では流速が遅くなるので、溶融樹脂の合流位置がポケット底からずれる。このように、ポケット底でのウェルド部の形成が回避され、保持器強度の低下を抑制することが可能である。
第1実施形態に係る転がり軸受用冠形保持器の斜視図である。 第1実施形態に係る製造方法に使用する成形金型の断面図である。 第2実施形態に係る転がり軸受用冠形保持器の斜視図である。 第3実施形態に係る転がり軸受用冠形保持器の斜視図である。 第3実施形態に係る製造方法に使用する成形金型の断面図である。 第4実施形態に係る転がり軸受用冠形保持器の斜視図である。 従来の軸受用樹脂製保持器の製造方法に使用する成形金型の断面図である。
以下、本発明に係る転がり軸受用冠形保持器、及びその製造方法の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の転がり軸受用冠形保持器1(以後、単に冠形保持器と呼ぶことがある。)を示す斜視図である。冠形保持器1は、略円環状の基部10と、基部10の軸方向一端側面12から、周方向に所定の間隔で軸方向に突出する奇数個(本実施形態では15個)の柱部20と、隣り合う一対の柱部20,20の互いに対向する面22,22と基部10の軸方向一端側面12とによって形成され、軸受の転動体(不図示)を保持する奇数個(本実施形態では15個)のポケット30と、を有している。
図2に示すように、冠形保持器1は、成形金型内に形成した環状のキャビティ40の周縁部に設けた1つの樹脂射出ゲート(以下、単にゲートと呼ぶ。)50から、強化繊維を添加した溶融樹脂をキャビティ40内に射出し、冷却固化することによって成形される。樹脂材料としては、例えば、46ナイロンや66ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)等の樹脂に、10〜50wt%の強化繊維(例えば、ガラス繊維や炭素繊維。)を添加した樹脂組成物が用いられる。
なお、図2中、冠形保持器1の柱部20及びポケット30に相当する部分については、簡単のために省略している。
また、図1には、ゲート50が設けられる位置が模式的に表されており、このゲート50は、冠形保持器1の柱部20と周方向及び軸方向にオーバーラップする位置に配置される。
また、冠形保持器1を、ゲート50と冠形保持器1の中心軸Oとを通る仮想平面Pで第1及び第2の領域1A、1Bに分けたとき、第1及び第2の領域1A、1Bにおける柱部20は仮想平面Pに対して非対称の形状であり、且つ体積が異なるように形成されている。
より具体的に、第1の領域1Aにおいては、基部10の軸方向他端側面14からそれぞれの柱部20の内部に向かう肉盗み70が凹設される。それぞれの肉盗み70は、径方向幅が基部10の軸方向他端側面14の径方向幅よりも小さく、且つ、周方向幅が柱部20の周方向幅と略等しい開口71を有しており、軸方向一端側に向かうにしたがって周方向幅が小さくなるように形成されている。したがって、第1の領域1Aの柱部20の体積(断面積)は、第2の領域1Bの柱部20に比べて小さくなるように構成される。なお、本実施形態では、肉盗み70は、第1の領域1Aの全ての柱部20に形成されるとしたが、この構成に限定されず、少なくとも1つの柱部20に形成されればよい。
ここで、冠形保持器1を成形する際にゲート50から注入された溶融樹脂は、キャビティ40内において、第1及び第2の領域1A、1Bに対応する部分に流入する。このとき、溶融樹脂は、柱部20の体積(断面積)が小さい第1の領域1Aでは流速が速くなり、柱部20の体積(断面積)が大きい第2の領域1Bでは流速が遅くなるので、溶融樹脂の合流位置が、ゲート50と対向するポケット30底から第2の領域1B側にずれることになる。
なお、溶融樹脂の合流位置、すなわちウェルド部Wが形成される位置は、肉盗み70の体積や、肉盗み70を設ける柱部20の数等によって事前に調整されており、ウェルド部Wは、柱部20と周方向にオーバーラップする位置、より詳細には柱部20の周方向中間部に形成される。したがって、ウェルド部Wは、ポケット30底に形成されず、柱部20と周方向にオーバーラップする位置に形成されるので、冠形保持器1の強度低下を抑制することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の転がり軸受用冠形保持器の製造方法によれば、上述の従来技術と異なり、樹脂溜り部を設けないので、樹脂材料に無駄がなくなり、材料コスト及び環境負荷を低減できる。
また、転がり軸受用冠形保持器1を、ゲート50と転がり軸受用冠形保持器1の中心軸Oとを通る仮想平面Pで第1及び第2の領域1A、1Bに分けたとき、第1及び第2の領域1A、1Bは、仮想平面Pに対して非対称の形状であり、且つ体積が異なるように設定した。したがって、ゲート50から射出された溶融樹脂が、第1及び第2の領域1A、1Bに流れ込んだとき、体積が小さい第1の領域1Aでは流速が速くなり、体積が大きい第2の領域1Bでは流速が遅くなるので、溶融樹脂の合流位置がポケット30底からずれる。このように、ポケット30底でのウェルド部Wの形成が回避され、保持器1の強度の低下を抑制することが可能である。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る転がり軸受用冠形保持器について説明する。なお、本実施形態の転がり軸受用冠形保持器は、第1実施形態と基本的構成を同一とするので、同一又は相当部分には同一符号を付すことによりその説明を省略又は簡略化する。
図3に示すように、本実施形態の冠形保持器1においては、第1及び第2の領域1A、1Bにおける基部10のポケット30と周方向のオーバーラップする部分は、仮想平面Pに対して非対称の形状であり、且つ体積が異なるように形成されている。
より具体的に、第1の領域1Aにおいては、基部10のポケット30と周方向のオーバーラップする部分に、軸方向他端側面14から軸方向に向かう突部80が凸設される。したがって、第1の領域1Aの基部10の体積(断面積)は、第2の領域1Bの基部10に比べて大きくなるように構成される。なお、本実施形態では、突部80は、第1の領域1Aの基部10のうち、ポケット30と周方向にオーバーラップする全ての部分に形成されるとしたが、この構成に限定されず、少なくとも1つのポケット30とオーバーラップする部分に形成されればよい。
ここで、冠形保持器1を成形する際にゲート50から注入された溶融樹脂は、キャビティ40内において、第1及び第2の領域1A、1Bに対応する部分に流入する。このとき、溶融樹脂は、基部10の体積(断面積)が大きい第1の領域1Aでは流速が遅くなり、基部10の体積(断面積)が小さい第2の領域1Bでは流速が速くなるので、溶融樹脂の合流位置が、ゲート50と対向するポケット30底から第1の領域1A側にずれることになる。
なお、溶融樹脂の合流位置、すなわちウェルド部Wが形成される位置は、突部80の体積や、突部80の数等によって事前に調整されており、ウェルド部Wは、柱部20と周方向にオーバーラップする位置、より詳細には柱部20の周方向中間部に形成される。したがって、ウェルド部Wは、ポケット30底に形成されず、柱部20と周方向にオーバーラップする位置に形成されるので、冠形保持器1の強度低下を抑制することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の転がり軸受用冠形保持器1によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る転がり軸受用冠形保持器について説明する。なお、本実施形態の転がり軸受用冠形保持器は、第1実施形態と基本的構成を同一とするので、同一又は相当部分には同一符号を付すことによりその説明を省略又は簡略化する。
図4及び図5に示すように、キャビティ40の周縁部には周方向に所定の間隔で複数(本実施形態では3つ)のゲート50が配置されており、それぞれのゲート50は、冠形保持器1の柱部20と周方向にオーバーラップする位置に設けられる。
本実施形態の冠形保持器1は、第1実施形態と同様に奇数個(15個)のポケット30を有しており、隣り合うゲート50の間には、ポケット30が奇数個(本実施形態では5つ)配置される。
また、冠形保持器1における隣り合うゲート50の間の3つの領域を、それぞれ隣り合うゲート50の中間位置Mで第1及び第2の領域1A´、1B´に分けたとき、第1及び第2の領域1A´、1B´における柱部20は中間位置Mに対して非対称の形状であり、且つ体積が異なるように形成されている。
より具体的に、第1の領域1A´においては、基部10の軸方向他端側面14からそれぞれの柱部20の内部に向かう肉盗み70が凹設される。したがって、第1の領域1A´の柱部20の体積(断面積)は、第2の領域1B´の柱部20に比べて小さくなるように構成される。なお、本実施形態では、肉盗み70は、第1の領域1A´の全ての柱部20に形成されるとしたが、この構成に限定されず、少なくとも1つの柱部20に形成されればよい。
ここで、冠形保持器1を成形する際に複数のゲート50から注入された溶融樹脂は、キャビティ40内において、第1及び第2の領域1A´、1B´に対応する部分に流入する。このとき、溶融樹脂は、柱部20の体積(断面積)が小さい第1の領域1A´では流速が速くなり、柱部20の体積(断面積)が大きい第2の領域1B´では流速が遅くなるので、溶融樹脂の合流位置が、中間位置Mのポケット30底から第2の領域1B´側にずれることになる。
なお、溶融樹脂の合流位置、すなわちウェルド部Wが形成される位置は、肉盗み70の体積や、肉盗み70を設ける柱部20の数等によって事前に調整されており、ウェルド部Wは、柱部20と周方向にオーバーラップする位置、より詳細には柱部20の周方向中間部に形成される。したがって、ウェルド部Wは、ポケット30底に形成されず、柱部20と周方向にオーバーラップする位置に形成されるので、冠形保持器1の強度低下を抑制することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の転がり軸受用冠形保持器1のような、複数ゲート方式で隣り合うゲート50間のポケット30の数が奇数である保持器を成形する場合であっても、上述の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
なお、本実施形態の冠形保持器1は、偶数個のポケット30を有してもよく、この場合、周方向に所定の間隔で偶数個のゲート50が配置され、隣り合うゲート50の間には、ポケット30が奇数個配置される。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る転がり軸受用冠形保持器について説明する。なお、本実施形態の転がり軸受用冠形保持器は、第3実施形態と基本的構成を同一とするので、同一又は相当部分には同一符号を付すことによりその説明を省略又は簡略化する。
図6に示すように、本実施形態の冠形保持器1においては、第1及び第2の領域1A´、1B´における基部10のポケット30と周方向のオーバーラップする部分は、隣り合うゲート50の中間位置Mに対して非対称の形状であり、且つ体積が異なるように形成されている。
より具体的に、第1の領域1A´においては、基部10のポケット30と周方向のオーバーラップする部分に、軸方向他端側面14から軸方向に向かう突部80が凸設される。したがって、第1の領域1A´の基部10の体積(断面積)は、第2の領域1B´の基部10に比べて大きくなるように構成される。なお、本実施形態では、突部80は、第1の領域1A´の基部10のうち、ポケット30と周方向にオーバーラップする全ての部分に形成されるとしたが、この構成に限定されず、少なくとも1つのポケット30とオーバーラップする部分に形成されればよい。
ここで、冠形保持器1を成形する際にゲート50から注入された溶融樹脂は、キャビティ40内において、第1及び第2の領域1A´、1B´に対応する部分に流入する。このとき、溶融樹脂は、基部10の体積(断面積)が大きい第1の領域1A´では流速が遅くなり、基部10の体積(断面積)が小さい第2の領域1B´では流速が速くなるので、溶融樹脂の合流位置が中間位置Mのポケット30底から第1の領域1A´側にずれることになる。
なお、溶融樹脂の合流位置、すなわちウェルド部Wが形成される位置は、突部80の体積や、突部80の数等によって事前に調整されており、ウェルド部Wは、柱部20と周方向にオーバーラップする位置、より詳細には柱部20の周方向中間部に形成される。したがって、ウェルド部Wは、ポケット30底に形成されず、柱部20と周方向にオーバーラップする位置に形成されるので、冠形保持器1の強度低下を抑制することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態の転がり軸受用冠形保持器1によっても、上述の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上述の実施形態においては、ゲート50の数は、1つ又は3つとしているが、特に限定されるものではなく、任意の数に設定可能である。
1 転がり軸受用冠形保持器
1A、1A´ 第1の領域
1B、1B´ 第2の領域
10 基部
12 軸方向一端側面
14 軸方向他端側面
20 柱部
22 対向する面
30 ポケット
40 キャビティ
50 樹脂射出ゲート
70 肉盗み
71 開口
80 突部
M 中間位置
O 中心軸
P 仮想平面

Claims (12)

  1. 成形金型内に形成した環状のキャビティの周縁部に設けられた1つの樹脂射出ゲートから、溶融樹脂を前記キャビティ内に射出することによって成形される転がり軸受用冠形保持器の製造方法であって、
    前記転がり軸受用冠形保持器は、
    略円環状の基部と、
    前記基部の軸方向一端側面から、周方向に所定の間隔で軸方向に突出する奇数個の柱部と、
    隣り合う一対の前記柱部の互いに対向する面と前記基部の軸方向一端側面とによって形成された奇数個のポケットと、
    を有し、
    前記樹脂射出ゲートは、前記柱部と周方向にオーバーラップする位置に配置され、
    前記転がり軸受用冠形保持器を、前記樹脂射出ゲートと前記転がり軸受用冠形保持器の中心軸とを通る仮想平面で第1及び第2の領域に分けたとき、
    前記第1及び第2の領域は、前記仮想平面に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
    ことを特徴とする転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  2. 前記第1及び第2の領域における前記柱部は、前記仮想平面に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
    ことを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  3. 前記第1及び第2の領域のうち、一方の領域においては、前記基部の軸方向他端側面から少なくとも1つの柱部の内部に向かう肉盗みが凹設される
    ことを特徴とする請求項2に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  4. 前記第1及び第2の領域における前記基部の前記ポケットと周方向にオーバーラップする部分は、前記仮想平面に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  5. 前記第1及び第2の領域のうち、一方の領域においては、前記基部の前記ポケットと周方向にオーバーラップする部分に軸方向他端側面から軸方向に向かう突部が凸設される
    ことを特徴とする請求項4に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  6. 成形金型内に形成した環状のキャビティの周縁部に、周方向に所定の間隔で設けられた複数の樹脂射出ゲートから、溶融樹脂を前記キャビティ内に射出することによって成形される転がり軸受用冠形保持器の製造方法であって、
    前記転がり軸受用冠形保持器は、
    略円環状の基部と、
    前記基部の軸方向一端側面から、周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部と、
    隣り合う一対の前記柱部の互いに対向する面と前記基部の軸方向一端側面とによって形成された複数のポケットと、
    を有し、
    前記樹脂射出ゲートは、前記柱部と周方向にオーバーラップする位置に配置され、
    隣り合う前記樹脂射出ゲートの間には、前記ポケットが奇数個配置され、
    前記転がり軸受用冠形保持器における隣り合う前記樹脂射出ゲートの間の領域を、隣り合う前記樹脂射出ゲートの中間位置で第1及び第2の領域に分けたとき、
    前記第1及び第2の領域は、前記中間位置に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
    ことを特徴とする転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  7. 前記第1及び第2の領域における前記柱部は、前記中間位置に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
    ことを特徴とする請求項6に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  8. 前記第1及び第2の領域のうち、一方の領域においては、前記基部の軸方向他端側面から少なくとも1つの柱部の内部に向かう肉盗みが凹設される
    ことを特徴とする請求項7に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  9. 前記第1及び第2の領域における前記基部の前記ポケットと周方向にオーバーラップする部分は、前記中間位置に対して非対称の形状であり、且つ体積が異なる
    ことを特徴とする請求項6に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  10. 前記第1及び第2の領域のうち、一方の領域においては、前記基部の前記ポケットと周方向にオーバーラップする部分に、軸方向他端側面から軸方向に向かう突部が凸設される
    ことを特徴とする請求項9に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法。
  11. 請求項1〜10の何れか1項に記載の転がり軸受用冠形保持器の製造方法によって製造された
    ことを特徴とする転がり軸受用冠形保持器。
  12. 請求項11に記載の転がり軸受用冠形保持器を備える
    ことを特徴とする転がり軸受。
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US10377070B2 (en) * 2016-02-26 2019-08-13 Nsk Ltd. Method for manufacturing bearing cage

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