JP2014084244A - 添加量制御装置および添加量制御プログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメント製造工程で対象成分を含む添加材の量を制御する添加量制御装置190であって、測定された生成物中の対象成分濃度を取得する濃度取得部191と、測定された生成物中の対象成分濃度および過去に操作された添加材の添加比率の変化量を用い、プロセスモデルに基づいて、将来の生成物中の対象成分濃度および将来にわたる添加材の添加量を予測する予測部194と、予測された生成物中の対象成分濃度が所定の目標値を一方側に超える超過分および予測された添加材の添加量に応じた評価に基づいて、現在添加すべき添加材の添加比率を算出する添加比率算出部195と、算出された添加比率で添加材の添加を指示する添加指示部198と、を備える。
【選択図】図2
Description
図1は、セメント仕上工程プラント100の構成を示す概略図である。図1に示すように、セメント仕上工程プラント100は、クリンカサイロ120、石膏添加設備125、クリンカダストサイロ128、計量器130、FIC135、仕上ミル140、セパレータ145、クリンカダストサイロ150、計量器160、FIC165、サンプラ170、分析装置175、セメントサイロ180および制御計算機(添加量制御装置)190を備えている。図中の実線の矢印は材料の流れを示しており、破線の矢印は情報の流れを示している。
図2は、制御計算機(添加量制御装置)190の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御計算機190は、濃度取得部191、予測部194、添加比率算出部195、非定常制御部197および添加指示部198を備えている。
図3は、各クリンカダストとその成分の一例を表すテーブルである。図3に示す例では、典型的なクリンカダストの成分濃度に対して、クリンカダストK1の塩素成分および微量成分の濃度はいずれも高く、クリンカダストK2の塩素成分は、高くも低くもない中レベルであり、その微量成分は低い。なお、微量成分とは、塩素に比べて微量な鉛等の成分を指す。なお、図3に示す各クリンカダストK1、K2とその成分は、後述する「工場実機での実施例」で用いられる2種のクリンカダストとその成分と同じである。
次に、上記のように構成された制御計算機(添加量制御装置)190の動作を説明する。図4は、制御計算機190によるモデル予測制御動作の一例を示すグラフである。図4の例では、対象成分を塩素とし、クリンカダストK1を添加し、製品セメントの塩素濃度を目標値に近づけている。この例では、60分ごとに製品セメントの塩素濃度の分析結果を受信し、10分ごとにクリンカダストK1の添加比率を算出している。
(A1)製品セメントの塩素分析値を取得する。
(A2)現在の塩素分析値から目標値までの参照軌跡を計算し、分析値から目標値にどのように近づけるかを決定する。
(A3)プロセスモデルを用いて、過去のクリンカダストK1の添加比率から将来の製品セメント中の塩素濃度の応答を予測する。
(A4)予測値が参照軌跡に一致するようなクリンカダストK1の添加比率を将来にわたって最適化計算する。この際に予測値が目標値を超えた分は低い評価とし、合計のクリンカダストの添加量が大きいほど高い評価とする。
(A5)計算したクリンカダストK1の添加比率のうち、今回分のみを設定する。
(B1)過去のクリンカダストK1の添加比率より、10分後の塩素の予測値を計算する。
(B2)予測値から目標値に参照軌跡を計算し、10分後の予測値から目標値にどのように近づけるか決定する。
(B3)プロセスモデルを用いて、過去のクリンカダストK1の添加比率から将来の製品セメント中の塩素濃度の応答を予測する。
(B4)予測値が参照軌跡に一致するようなクリンカダストK1の添加比率を将来にわたって最適化計算する。この際に予測値が目標値を超えた分は低い評価とし、合計のクリンカダストの添加量が大きいほど高い評価とする。
(B5)計算したクリンカダストK1の添加比率のうち、今回分のみを設定する。
(B6)さらに10分後、(B1)から(B5)の手順を繰り返す。以上の制御計算機190の動作は、プログラムにより実行される。なお、上記の例では、1種類のクリンカダストの添加比率を計算しているが、2種類のクリンカダストの添加比率を計算する場合であっても過去の2種類のクリンカダストの添加比率から予測値を算出し、今回のそれぞれの添加比率を計算可能である。
上記のような動作により得られるクリンカダストの処理量(添加量)をシミュレーションにより評価する。図5は、シミュレーション結果を示す図である。図5は、クリンカダスト処理量と対象成分濃度との関係を示しており、グラフの縦軸はクリンカダストK1の合計処理量を表し、横軸はクリンカダストK2の合計処理量を表している。図5に示す傾きをもつ一点鎖線は、製品セメント中の塩素濃度の目標値を示す線である。また、傾きをもつ破線は、製品セメント中の微量成分濃度の目標値を示す線である。
(対象成分濃度の予測モデル)
制御計算機190の動作の基礎となるモデル予測制御を説明する。図6(a)、(b)はいずれも、モデル予測制御を示す模式図である。図7は、ステップ応答の例を示す図である。製品セメント中の対象成分濃度の予測には、ステップ応答モデルを使用する。ステップ応答モデルには、それぞれのクリンカダストの添加比率をステップ状に変化させたときの製品セメント中の対象成分濃度の変化量を測定した結果を用いる。ステップ応答モデルを用いたモデル予測制御(Model Predictive Control:MPC)として動的行列制御(Dynamic Matrix Control:DMC)について以下に説明するが、ARXモデルなどの統計モデルを用いたモデル予測制御として一般化モデル予測制御(Generalized Predictive Control:GPC)を用いてもよい。
製品セメントの対象成分濃度の現在値から目標値に対してどのように近づけたいかを式(1.8)の参照軌跡で定義する。
操作量の上下限制約(umin,umax)と操作変化幅の上下限制約(Δumin,Δumax)をそれぞれ考慮する場合、これを式(1.10)の二次計画最適化問題として計算すればよい。
クリンカダスト処理量を最大化するため、モデル予測制御の評価関数に式(2.1)のクリンカダスト処理量を導入する。ここで、Aは処理量最大化係数と定義する。
まず、手動制御、PID制御、モデル予測制御、超過分評価による制御および本発明の制御における1入力1出力での制御動作を確認するため、以下のような条件でシミュレーションを実施した。
図8は、手動制御による時間に対する対象成分濃度およびクリンカダストの添加量を示すグラフである。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。手動制御シミュレーションではオペレータによる手動制御を仮定し、分析値に応じてクリンカダストの添加量を徐々に変更した。制御周期を60[min]とし、対象成分濃度が目標値以下の場合は添加量を10だけ増加させ、目標値を超過した場合には添加量を20だけ減少させた。
図9は、PID制御による時間に対する対象成分濃度およびクリンカダストの添加量を示すグラフである。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。PID制御では、制御周期を60[min]とし、比例ゲインを0.05[-]、積分時間を5[min]、微分時間を0[min]に設定した。
図10は、通常のモデル予測制御によるシミュレーションを行なった場合の時間に対する対象成分濃度およびクリンカダスト添加量を示すグラフである。シミュレーションは1日分を行なった。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。目標指向係数、操作抑制係数、ペナルティ係数および処理量最大化係数を最適になるように設定し、モデル予測制御のシミュレーションを実施した。
図11は、超過分評価による制御によるシミュレーションを行なった場合の時間に対する対象成分濃度およびクリンカダスト添加量を示すグラフである。シミュレーションは1日分を行なった。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。超過分評価による制御とは、対象成分濃度の目標値からの超過分のみを評価して添加材の添加量を決定する制御方法である(特許文献1参照)。目標指向係数、操作抑制係数、ペナルティ係数および処理量最大化係数を最適になるように設定し、対象成分濃度が目標値以下になるように管理する超過分評価による制御のシミュレーションを行なった。
図12は、本発明の制御によるシミュレーションを行なった場合の時間に対する対象成分濃度およびクリンカダスト添加量を示すグラフである。シミュレーションは1日分を行なった。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。本発明の制御では、目標指向係数、操作抑制係数、ペナルティ係数および処理量最大化係数を最適になるよう設定し、対象成分濃度が目標値以下になるよう管理すると同時にクリンカダスト添加量最大化を考慮している。
以上のシミュレーションの結果によれば、従来のモデル予測制御では、制御量である対象成分濃度が目標値以下になるように管理することができない。超過分評価による方法では、対象成分濃度が目標値以下になるように管理することはできるが、クリンカダスト添加量の最大化までは考慮されていない。本発明の制御では、「対象成分濃度を目標値以下で管理する」ことと、「クリンカダスト添加量を最大化する」ことを同時に行なえる。この点に従来の制御とは異なる格別の優位性がある。
次に、従来の制御方法と本発明の制御方法のそれぞれについて以下のようにシミュレーションを実施した。そして、1入力1出力での実際のプロセスに近い制御での性能の違いを確認した。このシミュレーションでは図13に示すように、外乱として、対象成分のクリンカ持込分によりその濃度が±7.5変動したと仮定し、クリンカダスト添加量と成分超過量を確認した。
通常のモデル予測制御では、目標値と対象成分濃度の平均値がほぼ一致しており、対象成分濃度を目標値で管理することは可能である。しかしながら対象成分濃度を上限値以下で管理するためには、対象成分濃度のばらつきに応じて目標値を大きく下側に設定しなければならない。これにより当然クリンカダストの処理量も減少する。実際にはクリンカ成分濃度は、日によってもばらつきの大きさが異なり、ばらつきに応じて都度目標値を変更することは困難である。
超過分評価による制御では、目標値と上限値が近い値となり、目標値を上限値付近に設定しておけば上限値以下で管理することは可能である。しかしながら、対象成分濃度が目標値を下回る時間が長く、結果としてクリンカダストの添加量は少なくなっている。また同じ理由で対象成分濃度の平均値も低くなっている。
一方、本発明による制御は、通常のモデル予測制御や超過分評価による制御と比べ、対象成分濃度は高く、クリンカダスト添加量も多くなっている。本発明の制御では、「対象成分濃度を上限値以下で管理する」ことと、「クリンカダスト添加量を最大化する」ことを同時に行なえる。この点に従来の制御とは異なる格別の優位性がある。
セメント仕上工程プラントにおいて、対象成分の異なるK1とK2の2種類のクリンカダストを同時に添加し、従来の制御および本発明の制御方法を用いて制御結果の比較を行なった。上記のクリンカダストK1およびK2の各成分は、図3に示す例と同じである。
120 クリンカサイロ
125 石膏添加設備
128 クリンカダストサイロ
130 計量器
135 FIC
140 仕上ミル
145 セパレータ
150 クリンカダストサイロ
160 計量器
165 FIC
170 サンプラ
175 分析装置
180 セメントサイロ
190 制御計算機(添加量制御装置)
191 濃度取得部
194 予測部
195 添加比率算出部
197 非定常制御部
198 添加指示部
Claims (9)
- セメント製造工程で対象成分を含む添加材の量を制御する添加量制御装置であって、
測定された生成物中の対象成分濃度を取得する濃度取得部と、
前記測定された生成物中の対象成分濃度および過去に操作された添加材の添加比率の変化量を用い、プロセスモデルに基づいて、将来の前記生成物中の対象成分濃度および将来にわたる前記添加材の添加量を予測する予測部と、
前記予測された生成物中の対象成分濃度が所定の目標値を一方側に超える超過分および前記予測された添加材の添加量に応じた評価に基づいて、現在添加すべき前記添加材の添加比率を算出する添加比率算出部と、
前記算出された添加比率で前記添加材の添加を指示する添加指示部と、を備えること特徴とする添加量制御装置。 - 前記添加比率算出部は、前記予測された生成物中の対象成分濃度が所定の目標値を一方側に超える超過分に対する評価量と前記予測された添加材の添加量に対する評価量とを合計した総合的な評価量に基づいて、現在添加すべき前記添加材の添加比率を算出することを特徴とする請求項1記載の添加量制御装置。
- 前記添加比率算出部は、前記予測された生成物中の対象成分濃度が所定の目標値を大きい側に超える超過分が大きいほど低い評価とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の添加量制御装置。
- 前記添加比率算出部は、前記予測された添加材の添加量が大きいほど高い評価とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の添加量制御装置。
- 前記予測部および前記添加比率算出部は、2種以上の前記添加材のそれぞれについて過去のデータから前記予測、評価および算出を行なうことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の添加量制御装置。
- 前記予測部は、測定された製品セメント中の対象成分濃度および操作されたクリンカダストの比率の変化量を用い、将来の前記製品セメント中の対象成分濃度およびクリンカダストの添加量を予測し、
前記添加比率算出部は、前記クリンカダストの添加比率を算出し、
前記添加指示部は、前記算出された添加比率で前記クリンカダストを、仕上ミル投入前の粉砕前クリンカまたは仕上ミル排出後の精粉セメントへ添加することを指示することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の添加量制御装置。 - 前記対象成分濃度は、塩素濃度、鉛濃度およびアルカリ濃度の少なくとも一つであることを特徴とする請求項2記載の添加量制御装置。
- 前記測定された対象成分濃度が所定の上限値を超えたときには、前記算出された添加材の添加比率から所定値を引いた値を新たな前記添加材の添加比率とする非定常制御部を更に備えていることを特徴とする請求項2記載の添加量制御装置。
- セメント製造工程で対象成分を含む添加材の量を制御する添加量制御プログラムであって、
測定された生成物中の対象成分濃度を取得する処理と、
前記測定された生成物中の対象成分濃度および過去に操作された添加材の添加比率の変化量を用い、プロセスモデルに基づいて、将来の前記生成物中の対象成分濃度および将来にわたる添加材の添加量を予測する処理と、
前記予測された生成物中の対象成分濃度が所定の目標値を一方側に超える超過分および前記予測された添加材の添加量に応じた評価に基づいて、現在添加すべき前記添加材の添加比率を算出する処理と、
前記算出された添加比率で前記添加材の添加を指示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする添加量制御プログラム。
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