(第1実施形態)
以下、第1実施形態を説明する。図1に示す車両用熱管理システム10は、車両が備える各種温度調整対象機器(冷却または加熱を要する機器)を適切な温度に冷却するために用いられる。
本実施形態では、熱管理システム10を、エンジン(内燃機関)および走行用モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド自動車に適用している。
本実施形態のハイブリッド自動車は、車両の走行負荷や電池の蓄電残量等に応じてエンジンを作動あるいは停止させて、エンジンおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態(HV走行)や、エンジン10を停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態(EV走行)等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動源としてエンジンのみを有する車両と比較して燃費を向上させることができる。
本実施形態のハイブリッド自動車は、車両停車時に外部電源(商用電源)から供給された電力を、車両に搭載された電池(車載バッテリ)に充電可能なプラグインハイブリッド自動車として構成されている。電池としては、例えばリチウムイオン電池を用いることができる。
エンジンから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるのみならず、発電機を作動させるためにも用いられる。そして、発電機にて発電された電力および外部電源から供給された電力を電池に蓄わえることができ、電池に蓄えられた電力は、走行用モータのみならず、冷却システムを構成する電動式構成機器をはじめとする各種車載機器に供給される。
図1に示すように、熱管理システム10は、多数個の流路11〜16、第1切替弁21、第2切替弁22、第1ポンプ23、第2ポンプ24(複数個のポンプ)、およびラジエータ26(熱交換器)を備えている。
多数個の流路11〜16は、冷却水が流れる冷却水流路である。多数個の流路11〜16は、樹脂材(ナイロン、ポリフタルアミド等)、金属材(SUS)等のソリッド配管、およびゴム材(EPDM)等のホース配管によって形成されている。
冷却水は、熱媒体としての流体である。本実施形態では、冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンまたはナノ流体を含む液体が用いられている。
多数個の流路11〜16は、一端側が第1切替弁21に接続され、他端側が第2切替弁22に接続されている。図1では、第1切替弁21および第2切替弁22を模式的に図示している。
第1切替弁21は、冷却水が流入する第1入口21aおよび第2入口21bと、冷却水が流出する第1出口21c、第2出口21d、第3出口21eおよび第4出口21fを有している。第1切替弁21は、第1、第2入口21a、21bと第1〜第4出口21c、21d、21e、21fとの連通状態を切り替える第1切替手段である。
第1入口21aには、多数個の流路11〜16のうち第1流路11の一端側が接続されている。第2入口21bには、多数個の流路11〜16のうち第2流路12の一端側が接続されている。
第1出口21cには、多数個の流路11〜16のうち第3流路13の一端側が接続されている。第2出口21dには、多数個の流路11〜16のうち第4流路14の一端側が接続されている。第3出口21eには、多数個の流路11〜16のうち第5流路15の一端側が接続されている。第4出口21fには、多数個の流路11〜16のうち第6流路16の一端側が接続されている。
第2切替弁22は、冷却水が流出する第1出口22aおよび第2出口22bと、冷却水が流入する第1入口22c、第2入口22d、第3入口22dおよび第4入口22fを有している。第2切替弁22は、第1、第2出口22a、22bと第1〜第4入口22c〜22fとの連通状態を切り替える第2切替手段である。
第1出口22aには、多数個の流路11〜16のうち第1流路11の他端側が接続されている。第2出口22bには、多数個の流路11〜16のうち第2流路12の他端側が接続されている。
第1入口22cには、多数個の流路11〜16のうち第3流路13の他端側が接続されている。第2入口22dには、多数個の流路11〜16のうち第4流路14の他端側が接続されている。第3入口22eには、多数個の流路11〜16のうち第5流路15の他端側が接続されている。第4入口22fには、多数個の流路11〜16のうち第6流路16の他端側が接続されている。
第1ポンプ23および第2ポンプ24は、冷却水を吸入して吐出する電動ポンプである。第1ポンプ23は第1流路11(第1ポンプ配置流路)に配置され、第2ポンプ24は第2流路12(第2ポンプ配置流路)に配置されている。第1ポンプ23および第2ポンプ24はいずれも、冷却水を第2切替弁22側から吸入して第1切替弁21側に吐出するように配置されている。
ラジエータ26は、冷却水と車室外空気(以下、外気と言う。)とを熱交換することによって冷却水の熱を外気に放熱させる放熱用の熱交換器(空気熱媒体熱交換器)である。ラジエータ26は、第1流路11のうち第1ポンプ23と第2切替弁22との間の部位に配置されている。
図示を省略しているが、ラジエータ26は車両の最前部に配置されている。ラジエータ26への外気の送風は室外送風機27によって行われる。車両の走行時にはラジエータ26に走行風が当たるようになっている。
第1流路11のうちラジエータ26よりも第1切替弁21側の部位には、バイパス流路28の一端側が接続されている。バイパス流路28の他端側は、第2切替弁22の第3出口22gに接続されている。
第2切替弁22は、第3出口22gと第1〜第3入口22c〜22eとの連通状態を切り替えて、冷却水がラジエータ26をバイパスしてバイパス流路28に流れるように切り替えることができるようになっている。
第3流路13(機器配置流路)には、冷却水が流通する冷却水流通機器(熱媒体流通機器)としてのインバータ31および走行用電動モータ32が互いに直列に配置されている。
インバータ31は、電池から供給された直流電力を交流電力に変換して走行用モータに出力する電力変換装置であり、パワーコントロールユニットを構成している。
パワーコントロールユニットは、走行用モータを駆動させるために電池の出力を制御する部品であり、インバータ31の他にも、電池の電圧を上げる昇圧コンバータ等を有している。
インバータ31の内部には、冷却水が流れる冷却水流路が形成されており、この冷却水流路に冷却水が流れることによってインバータ31が冷却される。インバータ31は、内部の半導体素子の熱害や劣化防止等の理由から65℃以下の温度に維持されるのが好ましい。
走行用電動モータ32は、電気エネルギを出力軸の回転という機械エネルギに変換する電動機(モータ)としての機能と、出力軸の回転(機械エネルギ)を電気エネルギに変換する発電機(ジェネレータ)としての機能とを有している。
第4流路14(機器配置流路)には、冷却水流通機器としての電池33が配置されている。電池33の内部には、冷却水が流れる電池用流路が形成されており、この電池用流路に冷却水が流れることによって電池33が冷却される。電池33は、出力低下、充電効率低下および劣化防止等の理由から10〜40℃程度の温度に維持されるのが好ましい。
第4流路14には、電池33の代わりに、冷却水(熱媒体)と空気とが熱交換し、その空気が電池33に導風されることによって電池33を冷却または加熱するような電池冷却用熱交換器が配置されていてもよい。
第5流路15(機器配置流路)には、冷却水流通機器としてのチラー34が配置されている。チラー34は、冷凍サイクル40の低圧冷媒(低温冷媒)と冷却水とを熱交換させることによって冷却水を冷却する冷却水冷却用の熱交換器(熱媒体冷却手段)である。
第6流路16(機器配置流路)には、冷却水流通機器としてのコンデンサ35およびヒータコア36が互いに直列に配置されている。コンデンサ35は、冷凍サイクル40の高圧冷媒(高温冷媒)と冷却水とを熱交換させることによって冷却水を加熱する冷却水加熱用の熱交換器(熱媒体加熱手段)である。ヒータコア36は、コンデンサ35で加熱された冷却水と車室内への送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する空気加熱用の熱交換器(空気熱媒体熱交換器)である。
冷凍サイクル40は、蒸気圧縮式冷凍機である。本例では、冷凍サイクル40の冷媒としてフロン系冷媒が用いられているので、冷凍サイクル40は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
冷凍サイクル40は、低圧側熱交換器としてのチラー34、および高圧側熱交換器としてのコンデンサ35の他、圧縮機41およびチラー用膨張弁42を有している。
圧縮機41は、電池から供給される電力によって駆動される電動圧縮機であり、気相冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機41は、プーリー、ベルト等を介してエンジンにより回転駆動されるようになっていてもよい。圧縮機41から吐出された高温高圧の気相冷媒は、コンデンサ35で冷却水と熱交換することによって吸熱されて凝縮する。
チラー用膨張弁42は、コンデンサ35で凝縮された液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。チラー用膨張弁42で減圧膨張された冷媒は、チラー34で冷却水と熱交換することによって冷却水から吸熱して蒸発する。チラー34で蒸発した気相冷媒は圧縮機41に吸入されて圧縮される。
チラー34では冷凍サイクル40の低圧冷媒によって冷却水を冷却するので、外気によって冷却水を冷却するラジエータ26と比較して冷却水を低い温度まで冷却することが可能である。
具体的には、ラジエータ26では冷却水を外気の温度よりも低い温度まで冷却することができないのに対し、チラー34では冷却水を外気の温度よりも低い温度まで冷却することが可能である。
さらに、冷凍サイクル40は、蒸発器用膨張弁43および蒸発器44を有している。蒸発器用膨張弁43および蒸発器44は、冷凍サイクル40において、チラー用膨張弁42およびチラー34に対して並列に配置されている。蒸発器用膨張弁43は、コンデンサ35で凝縮された液相冷媒を減圧膨張させる減圧手段である。
蒸発器44は、蒸発器用膨張弁43で減圧膨張された冷媒と車室内への送風空気とを熱交換することによって送風空気を冷却する空気冷却用熱交換器(空気冷媒熱交換器)である。蒸発器44で送風空気から吸熱して蒸発した気相冷媒は圧縮機41に吸入されて圧縮される。
蒸発器44およびヒータコア36は、室内空調ユニットのケーシング45の内部に形成された空気通路に配置されている。具体的には、ケーシング45内の空気通路において、ヒータコア36が蒸発器44よりも空気流れ下流側に配置されている。
ケーシング45内の空気通路には、室内送風機46によって送風された送風空気が流れる。ケーシング45の内部において蒸発器44とヒータコア36との間には、エアミックスドア47が配置されている。エアミックスドア47は、ヒータコア36を通過する送風空気と蒸発器44をバイパスして流れる送風空気との風量割合を調整する風量割合調整手段である。
第1流路11にはリザーブタンク49が接続されている。リザーブタンク49は、冷却水を貯留する大気開放式の容器(熱媒体貯留手段)である。したがって、リザーブタンク49に蓄えている冷却水の液面における圧力は大気圧になる。
リザーブタンク49に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。リザーブタンク49は、冷却水中に混入した気泡を気液分離する機能を有している。
次に、第1切替弁21および第2切替弁22の詳細を説明する。第1切替弁21は、第1入口21aと連通する第1入口側流路211と、第2入口21bと連通する第2入口側流路212とを有している。
さらに、第1切替弁21は、第1出口21c、第2出口21d、第3出口21eおよび第4出口21fに対応して設けられた4個の出口側流路213を有している。図2は、4個の出口側流路213のうち、第1出口21cと連通する出口側流路213を模式的に示している。
他の3個の出口側流路213、すなわち第2出口21dと連通する出口側流路213、第3出口21eと連通する出口側流路213、および第4出口21fと連通する出口側流路213は図2と同様である。したがって、図2の括弧内に、他の3個の出口側流路213に対応する符号を付して、他の3個の出口側流路213の図示および説明を省略する。
第1出口21cと連通する出口側流路213は、第1入口側流路211と連通する第1入口側連通口213aと、第2入口側流路212と連通する第2入口側連通口213bとを有している。換言すれば、各出口側流路213は、第1出口21cを第1入口側流路211および第2入口側流路212と連通させている。
出口側流路213には、ドア式の弁体214が配置されている。弁体214は、第1入口側流路211側の第1入口側連通口213aと、第2入口側流路212側の第2入口側連通口213bとを開閉する。
以下では、弁体214が第1入口側流路211側を全閉して第2入口側流路212側を全開している状態をバルブ開度=0%と言い、第1切替弁21の弁体214が第1入口側流路211側を全開して第2入口側流路212側を全閉している状態をバルブ開度=100%と言う。
各出口側流路213の弁体214は電動アクチュエータ(図示せず)によって駆動される。電動アクチュエータの個数は、弁体214の個数と同数であってもよいし、弁体214の個数よりも少なくてもよい。電動アクチュエータの個数を弁体214の個数よりも少なくする場合、電動アクチュエータと各弁体214とをリンク機構で連結して各弁体214を連動駆動すればよい。
図1に示すように、第2切替弁22は、第1切替弁21と同様に、第1出口22aと連通する第1出口側流路221と、第2出口22bと連通する第2出口側流路222とを有している。
さらに、第2切替弁22は、第1入口22c、第2入口22d、第3入口22eおよび第4入口22fに対応して設けられた4個の入口側流路223を有している。図2は、4個の出口側流路223のうち、第1入口22cと連通する入口側流路223を模式的に示している。
他の3個の入口側流路223、すなわち第2入口22dと連通する入口側流路223、第3入口22eと連通する入口側流路223、および第4入口22fと連通する入口側流路223は図2と同様である。したがって、図2の括弧内に、他の3個の入口側流路223に対応する符号を付して、他の3個の入口側流路223の図示および説明を省略する。
第1入口22cと連通する入口側流路223は、第1出口側流路221と連通する第1出口側連通口223aと、第2出口側流路222と連通する第2出口側連通口223bとを有している。換言すれば、各入口側流路223は、各入口22c〜22fを第1出口側流路221および第2出口側流路222と連通させている。
入口側流路223には、ドア式の弁体224が配置されている。弁体224は、第1出口側流路221側の第1出口側連通口223aと、第2出口側流路222側の第2出口側連通口223bとを開閉する。
以下では、第2切替弁22の弁体224が第1出口側流路221側を全閉して第2出口側流路222側を全開している状態をバルブ開度=0%と言い、第2切替弁22の弁体224が第1出口側流路221側を全開して第2出口側流路222側を全閉している状態をバルブ開度=100%と言う。
各入口側流路223の弁体224は電動アクチュエータ(図示せず)によって駆動される。電動アクチュエータの個数は、弁体224の個数と同数であってもよいし、弁体224の個数よりも少なくてもよい。電動アクチュエータの個数を弁体224の個数よりも少なくする場合、電動アクチュエータと各弁体224とをリンク機構やギア機構等の動力伝達機構で連結して各弁体224を連動駆動すればよい。
図1に示すように、第2切替弁22は、第3出口22gと連通する第3出口側流路225を有している。第1〜第3入口22c〜22eに対応する入口側流路223には、第1〜第3入口22c〜22eを第3出口側流路225と連通させる場合と、第1〜第3入口22c〜22eを第1出口側流路221または第2出口側流路222に連通させる場合とを切り替える弁体226が配置されている。図1では、弁体226を模式的に図示している。弁体226は電動アクチュエータ(図示せず)によって駆動される。
これにより、第1〜第3入口22c〜22eから第2切替弁22に流入した冷却水が第1出口22aまたは第2出口22bから流出する場合と第3出口22gから流出する場合とを切り替えることができる。
さらに、第2切替弁22は、第1出口側流路221と第2出口側流路222とを連通する連通流路227を有している。連通流路227には、流路断面積を非常に小さくするための絞り部227aが設けられている。連通流路227は、冷却水の圧力を適正に維持することを目的として設けられている。
ここで、第1切替弁21および第2切替弁22における「弁漏れ」について説明する。例えば、第1切替弁21の入口21a、21bと出口21c〜21fとの間に圧力差がある場合、弁体214が第1入口側流路211側または第2入口側流路212側を全閉する位置に操作されていても、圧力差の大きさに応じて弁体214が微少に開けられて冷却水漏れが発生する。以下、このような冷却水の漏れのことを「弁漏れ」と言い、弁漏れによる冷却水漏れ量を「弁漏れ量」と言う。
弁漏れ量は、弁体214のシール構造や、弁体214をその位置に留めようとする保持力によって変動する。そのため、弁漏れ量を少なくしようとすれば、強固なシール構造や強力な電動アクチュエータが必要となる。しかしながら、強固なシール構造や強力な電動アクチュエータを採用した場合、体積や重量の増大を招くため、現実的には若干の弁漏れを許容せざるを得ない。
第2切替弁22についても同様に、例えば第2切替弁22の出口22a、22bと入口22c〜22fとの間に圧力差がある場合、弁体224が第1出口側流路221側または第2出口側流路222側を全閉する位置に操作されていても、圧力差の大きさに応じて弁体214が微少に開けられて弁漏れが発生する。
次に、熱管理システム10の電気制御部を図2に基づいて説明する。制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された第1ポンプ23、第2ポンプ24、圧縮機41、第1切替弁21の電動アクチュエータ51、および第2切替弁22の電動アクチュエータ52等の作動を制御する制御手段である。
制御装置50は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
本実施形態では、特に第1切替弁21の電動アクチュエータ51および第2切替弁22の電動アクチュエータ52の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)を切替弁制御手段50aとし、第1ポンプ23および第2ポンプ24の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)をポンプ制御手段50bとする。もちろん、切替弁制御手段50aおよびポンプ制御手段50bを制御装置50に対して別体で構成してもよい。
制御装置50の入力側には、内気センサ53、外気センサ54、日射センサ55、湿度センサ56および第1、第2水温センサ57、58等の検出信号が入力される。
内気センサ53は、内気温(車室内温度)を検出する検出手段(内気温度検出手段)である。外気センサ54は、外気温を検出する検出手段(外気温度検出手段)である。日射センサ55は、車室内の日射量を検出する検出手段(日射量検出手段)である。湿度センサ56は、車室内の湿度を検出する検出手段(湿度検出手段)である。
第1水温センサ57は、第1流路11(第1ポンプ配置流路)における冷却水の温度を検出する検出手段(温度検出手段)である。本例では、図1に示すように、第1水温センサ57は、第1流路11のうち第1ポンプ23の吐出側の部位に配置されている。
第2水温センサ58は、第2流路12(第2ポンプ配置流路)における冷却水の温度を検出する検出手段(温度検出手段)である。本例では、図1に示すように、第2水温センサ58は、第2流路12のうち第2ポンプ24の吐出側の部位に配置されている。
制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル59に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル59に設けられた各種空調操作スイッチとしては、エアコンスイッチ、オートスイッチ、風量設定スイッチ、車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
エアコンスイッチは、空調(冷房または暖房)の作動・停止(オン・オフ)を切り替えるスイッチである。オートスイッチは、空調の自動制御を設定または解除するスイッチである。風量設定スイッチは、室内送風機の風量を設定するスイッチである。車室内温度設定スイッチは、乗員の操作によって車室内目標温度を設定する目標温度設定手段である。
次に、上記構成における作動を説明する。制御装置50が第1切替弁21用の電動アクチュエータ51および第2切替弁22の電動アクチュエータ52の作動を制御して、第1切替弁21の弁体214および第2切替弁22の弁体224を駆動することによって、各種作動モードに切り替えられる。
具体的には、第1流路11と第3〜第6流路13〜16のうち少なくとも1つの流路とで第1冷却水循環回路(第1熱媒体回路)が形成され、第2流路12と第3〜第6流路13〜16のうち残余の流路とで第2冷却水循環回路(第2熱媒体回路)が形成される。
第3〜第6流路13〜16(共通流路)のそれぞれについて、第1冷却水循環回路に接続される場合と、第2冷却水循環回路に接続される場合とを状況に応じて切り替えることによって、各冷却水流通機器31〜35を状況に応じて適切な温度に調整することができる。
図4の例では、第1、第3、第6流路11、13、16が互いに連通し、第2、第4、第5流路12、14、15が互いに連通するように第1切替弁21および第2切替弁22が切り替えられる。
これにより、図4の太実線に示す第1冷却水循環回路(高温冷却水回路)と、図4の太一点鎖線に示す第2冷却水循環回路(低温冷却水回路)とが形成される。
第1冷却水循環回路では、ラジエータ26、インバータ31、走行用電動モータ32、コンデンサ35およびヒータコア36の間で冷却水が循環するので、インバータ31、走行用電動モータ32、コンデンサ35の廃熱をラジエータ26およびヒータコア36で放熱することによってインバータ31、走行用電動モータ32、コンデンサ35を冷却することができる。ヒータコア36で車室内への送風空気へ放熱することによって、車室内を暖房することができる。
第2冷却水循環回路では、電池33およびチラー34の間で冷却水が循環するので、チラー34で外気温よりも低い温度まで冷却された冷却水で電池33を冷却することができる。
次に、作動モードを切り替える際の作動を説明する。制御装置50は、作動モードを切り替える際(すなわち、第1切替弁21の弁体214および第2切替弁22の弁体224を駆動する際)に、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とで冷却水圧力が同等となるように第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御を実施する。
具体的には、第1切替弁21における切り替え対象の弁体214よりも第1入口21a側の冷却水圧力P1と、当該弁体214よりも第2入口21b側の冷却水圧力P2とが同等となるように第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御(例えばフィードバック制御)を実施する。
冷却水圧力P1、P2は、種々の方法によって検出、推定することが可能である。例えば、第1ポンプ23の吐出側、および第2ポンプ24の吐出側のそれぞれに圧力センサを設置すれば、冷却水圧力P1、P2を検出することができる。
例えば、第1ポンプ23の吐出側、および第2ポンプ24の吐出側のそれぞれに、差圧センサの圧力検知部位を設置することによって、第1ポンプ23の吐出側の冷却水圧力と第2ポンプ24の吐出側の冷却水圧力の差異を検出することができる。
例えば、短尺配管を用いて第1ポンプ23の吐出側と第1切替弁21の第1入口21aを接続し、同様に短尺配管を用いて第2ポンプ24の吐出側と第1切替弁21の第2入口21bとを接続することや、第1ポンプ23の吐出側と第1切替弁21の第1入口21aとが一体的になり、かつ第2ポンプ24の吐出側と第1切替弁21の第2入口21bとが一体的になるように、第1、第2ポンプ23、24および第1切替弁21のケーシングを一体的な構成にすることで、第1、第2ポンプ23、24から第1切替弁へ至る流路における圧力低下量を抑制すれば、各々のポンプ吐出側の圧力を冷却水圧力P1、P2と推定することができる。
各々のポンプ吐出側の圧力を推定する方法としては、例えば、第1ポンプ配置流路11および第2ポンプ配置流路12にそれぞれ冷却水の流量を測定する流量センサと冷却水の水温を検出する温度センサとを設置し、制御装置50において第1、第2ポンプ23、24それぞれのインペラ回転数と冷却水水温と冷却水流量を検知した上で、あらかじめ設定されたマップ(各々のポンプの「流量」と「インペラ回転数」と「ポンプ揚程(発生圧力)」と「冷却水温度」の関係を表すマップ)を参照し、各々のポンプ吐出側の圧力を推定することができる。
インペラ回転数の検知方法としては、ポンプの駆動モータ制御用の電子回路からモータ回転数信号を取り出す方法や、ポンプの電源線の電流(又は電圧)の変動波形を検知して回転数を推定する方法がある。
例えば、予め設定されたマップを参照することによって冷却水圧力P1、P2を推定することもできる。冷却水圧力P1、P2を推定するために用いるマップの一例を図5に示す。
図5のマップは、冷却水温度およびポンプ駆動力に対応する冷却水圧力を表すマトリックス表で構成されており、図5では具体的数値の図示を省略している。
図5のマップは、各作動モード毎(第1、第2第1切替弁21、22の作動状態毎)に、第1冷却水循環回路用と第2冷却水循環回路用の2つが作成される。例えば、作動モードが8種類ある場合、8×2=16個のマップが作成される。
具体的には、各作動モード毎(第1、第2第1切替弁21、22の作動状態毎)に、第1冷却水循環回路の冷却水温度T1および第1ポンプ23の駆動力F1に対する冷却水圧力P1を示すマップを予め作成しておく。
そして、第1冷却水循環回路の冷却水温度T1および第1ポンプ23の駆動力F1に基づいて、切り替えようとする作動モードに対応するマップを参照して冷却水圧力P1を推定する。冷却水温度T1に基づいて冷却水圧力P1を推定する理由は、冷却水温度T1によって冷却水の粘性が変化し、ひいては冷却水圧力P1が変化するからである。
同様に、各作動モード毎(第1、第2第1切替弁21、22の作動状態毎)に、第2冷却水循環回路の冷却水温度T2および第2ポンプ24の駆動力F2に対する冷却水圧力P2を示すマップを予め作成しておく。
そして、第2冷却水循環回路の冷却水温度T2および第2ポンプ24の駆動力F2に基づいて、切り替えようとする作動モードに対応するマップを参照して冷却水圧力P2を推定することができる。
このように、予め設定されたマップを参照することによって冷却水圧力P1、P2を推定すれば、冷却水圧力P1、P2を検出する圧力センサを設ける必要がない。
なお、冷却水には、エチレングリコール等の不凍液が混ぜられるが、通常、不凍液の濃度が高いほど粘性が高まる。このため、不凍液の濃度が設計値と異なっていると、マップに基づいて推定される冷却水圧力と実際の冷却水圧力との間に乖離が生じてしまう。
この点を考慮して、不凍液の濃度が許容範囲の最大値程度である場合を想定してマップを設定しておくのが望ましい。これにより、マップに基づいて推定される冷却水圧力が実際の冷却水圧力よりも低くなるので、第1ポンプ23および第2ポンプ24が高めの出力となるように駆動され、ひいては冷却水の流量を十分に確保することができる。
本実施形態によると、作動モードを切り替える際に、第1冷却水循環回路の冷却水圧力と第2冷却水循環回路の冷却水圧力とが近づいて同等となるように第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御を実施するので、第1流路11の冷却水と第2流路12の冷却水とが混合するのを抑制することができる。
すなわち、作動モードを切り替える過程では第1、第2切替弁212の弁体214、224の開度が中間開度になるので、第1流路11の冷却水と第2流路12の冷却水とが混合し得る状態となるが、このとき第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とで冷却水圧力を同等にすることによって、冷却水の混合量を抑制することができる。
そのため、第1流路11および第2流路12のそれぞれにおいて冷却水の温度が所望の温度から変動してエネルギーロスが発生してしまうことを抑制できる。
特に、空調用熱交換器であるヒータコア36を流れる冷却水の温度が変動した場合、車室内に吹き出される空調風の温度が変動して乗員の温熱感が損なわれてしまうが、本実施形態によると、ヒータコア36を流れる冷却水の温度の変動を抑制できるので、車室内に吹き出される空調風の温度が変動して乗員の温熱感が悪化してしまうことを抑制できる。
なお、本実施形態によると、リザーブタンク49が、第1冷却水循環回路を形成する第1流路11(第1回路形成流路)と接続されているので、第1冷却水循環回路の冷却水の温度変化に伴って冷却水の体積が膨張や収縮して第1冷却水循環回路の圧力が変化した場合にリザーブタンク49との間で冷却水を出し入れすることができる。このため、第1冷却水循環回路の圧力を適正範囲に維持することができる。
第2冷却水循環回路は、連通流路227によって第1冷却水循環回路と連通しているので、第2冷却水循環回路の冷却水の温度変化に伴って冷却水の体積が膨張や収縮して第2冷却水循環回路の圧力が変化した場合にリザーブタンク49との間で冷却水を出し入れすることができる。このため、第2冷却水循環回路の圧力を適正範囲に維持することができる。
リザーブタンク49は第1流路11と接続され、第2流路12と接続されていないので、リザーブタンク49を介して第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路との間で冷却水が出入りすることはない。このため、第1ポンプ23の出力と第2ポンプ24の出力とに差がある場合に局所的なループ回路が形成されてポンプ動力が無駄に消費されることや、異なる温度帯の冷却水が混合することによる熱損失の発生を防止できる。
リザーブタンク49は、第1冷却水循環回路において、ラジエータ26よりも冷却水流れ下流側、かつ第1ポンプ23の吸入側に接続されているので、第1ポンプ23の吸入側の圧力が大気圧程度となる。このため、第1ポンプ23の吸入側における圧力が負圧となってキャビテーションが発生したり冷却水ホースが潰れて圧力損失が増大したりすることを防止できる。
また、本実施形態によると、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とを連通させる連通流路227は、下流側(ポンプ吸入側)に位置している第2切替弁22に形成されている。ここで、「第2切替弁22が下流側(ポンプ吸入側)に位置している」とは、第3〜第6流路13〜16に配置された冷却水流通機器31〜35のうち少なくとも1つの機器よりも冷却水流れ下流側、かつ第1ポンプ23および第2ポンプ24の吸入側に第2切替弁22が位置していることを意味する。図1の例では、第2切替弁22は、冷却水流通機器31〜35よりも冷却水流れ下流側、かつ第1ポンプ23および第2ポンプ24の吸入側に位置している。
このように、連通流路227は、下流側(ポンプ吸入側)に位置している第2切替弁22に形成されているので、第1ポンプ23の揚程が第2ポンプ24の揚程よりも低くなる運転状況の場合、第2冷却水循環回路において負圧となる部位が生じることを防止できる。以下、その理由を説明する。
理解を容易にするために、ここでは、第1ポンプ23が停止して、第2ポンプ24が所定の揚程で稼動している運転状況を想定して説明する。
第1ポンプ23が停止している場合、第1冷却水循環回路には大気開放式のリザーブタンク49が接続されているので、第1冷却水循環回路はどこの圧力も大気圧程度となる。このとき、第1ポンプ23の揚程と第2ポンプ24の揚程とに差があるので、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とで圧力差が生じる。そのため、第1切替弁21および第2切替弁22において、上述の「弁漏れ」が発生する。
第1切替弁21および第2切替弁22で弁漏れが発生すると、第1切替弁21および第2切替弁22のそれぞれにおいて、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路との間で、圧力が均等となる方向に冷却水の授受が発生する。
ここで、連通流路227が形成されていない場合で、上流側(ポンプ吐出側)の弁漏れ量が下流側(ポンプ吸入側)の弁漏れ量よりも多い場合を考えると、第1冷却水循環回路および第2冷却水循環回路の圧力は、弁漏れ量の最も多い第1切替弁21において均等化されることとなる。上述のごとく第1冷却水循環回路には大気開放式のリザーブタンク49が接続されているので、第1ポンプ23が停止している場合、第1冷却水循環回路はどこの圧力も大気圧程度となる。そのため、第2冷却水循環回路の圧力は、第1切替弁21での圧力が大気圧程度となるので、第2ポンプ24の吐出側での圧力も大気圧程度となる。
そうすると、第2ポンプ24の吸入側における圧力は、第2ポンプ24の吐出側における圧力からポンプ揚程分を差し引いた圧力となることから、第2ポンプ24の吸入側における圧力が負圧となる。
したがって、連通流路227が形成されていない場合、第1ポンプ23の揚程と第2ポンプ24の揚程とに差があると、第2ポンプ24の吸入側における圧力が負圧となってキャビテーションが発生したりする可能性がある。
その点、本実施形態では、下流側に位置する第2切替弁22に連通流路227を形成し、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路との間の冷却水の授受量が連通流路227で最も多くなるようにしている。
このため、第1冷却水循環回路および第2冷却水循環回路の圧力は、冷却水の授受量が最も多い連通流路227において均等化されることとなる。その結果、第2冷却水循環回路の圧力は、第2切替弁22での圧力が大気圧程度となるので、第2ポンプ24の吸入側での圧力も大気圧程度となる。よって、第2ポンプ24の吸入側における圧力が負圧となることを回避できる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、作動モード切替時、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とで冷却水圧力が同等となるように第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御を実施するが、本第2実施形態では、作動モード切替時、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とで冷却水圧力が同等となり、さらに空調用熱交換器であるヒータコア36が配置される流路の流量が作動モード切替前と比較して下回らないように第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御を実施する。
例えば、冷却水圧力P1、P2を圧力センサによって検出するようになっている場合には、切替後の作動モードにおいてヒータコア36が連通する冷却水循環回路の冷却水圧力(切替中および切替後の時点における冷却水圧力)が、切替前の作動モードにおいてヒータコア36が連通していた冷却水循環回路の冷却水圧力(切替前の時点における冷却水圧力)と同じになるように、第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御(例えばフィードバック制御)を実施する。
例えば、冷却水圧力P1、P2を、予め設定されたマップを参照することによって冷却水圧力P1、P2を推定するようになっている場合には、以下のように第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御を実施する。
予め設定されたマップは、上記第1実施形態と同様に、各作動モード毎(第1、第2第1切替弁21、22の作動状態毎)に、第1冷却水循環回路および第2冷却水循環回路のそれぞれについて、冷却水温度およびポンプの駆動力に対する冷却水圧力を示すものである。
制御装置50は、作動モードを切り替える直前に図6のフローチャートに示す制御処理を実行する。まず、ステップS100では、切替後の作動モードにおいてヒータコア36が連通する冷却水循環回路(以下、切替後の熱交換器側回路と言う。)に対応するマップを参照し、切替前の作動モードにおいてヒータコア36が連通している冷却水循環回路(以下、切替前の熱交換器側回路と言う。)の冷却水圧力を下回らず、かつポンプ駆動力が最小となるポイントを選定する。
ここで、マップを参照する際に、切替後の熱交換器側回路における冷却水温度を取得する必要があるが、本実施形態では、切替前の第1冷却水循環回路における冷却水の温度および容積と、第2冷却水循環回路における冷却水の温度および容積と、第3〜第6流路13〜16のうち切り替え対象の流路の容積とに基づいて、切替後の熱交換器側回路における冷却水温度を推定する。
次のステップS110では、切替後の作動モードにおいてヒータコア36が連通しない冷却水循環回路(以下、切替後の非熱交換器側回路と言う。)に対応するマップを参照し、ステップS100で選定したポイントにおける冷却水圧力と同じ冷却水圧力となるポイントを選定する。
次のステップS120では、切替後の熱交換器側回路におけるポンプの駆動力を、ステップS100で選定したポイントにおけるポンプ駆動力に決定する。
次のステップS130では、切替後の非熱交換器側回路におけるポンプの駆動力を、ステップS110で選定したポイントにおけるポンプ駆動力に決定する。
本実施形態によると、上記第1実施形態と同様に、作動モード切替時、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とで冷却水圧力が同等となるので、冷却水の混合量を抑制することができる。
さらに、本実施形態によると、空調用熱交換器であるヒータコア36を流れる冷却水の流量が作動モード切替前と比較して下回らないので、作動モード切替後にヒータコア36に循環する冷却水の流量が不足することを防止することができ、ひいては車室内に吹き出される空調風の温度が変動して乗員の温熱感が損なわれてしまうことを防止できる。
例えば、本実施形態によると、作動モードの切り替えによって、ヒータコア36が配置されている流路16(以下、ヒータコア配置流路と言う。)が、一方の冷却水循環回路から他方の冷却水循環回路へ切り替えられた場合、切り替え後の他方の冷却水循環回路における冷却水圧力が、切り替え前の一方の冷却水循環回路における冷却水圧力を下回らないようにポンプが駆動される。このため、ヒータコア36を流れる冷却水の流量が作動モード切替前と比較して下回らないようにすることができる。
例えば、本実施形態によると、作動モードの切り替えによって、ヒータコア配置流路16が接続されている冷却水循環回路に、他の流路13〜16のうち少なくとも1つの流路が加わることになった場合、当該冷却水循環回路における冷却水圧力が作動モード切替前と比較して下回らないようにポンプが駆動される。そのため、当該冷却水循環回路におけるポンプの吐出流量作動モード切り替え前と比較して増加するので、ヒータコア36を流れる冷却水の流量が作動モード切替前と比較して下回らないようにすることができる。
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、作動モード切替時、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とで冷却水圧力が同等となるように第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御を実施することによって、第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを抑制するが、本第3実施形態では、第1切替弁21および第2切替弁22の作動タイミングを制御することによって、第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを抑制する。
図7のタイムチャートは、第1切替弁21の各弁体214および第2切替弁22の各弁体224のうち切替対象の弁体214、224のバルブ開度を100%から0%に切り替える場合の例を示している。
図7中、T0は作動モードの切り替えを開始するタイミングであり、T1は作動モードの切り替えを終了するタイミングである。作動モードの切り替えを開始すると、まず第1切替弁21の各弁体214のうち切替対象の弁体214のバルブ開度を100%から0%に切り替え、その後、第2切替弁22の各弁体214のうち切替対象の弁体224のバルブ開度を100%から0%に切り替える。
これにより、切替対象の流路を介して第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを抑制できるので、冷却水の混合量を抑制することができる。そのため、第1流路11および第2流路12のそれぞれにおいて冷却水の温度が所望の温度から変動してエネルギーロスが発生してしまうことを抑制できる。
なお、図7中、機器に流れ込む流量を示すグラフにおける太破線は、切替前に連通していた冷却水循環回路から流れ込む冷却水流量を示し、当該グラフにおける太実線は、切替後に連通する冷却水循環回路から流れ込む冷却水流量を示している。図7中、ΔQは、両冷却水循環回路間のポンプ揚程差による流量差を示している。
図7の例では、第1切替弁21のバルブ開度を100%から0%に切り替えた後、第2切替弁22のバルブ開度を100%から0%に切り替えるが、これとは逆に、第2切替弁22のバルブ開度を100%から0%に切り替えた後、第1切替弁21のバルブ開度を100%から0%に切り替えるようにしてもよい。
(第4実施形態)
上記第1、第2実施形態では、第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御によって、第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを抑制し、上記第3実施形態では、第1切替弁21および第2切替弁22の作動制御によって、第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを抑制するが、本第4実施形態では、第1切替弁21の構造によって、第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを抑制する。
具体的には、図8に示すように、第1切替弁21のうち出口側流路213の部分は、ロータリー式の三方弁で構成されている。図8は、第1出口21cに対応して設けられた出口側流路213の構造を示している。第2出口21d、第3出口21eおよび第4出口21fに対応して設けられた出口側流路213の構造については、図8と同様であるので図示を省略する。
弁体224は、断面円弧状のロータリー弁体で構成されており、出口側流路213のうち断面円形状に形成された弁体収容部215に同軸状に収容されている。弁体収容部215には、第1入口側連通口213aと連通する第1入口ポート215a、第2入口側連通口213bと連通する第2入口ポート215b、および第1出口21c(第2出口21d、第3出口21eおよび第4出口21f)と連通する出口ポート215cが形成されている。
第1入口ポート215a、第2入口ポート215bおよび出口ポート215cの周縁部には、シール部材216が配置されている。
断面円弧状の弁体224が弁体収容部215に対して同軸状に回転することによって、第1入口ポート215a、第2入口ポート215bおよび出口ポート215cが開閉される。
弁体224、第1入口ポート215a、第2入口ポート215bおよび出口ポート215cは、次の数式を満たすように設計されている。
θv≦θin−θp
θout≦θv+θp
但し、θvは、断面円弧状の弁体224の開口角であり、θinは、第1入口ポート215aの中心から第2入口ポート215bの中心までの角度であり、θpは、第1入口ポート215aまたは第2入口ポート215bの開口角であり、θoutは、第1入口ポート215aの中心または第2入口ポート215bの中心から出口ポート215cの中心までの角度である。
このように弁体224、第1入口ポート215a、第2入口ポート215bおよび出口ポート215cが設計されているので、弁体224が第1入口ポート215aおよび第2入口ポート215bの両方を同時に開くことがない。このため、作動モードの切替時に、第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを抑制できる。
(第5実施形態)
上記第4実施形態では、第1切替弁21が三方弁で構成されているが、本第5実施形態では、図9に示すように、第1切替弁21がシャットバルブ(開閉弁)で構成されている。
具体的には、第1切替弁21の各出口側流路213には、第1入口側流路211との連通を断続するシャットバルブ217Aと、第2入口側流路212との連通を断続するシャットバルブ217Bとが配置されている。
シャットバルブ217A、217Bは、例えば電磁弁のように通電・非通電が切り替えられると瞬時に流路の開閉が実施されるものであってもよいし、例えばボールバルブのように流路の開閉にある程度の時間を要するものであってもよい。
シャットバルブ217A、217Bが前者のものである場合、1組のシャットバルブ217A、217Bを同時に作動させればよい。
シャットバルブ217A、217Bが後者のものである場合、1組のシャットバルブ217A、217Bの作動は、一方のシャットバルブの作動が終了した後に他方のシャットバルブを作動させるようにすればよい。
これにより、第1切替弁21が第1入口側流路211および第2入口側流路212の両方を同時に開くことがないので、作動モードの切替時に、第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを抑制できる。
なお、図9では、第2切替弁22もシャットバルブで構成されている例を示している。具体的には、第2切替弁22の各入口側流路223には、第1出口側流路221との連通を断続するシャットバルブ228Aと、第2出口側流路222との連通を断続するシャットバルブ228Bとが配置されている。
さらに、第2切替弁22の各入口側流路223のうち第1入口22c、第2入口22dおよび第3入口22eに対応する入口側流路223には、第3出口側流路225との連通を断続するシャットバルブ228Cと、シャットバルブ228A、227B側との連通を断続するシャットバルブ228Dとが配置されている。
このように、第2切替弁22もシャットバルブで構成することによって、作動モードの切替時に、第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを一層抑制できる。
(第6実施形態)
上記第4実施形態では、第1切替弁21が三方弁で構成され、上記第5実施形態では、第1切替弁21がシャットバルブで構成されているが、本第6実施形態では、図10に示すように、第1切替弁21がスプール弁で構成されている。
具体的には、弁体214が直線的に駆動されることによって、第1入口側流路211および第2入口側流路212を出口側流路213と切替連通させる。
これにより、第1切替弁21が第1入口側流路211および第2入口側流路212の両方を同時に開くことがないので、作動モードの切替時に、第1冷却水循環回路の冷却水と第2冷却水循環回路の冷却水とが混ざり合うことを抑制できる。
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)上記第1〜第6実施形態では、4個の流路13〜16に対して、循環する冷却水を切り替えるようになっているが、図11に示すように、1個の流路13に対して、循環する冷却水を切り替えるようになっていてもよい。
(2)上記第1〜第6実施形態では、第1切替弁21および第2切替弁22を設けているが、図12に示すように、第1切替弁21および第2切替弁22のいずれか一方を廃止してもよい。図12の例では、第2切替弁22を廃止し、第3流路13を第1流路11および第2流路12と単純に連通させる連通部Rを設けている。
第1切替弁21および第2切替弁22のいずれか一方を廃止しても、第1流路11の冷却水と第2流路12の冷却水とが定常的に混ざり合うことはない。以下、この理由を説明する。
例えば、流路13と第1流路11とによって冷却水循環回路が形成されるように第1切替弁21が形成されている場合、第3流路13の冷却水が連通部Rを介して第2流路12に定常的に流入すると仮定した場合、第2流路12に流入した冷却水が第3流路13に戻ってくる経路が必要であるが、連通部R以外では第3流路13と第2流路12とが連通していないので、連通部Rを介して第2流路12に流入した冷却水は第3流路13に戻ってくることができない。よって、第1流路11の冷却水と第2流路12の冷却水とが定常的に混ざり合うことはない。
ただし、第1ポンプ23、第2ポンプ23の作動開始時等の過渡的な段階においては、第1流路11および第2流路12の圧力均圧化現象によって冷却水が若干量混ざることはある。
(3)図13に示すように、第1切替弁21および第2切替弁22によって切り替えられる流路が、第1切替弁21と第2切替弁22との間で分岐していてもよい。図13の例では、第4流路14が、第1切替弁21と第2切替弁22との間で分岐している。
(4)上記第1〜第6実施形態では、2つの冷却水循環回路が形成されるようになっているが、図14に示すように、3つ以上の冷却水循環回路が形成されるようになっていてもよい。
図14の例では、第3ポンプ60が配置された第3ポンプ配置流路61が第1切替弁21および第2切替弁22に接続されており、第1切替弁21および第2切替弁22が、共通流路13〜16と第1、第2、第3ポンプ配置流路11、12、61との連通状態を切り替えることによって、3つの冷却水循環回路が形成されるようになっている。
ちなみに、図14の例では、第3ポンプ配置流路61にエンジン10が配置され、エンジン用ラジエータ62が、第3ポンプ配置流路61と並列なラジエータ配置流路63に配置されている。
(5)図15の例では、冷却水が電池33のみを循環する冷却水循環回路と、クーラコア70用の冷却水循環回路とを形成できるようになっている。以下、図15の例における具体的構成を説明する。
第1ポンプ配置流路11には、コンデンサ35およびヒータコア36が互いに直列に配置されている。第2ポンプ配置流路12には、チラー34が配置されている。チラー34は第2ポンプ24の吸入側に配置されている。
第2ポンプ配置流路12のうち第2ポンプ24の吐出側には、クーラコア配置流路71の一端側が接続され、第2流路12のうちチラー34の上流側には、クーラコア配置流路71の他端側が接続されている。
クーラコア配置流路71には、クーラコア70および流量調整弁72が配置されている。クーラコア70は、冷却水と車室内への送風空気とを熱交換することによって送風空気を冷却する熱交換器である。流量調整弁72は、クーラコア配置流路71を流れる冷却水の流量を調節するための弁である。
第3流路13には電池33が配置されている。第3流路13には、第3ポンプ配置流路61が電池33と並列に接続されている。第3流路13のうち電池33の上流側に対する第3ポンプ配置流路61の接続部には三方弁73が配置されている。三方弁73は、第1切替弁21からの冷却水が電池33に流入する場合と、第3ポンプ配置流路61からの冷却水が電池33に流入する場合とを切り替える。
第4流路14にはインバータ31が配置されている。第5流路15には冷却水流通機器が配置されていない。第6流路16にはラジエータ26が配置されている。
図15の例によると、三方弁73の制御により、冷却水が電池33のみを循環する冷却水循環回路(以下、電池用冷却水循環回路と言う。)を形成することができる。具体的には、電池用冷却水循環回路では、第3ポンプ60から吐出された冷却水が電池33を流通して第3ポンプ60に吸入される。
例えば、第1ポンプ配置流路11および第2ポンプ配置流路12の水温がそれぞれ電池33の許容温度範囲(例えば10℃〜40℃)に収まっていない場合、電池用冷却水循環回路を形成し、第1ポンプ配置流路11または第2ポンプ配置流路12の冷却水、すなわち許容温度範囲を超えた冷却水を少量だけ電池用冷却水循環回路に流し込むように三方弁73を制御することで、電池33を許容温度範囲に近い温度に温度調整することができる。
なお、電池用冷却水循環回路の水温が許容を超えそうな場合、第1ポンプ配置流路11の冷却水および第2ポンプ配置流路12の冷却水のうち低温の方の冷却水を少量、電池用冷却水循環回路に混ぜるように流し込むようにすればよい。
図15の例によると、第2ポンプ24から吐出された冷却水がクーラコア70およびチラー34を流通して第2ポンプ24に吸入されるので、クーラコア用冷却水循環回路が形成される。クーラコア用冷却水循環回路における冷却水流量は流量調整弁72によって制御される。
例えば、チラー34で0℃以下(氷点以下)の冷却水を作り出している場合、クーラコア70へ断続的に冷却水が送られるように流量調整弁72を制御することによって、クーラコア70でのフロストの発生を防止することができる。
(6)上記第1実施形態では、作動モードを切り替える際に、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とで冷却水圧力が同等となるように第1ポンプ23および第2ポンプ24の駆動制御を実施するが、作動モードを切り替える際に第1ポンプ23および第2ポンプ24を停止させてもよい。
第1ポンプ23および第2ポンプ24を停止させることによって、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路とで冷却水圧力が同等となるので、第1流路11の冷却水と第2流路12の冷却水とが混合するのを抑制することができる。
ただし、車室内の空調が行われている場合は、第1ポンプ23および第2ポンプ24を停止させるとヒータコア36で車室内への送風空気を加熱することができなくなってしまい、乗員の温熱感を損ねてしまうので、第1ポンプ23および第2ポンプ24を停止させないようにするのが好ましい。
(7)上記実施形態では、車室内の空調のために用いられる空調用熱交換器がヒータコア36である例を説明したが、空調用熱交換器として種々の機器を用いることができる。
例えば、空調用熱交換器は、チラー34で冷却された冷却水と車室内への送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却するクーラコアであってもよい。例えば、空調用熱交換器は、乗員が着座するシートに内蔵されて冷却水によりシートを冷却・加熱する熱交換器であってもよい。
(8)上記各実施形態において、冷却水流通機器に冷却水を間欠的に循環させることによって冷却水流通機器の温度を制御するようにしてもよい。
(9)上記実施形態では、冷却水を冷却する冷却手段として、冷凍サイクル40の低圧冷媒で冷却水を冷却するチラー34を用いているが、ペルチェ素子を冷却手段として用いてもよい。
(10)上記各実施形態では、熱媒体として冷却水を用いているが、油などの各種媒体を熱媒体として用いてもよい。
冷却水(熱媒体)として、ナノ流体を用いてもよい。ナノ流体とは、粒子径がナノメートルオーダーのナノ粒子が混入された流体のことである。ナノ粒子を冷却水に混入させることで、エチレングリコールを用いた冷却水(いわゆる不凍液)のように凝固点を低下させる作用効果に加えて、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、特定の温度帯での熱伝導率を向上させる作用効果、冷却水の熱容量を増加させる作用効果、金属配管の防食効果やゴム配管の劣化を防止する作用効果、および極低温での冷却水の流動性を高める作用効果を得ることができる。
このような作用効果は、ナノ粒子の粒子構成、粒子形状、配合比率、付加物質によって様々に変化する。
これによると、熱伝導率を向上させることができるので、エチレングリコールを用いた冷却水と比較して少ない量の冷却水であっても同等の冷却効率を得ることが可能になる。
また、冷却水の熱容量を増加させることができるので、冷却水自体の蓄冷熱量(顕熱による蓄冷熱)を増加させることができる。
蓄冷熱量を増せることにより、圧縮機41を作動させない状態であっても、ある程度の時間は蓄冷熱を利用した機器の冷却、加熱の温調が実施できるため、車両熱管理システムの省動力化が可能になる。
ナノ粒子のアスペクト比は50以上であるのが好ましい。十分な熱伝導率を得ることができるからである。なお、アスペクト比は、ナノ粒子の縦×横の比率を表す形状指標である。
ナノ粒子としては、Au、Ag、CuおよびCのいずれかを含むものを用いることができる。具体的には、ナノ粒子の構成原子として、Auナノ粒子、Agナノワイヤー、CNT(カーボンナノチューブ)、グラフェン、グラファイトコアシェル型ナノ粒子(上記原子を囲むようにカーボンナノチューブ等の構造体があるような粒子体)、およびAuナノ粒子含有CNTなどを用いることができる。
(11)上記各実施形態の冷凍サイクル40では、冷媒としてフロン系冷媒を用いているが、冷媒の種類はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を用いてもよい。
また、上記各実施形態の冷凍サイクル40は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成しているが、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
(12)上記各実施形態では、本発明の車両用冷却システムをハイブリッド自動車に適用した例を示したが、エンジンを備えず走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車や、燃料電池を走行用エネルギー発生手段とする燃料電池自動車等に本発明を適用してもよい。
(13)上記各実施形態では、リザーブタンク49を第1流路11に接続した例を説明したが、リザーブタンク49を第2〜第6流路12〜16等の他の流路に接続してもよい。
(14)上記各実施形態では、第1切替弁21が三方弁の弁構造を有しているが、三方弁に限定されるものではなく、四方弁等の多方弁の弁構造を有していてもよい。