JP2014076725A - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】旋回性能を向上させるための駆動力制御を運転者の意図に基づかずに終了する際の違和感を防止もしくは抑制する。
【解決手段】駆動力によって旋回状態が変化する車両の旋回状態を示す実際値が、旋回状態を規定する目標値に近づくように前記駆動力を増大補正もしくは減少補正する駆動力制御を行うように構成された、車両の駆動力制御装置において、前記駆動力制御を運転者の意図によらずに終了させる条件が成立した場合、前記運転者が車両を操作したことによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化と前記駆動力制御を終了することによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化とに応じた前記駆動力制御の終了制御を行う終了制御手段(ステップS7〜S13)を備えている。
【選択図】図1

Description

この発明は、車両の旋回性能に関連して駆動力を制御する装置に関するものである。
車両の旋回性能は、駆動輪で生じる駆動力によって変化するので、所望の旋回性能を得るために駆動力を制御することが知られている。例えば特許文献1には、車速や操舵角度あるいはヨーレートなどの車両の走行状態を示す検出値もしくは演算値に基づいてスタビリティファクタの目標値を求める一方、その時点の実際のスタビリティファクタを演算して求め、実際値が目標値に追従するように駆動力を制御する装置が記載されている。すなわち、車両が旋回走行する際の走行軌跡あるいは旋回半径は、ヨーレートや車速ならびに車体の重心から前後車輪までの長さなどをパラメータとして含むスタビリティファクタによって表すことができ、その目標値は車速や操舵角度などに応じて予め定めておくことができる。一方、スタビリティファクタはタイヤで生じる横力に関係して変化する物理量であるから、走行中の車両の駆動力によって大小に変化する。したがって、特許文献1の装置では、スタビリティファクタの実際値を目標値に追従させるように駆動力を制御することにより、旋回性能あるいはステア特性を目標とする性能もしくは特性に一致させるようにしている。
一方、車両の走行性能には上記の駆動力で変化する旋回性能のほかに、車速を制限する制動性能、操舵トルクに応じて変化する操舵性能などが含まれるが、これらの各種の性能は、車両の走行状態や運転者による操作状態などに応じて制御することができる。その制御は走行状態や操作状態などを電気的に検出し、その検出値に基づいて制御量を算出し、その制御量を機械的な手段で実現するように構成されているのが一般的である。したがって、電気的あるいは機械的な異常が生じた場合には、制御の元となるデータが得られず、また制御量を実現できないなどの事態に到るから、その場合に制御を中止することになる。このように制御を中止した場合、それまで制御されていた各種の特性が、制御の行われない特性に変化することになるが、そのような特性の変化は運転者の意図もしくは操作に基づかないものであるから、これが違和感となることが考えられる。そこで、例えば特許文献2に記載されている装置では、車速が上限値を超えないように制動力を付与する制御を解除する場合、その制御の解除条件が成立しても運転者が制動操作を行うまでは、解除条件の成立時の制動力を保持している。したがって、この特許文献2に記載された装置によれば、運転者が制動操作を行うことを要因として、上記の制動力制御の解除に基づく制動力の変化が生じるので、運転者が意図せずに制動力あるいは車速が変化することを回避もしくは抑制することができる。
また、特許文献3には、操舵特性が大きく変化することを防止するように構成された装置が記載されている。すなわち、特許文献3に記載された装置は、先行車両に対する自車両の接近度合いに基づいて操舵トルクを付与する制御を行う装置であって、その接近度合いの計算に異常が生じた場合に、操舵トルクの付与を所定時間継続するように構成されている。
特開2005−256636号公報 特開2003−205762号公報 特開2000−025631号公報
上述した特許文献1に記載された装置は、スタビリティファクタの実際値が目標値に追従するように駆動力を補正するように構成されているから、運転者の操作によらずにその制御を中止もしくは終了するとすれば、駆動力の補正が行われなくなり、駆動力は補正のない値に変化する。駆動力は車両の走行状態を決める大きな要因であって運転者が常時体感しているものであるから、これが運転者の意図に関わらず変化すると、運転者に違和感を与えてしまう。
これに対して前述した特許文献2に記載された装置では、制御の解除条件が成立しても運転者の操作が行われるまでは、解除条件成立時の制御状態が保持されるので、この特許文献2に記載された制御を、スタビリティファクタの実際値を目標値に追従させる駆動力の制御に採用するとすれば、運転者の意図しない駆動力の変化もしくは制動力の変化が生じることはない。しかしながら、スタビリティファクタの実際値を目標値に追従させる制御における駆動力の補正は、駆動力を増大させる補正と低減させる補正とのいずれの場合もあるので、運転者の操作に起因して駆動力の補正を終了すると、すなわち補正量をゼロにすると、駆動力が増大する場合と低減する場合とのいずれもが生じる可能性がある。そのため、運転者の操作による駆動力の変化が、補正量をゼロにすることによる駆動力の変化で相殺されてしまったり、あるいは倍増されてしまったりして、運転者の意図とは異なる駆動力の変化が生じ、あるいは運転者の意図とは異なる旋回特性になるなどの可能性がある。
また、特許文献3に記載されている装置では、異常が発生した場合に操舵トルク付与を所定時間継続するから、異常の発生によって操舵トルクや操舵特性が直ちに変化することはない。しかしながら、所定時間の経過後に保持していた操舵トルク付与を解消するのであり、その際には運転者の意図には基づかない操舵トルクの変化あるいは操舵特性の変化が生じ、これが違和感となる可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、所定の旋回性能を得るための駆動力の制御を、運転者の意図もしくは操作によらずに終了させる場合に駆動力の変化に起因する違和感を防止もしくは抑制することのできる駆動力制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、駆動力によって旋回状態が変化する車両の旋回状態を示す実際値が、旋回状態を規定する目標値に近づくように前記駆動力を増大補正もしくは減少補正する駆動力制御を行うように構成された、車両の駆動力制御装置において、前記駆動力制御を運転者の意図によらずに終了させる条件が成立した場合、前記運転者が車両を操作したことによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化と前記駆動力制御を終了することによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化とに応じた前記駆動力制御の終了制御を行う終了制御手段を備えていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明における前記終了制御手段は、前記運転者が車両を操作したことによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化の方向と前記駆動力制御を終了することによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化の方向とが同じである場合に、前記駆動力制御による制御量をゼロにする制御指令を出力して前記駆動力制御を終了させる手段を含むことを特徴とする車両の駆動力制御装置である。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記終了制御手段は、前記運転者が車両を操作したことによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化と前記駆動力制御を終了することによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化とに応じて、前記駆動力制御による駆動力の制御量をゼロにするための変化勾配を設定する手段を含むことを特徴とする車両の駆動力制御装置である。
さらに、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記運転者による車両の操作は、駆動力を増減させるアクセル操作と、前記車両を回頭させる操舵と、制動操作との少なくともいずれか一つを含み、前記車両の挙動の変化は、加速度の変化と、ヨーレートの変化とのいずれか一つを含むことを特徴とする車両の駆動力制御装置である。
また、請求項5の発明は、請求項3または4の発明において、前記終了制御手段は、前記運転者が車両を操作したことによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化方向と前記駆動力制御を終了することによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化方向とが同じ場合の前記変化勾配を、これらの変化方向が異なる場合の前記変化勾配より大きくするように構成されていることを特徴とする車両の駆動力制御装置である。
そして、請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明において、車両の旋回状態を示す実際値は、走行中の前記車両から検出されたデータを使用して演算されたスタビリティファクタの実際値を含み、車両の旋回状態を規定する前記目標値は、スタビリティファクタの予め定められた目標値を含むことを特徴とする車両の駆動力制御装置である。
さらに、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明において、車両の走行状態を検出するセンサを更に備え、前記駆動力制御を前記運転者の意図によらずに終了する条件は、前記センサの異常もしくは前記センサの検出値の異常のいずれかを含むことを特徴とする車両の駆動力制御装置である。
請求項1の発明によれば、車両の旋回状態を示す実際値が、旋回状態を規定する目標値に近づくように、駆動力が増大補正もしくは減少補正される。その実際値を得ることができなくなるなどの事態が生じると、その駆動力制御を終了することになり、そのような事態が生じることにより、運転者の意図によらずに駆動力制御を終了する条件が成立することになる。その場合、運転者がアクセル操作やブレーキ操作もしくは転舵などの操作を行うと、その操作によって生じる車両の挙動の変化が推定されるとともに、前記駆動力制御を終了することによって生じる車両の挙動の変化とが推定される。そして、これらの挙動の変化に応じて、前記駆動力制御を終了するための駆動力の変化の仕方が設定され、その駆動力の変化の仕方が前記各挙動の変化に応じて異なったものとなる。したがって、駆動力制御を運転者の意図によらずに終了する場合、駆動力の増大補正もしくは減少補正が解消されて駆動力が変化するとしても、その駆動力の変化は、運転者の操作に基づく車両の挙動の変化に紛れてしまい、上記の駆動力制御の終了に伴う挙動の変化が単独で体感されることがないので、違和感を防止もしくは抑制することができる。また、駆動力制御の終了に伴う挙動の変化の態様が常時、一律になることがなく、運転者による操作があった場合に推定される車両の挙動の変化に応じたものとすることができることにより、違和感を防止もしくは抑制することができる。
請求項2の発明によれば、運転者の操作による挙動の変化の方向と駆動力制御を終了することによる挙動の変化方向とが同じ場合に、駆動力制御を終了させるので、駆動力制御の終了により駆動力が変化するとしても、その駆動力の変化による車両の挙動の変化が運転者の操作に基づく車両の挙動の変化に紛れてしまい、しかも運転者の操作に基づく車両の挙動の変化が減殺されることがないので、運転者の意図と車両の挙動の変化とがほぼ一致し、その結果、前記駆動力制御が運転者の意図によらずに終了するとしても違和感が生じることを防止もしくは抑制することができる。
一方、請求項3ないし請求項5の各発明によれば、運転者の操作に基づく車両の挙動の変化と前記駆動力制御の終了に基づく車両の挙動の変化とに応じて、前記駆動力制御による制御量をゼロにする際の変化の勾配が設定される。例えばそれぞれの挙動の変化の方向が同じ場合には駆動力変化勾配が大きく、相違する場合には小さくされ、またそれぞれの挙動の変化の方向が同じであっても、それぞれの変化量や変化速度の差が小さい場合には駆動力変化勾配が大きく、その差が大きい場合には小さくされるので、運転者の意図と実際に生じる車両の挙動の変化との乖離が小さく、違和感を防止もしくは抑制することができる。
そして、請求項6の発明によれば、車両のスタビリティファクタを利用して車両の旋回性能を向上させるための駆動力の制御を行うことができるとともに、そのスタビリティファクタの実際値を得られなくなるなど、運転者の意図によらずに駆動力制御を終了する場合の違和感を解消もしくは抑制することができる。
また、請求項7の発明によれば、センサ自体の異常やセンサの検出値の異常などが生じて、運転者の意図によらずに駆動力制御を終了する場合の違和感を解消もしくは抑制することができる。
この発明に係る駆動力制御装置によって実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。 参考例による駆動力補正量の変化の様子と、図1に示す制御を行った場合の駆動力補正量の変化の様子とを示すタイムチャートである。 アクセル開度に替えて操舵角が変化したことに伴って駆動力補正量をゼロに戻す場合の駆動力補正量の変化の様子を示すタイムチャートである。 この発明に係る駆動力制御装置によって実行される制御の他の例を説明するためのフローチャートである。 アクセル開度の増大時に駆動力補正量を増大させて戻す場合の駆動力補正量変化勾配絶対値のマップを概念的に示す図である。 アクセル開度の増大時に駆動力補正量を減少させて戻す場合の駆動力補正量変化勾配絶対値のマップを概念的に示す図である。 アクセル開度の減少時に駆動力補正量を減少させて戻す場合の駆動力補正量変化勾配絶対値のマップを概念的に示す図である。 アクセル開度の減少時に駆動力補正量を増大させて戻す場合の駆動力補正量変化勾配絶対値のマップを概念的に示す図である。 図4に示す制御を行った場合の駆動力補正量の変化の様子を示すタイムチャートである。 この発明で対象とすることのできる車両の駆動系統および制御系統を簡略化して示す模式図である。 車両の挙動変化の方向を考慮しない参考例を説明するためのフローチャートである。
この発明は、駆動力に応じて車両の旋回性能が変化することを利用して、車両の旋回状態に基づいて駆動力を変化させる駆動力制御装置である。したがって、この発明で対象とする車両は、運転者の加減速操作だけでなく、車速や操舵角などの車両の走行状態に基づいて駆動力が変化し、また走行状態に基づいた駆動力制御が中止もしくは終了することによっても、すなわち運転者の意図に基づかずに、駆動力が変化することがある。この発明は、そのような運転者の意図に基づかない駆動力の変化が違和感とならないように駆動力を制御する構成を備えている。
そこで、先ず、この発明で対象とすることのできる車両について説明すると、この発明で対象とすることのできる車両は、運転者の加減速操作に基づいて駆動力を制御できることに加えて、加減速操作によらずに駆動力を制御できるように構成された車両であり、その駆動力源は内燃機関(エンジン)やモータあるいはこれらのいずれかと自動変速機とを組み合わせた構成のものであってよく、もしくは内燃機関およびモータならびに変速機構を組み合わせたハイブリッド駆動装置などであってもよい。また、駆動力の制御、特に駆動力を減じる制御は、車輪の制動力を制御することにより実行してもよい。
図10にこの発明で対象とすることのできる車両のシステムをブロック図で示してあり、ここに示す車両は、後輪駆動車の例である。なお、この発明は、前輪駆動車や四輪駆動車を対象とする制御装置にも適用できることはもちろんである。図10において、前後の各車輪1には、個別に制御できるブレーキ2がそれぞれ設けられている。これらのブレーキ2は、例えばアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)や車両安定化制御システム(VSC)など従来知られているシステムによって制御されるように構成されている。したがって各車輪1のブレーキ2は、駆動力が掛かり過ぎた場合や制動力が大きすぎる場合には、運転者によるペダル操作に拘わらず制動力が増大させられたり、あるいは反対に制動力が低減される。
内燃機関やモータ、さらには変速機などからなる上記の駆動力源3は、デファレンシャル4を介して駆動輪(すなわち後輪)1に連結されている。その駆動力源3はエンジンやモータの出力を変化させることにより、あるいは変速比を変化させることにより駆動力を制御するように構成されている。その駆動力を制御するための制御装置(コントローラ)5が設けられている。このコントローラ5は、マイクロコンピュータを主体にして構成されており、予め記憶してあるデータや外部から入力されるデータを使用して、予め用意されているプログラムに従ってデータを処理し、その結果を制御指令信号として駆動力源3に出力するように構成されている。そして、このコントローラ5には、操舵角センサ6やヨーレートセンサ7あるいはアクセル開度センサ8が検出した信号が検出値として入力されている。なお、これらのセンサ6,7,8は、上記の車両の安定化制御システムなどのシステムを構成しているセンサであって、車両における既存の機器である。
この発明に係る制御装置は、駆動力の制御として、旋回状態が予め定めた目標旋回状態となるように駆動力を変化させる制御に基づいて駆動力を変化させる制御と、アクセルペダルなどの加減速操作機構を操作することに基づいて駆動力を変化させる制御とを行うように構成されている。その旋回状態の制御は、旋回状態を規定するパラメータ、あるいは旋回状態を示すパラメータの目標値に、車速などの車両の走行状態から求められる実際値が追従もしくは一致するように駆動力を変化させる制御である。その旋回状態を規定もしくは示すパラメータは、スタビリティファクタやヨーレートなどの車両が旋回走行することにより変化するパラメータである。
以下に説明する例は、スタビリティファクタを使用した例であり、したがって車両の旋回状態の制御、もしくは旋回性能の向上のための制御は、スタビリティファクタの実際値が予め定められている目標値に可及的に一致するように駆動力を制御することにより行われる。ここでスタビリティファクタは、車両のホイールベース、操舵角、車速、ヨーレート、タイヤのスティフネスなどに基づいて求めることのできる物理量であって、車両の旋回特性を表す指標である。なお、このスタビリティファクタは、半径が一定の定常円を走行している状態での特性を示すものとして理解することが容易であるが、前後加速度が生じている状態にも拡張することができ、前後加速度が生じている状態まで拡張したスタビリティファクタは、各種の文献によって広く知られている。
ここでスタビリティファクタについて説明すると、走行中の車両のスタビリティファクタは車速や舵角などの走行状態に基づいて求めることができる。すなわち、いわゆる実スタビリティファクタkhrealは、下記の(1)式で求めることができる。
khreal=(δ/n・L・V・γreal)−1/V …(1)
なお、δは操舵角、nはステアリングギヤ比、Lはホイールベース、Vは車速、γrealはヨーレートセンサの検出値である。
一方、前後加速度が生じている状態まで拡張したスタビリティファクタは、下記の(2)式で表すことができる。
khs=kh0+kh1・Gx +kh2・Gx …(2)
(2)式におけるkh0およびkh1ならびにkh2は設計上の定数であり、Gx は車両の前後加速度である。その前後加速度Gx は車両に作用している前後方向の正または負の駆動力と車体の質量とに基づいて求めることができる。また、駆動力はアクセル開度やその時点の車速などに基づいて求めることができる。したがって、前後加速度が生じている状態まで拡張したスタビリティファクタkhsはアクセル開度や車速などに応じた値となるから、目標スタビリティファクタはアクセル開度(もしくはスロットル開度)で代表することのできる要求駆動量と車速とに応じて、予めマップとして用意しておくことができる。また、駆動力によって前後加速度Gx が変化するから、駆動力を制御することによりスタビリティファクタの実際値を目標値に追従させ、あるいは一致させることができる。
なお、旋回性能を向上させるための駆動力の制御は、上記のようにスタビリティファクタの実際値と目標値とを用いる替わりに、他の制御パラメータを用いて行ってもよい。例えば、実際の旋回状態を示す実際値として、センサによって得られたヨーレートの操舵角に対する変化度合いである実ヨーゲイン(=γreal/δ)を採用し、その目標値として目標ヨーレートの操舵角に対する変化度合いである目標ヨーゲイン、もしくは目標スタビリティファクタから逆算される目標ヨーゲインを採用し、これら実ヨーゲインと目標ヨーゲインとの偏差が小さくなるように駆動力を制御することとしてもよい。
このようにして旋回性能を向上させるべく駆動力を制御する場合、車速Vやヨーレートγ、操舵角δなどの車両の走行状態を示すパラメータを検出する必要がある。したがって、それらのパラメータのいずれかを検出するセンサやその検出値を伝送する信号系統あるいは検出値などに異常が生じると、上記の駆動力の制御を実行できなくなり、既にその駆動力制御を実行していた場合にはその制御を中止もしくは終了することになる。この発明に係る駆動力制御装置は、旋回性能を向上するために実行していた駆動力制御を、何らかの異常が発生することによって、運転者による操作によらずに終了する場合、駆動力の変化が運転者に違和感を与えないように構成されている。
図1は、この発明に係る駆動力制御装置によって実行される制御の一例を説明するためのフローチャートであって、図1に示す例では、先ず、車両の走行状態が検出される。具体的には、ヨーレートセンサ7の検出値であるヨーレートγおよび操舵角センサ6の検出値である操舵角δ、車速センサ(図示せず)の検出値である車速V、ならびにアクセル開度センサ8の検出値であるアクセル開度θがそれぞれ取得される(読み込まれる)(ステップS1)。
ついで、目標スタビリティファクタkhrefが決定される(ステップS2)。前述したように、スタビリティファクタは車速や操舵角などの車両の走行状態に応じで決まる値であり、その目標値は車両毎に好ましい旋回状態を規定する値として実験的に、もしくは車両の設計上、定められる。したがって目標値である目標スタビリティファクタkhrefはマップとして予め用意しておき、ステップS1で検出された車速Vなどの車両の走行状態を示すパラメータに基づいて、そのマップから目標スタビリティファクタkhrefが決定される。
また、ステップS1で取得された各データを使用して実スタビリティファクタkhreal が演算される(ステップS3)。その演算は、上記の(1)式によって行うことができる。なお、これらステップS2およびステップS3は、ここに示す順序で実行する必要はなく、いずれか一方を先に実行し、あるいは両方を同時並行的に実行してもよい。
さらに、スタビリティファクタについての上記の実際値khrealと目標値khrefとの差から駆動力補正量が算出される(ステップS4)。前述した(2)式から知られるように、スタビリティファクタは前後加速度Gx の二次式によって表されるから、スタビリティファクタとして目標値khrefを(2)式に代入して前後加速度Gx について解き、更にスタビリティファクタとして実際値khrealを(2)式に代入して前後加速度Gx について解く。この二つの前後加速度の差を求め、これに車体質量を掛けることにより、補正駆動力を求めることができる。このような制御が、車両の旋回性能を向上させるための駆動力制御の例である。
上記のステップS4に続けてセンサの異常の有無が判断される(ステップS5)。車両における各種の制御は、多数のセンサで得られた信号(データ)を使用して行われており、通常、それらのセンサの異常もしくはセンサからの信号の伝送系統の異常の有無は、常時、検出もしくは判定されている。ステップS5ではそのような検出もしくは判定の結果を転用してその判断に替えることができる。このステップS5で肯定的に判断された場合、すなわちセンサやその信号の伝送系統などに異常がある場合、上記のステップS4における駆動力制御を終了する条件が成立し、制御終了の判断がなされる(ステップS6)。これは、例えば制御終了のフラグを立てる(オンにする)制御である。
この発明に係る制御装置では、旋回性能を向上させるための駆動力の制御を終了する条件が成立し、その終了の判断がなされても、直ちに駆動力の補正を終了したり、駆動力制御の終了に起因して駆動力を変更したりすることがなく、先ずは、駆動力補正量が直前の値(前回値)に維持される(ステップS7)。このステップS7で「駆動力補正量を維持する」としているのは、アクセル開度が変化した場合には、アクセル開度に応じて駆動力を変化させることを意味しており、したがって図1に示す例では、上記の駆動力制御の終了の判断がなされた後には旋回性能を向上もしくは変化させるために駆動力が変更されることはないが、アクセル操作されるとアクセル開度に応じて駆動力が変更もしくは制御される。なお、このステップS7の制御は、運転者の操作に基づかずに上記の駆動力制御を終了して駆動力が変化することを回避もしくは抑制するための制御であり、したがってアクセル開度θあるいは操舵角δが大きい場合、あるいは反対に小さい場合など、車両の走行状態によって駆動力自体を直前の値に維持することとしてもよい。
つぎに、車両の挙動を変化させる運転者による操作の内容が判断される(ステップS8)。ここで車両の挙動を変化させる操作は、アクセル操作や操舵角を変化させる操舵あるいはブレーキ操作、マニュアルダウンシフト操作などであって、前後加速度を変化させ、あるいはヨーレートを変化させる操作である。図1にはその操作の一例としてアクセル操作の例を示してあり、したがってステップS8ではアクセル開度変化速度dθが演算される。なお、その場合、アクセル開度θをデータとして入手する必要があるから、上記のステップS5で異常の判定がなされていないセンサのデータを使用してアクセル開度θの変化速度dθを求めることになる。
このようにして求められた操作の内容として操作量の変化の程度が判断される(ステップS9)。このステップS9は、運転者の操作が車両の挙動の変化として運転者が体感することのできる程度の挙動の変化を招来する操作であるか否か判断するためのものであり、予め判断基準を設定しておき、その判断基準と操作の内容として操作量の変化率とを比較することにより判断することができる。上記のアクセル開度θを例に採れば、その変化速度dθの絶対値が所定の閾値Aを超えているか否かが判断される。したがって、この閾値Aは設計上定められた値である。
運転者の操作による挙動の変化が運転者によって体感できる程度に大きいことによりステップS9で肯定的に判断された場合には、その運転者の操作による挙動の方向、より具体的には挙動の変化の方向が決定(もしくは推定)される(ステップS10)。このステップS10では、運転者が操作する機器および操作方向ならびにその時点の車両の走行状態によって挙動の方向を決定することができる。例えばアクセル開度を増大させる操作が行われれば、前後駆動力が増大し、それに伴い車両の駆動形式や操舵の状態などに応じてヨーが増大し、あるいはヨーが減少する。また、操舵角を増大させれば、ヨーが増大し、操舵角を減じれば、ヨーが小さくなる。
このステップS9に続けて、もしくはステップS9と並行して、車両の旋回性能を目標とする性能とするための駆動力制御を終了(もしくは中止)したとした場合における車両の挙動変化の方向が決定される(ステップS11)。より具体的には、前述したステップS7で維持することとした駆動力補正量をゼロにした場合に生じることが予想される車両の挙動変化の方向が決定(もしくは推定)される。駆動力補正量が正の値である増大補正を行っていた場合には、駆動力補正量をゼロにすることにより駆動力が減少することになり、また反対に駆動力補正量が負の値である減少補正を行っていた場合には、駆動力補正量をゼロにすることにより駆動力が増大することになる。また、ステップS4における駆動力補正は、実スタビリティファクタを増大させ、あるいは減少させるために行っていたのであるから、そのための駆動力補正量をゼロにすれば、実スタビリティファクタが減少し、あるいは増大するのであり、そのような挙動の変化の方向は、ステップS4での駆動力補正による挙動の変化方向とは反対になることは明らかである。
このようにしてステップS10で決定(もしくは推定)された方向とステップS11で決定(もしくは推定)された方向とが同じか否かが判断される(ステップS12)。これらの挙動の変化方向が同じであることによりステップS12で肯定的に判断された場合には、駆動力補正量がゼロに設定される(ステップS13)。その駆動力補正量は前述したステップS7で維持されていた補正量である。したがって、旋回性能を考慮した駆動力制御が、そのステップS13によって実質的に終了させられる。その後、駆動力補正量をゼロにした場合の駆動力指令値が演算され(ステップS14)、その指令値が制御信号として駆動力源3に出力されて所定の駆動力が出力される(ステップS15)。この所定の駆動力はアクセル開度ならびに車速などに基づいて定まる駆動力である。
一方、前述したステップS5で否定的に判断された場合、すなわち旋回性能を変更するための駆動力制御を実行するにあたり、特に異常が生じていない場合には、駆動力制御を終了しないので、直ちに上記のステップS14に進む。また、運転者による操作の程度が判断基準以下であることによりステップS9で否定的に判断された場合、ならびに運転者の操作に起因する挙動変化の方向と駆動力補正量をゼロにしたとした場合に生じることが推定される車両の挙動変化の方向とが異なっていることによりステップS12で否定的に判断された場合には、駆動力制御を実質的には終了せずに、駆動力補正量を維持するので、直ちに上記のステップS14に進む。
このようにこの発明に係る駆動力制御装置は、旋回性能を制御するべく駆動力を制御している状態で、センサの異常など、駆動力制御を終了する条件が成立した場合、直ちに駆動力制御を終了して駆動力を変化させずに、駆動力もしくはその補正量を維持する。それだけでなく、車両の挙動に変化が生じる基準以上の操作が運転者によって行われたとしても、直ちには、駆動力補正量をゼロにするなど、実質的な駆動力制御の終了を行わない。この発明の駆動力制御装置では、運転者による操作が基準以上であって、車両の挙動の変化方向が駆動力補正量をゼロにすることにより生じる挙動の変化方向とが同じことを条件にして、初めて、駆動力補正量をゼロにして駆動力制御が実質的に終了させられる。
したがって、この発明に係る駆動力制御装置によれば、旋回性能に関連した駆動力の制御を、その終了条件が成立した後、挙動を変化させる運転者の操作に伴って駆動力制御を終了する場合、運転者の操作による制御量を、駆動力補正量がゼロになることにより減殺することがないので、運転者が意図した挙動の変化が生じないなどの違和感を防止もしくは抑制することができる。なお、このような作用・効果は、前述したステップS7で駆動力補正量を維持することに替えて、直前の駆動力を維持した場合であっても同様に得ることができる。
ここで、上述したこの発明に係る駆動力制御装置による制御例と、前述した挙動の変化方向を考慮しない参考例とを対比する。図11は、その参考例を説明するためのフローチャートであって、ここに示すフローチャートは前述した図1に示すフローチャートにおけるステップS10ないしステップS12を削除し、他のステップは図1に示す例と同様に構成した例である。したがって図11に示す制御例では、アクセル開度の変化速度dθの絶対値が予め定められた閾値Aを超えているなど、運転者の操作の内容が判断基準を超えている場合には、直ちに前述した駆動力制御が終了させられ、例えば駆動力補正量がゼロに変更される(ステップS13)。そのため、駆動力が増大補正されていた状態で運転者がアクセル開度を増大させる操作を行った場合、駆動力補正量がゼロに減少させられることにより、運転者のアクセル操作による駆動力の増大分が減殺され、運転者の意図した挙動の変化を得られなくなる。また反対に、駆動力が減少補正されていた状態で運転者がアクセル開度を減少させる操作を行った場合、駆動力補正量がゼロに増大させられることにより、運転者のアクセル操作による駆動力の減少分が減殺されて駆動力が反対に増大する場合もあるから、この場合も運転者の意図した挙動の変化を得られなくなる。
図2は、前述した図1に示す制御を行った場合の駆動力補正量の変化、および図11に示す制御を行った場合の駆動力補正量の変化を説明するためのタイムチャートである。図2の(a)に示す参考例による制御では、操舵角が増大するようにステアリングホイール(図示せず)が操作され、それに伴って実スタビリティファクタがその目標値に追従するように減少補正されている。その状態で、t1 時点に異常の判定が成立すると異常フラグがオンになる。このt1 時点では、操舵角やアクセル開度が維持され、車両の挙動を変化させる操作が行われていないので、駆動力補正量は直前の値に維持されている。その後、車両の挙動を変化させる操作として例えばアクセル開度が所定の閾値を超える速度で減少させられると、そのアクセル開度が減少している過程で駆動力補正量がゼロに戻される(t2 時点)。
アクセル開度を減少させる操作は、車両の挙動として前後加速度を低下させる操作であり、これに対して駆動力の減少補正量をゼロに戻す制御は、駆動力を増大させて前後加速度を増大させる制御である。したがって、図11に示す参考例の制御では、運転者が意図する駆動力の減少が、駆動力制御の終了によって減殺される。その結果、運転者の意図した挙動の変化が生じず、あるいは挙動の変化が不十分になるので、これが違和感となる可能性がある。
これに対して図2の(b)に示すこの発明に係る制御例では、異常の判定が成立したt1 時点の後、アクセル開度が減じられても、その操作による車両の挙動変化の方向が、駆動力補正量をゼロに戻すことによる挙動変化の方向と異なっているので、駆動力補正量は従前のままに維持される。その後、アクセルペダル(図示せず)が踏み込まれて、アクセル開度が所定の閾値を超えた速度で増大すると(t3 時点)、その操作による車両の挙動変化の方向と駆動力補正量をゼロに戻すことによる車両の挙動変化の方向とが同じであるために、駆動力制御の終了制御が実行される。すなわち、駆動力補正量がゼロに戻される。その場合、運転者のアクセル操作による駆動力の変化と、駆動力補正量をゼロに戻すことによる駆動力の変化とが、共に増大方向であって同じであるから、運転者が意図した駆動力の増大が減殺されるなどの事態が生じず、違和感を回避もしくは抑制することができる。
なお、上述した図1に示す制御例では、車両の挙動を変化させる運転者の操作としてアクセル操作された場合の例を挙げたが、この発明では、駆動力補正量をゼロに戻すことになる運転者の操作は、アクセル操作以外の操作であってもよく、例えば操舵角を増大させ、あるいは減少させる操作であってもよい。異常の判定が成立した後、操舵角が変更された場合の駆動力補正量の変化の一例を図3にタイムチャートで示してある。ここに示す例は、前述した図2に示す例と同様に、操舵角が増大させられて旋回走行する際に、スタビリティファクタの実際値を目標値に追従もしくは一致させるように駆動力が減少補正されている場合の例である。
その駆動力制御が行われている状態で、t1 時点に何らかの異常の判定が成立して異常フラグがオンになった場合、車両の挙動を変化させる運転者による操作が実行されていないので、駆動力補正量は直前の値に維持される。その後、操舵角を減少させるステアリングの戻し操作が行われ、その操作の速度あるいは操作量が判断基準値を超えていると(t4 時点)、駆動力補正量がゼロに戻されて、駆動力制御の実質的な終了制御が行われる。すなわち、駆動力を減少補正しているのは、操舵角が増大させられることによる旋回走行をアシストするためであり、したがって操舵角が減少させられれば駆動力を減少させることによるアシストが不要になり、もしくはその要求が低下する。このように操舵角を減少させる操作による車両の挙動変化の方向と、駆動力補正量をゼロにすることによる車両の挙動変化の方向とが同じになる。そのため運転者がステアリングの切り戻しを行うことによる車両の挙動の変化が、駆動力補正量をゼロに戻すことにより減殺されることがないので、運転者に違和感を与えることを回避もしくは抑制することができる。
つぎにこの発明に係る駆動力制御装置の他の例を説明する。上述した図1に示す制御例では、運転者が操作したことによる車両の挙動変化の方向と駆動力制御を終了することとした場合の車両の挙動変化の方向とに応じて、駆動力制御による駆動力の変化の仕方を異ならせる方法として、それらの方向が同じ場合には、維持していた駆動力補正量を直ちにゼロに戻し、それらの方向が異なる場合には、駆動力補正量の維持を継続することとした。すなわち、想定もしくは予想される車両の挙動変化の各方向が同じか、異なるかによって駆動力を補正のない値に変化させ、あるいは変化させないこととしたが、この発明では駆動力の変化の仕方を異ならせる方法として、変化率を異ならせることとしてもよい。その制御の一例を図4にフローチャートで示してある。
図4に示す例は、前述した旋回性能を向上させるために駆動力を制御するように構成されているから、ステップS1からステップS6までは図1に示す制御例と同じである。そして、ステップS6で制御終了の判断がなされると、運転者の操作による挙動の方向、より具体的には挙動の変化の方向が決定(もしくは判定)され(ステップS10)、また車両の旋回性能を目標とする性能とするための駆動力制御を終了(もしくは中止)したとした場合における車両の挙動変化の方向が決定される(ステップS11)。これらステップS10およびステップS11は前述した図1に示す制御例と同様である。
ついで、駆動力補正量をゼロに向けて変化させる際の変化勾配が決定される(ステップS111)。その変化勾配は、要は、車両の挙動を変化させる操作を運転者が行ったことに伴って駆動力補正量をゼロに向けて変化させることが違和感の悪化要因にならないようにするためのものである。したがってアクセル操作やブレーキ操作あるいはステアリング操作などの運転者による操作の内容や操作量、車両の加速度やヨーレートなどの大きさ、上記のステップS10やステップS11で決定された挙動変化の方向、駆動力補正量をゼロに戻したとした場合の車両の挙動変化などに基づいて、駆動力補正量の変化勾配が決定される。一方、許容される挙動変化の大きさは、車種や車両の大きさなどによって異なっているから、駆動力補正量の変化勾配は設計上、適宜に設定し、例えばマップとして用意しておくことができる。
そのマップの例を図5ないし図8に概念的に示してある。図5に示す例は、アクセルペダルが踏み込まれて駆動力補正量を増加させて戻す場合、すなわちそれらの挙動変化方向が同じである場合の駆動力補正量変化勾配絶対値を示すマップであり、アクセル開度の変化速度(増大速度)が小さくかつ駆動力補正量を戻した(増大させた)場合の挙動の変化が小さい場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値を「中」程度とし、アクセル開度の変化速度が大きいほど駆動力補正量変化勾配絶対値を大きくし、また駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が大きいほど駆動力補正量変化勾配絶対値を「中」程度から小さくするように構成されている。したがって、アクセル開度変化速度が大きくかつ駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が大きい場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値は「中」程度に設定されるようになっている。このような構成であれば、アクセルペダルをゆっくり踏み込んだ場合には、アクセル操作による車両の挙動の変化が小さいことが運転者の予想もしくは想定であるから、アクセルペダルを急に踏み込んだ場合より駆動力補正量変化勾配絶対値が小さくなって駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が小さくなるので、違和感を回避もしくは抑制することができる。また、アクセル開度が大きく増大した場合、駆動力補正量を戻すことによる挙動の変化が小さければ、駆動力補正量変化勾配絶対値は大きい値に設定されて大きくアクセル操作した運転者の意図する挙動の変化を生じさせることができる。これに対して駆動力補正量を戻すことによる挙動の変化が大きい場合は、駆動力補正量変化勾配絶対値が「中」程度に設定され、車両の挙動が、運転者の意図を超えて大きく変化することが回避もしくは抑制され、結局、運転者の意図にそぐわない挙動の変化が防止あるいは抑制されて違和感のない走行を行うことができる。
また、図6に示す例は、アクセルペダルが踏み込まれて駆動力補正量を減少させて戻す場合、すなわちそれらの挙動変化方向が反対である場合の駆動力補正量変化勾配絶対値を示すマップであり、アクセル開度の変化速度(増大速度)が小さくかつ駆動力補正量を戻した(減少させた)場合の挙動の変化が小さい場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値を「小」程度とし、アクセル開度の変化速度が大きいほど駆動力補正量変化勾配絶対値を大きくし、また駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が大きいほど駆動力補正量変化勾配絶対値を「小」程度から更に小さく(極小に)するように構成されている。したがって、アクセル開度変化速度が大きくかつ駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が大きい場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値は「小」程度に設定されるようになっている。このような構成であれば、アクセルペダルをゆっくり踏み込んだ場合には、アクセル操作による車両の挙動の変化が小さいことが運転者の予想もしくは想定であるから、アクセルペダルを急に踏み込んだ場合より駆動力補正量変化勾配絶対値が小さくなって駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が小さくなるので、違和感を回避もしくは抑制することができる。その場合、駆動力補正量を戻す(減少させる)ことによる挙動の変化が大きい場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値が「極小」に設定され、運転者の意図もしくは予想を超えた挙動の変化が防止もしくは抑制される。また、アクセル開度が大きく増大した場合、駆動力補正量を戻すことによる挙動の変化が小さければ、駆動力補正量変化勾配絶対値は「中」程度に設定されて大きくアクセル操作した運転者の意図する挙動の変化を生じさせることができる。これに対して駆動力補正量を戻すことによる挙動の変化が大きい場合は、駆動力補正量変化勾配絶対値が「小」程度に設定され、車両の挙動が、運転者の意図を超えて大きく変化することが回避もしくは抑制され、結局、運転者の意図にそぐわない挙動の変化が防止あるいは抑制されて違和感のない走行を行うことができる。なお、駆動力補正量の変化勾配は、減少側では負の値なるので、マップで決定した変化勾配(絶対値)を負の値にして使用する。
図7に示す例は、アクセルペダルを戻して駆動力補正量を減少させて戻す場合、すなわちそれらの挙動変化方向が同じである場合の駆動力補正量変化勾配絶対値を示すマップであり、アクセル開度の変化速度(減少速度)が小さくかつ駆動力補正量を戻した(減少させた)場合の挙動の変化が小さい場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値を「大」程度とし、アクセル開度の変化速度が大きいほど駆動力補正量変化勾配絶対値を「中」程度に向けて小さくし、また駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が大きいほど駆動力補正量変化勾配絶対値を「大」程度から「中」程度に向けて小さくするように構成されている。したがって、アクセル開度変化速度(減少速度)が大きくかつ駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が大きい場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値は「小」程度に設定されるようになっている。このような構成であれば、アクセルペダルをゆっくり戻す(負の値のため変化速度は大きい)場合には、アクセル操作による車両の挙動の変化が小さいことが運転者の予想もしくは想定であるから、アクセルペダルを急に戻した場合より駆動力補正量変化勾配絶対値が小さくなって駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が小さくなるので、違和感を回避もしくは抑制することができる。また、駆動力補正量を戻した場合の挙動の変化が大きいと推定される場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値が小さく、駆動力補正量がゆっくり戻されるので、運転者の意図もしくは予想しない過度な挙動の変化が生じず、違和感を防止もしくは抑制することができる。これらとは反対にアクセルペダルが急に戻された(負の値のため変化速度は小さい)場合、駆動力補正量を戻すことによる挙動の変化が小さいと推定されれば、駆動力補正量変化勾配絶対値は大きい値に設定され、運転者の意図した挙動の変化が生じるので、違和感を防止もしくは抑制することができる。なお、図7に示す例においても、前述した図6に示す例と同様に、駆動力補正量の変化勾配は、減少側では負の値なるので、マップで決定した変化勾配(絶対値)を負の値にして使用する。
図8に示す例は、アクセルペダルが戻されて駆動力補正量を増大させて戻す場合、すなわちそれらの挙動変化方向が反対である場合の駆動力補正量変化勾配絶対値を示すマップであり、アクセル開度の変化速度(減少速度)が小さくかつ駆動力補正量を戻した(増大させた)場合の挙動の変化が小さい場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値を「中」程度とし、アクセル開度の変化速度が大きいほど駆動力補正量変化勾配絶対値を「中」程度から「小」程度に小さくし、また駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が大きいほど駆動力補正量変化勾配絶対値を「中」程度から「小」程度に小さくするように構成されている。したがって、アクセル開度変化速度が大きくかつ駆動力補正量を戻すことに伴う挙動の変化が大きい場合には、駆動力補正量変化勾配絶対値は「極小」程度に設定されるようになっている。すなわち、図8に示す例は、上述した図7に示す挙動変化方向が同じである場合のマップに比較して、駆動力補正量変化勾配絶対値を全体的に小さく、かつアクセル開度変化速度および駆動力補正量を戻すことによる挙動の変化に対する変化の傾向は同じになっている。したがって、このような構成であれば、アクセル開度変化速度および駆動力補正量を戻すことによる挙動の変化に対する駆動力補正量変化勾配絶対値が相対的に小さくなるので、運転者の意図にそぐわない挙動の変化が防止あるいは抑制されて違和感のない走行を行うことができる。
ステップS111で駆動力補正量の変化勾配が決定された後、その変化勾配に沿って駆動力補正量が変化するように駆動力補正量が決定される(ステップS112)。なお、駆動力補正量は直ちにゼロに変化させることも可能であるから、ステップS112の制御は駆動力補正量の変化率を制限する制御と言うことができる。そして、駆動力補正量に基づいて駆動力を実現するために、駆動力指令値が演算され(ステップS14)、またその指令値が制御信号として駆動力源3に出力されて所定の駆動力が出力される(ステップS15)。
駆動力補正量の変化勾配をアクセル開度に基づいて決定するように構成した制御を実行した場合の駆動力補正量の変化を図9にタイムチャートとして示してある。ここに示す例は、操舵角が増大するようにステアリングホイール(図示せず)が操作され、それに伴って実スタビリティファクタがその目標値に追従するように減少補正されている場合の例である。その状態で、t1 時点に異常の判定が成立すると異常フラグがオンになる。このt1 時点では、操舵角やアクセル開度が維持され、車両の挙動を変化させる操作が行われていないので、駆動力補正量は直前の値に維持されている。その後、アクセル開度が増大し始めると(t5 時点)、そのアクセル開度もしくはその変化率に応じて駆動力補正量の変化勾配が決定され、その変化勾配に即して駆動力補正量がゼロに向けて変化させられる。そして、アクセル開度もしくはその変化率が更に増大すると(t6 時点)、それに合わせて駆動力補正量の変化勾配が増大させられる。こうして駆動力補正量がゼロにまで戻されて、運転者の意図によらずに駆動力制御が終了させられる。
したがって、図4に示す制御を行うように構成されていれば、駆動力補正量は運転者の操作による挙動の変化に合わせて変化させられ、かつその変化勾配が運転者の意図しないほどに大きくなったり、あるいは反対に不足したりすることが防止もしくは抑制される。そのため、図4に示す制御を実行するように構成した場合であって、旋回性能に関連して駆動力を制御し、その制御を運転者の意図によらずに終了する場合であっても、運転者に違和感を与えたり、それに伴ってドライバビリティが悪化したりすることを防止もしくは抑制することができる。
ここで、上記の各具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図1に示すステップS7ないしステップS13の制御、あるいは図4に示すステップS10,S11,S111,S112の制御を実行する機能的手段が、この発明における終了制御手段に相当する。
3…駆動力源、 5…コントローラ、 6…操舵角センサ、 7…ヨーレートセンサ、 8…アクセル開度センサ。

Claims (7)

  1. 駆動力によって旋回状態が変化する車両の旋回状態を示す実際値が、旋回状態を規定する目標値に近づくように前記駆動力を増大補正もしくは減少補正する駆動力制御を行うように構成された、車両の駆動力制御装置において、
    前記駆動力制御を運転者の意図によらずに終了させる条件が成立した場合、前記運転者が車両を操作したことによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化と前記駆動力制御を終了することによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化とに応じた前記駆動力制御の終了制御を行う終了制御手段を備えていることを特徴とする、車両の駆動力制御装置。
  2. 前記終了制御手段は、前記運転者が車両を操作したことによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化の方向と前記駆動力制御を終了することによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化の方向とが同じである場合に、前記駆動力制御による制御量をゼロにする制御指令を出力して前記駆動力制御を終了させる手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
  3. 前記終了制御手段は、前記運転者が車両を操作したことによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化と前記駆動力制御を終了することによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化とに応じて、前記駆動力制御による駆動力の制御量をゼロにするための変化勾配を設定する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
  4. 前記運転者による車両の操作は、駆動力を増減させるアクセル操作と、前記車両を回頭させる操舵と、制動操作との少なくともいずれか一つを含み、
    前記車両の挙動の変化は、加速度の変化と、ヨーレートの変化とのいずれか一つを含む
    ことを特徴とする請求項3に記載の車両の駆動力制御装置。
  5. 前記終了制御手段は、前記運転者が車両を操作したことによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化方向と前記駆動力制御を終了することによって生じることが推定される前記車両の挙動の変化方向とが同じ場合の前記変化勾配を、これらの変化方向が異なる場合の前記変化勾配より大きくするように構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の車両の駆動力制御装置。
  6. 車両の旋回状態を示す実際値は、走行中の前記車両から検出されたデータを使用して演算されたスタビリティファクタの実際値を含み、
    車両の旋回状態を規定する前記目標値は、スタビリティファクタの予め定められた目標値を含む
    ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両の駆動力制御装置。
  7. 車両の走行状態を検出するセンサを更に備え、
    前記駆動力制御を前記運転者の意図によらずに終了する条件は、前記センサの異常もしくは前記センサの検出値の異常のいずれかを含む
    ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の車両の駆動力制御装置。
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