JP2014072041A - 透明導電膜の製造方法、透明導電膜およびデバイス素子 - Google Patents

透明導電膜の製造方法、透明導電膜およびデバイス素子 Download PDF

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Abstract

【課題】金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の導電性材料を含有する透明導電膜であって、低い表面抵抗値および高い光線透過率を有する透明導電膜を、温和で簡便な条件で製造する方法を提供する。
【解決手段】金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の材料Mを含有する塗膜形成用組成物から形成された塗膜の少なくとも一部と、酸化皮膜除去液とを接触させる工程を有する、透明導電膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明導電膜の製造方法、前記方法により得られる透明導電膜、および前記透明導電膜を有するデバイス素子に関する。より詳しくは、透明導電膜の製造方法、前記方法により得られる導電性および光線透過率の優れた透明導電膜、前記方法により得られる導電領域と非導電領域とにインビジブルパターニングされた透明導電膜、ならびに前記透明導電膜を有するデバイス素子に関する。
〈透明導電膜の使用例と要求特性〉
透明導電膜は、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(OEL)型ディスプレイ、太陽電池(PV)およびタッチパネル(TP)等が有する透明電極、帯電防止(ESD)フィルムならびに電磁波遮蔽(EMI)フィルム等の種々の分野で使用されている。透明導電膜には、一般的に、(1)低い表面抵抗値、(2)高い光線透過率、(3)高い信頼性、(4)プロセス負荷が低いこと、(5)コストが安いこと、等が要求される。また、前記(1)〜(5)の特性に加えて、さらに、各々の用途に応じた特性が必要とされる。
例えば、LCD用途であれば、光学的な等方性、低いヘイズ値、ニュートラルな色味、パターニング性、配線との電気的接合性、等が必要とされる。例えば、投影型静電容量方式のTP用途であれば、透明導電フィルムの導電領域および非導電領域のパターンが見えない(「骨見えが無い」とも呼ばれる。)こと、等が必要とされる。現在、これらの透明電極に用いられる透明導電膜には、酸化インジウム錫(ITO)膜が用いられている。
〈新規な透明導電膜の開発動機と開発状況〉
インジウムは亜鉛製造の副生成物として得られ、供給は主生成物である亜鉛の供給に左右される。さらに、産出が一部の地域に偏っているために、供給の安定性に問題がある。また、ITO膜を製造する際には、高真空でのスパッタリングや高温でのアニーリングが必要であるために、製造装置が大規模となり、製造時間とコストが大きい。このため、環境面からも経済面からもプロセス負荷の少ない方法が求められている。このような経緯により、新規な透明導電膜の開発が、各研究機関や企業により積極的に行われている。
〈透明導電膜の用途と要求特性の多様化〉
透明導電膜の用途は広がりを見せており、要求特性についてはITO膜では達成が困難な領域まで求められている。例えば、フレキシブル用途では、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のフィルム上に透明導電膜が位置することになる。しかしながら、ITO膜は、曲げ等の物理的な応力によってクラックが発生し壊れ易い。また、ITO膜製造時のスパッタリングの際に高熱が発生するため、フレキシブル基板を構成する高分子がダメージを受ける。そのため、フレキシブル基板に対してITO膜を適用することは困難である。
〈新規な透明導電膜の開発〉
このように、多様な要求特性を満たすために、塗膜形成用組成物を塗布して得られる、塗布型の新規な透明導電膜の開発が活発に進められている。例えば、(1)〜(6)の導電性材料からなる透明導電膜や、(7)の透明導電膜が知られている。
(1)ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホン酸)
(PEDOT/PSS)およびポリアニリン等の高分子系導電性材料
(2)金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含有する導電性材料
(例えば、特許文献1、非特許文献1および非特許文献2参照)
(3)金属ナノ粒子によるランダムな網目状構造からなる導電性材料
(例えば、特許文献2参照)
(4)カーボンナノチューブやグラフェン等のカーボンナノ構造の導電性成分
を含有する導電性材料
(5)グラフェンシート(例えば、非特許文献3参照)
(6)金属の微細配線を用いた微細メッシュからなる導電性材料
(例えば、特許文献3参照)
(7)ITOナノ粒子を用いて調製されたITO透明導電膜
これらの中で、(2)の金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブを含有する導電性材料から形成される透明導電膜は、低い表面抵抗値かつ高い光線透過率を示し、フレキシブル性を有し、かつプロセス負荷の小さな方法で安価に製造することができる。
また、金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブの金属の種類や形状によって、異なる特性を有する透明導電膜が得られる。前記特性としては、例えば、金ナノチューブを用いた場合は黒色透明で高い透過率、銀ナノワイヤを用いた場合は白色透明で充分な環境耐性、銅ナノワイヤを用いた場合は赤色透明でマイグレーション耐性および材料のコストメリットが挙げられる。
しかしながら一方で、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブは、ナノサイズの金属であるために表面の反応性が高く、通常の塗布プロセスにおいても酸化によりその表面に酸化皮膜が形成され、導電性が悪化する。一般的には、卑な金属において、通常の塗布プロセスにおける酸化による導電性の悪化傾向が大きい。
例えば、非特許文献2に示されるように、銅ナノワイヤを用いた場合、通常の塗布プロセスのみでは導電性は全く得られていない。水素気流中175℃で塗膜を加熱するという還元雰囲気下での熱処理を行うことによって、初めて導電性が得られている。しかしながら、フレキシブル用途においては、高温での熱処理はフレキシブル基材を構成する高分子にダメージを与えるため好ましくない。実際、非特許文献2では、PETフィルムをガラス基板に貼り付けて、水素気流中での熱処理を行っている。これは、熱によりPETフィルムがダメージを受けて反りあるいは曲がりが発生するためであると予想される。また、フレキシブル用途でなくても、還元雰囲気下での熱処理は、製造装置、製造時間およびコストが大きく、プロセス負荷が大きい。このため、温和で簡便な透明導電膜の製造方法が必要とされる。
〈金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブを含有する透明導電膜の利用〉
タッチパネル用途に透明導電膜を利用する場合、透明導電膜はエッチングされて任意の形にパターニングされる。金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブを含有する透明導電膜の場合、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの存在する導電領域と当該領域がエッチングにより溶解されて存在しない非導電領域との間で光学特性に差があるため、パターン可視の問題が生じる。
このため、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブを含有する透明導電膜において、温和で簡便な製造方法を用いることによる、導電性の更なる改善と、導電領域および非導電領域が不可視化されたパターニング(以下「インビジブルパターニング」ともいう。)の達成も求められている。
特表2009−505358号公報 特開2008−078441号公報 特開2007−112133号公報
Shin−Hsiang Lai,Chun−Yao Ou,"SID 08 DIGEST",2008,P1200−1202 Aaron R.Rathmell,Benjamin J.Wiley,Advanced Materials,2011,23,4798−4803 Sukang Bae,Sumio Iijima,et al,NATURE NANOTECHNOLOGY,VOL.5,AUGUST 2010,574−578
本発明は、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の導電性材料を含有する透明導電膜であって、低い表面抵抗値および高い光線透過率を有する透明導電膜を、温和で簡便な条件で製造する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、インビジブルパターニングを達成することが可能な、透明導電膜の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の材料Mを含有する組成物から形成された塗膜と、酸化皮膜除去液とを接触させるという温和で簡便な方法を用いることで、接触部位における導電性を大きく改善できること、さらにはインビジブルパターニングを達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、例えば以下の[1]〜[16]に関する。
[1]金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の材料Mを含有する塗膜形成用組成物から形成された塗膜の少なくとも一部と、酸化皮膜除去液とを接触させる工程を有する、透明導電膜の製造方法。
[2]酸化皮膜除去液が、還元性化合物、および材料Mの金属イオンと錯体化合物を形成する化合物から選択される少なくとも1種を含有する、[1]に記載の透明導電膜の製造方法。
[3]還元性化合物が、ヒドラジン、ヒドラジンの誘導体および塩、ホルミル基を有する化合物、ならびにホルミル基を有する化合物の誘導体および塩から選択される少なくとも1種の化合物である、[2]に記載の透明導電膜の製造方法。
[4]還元性化合物が、ヒドラジンである、[3]に記載の透明導電膜の製造方法。
[5]材料Mの金属イオンと錯体化合物を形成する化合物が、メルカプト基およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物である、[2]に記載の透明導電膜の製造方法。
[6]材料Mの金属イオンと錯体化合物を形成する化合物が、チオール化合物、メルカプトアルコール化合物、チオカルボン酸化合物、メルカプトカルボン酸化合物、芳香族チオ化合物、これらの塩、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物である、[5]に記載の透明導電膜の製造方法。
[7]材料Mの金属イオンと錯体化合物を形成する化合物が、メルカプトカルボン酸化合物およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物である、[6]に記載の透明導電膜の製造方法。
[8]材料Mが金属ナノワイヤを含む、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の透明導電膜の製造方法。
[9]金属ナノワイヤが銅ナノワイヤである、[8]に記載の透明導電膜の製造方法。
[10]塗膜の一部と酸化皮膜除去液とを接触させることにより、導電領域と非導電領域とにパターニングされた透明導電膜を製造する、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の透明導電膜の製造方法。
[11]塗膜の一部と酸化皮膜除去液との接触を、塗膜上にフォトリソグラフィー法によりパターン状レジスト膜を形成した後に、パターン状レジスト膜および塗膜を含む積層体と酸化皮膜除去液とを接触させることにより行う、[10]に記載の透明導電膜の製造方法。
[12]塗膜の一部と酸化皮膜除去液との接触を、塗膜上に、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、リバースオフセット印刷、グラビア印刷およびフレキソ印刷から選択される少なくとも1種の印刷方法により、酸化皮膜除去液をパターン状に塗布することにより行う、[10]に記載の透明導電膜の製造方法。
[13][1]〜[12]のいずれか一項に記載の製造方法により得られた透明導電膜。
[14][10]〜[12]のいずれか一項に記載の製造方法により得られた、導電領域と非導電領域とにパターニングされた透明導電膜であって、以下の(1)〜(2)を満たす透明導電膜。
(1)導電領域の表面抵抗値が10〜1,000Ω/□である。
(2)導電領域の表面抵抗値R1と非導電領域の表面抵抗値R2との比(R2/R1)
が1000以上である。
[15]以下の(3)〜(5)をさらに満たす[14]に記載の透明導電膜。
(3)導電領域の全光線透過率が75%以上である。
(4)導電領域のヘイズが5%以下である。
(5)導電領域の全光線透過率と非導電領域の全光線透過率との差の絶対値、および
導電領域のヘイズと非導電領域のヘイズとの差の絶対値が、3%以下である。
[16][14]または[15]に記載の透明導電膜を有するデバイス素子。
本発明によれば、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の導電性材料を含有する透明導電膜であって、低い表面抵抗値および高い光線透過率を有する透明導電膜を、温和で簡便な条件で製造する方法を提供することができる。また、本発明によれば、インビジブルパターニングを達成することが可能な、透明導電膜の製造方法を提供することができる。
図1は、インビジブルパターニングの一例を示す図である。 図2は、インビジブルパターニングの一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本明細書において「透明導電膜」とは、104Ω/□以下の表面抵抗値を有し、かつ75%以上の全光線透過率を有する膜を意味する。また、導電領域と非導電領域とにパターニングされている膜の場合、「透明導電膜」とは、導電領域が104Ω/□以下の表面抵抗値を有し、かつ導電領域および非導電領域が75%以上の全光線透過率を有する膜を意味し;「導電領域」とは、表面抵抗値が104Ω/□以下である領域を意味し;「非導電領域」とは、表面抵抗値が104Ω/□を超える領域を意味する。
1.透明導電膜の製造方法
本発明の透明導電膜の製造方法は、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の材料Mを含有する塗膜形成用組成物から形成された塗膜の少なくとも一部と、酸化皮膜除去液とを接触させる工程を有する。以下、前記塗膜形成用組成物を「インク」ともいい、前記工程を「接触工程」または「酸化皮膜除去処理工程」ともいう。
上記材料Mは、主に金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの製造工程、塗膜形成用組成物の調製工程、および塗膜の形成工程等のいずれか一つ以上の工程において、酸化されて、当該材料表面に酸化皮膜が形成されている。このため、上記塗膜形成用組成物から形成された塗膜は、表面抵抗値が104Ω/□を超え、この状態では透明導電膜としては機能しえない。
本発明では、上記塗膜形成用組成物から形成された塗膜の少なくとも一部と酸化皮膜除去液とを接触させることにより、当該塗膜中の酸化皮膜を有する金属ナノワイヤあるいは酸化皮膜を有する金属ナノチューブを還元等して、前記酸化皮膜を除去する。これによって所望の導電性が達成される。すなわち、本発明の製造方法で得られる透明導電膜(以下、単に「本発明の透明導電膜」ともいう。)は、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の導電性材料を含有する。本発明の透明導電膜中で、酸化皮膜が除去された金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブは、導電性ネットワークを形成して塗膜に導電性を与える。
本発明の透明導電膜の製造方法において、上記塗膜は、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の材料Mを含有する塗膜形成用組成物を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程で得られたものであることが好ましい。以下、前記工程を「塗布工程」ともいう。
1−1.塗布工程
塗布工程では、インクを基板上に塗布して塗膜を形成する。
インクの塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、ブレードコート法、スプレー法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平板印刷法、ディスペンス法およびインクジェット法等の一般的な方法を用いることができる。また、インクの塗布方式としては、枚葉方式およびロールtoロール方式のいずれも用いることができる。塗膜の膜厚の均一性および生産性の観点から、スピンコート法およびスリットコート法が好ましく、スリットコート法がより好ましい。
基板としては、堅くてもよく、曲がり易くてもよく;着色されていてもよい。基板の材料としては、例えば、ガラス;ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル;ガラス繊維等に前記例示の樹脂を含浸させてなる複合材料が挙げられる。
基板は、高い光線透過率(例:80%以上、好ましくは85%以上)と、低いヘイズ値(例:5%以下、好ましくは3%以下)を有することが好ましい。
基板には、TFT素子等の回路が形成されていてもよく;カラーフィルターおよびオーバーコート等の有機機能性材料、窒化シリコン、シリコン酸化膜等の無機機能性材料が形成されていてもよい。また、複数の基板が積層されてなる積層基板を用いてもよい。
インクを基板上に塗布した後のインクの乾燥条件は、インク中の溶媒の種類によっても異なるが、例えば、加熱温度が通常40〜240℃、好ましくは50〜150℃であり、加熱時間が通常1〜30分間、好ましくは1〜10分間である。加熱は1回のみ行ってもよく、異なる温度で2回以上行ってもよい。また、この乾燥は昇温および降温過程を含んでもよい。
1−1−1.インク
塗膜形成に用いることのできるインクは、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の材料Mを含有する。また、前記インクは、バインダーおよび溶媒を含有することが好ましく;架橋剤、腐食防止剤、密着促進剤および界面活性剤から選択される少なくとも1種の添加剤を含有してもよい。
1−1−1−1.金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブ
本発明において、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブは、いずれかを用いてもよく、両者を混合して用いてもよく、より好ましくは金属ナノワイヤである。本明細書において、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブを総称して「材料M」ともいう。
「金属ナノワイヤ」とは、ワイヤ状の形状を有する材料であり、表面に酸化皮膜が形成されていない場合には導電性材料であり、直線状でも、緩やかにあるいは急峻に屈曲していてもよく;その性状は、柔軟であっても、剛直であってもよい。
また、「金属ナノワイヤ」の構造に関しては、コアシェル構造を有していてもよい。
「金属ナノチューブ」とは、ポーラスあるいはノンポーラスのチューブ状の形状を有する材料であり、表面に酸化皮膜が形成されていない場合には導電性材料であり、直線状でも、緩やかにあるいは急峻に屈曲していてもよく;その性状は、柔軟であっても、剛直であってもよい。
金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの、短軸の長さ、長軸の長さおよびアスペクト比は一定の分布を有する。本発明の透明導電膜が、全光線透過率が高くかつ表面抵抗値が低い塗膜となるよう、前記分布を調整することが好ましい。
具体的には、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの短軸の長さの平均は、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、5nm〜100nmがさらに好ましく、10nm〜100nmが特に好ましい。
金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの長軸の長さの平均は、1μm〜100μmが好ましく、1μm〜50μmがより好ましく、2μm〜50μmがさらに好ましく、5μm〜30μmが特に好ましい。
金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブは、短軸の長さの平均および長軸の長さの平均が上記範囲にあるとともに、アスペクト比の平均が1より大きいことが好ましく、10以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましく、200以上であることが特に好ましい。アスペクト比は、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの、短軸の長さの平均をb、長軸の長さの平均をaとした場合、a/bで求められる値である。
aおよびbは、走査型電子顕微鏡を用いて測定される。
材料Mにおける金属としては、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、オスミウムおよびイリジウムから選択される少なくとも1種の金属、ならびに前記金属を2種以上組み合わせた合金が挙げられる。
材料Mは、低い表面抵抗値かつ高い全光線透過率を有する透明導電膜を得るという観点から、金、銀および銅から選択される少なくとも1種を含むこと、すなわち金、銀および銅、ならびに金を含む合金、銀を含む合金、および銅を含む合金が好ましい。これらの金属は、導電性が高いため、所望の表面抵抗値を得る際に、面に占める金属の密度を減らすことができるため、高い全光線透過率を実現できる。
材料Mは、銀および銅から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく;低いコストおよび良好なマイグレーション特性の観点から、銅を含むことがさらに好ましい。特に好ましくは、銅ナノワイヤおよび/または銅ナノチューブである。
本発明の透明導電膜の製造方法では、材料Mとして、安価であるが酸化皮膜が形成されやすい銅ナノワイヤおよび/または銅ナノチューブを用いた場合に、特にその効果が発現しやすい。
インクにおいて、材料Mの含有量は、通常0.01〜1.0重量%、好ましくは、0.05〜0.75重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%となるように設定することができる。材料Mの含有量が前記範囲にあると、インクの製造の観点、および得られる塗膜の高い導電性と透明性の観点で好ましい。
材料Mの表面には、主に塗膜が形成された段階では、一部分または全部分にわたり酸化皮膜が形成されている。通常、大気中では金属は表面に酸化皮膜を有し、酸化皮膜の膜厚は金属種で異なる。酸化皮膜は、材料Mの合成直後に生成するもの、インクの塗布・乾燥・焼成などの工程中で生成するもの、移送・保管などの際に大気へ暴露されることにより生成するもの、などがある。酸化皮膜は、紫外可視赤外分光分析、走査型電子顕微鏡による検鏡分析および元素分析、透過型電子顕微鏡による検鏡分析および元素分析、オージェ電子分光分析、などにより確認することができる。
金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブは、公知の方法で製造することができる。
例えば、銀ナノワイヤは、ポリオール(Poly−ol)法を用いて、ポリビニルピロリドン存在下で硝酸銀を還元することによって合成することができる(Chem.Mater.,2002,14,4736)。また、銀ナノワイヤは、特開2007−270353号公報に記載されているように、ポリビニルピロリドンを用いず、核形成とダブルジェット法を経て、硝酸銀を還元することによっても合成することができる。
銀ナノワイヤの径と長さは、反応条件や還元剤の変更、塩の添加により制御可能である。国際公開第2008/073143号パンフレットには、反応温度や還元剤を変更することで、径と長さを制御している。また、臭化カリウムの添加により径を制御することもできる(ACS NANO,2010,4,5,2955)。
例えば、金ナノワイヤも同様に、ポリビニルピロリドン存在下で塩化金酸水和物を還元することによって合成することができる(J.Am.Chem.Soc.,2007,129,1733)。
銀ナノワイヤおよび金ナノワイヤの大規模な合成および精製の技術に関しては、国際公開第2008/073143号パンフレットと国際公開第2008/046058号パンフレットに詳細な記述がある。
例えば、銅ナノワイヤは、エチレンジアミン存在下、ヒドラジンで硝酸銅を還元することによって合成することができる(非特許文献2参照)。銅ナノワイヤの径と長さは、反応条件や仕込み比を変更することにより制御可能である。また、特許第3560333号に記載の方法を用いても合成することができる。
例えば、ポーラス構造を有する金ナノチューブは、銀ナノワイヤを鋳型に、塩化金酸溶液を用いて、銀ナノワイヤ自身と塩化金酸との酸化還元反応により合成することができる。銀ナノワイヤ自身と塩化金酸との酸化還元反応により、銀ナノワイヤ表面は金で覆われ、一方で鋳型に用いた銀ナノワイヤは溶液中に溶け出し、結果としてポーラス構造を有する金ナノチューブができる(J.Am.Chem.Soc.,2004,126,3892−3901)。また、鋳型の銀ナノワイヤは、アンモニア水溶液を用いても除去することができる(ACS NANO,2009,3,6,1365−1372)。また、銅ナノワイヤを鋳型に用いても、また、基板上でも、金ナノチューブや銀ナノチューブを合成することもできる。例えば、銅ナノチューブは、ポーラス構造を有するアルミナを持つ電極を用いて硫酸銅水溶液中で電解メッキを行うことでアルミナの細孔中に作製でき、次いで水酸化ナトリウム水溶液でアルミナを溶解することにより回収できる(Adv.Mater.2008,20,149−154)。
1−1−1−2.バインダー
インクは、バインダーを含有することが好ましい。
「バインダー」とは、透明導電膜中において導電性材料を均一に分散させ、かつ導電性材料を担持させるために用いられる樹脂あるいはゴムを意味する。バインダーは、製膜時には導電性材料が形成する導電性ネットワークを破壊することなく膜を形成するとともに、得られた膜と基板とを接合する機能を有し、また透明導電膜中で他の成分を分散および結着させる機能を有する。
バインダーとしては、例えば、
デンプン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キトサン、デキストラン、グアーガム、グルコマンナン等の多糖類およびその誘導体;
ビニルアルコールの単独重合体および共重合体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体および共重合体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの単独重合体および共重合体等のヒドロキシル基を有するエチレン性モノマーの単独重合体および共重合体;
タンパク質、ゼラチン、ポリアミノ酸等の生体高分子化合物;
ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン(例:ポリノルボルネン)等のポリオレフィン;ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート等のポリアクリロイル化合物;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリフェニルエーテル、ポリウレタン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、シリコーン樹脂、ポリアセテート;エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、メラミン(メタ)アクリレート樹脂等の重合性不飽和結合を有する樹脂;
ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩化ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィン−ヒドロカーボンオレフィンの共重合ポリマー、フルオロカーボンポリマー等のフッ化ポリマーなどのハロゲン化ポリマー;
その他、従来公知の合成ゴム;
が挙げられる。
バインダーは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
インクにおいて、バインダーの含有量は、材料M100重量部に対して、通常50〜500重量部、好ましくは100〜400重量部、より好ましくは200〜300重量部である。インク全量に対して、バインダーの含有量は、通常0.0050〜5.0重量%、好ましくは0.050〜3.0重量%、より好ましくは0.2〜1.5重量%である。バインダーの含有量が前記範囲にあると、材料Mの良好な分散性と高い透過率および製膜性、密着性の観点で好ましい。
1−1−1−3.溶媒
インクは、その粘度調整等のために通常は溶媒を含有する。
インクに含まれる各成分は、溶媒に均一に分散あるいは均一に溶解している。
溶媒としては、例えば、超純水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール等の炭素数6以下の低級アルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール等の炭素数6以下の低級ジオール;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール等の炭素数6以下の低級トリオール;2−メトキシエタノール、2−エトシキエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール等の炭素数6以下の低級エーテルアルコール等の有機溶媒が挙げられる。
溶媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
1−1−1−4.架橋剤
インクは、架橋剤を含有していてもよい。
架橋剤は、インクから形成された塗膜の乾燥・焼成時にバインダーのヒドロキシル・カルボキシル等と反応し架橋することで、膜の物理的強度を増加させる。架橋は、膜全体に均一に存在し強度増加に寄与する。架橋剤は、透明導電膜中で導電性材料の分散性を妨げることなく、また導電性材料が形成する導電性ネットワークを破壊し導電性および光学特性を悪化させることもなく、架橋による物理的強度の増加、ならびに膜の環境耐性、プロセス耐性および密着性を改善する。
架橋剤は、透明導電膜中において、金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブ、バインダー、ならびに他の任意成分と結合していてもよく、架橋剤同士で結合していてもよい。
インクにおいて、架橋剤の含有量は、バインダー100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは2.5〜50重量部、より好ましくは5〜25重量部である。インク全量に対しては、架橋剤の含有量は、通常0.00010〜1.0重量%、好ましくは0.00125〜0.3750重量%、より好ましくは0.005〜0.125重量%である。架橋剤の含有量が前記範囲にあると、インク中の材料Mに対する良好な分散性と高い透過率および製膜性、密着性の観点で好ましい。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アルデヒド化合物、アミン化合物、メチロール化合物、有機チタネート化合物、ホウ砂が挙げられる。
《イソシアネート化合物》
「イソシアネート化合物」とは、イソシアネート基、イソシアネート基をジメチルピラゾール、マロン酸ジメチル、メチルエチルケトオキシム、カプロラクタム等の保護基で保護した(ブロック)イソシアネート基、およびイソシアネート基の前駆体であるアミンイミド基から選択される少なくとも1種の官能基を、一分子中に少なくとも2つ有する化合物である。
イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−(O−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の(メタ)アクリレート、前記例示の化合物のイソシアネート基を保護基で保護した化合物、ならびに前記例示の化合物を1成分として調製される化合物および混合物が挙げられる。
イソシアネート化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
《エポキシ化合物》
「エポキシ化合物」とは、オキシラニル基およびオキセタニル基から選択される少なくとも1種の官能基を、一分子中に少なくとも2つ有する化合物である。
エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、トリスフェノールメタン型、テトラフェノールエタン型、ビキシレノール型、ビフェノール型のエポキシ化合物、脂環式もしくは複素環式のエポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型もしくはナフタレン型の構造を有するエポキシ化合物、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、グリシジルメタクリレートの単独重合体、グリシジルメタクリレートと他のラジカル重合可能な単官能モノマーとの共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンの単独重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンと他のラジカル重合可能な単官能モノマーとの共重合体が挙げられる。
エポキシ化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ化合物を用いる場合、硬化性をより向上させるために、エポキシ硬化剤を用いてもよい。エポキシ硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、触媒型硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、スチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。ポリアミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N−アミノエチルピペラジン、m−キシレンジアミンが挙げられる。触媒型硬化剤としては、例えば、3級アミン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
エポキシ硬化剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
《アルデヒド化合物》
「アルデヒド化合物」とは、ホルムアルデヒド、および一分子中にホルミル基を少なくとも2つ有する化合物である。
アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキサール、マロンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、ノナンジアール、イソフタルアルデヒド、o−フタルアルデヒドが挙げられる。
アルデヒド化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
《アミン化合物》
「アミン化合物」とは、アミノ基を一分子中に少なくとも2つ有する化合物、アミノ基をt−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基およびフルオレニルメチルオキシカルボニル基等のウレタン型保護基で保護した保護アミノ基を一分子中に少なくとも2つ有する化合物、ならびにアミノ基とアニオンで塩を形成しているアミン塩を一分子中に少なくとも2つ有する化合物である。
アミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。また、任意の酸で塩を形成していてもよい。
アミン化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
《メチロール化合物》
「メチロール化合物」とは、N−メチロール基、およびN−メチロール基がアルコールで保護されたN−メチロールエーテル基から選択される少なくとも1種を、一分子中に少なくとも2つ有する化合物である。
メチロール化合物としては、例えば、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とアルデヒド類との縮合反応により得られるノボラック樹脂、ビニルフェノールの単独重合体(水素添加物を含む)、ビニルフェノールとこれと共重合可能な化合物とのビニルフェノール系共重合体(水素添加物を含む)、メチロール尿素樹脂、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン、メチロールメラミン樹脂、エーテル化メチロールメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メチロールベンゾグアナミン樹脂、エーテル化メチロールベンゾグアナミン樹脂、およびそれらの縮合物が挙げられる。
メチロール化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
メチロール化合物を用いる場合、硬化性をより向上させるために、触媒あるいは反応開始剤を用いてもよい。触媒としては、例えば、芳香族スルホン酸化合物やリン酸化合物などの有機酸類およびそれらの塩、アミン化合物、アミン化合物の塩類、イミン化合物、アミジン化合物、グアニジン化合物、N原子を含む複素環式化合物、有機金属化合物、ステアリン酸亜鉛やミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムなどの金属塩類が挙げられる。反応開始剤としては、例えば、光酸発生剤、光塩基発生剤が挙げられる。触媒および反応開始剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、異なる機構に基づく触媒および反応開始剤を用いてもよい。
《有機チタネート化合物》
「有機チタネート化合物」とは、Ti−O−C型結合を有するアルコキシチタニウムエステル、チタニウムキレートおよびチタニウムアシレート化合物である。
有機チタネート化合物としては、例えば、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラ−n−プロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ−n−ブトキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウム−tert−ブトキシド、チタニウムラクテート、チタニウムラクテートアンモニウム塩が挙げられる。
有機チタネート化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
1−1−1−5.腐食防止剤
インクは、腐食防止剤を含有してもよい。
腐食防止剤は、インク中で、あるいは塗膜中で材料Mの腐食や変質を防ぐ。
腐食防止剤としては、例えば、芳香族トリアゾール、イミダゾール、チアゾール、チオール等の特定の窒素含有有機化合物および硫黄含有有機化合物、金属表面に特定の親和性を示す生体分子、金属と競合して腐食要素を封鎖する化合物が知られている。また、異なる腐食防止剤により、異なる機構に基づいて、材料Mが保護されてもよい。
腐食防止剤としては、例えば、トリルトリアゾールおよびブチルベンジルトリアゾール等のアルキル置換ベンゾトリアゾール、2−アミノピリミジン、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、システイン、ジチオチアジアゾール、飽和C6−C24直鎖状アルキルジチオチアジアゾール、飽和C6−C24直鎖状アルキルチオール、トリアジン、n−クロロコハク酸イミド、N,N−ジヒドロキシエチルアミンが挙げられる。
腐食防止剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
1−1−1−6.密着促進剤
インクは、密着促進剤を含有してもよい。
密着促進剤は、塗膜の基板への密着性を増加させる。
密着促進剤としては、例えば、基板とインク中の成分との間に結合を形成する化合物、および基板とインク中の成分との間に親和性を示す官能基を有する化合物が知られている。また、異なる密着促進剤により、異なる機序に基づいて、密着が促進されてもよい。
密着促進剤としては、例えば、3−(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
密着促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
1−1−1−7.界面活性剤
インクは、例えば、透明導電膜の膜面均一性、膜表面の親溶媒性および撥液性の制御のために、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、親水性基の構造から、イオン性および非イオン性に分類され;疎水性基の構造から、アルキル系、シリコン系およびフッ素系に分類される。また、界面活性剤は、分子構造から、分子量が比較的小さく単純な構造を有する単分子系、および分子量が大きく側鎖や枝分かれを有する高分子系に分類される。界面活性剤は1種のみからなる単一系、2種以上からなる混合系に分類される。本発明では界面活性剤として、全ての種類の界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
1−2.接触工程
接触工程では、上記塗膜形成用組成物から形成された塗膜の少なくとも一部と酸化皮膜除去液とを接触させる。ここで「接触」の態様としては、例えば、塗膜を酸化皮膜除去液に浸漬する方法、塗膜上に酸化皮膜除去液を全面またはパターン状に塗布する方法が挙げられる。
接触処理に用いる酸化皮膜除去液の温度は、通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜60℃である。酸化皮膜除去液による接触処理は1回のみ行ってもよく、2回以上行ってもよい。また、2回以上行う場合、それぞれの接触処理を異なる温度で行ってもよい。接触は枚葉方式で行ってもよく、ロールtoロール方式で行ってもよい。
このように接触処理(材料Mの酸化皮膜の除去処理)は、温和で簡便な条件のもと行うことができる。塗布法による場合の雰囲気は、例えば、大気下である。したがって、本発明では、塗膜に対して還元雰囲気下での熱処理を特に行う必要はない。
酸化皮膜除去液と接触する塗膜の領域は、この接触により、塗膜中の材料Mの少なくとも一部の酸化皮膜が除去され、材料Mの電気的接合が生じるために、非導電領域から導電領域となる。酸化皮膜除去液と接触しない塗膜の領域は、塗膜中の材料Mの酸化皮膜により電気的接合が阻害されるために、非導電領域のままである。導電領域では材料Mの少なくとも一部の酸化皮膜が除去され、非導電領域では材料Mが導電領域に比べてより酸化されている。
したがって、塗膜の全面と酸化皮膜除去液とを接触させた場合は、塗膜の全面が透明導電膜となり、塗膜の一部と酸化皮膜除去液とを接触させた場合は、導電領域と非導電領域とにパターニングされた透明導電膜が形成される。
後者の場合(導電領域と非導電領域とにパターニングする場合)の透明導電膜は、インビジブルパターニングを達成している。その理由は、以下のとおりである:導電領域は、導電性材料の導電性ネットワーク自体は存在し、かつ除去された酸化皮膜自体が薄いために、酸化皮膜の除去後であっても導電領域の散乱断面積はほとんど変化しない。したがって、導電領域および非導電領域において、同程度の光の吸収および散乱が生じるために、光学的特性(全光線透過率およびヘイズ)はほとんど同じである。
1−2−1.塗膜の全面に酸化皮膜除去液を接触させる場合
塗膜の全面と酸化皮膜除去液とを接触させる方法としては、例えば、塗膜を酸化皮膜除去液に浸漬する方法;塗膜の全面に酸化皮膜除去液を塗布する方法が挙げられる。
浸漬条件としては、例えば、酸化皮膜除去液に、塗膜(例えば、塗膜が形成された基板)を通常1分間〜1時間、より好ましくは1〜10分間浸漬する。
塗布方法としては、例えば、スピンコート、スプレーコート、バーコート、スリットコート、グラビアコート、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、リバースオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷が挙げられる。酸化皮膜除去液と塗膜との接触は、通常1分間〜1時間、好ましくは1〜5分間行う。上記方法で塗布された酸化皮膜除去液は、塗膜との適切な接触の後、適切な溶媒(例:超純水等の水、酸・塩基、塩または界面活性剤を含む水、炭素数6以下の低級アルコールあるいはケトン)で洗浄・除去される。
1−2−2.塗膜の一部に酸化皮膜除去液を接触させる場合
塗膜の一部と酸化皮膜除去液とを接触させる方法としては、例えば、
(2−1)塗膜上にフォトリソグラフィー法によりパターン状レジスト膜を形成した後に、パターン状レジスト膜および塗膜を含む積層体と酸化皮膜除去液とを接触させる方法、具体的には、前記積層体を酸化皮膜除去液に浸漬する方法;
(2−2)塗膜上に酸化皮膜除去液をパターン状に塗布する方法;
が挙げられる。
1−2−2−1.方法(2−1)
方法(2−1)において、パターン状レジスト膜の形成には、ITO膜のパターニングに一般的に用いられるレジスト材料を用いたフォトリソグラフィー法を利用することができる。
具体的には、以下の工程(i)〜(v)を行うことが好ましい。
(i)前記塗膜上にレジスト材料を塗布してフォトレジスト層を形成する工程。
(ii)フォトレジスト層を露光する工程。
(iii)露光後のフォトレジスト層を現像してパターン状レジスト膜を形成する工程。
(iv)パターン状レジスト膜および塗膜を含む積層体と
酸化皮膜除去液とを接触させる工程。
(v)前記パターン状レジスト膜を剥離する工程。
工程(i)〜(iii)および(v)は、従来公知の方法に従って行うことができる。
工程(iv)では、塗膜上にパターン状レジスト膜が形成され、塗膜の一部がレジスト膜で保護されていることで、塗膜の所望の部分と酸化皮膜除去液とを接触させることができる。接触方法としては、例えば、上記積層体を酸化皮膜除去液に浸漬する方法が挙げられる。浸漬条件としては、例えば、酸化皮膜除去液に、上記積層体を通常1分間〜1時間、より好ましくは1〜5分間浸漬する。
例えば、図1に示すように、基板10と基板10上に形成された塗膜20とを有する塗膜付き基板を準備する。塗膜20上にパターン状レジスト膜30を形成する。得られた積層体を酸化皮膜除去液へ浸漬する。パターン状レジスト膜30が形成されていない塗膜部分は、酸化皮膜除去液と接触するため、導電領域21となる。一方、パターン状レジスト膜30が形成されている塗膜部分は、酸化皮膜除去液と接触しないため、非導電領域22となる。
1−2−2−2.方法(2−2)
酸化皮膜除去液の塗布方法としては、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、リバースオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷が挙げられる。これらは一般的な方法が利用できる。酸化皮膜除去液を塗膜上にパターン印刷することで、インビジブルパターニングが可能となる。
酸化皮膜除去液からなるパターンと塗膜との接触は、通常1分間〜1時間、好ましくは1〜5分間行う。上記方法で印刷された酸化皮膜除去液は、塗膜との適切な接触の後、適切な溶媒(例:超純水等の水、酸・塩基、塩または界面活性剤を含む水、炭素数6以下の低級アルコールあるいはケトン)で洗浄・除去される。
例えば、図2に示すように、基板10と基板10上に形成された塗膜20とを有する塗膜付き基板を準備する。酸化皮膜除去液を塗膜20上にパターン印刷することで、塗膜20上に、酸化皮膜除去液からなるパターン40が形成される。パターン40と接触している塗膜部分は導電領域21となり、パターン40と接触していない塗膜部分は非導電領域22となる。
1−2−3.酸化皮膜除去液
酸化皮膜除去液としては、(1)還元性化合物(ただし、以下の錯体形成性化合物を除く。)、ならびに(2)金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブの金属イオンと錯体化合物を形成する化合物(以下「錯体形成性化合物」ともいう。)、から選択される少なくとも1種を含有する液体を用いることが好ましい。
酸化皮膜除去液を用いた酸化皮膜除去の機構は、次のように推定される:還元性化合物は、酸化皮膜を形成する金属酸化物を金属へと還元する。例えば酸化銅の場合、還元性化合物は、酸化皮膜を形成する酸化銅を金属銅へと還元する。錯体形成性化合物は、上記金属イオンの錯体化により、金属酸化物の溶媒への溶解を促進する。ここで錯体化に伴い、例えば酸化銅の場合、銅(II)イオンから銅(I)イオンの還元反応が伴ってもよい。
還元性化合物としては、例えば、ヒドラジン、ヒドラジンの誘導体および塩、ホルミル基を有する化合物、ならびにホルミル基を有する化合物の誘導体および塩から選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。ホルミル基を有する化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アクロレインが挙げられる。
還元性化合物において上記化合物の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、塩酸塩等の鉱酸塩、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸等の有機酸塩、トルエンスルホン酸等のスルホン酸塩が挙げられる。
還元性化合物の中でも、酸化皮膜の除去能の観点から、ヒドラジンが好ましい。
錯体形成性化合物としては、例えば、メルカプト基およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物が挙げられ;具体的には、
メタンチオール、エタンチオール等のチオール化合物(アルコール化合物の−OHを−SHで置き換えた化合物)、2−メルカプトエタノール、1−メルカプト−2,3−プロパンジオール等のメルカプトアルコール化合物(アルコール化合物の炭素原子に結合する1または2以上の水素原子をメルカプト基に置き換えた化合物)、チオ酢酸、チオプロピオン酸等のチオカルボン酸化合物(脂肪族カルボン酸の−COOHを−COSHに置き換えた化合物)、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸等のメルカプトカルボン酸化合物(脂肪族カルボン酸の炭素原子に結合する1または2以上の水素原子をメルカプト基に置き換えた化合物)、システアミン等のチオアミノ化合物、システイン等のチオアミノ酸化合物、チオフェノール、チオ安息香酸、チオサリチル酸等の芳香族チオ化合物などのメルカプト基を有する化合物;
エタノールアミン、ジエタノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール等のアミノアルコール化合物(アルコール化合物の炭素原子に結合する1または2以上の水素原子をアミノ基に置き換えた化合物)、エチレンジアミン、ジアミノプロパン等のジアミン化合物(アミノ基を2つ有する化合物)などのアミノ基を有する化合物;
これらの化合物の誘導体および塩;
が挙げられる。
錯体形成性化合物において上記化合物の塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、塩酸塩等の鉱酸塩、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸等の有機酸塩、トルエンスルホン酸等のスルホン酸塩が挙げられる。
錯体形成性化合物の中でも、酸化皮膜の除去能の観点から、チオール化合物、メルカプトアルコール化合物、チオカルボン酸化合物、メルカプトカルボン酸化合物、芳香族チオ化合物、これらの塩、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、メルカプトカルボン酸化合物およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物がさらに好ましい。
酸化皮膜除去液において、還元性化合物または錯体形成性化合物の含有量は、使用する化合物によっても異なるが、メルカプトカルボン酸化合物およびその塩から選択される少なくとも1種を用いる場合、通常10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%である。含有量が前記範囲にあると、酸化皮膜除去の能力の点で好ましい。
酸化皮膜除去液としては、市販品を用いることができる。市販品として、例えば、エスクリーンS−710、エスクリーンS−730、エスクリーンS−800(商品名;佐々木化学薬品(株)製)、CU−500、CU−600、Z−200、Z−200B、Z−300(商品名;旭油脂化学工業(株)製)、Z−2218、ピクル27、ピクル25(商品名;日本表面化学(株)製)、P3 almeco DL12、P3 almeco R、P3 lavoxyd N50(商品名;ヘンケルジャパン(株)製)、VERZONE CPR−280(商品名;大和化成(株)製)、SH−3、SA−05A(商品名;(株)ネオス製)、メカリンスCu−980(商品名;日本メカケミカル(株)製)、TLF−6100、TLF−8300(商品名;奥野製薬工業(株)製)、スルカップACL−009(商品名;上村工業(株)製)が挙げられる。
酸化皮膜除去液は、還元性化合物を1種のみ含有しても2種以上含有してもよい。酸化皮膜除去液は、錯体形成性化合物を1種のみ含有しても2種以上含有してもよい。また、還元性化合物および錯体形成性化合物を併用してもよい。
また、酸化皮膜除去液は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化皮膜除去液の溶媒としては、例えば、超純水等の水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール等の炭素数6以下の低級アルコール;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール等の炭素数6以下の低級ジオール;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール等の炭素数6以下の低級トリオール;2−メトキシエタノール、2−エトシキエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール等の炭素数6以下の低級エーテルアルコール等の有機溶媒が挙げられる。
溶媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化皮膜除去液の粘度は、その使用態様によって適宜設定される。酸化皮膜除去液は、ゲル状であってもよい。例えば、塗膜を酸化皮膜除去液に浸漬する場合は、通常0〜30mPa・s、好ましくは0〜15mPa・sである。例えば、酸化皮膜除去液を塗膜上にパターン印刷する場合は、使用するインクの粘度は印刷法によって異なり、例えば、スクリーン印刷を用いる場合、通常10〜1000mPa・s、好ましくは50〜500mPa・sであり、インクジェット印刷を用いる場合、通常5〜100mPa・s、好ましくは20〜50mPa・sであり、オフセット印刷を用いる場合、通常500〜2000mPa・s、好ましくは800〜1200mPa・sである。なお、粘度は、25℃でコーンプレート型回転粘度計で測定される値である。
酸化皮膜除去液は、その粘度を調整する観点から、増粘剤を含有してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、グルコマンナン、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールが挙げられる。
増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
1−3.任意工程
本発明の透明導電膜の製造方法は、塗布工程および接触工程等の各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜有してもよい。処理工程としては、例えば、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理、加熱処理が挙げられる。
プラズマ表面処理は、インクに対する基板の濡れ性、およびフォトリソグラフィー法を用いる場合は現像液に対するインクから形成された塗膜の塗れ性を上げるために用いることができる。例えば、酸素プラズマを用いて、100ワット、90秒、酸素流量50sccm(sccm;standard cc/min)、温度0℃、圧力50パスカルの条件で、基板またはインクから形成された塗膜の表面を処理することができる。
超音波処理は、溶液中に基板を浸漬し、例えば、200kHz程度の超音波を伝播させることによって、基板上に物理的に付着した微粒子等の付着物を取り除くことができる。
オゾン処理は、基板に空気を吹きつけると同時に紫外光を照射し、紫外光によって発生したオゾンの酸化力によって、基板上の付着物を効果的に取り除くことができる。
洗浄処理は、例えば、基板に純水を霧状あるいはシャワー状等で吹きつけ、溶解性および圧力で、基板上の微粒子状の不純物を洗い流すことで、取り除くことができる。
加熱処理は、除去対象の化合物を揮発させることによって、基板中の化合物を除去する方法である。加熱温度は、除去対象の化合物の沸点を考慮して適宜設定する。例えば、除去対象の化合物が水である場合は、50〜150℃程度の範囲で加熱する。
2.透明導電膜
本発明の透明導電膜は、上記製造方法により得られる。また、本発明の透明導電膜は、適宜、当該膜上に配線、絶縁膜、オーバーコート等を有していてもよく、パターニングされていてもよく、インビジブルパターニングされていてもよい。
以下の物性値の測定方法の詳細は、実施例に記載したとおりである。
2−1.膜厚
透明導電膜の膜厚は、低い表面抵抗値の観点からは大きいほど良く、段差による表示不良の発生を抑制する観点からは小さいほど良い。したがって、これらを総合的に勘案すると、膜厚は、好ましくは1nm〜500nm、より好ましくは5nm〜250nm、さらに好ましくは10nm〜150nmである。膜厚は、例えば、インクの組成および塗布条件により決定される。膜厚が大きいほど、一般に表面抵抗値および全光線透過率は低くなる。
2−2.表面抵抗値
本発明の透明導電膜の表面抵抗値は、例えば、透明導電膜の膜厚、導電性材料の面密度で決定される。表面抵抗値は、用途により設定されるが、通常104Ω/□以下、好ましくは10〜5000Ω/□、より好ましくは10〜1000Ω/□である。
2−3.全光線透過率
本発明の透明導電膜の全光線透過率は、例えば、基材、透明導電膜の膜厚、各成分の面密度で決定される。全光線透過率は、用途により設定されるが、通常75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
2−4.ヘイズ
本発明の透明導電膜のヘイズは、例えば、基材、透明導電膜の膜厚、透明導電膜の表面形状、各成分の面密度で決定される。ヘイズは、用途により設定されるが、通常5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1.5%以下である。
2−5.インビジブルパターンの場合
導電領域と非導電領域とにパターニングされた透明導電膜の場合、透明導電膜は、以下の(1)〜(2)を満たすことが好ましく、(3)〜(5)をさらに満たすことがより好ましい。
(1)導電領域の表面抵抗値が10〜1,000Ω/□であり、
好ましくは10〜500Ω/□、より好ましくは10〜200Ω/□である。
(2)導電領域の表面抵抗値R1と非導電領域の表面抵抗値R2との比(R2/R1)が1000以上であり、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上である。
(3)導電領域の全光線透過率が75%以上であり、
好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
(4)導電領域のヘイズが5%以下であり、
好ましくは3%以下、より好ましくは1.5%以下である。
(5)導電領域の全光線透過率と非導電領域の全光線透過率との差の絶対値、および導電領域のヘイズと非導電領域のヘイズとの差の絶対値が、それぞれ3%以下であり、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。
3.デバイス素子
本発明のデバイス素子は、上述した透明導電膜の製造方法により得られた、導電領域と非導電領域とにパターニングされた透明導電膜を有する基板を含む。前記透明導電膜は、導電性および光学特性に優れている。
デバイス素子としては、例えば、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、電子ペーパー、タッチパネル素子、太陽電池素子が挙げられる。デバイス素子は、堅い基板を用いて作製されてもよく、曲がり易い基板を用いて作製されてもよく、さらにはそれらの組み合わせでもよい。また、デバイス素子に用いられる基板は、透明であっても、着色されていてもよい。
液晶表示素子に用いられる透明導電膜としては、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板側に形成される画素電極およびカラーフィルター基板側に形成される共通電極がある。LCDの表示モードとしては、例えば、TN(Twisted Nematic)、MVA(Multi Vertical Alignment)、PVA(Patterned Vertical Alignment)、IPS(In Plane Switching)、FFS(Fringe Field Switching)、PSA(Polymer Stabilized Vertical Alignment)、OCB(Optically Compensated Bend)、CPA(Continuous Pinwheel Aligment)、BP(Blue Phase)がある。また、これらの各々のモードに対して、透過型、反射型および半透過型がある。LCDの画素電極は、画素毎にパターニングされており、TFTのドレイン電極と電気的に接合されている。その他、例えば、IPSモードは櫛歯電極構造を有しており、PVAモードは画素内にスリットが入った構造を有している。
有機エレクトロルミネッセンス素子に用いられる透明導電膜は、パッシブタイプの駆動方式の電極として用いられる場合は、通常基板上にストライプ状にパターニングされる。ストライプ状の導電領域(陽極)とこれに直交して配置されたストライプ状の導電領域(陰極)間に直流電圧を印加することによって、マトリックス状の画素を発光させて表示する。透明導電膜は、アクティブタイプの駆動方式の電極として用いられる場合は、TFTアレイ基板側に画素毎にパターニングされる。
タッチパネル素子は、その検出方法によって抵抗膜式や静電容量方式等があり、いずれも透明電極が用いられる。静電容量方式に用いられる透明電極はパターニングされる。
電子ペーパーは、その表示方法によって、マイクロカプセル方式、電子粉流体方式、液晶方式、エレクトロウェッティング方式、電気泳動方式、化学変化方式等があり、いずれも透明電極が用いられる。透明電極はそれぞれ任意の形状にパターニングされる。
太陽電池素子は、光吸収層の材料によって、シリコン系、化合物系、有機系、量子ドット型等があり、いずれも透明電極が用いられる。透明電極はそれぞれ任意の形状にパターニングされる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「重量部」を示す。
〔測定方法または評価方法〕
各評価項目における測定方法または評価方法は、下記方法に従った。下記(1)〜(3)は、特に言及しない限り、評価試料のうち塗膜または透明導電膜が形成された領域について測定した。
(1)表面抵抗値の測定
表面抵抗値の測定には、四探針測定法および非接触式測定法の2種類を用いた。
四探針測定法(JIS K 7194に準拠)には、Loresta−GP MCP−T610(三菱化学(株)製)を用いた。測定に用いたプローブは、5mmのピン間距離と2mmのピン先の直径とを有する専用のESP型プローブである。このプローブを評価試料に接触させて、外側2端子に一定の電流を流したときの内側2端子の電位差を測定し、この測定によって得られた抵抗値に補正係数を乗ずることによって、表面抵抗値(Ω/□)を算出した。このようにして得られた表面抵抗値と導電膜の厚さとにより、体積抵抗率(Ω・cm)および導電率(ジーメンス/cm)を求めることができる。
導電膜上に1層以上の絶縁膜が形成された基板における導電膜の表面抵抗値、および金属ナノワイヤまたは金属ナノチューブが絶縁体中に分散した導電膜の表面抵抗値は、四探針測定法では安定して測定できない場合がある。そのため、渦電流を用いた非接触式の表面抵抗値測定法(以下「非接触式測定法」ともいう。)を併用した。なお、本明細書中の透明導電膜は、膜の表面にも導電性材料が存在するために、四探針測定法を用いても安定して測定を行うことができる。非接触式測定法としては、717B−H(DELCOM)を用いて、表面抵抗値(Ω/□)を測定した。この場合も得られた表面抵抗値と導電膜の厚さとにより、体積抵抗率(Ω・cm)および導電率(ジーメンス/cm)を求めることができる。
四探針測定法の測定上限は107Ω/□程度、非接触式測定法の測定上限は104Ω/□程度である。特に言及しない限り、104Ω/□以下では非接触式測定法、104Ω/□以上では四探針測定法を用いた。四探針測定法および非接触式測定法が共に測定可能な範囲においては、四探針測定法および非接触式測定法の測定値は一致する。なお、非接触式測定法および四探針測定法の測定上限を共に超えた場合については、「測定不可」と記載する。
(2)全光線透過率および曇度(ヘイズ)の測定
全光線透過率および曇度(ヘイズ)の測定には、ヘイズガードプラス(BYKガードナー(株)製)を用いた。リファレンスは空気とした。
(3)膜厚
膜厚の測定には、段差計P−16+(KLA−Tencor製)を用いた。膜厚の測定は、「ファインセラミックス薄膜の膜厚試験方法−触針式粗さ計による測定方法(JIS−R−1636)に準じた。パターニングされていない膜の膜厚を測定する場合は、評価試料の膜の一部を削り取り、その境界面の段差を測定した。
〔超純水の調製〕
構成成分としての水は、超純水(以下、単に「水」ともいう。)を用いた。超純水は、超純水製造装置「ピューリック FPC−0500−OMO」(商品名;オルガノ(株)製)を用いて調製した。
〔ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)水溶液の調製〕
風袋重量が予め測定された300mLビーカーに超純水100gを入れ、加熱撹拌した。液温80〜90℃で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下「HPMC」ともいう;商品名:メトローズ90SH−100000;信越化学工業(株)製)2.00gを少しずつ入れ、強く撹拌し均一に分散させた。強く撹拌したまま、超純水80gを加えると同時に加熱を止め、氷水でビーカーを冷却しながら均一な溶液になるまで撹拌した。20分間の撹拌の後、水溶液重量が200.00gになるように超純水を加え、均一な溶液になるまで室温でさらに10分間撹拌し、1.0重量%HPMC水溶液を調製した。
〔銅ナノワイヤの合成〕
〈銅ナノワイヤ分散液の調製〉
15mol/L水酸化ナトリウム水溶液2000mL、0.2mol/L硝酸銅(II)水溶液100mL、エチレンジアミン30mL、および35重量%ヒドラジン水溶液2.5mLを3000mL丸底フラスコに入れ、均一になるまで20秒間ふり混ぜた。次いで、マグネチックスターラーおよびオイルバスを用いて、80℃かつ200rpmの条件で60分間加熱攪拌した。加熱撹拌後、室温まで冷却し、0.4重量%ポリビニルピロリドン水溶液500mLをゆっくりと反応液上部に注ぎ入れ、氷冷下1時間静置した。反応液上部に浮き上がった銅ナノワイヤを、デカンテーションにより回収した。回収した銅ナノワイヤを、3重量%ヒドラジン−1重量%ポリビニルピロリドン水溶液を用いて、遠心分離(2000rpm/5分、3〜5回)で洗浄した。洗浄した銅ナノワイヤを、3重量%ヒドラジン−1重量%ポリビニルピロリドン水溶液に再分散させた。次いで、孔径5μmのフィルターを用いてこの分散液を濾過し、フィルター上の銅ナノワイヤを超純水で5回洗浄した後、0.2重量%HPMC水溶液100mLに分散させた。さらに、孔径77μmのフィルターを用いてこの分散液を濾過し、凝集物を取り除き、銅ナノワイヤ分散液を調製した。
〈銅濃度のキレート滴定〉
銅ナノワイヤ分散液を2g精密に分取し、6mol/L硝酸水溶液を最小量加えて加熱した。銅ナノワイヤがすべて溶解した後、引き続き加熱を続け、溶媒を蒸発させた。析出物を超純水に溶解させ、0.05mol/L酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液を加えてpH4にし、超純水で溶液量が75mLになるように希釈した。イソプロパノール25mLおよびPAN指示薬5滴を加えた。濃度更正された0.01mol/Lエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液で滴定したところ、銅濃度は0.1重量%であった。
〈銅ナノワイヤの形状〉
銅ナノワイヤの短軸、長軸およびアスペクト比の平均値(電子顕微鏡写真上の銅ナノワイヤ100本についての平均値)は、それぞれ90nm、9μmおよび100であった。なお、銅ナノワイヤの短軸および長軸の長さは、走査型電子顕微鏡SU−70((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。
〔配合成分の調製〕
〈銅ナノワイヤベース溶液の調製〉
銅濃度0.25重量%およびHPMC濃度0.5重量%になるように、銅ナノワイヤ分散液100gに固形分濃度1.0重量%HPMC水溶液60gおよび超純水240gを加え、銅ナノワイヤベース溶液400gを得た。
〈界面活性剤溶液の調製〉
固形分濃度100重量%のTritonX−100(オクチルフェニルポリエチレングリコール;商品名;シグマアルドリッチジャパン(株)製)0.08gを量り取り、超純水7.92gで希釈し、固形分濃度1.0重量%界面活性剤溶液を調製した。
〈バインダー溶液の調製〉
ゴーセファイマーZ−200(アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール;商品名;日本合成(株)製)0.08gを量り取り、超純水7.92gで希釈し、固形分濃度1.0重量%ゴーセファイマー水溶液を調製した。
〈架橋剤溶液(I)の調製〉
固形分濃度70重量%のニカラックMW−22(N−メチロールエーテル基を有するメチル化メラミン樹脂;商品名;(株)三和ケミカル製)0.10gを量り取り、イソプロピルアルコール(IPA)6.90gで希釈し、固形分濃度1.0重量%架橋剤溶液(I)を調製した。
〈架橋剤溶液(II)の調製〉
固形分濃度42重量%のオルガチックスTC−300(チタンラクテートアンモニア中和物;商品名;マツモトファインケミカル(株)製)0.10gを量り取り、超純水4.10gで希釈し、固形分濃度1.0重量%架橋剤溶液(II)を調製した。
〈触媒水溶液の調製〉
固形分25重量%のNACURE3525(スルホン酸塩型触媒;商品名;KING INDUSTRIES,INC製)0.20gを量り取り、超純水49.8gで希釈し、固形分濃度0.1重量%触媒水溶液を調製した。
〔塗膜形成用組成物の調製〕
〈塗膜形成用組成物(1)の調製〉
銅ナノワイヤベース溶液4.80g、界面活性剤溶液0.20g、超純水0.72g、ゴーセファイマー水溶液1.20gを量り取り、これらを混合し、均一な溶液になるまで撹拌した。次いで、1.0重量%架橋剤溶液(I)0.36g、0.1重量%触媒水溶液0.72gを加え、均一な溶液になるまで撹拌し、表1記載の組成の塗膜形成用組成物(1)を得た。塗膜形成用組成物(1)中の各成分は、良好な分散性を示した。
〈塗膜形成用組成物(2)の調製〉
銅ナノワイヤベース溶液4.80g、界面活性剤溶液0.20g、超純水0.72g、ゴーセファイマー水溶液1.20gを量りとり、これらを混合し、均一な溶液になるまで撹拌した。次いで、1.0重量%架橋剤溶液(II)0.36g、0.1重量%触媒水溶液0.72gを加え、均一な溶液になるまで撹拌し、表1記載の組成の塗膜形成用組成物(2)を得た。塗膜形成用組成物(2)中の各成分は、良好な分散性を示した。
Figure 2014072041
[実施例1A]
厚さ0.7mmのEAGLE XGガラス基板(商品名;コーニング(株)製)の表面に、低圧水銀灯からのエネルギー線(波長=254nm;照射エネルギー=1000mJ/cm2)を照射し、UVオゾン処理を行った。UVオゾン処理がなされたガラス基板の表面上に塗膜形成用組成物(1)1mLを滴下し、スピンコーター「MS−A150」(商品名;ミカサ(株)製)を用いて300rpmでスピンコートを行った。前記基板に対して50℃のホットステージ上で3分間の条件で予備焼成を行い、その後、140℃のホットステージ上で3分間の条件で本焼成を行い、前記基板上に膜厚80nmの塗膜を形成した。得られた透明導電膜は、表面抵抗値が測定上限を超えたため測定不可であり、全光線透過率=90.1%であり、ヘイズ=2.5%であった。
得られた塗膜を、酸化皮膜除去液「エスクリーンS−800」(商品名;佐々木化学薬品(株)製)に室温で1分間浸漬し、超純水ですすいだ後、圧縮空気を吹きつけ乾燥させた。得られた透明導電膜(酸化皮膜除去処理後)は、銅ナノワイヤ上の酸化皮膜が除去されたために導電性が得られたと考えられ、表面抵抗値=45Ω/□であり、全光線透過率=90.5%であり、ヘイズ=2.5%であった。
[実施例2A〜5A]
実施例2A〜5Aでは、実施例1Aと同様にして、上記ガラス基板上に塗膜(酸化皮膜除去処理前)を形成した。得られた塗膜を、実施例2Aでは3重量%ヒドラジン水溶液に室温で1分間浸漬し、実施例3AではスルカップACL−009(商品名;上村工業(株)製)に室温で1分間浸漬し、実施例4Aでは40重量%メルカプト酢酸アンモニウム水溶液に室温で1分間浸漬し、実施例5Aでは40重量%メルカプト酢酸水溶液に室温で1分間浸漬した。続いて、浸漬後の塗膜を超純水ですすいだ後、圧縮空気を吹きつけ乾燥させた。評価結果を表2に示す。
[比較例1A]
比較例1Aでは、実施例1Aと同様にして、上記ガラス基板上に塗膜(酸化皮膜除去処理前)を形成した。得られた塗膜に対して、95%窒素−5%水素雰囲気下、かつ600〜700mTorr条件下でプラズマ処理を行った。得られた塗膜(プラズマ処理後)は、表面抵抗値が測定上限を超えたため測定不可であり、全光線透過率=90.0%であり、ヘイズ=2.6%であった。
次いで、水素雰囲気下(600mL/min)、オーブン中、175℃で水素還元処理を行った。これは、非特許文献2(ADVANCED MATERIALS, 2011, 23, 4798-4803)に記載の酸化皮膜除去処理工程を用いた例である。
得られた透明導電膜(酸化皮膜除去処理後)は、表面抵抗値=40Ω/□であり、全光線透過率=90.5%であり、ヘイズ=2.0%であった。導電性は得られたが、水素雰囲気下で加熱により還元するという過酷な方法を用いるために、プロセス負荷が大きい。
[実施例6A]
実施例1Aにおいて、塗膜形成用組成物(1)に代えて塗膜形成用組成物(2)を用いたこと以外は実施例1Aと同様にして、塗膜の形成および酸化皮膜除去処理を行った。評価結果を表2に示す。
Figure 2014072041
[実施例1B](フォトリソグラフィーによるインビジブルパターニング)
〈透明導電膜の形成〉
実施例1Aと同様にして、上記ガラス基板上に塗膜を形成した。
〈フォトレジスト層のパターニング工程〉
塗膜上にポジ型フォトレジスト「ZPP−1700PG」(商品名;日本ゼオン(株)製)1mLを滴下し、スピンコーター「MS−A150」(商品名;ミカサ(株)製)を用いて3000rpmでスピンコートを行った。前記基板に対して100℃のホットステージ上で90秒間の条件で予備焼成を行った。次いで、フォトマスクを通して、露光機で50mJ/cm2の条件で露光した。露光後の基板を2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下「TMAH」ともいう。)水溶液に室温で1分間浸漬した。浸漬後の基板を超純水で洗浄し、圧縮空気を吹きつけ乾燥させた。以上の手順で、基板と、前記基板上に形成された塗膜と、前記塗膜上にパターニングされたレジスト層とを有する積層体を得た。
〈接触工程(インビジブルパターニング工程)〉
上記積層体を、エスクリーンS−800に室温で1分間浸漬し、超純水ですすいだ後、圧縮空気を吹きつけ乾燥させた。次いで、室温で1−メトキシ−2−プロパノール(以下「PGME」ともいう。)に2分間浸漬し、超純水でフォトレジスト層を除去した。
〈透明導電膜の評価(酸化皮膜除去処理後)〉
以上の手順で得られた透明導電膜は、目視ではパターンを確認することができなかった(インビジブルパターニング)。酸化皮膜除去処理が施された導電領域は、表面抵抗値=40Ω/□であり、全光線透過率=90.5%であり、ヘイズ=2.0%であった。酸化皮膜除去処理が施されていない非導電領域は、表面抵抗値>107Ω/□(あるいは導電性を発現しない)であり、全光線透過率=90.1%であり、ヘイズ=2.5%であった。導電領域の表面抵抗値R1と非導電領域の表面抵抗値R2との比(R2/R1)>250000であった。
[実施例2B](スクリーン印刷によるインビジブルパターニング)
〈透明導電膜の形成〉
実施例1Aと同様にして、上記ガラス基板上に塗膜を形成した。
〈スクリーン印刷用の酸化皮膜除去液の調製〉
エスクリーンS−800にカルボキシメチルセルロースアンモニウム(以下「CMCAS」ともいう;和光純薬工業(株)製)を加え、5重量%CMCAS−エスクリーンS−800溶液を調製した。この溶液の、25℃でコーンプレート型回転粘度計で測定される粘度は、90mPa・sであった。
〈接触工程(インビジブルパターニング工程)〉
スクリーン印刷法を用いて5重量%CMCAS−エスクリーンS−800溶液を、塗膜上に塗布した。室温で2分間放置し、超純水ですすいだ後、圧縮空気を吹きつけ乾燥させた。
〈透明導電膜の評価(酸化皮膜除去処理後)〉
以上の手順で得られた透明導電膜は、目視ではパターンを確認することができなかった(インビジブルパターニング)。酸化皮膜除去処理が施された導電領域は、表面抵抗値=50Ω/□、全光線透過率=90.5%、ヘイズ=2.0%であった。酸化皮膜除去処理が施されていない非導電領域は、表面抵抗値>107Ω/□(あるいは導電性を発現しない)であり、全光線透過率=90.0%であり、ヘイズ=2.5%であった。導電領域の表面抵抗値R1と非導電領域の表面抵抗値R2との比(R2/R1)>250000であった。
本発明の透明導電膜の製造方法は、例えば、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、電子ペーパー、タッチパネル素子、太陽電池素子等のデバイス素子の製造に用いることができる。
10…基板
20…塗膜形成用組成物から形成された塗膜
21…導電領域
22…非導電領域
30…パターン状レジスト膜
40…酸化皮膜除去液からなるパターン

Claims (16)

  1. 金属ナノワイヤおよび金属ナノチューブから選択される少なくとも1種の材料Mを含有する塗膜形成用組成物から形成された塗膜の少なくとも一部と、酸化皮膜除去液とを接触させる工程
    を有する、透明導電膜の製造方法。
  2. 酸化皮膜除去液が、
    還元性化合物、および
    材料Mの金属イオンと錯体化合物を形成する化合物
    から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の透明導電膜の製造方法。
  3. 還元性化合物が、ヒドラジン、ヒドラジンの誘導体および塩、ホルミル基を有する化合物、ならびにホルミル基を有する化合物の誘導体および塩から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項2に記載の透明導電膜の製造方法。
  4. 還元性化合物が、ヒドラジンである、請求項3に記載の透明導電膜の製造方法。
  5. 材料Mの金属イオンと錯体化合物を形成する化合物が、メルカプト基およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物である、請求項2に記載の透明導電膜の製造方法。
  6. 材料Mの金属イオンと錯体化合物を形成する化合物が、チオール化合物、メルカプトアルコール化合物、チオカルボン酸化合物、メルカプトカルボン酸化合物、芳香族チオ化合物、これらの塩、およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項5に記載の透明導電膜の製造方法。
  7. 材料Mの金属イオンと錯体化合物を形成する化合物が、メルカプトカルボン酸化合物およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項6に記載の透明導電膜の製造方法。
  8. 材料Mが金属ナノワイヤを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明導電膜の製造方法。
  9. 金属ナノワイヤが銅ナノワイヤである、請求項8に記載の透明導電膜の製造方法。
  10. 塗膜の一部と酸化皮膜除去液とを接触させることにより、導電領域と非導電領域とにパターニングされた透明導電膜を製造する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の透明導電膜の製造方法。
  11. 塗膜の一部と酸化皮膜除去液との接触を、
    塗膜上にフォトリソグラフィー法によりパターン状レジスト膜を形成した後に、パターン状レジスト膜および塗膜を含む積層体と酸化皮膜除去液とを接触させる
    ことにより行う、請求項10に記載の透明導電膜の製造方法。
  12. 塗膜の一部と酸化皮膜除去液との接触を、
    塗膜上に、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、リバースオフセット印刷、グラビア印刷およびフレキソ印刷から選択される少なくとも1種の印刷方法により、酸化皮膜除去液をパターン状に塗布する
    ことにより行う、請求項10に記載の透明導電膜の製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法により得られた透明導電膜。
  14. 請求項10〜12のいずれか一項に記載の製造方法により得られた、導電領域と非導電領域とにパターニングされた透明導電膜であって、以下の(1)〜(2)を満たす透明導電膜。
    (1)導電領域の表面抵抗値が10〜1,000Ω/□である。
    (2)導電領域の表面抵抗値R1と非導電領域の表面抵抗値R2との比(R2/R1)
    が1000以上である。
  15. 以下の(3)〜(5)をさらに満たす請求項14に記載の透明導電膜。
    (3)導電領域の全光線透過率が75%以上である。
    (4)導電領域のヘイズが5%以下である。
    (5)導電領域の全光線透過率と非導電領域の全光線透過率との差の絶対値、および
    導電領域のヘイズと非導電領域のヘイズとの差の絶対値が、3%以下である。
  16. 請求項14または15に記載の透明導電膜を有するデバイス素子。
JP2012217166A 2012-09-28 2012-09-28 透明導電膜の製造方法、透明導電膜およびデバイス素子 Pending JP2014072041A (ja)

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