JP2014068142A - 圧電スピーカー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】湾曲した振動板11の少なくとも片面に、圧電積層体が接合した圧電スピーカーであって、(i)圧電積層体は、導電層2とポリ乳酸からなる配向フィルム層1とが交互に積層され、かつ配向フィルム層を介して隣り合う導電層は、一方は負極10に、他方は正極9に短絡し、隣り合う配向フィルム層の間に導電層が存在する有効電極部分6と、導電層を介することなく隣り合う配向フィルム層が存在する不動部分7,8とを有すること、(ii)圧電積層体と振動板とは、圧電積層体の有効電極部分で接合され、不動部分は接合されていないこと、そして(iii)各導電層に挟まれた配向フィルム層は、電流を流した際に、伸縮方向が同方向になるように積層されており、圧電積層体の伸縮変位によって振動板に反りを発生させ、曲げ振動により音を出す。
【選択図】図4
Description
また、特許文献2では、高分子圧電シートに主面に沿った方向に有効電極部分を設け、その有効電極部分を分割して隣り合う有効電極部分に当該圧電シートの厚み方向に生じる電界ベクトルが互いに逆向きになるように、電荷を印加することで、四角形の圧電シートの4辺を固定しても、圧電シートが湾曲して音を出力できる圧電スピーカーが提案されている。また、圧電シートを構成する高分子として、キラル高分子であるL−ポリ乳酸が提案されている。
さらにまた、本発明者らは以前、特許文献3や特許文献4で、ポリL−乳酸やポリD−乳酸からなる層を積層することで変位量を大きくできることを提案している。
(1)湾曲した振動板の少なくとも片面に、圧電積層体が接合した圧電スピーカーであって、
(i)圧電積層体は、導電層とポリ乳酸からなる配向フィルム層とが交互に積層され、かつ配向フィルム層を介して隣り合う導電層は、一方は負極に、他方は正極に短絡し、圧電積層体の振動板と接合しない最表面には導電層が積層され、隣り合う配向フィルム層の間に導電層が存在する有効電極部分と、導電層を介することなく隣り合う配向フィルム層が存在する不動部分とを有すること、
(ii)圧電積層体と振動板とは、圧電積層体の有効電極部分で振動板に接合され、不動部分は振動板に接合されていないこと、そして
(iii)各導電層に挟まれた配向フィルム層は、電流を流した際に、伸縮方向が同方向になるように積層されており、圧電積層体の伸縮変位によって振動板に反りを発生させ、曲げ振動により音を出す圧電スピーカー。
(2)圧電積層体は、振動板と接合する最表面が配向フィルム層で、他方の最表面の位置に導電層を有する上記(1)記載の圧電スピーカー。
(3)圧電積層体が2つの向かい合う辺を有する多角形であり、該向かい合う辺の一方が負極部分、他方が正極部分である上記(1)記載の圧電スピーカー。
(4)振動板の両表面に、電流を流した際に伸縮方向が逆方向になる圧電積層体が接合されている上記(1)記載の圧電スピーカー。
(5)圧電積層体は、不動部分の面積が有効電極部分の面積に対し0.1%以上である上記(1)記載の圧電スピーカー。
(6)配向フィルム層の層数が3以上である上記(1)記載の圧電スピーカー。
(7)隣り合う配向フィルム層が、一方がポリL−乳酸からなる配向フィルム層Lで、他方がポリD−乳酸からなる配向フィルム層Dである上記(1)記載の圧電スピーカー。
(8)圧電積層体の厚みが、3〜500μmである上記(1)記載の圧電スピーカー。
(9)配向フィルム層の厚みがそれぞれ独立に、25μm以下である上記(1)記載の圧電スピーカー。
(10)振動板は、ヤング率が3GPa以上の熱可塑性高分子フィルムである上記(1)記載の圧電スピーカー。
(11)振動板は、全光線透過率が85%以上の熱可塑性高分子フィルムである上記(1)記載の圧電スピーカー。
本発明の圧電スピーカーは、圧電積層体を湾曲した振動板の少なくとも片面に接合した圧電スピーカーであって、以下の(i)〜(iii)の特徴を有する。
(i)圧電積層体は、導電層(2)とポリ乳酸からなる配向フィルム層(1)が交互に積層され、かつ配向フィルム層(1)を介して隣り合う導電層(2)は、一方は負極に、他方は正極に短絡し、圧電積層体の振動板と接合しない最表面には導電層が積層され、隣り合う配向フィルム層の間に導電層が存在する有効電極部分(6)と、導電層を介することなく隣り合う配向フィルム層が存在する不動部分(7,8)とを有すること、
(ii)圧電積層体(5)と振動板(11)とは、圧電積層体(5)の有効電極部分(6)で接合され、不動部分(7,8)は振動板(11)に接合されていないこと、そして
(iii)各導電層(2)に挟まれた配向フィルム層は、電流を流した際に、伸縮方向が同方向になるように積層されており、配向フィルム層(1)のフィルム面方向の伸縮によって振動板(11)を反らせ、曲げ振動によって音を出すこと。
[配向フィルム層]
<ポリ乳酸>
配向フィルム層を構成するポリ乳酸としては、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸が好ましく挙げられる。
本発明におけるポリL−乳酸は、実質的にL−乳酸単位のみから構成されるポリL−乳酸(以下、PLLAと省略する場合がある。)や、L−乳酸とその他のモノマーとの共重合体であることが好ましく、特に、実質的にL−乳酸単位だけで構成されるポリL−乳酸であることが好ましい。また、本発明におけるポリD−乳酸は、実質的にD−乳酸単位のみから構成されるポリD−乳酸(以下、PDLAと省略する場合がある。)や、D−乳酸とその他のモノマーとの共重合体が好ましく、特に、実質的にD−乳酸単位だけで構成されるポリD−乳酸であることが好ましい。
なお、ここで「主たる」とは、各層を構成する樹脂の質量に対して、ポリ乳酸(層LにおいてはポリL−乳酸、層DにおいてポリD−乳酸)が60質量%以上、好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であることを示す。また、「実質的に」とは、ポリL−(D―)乳酸におけるL−(D−)乳酸単位の量が90モル%以上であることを示す。
ポリL−(D−)乳酸におけるL−(D−)乳酸単位の量は、結晶性の観点、また変位量の向上効果を高くするという観点、およびフィルム耐熱性などの観点より、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。すなわち、L−(D−)乳酸単位以外の単位の含有量は、好ましくは0〜10モル%、より好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
かかるポリ乳酸は、結晶性を有していることが好ましく、前述のような配向・結晶の態様とすることが容易となり、変位量の向上効果を高くすることができる。またその融点は150℃以上190℃以下であることが好ましく、160℃以上190℃以下であることがさらに好ましい。このような態様であるとフィルムの耐熱性に優れる。
本発明で用いられるポリL−乳酸、ポリD−乳酸には、本発明の目的を損なわない範囲で所望により、L−乳酸、D−乳酸以外の共重合成分を含有させることができる。このとき、ポリ乳酸の結晶性を大きく損なわない範囲で含有させることが好ましい。かかる共重合成分は、特に限定されるものではない。
また、ポリL−乳酸およびポリD−乳酸を製造する方法は特別に限定されるものではなく、従来公知の方法が好適に使用できる。例えば、L−乳酸またはD−乳酸を直接脱水縮合する方法、L−またはD−乳酸オリゴマーを固相重合する方法、L−またはD−乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後、溶融開環重合する方法等が例示される。なかでも、直接脱水縮合方法、あるいはラクチド類の溶融開環重合法により得られるポリ乳酸が、品質、生産効率の観点から好ましく、中でもラクチド類の溶融開環重合法が特に好ましく選択される。
ところで、本発明における配向フィルム層は、耐衝撃性改良剤を、配向フィルム層の質量を基準として、0.1〜10質量%の範囲で含有させていることが好ましい。本発明における耐衝撃性改良剤とは、ポリ乳酸の耐衝撃性改良に用いることのできるものであれば特に制限されず、室温でゴム弾性を示すゴム状物質のことであり、例えば、下記の各種耐衝撃性改良剤などが挙げられる。
本発明において、耐衝撃性改良剤としては、本発明の効果の点で、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体がより好ましい。なお、本発明において、多層構造重合体とは、コア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成され、また、隣接する層が異種の重合体から構成される、いわゆるコアシェル型と呼ばれる構造を有する重合体である。また、多層構造重合体を構成する層の数は、特に限定されるものではなく、2層以上であればよく、3層以上または4層以上であってもよい。
本発明で用いられる多層構造重合体としては、上述した条件を満たすものとして、市販品を用いてもよく、また、公知の方法により作製することもでき、市販品としては、例えば、三菱レイヨン製“メタブレン”、カネカ製“カネエース”、ロームアンドハース製“パラロイド”、ガンツ化成製“スタフィロイド”またはクラレ製“パラフェイス”などを挙げることができ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。また、公知の方法としては、乳化重合法がより好ましい。製造方法としては、まず所望の単量体混合物を乳化重合させてコア粒子を作った後、他の単量体混合物をそのコア粒子の存在下において乳化重合させてコア粒子の周囲にシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。さらに該粒子の存在下において他の単量体混合物を乳化重合させて別のシェル層を形成するコアシェル粒子を作る。このような反応を繰り返して所望のコア層とそれを覆う1以上のシェル層から構成される多層構造重合体を得る。各層の(共)重合体を形成させるための重合温度は、各層とも0〜120℃が好ましく、5〜90℃がより好ましい。
本発明で用いられる多層構造重合体としては、本発明の効果の点で、ガラス転移温度が0℃以下の構成成分を含むものであることがより好ましく、−30℃以下の構成成分を含むものであることがさらに好ましく、−40℃以下の構成成分を含むものであることが特に好ましい。なお、本発明において、上記ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、昇温速度20℃/分で測定した値である。
本発明において、多層構造重合体の平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、本発明の効果の点で、10〜10000nmであることが好ましく、さらに、20〜1000nmであることがより好ましく、50〜700nmであることが特に好ましく、100〜500nmであることが最も好ましい。
以下、本発明における配向フィルム層の好ましい態様について、説明する。
また、本発明のポリ乳酸配向フィルムの破断強度は、主配向軸方向に直交する方向は、80MPa以下であることが好ましい。破断強度が上記上限以下にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。主配向軸方向に直交する方向の破断強度が上記上限よりも高い場合は、共振特性の向上効果が低くなる。他方、主配向軸方向に直交する方向の破断強度の下限は特に制限されないが、製膜後の取り扱いなどの点から、30MPa以上、さらに50MPa以上であることが好ましい。
本発明における配向フィルム層の各層の厚みは、厚すぎると剛性が高くなりすぎて共振特性を奏さなくなってしまう傾向を考慮して、共振特性を奏する程度の厚さであれば特に限定されない。共振特性の観点からは薄い方が好ましい。特に、積層数を増加させる際には、各層の厚さを薄くして、積層フィルム全体としての厚さが厚くなりすぎないようにすることが好ましい。このような観点から、配向ポリ乳酸フィルム層の1層の厚みは、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。厚みが上記数値範囲にあると、共振特性の向上効果を高くすることができる。他方、取り扱い性や剛性の観点からは厚い方が好ましく、例えば2μm以上が好ましく、さらに好ましくは3μm以上である。
ところで、本発明における配向フィルム層は、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の添加剤や機能剤を含有していてもよく、例えば、耐加水分解抑制剤、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、蛍光蒼白剤、可塑剤、架橋剤、紫外線吸収剤、その他の樹脂等を必要に応じて添加することができる。
かかるカルボキシル基封止剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、イソシアネート化合物から選択される少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもカルボジイミド化合物が好ましい。
カルボキシル基封止剤の使用量は、各層を構成する樹脂において、ポリ乳酸100質量部あたり、0.01〜10質量部が好ましく、0.03〜5質量部がさらに好ましい。本発明においては、さらに封止反応触媒を使用してもよい。
<ポリ乳酸の製造方法>
本発明におけるポリL−乳酸およびポリD−乳酸を製造する方法は特別に限定されるものではなく、従来公知の方法が好適に使用できる。例えば、L−乳酸またはD−乳酸を直接脱水縮合する方法、L−またはD−乳酸オリゴマーを固相重合する方法、L−またはD−乳酸を一度脱水環化してラクチドとした後、溶融開環重合する方法等が例示される。なかでも、直接脱水縮合方法、あるいはラクチド類の溶融開環重合法により得られるポリ乳酸が、品質、生産効率の観点から好ましく、中でもラクチド類の溶融開環重合法が特に好ましく選択される。
これらの製造法において使用する触媒は、ポリ乳酸が前述した所定の特性を有するように重合させることができるものであれば特に限定されず、それ自体公知のものを適宜使用できる。
得られたポリL−乳酸およびポリD−乳酸は、従来公知の方法により、重合触媒を除去したり、失活剤を用いて重合触媒の触媒活性を失活、不活性化したりするのが、フィルムの溶融安定性、湿熱安定性のために好ましい。
失活剤を用いる場合、その使用量は、特定金属含有触媒の金属元素1当量あたり0.3から20当量、より好ましくは0.5から15当量、さらに好ましくは0.5から10等量、特に好ましくは0.6から7当量とすればよい。失活剤の使用量が少なすぎると、触媒金属の活性を十分に低下させることができないし、また過剰に使用すると、失活剤が樹脂の分解を引き起こす可能性があり好ましくない。
上記の方法により得られたポリ乳酸に、所望により前述の耐衝撃性改良剤、カルボキシル基封止剤、滑剤、その他の添加剤等を配合し、ポリ乳酸を、押出機において溶融し、ダイから冷却ドラム上に押し出す。なお、押出機に供給するポリ乳酸は、溶融時の分解を抑制するため、押出機供給前に乾燥処理を行い、水分含有量を100ppm以下程度にすることが好ましい。
押出機における樹脂温度は、ポリ乳酸が十分に流動性を有する温度、すなわち、ポリ乳酸の融点をTmとすると、(Tm+20)から(Tm+50)(℃)の範囲で実施されるが、ポリ乳酸が分解しない温度で溶融押し出しするのが好ましく、かかる温度としては、好ましくは200〜260℃、さらに好ましくは205〜240℃、特に好ましくは210〜235℃である。上記温度範囲であると流動斑が発生しにくい。
ダイから押し出した後、フィルムを冷却ドラムにキャスティングして未延伸フィルムを得る。その際、静電密着法により電極より静電荷を印加させることによって冷却ドラムに十分に密着させて冷却固化するのが好ましい。この時、静電荷を印加する電極はワイヤー状或いはナイフ状の形状のものが好適に使用される。該電極の表面物質は白金であることが好ましく、フィルムより昇華する不純物が電極表面に付着するのを抑制することができる。また、高温空気流を電極或いはその近傍に噴きつけ電極の温度を170〜350℃に保ち、電極上部に排気ノズルを設置することにより不純物の付着を防ぐこともできる。
前記で得られた未延伸フィルムは、一軸方向に延伸する。延伸方向は特に制限されないが、製膜方向、幅方向または製膜方向と幅方向に対して、それぞれ45度となるような斜め方向に延伸するのが好ましい。かかる延伸を行うには、未延伸フィルムを延伸可能な温度、例えばポリ乳酸のガラス転移点温度(Tg)以上(Tg+80)℃以下の温度に加熱して延伸する。
主配向方向の延伸倍率は、好ましくは3倍以上、より好ましくは3.5倍以上、さらに好ましくは4.0倍以上、特に好ましくは4.5倍以上である。延伸倍率を上記上限以上にとすることによって変位量の向上効果を高くすることができる。一方、延伸倍率の上限は特に制限されないが、製膜性の点から10倍以下であることがこのましく、さらに8倍以下、特に7倍以下であることが好ましい。他方、主配向方向と直交する方向は、延伸を行う必要はないが、前述の破断強度の関係を満足する範囲で延伸を施してもよい。その場合の延伸倍率は1.5倍以下が好ましく、さらに1.3倍以下が好ましい。
上記で得られた延伸フィルムは、熱処理することが好ましい。熱処理温度は、前述の延伸温度よりも高く、樹脂の融点(Tm)未満の温度で行えばよく、好ましくはガラス転移点温度(Tg+15)℃以上(Tm−10)℃以下で、圧電特性をより高くすることができる。熱処理温度が低い場合は、変位量の向上効果が低くなる傾向にあり、他方、高い場合は、フィルムの平面性や機械特性に劣る傾向にあり、また変位量の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、熱処理温度は、さらに好ましくは(Tg+20)℃以上(Tm−20)℃、特に好ましくは(Tg+30)℃以上(Tm−35)℃である。また、熱処理時間は、好ましくは1〜120秒、さらに好ましくは2〜60秒であり、変位量の向上効果を高くすることができる。
さらに本発明においては、熱処理工程において弛緩処理して、熱寸法安定性を調整することも可能である。
かくして得られた配向ポリ乳酸フィルム層は、所望により従来公知の方法で、例えば表面活性化処理、例えばプラズマ処理、アミン処理、コロナ処理を施すことも可能である。
なかでも、後述の導電層との密着性を向上し、圧電積層体の耐久性を高めるという観点から、配向フィルム層の少なくとも片面、好ましくは両面に、コロナ処理を施すことも好ましい。かかるコロナ処理の条件としては、例えば電極距離を5mmとした際に、好ましくは1〜20kV、さらに好ましくは5〜15kVの電圧で、好ましくは1〜60秒、さらに好ましくは5〜30秒、特に好ましくは10〜25秒行うとよい。また、かかる処理は大気中で行うことができる。
本発明における導電層は、電圧印加した際に圧電特性を示すことができる程度の導電性を有していれば、その種類は特に限定されないが、より好適に圧電特性および共振特性を示すことができるという観点から、金属または金属酸化物からなる層および導電性高分子からなる層であることが好ましい。
かかる金属または金属酸化物としては、特に限定はされないが、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属、または上記群より選択される少なくとも1種の金属の酸化物が好ましく用いられる。また、金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属、または上記群に示された他の金属の酸化物を含んでいてもよい。例えば、アルミニウム、金、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズ等が好ましく用いられる。導電性高分子としては、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、ポリピロール系が挙げられ、必要に応じて導電性や透明性を考慮した選定を行えば良い。例えば、ディスプレイパネルなどに使用する際には透明性に優れたポリチオフェン系、ポリアニリン系高分子が好ましく用いられる。
導電層の各層の厚さは特に制限されないが、その表面抵抗値が1×104Ω/□以下、好ましくは5×103Ω/□以下、さらに好ましくは1×103Ω/□以下となるような厚みを選択すればよく、例えば、厚さ10nm以上とするのが好ましい。さらに、導電性と、層形成のし易さの観点から、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmである。厚さが薄すぎると、表面抵抗値が高くなる傾向にあり、かつ連続被膜になり難くなる。他方、厚すぎると、品質過剰であり、また積層フィルムの形成が困難となったり、積層フィルムの層間の強度が弱くなったりする傾向にある。
ところで、導電層は、図1に示すように、配向フィルム層の全面に形成するのではなく、マージンを設ける。このマージンは端面に近い部位に設けることが振動板をより効率的に共振させる観点から好ましい。マージンを有する側においては電極と導電層とが短絡せず、マージンを有しない側においては電極と導電層とが短絡した構成となることが好ましい。このような構成とすることにより、配向フィルム層を挟んだ各導電層は、簡便に正負が互いに異なるように電極と短絡させることができ、しかも、後述の通り、このマージンの部分が不動部分となり、この不動部分を振動板と接合させないことで、より効率的に振動板を共振させることができる。
本発明における圧電積層体について、その一例を図1〜図5を用いて説明する。
図1は本発明における配向フィルム層(1)と導電層(2)との積層体A(3)および積層体B(4)の一例である。
図2は本発明における圧電積層体を構成する配向フィルム層(1)と導電層(2)の積層の一例で、図1の積層体A(3)および積層体B(4)を複数積層するときの概略図である。
図3は本発明における圧電積層体を構成する配向フィルム層(1)と導電層(2)の積層の一例で、図1の積層体A(3)と積層体B(4)とを複数積層したときの圧電積層体の概略図である。
図4および図5は本発明の圧電スピーカーの断面図であり、圧電積層体が有効電極部分(6)で振動板に接合され、不動部分(7)は振動板(11)に接合されていない概略図である。なお、図4および5に示す圧電スピーカーの断面図において、これを構成する各要素の厚みは誇張されて図示されている。
そして、これら図中の符号1は配向フィルム層、符号2は導電層、符号3は左側にマージンを設けた積層体A、符号4は右側にマージンを設けた積層体B、符号5は圧電積層体、符号6は有効電極部分、符号7と8は不動部分、符号9は正極に短絡される電極、符号10は負極に短絡される電極、符号11は振動板、符号12は接着剤層など圧電積層体と振動板との接合部分を示す。図4は圧電積層体が振動板の片面に接合された図であり、図5は圧電積層体が振動板(11)の表裏両面に接合された図である。
そして、これら導電層と配向フィルム層が交互に、かつ配向フィルム層を介して隣り合う導電層は、一方は負極に、他方は正極に短絡できるように積層し、少なくとも振動板と接合しない最表面には導電層を積層すればよい。このような積層とすることで、隣り合う配向フィルム層に、その厚み方向に逆の電荷を付加することができる。
また、図4および5の圧電積層体で見たとき、正極に短絡する導電層と負極に短絡する導電層の両方が存在する有効電極部分6と、少なくとも一方の導電層がない不動部分7または8とを有する。この際、圧電積層体の端部に、負極の導電層が存在し、正極の導電層が存在しない不動部分7と、正極の導電層が存在し、負極の導電層が存在しない不動部分8とを配置することで、図4および5に示すように、不動部分が存在する端部に負極に短絡させる電極9を設け、その不動部分が存在する端部に正極に短絡させる電極10を設けるようにすることで、各導電層を正極と負極に簡便に短絡させることができる。
そして、配向フィルム層Lと配向フィルム層Dを用いる場合、図2の符号3で示される積層体Aを構成する配向フィルム層を配向フィルム層L、符号4で示される積層体Bを構成する配向フィルム層を配向フィルム層Dとなるように積層すればよい。
また、配向フィルム層と導電層は、厚み1000nmを超える接着剤層を介さずに固着していることが、優れた圧電特性を発現させやすいことから好ましい。かかる観点から、本発明においては、配向フィルム層と導電層は、厚み500nmを超える接着剤層を介さずに固着している態様が好ましく、厚み200nmを超える接着剤層を介さずに固着している態様がさらに好ましい。共振特性の観点から、最も好ましいのは、接着剤層を介さずに配向フィルム層と導電層とが固着している態様である。
本発明においては、上記のような積層構成を有していれば、本発明の目的を阻害しない範囲において、さらにその他の層を有していても良い。例えば、圧電積層体の表面に、積層体の剛性を高めるための、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのような芳香族ポリエステル層を有することができる。一方、圧電特性の観点からは、このような層は、その厚みが薄いことが好ましく、有しないことが特に好ましい。
本発明における圧電積層体は、配向フィルム層の合計層数は3以上であることが好ましい。このような態様とすることで優れた共振特性が得られる。共振特性の観点からは、合計層数は多い程好ましく、好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上である。
一方、上限は特に制限されない。なお、このような数万オーダーの合計総数とするには、例えば巻回コンデンサーのごとく製造すればよい。
本発明における圧電積層体は、圧電特性を有し、ある周波数の電圧を印加することにより振動するものであるが、とりわけPVDFに比べて圧電特性が一方向に揃う配向ポリ乳酸フィルムを選択し、かつそれを積層することで、極めて圧電特性に優れ、大きな運動量(力)を発生させることができる。そのため、かかる現象は、従来の例えばPVDFのような高分子フィルムやポリ乳酸からなる配向フィルムの単層や2層のような積層フィルムでは、電圧印加時に発生させることができる運動量(力)が小さいため、見られない現象である。
本発明において、圧電積層体は、各配向フィルム層の電荷を付加したときのもっとも伸縮の大きい方向が、圧電積層体の厚み方向からみたとき、10度以下の範囲で揃っていることが好ましい。このような態様とすることによって、圧電特性の向上効果を高くすることができる。このような観点から、上記成す角は、より好ましくは5度以下、さらに好ましくは3度以下、特に好ましくは1度以下であり、理想的には0度である。上記のような主配向方向の態様とするには、サンプリング時に同方向でサンプリングしたり、積層時に同方向となるように積層したりすればよい。
本発明における圧電積層体は、例えば配向フィルムが、配向フィルム層Lと配向フィルム層Dを交互に積層する場合、それぞれ別々に形成し、得られた各層の表面に導電層を設けて、層Lと層Dとが交互に、かつ層Lと層Dの間、および得られる圧電積層体の振動板と接合しない最表面に導電層を有する構成となるように積層して固着することにより得ることができる。
また、本発明における圧電積層体が、例えば配向フィルム層Lまたは配向フィルム層Dのいずれかだけである場合は、2つの配向フィルム層L(D)を用意し、一方は表面側に導電層を設け、他方は裏面側や向きを変えて導電層を設け、それぞれ別々に形成し、得られた各層の表面に導電層を設けて、層Lと層Dとが交互に、かつ層Lと層Dの間、および得られる圧電積層体の振動板と接合しない最表面に導電層を有する構成となるように積層して固着することにより得ることができる。
上記により得られた配向フィルム層Lおよび配向フィルム層Dの表面に、導電層を形成する方法は、従来公知の導電層の形成方法であれば特に限定されないが、優れた導電性を有する導電層を均一に、容易に得ることができるという観点から、蒸着法またはスパッタリング法を採用することが好ましい。
また、導電層を配向フィルム層の両面に形成してもよいが、密着性の観点からは、片面のみに導電層を形成し、それらを圧着することが好ましい。
上記により得られた導電層を有する配向フィルムを、本発明が規定する積層構成となるように積層して積層体を作成し、熱ラミネートにより固着する。ここで熱ラミネートは、接着剤層を用いずに行うことが好ましい。また、前述の耐衝撃性改良剤を含有させることにより、より圧着性を高めることができる。
かかる熱ラミネートにおける温度条件は、(Tg−5)〜(Tsm+20)℃とすることが好ましい。ここでTgは、積層体の形成に用いる配向フィルム層Lを構成する樹脂Lのガラス転移温度および配向フィルムDを構成する樹脂Dのガラス転移温度のうち、最も高いガラス転移温度を示す。また、Tsmは、積層体の形成に用いる配向フィルムLのサブピーク温度および配向フィルムDのサブピーク温度のうち、最も低いサブピーク温度を示す。なお、サブピーク温度とは、フィルム製造プロセスにおける熱固定温度に起因する温度であるである。上記温度条件を採用することにより、優れた共振特性を奏する圧電積層体を得ることができる。また、同時に、積層体の各層の密着性に優れる。温度が低すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方高すぎると配向が崩れてしまい共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい温度条件はTgからTsm+15であり、特に好ましくはTg+10〜Tsm+10である。
また、圧力条件は、十分な圧着ができ、かつ配向ポリ乳酸フィルムの配向が崩れない条件であれば特に制限されず、例えば1〜100MPaとすることが好ましい。これにより優れた共振特性を有しながら、密着性に優れた積層体を得ることができる。圧力が低すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方高すぎると共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい圧力条件は2〜80MPaであり、特に好ましくは2〜50MPaである。
以上のような温度条件および圧力条件において、10〜600秒の熱ラミネートを行うことが好ましい。これにより優れた共振特性を有しながら、密着性に優れた積層体を得ることができる。時間が短すぎると密着性に劣る傾向にあり、他方長すぎると共振特性に劣る傾向にある。このような観点より、さらに好ましい時間条件は30〜300秒であり、特に好ましくは60〜180秒である。
そのような観点から、圧電積層体は2つの向かい合う辺を有する多角形であり、該向かい合う辺の一方が不動部分7、他方が不動部分8で、それぞれが正極と負極に短絡されていることが好ましい。
また、本発明における圧電積層体は、前述のとおり、その形状は多角形で特に制限されないが、前述のようなロールtoロールで製造したときに、製品とならない部分を極力少なくできることから平行四角形であることが好ましく、特に長方形や正方形は有効電極部分のみを接合する工程が容易になることから好ましい。また、圧電積層体が平行四辺形の場合、前述のとおり、向かい合う一対の辺において、一方の辺が不動部分1、他方の辺が不動部分2であることが好ましい。
そのような観点から、本発明の圧電積層体の好ましい形状の一部について、図7−10に例示する。
本発明における振動板(11)はヤング率が圧電振動板よりやや硬いことが、より振動板を共振させやすいことから、3GPa以上が好ましく、圧電積層体を接合する点から、接着性が良いものが好ましい。また、透明性を有することでタッチパネルや携帯電話などディスプレイ上への配置を可能にすることから、全光線透過率は85%以上が好ましい。以上の観点から、振動板の材質としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などが好ましく例示でき、さらにPLA、PET、PENが好ましい。
また、振動板の形状は圧電積層体による伸縮変形を反りに変換できるように湾曲していることが必要である。湾曲の度合いは、特に制限されないが、曲率半径で好ましくは2〜50cm、より好ましくは3〜30cm程度である。
また、厚みは圧電積層体と同程度の厚みが好ましい。用いる材質にもよるが、ポリエステルなどのプラスチックフィルムの場合、3〜500μmの範囲が好ましく、さらに25〜300μmの範囲が好ましい。
本発明における接合部は、特に制限されず、圧電積層体(5)の振動を振動板(11)に伝えられるように両者を固定できるものであれば特に制限されず、例えば接着剤を用いた接合でも、圧電積層体と振動板とを圧着する方法でもよい。
接着剤を用いる場合は、使用する環境で剥離することがなく、かつ圧電積層体の振動を効率よく振動板に伝えられ、本目的を損なわない接着剤であれば特に制限するものではなく、中でも汎用性や取扱い易さの観点からエポキシ樹脂系接着剤や酢酸ビニル樹脂系接着剤が好ましい。特に酢酸ビニル樹脂系接着剤は再剥離性があり、作業のしやすさの点から好ましい。
本発明における圧電積層体は、前述の通り、各導電層を介して隣り合う樹脂層に逆方向の電界がかかるように電極に短絡される。電極としては特に制限されずそれ自体公知のものを採用でき、例えばアルミニウム、金、銀、銅が例示でき、これらの中でも、価格や取扱いの容易さからから、銀ペーストが好ましい。また、一般的に用いられるメタリコンを用いてもよく、更にはもっと簡便に各積層体を金属で貫通させて短絡させるような手段を用いてもよい。
本発明の圧電スピーカーは、前述の圧電積層体(5)を湾曲した振動板(11)の少なくとも片面に接合した圧電スピーカーである。
この際、圧電積層体(5)と振動板(11)とは、圧電積層体(5)の有効電極部分(6)で接合され、不動部分(7および8)は振動板(11)に接合されていないことが必要である。この理由としては、圧電積層体の厚み方向に見たとき、振動板に接合されていることから、振動板に近い側の配向フィルム層(1)の伸縮は制限され、振動板に遠い側の配向フィルム層の伸縮は比較的制限されずに大きいままである。その結果、図12のように圧電積層体の伸縮は、フィルム層のフィルム面方向に沿った方向よりも振動板に近づくような方向に変形するようになる。結果として振動板に反りを与えることができる。本発明の特徴は、圧電積層体の不動部分を接合しないことで、各配向フィルム層の伸縮を、振動板の反りとして効率よく伝搬できることを見出したのである。
一方図13のように、前述の不動部分7や8を、振動板と接合すると圧電積層体の伸縮のバラツキが、抑制され、振動板に効率よく反りを付与できない。
また、このような不動部分7や8を接合しないことで、より有効電極部分における配向フィルム層の伸縮による振動板の反りを大きくするには、有効電極部分は連続し、不動部分7や8で有効電極部分を挟んだ構造であることが好ましい。そのような観点から、前述の通り、圧電積層体が多角形の場合、前述のとおり、向かい合う一対の辺において、一方の辺が不動部分7、他方の辺が不動部分8であることが好ましく、また正方形や長方形などの四角形の場合も同様に、向かい合う一対の辺において、一方の辺が不動部分7、他方の辺が不動部分8であることが好ましい。
図14に本発明における圧電積層体(5)と振動板(11)を接合させた圧電スピーカーの一例を示す。また、接合する圧電積層体の位置に制限はなく、共振させたい周波数によって適宜選択すればよい。
(1)各層の物性
積層体の端部をしごく等して切欠をつくり、各層を剥離し各層の物性を評価した。
(1−1)主配向方向
エリプソメーター(型式M−220;日本分光)を用い、得られたフィルムを550nm単色光の入射角度を変化させた透過光測定に供し、フィルムを固定した試料台を、光軸を中心に光軸に対して垂直な面内にて回転させて、面内方向の最も屈折率の高い方向を求め、その方向を主配向軸とした。
(1−2)ヤング率
フィルムを150mm長×10mm幅に切り出した試験片を用い、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いてヤング率を求めた。なお、測定は温度23℃、湿度65%RHに調節された室内において、チャック間100mmになるようサンプルを装着し、JIS−C2151に従って引張速度10mm/minの条件で行った。得られた荷重―伸び曲線の立ち上り部接線の傾きよりヤング率を計算した。
(1−3)全光線透過率
JIS K7361に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムの全光線透過率(単位:%)を測定した。
(1−4)表面抵抗率
三菱化学社製、商品名:Lorester MCP−T600を用いて、JIS K7194に準拠して測定した。測定は、1つのフィルムから3つの測定用サンプル片を採取し、それぞれ任意の5箇所について実施し、それらの平均値を表面抵抗率(単位:Ω/□)とした。
(1−5)破断強度
フィルムを150mm長×10mm幅に切り出した試験片を用い、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いて破断強度を求めた。なお、測定は温度23℃、湿度65%RHに調節された室内において、チャック間距離100mm、チャック間スピード100mm/分で引張試験を実施した。ここでいう破断強度とは、引張試験を行った際の試料破断時の荷重の値を試験前の試料断面積で除した、単位面積当たりの応力の値を意味する。
図14に示すように、圧電スピーカーの正極と負極とを、交直両用高圧アンプリファイヤ(TREK Inc.社製、商品名:ピエゾドライバ用電源 PZP350)に連結し、電圧200V、電流200mAの交流電流を流し、周波数30Hz〜20KHzの範囲での最大音量を測定した。なお、測定は騒音計(小野測器社製、商品名:高機能型騒音計 LA−2560を用い、圧電スピーカーから前方に3cm離れた場所で行った。音量が大きいほど、圧電スピーカーとして効率が良いことを示す。
真空配管、窒素ガス配管、触媒添加配管、L−ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換した。その後、L−ラクチド30Kg、ステアリルアルコール0.90kg(0.030モル/kg)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10−4モル/1kg)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が溶解した時点で、攪拌を開始、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるため、冷却しながら内温を185℃から190℃に保持し1時間反応を継続した。さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃から210℃で1時間反応を行なった後、攪拌を停止しリン系の触媒失活剤を添加した。
さらに20分間静置して気泡除去をおこなった後、内圧を窒素圧で2から3気圧に昇圧し、プレポリマーをチップカッターに押し出し、重量平均分子量13万、分子量分散1.8のプレポリマーをペレット化した。
さらに、ペレットを押出機で溶解させ、無軸籠型反応装置に15kg/hrで投入し、10.13kPaに減圧して残留するラクチドを低減処理し、それを再度チップ化した。得られたポリL−乳酸(PLLA)は、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%であった。
また、L−ラクチドの代わりにD−ラクチドを使用する以外は参考例1と同様にして、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%のポリD−乳酸(PDLA)を得た。
参考例1で得られたPLLAを、乾燥機を用いて十分に乾燥させた後、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社社製、コアシェル構造体(パラロイドTMBPM−500)を5質量%添加し、押出機に投入し、220℃で溶融し、溶融樹脂をダイより押し出して単層のシート状に成形し、かかるシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを、75℃に加熱したロール群に導き、縦方向に1.1倍に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、75℃に加熱された雰囲気中で横方向に4.0倍に延伸した。その後テンター内で110℃の温度条件で30秒間の熱処理を行い、均一に徐冷して室温まで冷やして7μm厚みの二軸配向ポリL−乳酸単層フィルム(配向フィルムL1)を得た。なお、後述の導電層を形成する側の表面に、カスガ製、高周波電源CG−102型を用いて、電圧10kV、処理時間20秒の条件でコロナ処理を施した。
参考例2で得られたPDLAを用いて、参考例3と同様にして、7μm厚みの二軸配向ポリD−乳酸単層フィルム(配向フィルムD1)を得た。なお、後述の導電層を形成する側の表面に、カスガ製、高周波電源CG−102型を用いて、電圧10kV、処理時間20秒の条件でコロナ処理を施した。
参考例1で得られたPLLAを用い、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社社製、コアシェル構造体(パラロイドTMBPM−500)を添加しなかったほかは、参考例3と同様にして、7μm厚みの二軸配向ポリD−乳酸単層フィルム(配向フィルムL2)を得た。なお、後述の導電層を形成する側の表面に、カスガ製、高周波電源CG−102型を用いて、電圧10kV、処理時間20秒の条件でコロナ処理を施した。
参考例2で得られたPDLAを用い、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社社製、コアシェル構造体(パラロイドTMBPM−500)を添加しなかったほかは、参考例3と同様にして、7μm厚みの二軸配向ポリD−乳酸単層フィルム(配向フィルムD2)を得た。なお、後述の導電層を形成する側の表面に、カスガ製、高周波電源CG−102型を用いて、電圧10kV、処理時間20秒の条件でコロナ処理を施した。
(切り出し)
参考例3で得られた配向フィルムL1および参考例4で得られた配向フィルムD1を、それぞれ延伸の横方向が長辺に対して45度の角度となるように3cm×7cmで切り出した。
(導電層の形成)
次いで、図1に示すように片方の短辺から1cmの領域(3cm×1cmの領域)をマージンとしてマスキングし、蒸着しない箇所を残した上で、残りの領域(3cm×6cmの領域)に表面抵抗値が10Ω/□となるような厚みでアルミ蒸着を施した。なおマージンの位置は配向フィルムL1と配向フィルムD1とで、それぞれ反対側の短辺においてマージンを作成した。
(積層)
得られた蒸着した配向フィルムL1と配向フィルムD1とを交互に各3枚、合計6枚を積層した。そして、110℃20MPaの圧力下で、3分間熱圧着を施し、圧電積層体とした。
(電極)
得られた積層体の両方の短辺に、導電性接着剤(藤倉化成製、ドータイトD550)を塗布して電極(6)を形成し、圧電性構造体を作成した。これにより、各アルミ蒸着層において、マージンを有する側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡せず、マージンを有しない側においてはかかる導電性接着剤とアルミ蒸着層とが短絡した構成となる。
(組立)
電極を形成した圧電積層体の導電層がない側の表面を、振動板として、長さ9cm、幅20cmの幅方向に曲率半径15cmで湾曲したポリスチレンフィルム(厚み200μm)の表裏両面に、エポキシ樹脂系接着剤(Huntsman Advanced Materials社製、商品名:アラルダイト スタンダード)を用いて、図5に示すように有効電極部分のみを貼り合せた。この際、接着剤層の厚みは、平均10μmであった。その後、接着剤を乾燥させた。得られた圧電スピーカーを、前述の(2)の評価方法に用い、スピーカーとしての特性を評価した。結果を表1に示す。
積層する配向フィルム6枚のうち、最表面の1枚に両面蒸着を施し、圧電積層体の両面が導電層になるように積層したほかは、実施例1と同様な操作を行った。この時、両面蒸着するフィルムはそれぞれ反対側短辺がマージンになるよう、アルミ蒸着を施した。
配向フィルムL1および配向フィルムD1を、それぞれ延伸の横方向が長辺に対して45度の角度となるように4cm×6cmで切り出した。次いで短辺から1cmの領域(4cm×1cmの領域)をマージンとしてマスキングし、蒸着しない箇所を残した上で、残りの領域(4cm×5cmの領域)に表面抵抗値が10Ω/□となるような厚みでアルミ蒸着を施し、実施例1と同様な操作を行った。
配向フィルムL1および配向フィルムD1を、それぞれ延伸の横方向が長辺に対して45度の角度となるように3cm×14cmで切り出した。次いで短辺から1cmの領域(3cm×1cmの領域)をマージンとしてマスキングし、蒸着しない箇所を残した上で、残りの領域(3cm×13cmの領域)に表面抵抗値が10Ω/□となるような厚みでアルミ蒸着を施し、実施例1と同様な操作を行った。
配向フィルムL1および配向フィルムD1を、それぞれ延伸の横方向が長辺に対して45度の角度となるように3cm×14cmで切り出した。次いで短辺から0.5cmの領域(3cm×0.5cmの領域)をマージンとしてマスキングし、蒸着しない箇所を残した上で、残りの領域(3cm×13.5cmの領域)に表面抵抗値が10Ω/□となるような厚みでアルミ蒸着を施し、実施例1と同様な操作を行った。
参考例3で得られた配向フィルムL1および参考例4で得られた配向フィルムD1の厚みをそれぞれ20μmとしたほかは、実施例1と同様な操作を行った。
参考例3で得られた配向フィルムL1および参考例4で得られた配向フィルムD1の厚みをそれぞれ5μmとしたほかは、実施例1と同様な操作を行った。
配向フィルムL1および配向フィルムD1が交互となるように、配向フィルム層を20枚としたほかは、実施例1と同様な操作を行った。
配向フィルムL1および配向フィルムD1が交互となるように、配向フィルム層を3枚としたほかは、実施例1と同様な操作を行った。
図4に示すごとく、圧電積層体を振動板の片面のみ貼りあわせたほかは、実施例1と同様な操作を行った。
振動板として厚み200μmのポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製 登録商標:テオネックス 商品名:Q65)を用いたほかは、実施例1と同様な操作を行った。
配向フィルムL1および配向フィルムD1を、それぞれ延伸の横方向が長辺に対して45度の角度となるように3cm×7cmで切り出した。次いで短辺から1cmの領域(3cm×1cmの領域)をマージンとしてマスキングし、塗布しない箇所を残した上で、残りの領域(3cm×6cmの領域)に表面抵抗値が500Ω/□となるような厚みでポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を塗布し、80℃で5分間乾燥させ、導電層を形成した。以降、実施例1と同様な操作を行った。
参考例5で得られた配向フィルムL2および参考例6で得られた配向フィルムD2を用いたほかは、実施例1と同様な操作を行った。ただし、密着性が低かったため、圧着条件は110℃、40MPaの圧力下で、3分間熱圧着とした。
参考例3で得られた配向フィルムL1の一方の面にコロナ処理を施したものを配向フィルムL1−Aとし、もう一方の面にコロナ処理を施したものを配向フィルムL1−Dとした。得られた配向フィルムL1−Aおよび配向フィルムL1−Dを、それぞれ延伸の横方向が長辺に対して45度の角度となるように3cm×7cmで切り出した。次いでコロナ処理を施した面に対して、短辺から1cmの領域(3cm×1cmの領域)をマージンとしてマスキングし、蒸着しない箇所を残した上で、残りの領域(3cm×6cmの領域)に表面抵抗値が10Ω/□となるような厚みでアルミ蒸着を施し、実施例1と同様な操作を行った。
振動板として厚み200μmのステレオコンプレックスポリ乳酸フィルム(帝人株式会社製 登録商標:バイオフロント)を用いたほかは、実施例1と同様な操作を行った。
振動板として厚み200μmのポリエチレン−テレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製 登録商標:テトロン 商品名:HS)を用いたほかは、実施例1と同様な操作を行った。
エポキシ樹脂系接着剤の代わりに、酢酸ビニル樹脂系接着剤(シオノギ製薬社製、商品名:クッションコレクト プラスチック用)を用いて、圧電積層体を振動板に接合したほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。この際、接着剤層の厚みは5μmであった。
図6に示すごとく、圧電積層体を有効電極部分と不動部分の両方で振動板の片面のみに貼り合せたほかは、実施例1と同様な操作を行った。
実施例および比較例の結果を表1に示す。
2 導電層
3 積層体A
4 積層体B
5 圧電積層体
6 有効電極部分
7 不動部分
8 不動部分
9 正電極
10 負電極
11 振動板
12 接着層
13 変位方向
14 主配向軸方向
15 アンプリファイヤ
16 音源
17 導線
18 クリップ
19 アルミ箔
Claims (11)
- 湾曲した振動板の少なくとも片面に、圧電積層体が接合した圧電スピーカーであって、
(i)圧電積層体は、導電層とポリ乳酸からなる配向フィルム層とが交互に積層され、かつ配向フィルム層を介して隣り合う導電層は、一方は負極に、他方は正極に短絡し、圧電積層体の振動板と接合しない最表面には導電層が積層され、隣り合う配向フィルム層の間に導電層が存在する有効電極部分と、導電層を介することなく隣り合う配向フィルム層が存在する不動部分とを有すること、
(ii)圧電積層体と振動板とは、圧電積層体の有効電極部分で振動板に接合され、不動部分は振動板に接合されていないこと、そして
(iii)各導電層に挟まれた配向フィルム層は、電流を流した際に、伸縮方向が同方向になるように積層されており、圧電積層体の伸縮変位によって振動板に反りを発生させ、曲げ振動により音を出す圧電スピーカー。 - 圧電積層体は、振動板と接合する最表面が配向フィルム層で、他方の最表面に導電層を有する請求項1記載の圧電スピーカー。
- 圧電積層体が2つの向かい合う辺を有する多角形であり、該向かい合う辺の一方が負極部分、他方が正極部分である請求項1記載の圧電スピーカー。
- 振動板の両表面に、電流を流した際に伸縮方向が逆方向になる圧電積層体が接合されている請求項1記載の圧電スピーカー。
- 圧電積層体は、不動部分の面積が有効電極部分の面積に対し0.1%以上である請求項1記載の圧電スピーカー。
- 圧電積層体は、配向フィルム層の層数が3以上である請求項1記載の圧電スピーカー。
- 隣り合う配向フィルム層が、一方がポリL−乳酸からなる配向フィルム層Lで、他方がポリD−乳酸からなる配向フィルム層Dである請求項1記載の圧電スピーカー。
- 圧電積層体の厚みが、3〜500μmである請求項1に記載の圧電スピーカー。
- 配向フィルム層の厚みがそれぞれ独立に、25μm以下である請求項1に記載の圧電スピーカー。
- 振動板は、ヤング率が3GPa以上の熱可塑性高分子フィルムである請求項1記載の圧電スピーカー。
- 振動板は、全光線透過率が85%以上の熱可塑性高分子フィルムである請求項1記載の圧電スピーカー。
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