JP2014063128A - 集中度計測装置、プログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】被験者に精神的作業負荷を与えたときの集中度を客観的に計測する。
【解決手段】提示装置20は、被験者に認識対象を提示する。入力装置30は、認識対象に対する精神的作業である作業課題の解答を被験者に入力させる。作業課題は、認識対象が内包している所定の複数種類の認知要素を抽出する作業と、認識対象から抽出した認知要素に適合する選択肢を、認知要素ごとに設定されている選択項目を組み合わせた個数の選択肢から選択する作業とでなる。評価装置10は、認識対象が提示装置20に提示された時点から解答が入力装置30に入力された時点までの解答時間を作業情報として記録する作業記憶部122を備える。また、評価装置10は、複数個の認識対象を提示装置20に提示させる間に作業記憶部122が記録した作業情報の統計量により、被験者の集中度の評価値を算出する評価演算部110を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、オフィスでの執務者のように精神的作業を行う作業者の集中度を客観的に計測することを可能にする集中度計測装置、集中度計測装置の要部の機能をコンピュータを用いて実現するプログラムに関するものである。
従来から、作業者の集中度を客観的に測定する技術として、被験者に基準図形をトレースさせ、基準図形とトレース図形とのずれ量から集中度を算出する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。集中度は基準図形とトレース図形とのずれ量から求めた値に係数を乗じた値として算出され、トレース作業の終了時には、トレース作業中に一定間隔で算出された集中度の変化、平均値、標準偏差、変動係数、最大・最小値などが算出される。また、特許文献1には、基準図形のトレースを行う際にトレース作業を行わせる速度を変化させることによって難易度を変化させることや、基本図形のトレース作業を行うことを通して被験者の生理状態あるいは性格特性を推定することが記載されている。
一方、被験者の認識能力を測定する技術として、有意味な被写体を含む画像を劣化させた画像を被験者に見せ、被験者が被写体を知覚するまでの時間(知覚時間)から能力スコアを算出する技術が知られている(たとえば、特許文献2参照)。さらに、特許文献2には、複数人に画像を見せることによって当該画像を知覚する際の難易度情報をあらかじめ算出しておき、特定の被験者に画像を見せたときの知覚時間と画像の難易度情報とを用いることにより、被験者の能力スコアを算出する技術が記載されている。
特開平9−135826号公報 特開2006−87743号公報
特許文献1に記載された技術は、トレース作業という課題を行っている期間の被験者の集中度の変化を算出することが可能である。しかしながら、トレース作業は精神的作業負荷とは言えないから、特許文献1に記載された技術は、精神的作業を行う作業者の集中度を客観的に計測する目的には適していない。また、トレース作業は被験者の手先の運動能力に依存するから、この点からも集中度を客観的に評価する目的には適していない。ここに、精神的作業負荷は、JIS Z8502に示された意味で用いている。
一方、特許文献2に記載された能力スコアは、個々の画像の意味を知覚するという課題であるから、課題により被験者には精神的作業負荷が与えられるが、特許文献2に記載された技術では、個々の画像の意味を知覚する能力が計測されるに過ぎない。すなわち、特許文献2に記載された技術では、被験者が精神的作業負荷を与えられたときの集中度を能力スコアで評価することはできない。
本発明は、精神的作業負荷が与えられたときの集中度を客観的に計測することを可能にした集中度計測装置を提供することを目的とし、さらに、集中度計測装置の要部の機能をコンピュータを用いて実現するプログラムを提供することを目的とする。
本発明に係る集中度計測装置は、被験者に認識対象を提示する提示装置と、前記認識対象に対する精神的作業である作業課題の解答を前記被験者に入力させる入力装置と、前記認識対象が前記提示装置に提示された時点から前記解答が前記入力装置に入力された時点までの時間と前記解答の正否との少なくとも一方を用いて精神的作業に関する被験者の集中度を評価する評価装置とを備え、前記作業課題は、前記認識対象が内包している所定の複数種類の認知要素を抽出する作業と、前記認識対象から抽出した前記認知要素に適合する選択肢を、前記認知要素ごとに設定されている選択項目を組み合わせた個数の選択肢から選択する作業とであって、前記評価装置は、複数個の前記認識対象を格納している認識対象記憶部と、前記認識対象記憶部に格納された前記認識対象を前記提示装置に提示させる機能と、前記選択項目を組み合わせた選択肢を前記提示装置に提示させる機能とを備える提示制御部と、前記認識対象ごとの解答時間と前記解答の正否との少なくとも一方を作業情報として記録する作業記憶部と、複数個の前記認識対象を前記提示装置に提示させる間に前記作業記憶部が記録した前記作業情報の統計量により、前記被験者の集中度の評価値を算出する評価演算部とを備えることを特徴とする。
この集中度計測装置において、前記評価演算部は、前記解答時間を複数の区間に分け、前記解答時間の総和に対する各区間ごとの前記解答時間の総和の比率を時間占有度とし、前記時間占有度の分布を表す時間占有度ヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、前記時間占有度ヒストグラムを、前記時間占有度がもっとも大きい第1のピークを持つ第1の山部に当て嵌めた第1の対数正規分布の確率密度関数と、前記時間占有度が次に大きい第2のピークを持つ第2の山部に当て嵌めた第2の対数正規分布の確率密度関数との重ね合わせとして近似する当て嵌め部と、第1の対数正規分布の確率密度関数から求められる期待値を特徴量として抽出し、かつ当該特徴量と前記解答の総数との積を集中時間として算出し、さらに前記計測期間に対する前記集中時間を前記評価値として算出する計算部とを備えることが好ましい。
この集中度計測装置において、前記計算部は、前記計測期間から前記集中時間を減算した値を、前記計測期間における非集中時間として求めることが好ましい。
この集中度計測装置において、前記認識対象は3桁以上の数字であり、前記認知要素は当該数字の各桁の数字であり、前記選択項目は、複数の数字を含みかつ3種類以上のグループに分けた数字群であって、前記作業が、前記認知要素をそれぞれが属する数字群に分類する作業であることが好ましい。
この集中度計測装置において、前記認識対象は、3種類以上の前記認知要素が抽出可能となるように提示される単語であることが好ましい。
この集中度計測装置において、前記被験者の環境のうち集中度に影響する環境要素のうちの少なくとも1種類を計測する環境センサと、前記環境センサが計測した環境要素を前記評価演算部が算出した前記評価値と対応付けて記録する結果記憶部とをさらに備えることが好ましい。
この集中度計測装置において、前記提示装置および前記入力装置は、前記評価装置と一体に設けられていることが好ましい。
本発明に係るプログラムは、認識対象を提示装置に提示し、前記認識対象が内包している所定の複数種類の認知要素を抽出する作業と、前記認知要素ごとに設定されている選択項目を組み合わせた個数の選択肢から前記認識対象から抽出した前記認知要素に適合する選択肢を選択する作業とを作業課題として、被験者に前記認識対象に対する精神的作業である作業課題の解答を入力装置から入力させ、前記認識対象が提示された時点から前記解答が入力された時点までの時間と前記解答の正否との少なくとも一方を用いて精神的作業に関する被験者の集中度を評価する評価装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、複数個の前記認識対象を格納している認識対象記憶部と、前記認識対象記憶部に格納された前記認識対象を提示装置に提示させる機能と、前記選択項目を組み合わせた選択肢を前記提示装置に提示させる機能とを備える提示制御部と、前記認識対象ごとの解答時間と前記解答の正否との少なくとも一方を作業情報として記録する作業記憶部と、複数個の前記認識対象を前記提示装置に提示させる間に前記作業記憶部が記録した前記作業情報の統計量により、前記被験者の集中度の評価値を算出する評価演算部とを備える評価装置として機能させるものである。
本発明の構成によれば、複数の認知要素を内包している認識対象を被験者に提示し、認知要素ごとに設定されている選択項目の組合せとして示される選択肢の中から被験者に正解を選択させているから、被験者に精神的作業負荷が与えられる。また、複数個の認識対象について求めた解答時間と解答の正否との少なくとも一方である作業情報の統計量を、被験者の集中度の評価値に用いるから、精神的作業負荷が与えられたときの集中度が客観的に計測される。
実施形態1を示すブロック図である。 (a)は同上の認識対象の例を示す図、(b)は同上の入力装置の表示例を示す図である。 (a)は同上の認識対象の他例を示す図、(b)は同上の入力装置の表示例を示す図である。 同上における経過時間と解答時間との関係を示す図である。 同上に用いる時間占有度ヒストグラムの例を示す図である。 実施形態2に用いるヒストグラムの例を示す図である。 他の構成例を示すブロック図である。
以下に説明する実施形態は、被験者がオフィスにおける執務者である場合を想定している。オフィスにおける執務者は、身体の動きによる作業結果を得る身体的作業ではなく、書類作成、情報管理、分類作業などのように、知識を用いて行う精神的作業ないし知的作業を主として行う。精神的作業の生産性は、個人の能力だけではなく、作業時の集中度が影響する。作業時の集中度は、作業空間の照度、温度、湿度、騒音、臭気といった環境要素、休憩時間などを含む各種条件の影響を受ける。したがって、様々な条件における作業時の集中度を評価すれば、集中度を向上させる条件を見出すことが可能になり、この種の条件の改善を通して、精神的作業における生産性の向上につながることが期待される。なお、集中度を計測する被験者は、オフィスにおける執務者に限らず、学校や家庭における学習者などであってもよい。
以下に説明する集中度計測装置は、被験者に認識させる認識対象を提示し、この認識対象に関して行う作業課題を与え、この作業課題の解答を入力させるという一連の作業を被験者に行わせることにより、被験者の集中度を計測することを可能にしている。したがって、集中度計測装置は、図1に示すように、認識対象を被験者に提示する提示装置20、作業課題の解答を入力させる入力装置30、被験者の集中度を評価する評価装置10を備える。評価装置10は、専用装置であってもよいが、汎用のコンピュータでプログラムを実行することにより実現することが可能である。コンピュータは、デスクトップ型、ノート型のほか、タブレット端末、スマートフォン、プログラムを交換可能なゲーム機であってもよい。
ノート型のコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、ゲーム機などを用いる場合、評価装置10は、少なくとも入力装置30と一体に設けられ、さらに提示装置20と一体に設けられていてもよい。要するに、評価装置10が提示装置20および入力装置30と独立した構成、評価装置10が入力装置30と一体である構成、評価装置10が提示装置20および入力装置30と一体である構成の3種類のいずれかが採用される。提示装置20や入力装置30を評価装置10から分離する場合、提示装置20と入力装置30との少なくとも一方に電子ペーパあるいは紙を用いることも可能である。
提示装置20に提示される認識対象は、複数種類の認知要素を抽出できるように設定される。つまり、認知要素は、特別な知識を持たない被験者が認識対象について認知できる属性を意味し、認識対象は、このような属性を複数種類備えていることが要求される。
このような認識対象は、数字、単語などを用いることが可能である。たとえば、数字であれば、0〜9の数字を3〜4程度のグループに分けた数字群を設定しておき、複数桁の数字を認識対象に用い、各桁の数字が属する数字群への分類作業を行わせると、各桁の数字を認知要素として用いることができる。
また、認識対象を、単語とすれば、単語の意味の類別を認知要素として用いることができ、単語を表す文字種、単語の文字数、単語の特定位置の音韻、文字の色、大きさ、字体なども認知要素として用いることが可能である。認識対象は、図形、記号、絵などを用いることも可能であり、この認識対象については、形状、内容、色、大きさなどを認知要素として用いることが可能である。
本実施形態において要求される作業課題は、認識対象が内包している認知要素を抽出する第1の作業と、認識対象から抽出した認知要素に適合する選択肢を選択する第2の作業とを含む。認知要素は、上述したように、認識対象について複数種類が内包されているから、第1の作業は、これらの複数種類の認知要素のうち解答として要求されている所定の複数種類の認知要素を抽出する作業になる。また、認知要素は、それぞれ複数の選択項目を有しているから、第2の作業は、選択項目を組み合わせた個数の選択肢の中から、第1の作業により抽出した認知要素に適合する選択肢を選択する作業になる。
被験者が入力装置30に入力する解答は、認知要素ごとに複数種類の選択項目が設定され、選択項目の組合せにより解答の選択肢が設定される。集中度の計測精度が適切であることも重要であり、そのためには作業課題の認知負荷が適切であることが必要である。適切な認知負荷を被験者に与えるには、認知要素は3〜4種類程度が望ましい。これは、認知要素が2種類では認知負荷が低すぎるが、認知要素が多すぎると認知負荷が高すぎることになり、作業課題に対する意欲低下などの阻害要因が生じやすくなるからである。
仮に、認知要素ごとに選択項目を3個ずつ設定すると、認知要素が2種類であれば9個(=3個×3個)の選択肢になるのに対して、3種類の認知要素の組合せでは、27個(=3個×3個×3個)の選択肢が得られる。したがって、認識対象は、3種類以上の認知要素が抽出可能となるように提示されることが望ましい。認識対象を、上述した数字あるいは単語とすれば、認識対象の選択が容易になる上に種類も豊富であるから、認識対象を広範囲から選択することにより、認識対象による偏りが生じないように集中度を計測することが可能になる。
認識対象を数字とした場合について、被験者に提示する認識対象の一例を図2(a)に示し、被験者が解答を入力する選択肢の表示例を図2(b)に示す。認知要素は、上述したように、数字群への分類作業とし、数字群は(0369)(147)(258)の3種類としている。ここで、3桁の数字の各桁の数字が属する数字群に分けるだけの作業は、単調であり集中度の計測が終了するまでに意欲低下が生じる可能性がある。そのため、作業に対する意欲を維持できるように、3桁の数字を2組示し、両方の数字を用いる簡単な四則計算を組み合わせることにした。
具体的には、2組の3桁の数字について、左端の数字同士を加算、中央の数字同士を乗算、右端の数字同士の減算を行い、それぞれ正負の符号を無視した1の位の数字を並べて3桁の数字を生成する作業を行うことにした。図2(a)に示す例では、(385)と(579)であるから、左端の数字同士の加算は、3+5=8であり、中央の数字同士の乗算は、8×7=56で6を採用し、右端の数字同士の減算は、5−9=−4で4を採用した。すなわち、分類作業を行う数字は(864)になる。
一方、各桁の数字が認知要素であり、認知要素の個数は3種類であるから、認知要素の組合せを2次元のマトリクスで表すことができない。そのため、図2(b)のように、左端の数字を認知要素とするグループを形成し、中央の数字と右端の数字を認知要素として2次元のマトリクスを形成している。つまり、領域D1に例を示しているように、左端の数字が属する3種類の数字群によるグループを上下に並べている。また、各グループについて、領域D2に例を示す中央の数字が属する3種類の数字群と、領域D3に例を示す右端の数字が属する3種類の数字群との組み合わせであるマトリクスからなる9個の選択肢31を設定している。したがって、9個ずつの選択肢31を備える3グループが設けられることになり、合計27個の選択肢が1画面に示される。
なお、図示例において、認識対象のうちのどの位置の数字を認知要素としているのかを示すために、領域D1,D2,D3に、それぞれ3個ずつの四角を左右に並べ、認知要素の位置を黒塗りの四角で示している。たとえば、領域D1では左端の四角が黒塗りであることにより、左端の数字が認知要素であることが示されている。
上述した例では、(864)という3桁の数字を分類する作業を行うから、左端の数字が(258)に含まれている下段のグループが選択される。さらに、このグループ内で、中央の数字が(0369)に含まれ、かつ右端の数字が(147)に含まれる位置が選択され、結果的に選択肢の中に「1」と記載している網掛部の位置が正解になる。
認識対象を単語とした場合について、被験者に提示する認識対象の一例を図3(a)に示し、被験者が解答を入力する選択肢の表示例を図3(b)に示す。認知要素は、意味、文字種、先頭文字の母音の3種類とし、意味の選択項目は(動物、地名、もの)とし、文字種の選択項目は(ひらがな、カタカナ、漢字)とし、先頭文字の母音の選択項目は(い、う、お)としている。
図示例において、認識対象は「フランス」であり、認知要素は(地名,カタカナ,う)である。認識対象として、「アメリカ」「ヒマワリ」「いぬ」「割箸」は設定できないが、「ブラジル」「シマウマ」「羊」「スプーン」は設定可能である。
本実施形態の例では、認知要素が3種類であるから、図3(b)に示すように、1種類の認知要素に関するグループを形成し、残りの2種類の認知要素についてグループごとに2次元のマトリクスを形成している。つまり、認知要素のうちの「文字種」を選択項目(ひらがな、カタカナ、漢字)ごとのグループに分け、グループごとに「意味」と「先頭文字の母音」との組合せである2次元のマトリクスからなる9個の選択肢31を設定している。したがって、9個ずつの選択肢31を備えたグループが3個設けられることにより、合計27個の選択肢が1画面に設定される。なお、文字種に代えて認知要素として文字数を用い、選択項目を(3文字、4文字、5文字)などとしてもよい。
被験者が解答を入力する選択肢31は、それぞれ長方形のマス目で表され、被験者が選択肢31を選択することによって、白黒を反転させた表示あるいは適宜色に着色した表示がおこなれる。ここに選択肢31を選択する操作は、マウスやトラックパッドのようなポインティングデバイスによるカーソルの移動とクリック(マウスボタンの押下、トラックパッドのタッピングなど)によって行う。また、入力装置30にタッチパネルを用いる場合、選択肢31を選択する操作は、選択肢31が表示されている領域への指やペン先の接触によって行うようにしてもよい。
評価装置10は、提示装置20および入力装置30と併せて用いられ、被験者に上述した作業課題を行わせることにより、精神的作業に関する被験者の集中度を定量的に評価する。集中度の評価には、認識対象に対する解答時間と解答の正否との少なくとも一方が用いられる。
評価装置10は、プログラムに従って動作するプロセッサを備えたデバイスと、外部装置を接続するためのインターフェイス用のデバイスとを主なハードウェア要素として備える。プロセッサを備えるデバイスは、マイクロプロセッサのほか、マイコン、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などから選択される。インターフェイス用のデバイスは、少なくとも提示装置20および入力装置30を接続する機能を備える。さらに、インターフェイス用のデバイスは、構内網(LAN:Local Area Network)や広域網(WAN:Wide Area Network)を通して通信する機能を備えることが望ましい。
プロセッサで実行されるプログラムは、インターネットのような電気通信回線を通して取得するほか、コンピュータで読取可能な記憶媒体に記憶されているプログラムを読み取ることによって取得してもよい。
評価装置10は、機能別に分けると、図1に示すように、処理部11と記憶部12とインターフェイス部13とにより構成されていることになる。インターフェイス部(以下、「I/F部」という)13は、提示装置20が接続される第1のI/F部131と、入力装置30が接続される第2のI/F部132とを備える。さらに、本実施形態におけるI/F部13は、インターネットに代表される広域網あるいは構内網に接続される第3のI/F部133を備える。
記憶部12は、提示装置20に提示する複数個の認識対象を格納した認識対象記憶部121を備える。認識対象記憶部121は、認識対象だけではなく、認識対象ごとに正解を対応付けて格納する。正解は、認識対象に対する認知要素の組合せと、入力装置30で選択される選択肢31の位置とのいずれかの形式で認識対象記憶部121に記憶される。
図2に示す例で言えば、認識対象が(864)であるから、認識対象記憶部121は、後者の形式で正解を格納する。すなわち、記憶される正解は、(7,2)になる。(7,2)は、正解の選択肢31が第7行第2列の位置であることを意味する。
また、図3に示す例で言えば、認識対象が「フランス」であるから、認識対象記憶部121は、前者の形式では正解として、(地名,4文字,う)を記憶し、後者の形式では正解として、(5,2)と記憶する。
認識対象記憶部121には、認識対象が多数個格納されているが、集中度を計測する際には、一部の認識対象のみが提示される。処理部11は、認識対象記憶部121に格納されている認識対象のうち1回の計測に用いる認識対象を選択して複数個の認識対象を含む1セットの認識対象を作成する提示制御部111を備える。提示制御部111は、作成したセットから認識対象を1つずつ順に選択して提示装置20に提示させる機能と、図2(b)、図3(b)に示すように、選択項目を組み合わせた選択肢31を提示装置20に提示させる機能とを備える。
認識対象記憶部121に格納される認識対象の個数は、同じ被験者に対して認識対象のセットを順に提示して集中度の計測を繰り返し行ったとしても、被験者が慣れない程度に設定される。たとえば、50〜500個の認識対象を1セットとする場合、認識対象記憶部121に記憶された認識対象を用いて、たとえば5〜10セットを生成できればよい。また、セット間では一部の認識対象が重複して用いられていてもよい。
さらに、第3のI/F部133を通してサーバのような他装置40と通信する構成を採用すれば、認識対象のセットを他装置40から転送することが可能になる。そのため、認識対象記憶部121に必要な記憶容量が低減され、また、認識対象を適宜に更新することが可能になる。あるいはまた、他装置40に評価装置10の主要な機能を設け、提示装置20と入力装置30とI/F部13とだけを被験者側に設けることも可能である。
認識対象記憶部121には複数セットに相当する個数の認識対象が格納されており、提示制御部111は、認識対象記憶部121に格納された認識対象を適宜に抽出して1セットの認識対象を作成する。また、提示装置20に1つの認識対象が提示されている状態において、被験者が入力装置30に解答を入力すると、提示制御部111は、提示中の認識対象に代えて次の認識対象を提示装置20に提示させる。
記憶部12は、認識対象が提示装置20に提示された時点から解答が入力装置30に入力された時点までの時間を解答時間として認識対象ごとに記録する作業記憶部122を備える。作業記憶部122は、認識対象ごとの解答時間に加えて解答の正否も記録する。つまり、提示装置20に認識対象が提示された状態で被験者が入力装置30に解答を入力すると、被験者による解答時間と解答の正否とが作業記憶部122に記録される。
1セットの認識対象について解答が得られた後、処理部11はセットに対する正解率を算出する。この正解率は作業記憶部122に記録される。上述の例では、作業記憶部122は、認識対象ごとの解答時間と解答の正否との両方を記録しているが、一方のみを記録する構成とすることも可能である。以下では、認識対象ごとの解答時間と、認識対象ごとの解答の正否とを作業情報と呼ぶ。すなわち、作業記憶部122は、認識対象ごとに解答時間と解答の正否との少なくとも一方を作業情報として記録する。
ここに、図3(b)に示すように、入力装置30の画面には選択肢31となるマス目のほか、作業記憶部122に記録した直前の情報を取り消す「取り消し」釦32を付加してもよい。「取り消し」釦32が操作されると、提示制御部111は、作業記憶部122に記録された直前の情報を消去し、直前の認識対象を提示装置20に表示させる。
この状態で提示装置20に提示された認識対象に対応する選択肢31が被験者により選択されると、この認識対象に関する情報が作業記憶部122に記録される。作業記憶部122に記録される解答時間は、同じ認識対象が提示装置20に最初に提示されてから「取り消し」釦32の操作後に解答が入力装置30に入力された時点までの合計の時間になる。また、作業記憶部122に記録される解答の正否は、「取り消し」釦32の操作後に選択された解答に対する正否になる。
図3には「取り消し」釦32を示しているが、スキップ釦を設けることにより、認識対象に対する選択肢を被験者が選べない場合に次の認識対象に移行することを提示制御部111に通知してもよい。また、被験者が「取り消し」釦32やスキップ釦を操作した場合は履歴を記録することにより、作業課題の難易度の評価に用いることが可能である。
ところで、提示制御部111は、複数個の認識対象を提示装置20にまとめて提示させる機能を有していてもよい。提示装置20に複数個の認識対象をまとめて提示させる場合には、表示された複数個の認識対象に対して最初に選択肢が選択されるまでの時間を1つの解答時間とし、以後は、次の選択肢が選択されるまでの時間を解答時間とすればよい。つまり、複数個の認識対象を提示装置20に提示した後の経過時間を計測し、選択肢が選択されるたびに区切られる時間を、それぞれの認識対象に対する解答時間に当て嵌めればよい。
処理部11は、図1に示すように、被験者の集中度に関する評価値を算出する評価演算部110を備える。評価演算部110は、1セットの認識対象が提示装置20に提示され、被験者が入力装置30に入力した情報が作業記憶部122に記録されると、作業記憶部122に記録された作業情報の統計量を用いて被験者の集中度に関する評価値を算出する。
以下では、評価演算部110が行う処理について説明する。本実施形態で採用している作業は、経験効果や知識の影響を受けにくく、しかも難易度のばらつきが小さいから、作業情報から集中度に関する評価値を客観的に抽出することが可能になる。また、作業情報は、解答時間と解答の正否との少なくとも一方であり、定量的に計測することが容易であり、しかも、作業において比較的多くの選択肢を用いて作業情報を計測しているから、集中度に関する分解能が高くなる。
評価演算部110は、作業記憶部122に記録された作業情報を、被験者の集中度に関する評価値を算出可能な形式に変換する。個々の作業情報は、認識対象ごとに多少のばらつきがあると考えられるから、作業情報の統計量を用いることにより集中度に関する評価値が算出される。作業情報として解答時間を用いる場合は、たとえば度数分布を用いればよく、作業情報として解答の正否を用いる場合は、たとえば単位時間における正解率を用いればよい。また、作業情報として解答時間と解答の正否との両方を用いる場合は、単位時間ごとに求めた正解率を、当該単位時間ごとの度数に乗じて度数分布を求めればよい。
以下では、解答時間を用いて集中度に関する評価値を算出する場合について説明する。つまり、評価演算部110は、1セットの認識対象に対して得られた解答時間の集合について度数分布を求め、度数分布から抽出される特徴量を集中度に関する評価値に用いる。作業記憶部122に格納された解答時間を1回の計測の開始からの経過時間に対応付けて表した例を図4に示す。図4の横軸は計測開始からの経過時間であり、縦軸は認識対象ごとの解答時間を表している。図示例では、計測を開始してからの経過時間が短い期間(左端部)と長い期間(右端部)とを比較した場合、右端部のほうが解答時間が長くなる傾向がみられる。この傾向は、被験者の単調感、疲労、覚醒度の低下、モチベーションの低下などによって活性化が減退していることを表していると考えられる。
ところで、人が知的作業を実施している状態において、「作業状態」と「短期休息」と「長期休息」との3状態を用いて説明するモデルが考えられている。「作業状態」は、認知資源を対象に割り当てて、作業の処理が進行している状態である。「短期休息」は、認知資源を対象に割り当てているが、無意識に作業の処理が短時間停止している状態である。この状態は一定の確率で生理的に発生する。「長期休息」は、認知資源を対象に割り当てず、長時間にわたって休息をとっている状態である。
上述した「作業状態」と「短期休息」とは、認知資源を対象に割り当てている状態であるから、集中の状態と考えることができ、「長期休息」は、認知資源を対象に割り当てていない状態であるから、非集中の状態と考えることができる。集中の状態と非集中の状態とを定量的に評価するために、作業記憶部122に格納された解答時間に着目して度数分布を求めたところ、図5に示すような時間占有度ヒストグラムが得られた。
時間占有度ヒストグラムは、解答時間を複数の区間に分け、解答時間の総和(計測期間)に対する各区間ごとの解答時間の総和の比率を時間占有度として表したヒストグラムであって、横軸は対数目盛で解答時間を表し、縦軸は時間占有度を表している。上述のような作業を行った場合の時間占有度ヒストグラムは、図5に示すように、2つのピークを持つ二峰性(bimodal)になるという結果が得られた。
この時間占有度ヒストグラムにおいて、解答時間が短いほうのピークを持つ第1の山部M1は「作業状態」と「短期休息」とが混合した状態であり、解答時間が長いほうのピークを持つ第2の山部M2は「作業状態」と「短期休息」と「長期休息」とが混合した状態であると考えられる。本実施形態は、上述した作業を行ったときの解答時間に基づいて得られた時間占有度ヒストグラムを解釈するために上述したモデルを採用している。
ピークP1とピークP2とは、それぞれが対数正規分布に似た形状を有しているから、上述した時間占有度ヒストグラムは、2つの対数正規分布の確率密度関数の重ね合わせとして近似する当て嵌めが可能であると推定される。図5に示す例では、ピークP1はピークP2よりも時間占有度が大きいから、ピークP1が時間占有度のもっとも大きいピークであって、ピークP2が時間占有度が次に大きいピークになる。つまり、第1の山部M1はピークP1を持ち、第2の山部M2はピークP2を持つ。
いま、第1の山部M1に当て嵌める対数正規分布の確率密度関数をf1(t)とし、第2の山部M2に当て嵌める対数正規分布の確率密度関数をf2(t)とする。時間占有度ヒストグラムを表す関数f(t)は、f(t)=f1(t)+f2(t)で表される。ここで、関数f1(t)の期待値をEとし、第1の山部M1に含まれる解答数を仮にN1とし第2の山部M2に含まれる解答数を仮にN2とする。
第1の山部M1に相当する面積S1は、S1=E×N1で表される。また、上述したように、第2の山部M2を「作業状態」と「短期休息」と「長期休息」とが混合した状態を表すと仮定しているから、第2の山部M2の面積のうち「作業状態」と「短期休息」とに相当する面積S2は、S2=E×N2で表されると考えられる。
N1+N2は解答数の総数であるから、N1+N2=Nとおけば、時間占有度ヒストグラムにおいて、「作業状態」と「短期休息」とに相当する総面積Sは、S=S1+S2=E×Nと表される。求めた面積Sは集中の状態の総時間(集中時間)に相当する。つまり、解答時間の総和(計測期間)に対する面積Sの割合は、集中度を定量的に評価する評価値として用いることができる。なお、計測期間から面積Sを減算すれば、非集中の状態の総時間(非集中時間)が求められる。
上述のようにして集中度の評価値を求めるには、時間占有度ヒストグラムに、当て嵌めるように関数f1(t)および関数f2(t)のパラメータを定める必要がある。関数f1(t),f2(t)は、ともに対数正規分布の確率密度関数であるから、関数f(t)にもっとも適合するように、関数f1(t),f2(t)のそれぞれについて、パラメータ(平均値と分散)とを最適化する。
関数f1(t),f2(t)について最適なパラメータを探索する解空間は広大であるから、EMアルゴリズムのような周知のアルゴリズムを用いてパラメータの最尤値を求める必要がある。関数f1(t),f2(t)のパラメータは、初期値が適切に設定されていれば比較的短い時間で収束するが、収束しない場合には初期値を変更し、パラメータが収束するまで初期値の変更を繰り返す。
上述のようにして集中度の評価値を求めるために、評価演算部110は、図1に示すように、時間占有度ヒストグラムを生成するヒストグラム生成部112と、時間占有度ヒストグラムに関数を当て嵌める当て嵌め部113とを備える。さらに、評価演算部110は、当て嵌めた関数のパラメータを用いて集中時間あるいは集中度を算出する計算部114を備える。
当て嵌め部113は、上述したように、時間占有度ヒストグラムに、2つの対数正規分布の確率密度関数f1(t),f2(t)を当て嵌める。つまり、当て嵌め部113は、時間占有度ヒストグラムを、第1の山部M1に当て嵌めた第1の対数正規分布の確率密度関数f1(t)と、第2の山部M2に当て嵌めた第2の対数正規分布の確率密度関数f2(t)との重ね合わせとして近似する。計算部114は、第1の対数正規分布の確率密度関数f1(t)から求められる期待値を特徴量として抽出し、この特徴量と解答の総数との積を集中時間として算出する。さらに、計算部114は、求めた集中時間の計測期間に対する割合を集中度に相当する評価値として算出する。また、計算部114は、求めた集中時間を計測期間から減算した値を非集中時間として算出し、非集中時間の計測期間に対する割合を非集中度に相当する評価値として算出してもよい。
上述した実施形態は、提示装置20に問題を提示させ、かつ問題を1問ずつ順に提示する場合を想定して説明した。ただし、上述したように、解答時間は解答間の時間を用いることによって計測することも可能である。たとえば、入力装置30に1問の解答を入力し終わった時刻と次の1問の解答を入力し終わった時刻との間の時間を1問の解答時間に用いてもよい。解答時間を解答間の時間とする場合、提示装置20を用いることなく解答時間を求めることが可能である。すなわち、紙などに問題を記載して被験者に提示し、解答を入力装置30に入力させ、問題ごとに解答が入力され終わった時刻を記録すれば、解答時間が求められる。なお、紙などに記載された問題が被験者に提示される場合、問題は1枚に一覧で示されている必要はなく、1枚に1問ずつ記載されていてもよい。
(実施形態2)
実施形態1は3状態モデルを用いる場合について説明したが、本実施形態はより簡易な2状態モデルを用いる例について説明する。
いま、解答時間が規定した基準時間内である状態を「作業状態」、解答時間が基準時間を超える状態を「休憩状態」と呼ぶことにする。作業状態は集中状態、休憩状態は非集中状態と言い換えてもよい。作業状態と休憩状態との遷移は、たとえばマルコフモデルで表される。休憩状態は、さらに休憩状態の時間の長さに応じて2段階に分けることも考えられるが、ここでは作業状態と休憩状態との2状態のマルコフモデルを想定する。このようなモデルを想定すると、解答時間の度数分布は作業状態と休憩状態との2状態を反映するという仮定が得られる。
この仮定を検証するために、作業記憶部122に格納された解答時間に着目して度数分布を求め、時間軸を対数としたヒストグラムを作成した。ヒストグラムを作成すると、図6に示すように、解答時間が比較的短い範囲において、対数正規分布にほぼ当て嵌まる領域D1と、この対数正規分布には当て嵌まらない領域D2とが生じるという結果が得られた。すなわち、解答時間が比較的短い領域D1は1つの対数正規分布に当て嵌まるが、解答時間が比較的長い領域D2はこの対数正規分布に当て嵌まらないという結果になった。対数正規分布にほぼ当て嵌まる領域D1は、集中度が比較的高い作業状態であるとみなされる。また、対数正規分布に当て嵌まらない領域D2は解答時間が比較的長いから、休憩状態に相当すると考えられる。このモデルでは、実施形態1のモデルと同様に、2個のベル型の領域を有し、それぞれの領域D1,D2が対数正規分布に当て嵌められるとみなしている。
そこで、解答時間に基準時間を設定し、ヒストグラムのうち解答時間が適宜に定めた基準時間内である領域を作業状態の領域とみなせば、この領域のパラメータを特徴量として集中度に関する評価値に用いることが可能になる。基準時間は、対数正規分布に当て嵌まる領域D1の上限付近に設定される。なお、対数正規分布に当て嵌まらない領域D2は休憩状態の領域に相当する。
実施形態1では、領域D2を「作業状態」と「短期休息」と「長期休息」とが混合した状態と考えるのに対して、本実施形態では、領域D2を「長期休息」の状態とみなす点が異なる。つまり、領域D1を作業状態(集中の状態)とみなし、領域D2を休憩状態(非集中の状態)とみなしている。
ここでは、時間軸を対数軸とした解答時間に関するヒストグラムが対数正規分布に当て嵌められるとみなしている。したがって、作業状態に相当する領域から平均値μおよび標準偏差σが求められる。また、作業状態に相当するに度数のピーク値αが求められる。これらのパラメータ(μ,σ,α)を用いることにより、以下のように、作業状態の領域から特徴量が得られる。
すなわち、作業状態に相当する領域の標準偏差σ、あるいは標準偏差σに対するピーク値αの比(=α/σ)は、作業状態に相当する領域の尖度を表しており、この領域の形状の尖度は集中度を反映している。したがって、標準偏差σあるいは比α/σが集中度に関する評価値として算出される。
ところで、図6に示すような解答時間のヒストグラムからパラメータ(μ,σ,α)を求める方法は定式化できない。そのため、パラメータの様々な組合せを発生させ、ヒストグラムにもっともよく当て嵌まるパラメータを選択する。パラメータの様々な組合せを発生させるために総当たり法を用いると、パラメータを抽出する際に膨大な時間を要するから、パラメータの選択には上述したEMアルゴリズム、あるいは遺伝的アルゴリズムを用いることが望ましい。
以上説明したように、評価演算部110は、作業記憶部122に記録された解答時間を用いて解答時間の度数分布を求め、この度数分布の時間軸を対数軸としたヒストグラムについて作業状態に相当する領域を抽出する。さらに、評価演算部110は、作業状態に相当する領域のパラメータを用いることにより集中度に関する評価値を算出する。なお、評価演算部110が生成したヒストグラムと、ヒストグラムから求められるパラメータ(μ,σ,α)と、ヒストグラムから算出された評価値とは、必要に応じて提示装置20を兼ねた表示装置に表示される。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
なお、評価装置10が第3のI/F部133を介してサーバのような他装置40と通信する場合、問題を他装置40から問題記憶部121に転送することによって問題を随時更新することが可能になる。また、評価装置10の機能をサーバのような他装置40に設け、提示装置20と入力装置30とI/F部11とを備える装置と他装置40とによって知的生産性分析装置を構成してもよい。
評価演算部110において作業記憶部122が記憶している作業情報から集中度に関する評価値を算出する方法は、上述の方法に限定されない。たとえば、上述した例では、ヒストグラムにおいて作業状態のみに着目しているが、作業状態と休憩状態とに分離する技術を採用することが可能である。また、作業情報は、解答時間に代えて解答の正否を用いたり、解答時間と解答の正否との両方を用いることも可能である。
ところで、被験者の集中度は、作業空間の照度、温度、湿度、騒音、臭気などの環境要素の影響を受けることが予測される。この予測を検証するには、環境要素と集中度との関係を計測する必要がある。そこで、図7に示すように、評価装置10は、集中度に影響することが予測される環境要素のうちの少なくとも1種類を計測する環境センサ14を備える。環境センサ14が評価装置10に付属することは必須ではなく、環境センサ14がI/F部13に接続される構成が採用されてもよい。
ここで、評価演算部110が解答時間の統計量を用いて集中度に関する評価値を算出している場合、集中度の計測を行う間に環境要素に変化が生じると、評価値の変化が、集中度の変化に起因するか環境要素の変化に起因するかを区別できなくなる。そのため、1セットの認識対象を提示している間には、環境要素を固定しておく必要がある。また、作業情報がどのような環境で得られたかを記録するために、環境センサ14が計測した環境要素を評価演算部110が算出した評価値と対応付けて結果記憶部123に記録する。
結果記憶部123は、集中度に関する評価値を環境要素に対応付けて被験者ごとに記録する。そのため、結果記憶部123に記録された情報を用いると、集中度が環境要素の影響をどのように受けるかを評価することが可能になる。
さらに、1セットの認識対象を提示している期間に、環境要素が所定の許容範囲を逸脱して変化したことを環境センサ14が検出する場合も想定される。そこで、1セットの認識対象を提示している期間に、環境センサ14が計測した環境要素が許容範囲を逸脱すると、環境センサ14が計測した環境要素を解答時間に対応付けて作業記憶部122に記録する構成を採用してもよい。この構成を採用すると、1セットの認識対象を提示している期間において環境要素ごとに解答時間を区別して記録することが可能になる。
評価演算部110は、環境要素ごとに集中度に関する評価値を求めることにより、環境要素に応じた集中度の変化を検出することが可能になる。ただし、1セットに含まれる認識対象の個数が多くなると、疲労による集中度の低下が生じるから、1セットの認識対象を提示している間に環境要素を変化させる場合には、環境要素の変化は2〜3回程度に留めることが望ましい。
上述した実施形態では、作業情報から集中度に関する評価値を算出しており、集中度の個人差を考慮していない。集中度の個人差を考慮する場合は、被験者ごとに解答時間の履歴を記録しておき、解答時間から求められる集中度に関する評価値を環境要素ごとに算出することにより、環境要素ごとの集中度の変化を個人ごとに相対化すればよい。このように集中度に関する評価値の絶対値を用いるのではなく、特定の環境要素に対する相対値を用いることにより、環境要素の影響の個人差を軽減することが可能になる。
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論のことである。
10 評価装置
11 処理部
12 記憶部
13 インターフェイス部(I/F部)
14 環境センサ
20 提示装置
30 入力装置
31 選択肢
110 評価演算部
111 提示制御部
112 ヒストグラム生成部
113 当て嵌め部
114 計算部
121 認識対象記憶部
122 作業記憶部
123 結果記憶部

Claims (8)

  1. 被験者に認識対象を提示する提示装置と、
    前記認識対象に対する精神的作業である作業課題の解答を前記被験者に入力させる入力装置と、
    前記認識対象が前記提示装置に提示された時点から前記解答が前記入力装置に入力された時点までの時間と前記解答の正否との少なくとも一方を用いて精神的作業に関する被験者の集中度を評価する評価装置とを備え、
    前記作業課題は、前記認識対象が内包している所定の複数種類の認知要素を抽出する作業と、前記認識対象から抽出した前記認知要素に適合する選択肢を、前記認知要素ごとに設定されている選択項目を組み合わせた個数の選択肢から選択する作業とであって、
    前記評価装置は、
    複数個の前記認識対象を格納している認識対象記憶部と、
    前記認識対象記憶部に格納された前記認識対象を前記提示装置に提示させる機能と、前記選択項目を組み合わせた選択肢を前記提示装置に提示させる機能とを備える提示制御部と、
    前記認識対象ごとの解答時間と前記解答の正否との少なくとも一方を作業情報として記録する作業記憶部と、
    複数個の前記認識対象を前記提示装置に提示させる間に前記作業記憶部が記録した前記作業情報の統計量により、前記被験者の集中度の評価値を算出する評価演算部とを備える
    ことを特徴とする集中度計測装置。
  2. 前記評価演算部は、
    前記解答時間を複数の区間に分け、前記解答時間の総和に対する各区間ごとの前記解答時間の総和の比率を時間占有度とし、前記時間占有度の分布を表す時間占有度ヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
    前記時間占有度ヒストグラムを、前記時間占有度がもっとも大きい第1のピークを持つ第1の山部に当て嵌めた第1の対数正規分布の確率密度関数と、
    前記時間占有度が次に大きい第2のピークを持つ第2の山部に当て嵌めた第2の対数正規分布の確率密度関数との重ね合わせとして近似する当て嵌め部と、
    第1の対数正規分布の確率密度関数から求められる期待値を特徴量として抽出し、かつ当該特徴量と前記解答の総数との積を集中時間として算出し、さらに前記計測期間に対する前記集中時間を前記評価値として算出する計算部とを備える
    ことを特徴とする請求項1記載の集中度計測装置。
  3. 前記計算部は、前記計測期間から前記集中時間を減算した値を、前記計測期間における非集中時間として求めることを特徴とする請求項2記載の集中度計測装置。
  4. 前記認識対象は3桁以上の数字であり、前記認知要素は当該数字の各桁の数字であり、前記選択項目は、複数の数字を含みかつ3種類以上のグループに分けた数字群であって、前記作業が、前記認知要素をそれぞれが属する数字群に分類する作業であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集中度計測装置。
  5. 前記認識対象は、3種類以上の前記認知要素が抽出可能となるように提示される単語であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の集中度計測装置。
  6. 前記被験者の環境のうち集中度に影響する環境要素のうちの少なくとも1種類を計測する環境センサと、
    前記環境センサが計測した環境要素を前記評価演算部が算出した前記評価値と対応付けて記録する結果記憶部とをさらに備える
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の集中度計測装置。
  7. 前記提示装置および前記入力装置は、前記評価装置と一体に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の集中度計測装置。
  8. 認識対象を提示装置に提示し、前記認識対象が内包している所定の複数種類の認知要素を抽出する作業と、前記認知要素ごとに設定されている選択項目を組み合わせた個数の選択肢から前記認識対象から抽出した前記認知要素に適合する選択肢を選択する作業とを作業課題として、被験者に前記認識対象に対する精神的作業である作業課題の解答を入力装置から入力させ、前記認識対象ごとの解答時間と前記解答の正否との少なくとも一方を用いて精神的作業に関する被験者の集中度を評価する評価装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
    前記コンピュータを、
    複数個の前記認識対象を格納している認識対象記憶部と、
    前記認識対象記憶部に格納された前記認識対象を提示装置に提示させる機能と、前記選択項目を組み合わせた選択肢を前記提示装置に提示させる機能とを備える提示制御部と、
    前記認識対象が前記提示装置に提示された時点から前記解答が前記入力装置に入力された時点までの時間と前記解答の正否との少なくとも一方を作業情報として記録する作業記憶部と、
    複数個の前記認識対象を前記提示装置に提示させる間に前記作業記憶部が記録した前記作業情報の統計量により、前記被験者の集中度の評価値を算出する評価演算部とを備える
    評価装置として機能させるプログラム。
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