JP2014062833A - ガスセンサ - Google Patents

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真史 喜田
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多喜男 小島
Masami Mori
雅美 森
Yoshihiko Sadaoka
芳彦 定岡
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Abstract

【課題】高いガス選択性を有するガスセンサを提供すること。
【解決手段】酸素イオン伝導性の固体電解質体(11、23)の表面に、異なる電極材料から形成された検知電極(15、27)と参照電極(17、29)とからなる電極対(13、25)を備えるとともに、測定雰囲気中の特定ガスによって電極対(13、25)間に生じる電位差に基づいて、特定ガスの濃度を検出するガスセンサ(1)に関するものである。特に、電極対(13、25)として第1の電極対(13)と第2の電極対(25)とを備え、且つ、第1の電極対(25)の検知電極(15)は、Ptを含む下層(19)と下層(19)の上に積層されたMgAl24を含む上層(21)とを備えるとともに、第2の電極対(25)の検知電極(27)は、Auを含む。そして、第1の電極対(13)の出力と第2の電極対(25)の出力との比に基づいて、特定ガスの濃度を検知する。
【選択図】図1

Description

本発明は、検知対象ガス(特定ガス)とその妨害ガスとが存在する測定雰囲気において、検知対象ガスの濃度を選択的に精度良く検知することができるガスセンサに関する。
従来、ガスセンサとして、例えばLPガス、都市ガス等を検知するガス漏れ警報用の半導体ガスセンサなどが広く用いられている。
この種のガスセンサとしては、干渉ガス(妨害ガス)の影響を低減するために、検知対象ガス及び妨害ガスの両者に対して高感度のガスセンサ素子と、検知対象ガスに対する感度は低いが、妨害ガスに対する感度は同程度であるガスセンサ素子とを用い、両ガスセンサ素子の出力を比較することによって、ガス選択性を高めたガスセンサが提案されている(特許文献1参照)。
特開平7−209234号公報
しかしながら、上述した従来技術においては、ガス選択性を高めるためには、妨害ガスに対する感度を維持しつつ、検知対象ガスの感度を十分に低くしなければならないが、そのようなことは、実際には非常に困難である。
つまり、現実には、検知対象ガスの感度を低くしていくと、妨害ガスの感度も低くなるので、ガス選択性を更に向上することは困難である。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高いガス選択性を有するガスセンサを提供することにある。
(1)本発明は、第1態様として、酸素イオン伝導性の固体電解質体の表面に、異なる電極材料から形成された検知電極と参照電極とからなる電極対を備えるとともに、測定雰囲気中の特定ガスによって前記電極対間に生じる電位差に基づいて、前記特定ガスの濃度を検出するガスセンサにおいて、前記電極対として第1の電極対と第2の電極対とを備え、且つ、前記第1の電極対の検知電極は、Ptを含む下層と該下層の上に積層されたMgAl24を含む上層とを備えるとともに、前記第2の電極対の検知電極は、Auを含み、更に、前記第1の電極対の出力と前記第2の電極対の出力との比に基づいて、前記特定ガスの濃度を検知することを特徴とする。
まず、本発明の原理について説明する。
本発明者等の後述する実験等による研究によって、特定ガス(例えばエタノール)と妨害ガス(例えばトルエン)とを含む測定雰囲気中において、特定ガスのガス濃度を選択的に測定する場合には、下記の方法によって、選択性に優れるとともに精度良くガス濃度を検出できることが明らかになった。
具体的には、上述した組成の(第1センサ素子に該当する)第1の電極対と(第2センサ素子に該当する)第2の電極対とを、妨害ガスの濃度を変化させた測定雰囲気に晒した場合、後述する図5の第1センサ素子及び第2センサ素子の例に示す様に、各電極対により、妨害ガスの濃度に対応した起電力(電位差)を示す出力が得られる。
この理由は、上述の様に異なる電極材料からなる(即ち検知電極及び参照電極からなる)電極対では、各電極におけるガス成分の拡散性や触媒反応性が異なり、しかも、第1電極対及び第2電極対においては、各検知電極の電極材料も異なるからと考えられる。
そして、前記図5に示す様に、前記妨害ガスに対しては、各濃度における各電極対の出力は異なるが、その濃度に対する変化は、ほぼ一定(相似)である。従って、両電極対の出力の比をとった場合には、図7の破線に示す様に、妨害ガスの濃度が変化しても、その比は略一定である。
一方、上述した組成の第1の電極対と第2の電極対とを、特定ガスの濃度を変化させた測定雰囲気に晒した場合、図6の第1センサ素子及び第2センサ素子に示す様に、それぞれ特定ガスの濃度に対応した起電力(電位差)を示す出力が得られる。しかし、この場合は、各濃度における各電極対の出力が異なるだけでなく、濃度の変化に伴って出力の変化も異なる。即ち、濃度変化に対する各電極対の出力の変化率(出力挙動)が異なる。従って、両電極対の出力の比をとった場合には、図7の実線に示す様に、その比は特定ガスの濃度に対応して変化する。
よって、上述した構成の第1の電極対と第2の電極対とを備えたガスセンサを用いることにより、測定雰囲気中に妨害ガスが含まれている場合でも、第1の電極対の出力と第2の電極対の出力との比を用いて、選択性良く、特定ガスの濃度を精度良く求めることができる。
つまり、本第1態様では、上述した様な素子出力の挙動を得るために、異なる電極材料を用いてガス成分の電極中の拡散や触媒反応性の差を生じさせることによって、高いガス選択性を有するガスセンサを実現することができる。
(2)本発明は、第2態様として、前記固体電解質体は、イットリア安定化ジルコニアからなることを特徴とする。
本第2態様では、固体電解質体として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いるので、酸素イオン導電性に優れ高いセンサ出力を得ることができるという利点がある。
(3)本発明は、第3態様として、前記各電極中に、前記固体電解質体の材料を含むことを特徴とする。
本第3態様では、各電極中に、(共素地として)固体電解質体の材料を含むので、密着性が向上するという利点がある。
(4)本発明は、第4態様として、前記第1の電極対の参照電極と前記第2の電極対の参照電極とは、同じ電極材料からなることを特徴とする。
本第4態様では、第1の電極対の参照電極と第2の電極対の参照電極とは、同じ電極材料からなるので、両参照電極は同様な電気化学的特性を有する。つまり、同じ雰囲気に晒された場合には、同様な起電力を発生する。
従って、第1の電極対における電位差や第2の電極対における電位差を用いる場合には、参照電極の違いを考慮する必要がないので、出力の処理(演算)が容易になるという利点がある。
(5)本発明は、第5態様として、前記第1の電極対の参照電極と前記第2の電極対の参照電極とを共通としたことを特徴とする。
本第5態様では、第1の電極対と第2の電極対との参照電極が共通であるので、ガスセンサの構成を簡易化できるという利点がある。
実施例1のガスセンサのセンサ部を模式的に示す説明図である。 実施例1のガスセンサの電気的構成を示すブロック図である。 (a)は実施例2のガスセンサのセンサ部を模式的に示す説明図、(b)は実施例3のガスセンサのセンサ部を模式的に示す説明図、(c)は実施例4のガスセンサのセンサ部を模式的に示す説明図である。 実験に用いるガスセンサのセンサ素子を模式的に示す説明図である。 実験に用いる各センサ素子のトルエン検知特性を示すグラフである。 実験に用いる各センサ素子のエタノール検知特性を示すグラフである。 本発明例における第1センサ素子と第2センサ素子とのトルエンに対する出力比とエタノールに対する出力比とを示すグラフである。 比較例における第1センサ素子と第3センサ素子とのトルエンに対する出力比とエタノールに対する出力比とを示すグラフである。 比較例における第1センサ素子と第4センサ素子とのトルエンに対する出力比とエタノールに対する出力比とを示すグラフである。
本発明のガスセンサの実施形態について説明する。
<各構成の成分>
・固体電解質としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を用いることができるが、それ以外に、酸化カルシウム安定化ジルコニアやスカンジウム安定化ジルコニアなどを用いることができる。
・第1の電極対の検知電極の下層を構成する電極材料としては、Ptを用いる。Pt以外の含有成分としては、他の金属成分又はセラミック成分(例えば共素地としての固体電解質)を採用できる。特に、Pt以外の成分を含む場合には、Ptを主成分とすることが好ましい。
・第1の電極対の検知電極の上層を構成する電極材料としては、MgAl24を用いる。また、MgAl24以外の含有成分としては、他の金属成分又はセラミック成分(例えば共素地としての固体電解質)を採用できる。特に、MgAl24以外の成分を含む場合には、MgAl24を主成分とすることが好ましい。
・第2の電極対の検知電極の電極材料としては、Auを用いる。また、Au以外の含有成分としては、他の金属成分又はセラミック成分(例えば共素地としての固体電解質)を採用できる。特に、Au以外の成分を含む場合には、Auを主成分とすることが好ましい。
・本発明における参照電極は、各電極対において対応する検知電極とは、使用する電極材料が異なることによって起電力を生じさせるものである。
この第1の電極対及び第2の電極対の参照電極を構成する電極材料としては、Ptを用いる。また、Pt以外の含有成分としては、他の金属成分又はセラミック成分(例えば共素地としてのYSZなどの固体電解質)を採用できる。特に、Pt以外の成分を含む場合には、Ptを主成分とすることが好ましい。
<電極における基本的な動作>
固体中を移動するイオン又は格子欠陥を有する固体電解質は、比較的高い温度でイオン伝導性が支配的になる。この固体電解質に一対の電極を構成した場合、両電極が晒されている雰囲気の違いによって起電力が発生する。
可動イオンが酸素の場合、両電極の酸素濃度に違いがあると、電気化学的に電位差が発生する。この電位差は、両電極表面の酸素イオン濃度(酸素活性)差の対数に比例する。この酸素イオン活性差は、例えば電極材料等の電極の構成などにより変化する。
本発明においては、固体電解質に接している電極として、上述した構成の検知電極及び参照電極を用いることにより、同一の雰囲気に晒された検知電極及び参照電極における酸素イオンの活性に傾斜を与えることができる。これにより、両電極間に電位差を発生させることができる。
従って、本発明では、このような特性を有する電極対を利用して、上述した原理に基づいて、例えば、以下の実施例に示す様にして、妨害ガスを含む測定雰囲気に対して、特定の検知対象ガス(特定ガス)のガス濃度を選択的に求めるものである。
以下では、検知対象ガス(特定ガス)であるエタノールと妨害ガスであるトルエンとを含む測定雰囲気に対して、その検知対象ガスのガス濃度を検出するガスセンサの実施例について説明する。
a)まず、本実施例のガスセンサの構成について説明する。
図1に模式的に示す様に、本実施例のガスセンサ1は、測定雰囲気中に晒される検出部3として、例えばアルミナからなる絶縁基板5上に並列に配置された第1センサ素子7と第2センサ素子9とを備えている。
前記第1センサ素子7は、酸素イオン伝導性の固体電解質であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなる第1固体電解質体11と、第1固体電解質体11の表面に配置された第1の電極対13とから構成されており、更に第1の電極対13は、第1検知電極15と第1参照電極17とから構成されている。
このうち、第1検知電極15は、(電極材としての)Pt及び(共素地としての)YSZから構成された下層19と、その下層19の上に積層されたMgAl24からなる上層21とから構成されている。また、第1参照電極17は、前記下層19と同様に、Pt及びYSZから構成されている。
この第1検知電極15の下層19の組成は、5.4mol%YSZ含有Ptであり、第1参照電極17の組成は、5.4mol%YSZ含有Ptである。
また、第1検知電極15と第1参照電極17の平面形状及び縦×横寸法は同一である。なお、第1検知電極15の下層19の厚みは例えば20μm、上層21の厚みは例えば72μm、第1参照電極17の厚みは例えば20μmである。
一方、前記第2センサ素子9は、YSZからなる第2固体電解質体23と、第2固体電解質体23の表面に配置された第2の電極対25とから構成されており、更に第2の電極対25は、第2検知電極27と第2参照電極29とから構成されている。
このうち、第2検知電極27は、(電極材としての)Au及び(共素地としての)YSZから構成されおり、第2参照電極29は、前記第1センサ素子9と同様に、Pt及びYSZから構成されている。
この第2検知電極27の組成は、5.4mol%YSZ含有Auであり、第2参照電極29の組成は、5.4mol%YSZ含有Ptである。
また、第2検知電極27と第2参照電極29の平面形状及び縦×横寸法は同一である。なお、第2検知電極27の厚みは例えば24μm、第2参照電極29の厚みは例えば20μmである。
更に、本実施例のガスセンサ1においては、図2に示す様に、第1センサ素子7における第1検知電極15の出力が第1A/Dコンバータ31を介してマイコン33に入力されるように構成され、第2センサ素子9における第2検知電極27の出力が第2A/Dコンバータ35を介してマイコン33に入力されるように構成されている。なお、ここでは、両参照電極17、29は接地されている。
b)次に、本実施例のガスセンサ1の製造方法について説明する。
まず、前記絶縁基板5の表面において、第1固体電解質体11と第2固体電解質体23との形成位置に、例えばスクリーン印刷によって、YSZペーストを塗布し、1000℃にて焼成することにより、第1固体電解質体11と第2固体電解質体23とを形成した。
なお、前記YSZペーストは、YSZ粉末に、例えばバインダーを加えてペースト状としたものである。以下の他のペーストも、周知の同様な手法にて製造することができる。
次に、第1固体電解質体11の表面と第2固体電解質体23の表面とにおいて、それぞれ第1検知電極15と第1参照電極17と第2参照電極29の形成位置に、Pt/YSZペースト(共素地としてYSZを含むPtペースト)を塗布し、1400℃にて焼き付けることにより、第1検知電極15の下層19と第1参照電極17と第2参照電極29を形成した。
なお、電極材料であるPtと共素地であるYSZの割合は、形成する電極の組成となるように調整した(以下電極材料と共素地を用いる場合は同様である)。
次に、第1検知電極15の下層19の表面に、MgAl24ペーストを塗布し、また、第2固体電解質体23の表面のうち、第2検知電極27の形成位置に、Au/YSZペースト(共素地としてYSZを含むAuペースト)を塗布し、1000℃にて焼き付けることにより、第1検知電極15の上層21と第2検知電極27とを形成した。
これによって、前記図1に示す様な構造の検出部3を完成した。その後、この検出部3を前記図2に示す様に接続することによりガスセンサ1を完成した。
c)次に、本実施例のガスセンサ1の作用効果について説明する。
上述した原理にて説明した様に、本実施例の第1の電極対13と第2の電極対25とを備えたガスセンサ1を用いることにより、測定雰囲気中に妨害ガス(ここではトルエン)が含まれている場合でも、第1の電極対13の出力と第2の電極対25の出力との比を用いて、検知対象ガス(ここではエタノール)の濃度を精度良く求めることができる。
具体的には、本実施例のガスセンサ1においては、第1参照電極17は接地されているので、第1センサ素子7における第1検知電極15の起電力である出力は、第1A/Dコンバータ31を介してマイコン33に入力され、その出力(S1)が算出される。
同様に、第2参照電極29は接地されているので、第2センサ素子9における第2検知電極27の起電力である出力は、第2A/Dコンバータ35を介してマイコン33に入力され、その出力(S2)が算出される。
そして、マイコン33にて、第1センサ素子7の出力(S1)と第2センサ素子9の出力(S2)の比(S1/S2)が算出される。
この出力の比(S1/S2)は、上述した様に検知対象ガスの濃度に対応しているので、例えば出力の比(S1/S2)と検知対象ガスの濃度との関係を示すデータ(マップ等)を用いて、この出力の比(S1/S2)から検知対象ガスの濃度を求めることができる。
従って、本実施例では、この様にして、測定雰囲気中に検知対象ガス(ここではエタノール)以外に妨害ガス(ここではトルエン)が含まれている場合でも、高い選択性を発揮して、検知対象ガスの濃度を精度良く検出することができるという顕著な効果を奏する。
なお、本実施例では、第1検知電極15の下層19、第1参照電極17、第2検知電極27、第2参照電極29には、金属の電極材料以外に共素地を含んでいるが、金属の電極材料のみで構成してもよい。
また、金属の電極材料と共素地との割合は、電極材料を主成分とすること(即ち電極材料が50質量%を上回ること)が望ましい。
次に、実施例2のガスセンサについて説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略する。
図3(a)に示す様に、本実施例2のガスセンサ41においては、同一のYSZからなる固体電解質体43の表面に、第1検知電極45及び第1参照電極47からなる第1の電極対49と、第2検知電極51及び第1参照電極53からなる第2の電極対55とが形成されている。なお、各電極の構成及び材質は、前記実施例1と同様である。
本実施例2においても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
次に、実施例3のガスセンサについて説明するが、前記実施例2と同様な内容の説明は省略する。
図3(b)に示す様に、本実施例3のガスセンサ61においては、同一のYSZからなる固体電解質体63の表面に、(実施例2と同様な)第1検知電極65と第2検知電極67とが形成されるとともに、共通(単一)の参照電極69が形成されている。
特に本実施例3では、第1検知電極65と共通の参照電極69とから第1の電極対71が構成され、第2検知電極67と共通の参照電極69とから第2の電極対73が形成されている。なお、各電極の構成及び材質は、前記実施例2と同様である。
本実施例3においても、前記実施例2と同様な効果を奏するとともに、参照電極69は共通であるので、構成を簡易化できるという利点がある。
次に、実施例4のガスセンサについて説明するが、前記実施例3と同様な内容の説明は省略する。
図3(c)に示す様に、本実施例4のガスセンサ81においては、YSZからなる固体電解質体83の一方の表面に、(実施例3と同様な)第1検知電極85と第2検知電極87とが形成されるとともに、固体電解質体83の他方の表面(裏面)に、(実施例3と同様な)共通の参照電極89が形成されている。
特に本実施例4では、第1検知電極85と共通の参照電極89とから第1の電極対91が構成され、第2検知電極87と共通の参照電極89とから第2の電極対93が形成されている。なお、各電極の構成及び材質は、前記実施例3と同様である。
本実施例4においても、前記実施例3と同様な効果を奏する。
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
本実験例では、図4に示す様に、本発明例として、前記実施例1で用いた第1センサ素子、第2センサ素子を備えたガスセンサを作製するとともに、比較例として、(第2センサ素子に代えて)第3センサ素子、第4センサ素子を用いたガスセンサを作製して、実験を行った。
なお、第3センサ素子の検知電極は下層及び上層からなり、その下層は5.4mol%YSZ含有Ptからなり、その上層は5.4mol%YSZ含有Auからなる。また、第4センサ素子の検知電極は下層及び上層からなり、その下層は5.4mol%YSZ含有Ptからなり、その上層はAuからなる。
なお、素子以外は、特に記載しない内容は、前記実施例1と同様な構造のガスセンサとした。
具体的には、まず、図5に示す様に、妨害ガスのトルエンの濃度を変化させた雰囲気中に、第1〜第4センサ素子を配置し、その出力(起電力)を測定した。なお、各センサ素子の参照電極は接地して各検出電極の出力を測定した。その結果を図5に示す。
図5から明らかな様に、本発明例の第1センサ素子と第2センサ素子の出力は、トルエンの濃度が変化した場合に、同様な(相似の)変化(変化率)を示した。
それに対して、比較例の第3センサ素子と第4センサ素子の出力は、トルエンの濃度が変化した場合に、他のセンサ素子それぞれに対して対応関係を示さず別個に変化した(異なる変化率であった)。
次に、図6に示す様に、検知対象ガスのエタノールの濃度を変化させた雰囲気中に、第1〜第4センサ素子を配置し、その出力(起電力)を測定した。なお、各センサ素子の参照電極は接地して各検出電極の出力を測定した。その結果を図6に示す。
図6から明らかな様に、本発明例の第1センサ素子と第2センサ素子の出力は、エタノールの濃度が変化した場合に、各濃度に対応して、それぞれ別個の変化(変化率)を示した。
また、比較例の第3センサ素子と第4センサ素子の出力も、エタノールの濃度が変化した場合に、各濃度に対応して、それぞれ別個の変化(変化率)を示した。
次に、図7に、前記図5及び図6の結果を用いて、第1センサ素子と第2センサ素子とのトルエンに対する出力比と、エタノールに対する出力比を示す。
この図7から明らかな様に、本発明の第1センサ素子の出力(S1)と第2センサ素子の出力(S2)との出力比(S1/S2)をとった場合、妨害ガスであるトルエンに対する出力比(TS1/TS2)は、濃度が変化した場合でもほぼ一定であるが、検知対象ガスであるエタノールに対する出力比(ES1/ES2)をとった場合には、濃度に対応した値となっていることが分かる。
従って、妨害ガスと検知対象ガスが混在していた場合でも、本発明の第1センサ素子の出力(S1)と第2センサ素子の出力(S2)との出力比(S1/S2)によって、検知対象ガスの濃度に対応した値が得られることが分かる。即ち、前記出力比(S1/S2)を用いることにより、検知対象ガス(エタノール)の濃度を求めることができることが分かる。
また、図8に示す様に、第1センサ素子の出力(S1)と第3センサ素子の出力(S3)との出力比(S1/S3)をとった場合、妨害ガスであるトルエンに対する出力比(TS1/TS3)は、その濃度に応じて変化し、同様に、検知対象ガスであるエタノールに対する出力比(ES1/ES3)をとった場合にも、その濃度に応じて変化する。
従って、この場合には、検知対象ガスであるエタノールに対する出力比(ES1/ES3)からは、検知対象ガスの濃度を求めることができない。
更に、図9に示す様に、第1センサ素子の出力(S1)と第4センサ素子の出力(S4)との出力比(S1/S4)をとった場合、妨害ガスであるトルエンに対する出力比(TS1/TS4)は、その濃度に応じて変化し、同様に、検知対象ガスであるエタノールに対する出力比(ES1/ES4)をとった場合にも、その濃度に応じて変化する。
従って、この場合にも、検知対象ガスであるエタノールに対する出力比(ES1/ES4)からは、検知対象ガスの濃度を求めることができない。
尚、本発明は前記実施形態や実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば実施例1の変形例としては、例えば第1参照電極及び第2参照電極を接地することなく、その出力を各A/Dコンバータを介してマイコンに入力し、マイコンにて、第1検知電極と第1参照電極との電位差と、第2検知電極と第2参照電極との電位差とを求め、それぞれを第1センサ素子の出力と第2センサ素子の出力としてもよい。
(2)また、第1検知電極と第1参照電極との電位差を増幅し、その増幅した値を第1センサ素子の出力とし、同様に、第2検知電極と第2参照電極との電位差を増幅し、その増幅した値を第2センサ素子の出力としてもよい。
1、41、61、81…ガスセンサ
7…第1センサ素子
9…第2センサ素子
11、23、43、63、83…固体電解質体
13、49、71、91…第1の電極対
15、45、51、65、67…検知電極
19…下層
21…上層
25、55、73、93…第2の電極対
27、47、53、69、89…参照電極

Claims (5)

  1. 酸素イオン伝導性の固体電解質体の表面に、異なる電極材料から形成された検知電極と参照電極とからなる電極対を備えるとともに、測定雰囲気中の特定ガスによって前記電極対間に生じる電位差に基づいて、前記特定ガスの濃度を検出するガスセンサにおいて、
    前記電極対として第1の電極対と第2の電極対とを備え、
    且つ、前記第1の電極対の検知電極は、Ptを含む下層と該下層の上に積層されたMgAl24を含む上層とを備えるとともに、前記第2の電極対の検知電極は、Auを含み、
    更に、前記第1の電極対の出力と前記第2の電極対の出力との比に基づいて、前記特定ガスの濃度を検知することを特徴とするガスセンサ。
  2. 前記固体電解質体は、イットリア安定化ジルコニアからなることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 前記各電極中に、前記固体電解質体の材料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
  4. 前記第1の電極対の参照電極と前記第2の電極対の参照電極とは、同じ電極材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  5. 前記第1の電極対の参照電極と前記第2の電極対の参照電極とを共通としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスセンサ。
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