JP2014062616A - 軸受装置の冷却構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 この軸受装置の冷却構造は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受1、1の外輪3、3間および内輪2、2間に外輪間座4および内輪間座5をそれぞれ介在させ、外輪2および外輪間座4がハウジング6に設置され、内輪3および内輪間座5が主軸7に嵌合される。外輪間座4に、内輪間座5の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズル10を、回転方向の前方へ傾斜させて設け、外輪間座4における、ノズル10の吐出口がある内周面と、吐出口に対向する内輪間座5の外周面との間のすきまを、0.7mm以上でかつノズル10の直径の1/2以下にした。
【選択図】 図1
Description
発熱による軸受の温度上昇は、軸受の予圧の増加をもたらす結果となり、主軸の高速化、高精度化を考えると極力抑えたい。主軸装置の温度上昇を抑えるための手段の一つとして、運転中の軸受を冷却する方法がある。その代表技術としては、以下のものがある(特許文献1,2)。
(2)内輪間座を空冷する空気吹き出し口を軸受箱または主軸に設けたもので、圧縮空気を内輪間座に吹き付けて空冷することにより、軸受の内輪を間接的に冷却する方法が開示されている(特許文献2)。
内輪間座80の外径表面に冷却エアを軸回転方向に向けて噴射し、内輪間座80を介して軸受を冷却する図20,図21の構造において、軸受内輪81と外輪82の温度およびその時の騒音値を、回転速度との関係で試験した結果を図22,図23に示す。図22〜図23において、白抜きの結果は冷却がない場合の結果で、塗りつぶしは冷却を実施した場合の結果を示している。図22に示すように、エア冷却を実施することで、運転中の内輪81と外輪82の温度は低下し、軸受予圧の増加が抑制されていることが推定される。しかし、図23に示すように、騒音値は、エア冷却を実施することで、最大20dB(A)ほど大きくなってしまう。
前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座における、前記ノズルの吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまを、0.7mm以上でかつ前記ノズルの直径の1/2以下にしたことを特徴とする。
前記すきまを半径で0.7mm以上とすることで、冷却効果を維持しつつ騒音の低減効果を併せて持つことを試験で見出した。軸受サイズ(間座の径)にかかわらず、0.7mm以上のすきまを確保することで、このような冷却効果を維持しつつ騒音の低減効果を併せて持つ効果が得られる。すきまをこれ以上小さくすると、必要な排気面積が確保されず、冷却エア量が減少するため、冷却効果が低下してしまうことを確認している。
したがって、軸受装置を複雑な構造とせず、また高価な付帯設備も必要なく軸受および主軸の温度を低下させることができるうえ、外部への騒音を低減することができる。
前記外輪間座に、軸受内に潤滑油を供給する潤滑用ノズルを設けたものとしても良い。この場合、潤滑用ノズルから吐出された潤滑油を、例えば内輪の軌道面に導入して軸受の潤滑に用いる。
前記潤滑油として、エアオイル、オイルミストを適用しても良い。
前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座または前記内輪間座のうち、前記ノズルの吐出口の軸方向両側部に、半径方向に突出する凸部を設け、この凸部の半径方向先端部と対向する周面との間のすきまを、前記外輪間座の前記吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまよりも小さくしたことを特徴とする。
以上説明したように、軸受装置を複雑な構造とせず、また高価な付帯設備も必要なく軸受および回転軸の温度を低下させることができるうえ、外部への騒音を低減し得る。
このようにすきまの軸方向断面積を設定することで、圧縮エア量の減少もなく、合理的な低騒音化が図れる。このすきまの軸方向断面積は、試験結果から見出された設定値である。
前記潤滑用ノズルは、前記内輪の軌道面または外径面に向け潤滑油を吐出するものとしても良い。
この発明のスピンドル装置は、前記いずれかの軸受装置の冷却構造を用いたものである。
この発明の工作機械は、前記いずれかの軸受装置の冷却構造を組み込んだものである。工作機械に、いずれかの軸受装置の冷却構造を組み込んだ場合、運転中の軸受温度の低下が図れることで、軸受予圧の増大が緩和され、軸受のさらなる高速化、すなわち加工能率の向上または軸受寿命の延長を図ることができる。運転中の回転軸および軸受温度の低下により、軸受予圧の増大が緩和された分、初期予圧を大きくすることができ、低速での回転軸剛性を高めると共に加工精度の向上が期待できる。運転中に回転軸の温度が低下し、回転軸の熱膨張に起因した加工精度の劣化を減少させることができる。
図1に示すように、この軸受装置は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受1、1の外輪2、2間および内輪3、3間に、外輪間座4および内輪間座5をそれぞれ介在させている。また外輪2および外輪間座4がハウジング6に設置され、内輪3および内輪間座5が回転軸(主軸)7に嵌合される。各転がり軸受1として、内輪3の温度上昇が大きくなって、予圧過大が問題となる高速用主軸ユニットの前側に使用されるアンギュラ玉軸受への適用を考える。同図に示すように、これらアンギュラ玉軸受が背面組合せで設置され、内輪外径面および外輪内径面における接触角の反偏り側に、それぞれカウンタボアが設けられている。内輪3のカウンタボアは、内輪端面側から軌道面側に向かうに従って、大径となるように傾斜する傾斜面に形成されている。内外輪3、2の軌道面間に複数の転動体8が介在され、これら転動体8が保持器9により円周等配に保持される。保持器9は外輪案内形式のリング形状から成る。軸受すきまの設定は、内輪間座5と外輪間座4の幅寸法差で行われる。これら軸受1、1の潤滑は、高速運転に適したエアオイル潤滑としている。
図3は、図1の III - III 線断面図である。図2に示すように、この例の外輪間座4は、外輪間座本体24と、この外輪間座本体24とは別体に構成された潤滑用ノズル25、25(後述する)とを有する。外輪間座本体24は断面略T字形状に形成され、外輪間座本体24の両側部に、リング状の潤滑用ノズル25、25がそれぞれ嵌め込まれて左右対称に固定されている。外輪間座本体24に、内輪間座5の外周面に向けて圧縮エアを吐出する1個または複数個(この例では3個)のノズル10を設けている。これらノズル10のエア吐出方向を、それぞれ主軸7の回転方向L1の前方へ傾斜させている。これら複数個のノズル10は円周等配に配設されている。各ノズル10は、それぞれ直線状であって、外輪間座4の軸心に垂直な断面における任意の半径方向の直線L2から、この直線L2と直交する方向にオフセットした位置にある。ノズル10をオフセットさせる理由は、吐出エアを主軸7の回転方向に旋回流として作用させて、冷却効果の向上を目的としている。ノズル10のオフセット量は、内輪間座5の外径寸法(D)に対して、0.8D/2 以上 D/2 以下の範囲にする。この範囲は、試験の結果によるもので、冷却効果が最も大きくなる。
図18に示した従来構成の場合、このすきまは組込み性、加工精度等の都合により、半径で1mm以上あった。このすきまを1.2mmとしてエア冷却を実施すると、図20と図21に示す軸受温度と騒音値となる。エア冷却を行うことで、温度低下は大きくなる反面、冷却エアによる騒音値の増大が顕著となることがわかる。この騒音の音源は、冷却用エアノズルから吐出される際の噴射音である。この噴射音は、高圧エアがノズル出口部で急激に膨張することにより発生するものであると推定している。
図4は、内径φ70mmのアンギュラ玉軸受を用いて、すきまδaを0.3mmから1.7mmの範囲で変え、騒音値との関係を、軸受回転速度8000min−1と17000min−1で試験した結果を示している。前記騒音値は、主軸前端における軸芯位置で水平方向45度×1m離隔した位置で測定した。
ただし、すきまδaの最適値は、冷却に必要なエア流量とその排気、運転中の接触問題等を考慮して決定すべきである。以下の試験の結果によれば、すきまδaは半径で0.7mm以上とするのが良く、これ以上小さくすると、必要な排気面積が確保されず、冷却エア量が減少するため、冷却効果が低下してしまうことを確認している。
・ノズルの吐出口の直径;φ2mm 1本
・エア供給圧力;300kPa一定
・騒音測定位置;ノズル端(吐出口の先端)より水平に500mm離れた位置
図1に示すように、外輪間座4は、軸受内にエアオイルを供給する潤滑用ノズル25、25を有する。各潤滑用ノズル25、25は、軸受内に突出して内輪外径面3aとの間でエアオイル通過用の環状すきまδbを介して対面する先端部23を含む。換言すれば、潤滑用ノズル25の先端部23が、内輪外径面3aに被さるように軸受内に進入して配置される。また潤滑用ノズル25のうち軸受空間に進入する先端部23を、保持器9の内周面よりも半径方向内方に配設している。
内輪外径面3aにおける、潤滑用ノズル25の先端部23に対向する位置には、環状すきまδbが設けられている。環状すきまδbは、次のように設定される。外輪間座4のノズル10の総断面積よりも、内輪外径面3aと先端部23の内周面との間で形成される環状すきまδbの径方向断面積が大きくなるように、環状すきまδbが設定される。
この軸受装置には、エアオイルを排気するエアオイル排気口19を設けている。エアオイル排気口19は、外輪間座本体24における円周方向の一部に設けられた排気溝20と、ハウジング6に設けられ排気溝20に連通する軸受箱排気溝21および軸受箱排気孔22とを有する。外輪間座4の排気溝20は、エアオイル供給孔12が設けられる位置とは対角の円周方向位置にわたって形成され、軸方向に延びる軸受箱排気孔22に連通する。
軸受1の潤滑に供されたエアと油は、軸受内を軸方向に貫通して外部に放出されるのと、排気溝20より、軸受箱排気溝21および軸受箱排気孔22を経路として外部に放出される。またこの例では、エアオイルの排気経路と、冷却エアの排気経路とを共通化し、内輪間座冷却後の冷却エアを、エアオイル排気口19から排気する。
内輪間座5と外輪間座4とを使用して、内輪間座5の外周面に、外輪間座4に設けたノズル10より圧縮エアを吐出することで、間接的に軸受の冷却を行うことができる。外輪間座4の圧縮エアのノズル10を、回転方向L1の前方へ傾斜させたので、冷却用の圧縮エアは、ハウジング6に設けた冷却エア用供給孔13より、ノズル10を介して内輪間座5の外周面に吹き付けられる。これにより圧縮エアは、内輪間座5の外周面と外輪間座4の内周面との間の環状のすきま部で、旋回流となって内輪間座5を冷却する。結果、内輪間座5の端面と接触固定されている軸受内輪3が、熱伝導により冷却されることになる。圧縮エアは、内輪間座5および主軸7等の冷却に寄与した後、軸受内を通過させて軸受外部に排出するが、このとき軸受内の冷却も同時に行われることにもなる。このように圧縮エアを利用して効率的且つ合理的に軸受を冷却することができる。
運転中の軸受温度の低下が図れることで、軸受予圧の増大が緩和され、さらなる高速化すなわち加工効率の向上、または軸受寿命の延長が図れる。
運転中の軸受温度の低下により、軸受予圧の増大が緩和された分、初期予圧を大きくでき、低速での主軸剛性を高めると共に加工精度の向上が期待できる。
運転中に主軸温度が低下し、主軸7の熱膨張に起因した加工精度の劣化を減少できる。
潤滑用ノズル25から吐出されたエアオイルは、内輪外径面3aに付着され、油の表面張力と遠心力を利用して内輪3の軌道面に導入され軸受の潤滑に用いられる。また潤滑用ノズル25の先端部23を、保持器9の内周面よりも半径方向内方に配設したため、潤滑用ノズル25と保持器9とが干渉することを防止できるうえ、吐出された潤滑油を、内輪外径面3a、軌道面を介して保持器9の潤滑に用いることができる。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図7では外輪間座4に凸部26を設けたが、逆に、内輪間座5の外周面の軸方向両側部に、径方向外方に突出する環状の凸部を設けても良い。この場合にも、図7の例と同様の効果を奏する。
この構成によると、軸方向すきまδdおよび径方向すきまδcを設けたため、噴射音を軸方向すきまδd、径方向すきまδcにおいて段階的に低減することが可能となり、図7の構成よりも、さらに噴射音の遮音効果を高めることができる。
図12は、この冷却構造の遮音壁端部のすきま量Bと騒音との関係を示す図である。ノズル端部から噴射面までの間の距離Lが、例えば13.5mmで遮音壁がないときの騒音値は、図6の結果からもわかるように約83dBAである。図11に示すように、凸部26からなる遮音壁を設け、遮音壁端部のすきま量Bを例えば0.15mmとすることで、図12に示すように、遮音壁がない場合よりも騒音値は約10dBA低下した。遮音壁端部のすきま量Bが2mmくらいまでは、すきま量Bに比例した騒音値となることがわかる。すきま量Bが2〜4mm付近で騒音値の極大値を示す結果となっているが、これは共鳴によるものであった。
また図9の形態においては、運転中の遠心力による膨張分のすきま減少はないため、設定すきま量は、図7の形態に比べ、より小さくでき、遮音効果はより大きくなる。
なお、ノズル10を回転方向の前方へ傾斜させて設け、外輪間座4における、ノズル10の吐出口10aがある内周面と、吐出口10aに対向する内輪間座5の外周面との間のすきまδaを、0.7mm以上でかつノズル10の直径の1/2以下にした構成については、前記各実施形態と同様である。
2…外輪
3…内輪
4…外輪間座
5…内輪間座
6…ハウジング
7…主軸(回転軸)
8…転動体
9…保持器
10…ノズル
10a…吐出口
23…先端部
25…潤滑用ノズル
26…凸部
Claims (10)
- 軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座をそれぞれ介在させ、前記外輪および外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および内輪間座が回転軸に嵌合される軸受装置において、
前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座における、前記ノズルの吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまを、0.7mm以上でかつ前記ノズルの直径の1/2以下にしたことを特徴とする軸受装置の冷却構造。 - 請求項1において、前記外輪間座に、軸受内に潤滑油を供給する潤滑用ノズルを設けた軸受装置の冷却構造。
- 請求項2において、前記潤滑用ノズルは、前記内輪の軌道面に向け潤滑油を吐出するものとした軸受装置の冷却構造。
- 請求項2において、前記転がり軸受は、前記内外輪の軌道面間に介在する複数の転動体を保持する保持器を有し、前記潤滑用ノズルは、前記内輪の外径面に向け潤滑油を吐出するものとし、前記潤滑用ノズルのうち軸受空間に進入する先端部を、前記保持器の内周面よりも半径方向内方に配設した軸受装置の冷却構造。
- 軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座をそれぞれ介在させ、前記外輪および外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および内輪間座が回転軸に嵌合される軸受装置において、
前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座または前記内輪間座のうち、前記ノズルの吐出口の軸方向両側部に、半径方向に突出する凸部を設け、この凸部の半径方向先端部と対向する周面との間のすきまを、前記外輪間座の前記吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまよりも小さくしたことを特徴とする軸受装置の冷却構造。 - 請求項5において、前記凸部を、前記内輪間座の外周面における幅方向中間部に設け、
前記外輪間座に、軸受内に潤滑油を供給する潤滑用ノズルを設け、前記凸部の軸方向両側端面と、前記潤滑用ノズルの内側端面との間に、軸方向すきまを設けた軸受装置の冷却構造。 - 請求項6において、前記潤滑用ノズルは、前記内輪の軌道面または外径面に向け潤滑油を吐出するものとした軸受装置の冷却構造。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記転がり軸受が玉軸受またはころ軸受である軸受装置の冷却構造。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項の軸受装置の冷却構造を用いたスピンドル装置。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項の軸受装置の冷却構造を組み込んだ工作機械。
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