JP2014062616A - 軸受装置の冷却構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 圧縮空気を使用して、安価でしかも低騒音化を図ると共に効率的に内輪を冷却することができる軸受装置の冷却構造を提供する。
【解決手段】 この軸受装置の冷却構造は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受1、1の外輪3、3間および内輪2、2間に外輪間座4および内輪間座5をそれぞれ介在させ、外輪2および外輪間座4がハウジング6に設置され、内輪3および内輪間座5が主軸7に嵌合される。外輪間座4に、内輪間座5の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズル10を、回転方向の前方へ傾斜させて設け、外輪間座4における、ノズル10の吐出口がある内周面と、吐出口に対向する内輪間座5の外周面との間のすきまを、0.7mm以上でかつノズル10の直径の1/2以下にした。
【選択図】 図1

Description

この発明は、軸受装置の冷却構造に関し、例えば、工作機械の主軸装置における軸受の冷却構造に関する。
工作機械の主軸装置では、加工精度を確保するために、装置の温度上昇は小さく抑える必要がある。しかしながら最近の工作機械では、加工能率を向上させるため高速化の傾向にあり、主軸を支持する軸受からの発熱も高速化と共に大きくなってきている。また、装置内部に駆動用のモータを組込んだいわゆるモータビルトインタイプが多くなってきており、装置の発熱要因ともなってきている。
発熱による軸受の温度上昇は、軸受の予圧の増加をもたらす結果となり、主軸の高速化、高精度化を考えると極力抑えたい。主軸装置の温度上昇を抑えるための手段の一つとして、運転中の軸受を冷却する方法がある。その代表技術としては、以下のものがある(特許文献1,2)。
(1)複数列の軸受において、軸受間の空隙に、冷風を、軸の回転方向に対し、軸側の回転面を基準として−45°〜+45°の角度範囲で噴出させることによる軸の冷却方法が開示されている(特許文献1)。
(2)内輪間座を空冷する空気吹き出し口を軸受箱または主軸に設けたもので、圧縮空気を内輪間座に吹き付けて空冷することにより、軸受の内輪を間接的に冷却する方法が開示されている(特許文献2)。
特開2000−161375号公報 特開2000−296439号公報
運転中の軸受予圧は、内外輪の温度差に影響を受ける。一般的に鋼製の内外輪を使用して運転すると、内輪での発生熱は、軸受箱が油等で強制冷却される外輪側に比べ、放熱し難い。結果、温度は、内輪>外輪となってしまう。したがって内輪側での膨張量は、この発熱によるものと遠心力によるものが相俟って外輪側に比べ大きくなってしまう。このことが運転中の予圧増大をもたらす主要因となっている。
前記の従来技術は、いずれも内輪を冷却しながら内輪温度を下げるための技術であるが、その冷却媒体として圧縮空気を使用している。圧縮空気を使用した冷却は、比較的安価に装置の構築が可能である反面、空気の多量消費と騒音問題があった。
図20(A)は、提案例の軸受装置の冷却構造の断面図、同図(B)は、同冷却構造の要部の拡大断面図である。図21は、図20のA−A線断面図である。
内輪間座80の外径表面に冷却エアを軸回転方向に向けて噴射し、内輪間座80を介して軸受を冷却する図20,図21の構造において、軸受内輪81と外輪82の温度およびその時の騒音値を、回転速度との関係で試験した結果を図22,図23に示す。図22〜図23において、白抜きの結果は冷却がない場合の結果で、塗りつぶしは冷却を実施した場合の結果を示している。図22に示すように、エア冷却を実施することで、運転中の内輪81と外輪82の温度は低下し、軸受予圧の増加が抑制されていることが推定される。しかし、図23に示すように、騒音値は、エア冷却を実施することで、最大20dB(A)ほど大きくなってしまう。
この発明の目的は、圧縮空気を使用して、安価でしかも低騒音化を図ると共に効率的に内輪を冷却することができる軸受装置の冷却構造を提供することである。
この発明における第1の発明の軸受装置の冷却構造は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座をそれぞれ介在させ、前記外輪および外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および内輪間座が回転軸に嵌合される軸受装置において、
前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座における、前記ノズルの吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまを、0.7mm以上でかつ前記ノズルの直径の1/2以下にしたことを特徴とする。
この構成によると、内輪間座と外輪間座とを使用して、内輪間座の外周面に、外輪間座に設けたノズルより圧縮エアを吐出することで、間接的に軸受の冷却を行うことができる。外輪間座の圧縮エアのノズルを、回転方向の前方へ傾斜させたので、冷却用の圧縮エアは、外輪間座が設置されるハウジングに設けた給気口等より、ノズルを介して内輪間座の外周面に吹き付けられる。これにより圧縮エアは、内輪間座の外周面と外輪間座の内周面との間の環状のすきま部で、旋回流となって内輪間座を冷却する。結果、内輪間座の端面と接触固定されている軸受内輪が、熱伝導により冷却されることになる。圧縮エアは、内輪間座および回転軸(主軸等)の冷却に寄与した後、軸受内を通過させて軸受外部に排出するが、このとき軸受内の冷却も同時に行われることにもなる。このように圧縮エアを利用して効率的且つ合理的に軸受を冷却することができる。
またノズルの吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまを、前記ノズルの直径の1/2以下にしている。これにより、ノズルの吐出口の圧力を高くし、空気の急激な膨張を抑えることで、従来の圧縮空気を使用して冷却を行うものより、噴射音を低減することができる。前記すきまの上限は、運転中に生じる内輪間座の温度上昇と遠心力による膨張で内輪間座が、外輪間座に接触しないことと、すきまの全周断面積が、ノズルの総断面積よりも大きくなるように設定する。
前記すきまを半径で0.7mm以上とすることで、冷却効果を維持しつつ騒音の低減効果を併せて持つことを試験で見出した。軸受サイズ(間座の径)にかかわらず、0.7mm以上のすきまを確保することで、このような冷却効果を維持しつつ騒音の低減効果を併せて持つ効果が得られる。すきまをこれ以上小さくすると、必要な排気面積が確保されず、冷却エア量が減少するため、冷却効果が低下してしまうことを確認している。
したがって、軸受装置を複雑な構造とせず、また高価な付帯設備も必要なく軸受および主軸の温度を低下させることができるうえ、外部への騒音を低減することができる。
前記ノズルが直線状であって、このノズルは、外輪間座の軸心に垂直な断面における任意の半径方向の直線から、この直線と直交する方向にオフセットした位置にあるものとしても良い。ノズルの位置が前記のようにオフセットされることで、ノズルが回転軸表面の接線方向で且つ回転方向に向けられる。ノズルのオフセット量が大きくなるほど、内輪温度の降下を大きくすることが可能となる。
前記外輪間座に、軸受内に潤滑油を供給する潤滑用ノズルを設けたものとしても良い。この場合、潤滑用ノズルから吐出された潤滑油を、例えば内輪の軌道面に導入して軸受の潤滑に用いる。
前記潤滑油として、エアオイル、オイルミストを適用しても良い。
前記潤滑用ノズルは、前記内輪の軌道面に向け潤滑油を吐出するものとしても良い。この場合、内輪の軌道面に直接潤滑油を吐出することで、軸受運転中の潤滑状態を常に好適に維持することができる。
前記転がり軸受は、前記内外輪の軌道面間に介在する複数の転動体を保持する保持器を有し、前記潤滑用ノズルは、前記内輪の外径面に向け潤滑油を吐出するものとし、前記潤滑用ノズルのうち軸受空間に進入する先端部を、前記保持器の内周面よりも半径方向内方に配設しても良い。この場合、潤滑用ノズルから吐出された潤滑油は、内輪の外径面に付着する。この内輪の外径面に付着した潤滑油を、油の表面張力と遠心力を利用して内輪の軌道面に導入して軸受の潤滑に用いる。また潤滑用ノズルの先端部を、保持器の内周面よりも半径方向内方に配設したため、潤滑用ノズルと保持器とが干渉することを防止できるうえ、吐出された潤滑油を、内輪の外径面、軌道面を介して保持器の潤滑に用いることができる。
この発明における第2の発明の軸受装置の冷却構造は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座をそれぞれ介在させ、前記外輪および外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および内輪間座が回転軸に嵌合される軸受装置において、
前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座または前記内輪間座のうち、前記ノズルの吐出口の軸方向両側部に、半径方向に突出する凸部を設け、この凸部の半径方向先端部と対向する周面との間のすきまを、前記外輪間座の前記吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまよりも小さくしたことを特徴とする。
この構成によると、ノズルを回転方向の前方へ傾斜させたので、冷却用の圧縮エアがノズルから内輪間座の外周面に拭き付けられる。これにより圧縮エアは、内輪間座の外周面と外輪間座の内周面との間の環状のすきま部で、旋回流となって内輪間座を冷却する。結果、内輪間座の端面と接触固定されている軸受内輪が、熱伝導により冷却される。圧縮エアは、内輪間座および主軸等の冷却に寄与した後、軸受内を通過させて軸受外部に排出することで、軸受内の冷却も同時に行われる。
また外輪間座または内輪間座のうち、ノズルの吐出口の軸方向両側部に、半径方向に突出する凸部を設けたため、ノズルからのエア噴射音を凸部で遮断して外部への騒音漏洩を抑制している。外輪間座の前記吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまについては、圧縮エアの出口部での圧力が高くならないように、凸部の半径方向先端部と対向周面との間のすきまに比べ、比較的大きめとする。凸部の半径方向先端部と対向周面との間のすきまの量は、圧縮エアの排気を考慮して定められる。
以上説明したように、軸受装置を複雑な構造とせず、また高価な付帯設備も必要なく軸受および回転軸の温度を低下させることができるうえ、外部への騒音を低減し得る。
前記凸部の半径方向先端部と対向する周面との間のすきまにおける、最小の軸方向断面積が、前記ノズルの総断面積に対し、10倍以上15倍以下の面積となるように設定しても良い。前記ノズルの「総断面積」とは、各ノズルを同ノズルの軸線方向を含む平面で切断して見た断面における、面積のノズル個数分の総和を言う。前記「軸方向断面積」とは、この軸受装置のすきまのある部分を、軸受装置の軸心に垂直な平面で切断した断面において、凸部の半径方向先端部と対向する周面との間の環状部の面積を言う。
このようにすきまの軸方向断面積を設定することで、圧縮エア量の減少もなく、合理的な低騒音化が図れる。このすきまの軸方向断面積は、試験結果から見出された設定値である。
前記凸部を、前記内輪間座の外周面における幅方向中間部に設け、前記外輪間座に、軸受内に潤滑油を供給する潤滑用ノズルを設け、前記凸部の軸方向両側端面と、前記潤滑用ノズルの内側端面との間に、軸方向すきまを設けても良い。この軸方向すきまの大きさは、凸部の径方向のすきまの場合と同様に設定される。
前記潤滑用ノズルは、前記内輪の軌道面または外径面に向け潤滑油を吐出するものとしても良い。
前記転がり軸受が玉軸受またはころ軸受であっても良い。
この発明のスピンドル装置は、前記いずれかの軸受装置の冷却構造を用いたものである。
この発明の工作機械は、前記いずれかの軸受装置の冷却構造を組み込んだものである。工作機械に、いずれかの軸受装置の冷却構造を組み込んだ場合、運転中の軸受温度の低下が図れることで、軸受予圧の増大が緩和され、軸受のさらなる高速化、すなわち加工能率の向上または軸受寿命の延長を図ることができる。運転中の回転軸および軸受温度の低下により、軸受予圧の増大が緩和された分、初期予圧を大きくすることができ、低速での回転軸剛性を高めると共に加工精度の向上が期待できる。運転中に回転軸の温度が低下し、回転軸の熱膨張に起因した加工精度の劣化を減少させることができる。
この発明の第1の発明における軸受装置の冷却構造は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座をそれぞれ介在させ、前記外輪および外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および内輪間座が回転軸に嵌合される軸受装置において、前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座における、前記ノズルの吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまを、0.7mm以上でかつ前記ノズルの直径の1/2以下にした。このため、圧縮空気を使用して、安価でしかも低騒音化を図ると共に効率的に内輪を冷却することができる。
この発明の第2の発明における軸受装置の冷却構造は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座をそれぞれ介在させ、前記外輪および外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および内輪間座が回転軸に嵌合される軸受装置において、前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座または前記内輪間座のうち、前記ノズルの吐出口の軸方向両側部に、半径方向に突出する凸部を設け、この凸部の半径方向先端部と対向する周面との間のすきまを、前記外輪間座の前記吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまよりも小さくした。このため、圧縮空気を使用して、安価でしかも低騒音化を図ると共に効率的に内輪を冷却することができる。
この発明の第1の実施形態に係る軸受装置の冷却構造の断面図である。 同軸受装置の冷却構造の要部の拡大断面図である。 図1の III - III 線断面図である。 内外輪間座径方向すきまと騒音値の関係を示す図である。 同冷却構造のノズル端からの距離と騒音との関係を調査する試験方法を説明する図である。 同冷却構造のノズル端からの距離と騒音との関係を示す図である。 この発明の第2の実施形態に係る軸受装置の冷却構造の要部の拡大断面図である。 同軸受装置の冷却構造の要部を部分的に変更した断面図である。 同軸受装置の冷却構造の要部の拡大断面図である。 図8の X - X 線断面図である。 同冷却構造において、騒音源となるノズルからの噴射音に対し、遮音壁端部のすきま量による遮音効果を調査する試験方法を説明する図である。 同冷却構造の遮音壁端部のすきま量と騒音との関係を示す図である。 この発明の第3の実施形態に係る軸受装置の冷却構造の断面図である。 同軸受装置の冷却構造の要部の拡大断面図である。 図13の XV - XV 線断面図である。 同軸受装置の冷却構造の要部を部分的に変更した拡大断面図である。 この発明のさらに他の実施形態に係る軸受装置の断面図である。 図17の要部の部分拡大図である。 前記いずれかの軸受装置の冷却構造を、工作機械主軸装置に適用した例を示す断面図である。 (A)は、提案例の軸受装置の冷却構造の断面図、(B)は、同冷却構造の要部の拡大断面図である。 図20のA−A線断面図である。 冷却の有無による軸受装置の回転速度と温度との関係を示す図である。 冷却の有無による軸受装置の回転速度と騒音値との関係を示す図である。
この発明の第1の実施形態に係る軸受装置の冷却構造を図1ないし図6と共に説明する。この例の軸受装置の冷却構造は、例えば、後述する工作機械主軸装置等に適用される。ただし、工作機械主軸装置だけに限定されるものではない。以下の説明は、軸受の冷却方法についての説明をも含む。
図1に示すように、この軸受装置は、軸方向に並ぶ複数の転がり軸受1、1の外輪2、2間および内輪3、3間に、外輪間座4および内輪間座5をそれぞれ介在させている。また外輪2および外輪間座4がハウジング6に設置され、内輪3および内輪間座5が回転軸(主軸)7に嵌合される。各転がり軸受1として、内輪3の温度上昇が大きくなって、予圧過大が問題となる高速用主軸ユニットの前側に使用されるアンギュラ玉軸受への適用を考える。同図に示すように、これらアンギュラ玉軸受が背面組合せで設置され、内輪外径面および外輪内径面における接触角の反偏り側に、それぞれカウンタボアが設けられている。内輪3のカウンタボアは、内輪端面側から軌道面側に向かうに従って、大径となるように傾斜する傾斜面に形成されている。内外輪3、2の軌道面間に複数の転動体8が介在され、これら転動体8が保持器9により円周等配に保持される。保持器9は外輪案内形式のリング形状から成る。軸受すきまの設定は、内輪間座5と外輪間座4の幅寸法差で行われる。これら軸受1、1の潤滑は、高速運転に適したエアオイル潤滑としている。
冷却構造について説明する。
図3は、図1の III - III 線断面図である。図2に示すように、この例の外輪間座4は、外輪間座本体24と、この外輪間座本体24とは別体に構成された潤滑用ノズル25、25(後述する)とを有する。外輪間座本体24は断面略T字形状に形成され、外輪間座本体24の両側部に、リング状の潤滑用ノズル25、25がそれぞれ嵌め込まれて左右対称に固定されている。外輪間座本体24に、内輪間座5の外周面に向けて圧縮エアを吐出する1個または複数個(この例では3個)のノズル10を設けている。これらノズル10のエア吐出方向を、それぞれ主軸7の回転方向L1の前方へ傾斜させている。これら複数個のノズル10は円周等配に配設されている。各ノズル10は、それぞれ直線状であって、外輪間座4の軸心に垂直な断面における任意の半径方向の直線L2から、この直線L2と直交する方向にオフセットした位置にある。ノズル10をオフセットさせる理由は、吐出エアを主軸7の回転方向に旋回流として作用させて、冷却効果の向上を目的としている。ノズル10のオフセット量は、内輪間座5の外径寸法(D)に対して、0.8D/2 以上 D/2 以下の範囲にする。この範囲は、試験の結果によるもので、冷却効果が最も大きくなる。
外輪間座本体24の外周面には、冷却エアである圧縮エアを導入する導入溝11が設けられている。この導入溝11は、外輪間座4の外周面における軸方向中間部に設けられ、且つ、各ノズル10に連通する円弧状に形成されている。導入溝11は、外輪間座本体24の外周面において、後述のエアオイル供給孔(図示せず)が設けられる円周方向位置を除く円周方向の大部分を占める角度範囲α1にわたって設けられている。圧縮エアの導入経路は、軸受潤滑用のエアオイルとは独立経路で構成される。よって図1に示すように、ハウジング6に冷却エア用供給孔13が設けられ、この冷却エア用供給孔13に導入溝11が連通するように構成されている。ハウジング6の外部には、冷却エア用供給孔13に圧縮エアを供給する図示外の供給装置が配管接続されている。
低騒音化手段について説明する。本手段の要点は、図2に示すように、内輪間座5と、潤滑用ノズル25、25および外輪間座本体24で形成される外輪間座4との間で形成される間座間の径方向すきまδaの大きさである。
図18に示した従来構成の場合、このすきまは組込み性、加工精度等の都合により、半径で1mm以上あった。このすきまを1.2mmとしてエア冷却を実施すると、図20と図21に示す軸受温度と騒音値となる。エア冷却を行うことで、温度低下は大きくなる反面、冷却エアによる騒音値の増大が顕著となることがわかる。この騒音の音源は、冷却用エアノズルから吐出される際の噴射音である。この噴射音は、高圧エアがノズル出口部で急激に膨張することにより発生するものであると推定している。
本実施形態では、出口部での急激な圧力変化を抑制することで、噴射音の低減を図ることを目的としている。具体的には、図2に示すように、内輪間座5と外輪間座4との間で形成されるすきまδaを、従来構成よりも小さくするものである。つまり外輪間座4におけるノズル10の吐出口10aがある内周面と、吐出口10aに対向する内輪間座5の外周面との間の径方向すきまδaを、0.7mm以上でかつノズル10の直径の1/2以下としている。またこの例では、外輪間座4の内周面全体、内輪間座5の外周面全体が、それぞれ円筒面状に形成されている。したがって、外輪間座4の内周面全体が、内輪間座5の外周面に対し径方向に対向するように設けられる。
図4は、内径φ70mmのアンギュラ玉軸受を用いて、すきまδaを0.3mmから1.7mmの範囲で変え、騒音値との関係を、軸受回転速度8000min−1と17000min−1で試験した結果を示している。前記騒音値は、主軸前端における軸芯位置で水平方向45度×1m離隔した位置で測定した。
図4において白抜きデータは冷却を行わない場合の結果であり、すきまδaによる騒音値への影響は小さいことがわかる。同図における塗りつぶしのデータは、エアの吐出圧力400kPaで冷却を行った場合の結果で、すきまδaが小さくなる程騒音値は小さくなっている。すきまδaが1.7mmの時の騒音値が95dB(A)であったのに対し、すきまδaを0.3mmまで小さくすると、騒音値は80dB(A)まで低減されている。これは、すきまδaを小さくすることで、ノズル10の吐出口10aでの圧力が高くなり、エアの急激な膨張が抑えられたためと推定される。この場合、ノズル10の直径に対するすきまδaの大きさが、ノズル出口部の圧力分布に影響を及ぼすと予想される。
以上の考察と実験結果から、エア噴射音を効果的に抑制するためには、すきまδaをノズル10の直径の1/2以下ととするべきであると考えられる。
ただし、すきまδaの最適値は、冷却に必要なエア流量とその排気、運転中の接触問題等を考慮して決定すべきである。以下の試験の結果によれば、すきまδaは半径で0.7mm以上とするのが良く、これ以上小さくすると、必要な排気面積が確保されず、冷却エア量が減少するため、冷却効果が低下してしまうことを確認している。
図5は、この実施形態の冷却構造のノズル端からの距離と騒音との関係を調査する試験方法を説明する図である。試験に際しての条件は以下の通りである(図11の試験についても同じ)。なおノズル端(吐出口の先端)から噴射面までの距離をLとする。
・ノズルの吐出口の直径;φ2mm 1本
・エア供給圧力;300kPa一定
・騒音測定位置;ノズル端(吐出口の先端)より水平に500mm離れた位置
図6は、この冷却構造のノズル端からの距離Lと騒音との関係を示す図である。同図によると、騒音は概してノズル端からの距離に比例して大きくなることがわかる。すなわち騒音の低減を図るには、ノズル端とその噴射面までの距離をできるだけ小さくすることが有効となる。本実施形態の冷却構造で考えると、外輪間座における、ノズルの吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する内輪間座の外周面との間の距離(すきま)は、運転中の遠心力と温度上昇による内輪間座膨張量を考慮して、内・外輪間座が接触しない程度の量とすることが騒音低減には最も有効となることがわかる。
ただし図6においてノズル端からの距離が0から0.7mm未満の範囲では、距離小による吐出抵抗がエア量を減少させる傾向が認められ、冷却を目的とする本発明では、必要エア量を確保しながらノズル端から内輪間座までの間の距離を可能な限り小さくしたい。このことから、ノズル端から噴射面までの距離としては、冷却効果の低下の問題および運転中の接触問題を回避できる0.7mm以上にするのが合理的であるといえる。
潤滑構造について説明する。
図1に示すように、外輪間座4は、軸受内にエアオイルを供給する潤滑用ノズル25、25を有する。各潤滑用ノズル25、25は、軸受内に突出して内輪外径面3aとの間でエアオイル通過用の環状すきまδbを介して対面する先端部23を含む。換言すれば、潤滑用ノズル25の先端部23が、内輪外径面3aに被さるように軸受内に進入して配置される。また潤滑用ノズル25のうち軸受空間に進入する先端部23を、保持器9の内周面よりも半径方向内方に配設している。
図2に示すように、外輪間座本体24において、各潤滑用ノズル25との当接面である両側面24a、24aおよび内周面24b、24bには、それぞれ研摩加工が施されている。これら各側面24aと内周面24bとの隅部には、それぞれ研摩盗みが設けられている。各潤滑用ノズル25の内側面および外周面にも、それぞれ研摩加工が施されている。また各潤滑用ノズル25のうち各側面24aとの当接面には、エアオイル漏れを防ぐ環状のシール部材(図示せず)が設けられている。
外輪間座本体24には、各潤滑用ノズル25、25に連通するエアオイル供給孔(図示せず)がそれぞれ設けられている。各エアオイル供給孔は、外輪間座本体24の外周面から径方向内方に所定深さ形成され、孔底付近部にて潤滑用ノズル25に連通する。各潤滑用ノズル25内のエアオイル供給口16は、基端側から対象とする軸受側に向かうに従って内径側に至るように傾斜する傾斜角度をもつ貫通孔状に形成されている。この例の各エアオイル供給口16は、潤滑用ノズル25の先端部23から定められた圧力で吐出されたエアオイルが、図1に示すように、内輪外径面3aにおける環状凹み部3aaに吐出されるように傾斜角度が規定される。
内輪外径面3aにおける、潤滑用ノズル25の先端部23に対向する位置には、環状すきまδbが設けられている。環状すきまδbは、次のように設定される。外輪間座4のノズル10の総断面積よりも、内輪外径面3aと先端部23の内周面との間で形成される環状すきまδbの径方向断面積が大きくなるように、環状すきまδbが設定される。
ハウジング6にエアオイル用の軸受箱供給孔(図示せず)が設けられ、この軸受箱供給孔に前記エアオイル供給孔が連通する。ハウジング6の外部には、軸受箱供給孔にエアオイルを供給する図示外のエアオイル供給装置が配管接続されている。運転中、エアオイル供給装置から供給されたエアオイルは、順次、軸受箱供給孔→エアオイル供給孔→エアオイル供給口16→内輪外径面3aに吐出されるようになっている。内輪外径面3aに付着したエアオイルを、油の表面張力と遠心力を利用して内輪3の軌道面に導入して軸受の潤滑に用いる。
排気構造について説明する。
この軸受装置には、エアオイルを排気するエアオイル排気口19を設けている。エアオイル排気口19は、外輪間座本体24における円周方向の一部に設けられた排気溝20と、ハウジング6に設けられ排気溝20に連通する軸受箱排気溝21および軸受箱排気孔22とを有する。外輪間座4の排気溝20は、エアオイル供給孔12が設けられる位置とは対角の円周方向位置にわたって形成され、軸方向に延びる軸受箱排気孔22に連通する。
軸受1の潤滑に供されたエアと油は、軸受内を軸方向に貫通して外部に放出されるのと、排気溝20より、軸受箱排気溝21および軸受箱排気孔22を経路として外部に放出される。またこの例では、エアオイルの排気経路と、冷却エアの排気経路とを共通化し、内輪間座冷却後の冷却エアを、エアオイル排気口19から排気する。
作用効果について説明する。
内輪間座5と外輪間座4とを使用して、内輪間座5の外周面に、外輪間座4に設けたノズル10より圧縮エアを吐出することで、間接的に軸受の冷却を行うことができる。外輪間座4の圧縮エアのノズル10を、回転方向L1の前方へ傾斜させたので、冷却用の圧縮エアは、ハウジング6に設けた冷却エア用供給孔13より、ノズル10を介して内輪間座5の外周面に吹き付けられる。これにより圧縮エアは、内輪間座5の外周面と外輪間座4の内周面との間の環状のすきま部で、旋回流となって内輪間座5を冷却する。結果、内輪間座5の端面と接触固定されている軸受内輪3が、熱伝導により冷却されることになる。圧縮エアは、内輪間座5および主軸7等の冷却に寄与した後、軸受内を通過させて軸受外部に排出するが、このとき軸受内の冷却も同時に行われることにもなる。このように圧縮エアを利用して効率的且つ合理的に軸受を冷却することができる。
ノズル10の吐出口10aがある内周面と、吐出口10aに対向する内輪間座5の外周面との間のすきまδaを、ノズル10の直径の1/2以下にしていることにより、ノズル10の吐出口10aの圧力を高くし、空気の急激な膨張を抑えることで、従来の圧縮空気を使用して冷却を行うものより、噴射音を低減することができる。すきまδaを半径で0.7mm以上とすることで、冷却効果を維持しつつ騒音の低減効果を併せて持つことを試験で見出した。すきまδaをこれ以上小さくすると、必要な排気面積が確保されず、冷却エア量が減少するため、冷却効果が低下してしまうことを確認している。
したがって、軸受装置を複雑な構造とせず、また高価な付帯設備も必要なく軸受1および主軸7の温度を低下させることができるうえ、外部への騒音を低減することができる。
運転中の軸受温度の低下が図れることで、軸受予圧の増大が緩和され、さらなる高速化すなわち加工効率の向上、または軸受寿命の延長が図れる。
運転中の軸受温度の低下により、軸受予圧の増大が緩和された分、初期予圧を大きくでき、低速での主軸剛性を高めると共に加工精度の向上が期待できる。
運転中に主軸温度が低下し、主軸7の熱膨張に起因した加工精度の劣化を減少できる。
ノズル10が直線状で前記のようにオフセットされることで、ノズル10が主軸表面の接線方向で且つ回転方向に向けられる。ノズル10のオフセット量が大きくなるほど、内輪温度の降下を大きくすることが可能となる。
潤滑用ノズル25から吐出されたエアオイルは、内輪外径面3aに付着され、油の表面張力と遠心力を利用して内輪3の軌道面に導入され軸受の潤滑に用いられる。また潤滑用ノズル25の先端部23を、保持器9の内周面よりも半径方向内方に配設したため、潤滑用ノズル25と保持器9とが干渉することを防止できるうえ、吐出された潤滑油を、内輪外径面3a、軌道面を介して保持器9の潤滑に用いることができる。
この発明の他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図7に示すように、外輪間座4のうち、ノズル10の吐出口10aの軸方向両側部に、半径方向に突出する凸部26、26をそれぞれ設けても良い。これら凸部26、26により、ノズル10からのエア噴射音を遮断して外部への騒音漏洩を抑制している。この例では、外輪間座4における各潤滑用ノズル25の内径部のうち軸方向外側部に、半径方向に内方に突出する環状の凸部26が設けられている。この凸部26は、エアオイル供給口16の先端部よりも軸方向内側に配設される。各潤滑用ノズル25の内径部において、凸部26の形成されていない内周面25aが、外輪間座本体24の内周面に略同径に連なる。
また凸部26の半径方向先端部と対向する内輪間座5の外周面との間のすきまδcを、外輪間座4の吐出口10aがある内周面と、吐出口10aに対向する内輪間座5の外周面との間のすきまδdよりも小さくしている。換言すると、冷却エア吐出口部での内輪間座5と外輪間座4との間のすきまδdについては、エアの出口部圧力が高くならないような比較的大きめとしている。
凸部26と内輪間座5の外周面との間の径方向すきまδcの量は、冷却エアの排気を考慮してノズル10の総断面積に対し、10倍程度になるすきま面積とする。このすきま面積とは、径方向すきまδcに凸部26の円周長さを乗じた値である。これは試験の結果から見出した結果であり、前記の径方向すきまδcに規定することで、冷却エア量の減少もなく、合理的な低騒音化が図れる。
なお図7の構成では、潤滑用ノズル25の内径部に段差を形成して凸部26を設けているが、段差を形成することなく凸部26を設けても良い。つまり潤滑用ノズル25の内径面と内輪間座が相対する全幅で径方向すきまδcを構成し、試験を実施した図7の構成よりも、凸部26の軸方向長さを長くしても良い。この場合、潤滑用ノズル25の内径部に段付き加工を施す必要がなく、工数低減を図ることができる。
図7では外輪間座4に凸部26を設けたが、逆に、内輪間座5の外周面の軸方向両側部に、径方向外方に突出する環状の凸部を設けても良い。この場合にも、図7の例と同様の効果を奏する。
図8、図9に示すように、凸部26を、内輪間座5の外周面における幅方向中間部に設け、凸部26の軸方向両側端面と、潤滑用ノズル25の内側端面との間に、軸方向すきまδdを設けても良い。この軸方向すきまδdの大きさは、径方向すきまδcの場合と同様に、冷却エアの排気を考慮してノズル10の総断面積に対し、10倍程度になるすきま面積とする。このすきま面積における最小断面積は、軸方向の微小すきまを有する範囲の最内径部で形成されるため、この最内径部の円周方向長さに、軸方向すきまδdを乗じたすきま面積を基準とすれば良い。図10は図8の x - x 線断面図である。図8、図9の構成においても、第1の実施形態と同様に、図10に示すように、ノズル10を回転方向の前方へ傾斜させ、ノズル10の位置をオフセットさせている(図7についても同じ)。
この構成によると、軸方向すきまδdおよび径方向すきまδcを設けたため、噴射音を軸方向すきまδd、径方向すきまδcにおいて段階的に低減することが可能となり、図7の構成よりも、さらに噴射音の遮音効果を高めることができる。
図11は、この冷却構造において、騒音源となるノズル10からの噴射音に対し、遮音壁端部のすきま量による遮音効果を調査する試験方法を説明する図である。試験に際しての条件は、前述の図5の条件と同じである。
図12は、この冷却構造の遮音壁端部のすきま量Bと騒音との関係を示す図である。ノズル端部から噴射面までの間の距離Lが、例えば13.5mmで遮音壁がないときの騒音値は、図6の結果からもわかるように約83dBAである。図11に示すように、凸部26からなる遮音壁を設け、遮音壁端部のすきま量Bを例えば0.15mmとすることで、図12に示すように、遮音壁がない場合よりも騒音値は約10dBA低下した。遮音壁端部のすきま量Bが2mmくらいまでは、すきま量Bに比例した騒音値となることがわかる。すきま量Bが2〜4mm付近で騒音値の極大値を示す結果となっているが、これは共鳴によるものであった。
遮音壁端部のすきま量を小さくすることで遮音効果があることから、すきま量は可能な限り小さくしたい。図7の場合の凸部26からなる遮音壁端部のすきま量Bは、運転中の内輪間座5の外周面が、径方向膨張で外輪間座4の内周面に接触しない程度とするのが良い。具体的には、使用する最高回転速度での内輪間座の膨張量に対し、間座の加工精度と膨張後のすきま量確保を考慮して約5倍程度の径方向すきま量を設定すれば良い。例えば、運転時の内輪間座の膨張量が半径で0.05mmとすれば、設定すきまは0.25mm程度(運転中のすきまは0.25mm−0.05mm)とすることで、約10dBAの低騒音化が可能となる。
また図9の形態においては、運転中の遠心力による膨張分のすきま減少はないため、設定すきま量は、図7の形態に比べ、より小さくでき、遮音効果はより大きくなる。
図13に示すように、内輪3の軌道面に向け潤滑用ノズル25からエアオイルを直接吐出する構成としても良い。図14は図13の要部の拡大断面図である。この例では、潤滑用ノズル25のエアオイル供給口16から定められた圧力で吐出されたエアオイルが、例えば、内輪軌道面と転動体8との境界付近に当たるように、エアオイル供給口16の傾斜角度が規定される。この構成例は、第1の実施形態と同様なコンセプトによる低騒音化例で、外輪間座本体24と潤滑用ノズル25の内径寸法は同一であり、内輪間座5とのすきまδaを第1の実施形態と同様とした例である。図15は図13の XV - XV 線断面図である。図13、図14の構成においても、第1の実施形態と同様に、図15に示すように、ノズル10を回転方向L1の前方へ傾斜させ、ノズル10の位置をオフセットさせている(後述の図16についても同じ)。
図16に示すように、内輪の軌道面に向け潤滑用ノズル25からエアオイルを直接吐出する構成で、且つ、潤滑用ノズル25の内径部を、外輪間座本体24の内周面よりも半径方向内方に突出させても良い。また潤滑用ノズル25の内径部と内輪間座5の外周面との間のすきまδcを、図7の例と同様に、外輪間座4の吐出口10aがある内周面と、吐出口10aに対向する内輪間座5の外周面との間のすきまδdよりも小さくしている。図16の例においても、図7の例と同様に径方向すきまδcを規定することで、冷却エア量の減少もなく、合理的な低騒音化が図れる。
図17,18に示すように、グリース潤滑される軸受装置において、障害壁33を設けても良い。この障害壁33は、内輪間座5の軸方向両端部に、外径側に張り出して吐出口10aから吐出された圧縮エアが、内外輪3,2間の軸受空間S1へ流入するのを阻止する。この例では、障害壁33は、軸方向の転がり軸受1に近い側ほど外径側への張り出し量が大きいテーパ形状である。また、外輪間座4の軸方向端面には、吐出口10aから吐出された圧縮エアAの排出口となる切欠き34が設けられている。切欠き34は例えば矩形の断面形状であり、外輪間座4に隣接して転がり軸受1の外輪2が配置されることで、切欠き34が、外輪間座4と内輪間座5間の間座空間S2と軸受装置Jの外部とを連通する開口形状となる。なおこの構成において、外輪間座4を組立可能にするため(外輪間座4の内周と障害壁33との干渉を防ぐため)、内輪間座5は、例えば、軸方向中間部が分割された二つの内輪間座分割体からなる。
図17の部分拡大図である図18に示すように、障害壁33の外径端は、外輪間座4の内周面と僅かな径方向すきまδ2を介して対向している。また、障害壁33の端面は前記軸方向内側のシール部材31と僅かな軸方向すきまδ3を介して対向している。これにより、シール部材31と障害壁33とでラビリンスシール効果を持つラビリンスシール部35が構築され、このラビリンスシール部35により軸受空間S1と間座空間S2とが隔てられている。
なお、ノズル10を回転方向の前方へ傾斜させて設け、外輪間座4における、ノズル10の吐出口10aがある内周面と、吐出口10aに対向する内輪間座5の外周面との間のすきまδaを、0.7mm以上でかつノズル10の直径の1/2以下にした構成については、前記各実施形態と同様である。
図17および図18の構成によると、吐出口10aから吐出された圧縮エアAは、内輪間座5に衝突した後、内輪間座5の外周面に沿って軸方向両側へ流れ、さらに内輪間座5の障害壁33のテーパ状外径面に沿って外径側へ導かれて、外輪間座4の切欠き34から排出される。障害壁33によって圧縮エアAを外径側へ導くことにより、間座空間S2での圧縮エアAの流れ、ならびに間座空間S2からの圧縮エアAの排出がスムーズになる。圧縮エアAが間座空間S2を通過する間に、軸受装置Jおよびこの軸受装置Jに支持された主軸7(図1)の熱を奪う。それにより、軸受装置Jおよび主軸7(図1)が効率良く冷却される。
内輪間座5の軸方向両端に障害壁33が設けられていることにより、圧縮エアAが軸受空間S1へ流入することが阻止される。特にこの実施形態では、軸受空間S1と間座空間S2とがラビリンスシール部35により隔てられているため、圧縮エアAの軸受空間S1への流入をより一層効果的に阻止できる。さらに、間座空間S2において圧縮エアAがスムーズに流れるため、間座空間S2の内圧が軸受空間S1の内圧よりも低くなっており、圧縮エアAが軸受空間S1に流入し難い。これらのことから、圧縮エアAが軸受空間S1に流入することを極力抑えることができ、軸受空間S1に封入されたグリースが圧縮エアAで排除されることが防がれる。そのため、良好な潤滑状態を維持することができる。
図19は、前記いずれかの軸受装置の冷却構造を、工作機械主軸装置に適用した例を示す断面図である。いずれかの実施形態に係る軸受装置の転がり軸受として、ワークが取付けられる主軸7の前端側に、ラジアル負荷とアキシアル負荷を受けるアンギュラ玉軸受を背面組合せで配置している。主軸7の後端側に、ラジアル荷重を受けながら軸の振れ止めを目的とする円筒ころ軸受27を嵌合している。内外輪3,2は、内輪押え28および外輪押え29等により主軸7およびハウジング6にそれぞれ固定されている。
前記いずれかの軸受装置の冷却構造を、工作機械主軸装置に適用した場合、軸受装置を複雑な構造とせず、また高価な付帯設備も必要なく軸受1および主軸7の温度を低下させることができるうえ、外部への騒音を低減することができる。また運転中の軸受温度の低下が図れることで、軸受予圧の増大が緩和され、軸受1のさらなる高速化、すなわち加工能率の向上または軸受寿命の延長を図ることができる。運転中の主軸7および軸受温度の低下により、軸受予圧の増大が緩和された分、初期予圧を大きくすることができ、低速での主軸剛性を高めると共に加工精度の向上が期待できる。運転中に主軸7の温度が低下し、主軸7の熱膨張に起因した加工精度の劣化を減少させることができる。
1…転がり軸受
2…外輪
3…内輪
4…外輪間座
5…内輪間座
6…ハウジング
7…主軸(回転軸)
8…転動体
9…保持器
10…ノズル
10a…吐出口
23…先端部
25…潤滑用ノズル
26…凸部

Claims (10)

  1. 軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座をそれぞれ介在させ、前記外輪および外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および内輪間座が回転軸に嵌合される軸受装置において、
    前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座における、前記ノズルの吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまを、0.7mm以上でかつ前記ノズルの直径の1/2以下にしたことを特徴とする軸受装置の冷却構造。
  2. 請求項1において、前記外輪間座に、軸受内に潤滑油を供給する潤滑用ノズルを設けた軸受装置の冷却構造。
  3. 請求項2において、前記潤滑用ノズルは、前記内輪の軌道面に向け潤滑油を吐出するものとした軸受装置の冷却構造。
  4. 請求項2において、前記転がり軸受は、前記内外輪の軌道面間に介在する複数の転動体を保持する保持器を有し、前記潤滑用ノズルは、前記内輪の外径面に向け潤滑油を吐出するものとし、前記潤滑用ノズルのうち軸受空間に進入する先端部を、前記保持器の内周面よりも半径方向内方に配設した軸受装置の冷却構造。
  5. 軸方向に並ぶ複数の転がり軸受の外輪間および内輪間に外輪間座および内輪間座をそれぞれ介在させ、前記外輪および外輪間座がハウジングに設置され、前記内輪および内輪間座が回転軸に嵌合される軸受装置において、
    前記外輪間座に、前記内輪間座の外周面に向けて圧縮エアを吐出するノズルを、回転方向の前方へ傾斜させて設け、前記外輪間座または前記内輪間座のうち、前記ノズルの吐出口の軸方向両側部に、半径方向に突出する凸部を設け、この凸部の半径方向先端部と対向する周面との間のすきまを、前記外輪間座の前記吐出口がある内周面と、前記吐出口に対向する前記内輪間座の外周面との間のすきまよりも小さくしたことを特徴とする軸受装置の冷却構造。
  6. 請求項5において、前記凸部を、前記内輪間座の外周面における幅方向中間部に設け、
    前記外輪間座に、軸受内に潤滑油を供給する潤滑用ノズルを設け、前記凸部の軸方向両側端面と、前記潤滑用ノズルの内側端面との間に、軸方向すきまを設けた軸受装置の冷却構造。
  7. 請求項6において、前記潤滑用ノズルは、前記内輪の軌道面または外径面に向け潤滑油を吐出するものとした軸受装置の冷却構造。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記転がり軸受が玉軸受またはころ軸受である軸受装置の冷却構造。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれか1項の軸受装置の冷却構造を用いたスピンドル装置。
  10. 請求項1ないし請求項8のいずれか1項の軸受装置の冷却構造を組み込んだ工作機械。
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