JP2014056631A - 熱アシスト記録用磁気ヘッドに用いられる近接場光発生膜、および磁気ヘッド、並びにスパッタリングターゲット - Google Patents

熱アシスト記録用磁気ヘッドに用いられる近接場光発生膜、および磁気ヘッド、並びにスパッタリングターゲット Download PDF

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Abstract

【課題】光学特性(低屈折率、高消衰係数)と耐熱性(熱履歴後の膜表面平滑性)に優れた特性を有する近接場光発生膜に好適にAg合金膜、および該Ag合金膜を備えた磁気ヘッド、並びに該Ag合金膜の成膜に好適なスパッタリングターゲットを提供すること。
【解決手段】本発明の熱アシスト記録用磁気ヘッドに用いられる近接場光発生膜は、Bi:0.05〜0.2%、Nd:0.1〜1.0%、およびSi:0.09〜1.0%を含むAg合金膜で構成されていると共に、前記Ag合金膜に含まれるBi、Nd、およびSiの合計量が0.6〜1.3%であること。
【選択図】なし

Description

本発明は熱アシスト磁気記録方式で使用する磁気ヘッドのファイバプローブに形成される近接場光発生膜として有用なAg合金膜、それを用いて構成される磁気ヘッド、および該Ag合金膜の成膜に好適なスパッタリングターゲットに関する。
情報化社会の進展に伴い流通する情報量は急激な増大が続いており、こうした大容量の情報を蓄積できる情報記録媒体が求められている。現在、情報記録媒体として、DVDやブルーレイディスク等の光記録媒体と磁気記録媒体などが普及している。しかしながら光記録媒体では、光源から出射されたレーザ光の回折限界を超えたサイズまで集光できない。そのため、いわゆるサイドイレーズ(隣接トラックに対する誤書き込みや誤消去)の問題を生じる恐れがあり、トラック間距離がレーザ光径よりも小さくなる1Tbit/inch2以上の超高記録密度を達成することが困難であった。
一方、磁気記録媒体において、近年、超高記録密度化を達成する技術として、近接場光(物質に光を入射したときに物質の表面に発生する伝播しない光)を利用した熱アシスト磁気記録方式が提案されている。熱アシスト磁気記録方式とは、図1に示すように光スポットを磁気記録媒体に照射して温度を上げ、熱スポットが形成される媒体部分の保磁力を低下させた状態で磁気記録をおこなうものである。近接場光は、波長に比べて小さな開口(微小開口)に光を入射させると、開口と同程度の領域に発生させることができるため、たとえば光源波長以下の大きさの微小開口直径と同程度の大きさの寸法の光、すなわち回折限界を超えた寸法の光を利用することが可能である。このような近接場光を用いた熱アシスト磁気記録方式は、従来のレーザ光の回折限界の問題を解消して1Tbit/inch2以上の超高記録密度化を達成可能な技術として研究・開発が進められている。
近接場光は一般的にファイバプローブ(光波長以下の微小開口をもつ先鋭化された光ファイバのコア)先端から発生させているが、導波路部と先端の近接場発光部に大別され、具体的には図2〜4(A、B)に示すように光源(半導体レーザ4)から出射した光を、微小開口15以外のプローブ先端部分が近接場光発生膜16で被覆されている光ファイバ(コア6)に導入して、該近接場光発生膜16表面を照射して、先端部において該近接場光発生膜16表面上にプラズモンを励起し、微小開口15近傍に近接場光11を発生させている。このような近接場光発生膜16を形成する金属薄膜として、たとえば特許文献1にはAg、Au、AuCu合金を用いることが提案されている。また特許文献2には、Ag、Au、Al、Cu、Pd、Pt、In、Rh、Ruを用いることが提案されている。
特許第4364912号公報 特許第4518158号公報
熱アシスト磁気記録方式の高記録密度化に伴って近接場光発生膜についても高性能化が要求されている。具体的に近接場光発生膜には、光学特性として光の屈折率が小さく、且つ消衰係数が大きいことが求められており、また耐久性として、連続記録時の高温に対する耐熱性(すなわち、熱履歴後の膜表面平滑性)に優れていることが求められていた。
耐熱性と光学特性に優れた材料として純Au膜が知られているが、コスト低減の観点からもAuに代替する金属膜が求められていた。Au代替膜として純Agや純Alなどを用いた金属膜は光学特性が十分ではなく、また耐熱性も不十分であるなど所望の特性を有していなかった。
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、光学特性(低屈折率、高消衰係数)と耐熱性(熱履歴後の膜表面平滑性)に優れた特性を有する近接場光発生膜に好適にAg合金膜、および該Ag合金膜を備えた磁気ヘッド、並びに該Ag合金膜の成膜に好適なスパッタリングターゲットを提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明とは、熱アシスト記録用磁気ヘッドに用いられる近接場光発生膜であって、前記近接場光発生膜は、
Bi:0.05〜0.2%(原子%、以下同じ)、
Nd:0.1〜1.0%、および
Si:0.09〜1.0%、
を含むAg合金膜で構成されていると共に、前記Ag合金膜に含まれるBi、Nd、およびSiの合計量が0.6〜1.3%であることに要旨を有する。
また本発明には、上記近接場光発生膜を備えた熱アシスト記録用磁気ヘッドも含まれる。
更に本発明は、上記近接場光発生膜の作製に用いられるスパッタリングターゲットであって、
Bi:0.3〜1.0%、
Nd:0.1〜1.0%、および
Si:0.09〜1.0%、
を含むAg合金で構成されていると共に、前記Ag合金に含まれるBi、Nd、およびSiの合計量が0.8〜1.6%であることに要旨を有する。
本発明のAg合金膜は成分組成が適切に制御されているため、近接場光発生膜に適した光学特性(低屈折率、高消衰係数)と耐熱性(熱履歴後の膜表面平滑性)を有する。よって本発明のAg合金膜は近接場光発生膜として、熱アシスト記録媒体用磁気ヘッドに好適に用いられる。また本発明の組成を適切に制御したAg合金スパッタリングターゲットは、上記本発明の適切に制御された組成を有するAg合金膜の形成に有用である。
図1は、磁気記録媒体と磁気ヘッド(磁気記録媒体側)を先端に有するサスペンションの概略見取り図である。 図2は、図1のA−A線断面図(主に磁気ヘッド部分)である。 図3は、図2のB部分(磁気ヘッドの近接場光発生部分)の拡大図である。 図4Aは、図3のC部分(近接場光発生部近辺)の拡大図(一例)である。 図4Bは、図3のC部分(近接場光発生部近辺)の拡大図(他の例)である。
熱アシスト磁気記録方式においても磁気ヘッドから記録媒体に照射される近接場光のスポット径が十分に絞れていないと、書き込みをおこなうトラックに隣接するトラック部分も加熱して保持力を低下させてしまうため、サイドイレーズの問題を生じる恐れがある。特に1Tbit/inch2以上の超高記録密度記録媒体などのように記録密度が高くなるほど、隣接するトラックとの距離も短くなるため、近接場光のスポット径をより小さくする必要がある。近接場光は、光の波長よりも十分に小さい物体において、誘電率が負になるときに発生し、誘電率の絶対値が大きいほど、光の回折限界を超えた小さなスポット径まで絞ることができることが知られている。誘電率は屈折率nと消衰係数kとの関係で規定することができ(実部ε(real)=n−k)、屈折率が小さく、消衰係数が大きいと誘電率が負で絶対値が大きくなる。したがって近接場光のスポット径をより小さくするためには、低屈折率、かつ高消衰係数であることが必要とされる。
またファイバプローブ表面に形成した近接場光発生膜(金属膜)は、記録媒体記録時の温度上昇によって膜表面の平滑性(表面平均粗さ)が悪化して、所望の近接場光のスポット径が得られなくなる恐れがある。更に熱アシスト磁気記録方式では、磁気ヘッドと磁気記録媒体間の距離が非常に狭いため、近接場光発生膜の表面粗さによっては記録媒体表面との接触が生じる恐れもある。
そこで本発明者らは、近接場光発生膜に適した光学特性(低屈折率かつ高消衰係数)を有すると共に、連続書き込み(磁気記録)時に想定される300℃程度の高温熱履歴(概ね2時間)後も良好な耐熱性(表面平均粗さ)を有する近接場光発生膜を提供するため、鋭意検討をおこなった。
その結果、所定範囲の成分組成を有するAg−Nd−Bi−Si合金で構成される四元系Ag合金を用いれば、光学特性に優れており、しかも300℃程度の高温熱履歴後も、良好な表面平滑性を確保できることを見出し、本発明を完成した。
本発明において「光学特性に優れた」とは、後記する実施例に記載の方法で、屈折率(n)と消衰係数(k)を求めたとき、両者の関係(k/n)が25以上(評価○)、好ましくは28.5以上(評価◎)のものを意味する。
本発明において「高温熱履歴後の耐熱性に優れた」とは、後記する実施例に記載の方法で300℃で2時間の熱履歴を施したとき、表面平均粗さRaが5.0nm以下(評価○)、好ましくはRaが1.5nm以下(評価◎)のものを意味する。
本発明のAg合金膜は、Bi:0.05〜0.2%、Nd:0.1〜1.0%、およびSi:0.09〜1.0%、を含むと共に、Ag合金膜に含まれるBi、Nd、およびSiの合計量が0.6〜1.3%であることに要旨を有する。
本発明のAg合金膜は、Ag−Bi−Nd−Si合金の四元系Ag合金をベースとした。後記する表1に示すようにAg合金として、Ag−Bi合金(No.9)の二元系Ag合金、Ag−Bi−Nd合金(No.10〜13)、Ag−Bi−Si(No.17)や、Ag−Nd−Si(No.18)の三元系Ag合金について光学特性と耐熱性について検討したところ、これらはいずれも光学特性はAuと同等以上であり良好であったが、熱履歴後の膜表面の平滑性が低下し、耐熱性を確保できないことが判明した。
詳細には、Nd量の増加(No.10→No.13)に伴って、高温熱履歴後のRaは小さくなる(表面平滑性は良好になる)傾向にある反面、光学特性は劣化する傾向にあることがわかる。よって、耐熱性のみを向上させるには、Ag−Bi−Nd合金膜のNd量を、上記No.13(Nd量=0.93%)よりも更に増量することも考えられるが、そうすると逆に、光学特性は劣化することが予想され、所望レベル(k/n=25以上)を確保することができなくなる。すなわち、Nd量の増加に伴い、耐熱性向上作用(メリット)と、光学特性低下作用(デメリット)の両方が発揮されることがわかる。
また、Si量の増加に伴い、耐熱性向上作用(Ra低減)は有効に発揮される半面、光学特性は劣化することがわかった(No.9、No.17)。
よって、上記実験の結果から、本発明の課題解決のためには、Ag−Bi−NdやAg−Bi−Siの三元系合金膜では本発明の解決課題を達成できないことがわかった。
更にBiを含まないAg−Nd−Siの三元系合金膜(No.18)では、上記Ag−Bi−NdやAg−Bi−Siと比べて光学特性の低下が少ないが、それでも耐熱性は所望のレベル(平均表面粗さRaが5.0nm以下)に達しておらず、依然として高いままである。
これに対し、表1のNo.4、5は、上記No.13のAg−Bi−Nd合金膜において、Bi量とNd量を同程度(Bi:0.06%、Nd:0.93%)とし、更にSiを添加した本発明のAg−Bi−Nd−Si合金膜であるが、光学特性は良好である(評価○)と共に、高温熱履歴後の表面平均粗さRaも良好であった(Ra=○)。すなわち、Siの添加により、前述したAg−Bi−Nd合金膜では達成できなかった、光学特性と耐熱性(Raの低減化)を両方達成できることがわかった。
また上記四元系合金膜におけるNd量とSi量の関係については、Nd量を増量しても耐熱性向上効果が光学特性の低下に比べて十分に得られていない一方で(No.1とNo.5)、Si量を増量すると耐熱性向上効果が高いことがかわる(No.1とNo.3)。
よって、本発明のAg−Bi−Nd−Si合金膜において、光学特性を維持しつつ、Siによる耐熱性向上作用を有効に発揮させるためには、要求される特性に応じてNd量との関係でSi量を適切に制御することが必要である。
また本発明者らが成膜後のBi、Si、Ndについて調べた結果、BiやSiはAs−deposited状態で薄膜最表面に濃化し、この濃化層が耐熱性を向上させる作用を有するが、濃化し過ぎると光学特性の劣化をもたらす作用を有することがわかった。したがってBi、Si、Ndの合計量も適切に制御する必要がある。
なお、四元系合金膜として、Si(Ag−Nd−Bi−Si合金)以外にもSn(Ag−Bi−Nd−Sn合金)、Ge(Ag−Bi−Nd−Ge合金)などについても検討したが、いずれも屈折率が高く、消衰係数が小さくなる傾向を示し、光学特性が著しく悪化したため(表2のNo.22〜25)、Siが光学特性と耐熱性を兼備するためには必須の元素であることがわかる。
以下、本発明を構成する元素(Nd、Bi、Si)の含有量、およびその作用効果について説明する。
Bi:0.05〜0.2%
Biは、高温熱履歴後の耐熱性向上(Raの低減化)に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮するには、Biは少なくとも0.05%以上含有させる必要があり、好ましくは0.06%以上である。但し、過剰に添加すると、屈折率や消衰係数が増加し誘電率虚部の増加によって素子の発熱が大きくなるデメリットが発生するため、Biの上限は、0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。Bi量は、Nd量、Si量との関係で適切に制御することが好ましい。
Nd:0.1〜1.0%
NdもBiと同様、高温熱履歴後の耐熱性向上(Raの低減化)に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮するには、Ndは少なくとも0.1%以上含有させる必要があり、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.24%以上である。上記効果は、Nd量の増加に伴って向上する傾向が見られるが、Ndを過剰に添加すると、光学特性が低下すると共に、耐熱性が低下(Raの悪化)する傾向にある。したがってNdの上限は1.0%以下とし、好ましくは0.95%以下、より好ましくは0.90%以下である。Nd量は、特にSi量との関係で適切に制御することが好ましい。
Si:0.09〜1.0%
Siは本発明を最も特徴付ける元素であり、高い光学特性と高い耐熱性を両方具備させるために有用な元素である。すなわち、Siは、Ndよりも耐熱性向上(Raの低減化)に寄与する元素であり、Si量の増加に伴って耐熱性が向上する傾向にある。このような効果を有効に発揮するには、Siは少なくとも0.09%以上含有させる必要があり、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.5%以上である。但し、Siを過剰に添加すると、光学特性が低下する傾向にあるため、所望の特性が発揮されるように、特にNd量との関係で適切に制御することが好ましい。また、後記するように本発明のAg合金膜は、Ag合金膜を構成する元素を含むAg合金スパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により成膜されることが好ましいが、Si量が多くなると、上記Ag合金スパッタリングターゲットの製造時やスパッタリング時に当該Ag合金スパッタリングターゲットの割れが発生する恐れがあるため、Si量の上限は、このような観点も考慮して適切に制御することが好ましい。したがってSiの上限は1.0%以下とし、好ましくは0.95%以下、より好ましくは0.8%以下である。
更に本発明では、Ag合金膜に含まれるBi、Nd、およびSiの合計量が0.6〜1.3%となるように各元素を適切に制御することが必須である。上記したようにBi、Nd、およびSiはAg合金膜の光学特性と耐熱性に影響を与える元素群であり、個々の元素の含有量が上記範囲内であっても、合計量が少なすぎると、十分な耐熱性向上作用が得られないことがある(たとえば表1のNo.14)。したがってBi、Nd、およびSiの合計量は、少なくとも0.6%以上となるように含有させる必要があり、好ましくは0.7%以上、より好ましくは0.75%以上である。Bi、Nd、およびSi含有量が多くなると、耐熱性向上作用も高くなるが、一方で光学特性が低下する傾向にあるため(No.15)、所望の特性が発揮されるように、合計量は1.3%以下となるように制御する必要があり、好ましくは1.25%以下、より好ましくは1.2%以下である。
本発明に用いられるAg合金膜は、上記元素を含有し、残部:Agおよび不可避的不純物である。
以上、本発明のAg合金膜の構成について説明した。上記Ag合金膜は、熱アシスト記録用磁気ヘッドの近接場光発生膜として用いられるものであり、その膜厚は、上記用途に通常用いられるものであれば特に限定されないが、おおむね、30〜300nmの範囲内であることが好ましい。
上記Ag合金膜は、スパッタリング法にてスパッタリングターゲット(以下「ターゲット」ということがある)を用いて形成することがより好ましい。スパッタリング法によれば、イオンプレーティング法や電子ビーム蒸着法で形成された薄膜よりも、成分や膜厚の膜面内均一性に優れた薄膜を容易に形成できるからである。
スパッタリング法により上記Ag合金膜を形成するには、上記ターゲットとして、前述した元素(Nd、Bi、およびSi)を含むAg合金スパッタリングターゲットを用いることが好ましい。
なお、Ag合金スパッタリングターゲット中に含まれるNdおよびSiは、Ag合金膜とほぼ同一量に制御されていれば良いが、Biは、Ag合金膜の表面近傍に濃化し易い元素であるため、Ag合金膜中のBi量に対して、おおむね、5〜6倍程度のBiをスパッタリングターゲット中に含有させることが好ましい。
具体的にはスパッタリングターゲットはBi:0.3〜1.0%(好ましくは0.35%以上、好ましくは0.8%以下)、Nd:0.1〜1.0%(好ましくは0.2%以上、好ましくは0.9%以下)、およびSi:0.09〜1.0%(好ましくは0.15%以上、好ましくは0.8%以下)、を含むAg合金で構成されていると共に、ターゲットに含まれるBi、Nd、およびSiの合計量が0.8〜1.6%(好ましくは0.9%以上、好ましくは1.5%以下)であることが望ましい(残部はAgおよび不可避的不純物である)。
上記ターゲットの形状は、スパッタリング装置の形状や構造に応じて任意の形状(角型プレート状、円形プレート状、ドーナツプレート状など)に加工したものが含まれる。
上記ターゲットの製造方法としては、溶解鋳造法や粉末焼結法、スプレイフォーミング法が挙げられる。
本発明のAg合金膜は、近接場光発生膜として熱アシスト記録用磁気ヘッドに好適に用いられる。図1に示すように熱アシスト記録用磁気ヘッド2は、サスペンション1の先端部分の磁気記録媒体3に対向する側に設置されている。熱アシスト記録用磁気ヘッド2の構成は、通常用いられるものであれば限定されない。代表的には、図2に示すような光源(半導体レーザ4、光ファイバ(コア6、クラッド7))、磁気再生素子12、磁場(主磁場8、副磁場10)を有する構造であるが、特にこれに限定されない。
また本発明のAg合金膜を用いた近接場光発生膜についても、近接場光を発生させる通常の構造、すなわち、ファイバプローブ(光波長以下の微小開口をもつ先鋭化された光ファイバのコア)に適用すればよく、具体的な構造は特に限定されない。たとえば図3(図2のB部分拡大図)、図4A(図3のC部分拡大図)に示すようにファイバプローブの先端部分は、近接場光発生膜16で被覆された部分と近接場光発生膜で被覆されていない微小開口15とで構成されていればよい。なお、ファイバプローブの先端部分の形状は特に限定されず、図4Bに示すように先端が尖っていてもよく、あるいは所望の形状(例えば図4A)にカットされていてもよい。
また近接場光発生膜の被覆方法も従来の成膜方法を採用することができ、たとえば光ファイバ(コア)の一端を、加熱しながら引き伸ばしたり、化学エッチング法を用いることにより先鋭化した後、先端(微小開口)をマスクしてスパッタリング法で本発明のAg合金膜を被覆すればよい。光ファイバに光を導入することにより、先端に形成された微小開口近傍に近接場光を発生させることができる。
前述した図1〜4(A、B)は、本発明のAg合金膜を適応し得る熱アシスト記録用磁気ヘッドの一例であり、本発明はこれに限定する趣旨ではない。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
本実施例では、Ag合金膜の組成が光学特性(屈折率、消衰係数)と耐熱性(表面平滑性)に及ぼす影響を調べた。
試料の作製
多元スパッタ装置(アルバック社製SH−200)を用いてシリコン基板(サイズ:6インチ)上に表1に示す各種Ag合金膜(膜厚200nm)を成膜して試料を作製した。また参考例として純Auターゲット(純度:4N)を用いてAg合金膜と同様に試料を作製した。
成膜にあたっては下記スパッタリングターゲット(直径4インチ)を適宜用いた。スパッタリングターゲットの具体的な成分組成を表1に併記する。
・Si(またはSn、Ge)をチップオン(10mm角)したAg−Bi−Ndターゲット
・Ag−Bi−Ndターゲット
・Ag−Biターゲット
・SiをチップオンしたAg−Biターゲット
・SiをチップオンしたAg−Ndターゲット
スパッタ条件は真空到達度:<1×10-4Pa、Arガス圧:2mtorr、成膜パワー密度:30〜400W、膜厚:200nm、基板温度:室温(22℃)とした。
各試料のAg合金膜の組成はICP発光分光装置(島津製作所製ICP−8000型)を用いて定量分析して確認した。
また各試料のAg合金膜の光学特性および耐熱性を以下の基準で評価した。
光学特性
成膜直後の各試料(as−deposited膜)について、高速分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製「M−2000U」)を用いて、波長805nmでの光学特性n(屈折率)、k(消衰係数)を求めた。
本実施例では、表1のNo.21の純Au膜(n=0.18、k=5.13)を基準値として、下記基準で評価し、◎と○を光学特性に優れるとした。
◎:k/n≧28.5
○:28.5>k/n≧25
×:25>k/n
耐熱性
各試料に大気熱処理を施して耐熱性を調べた。具体的には、試料をRTP炉(アルバック社製RT−6)にて大気雰囲気下、300℃まで昇温(平均昇温速度1℃/秒)し、300℃で2時間保持した。その後、試料を1℃/秒の平均冷却速度で100℃以下となるまで冷却してからRTP炉から取り出した。得られた熱処理後の各試料のAg合金膜の算術平均粗さRa(JIS B0601 2001)を以下のようにして調べて耐熱性を評価した。具体的には、Ag合金膜の算術平均粗さRaは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用い、3μm×3μmエリアの測定値から算出した。
本実施例では、表1のNo.21の純Au膜(Ra=1.2nm)を基準値として、下記基準で評価し、◎、○を耐熱性に優れるとした。
◎:1.5nm≧Ra
○:5.0nm≧Ra>1.5nm
×:Ra>5.0nm
総合判定
◎:耐熱性が◎、かつ光学特性が◎または○
○:耐熱性が○、かつ光学特性が◎または○
×:耐熱性、光学特性の少なくともいずれかが×
表1より、Nd、Bi、およびSiを含有し、各含有量が適切に制御されたNo.1〜8(本発明例)は、光学特性だけでなく、高温熱履歴後も高い耐熱性が発揮された。これに対し、二元系合金膜や三元系合金膜であるNo.9〜13、17、18、Siを含有しない四元系合金膜である表2のNo.22〜25、およびSiを含有しているが含有量が適切に制御されていないNo.14〜16、19、20では、光学特性と耐熱性の両特性を具備することができなかった。
詳細には、Nd量(Nd量≒0.25%)およびBi量(Bi量≒0.06%)が略一定である、本発明例(No.1〜3)と、比較例(No.10、14)について、高温熱履歴後のRaを対比すると、Siを0.32〜0.94%含む上記本発明例ではRa=1.4〜3.7nm(評価○または◎)であり、Si含有量が0.32%(No.1)、0.7%(No.2)、0.94%(No.3)と増加するにしたがってRaも3.7(No.1)、1.4(No.2、3)と良好となった。これに対し、本発明例に比べてSi量が少なくSiを0.1%しか含まないNo.14ではRa=5.5nm(評価×)と大きくなった。またSiを含まないNo.10では、Ra=10.1nmと最も大きくなった。
同様のことは、Nd量(Nd量≒0.93%)およびBi量(Bi量≒0.06%)が略一定である、本発明例(No.4、5)と、比較例(No.13)について、高温熱履歴後のRaを対比すると、Siを0.09%(No.4)、0.29%(No.5)含む本発明例ではSi含有量が増加するにしたがってRaは夫々4.9nm、4.5nm(評価○)と良好になる傾向を示した。これに対し、Siを含まないNo.13では、Ra=5.5nmと大きくなった。
この結果から所望の効果を得るためには、Siは必須の成分であると共に、少なくとも0.09%含まれていればよいことがわかる(No.4)。一方、Si含有量は多くなるにしたがって耐熱性も良好になるが(No.3)、Si含有量が1.0%を超えて多くなりすぎると光学特性が悪化することから(No.16)、Si含有量は1.0%以下に抑える必要があることがわかる。なお、Siに換えて表2のNo.22〜25に示すようにSnやGeを添加した四元系を評価したところ、Si添加の四元系(No.2やNo.16)と比べて光学特性(k/n)が大きく劣化するため、好ましくないことがわかった。
また、Nd量(Nd量≒0.24%)およびSi量(Si量≒0.32%)が略一定である、本発明例(No.1、7、8)と、比較例(No.19、20)について、光学特性と耐熱性(Ra)を対比すると、Biを0.07〜0.20%含む上記本発明例では、Bi含有量が増加するにしたがって光学特性が低下する傾向を示すが良好(評価○または◎)の範囲内にあり、耐熱性も向上できた(Ra=1.2〜3.7nm、評価○または◎)。これに対し、本発明例に比べてBi量が多く、Biを0.26%、0.4%も含むNo.19、20では、良好な耐熱性(Ra=1.3nm)を示したものの(評価◎)、光学特性が悪化した(評価×)。
なお、Biを全く含まないNo.18(Ag−Nd−Si合金)では耐熱性向上効果が得られていないのに対し、Biを0.05%含有するNo.3では優れた耐熱性が得られている(Ra=1.4、評価◎)。
これらの結果から所望の光学特性および耐熱性を達成するには、Biは少なくとも0.05%含有している必要があり(No.3)、またBi含有量が多くなるにしたがって光学特性が低下するため(No.19)、両特性を所定レベルで確保するためには、Bi含有量は0.2%以下に抑える必要があることがわかる(No.8)。
また、Bi量(Bi量≒0.06%)およびSi量(Si量≒0.7%)が略一定である、本発明例(No.2)と、比較例(No.17)について、光学特性と耐熱性(Ra)を対比すると、Ndを0.25%含む本発明例(No.2)では耐熱性が1.4(評価◎)であるのに対し、Ndを含まない比較例(No.17)では耐熱性が5.2(評価×)であり、Ndには耐熱性向上効果があることがわかる。なお、Nd添加による耐熱性向上効果を発揮するには、Nd量は少なくとも0.1%以上含まれている必要がある(No.6)。またBi量(Bi量≒0.06%)およびSi量(Si量≒0.3%)が略一定である、本発明例No.1と5からNd量が多くなると光学特性と耐熱性が悪化する傾向が示されているが、Nd量が1.0%以下であれば両特性を所定のレベルで確保できることがわかる(No.4、5)。
更にNo.14からは、Ag合金膜に含まれる個々のBi、Nd、Si含有量が上記所定の範囲内にあったとしても、合計量が少なすぎると、耐熱性向上効果が十分に発揮されないことがわかる。一方、No.1からは、Ag合金膜に含まれる個々の元素量が上記所定の範囲内であって、且つAg合金膜に含まれるBi、Nd、Siの合計量が少なくとも0.6%以上であれば、良好な耐熱性が得られることがわかる。
なお、個々の元素量にもよるが、Ag合金膜に含まれるBi、Nd、Siの合計量が増えるとかえって光学特性や耐熱性を低下させる要因となるため(No.15、16)、個々の元素量を適切に調整すると共に、合計量も調整することが望ましく、本発明例によればAg合金膜に含まれるBi、Nd、Siの合計量は、1.3%までであれば、良好な光学特性と耐熱性が得られることがわかる(No.5)。
1 サスペンション
2 磁気ヘッド
3 磁気記録媒体
4 半導体レーザ
5 入射光方向
6 コア
7 クラッド
8 主磁場
9 コイル
10 副磁場
11 近接場光
12 磁気再生素子
13 磁気シールド
14 ヘッド材料
15 微小開口
16 近接場光発生膜

Claims (3)

  1. 熱アシスト記録用磁気ヘッドに用いられる近接場光発生膜であって、
    前記近接場光発生膜は、
    Bi:0.05〜0.2%(原子%、以下同じ)、
    Nd:0.1〜1.0%、および
    Si:0.09〜1.0%、
    を含むAg合金膜で構成されていると共に、前記Ag合金膜に含まれるBi、Nd、およびSiの合計量が0.6〜1.3%であることを特徴とする近接場光発生膜。
  2. 請求項1に記載の近接場光発生膜を備えた熱アシスト記録用磁気ヘッド。
  3. 請求項1に記載の近接場光発生膜の作製に用いられるスパッタリングターゲットであって、
    Bi:0.3〜1.0%、
    Nd:0.1〜1.0%、および
    Si:0.09〜1.0%、
    を含むAg合金で構成されていると共に、前記Ag合金に含まれるBi、Nd、およびSiの合計量が0.8〜1.6%であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
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