JP2014052276A - 石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定方法並びにその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】石炭を加熱している任意の時点での浸透距離を測定することができ、さらに必要に応じて連続的に測定するための浸透距離の測定方法およびその装置を提供する。
【解決手段】石炭及び/または粘結材である試料1を容器3に装入する。試料1の上に、材料2を配置する。材料2に一定荷重を負荷しつつ試料1を加熱して、試料1を軟化溶融させる。試料1材料2の貫通孔へ浸透させる。試料1の浸透挙動を撮影する。撮影画像から、浸透距離の測定開始からの経過時間tにおける、試料1の下端から浸透した試料1の上端までの距離h(t)、試料1の下端から材料2の上端までの距離H(t)を求める。距離h(t)及び距離H(t)を下記(1)式に代入して、経過時間tにおける試料1の浸透距離を算出する。
浸透距離=(H−h)−(H(t)−h(t))・・・(1)
は、測定開始時でのh(0)、Hは、測定開始時でのH(0)である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定方法並びにその装置に関し、特に、石炭及び/または粘結材を容器に充填して、該容器に充填された石炭及び/または粘結材を試料とし、該試料の上に、上下面に貫通孔を有する材料を配置した状態で、試料を加熱することで、該試料を溶融させ、溶融した試料を前記材料の貫通孔へ浸透させて、前記試料の浸透距離を算出する石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定方法並びにその装置に関する。
高炉で銑鉄を溶製するために、まず、高炉内に鉄鉱石類とコークスを交互に層状に装入し、次いで、羽口より吹き込まれる高温の熱風で鉄鉱石類やコークスを加熱すると共に、コークスから発生したCOガスで鉄鉱石類を還元する。高炉の操業を安定して行うには、高炉内での通気性や通液性を確保する必要があり、強度、粒度および反応後強度等の諸特性に優れたコークスが不可欠である。なかでも強度(回転強度)は、特に重要な特性と考えられている。高炉内での通気性及び通液性を維持するために、堅牢なコークスが求められており、通常、JIS K 2151に示される回転強度試験等によりコークス強度の測定を行うことで、コークスの強度を管理している。
石炭を乾留することで、該石炭が軟化溶融して互いに接着し、コークスとなる。従って、石炭の軟化溶融特性の違いがコークス強度に大きな影響を及ぼしており、コークスの品質管理の観点から石炭の軟化溶融特性の評価は必要不可欠である。軟化溶融特性とは、石炭を加熱したときに軟化溶融する性質であり、通常、軟化溶融物の流動性、粘度、接着性、膨張性、浸透性などにより測定、評価される。
石炭の軟化溶融特性のうち、軟化溶融時の流動性を測定する一般的な測定方法としては、JIS M 8801に規定されるギーセラープラストメータ法による石炭流動性試験方法が挙げられる。ギーセラープラストメータ法は、425μm以下に粉砕した石炭を所定のるつぼに入れ、規定の昇温速度で加熱し、規定のトルクをかけた撹拌棒の回転速度を測定し、1分ごとの目盛分割(ddpm)をもって試料の軟化溶融特性を表す方法である。その他の軟化溶融特性評価方法としては、例えば、定回転方式でトルクを測定する方法、動的粘弾性測定装置による粘度の測定方法、JIS M 8801に規定されているジラトメーター法などが知られている。
上述の軟化溶融特性評価方法とは別に、特許文献1及び特許文献2で提案されているように、コークス炉内で石炭の軟化溶融物が置かれている状況を考慮した条件で、軟化溶融特性を評価する方法が提案されている。特許文献1及び特許文献2の方法では、軟化溶融した石炭が拘束された条件で、かつ、周囲の欠陥構造への溶融物の移動、浸透を近似した条件で測定が行なわれており、この方法で測定される浸透距離は、上述の軟化溶融特性評価方法による指標とは異なる石炭軟化溶融特性の指標である。
特開2010−190761号公報 特開2012−73239号公報
特許文献1及び特許文献2で提案されている浸透距離の測定方法では、石炭を冷却した後に浸透距離を測定している。しかしながら、石炭の軟化溶融挙動は、軟化溶融している石炭の粘度や熱分解ガスの発生量等によって時々刻々と変化するため、特許文献1及び特許文献2の浸透距離の測定方法によって、加熱中の浸透距離を測定することはできず、連続的に測定することもできないという点で不十分であるという問題がある。
本発明の目的は、上述の問題を解決し、石炭を加熱している任意の時点での浸透距離を測定することができ、さらに必要に応じて連続的に測定することができる浸透距離の測定方法及びその装置を提供することにある。
コークス炉内での石炭の軟化溶融挙動を精度良く評価するためには、コークス炉内において軟化溶融した石炭の周辺の環境を近似した状態で、石炭の軟化溶融特性を測定することが必要である。コークス炉内において、軟化溶融時の石炭は隣接する層に拘束された状態で軟化溶融している。石炭の熱伝導率は小さいため、コークス炉内において石炭は一様に加熱されず、加熱面である炉壁側からコークス層、軟化溶融層、石炭層と状態が異なっている。コークス炉自体は乾留時多少膨張するがほとんど変形しないため、軟化溶融した石炭は隣接するコークス層、石炭層に拘束されている。
また、軟化溶融した石炭の周囲には、石炭層の石炭粒子間空隙、軟化溶融石炭の粒子間空隙、熱分解ガスの揮発により発生した粗大気孔、隣接するコークス層に生じる亀裂など、多数の欠陥構造が存在する。特に、コークス層に生じる亀裂は、その幅が数百ミクロンから数ミリ程度と考えられ、数十〜数百ミクロン程度の大きさである石炭粒子間空隙や気孔に比較して大きい。従って、このようなコークス層に生じる粗大欠陥へは、石炭から発生する副生物である熱分解ガスや液状物質だけではなく、軟化溶融した石炭自体の浸透も起こると考えられる。また、その浸透時に軟化溶融した石炭に作用するせん断速度は、銘柄毎に異なることが予想される。
上述したとおり、コークス炉内において軟化溶融した石炭の周辺の環境を近似した状態で石炭の軟化溶融特性を測定するためには、拘束条件、浸透条件を適正にする必要がある。石炭の軟化溶融挙動は、軟化溶融物の粘度や熱分解ガスの発生量等の変化に応じて時々刻々と変化する。したがって、軟化溶融特性の測定は連続的に実施することが好ましい。
本発明者らは、コークス炉内において軟化溶融した石炭の周辺の環境を近似した状態で測定した軟化溶融特性を表し得る浸透距離を、加熱中の任意の時点で、あるいは連続的に測定する方法について鋭意研究を重ねた結果、石炭の浸透現象を撮影し、撮影により得られた画像を画像処理することで加熱中の浸透距離を測定する方法およびその装置構成を着想し、本発明の完成に至った。すなわち、前述の課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]石炭及び/または粘結材を容器に装入し、該容器内の石炭及び/または粘結材を試料とし、該試料の上に、上下面に貫通孔を有する材料を配置して、前記材料に一定荷重を負荷しつつ前記試料を加熱することで、該試料を軟化溶融させ、軟化溶融している試料を前記材料の貫通孔へ浸透させるとともに、前記試料の浸透挙動を撮影し、撮影により得られた画像から、試料の浸透距離の測定開始からの経過時間tにおける、試料の下端から浸透した試料の上端までの距離h(t)、および試料の下端から材料の上端までの距離H(t)を求め、前記距離h(t)及び前記距離H(t)を下記(1)式に代入して、経過時間tにおける、前記貫通孔へ浸透した試料の浸透距離を算出することを特徴とする、石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定方法。
浸透距離=(H−h)−(H(t)−h(t))・・・(1)
ここで、hは、測定開始時(t=0)における、試料の下端から試料の上端までの距離h(0)、及び、Hは、測定開始時(t=0)における、試料の下端から材料の上端までの距離H(0)、である。
[2]石炭及び/または粘結材を容器に装入し、該容器内の石炭及び/または粘結材を試料とし、該試料の上に、上下面に貫通孔を有する材料を配置して、前記試料と前記材料を一定容積に保ちつつ前記試料を加熱することで、該試料を軟化溶融させ、軟化溶融している試料を前記材料の貫通孔へ浸透させるとともに、前記試料の浸透挙動を撮影し、撮影により得られた画像から、試料の浸透距離の測定開始からの経過時間tにおける、試料の下端から浸透した試料の上端までの距離h(t)を求め、前記距離h(t)を下記(2)式に代入して、経過時間tにおける、前記貫通孔へ浸透した試料の浸透距離を算出することを特徴とする、石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定方法。
浸透距離=h(t)−h・・・(2)
ここで、hは、測定開始時(t=0)における、試料の下端から試料の上端までの距離h(0)、である。
[3]石炭及び/または粘結材を保持し、該石炭及び/または粘結材を試料とし、該試料の上に、上下面に貫通孔を有する材料が配置される容器と、前記材料の上側に配置される荷重装置と、前記容器を内部に配置し、該内部を可視可能とする覗き窓を有する加熱装置と、前記覗き窓を通じて、前記容器内の試料を撮影するように配置される撮像装置と、を備えることを特徴とする、石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定装置。
[4]石炭及び/または粘結材を保持し、該石炭及び/または粘結材を試料とし、該試料の上に、上下面に貫通孔を有する材料が配置される容器と、前記材料の上側に配置される変位拘束部材と、前記容器を内部に配置し、該内部を可視可能とする覗き窓を有する加熱装置と、前記覗き窓を通じて、前記容器内の試料を撮影するように配置される撮像装置と、を備えることを特徴とする、石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定装置。
本発明によれば、加熱中の任意の時点での軟化溶融物の浸透距離の評価が可能である。具体的には、石炭及び/または粘結材が加熱により軟化溶融した際の浸透距離が、加熱中の任意の時点において測定可能であり、加熱中に連続的に測定することも可能である。連続的に測定される浸透距離を用いると、経時変化を考慮した上での、コークス炉内での石炭の軟化溶融挙動を詳細に評価することができるため、コークス性状やコークスケーキ構造の推定を、従来の浸透距離の測定方法より精度良く行なうことができるようになる。
本発明の第1実施形態に係る、浸透距離の測定装置を示す概略図。 本発明で使用する上下面に貫通孔を有する材料のうち、円形貫通孔をもつ材料の例を示す概略図。 本発明で使用する上下面に貫通孔を有する材料のうち、球形粒子充填層の例を示す概略図。 本発明で使用する上下面に貫通孔を有する材料のうち、円柱充填層の例を示す概略図。 本発明の第1実施形態に係る、浸透距離を測定する方法における容器内の各材料の高さと浸透距離との関係を示す概略図。 本発明の第1実施形態に係る、浸透距離を測定する方法における画像処理での解析対象の領域を示す概略図。 図6における解析領域Aを示す概略図、解析領域Aの幅方向の平均輝度の高さ方向の関係を示すグラフ、解析領域Aの幅方向の平均輝度の高さ方向の変化率の関係を示すグラフ。 本発明の第2実施形態に係る、浸透距離の測定装置を示す概略図である。 本発明の第2実施形態に係る、浸透距離を測定する方法における容器内の各材料の高さと浸透距離との関係を示す概略図である。 実施例1で測定した、石炭の浸透距離と温度の関係を示すグラフである。 実施例2で測定した、石炭の浸透距離と温度の関係を示すグラフである。
<第1実施形態>
以下、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る、浸透距離の測定装置を示す概略図である。測定装置30は、内部に材料を保持する容器3と、荷重装置60と、加熱装置9と、撮像装置15と、容器3を収容するスリーブ7とを備えている。容器3に、石炭及び/または粘結剤(以下、適宜「試料」ともいう)1を入れて、試料1の層を形成する。その試料1の層の上に、上下面に貫通孔を有する材料2を配置し、材料2の層を形成し、その材料2の層の上に、材料2とは外観の異なる材料4を配置する。
スリーブ7は、ガス導入口12とガス排出口13とを有しており、このガス導入口12を通じて、不活性ガスがスリーブ7に送られて、スリーブ7内には不活性ガスが充満して、容器3の雰囲気が不活性ガス下となる。スリーブ7内の不活性ガスは、ガス排出口13から排出される。スリーブ7の内部では、荷重装置60が容器3の上側に配置されている。この荷重装置60は、荷重負荷棒5と錘6とからなり、材料4に接触して配置され、試料1と材料2と材料4とに荷重する。
スリーブ7の外側には、覗き窓14を有する加熱装置9と、この覗き窓14を通じて試料1を撮像する撮像装置15と、照明16と、が配置されている。
加熱装置9には温度調節器11が接続されており、容器3には温度計8が取り付けられており、該温度計8には温度検出器10が接続されている。温度調節器11は、温度検出器10に接続されており、温度検出器10が温度計8の温度を検出し、検出した温度データを温度調節器11に送り、温度データに基づいて加熱装置9による加熱温度を調節する。
撮像装置15には画像処理装置17が接続されており、撮影により得られた画像を画像処理装置17により画像処理を行なう。画像処理装置17にはデータ集約装置18が接続されており、画像処理によって得られる浸透距離データをデータ集約装置18に送る。更には、該データ集約装置18には、温度検出器10が接続しており、浸透距離データが得られたときの容器3の温度をデータ集約装置18に送る。これにより、浸透距離データと容器3の温度とのセットの時系列データが得られる。データ集約装置18には測定値表示装置19が接続しており、測定値表示装置19に前記時系列データが送られ、測定値表示装置19は、この時系列データを連続的に表示する。
荷重装置60によって、試料1と材料2と材料4とに一定荷重を負荷しつつ、加熱装置9で、試料1を軟化溶融開始温度以上に加熱すると、試料1が膨張又は収縮し、材料2と材料4とが上下方向に移動することで、材料2に試料1が浸透する。試料1の浸透挙動を撮像装置15で撮影する。この加熱は不活性ガス雰囲気下で行なう。不活性ガスとは、特定の温度域で石炭と反応しないガスを指し、代表的なガスとしてはアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等である。また、荷重は、材料2の上面に均等にかかることが好ましく、材料2の上面の面積に対し、5〜80kPa、好ましくは15〜55kPa、最も好ましくは25〜50kPaの圧力となるように、荷重を負荷する。この圧力は、コークス炉内における軟化溶融層の膨張圧に基づいて設定するが、炉内の膨張圧よりはやや高めの25〜50kPaが、浸透距離の測定条件として最も好ましい。
加熱装置9は、試料1の温度を測定しつつ、所定の昇温速度で加熱できる方式の装置を用いることが望ましい。具体的には、電気炉や、導電性の透明容器と高周波誘導を組み合わせた外熱式、またはマイクロ波のような内部加熱式の加熱装置である。内部加熱式の加熱装置を採用する場合には、試料1内の温度を均一にする工夫を施す必要があり、例えば、容器3の断熱性を高める措置を講ずることが好ましい。
加熱速度は、コークス炉内での石炭及び/または粘結材の軟化溶融挙動を近似するという目的から、コークス炉内での石炭の加熱速度に一致させる必要がある。コークス炉内での軟化溶融温度域における石炭の加熱速度は炉内の位置や操業条件によって異なるが概ね2ないし10℃/分であり、平均的な加熱速度として2〜4℃/分とすることが望ましく、3℃/分程度が最も望ましい。しかし、非微粘結炭のように流動性の低い石炭の場合、3℃/分では浸透距離や膨張が小さく、検出が困難となる可能性がある。石炭は急速加熱することによりギーセラープラストメータによる流動性が向上することが一般的に知られている。従って、例えば浸透距離が1mm以下の石炭の場合には、検出感度を向上させるために、加熱速度を10〜1000℃/分に高めてもよい。
加熱を行なう温度範囲は、石炭及び/または粘結材の軟化溶融特性の評価が目的であるため、石炭及び/または粘結材の軟化溶融温度域までであればよい。コークス製造用の石炭及び粘結材の軟化溶融温度域を考慮すると、0℃(室温)〜550℃の範囲において、好ましくは石炭の軟化溶融温度である300〜550℃の範囲で、前述の加熱速度で加熱する。
材料2は、透過係数(下記(3)式参照)をあらかじめ測定または算出できるものが望ましい。材料2の形態の例として、貫通孔を持つ一体型の材料、粒子充填層が挙げられる。貫通孔を持つ一体型の材料としては、例えば、図2に示すような円形の貫通孔21を持つもの、矩形の貫通孔を持つもの、不定形の貫通孔を持つものなどが挙げられる。粒子充填層としては、大きく球形粒子充填層、非球形粒子充填層に分けられ、球形粒子充填層としては図3に示すような充填粒子22からなるもの、非球形粒子充填層としては不定形粒子や、図4に示すような充填円柱23からなるものなどが挙げられる。測定の再現性を保つため、材料2内の透過係数はなるべく均一で、かつ測定を簡便にするため、透過係数の算出が容易なものが望ましい。したがって、本発明で用いる上下面に貫通孔を有する材料には球形粒子充填層の利用が特に望ましい。
材料2の材質は、石炭軟化溶融温度域以上、具体的には600℃まで形状がほとんど変化せず、石炭とも反応しないものならば特に限定されることはない。また、容器3内の材料2の層の高さは、石炭の溶融物が浸透するのに十分な高さがあればよく、厚み5〜20mmの石炭層を加熱する場合には、20〜100mm程度あればよい。材料2の透過係数は、コークス層に存在する粗大欠陥の透過係数を推定して設定する必要がある。本発明に特に望ましい透過係数は、粗大欠陥構成因子の考察や大きさの推定などを考慮すると、1×10〜2×10−2である。この透過係数は、下記(3)式で表されるDarcy則に基づき導出される。
ΔP/L=K・μ・u ・・・(3)
ここで、ΔPは上下面に貫通孔を有する材料内での圧力損失[Pa]、
Lは貫通孔を有する材料の高さ[m]、
Kは透過係数[m−2]、
μは流体の粘度[Pa・s]、
uは流体の速度[m/s]である。
材料2として、均一な粒径のガラスビーズ層を用いる場合には、上述の好適な透過係数を持つようにするためには、直径0.2mmから3.5mm程度のガラスビーズを選択することが望ましく、最も望ましくは、直径2mmである。
材料4は、撮影画像の画像処理を行うときに、材料2の上端の位置を容易に求めるために配置されており、容器3が撮像されているときに、材料2と区別できるものであることが好ましい。すなわち、本発明においては、材料2の上端の位置を特定することができれば、材料4は、浸透距離の測定に必要とならないが、材料2が、ガラスビーズなどの粒子層である場合には、荷重負荷棒5が、材料2の層に貫入することを防ぐために材料4を材料2の層の上に配置することが好ましい。材料2と区別されるために、材料4は、材料2とは色、明度、透明度、形状などの外観が異なることが好ましく、材料2として透明なものを用いる場合には、その上部に配置する材料4には不透明なものを用いることが好ましい。また、試料1の浸透現象を阻害しないものであれば、材料4は、特に限定されるものではないが、試料1を加熱する際に発生するガスを材料2の配置された領域から容器3の上部に排出し得るような孔を備えたものであることが望ましい。
試料1とする石炭および/または粘結材を予め粉砕し、所定の密度で所定の層厚となるように容器3に装入する、すなわち、石炭および/または粘結材を詰める。粉砕粒度としては、コークス炉における装入石炭の粒度としてもよく、粒径3mm以下が70質量%以上となるように粉砕することが好ましいが、小さい装置での測定であることを考慮して、全量を粒径2mm以下に粉砕した粉砕物を用いることが特に好ましい。容器3内の試料1の密度は、コークス炉内の石炭および/または粘結材の密度に合わせて0.7〜0.9g/cmとすることができ、再現性、検出性を考慮すると、0.8g/cmとすることが好ましい。また、試料1の層厚は、コークス炉内における軟化溶融層の厚みに基づいて5〜20mmとすることができ、再現性、検出性を考慮すると、層厚は10mmとすることが好ましい。
本発明による浸透距離の測定では、以下の(イ)〜(ハ)の工程を行なう。
(イ)試料の浸透現象の撮影
(ロ)撮影により得られた画像の画像処理
(ハ)画像処理データと温度データの集約
以下に、(イ)〜(ハ)の工程毎に詳細な条件を記述する。
[(イ)試料の浸透現象の撮影]
容器3を、試料1を軟化溶融させる程度に加熱できれば、容器3と加熱装置9との配置や構造は特定されるものではないが、図1に示す測定装置30の構成では、試料1の浸透挙動を撮影するためには、加熱装置9に外部から可視するための構造が必要となる。一般的な加熱装置である電気炉の場合には、炉体や断熱のための断熱材は、通常、不透明であり、可視光による観察手段では、加熱装置9の内部を見ることはできない。したがって、試料1を撮影できるように、電気炉本体の側面部に、透明な材質で作られた覗き窓14を設置することが、最も簡便かつ有効な手段である。
本発明においては、容器3に保持されている試料・材料を撮影可能であれば、容器3の材質は特に制限されるものではないが、図1に示す測定装置30の構成では、容器3は透明な材質で作られていることが好ましい。透明な材料としては、後の画像処理による検出感度を上げるためには被写体を鮮明に撮影する必要があることから、高い透明度を有することがより望ましい。加えて、測定中の高温に耐える必要がある。これらの条件に見合う材質としては石英、耐火ガラス、バイコール、ネオセラムなどが挙げられる。
材料2としては、上述の(3)式で用いられる透過係数を考慮する必要はあるものの、透明なものを採用することが特に好ましい。試料を入れた容器3の撮影面と反対側の面から照明を当てた場合に、軟化溶融状態における試料1と、該試料1が浸透していない部分の材料2と、の境界が明瞭に観察されやすくなるからである。試料1が軟化溶融して材料2に浸透している状態において、軟化溶融状態の試料1の上面はほとんど水平であるため、試料1の側面のみを観察しても浸透距離は求められるので、その場合には、材料2として不透明なものを採用することもできる。
覗き窓14は、加熱装置9内の熱を放射するため、加熱装置9内の均熱帯を確保する観点からは大きくないほうが良く、浸透距離を算出する画像処理に必要な最低限の大きさの画像を撮影できる大きさにするのが望ましい。
また、被写体を鮮明に撮影する手段として、照明16を用いることが望ましく、容器3に光を照射する方法としては、次の方法が考えられる。
(i)撮像装置15を設置した側から覗き窓14を通して容器3に光を照射
(ii)撮像装置15を設置した側とは反対側の覗き窓14を通して容器3に光を照射
(iii)容器3の上部もしくは下部から光を照射
しかし、(i)の方法では、撮像装置15と照明16とを同じ側に設置することになるため覗き窓14を大きくする必要がある。一方、(iii)の方法では、照明16が高温状態にさらされるため、(ii)撮像装置15を設置した側とは反対側の覗き窓14を通して容器3に光を照射する方法が最も好ましい。
(ii)の照明方法とすることで、加熱装置9内を明るくし、浸透している試料1と、該試料1が浸透していない部分の材料2と、の境界をはっきりとさせ、発生タールによる妨害を受けることなく容器3内の観察が容易となり、温度上昇によって試料1が赤熱する影響も軽減でき、精度の高い観察が可能となる。また、容器3への光の当たり方は、ムラがあると後の画像処理の検出感度を低下させるため、均一であることが望ましく、また、照明光は明るい方が好ましい。
撮像装置15は、後に画像処理を行うため、光学信号を電気信号に変換する機能を有することが望ましく、具体的には、CCDカメラやCMOSカメラなどが挙げられる。浸透距離の連続的な測定値を得るためには、連続的に撮影できるカメラが望ましい。少なくとも10秒に1回の間隔で画像データを取得できれば、浸透距離の連続的な測定値を得ることができる。また、浸透距離を測定(算出)する際に画像処理を行うため、測定誤差を原理的に小さくするためには、カメラの解像度を高めることが有効である。本測定では、100mm四方程度の視野の画像を取得することが望ましく、また、同じ試料1の浸透距離を測定した場合の標準偏差が0.6mm程度であるため、測定誤差は大きくとも0.1mm程度が望ましい。したがって、カメラの解像度は、100万画素以上が望ましい。
試料1の浸透挙動の撮影中に、試料1から発生したタール等がスリーブ7に付着する可能性があるため、スリーブ7が汚れ、撮影で得られる画像が不鮮明になる可能性がある。この可能性を考慮して、タール等の付着を抑制する措置を講じることが望ましい。具体的な手段として、スリーブ7内の不活性ガスの流量を高める、スリーブ7の内面を平滑化するなどが挙げられる。
以上の条件で、少なくとも、加熱によって試料1が軟化溶融し始める時までには、軟化溶融の浸透挙動の撮影を開始する、すなわち、浸透距離の測定を開始する。
[(ロ)撮影により得られた画像の画像処理]
画像処理は、一般的なパーソナルコンピュータに、撮影により得られた画像データを取り込み、汎用の画像処理ソフトで行うことができる。撮影中、即時に得られた画像を取り込み、画像処理する装置を使用することが好ましい。容器内の試料及び各材料の高さと浸透距離との関係を図5に示す。図5(a)は、試料1と材料2と材料4との初期状態を示している。図5(b)は、試料1の浸透距離の測定(浸透挙動の撮影)開始からの経過時間tにおける、試料1と材料2と材料4との状態を示す。
測定(算出)対象の浸透距離とは、図5中の材料2に浸透した試料1の領域24の下端から上端までの距離である。材料2の下部に存在する試料1の層と領域24とは、何れも黒い色をしているため、画像の上で、視認によってこれらを明確に識別することは難しいが、画像処理によって、試料1の下端、領域24の上端(測定開始前は試料1の上端と一致)、材料2と材料4との境界を判別し、それらの間の距離を測定すれば、浸透距離の値を算出(測定)することができる。
すなわち、tを、試料1の測定開始からの経過時間とし、h(t)を、経過時間tにおける、試料1の下端から領域24の上端までの距離とし、H(t)を、経過時間tにおける、試料1の下端から材料2の上端(材料2と材料4との境界線)までの距離とすると、浸透距離は下記(1)式で表される。
浸透距離=(H−h)−(H(t)−h(t)) ・・・(1)
(1)式において、
は、測定開始時(t=0)における、試料1の下端からその上端までの距離であり、
は、測定開始時(t=0)における、試料1の下端から材料2と材料4との境界線までの距離である。
試料1が、加熱によって軟化溶融する過程では、試料1が上方向に膨張して、材料2の貫通孔に浸透するとともに、貫通孔に浸透しない試料1の部分が膨張、収縮する。このため、材料2は上下に移動する。この材料2の移動時には、材料2は変形しないので、材料2の層全体の長さは加熱前と同じ(H−h)で表される。このうち、試料が浸透していない材料2の層の長さは、(H(t)−h(t))で表される。このため、浸透距離は、材料2の層全体の長さ(H−h)から、試料1が浸透していない材料2の層の長さ(H(t)−h(t))を減算して求めることができる。
上述の(1)式によって浸透距離を算出するための画像処理の具体的な方法(以下の(A)〜(E))を、図6及び7を参照しながら詳述する。図6は、本発明で実施する画像処理における解析対象の解析領域の例を示す概略図であり、図7は、(a)解析領域Aを示す概略図、(b)解析領域Aの幅方向の平均輝度の高さ方向の関係を示すグラフ、(c)解析領域Aの幅方向の平均輝度の高さ方向の変化率の関係を示すグラフである。
(A)試料1の下端位置(yAL)と、領域24の上端位置(yBL)(溶融開始(測定開始)前は試料1の上端と一致)と、材料2と材料4の境界線位置(yCL)とを判別するため、画像中の位置と実際の位置の関係を予め求めておく。画像中の位置と実際の位置の関係は、例えば、撮像装置15の視野を固定し、容器3を所定の位置に設置して得られた画像と、実際の位置との関係を求めることにより定めることができる。このとき、位置判定の精度を高めるため、得られた画像をいくつかの解析領域に分割して解析することができる。図6では試料1の下端を判別するための領域を解析領域A、領域24の上端を判別するための領域を解析領域B、材料2と材料4との境界線を判別するための領域を解析領域Cとしている。
(B)高さ方向(図7(b)のグラフ縦方向)における画像データの代表値の変化を求める。ここで、画像データとは、画像素子によって光学信号を電気信号に変換し、色空間(例えば、RGB空間など)に基づいて数値化したデータのことであり、具体的には輝度、明度、色相、彩度などである。高さ方向の画像データの代表値としては、例えば、解析領域A中のある高さ(y)での幅方向に沿って存在する複数画素での、輝度の平均値や最大値、その幅方向における特定の位置に存在する画素に格納された値などを採用することができる。例えば、解析領域A中の高さyでの幅方向に沿って存在する各画素に格納されている輝度のデータの平均値I(y)を算出して、その値をyにおける画像データの代表値とした。解析領域Aの中の下端から上端までの高さyについて、代表値の算出を行う。図7(b)では、横軸を、輝度のデータの平均値I(y)とし、縦軸を、高さyとして、I(y)と高さyとの関係を示している。
(C)高さ方向yに沿って、上記(B)で求めた画像データのある代表値の変化を求める。すなわち、高さ方向yにおける、(B)で求めた画像データの代表値I(y)の微分値を求める。図7(c)に示すように、解析領域Aの中の下端から上端までの高さyにおける、dI(y)/dyを算出する。
(D)上記(C)で求めたI(y)の微分値は、試料1の下端近傍でピークを示す。したがって、(C)で求めた高さyでのI(y)の微分値に対して、ピークを検出可能な閾値を予め設定すれば、(C)で求めた高さyでのI(y)の微分値が、その閾値を下回る(微分値の絶対値が閾値の絶対値を上回る)高さyの範囲を求めることで、前記境界線となる高さyを求めることができる。例えば、図7(c)に示すように、試料1の下端のピークを検出可能な閾値Tを設定し、dI(y)/dyがT以下となる高さyの範囲を求め、前記境界線の位置として例えば、前記高さyの範囲の最小値とすることができる(y=yAL)。この時、前記高さyの範囲の中点や、最小値と最大値の平均、最大値を用いることもできる。なお、この閾値は解析領域ごとに最適な値を定めればよい。また、I(y)に極値(dI(y)/dy=0)を与える高さyを、境界線となる高さyとすることができる。この場合には、閾値Tを設定する必要はない。
(E)上記(A)から(D)の手順の処理を解析領域B、Cにも適用し、領域24の上端位置(yBL)、材料2と材料4との境界線の位置(yCL)を求める。これら位置の情報から、試料1の下端から領域24の上端の距離h(t)(=yBL−yAL)および試料1の下端から、材料2と材料4との境界線の距離H(t)(=yCL−yAL)を算出する。
以上の方法で画像処理を行うことで、浸透距離の算出に必要なh(t)、h、H(t)、Hを算出可能である。
[(ハ)画像処理データと温度データの集約、表示]
(ロ)で即時に算出した画像処理データ(具体的にはh(t)、h、H(t)、H)および加熱装置内の温度データは、自動的に同期させるために、同時に集約することが望ましい。データを同時に集約する方法としては、データロガーを用いる方法が一般的である。データロガーで集約した数値データを一般的なパーソナルコンピュータに取り込み、例えば汎用の表計算ソフトで(1)式の計算を行うことで、連続的な浸透距離のデータを求めることができる。また、集約した数値データおよび計算後の浸透距離のデータから、温度、浸透距離の経時変化および浸透距離と温度の関係をグラフ化することも可能である。この時、画像データをそのまま一旦保存し、即時的ではなくそのデータを解析して、浸透距離と温度の関係を求めることもできる。
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、試料1と材料2と材料4とに、一定荷重を負荷しつつ、これらを加熱することで浸透距離の測定を行っているが、以下に説明する第2実施形態では、試料1と材料2と材料4とを一定容積に保ちつつ加熱することで浸透距離の測定を行う。図8は、一定容積の場合に使用する軟化溶融特性(浸透距離)の測定装置を示す。図1に示す第1実施形態とは同じ構成については、同じ符号を付しかつ説明を省略し、異なる構成について説明する。
第1実施形態と同様に、容器3に、試料1と材料2と材料4とをこの順で装入する。スリーブ7の内部において、容器3の上側に、変位拘束部材20が配置されている。この変位拘束部材20は、材料4に接触して配置され、試料1と材料2と材料4との変位を拘束することで、これらの容積を一定としている。すなわち、変位拘束部材20は、試料1の膨張によって変化する荷重が作用しているが、固定されているため、反作用力で、試料1と材料2と材料4とにその変化する荷重を加えることにもなる。このため、第2実施形態における変位拘束部材20が、第1実施形態における荷重装置60に対応するともいえる。変位拘束部材20の形状は、図8の形態では棒状としてあるが、前述の変位を拘束するという機能を発揮すれば、特に形状は限定されるものではない。なお、第1実施形態と同様に、材料2が、ガラスビーズなどの粒子層である場合には、変位拘束部材20が、材料2の層に貫入することを防ぐために材料4を材料2の層の上に配置することが好ましい。第2実施形態に係る測定装置40の他の構成は第1実施形態の測定装置30の構成と同様であり、第1実施形態と同様に、試料1の浸透距離を測定する。
図9は、第2実施形態に係る、浸透距離を測定する方法における容器3内の試料・各材料の高さと浸透距離との関係を示す。図9(a)は、試料1と材料2と材料4を一定容積に保ちつつ加熱する方法において、試料1と材料2と材料4の初期状態を示している。図9(b)は、浸透距離の測定開始からの経過時間tにおける、試料1と材料2と材料4との状態を示している。
試料1と材料2と材料4を一定容積に保ちつつ加熱する方法においては、下記(2)式から浸透距離の値を算出することができる。
浸透距離=h(t)−h ・・・(2)
(2)式において、
h(t)は、経過時間tでの試料1の下端から領域24の上端の距離、
は、測定開始時(t=0)での試料1の下端から上端の距離である。
試料1と材料2と材料4とを一定容積に保って加熱する場合には、試料1が軟化溶融によって膨張、浸透するが、容積が一定であるため、材料2の上端の位置は変わらない。従って、図9(b)に示すように、浸透距離は、時刻tと、時刻0での試料上端の試料下端からの距離の差(h(t)−h)から求められる。なお、h(t)を求める画像処理方法については、第1実施形態と同様である。
以上の第1実施形態及び第2実施形態の浸透距離の測定における代表的な手順を以下に記す。
(1)試料1を粒径2mm以下が100質量%となるように粉砕し、該粉砕された試料1を密度0.8g/cmで、層厚が10mmとなるように容器3に装入する。
(2)試料1の上に、直径2mmのガラスビーズである材料2を層厚80mmとなるように配置する。
(3)前記ガラスビーズの上に材料4を配置する。
(4)第1実施形態においては、前記材料4の上部から50kPaとなるように荷重を負荷しつつ(荷重一定)、加熱速度3℃/分で室温から550℃まで不活性ガス雰囲気下で加熱する。第2実施形態においては、第1実施形態における荷重一定に代えて、試料1、材料2、材料4の容積を一定としている。
(5)前記ガラスビーズ層へ試料1が浸透する挙動を、加熱装置9の側面部の覗き窓14を通してCCDカメラで撮影する。
(6)撮影画像を画像処理装置17に伝送する。
(7)即時に画像処理を行って、試料1の下端から領域24の上端の距離h(t)および試料1の下端から、材料2と材料4との境界線までの距離H(t)を算出する。
(8)距離h(t)と距離H(t)及び加熱装置9内の温度を集約データとして、データロガーで集約する。
(9)データロガーからパーソナルコンピュータに前記集約データを伝送する。
(10)表計算ソフトで、前記集約データを(1)式または(2)式に代入する計算を行うことで、連続的な浸透距離のデータを算出する。
以上のようにして、加熱中の任意の時点での軟化溶融物の浸透距離の評価が可能となり、経時変化を考慮した上での、コークス炉内での石炭の軟化溶融挙動を詳細に評価することができる。本発明で得られる浸透距離の測定値は、コークス炉内での浸透挙動を近似した測定環境における測定結果であるため、従来の浸透距離の測定方法よりも、コークス構造の高度な推定に有効であり、それらの推定を通じて、最終的なコークスの品質である強度の推定や、コークス炉壁とコークス塊の隙間の推定に有効である。
また、本発明の方法のうち、一定荷重下での浸透距離の測定方法によれば、加熱中の浸透距離の変化だけでなく、貫通孔を有する材料の位置(H(t))の変動も測定可能であり、軟化溶融物の粘度や膨張圧などに関する情報を得ることも可能である。過剰な浸透性を持つ石炭はコークス強度に悪影響を及ぼすことが知られており、浸透現象を含む軟化溶融物の挙動の温度変化を考慮することで、より高度なコークス品質の制御が可能となる。
容器3に装入した試料1と材料2と材料4とに一定荷重を負荷して試料1を加熱した場合の、浸透距離の測定例を示す。
4種類の石炭(A炭〜D炭)を試料1として、各試料1の浸透距離の測定を行った。使用した石炭の以下の性状を表1に示す。
1.平均最大反射率:Ro
2.ギーセラープラストメータ法の軟化開始温度:ST
3.ギーセラープラストメータ法の最高流動度温度:MFT
4.ギーセラープラストメータ法の固化温度:RT
5.ギーセラープラストメータ法の最高流動度の対数値:logMF
6.揮発分(ドライベース):VM
7.灰分(ドライベース):Ash
Figure 2014052276
図1に示す第1実施形態の測定装置30を用いて、浸透距離を測定した。加熱装置9として、カンタルを発熱体とする電気炉を用いた。また、電気炉の側面部には撮影用と照明用の2つの覗き窓14(幅20mm、長さ150mm)を設けた。覗き窓14の材質は石英とした。容器3には直径20mm、高さ100mmの石英容器を用い、材料2として、直径2mmのガラスビーズを用いた。材料4として、直径19mm、厚さ5mmの石英製フィルターを用いた。石英製フィルターは、140〜180μmの石英粒子を焼結して成型したものであり、試料1から発生する熱分解ガスを透過して、容器内のガス圧が増加して試料の軟化溶融挙動に影響を与えないようにしている。
粒径2mm以下に粉砕し室温で真空乾燥した試料2.51gを容器3に装入し、試料1の上から重さ200gの錘を落下距離20mmで5回落下させることにより試料1を圧縮した。この状態で試料1の厚さは10mmとなる。次に、直径2mmのガラスビーズを試料1の充填層の上に80mmの厚さとなるように配置した。ガラスビーズ充填層の上に直径19mm、厚さ5mmの石英製フィルターを配置し、その上に荷重負荷棒5としてSUS製の棒を置き、さらにSUS製の棒の上部に1.6kgの錘6を置いた。これにより、石英製フィルターにかかる圧力は50kPaとなる。不活性ガスとして窒素ガスを使用し、加熱速度3℃/分で550℃まで加熱した。加熱中は照明16としてLED照明(キーエンス製、CA-DSW15、27.4W)で試料1に光を当てながら、撮像装置15としてCCDカメラ(キーエンス製、XG-H500C、499万画素、2432(H)×2050(V))で試料の浸透現象を撮影した。
撮影で得られる画像は2秒間隔で画像処理装置17(キーエンス製、XG-7700)に伝送した。伝送した画像に対して、上記「(ロ)撮影により得られた画像の画像処理」に記載の方法で、画像処理を実施した。画像処理するための画像データには輝度を使用し、ある高さでの試料1の水平方向全体の輝度の平均を画像データの代表値として求め、その値に基づいて、境界面の位置yAL、yBL、yCLを求めた。また、測定の前に、試料1の下端、領域24の上端(測定開始前は試料1の上端と一致)、材料2と材料4との境界線を判別するための解析領域A〜Cと、輝度の閾値T〜Tを設定した。
浸透挙動の撮影中は、試料1の下端の位置(yAL)、領域24の上端の位置(yBL)、材料2と材料4との境界線の位置(yCL)を即時求め、試料1の下端から領域24の上端の距離h(=yBL−yAL)および試料1の下端から、材料2と材料4との境界線の距離H(=yCL−yAL)を算出した。算出した画像処理データ(h(t)、H(t))と電気炉の温度データをデータ集約装置としてデータロガーで集約し、パソコンに伝送した。パソコンに伝送されたデータを表計算ソフトに取り込み、浸透距離を上記(1)式により算出した。算出した浸透距離と温度の関係をグラフ化し、パソコンのディスプレイ上に表示した。以上が本発明例となる。また、加熱終了後、窒素雰囲気で冷却を行い、冷却後の浸透距離をノギスで計測した。
特許文献1、2に記載の方法により、固着していないガラスビーズの重量からも浸透距離を求めた(比較例)。
上記実施例で、石炭A〜Dについて測定した浸透距離と温度との関係を図10に示す。まず、本発明の測定装置および方法により、浸透距離の測定を連続的に行えることを確認した。表2に、本発明の測定による550℃の浸透距離と冷却後に直接測定(ノギスで測定)した浸透距離の値を示す。両者には殆んど差が無く、本発明の測定装置および方法により、浸透距離を精度良く測定できる事を確認した。
Figure 2014052276
比較例では、加熱終了温度の一点でしか浸透距離を測定できない。すなわち、経時に伴う浸透挙動の変化を知ることができない。仮に、浸透現象の途中で測定を終了しても、浸透距離は、加熱装置の冷却中の影響を受けてしまい、その瞬間の浸透距離の測定ができなかった。
図8に示す第2実施形態の測定装置40を用いて、浸透距離を測定した。材料4の層の上側には、実施例1における測定装置30の荷重装置60の代わりに、変位拘束部材20が配置されており、該変位拘束部材20が配置された状態で、試料1の厚さは10mm、材料2の厚さは80mm、材料4の厚さは5mmとして、試料1と材料2と材料4との容積を一定とした条件以外は、実施例1と同様に浸透距離を測定した。本実施例での浸透距離の測定結果を図11に示す。第2実施形態の浸透距離の測定においても、浸透距離を連続的に測定可能であることがわかる。
本発明の測定装置および方法により、精度の高い浸透距離の測定値を連続的に測定可能になり、浸透現象への加熱温度の影響がはじめて明らかとなり、石炭及び粘結材の軟化溶融時の浸透現象を精緻に評価可能となった。実際、本実施例の測定から、浸透現象が、ギーセラープラストメータ法の軟化開始温度付近から最高流動度温度付近までの温度域で起こることが判明した。また、例えばA炭とB炭を比較すると、A炭の方が、MFT、RTともB炭よりも高いのに対し、図10及び図11によれば、A炭の方が、浸透がより低温で終了していることがわかる。このように、ギーセラー流動度とは異なる軟化溶融現象の温度依存性が測定可能となった。
1 試料
2 上下面に貫通孔を有する材料
3 容器
4 材料2とは外観の異なる材料
5 荷重負荷棒
6 錘
7 スリーブ
8 温度計
9 加熱装置
10 温度検出器
11 温度調節器
12 ガス導入口
13 ガス排出口
14 覗き窓
15 撮像装置
16 照明
17 画像処理装置
18 データ集約装置
19 測定値表示装置
20 変位拘束部材
21 貫通孔
22 充填粒子
23 充填円柱
24 材料2に浸透した試料1の領域
30 測定装置(第1実施形態)
40 測定装置(第2実施形態)
60 荷重装置

Claims (4)

  1. 石炭及び/または粘結材を容器に装入し、該容器内の石炭及び/または粘結材を試料とし、該試料の上に、上下面に貫通孔を有する材料を配置して、
    前記材料に一定荷重を負荷しつつ前記試料を加熱することで、該試料を軟化溶融させ、軟化溶融している試料を前記材料の貫通孔へ浸透させるとともに、
    前記試料の浸透挙動を撮影し、
    撮影により得られた画像から、試料の浸透距離の測定開始からの経過時間tにおける、試料の下端から浸透した試料の上端までの距離h(t)、および試料の下端から材料の上端までの距離H(t)を求め、
    前記距離h(t)及び前記距離H(t)を下記(1)式に代入して、経過時間tにおける、前記貫通孔へ浸透した試料の浸透距離を算出することを特徴とする、石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定方法。
    浸透距離=(H−h)−(H(t)−h(t))・・・(1)
    ここで、hは、測定開始時(t=0)における、試料の下端から試料の上端までの距離h(0)、及び、
    は、測定開始時(t=0)における、試料の下端から材料の上端までの距離H(0)、である。
  2. 石炭及び/または粘結材を容器に装入し、該容器内の石炭及び/または粘結材を試料とし、該試料の上に、上下面に貫通孔を有する材料を配置して、
    前記試料と前記材料を一定容積に保ちつつ前記試料を加熱することで、該試料を軟化溶融させ、軟化溶融している試料を前記材料の貫通孔へ浸透させるとともに、
    前記試料の浸透挙動を撮影し、
    撮影により得られた画像から、試料の浸透距離の測定開始からの経過時間tにおける、試料の下端から浸透した試料の上端までの距離h(t)を求め、
    前記距離h(t)を下記(2)式に代入して、経過時間tにおける、前記貫通孔へ浸透した試料の浸透距離を算出することを特徴とする、石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定方法。
    浸透距離=h(t)−h・・・(2)
    ここで、hは、測定開始時(t=0)における、試料の下端から試料の上端までの距離h(0)、である。
  3. 石炭及び/または粘結材を保持し、該石炭及び/または粘結材を試料とし、該試料の上に、上下面に貫通孔を有する材料が配置される容器と、
    前記材料の上側に配置される荷重装置と、
    前記容器を内部に配置し、該内部を可視可能とする覗き窓を有する加熱装置と、
    前記覗き窓を通じて、前記容器内の試料を撮影するように配置される撮像装置と、を備えることを特徴とする、石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定装置。
  4. 石炭及び/または粘結材を保持し、該石炭及び/または粘結材を試料とし、該試料の上に、上下面に貫通孔を有する材料が配置される容器と、
    前記材料の上側に配置される変位拘束部材と、
    前記容器を内部に配置し、該内部を可視可能とする覗き窓を有する加熱装置と、
    前記覗き窓を通じて、前記容器内の試料を撮影するように配置される撮像装置と、を備えることを特徴とする、石炭及び粘結材の軟化溶融特性の測定装置。
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