JP2014050521A - 塗布組成物およびこれを塗布した塗布物 - Google Patents

塗布組成物およびこれを塗布した塗布物 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶性のヒドロキシアパタイト微粒子を含む塗布組成物とこれを基材上に塗布して得られた塗布物に関し、基材上に塗布を行った際に、親水性が高く、均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性に優れたヒドロキシアパタイト塗膜の形成が可能な塗布組成物および塗布物を与えること。
【解決手段】体積平均粒子径が40nm〜3μmの範囲にある結晶性を有するヒドロキシアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)を含む塗布組成物を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は結晶性を有するヒドロキシアパタイト微粒子を含む塗布組成物とこれを基材上に塗布して得られた塗布物に関し、基材上に塗布を行った際に、親水性が高く、均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性に優れたヒドロキシアパタイト塗膜を形成する塗布組成物および塗布物に関する。
ヒドロキシアパタイトは骨や歯などを構成するリン酸カルシウム塩の1種であり、高い生体親和性を示すことが知られている。再生医療の分野に於いて、人工骨、人工歯根、人工血管、人工関節等様々な体内への埋め込み材料を検討する場合、これらの表面にヒドロキシアパタイトを用いて被覆することで、材料に高い生体親和性を発揮する試みが従来からなされている。ヒドロキシアパタイトで表面を覆われた材料が生体親和性を発揮する一つの理由として、元来生体に含まれる素材なので生体内で異物として認識されないことに加えて、表面の親水性が極めて高くなり、細胞が接着しにくくなることなどが考えられる。こうしたヒドロキシアパタイトを材料の表面に被覆させる方法として様々な方法が試みられてきた。例えば、特許文献1にはプラズマ溶射法を利用する方法が示されている。この方法では用いる材料に耐熱性が要求され、複雑な形状のものや大面積の材料の表面処理には適さず、こうした場合に均一な塗膜を基材表面に形成することが困難であり、装置としても大がかりで高価になる問題があった。さらに得られるヒドロキシアパタイトは結晶性が低く、水中で溶解しやすく消失が速いという問題や、或いはアパタイト以外の組成のカルシウム塩が副成する問題に加えて、基材との接着性や耐摩耗性に劣る問題があった。
また、特許文献2には人の体液を模した疑似体液中でヒドロキシアパタイトを材料表面に析出させる方法が開示されるが、この方法では表面に被覆されるヒドロキシアパタイトの量が少なく、十分な強度を備えた厚みのある被覆が行えず、また、処理に極めて長時間を要する問題があった。さらに、特許文献3には基材表面にガラス体を形成し、この中にヒドロキシアパタイトの核を形成した後に疑似体液を用いてヒドロキシアパタイト塗膜を基材表面に析出させる方法が開示されるが、同様に強度に優れた厚みの十分な塗膜を形成することは困難であり、基材との接着性や耐摩耗性に劣る問題があった。
特許文献4には基材表面に設けたゲルマトリックス中にリン酸イオンとカルシウムイオンを供給することで繊維状結晶のヒドロキシアパタイトを基材表面に析出する方法が開示される。この方法ではゲルマトリックスとして有機素材を用いることから、形成されるヒドロキシアパタイト被覆層中にこうした有機素材が不純物として含まれる場合があるため生体内で不純物が異物として認識され免疫反応を誘起してしまう問題や、表面の親水性が低下する問題があることから、医療分野への適用に難があり、さらに基材との接着性や耐摩耗性に劣る問題があった。
特許文献5には、特定の官能基を有する高分子基材表面にシランカプラーを介してヒドロキシアパタイトの焼結体を結合することで基材表面をヒドロキシアパタイトで被覆する方法が開示されている。この方法で用いるヒドロキシアパタイトは種々の方法で得られる非晶質のヒドロキシアパタイトを高温で焼結する方法で得られるが、焼結の際にヒドロキシアパタイトの粉末が凝集し、これを用いて基材表面に被覆を行う場合に、均一な塗膜が形成されない問題や、あるいは該焼結体を分散することで塗膜の均一性を高めようとした場合に、分散媒として有機溶剤を使用するため、安全性等の点で問題があった。また、有害性の高いシランカプラーを用いることで医療分野に於いて生体内への埋め込み材料には適用しがたい問題があった。さらにこの場合も基材との接着性や耐摩耗性の点で劣る問題があった。
特許文献6には、リン酸カルシウム系化合物と珪酸ナトリウムを含むセラミック水硬セメントが開示されている。この場合、硬化した両者の混合物は水中において室温で容易に溶解するため、本発明が目的とする耐水性の良好な塗布物が得られるものではなかった。
ヒドロキシアパタイトはその結晶表面に於いて種々のタンパク質や有機物質を吸着する能力を有することから、例えば非特許文献1に記載されるように、タンパク質分離用のカラムクロマト用充填剤としての利用や、或いは繊維基材と組み合わせてフィルターとして利用する等の検討がなされてきた。特許文献7には、基材として不織布を使用し、この不織布繊維表面にヒドロキシアパタイト微粒子を水溶性結合剤および高分子分散剤とともに含浸またはコーティングする方法が開示されている。この場合、使用するポリアクリル酸ナトリウムなどの電荷を有する高分子分散剤がヒドロキシアパタイトに強く結合し、ヒドロキシアパタイト表面の吸着活性を封鎖してしまう問題と、使用する水溶性結合剤としてポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物を使用するため、接着性に劣り、耐摩耗性に乏しく、特に耐水性がないために生体内などの湿潤状態では使用できない問題があった。
特開昭62−34559号公報 特開平4−144566号公報 特開平6−293506号公報 特開2010−208903号公報 特開2004−51952号公報 特表2002−527208号公報 特開平5−222693号公報
Tiselius A.et.al.,"Archives of Biochemistry and Biophysics",vol.65,No.1,132−155(1956)
本発明は、結晶性のヒドロキシアパタイト微粒子を含む塗布組成物とこれを基材上に塗布して得られた塗布物に関し、基材上に塗布を行った際に、親水性が高く、均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性に優れたヒドロキシアパタイト塗膜の形成が可能な塗布組成物およびこれを塗布した塗布物を提供することを課題とする。
本発明の課題は、以下の発明により解決される。
1.体積平均粒子径が40nm〜3μmの範囲にある結晶性のヒドロキシアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)を含む塗布組成物。
2.上記の結晶性のヒドロキシアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)が、乾燥固形分質量比で1:0.1〜1:3の範囲で含まれる塗布組成物。
3.基材上に上記1または2の塗布組成物を塗布して得られた塗布物。
4.基材が金属、ガラスまたはセラミックスである上記3の塗布物。
本発明により、基材上に塗布を行った際に、親水性が高く、均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性に優れたヒドロキシアパタイト塗膜の形成が可能な塗布組成物および塗布物を提供することが出来る。
実施例1で得られたヒドロキシアパタイトの広角X線回折パターン。 実施例1で得られたヒドロキシアパタイト微粒子分散物の光散乱回折式粒度分布計により測定を行った粒度分布曲線。 比較例1で使用した非晶質ヒドロキシアパタイトの広角X線回折パターン。
本発明の塗布組成物は、結晶性のヒドロキシアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)を合わせて含む。最初に、本発明で用いることの出来るポリリン酸(塩)について説明を行う。本発明においてポリリン酸(塩)とはリン原子に酸素原子が結合した一般式(1)で示される繰り返し単位を分子内に少なくとも2個以上有する化合物を含む。
一般式(1)においてnは2以上の整数を表し、Xは水素原子あるいはアルカリ金属イオンを表す。
上記一般式(1)で表される化合物の例として、例えばXがナトリウムイオンである場合には、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、およびnが5以上である直鎖状のポリリン酸ナトリウムのような直鎖状のポリリン酸塩が挙げられ、或いは環状化合物であるヘキサメタリン酸ナトリウムなどを含み、実際には高分子化合物であるメタリン酸ナトリウムや、或いは、直鎖状骨格のみならず、分岐構造を含むウルトラリン酸ナトリウムなどを挙げることが出来る。これらの種々のポリリン酸(塩)は複数の種類を任意の割合で混合して用いても良い。また、これらの化合物に於いて、一般式(1)におけるnの値の上限としては特に制限がないが、nが5000を超える場合には水溶液の粘度が高くなり、本発明で得られる塗布組成物の粘度が高くなりすぎて塗布が困難になる場合があることから、nは5000以下である場合が特に好ましい。また、nが1の場合には本発明が目的の一つとする耐水性の良好な塗布物が得られない場合がある。
上記一般式(1)で示される繰り返し単位を分子内に有するポリリン酸(塩)については、後述するように本発明の塗布組成物を作製する際の液のpHによって分子内に含まれるXの種類が異なる場合がある。即ち、ポリリン酸はアルカリで段階的に中和すると、含まれるリン酸基が順番に中和されてゆくため、ポリリン酸(塩)を含む分散物のpHによってXが水素原子であるかアルカリ金属イオンであるか、それらの比率が異なることになる。また、中和するアルカリ金属イオンの種類としてはナトリウムイオン以外にカリウムイオンやリチウムイオンなども用いることが出来、これらが混合して用いられる場合であっても良い。
種々のポリリン酸(塩)において、これらがカルシウムイオンと錯体を形成し、水中からカルシウムイオンを捕捉する機能を有することは古くから知られており、例えば洗浄助剤として硬水中のカルシウムイオンを捕捉して水を軟化し、さらには泥などの無機汚れを分散させることで洗剤の洗浄力を高めることから、広く用いられている。こうした効果を最大限に発揮するために、ポリリン酸塩の構造とカルシウムイオンの捕捉能の関係はよく調べられており、ピロリン酸ナトリウム<ポリリン酸ナトリウム<メタリン酸ナトリウムの順にカルシウムイオンに対する捕捉能が向上することが知られている。
本発明に於いては結晶性を有するヒドロキシアパタイト微粒子と上記のポリリン酸(塩)を組み合わせた塗布組成物を用いることで、基材上に塗布を行った際に、親水性が高く、均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性に優れた塗布物が作製できることが本発明の特徴である。本発明の骨子は、結晶性を有するヒドロキシアパタイト微粒子に対して強い相互作用を及ぼすポリリン酸(塩)を添加して塗布組成物を作製することで、塗布液としての安定性は極めて良好であり、これを基材表面に塗布を行うと、親水性が高く、均一性、接着性が良好で、極めて耐水性および耐摩耗性の良好な塗布物を与えることを見出したものである。
上記において、塗布物が均一であるためには、用いるヒドロキシアパタイト微粒子の体積平均粒子径にして40nm〜3μmの範囲にある微粒子を用いることが必要である。この範囲を越えた平均粒子径がさらに大きいヒドロキシアパタイトを使用した場合には、表面の平滑性が低下し、擦過した場合の摩擦抵抗値が大きく、耐摩耗性に劣る場合がある。また、体積平均粒子径が40nm未満である場合には、結晶性である特徴が消失し、非晶質のヒドロキシアパタイトと同等となる場合がある。
本発明で用いることの出来る様々なポリリン酸(塩)は、その種類によってpHの値やpH緩衝能力、或いはpH緩衝曲線、溶解度、溶液粘度など様々な性質に於いて異なるが、本発明に於いてはこれらの性質は本発明の塗布組成物の物性やこれを塗布して得られる塗布物の性能には大きくは作用せず、本発明で使用する塗布組成物の濃度範囲、温度範囲、およびpH範囲においてはいずれのポリリン酸(塩)も好ましく用いることが出来る。
本発明の塗布組成物を作製する際の媒体としては水を主体とする水性媒体が好ましい。水に対して20質量%未満の添加量であれば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類や、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒等、水と混和性のある種々の溶剤を添加して用いることも出来る。
上記において触れた、本発明で与えられる塗布組成物の濃度範囲、温度範囲、およびpH範囲については好ましい範囲が存在する。塗布組成物に含まれる固形分の濃度範囲については、ヒドロキシアパタイト微粒子の分散物中における固形分濃度(質量%)は上限が50質量%未満である場合が好ましく、これ以上の濃度で含まれる場合には塗布組成物の粘度が高くなり、塗布が困難になる場合がある。また、濃度の下限については特に制限はなく、任意の割合で分散物を水性媒体で希釈して用いることが出来るが、実用的な観点からは大凡0.1質量%以上の濃度で用いる場合が好ましい。次に、塗布組成物の温度範囲についても好ましい範囲が存在し、下限として−20℃以上の温度で使用することが好ましく、これ以下の温度では凍結する場合がある。上限については水性塗布組成物であることから、常圧では100℃未満である場合が好ましい。この温度範囲に於いては、ポリリン酸(塩)の種類による溶解性や塗布性に対する影響は特に表れない。塗布組成物のpHについては好ましい範囲が存在し、pHが5〜13の範囲である場合に最も塗布組成物の塗布性が良好であり、pHが7〜12の範囲が更に好ましく、更にpHが8〜12のアルカリ性の範囲である場合が最も好ましい。分散物のpHが5未満である場合にはポリリン酸(塩)の溶解性が低下して析出する場合があり、塗布組成物の安定性が低下する場合がある。塗布組成物の安定性は系のpHが高くなるに従って向上し、塗布組成物の粘度も低下する傾向があることから、高いpHにおいて好ましく利用することが出来る。
ヒドロキシアパタイト微粒子に対するポリリン酸(塩)の比率についても好ましい範囲が存在する。後述する実施例に於いても示すように、本発明の塗布組成物に於いては、ヒドロキシアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)が、乾燥固形分質量比で1:0.1〜1:3の範囲で含まれる場合が最も好ましい。これ以下の割合でポリリン酸(塩)を添加して塗布組成物を作製した場合、これを基材に塗布して得られる塗布物は耐摩擦性や耐水性に劣る場合がある。或いは、上記の範囲を超えてヒドロキシアパタイトに対して更に多量のポリリン酸(塩)を用いて塗布組成物を作製し、これを基材に塗布して得られる塗布物を作製しても、同様に耐摩擦性や耐水性が低下する場合があり、また塗布物としてヒドロキシアパタイトを添加した効果が認められない場合がある。
本発明に用いることの出来るヒドロキシアパタイト微粒子としては、体積平均粒子径にして40nm〜3μmの範囲にある微粒子を用いることが必要である。こうした粒子サイズを有するヒドロキシアパタイト微粒子を作製するためには湿式分散処理を好ましく用いることが出来る。湿式分散処理にはホモミキサーやホモジナイザー或いは超音波分散装置等の機器を利用して分散を行う方法も可能であるが、より好ましくは、下記のメディアを利用したメディアミルによる湿式分散処理を行うのが最も好ましい。この方法は、ヒドロキシアパタイトを導入した水中に於いて、通常ガラスビーズやアルミナビーズ、その他のセラミックビーズを加えて振盪や攪拌を行い、ヒドロキシアパタイト粒子と該ビーズが機械的に衝突し、微粉砕されることで微粒化を行う処理方法である。少量をバッチ方式で処理を行う場合には、ペイントコンディショナーを使用して数時間に亘る振盪を行うことで湿式分散処理を行うことが出来る。比較的多量の試料を用いて処理を行う場合には、ダイノミル等のメディア分散機を利用して、メディアとして1個当たりの平均直径が0.01〜10mmの範囲にある、好ましくは0.1〜5mmの範囲にあるセラミックビーズを用いたメディア分散機を複数台直列に配置して1パスで湿式分散処理を行っても良く、或いは1台のメディア分散機を用いて複数回処理を繰り返すことも好ましく行うことが出来る。
メディアミルを利用してヒドロキシアパタイトの湿式分散処理を行う場合に、使用するメディアはセラミックビーズを用いることが好ましい。特にヒドロキシアパタイトを分散する場合に、ビーズとヒドロキシアパタイトが接触してビーズが研磨されるなどしてビーズ由来の不純物がヒドロキシアパタイト分散物に混入することを防止することが特に好ましい。こうした目的で利用できるセラミックビーズとして、具体的にはZrO、立方晶ジルコニア、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナなどのジルコニアを含有するセラミックビーズや合成ダイヤモンド、窒化珪素ビーズなどを最も好ましく用いることが出来るが、これら以外にも、例えば、ガラスビーズ、アルミナビーズ、チタン酸ストロンチウムビーズ等のビーズを利用することも行われる。こうしたメディアを使用したメディア分散機を用いる湿式分散処理の条件は、通常行われる室温での処理であり、特に処理時間や温度等に関する制限はない。また、パス回数については1回で十分である場合もあるが、2〜7回程度のパス回数で処理を行うことで、より粒子径分布が狭く、かつ分散安定性に優れたヒドロキシアパタイト微粒子の分散物が得られることから好ましく行うことが出来る。
また、湿式分散処理に際して、後述するような種々の界面活性剤や水溶性ポリマーを分散剤として添加することで、得られる分散物に含まれるヒドロキシアパタイト微粒子の粒子径をより小さくすることが出来、好ましく用いられる場合がある。
後述する実施例に於いて示すように、上記の湿式分散処理の結果、得られるヒドロキシアパタイト微粒子の大きさとしては、光散乱回折式粒度分布計を使用して求められる体積平均粒子径を指し、数値としてメジアン径を挙げている。このようにして測定されたヒドロキシアパタイト微粒子の大きさとして、平均粒子径が40nm〜3μmの範囲にある分散物が得られる。このことで、本発明の塗布組成物を作製し、これを基材に塗布して塗布物を作製した場合に、均一な塗布物が得られることが特徴である。
本発明に於いて用いることの出来る結晶性を有するヒドロキシアパタイトとは、粉体の状態で広角X線回折測定を行った場合に、2θが10〜60度の範囲に於いて結晶性ヒドロキシアパタイトが有する特徴的なピークとして、特に26度付近の(002)面からの回折ピーク、32度付近の(211)面からの回折ピーク、33度付近の(300)面からの回折ピークが分離して観察される場合においてのみ結晶性を有すると称し、ピーク幅がブロードで、(211)面と(300)面からの回折ピークが分離されずにブロードで比較的強度が弱い回折パターンを与える場合には、結晶性を有しない非晶質であるとした。
本発明に於いて用いることの出来る結晶性を有するヒドロキシアパタイトとしては、様々な従来技術を利用して作製された結晶性を有するヒドロキシアパタイトを用いることが出来るが、具体的には、試薬あるいは工業用薬品或いは食品添加物グレード、化粧品グレード、医薬部外品グレード、医薬品原材料グレード等として入手可能である様々な市販される結晶性を有するヒドロキシアパタイトを用いることが可能である。
また、市販される結晶性を有するヒドロキシアパタイト以外でも、下記文献に示されるような様々なヒドロキシアパタイトの製造方法を用いて作製された結晶性を有するヒドロキシアパタイトを本発明に於いて用いることも可能である。即ち、結晶性を有するヒドロキシアパタイトを得るための様々な製造方法として、例えば特開昭63−159207号公報には、炭酸カルシウム粉末と第二リン酸カルシウム(2水和物)粉末を混合して水性スラリーを調製し、次いでこのスラリーを湿式粉砕機により摩砕混合しながら反応させる方法が示されている。特公平7−115850号公報には、リン酸三カルシウムをpH7〜11に調整された無機ハロゲン化物を含有する水溶液中で熱処理を行うことでヒドロキシアパタイトを作製する方法が示されている。特開平5−170413号公報には酸化カルシウム及び/または水酸化カルシウムの水性スラリーとリン酸水溶液をpH7〜12の範囲に於いて混合することでヒドロキシアパタイトとして純度の高い微粒子を得る方法が開示されている。上記の様々な方法で得られたヒドロキシアパタイトは、更にその結晶性を高めるために、水熱処理や焼結処理を行うことが好ましい。これら様々な方法はいずれも結晶性を有するヒドロキシアパタイトを得るための方法として有効であり、得られるヒドロキシアパタイトは、分散状態で体積平均粒子径が40nm〜3μmの範囲内にある限り、本発明に於いても好ましく用いることが出来る。
本発明に於いて最も好ましく用いることの出来る結晶性を有するヒドロキシアパタイトとして、非特許文献1に記載されるリン酸水素カルシウム二水和物をアルカリ処理して得られる平板状のヒドロキシアパタイトが挙げられる。この方法で得られるヒドロキシアパタイトは焼結や水熱処理などの熱処理を行わずに結晶性を有し、湿式分散処理において本発明で示されるポリリン酸(塩)との組み合わせで最も効率的に微粒子分散物が得られ、かつ得られるヒドロキシアパタイト微粒子の体積平均粒子径も40nm〜3μmの範囲にあり、粒子径分布が狭い微粒子分散物が得られることから、最も好ましく用いることが出来る。
本発明における塗布組成物には必要に応じて種々の界面活性剤を添加して用いることも好ましく行われる。本発明において用いることの出来るアニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。
本発明において用いることの出来るノニオン性界面活性剤としては、種々の鎖長のポリエチレンオキサイドに、アルキル基やフェニル基およびアルキル置換フェニル基が結合したポリエチレンオキサイドアルキルエーテル、ポリエチレンオキサイドアルキルフェニルエーテルが好ましく用いることが出来、これらの内でも、商品名TWEEN20、同40、同60および同80として知られるソルビタンモノアルキレート誘導体が最も好ましく用いることが出来る。
本発明において界面活性剤を用いる場合には、これが塗布組成物に含有される量については好ましい範囲が存在する。塗布組成物に含まれるヒドロキシアパタイト微粒子に対する固形分質量比で5質量%以下の範囲が好ましく、更に3質量%以下の範囲で含まれる場合が最も好ましい。
本発明の塗布組成物には、さらに必要に応じて各種水溶性ポリマーを添加して用いても良い。用いることの出来る水溶性ポリマーとしては、例えば、ゼラチン、ゼラチン誘導体(例えば、フタル化ゼラチン等)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、キサンタン、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、デンプン、各種変性デンプン(例えばリン酸変性デンプン等)等を挙げることが出来る。
本発明に於いて上記の塗布組成物を塗布する基材としては、各種プラスチックフィルム、不織布、プラスチック成形加工品、各種金属プレート、金属成形加工品、各種ガラス、各種セラミック材料などを用いることが出来る。但し、後述するように、本発明の塗布物を作製する場合には、塗布組成物を基材に塗布した後に、100℃以上の温度で加熱を行うことが好ましいことから、用いる基材としては金属、ガラスおよびセラミックスである場合が最も好ましい。塗布方法に関しては、基材の種類に応じて最適の塗布方法を選択することが出来、具体的には、スプレー塗布やファウンテン塗布、スライド塗布、カーテン塗布、スロットダイ塗布方式などの塗布装置と基材が機械的に直接接触せず、塗布組成物のみが基材上に送液される方法が好ましく、或いは、塗布用ロール表面に塗布液を送液し、これを基材に転写するグラビア塗布方式、或いはキスコート方式、ブレードコート方式なども使用することが出来る。さらには、基材を塗布組成物中に含浸する含浸加工(ディップ塗布方式)も好ましく行うことが出来る。
塗布組成物を基材表面に塗布し、その後乾燥を行うことで、基材表面に塗布組成物の乾燥塗膜が形成された塗布物を得ることが出来る。この際の乾燥条件としては少なくとも100℃以上の温度で加熱乾燥を行うことが好ましく、さらに150℃以上の温度で熱処理を行うことで、塗布組成物から形成される塗膜と基材との接着性を一層高めることも好ましく行われる。このように100℃を超える温度で加熱を行った場合に、本発明の塗布組成物に含まれるポリリン酸(塩)中のリン酸基同士の間で脱水縮合反応が進行し、高度に発達した3次元網目構造が形成されることから、塗布物として塗膜の均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性に優れた塗布物が得られる。加熱を行う時間については、加熱温度が高くなるに従い必要とされる時間も短くなるが、一般的に1分から1時間の範囲で加熱を行うことが好ましい。
基材表面に塗布組成物を塗布し、乾燥させて塗布物を作製する場合に、該塗布組成物の乾燥塗膜の厚みに対しては特に制限はなく、目的、用途に応じて最適の塗布厚みが選択される。さらに1回の塗布工程で必要な厚みが得られない場合には、複数回に分けて塗布、乾燥工程を繰り返して塗布物を作製することも行うことが出来る。このようにして作製される塗布物における塗膜の厚みは通常、0.01〜100μmの範囲にある場合が好ましい。塗膜の厚みが0.01μm未満の場合は、本発明の効果が認められない場合があり、また、厚みが100μmを超える場合は塗布および乾燥の際に厚みにムラを生じたり、表面にひび割れが生じる場合がある。
以下に実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の百分率は断りのない限り質量基準である。
(実施例1〜7)
ヒドロキシアパタイトとして、非特許文献1に記載される方法に従って、リン酸水素カルシウム二水和物(和光純薬工業株式会社製試薬、食品添加物グレード)に当モルの水酸化ナトリウムを加えて、水中に於いて70℃で3時間加熱攪拌を行い、室温で静置後沈殿した生成物を濾過、水洗および乾燥して結晶性を有するヒドロキシアパタイトの粉末を得た。結晶性の確認は広角X線回折測定を行い、文献に記載されるものと同様な回折パターンを得たことから確認した。図1は上記で得られたヒドロキシアパタイトの広角X線回折パターンを示す。これを用いて以下のようにしてビーズミル方式による湿式分散処理を行った。即ち、ヒドロキシアパタイト20グラムを0.2リットルのポリプロピレン容器に移し、これにイオン交換水100グラムおよび粒径0.3mmのジルコニアビーズを80グラム加えて密閉し、ペイントコンディショナーを使用して6時間振盪処理を行った。その後、濾布を使用して分散液からジルコニアビーズを分離した。得られた分散液のpHは10.8であり、固形分濃度は16.7質量%であった。これを用いて以下のように評価を行った。
上記で得られた分散液を用いて、分散しているヒドロキシアパタイト微粒子の大きさを測定するために、光散乱回折式粒度分布計(株式会社堀場製作所製粒度分布測定装置LA−920)を使用して測定した。図2には、実施例1で得られたヒドロキシアパタイト微粒子分散物の光散乱回折式粒度分布計により測定を行った粒度分布曲線を表す。得られた体積平均粒子径は、メジアン径で1.36μmであり、95質量%の粒子が0.4〜2.6μmの範囲に含まれており、比較的狭い粒子径分布を示した。
上記で得られた分散液を用いて、表1に示す配合にて、これにポリリン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製試薬)をヒドロキシアパタイト微粒子に対して種々の比率になるよう添加し、さらにイオン交換水を加えて全固形分濃度が10質量%になるよう調整して本発明の塗布組成物を作製した。次に基材として脱脂洗浄済みスライドグラスを選び、表面に乾燥質量で1平方メートル当たり5グラムになるようドクターバーを使用して塗布を行い、ドライヤーで乾燥させた。塗布したスライドグラスを200℃に設定したホットプレート上に置き、15分間加熱を行った。ホットプレート表面の温度は、放射温度計(タスコジャパン株式会社製、THI−500)を使用して計測を行い、実際に200℃に加熱されていることを確認した。その後、スライドグラスをホットプレートから取り出し、放冷して室温まで冷却した。このようにして作製した本発明の塗布物である実施例1〜7の試料を用いて以下の評価を行った。
親水性の評価は、水を用いて、塗膜表面に水滴を滴下した際の接触角を測定することで評価を行った。この場合、動的接触角計を使用して、着滴後30秒後の接触角を評価に選んだ。接触角の値として50度以下の場合を親水性であると評価した。
塗膜の均一性は、目視にて塗膜に対する透過光もしくは反射光における透明性もしくは白色度の均質性および凝集物や異物の有無などを観察して評価を行い、これらに項目全てで均質である場合に○とし、それ以外を×とした。
接着性の評価は、塗布面にセロハンテープを貼り付け、一気に引きはがした場合に、セロハンテープ側に塗膜の一部でも付着している場合を×とし、塗膜の剥離が一切認められない場合においてのみ○とした。
耐水性の評価は、塗布物を90℃の熱水中に12時間浸漬した後の塗膜の様子を目視で観察し、塗膜の大部分が剥がれた場合を×とし、部分的に剥離が認められた場合を△とし、変化が認められなかった場合を○とした。想定する実用的な観点からは、△及び○の場合に合格と判定した。
耐摩耗性の評価は乾燥状態と水で濡れた湿潤状態の両方で評価を行った。それぞれの状態で、塗膜表面を紙製のワイパー(キムワイプ、日本製紙クレシア株式会社製)で強く擦りつけ、50回繰り返し表面を擦過した場合に、塗膜表面に顕著に擦り跡が残った場合を×とし、僅かに擦り跡が認められる場合を△とし、擦り跡が認められない場合を○とした。想定する実用的な観点からは、△及び○の場合に合格と判定した。全ての項目での評価結果を表2に示した。表から、実施例1および7では耐摩耗性が乾燥状態もしくは湿潤状態のいずれかで×の評価であったが、他方で△の評価であったことから想定する実用上使用可能な下限レベルとして合格と判定した。
(実施例8)
実施例3において、ポリリン酸ナトリウムに代えて、ピロリン酸ナトリウムをヒドロキシアパタイト微粒子に対して50質量%添加して本発明の塗布組成物を作製した以外は同様にしてスライドグラス上に塗布、乾燥および加熱を行い、本発明の塗布物を作製した。実施例1と同様に評価を行ったところ、塗膜の親水性、均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性の評価を行い、親水性評価に於いて接触角が20度であった以外は実施例3と同様に全ての評価項目で○である結果を得た。
(実施例9)
実施例3において、ポリリン酸ナトリウムに代えて、メタリン酸ナトリウムをヒドロキシアパタイト微粒子に対して50質量%添加して本発明の塗布組成物を作製した以外は同様にして塗布組成物を作製した。これを用いて、脱脂洗浄したステンレス板上に乾燥質量で1平方メートル当たり10グラムになるようドクターバーを使用して塗布を行い、ドライヤーで乾燥させた。塗布したスライドグラスを250℃に設定したホットプレート上に置き、10分間加熱を行った。その後、ステンレス板をホットプレートから取り出し、放冷して室温まで冷却した。これを用いて実施例1〜7と同様に評価を行ったところ、塗膜の親水性については接触角がほぼ0度であり、さらに均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性の評価を行い、全ての項目で○である良好な結果を得た。
(実施例10)
上記実施例9において、脱脂洗浄したステンレス板に代えて、陽極酸化処理を行って表面をアルミナに変化させたアルミ板を使用した以外は同様にして本実施例の塗布物を作製した。これを用いて実施例1〜7と同様に評価を行ったところ、塗膜の親水性については接触角がほぼ0度であり、さらに、均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性の評価を行い、全ての項目で○である良好な結果を得た。
(実施例11)
市販される結晶性のヒドロキシアパタイトとして、太平化学産業(株)より商品名「ヒドロキシアパタイト」(平均粒径4〜6μmの白色粉末品)として入手される原料を用いて実施例1〜7と同様にしてビーズミル方式による湿式分散処理を行った。得られた分散液を用いて、分散しているヒドロキシアパタイト微粒子の大きさを測定したところ平均粒子径で3.0μmであった。実施例3と同様にして、ポリリン酸ナトリウムの比率をヒドロキシアパタイト微粒子に対して50質量%になるよう添加して同様にしてスライドグラス表面に塗布を行い、さらにホットプレート上において200℃で30分間加熱を行い、本実施例の試料を作製した。実施例1〜7と同様にして、塗膜の親水性、均一性、接着性、耐水性の評価を行い、親水性評価に於いて接触角は50度であり、やや親水性が低い結果であった。塗膜は白く白濁していたものの凝集物や異物はなく均一性は○であった。接着性の評価は○であった。加えて耐水性、耐摩耗性の項目では全て△であり、想定する実用的な観点からは使用可能である下限レベルの判定であった。
(実施例12)
結晶性のヒドロキシアパタイト微粒子分散物として、焼成された結晶性のヒドロキシアパタイトの体積平均粒子径40nmの分散物を株式会社バイオメディカルサイエンス社から製品名nano−SHAp(製品番号BC−MHS−00402)として入手した。これを使用して実施例3と同様にして、ポリリン酸ナトリウムの比率をヒドロキシアパタイト微粒子に対して50質量%になるよう添加して同様にしてスライドグラス表面に塗布を行い、さらにホットプレート上において200℃で30分間加熱を行い、本実施例の試料を作製した。実施例1〜7と同様にして、塗膜の親水性、均一性、接着性、耐水性の評価を行い、親水性評価に於いて接触角は45度であり、やや親水性が低い結果であった。塗膜は完全に透明で均一性は○であった。接着性の評価は○であった。加えて耐水性、耐摩耗性の項目では全て△であり、想定する実用的な観点からは使用可能である下限レベルの判定であった。
(比較例1)
結晶性のヒドロキシアパタイトに代えて、特開平5−170413号公報に記載される方法に従い、酸化カルシウム及び/または水酸化カルシウムの水性スラリーとリン酸水溶液をpH7〜12の範囲に於いて混合することで非晶質のヒドロキシアパタイトを合成した。図3には、比較例1で使用した非晶質ヒドロキシアパタイトの広角X線回折パターンを示した。先の実施例1〜7と同様にしてヒドロキシアパタイトの湿式分散処理を行い、体積平均粒子径1.1μmである非晶質ヒドロキシアパタイトの分散液を作製した。この分散液を用いて、実施例3と同様にしてポリリン酸ナトリウムを加えて比較塗布組成物を作製した。これを用いて、実施例3と同様にスライドグラス上に塗布を行い、乾燥し、またホットプレート上で200℃の温度で30分間加熱を行い、比較塗布物を作製した。これを90℃の熱水中に浸漬して表面の塗膜の状態を観察したところ、容易に塗膜の剥離と溶解が認められ、耐水性に劣る結果であった。また耐摩耗性についても乾燥状態および湿潤状態のいずれの場合にも×である評価結果であった。
(比較例2)
比較として、特開2008−69048号公報に記載される方法で非晶質のヒドロキシアパタイトの分散液を合成した。即ち、酢酸カルシウム1水和物水溶液にアンモニア水を滴下してpHを9.0に調整した塩基性カルシウム水溶液を調製した。別途、リン酸水溶液にアンモニア水を滴下してpHを9.0に調整した水溶液を調製し、この水溶液を先の塩基性カルシウム水溶液中に滴下することでヒドロキシアパタイトの分散液を作製した。この方法で得られたヒドロキシアパタイト微粒子の体積平均粒子径は25nmであった。上記分散物の一部を取り、これを乾固させて得られたヒドロキシアパタイト粉末のX線回折パターンはブロードであり、非晶質であることを示した。上記ヒドロキシアパタイトの分散液を用いて、実施例3と同様にしてポリリン酸ナトリウムを加えて比較塗布組成物を作製した。これを用いて、実施例3と同様にスライドグラス上に塗布を行い、乾燥し、またホットプレート上で200℃の温度で30分間加熱を行い、比較塗布物を作製した。これを90℃の熱水中に浸漬して表面の塗膜の状態を観察したところ、容易に塗膜の剥離と溶解が認められ、耐水性に劣る結果であった。
(比較例3)
市販される結晶性のヒドロキシアパタイトとして、太平化学産業株式会社より商品名「HAP−200」(平均粒径5〜20μmの白色粉末で高純度品)として入手される原料を用いて実施例1と同様にしてビーズミル方式による湿式分散処理を行った。得られた分散液を用いて、分散しているヒドロキシアパタイト微粒子の大きさを測定したところ平均粒子径で5.0μmであり、かつ粒子径分布もブロードであった。実施例3と同様にして、ポリリン酸ナトリウムの比率をヒドロキシアパタイト微粒子に対して50質量%になるよう添加して同様にしてスライドグラス表面に塗布を行い、さらにホットプレート上において200℃で30分間加熱を行い、本比較例の試料を作製した。実施例1と同様にして、塗膜の親水性、均一性、接着性、耐水性の評価を行い、親水性のみ○の評価であったが、塗膜は表面がざらつき均一性は×であった。接着性の評価に於いても、セロハンテープによる塗膜の剥離が観察され、加えて耐水性、耐摩耗性の項目で×であった。
本発明の結晶性のヒドロキシアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)を含む塗布組成物は、様々な基材表面に塗布を行い、塗布物を形成することで、表面が親水性で、均一性、接着性、耐水性および耐摩耗性に優れることから、例えば再生医療用途として骨や歯の修復材料、或いはステント、人工血管、人工靱帯、人工関節等の表面の被覆を行うことで生体親和性に優れた埋め込み材料として利用可能である。さらには、これと各種高分子素材を組み合わせて作製した複合材料としてシート状材料やフィルムコーティング材料として利用することが可能である。さらに、吸着剤やイオン交換材、触媒、抗菌剤等の用途および各種セラミックス、金属およびプラスチック材料表面の改質材としての用途にも利用が可能である。

Claims (4)

  1. 体積平均粒子径が40nm〜3μmの範囲にある結晶性のヒドロキシアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)を含む塗布組成物。
  2. 結晶性のヒドロキシアパタイト微粒子とポリリン酸(塩)が、乾燥固形分質量比で1:0.1〜1:3の範囲で含まれる請求項1に記載の塗布組成物。
  3. 基材上に請求項1または2に記載の塗布組成物を塗布して得られた塗布物。
  4. 基材が金属、ガラスまたはセラミックスである請求項3に記載の塗布物。
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