JP2014048083A - コンパクトディスク型マイクロチップ、その製造方法および分析システム、ならびに分析方法 - Google Patents

コンパクトディスク型マイクロチップ、その製造方法および分析システム、ならびに分析方法 Download PDF

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秀 中嶋
Takashi Usui
崇 臼井
Kazumi Uchiyama
一美 内山
Akihide Henmi
彰秀 辺見
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Abstract

【課題】より安価で小型の分析装置で、かつ短時間にて信頼性の高い分析を行う。
【解決手段】試料の分析に用いられ、自転させた際の遠心力を利用して中心から径方向外側に送液可能なコンパクトディスク型マイクロチップは、その内部に、少なくとも試料を貯留するための1または2以上の貯留部11,12,13,14,15と、該貯留部より径方向外側に配置され、該貯留部から送られてきた試料に照光するための検出部16と、該貯留部と検出部16とを繋ぐ送液用の流路18とを少なくとも備え、少なくとも検出部16の領域をその厚さ方向に透光性とし、その内面に透過型表面プラズモン共鳴センサ23を備え、該センサ23に、透光層25と、その透光層25から上方を露出するように平面配列される複数の球形ビーズ30aから成るビーズ層30と、そのビーズ層30の少なくとも露出表面を覆う導電性の金属層35とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、コンパクトディスク型マイクロチップ、その製造方法およびそのコンパクトディスク型マイクロチップを含む分析システム、ならびにその分析システムを用いた分析方法に関する。
人類が作り出した数々の化学物質の中には人体に有害であるものも多く、近年では、ダイオキシンをはじめとする有害化学物質による環境汚染が問題になっている。例えば、食生活に目を向けると、食の安全性を脅かす残留農薬やO−157等の細菌、あるいはそば粉等のアレルギー物質による問題が深刻になっている。また、新型インフルエンザや結核等の新興感染症や再興感染症の流行も社会的な問題になっている。このような問題を解決する上で、化学物質、細菌あるいはウィルス等の分析が不可欠である。しかし、環境計測、食品検査、医療検査等で使用される従来の分析装置は、極めて高価で、かつ測定に多大な時間を要し、さらにはオンサイトやベッドサイドで簡易に計測できるようなポータブルな分析装置ではない。このような現状において、現場で、誰もが簡便、迅速かつ高感度に測定できる小型の新しい分析システムの開発が求められている。
かかる要求に応えうる分析システムとして、近年、マイクロ化学分析システム(μTAS)が注目を集めている。μTASは、ガラスあるいはプラスチック等の基板上に、数十〜数百μmサイズの微細な流路(マイクロチャネル)を作製し、試料の導入、反応、分離および検出等の化学分析に必要な要素を集積化したシステムである。μTASは、分析時間の短縮、試薬量の低減、コストの低減、装置の小型化といった多くの優れた特徴を有しており、革新的なシステムとして将来の発展を期待されている。
一方、分析システムの一部を担うセンサに着目すると、化学物質や抗原等を分析する際に、それらを蛍光物質や放射性物質等を用いて標識することなくリアルタイムで検出可能なセンサとして、表面プラズモン共鳴センサ(Surface Plasmon Resonance Sensor)が知られている。通常、金属に存在する自由電子は、正の電荷を持つ粒子と負の電荷を持つ粒子として金属中を自由に動き回っている。自由電子が集団的に振動して、金属中ではプラズマ波と称する粗密波が生じる。表面プラズモン共鳴センサは、金属表面に生じるこの粗密波の量子化したもの(表面プラズモン)が光波によって励起される現象を利用して、分析すべき物質を特定するセンサである。
一般的に、表面プラズモン共鳴センサは、(a)クレッチマン型表面プラズモン共鳴センサ、(b)反射型グレーティング方式表面プラズモン共鳴センサおよび(c)透過型表面プラズモン共鳴センサに大別できる。(a)クレッチマン型表面プラズモン共鳴センサは、最も汎用されている表面プラズモン共鳴センサであり、ガラスや石英基板の表面に金属薄膜を形成したセンサチップに、プリズムを介してレーザー光を照射し、その反射光を計測するものである。クレッチマン型表面プラズモン共鳴センサとしては、例えば、特許文献1〜3に開示されている。(b)反射型グレーティング方式表面プラズモン共鳴センサは、微細な溝を平行に刻んだ基板表面に金属薄膜を形成したセンサチップにレーザー光を照射し、その反射光を計測するものである。反射型グレーティング方式表面プラズモン共鳴センサとしては、例えば、特許文献4に開示されている。また、(c)透過型表面プラズモン共鳴センサは、ナノホールやナノドットの周期構造を有する基板に金属薄膜を形成したセンサチップにレーザー光を照射し、その透過光を計測するものである。透過型表面プラズモン共鳴センサとしては、例えば、特許文献5に開示されている。
(a)クレッチマン型表面プラズモン共鳴センサは、高価なプリズムを必須の構成とするに加え、光学系の精密な位置調整を必要とすることから、分析装置の小型化が難しい。また、センサチップとプリズムとの接合にマッチングオイル等を必要とするため、当該マッチングオイルの膜厚が測定結果の再現性に悪影響を及ぼすという問題もある。一方、(b)反射型グレーティング方式表面プラズモン共鳴センサは、上述のクレッチマン型表面プラズモン共鳴センサと同様、反射光を測定するため、光学系の精密な位置調整が必要であり、分析装置を小型にできない。加えて、センサチップ上に微細なグレーティングを加工するのに電子ビームを用いるため、センサチップが非常に高価になる。これに対して、(c)透過型表面プラズモン共鳴センサは、透過光を測定するため、上述の2種のセンサに比べて、光学系の精密な位置調整は不要である。したがって、透過型表面プラズモン共鳴センサは、分析装置の小型化が可能となるという長所を有する。
特開2004−117048号公報 特開2007−327833号公報 特開2006−201163号公報 特表2001−523819号公報 特開2010−256126号公報
しかし、上述のマイクロ化学分析システム(μTAS)においては、送液システムと検出システムの集積化の進展が遅れているという問題がある。例えば、センサに試料溶液を供給する方法として、試料溶液をセンサ上に滴下することが考えられる。しかし、かかる方法は、操作が煩雑で、かつ滴下量の再現性が低いという問題を有する。加えて、試料溶液が乾燥しやすいという問題もある。センサに試料溶液を供給する別の方法として、「流れ」を利用することも考えられる。この方法は、測定の自動化にとって有用ではあるが、試薬や試料の送液に用いるポンプやバルブ、あるいは分離した試料の検出に用いるレーザー発振器や顕微鏡が大型かつ高価であるという問題を有する。
本発明者らは、上記μTASの問題を解決すると共に、装置の小型化に優位な(c)透過型表面プラズモン共鳴センサを用いたコンパクトディスク型マイクロチップを開発し、化学分析への適用を検討してきた。コンパクトディスク型マイクロチップは、それを回転させ、遠心力を利用して試料溶液を径方向外側に送液するものである。当該マイクロチップには、試料溶液をはじめとする複数種の溶液を貯めておく複数の領域、それら領域から流路を介して繋がる領域であって反応場となる検出領域、あるいは廃液の貯留領域が形成されている。かかる構造を持つコンパクトディスク型マイクロチップを用いると、その回転数に応じて特定の溶液を径方向外側に流すことができ、ポンプおよびバルブを用いずに、送液および分析を行うことができる。また、ポンプレスおよびバルブレスということ以外に、(c)透過型表面プラズモン共鳴センサを検出領域に形成していることもあって、分析装置全体の小型化を実現できる。
しかし、上記コンパクトディスク型マイクロチップには、さらなる改善すべき点もある。検出領域に用いる(c)透過型表面プラズモン共鳴センサとしては、これまでに、ナノホールアレイを利用したもの、あるいは金微粒子の懸濁液を利用したものが知られている。しかし、ナノホールアレイを形成するには、微細加工を行うのに電子ビームを必要とする。このため、センサチップの製造コストが高くなるという問題がある。また、金微粒子の懸濁液を用いる場合には、金微粒子をセンサチップ内に保持することが困難であるという問題がある。このため、より安価で、かつ信頼性の高い透過型表面プラズモン共鳴センサを備えるコンパクトディスク型マイクロチップが求められている。
本発明は、上記要望に応えるためになされたものであって、より安価で小型の分析装置で、かつ短時間にて信頼性の高い分析を行うことを目的とする。
上記目的を達成するための本発明の一形態は、試料の分析に用いられ、自転させた際の遠心力を利用して中心から径方向外側に送液可能なコンパクトディスク型マイクロチップであって、その内部に、少なくとも試料を貯留するための1または2以上の貯留部と、貯留部より径方向外側に配置され、貯留部から送られてきた試料に照光するための検出部と、貯留部と検出部とを繋ぐ送液用の流路とを少なくとも備え、少なくとも検出部の領域を、その厚さ方向に透光性とし、検出部には、その内面に透過型表面プラズモン共鳴センサを備え、透過型表面プラズモン共鳴センサに、透光層と、その透光層から上方を露出するように平面配列される複数の球形ビーズから成るビーズ層と、そのビーズ層の少なくとも露出表面を覆う導電性の金属層とを備えるコンパクトディスク型マイクロチップである。
本発明の別の形態は、さらに、貯留部、検出部および流路の内の少なくとも1つを、面内方に窪む凹部として形成した第一ディスクと、その第一ディスクと積層することによって貯留部、検出部および流路を形成可能な第二ディスクとを積層して成り、第二ディスクに、透過型表面プラズモン共鳴センサを形成してなるコンパクトディスク型マイクロチップである。
本発明の別の形態は、また、少なくとも貯留部に、外から通じる開口部を備えるコンパクトディスク型マイクロチップである。
本発明の別の形態は、また、透光層および球形ビーズをともにポリマーから構成するコンパクトディスク型マイクロチップである。
本発明の一形態は、上述のいずれか1つのコンパクトディスク型マイクロチップの製造方法であって、透過型表面プラズモン共鳴センサの製造工程において、検出部の領域に、透光層を形成するための半硬化層を形成する半硬化層形成工程と、半硬化層上に、複数の球形ビーズを分散媒中に分散させた懸濁液を供給する懸濁液供給工程と、分散媒を除去すると共に、複数の球形ビーズをその上方を露出させた状態で配列させて半硬化層に固定する分散媒除去・配列工程と、ビーズ層の少なくとも露出表面を導電性の金属にて被覆して金属層を形成する金属層形成工程とを含むコンパクトディスク型マイクロチップの製造方法である。
本発明の別の形態は、分散媒除去工程の後に、複数の球形ビーズの多層体からその上層部を除去する上層部除去工程をさらに含むコンパクトディスク型マイクロチップの製造方法である。
本発明の別の形態は、また、半硬化層形成工程において、球形ビーズの平均径より小さい厚さの半硬化層を形成するコンパクトディスク型マイクロチップの製造方法である。
本発明の一形態は、上述のいずれか1つのコンパクトディスク型マイクロチップと、光源と、コンパクトディスク型マイクロチップの検出部に対向配置され、光源から受光して前記検出部に平行光を供する第一コリメータと、コンパクトディスク型マイクロチップを面内で自転させるターンテーブルと、検出部を挟んで第一コリメータと対向配置され、検出部を透過した光を受光する第二コリメータと、第二コリメータからの光を分光する分光器とを少なくとも含む分析システムである。
本発明の一形態は、上述の分析システムを用いた分析方法であって、貯留部に、少なくとも試料を供給する試料供給ステップと、ターンテーブルを駆動して、少なくとも試料を検出部まで送液可能な回転数にてコンパクトディスク型マイクロチップを回転させて検出部まで送液する送液ステップと、検出部に照光する照光ステップと、検出部に入ってきた試料を透過する透過光を、分光器を用いて測定する測定ステップとを少なくとも実行する分析方法である。
本発明の別の形態は、さらに、貯留部を径方向に複数配置するコンパクトディスク型マイクロチップを用い、送液ステップでは、ターンテーブルの回転数を変えながら、径方向外側の貯留部から送液を開始し、続いてその径方向内側の貯留部から送液を行う分析方法である。
本発明によれば、より安価で小型の分析装置で、かつ短時間にて信頼性の高い分析ができる。
図1は、本発明の実施の形態に係るコンパクトディスク型マイクロチップの平面図および側面図を示す。 図2は、図1のコンパクトディスク型マイクロチップ中の1つのブロックの平面図(2A)、当該平面図におけるA−A線断面図(2B)、同平面図におけるB−B線断面図およびその一部の二段階の拡大図(2C)を、それぞれ示す。 図3は、図2の透過型表面プラズモン共鳴センサを構成するビーズ層に金属層を被覆する場合(3A)と、本発明外の凹凸面に金属層を被覆する場合(3B)とを比較して示す。 図4は、図1に示すコンパクトディスク型マイクロチップの製造工程の一例を示す。 図5は、図1に示すコンパクトディスク型マイクロチップの製造過程を示す。 図6は、図5に示す製造過程に続く製造過程を示す。 図7は、図4のコンパクトディスク型マイクロチップの製造工程における透過型表面プラズモン共鳴センサの製造工程の一例を詳細に示す。 図8は、図7に示す透過型表面プラズモン共鳴センサの製造工程における当該センサの出来上がるまでの過程を示す。 図9は、図7および図8に示す分散媒除去工程における湿度を変化させたときの球形ビーズの分散状態を比較した写真(9A)と、同工程における温度を変化させた後に上層部を除去して最下層のみとしたときの球形ビーズの分散状態を比較したSEM写真(9B)と、40℃にて分散媒を除去した後に上層部を除去して最下層のみとしたときの球形ビーズの埋設状態を表すSEM写真(9C)とを、それぞれ示す。 図10は、図1に示すコンパクトディスク型マイクロチップを含む分析システムの模式図を示す。 図11は、図1のコンパクトディスク型マイクロチップを用いた送液原理を説明する図を示す。 図12は、図10に示す分析システムを用いた分析方法の一例の流れを示す。 図13は、純水および50〜2000mMのスクロール水溶液をそれぞれ用いて、透過光の波長とI/Iとの関係をプロットしたグラフ(13A)と、スクロース水溶液の濃度と純水を基準としたピーク波長のシフト量との関係をプロットしたグラフ(13B)とを示す。 図14は、IgAを用いた抗原抗体反応の測定における透過型表面プラズモン共鳴センサ表面の変化を模式的に示す。 図15は、測定1〜4における透過光の波長とI/Iとの関係をプロットしたグラフ(15A)と、測定1〜4における洗浄液を基準としたピーク波長のシフト量を表したグラフ(15B)とを示す。
次に、本発明に係るコンパクトディスク型マイクロチップ、その製造方法および分析システム、ならびに分析方法の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<1.コンパクトディスク型マイクロチップ>
図1は、本発明の実施の形態に係るコンパクトディスク型マイクロチップの平面図および側面図を示す。
この実施の形態に係るコンパクトディスク型マイクロチップ(以後、「CD型マイクロチップ」という。)1は、試料の分析に用いられ、それを自転させた際の遠心力を利用して中心から径方向外側に送液可能な構造を持つ。CD型マイクロチップ1は、中央に穴2を有する円板形状のマイクロチップであり、平面視にて8個の略扇形状のブロック3に分割されている。各ブロック3は、同一形状の流路構造を有する。このため、CD型マイクロチップ1を用いて同時にN=8までの分析を行うことができる。ただし、ブロック3は、8個に限定されず、少なくとも1個あれば、その数を問わない。
CD型マイクロチップ1は、好適には、共に透光性材料から成る第一ディスク4と第二ディスク5とを積層して成る。この実施の形態では、第一ディスク4は、ポリジメチルシロキサン(シリコーン樹脂の一種)から構成されている。しかし、第一ディスク4を構成する材料として、上記のシリコーン樹脂に代えて、他の透光性を有する材料を選択することもできる。当該材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂、あるいはガラスを用いることができる。
また、この実施の形態では、第二ディスク5は、ポリカーボネート樹脂から構成されている。しかし、第二ディスク5を構成する材料として、ポリカーボネート樹脂に代えて、他の透光性を有する材料を選択することもできる。当該材料としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂、あるいはガラスを用いることができる。本願において、「透光性」とは、有色であるか無色であるかおよび光の透過率の多寡を問わず、光を透過させることができる意味に広義に解釈される。
図2は、図1のCD型マイクロチップ中の1つのブロックの平面図(2A)、当該平面図におけるA−A線断面図(2B)、同平面図におけるB−B線断面図およびその一部の二段階の拡大図(2C)を、それぞれ示す。
(2A)に示すように、CD型マイクロチップ1の各ブロック3は、その内部に、5つの貯留部11,12,13,14,15と、1つの検出部16と、1つの廃液部17と、複数本の送液用の流路18とを備える。流路18は、各貯留部11,12,13,14,15間、各貯留部11,12,13,14,15と検出部16および廃液部17との間、検出部16と廃液部17との間をそれぞれ繋いでいる。貯留部11,12,13,14,15は、少なくとも測定対象の試料を貯留するための領域であって、薄厚の略円柱形状の空間である。この実施の形態では、貯留部11,12,13,14,15は同一の形状を有するが、それらの一部または全部が互いに異なる形状を有していても良い。この実施の形態では、貯留部11,12,13,14,15は、CD型マイクロチップ1の径方向外側から内側に向かって、貯留部11、貯留部12、貯留部13、貯留部14、貯留部15の順に配置されている。このため、CD型マイクロチップ1を自転させた際に、回転数を上げるに従い、径方向最も外側の貯留部11から最初に送液し、次に貯留部12から、その次に貯留部13から、その次に貯留部14から、最後に径方向最も内側の貯留部15からそれぞれ送液することができる。ただし、貯留部11,12,13,14,15の内の一部あるいは全部を、CD型マイクロチップの中央から同じ距離に配置することもできる。これによって、互いに分離して貯留していた溶液を同時に送液し、検出部16にて混合させることができる。また、貯留部11,12,13,14,15には、測定対象の試料のみならず、洗浄液、抗体を含む溶液、各種試薬を含む溶液といった他の溶液を貯留することができる。さらに、貯留部を5個とせずに、少なくとも1個あれば、その数を問わない。なお、以後、「径方向」は、CD型マイクロチップ1の径方向を意味する。
検出部16は、貯留部11,12,13,14,15より径方向外側に配置される領域であって、貯留部11,12,13,14,15から送られてきた試料等の溶液に照光するための領域である。検出部16を貯留部11,12,13,14,15より径方向外側に配置するのは、CD型マイクロチップ1を自転させた際の遠心力を利用して検出部16に送液させるためである。廃液部17は、検出部16あるいは貯留部11,12,13,14,15から、最終的に廃棄する液体を集める領域である。廃液部17を検出部16より径方向外側に配置すると、測定後にCD型マイクロチップ1の回転数をさらに上げて、全ての溶液を廃液部17に集めることができる。ただし、廃液部17は、検出部16より径方向内側あるいは検出部16と径方向同一の距離に設けても良い。その場合には、測定者が、CD型マイクロチップ1を傾けて、手動にて溶液を廃液部17に集めることができる。さらに、廃液部17は、CD型マイクロチップ1にとって必須の領域ではなく、設けなくても良い。その場合には、測定後に、貯留部11,12,13,14,15あるいは検出部16から廃液すると良い。かかる意味では、流路18は、最低限、貯留部11,12,13,14,15から検出部16までを繋ぐものであれば良い。貯留部11,12,13,14,15の径方向内側および径方向外側の各流路18は、好適には、貯留部11,12,13,14,15に極めて近い場所に、各流路18を少し太くした拡径部19を1個ずつ備える。拡径部19は、一種のバルブの機能を有する。拡径部19の径を変えることにより、貯留部11等から溶液が流れ出すときの回転数を変えることが可能である。ただし、拡径部19は必須の構成ではなく、設けなくても良い。
(2B)に示すように、流路18は、CD型マイクロチップ1の厚さ方向の内部に形成されている。貯留部15は、流路18と同様、CD型マイクロチップ1の厚さ方向の内部に形成されており、かつその上面に開口部20を有する。(2B)に明示されていないが、他の貯留部11,12,13,14も、その上面に開口部20を備える。開口部20は、貯留部11,12,13,14,15に溶液(試料も含む)を供給するために、好適に形成されている。開口部20は、貯留部11,12,13,14,15に溶液を供給後、好適には、フィルム等(不図示)によって覆われる。CD型マイクロチップ1を自転させて測定を行う際に、貯留部11,12,13,14,15から溶液が飛び出し、あるいは外部から塵や埃が入るのを防止する必要からである。貯留部11,12,13,14,15、検出部16、廃液部17および流路18は、この実施の形態では、第一ディスク4における第二ディスク5の対向面から内方に窪む凹部によって形成されているが、第二ディスク5側の凹部によって形成し、あるいは第一ディスク4側と第二ディスク5側の各凹部を合わせて形成しても良い。また、第一ディスク4側に、貯留部11,12,13,14,15、検出部16、廃液部17および流路18の内のいずれか一部を形成する凹部を備え、第二ディスク5側に当該一部以外を形成する凹部を備えても良い。すなわち、CD型マイクロチップ1は、貯留部11,12,13,14,15、検出部16、廃液部17および流路18の内の少なくとも1つを、面内方に窪む凹部として形成した第一ディスク4と、第一ディスク4と積層することによって貯留部11,12,13,14,15、検出部16、廃液部17および流路18を形成可能な第二ディスク5とを積層して成る。ただし、凹部形成の工程をより簡易化するためには、第一ディスク4および第二ディスク5のいずれか一方に、貯留部11,12,13,14,15、検出部16、廃液部17および流路18用の各凹部を形成する方が好ましい。第一ディスク4に、貯留部11,12,13,14,15、検出部16、廃液部17および流路18用の各凹部を形成する場合、第一ディスク4の厚さおよび凹部の深さに何らの限定は無いが、一例を挙げるならば、第一ディスク4の厚さを1〜3mmの範囲に、凹部の深さを20〜80μmの範囲にそれぞれ設定することができる。また、第二ディスク5の厚さについても何らの限定もないが、一例を挙げるならば、1〜3mmの範囲に設定できる。
(2C)に示すように、廃液部17は、前述の貯留部15と同様、CD型マイクロチップ1の厚さ方向の内部に形成され、その上面に開口部21を有する。開口部21は、廃液時を除き、好適にはフィルム等(不図示)によって常時覆われる。なお、この実施の形態では、検出部16および流路18は、第一ディスク4と第二ディスク5とを積層した後には閉鎖空間となり、それ専用の開口部を備えていないが、検出部16および流路18の少なくともいずれか一方に開口部を備えても良い。測定の際に、CD型マイクロチップ1の上面の全部あるいは各ブロック3の上面をフィルム等(不図示)にて覆うようにし、貯留部11,12,13,14,15、検出部16、廃液部17および流路18の全てに開口部を備えても良い。
検出部16は、第二ディスク5側の面(いわゆる、底面)に、透過型表面プラズモン共鳴センサ(以後、単に「センサ」という。)23を備える。センサ23は、第二ディスク5側から順に、透光層25と、透光層25から上方を露出するように平面配列される複数の球形ビーズ30aから成るビーズ層30と、ビーズ層30の露出表面を覆う導電性の金属層35とを備える。センサ23は、CD型マイクロチップ1の厚さ方向に透光性である。前述のように、第一ディスク4および第二ディスク5は、共に透光性である。したがって、CD型マイクロチップ1の第一ディスク4側から検出部16に入った光は、検出部16および第二ディスク5を透過する。ただし、第一ディスク4の検出部16の上面および第二ディスク5の検出部16の下面のみを透光性とし、第一ディスク4および第二ディスク5における検出部16以外の領域を遮光性としても良い。
(2C)の一部Cの拡大図に示すように、透光層25は、球形ビーズ30aの一部を埋設して固定する層である。透光層25としては、樹脂、ゴムあるいはガラスなどから好適に形成でき、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂あるいは塩化ビニル樹脂等の合成樹脂の他、シリコーンゴム、ウレタンゴム等のゴム状弾性体からより好適に形成できる。球形ビーズ30aとしては、樹脂、ゴムあるいはガラスなどの透光性材料から好適に形成でき、さらには、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂、あるいはシリコーンゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム等のゴム状弾性体からより好適に形成できる。透光層25および球形ビーズ30aは、その製造あるいは入手の容易性を考慮すれば、ともにポリマーから構成するのが好ましい。特に、透光層25は、後述のように、半硬化状態のときに球形ビーズ30aを埋設するので、好ましくは、検出部16の底部に供給する際には半固体状であって、その後に完全に固化できるポリマーから構成される。
透光層25は、その厚さの多寡を問わないが、球形ビーズ30aの上部を透光層25の外に露出させる必要から、球形ビーズ30aの平均径より小さい厚さを有するのが好ましい。この実施の形態では、透光層25の厚さを100〜200nmの範囲とし、平均径300nmの球形ビーズ30aを透光層25内に単層にて面内二次元状に配列させている。ただし、透光層25の厚さを球形ビーズ30aの平均径と同一若しくはそれより大きくすることもできる。その場合、球形ビーズ30aが透光層25の底部に到達せず、所定の厚さまでしか沈みこまないか、あるいは球形ビーズ30aが透光層25の底部まで沈んだとしても透光層25中に複数の層となって埋設可能となるような条件を満たせば良い。球形ビーズ30aは、その上部露出面に、導電性に優れた金属層35を被覆して備える。金属層35としては、より高い導電性を有し、かつ薄膜の形成のより容易な材料であれば良く、特に、金が好ましい。金属層35の厚さは、透光性とする他、ビーズ層30の表面の凹凸を維持する必要から、可能な限り薄い方が良く、一例として、10〜80nmとするのが好ましい。このように、透光層25に複数の球形ビーズ30aを二次元配列させて、それらの上部の露出部分に金属層35を被覆して、球形ビーズ30aの凹凸を維持することにより、当該凹凸の面に光を照射して表面プラズモン共鳴現象を起こすことができる。
図3は、図2のセンサを構成するビーズ層に金属層を被覆する場合(3A)と、本発明外の凹凸面に金属層を被覆する場合(3B)とを比較して示す。
(3A)に示すように、検出部16に、透光層25から球形ビーズ30aの上部が露出した状態のビーズ層30を形成し、その表面に金属をスパッタ等の手段で被覆すると、極めて均一な厚さを有する金属層35を有するセンサ23を形成できる。この形成方法は、検出部16にナノホールアレイを形成し、あるいは金等の金属微粒子の懸濁液を供給するといった従来の方法に比べて、電子ビームを必要とせず、また上記金属微粒子を保持しやすい点で有利である。また、(3B)に示すように、厚い透光層25の表面をレーザーや電子ビームを用いて加工し、ナノホールアレイと近似した構造の凹凸面39(凸部37と凹部38とから成る)を形成する方法も考えられる。しかし、かかる方法の場合、レーザーや電子ビームによって微細加工を行うのに高コストを要するのみならず、均一な厚さにて金属層35を凹凸面39に形成することが難しいという欠点がある。具体的には、凸部37の上面と凹部38の中央部分に金属層35を被覆できても、凹部38の隅近傍には、金属層35の存在しない部分が生じやすい。一方、この実施の形態では、球形ビーズ30aを利用して、金属層35を被覆しにくい領域を生じさせないような凹凸面を容易に形成できる。かかる点で、球形ビーズ30aを埋設して成るセンサ23は、微細加工によって凹凸を形成するセンサよりも有利である。
<2.コンパクトディスク型マイクロチップの製造方法>
図4は、図1に示すCD型マイクロチップの製造工程の一例を示す。図5および図6は、図1に示すCD型マイクロチップの製造過程を示す。
図1に示すCD型マイクロチップ1の製造方法は、センサ23の製造工程において、検出部16の領域に、透光層25を形成するための半硬化層を形成する半硬化層形成工程と、半硬化層上に、複数の球形ビーズ30aを分散媒中に分散させた懸濁液を供給する懸濁液供給工程と、分散媒を除去すると共に、複数の球形ビーズ30aをその上方を露出させた状態で配列させて半硬化層に固定する分散媒除去・配列工程と、ビーズ層30の少なくとも露出表面を導電性の金属にて被覆して金属層35を形成する金属層形成工程とを含む。以下、センサ23を製造する上での上記工程を含むCD型マイクロチップ1の製造工程の全体を、図4〜図6を参照して説明する。
ステップ101
まず、第一ディスク4を製造するのに必要となる、平面視にて円形の平板40を準備する(5A)。平板40としては、例えば、シリコンウェハを好適に用いることができる。この実施の形態では、直径6インチのシリコンウェハを好適に用いる。
ステップ102
次に、平板40の片面上に、ネガ型フォトレジストを供給し、スピンコート等の手段にて均一な厚さの塗膜41を形成する(5B)。ネガ型フォトレジストとしては、例えば、エポキシ樹脂系のカチオン重合体、オキセタン樹脂系のカチオン重合体等を用いることができる。この実施の形態では、露光部分の架橋を促進させる性質のネガ型フォトレジストを好適に用いるが、これとは逆に露光部分を溶解除去可能なポジ型フォトレジストを用いても良い。ただし、CD型マイクロチップ1の第一ディスク4の構成材料としては、化学薬品への耐性、機械的強度および耐熱性に優れるネガ型フォトレジスト、特に、SU−8(化薬マイクロケム製)を用いる方がより好ましい。平板40に塗膜41を形成後、100℃前後で加熱してネガ型フォトレジスト内の有機溶媒を除去し、その後、室温まで冷却するのが好ましい。
ステップ103
次に、ネガ型フォトレジストの塗膜41上に、フォトマスク42を配置する(5C)。フォトマスク42と塗膜41とは、例えば、真空クランプ等を用いて密着固定するのが好ましい。フォトマスク42は、CD型マイクロチップ1の流路領域を透光領域とする一方、当該流路領域以外を遮光領域としたものである。なお、ポジ型フォトレジストにて塗膜41を形成した場合には、フォトマスク42の透光領域と遮光領域は、先の構成の逆になる。
ステップ104
次に、フォトマスク42の上から紫外線(UV)を照射する(5C)。この実施の形態では、好適にライトボックス(サンハヤト製、LIGHT BOX BOX−W9B)を用いて、紫外線を約1分間照射する。
ステップ105
次に、露光した領域の硬化後、塗膜41付きの平板40からフォトマスク42を外し、現像液を用いて紫外線の非照射領域の未硬化レジストを除去する(5D)。未硬化レジストの除去に先立ち、塗膜41付きの平板40を100℃前後で加熱し、露光した領域の固定を強化する処理を行っても良い。なお、現像液としては、例えば、ディベロッパー(化薬マイクロケム製、SU−8 Developer)を好適に用いることができる。未硬化レジストの除去後、塗膜41付きの平板40を、イソプロパノール等の有機溶媒を用いて洗浄し、さらには200℃前後で加熱して有機溶媒を完全に除去しても良い。このような処理を経て、CD型マイクロチップ1用の流路領域44を突出させ、流路領域外43を窪ませた形態のテンプレートが完成する。
ステップ106
次に、テンプレート上に、液状ポリマー45を塗布する(5E)。液状ポリマー45としては、硬化後に第一ディスク4となる材料を用いる。当該材料としては、例えば、ポリアルキルシロキサン、より好ましくはポリジメチルシロキサンを主剤とするものを用いることができる。より具体的には、ポリジメチルシロキサンの主剤(東レ・ダウコーニング製、SILPOT184 W/C BASE)と、その硬化剤(東レ・ダウコーニング製、SILPOT184 W/C CURING AGENT)を重量比にて10:1で混合したプレポリマーを、液状ポリマー45として好適に用いることができる。液状ポリマー45をテンプレート上に塗布する際、第一ディスク4を高精度に成形する観点から、テンプレートと略同一の底面の円柱空間を持つ型枠内にテンプレートを入れて、その上から液状ポリマー45を流し込む方が好ましい。
ステップ107
次に、液状ポリマー45を硬化する(5E)。硬化に先立ち、常圧下若しくは減圧下にて液状ポリマー45内の脱気を行うのが好ましい。硬化の際には、液状ポリマー45が熱硬化型の樹脂であれば、加熱を行うのが好ましい。例えば、ポリジメチルシロキサンを用いた場合には、50〜70℃にて加熱するのが好ましい。一方、室温硬化型の液状ポリマー45を用いる場合には、加熱を要しない。
ステップ108
次に、硬化した流路形成済みの透光性ポリマー4’をテンプレートから外す(5F)。
ステップ109
次に、流路形成済みの透光性ポリマー4’の貯留部11,12,13,14,15および廃液部17に、それぞれ開口部20および21を形成すると共に、面内中央に穴2aを形成する(5G)。こうして、第一ディスク4が完成する。
ステップ110
次に、第二ディスク5を製造するのに必要となる、平面視にて円形の透光性の平板50を準備する(6A)。平板50としては、例えば、好ましくはポリカーボネート樹脂製のものを用いることができる。
ステップ111
次に、平板50の面内中心に、穴2bを形成する(6A)。
ステップ112
次に、平板50の検出部16となる領域にセンサ23を形成する(6B)。こうして、第二ディスク5が完成する。センサ23の製造工程については、後ほど詳述する。
ステップ113
次に、第一ディスク4と第二ディスク5とを貼り合わせる(6C)。貼り合わせる際には、接着剤、両面テープ、嵌め込み等の如何なる手段を用いても良い。こうして、CD型マイクロチップ1が完成する(6D)。
上述の工程における開口部20,21および穴2a,2bをそれぞれ形成する各工程を、上述の各工程と異なる順に行うこともできる。例えば、第一ディスク4と第二ディスク5とを貼り合わせた後に、開口部20,21および穴2(穴2aと穴2bとを連結した状態のもの)を形成しても良い。
上述のステップ101〜109までの第一ディスク4を作製する工程に代えて、以下の製造方法を用いても良い。シリコーン樹脂をCD型に成形し、貯留部11,12,13,14,15、検出部16、廃液部17および流路18の各位置を、レーザー光等を用いて貫通して第一ディスク4を作製する。その後、第一ディスク4を構成する分割片を第二ディスク5に固着するようにしても良い。また、貯留部11,12,13,14,15、検出部16および廃液部17のみをレーザー光等を用いて貫通領域にし、流路18を凹状に加工しても良い。さらには、貯留部11,12,13,14,15、検出部16、廃液部17および流路18の各位置を、レーザー等を用いて凹状に加工しても良い。
図7は、図4のCD型マイクロチップの製造工程におけるセンサの製造工程の一例を詳細に示す。図8は、図7に示すセンサの製造工程におけるセンサの出来上がるまでの過程を示す。
ステップ1121
まず、平板50の検出部16を含む広めの領域に、液状ポリマー25aを塗布する(8A)。塗布に際し、厚さの均一化を図るために、スピンコーターを用いるのが好ましい。液状ポリマー25aは、硬化後に透光性であって、半硬化状態を保持できる材料であれば、何ら制限なく用いることができる。この実施の形態では、第一ディスク4の製造に用いた液状ポリマー45と同じものを用いている。ただし、液状ポリマー25aとして、ポリジメチルシロキサンに代えて、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂あるいはエポキシ樹脂等を用いても良い。
ステップ1122(半硬化層形成工程)
次に、液状ポリマー25aを半硬化させ、半硬化ポリマー層25’を形成する(8A)。半硬化ポリマー層25’は、検出部16の領域に、透光層25を形成するための半硬化層に相当する。半硬化ポリマー層25’の厚さは、球形ビーズ30aを一層で配列する条件では、球形ビーズ30aの平均径より小さいのが好ましく、さらには、最小の球形ビーズ30aの径より小さいのが好ましい。半硬化の条件は、液状ポリマー25aの種類によって異なる。例えば、液状ポリマー25aとして、ポリジメチルシロキサンの主剤(東レ・ダウコーニング製、SILPOT184 W/C BASE)と、その硬化剤(東レ・ダウコーニング製、SILPOT184 W/C CURING AGENT)を重量比にて10:1で混合したプレポリマーを用いた場合には、50〜70℃の範囲で20分〜2時間加熱することにより、液状ポリマー25aの半硬化状態を実現できる。
ステップ1123(懸濁液供給工程)
次に、半硬化ポリマー層25’上に、球形ビーズ含有懸濁液55を滴下する(8B)。球形ビーズ含有懸濁液55は、球形ビーズ30aと分散媒54から成る。この工程は、半硬化ポリマー層25’上に、球形ビーズ含有懸濁液55を供給する懸濁液供給工程である。球形ビーズ含有懸濁液55の滴下には、例えば、マイクロピペットを好適に用いることができる。この実施の形態では、好適に、球形ビーズ30aとしてポリスチレン(Duke Scientific社製、直径: 300nm)を、分散媒54としてイソプロパノール(関東化学社製)と純水との混液を、それぞれ用いることができる。球形ビーズ含有懸濁液55中の球形ビーズ30aの濃度は、その分散性に応じて適宜変更できるが、この実施の形態では2〜8質量%の範囲としている。なお、分散媒54としては、イソプロパノール以外の有機溶媒を用い、あるいは水のみ、さらには、有機溶媒のみを用いても良い。
ステップ1124(分散媒除去・配列工程)
次に、分散媒54を除去しながら、球形ビーズ30aの三次元規則配列を行う(8C,8D)。分散媒54の除去は、自然蒸発によるか、積極的な加温によるかを問わない。この工程では、球形ビーズ含有懸濁液55中の球形ビーズ30aが沈降し、球形ビーズ30aの少なくとも最下層が半硬化ポリマー層25’に固定されるとともに、球形ビーズ30aが半硬化ポリマー層25’上にて三次元的に規則配列する。分散媒54は、球形ビーズ30aの配列と同時に蒸発していき、最終的には完全に除去される。分散媒54が完全に除去されると、球形ビーズ30aの多層体(三次元構造体ともいう)は、半硬化ポリマー層25’に固定された状態になる。
ステップ1125(上層部除去工程)
次に、多層の球形ビーズ30aの上層部56を除去する(8E)。この工程は、分散媒除去・配列工程の後に、複数の球形ビーズ30aの多層体からその上層部56を除去する上層部除去工程である。上層部56の除去には、例えば、超音波振動を与える方法を用いることができる。この実施の形態では、球形ビーズ30aの多層体を固定した平板50を、50%エタノール水溶液(関東化学製)に浸漬し、30分程度の超音波振動をそのエタノール水溶液に加えることができる。
この結果、半硬化ポリマー層25’が完全に硬化して成る透光層25に、球形ビーズ30aの最下層を埋設した状態の平板50を形成できる。この工程は、複数の球形ビーズ30aが多層に積層され、透光層25上に、埋設された球形ビーズ30aより上方に1層以上の球形ビーズ30aが存在する場合に必要となる。しかし、当該1層以上の球形ビーズ30aが存在しないような特殊な場合には、除去すべき層が存在しないので、この工程を行わなくても良い。
ステップ1126(金属層形成工程)
次に、球形ビーズ30aの最下層からなるビーズ層30上に金属(好適には、金)を被覆し、金属層35を形成する(8F)。この工程は、ビーズ層30の少なくとも露出表面を導電性の金属にて被覆して金属層35を形成する金属層形成工程である。この実施の形態では、好適に、スパッタ装置(サンユー電子社製、SC−701 Quick COATER)を用いて金をスパッタして、ビーズ層30の露出面に約50nmの厚さの金の層を形成する。この結果、平板50の検出部16の領域に、センサ23を形成することができる。
なお、上述のステップ1121〜1126の処理は、検出部16の領域で行ったものであるが、薄板ガラス上で行っても良い。その場合には、センサ23を形成した薄板ガラスを検出部16の領域に固着する。
図9は、図7および図8に示す分散媒除去工程における湿度を変化させたときの球形ビーズの分散状態を比較した写真(9A)と、同工程における温度を変化させた後に上層部を除去して最下層のみとしたときの球形ビーズの分散状態を比較したSEM写真(9B)と、40℃にて分散媒を除去した後に上層部を除去して最下層のみとしたときの球形ビーズの埋設状態を表すSEM写真(9C)とを、それぞれ示す。
温度と湿度の各条件の最適化は、次の(1)および(2)の条件で行った。
(1)半硬化ポリマー層25’の形成
ポリジメチルシロキサンの主剤(東レ・ダウコーニング製、SILPOT184 W/C BASE)と、その硬化剤(東レ・ダウコーニング製、SILPOT184 W/C CURING AGENT)とを、重量比10:1にて十分に攪拌した後、真空ポンプで減圧して脱気処理を施し、プレポリマーを作製した。次に、スライドガラス(松浪ガラス製、縦18mm×横18mm×厚さ0.45〜0.60mm)上に、先に作製したプレポリマーを0.2mLのせ、スピンコータ(協和理研製、K−359S−1)を用いて、回転数1000rpm、処理時間80秒の条件にて均一な厚さの塗膜を形成した。塗膜の形成後、オーブンを用いて60℃で30分間加熱して、半硬化ポリマー層25’を作製した。
(2)球形ビーズ含有懸濁液55の作製
直径300nmのポリスチレン製の球形ビーズ30a(Duke Scientific製)を含む懸濁液(Duke Scientific製、濃度: 1質量%)1mLをマイクロチューブに入れ、球形ビーズ30aが沈殿するまで、遠心分離機(AS ONE製、MS−1)を用いて、回転数6200rpm、処理時間2時間の条件で遠心分離を行った。遠心分離後、上澄み溶液700μLを取り除き、純水とイソプロパノール(関東化学製、特級)を100μLずつ加えて十分に攪拌して球形ビーズ30aを洗浄した。次に、球形ビーズ30aの懸濁液を、先と同じ条件で遠心分離し、上澄み溶液を可能な限り取り除き、そこに純水60μLとイソプロパノール40μLとを加え、5質量%濃度の球形ビーズ含有懸濁液55を200μL用意した。
上記条件の下、球形ビーズ含有懸濁液55を半硬化ポリマー層25’上の3箇所に20μLずつ滴下した後、温度を25℃に保持し、湿度を6.4〜97.3%の範囲に変化させて分散媒54を除去したときの球形ビーズ30aの分散状態を比較した。その結果、(9A)に示すように、湿度75.3%以下の条件では、球形ビーズ30aの三次元構造体は、平面視にて中央に穴を有するリング形状に集積した。一方、湿度97.3%の条件では、球形ビーズ30aが平面視にて円形、側面視にて半円状の比較的規則正しく配列した三次元構造体を得ることができた。このような結果の違いは、湿度を高くすると分散媒54の蒸発速度が遅く、その間に球形ビーズ30aが規則正しく配列できたために生じたのではないかと考えられる。このような結果から、分散媒54の除去は、高湿にて行う方がより好ましいと考えられる。
次に、湿度を97.3%に保持し、温度を25〜50℃の範囲で変化させて分散媒54を除去し、続いて、超音波振動を加えて、多層の球形ビーズ30aの上層部56を除去したときの球形ビーズ30aの分散状態を比較した。その結果、(9B)に示すように、温度40℃の条件において、温度25℃および50℃のときに比べて、比較的規則正しい配列の球状ビーズ30aが得られることがわかった。また、(9C)からも明らかなように、(9B)に示す温度40℃の条件で作製した最下層の球形ビーズ30aは、規則配列状態にて、透光層25に埋設されていることがわかる。(9B)に示す結果の違いは、温度25℃の条件では、球形ビーズ30aを配列させるのに十分な対流が生じにくく、温度50℃の条件では、球形ビーズ30aの配列前に分散媒54が蒸発したために生じたのではないかと考えられる。
以上の結果から、分散媒54の除去は、温度40℃および湿度97.3%で行うのが好ましいと考えられる。ただし、かかる条件は、上記(1)および(2)の条件を前提としたときのより好ましい条件に過ぎず、分散媒54の種類、球形ビーズ30aの直径、プレポリマーの種類等の条件を変えると、分散媒除去工程の温度および湿度の条件も変化する。よって、この実施の形態は、温度40℃および湿度97.3%以外の条件にて分散媒54を除去することを妨げない。
<3.コンパクトディスク型マイクロチップを用いた分析システム>
図10は、図1に示すCD型マイクロチップを含む分析システムの模式図を示す。
この実施の形態における分析システム60は、CD型マイクロチップ1と、光源61と、光ファイバ62と、第一コリメータ63と、ターンテーブル64と、第二コリメータ65と、光ファイバ66と、分光器67とを備える。光源61は、複数の波長を持つ光を発光するものであり、より好ましくは白色光を発光する機器である。この実施の形態では、光源61として、K−MAC製のLabJuniorを好適に用いることができる。光ファイバ62は、光源61からの光を第一コリメータ63に導く導光路である。第一コリメータ63は、CD型マイクロチップ1の検出部16に対向配置され、光源61から光ファイバ62を経由して受光し、検出部16に平行光を供する機器である。この実施の形態では、第一コリメータ63として、Edmund Optics製のファイバーコリメーターアッセンブリンブリ好適に用いることができる。第一コリメータ63と検出部16との間に、偏光板68を配置して、第一コリメータ63を通過した光から不要な成分(より具体的にはs偏光)を除去しても良い。この実施の形態では、偏光板68として、Edmund Optics製の直径25mmのものを好適に用いることができる。ターンテーブル64は、CD型マイクロチップ1を面内で自転させる回転機器である。これは、貯留部11,12,13,14,15内の溶液に遠心力を与え、検出部16に導くのに用いられる。第二コリメータ65は、検出部16を挟んで第一コリメータ63と対向配置され、検出部16を透過した光を受光する機器である。光ファイバ66は、第二コリメータ65からの光を分光器67に導く導光路である。この実施の形態では、第二コリメータ65として、第一コリメータ63と同一の機器を好適に用いることができる。分光器67は、第二コリメータ65からの光を分光する機器である。この実施の形態では、分光器67として、K−MAC製のLabJuniorを好適に用いることができる。
検出部16内のビーズ層30の露出面に金を蒸着して金属層35を形成すると、当該金属層35の形成前に比べ、透過光の強度に相違が認められる。具体的には、波長650nm近傍での透過光の減衰が認められる。これは、金の蒸着面において表面プラズモン共鳴が生じたためであると考えられる。したがって、センサ23を透過した光を分光器67にて調べることにより、グレーティングによる反射光を分光器67にて調べるのと同様に、未知の試料を特定可能である。具体的には、未知の試料の濃度を変えた複数の溶液を用意し、各溶液を検出部16のセンサ23表面に供給して、光源61からセンサ23を透過した光を分光器67で分析し、光の減衰が認められる波長のシフトを調べることにより、未知の試料を特定する。
図11は、図1のCD型マイクロチップを用いた送液原理を説明する図を示す。
CD型マイクロチップ1の中心から異なる距離に位置する貯留部11,12,13(適宜、「貯留部11等」という。)に、それぞれ、溶液71,72,73(適宜、「溶液71等」という。)を入れた後、CD型マイクロチップ1を自転させる、その回転数を増加させていくと、CD型マイクロチップ1の中心から最も遠い貯留部11から、次に遠い貯留部12、最も近い貯留部13の順に、溶液71等を検出部16に導くことができる。かかる遠心力Fを利用した送液の原理について、以下に説明する。
CD型マイクロチップ1を角速度ωで回転させたとき、CD型マイクロチップ1の中心から距離Rにある貯留部11等にかかる遠心力Fは、次の式(1)で表すことができる。
=Rωρπrh・・・式(1)
ここで、rは、貯留部11等の出口の形状をある円の一部をなす孤と仮定したときの円換算半径である。ρは、溶液71等の密度である。hは、溶液71等の遠心方向における深さである。
一方、表面張力によって引き起こされる溶液71等を貯留部11等に留めおく力Fは、次の式(2)で表すことができる。
=2πrγcosθ・・・式(2)
ここで、θは、接触角である。γは、表面張力である。
>Fのときに、溶液71等は貯留部11等から出口に向かって流れ出し、このときの角速度ωは、式(3)で表すことができる。
ω=(2γ|cosθ|/Rρrh)1/2・・・式(3)
したがって、このときの回転周波数f(単位:rpm)は、式(4)で表すことができる。
f=(60/2π)・(2γ|cosθ|/Rρrh)1/2・・・式(4)
式(4)から明らかなように、CD型マイクロチップ1の中心から貯留部11等までの距離(R)が異なれば、溶液71等が貯留部11等から流れ出す回転数も異なる。したがって、回転数を段階的に上げることにより、中心から最も遠い貯留部11から順に溶液を検出部16に送ることができる。
<4.分析システムを用いた分析方法>
(1)分析方法の基本的なステップ
図12は、図10に示す分析システムを用いた分析方法の一例の流れを示す。
ステップ301(試料供給ステップ)
まず、CD型マイクロチップ1の貯留部11等に試料等を供給する。ここで、試料等は、「少なくとも試料」の意味に解釈され、試料のみ、あるいは試料の他に洗浄液等の他の種類の溶液をも含み得る。
ステップ302
次に、試料等を入れた貯留部11等の開口部20を、フィルム等を用いてカバーする。ここで、廃液部17の開口部21を同時にカバーしても良い。フィルム等のカバー手段は、貯留部11等の専用カバーでも良く、あるいはブロック3毎のカバーでも良く、さらにはCD型マイクロチップ1の表面全部を覆うカバーでも良い。なお、このステップは、必須のステップではなく、省略することもできる。例えば、貯留部11等に注射針等を用いて溶液を注入する場合には、開口部20が非常に小さいので、分析時に溶液が容易に飛び出さない可能性もある。そのような場合には、必ずしも開口部20を塞がなくても良い。
ステップ303(送液ステップ)
次に、ターンテーブル64を駆動して、試料等を検出部16まで送液可能な回転数にてCD型マイクロチップ1を回転させて、試料等を検出部16に送液する。貯留部11等が1個のみの場合には、送液は一回の操作で行われる。しかし、図2に示すCD型マイクロチップ1のように貯留部11等を径方向の距離を変えて5個備える場合には、このステップでは、ターンテーブル64の回転数を5水準に変えながら、径方向外側の貯留部11から送液を開始し、続いてその径方向内側の貯留部12等から送液を行う。具体的には、ターンテーブル64を所定回転数にて回転させて径方向最も外側にある貯留部11から送液を行い、続いて回転数を上げてその径方向内側にある貯留部12から送液を行い、さらに回転数を上げてその径方向内側にある貯留部13から送液を行い、さらに回転数を上げてその径方向内側にある貯留部14から送液を行い、さらに回転数を上げてその径方向内側にある貯留部15から送液を行う。
ステップ304(照光ステップ)
次に、光源61を発光させて、検出部16に照光する。このステップは、ステップ303の後に実行せずに、ステップ303より先に実行し、ステップ303の後まで継続して行っても良い。
ステップ305(測定ステップ)
次に、検出部16に入ってきた試料等を透過する透過光を、分光器67を用いて測定する。
(2)具体的な分析例
(2a)スクロースの測定
屈折率を変えた複数の試料を用いて、共鳴波長に変化が見られるかを調べた。測定対象の試料には、純水、および50〜2000mMの4種のスクロール水溶液を用いた。純水を貯留部11に、500mMスクロール水溶液を貯留部12に、1000mMスクロール水溶液を貯留部13に、1500mMスクロール水溶液を貯留部14に、2000mMスクロール水溶液を貯留部15に、それぞれ入れた。次に、各貯留部11,12,13,14,15の内の径方向外側から順に溶液を送液できる回転数を設定し、その設定した回転数を大きい方向に変化させて、各貯留部11,12,13,14,15の内の溶液を検出部16に送液した。各溶液の送液毎に、光源61を発光させ、分光器67で分光した各波長の範囲内において、センサ23以外の領域の透過光の強度(I)に対するセンサ23の領域の透過光の強度(I)の比率(=I/I)をプロットし、I/Iの最小となる減衰ピーク波長を調べた。
図13は、純水および50〜2000mMのスクロール水溶液をそれぞれ用いて、透過光の波長とI/Iとの関係をプロットしたグラフ(13A)と、スクロース水溶液の濃度と純水を基準としたピーク波長のシフト量との関係をプロットしたグラフ(13B)とを示す。
(13A)に示すように、スクロースの濃度が高いほど、減衰ピークが長波長側にシフトする傾向が認められた。そこで、純水を用いたときのピーク波長を基準とし、スクロースの各濃度に対してピーク波長のシフト量をプロットした。試料には、50〜2000mMの範囲内にある8種類のスクロール水溶液を用いた。その結果、(13B)に示すように、スクロースの濃度に対してシフト量が直線的に大きくなる結果が認められた。したがって、未知の試料を測定する際に、その濃度を複数変えた試料を用意し、(13B)に示すグラフを作成することによって、予め作成した多くの試料の検量線と照合して未知の試料を特定することができると考えられる。
(2b)IgAの測定
図14は、IgAを用いた抗原抗体反応の測定におけるセンサ表面の変化を模式的に示す。
センサ23の免疫測定への応用として、IgAを用いた抗原抗体反応の測定を実施した。まず、0.14M NaClを含むpH8.0の50mM Tris−HCl緩衝溶液(以後、「洗浄液」という。)を40μL計り取り,CD型マイクロチップ1の貯留部11に入れ、CD型マイクロチップ1を回転させて洗浄液を検出部16に送液し、透過光を測定した(測定1)。次に、1.0mg/mLの抗IgAを40μL計り取り、貯留部12に入れ、CD型マイクロチップ1を回転させて抗IgAを検出部16に送液した後、CD型マイクロチップ1を10分間静置し、センサ23の表面に抗IgA80を吸着させた。次に、40μLの洗浄液を貯留部12に入れ、CD型マイクロチップ1を回転させて洗浄液を検出部16に送液し,検出部16内の余分な抗IgA80を洗い流した後、透過光を測定した(測定2)。次に、ブロッキング試薬として1%BSAを40μL計り取り、貯留部13に入れ、CD型マイクロチップ1を回転させてブロッキング試薬を検出部16に送液した後、CD型マイクロチップ1を10分間静置し、センサ23の抗IgA80が吸着していない部分に、ブロッキング試薬81を吸着させた。次に、40μLの洗浄液を貯留部13に入れ、CD型マイクロチップ1を回転させて洗浄液を検出部16に送液し、検出部16内の余分なブロッキング試薬81を洗い流した後、透過光を測定した(測定3)。次に、1.0mg/mLのIgAを含む血清試料を40μL計り取り、貯留部14に入れ、CD型マイクロチップ1を回転させて、貯留部14内の血清試料を検出部16に送液した後、CD型マイクロチップ1を10分間静置し、センサ23の表面に吸着している抗IgA80に、IgA82を吸着させた。次に、40μLの洗浄液を貯留部14に入れ、CD型マイクロチップ1を回転させて洗浄液を検出部16に送液し、検出部16内の血清試料中に含まれるIgA82以外の共存物質を洗い流した後、透過光を測定した(測定4)。
図15は、測定1〜4における透過光の波長とI/Iとの関係をプロットしたグラフ(15A)と、測定1〜4における洗浄液を基準としたピーク波長のシフト量を表したグラフ(15B)とを示す。
(15A)および(15B)に示すように、洗浄液のみ(Buffer)から、抗IgA80の吸着(Anti−IgA)、ブロッキング試薬81の吸着(BSA)、IgA82の吸着(IgA)へと進行するに従い、減衰ピークが長波長側にシフトする量が大きくなる傾向が認められた。したがって、センサ23を抗原抗体反応の測定に応用できると考えられる。実際の測定の際には、センサ23の表面への抗体の固定化とブロッキング処理が済んだCD型マイクロチップ1を予め準備しておき、CD型マイクロチップ1上に存在する8か所の貯留部11および13に洗浄液、貯留部12に濃度の異なるIgA溶液および試料溶液を入れ、これらを検出部16に順次供給し、透過光の測定を行う。センサ23の表面に固定化する抗体の種類を変えれば、IgA以外の測定も可能である。
本発明は、環境、食品、医療、品質管理等における分析に利用することができる。
1 CD型マイクロチップ(コンパクトディスク型マイクロチップ)
4 第一ディスク
5 第二ディスク
11,12,13,14,15 貯留部
16 検出部
18 流路
20,21 開口部
23 センサ(透過型表面プラズモン共鳴センサ)
25 透光層
25’ 半硬化層(半硬化ポリマー層)
30a 球形ビーズ
30 ビーズ層
35 金属層
54 分散媒
55 球形ビーズ含有懸濁液(懸濁液)
56 上層部
60 分析システム
61 光源
63 第一コリメータ
64 ターンテーブル
65 第二コリメータ
67 分光器

Claims (10)

  1. 試料の分析に用いられ、自転させた際の遠心力を利用して中心から径方向外側に送液可能なコンパクトディスク型マイクロチップであって、
    その内部に、
    少なくとも上記試料を貯留するための1または2以上の貯留部と、
    上記貯留部より上記径方向外側に配置され、上記貯留部から送られてきた上記試料に照光するための検出部と、
    上記貯留部と上記検出部とを繋ぐ送液用の流路と、
    を少なくとも備え、
    少なくとも上記検出部の領域は、その厚さ方向に透光性であって、
    上記検出部は、その内面に透過型表面プラズモン共鳴センサを備え、
    当該透過型表面プラズモン共鳴センサは、
    透光層と、
    その透光層から上方を露出するように平面配列される複数の球形ビーズから成るビーズ層と、
    そのビーズ層の少なくとも露出表面を覆う導電性の金属層と、
    を備えることを特徴とするコンパクトディスク型マイクロチップ。
  2. 前記貯留部、前記検出部および前記流路の内の少なくとも1つを、面内方に窪む凹部として形成した第一ディスクと、
    その第一ディスクと積層することによって前記貯留部、前記検出部および前記流路を形成可能な第二ディスクと、
    を積層して成り、
    上記第二ディスクに、前記透過型表面プラズモン共鳴センサを形成してなることを特徴とする請求項1に記載のコンパクトディスク型マイクロチップ。
  3. 少なくとも前記貯留部に、外から通じる開口部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンパクトディスク型マイクロチップ。
  4. 前記透光層および前記球形ビーズをともにポリマーから構成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコンパクトディスク型マイクロチップ。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンパクトディスク型マイクロチップの製造方法であって、
    前記透過型表面プラズモン共鳴センサの製造工程において、
    前記検出部の領域に、前記透光層を形成するための半硬化層を形成する半硬化層形成工程と、
    上記半硬化層上に、前記複数の球形ビーズを分散媒中に分散させた懸濁液を供給する懸濁液供給工程と、
    上記分散媒を除去すると共に、前記複数の球形ビーズをその上方を露出させた状態で配列させて上記半硬化層に固定する分散媒除去・配列工程と、
    前記ビーズ層の少なくとも露出表面を導電性の金属にて被覆して前記金属層を形成する金属層形成工程と、
    を含むことを特徴とするコンパクトディスク型マイクロチップの製造方法。
  6. 前記分散媒除去工程において、前記複数の球形ビーズの多層体からその上層部を除去する上層部除去工程を、さらに含むことを特徴とする請求項5に記載のコンパクトディスク型マイクロチップの製造方法。
  7. 前記半硬化層形成工程では、前記球形ビーズの平均径より小さい厚さの前記半硬化層を形成することを特徴とする請求項5または請求項6に記載のコンパクトディスク型マイクロチップの製造方法。
  8. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンパクトディスク型マイクロチップと、
    光源と、
    上記コンパクトディスク型マイクロチップの前記検出部に対向配置され、上記光源から受光して前記検出部に平行光を供する第一コリメータと、
    上記コンパクトディスク型マイクロチップを面内で自転させるターンテーブルと、
    前記検出部を挟んで上記第一コリメータと対向配置され、前記検出部を透過した光を受光する第二コリメータと、
    上記第二コリメータからの光を分光する分光器と、
    を少なくとも含む分析システム。
  9. 請求項8に記載の分析システムを用いた分析方法であって、
    前記貯留部に、少なくとも前記試料を供給する試料供給ステップと、
    前記ターンテーブルを駆動して、少なくとも前記試料を前記検出部まで送液可能な回転数にてコンパクトディスク型マイクロチップを回転させて前記検出部まで送液する送液ステップと、
    前記検出部に照光する照光ステップと、
    前記検出部に入ってきた前記試料を透過する透過光を、前記分光器を用いて測定する測定ステップと、
    を少なくとも実行する分析方法。
  10. 前記貯留部を、径方向に複数配置する前記コンパクトディスク型マイクロチップを用い、
    前記送液ステップでは、前記ターンテーブルの回転数を変えながら、径方向外側の貯留部から送液を開始し、続いてその径方向内側の貯留部から送液を行うことを特徴とする請求項9に記載の分析方法。
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