JP2014044846A - 燃料電池の制御方法および燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の制御方法において、燃料電池の発電時に電解質膜における乾燥を抑制する技術を提供する。
【解決手段】両面に触媒層が形成された電解質膜を含む燃料電池の制御方法では、燃料電池の発電が停止している間における電解質膜の乾燥度合いに相関する乾燥指標値と電解質膜の温度に相関する温度指標値とを特定する工程と、停止している間における乾燥指標値と温度指標値とが予め設定された乾燥指標値と温度指標値との条件に該当するか否かを判定する第1の判定工程と、第1の判定工程において条件に該当すると判定された場合に、電解質膜における乾燥指標値と温度指標値とが条件に該当しなくなるまで電解質膜を冷却する工程と、を備える。
【選択図】図11

Description

本発明は、燃料電池の制御方法および燃料電池システムに関する。
電解質膜を含む燃料電池は、電解質膜が乾燥すると、十分な性能を発揮できない。例えば、特許文献1には、燃料電池を搭載した水中運航体において、燃料電池の発電停止後に、外部の海水を使用して燃料電池を冷やし、電解質膜の温度を下げることにより、電解質膜に結露を生じさせて電解質膜の乾燥を抑制する技術が開示されている。
特開2007−234519号公報
特許文献1に開示された技術では、燃料電池の発電停止後に発電を再開すると、再開時の燃料ガスおよび酸化剤ガスの導入によって電解質膜がすぐに乾燥してしまうおそれがあった。また、燃料電池の発電停止時および発電再開時における電解質膜の温度によって、燃料電池の発電再開後に電解質膜の乾燥する傾向が異なるため、電解質膜の温度等の状態に応じて乾燥を抑制するために適切な冷却を行ないたいという課題があった。また、電解質膜の乾燥を抑制するために、外部からの冷却水等による冷却方法以外の制御方法を用いたいという課題があった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、両面に触媒層が形成された電解質膜を含む燃料電池の制御方法が提供される。この制御方法は、前記燃料電池の発電が停止している間における前記電解質膜の乾燥度合いに相関する乾燥指標値と前記電解質膜の温度に相関する温度指標値とを特定する工程と;前記停止している間における前記乾燥指標値と前記温度指標値とが予め設定された前記乾燥指標値と前記温度指標値との条件に該当するか否かを判定する第1の判定工程と;前記第1の判定工程において前記条件に該当すると判定された場合に、前記電解質膜における前記乾燥指標値と前記温度指標値とが前記条件に該当しなくなるまで前記電解質膜を冷却する工程と、を備える。この形態の燃料電池の制御方法によれば、燃料電池の発電停止後に燃料電池を再始動する場合に、発電停止中に電解質膜を冷却するので、再始動後に電解質膜の乾燥を抑制することができ、電解質膜に対する損傷を少なくして、燃料電池の耐久性を向上させることができる。また、電解質膜における温度指標値および乾燥指標値が予め設定された条件に該当するか否かの判定を行ない、当該条件に該当する場合には、当該条件に該当しなくなるまで電解質膜を冷却する。よって、電解質膜の温度や水分量等の物性値に応じて電解質膜を適切に冷却または湿潤な状態にすることができる。また、電解質膜における乾燥指標値および温度指標値によって、電解質膜の状態を精度良く検出することができる。
(2)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記乾燥指標値は、電気抵抗値であり;前記温度指標値は、温度であり;前記条件は、前記電解質膜と前記触媒層とが積層される方向に略垂直な面方向に沿った前記電解質膜における歪変化率が所定値よりも大きい場合であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、電解質膜の面方向に沿った歪変化率が所定値よりも大きい場合を基準として燃料電池が冷却されるため、燃料電池の停止後の再始動における電解質膜への損傷を抑制することができる。
(3)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記所定値は、3パーセントであっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、電解質膜の面方向に沿った歪変化率が3%である場合を基準として燃料電池が冷却されるため、燃料電池の停止後の再始動における電解質膜への損傷を抑制することができる。
(4)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記条件における電気抵抗値のうち最小となる最小抵抗値は、前記電解質膜の温度が摂氏25度から摂氏45度の間のときの電気抵抗値であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、温度が摂氏25度から摂氏45度の間の場合、温度の変化による歪変化率の変化が小さい。そのため、温度が最小抵抗値を設定した温度よりも小さい場合には、電気抵抗値と歪変化率との関係を示すデータがなくても、より少ないデータで条件が簡便に作成される。
(5)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記条件における温度のうち最小となる最小温度は、前記電解質膜に含まれる水分全てを水蒸気として換算した場合に、前記水蒸気の分圧を飽和水蒸気圧で除した割合が100パーセント以上110パーセント以下であるときの温度であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、電解質膜が水分を含んだ湿潤な状態である場合、電解質膜に含まれる水分量の変化による歪変化率の変化が小さい。そのため、電気抵抗値と歪変化率との関係を示すデータがなくても、より少ないデータで条件が簡便に作成される。
(6)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記冷却する工程は、前記条件に基づいて決定される第1の目標温度以下になるまで前記電解質膜を冷却する工程であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、電解質膜に冷却する必要であるか否かの判定が行なわれ、当該判定に基づき電解質膜が第1の目標温度まで冷却されるので、電解質膜112の温度や水分量等の物性値に応じて電解質膜を適切に冷却することができる。
(7)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記特定する工程は、前記発電を開始する場合において、前記開始の時点における前記電解質膜の温度である開始時温度を特定する工程を含み;前記第1の判定工程は、前記開始時温度が前記第1の目標温度よりも高いか否かを判定する工程を含み;前記冷却する工程は、前記第1の判定工程において前記開始時温度が前記第1の目標温度よりも高いと判定された場合に、前記発電を開始する前に前記電解質膜を冷却する冷却水の流量を増加させる工程を含み;前記制御方法は、さらに;前記流量を増加させた後に、前記電解質膜における電気抵抗値と温度とを測定する工程と;測定した前記電解質膜の電気抵抗値および温度が前記条件に該当するか否かを判定する第2の判定工程と;前記第2の判定工程において前記条件に該当すると判定された場合に、前記電解質膜における相対湿度の低下を抑制する工程と、を備えていても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、燃料電池の発電停止後に再始動する場合に、電解質膜を第1の目標温度まで冷却できていないと、さらに、電解質膜における相対湿度の低下を抑制する制御を行なう。これによって、再始動後の電解質膜の乾燥を抑制し、電解質膜に対する損傷を少なくして、燃料電池の耐久性を向上させることができる。また、早期に燃料電池を予め設定された条件に該当しなくなるようにでき、通常運転を迅速に行なえる状態にすることができる。
(8)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記抑制する工程は、前記冷却の冷却速度と前記条件とに基づいて決定される目標抵抗値以下、かつ、第2の目標温度以下になるまで前記相対湿度の低下を抑制する工程であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、燃料電池の冷却速度を考慮に入れて相対湿度の低下を抑制する制御を行ない、迅速に燃料電池における電解質膜を冷却および相対湿度の低下を抑制するように目標値を決定するので、効率良く燃料電池を通常運転時に損傷が少ない状態にすることができる。
(9)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記測定する工程は、一定時間ごとに前記電解質膜における電気抵抗値と温度とを測定する工程であり;前記抑制する工程は、測定した最新の前記電解質膜における電気抵抗値と温度とに基づいて前記目標抵抗値と前記第2の目標温度とを決定し直す工程を含んでいても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、燃料電池に相対湿度の低下を抑制する制御を行なっている場合にも、電解質膜の電気抵抗値および温度を測定して、その都度、目標抵抗値および第2の目標温度を決定し直すため、燃料電池の状態に応じて最短で冷却および相対湿度の低下を抑制することができる。
(10)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記電解質膜における一方の面であるカソード側の面に供給される酸化剤ガスの流量を少なくする工程であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、酸化剤ガスがカソード側の面から持ち出す水分量が少なくなり、電解質膜における乾燥を抑制することができ、燃料電池の発電によって水が生成するので、電解質膜を湿潤な状態にすることができる。
(11)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記電解質膜における一方の面であるカソード側の面に供給される酸化剤ガスの圧力を増加させる工程であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、燃料電池の通常運転前に、燃料電池の発電が行なわれ酸化剤ガスの圧力が高くなるため、酸化剤ガスと燃料ガスとの水を生成する電気化学反応が促進されて、電解質膜における水分量を増やすことができ、迅速に電解質膜における乾燥を抑制することができる。
(12)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記電解質膜における一方の面であるカソード側の面に供給される酸化剤ガスの温度と前記電解質膜におけるもう一方の面であるアノード側の面に供給される燃料ガスの温度とのうち少なくとも一方の温度を低下させる工程であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、電解質膜に供給されるガスの温度が低いため、燃料電池に循環させている冷却水とは別に、供給されるガスの温度によって電解質膜を冷却することができる。また、酸化剤ガスまたは燃料ガスの温度低下に伴い、飽和蒸気圧が下がり、酸化剤ガスまたは燃料ガスの水分の持ち去り量が減少するため、電解質膜の乾燥を抑制することができる。
(13)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記発電の量を増加させて、前記電解質膜の一方の面であるカソード側の面に供給される酸化剤ガスと前記電解質膜のもう一方の面であるアノード側の面に供給される燃料ガスとの電気化学反応による水の生成を促進させる工程であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、電解質膜において生成される水分量を増やすことができ、迅速に電解質膜における乾燥を抑制することができる。
(14)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記電解質膜における一方の面であるアノード側の面に供給される燃料ガスの圧力を低下させる工程であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、アノード側の面に供給される燃料ガスの圧力が下がるために、カソード側の面からアノード側の面への生成水の移動を抑制することができ、迅速に電解質膜における乾燥を抑制することができる。
(15)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記特定する工程は、一定時間ごとに前記電解質膜における電気抵抗値と温度とを特定する工程を含み;前記制御を行なう工程は、特定した最新の前記電解質膜における電気抵抗値と温度とに基づいて前記第1の目標温度を決定し直す工程を含んでいても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、燃料電池を冷却している間にも、電解質膜の電気抵抗値および温度を測定して、その都度、第1の目標温度を決定し直すため、燃料電池の冷却状態に応じて最短で冷却することができる。
(16)上記形態の燃料電池の制御方法において、前記特定する工程は、前記発電が停止した時点における前記乾燥指標値と前記温度指標値とを特定する工程であっても良い。この形態の燃料電池の制御方法によれば、燃料電池の発電停止から時間が経過した後と比較して、発電停止時から早い段階で電解質膜を冷却するまたは湿潤な状態にすることができる。
本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、燃料電池、燃料電池システム、燃料電池の制御方法および制御システム、燃料電池スタック、燃料電池スタックの制御方法および制御システム、燃料電池または燃料電池システムを備えた移動体、燃料電池または燃料電池システムを備えた移動体の制御方法および制御システム等の態様で実現することができる。
本発明の実施形態における燃料電池システム10の概略構成を示す説明図である。 燃料電池100を構成する単位セル105の概略構成を示す説明図である。 電解質膜112における電気抵抗値Rの推移の一例を示す説明図である。 電解質膜112における温度Tと相対湿度RHと歪εとの関係の一例を示す説明図である。 燃料電池100の発電時における電解質膜112の電気抵抗値Rと歪εとの関係の一例を示す説明図である。 燃料電池100の発電時における電解質膜112への損傷度Rdの関係の一例を示す説明図である。 電解質膜112の歪変化量Δεを判定する条件マップを示す説明図である。 電解質膜112における電気抵抗値Rの推移の一例を示す説明図である。 燃料電池100の制御処理の流れを示す説明図である。 単位セル105の積層面におけるカソードガスおよびアノードガスを供給する位置関係の一例を示す説明図である。 電解質膜112が制御必要状態であるか否かを判定する条件マップの概略を示す説明図である。 第2実施形態における燃料電池100の制御処理の流れを示す説明図である。 電解質膜112が制御必要状態であるか否かを判定する条件マップの概略を示す説明図である。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施形態:
A−1.燃料電池の構成:
A−2.電解質膜の歪変化量を判定する条件マップの作成:
A−3.燃料電池の制御処理:
B.第2実施形態:
C.変形例:
A.第1実施形態:
A−1.燃料電池の構成:
図1は、本発明の実施形態における燃料電池システム10の概略構成を示す説明図である。図2は、燃料電池100を構成する単位セル105の概略構成を示す説明図である。燃料電池システム10は、燃料ガス(アノードガス)としての水素と酸化剤ガス(カソードガス)としての空気とを利用して発電を行うシステムであり、例えば車両に搭載されて車両の動力源として使用される。
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池100と、制御部20と、カソードガスを供給するカソードガス供給部30と、燃料電池100を冷却するために冷却水を循環させる冷媒循環部40と、アノードガスを供給するアノードガス供給部50とを備えている。燃料電池100は、複数の単位セル105が積層されたスタック構造を有している。
図2には、燃料電池100の構成をわかりやすく示すために、燃料電池100を構成する1つの単位セル105の断面が抜き出して示され、他の図示が省略されている。図2に示すように、単位セル105は、セパレータ140と、カソード側拡散層122と、膜電極接合体(以下「MEA(Membrane Electrode Assembly)」とも呼ぶ)110と、アノード側拡散層124とが積層されて形成されている。
MEA110は、電解質膜112と、電解質膜112の一方の側に配置されたアノード116と、電解質膜112の他方の側に配置されたカソード114と、から構成されている。アノード116は、電解質膜112と反対側でアノード側拡散層124と接している。また、カソード114は、電解質膜112と反対側でカソード側拡散層122と接している。アノード側拡散層124は、アノード116と反対側でセパレータ140と接している。カソード側拡散層122は、カソード114と反対側でセパレータ140と接している。なお、図示していないが、セパレータ140には、カソードガスおよびアノードガス(以降、まとめて「反応ガス」とも呼ぶ)が流通する流路が形成されており、当該流路を介してカソード側拡散層122およびアノード側拡散層124に反応ガスが流入する。
電解質膜112は、フッ素系樹脂材料あるいは炭化水素系樹脂材料により形成されたイオン交換膜(例えばナフィオン(登録商標) 膜:NRE212)であり、湿潤状態において良好なプロトン伝導性を有する。アノード116およびカソード114は、電極反応を促進する触媒を提供する層であり、例えば白金を担持したカーボンと電解質とを含む材料により形成されている。アノード側拡散層124およびカソード側拡散層122は、電極反応に用いられる反応ガスを面方向(燃料電池100の積層方向(図2参照)に略直交する方向)に拡散させる層であり、例えばカーボンクロスやカーボンペーパーにより形成されている。本実施形態では、アノード側拡散層124およびカソード側拡散層122には、例えばPTFE樹脂によって撥水処理が施されている。セパレータ140は、ガスを透過しない緻密質であると共に導電性を有する材料、例えば圧縮成型された緻密質カーボン、金属、導電性樹脂により形成されている。
図1および図2では図示を省略しているが、燃料電池100は、いずれも燃料電池100を積層方向に貫通するアノードガス供給マニホールドと、アノードガス排出マニホールドと、カソードガス供給マニホールドと、カソードガス排出マニホールドと、を有している。燃料電池100に対して供給されたアノードガスは、アノードガス供給マニホールドを介して各セルのセパレータ140に形成された流路に分配され、アノード側拡散層124で拡散され、さらにMEA110のアノード側に供給されてMEA110における電気化学反応に利用される。反応に利用されなかったアノードガスは、アノードガス排出マニホールドを介して外部に排出される。また、燃料電池100に対して供給されたカソードガスは、カソードガス供給マニホールドを介して各セルのセパレータ140に形成された流路に分配され、カソード側拡散層122で拡散され、さらにMEA110のカソード側に供給されてMEA110における電気化学反応に利用される。反応に利用されなかったカソードガスは、カソードガス排出マニホールドを介して外部に排出される。なお、燃料電池システム10は、反応に利用されなかったアノードガスを再循環させる再循環機構を有するとしても良い。
図1に示すように、制御部20は、カソードガス供給部30と、冷媒循環部40と、アノードガス供給部50との動作を制御する。また、制御部20は、抵抗値測定部60が測定した燃料電池100の電気抵抗値および温度測定部70が測定した燃料電池100の温度を信号として受信する。本実施形態では、制御部20の機能は、コンピュータプログラムに基づいてCPU(Central Processing Unit)が動作することによって実現される。他の実施形態では、制御部20の一部または全部の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)がその回路構成に基づいて動作することによって実現されても良い。
カソードガス供給部30は、カソードガスの圧力および流量を調整して各単位セル105のカソード114へとカソードガスを供給する。また、アノードガス供給部50は、アノードガスの圧力および流量を調整して各単位セル105のアノード116へとアノードガスを供給する。冷媒循環部40は、ラジエータ(図示していない)により冷却された冷却水の流量を調整して燃料電池100に供給する。なお、本実施形態では、燃料電池100を冷却する冷却媒体として水を用いたが、他の実施形態では、例えば、エチレングリコール等の不凍液、空気などを用いても良い。
抵抗値測定部60は、例えば、ミリオームハイテスタのような抵抗計であり、燃料電池100の積層方向に沿った両端に接続することで、燃料電池100の電気抵抗値を測定することができる。本実施形態では、燃料電池100の電気抵抗値を測定しているが、他の実施形態では、単位セル105の電気抵抗値を測定しても良い。温度測定部70は、燃料電池100の温度を測定する温度計であり、循環している冷却水における燃料電池100の出口の温度を測定している。なお、他の実施形態では、温度を測定する箇所が異なっていても良い。
A−2.電解質膜の歪変化量を判定する条件マップの作成:
燃料電池100に含まれる電解質膜112は、乾燥した状態であると十分な性能が発揮できないため、水分を含んだ湿潤状態であることが望ましい。電解質膜112は、含んでいる水分量に応じて体積が変化する、すなわち、歪εが変化する。ここで、電解質膜112において、面直方向の厚さと比較すると面方向の広がりが大きいため、本実施形態における歪εは、電解質膜112における面方向に沿った面(以降、「積層面」とも呼ぶ)における任意の寸法の変化率である。例えば、積層面における任意の長さLが長さ(L+ΔL)に変化した場合、歪εは、ΔLをLで除した値(ΔL/L)である。電解質膜112は、ある水分量の状態での積層面を基準とすると、基準状態と比較して多くの水分を含んでいる状態(湿潤状態)では面積が大きく(歪εが正の値に)なり、基準状態と比較して水分をあまり含んでいない乾燥した状態(乾燥状態)では面積が小さく(歪εが負の値に)なる。そのため、歪εから電解質膜112の相対湿度RH、または相対湿度RHが100%の場合における電解質膜112に含まれる水分量を知ることができる。ここで、歪εは、抵抗値測定部60によって測定された電解質膜112における単位面積あたりの電気抵抗値Rと相関関係にあり、電気抵抗値Rは、電解質膜112の温度Tと相関関係にある。そのため、歪εは、電解質膜112における電気抵抗値Rおよび温度Tによって算出される。電気抵抗値Rは、抵抗値測定部60によって燃料電池100の電気抵抗値が測定され、測定された電気抵抗値用いて算出される。なお、電解質膜112の電気抵抗値Rは、本発明における電解質膜112の乾燥度合いに相関する乾燥指標値に相当する。
図3は、電解質膜112における電気抵抗値Rの推移の一例を示す説明図である。図3には、燃料電池100の発電停止後に、冷却水によって冷却速度1℃/1分以上で燃料電池100を所定の時間冷却した後、再度、燃料電池100を発電(再始動)した場合における再始動時の温度別における電気抵抗値Rの実験結果の一例が示されている。なお、再始動時における電解質膜112の温度別の電気抵抗値Rは同じに設定されている。図3に示すように、燃料電池100を再始動する場合に、電気抵抗値Rは、再始動後の温度が65℃、55℃、45℃の順に高くなっており、再始動時の温度が高いほど、抵抗値が高くなることがわかる。これは、再始動時における電解質膜112の電気抵抗値Rが同じであっても、再始動時の温度が高いほど、電解質膜112が乾燥しやすいためである。そのため、燃料電池100の発電終了後に再始動する場合には、再始動時における燃料電池100の温度、再始動時の温度に影響を与える再始動前の発電状態、再始動前における燃料電池100の冷却条件の違いに応じて、再始動後の電解質膜112における乾燥の傾向が異なることがわかる。
図4は、電解質膜112における温度Tと相対湿度RHと歪εとの関係の一例を示す説明図である。図4には、電解質膜112における相対湿度RHが110%であり、かつ、予め設定した基準歪ε0を基準とした場合に、温度Tごとの歪εと相対湿度RHとの関係が示されている。なお、本実施形態では、相対湿度RHが110%になるとは、電解質膜112における相対湿度RHが100%であり、電解質膜112に液体として含まれる水分量を水蒸気として換算して、100%に加えた場合における相対湿度RHである。また、他の実施形態では、予め設定した基準歪ε0の値については種々変形可能である。
図4に示すように、歪εから基準歪ε0を差し引いた歪変化量Δεの絶対値は、基準歪ε0から縦軸方向に沿って離れるほど大きい。具体的には、基準点から下に離れるほど、電解質膜112の面積がより小さくなっており(基準点に対して歪変化量Δεはマイナス)、基準点から上に離れるほど、電解質膜112の面積がより大きくなっていること(基準点に対して歪変化量Δεはプラス)を示している。電解質膜112における温度Tが高く、相対湿度RHが低いほど、電解質膜112の歪変化量Δεの絶対値が大きくなる。
電解質膜112における歪εが算出されると、電解質膜112に発生する応力σを算出できる。予め行なわれた電解質膜112の試験によって得られた応力−繰り返し回数(S−N)曲線と電解質膜112に発生する応力σとに基づき、電解質膜112に発生する応力σnごとに当該応力σnの発生回数を乗じた損傷度Rd1,Rd2,・・・,Rdnを合計して、電解質膜112が壊れるまでの寿命を推定することができる。
本実施形態では、燃料電池100を搭載した車両の試験では、1回の試験サイクルcylは、予め設定した市街地走行の後、燃料電池100の発電を所定の時間停止し、所定の温度で燃料電池100の発電を再開するまでとされている。1回の試験サイクルcylにおける応力σnごとの損傷度Rdnが合計されて、1回の試験サイクルcylにおける電解質膜112の合計の損傷度Rdが算出される。電解質膜112の損傷度Rdに基づいて電解質膜112の寿命を推定することにより、燃料電池100を搭載した車両の走行可能距離を推定することができる。
図5は、燃料電池100の発電時における電解質膜112の電気抵抗値Rと歪εとの関係の一例を示す説明図である。図5(a)には、燃料電池100を搭載した車両が市街地走行を行なった場合における電解質膜112の電気抵抗値Rと歪εとの推移の一部が示されている。図5(b)には、車両が市街地走行の後、燃料電池100の発電を停止し、燃料電池100の発電を再開する場合における電解質膜112の電気抵抗値Rと歪εとの推移が示されている。
図6は、燃料電池100の発電時における電解質膜112への損傷度Rdの関係の一例を示す説明図である。図6(a)には、市街地走行と市街地走行の後に燃料電池100を再始動させた場合とにおける損傷度Rdの関係が示されている。図6(b)には、図6(a)に示す市街地走行と再始動とにおける損傷度Rdへの影響度が示されている。
本実施形態では、2つの時点における歪εの差である歪変化量Δεが3%を超えるか否かを判断基準としている。図5(a)に示す市街地走行における歪εの推移の一部には、歪変化量Δεの3%を超える部分が6箇所存在している。なお、図5(a)には、市街地走行における一部の歪εの推移が示されており、図6(a)に示すように、1回の試験サイクルcylにおける市街地走行において、歪変化量Δεを超える回数は27回であった。また、試験サイクルcylにおける市街地走行は、温度が65℃であり、低負荷で乾燥状態が多く、平均時速が12キロメートルの運転モードである。市街地走行では、1回の試験サイクルcylにおける合計の損傷度Rdに及ぼす影響度が76%であった。なお、本実施形態では、歪変化量Δεの判断基準として3%を用いているが、他の実施形態では、異なる数値であっても良い。
一方、図5(b)および図6(a)に示すように、燃料電池100の再始動における歪εの推移において、歪変化量Δεが3%を超えるのは1回であるが、その1回における歪変化量Δεは、10%を超えている。図6(a)に示すように、試験サイクルcylにおける再始動は、再始動時の温度が65℃であり、高負荷、短時間で、市街地走行終了後に再始動する運転モードである。再始動では、1回の試験サイクルcylにおける合計の損傷度Rdに及ぼす影響度が24%であった。
図5および図6に示すように、試験サイクルcylにおける再始動では、市街地走行と比較して、短時間であり、3%の歪変化量Δεを超えるのは1回であるにもかかわらず、全体の損傷度Rdへの影響度が24%と高い。そのため、燃料電池100の再始動における歪変化量Δεを小さくすることで、電解質膜112に対する損傷度Rdを抑制することができる。
図7は、電解質膜112の歪変化量Δεを判定する条件マップを示す説明図である。図8は、電解質膜112における電気抵抗値Rの推移の一例を示す説明図である。図7には、後述する燃料電池100の制御処理において、燃料電池100に制御を行なうか否かを判定する条件マップが示されている。制御部20は、条件マップを用いて、燃料電池100の発電停止時t0において算出された電解質膜112の電気抵抗値R0および温度T0に基づいて電解質膜112が条件マップにおいて制御必要領域に属する(制御必要状態)か制御不要領域に属する(制御不要状態)かを判定し、後述する制御処理を行なう。
図8には、電解質膜112における再始動時t1の温度T1と相対湿度RH1との条件(以降、「再始動条件」とも呼ぶ)をそれぞれ変化させ、燃料電池100の再始動を行なう場合における電解質膜112の電気抵抗値Rの推移が示されている。図8(a)には、電解質膜112の相対湿度RH1を一定とした場合における温度T1ごとの電気抵抗値Rの推移が示されている。図8(b)には、電解質膜112の温度T1を一定とした場合における相対湿度RH1ごとの電気抵抗値Rの推移が示されている。
図8に示す電気抵抗値Rの推移に基づいて再始動後の歪変化量Δεが算出され、再始動条件を変化させて算出された複数の歪変化量Δεに基づいて図7に示す条件マップが作成される。具体的には、燃料電池100の再始動条件を10℃および10%ごとに変化させて再始動後の電気抵抗値Rが測定される。歪εが電気抵抗値Rおよび温度Tと相関関係にあるため、測定された電気抵抗値Rに基づいて再始動条件ごとに歪変化量Δεが算出される。なお、本実施形態では、再始動条件を10℃および10%ごとに変化させて電気抵抗値Rを測定したが、他の実施形態では、異なる再始動条件で電気抵抗値Rを測定しても良い。
図7に示す条件マップは、再始動条件ごとの歪変化量Δεが温度T1と相対湿度RH1を算出する基である電気抵抗値R1とに基づいてプロットされ、歪変化量Δεが3%となるプロットを結んで判定線Cuを描画することで作成される。条件マップにおける判定線Cuよりも右上方向は、電解質膜112における歪変化量Δεが3%よりも大きく、判定線Cuよりも左下方向は、歪変化量Δεが3%よりも小さくなっている。また、図7に示すように、温度Tが最小温度Tmin以下では、電解質膜112における再始動時t1の相対湿度RH1にあまり関係なく歪変化量Δεが3%以下となるため、判定線Cuにおける温度Tの下限を最小温度Tminに設定している。同様に、電気抵抗値Rが最小抵抗値Rmin以下の場合では、電解質膜112における再始動時t1の温度T1にあまり関係なく歪変化量Δεが3%以下となるため、判定線Cuにおける電気抵抗値Rの下限を最小抵抗値Rminに設定している。なお、本実施形態では、歪変化量Δεを3%として条件マップを作成しているが、他の実施形態では、他の数値であっても良い。また、本実施形態では、最小温度Tminは、歪変化量Δεが3%であると共に相対湿度RHが100%となる場合の温度であり、最小抵抗値Rminは、歪変化量Δεが3%であると共に温度Tが35℃となる場合の電気抵抗値であるが、他の実施形態では、他の数値であっても良い。
A−3.燃料電池の制御処理:
図9は、燃料電池100の制御処理の流れを示す説明図である。図9に示す制御処理では、燃料電池100の発電停止時t0における電解質膜112の電気抵抗値R0および温度T0を算出して、その測定結果が予め設定された条件マップにおいて制御必要状態と判定された場合に、燃料電池100を冷却する処理である。
燃料電池100の発電が停止すると、初めに、制御部20は、発電停止時t0における燃料電池100の電気抵抗値および温度を測定して、電解質膜112の電気抵抗値R0および温度T0を算出する(ステップS310)。
図10は、単位セル105の積層面におけるカソードガスおよびアノードガスを供給する位置関係の一例を示す説明図である。図10には、単位セル105の面方向におけるカソードガスの供給位置(カソードガスin)および排出位置(カソードガスout)とアノードガスの供給位置(アノードガスin)および排出位置(アノードガスout)とが示されている。また、単位セル105の部分領域P1,P2,P3,P4,P5が示されている。燃料電池100の発電時における電解質膜112の電気抵抗値Rの測定結果から、カソードガスを供給する位置に近く、かつ、アノードガスを排出する位置に近い部分領域P5は、他の部分領域P1,P2,P3,P4に比較して乾燥しやすい領域(乾燥領域)となる。これは、カソードガスの供給位置付近ではカソードガスがカソードにおける水蒸気を持ち去る量が多く、アノードガスの排出位置付近では反応ガスの電気化学反応による生成水の量が少ないためである。本実施形態では、燃料電池100における乾燥しやすい部分領域P5における電解質膜112の電気抵抗値Rを積層方向に沿って測定しているが、他の実施形態では、異なる部分領域の電気抵抗値Rを測定しても良い。
次に、制御部20は、算出した電気抵抗値R0および温度T0が条件マップにおける制御必要状態に該当するか否かの判定を行なう(図9のステップS320)。
図11は、電解質膜112が制御必要状態であるか否かを判定する条件マップの概略を示す説明図である。発電停止時t0における電解質膜112の電気抵抗値R0および温度T0を条件マップにプロットした場合に、歪変化量Δεが3%よりも大きい領域、すなわち、図11に示す判定線Cuよりも右上の領域(制御必要領域)に属すると、制御部20は、電解質膜112が制御必要状態であると判定する。図11に示すように、制御部20は、電気抵抗値R0および温度T0が制御必要状態であると判定した場合に(ステップS320:YES)、条件マップに基づいて燃料電池100を冷却して温度Tを下げる目標である目標温度Taを決定する(ステップS330)。制御部20は、電解質膜112の冷却を行なった場合に、冷却後の電気抵抗値Rが電気抵抗値R0から変化しないと仮定して、判定線Cu上の目標温度Taを設定する。なお、本実施形態では、冷却後の電気抵抗値Rが変化しないと仮定して目標温度Taを設定したが、他の実施形態では、電気抵抗値Rの変化も加味して目標温度Taを設定しても良い。
次に、制御部20は、燃料電池100をより冷却するために循環させる冷却水の流量を増加させる(ステップS340)。燃料電池100の発電時に冷却水が流れているため、ステップS340では、制御部20は、発電を停止する前に流れていた冷却水の流量と比較して循環する冷却水の流量を増加させる。
次に、制御部20は、燃料電池100における電解質膜112の温度Tが目標温度Ta以下であるかを判定する(ステップS350)。温度Tが目標温度Ta以下になっていない場合には(ステップS350:NO)、制御部20は、引き続き冷却水の流量を増加させた状態で循環させる。温度Tが目標温度Ta以下になった場合には(ステップS350:YES)、制御部20は、冷却水の循環を停止させて(ステップS360)、燃料電池100の制御処理を終了する。
ステップS320において、電解質膜112が制御不要状態と判定された場合には(ステップS320:NO)、燃料電池100の再始動時t1に歪変化量Δεが3%を超えないので、発電停止後に冷却水を循環させる必要がない。そのため、制御部20は、冷却水の循環を停止させて(ステップS360)、燃料電池100の制御処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態における燃料電池100の制御方法では、燃料電池100の発電が停止した間における電解質膜112の電気抵抗値R0と温度T0とを算出し、電解質膜112において算出される電気抵抗値Rは、電解質膜112に含まれる水分量に相関している。また、電気抵抗値R0と温度T0とが予め設定された条件マップにおいて制御必要状態に該当するか否かが判定され、電解質膜112が制御必要状態であると判定された場合には、制御不要状態になるまで電解質膜112が冷却される。そのため、本実施形態では、燃料電池100の発電停止後に再始動する場合に、燃料電池100の発電停止中に電解質膜112を冷却するので、再始動後に電解質膜112の乾燥を抑制することができ、電解質膜112に対する損傷度Rdを少なくして、燃料電池100の耐久性を向上させることができる。また、本実施形態では、電解質膜112における温度T0および電気抵抗値R0が予め設定された条件マップに基づいて電解質膜112が制御必要状態であるかの判定が行なわれ、制御必要状態である場合には制御不要状態になるまで電解質膜112が冷却される。よって、本実施形態では、電解質膜112の温度や水分量等の物性値に応じて電解質膜112を適切に冷却することができる。また、電解質膜112における電気抵抗値Rおよび温度Tによって、電解質膜112の状態を精度良く検出することができる。
また、本実施形態における100の制御方法では、電解質膜112における電気抵抗値Rは、電解質膜112に含まれる水分量に相関し、電解質膜112の制御が必要である条件は、積層面における電解質膜112の歪変化量Δεが所定値の3%よりも大きくなる場合である。そのため、本実施形態では、電解質膜112の積層面における歪変化量Δεが3%である場合を基準として燃料電池100の制御を行なえるため、燃料電池100を適切に冷却し、燃料電池100の停止後の再始動における電解質膜112への損傷度Rdを抑制することができる。
また、本実施形態における燃料電池100の制御方法では、条件マップの判定線Cuにおける電気抵抗値Rのうち最小抵抗値Rminは、電解質膜112の温度Tが35℃となる場合の電気抵抗値である。また、条件マップの判定線Cuにおける温度Tのうち最小温度Tminは、電解質膜112の相対湿度RHが100%となる場合の温度である。本実施形態では、温度Tが35℃の場合、温度Tの変化による歪変化量Δεの変化が小さい。また、相対湿度RHが100%、すなわち、電解質膜112に液体として含まれる水分量が存在する場合、相対湿度RHの変化による歪変化量Δεの変化が小さい。そのため、温度Tが35℃よりも小さい場合および相対湿度RHが100%の場合には、電気抵抗値Rと歪変化量Δεとの関係を示すデータがなくても、判定線Cuが描画され、より少ないデータで条件マップが簡便に作成される。
また、本実施形態における燃料電池100の制御方法では、燃料電池100の発電停止時t0における電解質膜112の電気抵抗値R0と温度T0とを算出しているため、発電停止から時間が経過した後と比較して、発電停止時t0から早い段階で電解質膜112を冷却することができる。
また、本実施形態における燃料電池100の制御方法では、電解質膜112が制御必要状態であると判定された場合には、条件マップに基づいて決定された目標温度Ta以下になるまで電解質膜112が冷却される。そのため、本実施形態では、電解質膜112が制御必要状態であるかの判定が行なわれ、電解質膜112を目標温度Taまで冷却されるので、電解質膜112の温度や水分量等の物性値に応じて電解質膜112を適切に冷却することができる。
B.第2実施形態:
図12は、第2実施形態における燃料電池100の制御処理の流れを示す説明図である。図12に示す制御処理では、第1実施形態における燃料電池100の発電停止時t0から電解質膜112を冷却する制御処理と異なり、再始動時t1の後、さらに電解質膜112の乾燥を抑制する湿潤制御処理を行なう。なお、第2実施形態では、電解質膜112の乾燥を抑制する制御、または、電解質膜112に含まれる水分量を増やして電解質膜112を湿潤にする制御を湿潤制御と呼ぶ。
初めに、燃料電池100の再始動では、制御部20は、燃料電池100の発電を再開せずに、再始動時t1における燃料電池100の温度を測定して、電解質膜112の温度T1を算出し(ステップS410)、記憶していた電解質膜112の発電停止時t0における電気抵抗値R0および温度T0と条件マップとを参照する(ステップS420)。次に、温度T1が発電停止時t0における目標温度Ta(図11)よりも大きいか否かを判定する(ステップS430)。なお、温度T1は、本発明における開始時温度に相当し、発電停止時t0における電気抵抗値R0と再始動時t1における温度T1とは、本発明の第1の判定工程における判定の基となる乾燥指標値と温度指標値とに相当する。
図13は、電解質膜112が制御必要状態であるか否かを判定する条件マップの概略を示す説明図である。図13に示すように、温度T1が目標温度Taよりも高い場合に(図12のステップS430:NO)、制御部20は、燃料電池100に冷却水を循環させて、燃料電池100を冷却し、燃料電池100の温度T1’を測定する(ステップS440)。
次に、燃料電池100の温度Tが冷却水によって温度T1’まで冷却された場合に、制御部20は、温度T1’が目標温度Taよりも高いか否か、すなわち、燃料電池100が制御必要状態であるか否かを判定する(ステップS450)。温度T1’が目標温度Taよりも高い場合に(ステップS450:NO)、制御部20は、ステップS440からステップS450までにおける温度T1から温度T1’への冷却速度と条件マップとに基づき、電解質膜112の湿潤制御において、目標となる目標温度Tbおよび目標抵抗値Rb(図13)を決定する(ステップS460)。図13に示すように、湿潤制御では、電解質膜112の電気抵抗値Rが低下するため、目標温度Tbは目標温度Taよりも高い温度となり、燃料電池100に冷却制御のみを行なう場合に比べて早期に電解質膜112を制御不要領域に属する(制御不要状態になる)ように制御することができる。
次に、制御部20は、燃料電池100の発電を開始して、電解質膜112の湿潤制御を開始する(ステップS470)。第2実施形態では、電解質膜112のカソード114における乾燥を抑制するために、制御部20は、燃料電池100をアイドル状態や通常運転の前に、燃料電池100を発電しながらカソード114に供給するカソードガスの流量を低下させる。カソード114に供給するカソードガスが少なくなることで、カソードガスがカソード114から持ち出す水分量が少なくなるため、電解質膜112における乾燥を抑制することができる。また、燃料電池100の発電によって、水が生成されるため、電解質膜112を湿潤な状態にすることができる。
次に、制御部20は、温度Tが目標温度Tb以下、かつ、電気抵抗値Rが目標抵抗値Rb以下であるか否かを判定する(ステップS480)。ステップS480において、温度Tが目標温度Tbよりも大きい、または、電気抵抗値Rが目標抵抗値Rbよりも大きい場合には(ステップS480:NO)、制御部20は、引き続き湿潤制御を行なう。ステップS480において、温度Tが目標温度Tb以下、かつ、電気抵抗値Rが目標抵抗値Rb以下である場合に(ステップS480:YES)、制御部20は、燃料電池100の通常運転を開始する(ステップS490)。
ステップS430において、温度T1が目標温度Ta以下の場合(ステップS430:YES)、および、ステップS450において、温度T1’が目標温度Ta以下の場合には(ステップS450:YES)、燃料電池100の再始動時t1に歪変化量Δεが3%を超えないので、冷却水を循環させる必要および湿潤制御を行なう必要がない。そのため、制御部20は、燃料電池100の通常運転を開始し(ステップS490)、燃料電池100の制御処理を終了する。
以上説明したように、第2実施形態における燃料電池100の制御方法では、燃料電池100を再始動すると、再始動時t1における温度T1が測定され、温度T1が電解質膜112の発電停止時t0に決定された目標温度Taよりも大きいか否かが判定される。温度T1が目標温度Taよりも高い場合には、燃料電池100の通常運転を開始する前に冷却水の循環が行なわれて燃料電池100が冷却され、燃料電池100の温度T1’が測定される。温度T1’が目標温度Taよりも高い場合、すなわち、燃料電池100をさらに冷却する必要があると判定された場合、電解質膜112の湿潤制御が行なわれる。そのため、第2実施形態では、燃料電池100の発電停止後に再始動する場合に、電解質膜112を目標温度Taまで冷却できていないと、さらに、湿潤制御を行なう。これによって、再始動後の電解質膜112の乾燥を抑制し、電解質膜112に対する損傷度Rdを少なくして、燃料電池100の耐久性を向上させることができる。また、燃料電池100を早期に制御不要状態にでき、通常運転を迅速に行なえる状態にできる。
また、第2実施形態における燃料電池100の制御方法では、電解質膜112における温度Tおよび電気抵抗値Rが、燃料電池100の冷却速度と条件マップとに基づいて決定された目標温度Tb以下および目標抵抗値Rb以下になるまで、電解質膜112の湿潤制御が行なわれる。そのため、第2実施形態では、燃料電池100の冷却速度を考慮に入れて湿潤制御を行ない、迅速に燃料電池100が制御不要状態になるように目標値を決定するので、効率良く燃料電池100を発電時に損傷度Rdが少ない状態にすることができる。
また、第2実施形態における燃料電池100の制御方法では、湿潤制御において、燃料電池100を発電しながら、電解質膜112の一方の側に配置されたカソード114に供給されるカソードガスの流量を少なくする。そのため、カソードガスがカソード114から持ち出す水分量が少なくなり、電解質膜112における乾燥を抑制することができ、燃料電池100の発電によって水が生成するので、電解質膜112を湿潤な状態にすることができる。
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
C1.変形例1:
上記実施形態では、電解質膜112の乾燥度合いに相関する乾燥指標値として、電解質膜112の電気抵抗値Rが算出されて燃料電池100の制御が行なわれたが、測定される乾燥指標値はこれに限られず種々変形可能である。例えば、電解質膜112における湿度が直接湿度計によって測られることで乾燥指標値が特定されても良い。また、電解質膜112の温度Tに相関する温度指標値として、温度計によって電解質膜112の温度Tが測定されて燃料電池100の制御が行なわれたが、測定される温度指標値はこれに限られず種々変形可能である。例えば、熱伝対によって燃料電池100における冷却水の出口の温度を電気抵抗値として測定して、条件マップを作成して燃料電池100の制御が行なわれても良い。
上記実施形態では、燃料電池100の発電停止時t0における温度T0および電気抵抗値R0を測定して冷却制御を行なったが、燃料電池100の発電が停止している間において測定される温度Tおよび電気抵抗値Rは、これに限られず種々変形可能である。例えば、燃料電池100の発電停止時t0に前後して温度Tおよび電気抵抗値Rが測定されて、発電停止時t0における温度Tおよび電気抵抗値Rが特定されても良いし、発電停止時t0の後に測定された温度Tおよび電気抵抗値Rに基づいて制御必要状態か否かの判定が行なわれても良い。
上記実施形態では、条件マップの判定線Cuにおいて、最小温度Tminを電解質膜112の歪変化量Δεが3%であると共に相対湿度RHが100%となる場合の温度としたが、最小温度Tminはこれに限られず、種々変形可能である。最小温度Tminは、得られた実験結果から相対湿度RH100%以上であり、相対湿度RHが100%以上で電解質膜112に液体として含まれる水分量を水蒸気として換算して加えた場合に相対湿度RHが110%以下である場合の温度が好ましい。
また、条件マップの判定線Cuにおいて、最小抵抗値Rminを電解質膜112の歪変化量Δεが3%であると共に温度Tが35℃となる場合の電気抵抗値としたが、最小抵抗値Rminはこれに限られず、種々変形可能である。最小抵抗値Rminは、得られた実験結果から25℃以上であり、45℃以下である場合の電気抵抗値が好ましい。
上記実施形態では、歪変化量Δεの判断基準として3%を採用しているが、歪変化量Δεの値についてはこれに限られず、種々変形可能である。例えば、燃料電池100を搭載している車両において、再始動時の電解質膜112における温度Tが上昇しやすい場合には、歪変化量Δεを3%よりも小さい2%を設定して判断基準としても良いし、逆の場合においては歪変化量Δεを3%よりも大きい5%等を設定して判断基準としても良い。
C2.変形例2:
上記第2実施形態では、図12のステップS420ないしステップS450において、制御部20は、発電停止時t0における電気抵抗値R0および温度T0に基づいて電解質膜112の湿潤制御を行なっているが、湿潤制御を行なうか否かの基となる判定は発電停止時t0のときに限定されず、種々変形可能である。例えば、発電停止時t0における電気抵抗値R0および温度T0を測定または算出せずに、再始動時t1に測定した電気抵抗値R1および温度T1に基づいて図13に示す条件マップにおける制御必要状態に該当するか否かを判定しても良い。
C3.変形例3:
上記第1実施形態では、制御部20は、燃料電池100の発電停止時t0における電解質膜112の電気抵抗値R0および温度T0を算出し、測定結果と条件マップとに基づいて燃料電池100を冷却する目標温度Taを決定しているが、電解質膜112の電気抵抗値Rおよび温度Tが複数測定されて目標温度Taを決定し直されても良い。例えば、発電停止時t0から一定時間ごとに電解質膜112における電気抵抗値Rおよび温度Tを測定して、最新の測定結果に基づいて目標温度Taを決定し直されても良い。この変形例では、燃料電池100を冷却している間にも、電解質膜112の電気抵抗値Rおよび温度Tを測定して、その都度、目標温度Taを変更するため、燃料電池100の冷却状態に応じて最短で条件マップにおける制御不要状態まで冷却することができる。
また、上記第2実施例では、燃料電池100が冷却水によって温度T1’まで冷却された場合に、制御部20は、温度T1’が再始動時t1における温度T1よりも高いか否かによって燃料電池100の湿潤制御における目標温度Tbおよび目標抵抗値Rbを決定している。しかし、温度T1’と温度T1’が測定された時点における電解質膜112の電気抵抗値Rが算出され、最新の算出結果に基づいて目標温度Tbおよび目標抵抗値Rbが決定し直されても良い。この変形例では、燃料電池100の湿潤制御を行なっている場合にも、電解質膜112の電気抵抗値Rおよび温度Tを測定して、その都度、目標抵抗値Rbおよび目標温度Tbを変更するため、燃料電池100の状態に応じて最短で条件マップにおいて電解質膜112が制御不要状態になるように制御することができる。
C4.変形例4:
上記第2実施形態では、図12のステップS470に示す湿潤制御において、燃料電池100の通常運転前に、供給するカソードガスの流量を低下させているが、電解質膜112における乾燥を抑制する制御は種々変形可能である。例えば、湿潤制御中において、燃料電池100の通常運転を開始する場合に、燃料電池100の発電を行ない、カソード114に供給するカソードガスの圧力を増加させても良い。この変形例では、燃料電池100の発電時に、カソードガスの圧力が高いので、アノードガスとの水を生成する電気化学反応が促進されて、電解質膜112における水分量を増やすことができ、迅速に電解質膜112における乾燥を抑制することができる。
また、湿潤制御において、燃料電池100の発電を行ない、カソード114に供給されるカソードガスとアノード116に供給されるアノードガスとのうち少なくとも一方のガスの温度を低下させても良い。この変形例では、電解質膜112に供給されるガスの温度が低いため、燃料電池100に循環させている冷却水とは別に、供給されるガスの温度によって電解質膜112を冷却することができる。また、反応ガスの温度低下に伴い、飽和蒸気圧が下がり、反応ガスの水分の持ち去り量が減少するため、電解質膜112の乾燥を抑制することができる。
また、湿潤制御中において、燃料電池100の通常運転前に、燃料電池100を発電させて負荷を増やすことで発電量を増加させ、カソード114に供給されるカソードガスとアノード116に供給されるアノードガスとの電気化学反応による水の生成を促進させても良い。この変形例では、電解質膜112において生成される水分量を増やすことができ、迅速に電解質膜112における乾燥を抑制することができる。
また、湿潤制御において、燃料電池100の通常運転前に、燃料電池100を発電させる場合に、アノード116に供給されるアノードガスの圧力を低下させても良い。この変形例では、アノード116の圧力が下がるために、カソード114からアノード116への生成水の移動を抑制することができ、迅速に電解質膜112における乾燥を抑制することができる。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行なうことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10…燃料電池システム
20…制御部
30…カソードガス供給部
40…冷媒循環部
50…アノードガス供給部
60…抵抗値測定部
70…温度測定部
100…燃料電池
105…単位セル
110…MEA
112…電解質膜
114…カソード
116…アノード
122…カソード側拡散層
124…アノード側拡散層
140…セパレータ
R…電解質膜の電気抵抗値
T…電解質膜の温度
ε…電解質膜の歪
ε0…基準歪
Δε…歪変化量
Tmin…最小温度
Rmin…最小抵抗値
RH…電解質膜の相対湿度
t…時間
t0…発電停止時
R0…発電停止時の電気抵抗値
T0…発電停止時の温度
t1…再始動時
T1…再始動時の温度
R1…再始動時の電気抵抗値
P1…部分領域
P2…部分領域
P3…部分領域
P4…部分領域
P5…部分領域
Ta…目標温度
Tb…目標温度
Rb…目標抵抗値
Rd…電解質膜の損傷度
Cu…判定線
cyl…試験サイクル

Claims (17)

  1. 両面に触媒層が形成された電解質膜を含む燃料電池の制御方法であって、
    前記燃料電池の発電が停止している間における前記電解質膜の乾燥度合いに相関する乾燥指標値と前記電解質膜の温度に相関する温度指標値とを特定する工程と、
    前記停止している間における前記乾燥指標値と前記温度指標値とが予め設定された前記乾燥指標値と前記温度指標値との条件に該当するか否かを判定する第1の判定工程と、
    前記第1の判定工程において前記条件に該当すると判定された場合に、前記電解質膜における前記乾燥指標値と前記温度指標値とが前記条件に該当しなくなるまで前記電解質膜を冷却する工程と、を備える、制御方法。
  2. 請求項1に記載の制御方法であって、
    前記乾燥指標値は、電気抵抗値であり、
    前記温度指標値は、温度であり、
    前記条件は、前記電解質膜と前記触媒層とが積層される方向に略垂直な面方向に沿った前記電解質膜における歪変化率が所定値よりも大きい場合である、制御方法。
  3. 請求項2に記載の制御方法であって、
    前記所定値は、3パーセントである、制御方法。
  4. 請求項2または請求項3に記載の制御方法であって、
    前記条件における電気抵抗値のうち最小となる最小抵抗値は、前記電解質膜の温度が摂氏25度から摂氏45度の間のときの電気抵抗値である、制御方法。
  5. 請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の制御方法であって、
    前記条件における温度のうち最小となる最小温度は、前記電解質膜に含まれる水分全てを水蒸気として換算した場合に、前記水蒸気の分圧を飽和水蒸気圧で除した割合が100パーセント以上110%以下であるときの温度である、制御方法。
  6. 請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載の制御方法であって、
    前記冷却する工程は、前記条件に基づいて決定される第1の目標温度以下になるまで前記電解質膜を冷却する工程である、制御方法。
  7. 請求項6に記載の制御方法であって、
    前記特定する工程は、前記発電を開始する場合において、前記開始の時点における前記電解質膜の温度である開始時温度を特定する工程を含み、
    前記第1の判定工程は、前記開始時温度が前記第1の目標温度よりも高いか否かを判定する工程を含み、
    前記冷却する工程は、前記第1の判定工程において前記開始時温度が前記第1の目標温度よりも高いと判定された場合に、前記発電を開始する前に前記電解質膜を冷却する冷却水の流量を増加させる工程を含み、
    前記制御方法は、さらに、
    前記流量を増加させた後に、前記電解質膜における電気抵抗値と温度とを測定する工程と、
    測定した前記電解質膜の電気抵抗値および温度が前記条件に該当するか否かを判定する第2の判定工程と、
    前記第2の判定工程において前記条件に該当すると判定された場合に、前記電解質膜における相対湿度の低下を抑制する工程と、を備える、制御方法。
  8. 請求項7に記載の燃料電池の制御方法であって、
    前記抑制する工程は、前記冷却の冷却速度と前記条件とに基づいて決定される目標抵抗値以下、かつ、第2の目標温度以下になるまで前記相対湿度の低下を抑制する工程である、制御方法。
  9. 請求項8に記載の制御方法であって、
    前記測定する工程は、一定時間ごとに前記電解質膜における電気抵抗値と温度とを測定する工程であり、
    前記抑制する工程は、測定した最新の前記電解質膜における電気抵抗値と温度とに基づいて前記目標抵抗値と前記第2の目標温度とを決定し直す工程を含む、制御方法。
  10. 請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の制御方法であって、
    前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記電解質膜における一方の面であるカソード側の面に供給される酸化剤ガスの流量を少なくする工程である、制御方法。
  11. 請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載の制御方法であって、
    前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記電解質膜における一方の面であるカソード側の面に供給される酸化剤ガスの圧力を増加させる工程である、制御方法。
  12. 請求項7から請求項11までのいずれか一項に記載の制御方法であって、
    前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記電解質膜における一方の面であるカソード側の面に供給される酸化剤ガスの温度と前記電解質膜におけるもう一方の面であるアノード側の面に供給される燃料ガスの温度とのうち少なくとも一方の温度を低下させる工程である、制御方法。
  13. 請求項7から請求項12までのいずれか一項に記載の制御方法であって、
    前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記発電の量を増加させて、前記電解質膜の一方の面であるカソード側の面に供給される酸化剤ガスと前記電解質膜のもう一方の面であるアノード側の面に供給される燃料ガスとの電気化学反応による水の生成を促進させる工程である、制御方法。
  14. 請求項7から請求項13までのいずれか一項に記載の制御方法であって、
    前記抑制する工程は、前記発電を行なう場合に、前記電解質膜における一方の面であるアノード側の面に供給される燃料ガスの圧力を低下させる工程である、制御方法。
  15. 請求項6から請求項14までのいずれか一項に記載の制御方法であって、
    前記特定する工程は、一定時間ごとに前記電解質膜における電気抵抗値と温度とを特定する工程を含み、
    前記冷却する工程は、特定した最新の前記電解質膜における電気抵抗値と温度とに基づいて前記第1の目標温度を決定し直す工程を含む、制御方法。
  16. 請求項1から請求項15までのいずれか一項に記載の制御方法であって、
    前記特定する工程は、前記発電が停止した時点における前記乾燥指標値と前記温度指標値とを特定する工程である、制御方法。
  17. 両面に触媒層が形成された電解質膜を含む燃料電池を有する燃料電池システムであって、
    前記燃料電池の発電が停止している間における前記電解質膜の乾燥度合いに相関する乾燥指標値と前記電解質膜の温度に相関する温度指標値とを特定する特定部と、
    前記停止している間における前記乾燥指標値と前記温度指標値とが予め設定された前記乾燥指標値と前記温度指標値との条件に該当するか否かを判定する判定部と、
    前記判定において前記条件に該当すると判定された場合に、前記電解質膜における前記乾燥指標値と前記温度指標値とが前記条件に該当しなくなるまで前記電解質膜を冷却する冷却部と、を備える、燃料電池システム。
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