JP2014044742A - 防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】 侵入を未然に防ぐために有効な自然監視性を利用し、侵入危険度を定量的に評価することで敷地の防犯性を評価することを目的としている。
【解決手段】 コンピュータを使用した敷地300の防犯性能評価方法であって、コンピュータ上に建物200の周囲の敷地300を含む建物200の3次元モデルを構築し、人の視線に見立てた仮想的な光源を不特定の人の存在が想定される3次元モデルに配置し、仮想的な光源から敷地300上の任意の空間に設定したグリッド212の仮想的な受光点に到達する光量を演算し、光量に基づいて決定した明暗度をグリッド状に表示することを特徴とする。
【選択図】図3
【解決手段】 コンピュータを使用した敷地300の防犯性能評価方法であって、コンピュータ上に建物200の周囲の敷地300を含む建物200の3次元モデルを構築し、人の視線に見立てた仮想的な光源を不特定の人の存在が想定される3次元モデルに配置し、仮想的な光源から敷地300上の任意の空間に設定したグリッド212の仮想的な受光点に到達する光量を演算し、光量に基づいて決定した明暗度をグリッド状に表示することを特徴とする。
【選択図】図3
Description
本発明は、敷地における自然監視性を定量的に評価する防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムに関し、これをもって建物の建設(建築)または改修における防犯環境設計に資するものである。
近年、犯罪の多様化、凶悪化に伴い、住宅における防犯対策へのニーズは年々増加する傾向にあり、ホームセキュリティサービス(機械警備業)の市場は、年平均約4%で増加している(非特許文献1)。また、施錠機能の高度化や防犯あわせガラスの普及等、居住者の防犯意識も高まってきており、防犯性能は、住生活の質の向上を図る上で重要な要素である。そして、国家的な政策として住宅品質確保促進法においても、平成17年9月14日に住宅性能表示制度における10番目の性能分野として、「防犯に関すること」(開口部の侵入防止対策)を追加している。
従来の住宅の侵入対策としては、外構などによって侵入者の敷地内への侵入を抑制したり、開口部に面格子を設けること、サッシガラスに防犯あわせガラスを用いること、不審者の侵入を検知する警備システムを取り付けることが行われている。このような建物部品の防犯性能から建物の防犯性を評価する方法の例として、特許文献1には、これから購入しようとしている建物や、既に保有している建物の設計が防犯上安全なものであるか否かを、チェックリストを使用して評価する方法が開示されている。
しかし、ホームセキュリティサービスや住宅品質確保促進法で定める防犯性能評価では、どちらかといえば、侵入盗に攻撃されたときの異常検知や耐破壊性に重点をおいたものである。したがって、そもそも侵入盗に狙われにくい建物かどうか、すなわち侵入を未然に防ぐことができるか否かの判断をする材料にはならなかった。
侵入を未然に防ぐための有効な手段として、自然監視性の確保がある。すなわち、対象とする住宅の建築的要件だけではなく、近隣住民や建物の周辺を通行する人に見られている状態は、侵入に対する抑止力となる点に着眼した考え方である。侵入犯の犯罪行動調査によれば建物内部へ侵入しようとしてあきらめた理由の6割が近隣の目を意識した場合を挙げている。
例えば特許文献2には、隣家との関係等、周辺環境を考慮して自己の住宅の防犯を診断することを可能にするとともに、隣の住宅との防犯上の連係を考慮して自己の住宅のシミュレーションが提案されている。具体的には、近隣住人とのコミュニケーション度合い(隣家との人間関係)の評価、隣接する住宅との敷地境界における見通し易さの評価(隣家との住環境)、前面道路との敷地境界における外構条件の評価(前面道路の状況)、周辺の人通りや幹線道路との位置関係などの周辺環境の条件を加味してチェックすることにより、住宅の防犯を診断できるとしている。
特許文献2に開示された診断方法は、侵入盗に狙われにくい建物であるかどうかを意識した診断方法である。しかし、どちらかといえば既存住宅を対象にした診断であり、近隣住人との生活相互関係がわからないと診断が難しいという問題がある。
さらに自然監視性を利用したものとして、特許文献3には、不特定多数の人間が通行或いは出入り可能な公共ゾーンから該建物の外壁面を目視した際の外壁面の視認度に応じて侵入危険度を決定し、外壁面に設置された開口部に対して侵入危険度を判定する防犯支援システムが提案されている。特許文献3によれば、侵入危険度の程度に応じて防犯性能が異なる開口部構造や防犯設備等の各種侵入対策手段を選択することができ、防犯性を確保しつつ、開口部に一律の侵入対策を施す必要がないため建築主の負担を軽減できるとしている。
日本防犯設備協会ホームページ(http://www.ssaj.or.jp/hanzai_t/gr03.html)
しかし、上記特許文献1、2に開示された技術は、ともにその診断方法が箇条書きの質問(チェックリスト)に対するYES、NOの二者択一の回答方式によるものである。したがって、各項目ごとに重み付け点数があるものの、あくまでも主観的かつ定性的な評価に過ぎなかった。特に、近隣からの見通し良さの判定は、回答者の主観に頼ったものであり、具体性に欠けるものであった。
特許文献3に開示された技術は、不特定多数の人間が外壁面を目視した際の視認度をプロットし、そのプロットデータの密度に基づいて侵入危険度を判定することから、主観を排除し、客観的な判定をすることができる。しかし、視認度が低いほどに侵入危険度が高いという傾向を示しているに留まり、まだ定性的であるといわざるを得ない。すなわち、1つの建物においてより侵入危険度の高い開口部により防犯性能の高い侵入対策手段を配置するための目安にはなるが、得られた視認度と実際の被害リスクとの因果関係を説明するには、まだ不十分であった。
そこで本発明は、侵入を未然に防ぐために有効な自然監視性を利用し、侵入危険度を定量的に評価することで敷地の防犯性を評価し、建物の建設(建設)または改修における防犯環境設計に資することのできる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかる防犯性能評価方法の代表的な構成は、コンピュータを使用した敷地の防犯性能を評価する防犯性能評価方法であって、コンピュータのモデリング部が、コンピュータ上に建物周囲の敷地を含む建物の3次元モデルを構築し、コンピュータの視線光源配置部が、人の視線に見立てた仮想的な光源を不特定の人の存在が想定される前記3次元モデルにおける前記敷地に接する道路上に所定間隔で配置し、コンピュータの光線追跡部が、前記仮想的な光源から前記敷地上の任意の空間に設定したグリッド状の仮想的な受光点に到達する光量を演算し、コンピュータの出力部が、前記光量に基づいて決定した明暗度をグリッド状に表示することを特徴とする。
コンピュータの視線光源配置部は、前記道路の通行量に応じて配置間隔または光源の強度を設定することが好ましい。
コンピュータの明暗度決定部が、前記演算された光量に対し、所定の閾値である充分視線量以下の光量に基づいて明暗度を決定することが好ましい。
本発明にかかる防犯性能評価システムの代表的な構成は、敷地の防犯性能を評価する防犯性能評価システムであって、コンピュータ上に建物周囲の敷地を含む建物の3次元モデルを構築するモデリング部と、人の視線に見立てた仮想的な光源を不特定の人の存在が想定される前記3次元モデルにおける前記敷地に接する道路上に所定間隔で配置する視線光源配置部と、前記仮想的な光源から前記敷地上の任意の空間に設定したグリッド状の仮想的な受光点に到達する光量を演算する光線追跡部と、前記光量に基づいて決定した明暗度をグリッド状に表示する出力部とを備えたことを特徴とする。
本発明にかかる防犯性能評価プログラムの代表的な構成は、コンピュータを、コンピュータ上に建物周囲の敷地を含む建物の3次元モデルを構築するモデリング部と、人の視線に見立てた仮想的な光源を不特定の人の存在が想定される前記3次元モデルにおける前記敷地に接する道路上に所定間隔で配置する視線光源配置部と、前記仮想的な光源から前記敷地上の任意の空間に設定したグリッド状の仮想的な受光点に到達する光量を演算する光線追跡部と、前記光量に基づいて決定した明暗度をグリッド状に表示する出力部として動作させることを特徴とする。
また、侵入を未然に防ぐために有効な自然監視性を利用し、侵入危険度を定量的に評価することで建物の防犯性を評価し、建物の建設(建設)または改修における防犯環境設計に資することのできる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムを提供することを目的として、上記課題を解決するために、防犯性能評価方法の代表的な構成は、コンピュータを使用した建物の防犯性能を評価する防犯性能評価方法であって、コンピュータ上に建物周囲の敷地を含む建物の3次元モデルを構築し、人の視線に見立てた仮想的な光源を不特定の人の存在が想定される3次元モデルに配置し、仮想的な光源から敷地上の任意の空間に設定したグリッド状の仮想的な受光点に到達する光量を演算し、光量に基づいて決定した明暗度をグリッド状に表示することを特徴とする防犯性能評価方法。
上記構成によれば、通行人の視線を模擬した光源から到達する光線の光量に基づいて明暗度を求め、これを出力することにより、その建物の外部からの自然監視性を直感的に把握することが可能となる。これにより建物の防犯性を評価し、建物の建設または改修における防犯環境設計に資することができる。
ここで、グリッド状とは、敷地を含む建物の3次元モデルを細分化したものをいい、例えば、後述する評価演算面、円柱モデル、立体モデル等を含む概念である。
防犯性能評価方法の他の代表的な構成は、コンピュータを使用した建物の防犯性能を評価する防犯性能評価方法であって、コンピュータ上に少なくとも評価の対象たる対象建物の形状を含む構造情報と、対象建物の周囲の敷地の形状を含む敷地情報と、外構の形状および種別を含む外構情報と、演算対象たる任意の評価演算面と、敷地に接する道路の形状および通行量を含む接道情報とを入力し、構造情報、敷地情報、外構情報、および接道情報から3次元モデルを構築し、3次元モデルにおいて道路上に通行人の視線を模擬した視線光源を配置し、3次元モデルにおいて視線光源から評価演算面に到達する光量を演算し、光量に基づいて評価演算面の明暗度を決定し、決定した明暗度を3次元モデルとともに出力することを特徴とする。
防犯性能評価方法の他の代表的な構成は、コンピュータを使用した建物の防犯性能を評価する防犯性能評価方法であって、コンピュータ上に少なくとも評価の対象たる対象建物の外壁並びに開口部の形状および位置を含む構造情報と、対象建物の周囲の敷地の形状を含む敷地情報と、外構の形状および種別を含む外構情報と、敷地に接する道路の形状および通行量を含む接道情報とを入力し、構造情報、敷地情報、外構情報、および接道情報から3次元モデルを構築し、3次元モデルにおいて道路上に通行人の視線を模擬した視線光源を配置し、3次元モデルにおいて視線光源から少なくとも開口部に到達する光量を演算し、光量に基づいて該開口部の明暗度を決定し、少なくとも開口部の明暗度に基づいて開口部の侵入危険度を判定し、判定した開口部の侵入危険度を出力することを特徴とする。
上記構成によれば、通行人の視線を模擬した光源から到達する光線の光量に基づいて明暗度を求め、この明暗度を用いて侵入危険度を判定することができる。これにより建物の防犯性を評価し、どの程度の侵入危険度の開口部にどの程度の防犯性能を有する建物部品を用いれば良いかを容易に判断することができ、建物の建設または改修における防犯環境設計に資することができる。
防犯性能評価システムの代表的な構成は、建物の防犯性能を評価する防犯性能評価システムであって、評価の対象たる対象建物の形状を含む構造情報、対象建物の周囲の敷地の形状を含む敷地情報、外構の形状および種別を含む外構情報、演算対象たる任意の評価演算面、並びに敷地に接する道路の形状および通行量を含む接道情報が入力される情報入力部と、構造情報、敷地情報、外構情報、および接道情報から3次元モデルを構築するモデリング部と、3次元モデルにおいて道路上に通行人の視線を模擬した視線光源を配置する視線光源配置部と、3次元モデルにおいて視線光源から評価演算面に到達する光量を演算する光線追跡部と、光量に基づいて評価演算面の明暗度を決定する明暗度決定部と、決定した明暗度を3次元モデルとともに表示する出力部とを備えたことを特徴とする。
構造情報には対象建物の少なくとも外壁並びに開口部の形状および位置を含み、評価演算面について決定した明暗度に基づいて開口部の侵入危険度を判定する危険度判定部とを備え、出力部は、判定した開口部の侵入危険度を出力することが好ましい。
上記課題を解決するために、防犯性能評価システムの他の代表的な構成は、建物の防犯性能を評価する防犯性能評価システムであって、評価の対象たる対象建物の少なくとも外壁並びに開口部の形状および位置を含む構造情報、対象建物の周囲の敷地の形状を含む敷地情報、外構の形状および種別を含む外構情報、並びに敷地に接する道路の形状および通行量を含む接道情報が入力される情報入力部と、構造情報、敷地情報、外構情報、および接道情報から3次元モデルを構築するモデリング部と、3次元モデルにおいて道路上に通行人の視線を模擬した視線光源を配置する視線光源配置部と、3次元モデルにおいて視線光源から少なくとも開口部に到達する光量を演算する光線追跡部と、光量に基づいて該開口部の明暗度を決定する明暗度決定部と、少なくとも開口部の明暗度に基づいて開口部の侵入危険度を判定する危険度判定部と、判定した開口部の侵入危険度を出力する出力部とを備えたことを特徴とする。
ここで、視線光源は単数または複数個が設定され、その光源方式は、対象の建物に向けて発せられる光源であれば、特に限定されるものではなく、点光源、線光源、または面光源とすることができる。
上記構成によれば、通行人の視線を模擬した光源から到達する光線の光量に基づいて明暗度を求め、この明暗度を用いて侵入危険度を判定することができる。これにより建物の防犯性を評価し、どの程度の侵入危険度の開口部にどの程度の防犯性能を有する建物部品を用いれば良いかを容易に判断することができ、建物の建設または改修における防犯環境設計に資することができる。
なお、開口部に到達する光量とは、その開口部に到達する人の視線数や見え易さの程度、いわば視線の総和(視線量)と呼ぶことができる概念を物理的な量(光量)に置き換えたものである。光量とは、単位面積あたりを通過する光線の物理量である。すなわち光量は、照度、輝度、光束その他の光に関する単位を適宜用いることができる。明暗度は、その開口部の光量がどの程度の自然監視性があるか(監視度)を、別途設定された防犯上有効な基準となる光量に比較した相対的な割合を使って評価するものである。
当該防犯性能評価システムは、さらに明暗度決定部が決定した開口部の明暗度と侵入危険度とを関連づけて格納した判定基準データベースを備え、危険度判定部は、判定基準データベースを参照して少なくとも開口部の明暗度に基づいて開口部の侵入危険度を判定しても良い。
上記構成によれば、通行人の視線を模擬した光源から到達する光線の光量に基づいて明暗度を求め、この明暗度を用いて判定基準データベースを参照することにより、客観的かつ定量的に侵入危険度を判定することができる。これにより建物の防犯性を定量的に評価し、どの程度の侵入危険度の開口部にどの程度の防犯性能を有する建物部品を用いれば良いかを容易に判断することができ、建物の建設または改修における防犯環境設計に資することができる。
情報入力部には、実際に被害にあった建物の構造情報、敷地情報、外構情報、および接道情報に加えて、被害にあった開口部を特定する被害情報を入力可能であって、当該防犯性能評価システムは、さらに、被害にあった開口部につき、少なくとも明暗度に対する侵入頻度の統計を取ることにより侵入危険度を演算し、判定基準データベースに少なくとも明暗度と侵入危険度とを関連づけて格納する実被害統計部を備えていても良い。
上記構成によれば、実際に被害にあった建物の所定のデータと、本システムのうち明暗度を決定するまでの部分とを用いて、現実に即した判定基準データベースを生成することができる。この判定基準データベースを用いることにより、まだ被害に遭っていない建物およびこれから建設する建物であっても、その侵入危険度を定量的に判定することが可能となる。また、被害情報を追加または更新することにより、判定基準データベースを更新することも容易である。
光線追跡部はさらに外壁に到達する光量を演算し、明暗度決定部は、外壁の光量の分布を離散化して外壁について複数の領域に区分された明暗度を決定し、かつ当該領域と対向する敷地に複数の領域に区分された明暗度を決定し、判定基準データベースには敷地の少なくとも明暗度と侵入危険度を関連付けて格納してあり、危険度判定部は判定基準データベースを参照して敷地の領域ごとの侵入危険度を判定し、出力部は判定した敷地の領域の侵入危険度を出力しても良い。
すなわち、建物周囲の敷地を領域(ゾーン)に区分し、侵入危険度に応じて適切な侵入防止策を図るゾーンディフェンスを実現するものである。建物周囲の敷地は開口部に侵入するための準備作業用スペースとなることから、敷地内の自然監視性を高めることで侵入を防止し、または自然監視性を高められない場所には防犯性の高い設備を配置することができる。そしてこのゾーンディフェンスという方法を用いれば、むやみに防犯設備を設置することなく、適切に且つ効果的に防犯対策を施すことが可能となる。なお離散化とは、連続的な値を不連続な値(段階的な値)に置き換えることをいう。
ここで敷地(地面)は低いところにあるため、通行人の視線を模擬する光源(視線光源)からの光が届きにくく、直接的に照度を用いることが適切でない。しかし上記のように、外壁を明暗度に応じて領域に区分し、当該領域に対向する敷地を区分することにより、敷地に領域(ゾーン)を設定することができる。そして外壁の明暗度を敷地の明暗度に転写し、その明暗度を用いて判定基準データベースを参照することにより、敷地の領域毎の侵入危険度を判定することができる。
また、モデリング部は敷地内かつ開口部と対向する位置に円柱モデルを設置し、光線追跡部は視線光源から円柱モデルに到達する光量を演算し、明暗度決定部は円柱モデルの光量から対向する開口部の明暗度を決定しても良い。
上記構成によれば、開口部の見え易さではなく、開口部から侵入しようとする侵入者の見え易さによって侵入危険度を判断することができる。
またモデリング部は敷地上空間の任意点に立体モデルを配置し、光線追跡部は視線光源から立体モデルに到達する光量を演算し、明暗度決定部は立体モデルの光量から、該立体モデルから垂下される位置の敷地の明暗度を決定しても良い。
上記構成によれば、建物の外壁に依ることなく敷地全体について直接的に侵入危険度を判定することができる。
光線追跡部は、外構の種別に応じて、外構のモデルに透過度を設定しても良い。実際の外構には様々なものがあり、ブロック塀のように内部が全く見えないものから、柵、生け垣、樹木、フェンスなどのようにある程度の視認性があるものもある。このような複雑な形状をした外構については、矩形モデルの外構に透過度を設定することにより、光線追跡演算(レイトレーシング)の負荷を飛躍的に軽減させることができる。
光線追跡部は、外構の形状と、該外構を通過する光線の角度に基づいて視線開口を演算し、該視線開口に基づいて外構のモデルに透過度を設定しても良い。これにより、柵や格子のように見る角度によって視認性に大幅な差のある外構であっても、適切に透過度を考慮して光量を演算することができる。
光線追跡部は視線光源から放射される光に所定の減衰率を設定しても良い。人間が近いものに注意を払い、遠いものの観察力が低下することを鑑みて、視線光源から放射される光に減衰率を適宜設定することにより、より適切に自然監視性を再現し、適切な侵入危険度を評価することが可能となる。
また、光線追跡部は視線光源から放射される光に所定位置または所定距離において段階的に減衰する非線形の減衰率を設定しても良い。上記と同様に光源(視線光源)が通行人を模擬するものであることを考えた場合、人の認知特性の一つとして、ある程度の距離(個人差はあるが、例えば9m程度と言われている)より遠いものに対しては急激に観察力が落ちると言われている。また、フェンスなどのように見通せるものであっても、遮蔽物の向こう側に対しては急速に観察力が低下すると言われている。そこで、外構や敷地内のフェンスの位置で段階的に減衰させ、また光源から所定距離で段階的に減衰させることにより、より適切に自然監視性を再現し、適切な侵入危険度を評価することができる。
視線光源配置部は3次元モデルにおける道路上に視線光源を所定間隔で配置し、通行量に応じて配置間隔または光源の強度を設定しても良い。このように連続的に移動する通行人の視線を離散化することにより、計算負荷を飛躍的に軽減させることができる。さらに、通行量に応じて配置間隔または光源の強度を設定することにより、容易に通行量を反映させることができる。
視線光源配置部は3次元モデルにおける道路の両側の沿道に交互に視線光源を配置しても良い。建物の大きさに対して道路には無視できない幅があり、道路の右肩を歩くか左肩を歩くかによって視線光源からの光量は変動する。そこで上記のように道路の両側の沿道に交互に視線光源を配置することにより、最小限の光源数で効率良く適切に視線を再現することができる。
情報入力部には、屋外照明の位置及び強度を含む照明光源の情報を入力可能であって、光線追跡部は3次元モデルにおいて照明光源から到達する光の照度を演算して照明係数を設定し、明暗度決定部は視線光源による光量に照明光源による照明係数を乗算して求めた補正光量に基づいて明暗度を決定しても良い。
上記のように屋外照明による照度から係数を求め、これを視線光源による光量とかけ合わせることにより、照明光源の減衰に伴って自然監視性も低下するという現実を再現することができ、夜間の自然監視性を評価することができる。
光線追跡部は、視線光源から放射される光に所定位置または所定距離において段階的に減衰する非線形の減衰率を設定し、照明光源から放射される光に距離の2乗に反比例する減衰率を設定しても良い。
上記したように通行人は人間の認知特性によって観察力が非線形に減衰するが、屋外照明たる照明光源の強さは距離の2乗に比例して減衰する。したがって上記のように視線光源と照明光源の特性の違いを考慮することにより、適切に明暗度および侵入危険度を判定することができる。
出力部は、危険度判定部が判定した開口部または敷地の領域の侵入危険度を、建物または敷地の画像とあわせて出力しても良い。侵入危険度を画像とあわせて出力するとき、建物の開口部または敷地の区分された領域の位置に表示したり、当該位置を指し示すように表示したりすることができる。これにより、侵入危険度を直感的かつ視覚的に把握することができる。
明暗度決定部は、光線追跡部が演算した光量に対し、所定の閾値である充分視線量以下の光量に基づいて明暗度を決定しても良い。
防犯性能評価プログラムの代表的な構成は、コンピュータを、少なくとも評価の対象たる対象建物の形状を含む構造情報、対象建物の周囲の敷地の形状を含む敷地情報、外構の形状および種別を含む外構情報、演算対象たる任意の評価演算面、並びに敷地に接する道路の形状および通行量を含む接道情報が入力される情報入力部と、構造情報、敷地情報、外構情報、および接道情報から3次元モデルを構築するモデリング部と、3次元モデルにおいて道路上に通行人の視線を模擬した視線光源を配置する視線光源配置部と、3次元モデルにおいて視線光源から評価演算面に到達する光量を演算する光線追跡部と、光量に基づいて評価演算面の明暗度を決定する明暗度決定部と、決定した明暗度を3次元モデルとともに出力する出力部として動作させることを特徴とする。
防犯性能評価プログラムの他の代表的な構成は、コンピュータを、少なくとも評価の対象たる対象建物の形状および位置を含む構造情報、対象建物の周囲の敷地の形状を含む敷地情報、外構の形状および種別を含む外構情報、並びに敷地に接する道路の形状および通行量を含む接道情報が入力される情報入力部と、構造情報、敷地情報、外構情報、および接道情報から3次元モデルを構築するモデリング部と、3次元モデルにおいて道路上に通行人の視線を模擬した視線光源を配置する視線光源配置部と、3次元モデルにおいて視線光源から少なくとも開口部に到達する光量を演算する光線追跡部と、光量に基づいて該開口部の明暗度を決定する明暗度決定部と、少なくとも開口部の明暗度に基づいて開口部の侵入危険度を判定する危険度判定部と、判定した開口部の侵入危険度を出力する出力部として動作させることを特徴とする。
出力部は、明暗度および3次元モデルを表現する画像を出力するとともに、画像上の任意の位置において当該位置の明暗度の数値の表示または非表示を切り替えることが可能であることが好ましい。数値を表示することにより、直感的な画像表示だけでなく、客観的な数値として明暗度を把握することができる。また数値を表示と非表示に切り替え可能としたことにより、知りたい位置の数値のみを表示させることができる。
上記プログラムはあらかじめコンピュータにインストールしてあっても良いし、記憶媒体に記憶させて配布しても良いし、ネットワークを通じて配布しても良い。
上述した防犯性能評価システムおける技術的思想に対応する構成要素やその説明は、上記防犯性能評価方法および防犯性能評価プログラムにも適用可能である。
なお、防犯性能評価方法および防犯性能評価プログラムにおいても、視線光源は単数または複数個が設定され、その光源方式は、対象の建物に向けて発せられる光源であれば、特に限定されるものではなく、点光源、線光源、または面光源とすることができる。
本発明によれば、侵入を未然に防ぐために有効な自然監視性を利用し、侵入危険度を定量的に評価することで敷地の防犯性を評価することができる。これにより、防犯の専門的な知識がない建築設計者や住人が建物の侵入危険度を定量的に評価することが可能となり、防犯性の高い敷地を容易に実現することができる。
さらに開口部に注がれる視線をプライバシーの観点から制限したいという、自然監視性と対立する住民の要求に対し、どの程度の視認性を防犯上確保すべきなのかの設計目標値を与えることができるため、実際の設計に役立てることができる点で極めて有利である。
[第1実施形態]
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第1実施形態について説明する。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第1実施形態について説明する。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(システム構成)
まず、本実施形態にかかる防犯性能評価方法を実施する防犯性能評価システムについて説明する。以下に説明する防犯性能評価システムにおいて、構成要素たる各部は実際にはコンピュータ上で動作するプログラムとして実現される。プログラムはあらかじめコンピュータにインストールしてあっても良いし、記憶媒体に記憶させて配布しても良いし、ネットワークを通じて配布しても良い。
まず、本実施形態にかかる防犯性能評価方法を実施する防犯性能評価システムについて説明する。以下に説明する防犯性能評価システムにおいて、構成要素たる各部は実際にはコンピュータ上で動作するプログラムとして実現される。プログラムはあらかじめコンピュータにインストールしてあっても良いし、記憶媒体に記憶させて配布しても良いし、ネットワークを通じて配布しても良い。
図1は防犯性能評価システムおよび防犯性能評価プログラムの構成を説明する図、図2は防犯性能評価方法を説明するフローチャートである。以下、構成について説明しながら、適宜フローチャートの該当するステップ番号を提示することにより、構成と方法をあわせて説明する。
図に示す防犯性能評価システム(以下「システム100」という。)は、各種情報を入力される情報入力部102と、3次元モデルを構築するモデリング部104と、視線光源450を配置する視線光源配置部106と、光量を演算する光線追跡部108と、明暗度を決定する明暗度決定部110と、少なくとも開口部204の明暗度と侵入危険度とを関連づけて格納した判定基準データベース112と、侵入危険度を判定する危険度判定部114と、出力部116と、後述する実被害統計部118とを備えている。以下にそれぞれについて順に説明する。
情報入力部102は、外部から防犯性の評価に必要な各種情報が入力される(ステップS102)。なお入力は記憶媒体またはネットワークを通じてデータ(ファイル)を取り込んでも良いし、キーボードなどの入力装置から入力しても良い。各種情報としては、評価の対象たる対象建物200の構造情報、敷地情報、外構情報、接道情報が含まれる。
構造情報とは、建物200の形状及び構造を示す3次元データである。形状及び構造としては外形(サーフェス)があれば良い。少なくとも、外壁202の形状、開口部204の形状、該開口部204の位置データをもつ建物200を評価対象とするが好ましい。また開口部204については、該開口部204の種別(勝手口、窓など)、および形式(引違い、縦辷り、横辷りなど)、高さ(掃き出し窓、腰窓、高窓など)もあわせて入力することにより、後述するように判定精度向上に寄与することができる。
評価の対象たる建物200のデータは必須であるが、隣家が近接している場合には、隣家の建物のデータも入力することが好ましい。隣家の図形情報は、開口部の情報が不要であることから、簡略なものであっても良い。例えば近隣の地図データ(平面図)から、建物の平面輪郭を元に、例えば2階建ての高さに挿引して3次元データとすることができる。
敷地情報とは、対象建物200の周囲の敷地300の形状を示す3次元データである。建物200の建っている部分は必要ではない。敷地情報には、敷地300の外周形状(輪郭の形状)のみならず、道路400からの高さを含む。もっとも、道路400からの高さについては、接道情報において敷地300からの低さ(高さ)として入力しても良い。また敷地情報には、後述するアクセスゾーンと防犯ゾーンの区分も含むことができる。
外構情報とは、外構350の形状の3次元データ、および外構350の種別を含む。主として敷地300の外周に設けられた外構350であり、道路400との境界に設置されたものと隣家との境界に設置されたものの両方を含む。また敷地300内に視界を遮るような木立がある場合には、外構情報に含めることができる。種別としては、塀、柵、生け垣、樹木、フェンスなどが想定される。形状としては、例えば生け垣やフェンスであっても詳細な形状データとはせず、ブロック塀に似た矩形モデルとして入力される。
接道情報は、敷地300に接する道路400の形状の3次元データ、およびその道路400の通行量を含む。道路400の形状としては、幅および傾斜が含まれる。通行量としては、季節、天候、時間帯別の通行量の分布を考慮してあらかじめデータベース化したものを採用することができる。通行量を測定することが困難な場合、その道路400を使用している住宅の数や、その道路400が行き止まりであるか、通り抜けできるかなどの通行量と関係の深い他の特徴を用いることもできる。
また情報入力部102には、被害にあった開口部204を特定する被害情報を入力可能である。上記の構造情報、敷地情報、外構情報、接道情報は、基本的にまだ被害に遭っていない建物200、または建築前の建物200を対象としている。さらに過去の事例として、これらの情報に加えて被害情報を入力することにより、後述するように判定基準データベース112を構築することができる。
モデリング部104は、構造情報、敷地情報、外構情報、および接道情報から3次元モデルを構築する(ステップS104)。すなわち、対象建物200、敷地300、外構350、道路400の3次元データより、これらの3次元モデルを構築(モデリング)する。なお情報入力部102から入力した情報のうち形状データでない情報は、判定精度を高めるために用いることができる。なお、ここでいう3次元モデルとは、物理的な立体模型ではなく、計算上の3次元オブジェクトである。
図3は3次元モデルの例を示す図であって、図3(a)は3次元モデルの斜視図、図3(b)は3次元モデルの平面図である。図3において、建物200(対象建物)は敷地300の中に建設されている。敷地300は不特定の人の存在が想定される道路400に接している。敷地300と道路400の間には、外構350が設置されている。
視線光源配置部106は、3次元モデルにおいて道路400上に通行人の視線を模擬した仮想的な光源である視線光源450を複数配置する(ステップS106)。視線とは人間などの目が向いている方向をいう観念であり、実際には目が光を受け取るものである。しかし本発明では、人間の目を光源に置き換えることにより、視線という観念を光に置き換えて具現化し、視線が届く範囲および強さを物理量として知ろうとするものである。光源を配置するとは、具体例としては、3次元モデルの中に点光源の属性を有する光源オブジェクトを配置することである。なお点光源に代えて面光源等を用いても良い。複数配置するとは、通行人の移動の軌跡を表すように、原則として一定間隔で配置することである。通行人を模擬する光源の配置を考えたとき、最も望ましいのは連続的に配置することである。しかし通行人は必ずしも沿道の建物200を見ながら歩いているわけではないことを考えれば、自然監視性はそもそも確率論であるため、視線光源450は所定間隔で配置すれば充分であり、またこれにより計算負荷を飛躍的に軽減させることができる。配置の一例として、道路400の端から0.5mの位置に、0.5m間隔で配置することができる。視線光源450の地上高さは、一般的な人の視線高さを模擬するため、例えば1.5mに設定する。
また視線光源配置部106は、接道情報として入力された通行量に応じて、配置間隔または光源の強度を設定しても良い。特にこの点において、視線光源450は事前に3次元データとして入力しにくいものであり、視線光源配置部106による配置を必要としている。仮に視線光源450を一定間隔(例えば30cm)で固定強度とするのであれば、接道情報に3次元データとしてあらかじめ設定しておくことも可能である。本実施形態では、通行量に応じて視線光源450の配置間隔または光源の強度を設定することにより、容易に通行量を反映させることができる。なお配置間隔をあまり狭くすると光量が増えるのは良いが計算負荷が重くなり所要時間の増加を招くおそれがある。また配置間隔をあまり広くすると、所要時間が少なくなるのは良いが、まばらになるため視線光源450からの光線が届かない場所が生じてしまい、実際には見える場所であっても視線が届いていないかのような結果を与えてしまうおそれがある。そのため、比較すれば通行量は光源の強度を用いて調節することが好ましい。
図4は道路400上での視線光源450の配置を説明する図である。視線光源450は、図4(a)に示すように道路400の中央に配置しても良いし、図4(b)に示すようにいずれか一方に寄せて配置しても良い。接道情報に歩道の存在があれば、路肩から数十cmの位置に寄せて配置しても良い。
ただし、建物200の大きさに対して道路400には無視できない幅があり、道路400の右肩を歩くか左肩を歩くかによって視線光源450からの光量は変動する。そこで図4(c)に示すように、道路400の両側の沿道に交互に視線光源450を配置しても良い(いわゆる千鳥状に配置する)。これにより、最小限の光源数で効率良く適切に視線を再現することができる。
光線追跡部108は、3次元モデルにおいて複数の視線光源450から少なくとも開口部204に到達する光量(視線光源450から開口部204に照射された光量)を演算する(ステップS108)。実際には、複数の視線光源450から到達する視線(照射される光)を建物200の外壁202全体に対して、重畳的に一度に光線追跡演算(レイトレーシング)する。これにより必然的に、開口部204の光量が演算される。ただし本実施形態では後述するように外壁全体の光量も利用するが、仮に開口部204の光量しか利用しない場合には、開口部204のみについて演算することでも良い。
光線追跡部108は、外構情報として入力された外構350の種別に応じて、外構350のモデルに透過度を設定しても良い。実際の外構350には様々なものがあり、ブロック塀のように内部が全く見えないものから、柵、生け垣、樹木、フェンスなどのようにある程度の視認性があるものもある。このような複雑な形状をした外構350については、矩形モデルの外構350に透過度を設定することにより、光線追跡演算(レイトレーシング)の負荷を飛躍的に軽減させることができる。
図5は外構350に透過度を設定した状態を説明する図である。光の透過を遮る物理的要素が無い条件を透過度100%として、金網フェンスや透明性の高い樹脂板等のように、角度依存性が低く、どの位置からでも奥が見える場合を透過度80%、生垣などのように角度や位置により奥の見え方が異なる場合を透過度50%、そして、石垣やブロック塀などように、奥がほとんど見えない、または見えないものを透過度0%として設定した。
また外構350の種類によっては、角度によって見え方が大きく異なるものも多い。例えば平板を並行に配列したフェンスは、正面に立つと奥側が良く見えるが、斜めの角度から見ると平板が重なり合ってしまって、比較的浅い角度でも、ほとんど奥側が見えなくなってしまう。そこで、外構350として配置した単純形状の矩形モデルの属性として、光の入射角度に応じて透過率が変化する入射角特性を透過度として設定しても良い。
図6は視線としての光(光量)の減衰率を説明する図である。光線追跡部108は視線光源450からの視線を模擬した光線を追跡するが、例えば、図6(a)に示すように、光線の光量を人の認知特性に応じた非線形の減衰率を設定しても良い。
防犯を目的とする自然監視性を考慮するとき、人間はまず社会距離の範囲(パーソナルスペースと呼ばれ、約3mと言われている)は、常時観察していると考えることができる。この距離を常時監視距離と称する。常時監視距離以上離れると、距離や状況に応じて観察力が減ると考えられる。そこで例えば、観察対称の判別力に基づいて分けて考えると、使用工具を判別できる距離(窓をこじ開けるようなバールやドリルなどの工具をもっているかどうか)、顔を判別可能な距離(居住者であるか第三者であるか)を設定することができる。これに距離に応じた減衰を掛け合わせると、図6(a)に示すような非線形の減衰率となる。なお、顔の判別距離以上となると、人の存在は観察できるものの、誰が何をしているかが全くわからないため、自然監視性としては期待できないと考えられるので、その光量は無視することができる。
すなわち図6(a)では、光量を距離によって減衰しつつ、常時監視距離、工具判別距離、顔判別距離ごとに減衰率がことなるように設定している(視線光源450からの所定距離による)。これにより、単なる光線の演算ではなく、光線の光量を用いて視線を適切に再現することができる。
また光線を視線として自然監視性を考慮するとき、フェンスなどのように見通せるものであっても、遮蔽物の向こう側に対しては急速に観察力が低下すると言われている。そこで、遮蔽物ごとに所定の比率で光量を減衰させる減衰率を設定することもできる。具体的な例としては、遮蔽物が2つあったとして、遮蔽物の種類ごとに、遮蔽物Aは50%、遮蔽物Bは80%といった減衰率を掛け合わせることができる。
そこで図6(b)では、図6(a)の減衰曲線に加え、遮蔽物の位置(視線光源450からの距離ではなく、遮蔽物が配置されている所定位置)に応じて、段階的に減衰率を変化させている。このように、光線追跡部108が視線光源450から放射される光に対し、所定距離または所定位置において段階的に減衰する非線形の減衰率を設定することにより、光線の光量を用いて視線を適切に再現することができる。
また図6(c)に示すように、視線光源450からの光には距離による減衰を考えずに、遮蔽物による所定位置、または認識距離を想定した所定距離のみに基づいて減衰させても良い。これは、本発明で取り扱う視線の距離が、隣家を含めて40m程度であることから、距離による減衰を無視することも可能なためである。一方、距離による減衰を考慮しないことで計算負荷を軽減し、処理時間の短縮を図ったり、同じ処理時間でも視線光源450の配置数を増やしたりすることができる。
明暗度決定部110は、開口部204、外壁202、および敷地300の明暗度を、視線光源450から到達する光量(計算上は光の照度)に基づいて決定する(ステップS110)。光量は視線光源450の位置を変えていることから、見え易さに応じて強さが変化する(ひらけている箇所は強くなり、特定角度からしか見えない箇所は弱くなる)。また上述のように視線光源450からの光に減衰をかけていることにより、視線光源450からの距離によっても強さが変化する(道路400に近い箇所が強くなり、奥まった箇所は弱くなる)。したがって外壁202においてはもちろん、開口部204においても場所により光量の強さは異なっている。
具体的には、明暗度決定部110は、光線追跡部108が演算した視線としての光線の光量に基づいて、画像上の黒の比率を電子計算処理により算出する。すなわち、明暗度は、投影される対象物に到達する光量もしくは補正計算された光量の総和を白黒対比の相対的な数値として、100分率で表現した値とすることができる。基本的には、全ての光源から光線が全て到達する場合を「0」とし、まったく届かない場合を「100」としている。ただし、設定する光源の数や強度によっては、接道道路400を正面に構える外壁202などは過度な光量となる場合があり、光線シミュレーションとしては、いわゆるハレーションあるいは白飛びと言った現象になる場合がある。このような場合には、一定以上の光線がある場合を「0」として(オフセット)数値化しても良い。また、この明暗度は光量の相対的な表現であり、白黒に対する0%〜100%の相対関係を逆にする表現としてもそれに応じた対応は容易であり、なんら支障を生じるものではない。
開口部204の明暗度は、開口部204単位で光量を平均することにより(面平均をとることにより)求めることができる。なお安全側に考えれば、開口部204の中で最も光量が少ない場所(暗い場所)の光量を用いて、その開口部204の明暗度とすることもできる。また、実際の侵入の状況を想定し、破壊が予想される部分、例えば錠の周辺の光量を用いて求めても良い。
外壁202の明暗度は、外壁202が広いために、外壁202全体を平均することは適切でない。そこで明暗度決定部110は、外壁202の光量の分布を離散化して、外壁202を複数の領域に区分する。そして各領域単位で離散化された光量をその領域の明暗度と決定する。
次に明暗度決定部110は、建物200の周囲の敷地300を、外壁202に区分された領域と対向する複数の領域(ゾーン)に区分する。そして対向する外壁202の明暗度を、そのゾーンの明暗度と決定する。
ここでゾーンについて説明する。図3(b)の平面図において、道路400は不特定多数の人間が通行可能な公共ゾーンであるとする。敷地300は、アクセスゾーンと防犯ゾーンに区分する。アクセスゾーンとは、敷地300内ではあるが、訪問者の出入りを許容するゾーンである。防犯ゾーンとは、部外者の出入りを防止するようフェンスや門戸によって仕切られたゾーンである。アクセスゾーンと防犯ゾーンをどのように設定するかは恣意的な外構計画であるため、敷地情報に含ませることができる。アクセスゾーンの開口部204には、当然に万全の防犯性能を有する建物部品(例えばシャッター、面格子、合わせガラスなど)を用いる。アクセスゾーンと防犯ゾーンの境界には、門戸などを設置して遮蔽性を主張する。ただし、門戸は視界を遮断しないものであることが望ましい。
そして明暗度決定部110は、上記の防犯ゾーンについて、さらに細分化されたゾーンと明暗度とを決定する。本実施形態では、道路400から見通しのあるプライベートゾーンと、見通しが確保できないケアゾーンとに区分する。
すなわち、建物200の周囲の敷地300を領域(ゾーン)に区分し、侵入危険度に応じて適切な侵入防止策を図るゾーンディフェンスを実現するものである。建物200の周囲の敷地300は開口部204に侵入するための準備作業用スペースとなることから、見通しのあるプライベートゾーンでは、道路400からの「近隣の目」による自然監視性を利用し、侵入者を目立たせるような計画とすることで、犯罪を未然に防止することができる。見通しが確保できないケアゾーンでは、破壊侵入に備えて開口部204の防犯性能を強化し、またフェンスなどを設置して侵入や逃走がしにくい計画とすることで、犯罪を未然に防止することができる。このゾーンディフェンスという方法を用いれば、むやみに防犯設備を設置することなく、適切に且つ効果的に防犯対策を施すことが可能となる。
ここで敷地(地面)300は低いところにあるため、通行人の視線を模擬する光源(視線光源450)からの光が届きにくく、直接的に照度を用いることが適切でない。しかし上記のように、外壁202を明暗度に応じて領域に区分し、当該領域に対向する敷地300を区分することにより、該敷地300に領域(ゾーン)を設定することができる。そして外壁202の明暗度を敷地300の明暗度に転写し、その明暗度を用いて判定基準データベース112を参照することにより、敷地300の領域毎の侵入危険度を判定することができる。
なお、上記の例では2分割であるため、離散化と呼ぶよりは閾値を用いた分割である。しかしゾーンの区分の数は2つに限定するものではなく、さらに複数のゾーンに細分化しても良い。
判定基準データベース112は、少なくとも開口部204の明暗度と侵入危険度とを関連づけて格納している。図7は判定基準データベース112の具体例を示す図である。具体例として図7(a)に示すように、明暗度、侵入危険度、開口部204の種別(勝手口、窓など)、および形式(引違い、縦辷り、横辷りなど)、高さ(掃き出し窓、腰窓、高窓など)を格納している。
侵入危険度は、その開口部204が侵入者から侵入され難いかどうかを段階的に評価するときに用いられる評価点である。例えば、侵入危険度の判定の仕方としては、明暗度に応じて開口部204に点数付けすることが挙げられる。開口部204の明暗度が0%〜20%の場合には1点を付与し、順次21%〜40%の場合には2点、41%〜60%の場合は3点、61%〜80%の場合は4点を付与し、81%〜100%の場合は5点を付与することができる。
上記の格納したデータのうち、開口部204の種別、形式、高さなどは、対象建物200の形状または構造である。したがって、情報入力部102において入力された構造情報に、形状データとあわせて含んでいる。明暗度については、上記の手法によって求めた演算値である。侵入危険度については、後述するように過去の事例から侵入頻度の統計を取ることにより侵入危険度を演算したものである。
さらに判定基準データベース112には、敷地300の少なくとも明暗度と侵入危険度を関連付けて格納している。具体例として図7(b)に示すように、ゾーン種別(アクセスゾーン、防犯ゾーンなど)、明暗度、侵入危険度、道路400からの高さ、敷地300の分類(角地、二方路、三方路、中間画地、路地状敷地など)、隣地の用途(住宅、駐車場、アパートなど)、既設の防犯設備(フェンス、防犯ライトなど)が格納されている。敷地300についての侵入危険度は、敷地300自体に侵入した実績ではなく、その敷地300の領域に対向する開口部204に侵入した事例から侵入頻度の統計を取ることにより演算したものである。
危険度判定部114は、判定基準データベース112を参照して開口部204の侵入危険度を判定する(ステップS114)。最も単純な例としては、明暗度の値のみを用いて、侵入危険度を判断することができる。しかし明暗度が同じであっても、下辺が低い掃き出し窓よりも、侵入しにくい高窓の方が侵入危険度は低い傾向にある。このように開口部204の種別、形式、高さなど複数のパラメータをあわせて判断することにより、侵入危険度の精度を向上させることができる。
なお判定の方法の一つとして、危険度判定部114に各パラメータの全ての組合せを準備しておくことにより、そのいずれか該当するものを選択して侵入危険度を判定することができる。しかし将来に亘って必ずしもいずれかのパターンに当てはまるとは限らないことから、他の方法の一つとして、判定基準データベース112に格納されたデータと比較対象たる開口部204のパラメータとの相関を取り、最も相関値の高いレコードの侵入危険度を採用することができる。
また同様に、危険度判定部114は判定基準データベース112を参照して、敷地300の領域(ゾーン)ごとの侵入危険度を判定することができる。これにより、プライベートゾーンやケアゾーンにどの程度の防犯設備を設ければ、開口部204の侵入危険度を低減できるかを判定することができる。
さらに、開口部204と敷地300の領域を別々に判定するのではなく、開口部204のパラメータとして敷地300の防犯設備を用いても良い。これにより、より包括的に判定を行うことができる。
なお危険度判定部114は、判定基準データベース112を参照する代わりに、演算によって侵入危険度を判定しても良い。例えば、明暗度と侵入危険度との相関を関数式として設定する関数式設定部を備えておき、危険度判定部114は明暗度決定部110により決定した明暗度を関数式設定部から取得した関数式を用いて侵入危険度に変換しても良い。
例えば図7(c)に示すように、判定基準データベース112に、様々な状況や環境に応じたリスク係数を格納しておくことができる。例を挙げれば、その地域が犯罪集中地域であれば侵入危険度が高めであるとして係数を「1.2」とし、接道状況が路地状敷地であれば侵入危険度は低めであるとして係数を「0.7」とする。見通し評価は明暗度から算出することができる。同様に、侵入対策が施されているか、また開口部204の高さや部材の種類によっても係数を定めることができる。これらの要素(パラメータ)は、適宜定めた後に、実際の被害情報と相関を計算することによって適切な係数を決定することができる。そして、総合的な侵入危険度の判定は、例えば次式のようにして求めることができる。
[数1]
侵入危険度(総合判定)=明暗度(昼or夜)×居住環境評価×侵入対策評価×開口部対策評価
侵入危険度(総合判定)=明暗度(昼or夜)×居住環境評価×侵入対策評価×開口部対策評価
出力部116は、判定した開口部204の侵入危険度を出力する(ステップS116)。開口部204の侵入危険度は、最も単純には、開口部204のIDと侵入危険度とをテキストデータやリストプリントとして出力することができる。また出力部116は、危険度判定部114が判定した開口部204または敷地300の領域の侵入危険度を、建物200または敷地300の画像とあわせて出力することができる。
例えば、建物200の外壁202を2次元の3面図、展開図、斜視図などをコンピュータ画面や紙に描画し、あわせて外壁202にある開口部204に侵入危険度を付記しても良い。また建物200をコンピュータの画面上で動的に視線方向を変更できる3次元モデルとして描画し、開口部204の近傍に侵入危険度を付記しても良い。また同様に、判定した敷地300の領域(プライベートゾーン、ケアゾーン)の侵入危険度を出力しても良い。このとき、敷地300のみを平面図で表しても良いし、建物200と共に斜視図や3面図、3次元モデルとあわせて付記することができる。
このとき、網掛けの濃淡、グレースケール、複数の配色を使って、開口部204、外壁202または各ゾーンを、侵入危険度または判定結果の値によって区別できるように表示することができる。そして、この画像表示を例えば図12(c)のように、建物200の外壁202の面、開口部204の面、または敷地300面や該敷地300面からの所定の高さの水平面を区分して表示することができる。特に侵入危険度が基準値を下回っているときは、色を変えたり点滅させたりするなどの強調表示を行うことができる。
上記構成によれば、通行人の視線を模擬した光源から到達する光量(光の照度)に基づいて明暗度を求め、この明暗度を用いて判定基準データベース112を参照することにより、客観的かつ定量的に侵入危険度を判定することができる。これにより防犯の専門的な知識がない建築設計者や住人であっても建物200の防犯性を定量的に評価し、どの程度の侵入危険度の開口部204にどの程度の防犯性能を有する建物部品を用いれば良いかを容易に判断することができ、建物200の建設または改修における防犯環境設計に資することができる。
次に、判定基準データベース112を生成するための構成について説明する。上述したように、情報入力部102には過去の被害事例に基づき、構造情報、敷地情報、外構情報、接道情報とあわせて、被害にあった開口部204を特定する被害情報を入力可能である。
そしてシステム100には、さらに、被害にあった開口部204につき、少なくとも明暗度に対する侵入頻度の統計を取ることにより侵入危険度を演算し、判定基準データベース112に少なくとも明暗度と侵入危険度とを関連づけて格納する実被害統計部118を備えている。防犯性能評価方法としては、各種情報を入力してから明暗度を決定するまでの一連の処理(ステップS102〜S110)を行った後に、判定基準データベース112を参照するのか生成するのかを判断する(ステップS112)。
即ち、図2のフローチャートにおいて、判定基準データベース112を参照する場合は、ステップS112の「NO」の矢印の方向に進み、判定基準データベース112を生成する場合は、前記ステップS112の「YES」の矢印の方向に進む(後述する図10または図13も同じ)。
そして実被害統計部118によって侵入危険度を決定し(ステップS118)、判定基準データベース112に侵入危険度と各パラメータとを関連付けて(レコードのセットとして)格納し(ステップS120)、終了する。
なお、図2のフローチャートは、ステップS118からステップS120を経た後に終了する場合を示しているが、本実施形態はこれに限らず、例えば、ステップS118からステップS120を経た後にステップS114に戻り危険度判定を行い、ステップS116で判定結果を出力する処理経過を辿ることもできる(後述する図10または図13も同じ)。
図8は、実際の被害事例を用いて、実被害統計部118により演算した判定基準データベース112に格納された明暗度と侵入危険度の関係を示す図と、この侵入危険度のデータと被害事例の実被害発生件数との関係を比較して検証したグラフを示す図である。図8(a)は明暗度と侵入危険度の関係の例を示している。図において明暗度は大きいほど暗く、そして明暗度をランク分けすることによって侵入危険度を5段階に設定している。なお、ここでは理解の便宜のために窓の構造など他の要素の考慮は省略している。
図8(b)は、図8(a)の侵入危険度と実被害発生件数との関係をグラフ化したものである。図からわかるように、被害開口部204の侵入危険度は高い値(ここでは「5」)に集中していることがわかった。すなわち、自然監視性の評価において、監視性が低いと判断される建物200の開口部204と実際に空き巣被害にあった開口部204とに相関性が見られ、空き巣被害のリスク判定の指標として利用できることが明らかとなった。
判定基準データベース112を生成する際には、なるべく多くの事例について入力することが好ましい。事例が多いほど統計の精度が向上するからである。また情報入力部102に入力する情報は被害のあった事例だけでなく、被害のなかった事例を含み、理想的には所定範囲の地域の所定期間に存在する全ての建物200の事例を入力することが好ましい。
もっとも、現実的には全ての建物200についての構造情報その他を入力することは限りなく困難である。また、確率統計論からいえば全数検査をする必要性も乏しいため、ある程度の確からしさをもった比率で、被害にあった事例と被害のなかった事例を入力すれば良い。
なお、ある構造や状態において防犯性能が高かったとしても、時期的もしくは相対的なものである。例えば、あらたな侵入の手口が開発された場合や、近隣建物の平均的な防犯性能が向上してきた場合には、いつのまにか防犯性能が低下してしまうおそれもある。そのような場合には、新たな事例を追加して判定基準データベース112を再生成することにより、現実に即した侵入危険度を判定することができる。
上記構成によれば、実際に被害にあった建物200の所定のデータと、システム100のうち明暗度を決定するまでの一連の部分とを用いて、現実に即した判定基準データベース112を生成することができる。この判定基準データベース112を用いることにより、まだ被害に遭っていない建物200およびこれから建設する建物200であっても、その侵入危険度を定量的に判定することが可能となる。また、被害情報を追加または更新することにより、判定基準データベース112を更新することも容易である。
[第2実施形態]
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第2実施形態について説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第2実施形態について説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態は、自然監視性を確保しつつも、建物住人のプライバシー向上を図るものである。上記第1実施形態においては、開口部204の光量を用いて(面平均を取って)その明暗度を求め、侵入危険度を判定した。これに対し本実施形態では、敷地300の明暗度を用いて開口部204の侵入危険度を判定するものである。なお第1実施形態では、敷地300を複数の領域(ゾーン)に区分し、対向する外壁202の明暗度をそのゾーンの明暗度と決定するよう説明した。
図9は第2実施形態にかかる防犯性能評価システムの動作を説明する図、図10は第2実施形態にかかる防犯性能評価方法を説明するフローチャートである。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本実施形態においてモデリング部104は、敷地300内かつ開口部204と対向する位置に、円柱モデル206を設置する(ステップS202)。円柱モデル206は侵入者を模擬するものであって、円柱の軸を鉛直方向に配置して設置する。円柱モデル206の形状データは情報入力部102から入力しても良いが、モデリング部104が開口部204に対して自動的に生成しても良い。また円柱ではなく角柱であっても良いが、視線光源450が道路400に沿って配置されていること、および実際の人間も角柱よりは円柱として近似できることから、円柱モデル206の方が好ましい。
光線追跡部108は、複数の視線光源450から円柱モデル206の表面に到達する光量を演算する(ステップS204)。明暗度決定部110は、円柱モデル206の光量を、対向する開口部204の明暗度と決定する(ステップS206)。
自然監視性を高めるためには道路400や近隣からの見通しが良いことが大切であるが、逆に建物200の居住者からすればプライバシーが失われる傾向になる。ここで敷地300における防犯のための自然監視性を再考すれば、侵入の準備をしようとする人物が見えれば良いのであって、開口部(窓など)204が必ずしも見えている必要はない。そこで上記のように、開口部204に対向して設置した円柱モデル206の光量を開口部204の明暗度とすることにより、開口部204の見え易さではなく、開口部204から侵入しようとする侵入者の見え易さによって侵入危険度を判断することができる。
なお上記構成では、開口部204が直視できることを必要としないだけであって、開口部204が見えないことを担保するものではない。そこでさらに、開口部204の面、あるいは開口部204の透過率を適切に設定して内部の室内にそそがれる光量をも同時に演算し、開口部204または室内の光量が少なく、開口部204の前に立つ侵入者を模した円柱モデル206に注がれる光量が多いものを、プライバシー保護と防犯性が両立できる、優れた設計として推奨することもできる。
[第3実施形態]
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第3実施形態について説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第3実施形態について説明する。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
上記第2実施形態(図9参照)に示した円柱モデル206は、敷地300内(敷地300上)の位置で開口部204を評価するものである。しかし、上記構成の場合、敷地300のゾーンは開口部204の配置に依存し、例えば開口部204の無い外壁202に対向する敷地300にはゾーンを設定しにくい。また建物200の形状に対して敷地300が広い場合や、路地状敷地300のように敷地300端までの距離がある場合など、敷地300内のゾーンを適切に評価できない場合がある。
そこでモデリング部104は敷地300上空間の任意点に立体モデル208を配置し、光線追跡部108は複数の視線光源450から立体モデル208に到達する光量を演算し、明暗度決定部110は立体モデル208の光量から、該立体モデル208から垂下される位置の敷地300の明暗度を決定するように構成しても良い。
図11は第3実施形態にかかる防犯性能評価システムの動作を説明する図である。図11では、敷地300内の中空に平面状の格子を設定し、各格子点に立体モデル208として球体を配置して、各立体モデル208の光量(照度)を算出することにより、その点の明暗度を決定しても良い。任意高さとするのは、地上面では外構350に遮られて視線が届きにくいため、適切な評価を行うことが難しいからである。また任意高さとして具体的には、開口部204のクレセントと同程度の高さ、例えば地表面から1.2m程度に設定することができる。立体モデル208同士の影が重ならないように、立体モデル208の1つずつについて計算を行うことが好ましい。光量をある程度の幅で離散化して数段階の明暗度としても良いし、逆に立体モデル208間の値を線形補完することによってさらになめらかな明暗度を設定しても良い。これにより、建物200の形状(外壁202や開口部204の配置)にかかわらず、敷地300の全体に亘って直接的にゾーンの明暗度を決定することができる。
なお上記説明では各格子点に配置する立体モデル208を球体としているが、例えば円筒形や立方体など、他の形状のモデルでも良い。また、必ずしも1つの水平面内に格子を配置する必要はない。例えば、視線光源450に対して傾斜した平面に格子を設定することにより、多数の立体モデル208を一度に計算することができる。また部分的に異なる高さに立体モデル208を配置することにより、例えばベランダへの侵入路となる雨どいの近傍に立体モデル208を配置することにより、2階の防犯性を評価することができる。また、必ずしも等間隔に配置する必要はなく、より詳しく知りたい部分に多くの立体モデル208を配置しても良い。すなわち、敷地300上空間の任意点に立体モデル208を配置することができる。
[第4実施形態]
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第4実施形態について説明する。
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第4実施形態について説明する。
上記第1及び第2実施形態は、特に断らなかったが、原則として日中を想定して自然監視性を求めるものであった。しかし上記のように本システムにおいては通行人の視線を光源を用いて模擬しているが、いうまでもなく実際の通行人は光を発しているわけではない。そして視線の届く範囲であっても、夜間のように暗ければ見えなくなってしまう。そこで本実施形態は、夜間の自然監視性をも評価する例である。
図12は第4実施形態にかかる防犯性能評価システムの動作を説明する図、図13は第4実施形態にかかる防犯性能評価方法を説明するフローチャートである。上記第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
情報入力部102には、屋外照明の位置及び強度を含む照明光源460の情報を入力可能である。屋外照明とは、街灯や、対象建物200や近隣の家の門灯(不図示)などである。モデリング部104は、入力された情報に基づいて3次元モデルに照明光源460を設置する(ステップS302)。
光線追跡部108は、図12(a)に示すように、第1実施形態と同様に、視線光源450から到達する光量を演算する(ステップS108)。そしてさらに、図12(b)に示すように、照明光源460から到達する光の照度を演算し、これに基づいて照明係数を設定する(ステップS304)。照明光源460による照度は係数化することから、視線光源450による光量(照度)とは別に計算する。係数化の手法としては、離散化して0.8倍/0.5倍/0.3倍といった段階的な比率としても良いし、照度に応じて上限値から0までのリニアな係数としても良い。なお上限値は、最も明るいところであっても昼間よりは視認性が悪いことを想定し、1よりも小さい数(例えば0.8倍)とすることが好ましい。
明暗度決定部110は、光量と照明係数とを乗算して求めた補正光量に基づいて、開口部204の明暗度を決定する(ステップS306)。図12(c)は補正光量の例を示す図であって、図12(a)に示した光量に、図12(b)に示した照度を照明係数として掛け合わせた状態を示している。
すなわち、視線光源450による光量は、複数の視線光源450から到達する光の合計量(足し算)である。また照明光源460による照度も同様に、照明光源460が複数あれば、複数の照明光源460から到達する光の合計量(足し算)である。一方、照明光源460の照度は係数とし、補正光量は光量と照明係数のかけ算であって、視線光源450または照明光源460のいずれか一方が届かない箇所では補正光量は0になる(AND演算)。
このように屋外照明による照度を係数とし、これを視線光源450による光量とかけ合わせることにより、夜間は照明光の減衰に伴って自然監視性も低下するという現実を再現することができ、夜間においても適切に明暗度および侵入危険度を判定することができる。この結果として、昼間には見通しのあるプライベートゾーンだった場所が、夜間は見通しが確保できないケアゾーンとすべき場合もある(図3および図12参照)。この場合、敷地300の防犯設備は、より安全側である夜間のケアゾーンにあわせて行うことが望ましい。
なお光線追跡部108は、視線光源450から放射される光に所定位置または所定距離において段階的に減衰する非線形の減衰率を設定し、照明光源460から放射される光に距離の2乗に反比例する減衰率を設定しても良い。
上記したように通行人は人間の認知特性によって観察力が非線形に減衰するが、屋外照明たる照明光源460は実際にも光であるから、その強さは距離の2乗に比例して減衰する。したがって上記のように視線光源450と照明光源460の特性の違いを考慮することにより、適切に明暗度および侵入危険度を判定することができる。
[第5実施形態]
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第5実施形態について説明する。
本発明にかかる防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムの第5実施形態について説明する。
上記第1実施形態においては建物の外壁202、第2実施形態においては円柱モデル206、第3実施形態は立体モデル208(球体)を用いて、これらの到達する光量を演算するように説明した。これに対し本実施形態は、任意の空間に設定した仮想的な受光点としてのグリッド(グリッドが構成する面。以下、「評価演算面」という。)について光量を演算する例である。また、本実施形態では明暗度の表示までを行い、侵入危険度の判定を行わない例を示す。明暗度の表示だけでも、その建物200の外部からの自然監視性を直感的に把握することができ、防犯性を適切に判断することができる。
ここでグリッドとは、格子状に配置された位置情報の集合であって、グリッドが構成する面とは上記の格子を含む面である。グリッドが構成する面には、平面及び曲面も含まれる。なお、上記第1〜第4実施形態では特に断らなかったが、外壁202や円柱モデル206、立体モデル208においても、実際に演算を行う際にはこれらの表面(サーフェス)にグリッドを設定している。なお3次元モデルにおいてレイトレーシングする際にポリゴンのサーフェスを分割して設定したグリッド(メッシュ)を用いて演算すること自体は一般的な技術であるため、ここでは詳細な説明を割愛する。
なお、建物200の軸組の位置を原点として、建物200の設計の基準単位寸法(モジュール寸法)を用いてグリッドを構成することが好ましい。これにより、敷地300および周辺と建物200の関係が視覚的に分かり易く有効である。
図14は第5実施形態にかかる防犯性能評価システムの動作を説明する図、図15は第5実施形態にかかる防犯性能評価方法を説明するフローチャートである。上記各実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本実施形態において評価演算面210は平面とし、モデリング部104は、敷地300内の任意の位置に評価演算面210を設置する(ステップS402)。評価演算面210は、図14(a)に示すように水平面でも良く、図14(b)に示すように立面でも良い。評価演算面210は所定の間隔でメッシュが切られており、それぞれのメッシュに受光点であるグリッド212が設定されている。グリッド212はメッシュの交点でも良く、メッシュの中央でも良いが、後述するように濃淡や色で塗り分けをする場合にはメッシュの中央にグリッド212を設定することが好ましい。グリッド212の間隔(メッシュの間隔)はシステムにおいて予め設定することができ、またオペレータ(本システムの使用者)が設定を変更できるようにすることが好ましい。特に、建物200の軸組位置を原点として、建物200の設計モジュール寸法によりグリッド212を構成することが好ましい。また評価演算面210の位置や大きさは、オペレータがマウスなどの入力デバイスを操作して指定することができる。例えば評価演算面210を小さな面積にて設定し、グリッド212を細かく設定することにより、特に知りたい箇所(進入経路とおぼしき箇所)を詳細に演算することも可能である。
光線追跡部108は、複数の視線光源450(仮想的な光源)からグリッド212(仮想的な受光点)に到達する光量(通過する光束の数)を演算する(ステップS404)。グリッド212は、図11(第3実施形態)に示した立体モデル208と比較すると、面積や体積を有しない位置の概念である。グリッド212には面が存在しないため、各グリッド212の光量は、グリッド212まで光が到達する視線光源450の数(点から点に直線的に到達できる数)を積算して求めることができる。なお、グリッド212から見える視線光源450の数としても同様に算出することができる。
外構350がグリッド212と視線光源450の間に存在する場合には、上記第1実施形態にて説明したように、減衰率を用いることができる。このとき、視線光源450の数に減衰率をかけて積算することができる。例えば減衰率が50%の視線光源450があるとき、「0.5」を加算する。
また上記第1実施形態においては外構350の種類に応じて透過度を設定するよう説明した。しかし本実施形態においては、外構350の形状に応じて透過度を設定する。図16は外構350の一例として縦桟のフェンスを説明する図であって、図16(a)は縦桟のフェンスの外観図、図16(b)は縦桟のフェンスの平面断面図、図16(c)はパラメータのダイアログの例を示す図である。
図16(a)に示すように外構350が縦桟のフェンス352の場合、縦桟のフェンス352に正対したときは見通しが良いが、斜めから観察しようとした場合には視界が遮られることになる。本実施形態ではこれを当角に反映させて明暗度の演算を行う。まず図16(b)に示すように各種寸法を想定すると、縦桟のフェンス352に正対したときの開口幅Sは、桟352aのピッチPから格子幅Wを引いた値となる。このときの透過率は、S/Pと設定することができる。しかし、それぞれの桟352aに見込みD(奥行き)があるため、縦桟のフェンス352に対して角度θから見通すとき(視線光源450とグリッド212を結ぶ直線と外構350の面とがなす角度)の見かけ上の開口(視線開口C)は、次式で表すことができる。
[数2]
C=S−D×tan(π/2−θ)
C=S−D×tan(π/2−θ)
このときの透過率は、C/Pと設定することができる。すなわち、角度θが大きくなるほど透過率が小さくなり、ある程度の角度になると負値になる(見えないことを意味する)。計算上は、負値は「0」と見なすことができる。
そこで図16(c)に示すように、3次元モデルとして外構350を生成するときに、その属性としてフェンス352の種別と各種寸法をコンピュータ上に入力する。例えば、まずダイアログの下端に表示されている「タイプ」にて縦桟タイプを選択し、それから角度やピッチP、格子幅W、見込みDなどを入力する。これにより、視線光源450とグリッド212を結ぶ直線と外構350との角度に応じて次第に変化する透過率を設定することができる。
また図17は他のフェンス354の例について説明する図であって、図17(a)は横桟のフェンス354とパラメータのダイアログ、図17(b)は格子356のフェンスとパラメータのダイアログをそれぞれ示す図である。
図17(a)に示すような横桟のフェンス354の透過率は、横方向の角度依存はないが、縦方向の角度依存がある。したがって視線光源450と評価演算面210(グリッド212)との高さに差があるときには、透過率が1以下となる。ダイアログ画面では、下端の「タイプ」にて横桟タイプを選択し、(縦方向の)ピッチP、格子幅W、見込みDなどを入力する。図17(b)に示すような格子356の透過率は、横方向および縦方向の角度依存がある。換言すれば、縦桟と横桟をあわせた構成である。そこでダイアログ画面では、下端の「タイプ」にて格子タイプを選択し、縦桟の(横方向の)ピッチPや格子幅W等、横桟の(縦方向の)ピッチPや格子幅W等を入力する。これらのようにして、より現実に近い自然監視性を演算によって再現することが可能となる。
このように、光線追跡部108が、外構350の形状と、外構350を通過する光線の角度に基づいて視線開口Cを演算し、視線開口Cに基づいて外構350のモデルに透過度を設定しても良い。これにより、柵や格子のように見る角度によって視認性に大幅な差のある外構350であっても、適切に透過度を考慮して光量を演算することができる。
明暗度決定部110は、上記のように演算されたグリッド212の光量に基づいて、そのグリッド212の明暗度を決定する(ステップS406)。図18および図19は明暗度決定部110による明暗度の決定を説明する図である。
図18(a)に示すように、明暗度決定部110は、光線追跡部108が演算した光量に対し、所定の閾値である充分視線量以上を切り捨てて、充分視線量以下の光量に基づいて明暗度を決定する。充分視線量とは適宜設定した閾値であって、具体的には実際の建物200を用いて、侵入盗に見立てた人物を配置し、外構350には透過率のわかったフェンス352,354を設置し、フェンス352,354に面する道路400を被験者が歩行しながら、侵入盗に見立てた人物のもつ工具等を判別できるか否かを評価するモデル実験を行い、さらに上記モデル実験と同等のコンピュータ上での3次元モデルを用いた明暗度を演算し、被験者実験において、複数の被験者が侵入盗に見立てた人物のもつ工具等をほぼ100%判別できる実験条件での明暗度を充分視線量として、決定することができる。
本システム100の目的に照らせば、暗い場合すなわち危険度の高い場合について詳細な評価をしたいのであって、ある一定以上の明るい場合は、自然監視量として充分に安全であり、それ以上の明るさに対しては、等価であり、不用な判断を避けるためである。
このように、単純に光量の全範囲を用いるのではなく、暗い側のリスク評価したい一部を用いて明暗度を決定することにより、通行量の多い商業地区にある建物200や見通しの良い野原の一軒家などが特異的に自然監視性が高く安全であるというような判定を回避することができる。
出力部116は、明暗度決定部110が決定した明暗度を建物200とともに出力して表示する(ステップS408)。明暗度は、評価演算面210上に分布として表示し、地図のように等高線表示したり、グレースケールの濃淡や色の変化によって明暗度を表現することができる。
本実施形態において出力部116は、図18(b)に示すように、明から暗へ一律に(リニアに)変化する色調に対し、明暗度の値を常用対数を取ってから割り当てている。これは、対数軸を線形軸になおせばわかるように、暗い側の解像度が高くなることを意味している。被験者実験にて評価したところ、明暗度に比例して色調を変化させた場合よりも、明暗度に常用対数を取ってから割り当てた色調で表現した方が、実際の視認性に近いと評価された。このように、明暗度の物理量に対して常用対数を取った値は、いわば感覚量とも言うことができ、出力部116が出力した画像の直感性を向上させることができる。
図19(a)は侵入被害住宅の計算モデル(例)を示している。このような住宅に対して上記のように明暗度を演算し、図19(b)のようにグリッド状(正方形のメッシュ)に濃淡や色の変化によって明暗度を表示することができる。このとき図19(b)に示すように、本実施形態において出力部116の出力する画像は、画像上の任意の位置をマウスなどのポインティングデバイスにて指定することにより、当該位置の明暗度の数値の表示または非表示を切り替えることができる(図は2カ所の数値を表示させた様子を示している)。このように数値を表示することにより、直感的な画像表示だけでなく、客観的な数値として明暗度を把握することができる。また数値を表示と非表示に切り替え可能としたことにより、知りたい位置の数値のみを表示させることができるため、画像の視認性を阻害するおそれがない。
なお、上記の各実施形態においては、1つの建物200についての防犯性能の評価について説明した。しかし本発明はこれに限定する物ではなく、複数の建物(街区)200の配置についても評価することが可能である。
図20は、複数の建物200に対して本発明を実施した場合の様子を説明する図である。複数の建物200に対して実施する場合であっても、基本的には単一の建物200に対する場合と何ら変わりはない。すなわち図20(a)に示すように、それぞれの建物200について3次元モデルを構築し、道路400上に所定間隔で視線光源450を配置し、任意の評価演算面210を設置して、グリッド212の光量を演算し、各グリッド212の明暗度を決定して、評価演算面210上の明暗度の分布をグリッド状に表示する。
上記のように複数の建物200に対して実施した場合には、単一の建物200に対して実施した場合と比較して、ある建物200が他の建物200の陰になっていないか、また建物200同士の間に自然監視性の低い場所ができていないかを判定することができる。もちろん単一の建物200について計算する際にも隣家の形状は考慮するのであるが、このように複数の建物(街区)200を一括して演算することにより、区画単位で防犯性を評価することができ、また防犯環境設計にも反映させることが可能となるため、社会貢献に寄与することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、住宅などの建物及び敷地における自然監視性を定量的に評価する防犯性能評価方法、防犯性能評価システム、および防犯性能評価プログラムに関し、これをもって建物の建設または改修における防犯環境設計に利用することができる。
100…システム、102…情報入力部、104…モデリング部、106…視線光源配置部、108…光線追跡部、110…明暗度決定部、112…判定基準データベース、114…危険度判定部、116…出力部、118…実被害統計部、200…建物、202…外壁、204…開口部、206…円柱モデル、208…立体モデル、210…評価演算面、212…グリッド、300…敷地、350…外構、352…縦桟のフェンス、352a…桟、354…横桟のフェンス、356 …格子、400…道路、450…視線光源、460…照明光源
Claims (5)
- コンピュータを使用した敷地の防犯性能を評価する防犯性能評価方法であって、
コンピュータのモデリング部が、コンピュータ上に建物周囲の敷地を含む建物の3次元モデルを構築し、
コンピュータの視線光源配置部が、人の視線に見立てた仮想的な光源を不特定の人の存在が想定される前記3次元モデルにおける前記敷地に接する道路上に所定間隔で配置し、
コンピュータの光線追跡部が、前記仮想的な光源から前記敷地上の任意の空間に設定したグリッド状の仮想的な受光点に到達する光量を演算し、
コンピュータの出力部が、前記光量に基づいて決定した明暗度をグリッド状に表示することを特徴とする防犯性能評価方法。 - コンピュータの視線光源配置部は、前記道路の通行量に応じて配置間隔または光源の強度を設定することを特徴とする、請求項1に記載の防犯性能評価方法。
- コンピュータの明暗度決定部が、前記演算された光量に対し、所定の閾値である充分視線量以下の光量に基づいて明暗度を決定することを特徴とする、請求項1または2に記載の防犯性能評価方法。
- 敷地の防犯性能を評価する防犯性能評価システムであって、
コンピュータ上に建物周囲の敷地を含む建物の3次元モデルを構築するモデリング部と、
人の視線に見立てた仮想的な光源を不特定の人の存在が想定される前記3次元モデルにおける前記敷地に接する道路上に所定間隔で配置する視線光源配置部と、
前記仮想的な光源から前記敷地上の任意の空間に設定したグリッド状の仮想的な受光点に到達する光量を演算する光線追跡部と、
前記光量に基づいて決定した明暗度をグリッド状に表示する出力部とを備えたことを特徴とする防犯性能評価システム。 - コンピュータを、
コンピュータ上に建物周囲の敷地を含む建物の3次元モデルを構築するモデリング部と、
人の視線に見立てた仮想的な光源を不特定の人の存在が想定される前記3次元モデルにおける前記敷地に接する道路上に所定間隔で配置する視線光源配置部と、
前記仮想的な光源から前記敷地上の任意の空間に設定したグリッド状の仮想的な受光点に到達する光量を演算する光線追跡部と、
前記光量に基づいて決定した明暗度をグリッド状に表示する出力部として動作させることを特徴とする防犯性能評価プログラム。
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