JP2014044038A - ボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法 - Google Patents

ボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】反応流体計算を用いて炉壁管の硫化腐食度合いを予測することができるようにする。
【解決手段】ステップS13の熱力学平衡計算により、ステップS4の反応流体計算で得ることが可能な化学種のガス濃度と、ステップS4の反応流体計算では得ることができない特定化学種のガス濃度との関係式を求める(ステップS14)。そして、ステップS21で抽出した温度分布およびガス濃度分布と、ステップS14で算出した関係式とを用いて、ステップS4の反応流体計算では得ることができない特定化学種の解析対象領域におけるガス濃度分布を算出する(ステップS22)。
【選択図】図2

Description

本発明は、ボイラ炉壁管の硫化腐食を予測するボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法に関する。
従来、火力ボイラの炉内に強い還元性雰囲気が形成されることで、炉を構成する炉壁管等の腐食・減肉(以下、これらを単に腐食と称する。)の進行速度が増大するという問題がある。
そこで、特許文献1には、ボイラの炉壁管などの腐食と、硫化水素ガスの濃度との関係に基づいて炉壁管の寿命を評価する方法が開示されている。
しかしながら、火力ボイラを様々な燃焼条件で稼働させる事情があることや、燃料である石炭の種別が多様化していることから、硫化水素(HS)ガスのみを評価基準とすることは必ずしも妥当であるとは言えず、腐食の正確な評価が行えないと考えられる。
そこで、特許文献2には、材料の腐食量を酸素ガスの分圧及び硫黄ガスの分圧のみで評価する硫化腐食の評価方法が開示されている。
特開2003−4201号公報 特開2011−39011号公報
ところで、特許文献2に開示されている方法では、H、HO、CO、CO、HSガスの組成(濃度)を実際に測定することで、酸素ガスの分圧及び硫黄ガスの分圧を求めている。そこで、これらのガス濃度を実測ではなく反応流体計算で求めることが考えられる。しかし、計算負荷の都合上、微粉炭の燃焼時に生成される全ての化学種を考慮した反応流体計算には多くの困難が伴う。そこで、多くの場合、計算対象となる化学種を限定して反応流体計算を簡略化した反応モデルが使用される。しかしながら、このような反応モデルには、後に硫化腐食を評価する際に必要となる化学種が組み込まれていないものが多い。
本発明の目的は、反応流体計算を用いて炉壁管の硫化腐食度合いを予測することが可能なボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法を提供することである。
本発明におけるボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法は、微粉炭を燃料とするボイラの炉壁管の温度における平衡定数を用いて算出した擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧を用いて前記炉壁管の硫化腐食度合いを予測するボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法において、前記ボイラ内に前記ボイラの炉壁に沿って設けた解析対象領域において、前記微粉炭の燃焼時に生成される全ての化学種の中から計算対象となる化学種を限定して、反応流体計算を行う反応流体計算ステップと、熱力学平衡計算により、前記反応流体計算で得ることが可能な化学種のガス濃度と、前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧を算出するのに必要であって、前記反応流体計算では得ることができない特定化学種のガス濃度との関係式を求める関係式導出ステップと、前記反応流体計算の結果に基づいて、前記解析対象領域における温度分布、および、前記反応流体計算で得られた化学種の前記解析対象領域におけるガス濃度分布を抽出する抽出ステップと、前記抽出ステップで抽出した温度分布およびガス濃度分布と、前記関係式とを用いて、前記解析対象領域における前記特定化学種のガス濃度分布を算出する算出ステップと、前記抽出ステップで抽出した温度分布およびガス濃度分布と、前記算出ステップで算出した前記特定化学種のガス濃度分布と、前記炉壁管の温度における平衡定数とを用いて、前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧の前記解析対象領域における分布を算出する分圧算出ステップと、前記分圧算出ステップで算出した前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧の分布を用いて、前記解析対象領域における前記炉壁管の硫化腐食度合いの分布を予測する予測ステップと、を有することを特徴とする。
上記の構成によれば、熱力学平衡計算により、反応流体計算で得ることが可能な化学種のガス濃度と、反応流体計算では得ることができない特定化学種のガス濃度との関係式を求めることで、抽出した温度分布およびガス濃度分布と関係式とを用いて、反応流体計算では得ることができない特定化学種の解析対象領域におけるガス濃度分布を算出することができる。これにより、炉壁管の温度における擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧の解析対象領域における分布を算出することができて、解析対象領域における炉壁管の硫化腐食度合いの分布を予測することができる。このように、熱力学平衡計算により求めた関係式を用いて、反応流体計算では得ることができない特定化学種のガス濃度を補間してやることにより、反応流体計算を用いて炉壁管の硫化腐食度合いを予測することができる。
また、本発明におけるボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法において、前記解析対象領域は前記ボイラの炉壁近傍に設けられて、複数のブロックに区切られており、前記抽出ステップは、前記ブロック毎に、温度の平均値、および、前記反応流体計算で得られた化学種のガス濃度の平均値を算出することで、前記ボイラの炉壁近傍における温度分布およびガス濃度分布を抽出し、前記算出ステップは、前記ブロック毎に、前記特定化学種のガス濃度を算出することで、前記ボイラの炉壁近傍における前記特定化学種のガス濃度分布を算出し、前記分圧算出ステップは、前記ブロック毎に、前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧を算出することで、前記ボイラの炉壁近傍における前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧の分布を算出し、前記予測ステップは、前記ブロック毎に、前記炉壁管の硫化腐食度合いを予測することで、前記ボイラの炉壁近傍における前記炉壁管の硫化腐食度合いの分布を予測してよい。上記の構成によれば、解析対象領域を複数のブロックに区切り、ブロック毎に温度およびガス濃度の平均値を算出することで、ボイラの炉壁近傍における温度分布およびガス濃度分布を抽出する。そして、ブロック毎に、特定化学種のガス濃度、擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧を求めて、ブロック毎に、炉壁管の硫化腐食度合いを予測することで、評価を行い易くすることができる。
また、本発明におけるボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法において、前記反応流体計算ステップは、前記反応流体計算の結果が実測データに合致するまで、石炭燃焼に関わるパラメータを変えながら前記反応流体計算を繰り返してよい。上記の構成によれば、反応流体計算の結果が実測データに合致するまで、石炭燃焼に関わるパラメータを変えながら反応流体計算を繰り返すことで、実際のボイラでの燃焼に沿った計算結果を得ることができる。これにより、炉壁管の硫化腐食度合いを高精度で予測することができる。
本発明のボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法によると、熱力学平衡計算により求めた関係式を用いて、反応流体計算では得ることができない特定化学種のガス濃度を補間してやることにより、反応流体計算を用いて炉壁管の硫化腐食度合いを予測することができる。
ボイラの模式図である。 ボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法を示すフローチャートである。 ボイラの透過斜視図である。 COのガス濃度とHのガス濃度との関係式を示す図である。 COのガス濃度とHSのガス濃度との関係式を示す図である。 擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧と、腐食量との関係を示す図である。 腐食判定結果をマッピングした図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
(ボイラの構成)
本実施形態によるボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法(硫化腐食予測方法)は、ボイラ1に対して行われる。ボイラ1は、図1に示すように、粉砕機5から供給された微粉炭を、バーナ3等で燃焼させて熱を発生させる火炉2と、火炉2の上方から下流にわたって配置され、内部に燃焼ガスを流動させて熱交換を行う伝熱管群6と、を備えており、ボイラ1で発生した燃焼ガスは煙突から排出されるようになっている。また、伝熱管群6は、火炉2の上方に所定の間隔で並列配置された二次過熱器、三次過熱器、最終過熱器、二次再熱器を備える上部伝熱部と、火炉2の後部に配置された一次過熱器、一次再熱器、節炭器を備える後部伝熱部と、を有している。
本実施形態において、火炉2の下部には、複数のバーナ3が上下3段に分かれて接続されている。また、火炉2の上部であってバーナ3の上方には、火炉2内に二段燃焼用空気を供給する複数の二段燃焼用空気ポート4が、上下2段に分かれて接続されている。なお、図1においては、火炉2の図中左側の側壁に接続されたバーナ3および二段燃焼用空気ポート4のみを図示しているが、火炉2の図中正面の側壁や図中背面の側壁、図中右側の側壁にもバーナ3および二段燃焼用空気ポート4が複数接続されている。また、バーナ3や二段燃焼用空気ポート4の配置は、図示されたものに限定されない。火炉2内において、バーナ3から噴射される微粉炭と燃焼用空気とは混合されて燃焼され、さらに、二段燃焼用空気ポート4から吹き出される二段燃焼用空気によって二段燃焼が行われる。このようにして発生した高温の燃焼ガスは、火炉2から伝熱管群6へ導かれて、熱交換されることとなる。
火炉2の内壁面には、垂直方向を長手方向とした多数の炉壁管(図示せず)が、内壁面に沿って水平方向に並んで配置されている。各炉壁管内では蒸気が循環されており、火炉2内での燃焼による熱で各炉壁管内の蒸気圧が高められるように構成されている。
(硫化腐食予測方法)
次に、本実施形態の硫化腐食予測方法について、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。本実施形態の硫化腐食予測方法は、微粉炭を燃料とするボイラ1の炉壁管の温度における平衡定数を用いて算出した擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧を用いて炉壁管の硫化腐食度合いを予測するものであり、石炭燃焼モデルを組み込んだ反応流体計算を行うステップと、熱力学平衡計算による燃焼排ガス組成計算を行うステップと、温度分布およびガス濃度分布を抽出・算出するステップと、硫化腐食環境評価を行うステップと、を有している。
(石炭燃焼モデルを組み込んだ反応流体計算)
石炭燃焼モデルを組み込んだ反応流体計算を行うステップ(以下、反応流体計算ステップという。)は、微粉炭の燃焼時に生成される全ての化学種の中から計算対象となる化学種を限定して反応流体計算を行うステップである。
微粉炭燃焼を数値解析する場合、固気二相流として連続相(流体)と分散相(微粉炭粒子)とに分けて考え、各支配方程式とともにこれらの相互作用も解く、という方法が用いられることが多い。連続相の支配方程式は、一般に、非圧縮・粘性流体として、連続の式、運動量保存式、エネルギー保存式、および、化学種保存式から構成される。また、分散相の支配方程式は、一般に、運動方程式、エネルギー保存式、および、化学種保存式から構成される。
また、石炭燃焼モデルとして、揮発分が放出され、それが気体燃焼しながら固定炭素分が表面反応する、というモデルが広く使用される。揮発分の放出速度や固体炭素分の反応速度にはアレニウス型の反応速度式やその改良式が用いられることが多い。下記に一例を示す。
(A)揮発分の放出速度
ここで、V:揮発量、k:反応速度定数、A:頻度因子、T:粒子温度、R:気体定数、E:活性化エネルギー、V:急速揮発分量、Q:急速昇温時の揮発化係数、VIA:工業分析での揮発分量、である。
(B)固定炭素分の反応速度
ここで、C:拡散速度、c:拡散速度係数、T:粒子温度、T:流体温度、d:粒子径、C:表面反応速度、c:頻度因子、E:活性化エネルギー、R:気体定数、C:固定炭素量、A:粒子表面積、po2:酸素分圧、である。
しかし、計算負荷の都合上、微粉炭の燃焼時に生成される全ての化学種を考慮した反応流体計算には多くの困難が伴う。そこで、計算対象となる化学種を限定し、反応流体計算を簡略化した反応モデルが多用される。以下に、本実施形態で使用する反応モデルを示す。
+nO→αCO+βHO+δSO+εN・・・(7)
C+1/2O→CO・・・(8)
CO+1/2O→CO・・・(9)
ここで、式(7)の左辺第1項は、元素分析・急速揮発分量から決定される揮発化成分を模擬した化学種である。
ここから本計算の具体的な手順を示す。まず、この計算で必要となる情報は下記の4つである。
(a)ボイラ幾何情報(ボイラ1の形状、バーナ3の位置、二段燃焼用空気ポート4の位置など)、
(b)燃焼空気条件(全空気比、各二段燃焼用空気ポート4での燃焼空気流量・温度・組成)、
(c)石炭性状(工業分析[水分、灰分、揮発分・固定炭素分]、元素分析[C、H、N、O、S])、
(d)石炭供給量(各バーナ3からの石炭供給量)。
まず、ボイラ1の透過斜視図である図3に示すように、ボイラ幾何情報をもとに、ボイラ1の内部にボイラ1の炉壁に沿って解析対象領域11を設ける(ステップS1、以下、単にS1という。他も同じ)。ここで、解析対象領域11をボイラ1の炉壁面上に設けるよりも、解析対象領域11をボイラ1の炉壁近傍に設けた方が、計算結果の精度が良くなる。そこで、本実施形態においては、解析対象領域11をボイラ1の炉壁近傍に設けている。なお、ボイラ1の炉壁には、バーナ3が接続されるバーナ接続部3a、および、二段燃焼用空気ポート4が接続される二段燃焼用空気ポート接続部4aがそれぞれ設けられている。
そして、バーナ3および二段燃焼用空気ポート4毎に燃焼条件(石炭供給量、燃焼空気流量・温度・組成)、および、その他の境界条件を設定する(S2)。次に、石炭燃焼に関わるパラメータ(固定炭素の反応速度定数、急速揮発分量など)を設定する(S3)。
その後、解析対象領域11において、設定した燃焼条件、境界条件、石炭燃焼に関わるパラメータを用いて、反応流体計算を実施する(S4)。これにより、O、CO、HO、SO、N、COのガス濃度および温度が算出される。この計算結果をボイラ1の実測データ(火炉出口での未燃率や火炉内ガス・温度実測結果など)と比較する(S5)。そして、計算結果がボイラ1の実測データに合致するか否かを判定する(S6)。
計算結果がボイラ1の実測データに合致しないと判定した場合には(S6,NO)、ステップS3に戻って石炭燃焼に関わるパラメータを設定し直す。即ち、反応流体計算の結果が実測データに合致するまで、石炭燃焼に関わるパラメータを変えながら反応流体計算を繰り返す。これにより、実際のボイラ1での燃焼に沿った計算結果を得ることができる。一方、計算結果がボイラ1の実測データに合致すると判定した場合には(S6,YES)、ステップS21に進む。
(熱力学平衡計算による燃焼排ガス組成計算)
熱力学平衡計算による燃焼排ガス組成計算を行うステップ(以下、燃焼排ガス組成計算ステップという。)は、熱力学平衡計算により、上記の反応流体計算ステップで得ることが可能な化学種のガス濃度と、後述する硫化腐食環境評価ステップで必要であって、上記の反応流体計算ステップでは得ることができない特定化学種のガス濃度との関係式を求めるステップ(関係式導出ステップ)であり、反応流体計算ステップと並行して行われる。
上述したように、反応流体計算ステップにおいては、計算対象となる化学種を限定して反応計算を簡略化した反応モデルが多用される。しかしながら、このような反応モデルには、後述する硫化腐食環境評価ステップで必要となる特定化学種が組み込まれていないものが多い。そういった場合には、ステップS4で得られた反応流体計算結果に対して、特定化学種のガス濃度を補間してやる必要がある。本実施形態においては、硫化腐食環境評価ステップで必要となるHのガス濃度、および、HSのガス濃度を補間してやる必要がある。
そこで、熱力学平衡計算により燃焼排ガス組成を計算することで、本実施形態の反応流体計算で得ることが可能な化学種のガス濃度と、硫化腐食環境評価ステップで必要となるが、本実施形態の反応流体計算では得ることができない特定化学種のガス濃度との関係式を導出する。具体的には、本実施形態の反応流体計算で得ることが可能なCOのガス濃度と、本実施形態の反応流体計算では得ることができないHのガス濃度、および、HSのガス濃度との関係式を導出する。ここで、熱力学平衡計算とは、石炭性状と石炭の燃焼条件とに基づいて、ギブズ自由エネルギーが最小化される平衡組成を最適化手法により算出する手法である。
まず、石炭性状(元素分析)から理論空気量を算出する(S11)。そして、空気比(理論空気量に対する実際空気量の割合)をパラメータとして燃焼条件を設定する(S12)。次に、設定した燃焼条件において熱力学平衡計算を実施し、各温度でのガス組成を抽出する(S13)。
次に、パラメータの数を増やして上記の計算を実行し、本実施形態の反応流体計算で得ることが可能な化学種(CO)のガス濃度と、硫化腐食環境評価ステップで必要となる特定化学種(H、HS)のガス濃度との関係式を求める(S14)。COのガス濃度とHのガス濃度との関係式を温度別に整理したものを図4に、COのガス濃度とHSのガス濃度との関係式を温度別に整理したものを図5に、それぞれ示す。
(温度分布およびガス濃度分布の抽出・算出)
温度分布およびガス濃度分布を抽出・算出するステップ(以下、抽出・算出ステップという。)は、反応流体計算ステップでの結果に基づいて、解析対象領域11における温度分布、および、反応流体計算で得られた化学種の解析対象領域11におけるガス濃度分布を抽出するステップ(抽出ステップ)と、抽出した温度分布およびガス濃度分布と、燃焼排ガス組成計算ステップで求めた関係式とを用いて、解析対象領域11における特定化学種のガス濃度分布を算出するステップ(算出ステップ)と、を有している。
ここで、後述の硫化腐食環境評価ステップを考慮した場合、解析対象領域11をある程度の広さのブロックに区切って、ブロック毎に平均値を算出すると評価しやすくなる。そこで、本実施形態では、図3に示すように、解析対象領域11をおよそ1m角のブロック11aに区切って、ブロック11a毎に平均値を算出することで、解析対象領域11における温度分布およびガス濃度分布を抽出している。
図2のステップS6において、反応流体計算の結果がボイラ1の実測データに合致すると判定した場合には(S6,YES)、反応流体計算の結果に基づいて、解析対象領域11における温度分布、および、反応流体計算で得られた化学種の解析対象領域11におけるガス濃度分布を抽出する(S21)。具体的には、ブロック11a毎に、温度の平均値、および、反応流体計算で得られた化学種のガス濃度の平均値を算出することで、ボイラ1の炉壁近傍における温度分布およびガス濃度分布を抽出する。
次に、ステップS21で抽出した温度分布およびガス濃度分布と、ステップS14で求めた関係式とを用いて、解析対象領域11における特定化学種のガス濃度分布を算出する(S22)。具体的には、ブロック11a毎に、特定化学種のガス濃度を算出することで、ボイラ1の炉壁近傍における特定化学種のガス濃度分布を算出する。より具体的には、図4に示すCOのガス濃度とHのガス濃度との関係式と、ステップS21で抽出した温度分布およびCOのガス濃度分布とを用いて、ボイラ1の炉壁近傍におけるHのガス濃度分布を算出する。また、図5に示すCOのガス濃度とHSのガス濃度との関係式と、ステップS21で抽出した温度分布およびCOのガス濃度分布とを用いて、ボイラ1の炉壁近傍におけるHSのガス濃度分布を算出する。このようにして、反応流体計算では得ることができない特定化学種の解析対象領域11におけるガス濃度分布が補間されることとなる。その後、ステップS31に進む。
(硫化腐食環境評価)
硫化腐食環境評価を行うステップ(以下、硫化腐食環境評価ステップという。)は、抽出・算出ステップで抽出した温度分布およびガス濃度分布と、抽出・算出ステップで算出した特定化学種のガス濃度分布と、炉壁管の温度における平衡定数とを用いて、擬似平衡酸素分圧(PO2)および前記擬似平衡硫黄分圧(PS2)の解析対象領域11における分布を算出するステップ(分圧算出ステップ)と、算出した擬似平衡酸素分圧(PO2)および擬似平衡硫黄分圧(PS2)の分布を用いて、解析対象領域11における炉壁管の硫化腐食度合いの分布を予測するステップ(予測ステップ)と、を有している。
硫化腐食は燃焼ガス成分と炉壁管の材料との相互作用であるため、燃焼ガスがボイラ1の炉壁管に接触した雰囲気において評価を実施する必要がある。その評価指標として、炉壁管の温度における平衡定数を用いて擬似平衡酸素分圧(PO2)および擬似平衡硫黄分圧(PS2)を算出する。
+1/2O→HO・・・(10)
+1/2S→HS・・・(11)
擬似平衡酸素分圧(PO2)および擬似平衡硫黄分圧(PS2)と、腐食量との関係を図6に示す。ここで、擬似平衡酸素分圧(PO2)および擬似平衡硫黄分圧(PS2)に対して腐食量が変化しない領域を第1領域、腐食量が変化する領域を第2領域、これらの境界領域を第3領域とする。言い換えれば、第1領域は硫化腐食の可能性が小さい領域であり、第2領域は硫化腐食が発生する領域であり、第3領域は硫化腐食の可能性がある領域である。
図2のステップS21で抽出した化学種のガス濃度分布および温度分布と、ステップS22で算出した特定化学種のガス濃度分布と、炉壁管の温度における平衡定数とを用いて、擬似平衡酸素分圧(PO2)および擬似平衡硫黄分圧(PO2)の解析対象領域11における分布を算出する(S31)。具体的には、ブロック11a毎に、擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧を算出することで、ボイラ1の炉壁近傍における擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧の分布を算出する。
そして、算出した擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧の分布を用いて、解析対象領域11における炉壁管の硫化腐食度合いの分布を予測する(S32)。具体的には、ブロック11a毎に、炉壁管の硫化腐食度合いを予測することで、ボイラ1の炉壁近傍における炉壁管の硫化腐食度合いの分布を予測する。より具体的には、算出した擬似平衡酸素分圧(PO2)および擬似平衡硫黄分圧(PS2)の分布と、図6に示す関係図とを用いて、各ブロック11aが第1領域から第3領域のいずれに該当するかを判定する。その後、腐食判定結果をマッピングする(S33)。その結果を図7に示す。なお、バーナ接続部3aまたは二段燃焼用空気ポート接続部4a(図3参照)を含むブロック11aにおいては、腐食判定を行っていない。
腐食判定結果のマッピングにより、ブロック11a単位で、硫化腐食が発生する領域と、硫化腐食の可能性がある領域と、硫化腐食の可能性が低い領域とが、解析対象領域11にどのように分布しているのかが明らかとなる。この結果を踏まえて、硫化腐食が発生する領域に溶射を施すことで、硫化腐食の発生を抑制することができる。
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る硫化腐食予測方法によると、熱力学平衡計算により、反応流体計算で得ることが可能な化学種のガス濃度と、反応流体計算では得ることができない特定化学種のガス濃度との関係式を求めることで、抽出した温度分布およびガス濃度分布と関係式とを用いて、反応流体計算では得ることができない特定化学種の解析対象領域11におけるガス濃度分布を算出することができる。これにより、炉壁管の温度における擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧の解析対象領域11における分布を算出することができて、解析対象領域11における炉壁管の硫化腐食度合いの分布を予測することができる。このように、熱力学平衡計算により求めた関係式を用いて、反応流体計算では得ることができない特定化学種のガス濃度を補間してやることにより、反応流体計算を用いて炉壁管の硫化腐食度合いを予測することができる。
また、解析対象領域11を複数のブロック11aに区切り、ブロック11a毎に温度およびガス濃度の平均値を算出することで、ボイラ1の炉壁近傍における温度分布およびガス濃度分布を抽出する。そして、ブロック11a毎に、特定化学種のガス濃度、擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧を求めて、ブロック11a毎に、炉壁管の硫化腐食度合いを予測することで、評価を行い易くすることができる。
また、反応流体計算の結果が実測データに合致するまで、石炭燃焼に関わるパラメータを変えながら反応流体計算を繰り返すことで、実際のボイラ1での燃焼に沿った計算結果を得ることができる。これにより、炉壁管の硫化腐食度合いを高精度で予測することができる。
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
1 ボイラ
2 火炉
3 バーナ
4 二段燃焼用空気ポート
5 粉砕機
6 伝熱管群
11 解析対象領域
11a ブロック

Claims (3)

  1. 微粉炭を燃料とするボイラの炉壁管の温度における平衡定数を用いて算出した擬似平衡酸素分圧および擬似平衡硫黄分圧を用いて前記炉壁管の硫化腐食度合いを予測するボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法において、
    前記ボイラ内に前記ボイラの炉壁に沿って設けた解析対象領域において、前記微粉炭の燃焼時に生成される全ての化学種の中から計算対象となる化学種を限定して、反応流体計算を行う反応流体計算ステップと、
    熱力学平衡計算により、前記反応流体計算で得ることが可能な化学種のガス濃度と、前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧を算出するのに必要であって、前記反応流体計算では得ることができない特定化学種のガス濃度との関係式を求める関係式導出ステップと、
    前記反応流体計算の結果に基づいて、前記解析対象領域における温度分布、および、前記反応流体計算で得られた化学種の前記解析対象領域におけるガス濃度分布を抽出する抽出ステップと、
    前記抽出ステップで抽出した温度分布およびガス濃度分布と、前記関係式とを用いて、前記解析対象領域における前記特定化学種のガス濃度分布を算出する算出ステップと、
    前記抽出ステップで抽出した温度分布およびガス濃度分布と、前記算出ステップで算出した前記特定化学種のガス濃度分布と、前記炉壁管の温度における平衡定数とを用いて、前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧の前記解析対象領域における分布を算出する分圧算出ステップと、
    前記分圧算出ステップで算出した前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧の分布を用いて、前記解析対象領域における前記炉壁管の硫化腐食度合いの分布を予測する予測ステップと、
    を有することを特徴とするボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法。
  2. 前記解析対象領域は前記ボイラの炉壁近傍に設けられて、複数のブロックに区切られており、
    前記抽出ステップは、前記ブロック毎に、温度の平均値、および、前記反応流体計算で得られた化学種のガス濃度の平均値を算出することで、前記ボイラの炉壁近傍における温度分布およびガス濃度分布を抽出し、
    前記算出ステップは、前記ブロック毎に、前記特定化学種のガス濃度を算出することで、前記ボイラの炉壁近傍における前記特定化学種のガス濃度分布を算出し、
    前記分圧算出ステップは、前記ブロック毎に、前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧を算出することで、前記ボイラの炉壁近傍における前記擬似平衡酸素分圧および前記擬似平衡硫黄分圧の分布を算出し、
    前記予測ステップは、前記ブロック毎に、前記炉壁管の硫化腐食度合いを予測することで、前記ボイラの炉壁近傍における前記炉壁管の硫化腐食度合いの分布を予測することを特徴とする請求項1に記載のボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法。
  3. 前記反応流体計算ステップは、前記反応流体計算の結果が実測データに合致するまで、石炭燃焼に関わるパラメータを変えながら前記反応流体計算を繰り返すことを特徴とする請求項1又は2に記載のボイラ炉壁管の硫化腐食予測方法。
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