以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<冷蔵庫本体1の全体構成>
図1は、本実施形態の冷蔵庫の正面外形図である。図2は、冷蔵庫の庫内の構成を表す図1におけるE−E縦断面図である。図3は、冷蔵庫の庫内の構成を表す正面図であり、図4は、図2の要部拡大説明図であり、冷気ダクトや吹出し口の配置などを示す図である。
図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫本体1は、上方から、冷蔵室2、製氷室3及び上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6を有する。一例として、冷蔵室2及び野菜室6は、一例としておよそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、一例としておよそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。
冷蔵室2は前方側に、左右に分割された観音開き(いわゆるフレンチ型)の冷蔵室扉2a、2bを備えている。製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを備えている。以下では、冷蔵室扉2a、2b、製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、野菜室扉6aを、単に扉2a、2b、3a、4a、5a、6aと称する場合がある。
また、冷蔵庫本体1は、扉2a、2b、3a、4a、5a、6aの開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示なし)と、各扉が開放していると判定された状態が所定時間、例えば、1分間以上継続された場合に、使用者に報知するアラーム(図示なし)と、冷蔵室2の温度設定や上段冷凍室4や下段冷凍室5の温度設定をする操作パネル101を備えている。
またさらに、扉5aおよび扉6aには扉開スイッチ23が設けられており、後述する扉開放装置24を動作する信号を入力する。
なお、各貯蔵室及び扉の配置は本実施形態に限定するものではなく、国内及び国外で公知の様々な形態のレイアウトを採用することができる。また、扉開スイッチ23は、扉5a、扉6aに設ける構成に限定されず、例えば、扉5a、扉6aの取手部(図示せず)に設ける構成、後述する操作パネル101に設ける構成であってもよい。また、扉開スイッチ23を設けずに、冷蔵本体1とは別体の操作手段からの入力信号を冷蔵庫本体1で受信する構成であってもよい。
図2に示すように、冷蔵庫本体1の庫外と庫内は、内箱10aと外箱10bとの間に発泡断熱材25(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。また、冷蔵庫本体1の断熱箱体10は複数の真空断熱材18を実装している。
庫内は、断熱仕切壁12aにより冷蔵室2と、上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが隔てられ、断熱仕切壁12bにより、下段冷凍室5と野菜室6とが隔てられている。
扉2a、2bの庫内側には複数の扉ポケット14が備えられている(図1、図2参照)。また、冷蔵室2は複数の棚13により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
図2に示すように、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの貯蔵室の前方に備えられた扉4a、5a、6aの後方に、収納容器4b、5b、6bがそれぞれ設けられている。そして、扉4a、5a、6aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器4b、5b、6bが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aと一体に、収納容器(図2中(3b)で表示)が設けられ、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより収納容器3bが引き出せるようになっている。
図2に示すように(適宜図3参照)、冷却器7は下段冷凍室5の略背部に備えられた冷却器収納室8内に設けられている。冷却器7の上方には、送風機9が設けられている。冷却器7で熱交換して冷やされた空気(以下、冷却器7で熱交換した低温の空気を「冷気」という)は、送風機9によって冷蔵室送風ダクト11、野菜室送風ダクト17、製氷室送風ダクト40、下段冷凍室送風ダクト41及び図示しない上段冷凍室送風ダクトを介して、冷蔵室2、野菜室6、上段冷凍室4、下段冷凍室5、製氷室3の各貯蔵室へ送られる。
各貯蔵室への送風は冷蔵室冷却ダンパ20と冷凍室冷却ダンパ21の開閉により制御される。
ここで、冷蔵室冷却ダンパ20は2つの開口部を備えた所謂ツインダンパであり、第一の開口20aは冷蔵室送風ダクト11への送風を制御し、第二の開口20bは野菜室送風ダクト17への送風を制御する構成である。
ちなみに、冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6への各送風ダクトは、図3に破線で示すように冷蔵庫本体1の各貯蔵室の背面側に設けられている。
具体的には、冷蔵室冷却ダンパ20の第一の開口20aが開状態、冷凍室冷却ダンパ21が閉状態のときには、冷気は、冷蔵室送風ダクト11を経て多段に設けられた吹出口2cから冷蔵室2に送られる。冷蔵室冷却ダンパ20の第二の開口20bが開状態、冷凍室冷却ダンパ21が閉状態のときには、冷気は、野菜室送風ダクト17を経て、吹出口6cから野菜室6に送られる。
なお、冷蔵室2を冷却した冷気は、例えば、冷蔵室2の下面に設けられた戻り口2dから冷蔵室戻りダクト16を経て、冷却器収納室8の正面から見て、例えば、右側下部に戻る。また、野菜室6からの戻り空気は、戻り口6dを経て、冷却器収納室8の下部に戻る。
冷凍室冷却ダンパ21が開状態のとき、冷却器7で熱交換された冷気が庫内送風機9により製氷室送風ダクト40や図示省略の上段冷凍室送風ダクトを経て吹出口3c、4cからそれぞれ製氷室3、上段冷凍室4へ送風される。また、下段冷凍室送風ダクト41を経て吹出口5cから下段冷凍室5へ送風される。このため、冷凍室冷却ダンパ21は、後述する送風機カバー56の上方に取り付けられ、製氷室3への送風を容易にしている。
また、上段冷凍室4、下段冷凍室5、製氷室3を冷却した冷気は、下段冷凍室5の奥下方に設けられた冷凍室戻り口42を介して、冷却器収納室8に戻る。
図4において、吹出口3c、4c、5cが形成されているのが仕切54である。この仕切54は上段冷凍室4、製氷室3及び下段冷凍室5と、冷却器収納室8との間を区画する。
送風機9は、送風機取り付け部55に取り付けられている。送風機取り付け部55は冷却器収納室8と仕切54間を区画している。
56は送風機カバーで、送風機9の前面を覆っている。送風機カバー56と仕切54との間には、下段冷凍室送風ダクト41が形成されている。また、送風機カバー56の上部には、冷凍室冷却ダンパ21が設けられており、吹出口56aを形成している。
また、送風機カバー56は、送風機9の前面に整流部56bを備える。これによって、吹き出す冷気が引き起こす乱流を整流して、騒音等の発生を防止する。
また、送風機カバー56は、仕切54との間に送風機9によって送風された冷気を吹出口3c、4c、5c等に導くための、上段冷凍室送風ダクト40、図示しない製氷室送風ダクト、及び下段冷凍室送風ダクト41を形成している。
さらに、送風機カバー56は、送風機9によって送風された冷気を冷蔵室冷却ダンパ20側に送風する役目も果たしている。すなわち、送風機カバー56に設けられた冷凍室冷却ダンパ21側に流れない冷気は、図4に示すように、冷蔵室ダクト15を経由して冷蔵室冷却ダンパ20側に導かれる。
そして、冷凍温度帯室(上段冷凍室4、下段冷凍室5及び製氷室3)と、冷蔵温度帯室(冷蔵室2及び野菜室6)との両方異なる温度帯の貯蔵室に冷却器7を経た冷気を送る時には、大部分が冷凍室冷却ダンパ21側に送られて、残りの他の冷気はこの冷蔵室冷却ダンパ20側に導くように構成されている。
さらに、冷蔵室ダクト15に導かれた冷気は、冷蔵室冷却ダンパ20の第一の開口20aのみが開口している場合には冷蔵室送風ダクト11に導かれ、第二の開口20bのみが開口されている場合には野菜室送風ダクト17に導かれ、第一の開口20aと第二の開口20bの両方が開口されている場合には冷蔵室送風ダクト11と野菜室送風ダクト17の両方に導かれる。
なお、上記の冷蔵室冷却ダンパ20は、図4にも示す如く冷蔵室2の後方に取り付けられているものである。
また、冷却器7の下方には除霜手段である除霜ヒータ46が設置されており、除霜ヒータ46の上方には、除霜水が除霜ヒータ46に滴下することを防止するために、上部カバー47が設けられている。
冷却器7及びその周辺の冷却器収納室8の壁に付着した霜の除霜(融解)によって生じた除霜水は、冷却器収納室8の下部に備えられた樋43に流入した後に、排水管27を介して後記する機械室19に配された蒸発皿44に達し、後記する圧縮機45や凝縮器(図示せず)の熱により蒸発させられる。
また、冷却器7の正面から見て右上部には冷却器に取り付けられた冷却器温度センサ35、冷蔵室2には冷蔵室温度センサ33、下段冷凍室5には冷凍室温度センサ34、製氷室3には図示しない製氷室温度センサがそれぞれ備えられており、それぞれ冷却器7の温度(以下、「冷却器温度」という)、冷蔵室2の温度(以下、「冷蔵室温度」という)、下段冷凍室5の温度(以下、「冷凍室温度」という)、図示しない製氷皿近傍の温度(以下、「製氷温度」という)を検知できるようになっている。
なお、野菜室6にも野菜室温度センサ33aを配置してもよく、各貯蔵室の温度制御をより細かく行うことができる。
断熱箱体10の下部背面側には、機械室19が設けられており、機械室19には、圧縮機45及び図示しない凝縮器が収納されており、図示しない庫外送風機により凝縮器の熱が除熱される。ちなみに、本実施形態では、イソブタンを冷媒として用い、冷媒封入量は約80gと少量にしている。
冷蔵庫本体1の天井壁上面側には、制御手段として、CPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御基板31が配置されている。制御基板31は、前述した冷却器温度センサ35、冷蔵室温度センサ33、冷凍室温度センサ34、扉2a、2b、3a、4a、5a、6aの開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ、冷蔵室2内壁に設けられた図示しない温度設定器、下段冷凍室5内壁に設けられた図示しない温度設定器等と接続する。そして、前述のROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機45のON/OFFや回転数の制御、冷蔵室冷却ダンパ20及び冷凍室冷却ダンパ21を個別に駆動するそれぞれの駆動モータの制御、庫内送風機9のON/OFFや回転速度の制御、前記庫外送風機のON/OFFや回転速度等の制御、前述の扉開放状態を報知するアラームのON/OFF等の制御を行う。
次に、冷蔵室冷却ダンパ20が閉状態で、且つ冷凍室冷却ダンパ21が開状態で、冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5)のみの冷却が行われている場合、製氷室3に図示しない製氷室送風ダクトを介して送風された冷気及び上段冷凍室4に上段冷凍室送風ダクト40を介して送風された冷気は、下段冷凍室5に下降する。そして、下段冷凍室5に下段冷凍室送風ダクト41(図2参照)を介して送風された冷気とともに、図4中に矢印Cで示す冷凍室戻り空気のように流れる。すなわち、下段冷凍室5の背面下部に配された冷凍室戻り口42を経由して冷却器収納室8の下部前方から冷却器収納室8に流入し、冷却器配管7aに多数のフィンが取り付けられて構成された冷却器7と熱交換する。
ちなみに、冷凍室戻り口42の横幅寸法は、冷却器7の幅寸法とほぼ等しい横幅である。
一方、冷蔵室冷却ダンパ20が開状態で、且つ冷凍室冷却ダンパ21が閉状態で、冷蔵温度帯室(冷蔵室ないし野菜室6)のみの冷却が行われている場合、冷蔵室2からの戻り冷気は、図3中に矢印Dで示す冷蔵室戻り空気のように、冷蔵室戻りダクト16を介して、冷却器収納室8の側方下部から冷却器収納室8に流入し、冷却器7と熱交換する。
なお、冷蔵室冷却ダンパ20の第二の開口20bを経由して野菜室6を冷却した冷気は、図4に示す如く、野菜室戻り口6dを介して、冷却器収納室8の下部に流入するが、風量は冷凍温度帯室を循環する風量や冷蔵室2を循環する風量に比べて少ない。
以上説明したように、冷蔵庫本体1の各貯蔵室へ送風する冷気の切り替えは、冷蔵室冷却ダンパ20および冷凍室冷却ダンパ21それぞれを適宜に開閉することにより行う構成である。
<開閉機構の実装>
次に、図5を用いて扉開放装置について説明する。図5は図1におけるE−E断面図のうち、下段冷凍室5と野菜室6の概略構造を示す部分縦断面図である。以下、下段冷凍室5を例に詳細を説明する。なお、野菜室6についても同様の構成である。
下段冷凍室5の扉5aの貯蔵室側の壁面には、後方に向かって支持枠26が接続されている。支持枠26は、食品を収納する容器5bが懸架されており、扉5aを引き出すと、支持枠26が下段冷凍室5の左右両側壁に設けたレール(図示せず)に沿って移動して、容器5bも共に引き出される。
下段冷凍室5の内部底面には扉開放装置24が設けられている。扉開放装置24は、冷蔵庫本体1側に固定して設けられた、モータと、モータの駆動力を減速する減速手段とを備えた駆動機構27とを備える。容器5bの下面には、左右の支持枠26を連結した連結補強手段28と、連結補強手段28の底面に連結部材である連結板29を備えており、駆動機構27から連結板29に対して支持枠26の移動方向に力を加えて下段冷凍室5を開閉する構成である。
駆動機構27と連結板29の詳細な構成と機能については後述する。下段冷凍室5の正面側には、第二の扉検知手段30が設けられており、下段冷凍室5が閉まりきらずに、僅かに開いた半開(半ドア)状態であるか否かを検出して、後述する制御回路にその信号を送る。
下段冷凍室扉5aを駆動する駆動機構27は、断熱仕切壁12bの凹部に配置されており、野菜室扉6aを駆動する駆動機構27は冷蔵庫の底面を構成する冷蔵庫底壁92に埋め込まれて配置されている。断熱仕切壁12bおよび冷蔵庫底面92は内容積を拡大するためにはできるだけ薄いことが望ましい。一方、冷蔵庫外部から内部への熱漏洩を低減して省エネルギー性を向上するには断熱性を高める必要がある。そこで、発泡ウレタンなどの発泡断熱材25を充填するとともに、さらに熱漏洩を低減するために真空断熱材18を設けることで、薄壁化しつつ断熱性能を向上させる構成が望ましい。
<加速リンクの構成>
次に、駆動機構27と連結板29とを備えた扉開放装置24の構成と動作について、図6から図9を用いて詳細に説明する。ここで、扉開放装置24は、冷凍室5の例を説明するが、野菜室6も同様の構成である。
図6は連結板29と、駆動機構27の回転出力軸である駆動軸32に設けられた回転板36との構成を示す斜視図であり、図7は上方からみた平面図である。図8は駆動機構27を動作して回転板36を開き方向に回転させて連結板29に作用して扉5aを開く一連の動作を示す説明図であり、図9は駆動機構27を動作して回転板36を閉じ方向に回転させて連結板29に作用して扉5aを閉じる動作を示す説明図である。
図6と図7において、矢印G方向が冷蔵庫本体1の正面側を示し、冷凍室扉5aは矢印G方向に開く。駆動機構27の上面には回転する駆動軸32が突出し、外周に複数の段差48a〜48gが設けられた回転板36が駆動軸32に固定されており、駆動軸32が回転すると回転板36が共に回転する構成である。連結板29の段差48a〜48gが形成された側に回転板36が配置されて、段差48a〜48gと反対側に駆動機構27の駆動源であるモータ37を収納する突出部38(モータ収納部)が設けられる。
連結板29は、支持枠26に連結された連結補強手段28に固定される。回転板36を回転すると、回転板36の外周の段差48a〜48gと、連結板29に設けられた段差49a〜49gが噛み合いながら、連結板29は支持枠26に沿って矢印G方向に移動して扉5aが開く。換言すると、回転板36の回転に伴って回転板36の押圧部(段差48a〜48g)が連結板29の被押圧部(段差49a〜49g)を押して、扉5aを開く方向に移動させる。なお、連結板29は回転板36とモータ収納部38との間に挟まれて配置される。
図7において、回転板36と連結板29との構成を詳細に説明すると、回転板36に設けられた段差48aは駆動軸32の回転中心から半径R1までの範囲に設けられ、第二の段差48bは半径R1から半径R2までの範囲に設けられる。そして、半径R3の範囲の第三の段差48cから、半径R7の範囲の第七の段差48gに至るまで、順次半径が大きくなる位置に段差が設けられている。ここで、R1<R2<R3<R4<R5<R6<R7である。第一の段差49aは、回転板36の第一の段差48aと噛み合い、第七の段差49gが回転板36の第七の段差48gと噛み合うまで、回転板36が回転するに従って、順次各々対応した段差同士が噛み合う構成である。ここで、押圧部(48a〜48g)と被押圧部(49a〜49g)は、同一のローマ字を付した符号の段差同士が噛み合うように対応している。
本実施例において、回転板36は下段冷凍室5を開放する際、図7中の矢印で示す反時計方向に回転する。
連結板29は先に述べたように、支持枠26及び連結補強手段28を介して扉5aと接続されているので、支持枠26と共に矢印G方向に移動自在である。図7においては、図示左方向が冷蔵庫1の正面側としており、連結板29が左方向に移動することで冷凍室5は開く。
<回転板の原点位置>
ここで、図7に示した回転板36の位置においては、回転板36の段差48と、連結板29の段差49とはいずれも互いに当接することがない。そして、扉5aを手で開いて連結板29が矢印G方向に移動したとしても、連結板29は回転板36に接することなく、扉5aを開放できる。そこで、図7に示した回転板36の位置を原点位置とし、回転板36が回転して扉開放動作が完了した後には、この原点位置に復帰するものとする。
回転板36が原点位置にあれば、扉5aを手で閉じたとしても回転板36と連結板29とは当接しないので、スムーズに冷凍室扉5aを閉じることができる。
回転板36の一部には、第一のマグネット50が設けられ、詳細は後述するが原点位置を検出する。
また、連結板29の一部には、第二のマグネット51が設けられ、詳細は後述するが扉5aの閉鎖を検出する。
<扉の開放動作>
次に、図8により、回転板36の回転動作により連結板29が移動して冷凍室扉5aが開く動作について説明する。
図8(a)は、図7と同様に回転板36は原点位置にあり、扉開スイッチ23が押下されると駆動機構27に通電されて、回転板36が図示矢印の反時計方向に回転を開始する。
図8(b)は、回転板36の第二の段差48bが連結板29の第二の段差49bと当接して、連結板29が矢印G方向に移動し、扉5aが開き始めた状態を示す。
図8(c)は、さらに回転板36が回転し、第六の段差48fが連結板29の第六の段差49fと当接して、連結板29が矢印G方向にさらに移動しつつある。
図8(d)は、さらに回転板36が回転し、連結板29はさらに移動して第七の段差48gが連結板29の第七の段差49gとの当接状態から離れた直後である。連結板29を含む扉5aは、図8(a)の状態から図8(d)の状態に至るまで、図示左方の矢印G方向に加速され、図8(d)の状態では、矢印G方向に最大速度となって開放される。
図8(e)は、扉5aは開放を完了し、回転板36は図示反時計方向への回動が完了して図7ないし図8(a)と同様な原点位置に復帰した状態を図示している。
<扉の閉鎖動作>
下段冷凍室5を閉じた際に、何らかの理由でマグネットパッキン22が吸着されるまで冷凍室5が完全に閉じずに、マグネットパッキン22と冷蔵庫本体1との間に隙間ができ、いわゆる、半開(半ドア)状態になることがある。このように、半開状態になった際の扉開放装置24の動作について、図9を用いて説明する。
図9は、扉開放装置24が下段冷凍室5を閉鎖する際の動作を示す図である。図9(a)は、下段冷凍室5が完全に閉鎖されておらず、連結板29の図示左端が引込位置52よりも開き量53の分、図示左方(扉開放方向)に移動した状態にあることを示している。
ここで、回転板36を駆動軸32の周りに図示矢印の時計方向に回転すると、図9(b)のように先端部57が連結板29の当接部58に当接して図示右方向、すなわち扉5aを閉鎖する方向の力を加える。そして、図9(c)に示すように扉5aを完全に閉じる。
その後、回転板36を図示反時計方向に回転して図9(d)に示すように原点位置に復帰する。
上記のように動作することにより、下段冷凍室5が完全には閉じずに、所謂、半開状態になっていたとしても、下段冷凍室5を開く場合とは反対方向に回転板36を回転させることによって、連結板29に対して下段冷凍室5を閉じる方向の力を加えて閉じることができるので、半開状態を防止できるので好適である。
<駆動機構>
次に、駆動機構27の構成の一例を図10から図16により説明する。
図10は駆動機構27の上面を示す図5の矢印A方向から見た斜視図、図11は駆動機構27を図10とは反対側の下面を示す図5の矢印B方向からみた斜視図である。図12は図10と同様な駆動機構27の上面を示す斜視図であり、駆動機構27の上面をなす上ケース59を透視して内部構造を示す透視図である。図13は上方から見た平面図、図14は図13におけるC−C断面図であり、断熱仕切壁12bに実装された状態を示す。図15は図14のD−D断面図であり、図16は図15を反対側からみたF−F断面図である。
図10は、図6から連結板29を除いた状態を示しており、回転板36と上ケース59の一部に設けられたモータ収納部38との配置関係を明示している。図11とともに概略構成を説明すると、モータ37は上ケース59に設けられたモータ収納部38と下ケース60との間に配置され、モータ37の回転出力軸にはウォーム61が設けられ、モータ37の回転によってウォーム61が回転する構成である。上ケース59のモータ収納部38は、モータ37が下ケース60から下側に突出せずに実装できるような寸法としている。
図12から図14を用いて詳細に構成を説明すると、第一の歯車であるウォームホイール62と、ウォームホイール62と一体として回転するピニオン歯車63(第二の歯車)は、ウォームホイール軸64のまわりに回転自在に軸支されている。第三の歯車であるアイドラ歯車65は、アイドラ軸66のまわりに回転自在に軸支されている。直径の最大な第四の歯車である出力歯車67は駆動軸32のまわりに回動自在に軸支されており、さらに駆動軸32には回転板36がネジ91等の締結手段によって固定されている。また、駆動軸32は、例えばゴム製のシール材であるO字状リング90によって上ケース59との間で水密に封止されて、水の侵入が防止されている。出力歯車67が回転すると、回転板36が回転して扉5aが開閉動作を行う構成である。
ウォーム61は、ウォームホイール62(第一の歯車)と噛み合い、ウォームホイール62と一体として回転するピニオン歯車63(第二の歯車)は、アイドラ歯車65(第三の歯車)と噛み合い、アイドラ歯車65は出力歯車67(第四の歯車)と噛み合う構成である。ここで、一例としてウォームホイール62の減速比を1/40、ピニオン歯車63の歯数と出力歯車67との歯数の比を1/3とすれば、ウォーム61から出力歯車67までの減速比は1/120となる。出力歯車67と駆動軸32の間には、回転板36に伝達される回転トルクを制限して、歯車の破損を防止するためのトルク制限手段68が設けられているが、その詳細については後述する。ウォーム61、ウォームホイール62、ピニオン歯車63、アイドラ歯車65、出力歯車67、はモータ37からの出力を減速する減速手段93を構成する。
下ケース60の一部には、上ケース59側に近づく凹部である配線空間69が形成され、コネクタ70や配線ケーブル71の実装スペースとして用いられる。
検知基板72には、磁力を検知する例えばホールIC乃至又はGMR(Giant Magnetoresistive;巨大磁気抵抗効果)素子である回転検知73と、第一の扉検知手段74とが設けられている。回転検知手段73は、回転板36に設けられた第一のマグネット50位置により回転板36が原点位置にあることを検知する。第一の扉検知手段74は連結板29に設けられた第二のマグネット51位置を検知して、扉5aが閉鎖されたことを検知する。回転検知手段73は、回転板36の原点位置を検出するために駆動軸32の近傍に設けられる。第一の扉検知74は連結板29の位置を検出するために、駆動軸32とモータ37との間に配置される連結板29の移動経路の範囲内に設けられる。
<基本配置>
次に、モータ37、検知基板72、コネクタ70、歯車の配置について説明する。
駆動機構24の外形を形成する下ケース60と上ケース59は、図13に示すように上方からみてほぼ正方形状をしており、図示下側が扉5aの側、すなわち冷蔵庫本体1の正面側であり、図示上方が奥側となる。駆動機構24の図示右下側に駆動軸32を備えた出力歯車67を配置し、回転板36を反時計方向に回転して連結板29を図示下方に移動して扉5aを開く。
駆動機構24は、収納部材を構成する上ケース59である第一の面94(上面)と、下ケース60である第二の面95(下面)と、第一の面94と第二の面95を繋ぐ第一の側面96と、第一の側面96に対向する第二の側面97と、第一の側面96と第二の側面97を繋ぐ第三の側面98と、第三の側面98に対向する第四の側面99と、で囲まれた空間を形成している。
下ケース60の第四の側壁99に沿ってモータ37を配置し、ウォーム61が正面側(第一の側面96側)、配線ケーブルが接続されるモータ端子75を背面側(第二の側面97側)に配置する。
出力歯車67は、第一の側面96寄り且つ第三の側面98寄りに配置している。
出力歯車67とウォーム61との間には、ウォームホイール62とアイドラ歯車65を配置して、モータ37の回転トルクをウォーム61、ウォームホイール62、アイドラ歯車65を介して出力歯車67に伝達する。ウォームホイール62、アイドラ歯車65の回転中心は、ウォーム61とウォームホイール62との噛み合い部76と、出力歯車67の駆動軸32を結んだ直線の近傍に配置されて、減速手段93を構成している。
駆動機構24の背面側(第二の側面97側)には、制御基板31と接続されたコネクタレセプタクル77と、コネクタレセプタクル77に接続されたケーブルとが挿入される配線空間69としている。配線空間69と出力歯車67との間には、配線空間69に沿って横長に概ね出力歯車67と重なる位置に検知基板72が配置され、検知基板72の一端はモータ37に近接する方向に延在して、モータ37に近接する側に配線ケーブル71が接続される。
回転検知手段73は、駆動軸32に対してモータ37とは反対側(第三の側面98寄り)に設けられている。検知基板72は、略L字形をなしており、モータ37から離れた側、すなわち第三の側面98側で配線空間69から離反する方向(第一の側面96側)に屈曲しており、第一の側面96寄りに回転検知手段73が設けられる。
第二の側面97寄りで且つ第四の側面99寄りには、コネクタ70を配置し、配線空間69を向いた側はコネクタレセプタクル77に挿入される端子側とし、配線空間69の反対側はモータ端子75と接続された配線ケーブル71および検知基板72と接続された配線ケーブル71と接続される。
ここで、図13より、モータ37のモータ端子75からコネクタ70に至る配線ケーブル71と、検知基板72からコネクタ70に至る配線ケーブル71はともに、減速手段93から離れて配置されるので、配線ケーブル71が減速手段93を構成する歯車に巻き込まれること等がなく信頼性が高い。また、モータ37のモータ端子75、検知基板72のうち配線ケーブル71が接続された一端はコネクタ70に隣接して配置したので、配線ケーブル71が短くて済み、配線が容易であり、信頼性が高い、という効果がある。
すなわち、駆動機構24を収納する収納部材(上ケース59、下ケース60)内には、以下のように構成部品が配置される。回転部材36の位置を検出する回転検知手段73と、モータ37及び回転検知手段73を駆動機構24の外部と電気的に接続するコネクタ70と、を備え、減速手段93は、回転部材36と連結した出力歯車67とウォーム61とを接続する歯車列を備え、出力歯車67は、第一の側面96寄り且つ第三の側面98寄りに配置して、モータ37及びウォーム61は、第四の側面99寄りでウォームが第一の側面96に近接する方向に配置して、歯車列は第一の側面96寄りに配置して、コネクタは第二の側面97寄りに配置する。
<回転方向>
図13によりウォーム61と各歯車の回転方向について説明する。
回転板36は図示反時計方向に回転して扉5aを開く。このとき出力歯車67は回転板36とともに反時計方向に回転しており、出力歯車67と噛み合うアイドラ歯車65は時計方向に回転し、アイドラ歯車65と噛み合うピニオン歯車63とウォームホイール62は反時計方向に回転し、ウォーム61はモータ37側から先端側に向けて歯が送られる。
駆動時の反力は回転方向とは反対向きになるため、ウォームホイール62からウォーム61に加わる軸方向の反力はウォーム61をモータ37に対して押しつける方向に向く。
この場合、軸方向の反力はモータ37自体に備えられた図示しないスラスト軸受で受けることができるので、ウォーム61がモータ37の回転軸に対してガタ(緩み)が生じにくく、回転が安定するのでウォーム61とウォームホイール62との噛み合いが安定して振動や騒音の発生を抑制して好適である。
<モータ突出量>
図14、図15により、断熱仕切壁12bに駆動機構27を埋め込んで配置した状態について説明する。
駆動機構27は、上ケース59の全周にシール材78を介して、水の侵入が防止される構成で断熱仕切壁12bに取り付けられている。
ところで、下段冷凍室5の内容積拡大のためには、容器5bの底面と断熱仕切壁12bとの隙間H7(図14参照)を低減することが必要であり、回転板36と連結板29の噛み合い駆動が確保できる範囲内で隙間H7を低減することが望ましい。
ここで、回転板36は駆動機構27から高さH1だけ突出して配置されるので、容器5bの底面に対して(H7−H1)だけの隙間が確保される。一方、連結板29は扉5aとともに開くので、容器5bの底面に近接していてもよいが、回転板36との噛み合いを確保するためには、駆動機構27に近接して配置するのが望ましい。
したがって、隙間H7を低減するためには、駆動機構27を断熱仕切壁12bの凹部に配置して高さH1を低減することが効果的である。
断熱仕切壁12bは、下段冷凍室5と野菜室6とを仕切るものであって、冷凍室5は−18℃程度、野菜室6は+3〜5℃程度と温度差がある。また、一方で内容積を拡大するためには断熱仕切壁12b厚さH3を薄くしたい。そのため、断熱仕切壁12bは薄くしつつ、断熱性能を高める必要がある。
なお、発泡ウレタン等の発泡断熱材25を充填するとともに、真空断熱材18を全面に配設することが効果的であり、特に、駆動機構27を配置した部分は断熱仕切壁12bが部分的に薄くなるので、その部分には真空断熱材18を配設すると断熱効果が高い。
そこで、断熱仕切壁12bの厚さH3を低減しつつ、真空断熱材18の厚さHvを厚くすれば、断熱性能が向上するため、駆動機構27の下面側、すなわち断熱仕切壁12bの凹部厚さH4を低減することが望ましい。さらに、真空断熱材18はガラス繊維を内包した気密袋を密閉して内部を真空にした構成なので、尖った構造物の突き刺しによって、袋の気密性が解除されないようにすることが好ましい。よって、駆動機構27の厚さを薄くすると共に、下ケース60の下面である駆動機構27の底面95は突起がなくフラットな形状とすることが、真空断熱材18を配置して断熱仕切壁12bの断熱性を高めるのに効果的である。
駆動機構27の厚さを薄くする一方で、モータ37は扉5aを開くだけの出力トルクが必要であることから、駆動機構27の厚さよりモータ37の直径が大きくなる。これに伴い、上ケース59の上面94又は下ケース60の底面95からモータ37の外形の一部が突出することになる。すなわち、上面94と底面95との間隔は、モータ37の直径より小となるが、モータ37配置部だけ突出することになる。ここで、下ケース60の底面95には突起を設けない構成が望ましいので、上面94にモータ収納部38をH2だけ突出させるものとし、さらに突出量を回転板36部分の厚さH1と比べて等しいか小さくなるように、H2≦H1と構成すれば、下ケース60の底面95はフラットな形状のままで、ケース厚さよりも外形の大きなモータ37を使用できる。また、モータ収納部38は回転板36の高さH1よりも小さくなるので、容器5bの底面はモータ収納部38を回避するための凹凸等の特段の形状を設ける必要がなくなる。これにより、断熱性能を高めるとともに容器5bの容積を低減することなく好適である。
<ウォームホイール高さと傾斜配置>
次に、図14〜図16を用いて、モータ37、ウォーム61、及びウォームホイール62の配置について説明する。図15は図14におけるD−D断面図であり、図16は図15と同じ部分を逆方向から見たF−F断面図である。
先に説明したように、連結板29はモータ収納部38と回転板36との間に配置され、さらに回転板36と噛み合う必要があるために、駆動機構27に近接して配置される。一方、モータ収納部38と回転板36との間に配置されるウォーム61から出力歯車67に至るまでの減速手段93は、連結板29の配置を妨げないことが望ましい。
ウォームホイール62は、モータ37の回転軸に設けられたウォーム61と噛み合っているので、モータ37に隣接して回転板36側に配置され、連結板29と重なる位置となる(図14参照)。ウォームホイール62はウォーム61と噛み合うので、モータ37の直径が大きくなるほどウォームホイール62の位置は図14中、上ケース59側に移動し、それとともにウォームホイール62は上ケース59の上面よりも突出して、ウォームホイール収納部79の突出量が大きくなる。例えば、図14において一点鎖線で示したウォームホイール収納部79´の形状になると、連結板29の位置をウォームホイール収納部79´と干渉しない位置まで上方に移動する必要があり、結果として容器5bの深さが浅くなり容積が減少する。
そこで、ウォームホイール62の高さ位置を駆動機構27の底面95側に近接させることが望ましい。その構成について図15と図16により詳細に説明する。図15において、モータ37を下ケース60の底面に近接させて配置すると、モータ37の回転中心80の高さHaはモータ37の半径、すなわちモータ37外形の1/2にほぼ等しくなる。
ここで、図16に示すように、モータ37とウォーム61とをウォーム61の先端が駆動機構27の底面に近接する方向に角度θだけ傾斜させると、モータ37のウォーム61側の回転中心80の高さHaは変わらないものの、ウォーム61とウォームホイール62との噛み合い部76の高さはHb、すなわち、Ha>Hbとなる。これにより、ウォームホイール62をモータ37の半径、すなわち、モータ37外形寸法の1/2よりもさらに下ケース60側(底面95側)に近接して配置でき、その結果ウォームホイール収納部79の上方への突出量を低減できるので好適である。
次に、モータ37の傾斜角度θの特に好適な値について、図16により説明する。
ウォーム61は、ねじと同じように、円筒表面に歯車の歯を螺旋状に配した構成であり、そのねじれ角をリード角と称する。そのため一般的に、ウォーム61と噛み合うウォームホイール62は、ウォーム61のリード角と等しいねじれ角をもったはすば歯車(斜歯歯車;helical gear)となる。
ところで、ウォーム61とウォームホイール62の噛み合い部76において、ウォームホイール62のねじれ角を低減する方向にウォーム61を傾斜させ、特にウォーム61をリード角と等しくなるように傾斜させると、リード角がウォーム61の傾斜によって打ち消されて、ウォームホイール62と噛み合うギヤ歯筋81が、図示、鉛直方向(上ケース59(第一の面94)と下ケース60(第二の面95)とを鉛直に結ぶ方向)に向く。すると、ウォームホイール62のはすば歯車のねじれ角が0度となり、ウォームホイール62を平歯車とすることができる。平歯車は、はすば歯車より加工が容易であって高精度が得やすく、樹脂成型品のギヤとする場合には、はすば歯車のように金型をねじりながら成型する必要がない。そのため、金型も単純で安価となり、成型しやすい、という効果がある。
<スラスト負荷>
一般的に、はすば歯車は歯がねじ状に配置されているため、トルクを伝達する際に歯車に軸スラスト方向の分力が生じる。このスラスト方向の分力は、はすば歯車の回転方向によって正逆が反転し、はすば歯車の軸方向両端のストッパにそれぞれ当接するまで歯車は移動する。そのため、はすば歯車はガタ(ゆるみ)による位置ずれが生じやすく、また軸受の構造もスラスト負荷を許容できる構造とする必要がある。スラスト負荷が生じると、はすば歯車が軸方向のストッパに押し付けられるために、摩擦負荷トルクが余計に生じて、回転負荷トルクが大きくなる。
またさらに、本実施例のように回転軸が鉛直ではすば歯車を水平面内で回転する構成では、ウォーム61の回転方向によっては、はすば歯車は浮き上がる方向のスラスト荷重を生じ、スラスト荷重、歯車自重、及び噛み合い部の摩擦力との大小関係に応じて、回転と共に浮上したり、下降したり、を繰り返す場合がある。その結果、はすば歯車は上下に振動し、騒音の原因となる。
また、はすば歯車の位置が上下に変動すると、歯が捻じれているためにウォーム61との噛み合い位置が円周方向に移動する。すなわち、ウォーム61が一定角速度で回転したとしても、はすば歯車であるウォームホイール62が軸方向に移動すると、ウォームホイール62の角速度が変動することとなり、結果としてウォームホイール62の回転動作が不安定になり、振動や騒音の原因となる。
ところで、本実施例のようにウォーム61をリード角分傾斜させることで、ウォームホイール62を平歯車とすることができる。その結果、ウォームホイール62にスラスト負荷が生じないので、摩擦負荷トルクが少なく、さらに振動や騒音、回転角速度の変動も少なく、安定した歯車の噛み合いを実現できる、という効果がある。
<トルク制限手段>
次に、図14に示したトルク制限手段68の構成の一例について、図17から図18により説明する。図17はトルク制限手段68を含む出力歯車67の回転軸を含む断面図、図18はトルク制限手段68の各構成部品を示す分解斜視図である。
駆動軸32の一端は、軸方向に円筒状の外周を削除した平面部82を有し、回転板36に嵌合して回転駆動する。駆動軸32の他端は、直径を拡大して外周を第一の摺動面83とし、第一の摺動面83の一端に溝85が設けられている。
出力歯車67は、外周に歯車の歯が設けられ、内周には円周を複数のスリット87で区切って構成された片状部88が、出力歯車67の回転中心回りに立設され、その内周は第二の摺動面84を形成している。第二の摺動面84の一部は、内側に突出した円周状のストッパ86をなす。本実施例ではスリット87ないし片状部88の数は6分割しているが、6分割に限定するものではなく、駆動軸32を保持する所定の圧縮強度が得られる形状、分割数であればよい。
駆動軸32の外周に設けられた第一の摺動面83は、出力歯車67の片状部88の内周である第二の摺動面84に嵌合され、溝85にストッパ86が嵌合して軸方向の移動を阻止する。輪ばね89は、片状部88の外周を締め付けつつ嵌合される。
ここで、第一の摺動面83の直径をD1、第二の摺動面84の内周をD2、片状部88の外周をD3、輪ばね89の内周をD4とすれば、D1>D2として第一の摺動面83と第二の摺動面84との間に面圧を与え、D4<D3として輪ばね89を押し広げて嵌合させることで片状部88を内周側に押し縮めようとする圧縮力を付加させ、第一の摺動面83と第二の摺動面84との間に所定の圧接力を与える構成である。
ここで、輪ばね89により第一の摺動面83と第二の摺動面84との間にかかる圧縮力をF、摩擦係数をμとすれば、駆動軸32と出力歯車67との間に生じる摩擦トルクTは、T=Fμ(D1/2)となる。このT以上のトルクが駆動軸32と出力歯車67との間に加わると、第一の摺動面83と第二の摺動面84とは互いに滑るのでトルク制限手段68として機能する。ここで、輪ばね89による圧縮力Fを調整することで、適切な摩擦トルクを付加することができる。
本実施例によれば、片状部88を出力歯車67と一体として設け、駆動軸32と嵌合して輪ばね89で締め付ける構成とする。これにより、トルク制限手段68を安価に構成することができる。
本実施例では、コイルばねを輪ばね89として用いた例により説明したが、コイルばねに限定するものではなく、片状部88を締め付ける構成であればよく、円筒状のスプリングの一部に軸方向にスリットを入れた構成であってもよい。
<ブロック図>
図19は、本発明の実施形態における扉開放装置を備えた冷蔵庫の構成を示すブロック図である。制御基板31を含んで構成された制御回路は、商用電源から所定の電圧の直流等を生成する電源100と接続される。さらに、例えば温度調整を行う押しボタンスイッチなどの操作手段102と、例えば点滅するLEDなどの表示手段103とを備えた操作パネル101と接続される。また、温度センサ33、34、35、冷蔵室冷却ダンパ20と冷凍室冷却ダンパ21、圧縮機45、扉開放装置24などと接続されて、それらの駆動と制御を行う構成である。なお、操作パネル101は図1において、冷蔵庫本体1の前面、一例として冷蔵室扉2aの前面に配置されており、使用者が諸機能を変更したり、確認したりする場合に使い勝手を向上させている。
<制御系の構成>
次に図19を用いて扉開放装置24を制御するための制御系の構成について説明する。
図19は、制御系の構成を示すブロック図である。
ユーザが扉開スイッチ23を押した際にその信号は制御基板31に送られる。下段冷凍室5および野菜室6に設けられた駆動機構27のそれぞれのモータ37と、駆動軸32の回転位置を検出する回転検知手段73、連結板29の位置を検出する第一の扉検知手段74、及び扉の開閉状態を検出する第二の扉検知手段30は、制御基板31に接続されている。また、扉開放装置24及び制御基板31の駆動に必要な電力は、電源100から供給される。
操作パネル101には扉が閉じておらず開状態になっていることをユーザに知らせるための報知手段104が備えられていてもよい。この報知手段104の一例は、ブザーを鳴動させるかランプを点灯ないし点滅させる。
<開き制御>
図20を用いて、下段冷凍室5を開放する際の開き制御の手順について説明する。図20は、下段冷凍室5を開放する際の開き制御の手順を示す流れ図である。
開き動作を開始(ブロック105)すると、制御基板31は回転検知73の状態を監視して、駆動機構27の回転板36が動作を開始する原点位置にあるか否かを検出する(ブロック106)。
もし、回転板36が原点にない場合には、モータ37に通電(ブロック107)して、回転板36を回転させて回転検知73を監視して原点にする。
回転板36が原点にあることが検出できており、かつユーザによって扉開スイッチ23が操作されたことを制御基板31が検出(ブロック108)したらモータ37を通電(ブロック109)して、回転板36を回転させる。このときの回転板36の回転方向は、図8で示すように反時計方向としており、回転板36が回転すれば連結板29が押されて冷凍室5が開く。モータ37が引き続き回転して、回転検知73により回転板36が原点位置にあることが確認できたら(ブロック110)、モータを停止させて(ブロック111)一連の開き動作を終了する(ブロック112)。
<閉じ制御>
図21を用いて、冷凍室5が完全に閉じていない、所謂半ドア状態から冷凍室5を閉じる際の制御の手順について説明する。図21は冷凍室5を閉じる際の閉じ制御の手順を示す流れ図である。動作を開始(ブロック113)してから原点を検出(ブロック114)するまでモータ37を通電する(ブロック115)までの動作については図20のブロック105からブロック107と同一である。
第一の扉検知手段74が連結板29の第二のマグネット51を検出していれば(ブロック116)、下段冷凍室5の扉5aが半開(半ドア)状態ではなくて閉鎖されていることが確認できるので、ドア閉じ動作を完了する(ブロック117)。一方、第二の扉検知手段30が開の場合(ブロック118)は扉5aが開いているので、半ドアであるとして、例えば報知手段104を鳴動させて半ドアであるというアラームをユーザに報知する(ブロック119)。
第一の扉検知手段74がドアの閉鎖を検出できず、かつ第二の扉検知手段30が閉鎖を検知して半ドアであることを検出したらモータ37に通電する(ブロック120)。このときの回転方向は、図9においては時計回り方向である。さらに、この際にはモータ37に印加する電圧を、例えば定格電圧の1/2ないし1/3程度と低くすることで、回転板36の回転速度を低下させる。すると、回転板36が低速度で時計回り方向に回転するので、急激に扉5aを閉じることがなく、安全性が向上して好適である。
モータ37を時計回り方向に所定時間、例えば3秒間通電すれば(ブロック121)、回転板36は図9(b)の状態に至って連結板29を矢印方向に、すなわち扉5aを閉じる方向に移動させて下段冷凍室5を閉じる。所定時間経過した後、モータ37が反時計W方向に回転するよう通電して(ブロック122)、図9(d)に示すように回転板36が原点位置になるまで回転させ、回転検知73の信号によって原点が検出できたら(ブロック123)、モータ37の回転を停止させる(ブロック124)。ここで、第一の扉検知手段74が、下段冷凍室5が閉鎖されていることを検出すれば(ブロック125)、下段冷凍室5は完全に閉鎖されたことが確認できたので、処理を終了する(ブロック126)。もし、第一の扉検知手段74が下段冷凍室5の閉鎖を検知できなければ、半ドア状態が継続していると判断できるので、ブロック120からブロック125までの処理、すなわちモータ37に通電して回転板36を時計回り方向に回転して下段冷凍室5を閉鎖させる動作を複数回繰り返して行う(ブロック127)。また、所定の回数、例えば3回この閉鎖動作を繰り返した後も第一の扉検知手段74の閉鎖が検知できなければ、下段冷凍室5を閉鎖できないと判定して、報知手段104を鳴動させて半ドア状態であるというアラームをユーザに報知する(ブロック128)。
<効果>
本発明によれば、冷蔵庫の引出し扉の開き力を低減して軽快に扉を開放することを可能とするとともに、いわゆる半ドア(半開)状態から自動的に扉を閉鎖して、省エネルギー効果を向上させることができる、という効果がある。さらに、構成と効果を対応させて以下に詳説する。
第一に、モータ37を有する駆動機構27と、駆動機構27を収納する収納部材(上ケース59、下ケース60)と、モータ31の回転によって回転する回転部材36(回転板)と、回転部材36の回転運動を直線運動に変換する連結部材29(連結板)と、を備えた扉開放装置24において、収納部材の第一の面94と、第一の面94と対向した第二の面95との間隔はモータ31の外形よりも小さく、第一の面94から突出したモータ37を覆うモータ収納部38(突出部)を備え、回転部材36は第一の面94から外側に突出しており、モータ収納部38は回転部36材よりも第一の面94からの突出長さが同等又は小さい。
これにより、駆動機構27の厚さを薄くすると共に、下ケース60の下面である底面95(第二の面)は、突起がなくフラットな形状とすることで、駆動機構27の下面に真空断熱材18を配置して断熱仕切壁12bの断熱性を高めるのに効果的である。
また、上面にモータ収納部38をH2だけ突出するものとし、さらに突出量を回転板36部分の厚さH1と比べて等しいか小さくなるよう(H2≦H1)構成することで、下ケース60の底面95はフラットな形状のままで、収納部材厚さよりも直径の大きなモータ37を使用できる。また、モータ収納部38が回転板36の高さH1よりも小さいので、容器5bの底面はモータ収納部38を回避するための特段の形状を設ける必要がなく、容器5bの容積を低減することなく好適である。
第二に、モータ37からの駆動力を減速する減速手段93を備え、減速手段93は、モータ37の回転軸によって回転するウォーム61と、ウォーム61と噛み合って回転するウォームホイール62と、を備え、モータ37の回転軸及びウォーム61の回転軸は、第一の面94から所定角度で傾斜して設けられ、ウォーム61とウォームホイール62は、ウォーム61とウォームホイール62との噛み合い部76の接線が第一の面94と第二の面97を鉛直に結ぶ方向に沿うように配置した。
すなわち、モータ37とウォーム61とをウォーム61の先端が駆動機構27の底面に近接する方向に角度θだけ傾斜させることで、モータ37のウォーム61側の回転中心80の高さHaは変わらないものの、ウォーム61とウォームホイール62との噛み合い位置76の高さはHbとなり、Ha>Hbの関係となるので、ウォームホイール62をさらに底面95に近接して配置でき、その結果ウォームホイール収納部79の上ケース60側への突出量を低減できる。
第三に、ウォームホイール62は平歯車である。すなわち、ウォーム61をリード角分傾斜させることで、ウォームホイール62を平歯車とすることができるので、その結果ウォームホイール62にスラスト負荷が生じないので摩擦負荷トルクが少なく、さらに振動や騒音、回転角速度の変動も少なく、安定した歯車かみあいを実現できる。
第四に、第一の面94からウォームホイール62とウォーム61との噛み合い位置までの距離、又は第二の面95からウォームホイール62とウォーム61との噛み合い位置までの距離のいずれかは、モータ37の外形の1/2よりも小さい。これにより、ウォーム61とウォームホイール62との噛み合い部76の高さ位置を、モータ37外形寸法の1/2よりもさらに下ケース60側(底面95側)に近接して配置できるため、ウォームホイール収納部79の上方への突出量を低減できる。
第五に、駆動機構24は、第一の面94(上面)と第二の面95(下面)を繋ぐ第一の側面96と、第一の側面96に対向する第二の側面97と、第一の側面96と第二の側面97を繋ぐ第三の側面98と、第三の側面98に対向する第四の側面99と、を備え、回転部材36の位置を検出する回転検知手段73と、モータ37及び回転検知手段73を駆動機構24の外部と電気的に接続するコネクタ70と、を備え、減速手段93は、回転部材36と連結した出力歯車67とウォーム61とを接続する歯車列を備え、出力歯車67は、第一の側面96寄り且つ第三の側面98寄りに配置して、モータ37及びウォーム61は、第四の側面99寄りでウォーム61が第一の側面96に近接する方向に配置して、歯車列は第一の側面96寄りに配置して、コネクタ70は第二の側面97寄りに配置して、モータ37とコネクタ70を接続する配線ケーブル71と、回転検知手段73とコネクタ70を接続する配線ケーブル71は、減速手段93から離れて配置される。これにより、配線ケーブル71が減速手段93を構成する各歯車に巻き込まれることがなく、信頼性が高い。また、モータ37のモータ端子75、検知基板72のうち配線ケーブル71が接続された一端はコネクタ70に隣接して配置したので、配線ケーブル71が短くて済み、配線が容易であり、信頼性が高い。
第七に、円周を複数のスリット87で区切って構成された片状部88を出力歯車67の内周と一体として設け、駆動軸32と嵌合して輪ばね89で締め付ける。これにより、安価な構成でトルク制限手段68を構成することができる。
なお、本実施例では駆動機構27を冷凍室5bと野菜室6の間の断熱仕切壁12bに設けて下段冷凍室5を開閉する構成を中心に説明したが、下段冷凍室5に限るものではない。例えば、駆動機構27は最下段の野菜室6を開閉するものとして、冷蔵庫本体底壁92に配置した場合でも、同様な構成とすることができ、同等な効果が得られる。
<モータとウォームの固定手段>
次に、モータ37とケース(上ケース59、下ケース60)の構成について、図22と図23を用いてさらに説明する。図22は、モータ及びモータ支持手段の斜視図である。図23は、モータをケースに組み込んだ状態の側断面図である。
モータ37と、モータ37の回転軸に連結したウォーム61は、モータ支持部材105に対して同心軸となるように配置されて、モータ37はモータ締結用の締結手段107(一例としてねじ)にてモータ支持部材105に締結される。
また、モータ支持部材105のウォーム61設置部の側部には、ウォームホイール配置用のウォームホイール軸部110を設け、ウォームホイール軸部110回りにウォームホイール62が回転するように配置される。
モータ支持部材105は、図23の一点鎖線から鎖線方向への矢印で示すように、下ケース60の水平方向(紙面上の左右方向)に対して、モータ37及びウォーム61がウォーム60のリード角分傾斜するようにして支持している。そして、モータ37及びウォーム61をモータ支持部材105に予め組んだ状態にしてから、纏めてケース(上ケース59、下ケース60)に配置する。なお、円筒部ウォームホイール軸部110は下ケース60の水平方向に対して鉛直方向に配置しており、ウォームホイール61は平歯を用いている。
また、下ケース60の水平方向から鉛直上方に向けて円筒部108を配置して、上ケース59の水平方向から鉛直下方に向けて円筒部109を配置している。円筒部108と円筒部109は、上下方向で互いに対向する位置に設けられており、円筒部108と円筒部109の間にモータ支持部材105の締結孔106が位置する。この状態で、上ケース59、下ケース60、モータ支持部材105の3部品が、締結手段111(一例としてねじ)にて締結される。なお、締結孔106はモータ37の前方部、後方部及び側面部の3箇所設けられており、モータ37とウォーム61の回転動作に伴う振動を抑制している。
モータ37の回転軸(ウォーム61が嵌め込まれた回転軸)は、回転部材36が連結部材29を押す方向側が低くなるように傾斜配置して、モータ37の回転軸の反対側の端部に対向する上ケース59には、傾斜面を形成している。これにより、扉開放装置全体の高さ方向の薄型化が図れる。また、モータ37及びウォーム61が回転動作時に軸方向の反力が働く。この反力は、上ケース59の傾斜面で受けるようにしていることで、扉開閉装置を薄型化した場合でも剛性を保つことができる。また、反力に起因する振動を抑制することができる。
また、傾斜面の下方に円筒部108と円筒部109が配置されて、上ケース59、下ケース60、モータ支持部材105の3部品が、締結手段111(一例としてねじ)にて締結されている。この構成では、回転部材36が連結部材29を押す力に対する、モータ37が回転軸と反対方向に移動しようとする反力を、傾斜面、円筒部108、円筒部109及び締結手段111で受ける。これにより、扉開放装置の高さ方向を薄型化した構成であっても、十分な剛性を得ることができる。
また、モータ37をモータ支持部材105でケース(上ケース59、下ケース60)に一体支持している。これにより、モータ37とウォーム61を下ケース60の水平方向に対し傾斜させた構成であっても、位置精度が良好となり、組立も容易となる。
また、扉開閉時に上ケース59に配置したモータ突起部38の側面に、連結部材29の位置を制御する凸部を設け、回転部材36と連結部材29を接触させて、回転運動を直線運動に変換した際の連結部材29の左右の位置ぶれを抑制することができる。
<その他機器への適用>
なお、本実施例においては扉開放装置24が下段冷凍室5ないし野菜室6の引き出し扉に設けられている例を示したが、本実施例に限定されるものではない。例えば、冷蔵室扉2のような、回転式の扉に設けられるものであっても、同様な効果が得られる。
また、本実施例においては冷蔵庫に扉開放装置を備えた構成について説明したが、冷蔵庫に限定されるものではない。例えば、文書類を保管するファイルキャビネットや、手前に引き出して使用する流し台組み込み型の食器洗い乾燥機、等の公知のあらゆる引き出し式機器に適用でき、その場合にも本実施例と同様の効果が得られる。