この発明を具体例に基づいて説明する。この発明に係る電子レンジ用容器は、内容物を収容したままの状態で電子レンジでの加熱が可能であって、開口した形状に成形された容器本体と、その開口を形成する開口部を封止して容器本体の形状に基づく空間を密封する蓋体とを備えている。その電子レンジ用容器が電子レンジ内において電磁波(例えば、マイクロ波)を照射されることで、基材層や発熱体層や接着層などを含む積層構造によって構成された蓋体が発熱して、容器本体から蓋体を容易に剥離させることができるように構成されている。
以下、図面を参照して、その電子レンジ用容器の具体例を説明する。図2は、この具体例における電子レンジ用容器1の全体を模式的に示した斜視図である。また、図1は、図3に示す電子レンジ用容器1が密封されている場合の領域Iに示す部分に含まれる容器本体2と蓋体3との密着部分を模式的に拡大した断面図である。その電子レンジ用容器1は、電子レンジでの加熱が可能な食品包装用の容器であって、内容物である食品を収容する食品用容器である容器本体2と、この容器本体2の開口部をヒートシール性の接着により封止する蓋体3とを有している。
容器本体2は、蓋体3で封止された場合、固体状もしくは流体状食品である内容物を収容できる空間2aを有することができるような形状に成形されている。例えば、容器本体2は、略直方体形状に成形され、その一面が開口した開口部を設け、この開口部から食品などの内容物を収容して蓋体3を封止し、蓋体3を開封すると、この開口部から食品を取り出すことができる形状に成形されている。
その一例として、図2,3に例示するように、容器本体2は、上面部分が開口した開口部を有するカップ形状の容器であり、板状の底部2bと、その底部2bの周縁部分から上方に延在する壁部を形成する四角筒状の胴部2cと、その胴部2c上端により区画される開口部の周囲に形成され、かつ容器本体2の半径方向外方に延在するように形成された環状のフランジ部2dを有している。また、容器本体2のフランジ部2d表面である接着面(縁面)に、蓋体3がヒートシールなどにより溶着されることで、電子レンジ用容器1内を密封するように構成されている。
また、容器本体2を形成する材料として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、スチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料を使用する。これら熱可塑性樹脂材料を射出成形や圧空成形などにより成形した容器を、容器本体2として好適に使用することができる。
なお、容器本体2の形状は、図2,3に例示する形状に限定されない。具体的には、四角形状の底部2bに限定されず、例えば、円形の板状に形成された底部であってもよい。すなわち、底部2bの形状に応じて胴部2cの形状が決まるのであって、その円形状の底部の周縁部分から上方に拡径するように形成された略円筒状の胴部であってもよい。
さらに、容器本体2は、電子レンジ内における電磁波が照射され、内容物が加熱されても変形し難く、かつ溶融しない材料により形成されていればよい。好ましくは、電磁波の照射により内容物が加熱されても変形せず、容器本体2の形状を維持できる材質によって作製されている容器本体2である。
蓋体3は、図2,3に例示するように、略四角形状に形成され、容器本体2の開口部を封止するようにフランジ部2dに接着されて電子レンジ用容器1における天板部分を形成している。また、この容器本体2に接着された蓋体3は、容器本体2のフランジ部2dが突出する方向において、その蓋体3の周縁部がフランジ部2dよりも外方に突出するように形成されている。なお、この発明の説明では、蓋体3の面について、容器本体に接着される側の面を裏面として、他方の面を表面として説明する場合がある。また、蓋体3の周縁部がフランジ部2dよりも外方に突出しないように形成されていてもよく、この場合には蓋体3の周縁部に図示しない摘み部が形成されていてもよい。その摘み部は、その蓋体3の周縁部の一部分を形成するように構成され、他の部分の周縁部よりも外方、すなわちフランジ部2dよりも外方に突出するように形成されている。
また、蓋体3は、図1に例示するように、蓋体3の基部として成形されたシート状の基材層4と、電磁波の照射を受けて発熱する発熱体層5と、熱硬化性樹脂層6と、発熱体層5が発熱した熱によって溶融され、容器本体2の接触面と当接する部分に設けられ接着性を有する熱可塑性のシール層7とを有する積層構造に形成されている。その基材層4は、蓋体3の表面に形成され、かつ平板状のフィルムにより成形されたシート部材であって、熱可塑性樹脂フィルムにより構成されている。また、この具体例における基材層4は、図1などに例示するように、熱可塑性樹脂フィルムを適宜積層させた多層フィルムであって、蓋体3の表面を形成する第1基材層4aと、基材層4における裏面を形成し、かつ発熱体層5が蒸着される蒸着基材層である第2基材層4bとを含むように構成されている。
その基材層4を構成する熱可塑性樹脂フィルムの樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂を使用できる。なお、上述した第1基材層4aおよび第2基材層4bをそれぞれに構成する熱可塑性樹脂フィルムは、上記の熱可塑性樹脂により構成されていればよく、その組み合わせは特に限定されない。
また、基材層4の厚さは、10〜100μmとすることが好ましい。このような厚さの基材層4を設けることで、電子レンジの加熱によって生じる発熱体層5の発熱により基材層4が損傷しないようにすることができる。すなわち、基材層4は、電子レンジで加熱した際における内容物や発熱体層5の発熱あるいは容器内圧の上昇によっても、破損しないように構成されている。
なお、この発明における蓋体に含まれる基材層は、上述したような二層に形成された多層フィルムに限定されず、樹脂フィルムを三層以上積層させた多層フィルムによって形成されてもよく、樹脂フィルムの単層フィルムによって形成されてもよい。さらに、基材層を構成する熱可塑性樹脂の種類や、その基材層の厚さを適宜設定することできる。
発熱体層5は、照射された電磁波のエネルギーを吸収することにより発熱する導電性の物質すなわち発熱部材を含むものであり、基材層4の裏面側に積層するように蒸着もしくは塗装されて薄膜状に形成されている。この具体例における発熱体層5は金属蒸着膜から成るように構成されている。すなわち、発熱体層5が形成された部分では、その発熱体層5全体が発熱部材を含む発熱部を構成している。この発熱体層5が発熱することによって、その発熱による熱が他の層に伝達し、例えば、その熱がシール層7に伝達した場合にはシール層7を溶融もしくは軟化させるように構成されている。
その金属蒸着膜である発熱体層5を構成する導電性物質として、例えば、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅などの金属や、これら金属の酸化物を使用することができる。また、これら金属もしくは酸化物から一種類を使用した薄膜、または二種類以上を混合した混合物を使用した薄膜を発熱体層5とすることができる。なお、これら金属および酸化物粒子を含むインクである導電性インクを薄膜状に形成された金属箔によって発熱体層5が構成されてもよい。さらに、発熱体層5を構成する導電性物質の種類や混合比や、薄膜の厚さなどは適宜変更が可能である。
例えば、アルミニウムのみを導電性物質に使用した薄膜や、アルミニウムと酸化アルミニウムとを混合した混合物を使用した薄膜を発熱体層5とすることができる。この混合物において、アルミニウムと酸化アルミニウムとの混合比は、それらの質量比が4:1〜1:9となる構成が好ましい。これらアルミニウムを使用することで、容易に取り扱えることで生産性を向上させ、かつ材料コストを低減させることができる。
また、電子レンジにより電子レンジ用容器1が加熱された際、発熱温度が160〜300℃程度となる薄膜の発熱体層5が好適に使用できる。すなわち、発熱体層5が、シール層7を構成する熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度を発熱するように構成されている。
さらに、発熱体層5の厚さは、30〜100nmが好ましい。この範囲内に発熱体層5の厚さを設定することで、電子レンジで電子レンジ用容器1が必要時間以上に加熱された場合であっても、発熱体層5にひび割れが生じて発熱を停止または抑制させることができるので、容器本体2および蓋体3が発熱体層5により過剰に加熱されることを防止できる。
熱硬化性樹脂層6は、発熱体層5の裏面側に積層するように形成され、熱硬化性の樹脂を主体として構成されている。すなわち、熱硬化性樹脂層6である薄膜は、熱硬化性の樹脂を主体とする塗膜により形成されている。したがって、蓋体3の積層構造を構成している発熱体層5は、基材層4と熱硬化性樹脂層6との間に形成されている。この熱硬化性樹脂層6は、電磁波を照射された発熱体層5が発熱し、その熱が伝達されても軟化しないように構成されている。例えば、熱硬化性樹脂層6は、加熱されることによって、重合を起こして高分子の網目構造を形成することで硬化し、硬化後は熱によって軟化しない樹脂により構成されている。
さらに、その熱硬化性樹脂層6は、接着性を有する熱硬化性樹脂を主体として構成されている。すなわち、熱硬化性樹脂層6は、接着性および熱硬化性の特性を有するように構成されている。
具体的には、その熱硬化性樹脂層6を構成する樹脂材料としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂が使用できる。特に、接着性の熱硬化性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシとポリエステルの共重合樹脂などの樹脂を主剤とし、メラミン系樹脂、イソシアネート系樹脂などの硬化剤を含む樹脂組成物からなる接着性樹脂材料が使用できる。
シール層7は、熱可塑性樹脂を主体として構成され、熱硬化性樹脂層6の裏面側に積層するように形成され、かつ蓋体3の裏面を構成するとともに、熱接着性を有する薄膜状に形成されている。すなわち、蓋体3の積層構造を構成している熱硬化性樹脂層6は、発熱体層5とシール層7との間に形成されている。また、シール層7は、熱硬化性樹脂層6とフランジ部2dの接着面とをヒートシールすることで、蓋体3と容器本体2とをヒートシールするものである。このシール層7における薄膜は、熱可塑性樹脂を主体とする塗膜により形成される。なお、シール層7は、この具体例のような塗膜でなくとも、熱可塑性樹脂から製膜されたフィルムであってもよい。
この塗膜は、熱可塑性樹脂の微粒子を溶媒に分散させた塗料を蓋体3の裏側の面に塗布し、この塗布した塗料を加熱し焼き付けて塗料中の樹脂が溶融させられることによって、薄膜状に形成される。なお、シール層7が薄膜状に形成されていればよく、その薄膜の形成方法や塗膜の形成方法などは上述した方法に限定されない。
このシール層7の熱可塑性樹脂の融点は、130〜250℃の範囲とすることが好ましい。すなわち、このシール層7は、ヒートシールなど、加熱処理によって樹脂を溶融させ、容器本体2の開口部を形成するフランジ部2dに溶着される。したがって、発熱体層5の発熱によって溶融するような融点を有する熱可塑性樹脂によりシール層7が形成される。
例えば、このシール層7に含まれる熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、MXD6ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂などを使用する。
また、このシール層7における熱可塑性樹脂の微粒子を分散させる溶媒として、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、アジピン酸ジメチルなどの二塩基酸エステル系溶媒、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒、水、あるいはこれらの溶媒混合物などの溶媒を使用する。
シール層7に含まれる熱可塑性樹脂の微粒子の平均粒子径は、10nm〜100μmの範囲内の粒径であることが好ましい。すなわち、このシール層7は、塗装性を損なわない適度な低粘度を有し、均一な厚さに塗布でき薄膜状になる微粒子径を有する熱可塑性樹脂によって形成されている。したがって、電子レンジ用容器1の密封性を維持でき、内圧上昇時における破裂を防げる接着強度が維持できるような均一の厚さで薄膜状のシール層7が形成されている。
例えば、熱可塑性樹脂微粒子の平均粒子径が10nm未満の場合、塗料の粘度が高くなり過ぎて塗装性が悪<なるおそれがある。一方、この平均粒径が100μmを越える場合、均一な塗膜化が阻害されるおそれがある。これらの結果、電子レンジ用容器1の密封性が損われたり、この容器1の内圧上昇時に蓋体3の予期せぬ破裂が生じやすくなるおそれがある。
さらに、このシール層7の厚さは、1〜15μmの範囲に設定されることが好ましい。すなわち、シール層7は、容器本体2と蓋体3とを密着させる接着強度と、蓋体3と容器本体2のフランジ部2dとを剥離させる剥離強度とがバランスよく保たれた状態で電子レンジ用容器1を密封するような厚さに形成されている。
例えば、シール層7の厚さが1μm未満の場合、容器本体2との接着強度が十分に得られないおそれがある。一方、この厚さが15μmを越える場合、シール層7側の熱可塑性樹脂の量が多くなるため、シール層7と容器本体2とのそれぞれを構成する熱可塑性樹脂の高分子同士を結びつきやすくなる。これらにより、シール層7と容器本体2との界面が溶け合って、剥離強度および接着強度を低下させにくくなるおそれがある。
なお、シール層7が蓋体3に含まれるものとして説明してきたが、容器本体2の接着面に塗膜されたものであってもよい。すなわち、容器本体2と蓋体3とが封止された状態において、蓋体3の形状を維持する表面部分と容器本体2の表面部分との間に形成されたシール層7であればよい。したがって、熱可塑性樹脂の微粒子を溶媒に分散させた塗料を、容器本体2の接着面に塗布して、容器本体2と蓋体3とをヒートシールするものであってもよい。
上述したように、この具体例における蓋体3の積層構造は、蓋体3の表面を構成する基材層4と蓋体3の裏面を構成するシール層7との間に、発熱体層5と熱硬化性樹脂層6とが設けられている。言い換えれば、蓋体3の表面から裏面へ向けて、基材層4,発熱体層5,熱硬化性樹脂層6,シール層7の順に各層が形成されているとともに、基材層4と熱硬化性樹脂層6との間に発熱体層5が形成され、かつ発熱体層5とシール層7との間に熱硬化性樹脂層6が形成されている。
その電子レンジ用容器1が、電子レンジ内で電磁波を照射されて加熱されると、容器本体2内の内容物が温められるとともに、蓋体3に含まれる発熱体層5はマイクロ波を吸収して発熱する。この発熱体層5から発生する熱は、熱硬化性樹脂層6およびシール層7に伝達される。その発熱している発熱体層5と当接するように形成されている熱硬化性樹脂層6は、この発熱体層5から直接熱が伝達されても溶融することはなく、熱硬化性樹脂層6を介して発熱体層5が発熱した熱が伝達されるシール層7は、その熱によって軟化し、あるいは融解する。
したがって、この蓋体3によれば、電子レンジでの加熱により発熱体層5が発熱し、その熱が伝達することで熱可塑性樹脂製のシール層7を溶融させることができるので、加熱された蓋体3を容器本体2から容易に剥離できるとともに、発熱体層5とシール層7との間に形成された熱硬化性樹脂層6によって発熱体層5を蓋体3に一体化させて容器本体2から剥離することができるようになる。詳細には、発熱体層5とシール層7との間に形成された熱硬化性樹脂層6は、発熱体層5による熱によって溶融しないため、シール層7が熱によって溶融した状態でも、熱硬化性樹脂層6によって発熱体層5を蓋体3の裏面側にコーティングするような状態が維持されるので、その熱硬化性樹脂層6と発熱体層5とが蓋体3と一体化して容器本体2から剥離することで、発熱体層5が容器本体2の接着面に残存することを防止できる。さらに、熱硬化性樹脂層6が、接着性を有する樹脂を主体としていることにより、電子レンジ加熱前の状態で、発熱体層5とシール層7との密着性を向上することができるため、電子レンジ加熱前の容器の十分な密着性を確保することができる。
なお、この具体例における蓋体3では、シール層7が形成されている部分と基材層4との間に発熱体層5および熱硬化性樹脂層6が形成されていればよい。すなわち、シール層7が基材層4の裏面側を全体的に覆うようにして形成されていなくてもよく、容器本体2のフランジ部2bと基材層4とに挟まれる部分にのみシール層7が形成されていてもよい。このように、シール層7が形成されている部分に、発熱体層5および熱硬化性樹脂層6を構成することによって、蓋体3の面全体に発熱体層5および熱硬化性樹脂層6を形成する必要がなくなり、材料コストを低減させることができるとともに、発熱体層5の発熱による蓋体3の過度の損傷を防止することができる。
さらに、蓋体2の周縁部が容器本体2のフランジ部2dよりも外方に突出している場合、その突出している部分に該当する積層構造には発熱体層5が含まれていなくてもよい。すなわち、基材層4とフランジ部2dとに挟まれていない部分における積層構造は、例えば、基材層4と熱硬化性樹脂層6とが密着するように形成されていてもよい。言い換えれば、熱硬化性樹脂層6が発熱体層5を覆うようにして基材層4に当接するように形成されていてもよい。
次に、他の具体例における蓋体について説明する。この具体例における蓋体は、上述した具体例における蓋体の構成とは異なり、基材層とシール層との間に発熱体層が形成されていない部分を含むように構成されている。さらに、この具体例における蓋体では、発熱体層に含まれる発熱部分とシール層との間に保護層が形成されている。なお、上述した具体例と同様の構成については、その参照符号を引用するとともに、ここでの説明を省略する。
図4に例示するように、この具体例における蓋体30には、照射された電磁波のエネルギーを吸収することにより発熱する導電性の物質を含む発熱部50aと、その導電性の物質を含まない非発熱部50bとを含むように構成されている発熱体層50が形成されている。言い換えれば、発熱部50aおよび非発熱部50bが蓋体30の面方向に交互に形成されて発熱体層50を構成している。
その蓋体30における発熱部50aおよび非発熱部50bの配置例として、図5に例示するように、発熱部50aを所定の範囲に分割するように各発熱部50aとの間に非発熱部50bが形成されているとともに、その非発熱部50bが格子状に形成されている。すなわち、この具体例では、非発熱部50bによってひし形状に分割された発熱部50aが形成されている。言い換えれば、複数の直線状に形成された非発熱部50bは、蓋体30における外周縁を構成する直線状の辺に対して直角以外の角度で交差するように構成されている。その非発熱部50bは、図4に例示するように、熱硬化性樹脂層60と一体の熱可塑性樹脂によって形成されている。
その発熱部50aは、基材層4に薄膜状に蒸着もしくは塗装され、発熱することによりシール層7を溶融させるものである。また、発熱部50aは、導電性物質として、例えば、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅などの金属や、これら金属の酸化物によって構成されている。すなわち、これら金属および酸化物から1種類を使用した薄膜、または2種類以上を混合した混合物を使用した薄膜とすることができる。なお、これら金属および酸化物粒子を含むインクである導電性インクを薄膜状にした金属箔によって発熱部が形成されてもよい。
なお、発熱部50aは、その導電性物質の種類や混合比や厚さなどは適宜変更が可能である。例えば、アルミニウムのみを導電性物質に使用した薄膜や、アルミニウムと酸化アルミニウムとを混合した混合物を使用した薄膜により発熱部50aが構成される。この混合物において、アルミニウムと酸化アルミニウムとの混合比は、それらの質量比が4:1〜1:9となるものが好ましい。これらアルミニウムを使用することで、容易に取り扱えることで生産性を向上させ、かつ材料コストを低減させることができる。
また、発熱体層50の厚さは、30〜100nmが好ましい。この範囲内に発熱体層50の厚さを設定することで、電子レンジで電子レンジ用容器1が必要時間以上に加熱された場合であっても、発熱体層50にひび割れが生じて発熱を停止または抑制させることができるので、容器本体2が発熱部50aにより必要以上に加熱されることを防止できる。
さらに、非発熱部50bが直線状に形成されている場合、蓋体30の直線状の一辺に対する非発熱部50bの傾斜角度は、20°〜70°の範囲であることが好ましく、30°〜60°の範囲であることがより好ましい。また、非発熱部50bによって分割された発熱部50aは、その1つの面積が最大20mm2〜300mm2の範囲であることが好ましい。さらに、電子レンジにより電子レンジ用容器1が加熱された際、分割された発熱部50aにおける発熱温度は、130〜250℃程度のものが好適に使用できる。
また、この具体例における蓋体30は、発熱部50aの裏面側に積層するように形成され、かつ耐酸性または耐アルカリ性を有する保護層8を含むように構成されている。すなわち、保護層8は、発熱体層50における発熱部50aと熱硬化性樹脂層60との間に形成されている。また、保護層8を構成する樹脂材料として、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂や塩化ビニル系樹脂などが使用できる。
ここで、非発熱部50bの形成方法について説明する。その一例として、上述した具体例における発熱体層5のように基材層4の裏面一面に積層形成された発熱体層の一部を、所定の薬剤によって洗浄する抜き加工が挙げられる。詳細には、基材層4の一面に形成された発熱体層のうち発熱部50aとして残したい部分に、耐酸性または耐アルカリ性の保護層8を積層形成させる。そして、保護層8によって保護されていない発熱部は、酸やアルカリなどの薬剤によって洗浄されて取り除かれ、その取り除かれた部分が溝となる。すなわち、保護層8は、発熱層50における発熱部50aを保護している。そのようにして形成された溝を埋めるようにして、接着性を有する熱硬化性樹脂層60を構成する塗膜または薄膜が塗布される。つまり、熱硬化性樹脂層60によって、各発熱部50aの間に溝が埋められ、この埋められた部分が、熱硬化性樹脂層60を構成する樹脂によって形成された非発熱部50bとなる。
なお、非発熱部50bの形成方法は、上述した方法に限定されない。例えば、まず、第2基材層4bの裏面側のうちの非発熱部50bとしたい箇所に、発熱部50aと密着性の悪い熱硬化性樹脂層を形成する。その密着性の悪い熱硬化性樹脂層が形成された後に、発熱部50aが形成され、かつ、その形成された発熱部50aと密着性の悪い熱硬化性樹脂層が除去されることにより、非発熱部50bが形成される方法であってもよい。さらに、発熱部50aを第2基材層4bの裏面上に蒸着または塗装する際に、部分的に発熱部50aを構成する金属材料を蒸着または塗装させてもよい。
上述したように、この具体例における蓋体30の積層構造は、蓋体30の表面を構成する基材層4と蓋体30の裏面を構成するシール層7との間に、熱硬化性樹脂層60とが設けられている。より具体的には、シール層7の表面側の面に熱硬化性樹脂層60が形成され、その熱硬化性樹脂層60と基材層4との間に、基材層4の裏面側の面上に積層形成された発熱部50aおよびその発熱体層50に積層するように形成された保護層8が形成された部分と、それら発熱部50aおよび保護層8が形成されていない部分とが設けられている。言い換えれば、蓋体30の表面から裏面へ向けて、基材層4,発熱部50a,保護層8,熱硬化性樹脂層60,シール層7の順に各層が形成されている部分と、基材層4,非発熱部50bを含む熱硬化性樹脂層60,シール層7の順に各層が形成されている部分とが含まれている。
この蓋体30を含む電子レンジ用容器10が、電子レンジ内で電磁波を照射されて加熱されると、容器本体2内の内容物が温められるとともに、蓋体30に含まれる発熱部50aはマイクロ波を吸収して発熱する。この発熱体層50が発生する熱は、保護層8と熱硬化性樹脂層60とシール層7とに伝達される。その発熱部50aが発熱した熱は、この発熱部50aから直接的に熱硬化性樹脂層60に伝達されて、または保護層8を介して発熱部50aから間接的に伝達されることになるが、熱硬化性樹脂層60は、熱によって融解せずにその形状が維持される。さらに、熱硬化性樹脂層60に伝達された熱は、シール層7に伝達される。シール層7は、発熱体層50が発熱した熱によって軟化し、あるいは融解する。すなわち、発熱体層50のうちの非発熱部50bが形成されている部分からは発熱が生じない。
したがって、発熱部50aと非発熱部50bとを有する発熱体層50を含む蓋体30によれば、発熱部50aが非発熱部50bによって所定の大きさに分割されていることにより、発熱部50aによる発熱温度を、基材層4の全面に発熱部が形成された場合に比べて抑制させることができる。すなわち、電子レンジにより電子レンジ用容器10が加熱された場合に、発熱体層50が必要以上に発熱することを防止することができ、蓋体30の損傷を防止することができる。
なお、この具体例では、図5に例示するように、格子状に形成された非発熱部50bによってひし形状に設けられた発熱部50aを有する構成について説明したが、この発明に係る電子レンジ用容器はこれに限定されない。したがって、発熱部がバランス良く配置されていればよく、その発熱部および非発熱部の形状は特に限定されない。すなわち、電子レンジにより電子レンジ用容器が加熱された場合に、発熱体層が容器本体の縁面におけるシール層を均一に加熱することができるように構成されていればよい。
例えば、図6に例示するように、発熱部70aと非発熱部70bとが平行な所定の幅に設定された直線状に形成されている発熱体層70を構成してもよい。また、図7に例示するように、円形状に形成された発熱部80aが千鳥状に配列され、その発熱部80aの周りに非発熱部80bが形成されている発熱体層80を構成していてもよい。
要は、この発明に係る電子レンジ用容器は、蓋体と容器本体との接着面が発熱してその接着面の接着層がほぼ均一に溶解して、容易に蓋体を引き剥がして容器を開封でき、かつ、蓋体の面方向における蓋体と容器本体との環状の接着部分の内側において、蓋体に必要以上に熱が発生しない構造であればよい。その構造例として、この発明に含まれる発熱体層には、所定の規則性をもって均一に配置された発熱部が設けられていればよい。
以上説明したように、この実施形態における電子レンジ用容器によれば、電子レンジ用容器を電子レンジで加熱すると、発熱体層が電磁波を吸収して発熱し、その熱によってシール層を構成する熱可塑性樹脂が溶融する。これにより、シール層による蓋体と容器本体との接着強度が低下する。
なお、上述で具体例に基づいて説明した電子レンジ用容器は、この発明における一実施形態であって、この発明に係る電子レンジ用容器はこれに限定されるものではない。この発明を逸脱しない範囲内において、構成部材の材質の変更や、その形状の変更など適宜変更が可能である。
例えば、蓋体に形成される積層構造は、蓋体の全体において一様な積層に構成されていなくてもよい。すなわち、容器本体のフランジ部と接着する部分と、これと接着しない部分とにおいて、異なる積層構造を有するものであってもよい。例えば、そのフランジ部と接着する部分における積層構造には少なくとも発熱部を含む発熱体層およびシール層が含まれ、フランジ部と接着しない部分における蓋体の積層構造は、シール層と発熱部を含む発熱体層と有さない積層構造であってもよい。
また、積層構造において、各層の厚さを適宜変更して組み合わせた積層を構成するものであってもよい。例えば、図示するように、蓋体の表面を構成する基材層が最も厚く構成されている。また、基材層が多層フィルムにより構成されている場合には、表面を構成する基材層が最も厚く、次いで蓋体の裏面側に形成されたフィルムが厚く形成されてもよい。なお、各層の厚さはこれに限定されず、その厚さ範囲を適宜設定し組み合わせた積層構造を備えることができる。さらに、積層構造において、シール層と発熱体層との間に、熱硬化性樹脂層の他に、それ以外の層が形成されていてもよい。例えば、フィルム層を追加して、蓋体の表面から裏面へ向けて、基材層,発熱体層,フィルム層,熱硬化性樹脂層,シール層の順に各層が形成されるようにしてもよい。
さらに、各層の境界面(界面)を、蓋体の表面側もしくは蓋体の裏面側と表現して説明してきたが、これは説明の便宜上、その面が形成された方向を示すための表現である。すなわち、その各層の境界面を単に表面と表現しても構わない。