JP2014031532A - 電池蓋用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Fe:0.8〜2.0mass%、Si:0.03〜0.20mass%、Ti:0.004〜0.050mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金板であって、当該アルミニウム合金板の表面に20〜500Åの平均厚さを有するアルミニウム酸化皮膜厚が形成されており、かつ、当該アルミニウム合金板に金属間化合物が分散しており、当該アルミニウム合金板表面において円相当直径1〜15μmを有する金属間化合物間の平均壁間距離が20μm以下であり、かつ、当該金属間化合物が存在しない領域に描ける円の最大直径が100μm以下であることを特徴とする電池蓋用アルミニウム合金板、ならびに、その製造方法。
【選択図】図1
Description
1.アルミニウム合金板の成分組成
先ず、本発明に用いる電池蓋用アルミニウム合金板の成分組成と限定理由について説明する。本発明に係るアルミニウム合金板は、Fe:0.8〜2.0mass%、Si:0.03〜0.20mass%、Ti:0.004〜0.050mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなる。
Feはレーザ溶接性、強度、金属組織に大きな影響を及ぼす重要な成分元素である。母相中で大部分がAl−Fe系金属間化合物として存在している。Al−Fe系金属間化合物が存在することで、レーザ吸収率が増加し、レーザ溶接時の溶け込みを深くする効果が発揮される。
以上により、Fe量を0.8%〜2.0%とする。なお、好ましいFe含有量は1.0〜1.6%である。
Siは、レーザ溶接性に大きな影響を及ぼす元素である。Si含有量が0.03%未満では、高純度のアルミニウム地金を使用する必要があり原料コストが増加する。一方、0.20%を超えると、液相線と固相線の温度差が大きくなる。この温度差が大きくなることで、レーザ溶接直後の凝固時に残存する液相量が増え、その液相残存部に凝固収縮の応力が加わって溶接割れが発生し易くなる。以上により、Si含有量を0.03〜0.20%とする。なお、好ましいSi含有量は0.04〜0.15%である。
Tiは、アルミニウム合金鋳塊の組織状態に大きな影響を及ぼす元素である。Ti含有量が0.004%未満では、鋳塊の結晶粒が微細化されず粗大結晶粒組織となる。その結果、アルミニウム合金板の結晶粒が大きくなり肌荒れの発生につながる問題がある。一方、Ti含有量が0.050%を超えると、結晶粒の粗大結晶粒組織化を防止する効果が飽和する。更に、粗大なAl−Ti系金属間化合物が形成され、この金属間化合物が圧延板にスジ状に分布して表面欠陥の原因となる。以上により、Ti含有量を0.004〜0.050%とする。なお、好ましいTi含有量は、0.007〜0.030である。
結晶粒組織を微細化するために、Tiと組合せてB及びCの少なくとも一方を微量添加してもよい。B及びCの両方を添加する場合には両方の合計量を、これに代わっていずれか一方を添加する場合にはその添加量を、0.0001〜0.0020%とするのが好ましい。なお、より好ましい添加量は、0.0005〜0.0015%である。前記添加量が0.0001%未満では、結晶粒微細化の効果が小さい。一方、前記添加量が0.0020%を超えると結晶粒微細化効果が飽和するだけでなく、Ti−B系化合物やTi−C系化合物の粗大凝集物による表面欠陥が生じ易くなる。
不可避的不純物として、Cu:0.03%以下、Mn:0.03%以下、Mg:0.03%以下、Cr:0.03%以下、Zn:0.03%以下、Zr:0.03%以下、ならびに、その他成分として合計が0.05%以下について、これらの1種又は2種以上を含有させてもよい。このような成分含有量であれば、電池ケース用アルミニウム合金板としての特性を損なうことがない。
アルミニウム合金板表面には酸化皮膜が存在しており、この酸化皮膜が厚過ぎるとレーザ溶接ビードのバラツキを助長する。本発明に係るアルミニウム合金板では、表面の酸化皮膜の平均厚さを20〜500Åと規定する。大気中においてアルミニウム合金板を扱う上で、この平均厚さを20Å未満とすることは技術的に困難である。一方、この平均厚さが500Åを超える厚い場合は、アルミニウム合金板の製造途中の加熱処理時において生成する高温酸化皮膜が表面に多く存在することになる。そうすると、高温酸化皮膜が存在する部位と存在しない部位との酸化皮膜厚さの差異が大きくなる。その結果、レーザ光吸収のバラツキやレーザ溶接部への巻き込みにより、溶け込み深さやビード幅の安定性が低下する。
以上により、アルミニウム合金板表面の酸化皮膜の平均厚さを20〜500Åとする。なお、好ましい平均厚さは20〜400Åである。より好ましい平均厚さは20〜200Åである。なお、酸化皮膜厚は、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis、X線光電子分光法)の表面分析手段により一つの試料について5箇所測定され、その算術平均値をもって平均厚さとする。
金属間化合物のサイズ及び分散状態は、レーザ溶接性に大きな影響を及ぼす。アルミニウム合金板には、金属間化合物が分散している。そこで、当該アルミニウム合金板表面において円相当直径が1〜15μmの金属間化合物間の平均壁間距離を20μm以下とし、かつ、この円相当直径が1〜15μmの金属間化合物が存在しない領域に描ける円の最大直径を100μm以下とする。これによって、溶け込み深さやビード幅が均一な安定した溶接部が得られると共に、溶接欠陥の無い健全な溶接部が得られる。このような効果は、金属間化合物によってレーザ吸収率を増加できることで、また金属間化合物を均一分散することで得られるものである。
(壁間距離)=(近接する粒子の重心間距離)−(2個の粒子の円相当半径の和)
アルミニウム合金板表面を観察して壁間距離を測定するには、例えば走査型電子顕微鏡が用いられる。なお、測定においては、円相当直径が1μm以上の金属間化合物を視認できる倍率で観察する必要がある。
次に、本発明に係る電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法について詳細に説明する。本発明に係る電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法は第1の実施態様において、請求項1に記載の電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法であって、Fe:0.8〜2.0mass%、Si:0.03〜0.20mass%、Ti:0.004〜0.050mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鋳造する鋳造工程と;鋳塊を温度450〜620℃で保持時間1〜20時間で均質化する均質化処理工程と;鋳塊表面からチル層及び粗大セル層の境界面までの最小距離をtmin(mm)、鋳塊表面から粗大セル層及び微細セル層の境界面までの最大距離をtmax(mm)として、面削量T(mm)が3≦T<tmin又はtmax<Tを満たすように鋳塊を面削する面削工程と;熱間圧延工程と;熱間圧延材を冷間圧延する冷間圧延工程と;冷間圧延材を焼鈍する焼鈍工程と;を備える。
まず、上記成分組成範囲内に調整されたアルミニウム合金溶湯に脱ガス処理、ろ過処理等の溶湯処理を適宜施し、その後、DC鋳造法等の常法に従い鋳造する。
面削工程の前後の少なくともいずれかにおいて、鋳塊を温度450〜620℃で保持時間1〜20時間で均質化する均質化処理工程が設けられる。本発明では、面削工程の前に均質化処理工程を設ける場合を第1実施態様に規定し、面削工程の後に均質化処理工程を設ける場合を第2実施態様に規定する。均質化処理は、最終板での金属組織や金属間化合物のサイズと分散状態に大きな影響を及ぼす。均質化処理の温度が450℃未満又は均質化処理の保持時間が1時間未満では、均質化効果が小さく、熱間圧延工程、中間焼鈍工程、最終焼鈍工程において再結晶粒が粗大化する。このような粗大再結晶粒が原因となって、蓋の取り付けや防爆のための窪みをコイニング加工で成形する場合に肌荒れが発生する。均質化処理の温度が620℃を超えると、微小な金属間化合物が固溶し、金属間化合物が粗大化するため、金属間化合物の存在しない領域広くなる。これにより、安定したレーザ溶接性を得ることができない。また、均質化処理の保持時間が20時間を超えると、均質化効果が飽和するため製造コストの観点から好ましくない。以上により、均質化処理条件は、温度450〜620℃で保持時間1〜20時間とする。なお、好ましい均質化処理条件は、温度480〜600℃で保持時間3〜15時間である。均質化処理を行った鋳塊は十分に均質化されているため、続く熱間圧延工程における加熱保持工程での保持時間、保持温度は特に制限されるものではなく、通常の条件を採用してもよい。
鋳造工程後の鋳塊は、一旦室温下で保持された後に面削され(第2、3実施態様)、均質化処理工程後の鋳塊も一旦室温下で保持された後に面削される(第1実施態様)。面削量は、アルミニウム合金板表面における金属間化合物のサイズと分散状態に大きな影響を及ぼす。図3に、DC鋳造法の概念図と冷却速度の変化を示すグラフを示す。DC鋳型内に注入された溶湯は、水冷された鋳型壁に接触し急激に冷却される。凝固生成した鋳塊表層は収縮し、鋳塊表面と鋳型との間に空隙が生じる。この空隙の伝熱抵抗は、鋳型やスプレー水に比べて非常に大きいので鋳塊から外部へ拡散する熱量は減少し、それに伴い冷却速度も減少する。鋳塊が降下してスプレー水に鋳塊表面が接すると、冷却速度が急激に増加する。水冷された鋳型壁に接触し急激に冷却される領域ではチル層と呼ばれる微細なミクロ凝固組織が、鋳塊表面と鋳型との間に空隙が生じることで冷却速度が減少する領域では、粗大セル層と呼ばれる粗大なミクロ凝固組織が、そして鋳塊が降下してスプレー水に鋳塊表面が接すると、冷却速度が急激に増加する領域では、微細セル層と呼ばれる微細なミクロ凝固組織が生成される。粗大セル層では、15μmを超える粗大な金属間化合物が晶出し易く、それにより円相当直径1〜15μmの金属間化合物の存在しない領域が形成され易い。アルミニウム合金板表面に粗大セル層が露出して残留していると、安定したレーザ溶接性を得ることができない。そこで、アルミニウム合金板表面に粗大セル層が露出、残留しないように、面削量を調整する必要がある。なお、鋳造速度や冷却条件、溶湯温度等の鋳造条件によって粗大セル層の存在位置、厚さが変化するため、単純に面削量を決定することはできない。
4−4−1.加熱保持工程
面削された鋳塊は熱間圧延工程にかけられるが、熱間圧延工程は、圧延前に面削鋳塊を所定温度で所定時間加熱する加熱保持工程を含む。このように加熱された鋳塊が、次に熱間圧延される。ここで、面削工程前後に前述の均質化処理を行わないで、熱間圧延工程における加熱保持工程を適切な条件(保持温度と保持時間)に設定することにより、この加熱保持工程をもって、圧延前の加熱効果と共に均質化処理効果も付与するようにしてもよい(第3実施態様)。このような加熱保持工程とすることにより、均質化処理とほぼ同様の効果が得られるだけでなく、面削工程前後に均質化処理工程を設けた場合に比べて、製造工程数や製造コストの削減の点で有利となる。一方で、均質化処理を行わず、かつ、均質化処理効果が得られない条件で加熱保持工程を行った場合には、熱間粗圧延工程及び熱間仕上圧延工程、ならびに、中間焼鈍工程及び最終焼鈍工程において再結晶粒が粗大化する。更にこのような粗大再結晶粒が原因となって、耳率が増大し、また成形後の肌荒れが発生する。
圧延工程としては、一般的な熱間圧延条件が採用され、特に制限されるものではない。例えば、380〜550℃の開始温度で、200〜370℃の終了温度が採用される。
熱間圧延工程にかけられた圧延材は、冷間圧延工程にかけられる。この冷間圧延工程における圧下率は、続く焼鈍工程における再結晶挙動に大きな影響を及ぼす。圧下率が50%未満では、蓄積される歪量が小さいため再結晶粒が粗大化する場合がある。その結果、肌荒れの原因となる。一方、圧下率が85%を超えると、冷間圧延回数が増加するため製造コストの観点で好ましくない。そのため、冷間圧延工程における圧下率は、50〜85%とするのが好ましい。なお、より好ましい圧下率は55〜80%である。
最終アルミニウム合金板の調質に合わせて、前述の冷間圧延工程後に最終焼鈍工程にかけてもよく、或いは、前述の冷間圧延工程後に中間焼鈍工程にかけた後に、更なる冷間圧延工程として最終冷間圧延を施してもよい。最終焼鈍工程及び中間焼鈍工程の条件としては特に限定されず、常法に従って行えばよい。好ましい焼鈍条件としては、バッチ式焼鈍炉を用いる場合は温度350〜450℃で1〜8時間の保持時間であり、連続焼鈍炉を用いる場合は温度400〜550℃で0〜30秒の保持時間である(ここで、保持時間0秒とは、所定温度に到達した後に直ちに冷却することを意味する)。また、中間焼鈍工程後の最終冷間圧延工程条件についても常法に従って行えばよいが、圧下率は通常20〜60%が好ましい。
第1実施態様は、面削工程前に均質化処理工程を備え、第2実施態様は、面削工程後に均質化処理工程を備える。このように、第1、2実施態様では均質化処理工程を備えるので、後述の第3実施態様と比べた顕著な均質化効果として、金属組織と金属間化合物における良好なサイズと分散状態が得られる。なお、第2実施態様では、均質化処理温度から鋳塊を室温下に保持してから、熱間圧延における加熱保持工程まで加熱される。そして、加熱保持工程から直ちに熱間圧延するか、或いは、熱間圧延の開始温度まで冷却してから熱間圧延が行われる。
表1に示す組成のアルミニウム合金を、半連続鋳造方により鋳造した。なお、0.01%未満の成分については、0.00%とした。得られた鋳塊を表2及び3に示す製造条件により、最終厚のアルミニウム合金板を得た。第1実施様態では、均質化処理し、鋳塊を室温まで冷却後に面削し、次いで、面削した鋳塊を熱間圧延工程における加熱保持工程において加熱した。更に、加熱した鋳塊を熱間圧延、冷間圧延、中間(最終)焼鈍、ならびに、必要に応じて最終冷間圧延の各工程をこの順序で施こすことにより、表2、3に示す最終厚のアルミニウム合金板を得た。第2実施様態では、鋳塊を面削視た後、均質化処理し、次いで、面削した鋳塊を熱間圧延工程における加熱保持工程において加熱した。更に、加熱した鋳塊を熱間圧延、冷間圧延、中間(最終)焼鈍、ならびに、必要に応じて最終冷間圧延の各工程をこの順序で施こすことにより、表2、3に示す最終厚のアルミニウム合金板を得た。第3実施様態では、半連続鋳造方により鋳造した鋳塊を面削し、均質化処理を兼ねる工程としての熱間圧延工程における加熱保持工程において面削鋳塊を加熱した。熱間圧延工程における加熱保持工程の加熱温度と熱間圧延開始温度の温度差が30℃以下の場合には、加熱保持工程から冷却段階を経ずに熱間圧延、冷間圧延、中間(最終)焼鈍、ならびに、必要に応じて最終冷間圧延の各工程をこの順序で施こすことにより、表2、3に示す最終厚のアルミニウム合金板を得た。また、熱間圧延工程における加熱保持工程の加熱温度と熱間圧延開始温度の温度差が30℃を超えた場合には、加熱保持工程終了後に熱間圧延の開始温度まで冷却してから熱間圧延、冷間圧延、中間(最終)焼鈍、ならびに、必要に応じて最終冷間圧延の各工程をこの順序で施こすことにより、表2、3に示す最終厚のアルミニウム合金板を得た(以上、第3実施様態)。なお、表2、3において、均質化処理及び最終冷間圧延の工程において「−」とあるのは、これら工程を行わなかったことを意味する。また、前述の通り、面削量Tは得られた鋳塊のスライスからtmin及びtmaxを測定して決定した。面削量T、tmin及びtmaxも表2、3に示す。
アルミニウム合金板試料の表面の酸化皮膜厚は、ESCAにより測定した。具体的には、酸素強度に注目し、その強度が表面の最高強度の半分の値になるまでのスパッタリング時間と、純粋なアルミニウム酸化物を用いて測定したスパッタリング速度から、アルミニウム合金板試料表面の酸化皮膜厚を算定した。一つの試料について、5箇所測定してその算術平均値を算出した。結果を表4、5に示す。
アルミニウム合金板表面に分散する、円相当直径1〜15μmの金属間化合物の分散状態は、前述の通り、走査型電子顕微鏡を用いて観察、測定を行った。測定した円相当直径1〜15μmの金属間化合物の平均壁間距離、ならびに、当該金属間化合物が存在しない領域に描ける円の最大直径を表4、5に示す。
上記アルミニウム合金板試料(短辺:60mm、長辺:100mm、厚さ:1.3mm)を長辺同士で突合わせて、全長100mmにわたってレーザ溶接試験を行った。実際の電池では蓋材は缶体と接合されるが、この評価試験では蓋材のみのレーザ溶接性を評価した。なお、突合せ面にはフライス盤を用いて平面加工を施した。溶接速度として、1m/min、5m/min、20m/minで試験を行った。集光径は0.1mmφ、出力は圧延材の板厚0.6mmに対して平均溶け込み深さが70%となるように調整し、連続波(CW、Continuous Wave)条件でレーザ溶接した。終端部で出力を段階的に低下させる終端処理は行わなかった。
上記レーザ溶接後の試料について、溶接部の全長(100mm)にわたって外観を目視で観察した。更に、溶接部断面(溶接方向に対する直交断面)を目視で10視野観察した。なお、溶接部断面における各視野の間隔は10mm以上設けた。
外観観察及び断面観察のいずれにおいても、溶接割れやビード欠陥が発生していなかったものを良好(○印)、溶接割れとビード欠陥の少なくともいずれかが発生しているものを不良(×印)と判定した。結果を表4、5に示す。
健全性評価と同様にして、レーザ溶接後の試料について外観観察と断面観察を行った。ビード幅に関しては、溶接部の全長100mmにおいて任意位置のビード幅を10箇所測定し、その平均ビード幅waveを算出した。また,溶け込み深さに関しては、溶接部断面(溶接方向に対し直行断面)10視野における溶け込み深さを測定し、その平均溶け込み深さでdaveを算出した。
更に、上記アルミニウム合金板試料を用いて、コイニング試験を行った。図5に示す断面形状で、長さ6mmのくぼみ形状を形成させた。くぼみの内部及び周辺の外観を観察し、肌荒れあるいは表面欠陥の有無を評価した。コイニング後、肌荒れや表面欠陥が発生しなかったものを優良(○印)、発生したものの実用上問題の無いものを良好(△印)、肌荒れあるいは表面欠陥が発生したものを不良(×印)とした。結果を、表4、5に示す。
A・・・円相当直径1〜15μmの金属間化合物が存在しない領域
C・・・Aに描ける最大直径の円
D・・・Cの直径
tmin・・・鋳塊表面からチル層及び粗大セル層の境界面までの最小距離(mm)
tmax・・・鋳塊表面から粗大セル層及び微細セル層の境界面までの最大距離(mm)
表1に示す組成のアルミニウム合金を、半連続鋳造方により鋳造した。なお、0.01%未満の成分については、0.00%とした。得られた鋳塊を表2及び3に示す製造条件により、最終厚のアルミニウム合金板を得た。第1実施様態では、均質化処理し、鋳塊を室温まで冷却後に面削し、次いで、面削した鋳塊を熱間圧延工程における加熱保持工程において加熱した。更に、加熱した鋳塊を熱間圧延、冷間圧延、中間(最終)焼鈍、ならびに、必要に応じて最終冷間圧延の各工程をこの順序で施こすことにより、表2、3に示す最終厚のアルミニウム合金板を得た。第2実施様態では、鋳塊を面削視た後、均質化処理し、次いで、面削した鋳塊を熱間圧延工程における加熱保持工程において加熱した。更に、加熱した鋳塊を熱間圧延、冷間圧延、中間(最終)焼鈍、ならびに、必要に応じて最終冷間圧延の各工程をこの順序で施こすことにより、表2、3に示す最終厚のアルミニウム合金板を得た。第3実施様態では、半連続鋳造方により鋳造した鋳塊を面削し、均質化処理を兼ねる工程としての熱間圧延工程における加熱保持工程において面削鋳塊を加熱した。熱間圧延工程における加熱保持工程の加熱温度と熱間圧延開始温度の温度差が30℃以下の場合には、加熱保持工程から冷却段階を経ずに熱間圧延、冷間圧延、中間(最終)焼鈍、ならびに、必要に応じて最終冷間圧延の各工程をこの順序で施こすことにより、表2、3に示す最終厚のアルミニウム合金板を得た。また、熱間圧延工程における加熱保持工程の加熱温度と熱間圧延開始温度の温度差が30℃を超えた場合には、加熱保持工程終了後に熱間圧延の開始温度まで冷却してから熱間圧延、冷間圧延、中間(最終)焼鈍、ならびに、必要に応じて最終冷間圧延の各工程をこの順序で施こすことにより、表2、3に示す最終厚のアルミニウム合金板を得た(以上、第3実施様態)。なお、表2、3において、均質化処理及び最終冷間圧延の工程において「−」とあるのは、これら工程を行わなかったことを意味する。また、前述の通り、面削量Tは得られた鋳塊のスライスからtmin及びtmaxを測定して決定した。面削量T、tmin及びtmaxも表2、3に示す。
Claims (7)
- Fe:0.8〜2.0mass%、Si:0.03〜0.20mass%、Ti:0.004〜0.050mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金板であって、当該アルミニウム合金板の表面に20〜500Åの平均厚さを有するアルミニウム酸化皮膜が形成されており、かつ、当該アルミニウム合金板に金属間化合物が分散しており、当該アルミニウム合金板表面において円相当直径1〜15μmを有する金属間化合物間の平均壁間距離が20μm以下であり、かつ、当該金属間化合物が存在しない領域に描ける円の最大直径が100μm以下であることを特徴とする電池蓋用アルミニウム合金板。
- 請求項1に記載の電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法であって、Fe:0.8〜2.0mass%、Si:0.03〜0.20mass%、Ti:0.004〜0.050mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鋳造する鋳造工程と;鋳塊を温度450〜620℃で保持時間1〜20時間で均質化する均質化処理工程と;鋳塊表面からチル層及び粗大セル層の境界面までの最小距離をtmin(mm)、鋳塊表面から粗大セル層及び微細セル層の境界面までの最大距離をtmax(mm)として、面削量T(mm)が3≦T<tmin又はtmax<Tを満たすように鋳塊を面削する面削工程と;熱間圧延工程と;熱間圧延材を冷間圧延する冷間圧延工程と;冷間圧延材を焼鈍する焼鈍工程と;を備えることを特徴とする電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
- 請求項1に記載の電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法であって、Fe:0.8〜2.0mass%、Si:0.03〜0.20mass%、Ti:0.004〜0.050mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鋳造する鋳造工程と;鋳塊表面からチル層及び粗大セル層の境界面までの最小距離をtmin(mm)、鋳塊表面から粗大セル層及び微細セル層の境界面までの最大距離をtmax(mm)として、面削量T(mm)が3≦T<tmin又はtmax<Tを満たすように鋳塊を面削する面削工程と;面削後の鋳塊を温度450〜620℃で保持時間1〜20時間で均質化する均質化処理工程と;均質化処理後の鋳塊を室温下で保持する室温保持工程と;熱間圧延工程と;熱間圧延材を冷間圧延する冷間圧延工程と;冷間圧延材を焼鈍する焼鈍工程と;を備えることを特徴とする電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
- 請求項1に記載の電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法であって、Fe:0.8〜2.0mass%、Si:0.03〜0.20mass%、Ti:0.004〜0.050mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるアルミニウム合金を鋳造する鋳造工程と;均質化処理を施すことなく、鋳塊表面からチル層及び粗大セル層の境界面までの最小距離をtmin(mm)、鋳塊表面から粗大セル層及び微細セル層の境界面までの最大距離をtmax(mm)として、面削量T(mm)が3≦T<tmin又はtmax<Tを満たすように鋳塊を面削する面削工程と;圧延前の加熱保持工程が、面削後の鋳塊を温度450〜620℃で保持時間1〜20時間で保持するものであり、これに続く圧延工程を含む熱間圧延工程と;熱間圧延材を冷間圧延する冷間圧延工程と;冷間圧延材を焼鈍する焼鈍工程と;を備えることを特徴とする電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
- 加熱を伴ういずれかの工程あるいは複数の工程を酸化抑制雰囲気下で実施する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
- 途中工程あるいは最終の工程で、アルミニウム合金板表面を酸洗浄又はアルカリ洗浄する段階を含む、請求項2〜5のいずれか一項に記載の電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
- 前記焼鈍工程の後に更なる冷間圧延工程を備える、請求項2〜6のいずれか一項に記載の電池蓋用アルミニウム合金板の製造方法。
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