JP2014027241A - 有機半導体素子及び有機半導体素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】容易に製造可能であり、且つチャンネル間距離が短縮され、これにより、低駆動電圧化、及び大駆動電流化された有機半導体素子を提供すること。また、前述の有機半導体素子を容易に形成可能な、有機半導体素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】基板とソース電極及びドレイン電極との間の絶縁膜を、加熱により所定の形状変化を起すものとし、この絶縁膜上にソース電極とドレイン電極とを形成させた上で、絶縁膜を加熱して前述の所定の形状変化を生じさせることにより、チャンネル間距離の短いソース電極とドレイン電極とを形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機半導体素子及び有機半導体素子の製造方法に関する。
近年、有機半導体の研究とともに、有機半導体による種々の有機電界効果トランジスタ(以下、有機FETという)が提案されている。従来のアモルファスシリコンや、ポリシリコン等による、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)に比べ、低温、且つ、常圧のプロセスを利用して製造できることから、可橈性を有する高分子支持体(以下、ポリマーベースという)上に、TFTを形成したディスプレイ等への応用が期待されている。
有機電界効果トランジスタ(以下、有機FETという)は、半導体として薄膜を多く用い、有機薄膜トランジスタ(以下、有機TFTという)と呼ばれることもある。この有機TFTは、基板、絶縁膜、ゲート電極層、ソース電極、ドレイン電極、及び有機半導体膜からなる。有機半導体膜に用いられる半導体的性質を示す材料には、例えば、ポリアセンのような低分子化合物や、ポリチオフェンのようなπ−共役系高分子、及びπ−共役系オリゴマー等が用いられている。
このような樹脂を半導体膜として用いた有機TFTにおいて、ゲート電極層に印加するゲート電圧を変化させると、絶縁膜と、有機半導体膜との界面における電荷量が、過剰もしくは不足する。その結果、ソース電極から有機半導体膜へ流れるドレイン−ソース電流値が変化して、スイッチングが可能となる。このような有機半導体素子(有機TFT)について、低駆動電圧化や、駆動電圧の安定化が望まれている。
上記課題を解決するために、例えば、特定の構造のシルセスキオキサン骨格を有する樹脂成分を用いて、ゲート電極と有機半導体膜との層間に絶縁膜を形成した有機半導体素子が提案されている(非特許文献1、2)。
S. Fukuda, H. Kajii, H.Okuya, T. Ogata, M. Takahashi, and Y. Ohmori: "Investigation of interfaces between insulator and active layer, and between active layer and electrodes in n−type organic field effect transistors", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 47, p. 1307−1310 (2008). H. Kajii, H. Okuya, A. Sakakibara, S. Fukuda, T. Ogata, M. Takahashi, and Y. Ohmori: "Effect of hydroxyl group of polymer gate insulators on the characteristics of dihexylsexithiophene OFETs using poly(p−silsesquioxane) derivatives", Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 47, p. 1311−1314 (2008). 工藤一浩・中村雅一: "縦型有機トランジスタの開発と応用展開"、応用物理、第79巻、第11号、p. 993−996(2010)
非特許文献1、2に開示されるような有機半導体素子は低電圧で駆動する。しかし、種々の電気・電子製品の高性能化に伴い、有機半導体素子の、さらなる低駆動電圧化と、大駆動電流化とが求められている。かかる課題を解決するためには、ソース電極とドレイン電極とのチャンネル間距離を短縮することが有効であり、非特許文献3に開示されるような縦型構造の有機トランジスタも報告事例がある。しかしながら、容易に製造可能であり、且つ、チャンネル間距離が短縮される有機半導体素子は未だ知られていない。
本発明は、容易に製造可能であり、且つチャンネル間距離が短縮され、これにより、低駆動電圧化、及び大駆動電流化された有機半導体素子を提供することを目的とする。また、本発明は、前述の有機半導体素子を容易に形成可能な、有機半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、基板とソース電極及びドレイン電極との間の絶縁膜を、加熱により所定の形状変化を起すものとし、この絶縁膜上にソース電極とドレイン電極とを形成させた上で、絶縁膜を加熱して前述の所定の形状変化を生じさせることにより、チャンネル間距離の短いソース電極とドレイン電極とを形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第一の態様は、
基板と、
基板上に設けられた下層絶縁膜と、
下層絶縁膜上に設けられた、一端部の形状が順テーパー形状である上層絶縁膜と、
上層絶縁膜上に設けられた第一電極と、
下層絶縁膜上の、上層絶縁膜の順テーパー形状の端部側に、第一電極と離間して設けられた第二電極と、
第一電極表面、第二電極表面、上層絶縁膜表面、及び下層絶縁膜表面を被覆して設けられた有機半導体層と、
有機半導体層上に設けられた上部絶縁膜と、
上部絶縁膜上に設けられた第三電極と、
を備える、有機半導体素子である。
本発明の第二の態様は、
(I)基板上に下層絶縁膜を形成する、下層絶縁膜形成工程と、
(II)下層絶縁膜上に、一端部の形状が逆テーパー形状である上層絶縁膜を形成する、上層絶縁膜形成工程と、
(III)上層絶縁膜上に第一電極を形成し、下層絶縁膜上の、上層絶縁膜の逆テーパー形状の端部側に、第一電極と離間する第二電極を形成する、第一及び第二電極形成工程と、
(IV)前記上層絶縁膜を加熱し、前記上層絶縁膜の一端部の形状を、逆テーパー形状から順テーパー形状に変換する、上層絶縁膜加熱工程と、
(V)前記第一電極表面、前記第二電極表面、前記上層絶縁膜表面、及び前記下層絶縁膜表面を被覆する有機半導体層を形成する、有機半導体層形成工程と、
(VI)前記有機半導体層上に上部絶縁膜を形成する、上部絶縁膜形成工程と、
(VII)上部絶縁膜上に第三電極を形成する、第三電極形成工程と、
を含む、有機半導体素子の製造方法である。
本発明によれば、容易に製造可能であり、且つチャンネル間距離が短縮され、これにより、低駆動電圧化、及び大駆動電流化された有機半導体素子を提供することができる。また、本発明によれば、前述の有機半導体素子を容易に形成可能な、有機半導体素子の製造方法を提供することができる。
第一の態様に係る有機半導体素子の概略構成を示す断面図である。 第二の態様に係る有機半導体素子の製造方法の概略を示す図である。 実施例1において、上層絶縁膜形成工程で形成された上層絶縁膜の断面の電子顕微鏡写真である。 比較例2において、上層絶縁膜形成工程で形成された上層絶縁膜の断面の電子顕微鏡写真である。 実施例1において、第一及び第二電極形成工程により形成された、第一及び第二電極形成を、基板の上方より観察した電子顕微鏡写真である。 実施例1において、上層絶縁膜加熱工程後の第一及び第二電極形成を、基板の上方より観察した電子顕微鏡写真である。 実施例3で得られた有機半導体素子に関する、電界発光の測定結果を示す図である。
[有機半導体素子]
以下、第一の態様に係る有機半導体素子について説明する。以下、第一の態様に係る有機半導体素子を、図1を参照して説明する。図1は、第一の態様に係る有機半導体素子の概略構成を示す断面図である。
図1に示されるように、第一の態様に係る有機半導体素子1は、
基板11と、
基板11上に設けられた下層絶縁膜12と、
下層絶縁膜12上に設けられた、一端部の形状が順テーパー形状である上層絶縁膜13と、
上層絶縁膜13上に設けられた第一電極14と、
下層絶縁膜12上の、上層絶縁膜13の順テーパー形状の端部側に、第一電極14と離間して設けられた第二電極15と、
第一電極14の表面、第二電極15の表面、上層絶縁膜13の表面、及び下層絶縁膜12の表面を被覆して設けられた有機半導体層16と、
有機半導体層16上に設けられた上部絶縁膜17と、
上部絶縁膜17上に設けられた第三電極18と、
を備える。
以下、第一の態様に係る有機半導体素子を構成する、基板と、種々の層や膜と、電極と、について順に説明する。
〔基板〕
基板11は、下層絶縁膜12と良好に密着し、有機半導体素子1を製造する際の加工温度で安定であれば特に限定されない。好適な基板1の材質としては、例えば、ポリイミド等の耐熱性樹脂(フィルム)、ガラス、シリコン等が挙げられる。
〔下層絶縁膜〕
下層絶縁膜12は基板11上に形成される。下層絶縁膜12の材料は、従来から、有機半導体素子の製造において、絶縁膜として使用されている材料から適宜選択することができる。下層絶縁膜を形成するための好適な材料については、後述する本発明の第二の態様に係る有機半導体素子の製造方法の説明において詳細に記す。下層絶縁膜12の厚さは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、30〜5000nmが好ましく、50〜1000nmがより好ましい。
〔上層絶縁膜〕
上層絶縁膜13は、下層絶縁膜12上の一部に、一端部の形状が順テーパー形状であるように形成される。順テーパー形状とは、上層絶縁膜13の傾斜している端面と、下層絶縁膜12と上層絶縁膜13との接触面とがなす角のうち、上層絶縁膜13側の角度が鋭角であることを意味する。上層絶縁膜を形成するための好適な材料については、後述する本発明の第二の態様に係る有機半導体素子の製造方法の説明において詳細に記す。上層絶縁膜13の厚さは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、30〜5000nmが好ましく、50〜2000nmがより好ましい。
〔第一電極及び第二電極〕
第一電極14は、前述の上層絶縁膜13上に形成される。第二電極15は、下層絶縁膜12上の、上層絶縁膜13の順テーパー形状の端部側に、第一電極14と離間して形成される。第一電極14及び第二電極15を形成するための好適な材料については、後述する本発明の第二の態様に係る有機半導体素子の製造方法の説明において詳細に記す。第一電極14及び第二電極15は、それぞれ、ソース電極であってもドレイン電極であってもよい。第一電極14がソース電極である場合、第二電極15はドレイン電極である。第一電極14がドレイン電極である場合、第二電極15はソース電極である。
第一電極14の端部14aと第二電極15の端部15aとの、基板の幅方向と平行な方向の距離d(ソース電極とドレイン電極とのチャンネル間距離)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。前述の距離dをこのような範囲とすることにより、有機半導体素子を、低電圧で駆動でき、電流量の大きなものとすることができる。
例えば、第一電極14と第二電極15とを、上層絶縁膜13を設けず、下層絶縁膜12上に形成する場合、第一電極14と第二電極15とを接近させて形成することが困難である。しかし、第一の態様に係る有機半導体素子では、下層絶縁膜12と上層絶縁膜13とから構成される段差のある絶縁膜上に、例えば、第二の態様に係る方法により第一電極14及び第二電極15を形成することによって、第一電極14と第二電極15とを接近させて形成することができる。
〔有機半導体層〕
有機半導体層16は、第一電極14の表面、第二電極15の表面、上層絶縁膜13の表面、及び下層絶縁膜12の表面を被覆するように設けられる。有機半導体層16の材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。有機半導体層16の材料は、従来から有機半導体素子において有機半導体層形成用の材料として使用されている有機化合物から適宜選択して使用することができる。有機半導体層16を形成するための好適な材料については、後述する本発明の第二の態様に係る有機半導体素子の製造方法の説明において詳細に記す。有機半導体層16の厚さは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、2〜1000nmが好ましく、10〜200nmがより好ましい。
〔上部絶縁膜〕
上部絶縁膜17は、有機半導体層16上に、有機半導体層16を被覆するように設けられる。上部絶縁膜17を形成するための好適な材料については、後述する本発明の第二の態様に係る有機半導体素子の製造方法の説明において詳細に記す。上部絶縁膜17の厚さは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、50〜2000nmが好ましく、100〜1000nmがより好ましい。
〔第三電極〕
第三電極18は、上部絶縁膜17上にゲート電極として形成される。第三電極の材料としては、第一電極及び第二電極と同様のものが使用できる。
[有機半導体素子の製造方法]
以下、第二の態様に係る有機半導体素子の製造方法について説明する。以下、第二の態様に係る有機半導体素子を、図2(a)〜図2(h)を参照して説明する。図2(a)〜図2(h)は、第二の態様に係る有機半導体素子の製造方法について、基板上への絶縁層や電極の積層を順に示す。
第二の態様に係る有機半導体素子の製造方法は、
(I)基板上に下層絶縁膜を形成する、下層絶縁膜形成工程と、
(II)下層絶縁膜上に、一端部の形状が逆テーパー形状である上層絶縁膜を形成する、上層絶縁膜形成工程と、
(III)上層絶縁膜上に第一電極を形成し、下層絶縁膜上の、上層絶縁膜の逆テーパー形状の端部側に、第一電極と離間する第二電極を形成する、第一及び第二電極形成工程と、
(IV)上層絶縁膜を加熱し、上層絶縁膜の一端部の形状を、逆テーパー形状から順テーパー形状に変換する、上層絶縁膜加熱工程と、
(V)第一電極表面、第二電極表面、上層絶縁膜表面、及び下層絶縁膜表面を被覆する有機半導体層を形成する、有機半導体層形成工程と、
(VI)有機半導体層上に上部絶縁膜を形成する、上部絶縁膜形成工程と、
(V)上部絶縁膜上に第三電極を形成する、第三電極形成工程と、
を含む、有機半導体素子の製造方法。
以下、工程(I)から工程(V)について順に説明する。
〔(I)下層絶縁膜形成工程〕
図2(a)及び(b)に示されるように、(I)下層絶縁膜形成工程では、基板11上に、下層絶縁膜12を形成する。下層絶縁膜12の形成に使用される材料(以下、下層絶縁膜形成材料とも記す。)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来から有機半導体素子用の絶縁膜の形成に使用される材料から適宜選択して使用できる。下層絶縁膜形成材料としては、種々の絶縁性の有機材料を含む材料を用いることができる。下層絶縁膜形成材料に含まれる絶縁性の有機材料としては、高分子化合物が好ましい。絶縁性材料として使用される高分子化合物としては、シルセスキオキサン骨格を有する樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素含有樹脂及びポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂等の樹脂が挙げられ、これらの中ではシルセスキオキサン骨格を有する樹脂が好ましい。シルセスキオキサン骨格を有する樹脂を含む材料を下層絶縁膜形成材料として用いて下層絶縁膜12を形成することにより、低電圧で駆動でき、駆動電圧が安定している有機半導体素子が得られる。以下、好適な下層絶縁膜形成材料である、シルセスキオキサン骨格を有する樹脂を含む材料について説明する。
下層絶縁膜形成材料として使用されるシルセスキオキサン骨格を有する樹脂を含む材料は、(A)シルセスキオキサン骨格を有する樹脂を必須に含み、必要に応じ、(B)光又は熱の作用により酸又は塩基を発生する化合物、(C)架橋剤、(D)有機溶剤、及び(E)その他の成分からなる群より選択される1種以上の成分を含む。以下、下層絶縁膜形成材料として使用されるシルセスキオキサン骨格を有する樹脂を含む材料に含まれる成分について、順に説明する。
<(A)シルセスキオキサン骨格を有する樹脂>
シルセスキオキサン骨格は、主鎖がシロキサンユニットであり、側鎖が炭化水素系基であることから、無機化合物と有機化合物がハイブリッド化されているラダー構造といえる。このラダー構造は、分岐が少ないため、通常のシルセスキオキサン骨格を有する樹脂よりも分子間の空隙は少ない。従って、下層絶縁膜12を構成する材料を(A)シルセスキオキサン骨格を有する樹脂とすることによって、低温でも緻密な絶縁膜を形成することが可能となる。また、膜厚が500nm以下であっても、十分な絶縁性を有する下層絶縁膜12を形成することが可能となる。(A)シルセスキオキサン骨格を有する樹脂(以下、(A)成分とも記す)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
また(A)成分として好適な樹脂は、下式(a−1)で表される構成単位(a1)を含むシルセスキオキサン樹脂(A1)である。
[式(a−1)中、Xは炭素数1〜15のアルキレン基又は炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキレン基を表し、nは0又は1である。]
式(a−1)におけるXは、炭素数1〜15のアルキレン基又は炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基である。炭素数1〜15のアルキレン基は、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、及び環状アルキレン基のいずれでもよい。直鎖状アルキレン基、又は分岐状アルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましい。直鎖状アルキレン基、又は分岐状アルキレン基であるXの好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、及びtert−ブチル基等から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
Xが環状アルキレン基の場合、その炭素数は4〜15が好ましく、4〜12がより好ましく、5〜10が最も好ましい。環状アルキレン基であるXの好適な例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、及びテトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基等を例示できる。環状アルキレン基であるXの好適な具体的としては、シクロペンタン、及びシクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、及びテトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
Xが炭素数6〜15の2価の芳香族炭化水素基である場合の好適な例としては、ナフチル基、フェニル基、アントラセニル基、及びフェナントリル基等から水素原子を1個除いた基が挙げられる。これらの2価の芳香族炭化水素基の中では、フェニル基から水素原子を1個除いた基が好ましい。
式(a−1)におけるRは、炭素数1〜5のアルキレン基である。Rの好適な例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル、及びtert−アミル基等から水素原子1個を除いた基が挙げられる。
式(a−1)中、nは0又は1であり、1が好ましい。ただし、Xが直鎖、分岐状のアルキレン基の場合、nは0である。
シルセスキオキサン樹脂(A1)を構成する全構成単位に対する、構成単位(a1)の比率は、10〜95モル%が好ましく、15〜90モル%がより好ましく、20〜85モル%が特に好ましく、30〜80モル%が最も好ましい。
上記の通り、(A)シルセスキオキサン骨格を有する樹脂は、その構造上の特徴から、下層絶縁膜形成材料として好適に使用されるが、(A)シルセスキオキサン骨格を有する樹脂はラダー構造であるが故に、分子間に必然的に空隙が生じてしまう。しかし、(A)シルセスキオキサン骨格を有する樹脂が、式(a−1)で表される構成単位(a1)を含む場合、構成単位(a1)中の水酸基の作用により、水酸基を有さない樹脂よりも緻密な絶縁膜を形成することができる。
また、(A)成分は、式(a−1)で表される構成単位(a1)とともに、下式(a−2)で表される構成単位(a2)、及び下式(a−3)で表される構成単位(a3)からなる群より選択される1種以上の構成単位を含有していてもよい。
[式(a−2)中、Rは炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数2〜15のアルコキシアルキル基を表し、X、R、及びnは、式(a−1)と同様である。]
[式(a−3)中、Rは炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を表す。]
式(a−2)におけるRは、炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数2〜15のアルコキシアルキル基である。炭素数1〜15のアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、及び環状アルキル基のいずれでもよい。Rが直鎖状アルキル基、又は分岐状アルキル基である場合の炭素数は、1〜6が好ましい。直鎖状アルキル基、又は分岐状アルキル基であるRの好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル、及びtert−アミル基等が挙げられる。
が環状アルキル基である場合、その炭素数は、4〜15が好ましく、4〜12がより好ましく、5〜10が最も好ましい。環状アルキル基であるRの好適な例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、及びテトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基等を例示できる。環状アルキル基であるRの好適な具体例としては、シクロペンタン、及びシクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、及びテトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。これらの中では、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基、1−メチル−1−シクロペンチル基、1−エチル−1−シクロヘキシル基、及び1−エチル−1−シクロペンチル基等がより好ましい。
が炭素数2〜15のアルコキシアルキル基の好適な具体例としては、1−エトキシエチル基、1−エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−メトキシメチル基、1−メトキシプロピル基、1−エトキシプロピル基、1−n−ブトキシエチル基、2−アダマントキシメチル基、及び1−シクロヘキシルオキシメチル基等が挙げられる。
式(a−3)におけるRは、炭素数1〜15のアルキル基又は炭素数6〜15の芳香族炭化水素基である。炭素数1〜15のアルキル基は、直鎖状アルキル、分岐状アルキル基、環状アルキル基のいずれでもよい。直鎖状アルキル基、及び分岐状アルキル基の炭素数は1〜6が好ましい。直鎖状アルキル基、又は分岐状アルキル基であるRの好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、及びtert−ブチル基等が挙げられる。
が環状アルキル基の場合、その炭素数は4〜15が好ましく、4〜12がより好ましく、5〜10が最も好ましい。環状アルキル基であるRの好適な例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、及びテトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。環状アルキル基であるRの好適な具体例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、及びテトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
が芳香族炭化水素基である場合の好適な具体例としては、ナフチル基、フェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、及びベンジル基等が挙げられ、フェニル基又はベンジル基が好ましい。
シルセスキオキサン樹脂(A1)を構成する全構成単位に対する、構成単位(a2)及び(a3)から選択される構成単位の比率は、5〜50モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましく、15〜30モル%が特に好ましい。
シルセスキオキサン樹脂(A1)が、構成単位(a1)とともに、構成単位(a2)及び構成単位(a3)から選択される構成単位をこのような範囲の量で含む場合、より緻密な下層絶縁膜12を形成しやすい。
シルセスキオキサン樹脂(A1)は、ランダム重合体であっても、ブロック重合体であってもよい。また、シルセスキオキサン樹脂(A1)は、二元重合体以上の多元重合体であってもよい。シルセスキオキサン樹脂の好適な具体例としては、下式(A−1)〜(A−7)に示される構成単位の組合せからなるシルセスキオキサン樹脂が挙げられる。
シルセスキオキサン樹脂(A1)の質量平均分子量(Mw)は、本発明の目的を阻害しない半で特に限定されない。シルセスキオキサン樹脂(A1)の質量平均分子量(Mw)は、1000〜10000が好ましく、2000〜10000がより好ましい。シルセスキオキサン樹脂(A1)の質量平均分子量(Mw)がこのような範囲であると、有機溶剤へ溶解性しやすいため、塗布による下層絶縁膜12の形成が容易である。
<(B)光又は熱の作用により酸又は塩基を発生する化合物>
下層絶縁膜形成材料は、(A)成分とともに、(B)光又は熱の作用により酸又は塩基を発生する化合物(B)(以下、(B)成分とも記す)をさらに含有するのが好ましい。下層絶縁膜形成材料が、(A)成分とともに(B)成分を含有する場合、酸又は塩基の発生により、(A)成分中での加水分解反応が促進され、シルセスキオキサン化合物が、効率よくラダー状に架橋される。その結果、下層絶縁膜12を形成する際に生じる下層絶縁膜12中の分子間の空隙が効率よく埋められ、緻密な絶縁膜を形成することができる。
ここで、「熱の作用により酸又は塩基を発生する化合物」とは、80℃以上200℃以下の加熱により酸又は塩基を発生する化合物をいう。また、「光の作用により酸又は塩基を発生する化合物」とは、紫外線の照射により酸又は塩基を発生する化合物をいう。
ここで、熱の作用により酸を発生する化合物を熱酸発生剤という。
ここで、熱の作用により塩基を発生する化合物を熱塩基発生剤という。
ここで、光の作用により酸を発生する化合物を光酸発生剤という。
ここで、光の作用により塩基を発生する化合物を光塩基発生剤という。
熱酸発生剤は、熱に感応して酸を発生する化合物である。熱酸発生剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。熱酸発生剤の好適な例としては、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、有機スルホン酸の他のアルキルエステル等が挙げられる。具体的には、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。これらのオニウム塩の中では、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びベンゾチアゾニウム塩が好ましい。スルホニウム塩及びベンゾチアゾニウム塩の具体例としては、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、及び下式で表される化合物等が挙げられる。
本発明に用いられる熱塩基発生剤は、熱に感応して塩基を発生する化合物である。熱塩基発生剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。熱塩基発生剤の例としては、1−メチル−1−(4−ビフェニルイル)エチルカルバメート、1,1−ジメチル−2−シアノエチルカルバメート等のカルバメート誘導体;尿素;N,N−ジメチル−N’−メチル尿素等の尿素誘導体;1,4−ジヒドロニコチンアミド等のジヒドロピリジン誘導体;有機シランや有機ボランの四級化アンモニウム塩;ジシアンジアミド等が挙げられる。その他の例としては、トリクロロ酢酸グアニジン、トリクロロ酢酸メチルグアニジン、トリクロロ酢酸カリウム、フェニルスルホニル酢酸グアニジン、p−クロロフェニルスルホニル酢酸グアニジン、p−メタンスルホニルフェニルスルホニル酢酸グアニジン、フェニルプロピオール酸カリウム、フェニルプロピオール酸グアニジン、フェニルプロピオール酸セシウム、p−クロロフェニルプロピオール酸グアニジン、p−フェニレン−ビス−フェニルプロピオール酸グアニジン、フェニルスルホニル酢酸テトラメチルアンモニウム、及びフェニルプロピオール酸テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。
光酸発生剤は、光に感応して酸を発生する化合物である。光酸発生剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。光酸発生剤の例としては、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、ビススルホン誘導体、β−ケトスルホン誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体等の公知の酸発生剤が挙げられる。
光酸発生剤として使用されるオニウム塩の具体例としては、トリフロオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラフェニルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、エチレンビス[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート]、及び1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等が挙げられる。
光酸発生剤として使用されるジアゾメタン誘導体の具体例としては、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、及び1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
光酸発生剤として使用されるグリオキシム誘導体の具体例としては、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、及びビス−O−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等が挙げられる。
光酸発生剤として使用されるビススルホン誘導体の具体例としては、ビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、及びビスベンゼンスルホニルメタン等が挙げられる。
光酸発生剤として使用されるβ−ケトスルホン誘導体の具体例としては、2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、及び2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等が挙げられる。
光酸発生剤として使用されるジスルホン誘導体の具体例としては、ジフェニルジスルホン誘導体、及びジシクロヘキシルジスルホン誘導体等のジスルホン誘導体が挙げられる。
光酸発生剤として使用されるニトロベンジルスルホネート誘導体の具体例としては、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、及びp−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル等が挙げられる。
光酸発生剤として使用されるスルホン酸エステル誘導体の具体例としては、1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、及び1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等が挙げられる。
光酸発生剤として使用されるN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体の具体例としては、N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−オクタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−クロロエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、及びN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドp−トルエンスルホン酸エステル等が挙げられる。
光塩基発生剤は、光に感応して塩基を発生する化合物である。光塩基発生剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。光塩基発生剤の例としては、トリフェニルメタノール、ベンジルカルバメート及びベンゾインカルバメート等の光活性なカルバメート;O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、アロマティックスルホンアミド、アルファーラクタム及びN−(2−アリルエチニル)アミド等のアミド、並びにその他のアミド;オキシムエステル;α−アミノアセトフェノン;コバルト錯体が挙げられる。好適な光塩基発生剤の具体例としては、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、o−カルバモイルヒドロキシルアミド、o−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等が挙げられる。
下層絶縁膜形成材料が(B)成分を含む場合、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜30質量部が好ましく、0.5〜25質量部がより好ましく、0.5〜20質量部が最も好ましい。このような範囲の量で(B)成分を用いることにより、下層絶縁膜形成材料を用いて形成される下層絶縁膜12について、(A)成分の架橋が十分に進行し、また、経時的劣化が抑制される。
<(C)架橋剤>
下層絶縁膜形成材料は、(A)成分、又は(A)成分及び(B)成分とともに、架橋剤成分である(C)成分を含んでいてもよい。(C)成分は、前述の構成単位(a1)中の−OR基と反応可能であれば特に限定されず、従来から各種の樹脂の架橋に使用されている架橋剤から適宜選択して使用することができる。下層絶縁膜形成材料に(C)成分を配合することにより、(A)成分に架橋を導入し、緻密な下層絶縁膜12を形成することができる。
(C)成分として使用される架橋剤の好適な例としては、2,3−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルノルボルナン、2−ヒドロキシ−5,6−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、シクロヘキサンジメタノール、3,4,8(又は9)−トリヒドロキシトリシクロデカン、2−メチル−2−アダマンタノール、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン等のヒドロキシル基、又はヒドロキシアルキル基或いはその両方を有する脂肪族環状炭化水素、又はその含酸素誘導体等が挙げられる。
また、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、並びにグリコールウリル等のアミノ基含有化合物にホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドと低級アルコールを反応させ、アミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基又は低級アルコキシメチル基で置換した化合物等も架橋剤として好適に使用される。さらに、エポキシ系架橋剤、及びオキセタン系架橋剤も、(C)成分として好適に使用される。
これらのうち、メラミンを用いたものをメラミン系架橋剤、尿素を用いたものを尿素系架橋剤、エチレン尿素、プロピレン尿素等のアルキレン尿素を用いたものをアルキレン尿素系架橋剤、グリコールウリルを用いたものをグリコールウリル系架橋剤という。(C)成分としては、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、アルキレン尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキセタン系架橋剤、及びグリコールウリル系架橋剤からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、メラミン系架橋剤、及び/又はエポキシ系架橋剤がより好ましい。
メラミン系架橋剤としては、メラミンとホルムアルデヒドとを反応させてアミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基で置換した化合物、及びメラミンとホルムアルデヒドと低級アルコールとを反応させてアミノ基の水素原子を低級アルコキシメチル基で置換した化合物等が挙げられる。メラミン系架橋剤の具体例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシブチルメラミン等が挙げられる。これらの中では、ヘキサメトキシメチルメラミンがより好ましい。
尿素系架橋剤としては、尿素とホルムアルデヒドとを反応させてアミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基で置換した化合物、尿素とホルムアルデヒドと低級アルコールとを反応させてアミノ基の水素原子を低級アルコキシメチル基で置換した化合物等が挙げられる。尿素系架橋剤の具体例としては、ビスメトキシメチル尿素、ビスエトキシメチル尿素、ビスプロポキシメチル尿素、及びビスブトキシメチル尿素等が挙げられる。これらの中では、ビスメトキシメチル尿素が好ましい。
アルキレン尿素系架橋剤の例としては、下式(C−1)で表される化合物が挙げられる。
[式中、RとRはそれぞれ独立して水酸基又は低級アルコキシ基であり、RとRはそれぞれ独立に水素原子、水酸基又は低級アルコキシ基であり、pは0〜2の整数である。]
とRが低級アルコキシ基である場合、R及びRの炭素数は1〜4が好ましい。アルコキシ基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。RとRは同じであってもよく、互いに異なっていてもよいが、同じであることがより好ましい。
とRが低級アルコキシ基である場合、R及びRの炭素数は1〜4が好ましい。アルコキシ基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。RとRは同じであってもよく、互いに異なっていてもよいが、同じであることがより好ましい。また、pは0〜2の整数であり、0又は1が好ましい。
上記式(C−1)で表されるアルキレン尿素系架橋剤の中では、pが0である化合物(エチレン尿素系架橋剤)又はpが1である化合物(プロピレン尿素系架橋剤)が好ましい。
上記式(C−1)で表される化合物は、アルキレン尿素とホルマリンとを縮合反応させることにより得られる生成物を、低級アルコールと反応させることにより得られる。
アルキレン尿素系架橋剤の具体例としては、モノヒドロキシメチル化エチレン尿素、ジヒドロキシメチル化エチレン尿素、モノメトキシメチル化エチレン尿素、ジメトキシメチル化エチレン尿素、モノエトキシメチル化エチレン尿素、ジエトキシメチル化エチレン尿素、モノプロポキシメチルカエチレン尿素、ジプロポキシメチル化エチレン尿素、モノブトキシメチル化エチレン尿素、及びジブトキシメチル化エチレン尿素等のエチレン尿素系架橋剤;モノヒドロキシメチル化プロピレン尿素、ジヒドロキシメチル化プロピレン尿素、モノメトキシメチル化プロピレン尿素、ジメトキシメチル化プロピレン尿素、モノエトキシメチル化プロピレン尿素、ジエトキシメチル化プロピレン尿素、モノプロポキシメチル化プロピレン尿素、ジプロポキシメチル化プロピレン尿素、モノブトキシメチル化プロピレン尿素、及びジブトキシメチル化プロピレン尿素等のプロピレン尿素系架橋剤;1,3−ジ(メトキシメチル)4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン、及び1,3−ジ(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン誘導体が挙げられる。
エポキシ系架橋剤は、エポキシ基を有するものであれば特に限定されず、従来から架橋剤として使用されるエポキシ基を有する化合物から任意に選択して用いることができる。エポキシ系架橋剤として用いる化合物は、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。エポキシ系架橋剤として、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物を用いる場合、(A)樹脂成分と(C)架橋剤との架橋反応性が良好である。エポキシ系架橋剤として好適な化合物の具体例を以下に示す。
オキセタン系架橋剤は、オキセタン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。オキセタン系架橋剤として好適な化合物の具体例を以下に示す。
グリコールウリル系架橋剤としては、N位がヒドロキシアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシアルキル基の一方、又は両方で置換されたグリコールウリル誘導体が挙げられる。かかるグリコールウリル誘導体は、グリコールウリルとホルマリンとを縮合反応させることにより得られた生成物を、低級アルコールと反応させることにより得られる。
グリコールウリル系架橋剤としては、モノヒドロキシメチル化グリコールウリル、ジヒドロキシメチル化グリコールウリル、トリヒドロキシメチル化グリコールウリル、テトラヒドロキシメチル化グリコールウリル、モノメトキシメチル化グリコールウリル、ジメトキシメチル化グリコールウリル、トリメトキシメチル化グリコールウリル、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、モノエトキシメチル化グリコールウリル、ジエトキシメチル化グリコールウリル、トリエトキシメチル化グリコールウリル、テトラエトキシメチル化グリコールウリル、モノプロポキシメチル化グリコールウリル、ジプロポキシメチル化グリコールウリル、トリプロポキシメチル化グリコールウリル、テトラプロポキシメチル化グリコールウリル、モノブトキシメチル化グリコールウリル、ジブトキシメチル化グリコールウリル、トリブトキシメチル化グリコールウリル、及びテトラブトキシメチル化グリコールウリル等が挙げられる。
下層絶縁膜形成材料が(C)成分を含む場合、下層絶縁膜形成材料における(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、0.5〜25質量部がより好ましく、0.5〜20質量部が最も好ましい。含有量が0.5質量部を超えると、架橋形成が充分に進行し、良好な絶縁膜を形成することができる。このような量の(C)成分を用いることにより、保存安定性が良好な下層絶縁膜形成材料が得られ、また、(A)成分へ良好に架橋を導入することによって緻密な下層絶縁膜を形成できる。
<(D)有機溶媒>
下層絶縁膜形成材料は、必要に応じ、有機溶剤である(D)成分を含んでいてもよい。(D)成分とし使用する有機溶媒は、前述の樹脂や架橋剤を溶解させることができれば特に限定されず、アルコール類や、エステル類等の公知の有機溶剤から適宜選択して使用することができる。(D)成分として使用できる好適な有機溶媒の具体例としては、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のグリコールエステル類;前述の多価アルコール類又はグリコールエステル類のモノC1−4アルキルエーテル又はモノフェニルエーテル;ジオキサンのような環式エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のアルカノールエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤等を挙げることができる。多価アルコール類又はグリコールエステル類のモノC1−4アルキルエーテル又はモノフェニルエーテルの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
上記の好適な溶媒の中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)がより好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。混合溶媒における、PGMEAと極性溶剤と配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよい。PGMEAと極性溶剤と配合比(質量比)は、PGMEA:極性溶媒として、1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合、PGMEA:ELの質量比は、1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましい。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合、PGMEA:PGMEの質量比は、1:9〜9:1が好ましく、2:8〜8:2がより好ましく、3:7〜7:3がさらに好ましい。
また、上記の溶剤の他に、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も、(D)成分として好ましい。この場合、前者と後者との配合比(質量比)は、70:30〜95:5が好ましい。
下層絶縁膜形成材料に(D)成分を配合する場合、(D)成分の使用量は、下層絶縁膜形成材料を基板表面に良好に塗布可能であれば特に限定されない。下層絶縁膜形成材料における(D)成分は、典型的には、下層絶縁膜形成材料の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に使用される。
<(E)その他の成分>
下層絶縁膜形成材料は、前述の(A)成分から(D)成分の他に、必要に応じて、(E)その他の成分として、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。これらの添加剤は、それぞれの添加剤について慣用される範囲の量で使用される。
以上説明した下層絶縁膜形成材料を用いて、基板11上に下層絶縁膜12を形成する。基板11上に下層絶縁膜12を形成する方法は特に限定されないが、厚さの均一な下層絶縁膜12の形成が容易であることから、下層絶縁膜形成材料を基板11上に塗布する方法が好ましい。
下層絶縁膜形成材料の塗布方法は特に限定されず、従来から有機半導体素子を形成する際に採用されている絶縁膜形成材料の塗布方法から適宜選択できる。下層絶縁膜形成材料を基板11に塗布する方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、プリンティング法、ロールコーティング法、キャスト法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、及びインクジェット法等が挙げられる。これらの方法の中では、膜厚の均一な下層絶縁膜12を所望する膜厚で形成しやすいことから、スピンコーティング法、ディップコーティング法、プリンティング法、ロールコーティング法が好ましい。
下層絶縁膜形成材料の塗布により、下層絶縁膜12を形成する場合、基板11上に塗布された下層絶縁膜形成材料を必要に応じて加熱してもよい。この場合の、加熱条件は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。下層絶縁膜形成材料がシルセスキオキサン骨格を有する樹脂を含む材料である場合、加熱温度は、70〜200℃が好ましく、70〜180℃がより好ましい。また、加熱時間は、5〜120分が好ましく、5〜100分がより好ましい。
〔(II)上層絶縁膜形成工程〕
図2(b)及び図2(c)に示されるように、(II)上層絶縁膜形成工程では、工程(I)で形成される下層絶縁膜12上に、一端部の形状が逆テーパー形状である上層絶縁膜13を形成する。逆テーパー形状とは、上層絶縁膜13の傾斜している端面と、下層絶縁膜12と上層絶縁膜13との接触面とがなす角のうち、上層絶縁膜13側の角度が鈍角であることを意味する。
工程(II)で形成される上層絶縁膜13の一端部の形状は、続く工程(III)で、上層絶縁膜13を加熱することにより、逆テーパー形状から順テーパー形状に変換される。上層絶縁膜13の形成に用いられる材料(以下、上層絶縁膜形成材料とも記す。)は、上層絶縁膜13に加熱によるこのような形状変化を生じさせるものであれば特に限定されない。この形状の変化は、加熱による、上層絶縁膜13の軟化や収縮により生じ得る。このため、上層絶縁膜形成材料は、加熱により軟化又は収縮する材料であるのが好ましく、加熱により収縮する材料がより好ましい。
一端部の形状が逆テーパー形状である上層絶縁膜13を形成する方法は特に限定されない。逆テーパー形状の一端部を有する上層絶縁膜13を形成する好適な方法としては、下層絶縁膜12上に、上層絶縁膜形成材料として感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成した後、感光性樹脂層を所定のパターンのマスクを介して露光し、次いで、露光された感光性樹脂層を現像して上層絶縁膜13を形成する、フォトリソグラフィー法が挙げられる。
この方法において上層絶縁膜形成材料として使用される感光性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害ない範囲で特に限定されない。一端部の形状が逆テーパー形状である上層絶縁膜13を形成しやすいことから、感光性樹脂組成物としては、露光によりアルカリに対して不溶化するネガ型感光性樹脂組成物が好ましい。
上層絶縁膜形成材料として使用するネガ型感光性樹脂組成物は、露光によって光酸発生剤から発生する酸の作用により不溶化するものが好ましい。この場合、ネガ型感光性樹脂組成物は、クエンチャーを含んでいてもよい。クエンチャーとしては、脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが例示される。好適なクエンチャーの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。
上層絶縁膜形成材料として使用できるネガ型感光性樹脂組成物の好適な例としては、下層絶縁膜形成材料について説明した成分のうち、(a1)として、Xが炭素数6〜15の芳香族炭化水素基である式(a−1)で表される単位を含む(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含む材料が挙げられる。(A)成分としては、前述の式(A−1)〜(A−7)で表されるシルセスキオキサン樹脂が好ましい。このような上層絶縁膜形成材料において、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とは、下層絶縁膜形成材料と同様の範囲の量を使用されるのが好ましい。また、このような上層絶縁膜形成材料は、下層絶縁膜形成材料と同様に、有機溶剤である(D)成分を含んでいてもよい。上層絶縁膜形成材料における(D)成分の使用量は、下層絶縁膜形成材料と同様である。
この材料は、アルカリ可溶性であるが、露光により、(B)成分の作用によって(A)成分の架橋が進行し、アルカリに対して不溶となる。また、この材料を用いて形成される上層絶縁膜13では、続く工程(III)における加熱により(C)成分による(A)成分の架橋が進行し、上層絶縁膜13の収縮が生じる。よって、この材料を用いれば、上層絶縁膜13を加熱することにより、逆テーパー形状から順テーパー形状への、上層絶縁膜13の一端部の形状の変化が生じる。
上記の通り、この材料は露光によりアルカリに対して不溶化するため、この材料を下層絶縁膜12上に塗布した後、所定のマスクを介して露光し、四級アンモニウム水酸化物(例えばテトラメチルアンモニウム水酸化物)等の塩基を含む現像液により未露光部を除去することにより、上層絶縁膜13を形成することができる。
このとき、上層絶縁膜13の一端部の形状を逆テーパー形状とする必要があるが、上層絶縁膜形成材料として、所定の(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とを含む上記の材料を用いて、フォトリソグラフィー法により上層絶縁膜13を形成する場合、組成や膜厚を調整することにより、逆テーパー形状の一端部を有する上層絶縁膜13を形成することができる。例えば、上層絶縁膜13を形成する際の膜厚を厚くすると、感光性樹脂層の下部ほど(A)成分の架橋が進行しにくくなる。この場合、塩基を含む現像液による現像の際に、感光性樹脂層の下部ほど現像液に溶解しやすいため、逆テーパー形状の上層絶縁膜13が形成される。また、上層絶縁膜形成材料中の架橋剤である(C)成分の含有量を減らすことによっても、逆テーパー形状の上層絶縁膜を形成しやすくなる傾向がある。
〔(III)第一及び第二電極形成工程〕
図2(c)及び図2(d)に示されるように、(III)第一及び第二電極形成工程では、上層絶縁膜13上に第一電極14を形成し、下層絶縁膜12上の、上層絶縁膜13の逆テーパー形状の端部側に、第一電極14と離間する第二電極15を形成する。
第一電極14及び第二電極15の形成に用いる材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来から有機半導体素子の製造において、ソース電極及びドレイン電極の形成に使用されている材料から適宜選択して使用することができる。第一電極14及び第二電極15の形成に用いる材料の好適な例としては、金、白金、銀、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、及びニッケル等の金属、前述の金属の合金、ポリシリコン、アモルファスシリコン、並びにインジウム錫酸化物(ITO)等の導電性の無機材料が挙げられる。第一電極14及び第二電極15の形成方法は特に限定されないが、操作や電極の厚さのコントロールが容易であることから、蒸着法が好ましい。
工程(III)で形成される、第一電極14と第二電極15との間の距離は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。第一電極14及び第二電極15は、離間した状態で隣接して形成されるのが好ましい。工程(I)及び(II)により、下層絶縁膜12と上層絶縁膜13とが形成された基板に対して、電極材料の蒸着を行う場合、図2(d)に示されるように、第一電極14と第二電極15とが、上層絶縁膜13の厚さ分基板11の厚さ方向にずれた状態で隣接して形成される。このように、第一電極14と第二電極15とが隣接して形成された状態で、続く(IV)上層絶縁膜過熱工程により、上層絶縁膜の端部の形状を逆テーパー形状から、順テーパー形状に変化させることによって、わずかに、第一電極14と第二電極15との間にわずかな空隙が形成され、ソース電極とドレイン電極とのチャンネル間距離が短い有機半導体素子が形成される。
〔(IV)上層絶縁膜加熱工程〕
図2(d)及び図2(e)に示されるように、(IV)上層絶縁膜加熱工程では、工程(II)で形成された、一端部の形状が逆テーパー形状である上層絶縁膜13を、工程(III)で形成された第一電極14とともに加熱して、上層絶縁膜13の一端部の形状を、逆テーパー形状から順テーパー形状に変換させる。上層絶縁膜13が工程(II)に説明される材料により形成されているため、上層絶縁膜13の一端部の形状は、逆テーパー形状から順テーパー形状に変換される。
工程(IV)での加熱温度と加熱時間とは、上層絶縁膜13の一端部の形状に所望の変化が生じる限り、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。工程(IV)での加熱温度は、典型的には、100〜400℃が好ましく、120〜300℃がより好ましい。また、工程(IV)での加熱時間は、典型的には、1〜120分が好ましく、10〜60分がより好ましい。
〔(V)有機半導体層形成工程〕
図2(e)及び図2(f)に示されるように、(V)有機半導体層形成工程では、工程(I)〜(IV)により形成された、第一電極14、第二電極15、上層絶縁膜13、及び下層絶縁膜12の表面を被覆するように有機半導体層16を形成する。有機半導体層16を形成する方法は特に限定されず、蒸着、塗布等の公知の方法から適宜選択できる。
有機半導体層16の材料としては、芳香族化合物、鎖状化合物、有機顔料、及び有機ケイ素化合物等の材料の中からπ共役系を有する化合物を選択して使用することができる。
有機半導体層16の材料の例としては、アントラセン、テトラセン、及びペンタセン等のアセン系化合物又はその誘導体;ポリチオフェン又はその誘導体;オリゴチオフェン又はその誘導体;ポリフェニレン又はその誘導体;オリゴフェニレン又はその誘導体;ポリアセチレン又はその誘導体;フタロシアニン化合物;シアニン色素;ポリフルオレン又はその誘導体等が挙げられる。
上記の有機半導体層16の材料の中では、所定の厚さの有機半導体層16の形成が容易であることと、特性に優れる有機半導体素子を得やすいこととから、ポリチオフェン誘導体が好ましい。ポリチオフェン誘導体の中では、以下に示す単位から構成されるポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl,P3HT)及びポリ(2,5−ビス(3−ヘキサデシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,2−b] チオフェン(poly(2,5−bis(3−hexadecylthiophen−2−yl)thieno[3,2−b] thiophene,p−BTTT−C16)が好ましく、p−BTTT−C16がより好ましい。なお、P3HT及びp−BTTT−C16に関する下式において、mは、P3HT及びp−BTTT−C16を構成する単位の繰り返し数を表す。
〔(VI)上部絶縁膜形成工程〕
図2(f)及び図2(g)に示されるように、(VI)上部絶縁膜形成工程では、工程(V)で形成される有機半導体層16上に、有機半導体層16を被覆する上部絶縁膜17を形成する。上部絶縁膜17の材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からゲート電極(第三電極18)と有機半導体層16とを絶縁する絶縁層の材料として使用されている材料から適宜選択される。上部絶縁膜は、例えば、下層絶縁膜形成材料と同様の材料及び方法により形成することができる。好適な上部絶縁膜の材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリフェノール樹脂、ポリイミド樹脂及びフッ素含有樹脂(PTFE、サイトップ)等の種々の樹脂や、前述のシルセスキオキサン骨格を有する樹脂等が挙げられる。また、自己組織化単分子膜やAl等の酸化物等を上部絶縁膜の材料として用いることも可能である。
〔(VII)第三電極形成工程〕
図2(g)及び図2(h)に示されるように、(VII)第三電極形成工程では、工程(VI)で形成される上部絶縁膜17上に、ゲート電極である第三電極18が形成される。第三電極18の材料及び形成方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。例えば、第三電極18は、第一電極14及び第二電極15と、同様材料の及び方法によって形成される。
以上説明した工程(I)〜(VII)を含む、第二の態様に係る有機半導体素子1の製造方法によれば、第一電極14と第二電極15とのチャンネル間距離が短い有機半導体素子1を容易に製造することができる。第二の態様に係る方法により製造される有機半導体素子は、低電圧で駆動可能であり、駆動電流値が大きいため、種々の製品において好適に利用される。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(下層絶縁膜形成材料の調製)
p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン単位/フェニルシルセスキオキサン単位のモル比が70/30であり、質量平均分子量(Mw)が7000であり、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.8である、前述の式(A−1)で表されるシルセスキオキサン樹脂100質量部と、ヘキサメチルメトキシメラミン(架橋剤、ニカラックMw30HM、三和ケミカル株式会社製)10質量部とを、固形分濃度が15質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、下層絶縁膜形成材料を調製した。
(上層絶縁膜形成材料の調製)
p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン単位/フェニルシルセスキオキサン単位のモル比が70/30であり、質量平均分子量(Mw)が7000であり、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.8である、前述の式(A−1)で表されるシルセスキオキサン樹脂100質量部と、ヘキサメチルメトキシメラミン(架橋剤、ニカラックMw30HM、三和ケミカル株式会社製)2質量部と、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム3質量部(光酸発生剤)、トリ−n−オクチルアミン0.3質量部とを、固形分濃度が20質量%となるようにPGMEAに溶解させて、上層絶縁膜形成材料を調製した。
(下層絶縁膜形成工程)
3cm角のガラス基板上に、下層絶縁膜形成材料をスピン塗布した後、形成された塗布膜を150℃にて20分間加熱して、膜厚400nmの下層絶縁膜を形成した。
(上層絶縁膜形成工程)
下層絶縁膜上に、上層絶縁膜形成材料を、下層絶縁膜形成材料と同様にスピン塗布した後、塗布された上層絶縁膜形成材料の片側をマスクして、ウシオ(株)製エキシマ光照射装置にて中心波長172nm,放射照度10mW/cmで、窒素雰囲気下で、上層絶縁膜形成材料の塗布膜に対してエキシマ光を10秒間照射した。次いで、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウム水酸化物の水溶液(NMD−3、東京応化工業株式会社製)により現像を行った。露光及び現像された上層絶縁膜形成材料の膜を、120℃で20分加熱して、膜厚1000nmの上層絶縁膜を形成した。形成された上層絶縁膜の形状を、走査型電子顕微鏡(HITACHI S−4500)により観察したところ、端部の形状が逆テーパー形状であることが確認された。上層絶縁膜の形状を走査型電子顕微鏡により確認した際の、電子顕微鏡写真を図3に示す。
(第一及び第二電極形成工程)
金属蒸着装置(ULVAC製、VPC−1100)を用いて、第一及び第二電極を形成した。具体的には、上層絶縁膜及び下層絶縁膜が形成された基板を金属蒸着装置の天板に貼り付けて、真空度10−3Pa以下にて、銀を150nm膜厚で蒸着し、上層絶縁膜上に第一電極を形成し、下層絶縁膜上に第二電極を形成した。形成された第一電極及び第二電極を、基板の上方より光学顕微鏡である超解像デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHXシリーズ)により観察したところ、第一電極と第二電極とが隣接して形成されていることが確認された。この時の光学顕微鏡写真を、図5に示す。
(上層絶縁膜加熱工程)
第一電極及び第二電極がそれらの表面に形成された、上層絶縁膜と下層絶縁膜とを、窒素雰囲気下に、250℃で40分間加熱した。加熱後の上層絶縁膜の形状を、走査型電子顕微鏡により観察したところ、端部の形状が順テーパー形状であることが確認された。また、加熱後の第一電極及び第二電極の状態を基板の上方より光学顕微鏡である超解像デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHXシリーズ)により観察したところ、第一電極と第二電極とが僅かに離間していることが確認された。光学顕微鏡写真より、第一電極と第二電極との距離(チャンネル間距離)を測定したところ、10μmであった。この時の光学顕微鏡写真を、図6に示す。
(有機半導体層形成工程)
有機半導体層の材料として、P3HT(Merck社製)を3質量%濃度で1,2−ジクロロベンゼンに溶解させたものを用いた。有機半導体層形成用の材料を、第一電極及び第二電極上にスピン塗布した後、塗布膜を200℃で10分加熱して、膜厚100nmである有機半導体層を形成した。
(上部絶縁膜形成工程)
ポリメチルメタクリレート(Sigma−Aldrich社製)の8質量%濃度の酢酸ブチル溶液を有機半導体層上にスピン塗布した後、塗布膜を150℃で10分間加熱して、膜厚600nmの上部絶縁膜を形成した。
(第三電極形成工程)
上部絶縁膜上に、第一電極及び第二電極の形成と同様にして銀を蒸着して、第三電極を形成して、有機半導体素子を得た。
(移動度及び閾値電圧の測定)
得られた有機半導体素子を用いて、20℃、真空中、暗状態で、移動度(cm/Vs)と、閾値電圧(V)とを測定した。測定結果を表1に記す。
[実施例2]
P3HTに変えて、p−BTT−C16(Merck社製)を1,2−ジクロロベンゼンに3質量%濃度で溶かした溶液により有機半導体層を形成することの他は、実施例1と同様にして有機半導体素子を得た。得られた有機半導体素子の移動度と閾値電圧とを、実施例1と同様に測定した。測定結果を表1に記す。
[比較例1]
(絶縁膜形成材料の調製)
p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン単位/フェニルシルセスキオキサン単位のモル比が70/30であり、質量平均分子量(Mw)が7000であり、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.8である、前述の式(A−1)で表されるシルセスキオキサン樹脂100質量部と、ヘキサメチルメトキシメラミン(架橋剤、ニカラックMw30HM、三和ケミカル株式会社製)10質量部と、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム3質量部(光酸発生剤)、トリ−n−オクチルアミン0.3質量部とを、固形分濃度が20質量%となるようにPGMEAに溶解させて、絶縁膜形成材料を調製した。
(有機半導体素子の製造)
ガラス基板上に、絶縁膜形成材料をスピン塗布した後、形成された塗布膜を150℃にて20分間加熱して、膜厚1000nmの絶縁膜を形成した。絶縁膜の表面に、金属蒸着装置(ULVAC製、VPC−1100)を用いて、真空度10−3Pa以下にて、真空蒸着法にて銀を蒸着し、チャンネル間距離が100μmとなるように第一電極及び第二電極を形成した。第一電極及び第二電極の形成後は、実施例1と同様の操作を行い、有機半導体素子を得た。得られた有機半導体素子の移動度と閾値電圧とを、実施例1と同様に測定した。測定結果を表1に記す。
[比較例2]
(上層絶縁膜形成材料の調製)
p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン単位/フェニルシルセスキオキサン単位のモル比が70/30であり、質量平均分子量(Mw)が7000であり、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が1.8である、前述の式(A−1)で表されるシルセスキオキサン樹脂100質量部と、ヘキサメチルメトキシメラミン(架橋剤、ニカラックMw30HM、三和ケミカル株式会社製)10質量部と、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン3質量部(光酸発生剤)、トリ−n−オクチルアミン0.3質量部とを、固形分濃度が20質量%となるようにPGMEAに溶解させて、上層絶縁膜形成材料を調製した。
(有機半導体素子の製造)
上層絶縁膜形成材料を、上記方法で得られた材料に変更することの他は、実施例1と同様にして、ガラス基板上に上層絶縁膜と下層絶縁膜とを形成した。形成された上層絶縁膜の形状を、走査型電子顕微鏡(HITACHI S−4500)により観察したところ、端部の面が、下層絶縁膜の表面に対して垂直であることが確認された。上層絶縁膜の形状を走査型電子顕微鏡により確認した際の、電子顕微鏡写真を図4に示す。上層絶縁膜の形成後は、実施例1と同様の操作を行い、有機半導体素子を得た。上層絶縁膜加熱工程前に、形成された第一電極及び第二電極を、基板の上方より光学顕微鏡により観察したところ、第一電極と第二電極とが隣接して形成されていることが確認された。また、上層絶縁膜加熱工程後の、上層絶縁膜の形状を、走査型電子顕微鏡により観察したところ、端部の形状が順テーパー形状であることが確認された。上層絶縁膜加熱工程後の第一電極と第二電極とのチャンネル間距離を測定したところ10μmであった。得られた有機半導体素子の移動度と閾値電圧とを、実施例1と同様に測定したが、比較例2で得られた有機半導体素子は、半導体素子として駆動しなかった。
実施例1及び2によれば、上層絶縁膜の端部の形状を、加熱により逆テーパー形状から順テーパー形状に変化させることにより、チャンネル間距離の短い第一電極及び第二電極が形成された有機半導体素子は、移動度が大きく、閾値電圧が低いことが分かる。つまり、実施例1及び2の有機半導体素子は駆動電圧が低く、駆動電流値が大きい。また、実施例1と実施例2との比較により、有機半導体層の材料として、p−BTT−C16を用いることにより、有機半導体素子の駆動電圧をより低くでき、駆動電流値をより大きくできることが分かる。
比較例1によれば、チャンネル間距離が100μmと長い場合、移動度が大きく、閾値電圧が低い有機半導体素子が得られないことが分かる。また、比較例2で得られた有機半導体素子は、半導体素子として駆動しなかった。これは、加熱前の上層絶縁膜の端部の形状が垂直形状であったため、第一電極及び第二電極を形成するための銀の蒸着を行った際に、上層絶縁膜の端部にも銀が蒸着されてしまい、第一電極と第二電極とが短絡されたためと思われる。
[実施例3]
本願発明は、有機光デバイスへの応用展開も可能であり、一例として発光性の材料を用いることで、有機発光デバイスが作製可能となる。実施例3では、P3HTに変えて、下記式で表される化合物である、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ベンゾ−{2,1’−3}−チアジアゾール)](Poly[(9,9−dioctylfluorenyl−2,7−diyl)−co−(1,4−benzo−{2,1’−3}−thiadiazole)]、F8BT、American Dye Sources社製)をキシレンに3質量%濃度で溶かした溶液により有機半導体層を形成することの他は、実施例1と同様にして有機半導体素子を得た。なお、下式において、mは、括弧内の繰り返し単位の繰り返し数を表す。
両極性を有する発光性の高い有機半導体材料F8BTを用いることで、ゲート電圧を変化させ、F8BT薄膜に電子と正孔を同時に注入することで、F8BTからの黄緑色の電界発光が得られた。電界発光の測定結果を図7に示す。
1 有機半導体素子
11 基板
12 下層絶縁膜
13 上層絶縁膜
14 第一電極
15 第二電極
16 有機半導体層
17 上部絶縁膜
18 第三電極

Claims (5)

  1. 基板と、
    基板上に設けられた下層絶縁膜と、
    前記下層絶縁膜上に設けられた、一端部の形状が順テーパー形状である上層絶縁膜と、
    前記上層絶縁膜上に設けられた第一電極と、
    前記下層絶縁膜上の、前記上層絶縁膜の順テーパー形状の端部側に、前記第一電極と離間して設けられた第二電極と、
    前記第一電極表面、前記第二電極表面、前記上層絶縁膜表面、及び前記下層絶縁膜表面を被覆して設けられた有機半導体層と、
    前記有機半導体層上に設けられた上部絶縁膜と、
    前記上部絶縁膜上に設けられた第三電極と、
    を備える、有機半導体素子。
  2. (I)基板上に下層絶縁膜を形成する、下層絶縁膜形成工程と、
    (II)前記下層絶縁膜上に、一端部の形状が逆テーパー形状である上層絶縁膜を形成する、上層絶縁膜形成工程と、
    (III)前記上層絶縁膜上に第一電極を形成し、前記下層絶縁膜上の、前記上層絶縁膜の逆テーパー形状の端部側に、前記第一電極と離間する第二電極を形成する、第一及び第二電極形成工程と、
    (IV)前記上層絶縁膜を加熱し、前記上層絶縁膜の一端部の形状を、逆テーパー形状から順テーパー形状に変換する、上層絶縁膜加熱工程と、
    (V)前記第一電極表面、前記第二電極表面、前記上層絶縁膜表面、及び前記下層絶縁膜表面を被覆する有機半導体層を形成する、有機半導体層形成工程と、
    (VI)前記有機半導体層上に上部絶縁膜を形成する、上部絶縁膜形成工程と、
    (VII)前記上部絶縁膜上に第三電極を形成する、第三電極形成工程と、
    を含む、有機半導体素子の製造方法。
  3. 前記上層絶縁膜の材料が、加熱により収縮する材料である、請求項2に記載の有機半導体素子の製造方法。
  4. 前記上層絶縁膜の材料がシルセスキオキサン樹脂を含む材料である、請求項3に記載の有機半導体素子の製造方法。
  5. 前記上層絶縁膜が、前記下層絶縁膜上に感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成した後、前記感光性樹脂層を所定のパターンのマスクを介して露光し、次いで、露光された前記感光性樹脂層を現像して形成される、請求項2〜4のいずれか1項に記載の有機半導体素子の製造方法。
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