JP2014025874A - プロセス流体の混入検知方法および熱交換システムの運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プロセス流体と熱媒体との間で熱交換を行なう熱交換プロセスにおいて、熱媒体として溶融塩が用いられる場合に、熱媒体側へのプロセス流体の混入を容易に検知できる新規な混入検知方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、プロセス流体流路内を流通し、酸素を含むプロセス流体と、熱媒体流路内を流通し、溶融塩からなる熱媒体との間で直接接触することなく熱交換を行なう熱交換システムにおけるプロセス流体の混入検知方法であって、熱交換システムは、熱媒体と混入したプロセス流体とが接触することにより変化する溶融塩の融点を測定するための熱分析器を備え、熱分析器による溶融塩の融点の測定値に基づいて、プロセス流体の混入を検知する混入検知工程を有する、プロセス流体の混入検知方法である。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、プロセス流体流路内を流通し、酸素を含むプロセス流体と、熱媒体流路内を流通し、溶融塩からなる熱媒体との間で直接接触することなく熱交換を行なう熱交換システムにおけるプロセス流体の混入検知方法であって、熱交換システムは、熱媒体と混入したプロセス流体とが接触することにより変化する溶融塩の融点を測定するための熱分析器を備え、熱分析器による溶融塩の融点の測定値に基づいて、プロセス流体の混入を検知する混入検知工程を有する、プロセス流体の混入検知方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、プロセス流体と熱媒体との間の熱交換システムにおけるプロセス流体の混入検知方法および熱交換システムの運転方法に関する。
塩化水素ガスを原料とし、これを触媒存在下の気相状態で酸素と反応させて塩素を得るためのシステム(塩酸酸化システム)は、たとえば、塩化水素および酸素を含む原料ガスを触媒存在下で反応させる反応器、反応後の反応ガスを水または塩酸水と接触させることにより、未反応の塩化水素を水または塩酸水に吸収させて除去し塩素を得る急冷塔などを備える。反応器内での反応は、通常、高圧・高温下で行なわれ、発熱を伴う。
塩酸酸化システムは、原料ガスを予め加熱しておくため、反応器において反応中の反応ガスから発生した反応熱を除熱するため、反応後の反応ガスを冷却するためなど、様々な目的で、塩化水素または塩素を含むプロセス流体(原料ガス、反応中の反応ガス、反応後の反応ガス)を加熱、除熱または冷却するための熱交換システムを備える。
このような加熱、除熱または冷却のための熱交換システムにおいては、通常、プロセス流体と熱媒体とを直接接触させることなく、熱伝導体を介して熱交換を行なう。熱媒体としては、プロセス流体の温度に応じて、たとえば、溶融塩、スチーム、温水、冷水などが使用される。
このような熱交換システムにおいて、プロセス流体を流通する流路に何らかの不具合が生じ、熱媒体側にプロセス流体が混入した場合は、まずはこれを検知することが必要である。特許文献1(特開2003−83833号公報)には、熱媒体と混入したプロセス流体とが接触することにより発生するガス成分を検知することによって、プロセス流体の混入を検知する方法が記載されている。特許文献2(特開2012−47616号公報)には、熱媒体流路内における気相部で酸素ガスを検知することにより熱媒体側へのプロセス流体の混入を検知することが記載されている。
本発明は、プロセス流体と熱媒体との間で熱交換を行なう熱交換プロセスにおいて、熱媒体として溶融塩が用いられる場合に、熱媒体側へのプロセス流体の混入を容易に検知できる新規な混入検知方法、および当該混入検知方法によりプロセス流体の混入が検知された場合の熱交換システムの運転方法を提供すること目的とする。
本発明は、プロセス流体流路内を流通し、酸素を含むプロセス流体と、熱媒体流路内を流通し、溶融塩からなる熱媒体との間で直接接触することなく熱交換を行なう熱交換システムにおけるプロセス流体の混入検知方法であって、熱交換システムは、熱媒体と混入したプロセス流体とが接触することにより変化する溶融塩の融点を測定するための熱分析器を備え、熱分析器による前記溶融塩の融点の測定値に基づいて、プロセス流体の混入を検知する混入検知工程を有する、プロセス流体の混入検知方法である。上記溶融塩は亜硝酸塩を含むことが好ましい。
また、本発明は、プロセス流体流路内を流通し、酸素を含むプロセス流体と、熱媒体流路内を流通し、溶融塩からなる熱媒体との間で直接接触することなく熱交換を行なう熱交換システムの運転方法であって、熱交換システムは、熱媒体と混入したプロセス流体とが接触することにより変化する溶融塩の融点を測定するための熱分析器を備え、熱分析器による溶融塩の融点の測定値に基づいて、プロセス流体の混入を検知する混入検知工程と、混入検知工程により混入が検知されると、熱交換システムの運転を停止する運転停止工程と、を有する、熱交換システムの運転方法である。
本発明の熱交換システムの運転方法において、上記運転停止工程は、プロセス流体流路内へのプロセス流体の供給を停止する供給停止工程を含む形態とすることができる。
本発明の熱交換システムの運転方法において、プロセス流体は、塩化水素および/または塩素を含み、上記運転停止工程は、プロセス流体流路内の全てのプロセス流体を、塩化水素および/または塩素を無害化して大気中へ放出する無害化設備に導く混入時無害化処理工程を含む形態とすることができる。
本発明の熱交換システムの運転方法において、運転停止工程は、熱媒体流路内の熱媒体を冷却する混入時熱媒体冷却工程を含む形態とすることができる。
請求項1に係る発明によると、熱交換システムにおいて、熱媒体側へのプロセス流体の混入を容易に検知することができる。
請求項3に係る発明によると、熱交換システムにおいてプロセス流体の混入を容易に検知することができ、またプロセス流体の混入が検知された場合に、熱交換システムの運転が停止されるので安全である。
本発明は、酸素を含むプロセス流体と、熱媒体流路内を流通する、溶融塩からなる熱媒体との間で直接接触することなく熱交換を行なう熱交換システムの運転方法に関する。
プロセス流体とは、熱媒体との熱交換プロセスに供されるガスまたは液体や、これらの混合物を意味する。本発明における熱交換プロセスは、プロセス流体と熱媒体との間の熱交換とともに、プロセス流体の反応を伴っていてもよく、熱交換のみを行なうプロセスであってもよい。前者の場合、プロセス流体は、該反応の原料、中間物、生成物、副生成物またはこれらの2種以上の混合物である。
プロセス流体と熱媒体との間の熱交換プロセスに用いられる熱交換器は、プロセス流体と熱媒体とが管または平板等の隔壁を介して熱交換するものであれば特に限定されず、たとえば、熱交換プロセスがプロセス流体の反応を伴う場合における多管式触媒充填反応器等の熱交換型反応器や、単に熱交換を行なう隔壁式熱交換器である多管円筒型熱交換器、プレート式熱交換器、スパイラル熱交換器、ブロック熱交換器などが挙げられる。上記熱交換型反応器としては、酸化触媒を充填した複数の反応管を含み、当該固定床触媒によって気相酸化反応を行なう多管式固定床触媒反応器を挙げることができる。
プロセス流体は、酸素を含むものである限り特に限定されないが、反応を伴うプロセス流体の好ましい一例として、塩化水素ガスを酸素ガスで酸化することにより塩素を製造する、以下の式(1)に示す反応(塩酸酸化反応):
2HCl+1/2O2 → Cl2+H2O+58.6kJ/mol 式(1)
におけるプロセス流体を挙げることができる。
2HCl+1/2O2 → Cl2+H2O+58.6kJ/mol 式(1)
におけるプロセス流体を挙げることができる。
式(1)の反応を伴うプロセス流体は、塩化水素ガスおよび酸素ガスを含む原料ガス;未反応原料である酸素ガス、さらには塩化水素ガス、および生成物である塩素ガスを含む生成物ガス;またはこれらの混合物であり得る。このプロセス流体は、上記原料ガスおよび生成物ガス以外に、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガスを含む場合もある。式(1)の反応において、塩化水素1モルに対する酸素の理論モル量は0.25モルであるが、塩化水素ガスに対して理論量を超える酸素ガス(たとえば、塩化水素1モルに対して0.25モル超2モル以下)を使用することが通常である。式(1)の塩酸酸化反応は平衡反応である。塩化水素転化率を高くし、塩素生成率を高めるには反応温度が低い方がよく、また、反応に使用する触媒の性能をより引き出すために、熱媒体により反応熱の除去が行なわれる。
本発明において、熱媒体は溶融塩(HTS:Heat Transfer Salt)からなり、目的とするプロセス流体の温度などに応じて、好ましい溶融塩を選択する。溶融塩(HTS)は、亜硝酸塩(NaNO2など)を含むことが好ましく、硝酸塩(NaNO3、KNO3など)をさらに含むものであることが好ましい。取扱い性の観点から、その融点は、好ましくは約100〜200℃である。好ましく用いられる溶融塩の具体例は、NaNO2(40質量%)、NaNO3(7質量%)およびKNO3(53質量%)からなる組成物(融点142℃);NaNO2(34質量%)、NaNO3(13質量%)およびKNO3(53質量%)からなる組成物(融点152℃);NaNO2(50質量%)およびKNO3(50質量%)からなる組成物(融点139℃)である。
なかでも、塩酸酸化反応におけるプロセス流体との熱交換に用いる熱媒体としては、プロセス流体の反応温度等の観点から、NaNO2(50質量%)およびKNO3(50質量%)からなる溶融塩などが好ましく用いられる。
熱媒体が流通する熱媒体流路は、プロセス流体と熱媒体との熱交換が行なわれる熱交換器が備える熱媒体流路(いわゆるジャケットなど)のほか、熱媒体を貯蔵する熱媒体タンク;熱媒体を加熱および/または冷却するための熱交換器(加熱器および/または冷却器);プロセス流体と熱媒体との熱交換が行なわれる熱交換器と、熱媒体タンクとの間に配置され、熱媒体温度の微調整を行なうバッファータンク;バッファータンク内の熱媒体温度を調整する加熱器および/または冷却器;これらの機器間を接続する配管;熱媒体を循環させるためのポンプなどから構成される熱媒体循環流路を含み、さらには、熱媒体流路に接続され、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガスを熱媒体循環流路に導入するための配管および熱媒体流路内の気相部と大気または無害化設備とを接続し、熱媒体流路内の気相部の気体を外部に排出するための配管を含む。
不活性ガスの導入による熱媒体流路のシールは、熱媒体の劣化を防止するとともに、熱媒体流路内の空気の存在により、以下の式(2)の反応:
NaNO2+1/2O2 → NaNO3+111.7kJ/mol 式(2)
が生じるのを防ぐ。
NaNO2+1/2O2 → NaNO3+111.7kJ/mol 式(2)
が生じるのを防ぐ。
式(2)の反応が起こるとNaNO3が生成し、これにより溶融塩の融点が約300℃以上に上昇し、低温部で閉塞する可能性がある。なお、熱媒体流路の気相部を窒素ガスなどの不活性ガスでシールしても、プロセス流体には酸素ガスが含まれるので、プロセス流体と溶融塩が接触した際には、式(2)の反応が生起する可能性がある。塩酸酸化反応においては、通常、プロセス流体の圧力は溶融塩の圧力よりも高く操作されているので、プロセス流体を加熱あるいは冷却する機器において何らかの原因で穴が開いた場合には、プロセス流体が溶融塩側へ混入し、溶融塩と接触し、式(2)の反応が生起する可能性がある。さらに、プロセス流体が、塩化水素ガスおよび/または塩素ガスを含む場合は、プロセス流体が溶融塩側へ混入すると、以下の式(3)および/または式(4)の化学反応:
NaNO2+HCl+1/4O2 → NaCl+1/2H2O+NO2+47.9kJ/mol 式(3)
NaNO2+1/2Cl2 → NaCl+NO2+19.3kJ/mol 式(4)
が生じる場合がある。
NaNO2+HCl+1/4O2 → NaCl+1/2H2O+NO2+47.9kJ/mol 式(3)
NaNO2+1/2Cl2 → NaCl+NO2+19.3kJ/mol 式(4)
が生じる場合がある。
なお、溶融塩として、市販の溶融塩を用いる場合には、通常は、有機固結防止剤などが含まれているないものが採用される。
上記のように、プロセス流体が溶融塩側に混入すると、溶融塩の組成が変化する。すなわち、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)の割合が減少し、代わりに硝酸ナトリウム(NaNO3)及び塩化ナトリウム(NaCl)の割合が増加する。このように、硝酸ナトリウム(NaNO3)及び塩化ナトリウム(NaCl)の割合が増加すると、溶融塩の融点が上昇することが知られている。なお、溶融塩の融点が上昇すると、溶融塩の流動性が低くなり、熱媒体流路の流通が停滞することがあるので、プロセス流体の溶融塩への混入を検出することが好ましい。本発明の熱交換システムは、溶融塩の融点を測定するための熱分析器を備える。
本発明のプロセス流体の混入検知方法は、上述の熱分析器により測定された溶融塩の融点に基づいて、プロセス流体の溶融塩側への混入を検知する混入検知工程を有する。NaNO2(50質量%)およびKNO3(50質量%)からなる溶融塩を用いた場合、かかる溶融塩の融点は139℃であるので、混入検知工程において、溶融塩の融点がたとえば180℃以上となった場合にプロセス流体が溶融塩側に混入していると判断するようにする。混入検知工程において、初期の溶融塩の融点より40〜50℃以上高くなった場合にプロセス流体が溶融塩側に混入していると判断することが好ましい。かかる混入検知工程により、プロセス流体の溶融塩側への混入を正確に検知することができる。
また、本発明の熱交換システムの運転方法においては、上述の混検知工程により混入が検知されると、熱交換システムの運転を停止する運転停止工程を有する。かかる運転停止工程により、熱交換システムの運転が停止されるので安全である。
本発明に係る熱交換システムの運転方法の一形態においては、上述の混入検知工程によりプロセス流体の熱媒体への混入が検知されると、プロセス流体流路内へのプロセス流体の供給を停止する供給停止工程を有する。プロセス流体流路内へのプロセス流体の供給の停止方法は限定されないが、たとえば、供給路を閉じることにより停止することができる。このような運転方法により、熱媒体側へプロセス流体が混入しても、プロセス流体の混入量を抑制することができ、安全性を確保することができる。
また、上記運転方法においては、混入検知工程により混入が検知され、供給停止工程によりプロセス流体流路内へのプロセス流体の供給が停止されるとともに、プロセス流体流路内に存在するプロセス流体を、無害化設備に導く混入時無害化処理工程を有することが好ましい。ここで、無害化設備は、塩化水素および/または塩素を無害化して大気中へ放出する装置である。このような混入時無害化処理工程を有することにより、プロセス流体に塩化水素や塩素などが含まれる場合であっても、これらがそのまま大気中に放出されることはなく、無害化されて大気中に排出されるので安全である。
本発明に係る熱交換システムの運転方法の一形態においては、上述の混入検知工程によりプロセス流体の熱媒体への混入が検知されると、熱媒体流路内の熱媒体を冷却する混入時熱媒体冷却工程を有する。熱媒体流路内の熱媒体の冷却方法は特に限定されない。たとえば、塩酸酸化反応による塩素生成工程において、280〜400℃の温度に調整されていた熱媒体の温度を、混入時熱媒体冷却工程により200〜250℃の温度に調整する方法が例示される。このような運転方法により、熱媒体側へプロセス流体が混入しても、熱交換システム全体の温度を低下させることができるので、種々の反応を抑制することができ、安全性を確保することができるとともに、溶融塩の劣化や反応熱が発生することによる設備の劣化を抑制することができる。なお、上記供給停止工程と、上記混入時冷却工程を同時に行なう形態であってもよい。以下、具体的な実施の形態を示して、本発明をより詳細に説明する。
[熱交換システム]
図1は、本発明の一実施形態である熱交換システムを示す概略図である。図1に示す熱交換システムにおいては、塩化水素を酸素で酸化して塩素が製造される。図1に示す熱交換システムは、熱交換器である多管式固定床触媒反応器1と、溶融塩を貯蔵する溶融塩貯蔵ドラム2と、反応生成ガス中の未反応の塩化水素ガスを水に吸収させる急冷塔3と、塩酸酸化反応の原料ガスを加熱する加熱器4と、反応生成ガスを冷却する冷却器5と、反応生成ガス中の成分を含む水溶液を冷却する冷却器6と、溶融塩を冷却する冷却器7とを備える。多管式固定床触媒反応器1は、プロセス流体流路である複数の反応管(不図示)と、熱媒体流路であるジャケット(不図示)を備える。溶融塩貯蔵ドラム2は、気相部22と溶融塩からなる液相部21とを備える。
図1は、本発明の一実施形態である熱交換システムを示す概略図である。図1に示す熱交換システムにおいては、塩化水素を酸素で酸化して塩素が製造される。図1に示す熱交換システムは、熱交換器である多管式固定床触媒反応器1と、溶融塩を貯蔵する溶融塩貯蔵ドラム2と、反応生成ガス中の未反応の塩化水素ガスを水に吸収させる急冷塔3と、塩酸酸化反応の原料ガスを加熱する加熱器4と、反応生成ガスを冷却する冷却器5と、反応生成ガス中の成分を含む水溶液を冷却する冷却器6と、溶融塩を冷却する冷却器7とを備える。多管式固定床触媒反応器1は、プロセス流体流路である複数の反応管(不図示)と、熱媒体流路であるジャケット(不図示)を備える。溶融塩貯蔵ドラム2は、気相部22と溶融塩からなる液相部21とを備える。
図1に示す熱交換システムにおいて、プロセス流体流路は、ライン11と、多管式固定床触媒反応器1内のプロセス流体流路と、プロセス流体を多管式固定床触媒反応器1から急冷塔3に導くライン12と、急冷塔3から塩素ガスを含むプロセス流体を塩素乾燥工程に導くライン13と、急冷塔3からプロセス流体を無害化設備に導くライン14と、急冷塔3から排出された塩酸水を含むプロセス流体から塩酸水を除去した後に急冷塔3に戻すライン15とを備える。
プロセス流体流路において、ライン11を介して原料ガスが多管式固定床触媒反応器1に導かれる。ライン11は、弁31を備え、弁31の開状態/閉状態を切り替えることによりプロセス流体流路への原料ガスの供給/停止を切り替える。ライン11は加熱器4を備え、加熱器4により多管式固定床触媒反応器1に供給される原料ガスが加熱される。多管式固定床触媒反応器1内では、プロセス流体内での塩酸酸化反応と、プロセス流体と熱媒体との熱交換が行なわれ、塩酸酸化反応での反応生成ガスは、ライン12を通じて急冷塔3に導かれる。ライン12は、冷却器5を備え、反応生成ガスを冷却する。急冷塔3においては、水が供給され、プロセス流体中の未反応塩化水素を水に吸収させて塩酸水にする。ライン15は、ポンプ32を備え、塩酸水を含むプロセス流体の液体成分を循環させ、ライン15を循環するプロセス流体中から塩酸水を外部に取り除く。ライン15は、冷却器6を備え、冷却器6は、冷却水によりライン15内を循環するプロセス流体を冷却する。急冷塔3中のプロセス流体におけるガス成分は、ライン13を介して塩素乾燥工程に導かれるか、またはライン14を介して無害化設備に導かれる。ライン13は、弁33を備え、弁33の開状態/閉状態を切り替えることにより塩素乾燥工程へのプロセス流体の導通の可否を切り替える。ライン14は、弁34を備え、弁34の開状態/閉状態を切り替えることにより無害化設備へのプロセス流体の導通の可否を切り替える。
ライン11を通じて、多管式固定床触媒反応器1へ供給されるプロセス流体は塩化水素ガスおよび酸素ガスを含み、あるいは未反応酸素を反応系へリサイクルする場合には塩化水素ガス、酸素ガスおよび塩素ガスを含む。一方、多管式固定床触媒反応器1から出てくるプロセス流体は、塩素ガス、塩化水素ガス、酸素ガス、水蒸気を含む。
図1に示す熱交換システムにおいて、熱媒体流路は、第1の循環路と、第2の循環路と、第3の循環路と、第4の流路とからなる。第1の循環路において、溶融塩は、溶融塩貯蔵ドラム2から、ライン41を介して多管式固定床触媒反応器1内の熱媒体流路に導かれ、多管式固定床触媒反応器1内でプロセス流体と熱交換する熱媒体として機能する。その後、溶融塩は、ライン42を介して溶融塩貯蔵ドラム2に戻される。第2の循環路において、溶融塩は、溶融塩貯蔵ドラム2から、ライン41を介して加熱器4に導かれ、加熱器4において多管式固定床触媒反応器1に供給される原料ガスを加熱する熱媒体として機能する。その後、溶融塩は、ライン43を介して溶融塩貯蔵ドラム2に戻される。第3の循環路において、溶融塩は、ライン41を介して冷却器5に導かれ、冷却器5において多管式固定床触媒反応器1より送出された反応生成ガスを冷却する熱媒体として機能する。その後、溶融塩は、ライン45を介して溶融塩貯蔵ドラム2に戻される。
ライン41は、ポンプ8を備え、第1〜第3の循環路に溶融塩を循環させる。また、ライン41は、冷却器7を備え、溶融塩を冷却して溶融塩の温度を調節する。ライン41においては、溶融塩の温度が所望の温度となるように、冷却器7を通過する流路、または冷却器7を回避する流路が適宜切り替えられる。冷却器7の構成は特に限定されないが、図1に示す冷却器7は、水が供給され、溶融塩の熱を回収することによって水がスチームに変化しスチームが排出されるスチーム発生器である。冷却器7から排出されるスチームは、たとえば反応に供されるプロセス流体の加熱に用いることができる。
第4の流路は、溶融塩貯蔵ドラム2の気相部22と塩化水素および/または塩素を無害化する無害化設備とを連通可能なライン46からなり、ライン46を介して気相部の気体が外部に排出される。溶融塩貯蔵ドラム2の気相部22には、ライン51を介して、窒素ガスが供給され、かかる窒素ガスにより熱媒体流路の気相部がシールされるが、熱媒体流路の気相部の気体を外部に排出するライン46を備えることにより、熱媒体流路の気相部をシールする窒素ガスを外部、例えば無害化のための設備に排出することができる。
また、熱媒体にプロセス流体が混入した場合であっても、ライン46からプロセス流体が排出されることにより、熱媒体流路内の気相部の圧力の上昇を抑制することができる。さらに、ライン46が、熱媒体流路内の気相部を塩化水素および/または塩素を無害化する無害化設備に導くように構成されていることより、熱媒体にプロセス流体が混入した場合であっても、プロセス流体に含まれる塩化水素および塩素を無害化して排出することができる。
溶融塩貯蔵ドラム2は、液相部21の溶融塩を採取(サンプリング)するためのサンプリング口47を備える。サンプリング口47から採取した溶融塩は、熱分析器(図示せず)により、その融点が測定され、その測定値に基づいて、式(2)、式(3)および式(4)の反応が生起しているか否かを検知する。これらの反応の生起を検知することにより、熱媒体へのプロセス流体の混入を検知することができる。サンプリング口47の設置位置は、熱媒体流路内の溶融塩を採取できる位置であれば、溶融塩貯蔵ドラム2内に限定されることはない。溶融塩の採取量は、通常10g以下でよく、例えば5g程度である。
熱分析器としては、例えば融点測定管を用いた通常の融点測定装置を用いることができる。また、示差熱分析装置(DTA(differential thermal analysis)装置)、示差走査熱量測定装置(DSC(differential scanning calorimetory)装置)などを用いることもできる。
塩酸酸化反応プロセスで用いられる触媒としては、酸化ルテニウム系触媒や酸化クロム系触媒などが挙げられるがこれらに限定されない。塩酸酸化反応プロセスにおいては、触媒層の温度を常時測定する測定手段を設けてもよく、かかる測定手段により触媒層を温度制御し反応の適正化や温度暴走を早期に検出することができる。多管式固定床触媒反応器1における反応温度、反応圧力および触媒層の温度制御方式は特に限定されないが、塩酸酸化反応では、280〜400℃の温度に調整した熱媒体による熱交換により280〜400℃の温度に調整した雰囲気下で塩化水素および酸素を反応させることが好ましい。
図1の熱交換システムで使用される機器の材料に特に制限はないが、プロセスガスと接触する部位、たとえば多管式固定床触媒反応器1の反応管には通常ニッケルが使用され、溶融塩と接触する部位、たとえば、多管式固定床触媒反応器1のジャケット、溶融塩貯蔵ドラム2には通常炭素鋼が使用される。反応温度が約450℃以上にならないように反応温度制御と反応熱の除去が行なわれることが好ましい。なお、プロセス流体を冷却して塩酸水を凝縮する急冷塔3などの塩酸水が接触する部位には、タンタル、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂、あるいはカーボンなどが使用される。
[熱交換システムの運転方法]
図1に示す熱交換システムの塩酸酸化反応プロセス実行時の運転においては、ライン11上の弁31は開状態として、原料ガスが多管式固定床触媒反応器1に供給される状態とする。また、弁33は開状態とし、弁34は閉状態として、急冷塔3から送出される塩素ガスを含む反応生成ガスは、ライン13を介して塩素乾燥工程に導かれるようにする。塩酸酸化反応プロセス実行時の運転においては、サンプリング口47から採取した溶融塩の熱分析器(図示せず)による融点の測定値に基づき、熱媒体流路内へのプロセス流体の混入が検知されると、以下で説明する供給停止工程または混入時熱媒体冷却工程の一方、あるいは両方の工程を同時に実行する運転を行なう。
図1に示す熱交換システムの塩酸酸化反応プロセス実行時の運転においては、ライン11上の弁31は開状態として、原料ガスが多管式固定床触媒反応器1に供給される状態とする。また、弁33は開状態とし、弁34は閉状態として、急冷塔3から送出される塩素ガスを含む反応生成ガスは、ライン13を介して塩素乾燥工程に導かれるようにする。塩酸酸化反応プロセス実行時の運転においては、サンプリング口47から採取した溶融塩の熱分析器(図示せず)による融点の測定値に基づき、熱媒体流路内へのプロセス流体の混入が検知されると、以下で説明する供給停止工程または混入時熱媒体冷却工程の一方、あるいは両方の工程を同時に実行する運転を行なう。
(供給停止工程)
供給停止工程においては、サンプリング口47から採取した溶融塩の熱分析器(図示せず)による融点の測定値に基づき、熱媒体流路内へのプロセス流体の混入が検知されると、例えば手動での操作により弁31を開状態から閉状態に切り替え、多管式固定床触媒反応器1への原料ガスの供給を停止する。また、弁33を開状態から閉状態に切り替えるとともに、弁34を閉状態から開状態に切り替えて、急冷塔3から送出されるガス成分をライン14を介して無害化設備に導く。このように運転することにより、熱媒体流路内へプロセス流体が混入してもプロセス流体の混入量を抑制することができるので安全であり、さらにプロセス流体流路内の圧力を低下させて安全に熱交換システムを停止することができる。また、多管式固定床触媒反応器1から急冷塔3に残存するプロセス流体を無害化設備により無害化して安全に処理できる。なお、停止工程において、好ましくは、急冷塔3への水の供給、ポンプ32および冷却器6の作動を継続させる。
供給停止工程においては、サンプリング口47から採取した溶融塩の熱分析器(図示せず)による融点の測定値に基づき、熱媒体流路内へのプロセス流体の混入が検知されると、例えば手動での操作により弁31を開状態から閉状態に切り替え、多管式固定床触媒反応器1への原料ガスの供給を停止する。また、弁33を開状態から閉状態に切り替えるとともに、弁34を閉状態から開状態に切り替えて、急冷塔3から送出されるガス成分をライン14を介して無害化設備に導く。このように運転することにより、熱媒体流路内へプロセス流体が混入してもプロセス流体の混入量を抑制することができるので安全であり、さらにプロセス流体流路内の圧力を低下させて安全に熱交換システムを停止することができる。また、多管式固定床触媒反応器1から急冷塔3に残存するプロセス流体を無害化設備により無害化して安全に処理できる。なお、停止工程において、好ましくは、急冷塔3への水の供給、ポンプ32および冷却器6の作動を継続させる。
(混入時熱媒体冷却工程)
混入時熱媒体冷却工程においては、サンプリング口47から採取した溶融塩の熱分析器(図示せず)による融点の測定値に基づき、熱媒体流路内へのプロセス流体の混入が検知されると、例えば手動での操作により第1〜第3の循環路への熱媒体の循環を継続しながら、冷却器7により溶融塩を冷却する。好ましくは、塩酸酸化反応プロセス実行時の運転において、溶融塩の温度が280〜400℃に保たれ、混入時熱媒体冷却工程において、溶融塩の温度が200〜250℃に冷却される。かかる混入時熱媒体冷却工程により、熱交換システム全体の温度を低下させることができるので、種々の反応を抑制することができ、安全性を確保することができるとともに、溶融塩の劣化や反応熱が発生することによる設備の劣化を抑制することができる。
混入時熱媒体冷却工程においては、サンプリング口47から採取した溶融塩の熱分析器(図示せず)による融点の測定値に基づき、熱媒体流路内へのプロセス流体の混入が検知されると、例えば手動での操作により第1〜第3の循環路への熱媒体の循環を継続しながら、冷却器7により溶融塩を冷却する。好ましくは、塩酸酸化反応プロセス実行時の運転において、溶融塩の温度が280〜400℃に保たれ、混入時熱媒体冷却工程において、溶融塩の温度が200〜250℃に冷却される。かかる混入時熱媒体冷却工程により、熱交換システム全体の温度を低下させることができるので、種々の反応を抑制することができ、安全性を確保することができるとともに、溶融塩の劣化や反応熱が発生することによる設備の劣化を抑制することができる。
以上の供給停止工程や、混入時熱媒体冷却工程ののち、通常は塩酸酸化プロセスを停止させ、混入箇所を特定し、修理を施す。また、熱媒体は全量を抜き出し、新たな熱媒体と交換する。
[実験1]
実験1では、図1に示す熱交換システムを用いて行なう塩酸酸化プロセスにおいて、プロセス流体が溶融塩側に混入した場合のシミュレーションを行ない、かかるシミュレーションにおける溶融塩貯蔵ドラム2内の溶融塩の組成の経時変化を導出した。
実験1では、図1に示す熱交換システムを用いて行なう塩酸酸化プロセスにおいて、プロセス流体が溶融塩側に混入した場合のシミュレーションを行ない、かかるシミュレーションにおける溶融塩貯蔵ドラム2内の溶融塩の組成の経時変化を導出した。
(手順)
本シミュレーションは、塩素生産量が年間10万トンである塩酸酸化プロセスであるとの前提で、各要素の構成および条件を決定した。多管式固定床触媒反応器1の反応管の本数は、塩素生産量に比例し、本シミュレーションでは塩素生産量が年間10万トンである場合の通常の本数である1万本とした。多管式固定床触媒反応器1の反応管の内径は通常18mm〜25mmで、反応管の長さは4m〜6mであり、これらの数値は塩素生産量に依存せず一定である。本シミュレーションでは、各反応管の内径を21mm、長さを5.7mとした。
本シミュレーションは、塩素生産量が年間10万トンである塩酸酸化プロセスであるとの前提で、各要素の構成および条件を決定した。多管式固定床触媒反応器1の反応管の本数は、塩素生産量に比例し、本シミュレーションでは塩素生産量が年間10万トンである場合の通常の本数である1万本とした。多管式固定床触媒反応器1の反応管の内径は通常18mm〜25mmで、反応管の長さは4m〜6mであり、これらの数値は塩素生産量に依存せず一定である。本シミュレーションでは、各反応管の内径を21mm、長さを5.7mとした。
溶融塩貯蔵ドラム4の容量は、塩素生産量に比例し、本シミュレーションでは塩素生産量が年間10万トンである場合に通常採用される条件の範囲内とし、溶融塩貯蔵ドラム2の液相部の容量を2.94m3、気相部の容量を0.8m3とした。原料ガスの圧力と反応生成ガスの圧力は塩素生産量には依存せずに略一定である。通常、原料ガスの圧力は0.2〜0.5MPaGで反応生成ガスの圧力は0.1〜0.4MPaGで操作される。本シミュレーションでは、プロセス流体の圧力を、0.413MPaGとした。
本シミュレーションでは、NaNO2(50質量%)およびKNO3(50質量%)からなる溶融塩を用いた。溶融塩側の初期の圧力、すなわちプロセス流体が溶融塩側へ混入する前の圧力は、通常、塩素生産量には依存せずほぼ一定である。通常、多管式固定床触媒反応器1のジャケットへ入る溶融塩の圧力は0.1MPaGで、多管式固定床触媒反応器1のジャケットから出る溶融塩の圧力は0.05MPaGである。本シミュレーションでは、多管式固定床触媒反応器1のジャケットにおける溶融塩の初期圧力を、0.063MPaGとした。
溶融塩の流路であるライン42の配管の内径および長さは塩素生産量にほぼ比例する。本シミュレーションでは、塩素生産量が年間10万トンである場合に通常採用される条件の範囲内、すなわちライン42の配管の内径を400mm、長さを40mとした。また、図1において、溶融塩貯蔵ドラム2の気相部22と、塩化水素ガスおよび塩素ガスを無害化する無害化設備とを接続するライン46の配管の長さはほぼ塩素生産量に比例し、本シミュレーションでは、塩素生産量が年間10万トンである場合に通常採用される条件の範囲内である60mとした。ライン46の配管の内径は80mmとした。無害化設備の圧力損失は塩素生産量にほぼ比例し、本シミュレーションでは0.05MPaとした。
プロセス流体が溶融塩側に混入する原因として種々の原因が考えられるが、本シミュレーションでは反応管に一つの穴または複数の穴が生じ、生じた穴の総面積が1本の反応管の内径面積と同じである不具合が生じた場合を想定した。たとえば、1本の反応管が壁面に垂直に切断された場合も、ここで想定する不具合に含まれる。そして、生じた穴からのプロセス流体の溶融塩側への噴出速度は音速である370m/sとした。
通常、塩酸酸化反応では塩化水素2モルに対して酸素は1モルを供給して行われ、塩化水素の転化率は85%である。この場合、多管式固定床触媒反応器1の入口および出口のプロセス流体の組成は以下の表1のようになる。
本シミュレーションでは、溶融塩側に混入するプロセス流体の混入組成として、反応器入口の組成と反応器出口の組成の平均的な値である以下の組成を用いた。
塩化水素濃度(モル%)=40、
酸素濃度(モル%)=20、
塩素濃度(モル%)=20、
水蒸気濃度(モル%)=20。
酸素濃度(モル%)=20、
塩素濃度(モル%)=20、
水蒸気濃度(モル%)=20。
さらに、プロセスガスが溶融塩側に混入した場合に、溶融塩とプロセスガスとの反応として、上記の式(2)、式(3)および式(4)の反応およびその反応速度を考慮した。
(実験結果)
図2は、上述のように不具合により反応管に穴が生じ(この時点を、混入発生からの経過時間0秒とする)、その後、生じた穴からプロセス流体が熱媒体流路内に混入し続けた場合の溶融塩貯蔵ドラム2内の溶融塩の組成変化、具体的には亜硝酸ナトリウム(NaNO2)、硝酸ナトリウム(NaNO3)及び塩化ナトリウム(NaCl)の溶融塩中の割合(重量%)の経時変化を示す。なお、本シミュレーションにおいては、熱媒体流路内へのプロセス流体の混入が検出された場合であっても塩酸酸化反応プロセス実行時の通常の運転を継続し、上述の供給停止工程、混入時熱媒体冷却工程を行なわれないものとする。
図2は、上述のように不具合により反応管に穴が生じ(この時点を、混入発生からの経過時間0秒とする)、その後、生じた穴からプロセス流体が熱媒体流路内に混入し続けた場合の溶融塩貯蔵ドラム2内の溶融塩の組成変化、具体的には亜硝酸ナトリウム(NaNO2)、硝酸ナトリウム(NaNO3)及び塩化ナトリウム(NaCl)の溶融塩中の割合(重量%)の経時変化を示す。なお、本シミュレーションにおいては、熱媒体流路内へのプロセス流体の混入が検出された場合であっても塩酸酸化反応プロセス実行時の通常の運転を継続し、上述の供給停止工程、混入時熱媒体冷却工程を行なわれないものとする。
(考察)
図2からわるように、プロセス流体が熱媒体流路内に混入しても、運転方法を変えずに塩酸酸化反応プロセス実行時の通常の運転を継続した場合は、プロセス流体の熱媒体流路内への混入が開始してから、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)の溶融塩中の割合が線型に減少し、硝酸ナトリウム(NaNO3)及び塩化ナトリウム(NaCl)の溶融塩中の割合が線型に増加する。硝酸ナトリウム(NaNO3)及び塩化ナトリウム(NaCl)の割合が高くなるほど、溶融塩の融点は高くなるので、溶融塩を採取し、その融点を測定することにより、上述の式(2)、式(3)および式(4)の反応の生起の有無を検出することができ、プロセス流体の熱媒体流路内への混入を検出することができることがわかる。
図2からわるように、プロセス流体が熱媒体流路内に混入しても、運転方法を変えずに塩酸酸化反応プロセス実行時の通常の運転を継続した場合は、プロセス流体の熱媒体流路内への混入が開始してから、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)の溶融塩中の割合が線型に減少し、硝酸ナトリウム(NaNO3)及び塩化ナトリウム(NaCl)の溶融塩中の割合が線型に増加する。硝酸ナトリウム(NaNO3)及び塩化ナトリウム(NaCl)の割合が高くなるほど、溶融塩の融点は高くなるので、溶融塩を採取し、その融点を測定することにより、上述の式(2)、式(3)および式(4)の反応の生起の有無を検出することができ、プロセス流体の熱媒体流路内への混入を検出することができることがわかる。
本発明の運転方法における供給停止工程では、熱媒体流路へのプロセス流体の混入が検知されると、プロセス流体の供給を停止するので、プロセス流体の混入量を抑制することができるため、溶融塩の温度の上昇を抑制することができ、安全である。また、本発明の運転方法における混入時熱媒体冷却工程では、熱媒体流路内へのプロセス流体の混入が検知されると、溶融塩を冷却するので、溶融塩の温度の上昇を防ぐのみならず、溶融塩の温度を低下させることができ、安全である。
1 多管式固定床触媒反応器、2 溶融塩貯蔵ドラム、3 急冷塔、4 加熱器、5,6,7 冷却器、8 ポンプ、11,12,13,14 プロセス流体が流通するライン、31,33,34 弁、32 ポンプ、41,42,43,45 熱媒体が流通するライン、47 サンプリング口。
Claims (6)
- プロセス流体流路内を流通し、酸素を含むプロセス流体と、熱媒体流路内を流通し、溶融塩からなる熱媒体との間で直接接触することなく熱交換を行なう熱交換システムにおけるプロセス流体の混入検知方法であって、
前記熱交換システムは、前記熱媒体と混入した前記プロセス流体とが接触することにより変化する前記溶融塩の融点を測定するための熱分析器を備え、
前記熱分析器による前記溶融塩の融点の測定値に基づいて、前記プロセス流体の混入を検知する混入検知工程を有する、プロセス流体の混入検知方法。 - 前記溶融塩は亜硝酸塩を含む、請求項1に記載のプロセス流体の混入検知方法。
- プロセス流体流路内を流通し、酸素を含むプロセス流体と、熱媒体流路内を流通し、溶融塩からなる熱媒体との間で直接接触することなく熱交換を行なう熱交換システムの運転方法であって、
前記熱交換システムは、前記熱媒体と混入した前記プロセス流体とが接触することにより変化する前記溶融塩の融点を測定するための熱分析器を備え、
前記熱分析器による前記溶融塩の融点の測定値に基づいて、前記プロセス流体の混入を検知する混入検知工程と、
前記混入検知工程により混入が検知されると、前記熱交換システムの運転を停止する運転停止工程と、を有する、熱交換システムの運転方法。 - 前記運転停止工程は、前記プロセス流体流路内への前記プロセス流体の供給を停止する供給停止工程を含む、請求項3に記載の熱交換システムの運転方法。
- 前記プロセス流体は、塩化水素および/または塩素を含み、
前記運転停止工程は、前記プロセス流体流路内の全ての前記プロセス流体を、前記塩化水素および/または前記塩素を無害化して大気中へ放出する無害化設備に導く混入時無害化処理工程を含む、請求項3に記載の熱交換システムの運転方法。 - 前記運転停止工程は、前記熱媒体流路内の前記熱媒体を冷却する混入時熱媒体冷却工程を含む、請求項3に記載の熱交換システムの運転方法。
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CN105605955A (zh) * | 2016-01-28 | 2016-05-25 | 西安交通大学 | 一种熔盐换热实验装置及其控制方法 |
CN114252477A (zh) * | 2021-12-30 | 2022-03-29 | 中国科学院力学研究所 | 一种二氧化碳混合工质的循环微通道换热实验装置 |
JP7349593B1 (ja) | 2023-01-18 | 2023-09-22 | Jfeプロジェクトワン株式会社 | 溶融塩の循環装置及び循環方法 |
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