JP2014025764A - Pink1のユビキチン化アッセイ及びスクリーニングへの利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、PINK1のユビキチン化検出のためのアッセイ方法を提供し、さらに、該アッセイ方法を用いたPINK1のユビキチン化を亢進するタンパク質や化合物のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【解決手段】PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6とをユビキチン活性化酵素(E1)及びユビキチン結合酵素(E2)並びにATPの存在下で接触させ、PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6との複合体形成を検出することを含む、PINK1のユビキチン化を検出する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、パーキンソン病等の疾患に関与するPINK1のユビキチン化を検出する方法及び該方法を用いたPINK1が関与する疾患の予防又は治療薬のスクリーニング方法に関する。
パーキンソン病は中脳のドーパミン分泌細胞の変性を主な原因とする神経変性疾患である。この神経細胞変性の1つの原因として、ミトコンドリアの機能不全(不要ミトコンドリアの蓄積)が挙げられる。細胞内で不要になったミトコンドリアの除去には、パーキンソン病原因遺伝子の1つでユビキチンE3リガーゼであるParkinが働く(非特許文献1を参照)。Parkinによる不要ミトコンドリア除去には、ミトコンドリア膜上へのPTEN-induced putative kinase 1(PINK1)の蓄積が必要である(非特許文献2及び3を参照)。しかし、PINK1の蓄積(安定化)のメカニズムはこれまで明らかとなっていなかった。
PINK1は主にミトコンドリアに局在するセリン・スレオニンキナーゼで、PINK1の変異はパーキンソン病発症に関わっていることが報告されている(非特許文献4を参照)。
J. Cell Biol., 183(5):795-803, 2008 PLoS Biol., 8(1):e1000298, 2010 J. Cell Biol., 189(2):211-221, 2010 Science, 304(5674):1158-1160, 2004
本発明は、PINK1のユビキチン化検出のためのアッセイ方法を提供し、さらに、該アッセイ方法を用いたPINK1のユビキチン化を亢進するタンパク質や化合物のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
上記のように、不要ミトコンドリアの除去の際にPINK1がミトコンドリア膜上で蓄積することはわかっていたが、どのような分子メカニズムでPINK1が蓄積(安定化)するのかはわかっていなかった。
本発明者らは、ミトコンドリアの膜電位が低下した際、PINK1がミトコンドリア上でTRAF2及びTRAF6によってユビキチン化され、安定化することを新規に見出した。すなわち、内在性のPINK1に結合する新規結合タンパク質の探索を行い、SARM1aを同定した。SARM1aはミトコンドリアに主に局在し、TRAF2/6との結合能を有していた。TRAF2/6はPINK1をユビキチン化し、SARM1aはTRAF2/6とPINK1の相互作用を高める役割をもっていた。ミトコンドリアが膜電位を失い、機能不全になった時にPINK1はミトコンドリア上でユビキチン化された。このPINK1のユビキチン化をきっかけとして、不要ミトコンドリアはマイトファジーによって分解された。PINK1のユビキチン化はマイトファジー誘導に必須であった。
従って、PINK1のユビキチン化を検出できるアッセイがあれば、PINK1のユビキチン化を誘導し、不要ミトコンドリア除去を促進する薬剤やタンパク質のスクリーニングが可能になると考えた。これまでPINK1におこるユビキチン化や他の化学修飾を検出するためのアッセイはなかった。本発明者らは、鋭意検討を行い、PINK1のユビキチン化検出方法を開発し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6とをユビキチン活性化酵素(E1)及びユビキチン結合酵素(E2)並びにATPの存在下で接触させ、PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6との複合体形成を検出することを含む、PINK1のユビキチン化を検出する方法。
[2] in vitroで行う、[1]のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
[3] プルダウンアッセイを用いて行う、[1]又は[2]のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
[4] ペプチドタグと融合したPINK1、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6とをユビキチン活性化酵素(E1)及びユビキチン結合酵素(E2)並びにATPの存在下で、in vitroで反応させ複合体を形成させ、PINK1と融合したエピトープと特異的に結合する化合物を結合させた担体を用いて複合体を回収したのち、抗ユビキチン抗体を用いて複合体中のユビキチンを検出することにより、PINK1がユビキチンと結合しユビキチン化したかどうかを検出する、[3]のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
[5] SARM1αが第1〜106番目のアミノ酸配列からなるドメインを含む、SARM1αの断片である、[1]〜[4]のいずれかのPINK1のユビキチン化を検出する方法。
[6] ユビキチン結合酵素(E2)がUbcH13/Uev1aである、[1]〜[5]のいずれかのPINK1のユビキチン化を検出する方法。
[7] in vivoで行う、[1]のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
[8] 培養細胞中でPINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α、TRAF2及び/若しくはTRAF6、ユビキチン活性化酵素(E1)並びにユビキチン結合酵素(E2)を発現させることを含む、[7]のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
[9] SARM1αが第1〜106番目のアミノ酸配列からなるドメインを含む、SARM1αの断片である、[7]又は[8]のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
[10] ユビキチン結合酵素(E2)がUbc H13/Uev1aである、[7]〜[9]のいずれかのPINK1のユビキチン化を検出する方法。
[11] [1]〜[10]のいずれかのPINK1のユビキチン化を検出する方法を用いて、PINK1が関与する疾患の予防又は治療に用い得る薬剤をスクリーニングする方法であって、[1]〜[10]のいずれかのPINK1のユビキチン化を検出する方法において、候補薬剤を添加し、候補薬剤の添加によりPINK1のユビキチン化が促進されたかどうかを測定し、候補薬剤の添加によりPINK1のユビキチン化が促進された場合に、候補薬剤がPINK1が関与する疾患の予防又は治療に用い得ると評価する、スクリーニング方法。
[12] PINK1が関与する疾患が、神経変性疾患、がん又は糖尿病である、[11]のスクリーニング方法。
[13] 神経変性疾患が、パーキンソン病である、[12]のスクリーニング方法。
[14] PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α、TRAF2及び/若しくはTRAF6、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)並びにATPを含む、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法でPINK1のユビキチン化を検出するためのキット。
[15] PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α、TRAF2及び/若しくはTRAF6、ユビキチン活性化酵素(E1)並びにユビキチン結合酵素(E2)をコードするDNAを含む、[7]〜[10]のいずれかの方法でPINK1のユビキチン化を検出するためのキット。
[16] 433番目のリジンを介してユビキチン化されたPINK1を認識する抗体。
[17] [16]の抗体を用いて、PINK1のユビキチン化を検出する方法。
PINK1のユビキチン化は機能不全ミトコンドリア除去のステップにおいて重要である。従って、PINK1のユビキチン化を促進するタンパク質や化合物が見つかればパーキンソン病をはじめとするPINK1が関与する疾患対策や薬剤開発への応用が期待される。
本発明のPINK1のユビキチン化検出方法によれば、in vitroでPINK1のユビキチン化アッセイを行うことが可能なので、簡便にPINK1のユビキチン化を促進する薬剤スクリーニングを行うことができる。PINK1はパーキンソン病をはじめアルツハイマー病、がん、糖尿病など様々な疾患に関与することが報告されているので、その適応疾患の範囲は広い。
PINK1結合タンパク質の同定のための免疫沈降の結果を示す図である。 強制発現させたPINK1と強制発現させたSARM1の結合を示す図である。 内在性PINK1とSARM1の結合を示す図である。 PINK1変異体とSARM1の結合を示す図である。 PINK1とSARM1各ドメインとの結合の確認の結果を示す図である。 SARM1α(724アミノ酸)とSARM1β(690アミノ酸)の構造の違いを示す図である。 PINK1とSARM1α及びSARM1βとの結合の確認の結果を示す図である。 SARM1αとSARM1βの細胞内局在を示す図である。図中、左のパネルはミトコンドリアを示し(コントロール)、中央のパネルはSARM1αを示し、右のパネルはSARM1βを示す。 細胞分画後のSARM1αとSARM1βの細胞内局在を示す図である。 SARM1各ドメインの細胞内局在を示す図である。 SARM1α及びSARM1βとTRAF2の結合を示す図である。 SARM1α及びSARM1βとTRAF6の結合を示す図である。 SARM1αとPINK1複合体中にTRAF6及びTRAF2がリクルートされることを示す図である。 TRAF2、TRAF6によるPINK1のユビキチン化を示す図である。 PINK1ユビキチン化様式の確認の結果を示す図である。 in vitroでのPINK1のユビキチン化を示す図である。 細胞内のPINK1のユビキチン化を示す図である。 PINK1-PD変異体のユビキチン化を示す図である。 CCCP(Carbonyl cyanide m-chlorophenyl hydrazone)の濃度変化に伴うPINK1のユビキチン化を示す図である。 CCCPの時間変化に伴うPINK1のユビキチン化を示す図である。 CCCPの時間変化に伴うマイトファジー誘導を示す図である。 アポモルフィンの濃度変化に伴うPINK1のユビキチン化を示す図である。 PINK1のLys変異体のユビキチン化の比較を示す図であり、Lys433の変異によってPINK1のユビキチン化及び安定化が消失することを示す図である。 CCCP処理によるPINK1のユビキチン化の比較を示す図であり、Lys433変異体はCCCP処理によってユビキチン化されないことを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、PTEN-induced putative kinase 1(PINK1)のユビキチン化を検出する方法である。
PINK1は、ミトコンドリアに局在しているSARM1α(Sterile-α and armadillo-motif-containing protein 1)のN末端ドメイン(1-106a.a)と結合し、ミトコンドリア膜上でSARM1αと複合体を形成する。さらに、SARM1がTRAF6及び/又はTRAF2と結合し、TRAF6及び/又はTRAF2がPINK1とSARM1αの複合体中にリクルートする。TRAF6及び/又はTRAF2は、ミトコンドリアの膜電位が低下し機能不全になった際に、ユビキチンのリジン63番を介してPINK1をユビキチン化する。すなわちK63鎖型ユビキチン化が起こる。ユビキチン化はPINK1の433番目のリジン(K433)を介して行われる。また、SARM1αはユビキチン化を促進する。PINK1のユビキチン化をきっかけに、機能不全になった不要ミトコンドリアはマイトファジーにより分解され除去される。
このようなメカニズムでPINK1は神経細胞中で不要になったミトコンドリアの除去に関与する。
PINK1のユビキチン化を検出する方法は限定されないが、PINK1がユビキチン化される際に、ユビキチン、PINK1、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6との複合体が形成されることを利用し、該複合体を検出すればよい。すなわち、PINK1のユビキチン化は、ユビキチン化に関与するユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチンリガーゼ(E3)及びATPの存在下で、PINK1とユビキチンを反応させ、PINK1のユビキチン化を検出することにより行うことができる。すなわち、PINK1、ユビキチン、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、SARM1α、TRAF2及び/若しくはTRAF6、並びにATPを混合し反応させ、PINK1のユビキチン化を測定すればよい。
PINK1は、配列情報に基づいて、遺伝子工学的手法により作製することができる。PINK1のアミノ酸配列を配列番号1に示す。PINK1としてユビキチン化が起こる433番目のリジンを含む断片を用いてもよい。
ユビキチンは市販のものを用いてもよいし、遺伝子工学的手法による作製によって調製して用いてもよい。
ユビキチン活性化酵素(E1)は、市販のものを用いてもよいし、遺伝子工学的手法による作製によって調製して用いてもよい。
ユビキチン結合酵素(E2)は、限定されないが、例えば、UbcH13/Uev1aを用いることができる。ユビキチン結合酵素(E2)は、市販のものを用いてもよいし、遺伝子工学的手法による作製によって調製して用いてもよい。
SARM1αは、PINK1と結合し、PINK1のユビキチン化を促進する。SARM1αは全長アミノ酸からなるタンパク質を用いてもよいが、PINK1と結合するドメインであるN末端側の部分配列を用いることもできる。例えば、SARM1αの全長アミノ酸配列の第1〜106番目のアミノ酸配列からなるドメイン(1-106 a.a.)又は該アミノ酸配列を含む断片を用いればよい。また、このドメインはTRAF2又はTRAF6と結合する。SARM1αのアミノ酸配列を配列番号2に示す。SARM1αは遺伝子工学的手法により作製することできる。
TRAF2、TRAF6は、ユビキチンE3リガーゼであり、ユビキチンの63番目のリジンを介してPINK1がユビキチン化され、K63鎖型ユビキチン化が起こる。TRAF2、TRAF6のいずれか又は両方を用いることができるが、好ましくはTRAF6を用いればよい。TRAF2及びTRAF6は遺伝子工学的手法により作製することができる。
好ましくは反応後の測定の便宜のため、PINK1、ユビキチン、SARM1α、TRAF2又はTRAF6について、エピトープタグとの融合タンパク質を用いてもよい。エピトープタグとしては、GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)タグ、His(ヒスチジン)タグ、HA(へマグルチニンペプチド)タグ、Flagタグ、Mycタグ等が挙げられる。融合タンパク質は、エピトープタグをコードするDNAとPINK1、ユビキチン、SARM1α、又はTRAF2若しくはTRAF6をコードするDNAを連結し、遺伝子工学的手法により作製することができる。この際、ユビキチン、SARM1α、又はTRAF2若しくはTRAF6は、PINK1に融合したエピトープタグと異なるエピトープタグであって、それぞれ別々のエピトープタグと融合すればよい。それぞれのエピトープタグに結合する物質、例えば抗エピトープタグ抗体を用いることにより、複合体中にそれぞれの物質が含まれるか否かを検出することができる。
PINK1のユビキチン化を検出する方法は、in vitroの検出方法でも、in vivoの検出方法でもよい。
in vitroのPINK1のユビキチン化の検出方法としては、ユビキチン、PINK1、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6を用いたプルダウンアッセイ、ファーウエスタンブロッティング、表面プラズモン共鳴現象を利用した検出法等が挙げられる。
in vitroの検出には、プルダウンアッセイを好適に行うことができる。プルダウンアッセイは具体的には、以下のように行う。
例えば、エピトープタグと融合したPINK1、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6とをユビキチン活性化酵素(E1)及びユビキチン結合酵素(E2)の存在下で、in vitroで反応させ複合体を形成させる。次いで、PINK1と融合したエピトープと特異的に結合する化合物を結合させた担体を用いて複合体を回収したのち、抗ユビキチン抗体を用いたウエスタンブロッティング等にて複合体中のユビキチンを検出することにより、PINK1がユビキチンと結合し、ユビキチン化したかどうかを評価することができる。また、この際、ウエスタンブロッティングのバンドの濃さを定量することによりユビキチン化の程度を定量値として表すことが可能である。担体は限定されず、セファローズ等の樹脂担体や磁性担体を用いることができる。また、担体に結合させるエピトープタグと特異的に結合する化合物として、GSTタグに対してグルタチオンや抗GST抗体、Hisタグに対して銅、ニッケル等の金属イオンや抗His抗体、HAタグに対しては抗HA抗体、Flagタグに対しては抗Flag抗体、Mycタグに対しては抗Myc抗体を用いればよい。
例えば、PINK1、ユビキチン、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、SARM1α、TRAF2及び/若しくはTRAF6を、適切な緩衝液中、例えば、10〜100mM Tris HCl(pH7.0〜8.0)、1〜10mM MgCl2、0.1〜5mM DTT、0.1〜5mM ATP中で、30〜40℃で0.5〜10時間、好ましくは1〜4時間反応させ、プルダウンアッセイを行えばよい。
表面プラズモン共鳴現象を利用した検出は、例えば、Biacore(登録商標)等のバイオセンサー(GE Healthcare)を用いることにより行うことができる。
さらに、ユビキチン化したPINK1を認識し結合する抗体を用いてPINK1のユビキチン化を検出することができる。該抗体はPINK1の433番目のリジンを介してユビキチン化したPINK1を認識する抗体である。該抗体は433番目のリジンにユビキチンが結合した、結合部位を認識するか、あるいは433番目のリジンにユビキチンが結合し、PINK1の立体構造が変化した場合の構造が変化した部位を認識する。該抗体は、PINK1のリジンを介してユビキチン化したPINK1、すなわち、433番目のリジンにユビキチンが結合したPINK1を免疫原として用いて作製することができる。該抗体はユビキチン化したPINK1を免疫抗原として用いた公知の方法により得ることができる。抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、好ましくはモノクローナル抗体が用いられる。本発明はPINK1の433番目のリジンを介してユビキチン化したPINK1を認識する抗体も包含する。
例えば、生体からPINK1を単離し、単離したPINK1が上記抗体と結合した場合、PINK1はユビキチン化していると判断することができる。PINK1と抗体の結合は、ウエスタンブロッティング、ELISA等の抗原抗体反応を利用した方法により測定することができる。
in vivoの検出方法は、例えば、培養細胞を用いて、培養細胞内でユビキチン、PINK1、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6を発現させ、結合を免疫沈降法や2-ハイブリッド法等により検出すればよい。
上記の種々の方法により、PINK1のユビキチン化が検出された場合、PINK1は安定であると評価することができる。また、生体内のPINK1が安定である場合、後記のPINK1が関与する疾患に罹患していない、あるいは罹患しにくいと評価することができる。本発明は、PINK1のユビキチン化を測定することを含む、PINK1が関与する疾患に罹患するリスクを評価するための検査方法も包含する。
本発明のPINK1のユビキチン化を検出する方法により、PINK1が関与する疾患の治療薬をスクリーニングすることができる。
PINK1が関与する疾患として、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経変性疾患、がん、糖尿病等が挙げられる。PINK1のユビキチン化の減少がこれらの疾患の発症の原因の1つとして挙げられる。従って、PINK1のユビキチン化を促進する物質を上記疾患の予防、治療薬として用い得る。
上記のPINK1のユビキチン化を検出する方法において、治療薬の候補物質を添加し、PINK1のユビキチン化が促進されるか否かを測定すればよい。測定は、候補物質を添加した場合と添加しない場合のユビキチン化の程度を比較し、候補物質を添加した場合にユビキチン化の程度が大きくなった場合に、該候補物質は上記のPINK1が関与する疾患の予防又は治療薬として用い得ると判断することができる。
本発明は、上記の方法でPINK1のユビキチン化を検出するためのキット又は試薬も包含する。in vitroでPINK1のユビキチン化を検出するためのキット又は試薬は、PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6とをユビキチン活性化酵素(E1)及びユビキチン結合酵素(E2)並びにATPを含む。また、in vivoでPINK1のユビキチン化を検出するためのキット又は試薬は、PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α、TRAF2及び/若しくはTRAF6、ユビキチン活性化酵素(E1)並びにユビキチン結合酵素(E2)をコードするDNAを含む。これらのキット又は試薬を用いて上記の方法によりPINK1のユビキチン化を検出することができる。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以下の実施例において、PINK1、SARM1及びそのドメイン、TRAF2、並びにTRAF6は以下の方法で調製した。
PINK1
HEK293細胞からPINK1遺伝子のクローニングを行い、遺伝子をタンパク質発現ベクターに組み込み大腸菌を用いて発現・精製を行った。
SARM1α及びSARM1β
HEK293細胞からSARM1α遺伝子のクローニングを行った。SARM1β遺伝子はPCR法にてSARM1α遺伝子のN末端側を変換し、作成した。それぞれの遺伝子を発現ベクターに組み込み、HEK293細胞を用いて発現・精製を行った。
SARM1のドメイン
PCR法にてSARM1α遺伝子の各ドメインをコードするDNA断片を増幅し、発現ベクターに組み込んだ。
TRAF2
Openbiosystems社からTRAF2遺伝子を購入し、遺伝子を発現ベクターに組み込みHEK293細胞を用いて発現・精製を行った。
TRAF6
Openbiosystems社からTRAF6遺伝子を購入し、遺伝子を発現ベクターに組み込みHEK293細胞を用いて発現・精製を行った。
実施例1 PINK1の新規結合タンパク質SARM1の同定
これまでに膜電位を失ったミトコンドリア上でPINK1が安定化するメカニズムはわかっていなかった。このメカニズムを明らかにするために、内在性のPINK1に結合する新規結合タンパク質の探索を行った。
方法としては、神経芽腫SH-SY5Y細胞(European Collection of Cell Cultures(ECACC)社)の抽出液(lysate)と抗PINK1抗体(Novus biological社)を混合し、免疫沈降反応を行った。免疫沈降反応(IP)の結果を図1−1に示す。免疫沈降物をSDS-PAGEで展開し、銀染色を行った後、染色バンドを切り出し、質量分析計(LC-MS)を用いて解析を行った。その結果、PINK1の新規結合タンパク質としてSterile-α and armadillo-motif-containing protein 1 (SARM1)を見出した。
次いで、HAタグ(へマグルチニン(HA)ペプチドタグ)を付加したPINK1(PINK1-HA)及びFlagタグを付加したSARM1(SARM1-Flag)をHEK293細胞中で強制発現させ、免疫沈降反応により複合体形成を確認した。図1−2に示すように、強制発現系でもPINK1とSARM1の結合を確認することができた。
次いで、内在性のPINK1とSARM1の結合を確認した。結合の確認は、抗PINK1抗体を用いた免疫沈降により行った。神経芽腫SH-SY5Y細胞の抽出液と抗PINK1抗体を混合し、免疫沈降反応後にウェスタンブロッティングにて検出を行った。抗PINK1抗体は、PINK1の135〜155番目のアミノ酸からなるペプチド断片をウサギに免疫して作製した。図1−3に示すように、内在性のPINK1とSARM1の結合を確認することができた。
さらに、SARM1と家族性パーキンソン病のPINK1変異体として知られるG309D(309番目のグリシンがアスパラギン酸に置換された変異体)、W437X(437番目のトリプトファン以降のアミノ酸が欠損した変異体)及びキナーゼ活性を欠失した変異体KDDの結合を免疫沈降反応により確認したところ、W437Xは野生型(WT)のPINK1と同等の結合力を有していたが、他の変異体では結合が弱まっていた(図1−4)。
実施例2 PINK1と結合するSARM1αの結合ドメインの確認
次にPINK1と結合するSARM1のドメインを検索した。方法としてはFlagタグを付けた全長SARM1α(724アミノ酸)及び各SARM1αドメイン(全長アミノ酸配列の1〜550番目のアミノ酸からなるドメイン(1-550 a.a.)、全長アミノ酸配列の1〜404番目のアミノ酸からなるドメイン(1-404 a.a.)、全長アミノ酸配列の405〜550番目のアミノ酸からなるドメイン(405-550 a.a.)及び全長アミノ酸配列の551〜724番目のアミノ酸からなるドメイン(551-724 a.a.))を発現させ、PINK1-HAと共発現を行い、抗HA抗体アガロース(SIGMA社)で免疫沈降を行った後、ウエスタンブロッティング(WB)で検出した。その結果、PINK1はSARM1のN末端側(1-404 a.a.)の部位に結合することが判明した(図2−1)。ヒトにおいて、SARM1は2つのアイソフォーム(SARM1α(724アミノ酸)及びSARM1β(690アミノ酸)をもつことが知られている(図2−2)。図2−2に示すように、2つのアイソフォームの違いはN末端の配列のみが異なることである。そこでPINK1と2つのSARM1アイソフォームの結合を図2−1に結果を示す実験と同様の方法で確認した。その結果、PINK1はSARM1αとのみ結合し、SARM1βとは結合しないことが判明した(図2−3)。この結果は、PINK1との結合に必要な配列はSARM1αの1〜106番目のアミノ酸配列中に含まれていることを示している。
実施例3 SARM1α及びSARM1βの細胞内局在
SARM1αとSARM1βの違いを確認するために、細胞内の局在を免疫染色法にて検討した。Flagタグを付けた2つのSARM1アイソフォームをSH-SY5Y細胞で発現させ、抗Flag抗体(MBL社)とMitoTracker Oranege CMTMRos(ミトコンドリア染色色素、Life technologies (Molecular probes)社)による共染色を行った。その結果、SARM1αは主にミトコンドリアに局在し、SARM1βは主に細胞質に局在することが判明した(図3−1)。図3−1において、左のパネルはミトコンドリアの位置を示し、中央のパネルはSARM1αの局在を示し、右のパネルはSARM1βの局在を示す。ミトコンドリアは赤く染色され(モノクロ写真では灰色に見える)、SARM1α及びSARM1βは緑色に染色されている(モノクロ写真では白っぽく見える)。図3−1の中央パネルに示されるように、SARM1αの染色位置とミトコンドリアの染色位置が重なっている。
SARM1アイソフォームの局在は、ProteoExtract Subcellular Proteome Extraction Kit(MERCK社)を用いた細胞分画後のウエスタンブロッティング(WB)でも確かめられた(図3−2)。
ミトコンドリア局在に必要なSARM1αのドメインを決定するためにFlagタグを付けた各SARM1ドメイン(全長アミノ酸配列の1〜550番目のアミノ酸からなるドメイン(1-550 a.a.)、全長アミノ酸配列の1〜404番目のアミノ酸からなるドメイン(1-404 a.a.)、全長アミノ酸配列の1〜106番目のアミノ酸からなるドメイン(1-106 a.a.)、全長アミノ酸配列の405〜550番目のアミノ酸からなるドメイン(405-550 a.a.)及び全長アミノ酸配列の551〜724番目のアミノ酸からなるドメイン(551-724 a.a.)、SARM1βの1〜72番目のアミノ酸からなるドメイン(SARM1β(1-72 a.a.))を発現させ、免疫染色法によって局在を確認した。その結果、SARM1αの1〜106番目のアミノ酸からなるドメイン(1-106 a.a.)がミトコンドリア局在に必要であることがわかった(図3−3)。図3−3中、赤く染色されている部分がミトコンドリアを示し(モノクロ写真では灰色に見える)、緑色に染色されている部分がSARM1が局在している部分を示す(モノクロ写真では白っぽく見える)。1〜106番目のアミノ酸からなるドメインを用いた右上のパネルにおいて、ミトコンドリアの染色位置とSARM1の染色位置が重なっている。この配列はPINK1との結合にも重要であり(図2−3)、PINK1はミトコンドリア上でSARM1αと結合していることが示唆された。また、SARM1を短くするとミトコンドリアの断片化が起きた。図3−3の右上のパネル(1-106 a.a.)がミトコンドリアの断片化が起こったことを示している。
実施例4 SARM1αとTRAF2/6との結合
さらに、SARM1αとSARM1βの違いをより明確にするために、N末端側の配列の違いを詳細に検討した。その結果、SARM1αのN末端配列(1-106 a. a.)には、PREVSP(PxExxAr/AcがTRAF6の結合配列である。xは任意のアミノ酸、Arは芳香環を含むアミノ酸、Acは酸性アミノ酸を示す)で示されるTRAF6結合配列が含まれていることがわかった。そこで2つのSARM1アイソフォームとTRAF6及びTRAF6と機能がよく似ているTRAF2との結合を確認した。方法としては、Flagタグを付けた2つのSARM1アイソフォームとMycタグを付けたTRAF2及びTRAF6をHEK293細胞に共発現させ、抗Flag抗体で免疫沈降後、ウエスタンブロッティング(WB)にて検出を行った。その結果、SARM1αのみがTRAF2とTRAF6に結合し、SARM1βは結合しないことがわかった(図4−1及び4−2)。図4−1がSARM1α、SARM1βとTRAF2の結合を、図4−2がSARM1α、SARM1βとTRAF6の結合を示す。次にPINK1-SARM1α複合体中にTRAF2、TRAF6が含まれているかを免疫沈降法によって確認したところ、内在性のTRAF2、TRAF6が複合体中に含まれていることがわかった(図4−3)。このことは、SARM1αとPINK1複合体中にTRAF6が、SARM1αと結合することによりリクルートされることを示している。
実施例5 TRAF2/6によるPINK1のK63鎖型ユビキチン化
TRAF2及びTRAF6はユビキチンE3リガーゼである。このことから、TRAF2及びTRAF6がPINK1をユビキチン化するか否かを検討した。方法としては、PINK1-HA、His(ヒスチジンタグ)-ユビキチン、TRAF2/6-Mycの強制発現を行い、抗HA抗体アガロースで免疫沈降後、ウエスタンブロッティング(WB)にて検出を行った。ユビキチンは、BostonBiochem社より入手した。TRAF2及びTRAF6はPINK1をユビキチン化する能力を有していた(図5−1)。次にこのPINK1のユビキチン化がどのリジンを介して行われているかを検討した。タンパク質のユビキチン化は主にリジン48番目を介して行われるものと、リジン63番目を介して行われるものがある。リジン48番目を介したユビキチン化はタンパク質の分解シグナルとして、リジン63番目を介したユビキチン化は細胞内シグナルの増強などに利用される。PINK1-HAとTRAF6-Myc及び野生型His-ユビキチン(WT)またはユビキチンのリジン48番をアルギニンに置換したK48R、ユビキチンのリジン63番をアルギニンに置換したK63Rを発現させ、図5−1に結果を示す実験と同様の方法で検出を行った。その結果、K63Rを用いた時にPINK1のユビキチン化が減少した(図5−2)。この結果は、TRAF6によるPINK1のユビキチン化はリジン63番を介して行われていること、すなわちK63鎖型ユビキチン化が起こることを示す。
実施例6 TRAF2/6はPINK1をユビキチン化し、SARM1αはそれを増強することの確認
次にin vitroでPINK1のユビキチン化をアッセイする系を確立した。反応溶液は50 mM Tris-HCl (pH 7.5)、5 mM MgCl2、2 mM DTT、2 mM ATPを使用した。その溶液中に大腸菌から精製したGST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)融合型のPINK1(GST-PINK1、PINK1の112-581 a. a.を含む)2μg、50μMユビキチン(BostonBiochem社)、50 nM E1(ユビキチン活性化酵素、BostonBiochem社)、500 nM UbcH13/Uev1a(ユビキチン結合酵素(E2)、BostonBiochem社)、50 nM TRAF2/6、50 nM SARM1αを加え、37℃で2時間反応を行った。グルタチオンを結合させたSepharose(登録商標) 4Bビーズ(GE Healthcare社)を用いてGST-PINK1のプルダウンを行い、SDS-PAGEで展開後、ウエスタンブロッティング(WB)にてユビキチン及び関連タンパク質の検出を行った。結果を図6−1に示す。図6−1に示すように、PINK1、ユビキチン、E1、UbcH13/Uev1a、TRAF2若しくはTRAF6、並びにSARM1αを混合した場合にin vitroでPINK1のユビキチン化を検出することができた。細胞内でも同様にPINK1のユビキチン化を確認した(図6−2)。図6−2に示すように、PINK1のユビキチン化はSARM1αによって増強されるが、SARM1βでは増強されなかった。また、SARM1αの共発現によってPINK1複合体中にリクルートされるTRAF6の量が増加した。さらに、図6−1及び図6−2に示す結果より、SARM1αの共存によってPINK1のユビキチン化が促進されることがわかった。このことは、SARM1αの発現を高めるプラスミドベクターや化合物は、PINK1のユビキチン化を促進する物質として使用することが可能であることを示す。
次にPINK1の家族性パーキンソン病の原因となるPINK1変異体のユビキチン化について検討した。方法としてはHAタグを付けたPINK1-WT(野生型)、G309D、W437X、KDDとFlag-ユビキチン、TRAF6-Myc、SARM1α-Hisを共発現させ、抗HA抗体アガロースで免疫沈降後、ウエスタンブロッティング(WB)にて解析を行った。各変異体のユビキチン化はWTと比較して弱いものであった(図6−3)。この結果はパーキンソン病発症の1つの原因としてPINK1のユビキチン化の減少が挙げられ、ユビキチン化が細胞内でのPINK1の機能に重要であることを示唆している。
実施例7 CCCP処理によるPINK1のユビキチン化誘導
次に内在性のPINK1がどのような時にユビキチン化されるのかを検討した。これまでの実験から、PINK1の全長タイプのタンパク質量がTRAF6やSARM1αを共発現させた時に増加することを見出していた。またこれまでの報告から、ミトコンドリアの膜電位が消失した際にPINK1がミトコンドリア上で蓄積することがわかっていた(PLoS Biol., 8, 2010、J. Cell Biol., 189, 2010)。そこでミトコンドリアの膜電位を消失させる試薬であるCarbonyl cyanide m-chlorophenyl hydrazone(CCCP)(SIGMA社)で処理を行った時にPINK1のユビキチン化が起こるか否かを確認した。方法としては、SH-SY5Y細胞をCCCPで処理し、抗PINK1抗体で免疫沈降後、ウエスタンブロッティング(WB)にて検出を行った。PINK1のユビキチン化はCCCPの濃度依存的に増加した(図7−1)。それに伴ってSARM1α及びTRAF2のPINK1への結合量が増加した。またPINK1のユビキチン化は3〜6時間あたりがピークで12、24時間では減少していった(図7−2)。ユビキチン化の減少に伴い、一旦増加したPINK1タンパク質量も減少していった。またミトコンドリア外膜タンパク質であるTom20も12〜24時間で分解されていった。逆にオートファジー(マイトファジー)のマーカーであるLC-3B IIの量は増加した(図7−3)。この結果から、PINK1はミトコンドリアの膜電位消失をきっかけとしてユビキチン化され、ミトコンドリア上で安定化し、その後マイトファジーによって膜電位を失ったミトコンドリアと共に分解されることがわかった。
実施例8 薬剤によるPINK1のユビキチン化誘導
最後にパーキンソン病治療薬として使用されているアポモルフィンによってPINK1がユビキチン化されるか否かを検討した。方法としては、SH-SY5Y細胞を0 〜 50μMのアポモルフィン(Apomorphine)(SIGMA社)で処理し、抗PINK1抗体で免疫沈降後、ウエスタンブロッティング(WB)にて検出を行った。PINK1のユビキチン化はアポモルフィンの濃度依存的に増加した(図8)。この結果より、パーキンソン病候補治療薬となる薬剤をPINK1のユビキチン化を指標としてスクリーニングできることが示された。
実施例9 PINK1のユビキチン化部位の同定
PINK1がTRAF6によってユビキチン化されるアミノ酸部位の同定を行った。K63鎖型のユビキチン化はリジン(K)を介して行われ、PINK1には生物種(ヒト、マウス、ショウジョウバエなど)を超えて保存されたリジンが存在する。具体的にはK135、K137、K164、K219、K266、K319、K364、K433である。これらのリジンをアルギニンに置換したPINK1変異体を作製し、野生型PINK1(WT)との比較を行った。PINK1-HA及びPINK1の8つのリジンをそれぞれアルギニンに置換したPINK1変異体-HAとFlag-ユビキチン、TRAF6-Myc、SARM1a-Hisを発現させ、抗HA抗体アガロースで免疫沈降後、ウエスタンブロッティング(WB)にて検出を行った。リジン433番をアルギニンに置換した変異体において、PINK1のユビキチン化が消失した(図9−1)。またユビキチン化に伴うPINK1の安定化も起こらなかった。次にこのユビキチン化の消失がミトコンドリアの膜電位を低下させた場合にも同様に観察されるか否かについて検討した。野生型PINK1-HA(WT)及びリジン433番をアルギニンに置換したPINK1変異体-HAとFlag-ユビキチンを発現させ、CCCP処理によってミトコンドリアの膜電位を低下させた。その後、図9−1に示す実験と同様の方法で検出を行った。リジン433番をアルギニンに置換したPINK1変異体は野生型PINK1と異なり、ミトコンドリアの膜電位低下時にユビキチン化と安定化が観察されなかった(図9−2)。これらの結果より、TRAF6によるPINK1のユビキチン化はリジン433番を介して行われ、このユビキチン化がPINK1の安定化に重要であることが示された。
本発明の方法により、パーキンソン病等のPINK1が関与する疾患の予防又は治療薬を開発することができる。

Claims (17)

  1. PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6とをユビキチン活性化酵素(E1)及びユビキチン結合酵素(E2)並びにATPの存在下で接触させ、PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6との複合体形成を検出することを含む、PINK1のユビキチン化を検出する方法。
  2. in vitroで行う、請求項1記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
  3. プルダウンアッセイを用いて行う、請求項1又は2に記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
  4. ペプチドタグと融合したPINK1、ユビキチン、SARM1α並びにTRAF2及び/若しくはTRAF6とをユビキチン活性化酵素(E1)及びユビキチン結合酵素(E2)並びにATPの存在下で、in vitroで反応させ複合体を形成させ、PINK1と融合したエピトープと特異的に結合する化合物を結合させた担体を用いて複合体を回収したのち、抗ユビキチン抗体を用いて複合体中のユビキチンを検出することにより、PINK1がユビキチンと結合しユビキチン化したかどうかを検出する、請求項3記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
  5. SARM1αが第1〜106番目のアミノ酸配列からなるドメインを含む、SARM1αの断片である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
  6. ユビキチン結合酵素(E2)がUbcH13/Uev1aである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
  7. in vivoで行う、請求項1記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
  8. 培養細胞中でPINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α、TRAF2及び/若しくはTRAF6、ユビキチン活性化酵素(E1)並びにユビキチン結合酵素(E2)を発現させることを含む、請求項7記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
  9. SARM1αが第1〜106番目のアミノ酸配列からなるドメインを含む、SARM1αの断片である、請求項7又は8に記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
  10. ユビキチン結合酵素(E2)がUbcH13/Uev1aである、請求項7〜9のいずれか1項に記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法を用いて、PINK1が関与する疾患の予防又は治療に用い得る薬剤をスクリーニングする方法であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載のPINK1のユビキチン化を検出する方法において、候補薬剤を添加し、候補薬剤の添加によりPINK1のユビキチン化が促進されたかどうかを測定し、候補薬剤の添加によりPINK1のユビキチン化が促進された場合に、候補薬剤がPINK1が関与する疾患の予防又は治療に用い得ると評価する、スクリーニング方法。
  12. PINK1が関与する疾患が、神経変性疾患、がん又は糖尿病である、請求項11記載のスクリーニング方法。
  13. 神経変性疾患が、パーキンソン病である、請求項12記載のスクリーニング方法。
  14. PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α、TRAF2及び/若しくはTRAF6、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)並びにATPを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法でPINK1のユビキチン化を検出するためのキット。
  15. PINK1(PTEN-induced putative kinase 1)、ユビキチン、SARM1α、TRAF2及び/若しくはTRAF6、ユビキチン活性化酵素(E1)並びにユビキチン結合酵素(E2)をコードするDNAを含む、請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法でPINK1のユビキチン化を検出するためのキット。
  16. 433番目のリジンを介してユビキチン化されたPINK1を認識する抗体。
  17. 請求項16に記載の抗体を用いて、PINK1のユビキチン化を検出する方法。
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