JP2014024248A - ポリエチレンの接合構造及び接合方法並びにこれらを用いた容器 - Google Patents

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Abstract

【目的】ポリエチレン容器の溶接構造および溶接方法を提供する。
【課題】公害要因の危具が小さく、耐食性に優れ安価な低密度ポリエチレンを用いて、次亜塩素酸アルカリ水溶液のような酸化力の強い腐食性の液体のタンクに適用可能な容器を提供するにあたり、特に容器を形成するための低密度ポリエチレンの溶接構造を提供する。
【解決手段】厚みが1〜5mmのポリエチレンシート端部を付き合わせて、幅1〜15mmの同材を溶接棒として、80〜120℃の熱風を吹き付けて加熱溶接する接合構造。

Description

本発明はポリエチレンの溶接技術に関するものである。
次亜塩素酸アルカリ水溶液のような酸化力の強い腐食性の液体又は腐食性のガス体を貯蔵する容器の材質としては、金属チタンが耐食性、強度面からみて適しており工業的に広く使用されている。また金属ジルコニウムも同様の面からその適用について検討を進められている。しかしながら、金属チタン又は金属ジルコニウムを大容量のタンクに使用する際、その内圧力及び外圧力に耐えるためには相当の肉厚が必要であり、このような肉厚のチタン又はジルコニウムを使用することは経済的に問題がある。
他の材料として、比較的価格も安く強度面でも大きいGFRP(ガラス繊維補強プラスチック)によって補強された合成樹脂板を使用することが行われている。例えばPVC(ポリ塩化ビニル)−GFRPの複合材料が工業的に用いられているが、PVCとGFRPとは熱膨張率が異なるため、大容量のタンクに使用する場合は強度面で問題が生ずる。すなわち、据置後、歪によるクラックが発生したり、またPVC同士を溶接すると、その溶接面にはクラックが入り易く、衝撃に弱いという欠点がある。併せて、PVCの廃棄時には有害ガスが発生するなどの環境問題が存在する。他の複合材料として、弗素樹脂−GFRPの組み合わせも知られているが、経済的な面からあまり実用化されていない。またGFRP単独の場合は、アルカリ性の溶液に対して耐食性が悪いという欠点がある。
ここで、次亜塩素酸アルカリ水溶液の耐食容器として一般的に使用されている、PVC−GFRPのタンクには、さらに以下の問題が内在していた。
1.PVCは可塑剤が入っているため、次亜塩素酸ソーダに浸食されやすく、短期間で劣化する。
2.溶接したPVC筒体をタンク内面に収めると、液体を投入する際にPVCタンクがたわみやすいため、溶接部にクラックが入り、液体漏洩することがある。
3.漏洩箇所は補修することが難しく、再度溶接したとしても漏洩を止めることが困難である。
一方、ポリエチレンをタンクに適用しようとした場合、従来から溶接棒を用いた溶接方法が知られているものの、PVCと比べて相対的に接着性が劣るため、溶接箇所に欠点が生じやすく、ポリエチレンタンクに液体漏れが発生しやすくなり、実用上供せられなかった。ここで、ポリエチレン同志を溶接する方法としては、溶接するポリエチレン母材と同種材料からなる溶接棒を溶接機内で加熱溶融させ、これをノズルの先端から押し出しながらポリエチレン母材とゆっくりなじませる方法、またはポリエチレン母材同士の間に金属ネットなどを介在させ、この状態で高周波により加熱して融着させる方法が知られている。
このような溶接方法を用いれば接着性は向上させることは可能となるが、金属を挟み込んだ溶接方法は、特殊な高周波溶接機を必要とし、作業性にも問題があり、一般的な技術としては活用されていない。また、本技術をポリエチレン端面同士との溶接に適用する場合、金属ネットが次亜塩素酸ソーダに浸食され腐食する。また、溶接の確実性に問題があり、実用化するには課題が多いものであった。
例えば、特許文献1には、ポリエチレンの床材を接合する際に、接合部をV字型に加工し、ポリエチレン樹脂の外側に溶接力の強いポリエチレン樹脂を更に被覆した2重構造の溶接棒で接合する技術が開示されているが、本技術をポリエチレンタンクに適用する場合、繰り返し投入される次亜塩素酸ソーダの投入時の衝撃力や、水圧の過大な力に耐えられず、接合部(溶接箇所)から液漏れが発生するおそれが高く、実用化には課題が多いものであるといえる。
また、特許文献2には、ポリエチレン材の間に熱可塑材料を挟み込んで、同時に加熱溶融する事により、接合一体化する技術であるが、本技術をポリエチレンタンクに適用する場合、次亜塩素酸ソーダに熱可塑材料が触れるため、耐食性の面から実用化は困難な構造であるといえる。
特開2000−280349号公報 特開平8−39676号公報
本発明は、上記のような課題を解決するため、公害要因の危具が小さく、耐食性に優れ安価な低密度ポリエチレンを用いて、次亜塩素酸アルカリ水溶液のような酸化力の強い腐食性の液体のタンクに適用可能な容器を提供することにあり、特に容器を形成するための低密度ポリエチレンの溶接構造を提供することを目的する。
上記課題を解決するために本発明は以下の構成を有する。
(1)ポリエチレンシートの端部を突き合わせた接合部を溶接してなる接合構造。
(2)前記ポリエチレンシートと同材のポリエチレンからなる溶接棒を用いて、前記接合部を加熱溶接することを特徴とする(1)に記載の接合構造。
(3)前記ポリエチレンシートの厚みが1〜5mmである(1)又は(2)に記載の接合構造。
(4)前記溶接棒の幅が1〜15mmである(1)〜(3)のいずれかに記載の接合構造。
(5)前記ポリエチレンシートの少なくとも片面に前記溶接棒を溶接することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の接合構造。
(6)溶接前に接合部近傍の該ポリエチレンシート表面を研磨することを特徴とするに(1)〜(5)のいずれかに記載の接合構造。
(7)前記ポリエチレンシートの密度が0.93g/cm以下の低密度ポリエチレンである(1)〜(6)のいずれかに記載の接合構造。
(8)ポリエチレンシートの端部を突き合わせた接合部を溶接する接合方法。
(9)溶接前に前記接合部近傍の該ポリエチレンシート表面を研磨することを特徴とする(8)に記載の接合方法。
(10)前記接合部に80〜120℃の熱風を吹き付けて前記ポリエチレンシートと同材のポリエチレンからなる溶接棒を溶接することを特徴とする(8)又は(9)のいずれかに記載の接合方法。
(11)前記溶接棒の該接合部への押し付け力が1〜50Nである(8)〜(10)のいずれかに記載の接合方法。
(12)溶接速度が分速10〜30mmの速度であることを特徴とする(8)〜(11)のいずれかに記載の接合方法。
(13)内蔵される液体が次亜塩素酸アルカリ水溶液である(8)〜(12)のいずれかに記載の接合方法を用いて製造した容器。
本発明によれば、公害要因の危具が小さく、耐食性に優れ安価な低密度ポリエチレンを用いて、次亜塩素酸アルカリ水溶液のような酸化力の強い腐食性の液体のタンクに適用可能な容器を提供することができ、特に容器を形成するための低密度ポリエチレンの溶接構造を提供することができる。
本発明の実施例における溶接法を示す説明図である。 図1において製作した溶接部の強度を評価するために、幅25mmに加工した試験体である。 比較例として、PVCを溶接し、同様に溶接部の強度を評価するために、幅25mmに加工した試験体である。
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る溶接法の一態様を示す模式図である。2枚の低密度ポリエチレンシート1を突き合わせた状態で、溶接棒2を熱風発生機3で溶融させながら、低密度ポリエチレンシート1の突き合わせ部分を溶接するものである。
ここで本発明に用いるポリエチレンシート1や溶接棒2には、コスト的にも高密度ポリエチレンより安価で、かつ可撓性に優れ、管状に変形しやすい密度0.93g/cm以下の低密度ポリエチレンであることが好ましい。より好ましくは0.91〜0.93g/cmの密度範囲である。密度が低くなりすぎると形状保持性が劣り、また0.93g/cmを超える場合には、コストの点で実用的ではない。
また、ポリエチレンシート1は、板厚が1〜5mmであることが好ましく、特に可撓性と形状維持特性に優れていて、溶接作業も効率的でかつ信頼性が高い3mm程度が好ましい。板厚が1mm未満では、後述する熱風発生機3の熱で容易に形状が変形しやすくなり、逆に板厚が5mmを超えると、熱風発生機3の熱でも溶接箇所が容易に溶融しづらくなる。
溶接棒2は、ポリエチレンシート1との接合性を良好にするため、ポリエチレンシート1と同じ低密度ポリエチレンを用いたものである。幅は1〜15mmが好ましく、特に溶接作業時の母材接合部と溶接を均一に溶融一体化させるには4〜9mm程度の溶接棒幅が好ましい。幅が1mm未満の場合は、熱風発生機3の熱により容易に変形してしまいやすく、また幅が15mmを超えると溶融しづらくなり、作業時間の増大につながるおそれがある。
熱風発生機3は、ポリエチレンシート1や溶接棒2の形状を保持しながら、ポリエチレンを軟化し、溶接一体化させるために、接合部温度を80〜120℃程度で加熱可能とするものであれば、特に形式や熱風発生方法は制限されるものではない。上記範囲の温度で熱風をあてることで、適正な作用力でポリエチレン同士を溶接させることができる。
図2は、溶接したポリエチレンシート1の(a)横断面図および(b)上面図をそれぞれ示したものである。溶接棒2はポリエチレンシート1の少なくとも片面に溶接されていることが好ましい。最終製品において溶接箇所の形状に制限がない場合や、溶接箇所の接合強度を高めたい場合等は、ポリエチレンシート1の両面を溶接することも好ましい態様である。
次に、本発明における溶接方法について説明する。
溶接したいポリエチレンシート1を準備し、ポリエチレンシート1の端部同士を付き合わせた後、その接合部を覆うように1〜50Nの力Fで溶接棒2を端から順次手で押し付ける。その際、ポリエチレンシート1と溶接棒2との境界Sに向けて、熱風発生機3を用いて80〜120℃で熱風を吹き付けると、ポリエチレンシート1と溶接棒2がほぼ同時に軟化し、溶融一体化する。この作業を毎分10〜30mmの速度で継続して行うことにより、ポリエチレンシート1と溶接棒2とは完全に一体化する。また、同材のポリエチレンシート1溶接棒2はほぼ同じ加熱条件で一体化されているため、溶接の強度を強く、信頼性の高いものにしている。
ここで、溶接前に、接合部近傍のポリエチレンシート1の表面をあらかじめ研磨しておくことが好ましい。溶着を阻害するオレフィンの皮膜を除去することで、より均一かつ短時間にポリエチレンシート1の表面を溶融させることができる。同様の理由により、溶接棒2の表面を研磨することも好ましい。
本発明の溶接構造や溶接方法によって得られるものとしては、ポリエチレン材料を必要とする容器もしくは管体に好適に用いられる。特に容器として使用する場合には、液体漏洩防止を強化するため、ポリエチレンシート1を円筒状にして端部を溶接するにあたり、ポリエチレンシート1の両面を溶接棒2で溶接することが好ましい。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
(実施例)
図1や図2に示すように、市販の低密度ポリエチレンシート(厚み:3mm、密度:0.93g/cm、「神戸ポリシートEH」)から、2枚のポリエチレンシートおよび溶接棒を用意した。溶接棒は幅5mmとした。
ポリエチレンシートの端部同士を突き合わせ、その上にほぼ左右均等となるように溶接棒を25±5Nの押し付け力で保ちつつ、接合部に熱風発生機「ホットジェット ニュースーパー300」(富士インパルス社製)で100±10℃の熱風を吹き付けて、溶接速度が分速20±5mm程度となるように、ポリエチレンシート端部全体を溶接した。
次に、図2に示すように、ポリエチレンシートの長さ70mm(1枚あたり)、幅25mmに加工した試験体を切り出し、溶接部の強度を評価した。
(比較例)
比較例として、図3に示すように、PVC(タキロン株式会社製、タキロンプレート)を図1と同様のサイズにて溶接したものを、実施例と同様の大きさの試験片を切り出し、溶接部の強度を評価した。
(評価結果)
この2種類の引張試験結果を表1に示す。
Figure 2014024248
溶接部の強度は、ポリエチレンが10.2MPa、PVCが41.0MPaとなりポリエチレンの方が劣っていたものの、単板と比較した場合の強度発現率はポリエチレンの方が高かった。また溶接部の伸び率は、ポリエチレン935.2%、PVCが2.7%を示した。
表2には、ポリエチレンを用いて、溶接温度と溶接棒の幅を変えた溶接テスト結果を示す。この結果、溶接温度は80〜100℃が好ましく、溶接棒の幅は4〜10mmが好ましく、特に5、6mmが好ましい結果が得られた。
Figure 2014024248
×:溶接不可
△:溶接は出来るが、溶接力が弱い(1の単板が手で剥がせる)
○:溶接出来る、また溶接力も強い(1の単板が手で剥がせない)
◎:○比、高い溶接力を有しながら、作業性に優れる
1 ポリエチレンシート
2 溶接棒(ポリエチレンシート)
3 熱風発生機
S 境界
F 押し付け力
4 PVCシート
5 PVC溶接部

Claims (13)

  1. ポリエチレンシートの端部を突き合わせた接合部を溶接してなる接合構造。
  2. 前記ポリエチレンシートと同材のポリエチレンからなる溶接棒を用いて、前記接合部を加熱溶接することを特徴とする請求項1に記載の接合構造。
  3. 前記ポリエチレンシートの厚みが1〜5mmである請求項1又は2に記載の接合構造。
  4. 前記溶接棒の幅が1〜15mmである請求項1〜3のいずれかに記載の接合構造。
  5. 前記ポリエチレンシートの少なくとも片面に前記溶接棒を溶接することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接合構造。
  6. 溶接前に接合部近傍の該ポリエチレンシート表面を研磨することを特徴とするに請求項1〜5のいずれかに記載の接合構造。
  7. 前記ポリエチレンシートの密度が0.93g/cm以下の低密度ポリエチレンである請求項1〜6のいずれかに記載の接合構造。
  8. ポリエチレンシートの端部を突き合わせた接合部を溶接する接合方法。
  9. 溶接前に前記接合部近傍の該ポリエチレンシート表面を研磨することを特徴とする請求項8に記載の接合方法。
  10. 前記接合部に80〜120℃の熱風を吹き付けて前記ポリエチレンシートと同材のポリエチレンからなる溶接棒を溶接することを特徴とする請求項8又は9のいずれかに記載の接合方法。
  11. 前記溶接棒の該接合部への押し付け力が1〜50Nである請求項8〜10のいずれかに記載の接合方法。
  12. 溶接速度が分速10〜30mmの速度であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の接合方法。
  13. 内蔵される液体が次亜塩素酸アルカリ水溶液である請求項8〜12のいずれかに記載の接合方法を用いて製造した容器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113895043A (zh) * 2021-09-03 2022-01-07 江西联塑科技实业有限公司 一种pvc-u排水管材的热熔焊接方法

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