JP2014023922A - 内視鏡外科手術用鉗子 - Google Patents
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Abstract
【課題】更なる挿入部の小径化を可能としながら、従来と変わりのない作業強度を確保することが可能な内視鏡外科手術用鉗子を提供する。
【解決手段】シャフト7の先端に固定され、回動凸部4cを備えた先端移動基部4の前記回動凸部4cが先端移動基部4の本体部分から一体的に形成されたものであり、右作動部材3Rと左作動部材3Lには、回動凸部4cを填め受ける、一方が開放された傾斜長孔部3dを備え、シャフト7の移動によって回動凸部4cが傾斜長孔部3d内で相対的に位置変動することで、傾斜長孔部3dを備えた作動部材3R、3Lを相対的に回動させる。
【選択図】図5
【解決手段】シャフト7の先端に固定され、回動凸部4cを備えた先端移動基部4の前記回動凸部4cが先端移動基部4の本体部分から一体的に形成されたものであり、右作動部材3Rと左作動部材3Lには、回動凸部4cを填め受ける、一方が開放された傾斜長孔部3dを備え、シャフト7の移動によって回動凸部4cが傾斜長孔部3d内で相対的に位置変動することで、傾斜長孔部3dを備えた作動部材3R、3Lを相対的に回動させる。
【選択図】図5
Description
本発明は、内視鏡による外科手術において、生体組織の処理を行う際に使用される内視鏡外科手術用鉗子に関するものである。さらには、患者に苦痛の少ない低侵襲外科手術に適用可能で、小径化に対応することが出来る内視鏡外科手術用鉗子に関するものである。
近年、外科手術の分野においては、従来からの開腹手術や開胸手術に代わって、患者への負担軽減、及び、術後の疼痛もほとんどなく回復が早く、極めて早く社会復帰が出来るという利点、さらに美容的観点と、侵襲が少ないという点から、内視鏡を用いた外科手術が行われるようになってきている。
この内視鏡を用いた外科手術においては、腹壁などに小さな数個の穴を開け、1つの穴から腹腔に挿入した内視鏡の映像をモニターテレビで観察しながら、別の穴に挿入した手術用鉗子等を用いて手術を行うことになる。手術時における生体組織の剥離や把持等の処理の際には、腹腔内などに挿入される挿入部を備え、挿入部の先端に組織の剥離や把持等を行う一対の作動部材が設けられ、基端には一対の作動部材の開閉操作を行うハンドル部を備えた内視鏡外科手術用鉗子が用いられている。
近年、患者における苦痛の少ない低侵襲外科手術が一層強く要求される状況にあり、内視鏡の挿入部の小径化が進んでいる中で、内視鏡の小径化に応じて内視鏡外科手術用鉗子の挿入部も小径なものにする必要が出てきた。
このように内視鏡による外科手術の分野では、患者の負担軽減のため、体内に挿入する挿入部の極小径化が希求されている。実際、現在に到るまで様々な小径化の試みがなされており、例えば膵管、胆管、乳管、気管支末端といった細管部の処理が可能な内視鏡用鉗子も必要とされている。
一方、特許文献1には、第一開閉リンク及び第二開閉リンクの各々の一端を、ロッドの先端に並列にそれぞれ独立して軸支し、各々の他端を、第一作動部材及び第二作動部材を拡開若しくは閉塞させていくときに、第一開閉リンクと第二開閉リンクとが交叉した状態となるように、第一作動部材及び第二作動部材に軸支することにより、作動部材の開閉操作時に、作動部材を開閉させる開閉リンクが外方へ突出しない顎部の開閉構造を備えることにより、処置作業の際に周辺組織への引っ掛かりを生じないようにして作業性・操作性を向上させた内視鏡用鉗子が記載されているが、実際挿入部の外径は5mm程度であった。
また、特許文献2に記載の外科用器具(本願の対象とする「内視鏡外科手術用鉗子」に相当する。)については、以下に図13を用いて説明する。この図13は、この本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の背景技術を示すもので、(a)はその全体図、(b)は(a)においてシャフトを引いた状態の先端部分の一部破断の側面図、(c)は(a)においてシャフトを押した状態の先端部分の一部破断の側面図である。
この外科用器具30は、長尺な器具本体21と、器具本体21の先端側で開閉または回動動作を行う外科動作手段23を備える先端部24、25と、前記器具本体21の基端側に設けられた操作部28と、該操作部28での操作を前記先端部23に伝達する単一の長尺な伝達部材27とを有し、前記操作部28は、ハンドル部28aと回転操作部29とを有し、前記ハンドル部28aの操作の前記外科動作手段23への伝達と、回転操作部29の操作の前記先端部24,25への伝達とが、前記単一の伝達部材27により兼用されるという特徴を有するものである。
なお、上記の単一の伝達部材27が、本願で言うシャフトに相当する。また、符号26は、この単一の伝達部材27を収容するパイプ部、符号22は、外科動作手段23の可動側を回動させるための先端支点軸、符号24aは、伝達部材27の前進後退に伴って動く先端部24に設けられたピン、符号23aは外科動作手段23の可動側に設けられた長孔であって、この長孔23aの中をピン24が移動することで、外科動作手段23の可動側を開閉、回動させることができるものである。
ところで、特許文献2の段落[0024]には、本願の挿入部に相当する器具本体21の外径は、5〜18mm程度とするのが好ましいとの記載があるので、この外科用器具30においても、その挿入部の最小径は5mmとされている。また、この外科用器具30では、図中に示した空間部X1、X2は、この器具30の操作中に大小するものなので、ここに外科処置対象以外の人体組織が挟まれるという問題が生じ得るものであった。
また、この内視鏡外科手術用鉗子における挿入部小径化の要請は、更に低侵襲を達成する、人体に開ける一箇所の孔で手術を可能とする単孔式内視鏡手術においては、単孔のなかに内視鏡以外に複数の鉗子の挿入部を入れることを可能とするため、更に厳しいものとなっている。
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、更なる挿入部の小径化を可能としながら、従来と変わりのない作業強度を確保することが可能な内視鏡外科手術用鉗子を提供することを目的とする。
本発明の内視鏡外科手術用鉗子は、体腔内に挿入される挿入部と、前記挿入部の先端側に前記挿入部の軸方向に直交する先端支点軸を中心として相対的に回動可能に軸支された右作動部材及び左作動部材と、前記挿入部の基端側に設けられ、操作ハンドルを備えるハンドル部と、前記挿入部に内挿されるとともに、一端が前記操作ハンドルに接続され、前記操作ハンドルの操作量に応じて軸方向に移動するシャフトとを備えた内視鏡外科手術用鉗子であって、
前記シャフトの軸方向の移動が、前記右作動部材および前記左作動部材の少なくとも一方を前記先端支点軸を中心として相対的に回動させ、前記ハンドル部に備えられた回転操作部により前記シャフトを回転させることで、前記右作動部材と前記左作動部材と前記先端支点軸とを、前記挿入部の先端部分の軸方向を中心として回転させ、
前記シャフトの先端に固定され、回動凸部を備えた先端移動基部の前記回動凸部が前記先端移動基部の本体部分から一体的に形成されたものであり、前記右作動部材と前記左作動部材の少なくとも一方には、前記回動凸部を填め受ける、一方が開放された傾斜長孔部を備え、または、前記シャフトの先端に固定された先端移動基部に一方が開放された傾斜長孔部が設けられ、前記右作動部材と前記左作動部材の少なくとも一方には、前記傾斜長孔部に填め受けられる回動凸部が設けられ、前記回動凸部は前記一方の本体部分から一体的に形成されたものであり、
前記シャフトの移動によって前記回動凸部が傾斜長孔部内で相対的に位置変動することで、前記傾斜長孔部を備えた少なくとも一方の前記作動部材を他方の前記作動部材に対して相対的に回動させるようにしたことを特徴とする。
前記シャフトの軸方向の移動が、前記右作動部材および前記左作動部材の少なくとも一方を前記先端支点軸を中心として相対的に回動させ、前記ハンドル部に備えられた回転操作部により前記シャフトを回転させることで、前記右作動部材と前記左作動部材と前記先端支点軸とを、前記挿入部の先端部分の軸方向を中心として回転させ、
前記シャフトの先端に固定され、回動凸部を備えた先端移動基部の前記回動凸部が前記先端移動基部の本体部分から一体的に形成されたものであり、前記右作動部材と前記左作動部材の少なくとも一方には、前記回動凸部を填め受ける、一方が開放された傾斜長孔部を備え、または、前記シャフトの先端に固定された先端移動基部に一方が開放された傾斜長孔部が設けられ、前記右作動部材と前記左作動部材の少なくとも一方には、前記傾斜長孔部に填め受けられる回動凸部が設けられ、前記回動凸部は前記一方の本体部分から一体的に形成されたものであり、
前記シャフトの移動によって前記回動凸部が傾斜長孔部内で相対的に位置変動することで、前記傾斜長孔部を備えた少なくとも一方の前記作動部材を他方の前記作動部材に対して相対的に回動させるようにしたことを特徴とする。
つまり、前記回動凸部が前記先端移動基部等の本体部分から一体的に形成されたことにより、回動凸部の構造的強度が強化されると共に、ピン挿入により形成する場合に較べピン挿入孔の余肉が不要で、かつ、その回動凸部の半円部分だけでも凸部としての強度を保つので、結果的に先端移動基部の小径化、つまり、挿入部の小径化を更に図ることができる。
また、作動部材等には、前記回動凸部を填め受ける、一方が開放された傾斜長孔部を設けるようにしたので、閉鎖状の傾斜長孔部に較べ、余肉を残す必要がない上、長孔部の最端部分まで、回動凸部に移動範囲とすることができ、傾斜長孔部の強度を保ちながら、作動部材、つまり、挿入部の更なる小径化を図ることができる。
また、本発明の内視鏡外科手術用鉗子は、先端移動基部を外側から覆う先端回転基部を備え、前記先端回転基部は、前記挿入部の先端部分に回転可能でありながら、その軸方向に移動しないように設置され、先端支点軸は右作動部材及び左作動部材と、先端回動基部とを貫通するもので、前記先端回転基部は、この先端支点軸を軸支する固定軸孔を備え、前記先端移動基部の先端支点軸を貫通させる貫通孔は、該先端移動基部の前記先端支点軸に対する移動を許可する長孔貫通孔とすることができ、これにより、回動する右作動部材及び左作動部材と、その回動のために軸方向に移動する先端移動基部とは、先端回転基部に収容された状態となるので、鉗子の処置時に、周囲の人体組織を挟み込むようなことを回避することができる。
本発明の内視鏡外科手術用鉗子の効果は解決手段の欄に記載した通りである。
1〜1E 挿入部
2,2A 先端支点軸
3〜3D 作動部材
3d,3d′、3f,3g 傾斜長孔部
3L〜3DR 左作動部材
3R〜3CR 右作動部材
4,4A、4B 先端移動基部
4c,4c′、4c′′ 回動凸部
4d、4d′ 長孔貫通孔
5,5A、5B 先端回転基部
5a 固定軸孔
6、6A パイプ部
7、7A シャフト
8 ハンドル部
8a,8b 操作ハンドル
9 回転操作部
10〜10E 内視鏡外科手術用鉗子
2,2A 先端支点軸
3〜3D 作動部材
3d,3d′、3f,3g 傾斜長孔部
3L〜3DR 左作動部材
3R〜3CR 右作動部材
4,4A、4B 先端移動基部
4c,4c′、4c′′ 回動凸部
4d、4d′ 長孔貫通孔
5,5A、5B 先端回転基部
5a 固定軸孔
6、6A パイプ部
7、7A シャフト
8 ハンドル部
8a,8b 操作ハンドル
9 回転操作部
10〜10E 内視鏡外科手術用鉗子
<実施形態1>
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1(a)は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の一例を示す要部拡大側面図、(b)は(a)の全体を示す側面図、(c)は(b)の破断部拡大図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1(a)は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の一例を示す要部拡大側面図、(b)は(a)の全体を示す側面図、(c)は(b)の破断部拡大図である。
この内視鏡外科手術用鉗子10は、体腔内に挿入される挿入部1と、この挿入部1の先端側に挿入部1の軸方向に直交する先端支点軸2を中心として相対的に回動可能に軸支された右作動部材3R及び左作動部材3Lと、挿入部1の基端側に設けられ、操作ハンドル8a、8bを備えるハンドル部8と、挿入部1に内挿されるとともに、一端が操作ハンドル8bに接続され、操作ハンドル8bの操作量に応じて軸方向に移動するシャフト7とを備えている。
この内視鏡外科手術用鉗子10においては、シャフト7の軸方向の移動PまたはRが、右作動部材3Rおよび左作動部材3Lを先端支点軸2を中心として相対的にPまたはR方向に回動させ、ハンドル部8に備えられた回転操作部9によりシャフト7を回転Tさせることで、右作動部材3Rと左作動部材3Lと先端支点軸2とを、挿入部1の先端部分の軸方向を中心として回転Tさせるものである。この点は、図12の外科用器具30と同じである。
なお、符号3は、右作動部材3Rと左作動部材3Lとを合わせた一対の作動部材を示し、符号4は後述する先端移動基部、符号5は後述する先端回転基部、符号6はシャフト7を囲むパイプ部を示している。後述するが、これらの構成と機能によって、この内視鏡外科手術用鉗子10は、従来と同様の作業強度を確保しながら、挿入部1(一対の作動部材3、先端移動基部4、先端回転基部5及びパイプ部6を含む)の外径Qが、φ5mm以下で、φ0.8mm以上という小径化を達成している。
また、回転操作部9によりシャフト7を回転Tさせることで同時に回転Tするのは、上述の一対の一対の作動部材3と先端支点軸2に加えて、先端移動基部4と先端回転基部5とである。一方、パイプ部6は回転しない。そのような先端部分だけを回転を可能にする構成についても後述する。
この内視鏡外科手術用鉗子10においては、操作ハンドル8bのP方向への操作が、シャフト7の軸方向の移動P、つまり、シャフトを引く方向Pとなり、それが一対の作動部材3のP方向(開く方向)の回動となる。一方、操作ハンドル8bのR方向への操作が、シャフト7の軸方向の移動R、つまり、シャフトを押す方向Rとなり、それが一対の作動部材3のR方向(閉じる方向)の回動となる。
このような押し方向Rの操作ハンドル8bの操作、つまり、操作ハンドル8bに作用させる親指を操作ハンドル8aに作用している他の指側に握り込むという操作が、一対の作動部材3のR方向(閉じる方向)の回動となるようにすると、外科処置上の手指の操作感が一対の作動部材3の使用感に一致して操作性の良いものとなっている。
挿入部1は、全体として丸棒状であり、切開孔から体腔内に挿入される部分である。挿入部1の長さや外径等は、特に限定されるものではなく、内視鏡外科手術鉗子10の用途に応じて設定することができる。本発明では内視鏡外科手術用鉗子10の挿入部1の外径が2mm以下にもなり得ることが大きなポイントとなる。
なお、パイプ部6は、外周付近のみ、あるいは、全体に焼き入れをしたり、外周に対してショットピーニングや、更にFPB(Fine Particle Bombarding:微細粒子衝撃加工。「精密ショットピーニング」とも言う。)や、窒化処理をして表面硬度を上げるなどして、長手方向の曲がりにくさを強化することができ、その場合、より長くなっても、直線性を維持することができる。この場合、表面のみの硬化をすると、内側部分で可撓性を維持しているので、直線性の維持と折れにくさの維持との両方を達成することができる。
これより、図2〜4を用いて図1の内視鏡外科手術用鉗子10の要部を構成する各部品について説明し、図5を用いて、シャフト7の押し引きによって、一対の作動部材3がどのように回動するのかについて説明する。なお、これよりすでに説明した部分については同じ符号を付して、重複説明を省略する。
図2は、図1の内視鏡外科手術用鉗子の先端回転基部を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)はその外観斜視図、(d)は(c)のA矢視図、(e)は(c)のB矢視図、(f)は先端回転基部とパイプ部との取付に用いる補助リングの縦断面図、(g)は前記取付に併せて用いる補助小リングの縦断面図である。
この先端回転基部5は、全体として、外側に段付きの円筒状で、最大外径部分の大筒部5aと、この大筒部5aの端部から所定幅に略長方形に切り取られた収容部5bと、この収容部5bのある大筒部5aの端部分に設けられた固定軸孔5cと、小径部分である小筒部5dと、この小筒部5dの内周であるシャフト貫通部5eとを備えている。
収容部5bには、後述するように、一対の作動部材3と、この一対の作動部材3を回動させる先端移動基部4とが収容され、その状態で、一対の作動部材3と先端移動基部4は、先端回転基部5の軸方向に進退可能に、かつ、一対の作動部材3と先端移動基部4とが前記軸回りに回転する場合には、この先端回転基部5がパイプ部6に対して回動可能なように構成されている。
この先端回転基部5は、パイプ部6に対して回動可能で、かつ、パイプ部6に対して軸方向には移動しないように、このパイプ部6に取り付けられている。それを実現するのが、図2(f)の補助リング5fと図2(g)の補助小リング5kとである。
補助リング5fは外側に段付きの円筒状で、大径の大径部5gと、小径の小径部5hと、内周を構成する内周部5iとを備えている。補助小リング5kは短い円筒状のものである。
補助リング5fの大径部5gの外径は、先端回転基部5の大筒部5aの外径と同じで、かつ、パイプ部6の外径と同じようにするのが、挿入部1に段差が生じないのでよい。
補助リング5fの大径部5gの外径は、先端回転基部5の大筒部5aの外径と同じで、かつ、パイプ部6の外径と同じようにするのが、挿入部1に段差が生じないのでよい。
補助リング5fの小径部5hと、補助小リング5kとの外径は同一であり、パイプ部6の内周に隙間を介して回転可能に収容される外径となっている。補助リング5fと、補助小リング5kとの内径は同一で、先端回転基部5の小筒部5dの外周にガタ付きなく填まり込むようになっている。
ここで、図2(a)によって、上記補助リング5fと補助小リング5kとを用いての、先端回転基部5のパイプ部6への取付について説明する。まず、先端回転基部5の小筒部5dに補助リング5fをその大径部5g側から挿入する。ついで、小筒部5dの残余部分に補助小リング5kを嵌め込む。この時点で、補助リング5fと補助小リング5kとは小筒部5dに対して回転可能である。
上記の状態で、補助小リング5kの端部と、小筒部5dの端部とは一致するようにするようになっているのがよい。ここで、補助小リング5kの端部と、小筒部5dの端部とを溶接等の方法で固着する。これで、補助小リング5kだけが小筒部5dに対して回転せず、また、軸方向にも移動しないようになる。
その後、パイプ部6を補助小リング5kと補助リング5fとの外周に嵌め込む。この状態では、パイプ部6は、補助小リング5kと補助リング5fとに対して、つまり、先端回転基部5に対して回転可能である。ここで、パイプ部6の先端部分と、補助リング5fの大筒部5aとの接触部分を溶接等の方法で固着する。すると、パイプ部6と補助リング5fとは相互に回転せず、また、軸方向にも移動しない状態となる。
しかし、補助リング5fは、先端回転基部5の小筒部5dに対して回転可能であり、一方、補助リング5fの軸方向の動きは補助小リング5kで規制されている。この結果、先端回転基部5の小筒部5dはパイプ部6に対して回転可能であるが、軸方向には補助リング5fと補助小リング5kとの作用により、パイプ部6に対して軸方向には移動しないこととなる。
上記の方法によれば、二つの簡易な部品である補助リング5fと補助小リング5kとを用い、両者の二段階の固着という簡単な工程により、先端回転基部5がパイプ部6に対して、軸方向には相対的に移動しないが、軸中心に回転可能とという両者の取付を達成することができる。
図3は、図1の内視鏡外科手術用鉗子の先端移動基部を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)はその外観斜視図、(d)は(c)のC矢視図、(d′)は(c)のC′矢視図、(e)は先端回転基部の従来例を示す正面図、(f)は(e)の側面図である。
この先端移動基部4は、先端回転基部5の収容部5bに収容される形状であって、この収容部5bの内面に接触する平坦部分と、大筒部5aの外周に一致する周部分とを備えた基端部4aと、基端部4aの平坦部分から更に段をもって形成された先端平坦部4bと、この先端平坦部4bの両面に相互に対象な位置で、この先端平坦部4bの軸中心から偏った位置で側部分近傍に設けられた一対の回動凸部4cと、先端平坦部4bの軸中心に設けられた長孔貫通孔4dとを備えている。
先端移動基部4は、更に、基端部4aから先端平坦部4bとは反対側に傾斜をもって円状端部分を形成する傾斜部4eと、この傾斜部4eで形成される円状端部分に設けられた円形凹部4fとを備えている。この円形凹部4fはシャフト7の先端部分を嵌め込んで、シャフト7と先端移動基部4とを連結固着するためのものである。なお、円形凹部4fを設けずに、シャフト7の先端を先端移動基部4の後端に固着するようにしてもよい。この際、傾斜部4eで形成される円状端部分とシャフト7の外径が同じようにして段が生じないようにしてもよい。
回動凸部4cは、この先端平坦部4bから突出する形で形成されており、その根元部分は先端平坦部4bと連続した素材で構成されている。換言すれば、この回動凸部4cは、基端部4aの平坦部分から、先端平坦部4bへの段を形成する際に、回動凸部4c以外の部分を除去するようにすることで形成されたものである。回動凸部4cの形成は、不要部分の切削除去で達成してもよいし、例えば、精密鋳造等で行ってもよい。このように一体的に形成されると、まず、回動凸部4cの構造的強度が強化される。
一方、図3(e),(f)に示すように、先端移動基部4′において、一般に行われるように、回動凸部を、先端平坦部4bに挿入孔4hを穿孔し、その挿入孔4hにピンを挿入するような回動凸部4gとすることも可能である。しかし、この方法によると、図3(f)に示すように、挿入孔4hと先端平坦部4bの側部との間に一定の余肉部分を形成する必要がある。そうでないと、回動凸部4gに力が作用すると、余肉がなければ、挿入孔4hが破損して、回動凸部4gが外れてしまう可能性があるからである。
このような回動凸部4gが、外科処置中に外れて体腔内に残るというようなことがあると、内視鏡外科手術の安全性に重要な影響を与える。一方、本願発明のように回動凸部4cが先端平坦部4b、つまり、先端移動基部4の本体部分からから一体形成されるようにしておくと、そのような回動凸部4cの離脱ということは全く生じない。
また、このような回転凸部4gの場合、図3(b)に切断線(太い二点鎖線)Sで示すように、回転凸部4gの偏芯量を変えないままで、かつ、作業強度を変えないままで、先端移動基部4の外径を小さくすることができる。ところが、ピン挿入タイプの回動凸部4gの場合、図3(f)に示すように、同じ切断線Sで切断すると、回動凸部4gの離脱を生じることとなり、先端移動基部4の外径を小さくすることができない。
つまり、本発明の内視鏡外科手術用鉗子10によれば、シャフト7の先端に固定され、回動凸部4cを備えた先端移動基部4の前記回動凸部4cが前記先端移動基部4の本体部分から一体的に形成されたものであり、これにより、作業強度を変えることなく、挿入部1の外径を構成する先端移動基部4を更に小径化することができる。
図4は、図1の内視鏡外科手術用鉗子の右作動部材を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)は(b)のD矢視図、(d)は右作動部材の従来例を示す要部側面図である。
この右作動部材3Rは、内視鏡外科手術用鉗子10においては、ほぼ対称な左作動部材3Lと一対で用いられるもので、体腔内の人体組織を挟んで保持する作動本体部3aと、この作動本体部3aの保持面に垂直方向の平板形状で、作動本体部3aを回動させるための部分となる回動基部3bと、この回動基部3bのほぼ中央部分に設けられた回動中心孔3cと、先端移動基部4の回動凸部4cを填め受ける、一方が開放された傾斜長孔部3dとを備えている。
この右作動部材3Rと対称な左作動部材3Lとは、図3で説明した先端移動基部4の先端平坦部4bを、その回動基部3bで両側から対向して挟んで、作動本体部3aの保持面が相対面するようになっている。その際、傾斜長孔部3dに先端移動基部4の回動凸部4cが嵌め受けられる。一対の作動部材3の回動中心孔3cには先端支点軸2が嵌め込まれ、この先端支点軸2は、先端移動基部4の長孔貫通孔4dを貫通する。
この先端支点軸2は、こうして組み合わされた一対の作動部材3と先端移動基部4の先端平坦部4bとが、先端回転基部5の収容部5bに収容され、その状態で、固定軸孔5cをも貫通するものである。その結果、先端回転基部5に対して、先端支点軸2と、一対の作動部材3の回動中心孔3cとは相対的に移動しないが、先端移動基部4は長孔貫通孔4dの長孔分だけ軸方向に先端支点軸2つまり先端回転基部5に対して軸方向に移動可能となっている。
ここで、特許文献2に記載の開放されていない長孔23aに較べて、本願発明の一対の作動部材3に設けられた、一方が開放された傾斜長孔部3dが、挿入部1の更なる小径化に関与している点について、図4(d)と比較して説明する。
図4(d)の右作動部材3R′では、傾斜長孔部3eは、一方が開放されたものではなく、閉じられたものとなっている。この結果、この傾斜長孔部3eがこの中で移動する回動凸部4cからの力を受けることによって、破損しないようにある程度の余肉を残さねばならない。この図示したものでは、その余肉は最小限のものとなっている。
一方、図3(b)に示す右作動部材3Rの傾斜長孔部3dは一方が開放されているので、この図中に、二点鎖線で示したように、この中で移動する回動凸部4cは、最大限、図示の二点鎖線で示した位置まで移動することができ、その際、回動凸部4cの一部は、傾斜長孔部3dの開放端からはみ出した状態となる。しかし、半円以上が傾斜長孔部3dの内面に接触している限り、作業強度には影響を与えず、機能的な支障もない。
しかし、図4(d)の右作動部材3R′においては、回動凸部4cはその外径が閉じられた傾斜長孔部3eの内周端面に接触する位置までしか動くことができない。つまり、閉じた傾斜長孔部3eを用いる場合には、一方が開放された傾斜長孔部3dに較べて、その移動範囲がより短くなる。
本発明の一方が開放された傾斜長孔部3dを備えた右作動部材3Rと、閉じた傾斜長孔部3eを備えた右作動部材3R′とは、双方とも、先端支点軸2で固定された回動中心孔3cを中心として、先端移動基部4に設けられた回動凸部4cが軸方向に移動することで、それぞれの傾斜長孔部3d、傾斜長孔部3e内で移動し、この動きにより、右作動部材3R、3R′を回動中心孔3cを中心として回動させるものであり、この回動量は、回動凸部4cの移動量により決まる。
よって、同じ回動量を確保するのに、同じ回動凸部4cの傾斜長孔部3d、傾斜長孔部3e内での同じ移動が必要とされるなら、より長い移動量を確保できる一方が開放された傾斜長孔部3dを備えた右作動部材3Rの方が、閉じた傾斜長孔部3eを備えた右作動部材3R′に較べて、傾斜長孔部の全長を小さくすることができる。これは、その分だけ、回動基部3bを小さくすることを可能とし、これは、図3(c)で解るように全体形状が円形に納まっている、右作動部材3R全体の外径を小さくすることに繋がる。
図3の先端移動基部4では、回動凸部4cの一体成形による挿入部1の小径化を説明したが、挿入部1の外径を形成するものには、一対の作動部材3の外径もある。よって、この一対の作動部材3の外径の小径化も挿入部の小径化に欠かせないものである。
つまり、本願発明の内視鏡外科手術用鉗子10においては、一対の作動部材3が、回動凸部4cを填め受ける、一方が開放された傾斜長孔部3dを備えることで、挿入部1の更なる小径化を達成することができる。
図5は、図1の内視鏡外科手術用鉗子の回動動作を説明する図であって、(a)はシャフトを引いた際の状態を概念的に示す平面図、(b)は(a)の側面図、(c)はシャフトを押した際の状態を概念的に示す平面図、(d)は(c)の側面図、(e)は(d)のEE矢視断面図である。なお、この図5では、便宜的にパイプ部7を省略している。
図5(a)では、先端移動基部4がシャフトの引き方向Rの動きにより先端支点軸2に対して後退し、これに伴い、一対の作動部材3の傾斜長孔部3dの中で回動凸部4cが後退して、一対の作動部材3を開く方向Rに回動させる。この時、図5(b)に示すように、先端移動基部4の基端部4aの後端と先端回転基部5の収容部5bの底部との隙間が小さくなるが、ここには傾斜部4eがあり、また、収容部5bという囲まれた空間なので、体腔内の外科処置対象外の人体組織が挟まれることがほとんどない。
図5(c)では、先端移動基部4がシャフトの押し方向Pの動きにより先端支点軸2に対して前進し、これに伴い、一対の作動部材3の傾斜長孔部3dの中で回動凸部4cが前進して、一対の作動部材3を閉じる方向Pに回動させる。この時、図5(d)に示すように、先端移動基部4の基端部4aの後端と先端回転基部5の収容部5bの底部との隙間が大きくなっている。また、この先端移動基部4の前後移動は、その長孔貫通孔4dが先端支点軸2に対して移動しているのを見ても解る。
図5(e)では、先端回転基部5の収容部5bの中に、中央に先端移動基部4の先端平坦部4bがあり、この先端平坦部4bを挟むように一対の作動部材3の回動基部3bがあり、これらが組まれた状態で、収容されていることが解る。先端移動基部4の回動凸部4cは、一対の作動部材3の傾斜長孔部3dに填まり込んでいる。
このような構成で、この内視鏡外科手術用鉗子10は、操作ハンドル8bの引き操作R、押し操作Pにより、シャフト7を引き方向R、押し方向Pに移動させ、それを一対の作動部材3(3R、3L)の開き回動Rと閉じ回動Pとに変換している。この際、先端回転基部5はパイプ部6に対して相対的に前後移動しないようになっているので、一対の作動部材3の前後方向の移動はなく、回動だけが生じ、内視鏡外科手術における人体組織の処置を正確にすることができる。
一方、ハンドル部8の回転操作部9を回転させると、シャフト7だけが回転し、その回転は先端移動基部4に伝わり、それが一対の作動部材3と先端回転基部5にも伝わって、パイプ部6に対して、先端回転基部5とそれに収容された部品だけを回転させることができる。また、この回転操作は、一対の作動部材3(3R、3L)の回動状態、開か、閉か、その中間かに拘わりなく行うことができ、この鉗子10による人体組織の処置を簡便なものとしている。また、この挿入部1には、突起が一切ないので、縫合用糸の絡み付きを防止することができる。
なお、本願は、優先権主張を行うものであるが、その基礎出願(特願2012−138615)と基本的構成は同一ではあるが、その作用効果に関する説明と、各構成部品の符号は大きく異なっている。ここで、この両者の関係を解りやすくするために、本願の各部品が、前記基礎出願のどの部品に対応するものであるかを、本願の各部品の後の()内に基礎出願の各部品の符号付き名称を記載して示すことにする。
本願の各部品(基礎出願の各部品)=挿入部1(挿入部10)、先端支点軸2(開閉中心軸31)、左作動部材3L及び右作動部材3R(第一顎部材20及び第二顎部材30)、傾斜長孔部3d(切り欠き部60)、先端移動基部4(シャフト50)、回動凸部4c(凸部70)、先端回転基部5(名称なし。図4のシャフト50の外側にあるもの)、パイプ部6(挿入部10)、シャフト7(シャフト50)、ハンドル部8(ハンドル部40)、回転操作部9(図6の対応部分)、内視鏡外科手術用鉗子10(内視鏡外科手術用鉗子100)。
<実施形態2>
図6は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の他例の回動動作を説明する図で、(a)はシャフトを押した際の状態を概念的に示す平面図、(b)はシャフトを引いた際の状態を概念的に示す平面図、(c)は(b)の側面図、(d)は(c)のFF矢視断面図である。
図6は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の他例の回動動作を説明する図で、(a)はシャフトを押した際の状態を概念的に示す平面図、(b)はシャフトを引いた際の状態を概念的に示す平面図、(c)は(b)の側面図、(d)は(c)のFF矢視断面図である。
この内視鏡外科手術用鉗子10Aは、図1の内視鏡外科手術用鉗子10に較べ、図7で追って説明するように、挿入部1Aを構成する一対の作動部材3Aの傾斜長孔部3fの位置と傾きとが、内視鏡外科手術用鉗子10で用いる一対の作動部材3と異なっている。
この結果、図6(a)では、先端移動基部4がシャフトの押し方向P′の動きにより先端支点軸2に対して前進し、これに伴い、一対の作動部材3の傾斜長孔部3fの中で回動凸部4cが前進して、一対の作動部材3Aを開く方向P′に回動させる。
図6(b)では、先端移動基部4がシャフトの引き方向R′の動きにより先端支点軸2に対して後退し、これに伴い、一対の作動部材3Aの傾斜長孔部3fの中で回動凸部4cが後退して、一対の作動部材3Aを閉じる方向R′に回動させる。この時、図6(a),(b)を見比べると、先端移動基部4の基端部4aの後端と先端回転基部5の収容部5bの底部との隙間が小さくなっている。また、この先端移動基部4の移動は、その長孔貫通孔4dが先端支点軸2に対して移動しているのを見ても解る。
図6(d)では、先端回転基部5の収容部5bの中に、中央に先端移動基部4の先端平坦部4bがあり、この先端平坦部4bを挟むように一対の作動部材3Aの回動基部3bがあり、これらが組まれた状態で、収容されていることが解る。先端移動基部4の回動凸部4cは、一対の作動部材3Aの傾斜長孔部3fに填まり込んでいる。
このような構成で、この内視鏡外科手術用鉗子10Aは、操作ハンドル8bの引き操作R′、押し操作P′により、シャフト7を引き方向R′、押し方向P′に移動させ、それを一対の作動部材3A(3AR、3AL)の閉じ回動R′と開き回動P′とに変換している。この場合、引きで一対の作動部材3Aが閉じ、その際に一対の作動部材3Aに人体組織を挟むという最大の力が生じるが、押しで閉じる内視鏡外科手術用鉗子10に較べ、シャフト7Aをより小径のものとすることができる。なぜなら、押しの場合には、小径になってくると、パイプ部内での前記力による撓みが問題となるが、引きの場合にはその問題は生じないからである。
図7は、図6の内視鏡外科手術用鉗子に用いる右作動部材を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)は(b)のG矢視図である。この右作動部材3ARは、図1の内視鏡外科手術用鉗子10で用いる図4の右作動部材3Rに較べ、その傾斜長孔部3fが、回動中心孔3cに対して前後に対称な位置と傾斜となっている点が異なっている。
このような傾斜長孔部3fを備えた一対の作動部材3Aによれば、同じ先端移動基部4の移動に伴う回動凸部4cの移動に対して、一対の作動部材3Aの閉じ回動R′と開き回動P′の関係が真逆になり、図6で説明したように、シャフト7Aの押し動作P′で、一対の作動部材3Aが開き方向P′に回動し、引き動作R′で、一対の作動部材3Aが閉じ方向R′に回動する。
このような構成の内視鏡外科手術用鉗子10Aによれば、図1の内視鏡外科手術用鉗子10に較べ、シャフト7Aの押し引きに対する一対の作動部材3Aの回動方向が真逆になるだけで、その他の点は異なる所はないので、内視鏡外科手術用鉗子10と同じ効果、つまり、更なる挿入部の小径化を可能としながら、従来と変わりのない作業強度を確保することが可能とすることができる。
図8は、図1及び図6の内視鏡外科手術用鉗子に共通して用いることができるパイプ部及びシャフトについて説明するものであって、(a)はその両者を分離した状態の概念的な平面図、(b)は、シャフトをパイプ部に挿入した状態の概念的な平面図、(c)は、(b)のHH矢視断面図である。
これまで説明した実施形態1、2の内視鏡外科手術用鉗子10、10Aは、挿入部1、1Aの外径がφ2mmのものの例であった。このような内視鏡外科手術用鉗子10、10Aにおいて、図3(b)の切断線S、図4(b)、(d)で説明したようにまだこれらの挿入部1、1A以上に外径をより小さくすることができるのであり、既述したように、本願発明の上記構成を備えた内視鏡外科手術用鉗子によれば、最小径はφ0.8mmまで小さくできることが予測されている。
これに伴い、シャフト7,7Aをφ0.3mm〜φ2.5mmのステンレス鋼丸棒とすることができることが解っている。この図8では、φ1mmの丸棒を具体例として、その作用効果について説明する。
このようなシャフト7,7Aは図8(a)の右側に示すように、パイプ部6Aに挿入する前は、真っ直ぐな直線状を維持するしながら、その小径化に伴う可撓性の向上と屈曲された場合に生じる内部応力の小ささから、屈曲部分を有するパイプ部6Aに挿入した状態、つまり、図8(b)の状態でも、シャフト7,7Aはパイプ部が直線の場合とほとんど変わらなく、回転操作部9等により、パイプ部6Aの中で回転させ、かつ、前進後退させる得ることが解った。
また、使用後にシャフト7,7Aをパイプ部6Aから抜き出した場合には、屈曲等の影響は全く残らず、図8(a)の右側に示すように真っ直ぐな状態に復元する。これは、シャフト7,7Aのパイプ部6A内での前進、後退や回転は、その弾性変形の範囲内で行われ、この弾性変形によりパイプ部6Aの内周に及ぼす力の影響が、シャフトシャフト7,7Aの前進、後退、回転について、使用上違和感を与えない、ということである。
これまで、本発明者の試行錯誤では、屈曲部のあるパイプ部の中に挿入して、前進後退させかつ回転させることをスムーズに行うためには、金属製密着バネ、金属製フレキシブルシャフト、金属製フレキシブルチューブや、シリコン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フェノール樹脂等からなる高分子シャフトを用いるしかなかった。
しかし、本願の内視鏡外科手術用鉗子10、10Aでは、挿入部1の小径化の障害となっていた一対の作動部材3、3A、先端移動基部4などを小径化できたので、パイプ部とシャフトの小径化も可能となり、これまでシャフト7,7Aとして使ったことのなかったφ1mmのステンレス鋼丸棒を用いた所、上記のように屈曲されたパイプ部6Aつまり挿入部に用いても支障のないことが解ったのである。
このようにシャフト7、7Aの素材として、シンプルなステンレス鋼丸棒を使えるということは、コスト面でも非常に有利であり、また、繰り返し使用する内視鏡外科手術用鉗子10、10Aにおいて除菌消毒のためのオートグレーブにも十分耐えることができるという利点も生じる。
<実施形態3>
図9(a)は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の他例の回動動作を説明するもので、シャフトを押した際の状態を概念的に示す平面図、(b)はシャフトを引いた際の状態を概念的に示す平面図、(c)は、この内視鏡外科手術用鉗子に用いる右作動部材の上側面図、(d)はその正面図である。
図9(a)は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の他例の回動動作を説明するもので、シャフトを押した際の状態を概念的に示す平面図、(b)はシャフトを引いた際の状態を概念的に示す平面図、(c)は、この内視鏡外科手術用鉗子に用いる右作動部材の上側面図、(d)はその正面図である。
この内視鏡外科手術用鉗子10Bは、図6の内視鏡外科手術用鉗子10Aに較べ、挿入部1Bを構成する一対の作動部材3Bの作動本体部3hが、手術用鋏形状となっており、傾斜長孔部3gがこの作動本体部3hの左右一対が相互に重なり合う所まで、一対の作動部材3Bを回動させるようになっている点が異なっている。
このような構成で、この内視鏡外科手術用鉗子10Bは、操作ハンドル8bの引き操作R′、押し操作P′により、シャフト7Aを引き方向R′、押し方向P′に移動させ、それを一対の作動部材3B(3BR、3BL)の閉じ回動R′と開き回動P′とに変換し,手術鋏としての機能を発揮している。
つまり、この内視鏡外科手術用鉗子10Bは、図6の内視鏡外科手術用鉗子10Aと同様の効果を手術用鋏として発揮することができる。なお、この鋏タイプにおいても、図1の内視鏡外科手術用鉗子10のように、引き操作で作動部材を開き方向に回動させ、押し操作で作動部材を相互に重なる閉じ方向に回動させるようにすることも可能である。
図10(a)は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の他例の回動動作を説明するもので、シャフトを押した際の状態を概念的に示す平面図、(b)はシャフトを引いた際の状態を概念的に示す平面図、(c)は(b)の側面図、(d)はこの内視鏡外科手術用鉗子に用いる右作動部材の側面図、(e)はその正面図である。
この内視鏡外科手術用鉗子10Cは、図9の内視鏡外科手術用鉗子10Bに較べ、挿入部1Cを構成する一対の作動部材3Cの作動本体部3iが、手術用鋏形状となっている点は共通するが、その刃先方向への形状がフォーク状に湾曲している点が異なっている。
このような構成で、この内視鏡外科手術用鉗子10Cは、内視鏡外科手術用鉗子10Bと同様な手術鋏としての機能と効果とを発揮するが、その刃先部分の湾曲形状により、特殊な用途に用いることができる。
<実施形態4>
図11は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の他例を示すもので、(a)はシャフトを引いた状態の先端部分を概念的に示す平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)のI矢視断面図、(d)はシャフトを押した状態の先端部分を概念的に示す平面図、(e)は(d)の側面図、(f)は(d)のJ矢視断面図、(g)は、(d),(e)の状態の先端部分の斜視図である。
図11は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の他例を示すもので、(a)はシャフトを引いた状態の先端部分を概念的に示す平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)のI矢視断面図、(d)はシャフトを押した状態の先端部分を概念的に示す平面図、(e)は(d)の側面図、(f)は(d)のJ矢視断面図、(g)は、(d),(e)の状態の先端部分の斜視図である。
この内視鏡外科手術用鉗子10Dは、図1の内視鏡外科手術用鉗子10に較べ、その挿入部1Dにおいて、左作動部材5m(3DL)が先端回転基部5Aと一体化され、右作動部材3DRが先端回転基部5Aに対して回動するように構成された点が異なっている。
この構成に対応して、先端移動基部4Aは、同様な回動凸部4c′を一箇所だけ備えたものとなり、右作動部材3DRは、図4の右作動部材3Rと同様な傾斜長孔部3d′を備えて、ここに回動凸部4c′が嵌まった状態で先端移動基部4Aが軸方向に引き移動することで、図11(a)〜(f)に示すように右作動部材3DRが閉じ、先端移動基部4Aが軸方向に押し移動することで、右作動部材3DRが開くようになっている。
この内視鏡外科手術用鉗子10Dにおいては、先端移動基部4Aの回動凸部4c′は、本体部分と一体形成されたものであり、また、右作動部材3DRの傾斜長孔部3d′は一方が開放されたものであり、内視鏡外科手術用鉗子10と同様に挿入部1Dの更なる小径化を達成しながら、作業強度を確保することができる。
なお、この内視鏡外科手術用鉗子10Dは、図1の内視鏡外科手術用鉗子10に較べ、シャフト7Aの引き移動で右作動部材3DRが閉じ方向に回動し、押し移動で開方向に回動する点で逆であるが、この片方だけが回動するタイプでも、もちろん、内視鏡外科手術用鉗子10のように、シャフトの引き方向移動で、作動部材が開方向に回動し、押し方向移動で作動部材が閉方向に回動するようにすることもできる。
また、回動側が左作動部材で、固定側が右作動部材となるようにしてもよい。
<実施形態5>
図12は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の他例を示すもので、(a)はその一対の作動部材が閉じた状態の先端部分を概念的に示す平面図、(b)は(a)KK矢視断面面図、(c)は(a)の先端移動基部を示す斜視図、(d)は、(a)の左作動部材の斜視図である。
図12は、本発明に係る内視鏡外科手術用鉗子の他例を示すもので、(a)はその一対の作動部材が閉じた状態の先端部分を概念的に示す平面図、(b)は(a)KK矢視断面面図、(c)は(a)の先端移動基部を示す斜視図、(d)は、(a)の左作動部材の斜視図である。
この内視鏡外科手術用鉗子10Eは、図1の内視鏡外科手術用鉗子10に較べ、先端移動基部4Bが一対の作動部材3(3R,3L)を挟んで収容するように構成された点が異なっている。そのため、図3の先端平坦部4bに較べ、先端平坦部4b′が一枚の平板状ではなく、二枚の平板状のものが、基端部4a′から平行に伸びだした形状となっている。
この構成に対応して、図2の先端回転基部5に較べ、先端回転基部5Aは、その収容部5b′の収容部分の内面対向距離がより大きくなり、全体外径が変わらないとすれば、収容部5b′の肉厚がより小さいものとなっている。一対の作動部材3(3R,3L)は同様のものを用いることができる。
先端移動基部4Bの回動凸部4c′′、長孔貫通孔4d′は、図3の先端移動基部4の回動凸部4c、長孔貫通孔4dと同じ役割を果たすものである。回動凸部4c′は一対の作動部材3(3R,3L)の傾斜長孔部3dに填まり込み、長孔貫通孔4d′は先端支点軸2をそれに対して押し引き移動可能に嵌め受けている。
このような構成の内視鏡外科手術用鉗子10Eは、図1の内視鏡外科手術用鉗子10と同様に、シャフト7の押し引き移動で、一対の作動部材3(3R,3L)が閉方向開方向に回動させ、その場合に、同様な作用効果、つまり、更なる挿入部の小径化を可能としながら、従来と変わりのない作業強度を確保することができる。
なお、この内視鏡外科手術用鉗子10Eにおいては、その挿入部1Eの先端部分の先端移動基部4Bが一対の作動部材3(3R,3L)を挟み込む構成となっているので、図12(b)の断面図を見ると解るように、この部分が6層構造となっている。これに比べて、これまで説明した内視鏡外科手術用鉗子10〜10Cにおいては、先端移動基部4〜4Aが一対の作動部材3(3R,3L)の間に挟まれる構成となっているので、たとえば、図5(e)の断面図を見ると解るように、この部分が5層構造となっている。よって、内視鏡外科手術用鉗子10〜10Cでは、その分各層の厚みをより厚くでき、逆にそれは、挿入部1〜1Cのより小径化を可能としている。
なお、本発明の内視鏡外科手術用鉗子は、上記の実施形態に限定されない。また、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、それらも、特許請求の範囲の技術的範囲に含まれるものである。例えば、先端移動基部に一方が開放された傾斜長孔部を設け、一対の作動部材に回動凸部を設けるようにしてもよい。
一対の作動部材の形状や大きさ等は特に限定されるものではなく、例えば、剥離、把持、持針、剪刀、切断等の内視鏡外科手術用鉗子の用途に応じて設定することができる。内視鏡外科手術用鉗子を構成する各部材は、ハンドル部を除き、耐腐食性、耐薬品性を備えるとともに、加熱滅菌(オートグレーブ)に耐え得るだけの温度耐久性を備える材質(例えば、ステンレス鋼やチタン等の金属)から形成することが好ましい。
Claims (3)
- 体腔内に挿入される挿入部と、前記挿入部の先端側に前記挿入部の軸方向に直交する先端支点軸を中心として相対的に回動可能に軸支された右作動部材及び左作動部材と、
前記挿入部の基端側に設けられ、操作ハンドルを備えるハンドル部と、
前記挿入部に内挿されるとともに、一端が前記操作ハンドルに接続され、前記操作ハンドルの操作量に応じて軸方向に移動するシャフトとを備えた内視鏡外科手術用鉗子であって、
前記シャフトの軸方向の移動が、前記右作動部材および前記左作動部材の少なくとも一方を前記先端支点軸を中心として相対的に回動させ、前記ハンドル部に備えられた回転操作部により前記シャフトを回転させることで、前記右作動部材と前記左作動部材と前記先端支点軸とを、前記挿入部の先端部分の軸方向を中心として回転させ、
前記シャフトの先端に固定され、回動凸部を備えた先端移動基部の前記回動凸部が前記先端移動基部の本体部分から一体的に形成されたものであり、前記右作動部材と前記左作動部材の少なくとも一方には、前記回動凸部を填め受ける、一方が開放された傾斜長孔部を備え、
または、前記シャフトの先端に固定された先端移動基部に一方が開放された傾斜長孔部が設けられ、前記右作動部材と前記左作動部材の少なくとも一方には、前記傾斜長孔部に填め受けられる回動凸部が設けられ、前記回動凸部は前記一方の本体部分から一体的に形成されたものであり、
前記シャフトの移動によって前記回動凸部が傾斜長孔部内で相対的に位置変動することで、前記傾斜長孔部を備えた少なくとも一方の前記作動部材を他方の前記作動部材に対して相対的に回動させることを特徴とする内視鏡外科手術用鉗子。 - 先端移動基部を外側から覆う先端回転基部を備え、前記先端回転基部は、前記挿入部の先端部分に回転可能でありながら、その軸方向に移動しないように設置され、先端支点軸は右作動部材及び左作動部材と、先端回動基部とを貫通するもので、前記先端回転基部は、この先端支点軸を軸支する固定軸孔を備え、前記先端移動基部の先端支点軸を貫通させる貫通孔は、該先端移動基部の前記先端支点軸に対する移動を許可する長孔貫通孔となっていることを特徴とする請求項1記載の内視鏡外科手術用鉗子。
- 右作動部材、左作動部材のいずれかが一方が先端回転基部と一体化され、他方が前記先端回転基部に対して回動するように構成された請求項1または2記載の内視鏡外科手術用鉗子。
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