(実施形態1)
以下、本発明の内容量推定システムの第1の実施形態である車両燃料システムを、図1〜図6を参照して説明する。
以下に説明する車両燃料システムは、車両に搭載されて、液化石油ガス(LPG)を当該車両の燃料Fとして収容する燃料タンクを備えるとともに、当該燃料タンク内の燃料Fの液量(内容量)を推定するシステムである。
LPGなどの液化ガスを燃料Fとして収容した燃料タンク内では、周囲温度により圧力が0.1MPa〜3MPa程度まで変化するので、上述した従来の燃料残量検出装置などにおいてはこのような非常に高い圧力に対抗して気体を押し込むための駆動力確保が困難であり、さらには、気化した燃料ガスが取り得る圧力範囲が広く、圧力計での測定において十分な分解能で測定することができず、そのため、液化ガスを燃料とした車両に用いるには不適当であった。そして、以下に説明する本発明の車両燃料システムは、このような課題を解決して、液化ガスを燃料とした車両に適したものである。
図1に示すように、車両燃料システム(図中、符号1で示す)は、容器としての燃料タンク10と、燃料タンク10内の燃料Fの液量を推定する内容量推定装置としての液量推定装置6と、を有している。
燃料タンク10は、例えば、車両の床下などに配置されて、当該車両の燃料Fを収容する周知の車両部品であり、本実施形態においては、直方体の箱形状で容積100Lとなるように形成されている。
燃料タンク10の上壁10aには、図示しない車両の燃料充填口に接続されて、燃料供給スタンドなどから供給される燃料Fを燃料タンク10内に流入させるための流入管11と、この流入管11を開放及び閉塞する、電磁弁で構成された流入弁12と、が設けられている。燃料タンクの側壁10bの下端には、図示しない内燃機関に燃料Fを供給するためのインジェクション装置等に接続されて、燃料タンク10内の燃料Fを当該インジェクション装置等に向けて流出させる流出管13と、この流出管13を開放及び閉塞する、電磁弁で構成された流出弁14と、が設けられている。
燃料タンク10内には、気化した燃料F等からなる気相部17と、液体状の燃料Fからなる液相部18と、が存在する。燃料タンク10内には、燃料Fが空の場合は気相部17のみ存在し、また、燃料Fが満量の場合でも若干の空間が設けられ、即ち、気相部17が存在する。
液量推定装置6は、気密シリンダ20と、配管29と、ピストン30と、磁性部材としてのマグネット35と、移動検出スイッチ36と、磁力発生コイルとしての電磁コイル41と、電流供給手段としてのコイル電源部42と、電流量測定手段としての電流計43と、気相部温度測定手段としての第1温度センサ51と、閉塞部分空間温度測定手段としての第2温度センサ52と、制御部60と、を有している。
気密シリンダ20は、図2に示すように、燃料タンク10に近接して配置されており、本実施形態において、気密シリンダ20は、例えば、ステンレスなどの耐食性が高くかつ燃料Fの圧力に耐えうる金属材料等を用いて、両端部が上壁部20a、下壁部20bで塞がれた円筒形状に形成されている。これにより、気密シリンダ20は、外部から内側空間が断絶(密閉)される。また、本実施形態において、気密シリンダ20の容積は2Lである。気密シリンダ20の上壁部20a、下壁部20bの内面には、後述するピストン30の移動範囲を規制するストッパ21、22が設けられている。気密シリンダ20は、配管29によって燃料タンク10に接続されている。
配管29は、その一端29aが、燃料タンク10の側壁10bの上端に接続され、他端29bが、気密シリンダ20の下壁部20bに接続されている。つまり、気密シリンダ20は、燃料タンク10の上部、即ち、燃料タンク10内の気相部17(以下、単に気相部17という)に連通して接続されている。これにより、気密シリンダ20には、気相部17と同じ気体が充填される。
ピストン30は、例えば、ステンレスなどの耐食性の高い金属からなり、ピストン本体部31と、ピストン本体部31に一体に形成された円柱突部32と、を有している。
ピストン本体部31は、気密シリンダ20の内部空間における横断面形状の径と略同一の外径となる略円柱形状に形成されている。ピストン本体部31は、気密シリンダ20内に当該気密シリンダ20と同軸に収容されて、その上端面31a、下端面31bが、気密シリンダ20の上壁部20a、下壁部20bに平行に配置されている。ピストン本体部31は、気密シリンダ20に、その軸方向(図1、図2の上下方向)に移動可能に収容されている。
円柱突部32は、外径が当該ピストン本体部31の外径より小さい円柱状に形成されている。円柱突部32は、ピストン本体部31の上端面31aに、ピストン本体部31と同軸に配置されている。
ピストン30は、気密シリンダ20内の内部空間を2つの部分空間に区画している。これら2つの部分空間のうち一方は、気密シリンダ20の上壁部20a側に存在し、気相部17と連通されていない閉塞部分空間23であり、他方は、気密シリンダ20の下壁部20b側に存在し、気相部17と連通された連通部分空間24である。
ピストン30は気密シリンダ20内に移動可能に収容されており、つまり、閉塞部分空間23と連通部分空間24との間を完全に気密状態にしたものではないので、これら閉塞部分空間23と連通部分空間24との間に圧力差(気圧差)があった場合でも、時間経過により閉塞部分空間23と連通部分空間24との間で気体が移動して、当該圧力差は無くなる、又は、小さくなる。または、ピストン30にピストンリング等を設けるなどして、閉塞部分空間23と連通部分空間24との間を完全な気密に近い状態にした場合でも、これら閉塞部分空間23と連通部分空間24との間の圧力差が小さくなるように、閉塞部分空間23の圧力を予め調整しておくことができる。
マグネット35は、外径がピストン本体部31の外径と略同一でかつ内径が円柱突部32の外径と略同一の環状(円筒形状)に形成されている。マグネット35は、その内側にピストン30の円柱突部32が挿入された状態で、ピストン本体部31の上端面31aに固定して取り付けられている。これにより、マグネット35の移動に伴って、ピストン30が移動する。
移動検出スイッチ36は、スイッチ本体部36aと、スイッチ本体部36aに突出及び没入するように支持された突起部36bと、を有する、周知のプッシュスイッチで構成されている。移動検出スイッチ36は、気密シリンダ20の下壁部20bの内面に突起部36bを上壁部20a側に向けて設けられている。移動検出スイッチ36は、後述する制御部60に電気的に接続されており、ピストン30が下壁部20bに向けて移動されてその下端面31bがストッパ22に当接されると、ピストン30によって突起部36bがスイッチ本体部36aに押し込まれて(没入されて)、開閉状態の変化を示す信号を出力する。
電磁コイル41は、略円筒状に形成されており、気密シリンダ20の周壁20cの外面に当該気密シリンダ20と同軸に固定して設けられている。電磁コイル41は、後述するコイル電源部42によって電流が供給されると、ピストン30に設けられたマグネット35に磁力を及ぼすように配置されている。
コイル電源部42は、周知の直流電源装置であって、後述する電流計43を介して、電磁コイル41に電流を供給可能に接続されている。また、コイル電源部42は、後述する制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号に応じた量の電流を電磁コイル41に供給する。電磁コイル41は、コイル電源部42によって電流が供給されると、マグネット35(即ち、ピストン30)を、電流の向きに応じて上壁部20aに近づく方向、又は、下壁部20bに近づく方向(即ち、気密シリンダ20内の気体を気相部17に押し込む方向)に向けて移動させる磁力を発生する。そして、この磁力によってピストン30が、下壁部20bに近づく方向に移動されると連通部分空間24が小さくなって、当該連通部分空間24(即ち、気密シリンダ20)の気体が気相部17に押し込まれる。
電流計43は、例えば、電線上に直列に接続された電流検知抵抗の両端の電位差から電流量を測定するものなど、周知の直流電流計であって、コイル電源部42と電磁コイル41との間に設けられており、これらコイル電源部42から電磁コイル41に供給された電流量を測定する。このような電流計は、僅かな電流量も測定可能であるとともに、電流量の測定可能範囲も広い。電流計43は、後述する制御部60に電気的に接続されており、測定した電流量に応じた電気信号を制御部60に出力する。
第1温度センサ51は、例えば、サーミスタや熱電対などで構成されて、燃料タンク10の上壁10aに設けられており、気相部17の温度を測定する。第1温度センサ51は、後述する制御部60に電気的に接続されており、測定した気相部17の温度に応じた電気信号を制御部60に出力する。
第2温度センサ52は、第1温度センサ51と同一に構成されて、気密シリンダ20の上壁部20aに設けられており、気密シリンダ20内の閉塞部分空間23の温度を測定する。第2温度センサ52は、後述する制御部60に電気的に接続されており、測定した閉塞部分空間23の温度に応じた電気信号を制御部60に出力する。
制御部60は、図3に示すように、周知の組み込み機器用のマイクロコンピュータ61などで構成されている、このマイクロコンピュータ61は、中央演算処理装置(CPU)62と、ROM(Read Only Memory)63と、RAM(Random Access Memory)64と、メモリ65と、を備えている。
CPU62は、車両燃料システム1における各種制御を司り、ROM63に記憶されている各種制御プログラムにしたがって本実施形態に係る制御を含む各種の処理を実行する。
ROM63は、前記制御プログラムやこの制御プログラムに参照されるパラメータなどの各種情報を記憶している。特に、ROM63は、CPU62を、内容量推定手段などの各種手段として機能させるための制御プログラムを記憶している。そして、CPU62は、この制御プログラムを実行することで前述した各種手段として機能する。RAM64は、CPU62が各種の処理を実行する上において必要なデータ、プログラム等が適宜記憶される。
メモリ65は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリなどの電源断となってもデータを保持できる不揮発性のメモリで構成されている。このメモリ65には、後述する内容量推定処理1で用いられる数式やパラメータ、(気相部17に押し込まれた気体量ΔVm、燃料タンク10の容積VT、圧力差解消待ち時間など)等の各種情報が記憶されている。
また、制御部60のマイクロコンピュータ61が備えるメモリ65には、図4に一例を示すように、気相部17が所定の温度(気相部温度T1)で且つ閉塞部分空間23が所定の温度(閉塞部分空間温度T2)の場合において、電磁コイル41に電流を供給することによりピストン30を移動させて気相部17に予め定められた量の気体(気体量ΔVm)を押し込んだときの電磁コイル41に実際に供給された電流量(電流量I)と、そのときの燃料タンク10内のうち気相部17に対応する部分の容積(気相部容積VA)と、の関係を示す気相部容積関係情報J1が格納されている。
ここで、気相部容積関係情報J1について説明する。
気体押し込み前の気相部17の圧力をPm1、気体押し込み後の気相部17の圧力をPm2、気相部17に押し込まれた気体量をΔVm、燃料タンク10の全容積のうち気相部17に対応する部分の容積(気相部容積VA)とすると、ボイルの法則から、次の(1)式が成立する。
Pm1×(VA+ΔVm)=Pm2×VA
VA=(−Pm1×ΔVm)/(Pm1−Pm2) ・・・ (1)
また、燃料タンク10内の燃料Fは気相部17の温度によって気化状態が変化するので、気相部17の温度変化に応じて気相部17の圧力は変化する。このことから、気相部17の圧力は気相部17の温度に依存し、即ち、気体押し込み前の気相部17の圧力Pm1は、気体押し込み前の気相部17の温度(気相部温度T1)の関数f1として、次の(2)式で表すことができる。
Pm1=f1(T1) ・・・ (2)
また、電磁コイル41に電流を供給することによりピストン30を気相部17に気体を押し込む方向に向けて移動させると、気相部17の圧力に応じた力F1がピストン30の移動方向と逆方向に加わる。このことから、気相部17の圧力が高いほど、ピストン30の移動に力を要して電磁コイル41に流れる電流量が増加し、即ち、気体押し込み後の気相部17の圧力Pm2は、当該圧力Pm2に対抗してピストン30を移動するために電磁コイル41に供給された電流量Iaの関数f2として、次の(3)式で表すことができる。
Pm2=f2(Ia) ・・・ (3)
また、ピストン30の移動により閉塞部分空間23が拡張されると、閉塞部分空間23内の気体が疎密化されて当該閉塞部分空間23の圧力が低下し、ピストン30にその移動を妨げる力F2がピストン30の移動方向と逆方向に加わる。そして、閉塞部分空間23内の気体の疎密化度合い(即ち、圧力低下度合い)は閉塞部分空間23の温度によって変化し、即ち、閉塞部分空間23の温度変化に応じて、上記力F2を相殺する磁力を発生させるために必要な電流量も変化する。このことから、ピストン30の移動を妨げる力を相殺する磁力を発生させるために必要な電流量Ibは閉塞部分空間の温度に依存し、即ち、当該電流量Ibは閉塞部分空間の温度(閉塞部分空間温度T2)の関数f3として、次の(4)式で表すことができる。
Ib=f3(T2) ・・・ (4)
そして、上記電流量Iaと上記電流量Ibとの合計値が、電磁コイル41に実際に供給された電流量Iとなるので、この関係は次の(5)式で表すことができる。
Ia+Ib=I
Ia=I−Ib=I−f3(T2) ・・・ (5)
そして、上記(1)式に(2)〜(5)式を代入すると、
VA=(−f1(T1)×ΔVm)/(f1(T1)−f2(I−f3(T2)))
・・・ (6)
となり、即ち、気相部容積VAは、気体量ΔVm、電流量I、気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2と関係を有し、そのため、これら関係を示す上記気相部容積関係情報J1を用いることで、気体量ΔVm、電流量I、気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2に基づいて、気相部容積VAを求めることができる。
この気相部容積関係情報J1は、予備計測やシミュレーションなどによって求めたデータテーブルや関数などであり、例えば、気体量ΔVmを一定値として、気相部温度T1毎及び閉塞部分空間温度T2毎に、複数個設けられている。本実施形態では、図5に模式的に示すように、気体量ΔVmを0.5L(固定値)として予め定めて作成した、電流量Iと気相部容積VAとの関係を示す気相部容積関係情報J1が、気相部温度T1が0.0℃〜35.0℃まで1.0℃毎に、且つ、閉塞部分空間温度T2が0.0℃〜35.0℃まで1.0℃毎に、複数個の格納されている。
また、マイクロコンピュータ61は、図示しないインタフェース部を備えている。このインタフェース部は、移動検出スイッチ36、コイル電源部42、電流計43、第1温度センサ51、及び、第2温度センサ52と、CPU62と、を接続しており、これら間での各種信号の送受を可能としている。
また、図示していないが、インタフェース部は、上述した流入弁12及び流出弁14と、CPU62と、をさらに接続しており、CPU62は、例えば、後述する内容量推定処理実行中は、流入管11及び流出管13を閉塞するように流入弁12及び流出弁14を制御して、燃料タンク10内の圧力が漏出しないようにするなど、必要に応じて、流入弁12及び流出弁14を制御して、流入管11及び流出管13を開放及び閉塞する。また、インタフェース部は、車両に設けられた図示しない燃料計と、CPU62と、をさらに接続しており、CPU62は、推定した燃料Fの液量を当該燃料計に表示させる。
次に、上述したCPU62が実行する本発明に係る処理(内容量推定処理1)の一例を、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1に電源が供給されて制御部60のCPU62が動作を開始し、CPU62は、所定の初期化処理を実行する。そして、CPU62は、初期化処理が終了した後に、例えば、一定周期などの所定のタイミングで、図3のフローチャートに示すステップS110に進む。
ステップS110では、ピストン30を上壁部20aの内面に設けられたストッパ21に当接する所定の押込前位置P1に移動させるための制御信号を、コイル電源部42に送出する。コイル電源部42は、受信した制御信号に応じて電磁コイル41に所定の一方向に流れる電流を供給する。電磁コイル41は、コイル電源部42から上記電流を供給されると、上壁部20a側に向けてピストン30を移動させる磁力を発生させる。ピストン30は、電磁コイル41の発生した磁力によって、その円柱突部32がストッパ21に当接するまで上壁部20a側に向けて移動する。そして、ステップS120に進む。
ステップS120では、ピストン30と気密シリンダ20の周壁20cの内面との間の隙間からの漏れ等によって気密シリンダ20内の閉塞部分空間23と連通部分空間24との圧力差が無くなる所定の圧力差解消待ち時間を経過するまで待つ。そして、圧力差解消待ち時間を経過して閉塞部分空間23と連通部分空間24との圧力差がなくなったのち、コイル電源部42は、ピストン30及びマグネット35に対する重力と釣り合って当該ピストン30を押込前位置P1に位置づける磁力を発生させる一定量の電流を電磁コイル41に供給する。そして、ステップS130に進む。
ステップS130では、第1温度センサ51から出力された電気信号に基づいて、第1温度センサ51によって測定された気相部17の温度(気相部温度T1)を取得する。そして、ステップS140に進む。
ステップS140では、第2温度センサ52から出力された電気信号に基づいて、第2温度センサ52によって測定された閉塞部分空間23の温度(閉塞部分空間温度T2)を取得する。そして、ステップS150に進む。
ステップS150では、ピストン30を下壁部20bの内面に設けられたストッパ22に当接する所定の押込後位置P2に向けて移動させるための制御信号を、コイル電源部42に送出する。コイル電源部42は、受信した制御信号に応じて、電磁コイル41に所定の一方向と反対方向に流れる電流を供給するとともに、移動検出スイッチ36からその開閉状態の変化を示す信号(即ち、ピストン30が押込後位置P2に移動済み)を受信するまで、その供給量(電流量)を徐々に大きくしていく。そして、ステップS160に進む。
ステップS160では、電流計43から出力された電気信号に基づいて、電流計によって測定された電流量(電流量I)を取得する。この電流量Iは、ピストン30が押込後位置P2に移動して気相部17に予め定められた量(気体量ΔVm)の気体を押し込んだ際に電磁コイル41に実際に供給された電流量(電流値)を示している。そして、ステップS170に進む。
ステップS170では、ステップS130で取得した気相部温度T1、ステップS140で取得した閉塞部分空間温度T2、ステップS160で取得した電流量I、及び、予め定められた気体量ΔVmに基づいて、燃料タンク10の容積VTのうち気相部17に対応する部分の容積(気相部容積VAという)を取得する。
具体的には、気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2によって特定される気相部容積関係情報J1に、上記電流量Iを当てはめることにより、この気相部容積関係情報J1から気相部容積VAを取得する。なお、気相部容積関係情報J1は、気相部17に押し込まれた気体量が予め定められた上記気体量ΔVmであるものとして予め作成されているので、気体量ΔVmについても気相部容積VAを取得するパラメータとして間接的に用いられている。本実施形態において、ピストン30は、押込前位置P1から押込後位置P2までの所定の距離を移動するので、気相部17に押し込まれた気体量は、ピストン30の外径及びピストン30の移動距離から算出することができる。そして、この気体量ΔVmは予め算出されてメモリ65に記憶されている。
気相部容積VAの取得の一例を示すと、気相部17に押し込まれた気体量ΔVmが0.5L、気相部温度T1が25.0℃、閉塞部分空間温度T2が25.0℃のとき、気相部容積関係情報J1として図4に示すものが特定され、そして、気相部17に気体が押し込まれたときに電磁コイル41に供給された電流量Iが1.100Aとなったとすると、上記気相部容積関係情報J1から、気相部容積VAを48Lとして取得する。そして、ステップS180に進む。
ステップS180では、メモリ65に記憶された燃料タンク10内の容積VTからステップS170で取得した算出した気相部容積VAを差し引くことにより、当該燃料タンク10の容積VTのうち液相部18に対応する部分の容積VL(以下、液相部容積VLという)を算出する。この液相部容積VLは、即ち、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLである。そして、車両に搭載された図示しない燃料計に、液量VLを表示するための信号を送出する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
上述したステップS170、S180が、請求項中の内容量推定手段に相当する。
次に、上述した車両燃料システム1における本発明に係る動作例について説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1は動作を開始して、周期的(例えば、1分毎)に燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定を行う。
この液量VLの推定において、まず、ピストン30を所定の押込前位置P1に移動させたのち(S110)、気密シリンダ20内の閉塞部分空間23と連通部分空間24との圧力差が解消されるまで待つ(S120)。そして、気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2を測定したのち(S130、S140)、電磁コイル41に電流を供給するとともに、ピストン30が所定の押込後位置P2に移動するまで、電流量を徐々に大きくしていく(S150)。そして、ピストン30が所定の押込後位置P2まで移動して予め定められた量(気体量ΔVm)が気相部17に押し込まれたときの電磁コイル41に供給された電流量Iを取得する(S160)。
そして、メモリ65に記憶された複数の気相部容積関係情報J1の中から気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2によって1つの気相部容積関係情報J1を特定して、この特定した気相部容積関係情報J1に上記電流量Iを当てはめることにより、気相部容積VAを取得する(S170)。そして、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くことで液相部容積VLを算出して、この液相部容積VLを、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとして、燃料計に表示する(S180)。
次に、車両燃料システム1における燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定例を示す。
燃料タンク10の容積VTが100Lであり、上述した内容量推定処理1において、気相部温度T1が25.0℃、閉塞部分空間温度T2が25.0℃で、予め定められた気体量ΔVm(0.5L)が気相部17に押し込まれたときに、電磁コイル41に供給された電流量Iが1.250Aだったものとする。
このとき、気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2により図4に示す気相部容積関係情報J1が特定される。そして、この気相部容積関係情報J1に上記電流量Iを当てはめると、気相部容積VAが20Lとして取得される。そして、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くと、液相部容積VL、即ち、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLは、
VL=100−20=80L
となる。このようにして、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLを推定する。
本実施形態の車両燃料システム1は、燃料タンク10と、燃料タンク10内にある燃料Fの液量VLを推定する液量推定装置6と、を有している。液量推定装置6は、燃料タンク10内の気相部17と連通するように当該燃料タンク10に接続された気密シリンダ20と、気密シリンダ20内に移動可能に設けられたピストン30と、ピストン30に固定して設けられたマグネット35と、マグネット35に磁力を及ぼすように気密シリンダ20に固定して設けられた電磁コイル41と、電磁コイル41に対して、気密シリンダ20内の予め定められた量(気体量ΔVm)の気体を気相部17に押し込むようにピストン30を移動させる磁力を発生させる電流を供給するコイル電源部42と、燃料タンク10内の気相部17の温度(気相部温度T1)を測定する第1温度センサ51と、気密シリンダ20内におけるピストン30で区画された2つの部分空間のうち燃料タンク10内の気相部17と連通されていない閉塞部分空間23の温度(閉塞部分空間温度T2)を測定する第2温度センサ52と、電磁コイル41に供給された電流量を測定する電流計43と、気相部17に押し込まれた予め定められた気体量ΔVm、及び、電磁コイル41に供給された電流量I、気相部温度T1、及び、閉塞部分空間温度T2、に基づいて、液量VLを推定する内容量推定手段としてのCPU62と、を有している。
本実施形態では、外部から内部空間が断絶された気密シリンダ20が燃料タンク10内の気相部17に連通して接続されているので、気密シリンダ20内と気相部17との圧力差を無しに又は小さくできる。また、気密シリンダ20内にピストン30が設けられて当該気密シリンダ20内の空間がピストン30によって2つの部分空間(閉塞部分空間23、連通部分空間24)に区画されているところ、このピストン30は気密シリンダ20内を移動可能に設けられているので、これら閉塞部分空間23、連通部分空間24の間は互いに完全に気密されたものではなく、そのため、これら閉塞部分空間23、連通部分空間24の圧力差は小さいものとなる。これにより、小さな力で、気密シリンダ20内において燃料タンク10に気体を押し込むようにピストン30を移動させることができる。
また、ピストン30には、マグネット35が固定して設けられており、気密シリンダ20には、マグネット35に及ぼす電磁コイル41が設けられている。そして、コイル電源部42が、気密シリンダ20内の予め定められた量(気体量ΔVm)の気体を気相部17に押し込むようにピストン30を移動させる磁力を発生させる電流を、電磁コイル41に供給する。そして、CPU62が、気相部17に押し込まれた予め定められた気体量ΔVm、電流計43によって測定された電磁コイル41に供給された電流量I、第1温度センサ51によって測定された気相部温度T1、及び、第2温度センサ52によって測定された閉塞部分空間温度T2に基づいて、燃料タンク10内の液量VLを推定する。
即ち、電磁コイル41に電流を供給することにより生じた磁力によってピストン30を移動して気密シリンダ20内の予め定められた量(気体量ΔVm)の気体を容器の気相部17に押し込んだとき、気相部容積VAが小さいほど(即ち、燃料タンク10の液量VLが大きいほど)、気体押し込み後の気相部17の圧力が高くなり、気相部17の圧力が高いほどピストン30の移動により強い力が必要となり、ピストン30の移動に強い力が必要なほど電磁コイル41により多くの電流を供給する必要があるので、即ち、燃料タンク10の液量VLが大きいほど電磁コイル41により多くの電流を供給することになる。つまり、液量VLに応じて電磁コイル41に供給する電流量が変化するので、この電流量を測定して燃料タンク10の液量VLを推定する。
また、燃料タンク10内の気相部17の温度(気相部温度T1)を測定する第1温度センサ51と、気密シリンダ20内におけるピストン30で区画された2つの部分空間のうち燃料タンク10内の気相部17と連通されていない閉塞部分空間23の温度を測定する第2温度センサ52と、を更に有し、CPU62が、ピストン30によって気相部17に押し込まれた気体量ΔVm、電磁コイル41に供給された電流量I、第1温度センサ51によって測定された気相部温度T1、及び、第2温度センサ52によって測定された閉塞部分空間温度T2に基づいて、燃料タンク10内の液量VLを推定する。
以上より、本実施形態によれば、電磁コイル41に電流を供給することにより生じた磁力によってピストン30を移動して、気密シリンダ20内の予め定められた量(気体量ΔVm)の気体を気相部17に押し込むところ、気密シリンダ20内におけるピストン30で区画された2つの部分空間(閉塞部分空間23、連通部分空間24)の圧力差を小さくすることができるので、小さな力でピストン30を移動させることができ、そのため、装置を小型化することができる。また、電磁コイル41に供給された電流量Iを測定して燃料タンク10の液量VLを推定するので、圧力計を用いた構成に比べて、電流計等を用いた簡易な構成で高い分解能での測定が可能となり、液量VLを精度良く測定できる。
また、ピストン30によって気相部17に押し込まれた気体量ΔVm、及び、電磁コイル41に供給された電流量I、に加えて、さらに気相部温度T1、及び、閉塞部分空間温度T2を用いて燃料タンク10の液量VLを推定するので、気相部温度T1を用いることにより当該気相部17の圧力変化を考慮するとともに、閉塞部分空間温度T2を用いることによりピストン30の移動を妨げる力の変化を考慮して、液量VLを推定でき、そのため、液量VLをさらに精度良く測定できる。
また、車両燃料システム1は、上述した液量推定装置6を有しているので、装置を小型化することによりシステムを小型化することができるとともに、液量VLを精度よく推定できる。
(実施形態2)
以下、本発明の内容量推定システムの第2の実施形態である車両燃料システムを、図7〜図10を参照して説明する。
図7に示すように、車両燃料システム(図中、符号2で示す)は、容器としての燃料タンク10と、燃料タンク10内の燃料Fの液量を推定する内容量推定装置としての液量推定装置6Aと、を有している。
なお、実施形態2では、上述した実施形態1の液量推定装置6において、電流計43に代えて流量計44を有する点、図4、図5に示す気相部容積関係情報J1に代えて図8、図9に示す気相部容積関係情報J2をメモリ65に格納している点、図6の内容量推定処理1に代えて図10の内容量推定処理2をCPU62が実行する点、が異なる以外は実施形態1と同一の構成であるので、上述した実施形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
液量推定装置6Aは、電磁コイル41とコイル電源部42とを直接接続し、そして、配管29に当該配管29を流れる気体の流量を測定する気体量測定手段としての流量計44を有している。
流量計44は、例えば、超音波式流量計や熱線式流量計、羽根車式流量計などの周知の流量計であって、配管29に設けられており、当該配管29を流れる気体の流量を測定する。このような流量計は、僅かな流量(即ち、気体量)も測定可能であるとともに、流量の測定可能範囲も広い。流量計44は、制御部60に電気的に接続されており、測定した流量に応じた電気信号を制御部60に出力する。制御部60は、この電気信号に基づいて配管29を流れた気体量、即ち、気相部17に押し込まれた気体量ΔVを取得する。
制御部60が備えるメモリ65には、図8に一例を示す気相部容積関係情報J2が格納されている。
気相部容積関係情報J2は、気相部17が所定の温度(気相部温度T1)で且つ閉塞部分空間23が所定の温度(閉塞部分空間温度T2)の場合において、電磁コイル41に予め定められた量の電流(電流量Im)を供給することによりピストン30を移動させて気相部17に気体を押し込んだときの当該気相部に押し込まれた気体量(ΔV)と、そのときの燃料タンク10内のうち気相部17に対応する部分の容積(気相部容積VA)と、の関係を示す
この気相部容積関係情報J2は、予備計測やシミュレーションなどによって求めたデータテーブルや関数などであり、例えば、電流量Imを一定値として、気相部温度T1毎及び閉塞部分空間温度T2毎に、複数個設けられている。本実施形態では、図9に模式的に示すように、電流量Imを0.5A(固定値)として予め定めて作成した、気体量ΔVと気相部容積VAとの関係を示す気相部容積関係情報J2が、気相部温度T1が0.0℃〜35.0℃まで1.0℃毎に、且つ、閉塞部分空間温度T2が0.0℃〜35.0℃まで1.0℃毎に、複数個の格納されている。
次に、上述したCPU62が実行する本発明に係る処理(内容量推定処理2)の一例を、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1Aに電源が供給されて制御部60のCPU62が動作を開始し、CPU62は、所定の初期化処理を実行する。そして、CPU62は、初期化処理が終了した後に、例えば、一定周期などの所定のタイミングで、図3のフローチャートに示すステップT110に進む。
ステップT110〜T140までは、上述した実施形態1のステップS110〜S150と同一であるので説明を省略する。
ステップT150では、ピストン30を下壁部20bに向けて移動させるための制御信号を、コイル電源部42に送出する。コイル電源部42は、受信した制御信号に応じて、電磁コイル41に所定の一方向に流れる予め定められた量(電流量Im)の電流を供給する。そして、ステップT160に進む。
ステップT160では、流量計44から出力された電気信号に基づいて、流量計44によって測定された流量を取得する。この流量は、電磁コイル41に予め定められた量(電流量Im)の電流を供給した際に、ピストン30によって気相部17に押し込まれた気体量ΔVを示している。そして、ステップT170に進む。
ステップT170では、ステップT130で取得した気相部温度T1、ステップT140で取得した閉塞部分空間温度T2、ステップT160で取得した気体量ΔV、及び、予め定められた電流量Imに基づいて、燃料タンク10の容積VTのうち気相部17に対応する部分の容積(気相部容積VAという)を取得する。
具体的には、気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2によって特定される気相部容積関係情報J2に、上記気体量ΔVを当てはめることにより、この気相部容積関係情報J2から気相部容積VAを取得する。なお、気相部容積関係情報J2は、電磁コイル41に供給された電流量が予め定められた上記電流量Imであるものとして予め作成されているので、電流量Imについても気相部容積VAを取得するパラメータとして間接的に用いられている。
気相部容積VAの取得の一例を示すと、電磁コイル41に供給された電流量Imが0.5A、気相部温度T1が25.0℃、閉塞部分空間温度T2が25.0℃のとき、気相部容積関係情報J2として図8に示すものが特定され、そして、電磁コイル41に電流量Iの電流が供給されたときに気相部17に押し込まれた気体量ΔVmが0.2100Lとなったとすると、上記気相部容積関係情報J2から、気相部容積VAを68Lとして取得する。そして、ステップT180に進む。
ステップT180は、上述した実施形態1のステップS180と同一であるので説明を省略する。
上述したステップT170、T180が、請求項中の内容量推定手段に相当する。
次に、上述した車両燃料システム1Aにおける本発明に係る動作例について説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1Aは動作を開始して、周期的(例えば、1分毎)に燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定を行う。
この液量VLの推定において、まず、ピストン30を所定の押込前位置P1に移動させたのち(T110)、気密シリンダ20内の閉塞部分空間23と連通部分空間24との圧力差が解消するまで待つ(T120)。そして、気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2を測定したのち(T130、T140)、電磁コイル41に予め定められた量(電流量Im)の電流を供給する(T150)。そして、ピストン30が移動することにより気相部17に押し込まれた気体量ΔVを取得する(T160)。
そして、メモリ65に記憶された複数の気相部容積関係情報J2の中から気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2によって1つの気相部容積関係情報J2を特定して、この特定した気相部容積関係情報J2に上記気体量ΔVを当てはめることにより、気相部容積VAを取得する(T170)。そして、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くことで液相部容積VLを算出して、この液相部容積VLを、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとして、燃料計に表示する(T180)。
次に、車両燃料システム1Aにおける燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定例を示す。
燃料タンク10の容積VTが100Lであり、上述した内容量推定処理2において、気相部温度T1が25.0℃、閉塞部分空間温度T2が25.0℃で、予め定められた電流量Im(0.5A)が電磁コイル41に供給されたときに、気相部17に押し込まれた気体量ΔVが0.2050Lだったものとする。
このとき、気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2により図8に示す気相部容積関係情報J2が特定される。そして、この気相部容積関係情報J2に上記気体量ΔVを当てはめると、気相部容積VAが20Lとして取得される。そして、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くと、液相部容積VL、即ち、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLは、
VL=100−20=80L
となる。このようにして、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLを推定する。
本実施形態の車両燃料システム1Aは、燃料タンク10と、燃料タンク10内にある燃料Fの液量VLを推定する液量推定装置6Aと、を有している。液量推定装置6Aは、燃料タンク10内の気相部17と連通するように当該燃料タンク10に接続された気密シリンダ20と、気密シリンダ20内に移動可能に設けられたピストン30と、ピストン30に固定して設けられたマグネット35と、マグネット35に磁力を及ぼすように気密シリンダ20に固定して設けられた電磁コイル41と、電磁コイル41に対して、気密シリンダ20内の気体を気相部17に押し込むようにピストン30を移動させる磁力を発生させる予め定められた量(電流量Im)の電流を供給するコイル電源部42と、燃料タンク10内の気相部17の温度(気相部温度T1)を測定する第1温度センサ51と、気密シリンダ20内におけるピストン30で区画された2つの部分空間のうち燃料タンク10内の気相部17と連通されていない閉塞部分空間23の温度(閉塞部分空間温度T2)を測定する第2温度センサ52と、気相部17に押し込まれた気体量ΔVを測定する流量計44と、気相部17に押し込まれた気体量ΔV、電磁コイル41に供給された予め定められた電流量Im、気相部温度T1、及び、閉塞部分空間温度T2、に基づいて、液量VLを推定する内容量推定手段としてのCPU62と、を有している。
本実施形態では、外部から内部空間が断絶された気密シリンダ20が燃料タンク10内の気相部17に連通して接続されているので、気密シリンダ20内と気相部17との圧力差を無しに又は小さくできる。また、気密シリンダ20内にピストン30が設けられて当該気密シリンダ20内の空間がピストン30によって2つの部分空間(閉塞部分空間23、連通部分空間24)に区画されているところ、このピストン30は気密シリンダ20内を移動可能に設けられているので、これら閉塞部分空間23、連通部分空間24の間は互いに完全に気密されたものではなく、そのため、これら閉塞部分空間23、連通部分空間24の圧力差は小さいものとなる。これにより、小さな力で、気密シリンダ20内において燃料タンク10に気体を押し込むようにピストン30を移動させることができる。
また、ピストン30には、マグネット35が固定して設けられており、気密シリンダ20には、マグネット35に磁力を及ぼす電磁コイル41が設けられている。そして、コイル電源部42が、気密シリンダ20内の気体を燃料タンク10内の気相部17に押し込むようにピストン30を移動させる磁力を発生させる予め定められた量(電流量Im)の電流を電磁コイル41に供給する。そして、CPU62が、流量計44によって測定された気相部17に押し込まれた気体量ΔV、電磁コイル41に供給された予め定められた電流量Im、第1温度センサによって測定された気相部温度T1、及び、第2温度センサによって測定された閉塞部分空間温度T2に基づいて、燃料タンク10内の液量VLを推定する。
即ち、電磁コイル41に予め定められた量(電流量Im)の電流を供給することにより生じた磁力によってピストン30を移動して気密シリンダ20内の気体を気相部17に押し込んだとき、気相部容積VAが小さいほど(即ち、燃料タンクの液量VLが大きいほど)、気体押し込み後の気相部17の圧力が高くなり、気相部17の圧力が高いほどピストン30の移動が妨げられて当該ピストン30の移動量が小さくなり、ピストン30の移動量が小さいほど気相部17に押し込まれた気体量ΔVが小さくなるので、即ち、燃料タンク10の液量VLが大きいほど気相部17に押し込まれた気体量ΔVが小さくなる。つまり、液量VLに応じて気相部17に押し込まれた気体量ΔVが変化するので、この気体量ΔVを測定して燃料タンク10内の液量VLを推定する。
また、燃料タンク10内の気相部17の温度(気相部温度T1)を測定する第1温度センサ51と、気密シリンダ20内におけるピストン30で区画された2つの部分空間のうち燃料タンク10内の気相部17と連通されていない閉塞部分空間23の温度(閉塞部分空間温度T2)を測定する第2温度センサ52を更に有し、CPU62が、ピストン30によって燃料タンク10内の気相部17に押し込まれた気体量ΔV、電磁コイル41に供給された電流量Im、第1温度センサ51によって測定された気相部温度T1、及び、第2温度センサ52によって測定された閉塞部分空間温度T2に基づいて、燃料タンク10内の液量VLを推定する。
以上より、本実施形態によれば、電磁コイル41に予め定められた量(電流量Im)の電流を供給することにより生じた磁力によってピストン30を移動して、気密シリンダ20内の気体を気相部17に押し込むところ、気密シリンダ20内におけるピストン30で区画された2つの部分空間(閉塞部分空間23、連通部分空間24)の圧力差を小さくすることができるので、小さな力でピストン30を移動させることができ、そのため、装置を小型化することができる。また、気相部17に押し込まれた気体量ΔVを用いて燃料タンク10内の液量VLを推定するので、圧力計を用いた構成に比べて、流量計等を用いた簡易な構成で高い分解能での測定が可能となり、液量VLを精度良く推定できる。
また、ピストン30によって気相部17に押し込まれた気体量ΔV、及び、電磁コイル41に供給された電流量Im、に加えて、さらに気相部温度T1、及び、閉塞部分空間温度T2を用いて燃料タンク10の液量VLを推定するので、気相部温度T1を用いることにより当該気相部17の圧力変化を考慮するとともに、閉塞部分空間温度T2を用いることによりピストン30の移動を妨げる力の変化を考慮して、液量VLを推定でき、そのため、液量VLをさらに精度良く測定できる。
上述した実施形態1では、気相部17に押し込まれた気体量ΔVm、及び、電磁コイル41に供給された電流量I、に加えて、さらに気相部温度T1、及び、閉塞部分空間温度T2を用いて、燃料タンク10の液量VLを推定する構成であったが、これに限定されるものではない。
例えば、気相部温度T1のみ変化し、閉塞部分空間温度T2が変化しない環境であれば、上述した第1温度センサ51のみ設け、第2温度センサ52を設けない構成とする。そして、気相部容積関係情報J1を閉塞部分空間温度T2が一定となるものとして作成する。この場合、複数の気相部容積関係情報J1は、図5において手前−奥方向に1列に並ぶもののみとなる。そして、図6のフローチャートにおいて、ステップS140を省略するとともに、ステップS170で気相部温度T1のみを用いて気相部容積関係情報J1を特定する。このような構成では、燃料タンク10内の気相部17に押し込まれた気体量ΔVm、電磁コイル41に供給された電流量I、及び、気相部温度T1に基づいて、燃料タンク10の液量VLを推定するので、例えば、燃料タンク10の周囲の温度変化により気相部17の温度変化が生じて当該気相部17の圧力が変化してしまう環境でも、気相部温度T1を用いることにより当該気相部17の圧力変化を考慮して液量VLを推定でき、そのため、液量VLをより精度良く推定できる。
または、閉塞部分空間温度T2のみ変化し、気相部温度T1が変化しない環境であれば、上述した第2温度センサ52のみ設け、第1温度センサ51を設けない構成とする。そして、気相部容積関係情報J1を気相部温度T1が一定となるものとして作成する。この場合、複数の気相部容積関係情報J1は、図5において左右方向に1列に並ぶもののみとなる。そして、図6のフローチャートにおいて、ステップS130を省略するとともに、ステップS170で閉塞部分空間温度T2のみを用いて気相部容積関係情報J1を特定する。このような構成では、燃料タンク10内の気相部17に押し込まれた気体量ΔVm、電磁コイル41に供給された電流量I、及び、気密シリンダ20内の閉塞部分空間温度T2に基づいて、燃料タンク10内の液量VLを推定するので、ピストン30の移動により閉塞部分空間23が拡張されて気圧が低下してピストン30にその移動を妨げる力が生じる環境においては、この力が閉塞部分空間23の温度によって変化してしまうが、閉塞部分空間温度T2を用いることによりピストン30の移動を妨げる力の変化を考慮して液量VLを推定でき、そのため、液量VLをより精度良く推定できる。
または、気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2がともに変化しない環境であれば、上述した第1温度センサ51及び第2温度センサ52を設けない構成とする。そして、気相部容積関係情報J1を気相部温度T1及び閉塞部分空間温度T2が一定になるものとして作成する。この場合、気相部容積関係情報J1は1つのみとなる。そして、図6のフローチャートにおいて、ステップS130、S140を省略する。また、気相部容積関係情報J1は1つのみとなるので、複数の気相部容積関係情報J1から1つの気相部容積関係情報J1を特定する処理は不要となる。このような構成では、より簡易に燃料タンク10の液量VLを推定できる。なお、上記実施形態2においても同様である。
また、上述した各実施形態では、移動検出スイッチ36をプッシュスイッチで構成するものであったが、これに限定するものではなく、移動検出スイッチ36を、例えば、マグネット35が接近したことを検知するように配置されたマグネットスイッチで構成するなど、本発明の目的に反しない限り、移動検出スイッチ36の種類は任意である。
また、上述した各実施形態では、電磁コイル41が、気密シリンダ20の周壁20cに設けられた構成であったが、これに限定するものではなく、例えば、電磁コイルを気密シリンダ20の上壁部20aの内面又は下壁部20bの内面に、気密シリンダ20と軸が平行になるように設けた構成など、ピストン30に設けられたマグネット35に磁力を及ぼすように設けられていれば、本発明の目的に反しない限り、その配置及び構成は任意である。
また、上述した各実施形態では、磁性部材としてのマグネット35がピストン30に設けられ、磁力発生コイルとしての電磁コイル41が気密シリンダ20に設けられた構成であったが、これに限定されるものではなく、例えば、マグネット35が、その内周面を気密シリンダ20の周壁20cの外面に重ねるようにして気密シリンダ20に同軸に設けられ、電磁コイル41が、ピストン30の円柱突部32の外周面に当該円柱突部32と同軸に固定して設けられていてもよく、本発明の目的に反しない限り、マグネット35及び電磁コイル41の配置は任意である。
また、磁性部材としてピストン30にマグネット35が設けられた構成であったが、これに限定されるものではなく、例えば、マグネットに代えて鉄等の強磁性体を取り付けるなど、電磁コイル41の磁力が及ぶ磁性部材であれば、本発明の目的に反しない限り、その構成は任意である。
また、上述した実施形態1においては、燃料タンク10が直方体の箱形状に形成されたものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、図11に示す車両燃料システム1Bのように、上述した燃料タンク10に代えて、第1タンク部分101、第2タンク部分102からなる燃料タンク10Aを用いてもよい。第1タンク部分101と第2タンク部分102とには、それぞれ気相部17と液相部18があり、管路103によって気相部17同士が接続され、管路104によって液相部18同士が接続されている。本発明によれば、このような複雑な形状の燃料タンク10Aを用いた場合においても、燃料タンク10A内の燃料Fの液量VLを正確に推定することができる。なお、上記実施形態2においても同様である。
また、上述した各実施形態は、車両に搭載され、液化ガスを収容するとともにその液量を推定する車両燃料システムを説明するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、工場や家庭などに設置され、灯油やガソリン、各種薬液などを収容するとともにその液量を推定する液量推定システムなどであってもよく、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用する装置及びシステムは任意である。また、液量の推定対象となる液体についても、液化石油ガスに限らず、例えば、液体窒素、液体酸素、アンモニアのなどの工業用途の液化ガス、又は、常温常圧で液状となる燃料(灯油、ガソリン等)、各種薬液等、本発明の目的に反しない限り、その種類は任意である。
また、容器としてのタンク内の液量(内容量)の推定に限らず、例えば、ホッパーなどの容器内にある樹脂ペレット、木質ペレット、又は、粉砕ガラスなど粒状物や粉体等(以下、粒状物等という)の固体の内容量を測定するようにしても良い。この場合も、上述した本実施形態と同様に、容器内の気相部容積を算出して、容器の容積から気相部容積を差し引くことにより内容量を推定する。但し、粒状物等の固体はそれら間に空間が存在するため、当該空間が気相部容積に含まれることを考慮するとともに当該空間が粒状物等と共に占める体積を考慮して上述した各実施形態で示した内容量推定処理を適用することで、液量と同様に容器内の内容量を推定することができる。
具体的には、所定空間内に粒状物等を満量充填したときに粒状物等のみが上記所定空間内で占める体積割合がX%で且つ粒状物等を除く空間が上記所定空間内で占める体積割合が(100−X)%となる場合に、この粒状物等が収容される容器の容積をV、気相部容積をVAとすると、粒状物等及びそれら間の空間が上記容器内で占める内容量VSは、次式により求めることができる。
VS=(V−VA)/(X/100)
例えば、1.0m3の単位収容空間内に粒状物を満量充填したときに、当該粒状物が占める体積が0.8m3(80%)で且つ粒状物間の空間が占める体積が0.2m3(20%)となる場合に、この粒状物が収容される容器の容積を10.0m3とすると、上述した内容量推定処理を適用して気相部容積VAを求めたときに、気相部容積VAが9.2m3であれば、粒状物の内容量VSが容器の10分の1((10.0−9.2)/(80/100)=1.0m3)となり、気相部容積VAが6.0m3であれば、粒状物の内容量VSが容器の半量((10.0−6.0)/(80/100)=5.0m3)となり、気相部容積VAが2.0m3であれば、粒状物の内容量VSが容器の満量((10.0−2.0)/(80/100)=10.0m3)となる。また、このような粒状物や粉体に限らず、例えば、容器としての倉庫内の貨物量(内容量)を推定するなど、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用する装置及びシステムは任意であり、また、容器内の内容量の推定対象となる固体の種類、形状等は任意である。
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。