JP2014019780A - 繊維強化樹脂成形体および繊維強化樹脂シート - Google Patents

繊維強化樹脂成形体および繊維強化樹脂シート Download PDF

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Abstract

【課題】表面の平滑性を備えるとともに、強化繊維による強化効率に優れ、長繊維を利用した場合に比肩する疲労特性を与える繊維強化樹脂成形体を提供すること、および成形品として上記特性を発現可能であるとともに、圧縮成形時に優れた流動性を備える繊維強化樹脂シートを提供すること。
【解決手段】単繊維状に分散された強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂成形体であって、強化繊維の面内角度度数分布における10°刻みの相対度数の最大値Dmaxと最小値DminがDmax―Dmin≦0.08なる関係にあり、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して5lc以下、かつ繊維長lc〜5lcに占める強化繊維量の体積比率(Va)が40〜90%であり、強化繊維の面外角度の平均値が6°以下、平面部における厚さが1.5〜4mmである。
【選択図】なし

Description

本発明は、強化繊維と熱可塑性樹脂とからなる繊維強化樹脂成形体および繊維強化樹脂シートに関し、さらに詳しくは、面内に密に繊維が充填されることにより、優れた疲労特性並びに表面品位を与える繊維強化樹脂成形体、および成形品として上記特性を発現し、かつ成形時の流動性に優れる圧縮成形に適した繊維強化樹脂シートに関する。
不連続の強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化プラスチックは、軽量性や力学特性に優れるとともに、複雑形状の成形品を製造できることから、各種産業用途に幅広く利用されている。中でも、プレス成形法により製造される繊維強化プラスチックは、成形品中に比較的長い繊維を残すことができ、かつ繊維含有量を高めた成形品を得ることができるため、力学特性への要求が高い、電子機器筐体や自動車用外装部材への適用が試みられてきた。一方、これと並行して、プレス成形法への適用性を高め、上記の利点を好ましく引き出しうる成形材料について、研究開発が盛んに行われてきた。
例えば、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とを互いに交絡させてなるマット基材は、良く知られるプレス成形用の成形材料の一つである。特許文献1には、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とを絡ませた成形材料が示されるとともに、熱成形により繊維強化プラスチックを製造する方法が開示されている。また、特許文献2には、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維の分散を高めた成形材料が提案され、強度特性に優れた成形品が得られるとされている。しかしながら、いずれの成形材料にも共通して、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維が交絡するとの構成から、成形材料は嵩高である。そのため、成形材料の搬送中に繊維が脱落したり、成形材料によれを生じたりするなど、成形時の取り扱い性が良いとは言い難かった。加えて、圧縮した際の実厚みが小さいため、厚肉の成形品を得る場合には多量の積層を必要とし、作業労力の増大やそれに伴うコスト高が問題である。
一方、特許文献3には、強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸せしめた成形材料が開示されている。これより、成形材料の取り扱い性が向上するとともに成形材料の嵩高さが解消され、厚肉部材の製造にも対応可能である。また、成形材料の面内において長繊維を各方向に等しく散りばめるとの構成から、不連続繊維強化プラスチックの実用上の課題であった強度並びに疲労強度特性は著しく改善される。しかし、特許文献3に開示された技術のままでは、成形材料としての加工性は乏しくなり、所望の形状を成形できない場合がある。また、本材料に成形体の表面に長繊維が浮き上がり、表面概観を損ねてしまうことも課題の一つである。
上記従来技術を鑑みるに、成形品としての優れた強度特性を保持しながら、表面品位や成形材料としての加工性をいかに改善しうるかとの点に、検討の余地がある。
特開1993−69441号公報 国際公開第2007/097436号パンフレット 特許第4862913号公報
Kelly A., Strong Solids, pp131(1966), Clarendon Press. 森井亨,日本複合材料学会誌 Vol.34 No.4, pp148-152(2008)
本発明の課題は、表面の平滑性に優れるとともに、長繊維を利用した場合に比肩する疲労強度特性を備えた繊維強化樹脂成形体を提供すること、および成形品として上記特性を発現可能し、かつ圧縮成形時に優れた流動性を備える繊維強化樹脂シートを提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。すなわち、
(i)単繊維状に分散された強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂成形体であって、強化繊維の面内角度度数分布における10°刻みの相対度数の最大値Dmaxと最小値DminがDmax―Dmin≦0.08なる関係にあり、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して5lc以下、かつ繊維長lc〜5lcに占める強化繊維量の体積比率(Va)が40〜90%であり、強化繊維の面外角度の平均値が6°以下、平面部における厚さが1.5〜4mmである、繊維強化樹脂成形体。
(ii)繊維長lc〜3lcに占める強化繊維量の体積比率(Vb)が40〜90%である、(i)に記載の繊維強化樹脂成形体。
(iii)繊維長2lc〜3lcに占める強化繊維量の体積比率(Vc)が30〜60%である、(i)または(ii)に記載の繊維強化樹脂成形体。
(iv)前記強化繊維の単繊維半径(rf)が0.5μm〜6μmである、(i)〜(iii)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
(v)前記熱可塑性樹脂の引張強度(σy)が25〜70MPaである、(i)〜(iv)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
(vi)強化繊維の体積含有率が10〜55%である、(i)〜(v)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
(vii)前期強化繊維と前記熱可塑性樹脂とに測定される界面接着力τintが、樹脂のせん断強度τyに対して0.7τy以上である、(i)〜(vi)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
(viii)前記繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量(Vv)と、ASTM D3039に基づく引張試験により破断した繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量(V1)との関係において、V1/Vv≦0.9である、(i)〜(vii)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
(ix)前記繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量(Vv)と、ASTM D3479に基づく引張疲労試験において10回耐力の負荷により破断した繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量(V2)との関係において、V2/Vv≦0.85Vvである、(i)〜(viii)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
(x)ASTM D3479に基づく引張疲労試験における10回耐力が100MPa〜300MPaである、(i)〜(ix)のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
(xi)強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸せしめた繊維強化樹脂シートであって、強化繊維の面内角度度数分布における10°刻みの相対度数の最大値Dmaxと最小値DminがDmax―Dmin≦0.08なる関係にあり、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して5lc以下、かつ繊維長lc〜5lcに占める強化繊維量(Va)の体積比率が50〜95%であり、かつ強化繊維の面外角度の平均値が6°以下、平面部における厚みが0.1〜1.5mmである、繊維強化樹脂シート。
(xii)前記強化繊維基材が単繊維状に分散した強化繊維から構成される、(xi)に記載の繊維強化樹脂シート。
(xiii)厚さ方向に押圧加工した強化繊維基材を用いることを特徴とする、(xi)または(xii)に記載の繊維強化樹脂シート。
(xiv)前記押圧加工における加圧力が3〜15MPaである、(xiii)に記載の繊維強化樹脂シート。
(xv)空隙率が10%以下である、(xi)〜(xiv)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
(xvi)軟化状態にある前記繊維強化樹脂シートのスプリングバック値が700%以下である、(xi)〜(xv)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
(xvii)軟化状態にある前記前記繊維強化樹脂シートの伸長率Kが250〜500%である、(xi)〜(xvi)のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
本発明の繊維強化樹脂成形体は、所定の長さ分布を有する単繊維状の強化繊維が、所定の面内角度分布を持って熱可塑性樹脂中に配置されることにより、長い強化繊維の間隙に、短い強化繊維が効率的に充填され、成形体の面外方向に配向する繊維量が効果的に抑制される.その結果、成形体表面の平滑性に優れるとともに、強化繊維による強化効率が高まり、疲労特性に優れた繊維強化樹脂成形体とできる.このことから、自動車、電気・電子機器、家電製品、または、航空機の用途に用いられる部品・部材に有用に供される。
また、本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸せしめたシート状物であって取り扱い性に優れるばかりか、シートの面内に密に強化繊維が充填されることにより、強化繊維間に作用するシート厚さ方向の干渉力が抑制される.これにより、成形時におけるシートの厚さ膨張が抑えられ成形安定性に優れるとともに、流動性に富む。繊維強化樹脂シートは、圧縮成形用の成形材料として繊維強化樹脂成形体の製造に好ましく利用できる。
樹脂中に強化繊維単繊維が埋め込まれた複合材料の模式図である。 繊維強化樹脂成形体における強化繊維の配置の様子を示す模式図である。 繊維強化樹脂成形体における強化繊維の配向の様子を示す模式図である。 繊維強化樹脂成形体の平面内における強化繊維の配置を示す模式図である。 繊維強化樹脂成形体の厚さ方向断面における強化繊維の配置を示す模式図である。 繊維強化樹脂成形体の厚さ方向断面における強化繊維断面の一例を示す模式図である。 繊維強化樹脂成形体にオフセット荷重が負荷されている様子を示す模式図である。 繊維強化樹脂シートの厚さ方向断面における強化繊維の配向を示す模式図である。 繊維強化樹脂シートの面内における繊維配置を示す模式図である。 繊維強化樹脂シートに用いた強化繊維基材の面内における繊維配置を示す模式図である。
以下、本発明の繊維強化樹脂成形体、および繊維強化樹脂シートについて詳細を説明する。
『繊維強化樹脂成形体』
本発明の繊維強化樹脂成形体は、単繊維状に分散された強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂成形体であって、強化繊維の面内角度度数分布における10°刻みの相対度数の最大値Dmaxと最小値DminがDmax―Dmin≦0.08なる関係にあり、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して5lc以下、かつ繊維長lc〜5lcに占める強化繊維量の体積比率(Va)が40〜90%であり、強化繊維の面外角度の平均値が6°以下、平面部における厚さが1.5〜4mmである。
本発明の繊維強化樹脂成形体における強化繊維は、単繊維状に分散されてなることを特徴とする。ここで、単繊維状とは、成形体中に強化繊維が均一に分散している様子を指す。分散の均一性は、次の分散パラメータを用いて評価することができる。成形体の厚さ方向の切断面において、無作為に100μm×100μmの領域を10ヶ所選定し、その各々の領域に含まれる強化繊維の本数をカウントする。i番目の観察領域におけるカウント数をAi(i=1〜10)と置き、Aiの平均値をA、Aiの標準偏差をSとし、分散パラメータB(%)を下式より求めた。
Figure 2014019780
分散パラメータが小さいほど、領域ごとにカウントされる繊維本数の変動が小さくなり、繊維配置の均一性が高いことを意味する。ここで、繊維強化樹脂成形体における分散パラメータは25%未満である。分散パラメータが25%以上であると、繊維が局所的に凝集していることを意味し、凝集部が弱部となり、破壊の起点となる場合がある。特に、成形体に振動荷重を負荷した場合には、繊維凝集部から破壊が進行し、破壊に至るまでのライフが極端に短くなる場合がある。分散パラメータの下限値については特に制限は無いが、一般的な下限値として5%を例示できる。
本発明で用いる臨界繊維長(lc)とは、繊維および樹脂の特性値から算出される値である。より詳しくは、繊維強化樹脂成形体の引張負荷において、引張方向に配向した強化繊維の長さがlc以上であると繊維に破断を生じ得るとの意味を持つ。lcのさらなる詳細や、具体的な誘導方法を述べた非特許文献1を開示する。本発明では非特許文献1と同様に、lc(μm)を下式で定義する。
Figure 2014019780
σf:強化繊維の引張強度(MPa)
rf:強化繊維の単繊維半径(μm)
τ:繊維側面に生じるせん断力(MPa)
ここで、強化繊維の単繊維半径とは、繊維主軸方向に対して垂直な繊維断面において該断面を内接する楕円の半長軸と半短軸の平均として与える。繊維断面が楕円形や繭形など真円でない場合には、上記単繊維半径は該断面を真円と見立てた際の半径値を近似的に与えるものである。以降では、半長軸を半短軸で序した値を繊維アスペクト比と呼称する。
ここにlcは、繊維強度が高まるほどに、あるいは単繊維半径が大きくなるほど増加する。ここで、もう一つの値であるτについて説明を加える。図1に示すように、樹脂中に繊維が埋め込まれた状況を想定し、繊維主軸方向に均一な負荷がかかっているとする。このとき、繊維側表面にせん断力τが生じる。これと対をなすように、樹脂に対して逆向き方向に同様の大きさのせん断力τが生じることとなる。したがって、τは、樹脂自体が許容できるせん断力と等価であり、すなわち樹脂のせん断強度τyに対応する値である。したがって、本発明では式(2)を下式(3)のように書き換えて用いる。
Figure 2014019780
さらに、樹脂の弾性変形を仮定すると、樹脂のせん断強度τy(MPa)と樹脂の引張強度σy(MPa)は、近似的に次なる関係にある。
Figure 2014019780
式(4)を式(3)に考慮し、下式を得る。
Figure 2014019780
式(5)におけるlcは、強化繊維と樹脂の間の力のやり取りを、いくつかの仮定のもとで簡略化した上で導かれたものであるため、実際にはlc以上の強化繊維に必ずしも破断を生じるという訳ではないが、強化繊維樹脂成形体における強化繊維の適切な長さ範囲を取り決める尺度として好ましく利用できる。
ここで、本発明の繊維強化樹脂成形体は、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して5lc以下である。強化繊維が5lcよりも長い場合には、成形体中における強化繊維の伸直性が失われ、強化繊維が持つ強化機能が十分に発揮されない場合がある。この観点から、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して4.5lc以下であることがより好ましく、4lc以下であることがさらに好ましい。
一方、伸直した強化繊維について言えば、短い繊維は長い繊維よりも強化効率が低くなる。したがって、繊維長による補強効果を効率的に引き出すため、所定長以上の繊維を定量含んでいることが重要である。すなわち、本発明の繊維強化樹脂成形体は繊維長lc〜5lcに占める強化繊維量の体積比率(Va)が40〜90%である。Vaが45〜85%であるとより好ましく、Vaが50〜80%であるとさらに好ましい。
特定の繊維長範囲に多くの強化繊維を含ませることにより、強化繊維の伸長性を高めつつ、繊維長による補強効果を効率的に利用した構成とすることもできる。すなわち、繊維強化樹脂成形体において、繊維長lc〜3lcに占める強化繊維量の体積比率(Vb)が40〜90%であることが好ましく、Vbが45〜80%であることがより好ましく、Vbが50〜70%であることがさらに好ましい。
加えて、lcよりも長い、特定の繊維長領範囲に強化繊維を集めることによって、強化繊維の補強効率がより高めた構成とすることもできる。すなわち、繊維強化樹脂成形体において、繊維長2lc〜3lcに占める強化繊維量の体積比率(Vc)が40〜60%であることが好ましい態様である。
繊維強化樹脂成形体中の強化繊維の長さを測る方法としては、成形体表面から顕微鏡等で繊維を覗いて長さを読み取る方法(直接法)や、繊維強化樹脂成形体から抽出された強化繊維に対して長さを測定する方法(抽出法)を例示できる。抽出法においては、成形体を空気中にて高温で加熱し、樹脂を焼き飛ばす方法を用いると良い。抽出した強化繊維を顕微鏡により観察し、繊維長とその分布を評価できる。なお、適切な評価が行われれば、直接法と抽出法による結果に有意な差異を生じることはない。
本発明の繊維強化樹脂成形体は、特定の面内角度と面外角度を持つ強化繊維が、成形体中に分散していることを特徴とする。強化繊維の面内角度および面外角度は、繊維強化樹脂成形体の平面部に含まれる強化繊維について定義される特性値である。なお、ここで言う平面部とは、繊維強化樹脂成形体の所定領域に対して、平坦な測定端子を持つマイクロメーターにて計測した部位ごとの厚さの最大値と最小値との差が0.1μm未満である領域のことを指す。強化繊維の面内角度および面外角度について、図を用いて説明を加える。
繊維強化樹脂成形体において、強化繊維は図2のように三次元的に配置されている。ここで、X、Y、Z軸からなる直交座標系を設ける。Z軸は繊維強化樹脂成形体の平面部に対して垂直角を為す(すなわち、X−Y平面は繊維強化樹脂成形体の上下面に対して平行である)。このとき、ある一本の強化繊維を抜き出したものが図3である。図3において、強化繊維の面外角度とは、強化繊維の主軸方向の延長線と平面X−Yの為す角θであり、0°〜90°の範囲をとる値である。また、強化繊維の面内角度とは、強化繊維の主軸方向の延長線をX−Y面に投影した投影線とX軸の為す角φであり、0°〜180°の範囲をとる値である。ここで、X軸方向をどの向きに取り決めておくかに応じて、φは異なった値を取り得る。そのため、後述する面内角度の相対度数分布の評価においては、X軸方向を統一した上で、各強化繊維についてφを特定する必要があることを述べておく。
本発明の繊維強化樹脂成形体は、強化繊維の面内角度の度数分布における10°刻みの相対度数の最大値Dmaxと最小値DminがDmax―Dmin≦0.08なる関係を満たす。Dmax―Dminが0.08よりも大きくなると、成形体の持つ力学的な等方性が失われ、その使途が制限を受ける場合がある。そのため、より好ましくはDmax―Dminが0.06以下であり、さらに好ましくはDmax―Dminが0.04以下である。繊維強化樹脂成形体中の強化繊維の面内角度は、その成形材料中の繊維配向に強く依存するので、後述する方法によって成形材料中の繊維角度を調節することにより、繊維強化樹脂成形体中の強化繊維の面内角度を好ましい範囲内に制御することができる。
強化繊維の面内角度を測定する方法としては特に制限は無いが、X線CTを用いて強化繊維の配置を調べる方法や、成形体の厚さ方向の垂直断面における繊維の分布を観察する方法が例示できる。さらには、繊維強化樹脂成形体より樹脂を焼き飛ばして繊維単体とした上で、強化繊維単繊維について面内角度を測定する方法なども例示できる。いずれの方法にしても、図4に示すように、強化繊維の主軸方向とX方向の角度φを測定すれば良く、X軸方向を揃えた上で各繊維について測定を行えば、方法による測定結果に差異を生じることは無い。
0°から180°まで角度10°刻み(18区間)の面内角度の相対度数分布は、i番目(i=1〜18)の面内角度の区間における相対度数Diは、i番目(i=1〜18)の面内角度の区間に測定された繊維本数をNiと、測定を行った全繊維本数Nallを利用し、次式にて算出する。
Figure 2014019780
この相対度数分布における最大値をDmax、最小値をDminとして求めた。
面内角度の相対度数分布における最大値と最小値の差は、角度区間を狭めるに伴い大きくなり、角度区間を大きくするに伴い小さくなる。これは、角度区間を狭めると、個々の面内角度の測定データの影響を強く受けるようになり、角度区間を大きくすると個々の測定データの持つ特徴が、いわゆる丸め誤差により平滑化されてしまうためである。したがって、強化繊維の面内配向の特徴を適切に評価するには、角度区間を8°〜12°に設定した上で、400本〜1000本の強化繊維に対して評価するのが好ましい。
さらに、本発明の繊維強化樹脂成形体は、強化繊維の面外角度の平均値が6°以下であることを特徴とする。
面外角度の平均値が大きいことは、成形体の厚さ方向に傾けられた繊維量が多いことを示す。すなわち、強化繊維すべき成形体の面内において、強化繊維による強化効率が減少することを意味する。加えて、成形体表面に強化繊維が突出することによる凹凸が生じ、表面品位をも損なう場合がある。このような観点から、強化繊維の面外角度の平均値が5.5°以下であることがより好ましく、さらに好ましくは4°以下である。
強化繊維の面外角度は、成形体表面に対する垂直断面から評価する方法を例示できる。図2の繊維強化樹脂成形体において、X−Z面に平行な成形体の断面を覗けば、繊維配置は図5のようになる。ここに見える繊維は、紙面奥行き方向(Y方向)の繊維の傾きに応じてその断面形状が変化する。図5における繊維断面を楕円で近似したものが図5中の10である。これらの繊維は、図2における角度φが90°に近く、楕円アスペクト比(=楕円長軸/楕円短軸)が小さい。対して、図5中の11に示される繊維は、図3における角度φが0°(あるいは180°)に近く、楕円アスペクト比が大きい。したがって、本繊維について言えば、該繊維主軸方向(楕円における長軸方向)とX軸との為す角度は、X−Y面と繊維主軸の為す角θ、すなわち面外角度とほぼ等しくなる。
単繊維の断面形状が真円に近い、すなわち、繊維アスペクト比が1.1以下である場合、楕円アスペクト比が20以上の強化繊維についてX方向と繊維主軸の為す角を測定し、これを面外角度として採用する方法を好ましく利用できる。こうすると、強化繊維が極小ながら持つ角度φによる検出誤差を低減しつつ、かつ効率的に、強化繊維の面外角度を測定できる。
測定に当たっては、図6中の13に示される強化繊維のように、必ずしも繊維の伸長性が保たれず、蛇行している場合もある。このような場合は、面外角度の測定精度を高めるに、屈曲箇所にて繊維を分断し、分断された繊維についてそれぞれ面外角度を算出すると良い。
一方、単繊維の断面形状が楕円形や繭形等であり、繊維アスペクト比が1.1より大きい場合には、成形体中で角度φ(図3)が90°に近い繊維においても、大きな楕円アスペクト比を示すようになる。そのため、成形体中でより大きな楕円アスペクト比を持つ強化繊維に注目し、面外角度を測定した方が良い。角度φが0°(あるいは180°)に近い繊維を抽出し、適切な面外角度を得るためには、繊維アスペクト比が1.1以上1.8未満の場合には楕円アスペクト比が30以上、繊維アスペクト比が1.8以上2.5未満の場合には楕円アスペクト比が40以上、繊維アスペクト比が2.5以上の場合には楕円アスペクト比が50以上の強化繊維を選び、面外角度を測定すると良い。
本発明の繊維強化樹脂成形体は、平面部における厚さが1.5mm〜4mmである。成形体の厚さが1.5mm未満であると、特に大面積の部材とした場合に、曲げ剛性の不足により満足な寸法安定性を得られない場合がある。一方、成形体の厚さが5mmよりも大きい圧肉部材にすると、その実利用において、図7に示すように成形体の厚さ方向に作用点がオフセットした偏心荷重を受けやすくなる。このような状況下では、成形体の面内に低荷重で割れを生じてしまう場合がある。したがって、成形体に均一な負荷力を作用させ、成形体が備える優れた疲労特性を引き出すとの点から、成形体の厚さが好ましくは1.8mm〜4.0mm、さらに好ましくは2.0mm〜3.0mmである。
本発明における強化繊維の種類に関しては特に制限はないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、金属繊維、天然繊維、鉱物繊維などが使用できる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。特に成形体の力学特性を高めるとの点からは、炭素繊維を好ましく利用できる。また、強化繊維を2種以上併用する場合は、その中で最も引張強度σfが高い強化繊維について、式(5)にてlcを算出した上で、本発明の繊維強化樹脂成形体の構成となるように諸特性値を所定の範囲内へ調整すると良い。σfが2000MPa以上であると、成形体中で強化繊維が受け持つ力を高めることができ、成形体の疲労耐性を高める観点から好ましい。
一方、強化繊維の単繊維半径(rf)も、繊維強化樹脂成形体の特性を特徴づける上で重要な意味を持つ。rfが大きい場合には、式(5)から読みとれるように、臨界繊維長lcは長くなる。すなわち、成形体中の繊維長範囲はより長繊維側となる。先に述べたように、長繊維は伸直性に劣ることがあり、その強化効率に乏しくなる場合がある。一方、rfが小さい場合には、強化繊維の断二次モーメントが小さくなることに起因して、強化繊維単繊維の曲げ剛性が小さくなる。すなわち、長繊維の場合と同様に、繊維の伸直性に劣ることとなる。したがって、繊維の伸直性を保持しつつ、その強化効率を高めるためには、強化繊維の単繊維半径(rf)が0.5μm〜6μmであることが好ましく、0.8μm〜5μmであることが好ましく、1.0μm〜4μmであることがさらに好ましい。
本発明における熱可塑性樹脂に関しては、その種類に特に制限はないが、例えば、「ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィンや、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などのポリアリーレンスルフィド、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、液晶ポリマー(LCP)」などの結晶性樹脂、「スチレン系樹脂の他、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート(PAR)」などの非晶性樹脂、その他、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系樹脂、およびアクリロニトリル系等の熱可塑エラストマー等や、これらの共重合体および変性体等から選ばれる熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、得られる成形品の軽量性の観点からはポリオレフィンが好ましく、強度の観点からはポリアミドが好ましく、耐熱性の観点からポリフェニレンスルフィドを好ましく利用できる。
なお、所定の範囲内の引張強度値(σy)を持つ熱可塑性樹脂を用いることで、繊維強化樹脂成形体の疲労特性を効果的に高めることもできる。σyが小さいということは、式(5)から読みとれるように、より長い臨界繊維長lcを必要とする。先に述べたように長い強化繊維は伸直性に劣ることがあり、その強化効率に乏しくなる場合がある。一方、熱可塑性樹脂単体の特性として、引張強度値σyが大きくなると、樹脂の延性に乏しくなる傾向にある。このような樹脂を利用した場合、樹脂の伸度不足に起因して、強化繊維の強化効率に劣る場合がある。したがって、強化効率を効果的に高めるとの観点から、σyは25〜90MPaであることが好ましく、30〜85MPaであることがより好ましく、40〜80MPaであることがさらに好ましい。
繊維強化樹脂成形体の力学特性を調節するには、成形体に含まれる強化繊維の体積含有率を所定の範囲内にする方法を好ましく利用できる。ここで言う強化繊維の体積含有率とは、繊維強化樹脂成形体の体積に対して、強化繊維の体積が占める体積比率(%)であり、10〜55%であることが好ましく、15〜40%であることがより好ましい。強化繊維の体積含有率が高すぎる場合には、強化繊維の間隙を樹脂で埋めることができず空隙となり、繊維量に見合う力学特性が得られない場合がある。
不連続の繊維が散りばめられた樹脂材料において、繊維の載荷は、図1に示したように、界面を介して樹脂から繊維側表面へせん断力が伝達されることにより生じる。したがって、繊維と樹脂との界面の接着力が弱く、界面にはく離を生じた場合には、もはや繊維へ力が伝達されず、強化繊維の強化効率が著しく低下する場合がある。したがって、本発明の繊維強化樹脂成形体においては、強化繊維と熱可塑性樹脂とに測定される界面接着力τintが、樹脂のせん断強度τyに対して0.7τy以上であることが好ましく、0.8τyであることがさらに好ましい。界面接着力を好ましい範囲内とすることで、界面におけるはく離が効果的に抑制され、疲労特性に優れた成形体が得られる。τintの上限値には特に制限は無いが、一般的にτyを例示できる。
本発明における繊維強化樹脂成形体において、その引張負荷下における強化繊維の強化効率は、引張破壊後の試験片について測定される残存繊維長を調べることにより、定量的に評価できる。ここで、強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量をVv、ASTM D3039に基づく引張試験により破断した繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量V1とおけば、その強化効率は、V1/Vvにて与えられる。V1/Vvが1であることは成形体の引張負荷において強化繊維が破断していないことを意味する。V1/Vvが小さくなるほどに強化繊維の破断が顕著となり、強化繊維の強化効率に優れていることを意味する。ここに、V1/Vvが0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがさらに好ましく、0.7以下であることがとりわけ強化効率に優れる態様として例示できる。V1/Vvの下限値には特に制限は無いが、一般的に0.4を例示できる。
一方、振動荷重に晒されることにより破壊した試験片について測定される残存繊維長を調べることで、疲労負荷下における強化繊維の強化効率を測ることもできる。すなわち、繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量をVv、ASTM D3479に基づく引張疲労試験において10回耐力の負荷により破断した繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量V2とおけば、疲労負荷下における強化繊維の強化効率は、V2/Vvにて与えられる。V2/Vvが小さくなるほどに強化繊維の破断が顕著となり、強化繊維の強化効率に優れていることを意味する。ここに、V2/Vvが0.85以下であることが好ましく、0.80以下であることがさらに好ましく、0.75以下であることが、とりわけ強化効率に優れる態様として例示できる。V2/Vvの下限値には特に制限は無いが、一般的に0.5を例示できる。
引張疲労試験はASTM D3479(2007)に準拠して行う。繊維強化樹脂成形体から切り出した試験片に、室温にて周波数10Hzの正弦波の荷重振動を与えた。試験における応力比(=最大応力/最小応力)を0.1となるように設定し、一つの試験片に対して試験片が破断するまでのサイクル数を評価した。最大応力を段階的に変えた試験を順次繰り返すことにより、最大応力と破断サイクル数の関係(いわゆるS−N線図)を評価した。本明細における10耐力は、S−N線図において試験片が10±10サイクルの範囲内で破壊したときの、試験片に負荷した正弦荷重における最大応力と定義する。
本発明の繊維強化樹脂成形体の重要な特徴は、強化繊維の配向および長さが特定の範囲内へと調節されることにより、強化繊維の強化効率が引き出され、疲労負荷における10耐力に優れることである。ここに、ASTM D3479に基づく引張疲労試験における10回耐力が100MPa〜300MPaであることが、本発明の繊維強化樹脂成形体の好ましい態様として例示できる。
繊維強化樹脂成形体は、成形材料を用いて圧縮成形法により製造されることが好ましい。成形時に圧縮力が作用すると、成形体の厚さ方向の強化繊維の反発が抑えられるとともに、比較的長い強化繊維の間隙に短繊維の強化繊維が緻密に充填されるようになり、強化繊維の面外配向が抑制される。その結果、成形体の力学特性が効果的に引き出される。
圧縮成形法の好ましい態様として、例えば成形型を用いたスタンピングプレス成形法を例示できる。雌雄一対として用いられ成形型内に、予め加熱され、熱可塑性樹脂が軟化状態にある成形材料を搬送する。しかる後、直ちに成形型を閉じて加圧し、成形型を冷却することにより、成形体を得ることが可能である。
強化繊維の面外配向を抑制するとの観点からは、圧縮成形法における面圧を3MPa〜30MPaとすることが好ましく、8MPa〜20MPaであることがより好ましく、10MPa〜15MPaであることがさらに好ましい。ここで、面圧とは金型に印加された圧縮荷重を、成形体と金型との接触面積で除すことにより得られる値である。
『繊維強化樹脂シート』
本発明の繊維強化樹脂シートは、圧縮成形用の成形材料であって、上記繊維強化樹脂成形体の特徴を備える成形品の製造に好ましく利用できる。
本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸せしめた繊維強化樹脂シートであって、強化繊維の面内角度度数分布における10°刻みの相対度数の最大値Dmaxと最小値DminがDmax―Dmin≦0.08なる関係にあり、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して5lc以下、かつ繊維長lc〜5lcに占める強化繊維量(Va)の体積比率が50〜95%であり、かつ強化繊維の面外角度の平均値が6°以下、平面部における厚みが0.1〜1.5mmである。
本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸させてなることを特徴とする。含浸状態の指標にはシート中の空隙率を利用することができる。取り扱い性の観点からは、繊維強化樹脂シートは、空隙率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることが好ましく、1%以下であることがとりわけ好ましい。空隙率の下限には特に制限は無いが、一般に0.01%を例示できる。
空隙率の測定方法としては、繊維強化樹脂シートの切断面を研磨し、空隙の大きさを測る方法を例示できる。すなわち、繊維強化樹脂シートの観察領域の面積をUall、観察領域に含まれる空隙の総面積をUvoidとおけば、該観察面における空隙率Vvoid(%)を下式により評価できる。
Figure 2014019780
本発明の繊維強化樹脂シートに用いる強化繊維基材としては、強化繊維をシート状、布帛状またはウェブ状などの形態に加工した基材を好ましく利用できる。
ここで、成形体の力学特性を高める上では、強化繊維基材が単繊維状に分散した強化繊維から構成されることが好ましい。このような強化繊維基材を利用することで、繊維強化樹脂シート、引いては繊維強化樹脂成形体中の強化繊維の分散が保たれるようになる。強化繊維基材の製造方法に関して、強化繊維が単繊維状に十分に分繊されるという点から、分散媒中に強化繊維を投入し、攪拌することにより、強化繊維が開繊されたスラリーを得た後、紙を抄くようにして強化繊維不織布を得る湿式法を好ましく利用できる。さらには、強化繊維の単繊維同士が有機化合物で目留めされた基材とすると、ハンドリングしやすい。
強化繊維基材に用いる強化繊維の種類としては、上述した繊維強化樹脂成形体に用いた強化繊維と同様の強化繊維を好ましく利用することができる。
繊維強化樹脂シートに含まれる熱可塑性樹脂の種類としては、上述した繊維強化樹脂成形体に用いた熱可塑性樹脂と同様の熱可塑性樹脂を好ましく利用することができる。
繊維強化樹脂成形体の力学特性を等方性とする観点から、本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維の面内角度度数分布における10°刻みの相対度数の最大値Dmaxと最小値DminがDmax―Dmin≦0.08である。Dmax―Dminが0.08よりも大きくなると、繊維強化樹脂成形対の力学的な等方性が失われるばかりか、成形体の製造時において繊維強化樹脂シートの流動性にも異方性を生じるようになり、所望の形状の成形品を得ることが困難となる場合がある。そのため、より好ましくはDmax―Dminが0.06以下であり、さらに好ましくはDmax―Dminが0.04以下である。
繊維強化樹脂シート中の強化繊維の面内角度の相対度数分布を適切な範囲内とするには、前記強化繊維基材における繊維の配向方向を調整することにより達成される。例えば、湿式法による強化繊維基材の製造においては、分散媒に強化繊維が分散されたスラリーの流れをコントロールするする方法が有効である。スラリーに流れがある場合、強化繊維はスラリーの流れ方向に配向している。すなわち、スラリー中を無作為に攪拌し、スラリーの流れを乱した上で、スラリーから強化繊維を濾し取ることにより、強化繊維が面内等方的に配向した強化繊維基材を製造することができる。また、意図的にスラリーの流れを作ることによって、面内の所定の方法に強化繊維が傾けられた強化繊維基材を得ることもできる。
繊維強化樹脂成形体は圧縮成形法により製造されることが好ましいことは先に述べた通りである。一方で、この圧縮力によって、成形材料中の繊維に折損を生じ、成形体中の繊維長分布は、成形材料中の繊維長分布と比較して、短繊維長側により多くの繊維を含むようになる。したがって、成形体中の繊維長分布を適切かつ好ましい範囲に制御するため、本発明の繊維強化樹脂シート中の強化繊維は、その長さ分布において、繊維長lc〜5lcに占める強化繊維量(Va)の体積比率が50〜95%であり、Vaが55〜85%であるとより好ましく、Vaが60〜80%であるとさらに好ましい。
繊維強化樹脂シートの成形時における流動性は、該シートに含まれる強化繊維の長さに影響され、繊維長が長くなると流動性が悪化する傾向にある。そのため、本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して5lc以下であり、より好ましくは4.5lc以下、さらに好ましくは4lc以下である。一方で、成形品に所望の力学特性を与える点からは、lmaxが3.5lc以上であることが好ましい。
繊維強化樹脂シートにおけるlmaxおよびVaは、繊維強化樹脂シートの前駆体である強化繊維基材中の強化繊維長を調節することにより適切な範囲内に制御することができる。
繊維強化樹脂シート中における強化繊維の面外角度も、繊維強化樹脂シートの流動性を大きく作用する因子である。面外角度が大きいことは、シートの厚さ方向に強化繊維が配向していることを意味する。図8に、繊維強化樹脂シートの厚さ方向の繊維配置を模式的に示した。面外に傾けられた強化繊維は、シートの厚さの各位置に存在する繊維と接触し、繊維の網目構造を形成する。繊維強化樹脂シートを圧縮成形する際には、繊維同士の接点(図8中における×印)において摩擦を生じ、網目構造の変形に対する抵抗力として作用する。その結果、繊維強化樹脂シートの成形時の流動性が低減されることとなる。
したがって、面外を向く繊維量を少なくするとの観点から、本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維の面外角度の平均値が6°以下であり、より好ましくは5.5°以下、さらに好ましくは4°以下である。繊維強化樹脂シートにおける強化繊維の面外角度の平均値を所定の範囲内に調整することにより、繊維強化樹脂成形体の面外角度を適切な範囲内へ好ましく制御できる。
繊維強化樹脂シートにおける強化繊維の面外角度を制御する方法としては、強化繊維の長さを調節する方法を例示できる。繊維強化樹脂シートの平面内には、図9に示すように、強化繊維の網目構造が形成されている。このとき、シート中に短い繊維が存在すると、網目と同一面内に強化繊維は充填されやすくなり、面外配向が抑制される。一方で、繊維強化樹脂シートが過多に短い繊維を含む場合は、繊維強化樹脂成形体の力学特性の低下を招く場合がある。そのため、繊維強化樹脂シートの繊維長分布は、本発明で開示された範囲内において適切に調節されるべきである。
また、繊維強化樹脂シートとする前に、強化繊維基材を厚さ方向に押圧加工することも、面外角度の抑制に効果的である。強化繊維基材の面内では、図10に示すように、強化繊維の交差部がある。このとき、強化繊維基材の厚さ方向に加圧すると、交差部の少なくとも一部に強化繊維の破断を生じる。破断した繊維は、繊維の交差部を失うことにより網目構造が形成する平面内へと埋没され、厚さ方向に配向する強化繊維の割合が減少する。押圧加工した強化繊維基材を用いれば繊維強化樹脂シートにおける強化繊維の面外角度をより好ましい範囲内へと調整することができる。
一方、強化繊維の面外角度を抑制する目的で、強化繊維基材に樹脂を含浸せしめる繊維強化樹脂シートの製造工程や、シートを圧縮成形する繊維強化樹脂成形体の製造工程での加圧力を高めると、樹脂の流動に起因して材料流れを生じる。このとき、シートあるいは成形体中の強化繊維の網目構造が乱され、部位ごとの繊維量にバラつきを生じることがある。そのためシートおよび成形体の全体に亘って均一な強化繊維の面外角度とするのが困難となり、力学特性および表面品位の悪化を招くことがある。このような観点から、樹脂を含まず、流動性に乏しい強化繊維基材単体に対して押圧加工を施すとの方法を好ましく利用できる。
前記押圧加工の方法に特に制限は無いが、例えば、強化繊維基材をプレートで挟み込み、プレス機にて加圧する方法や、ローラーを押し当てて押圧する方法を例示できる。
一方で、前記押圧工程における加圧力が高すぎると、強化繊維が過多に破断してしまい、繊維強化樹脂シート中の繊維長分布を適切な範囲内とできない場合がある。繊維強化樹脂シートの面外角度を抑制する効果とのバランスをはかる上では、前記押圧加工における加圧力が3〜15MPaであることが好ましく、5〜10MPaであることがさらに好ましい。
本発明の繊維強化樹脂シートは、平面部における厚みが0.1〜1.5mmであり、より好ましくは0.2mm〜1.0mmである。厚みが0.1mm未満であると、シートの製造時において、強化繊維基材も薄くなる。そのため、強化繊維基材に破れやほつれを生じやすく、工程通過性に劣る結果となる。一方、厚みが1.5mmよりも大きくなると、繊維強化樹脂成形体の成形時に、厚さ方向に均一に予熱することが難しくなり、成形品の歩留まりに劣る場合がある。
繊維強化樹脂シートにより製造される成形品の表面品位を良好に保つためには、加熱され、軟化状態にある繊維強化樹脂シートの厚さ方向の膨張(以降、スプリングバックと呼ぶ)を小さくすることが効果的である。これは、スプリングバックが大きいと、高温下でシートが多量の空気を含むことになり、熱可塑性樹脂の熱による分解が促進される。その結果、成形品の表面に樹脂不足な部位を生じやすくなることによる。
ここで、軟化状態にある繊維強化樹脂シートとは、シートを構成する熱可塑性樹脂が軟化温度以上に加熱されて可塑化していることを意味する。熱可塑性樹脂が可塑化している状態にあると、通常、JIS K7199(1999)に基づくキャピラリーレオメーターにより、せん断速度100s−1の条件下で測定される樹脂の粘度が4000Pa・s未満になる。
軟化状態にある繊維強化樹脂シートのスプリングバック値は次のようにして測定することができる。まず、室温(23℃)における繊維強化樹脂シートに測定される厚さH1をマイクロメーターにて読み取る。しかる後に、一枚の繊維強化樹脂シートの厚み方向中心部に熱電対を挿入し、経時的に温度をモニタリングしながら、遠赤外線ヒーターを備えたオーブン中に繊維強化樹脂シートを配置し、その厚み中心部温度をT(℃)とした後、オーブンより取り出し、空気中にてその厚み中心部温度が室温となるまで冷却してから、厚みH2を測定した。このように加熱後に冷却して評価に供すことで、樹脂の固化作用により、繊維強化樹脂シートの厚み中心部を温度Tまで加熱した際の形状を保持したまま、繊維強化樹脂シートの厚さを評価することができる。なお、温度Tは樹脂の種類に応じて調節すべき値であり、熱可塑性樹脂の溶融温度+35℃を目安とすると適当である。H1およびH2は、繊維強化樹脂シートの20箇所に対して測定された値の平均値を算出した。H1およびH2の平均値をH1aveおよびH2aveとし、スプリングバック値I(%)を次式により算出する。
Figure 2014019780
本発明の繊維強化樹脂シートにおいて、軟化状態にある前記繊維強化樹脂シートのスプリングバック値が700%以下であることが好ましく、より好ましくは600%以下、さらに好ましくは500%以下である。該シートのスプリングバックは、シートの厚さ方向の強化繊維の相互作用に起因しているため、スプリングバック値をより好ましい範囲に制御するには、シートにおける強化繊維の面外角度を小さくするのが効果的である。
本発明の繊維強化樹脂シートは、強化繊維の面外角度が所定の範囲内に制御されることにより、繊維同士の干渉を緩和され、成形品の成形時に優れた流動性を与えることができる。これらの特性は、軟化状態にある繊維強化樹脂シートに測定される伸長率Kにより整理することができる。
伸長率Kの測定方法は次の通りである。繊維強化樹脂シートから直径150mmの円盤を切り出した。厚みを2.0mm±0.2mmに調整した円盤状の成形材料を測定サンプルとし、遠赤外線ヒーターを具備したオーブン中に配置し、10分間予熱した。この際、サンプルの表面かつ円盤の中央部の温度が温度T(℃)となるまで予熱した。ここで、温度Tは樹脂の種類に応じて調節すべき値であり、熱可塑性樹脂の溶融温度+35℃を目安とすると適当である。しかる後、オーブンから取り出したサンプルを下金型の上に配置し、上金型を降下させ、プレス成形することにより円盤状の成形体を得た。該成形体の直径を任意の2箇所について測定し、その平均値Dとおけば、繊維強化樹脂シートの伸長率K(%)は下式にて定義される。
Figure 2014019780
伸長率Kは、繊維強化樹脂シートの成形前および成形後の面積比を表す値である、本発明の繊維強化樹脂シートにおいては、Kが250〜500%であることが好ましい。Kを250%以上とすると、リブや複雑形状を有する成形品の製造に好ましく利用できる。また、Kを500%以下とすると、成形時に該シートが過度に流動することなく、成形品中の繊維配向の均一性が保たれ、力学特性に優れた成形品を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
本実施例で用いた各評価方法は以下の通りである。
(1)強化繊維の面内角度の相対度数分布
繊維強化樹脂成形体をステンレス繊維からなるメッシュ板の間に把持し、繊維強化樹脂成形体が動かないように固定した。この状態で、空気中にて500℃で1時間加熱することにより樹脂成分を焼き飛ばし、強化繊維基材単体とした。該基材表面をレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製、VK−9510)で拡大し、図4に模式的に示す観察画像を取得した。図4中の8の繊維についてX方向と為す角度である強化繊維の面内角度φを測定する。面内角度の測定は、観察画像のデジタルファイルを汎用画像解析ソフト(Media Cybernetics(株)製、Image−Pro Plus)上に展開し、強化繊維単繊維を目視で識別しながら行った。この操作を無作為に抽出した800本の強化繊維について繰り返して行った。なお、各観察画像におけるX方向が、同一方向となるように注意して面内角度の測定を行った。0°から180°まで角度10°刻み(18区間)の面内角度の相対度数分布は、i番目(i=1〜18)の面内角度の区間における相対度数Diについて、i番目(i=1〜18)の面内角度の区間に測定された繊維本数Niと、測定を行った全繊維本数Nallを利用し、前述の式(6)より算出した。相対度数分布における最大値をDmax、最小値をDminとして求め、Dmax−Dminを面内繊維配向の等方性を表す指標として用いた。繊維強化樹脂シートについても同様の評価を行った。
(2)強化繊維の長さ分布
繊維強化樹脂成形体を空気中500℃で1時間加熱し、樹脂成分を焼き飛ばした。残った強化繊維を無作為に400本抽出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡にて測定し、繊維長とその割合を評価した。また、同様にして繊維強化樹脂シートについて繊維長分布とその割合を評価した。
(3)分散パラメータ
繊維強化樹脂成形体から小片を切り出し、厚さ方向の垂直断面を研磨したものを強化繊維の分散パラメータの評価試料とした。該断面をレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製、VK−9510)で拡大し、無作為に100μm×100μmの領域を10ヶ所選定し、その各々の領域に含まれる強化繊維の本数をカウントする。i番目の観察領域におけるカウント数をAi(i=1〜10)と置き、Aiの平均値をA、Aiの標準偏差をSとするとして求め、式(1)より分散パラメータB(%)を求め、強化繊維の分散状態の指標として用いた。繊維強化樹脂シートについても同様の評価を行った。
(4)強化繊維の面外角度
繊維強化樹脂成形体の平面部を切り出し、エポキシ樹脂に包埋した上で、厚さ方向垂直断面を表面粗さが1μm程度となるまで研磨した。この研磨断面をレーザー顕微鏡(キーエンス(株)製、VK−9510)で倍率400倍程度に拡大して繊維断面形状を鮮明とした上で観察を行った。観察画像のデジタルファイルを汎用画像解析ソフト(Media Cybernetics(株)製、Image−Pro Plus)上に展開し、該ソフトに組み込まれたルーチンプログラムを利用して、図5に示すように、観察画像に見える個々の強化繊維を抽出し、該繊維を内接する楕円を設け、形状を近似した(以降、繊維楕円と呼ぶ)。さらに、繊維楕円の長軸長さα/短軸長さβで表されるアスペクト比が20以上の繊維楕円(この場合、繊維楕円8)に対し、X軸方向と繊維楕円の長軸方向の為す角を求めた。なお、断面には、図6のように、蛇行した繊維が見られる場合もある。この場合、目視にて屈曲点(図6中、×印)を判別し、該箇所にて繊維を分断した上で、分断された各繊維について楕円近似を施し、楕円におけるアスペクト比が30以上のものを抽出することにより面外角度を評価した。繊維強化樹脂成の異なる部位から抽出した観察試料について上記操作を繰り返すことにより、計600本の強化繊維について面外角度を測定し、その平均値を求めた。繊維強化樹脂シートについても同様の評価を行った。
(5)界面接着力の測定
評価方法は非特許文献2を参考にした。長さ20cmにカットした強化繊維単繊維と、熱可塑性樹脂からなるフィルム2枚を用意する。単繊維を1枚目の樹脂フィルム上に伸直となるように置き、もう1枚の樹脂フィルムにて前記単繊維を挟むように重ねて配置した上で、温度T(℃)にて0.5MPaの圧力でプレスし、単繊維が樹脂に埋設された試料を作製した。これより、厚さ0.2mm、幅10mm、長さ70mmを切り出し、界面接着力の評価試験片とした。なお、切り出しの際に、単繊維が試験片の中央に来るように注意する。試験片を引張試験機に備える把持装置にチャッキングし、チャック間距離25mmとして、ひずみ速度1%mm/minの条件の下、引張試験を行った。このとき、引張変位を増していくと、試験片中の繊維が逐次的に分断する様子が観察されるが、ある程度よりも変位が大きくなると単繊維の破断がもはや生じなくなる。破断が飽和した試料を試験機より取り外し、試験片表面を顕微鏡で拡大観察することにより、チャック間において分断した全ての繊維について長さを求めた。分断した繊維の平均破断繊維長lave(μm)を用いれば、繊維/樹脂間における界面の接着力τintは次式にて表される。
Figure 2014019780
σf:強化繊維の引張強度(MPa)
rf:強化繊維の単繊維半径(μm)
(6)引張破壊試験片中の残存繊維長分布
ASTM D3039(2007)に基づく繊維強化樹脂成形体の引張試験を行った。繊維強化樹脂成形体より、長さ250mm、幅25mmの短冊を切り出して引張試験片とした。試験は室温にて、油圧式疲労試験機(MTS(株)製、810型)を用い、ひずみ速度1%/minで行った。引張破壊した試験片について、試験片中の残存繊維長を次のように評価する。試験片の破断部から10mm程度離れた部位より、試験片の長手方向に20mm、試験片幅方向に25mmの小片を切り出した。この小片を空気中500℃で1時間加熱し、樹脂成分を焼き飛ばした。残った強化繊維を無作為に400本抽出し、その長さを1μm単位まで光学顕微鏡にて測定し、残存繊維長の分布を評価した。繊維長分布におけるlc以上の繊維の体積割合をV1として求め、引張試験前の繊維強化樹脂成形体に測定した繊維長分布におけるlc以上の繊維の体積割合Vvとの比、V1/Vvを強化効率として求めた。
(7)疲労特性
ASTM D3479(2007)に基づく繊維強化樹脂成形体の引張疲労試験を行った。試験片形状は前項の引張試験片と同様である。試験は油圧式疲労試験機(MTS(株)製、810型)を用いて行った。試験片を試験機に備える油圧駆動式把持装置にチャッキングし、室温環境下にて周波数10Hzの正弦の荷重振動を与えた。試験における応力比(=最大応力/最小応力)を0.1とし、最大応力を段階的に変化させながら、最大応力と破断サイクル数の関係(いわゆるS−N線図)を評価した。本明細における10耐力とは、S−N線図において試験片が10±10サイクルの範囲内で破壊したときの、試験片に負荷した正弦荷重における最大応力である。
(8)疲労破壊試験片の残存繊維長
10回耐力により破断した繊維強化樹脂成形体の試験片について、前項と同様にして残存繊維長とその割合を評価した。繊維長分布におけるlc以上の繊維の体積割合をVdとして求め、引張試験前の繊維強化樹脂成形体に測定した繊維長分布におけるlc以上の繊維の体積割合Vvとの比、V2/Vvを強化効率として求めた。
(9)スプリングバック値の測定
繊維強化樹脂シートのスプリングバック値は次のように評価した。室温(23℃)における繊維強化樹脂シートに測定される厚さH1をマイクロメーターで読み取った。さらに、加熱され、軟化状態にある繊維強化樹脂シートの厚みH2を次のように測定した。H2はシートの軟化の程度に応じて異なる値をとるため、本実施例では繊維強化樹脂の厚み中心部の温度T(℃)と関連させて測定した。すなわち、一枚の繊維強化樹脂シートの厚さ中心部の温度がTとなるまで繊維強化樹脂シートを加熱した後、室温まで冷却した繊維強化樹脂シートに対して測定される厚みをH2とした。具体的には、一枚の繊維強化樹脂シートの厚み方向中心部に熱電対を挿入し、経時的に温度をモニタリングしながら、遠赤外線ヒーターを備えたオーブン中に繊維強化樹脂シートを配置し、その厚み中心部温度をT(℃)とした後、オーブンより取り出し、空気中にてその厚み中心部温度が室温となるまで冷却して厚みH2の測定に供した。加熱による軟化を生じた繊維強化樹脂シートは厚さ方向に膨張を生じるが、このように加熱後に冷却して評価に供すことで、樹脂の固化作用により、繊維強化樹脂シートの厚み中心部を温度Tまで加熱した際の形状を保持したまま、繊維強化樹脂シートの厚さを評価することができる。ここで、温度T(℃)に関し、繊維強化樹脂シートに用いた熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂の場合にはT=220℃、ポリアミド6樹脂ある場合には240℃。H1およびH2は、繊維強化樹脂シートの20箇所に対して測定された値の平均値を算出し、H1およびH2の平均値をH1aveおよびH2aveとし、スプリングバック値I(%)を式(8)により算出した。
(10)伸長率の測定
繊維強化樹脂シートから直径150mmの円盤を切り出した。厚みを2.0mm±0.2mmに調整した円盤状の成形材料を測定サンプルとし、遠赤外線ヒーターを具備したオーブン中に配置し、10分間予熱した。この際、マルチ入力データ収集システム(キーエンス(株)社製、NR−600)を用いて、サンプルの表面かつ円盤の中央に熱電対を設置し、熱履歴を計測した。熱電対の計測温度が温度T(℃)となるまで予熱した。ここで、温度T(℃)に関し、繊維強化樹脂シートに用いた熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂の場合にはT=220℃、ポリアミド6樹脂ある場合には240℃、PPS樹脂である場合には、T=340℃とした。しかる後、オーブンから取り出したサンプルを下金型の上に配置し、上金型を降下させ、面圧20MPaでプレス成形した。この状態で1分間加圧、冷却した後、上金型を上昇させ、成形品を得た。得られた成形品はほぼ真円の円盤形状であった。成形品の直径を任意の2箇所について測定し、その平均値Dを求めた。繊維強化樹脂シートの伸長率K(%)は前述の式(9)にて算出した。
(11)繊維強化樹脂成形体の表面粗さ
接触式表面粗さ計(小坂研究所(株)製、サーフコーダSE−3400)を用いて、繊維強化樹脂成形体の表面粗さを測定した。ここでは、平均表面粗さRaを繊維強化樹脂成形体の表面粗さとする。送り速度2mm/s、カットオフ値8mm、評価長さ90mmとし、4回の測定を行った。各測定の平均値をもって表面粗さとした。
実施例および比較例に使用する原材料の調製は以下のように行った。
(材料1)強化繊維(A)
強化繊維(A)として以下に示す炭素繊維を用いた。ポリアクリロニトリルを主成分とする重合体から紡糸、焼成処理を行い、総フィラメント数12000本の炭素繊維連続束を得た。この炭素繊維連続束の特性は次の通りであった。
単繊維半径rf:3.5μm
引張強度σf:4.9GPa
引張弾性率:230GPa
単位長さ当たりの質量:1.8g/m
比重:1.8g/cm
(材料2)強化繊維(B)
強化繊維(B)として以下に示す炭素繊維を用いた。ポリアクリロニトリルを主成分とする重合体から紡糸、焼成処理を行い、総フィラメント数12000本の炭素繊維連続束を得た。この炭素繊維連続束の特性は次の通りであった。
単繊維半径rf:2.7μm
引張強度σf:5880MPa
引張弾性率:294GPa
単位長さ当たりの質量:1.8g/m
比重:1.8g/cm
(材料3)ポリプロピレンフィルム
未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J105G)50重量%と酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)“アドマー”(登録商標)QB510)50重量部とからなる目付け50g/mのポリプロピレン樹脂フィルムを作製した。作製した樹脂フィルムの比重は0.9g/cmであった。本フィルムと同組成であるダンベル形状の射出成形品についてISO−527−1(2011)に基づく引張試験を行った結果、最大応力は32MPaであった。これを本材料の引張強度σyとして採用した。
(材料4)ポリアミド6フィルム
ポリアミド6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1021FS)からなる目付け50g/mの樹脂フィルムを作製した。作製した樹脂フィルムの比重は1.1g/cmであった。本樹脂フィルムと同組成であるダンベル形状の射出成形品についてISO−527−1(2011)に基づく引張試験を行った結果、最大応力は75MPaであった。これを本材料の引張強度σyとして採用した。
(材料5)ポリアミド6チョップド繊維
ポリアミド6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1001)からなる繊維(単繊維繊度3dtex)をカートリッジカッターで5.0mmにカットし、樹脂繊維を調製した。本樹脂繊維と同組成であるダンベル形状の射出成形品についてISO−527−1(2011)に基づく引張試験を行った結果、最大応力は72MPaであった。これを本材料の引張強度σyとして採用した。
(実施例1)
材料1の炭素繊維をカートリッジカッターで4mmの長さにカットし、チョップド炭素繊維束を得た。水と界面活性剤(ナカライテスク(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1重量%の分散媒を40リットル作製し、かかる分散媒を抄造装置に注入した。抄造装置は、回転翼付き攪拌機を備えた上部の抄造槽(容量30リットル)と、下部の貯水槽(容量10リットル)からなり、抄造槽と貯水槽の間には多孔支持体を設けてある。まず、かかる分散媒を攪拌機を使用して空気の微小気泡が発生するまで撹拌した。その後、所望の目付となるように、重量を調整したチョップド炭素繊維束を、かかる空気の微小気泡が分散した分散媒中に投入して攪拌することにより、炭素繊維が分散したスラリーを得た。次いで、貯水層からスラリーを吸引し、スラリーを多孔支持体を介して脱水して強化繊維抄造体とした。抄造体を熱風乾燥機にて140℃、1hの条件下で乾燥させ、しかる後、厚さ2mmのステンレス製プレートにより挟み込み、プレス機を用いて8MPaの圧力にて押圧加工を施した。以上により、目付け100g/mの強化繊維基材とした。強化繊維基材一枚に対して材料3の樹脂フィルムを、[フィルム×2枚/繊維基材×1枚/フィルム×2枚]となるように積層し、220℃に予熱したステンレス製プレートに挟み込み、5MPaの圧力を2分間保持して強化繊維基材に樹脂を含浸せしめた繊維強化樹脂シート(1)を作製した。繊維強化樹脂シート(1)の評価結果を表1にまとめる。
繊維強化樹脂シート(1)を12枚積層し、220℃に予熱しておいた縦300mm、横300mm、厚さ2.4mmのキャビティを有する金型内に配置して金型を閉じた。成形圧力15MPaで加圧して2分間保持した後、金型温度が70℃となるまで冷却してから金型を開き、長さ300mm、幅300mm、厚さ2.4mmの繊維強化樹脂成形体(I)を取り出した。繊維強化樹脂成形体(I)の評価結果を表2にまとめる。
(実施例2)
材料1の炭素繊維を3mmにカットしたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(2)を作製した。繊維強化樹脂シート(2)の評価結果を表1にまとめる。また、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(2)からなる厚さ2.4mmの繊維強化樹脂成形体(II)を得た。繊維強化樹脂成形体(II)の評価結果を表2にまとめる。
(実施例3)
材料1の炭素繊維を3mmにカットしたことと、強化繊維基材への押圧加工を省いたこと以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(3)を作製した。繊維強化樹脂シート(3)の評価結果を表1にまとめる。また、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(3)からなる厚さ2.4mmの繊維強化樹脂成形体(III)を得た。繊維強化樹脂成形体(III)の評価結果を表2にまとめる。
(実施例4)
材料1の炭素繊維を3mmにカットしたことと、強化繊維基材への押圧加工における圧力を20MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(4)を作製した。繊維強化樹脂シート(4)の評価結果を表1にまとめる。また、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(4)からなる厚さ2.4mmの繊維強化樹脂成形体(IV)を得た。繊維強化樹脂成形体(IV)の評価結果を表2にまとめる。
(実施例5)
材料1の炭素繊維を1.8mmにカットしたこと以外は実施例1と同様にして目付け100g/mの強化繊維基材を得た。強化繊維基材一枚に対して材料4の樹脂フィルムを、[フィルム×2枚/繊維基材×1枚/フィルム×2枚]となるように積層し、240℃に予熱したステンレス製プレートに挟み込み、5MPaの圧力を2分間保持して強化繊維基材に樹脂を含浸せしめた繊維強化樹脂シート(5)を作製した。繊維強化樹脂シート(5)の評価結果を表1にまとめる。
また、繊維強化樹脂シート(5)を12枚積層し、240℃に予熱しておいた縦300mm、横300mm、厚さ2.4mmのキャビティを有する金型内に配置して金型を閉じた。成形圧力15MPaで加圧して2分間保持した後、金型温度が70℃となるまで冷却してから金型を開き、長さ300mm、幅300mm、厚さ2.4mmの繊維強化樹脂成形体(V)を取り出した。繊維強化樹脂成形体(V)の評価結果を表2にまとめる。
(実施例6)
材料1の炭素繊維を1.2mmにカットしたことと以外は、実施例5と同様にして繊維強化樹脂シート(6)を作製した。繊維強化樹脂シート(6)の評価結果を表1にまとめる。また、実施例5と同様にして繊維強化樹脂シート(6)からなる厚さ2.3mmの繊維強化樹脂成形体(VI)を得た。繊維強化樹脂成形体(VI)の評価結果を表2にまとめる。
(実施例7)
強化繊維基材の目付けを60g/mとしたこと以外は、実施例5と同様にして繊維強化樹脂シート(7)を作製した。繊維強化樹脂シート(7)の評価結果を表1にまとめる。また、繊維強化樹脂シート(7)を17枚積層したこと以外は実施例5と同様にして繊維強化樹脂シート(7)からなる厚さ2.3mmの繊維強化樹脂成形体(VII)を得た。繊維強化樹脂成形体(VII)の評価結果を表2にまとめる。
(実施例8)
強化繊維基材の目付けを130g/mとしたこと以外は、実施例5と同様にして繊維強化樹脂シート(8)を作製した。繊維強化樹脂シート(8)の評価結果を表3にまとめる。また、繊維強化樹脂シート(8)を9枚積層した以外は、実施例5と同様にして繊維強化樹脂シート(8)からなる厚さ2.7mmの繊維強化樹脂成形体(VIII)を得た。繊維強化樹脂成形体(VIII)の評価結果を表4にまとめる。
(実施例9)
材料2の炭素繊維を用い、4.0mmにカットしたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(9)を作製した。繊維強化樹脂シート(9)の評価結果を表3にまとめる。また、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(9)からなる厚さ2.5mmの繊維強化樹脂成形体(IX)を得た。繊維強化樹脂成形体(IX)の評価結果を表4にまとめる。
(実施例10)
材料2の炭素繊維を用い、1.2mmにカットしたこと以外は実施例5と同様にして繊維強化樹脂シート(10)を作製した。繊維強化樹脂シート(10)の評価結果を表3にまとめる。また、実施例5と同様にして繊維強化樹脂シート(10)からなる厚さ2.5mmの繊維強化樹脂成形体(X)を得た。繊維強化樹脂成形体(X)の評価結果を表4にまとめる。
(比較例1)
材料1の炭素繊維を0.5mmにカットしこと以外は実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(11)を作製した。繊維強化樹脂シート(11)の評価結果を表3にまとめる。また、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(11)からなる厚さ2.5mmの繊維強化樹脂成形体(XI)を得た。繊維強化樹脂成形体(XI)の評価結果を表4にまとめる。
実施例1〜10との比較において、繊維強化樹脂シート(11)は伸長率に優れ、繊維強化樹脂成形体(XI)は表面品位に優れる。しかし、10回耐力は著しく劣る結果となった。
(比較例2)
材料1の炭素繊維を6.0mmにカットしことと、強化繊維基材へ加圧加工をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(12)を作製した。繊維強化樹脂シート(12)の評価結果を表3にまとめる。また、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(12)からなる厚さ2.5mmの繊維強化樹脂成形体(XII)を得た。繊維強化樹脂成形体(XII)の評価結果を表4にまとめる。
実施例1〜10との比較において、繊維強化樹脂シート(12)は伸長率に乏しくなる。また、繊維強化樹脂成形体(XII)は実施例1と比較して10回耐力はほぼ同等レベルであるものの、表面品位に劣る結果となった。
(比較例3)
材料1の炭素繊維を6.0mmにカットしたチョップド炭素繊維束と、材料1の炭素繊維を3.0mmにカットしたチョップド炭素繊維束を等量混合したものを用いたことと、強化繊維基材への押圧加工を省いたこと以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(13)を作製した。繊維強化樹脂シート(13)の評価結果を表3にまとめる。また、実施例1と同様にして繊維強化樹脂シート(13)からなる厚さ2.5mmの繊維強化樹脂成形体(XIII)を得た。繊維強化樹脂成形体(XIII)の評価結果を表4にまとめる。
実施例1〜10との比較において、繊維強化樹脂シート(13)は伸長率に劣る結果となった。また、実施例1と比較して、繊維強化樹脂成形体(XII)は10回耐力において同等レベルであるものの、表面品位に劣っている。
(比較例4)
材料1の炭素繊維束を2.0mmにカットしたチョップド炭素繊維5.8gと材料5のチョップドポリアミド繊維6繊維を5.6gとを混合したものを原料とした。これを、実施例1と条件を同じくした抄造装置に投入し炭素繊維と樹脂繊維の混抄抄造体を得た。抄造体を熱風乾燥機にて140℃、1hの条件下で乾燥させ、目付け140g/mの混抄基材とした。これは、本発明で定義する熱可塑性樹脂を強化繊維基材に含浸してなる繊維強化樹脂シートとは本質的に異なるが、便宜的に繊維強化樹脂シート(14)と呼ぶことにする。繊維強化樹脂シート(14)は多量の空隙を含んでいるため、面外角度は測定不能であった。また、室温における基材の厚み値H1が加圧力に応じて容易に変化するため、スプリングバック値も測定不能であった。その他の評価結果について表3にまとめる。
繊維強化樹脂シート(14)を12枚積層し、240℃に予熱しておいた縦300mm、横300mm、厚さ2.4mmのキャビティを有する金型内に配置して金型を閉じた。成形圧力15MPaで加圧して2分間保持した後、金型温度が70℃となるまで冷却してから金型を開き、長さ300mm、幅300mm、厚さ2.4mmの繊維強化樹脂成形体(XIV)を取り出した。繊維強化樹脂成形体(XIV)の評価結果を表4にまとめる。
実施例1〜10との比較において、繊維強化樹脂シート(14)は、繊維の分散が悪く、面外配向が大きいため、繊維強化樹脂成形体(XIV)は表面品位に劣るばかりか、10回耐力において見劣りする。加えてハンドリング時に繊維が脱落し、取り扱い性の悪さが目立った。
Figure 2014019780
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Figure 2014019780
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以上に示されたように、本発明の繊維強化樹脂シートは製造時の強化繊維基材の取り扱い性に優れるとともに、成形時に高い流動性を示す。さらに、本発明の繊維強化樹脂成形体は表面に凹凸が少ない良好な概観を与えるとともに疲労特性において優れた特性を示す。
1 樹脂
2 強化繊維単繊維
3 せん断力
4 繊維強化樹脂成形体
5 強化繊維
6 強化繊維の主軸方向の延長線
7 強化繊維の主軸方向の延長線のX−Y平面に対する投影線
8 強化繊維とX−Y平面がなす角
9 強化繊維とX軸がなす角
10 楕円アスペクト比が小さい繊維楕円
11 楕円アスペクト比が大きい繊維楕円
12 繊維強化樹脂成形体の表面
13 折れ曲がりを有する強化繊維
14 折れ曲がりを有する強化繊維の屈曲点
15 オフセット荷重の作用点
16 面内に向けられた強化繊維
17 面外角度が大きな強化繊維
18 網目構造の面内に埋没された短繊維

Claims (17)

  1. 単繊維状に分散された強化繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維強化樹脂成形体であって、強化繊維の面内角度度数分布における10°刻みの相対度数の最大値Dmaxと最小値DminがDmax―Dmin≦0.08なる関係にあり、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して5lc以下、かつ繊維長lc〜5lcに占める強化繊維量の体積比率(Va)が40〜90%であり、強化繊維の面外角度の平均値が6°以下、平面部における厚さが1.5〜4mmである、繊維強化樹脂成形体。
  2. 繊維長lc〜3lcに占める強化繊維量の体積比率(Vb)が40〜90%である、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形体。
  3. 繊維長2lc〜3lcに占める強化繊維量の体積比率(Vc)が30〜60%である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形体。
  4. 前記強化繊維の単繊維半径(rf)が0.5μm〜6μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  5. 前記熱可塑性樹脂の引張強度(σy)が25〜70MPaである、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  6. 強化繊維の体積含有率が10〜55%である、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  7. 前期強化繊維と前記熱可塑性樹脂とに測定される界面接着力τintが、樹脂のせん断強度τyに対して0.7τy以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  8. 前記繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量(Vv)と、ASTM D3039に基づく引張試験により破断した繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量(V1)との関係において、V1/Vv≦0.9である、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  9. 前記繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量(Vv)と、ASTM D3479に基づく引張疲労試験において10回耐力の負荷により破断した繊維強化樹脂成形体に測定される繊維長lc以上の強化繊維量(V2)との関係において、V2/Vv≦0.85Vvである、請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  10. ASTM D3479に基づく引張疲労試験における10回耐力が100MPa〜300MPaである、請求項1〜9のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  11. 強化繊維基材に熱可塑性樹脂を含浸せしめた繊維強化樹脂シートであって、強化繊維の面内角度度数分布における10°刻みの相対度数の最大値Dmaxと最小値DminがDmax―Dmin≦0.08なる関係にあり、強化繊維の長さ分布における最大繊維長(lmax)が臨界繊維長(lc)に対して5lc以下、かつ繊維長lc〜5lcに占める強化繊維量(Va)の体積比率が50〜95%であり、かつ強化繊維の面外角度の平均値が6°以下、平面部における厚みが0.1〜1.5mmである、繊維強化樹脂シート。
  12. 前記強化繊維基材が単繊維状に分散した強化繊維から構成される、請求項11に記載の繊維強化樹脂シート。
  13. 厚さ方向に押圧加工した強化繊維基材を用いることを特徴とする、請求項11または12に記載の繊維強化樹脂シート。
  14. 前記押圧加工における加圧力が3〜15MPaである、請求項13に記載の繊維強化樹脂シート。
  15. 空隙率が10%以下である、請求項11〜14のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
  16. 軟化状態にある前記繊維強化樹脂シートのスプリングバック値が700%以下である、請求項11〜15のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
  17. 軟化状態にある前記前記繊維強化樹脂シートの伸長率Kが250〜500%である、請求項11〜16のいずれかに記載の繊維強化樹脂シート。
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