JP2014018858A - 熱切断加工機の素材熱伝播シミュレーション装置 - Google Patents
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【解決手段】レーザ加工機等の熱切断加工機による切断過程における素材Wの熱伝播状況をシミュレーションする装置である。素材Wをボクセル近似して各ボクセルSに温度を持たせ、かつ隣接するボクセル間およびボクセルと空間との間にそれぞれ熱の伝わり易さの程度を示す拡散係数を持たせたボクセルモデルMを作成する。素材の切断経路R上における単位時間毎に切断される領域Raを計算する手段5と、入熱すべきボクセルSを計算する手段6を設ける。領域Raの各ボクセルSに入熱温度を設定する手段7を設ける。各ボクセルSにつき、入熱温度と拡散係数とを用いて、拡散方程式によって温度変化を計算する手段9を設ける。
【選択図】図1
Description
この発明の他の目的は、前記温度変化のシミュレーションをより一層精度良く行えるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、前記温度変化のシミュレーションをより一層精度良く行える具体的な計算式を持つ装置を提案することである。
この発明のさらに他の目的は、切断の経過によって溶断された部分までを考慮したより一層精度の良い温度変化のシミュレーションを行えるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、温度変化の状況が目視できるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、温度変化による素材の変形状態までシミュレーションできるようにすることである。
前記素材(W)の一部または全体をボクセル近似して各ボクセル(S)に温度を持たせ、かつ隣接するボクセル(S)間およびボクセル(S)と空間との間にそれぞれ熱の伝わり易さの程度を示す拡散係数を持たせたボクセルモデル(M)を作成するモデル生成手段(4)と、
前記素材(W)の切断経路(R)上における単位時間毎に切断される領域(Ra)を計算する切断領域計算手段(5)と、
この切断領域計算手段(5)で計算された領域(Ra)から、前記ボクセルモデル(M)の入熱すべきボクセル(S)を定められ規則に従って計算する入熱ボクセル計算手段(6)と、
この入熱ボクセル計算手段(6)で計算された入熱すべき各ボクセル(S)に、前記熱切断加工機による切断時の入熱で前記各ボクセル(S)と対応する素材(W)の部位に生じる入熱温度を設定する入熱温度設定手段(7)と、
前記ボクセルモデル(M)の各ボクセル(S)につき、前記入熱温度と前記拡散係数(D)とを用いて前記単位時間毎の温度変化を計算するボクセル温度計算手段(8)、
とを備える。
前記熱切断加工機は、熱切断、すなわち素材(W)の切断すべき部分を入熱により溶かして切断する装置であり、例えば、レーザ加工機、プラズマ切断加工機、電子ビーム加工機、ガス切断加工機等がある。
前記切断領域計算手段(5)は、前記素材(W)の切断経路(R)上における単位時間(Δt)毎に切断される領域(Ra)を計算する。この切断領域計算手段(5)は、例えばNCプログラム(13)の解析により加工図形のデータを得て、この加工図形のデータから前記領域(Ra)を計算するものであっても、またNCプログラム(13)によらずに直接に加工図形のデータから前記領域(Ra)を計算するものであっても良い。
前記入熱ボクセル計算手段(6)は、前記切断領域計算手段(5)で計算された領域(Ra)から、前記ボクセルモデル(M)の入熱すべきボクセルを、定められた規則に従って設定する。この定められた規則は、前記切断の領域(Ra)となる線が、縦横のマトリスク状に並ぶボクセル(S)のどのボクセル(S)を選択して繋げば、より前記により近い形状の線となるかを定める選択の規則であり、例えば、ブレゼンハムアルゴリズムを用いる。
前記入熱温度設定手段(7)は、前記入熱ボクセル計算手段(6)で設定された入熱すべき各ボクセル(S)に、前記熱切断加工機による切断時の入熱で前記各ボクセル(S)と対応する素材(W)の部位に生じる入熱温度を設定する。
前記ボクセル温度計算手段(8)は、ボクセルモデル(M)の各ボクセル(S)につき、前記入熱温度と前記拡散係数(D)とを用いて前記単位時間(Δt)毎の温度変化を計算する。
このような各計算を前記各手段が行うことにより、前記ボクセル温度計算手段(8)の計算結果として、熱切断加工機による切断の進行に従って素材(W)にどのような温度変化が生じるかがシミュレーションできる。
この場合に、素材(W)の空間に隣接する面と素材内部とでは、熱の伝播が全く異なる。そのため、上記のように2種類の拡散係数(D)を定め、空間に接する面とボクセル相互の隣接面とで拡散係数(D)を使い分けており、これにより前記温度変化のシミュレーションを精度良く行うことができる。
シミュレーションの結果は、後述のように画像として可視化しても良く、また素材(W)の変形の計算に用いても良い。
Δx:ボクセルのX軸方向の長さ
ΔY:ボクセルのY軸方向の長さ
ΔZ:ボクセルのZ軸方向の長さ
この数式(1)は、拡散が生じている物質あるいは物理量の密度のゆらぎを記述する微分方程式であり、熱の伝播もこの方程式に従う。この発明は、この拡散方程式を用い、この方程式内の拡散係数として、素材(W)内と境界とで異なるものを用いる工夫を図ることで、板状の素材(W)における熱切断における熱伝播状況のシミュレーションを実現したものである。
この数式(1)を用いることで、精度の良い前記温度変化のシミュレーションを具現化できる。
熱加工において、素材(W)の切断済みの部分は溶け落ちて無くなっているため、切断済みの領域(Ra)となる各ボクセル(S)は空間として熱伝播の計算を行うことにより、温度変化のシミュレーションをより一層精度良く行うことができる。
前記各ボクセル(S)の温度を、画像表示装置(3)の画面に、切断時間の経過に従って変化する画像として表示すれば、切断の経過に従って素材(W)の温度がどのように変化するかが、オペレータの目視によって認識できる。この変化の認識により、熱切断加工が適切に行えるか否かの判断を、オペレータによって適切に行うことができる。
素材(W)の各部の温度変化、素材(W)の形状、素材(W)の線膨張係数、弾性係数等を用いれば、素材(W)の変形状態、つまり変形後の形状や、歪みの発生状態を計算することができる。素材(W)の変形状態が分かれば、これを画面上に可視化して示すことで、適切な加工が行えるか否かが、温度変化だけを認識する場合よりも一層適切に、オペレータによって判断することができる。また、変形状態の数値データ、例えば変形した部分が変形前の素材(W)の上面からどれだけの突出するかの数値データを用い、設定許容範囲との比較を行うことで、適切な加工が行えるか否かの自動判定が行える。
前記ボクセル温度計算手段が、切断済みの領域の各ボクセルを空間として前記単位時間毎の温度の計算を行う場合は、切断の経過によって溶断された部分までを考慮したより一層精度の良い温度変化のシミュレーションが行える。
前記ボクセル温度計算手段で計算された前記各ボクセルの温度を、画像表示装置の画面に、切断時間の経過に従って変化する画像として表示する温度変化可視化手段を設けた場合は、温度変化の状況を目視で認識することができる。
前記ボクセル温度計算手段で計算された温度の値を用いて定まった規則により前記素材の変形状態を示す素材形状変化計算手段を設けた場合は、温度変化による素材の変形状態までシミュレーションすることができる。
と共に後述するように、隣接する複数の製品wとその周辺を含む範囲としても良い。なお、ボクセルモデルMとする範囲Eは、製品wの切り取りに適用する場合、製品wの外周に少なくとも1個分のボクセルSが存在する範囲とする。これは、後述のように溶断したボクセルSを空間として計算するためである。
ボクセルモデルMとする範囲Eの自動設定については、後にシミュレーションの流れの説明の箇所で、図2(B)と共に説明する。
具体的には、温度降下の記入欄Bには素材表面からの単位深さΔZ当たりの降下温度を記入する。前記入熱温度設定手段7は、この単位深さΔZ当たりの降下温度から、Z軸方向の各ボクセルSの温度を計算し、その計算した温度をボクセルSに設定する。
Δx:ボクセルのX軸方向の長さ
Δy:ボクセルのY軸方向の長さ
Δz:ボクセルのZ軸方向の長さ
である。
添字i,j,kは、ボクセルモデルMの原点となる角O(図3(A))から、直交する3軸(X,Y,Z軸)方向に並ぶボクセルSの並び順を示す。a,b,cおよびd,e,fは、i,j,kの任意の値である。
nは単位時間Δt当たりの個数、換言すれば各単位時間Δtに付した順番であり、
次の関係を表す。
この素材形状変化計算手段10は、素材変化可視化部(図示せず)を有していて、前記変形の計算結果で特定される変形したボクセルモデルMの形状を、前記画像表示装置3の画面に表示可能させるようにしている。
入力処理手段11は、出力処理手段12を介して画像表示装置3に入力画面を表示させ、入力装置2から入力されたデータを記憶すると共に、その記憶したデータを、この素材熱伝播シミュレーション装置を構成する各手段4〜10へ要求に応じて与える手段である。
この入力画面例では、図示内容からわかるように、素材Wの材質および板厚と、ボクセルモデルのサイズ(ボクセルモデルの各軸方向のボクセル数)が表示され、その表示内容を入力装置2からの操作で変更可能とされている。材質,板厚は、NCプログラム13(図1)に一般的に記述されているため、NCプログラム13から読み込んでその値を表示する。同図で「セル」とある文字は、ボクセルを示す。セルサイズ(ボクセルモデルの各軸方向のボクセル数)は、デフォルト値が表示され、定められた範囲で任意に各軸方向のボクセル数を変更可能とされている。
また、この入力画面において、素材内部での拡散係数と境界での拡散係数が設定可能とされ、かつ一つのボクセルSの各軸方向の寸法Δx,Δy,Δzと、前記単位時間Δtが表示される。これら2種類の拡散係数、およびΔx,Δy,Δz,Δtの値についても、デフォルト値が表示され、定められた範囲で任意に変更可能とされる。
まず、入力処理手段11によって、NCプログラム13を読み込み、図5と共に説明した入力画面から必要なデータを入力する。特に変更の入力が行われなかった場合は、デフォルト値が用いられる。
前記モデル生成手段4によりボクセルモデルMとする範囲Eの設定については、定められた規則に従って自動で行うようにしても、入力装置2からのオペレータ等による入力によって行うようにしても良い。自動で行うようにする場合、例えば、図2(B)に示すように、NCプログラム13から解析された切断経路Rの図形データ、またはCADデータ等の図形データから、製品wとなる加工図形wgを認識し、この加工図形wgの外周に、加工図形wgが納まる最小矩形REを求める。この最小矩形REの外周に、定められた余裕範囲(余白)を取った範囲を、ボクセルモデルMとする範囲Eとして定める。なお、図2(B)は、2つの加工図形wgを含む最小矩形REを定めている。個々の加工図形wgにつき最小矩形REを求めた場合に、前記余裕範囲が一部でも重なる程度に複数の加工図形wgが互いに近接している場合は、その重なり部分が生じる一群の加工図形wgの周囲に、同図のように前記最小矩形REを求め、その外周に前記余裕範囲を取った範囲を、ボクセルモデルMとする範囲Eとする。NCプログラム13から切断経路Rを解析する手段は、前記切断経路計算手段5Rと共有しても良い。
ついで、入熱ボクセル計算手段6により、図4(A)のように、切断経路Rに対応するボクセルSである入熱ボクセルSを計算する。入熱ボクセルSが定まると、入熱温度設定手段7によって、各入熱ボクセルSに入熱温度を設定する。入熱温度は、前述のように、最上層のボクセルSが最も高く、下層(下側)に行くに従い、低い温度とする。
この場合に、上記の拡散方程式(1)を用いるため、精度の良いシミュレーションが行える。上記の拡散方程式(1)を用いるにつき、熱の拡散係数Dは、素材内用と空間との境界面用との2種類を用いるようにしたため、実際の素材内の伝播と境界面の伝播とに応じた適切な拡散を反映させることができて、温度変化のシミュレーションをより一層精度良く行うことができる。
特に、前記ボクセル温度計算手段は、切断済みの領域の各ボクセルSを空間として拡散の計算を行うようにしたため、温度変化のシミュレーションをより一層精度良く行うことができる。
4…モデル生成手段
5…切断領域計算手段
6…入熱ボクセル計算手段
7…入熱温度設定手段
8…ボクセル温度計算手段
9…温度変化可視化手段
10…素材形状変化計算手段
13…NCプログラム
E…範囲
Ga,Gb,Gc…画像
M…ボクセルモデル
S…ボクセル
W…素材
w…製品
Claims (5)
- 熱切断加工機により板状の素材の切断すべき部分を入熱により溶かして切断する過程における前記素材に生じる熱伝播状況をシミュレーションする装置であって、
前記素材の一部または全体をボクセル近似して各ボクセルに温度を持たせ、かつ隣接するボクセル間およびボクセルと空間との間にそれぞれ熱の伝わり易さの程度を示す拡散係数を持たせたボクセルモデルを作成するモデル生成手段と、
前記素材の切断経路上における単位時間毎に切断される領域を計算する切断領域計算手段と、
この切断領域計算手段で計算された領域から、前記ボクセルモデルの入熱すべきボクセルを定められ規則に従って計算する入熱ボクセル計算手段と、
この入熱ボクセル計算手段で計算された入熱すべき各ボクセルに、前記熱切断加工機による切断時の入熱で前記各ボクセルと対応する素材の部位に生じる入熱温度を設定する入熱温度設定手段と、
前記ボクセルモデルの各ボクセルにつき、前記入熱温度と前記拡散係数とを用いて前記単位時間毎の温度変化を計算するボクセル温度計算手段、
とを備えた熱切断加工機の素材熱伝播シミュレーション装置。 - 前記ボクセル温度計算手段は、切断済みの領域の各ボクセルを空間として前記単位時間毎の温度の計算を行う請求項2または請求項3記載の熱切断加工機の素材熱伝播シミュレーション装置。
- 前記ボクセル温度計算手段で計算された前記各ボクセルの温度を、画像表示装置の画面に、切断時間の経過に従って変化する画像として表示する温度変化可視化手段を設けた請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱切断加工機の素材熱伝播シミュレーション装置。
- 前記ボクセル温度計算手段で計算された温度の値を用いて、定められた規則により前記素材の変形状態を計算する素材形状変化計算手段を設けた請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の熱切断加工機の素材熱伝播シミュレーション装置。
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