JP2014015982A - ディスクブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両旋回時においても、キャリパボディを初期位置まで良好に復帰させることが可能で、且つブーツの他端部へのガイドピンの組付けが良好にできるブーツを備えたディスクブレーキ装置を提供する。
【解決手段】トルクメンバ(4)と係合するキャリパボディ(6),ガイドピン(10),ガイド穴(12)およびブーツ26が備えられたディスクブレーキ装置(2)であって、ブーツ(26)のガイド穴固定部(28)は、外周固定部(32)と、ガイドピン嵌合部(33)と、ガイドピン(10)の軸線方向のせん断剛性を設定可能なせん断剛性設定部(34)と、を有し、せん断剛性設定部(34)は、車両が旋回されディスクロータ(14)が支持部材(3)に対して変位することでキャリパボディ(6)が車両直進時より大きく変位される旋回時変位量変位しても、ガイドピン嵌合部(33)がガイドピン(10)との静摩擦力でガイドピン(10)を摺動しないせん断剛性に設定されている。
【選択図】図6
【解決手段】トルクメンバ(4)と係合するキャリパボディ(6),ガイドピン(10),ガイド穴(12)およびブーツ26が備えられたディスクブレーキ装置(2)であって、ブーツ(26)のガイド穴固定部(28)は、外周固定部(32)と、ガイドピン嵌合部(33)と、ガイドピン(10)の軸線方向のせん断剛性を設定可能なせん断剛性設定部(34)と、を有し、せん断剛性設定部(34)は、車両が旋回されディスクロータ(14)が支持部材(3)に対して変位することでキャリパボディ(6)が車両直進時より大きく変位される旋回時変位量変位しても、ガイドピン嵌合部(33)がガイドピン(10)との静摩擦力でガイドピン(10)を摺動しないせん断剛性に設定されている。
【選択図】図6
Description
本発明は、浮動キャリパ型のディスクブレーキ装置に関する。
従来、浮動キャリパ型のディスクブレーキ装置では、車両のナックル(支持部材)に固定されるトルクメンバのガイド孔に、キャリパボディのガイドピンがディスクロータと直交する方向に摺動自在に係合している(特許文献1参照)。キャリパボディには、ピストンが内蔵され、ピストンは、油圧の付与によって、ナックルにベアリングを介して固定されるハブに固定されたディスクロータにパッドを押し付ける。ピストンとシリンダとの間にはゴム製のピストンシールが介在されている。
特許文献1に示す従来技術では、ガイドピンとガイド孔との間には弾性部材で形成されたブーツの他端部が嵌合されている。他端部は、保持部と、通常制動時において、ガイドピンを摺動させることなく弾性変形によって保持可能なリップ部と、保持部とリップ部との間の切り込み部を有している。制動時には、油圧の作用によってキャリパボディが移動され、ガイドピンがガイド孔から抜ける方向に移動される。その後、制動解除時においては、制動時にリップ部の弾性変形内で変位したガイドピンが、リップ部の復帰弾性力によってトルクメンバに対して初期位置まで復帰される。また同様に、キャリパボディと対向する方向に変位したピストンもピストンシ−ルの復帰弾性力によってキャリパボディに対して初期位置まで復帰される。これにより、パッドをディスクロータから引き離しパッドの引きずりを防止している。
しかしながら、このように構成される従来技術において、例えば車両旋回時のように通常の制動時よりもキャリパボディ(ガイドピン)が大きく変位する場合においても、パッドの引きずり防止のために、ガイドピンを他端部の復帰弾性力によってトルクメンバに対して初期位置まで復帰させたいという要求がある。つまり、車両旋回時には、ナックルに固定されているためステアリング操作によって位置が固定されるキャリパボディと、ハブに固定されているためセルフアライニングトルクにより直進状態に戻ろうとするディスクロータ(車輪)との間にベアリング内のすきまガタ分だけ相対位置ズレが発生する。これにより、ディスクロータがパッドに対して倒れながらパッドを押し、直進時の通常制動時よりも大きくキャリパボディをトルクメンバに対して変位させてしまう。このような場合に対応するため、従来技術(特許文献1)に対し、通常制動時よりも大きなキャリパボディの変位中に、ガイドピンを摺動させず、且つガイドピン復帰時には、復帰弾性力によってガイドピン(キャリパボディ)を、初期位置まで復帰させることが可能な他端部とする必要がある。また、車両旋回時におけるキャリパボディ変位中にガイドピンを摺動させないためには、他端部とガイドピンとの間に所定の静摩擦力を必要とする。しかし、その静摩擦力を確保するために他端部の面圧をあげすぎるとガイドピンの他端部への組み付けが困難になることが判っている。この点についても注意が必要である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両旋回時においても、キャリパボディを初期位置まで良好に復帰させることが可能で、且つブーツの他端部へのガイドピンの組付けが良好にできるブーツを備えたディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に係るディスクブレーキ装置は、車体に支持された支持部材に回転可能に支承された車輪と共に回転するディスクロータに摩擦パッドを押し付けるピストンを備え、前記支持部材に固定されるトルクメンバと係合して前記ディスクロータの平面に対し直交方向に移動可能なキャリパボディと、前記トルクメンバおよび前記キャリパボディの一方に固定され前記直交方向に延在するガイドピンと、前記トルクメンバおよび前記キャリパボディの他方に設けられ前記ガイドピンと摺動可能に嵌合するガイド穴と、前記ガイドピン側にガイドピン固定部で固定され前記ガイド穴側にガイド穴固定部で固定され両固定部間に形成された伸縮部で前記ガイドピンの外周を保護するブーツと、が備えられたディスクブレーキ装置であって、前記ブーツのガイド穴固定部は、前記ガイド穴に圧着される外周固定部と、前記外周固定部の内周側で前記ガイドピンと密着嵌合するガイドピン嵌合部と、前記外周固定部と前記ガイドピン嵌合部との間に設けられ前記ガイド穴固定部の前記伸縮部と反対側の端面に開口する環状凹部により形成される前記ガイドピンの軸線方向のせん断剛性を設定可能なせん断剛性設定部と、を有し、前記せん断剛性設定部は、車両が旋回され前記ディスクロータが前記支持部材に対して変位することで前記キャリパボディが車両直進時の変位量より大きく変位される旋回時変位量変位しても、前記ガイドピン嵌合部が前記ガイドピンとの静摩擦力で前記ガイドピンを摺動しないせん断剛性に設定されている。
請求項2に係るディスクブレーキ装置は、請求項1において、前記せん断剛性設定部は、前記パッドが摩耗することにより前記キャリパボディが前記旋回時変位量より大きい追随変位量変位されると、前記ガイドピン嵌合部が前記ガイドピンとの静摩擦力に抗して前記ガイドピンを摺動するように、前記せん断剛性が設定されている。
請求項3に係るディスクブレーキ装置は、請求項1または2において、前記ブーツは、前記ガイドピン嵌合部から前記伸縮部側にガイドピン導入部が形成されている。
請求項4に係るディスクブレーキ装置は、 請求項1乃至3のいずれか1項において、前記ガイドピンの先端部には振動防止部材が嵌合されているディスクブレーキ装置。
請求項1に係る発明によれば、ガイド穴固定部は、外周固定部とガイドピン嵌合部との間に、伸縮部と反対側の端面に開口する環状凹部により形成されるガイドピンの軸線方向のせん断剛性が設定可能なせん断剛性設定部を有している。せん断剛性設定部では、せん断剛性が、車両が旋回されキャリパボディが旋回時変位量変位したときに、ガイドピン嵌合部が静摩擦力によってガイドピンを摺動せず、かつ外周固定部とガイドピン嵌合部との間の相対移動を許容するよう設定されている。これにより、キャリパボディが旋回時変位量変位しても、車両旋回後には、せん断剛性設定部の弾性力によってキャリパボディ(ガイドピン)をトルクメンバに対して初期位置まで良好に復帰させ、摩擦パッドによる引き摺りを防止できる。なお、このとき、ガイド穴固定部は、ガイド穴に圧着される外周固定部および外周固定部の内周側でせん断剛性設定部を介してガイドピンと密着嵌合するガイドピン嵌合部を有している。これにより、ガイドピン嵌合部はガイドピンに対し充分な大きさの静摩擦力を簡易に発生させることができる。
また、せん断剛性設定部は環状凹部の底面とガイド穴固定部の伸縮部側の端面との間で形成されている。そして、環状凹部は、ガイド穴固定部の伸縮部と反対側の端面に形成されている。これにより、環状凹部は、型抜きがしやすいので、簡易にせん断剛性設定部を形成できブーツを低コストで製造できる。
また、せん断剛性設定部を、外周固定部とガイドピン嵌合部との間に設けているので、従来技術のようにガイドピン嵌合部に半径方向の切り欠きを設ける必要がない。これにより、ガイドピン嵌合部を面圧が突出して高くなる部分を設けず形成できるので、ガイドピンをガイドピン嵌合部に組み付ける時には、ガイドピンがガイドピン嵌合部で引っかかることなくスムーズに挿入できる。
また、せん断剛性設定部は環状凹部の底面とガイド穴固定部の伸縮部側の端面との間で形成されている。そして、環状凹部は、ガイド穴固定部の伸縮部と反対側の端面に形成されている。これにより、環状凹部は、型抜きがしやすいので、簡易にせん断剛性設定部を形成できブーツを低コストで製造できる。
また、せん断剛性設定部を、外周固定部とガイドピン嵌合部との間に設けているので、従来技術のようにガイドピン嵌合部に半径方向の切り欠きを設ける必要がない。これにより、ガイドピン嵌合部を面圧が突出して高くなる部分を設けず形成できるので、ガイドピンをガイドピン嵌合部に組み付ける時には、ガイドピンがガイドピン嵌合部で引っかかることなくスムーズに挿入できる。
請求項2に係る発明によれば、せん断剛性は、パッドが摩耗してキャリパボディが旋回時変位量より大きい追随変位量変位された場合に、ガイドピン嵌合部がガイドピンとの静摩擦力に抗してガイドピンを摺動するよう設定されている。このため、摩擦パッドが旋回時変位量をこえてディスクロータ方向に変位してもディスクロータに接触しない程度摩耗した場合には、摩耗した分だけガイドピン嵌合部がガイドピンを摺動する。その後、キャリパボディは、せん断剛性設定部の弾性力によって初期位置に摺動分を加算した位置、即ち、初期位置より摩耗した分だけ手前の位置まで復帰される。これにより、摩耗パッドとディスクロータとの間の間隔を良好に規制できる。
請求項3に係る発明によれば、ガイドピン嵌合部から伸縮部側にガイドピン導入部が形成されている。このため、ガイドピンの引っかかりが発生しやすい、ガイドピン嵌合部の入口部への導入をスムーズなものとすることができる。
請求項4に係る発明によれば、ガイドピンの先端部には振動防止部材が嵌合されているので、車両の振動によって、ガイドピンと、ガイドピンが挿入されるガイド穴との衝突が発生したときの衝突音、つまり異音の発生を抑制できる。また、ガイドピン嵌合部は、請求項1で述べたとおり、面圧が突出して高くなる部分を設けず形成できるので、ガイドピンをガイドピン嵌合部に密着させながら嵌入させていっても振動防止部材がガイドピン嵌合部でひっかかることなく、スムーズに組み付けが行える。
以下、本発明に係るディスクブレーキ装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のディスクブレーキ装置2(図2参照)は、図1に示す車体に支持されたサスペンションのナックル3(本発明の支持部材に該当する)に固定された本発明の他方に該当するトルクメンバ4(図2参照)と、トルクメンバ4に支持された本発明の一方に該当するキャリパボディ6(図2参照)とを有している。
図2に示すように、キャリパボディ6は、1対のガイドピン10を有し、トルクメンバ4にはガイドピン10が嵌合される1対のガイド穴12が設けられている。ガイドピン10は、キャリパボディ6のピン固定部7にボルト8で固定され、ディスクロータ14の平面と直交方向に延在している。ガイドピン10を、対応するガイド穴12にそれぞれ摺動可能に嵌合することにより、キャリパボディ6がトルクメンバ4に対して、ディスクロータ14の平面と直交する方向に移動可能に係合される。なお、トルクメンバ4を一方として、ガイドピン10を固定し、キャリパボディ6を他方としてガイド穴12を設けてもよい。
図2,図5に示すように、いずれか1方のガイドピン10の先端部には先端環状溝10bが刻設されている。そして、先端環状溝10bには円筒状の振動防止部材48が嵌合されている。振動防止部材48は、樹脂またはゴム部材によって形成されている。
図1に示すように、ディスクロータ14は、車輪を支持するハブ5に固定されている。ハブ5は車体に支持されたナックル3に回転可能に支承されている。そして、ディスクロータ14は、車輪およびハブ5と共に回転する。通常、ハブ5はボールベアリング9を介してナックル3に固定されている。このため、ハブ5とナックル3との間、即ちディスクロータ14とディスクブレーキ装置2との間では、ボールベアリング9内にあるすきま分だけ相対位置ズレが許容されている。
図3に示すように、キャリパボディ6は、ディスクロータ14を挟んで対向する一対の摩擦パッド16,18を備えている。アウタ側、インナ側の摩擦パッド16,18はキャリパボディ6に保持されている。また、キャリパボディ6は、ピストン20を内蔵し、ピストン20は、キャリパボディ6のシリンダ室22内に、摩擦パッド18の押し付け方向に沿ってスライド自在に収容されている。
シリンダ室22の円筒内周には、環状溝が形成され、環状溝内にピストンシール24の外周部が嵌入されて外周面が環状溝の底面と密着している。また、ピストンシール24の内周面がピストン20の外周面に密着している。これにより、ピストン20とシリンダ室22との間が液密にシールされている。そして、通常制動時の作動を説明する図4に示すように、通常制動時にシリンダ室22に図略の油口から油圧が導入されると、ピストン20が油圧の大きさに応じてディスクロータ14方向に所定量だけ、矢印A方向に変位する。そして、ピストン20は摩擦パッド18をディスクロータ14に押し付ける。
ピストン20をディスクロータ14方向に駆動して、インナ側の摩擦パッド18をディスクロータ14に押し付けると、その反力でキャリパボディ6がピストン20の変位と反対方向(矢印B方向)にスライドする。これにより、キャリパボディ6のつめ部6aが、アウタ側の摩擦パッド16をディスクロータ14に押し付け、摩擦パッド18,16がディスクロータ14を挟み込み制動力を発生させる。このとき、ガイド穴12に嵌合されるガイドピン10の作動は図4中のガイドピン10部に示す矢印方向の通りである。
なお、このとき、制動が解除されシリンダ室22から油圧が抜けると、ピストン20は、ピストンシール24の復帰弾性力によって、キャリパボディ6に対して初期位置まで復帰される。また、このときキャリパボディ6も同様に、後述するブーツ26のガイド穴固定部28の復帰弾性力によって、トルクメンバ4に対して初期位置まで復帰されるが、詳細については後述する。
図5は、ガイド穴12に挿入されたガイドピン10の拡大図であり、ガイド穴12の入口近くのガイドピン10外周に、本発明に係るブーツ26が装着されている。そして、このブーツ26によって、ガイドピン10の外周が保護されるとともに、ガイド穴12内に外部から水やゴミ等が入らないようになっている。
ブーツ26は、ゴム等の弾性部材で形成した筒状部材であり、図5に示すように、ガイドピン固定部27,ガイド穴固定部28,ガイドピン導入部35および伸縮部30を有している。伸縮部30は、ガイドピン固定部27とガイド穴固定部28との間に蛇腹状に形成されている。詳細には、伸縮部30は、ガイド穴固定部28に接続されるガイドピン導入部35に連結されてガイドピン固定部27とガイド穴固定部28との間に形成されている。
ガイドピン固定部27は、環状溝10aに嵌合され固定されている。環状溝10aは、ガイドピン10がキャリパボディ6のピン固定部7に固定される側の端部の外周に刻設されている。
ガイド穴固定部28は、ガイド穴12の入口近傍のガイドピン10外周部に配設されている。図6の拡大図に示すように、ガイド穴固定部28は、外周固定部32,ガイドピン嵌合部33およびせん断剛性設定部34を有している。外周固定部32は、ガイド穴12の開口部近傍の内周面に形成された環状溝12aに嵌入され、環状溝12aの底面に密着している。外周固定部32には伸縮部30と反対方向に延在される環状の外周延在部42が接続されている。そして、環状溝12aには、外周固定部32とともに外周延在部42も嵌入されている。
ガイドピン嵌合部33は、ガイド穴固定部28において、外周固定部32の内周側に形成されており、ガイドピン10と密着嵌合している。ガイドピン嵌合部33は、図6に示すように、溝等を有さない連続面として形成されている。ガイドピン嵌合部33には、外周延在部42と同一方向に延在される環状の嵌合延在部44が接続されている。そして、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44が、ガイドピン10と密着している。また、外周延在部42と嵌合延在部44との間の空間によって、後に詳述する環状凹部46が形成されている。
ガイドピン嵌合部33の内径よりも大きな径を有したガイドピン10が、ガイドピン嵌合部33に嵌合されることにより、外周固定部32が環状溝12aの底面に圧着され、外周固定部32とガイドピン嵌合部33との間が圧縮される。これによって、ガイドピン嵌合部33とガイドピン10との間には所定の静摩擦力が発生される。つまり、この静摩擦力は外周固定部32とガイドピン嵌合部33との間の圧縮の度合いを変更することによって調整が可能となる。そして、ガイドピン嵌合部33は連続面で形成されているので、ガイドピン嵌合部33がガイドピン10の外周面に付与する面圧を略均一なものとすることができるともに、所定の値(許容値)以下に設定し易くなっている。
また、本実施形態においては、ガイドピン嵌合部33に接続される嵌合延在部44も溝等を有さない連続面で形成されている。そして、嵌合延在部44の内径よりも大きな径を有したガイドピン10との嵌合により、ガイドピン10外周面は嵌合延在部44によって所定の緊迫力で締め付けられる。このとき、嵌合延在部44がガイドピン10外周面に対して付与する面圧は、ガイドピン嵌合部33がガイドピン10外周面に対して付与する面圧よりも小さい値であるものの、接触面が連続面であるので、略均一な面圧となっている。
このような構成によって、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44と、ガイドピン10との間で、所望の静摩擦力および動摩擦力が得られるようになっている。ただし、この態様に限らず、あまり大きな力とならない嵌合延在部44の面圧は考慮にいれず、ガイドピン嵌合部33とガイドピン10との間のみで、所望の静摩擦力および動摩擦力が得られるように設定してもよい。
せん断剛性設定部34は、外周固定部32とガイドピン嵌合部33との間に形成され、ガイドピン10の軸線方向のせん断剛性の設定が可能となっている。具体的には、せん断剛性設定部34は、前述した環状凹部46の底面46aとガイド穴固定部28の伸縮部30側の端面との間で形成されている。このように、環状凹部46は、ガイド穴固定部28の伸縮部30と反対側の端面に開口して形成されるので、製造時に型抜きがしやすく、簡易にせん断剛性設定部34を形成でき、ブーツ26を低コストで製造できる。
なお、上記において、せん断剛性とは、ガイドピン10が軸線方向に変位したときに、外周固定部32とガイドピン嵌合部33とが相対変位することを妨げる力の大きさをいうものとする。よって、せん断剛性が大きいときには、外周固定部32とガイドピン嵌合部33とが相対変位しにくい。また、せん断剛性が小さいときには、せん断剛性設定部34が弾性変形しやすく外周固定部32とガイドピン嵌合部33とが相対変位しやすい。
そして、本発明においては、車両が旋回され、ディスクロータ14が車体のナックル3に対して変位することでキャリパボディ6(ガイドピン10)が車両直進時の変位量より大きい旋回時変位量(例えば200μm)変位できるようせん断剛性を適切な小さな値に設定するものである。そして、このとき、ガイドピン10が例えば200μm変位中にガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44を摺動しないようガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44とガイドピン10との間の静摩擦力が設定される。
なお、上記において、車両直進時の変位量とは、車両直進時における通常の制動時のキャリパボディ6(ガイドピン10)のトルクメンバ4に対する変位量のことをいう。発明者の行なった実験においては、例えば車両直進時における通常制動時のキャリパボディ6のトルクメンバ4に対する変位量は、通常200μmまではいかない場合が多いのに対し、車両旋回時の旋回時変位量は前述した略200μmとなることが判っている。ただし、これはあくまで一例であり、設定したい車両毎に旋回時変位量は異なる。
ここで、キャリパボディ6が、旋回時変位量変位する理由について図7に基づき説明する。図7は、車両旋回時の1例として、車両左旋回時における左前輪のディスクブレーキ装置2を示した図である。図7には、ディスクロータ14,摩擦パッド16(アウタ側),摩擦パッド18(インナ側),キャリパボディ6およびディスクロータ14だけではなく、トルクメンバ4側のガイド穴12、およびキャリパボディ6に固定されガイド穴12に嵌合されるガイドピン10も同時に示している。
車両旋回時において、キャリパボディ6の変位量が大きくなる理由は、ディスクブレーキ装置2とディスクロータ14の取付け位置に由来する。前述したように、トルクメンバ4およびキャリパボディ6は車両のナックル3(支持部材)に固定され、ディスクロータ14はボールベアリング9を介してナックル3に固定されたハブ5に固定されている(図1参照)。
このため、車両旋回時では、運転者のステアリングの操舵に応じて位置が固定されるキャリパボディ6(ナックル3)と、セルフアライニングトルクにより直進状態に戻ろうとするディスクロータ14(車輪およびハブ5)との間にはボールベアリング9内のすきまガタ分だけ相対位置ズレが発生する。
これにより、図7に示すように、ディスクロータ14に矢印C方向への倒れが発生する。そして、ディスクロータ14がアウタ側の摩擦パッド16を矢印D方向に押し、延いてはキャリパボディ6を摩擦パッド16と同じ方向に変位させる。このときガイドピン10も、ガイド穴12内を矢印方向へ変位することとなる。そして、このときの、ガイドピン10の変位量が本実施形態においては略200μmとなっている。なお、図7中の2点鎖線は、変位後の摩擦パッド16、18およびキャリパボディ6を示している。
本実施形態においては、このように、キャリパボディ6が、ガイドピン10の軸線方向に、例えば200μm変位しても、ガイド穴固定部28のガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44がガイドピン10を摺動せずガイドピン10と密着したまま変位可能とするものである。これに対応するためのせん断剛性設定部34のせん断剛性の大きさ、およびガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44とガイドピン10の外周面との間の静摩擦力が適切な値に設定される。なお、本実施形態においては、静摩擦力の大きさは、従来技術における他端部の静摩擦力の大きさと同等に設定するものとする。そして、これらは、事前の実験によって決定される。
また、本実施形態においては、キャリパボディ6の変位量が旋回時変位量である200μmを越えて本発明に係る追随変位量変位した場合には、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44が、ガイドピン10との間の静摩擦力に抗して、ガイドピン10の外周面を所望の動摩擦力で摺動するよう設定される。ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44とガイドピン10の外周面との間では、このような動摩擦力に対する条件も満たすようにガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44の諸元が決定される。
なお、このときの、所望の動摩擦力は、例えば、車両振動時に、当該振動によってガイドピン10がガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44を振動に応じた速度で摺動してしまわない程度の動摩擦力であればよい。ただし、この態様に限らず、動摩擦力は考慮せず、静摩擦力のみ設定し、動摩擦力は成り行きとしてもよい。これによっても、相応の効果は期待できる。
このように、キャリパボディ6の変位量が200μmを越えた場合において、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44が、ガイドピン10の外周面を摺動するように設定したことにより、摩擦パッド16,18のディスクロータ14との当接面16a,18aの摩耗に対する対応が可能となる。
つまり、例えば車両制動時(直進時)において、運転者がブレーキを踏込んだときに、摩擦パッド16,18の当接面16a,18aが200μmの作動をさせてもディスクロータ14と当接しない程度に摩耗していたとする。この場合、ガイドピン10(キャリパボディ6)は、摩耗した分だけ、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44に対して摺動する。
このため、制動解除後には、ガイドピン10(キャリパボディ6)が、せん断剛性設定部34の復帰弾性力によって、設定値分の200μmだけ復帰される。つまり、キャリパボディ6は、せん断剛性設定部34の復帰弾性力によって、初期位置に摺動した長さ(つまり摩耗量)を加算した位置、即ち、初期位置より摩耗量だけ手前の位置まで復帰される。これにより、摩擦パッド16,18とディスクロータ14との間の間隔を最大200μmまでに規制できる。
なお、上記において、せん断剛性を設定するのに用いるガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44とガイドピン10の外周面とを摺動させない変位量を200μmとしたが、これに限るものではない。例えば、発明者の実験によれば、ブレーキを強く踏込んだ場合のガイドピン10(キャリパボディ6)のトルクメンバ4に対する変位量の最大値は、略500μmである。
このため、500μm変位しても、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44がガイドピン10上を摺動しないようせん断剛性設定部34によるせん断剛性の大きさを設定してもよい。さらには、200μm〜500μmの間で、どの変位量を用いてせん断剛性を設定してもよい。その際には、上記の説明における200μmの部分を、新たに設定した200μm〜500μmのいずれかの設定値に読み換えればよい。
ガイドピン導入部35は、ガイドピン嵌合部33から伸縮部30側に向かって形成されている。図6に示すように、ガイドピン導入部35は、ガイドピン嵌合部33との接続部を支点として若干回動可能に連結されている。これによって、ガイドピン10を係入させていく場合に発生しやすいとされる組み付け初期の引っかかりを、ガイドピン導入部35から係入させていくことによって抑制し、ガイドピン嵌合部33への導入をスムーズなものとすることができる。
次に、ディスクブレーキ装置2の作動について、図8に示すガイドピン嵌合部摩擦力−ガイドピンストロークグラフ,図9に示すガイドピンとガイドピン嵌合部との接触面圧グラフおよび図10に示すガイドピン組み付け荷重グラフに基づき説明する。なお、下記説明では、車両が左旋回中の場合における、左前輪に設けられたディスクブレーキ装置2の作動について説明する。
運転者がステアリングを操舵し、車両が左旋回すると、前述した作用によって、ディスクロータ14がアウタ側の摩擦パッド16を押して、直進時の通常制動時よりも大きなキャリパボディ6の変位量である旋回時変位量(例えば200μm)を発生させる(図7参照)。
これによって、キャリパボディ6に固定されたガイドピン10は、トルクメンバ4のガイド穴12に設けられたブーツ26が有するガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44の内周面をガイド穴12の奥方向に向かって変位(ストローク)する。
このときガイド穴固定部28の外周固定部32とガイドピン嵌合部33との間に形成されたせん断剛性設定部34が、ガイドピン10が200μm変位するよう弾性変形して撓む。その間、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44はガイドピン10と密着状態を維持している。
上記について、図8に基づき説明する。なお、図8において、発明品の特性は実線で示し、従来技術の特性を破線で示している。図8において縦軸は、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44のガイドピン10に対する摩擦力であり、横軸がガイドピンストロークである。図8の実線(発明品の特性)に示すように、ガイドピン10は、E点(ガイドピン10の変位始め)からF点(ガイドピン10の変位終わり)までの間において、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44がガイドピン10を摺動せず、せん断剛性設定部34の弾性変形内で作動している。F点に近づいていくと、せん断剛性設定部34では徐々に剛性が大きくなっていく。これによりガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44のガイドピン10に対する静摩擦力が上昇していく。
その後、F点を越えると、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44のガイドピン10に対する静摩擦力が、設定された静摩擦力を越えるため、ガイドピン10は、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44との密着状態を脱して滑りだす。これにより、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44のガイドピン10に対する摩擦力(動摩擦力)は低下して所定の値(G参照)となり、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44は所定の動摩擦力に抗してガイドピン10上を摺動する。このとき、本実施形態においては、所定の動摩擦力は、従来技術の動摩擦力と略同等となるようにしている。
そして、ステアリングが戻されて旋回が終了し、車両が直進状態となると、車両旋回中におけるガイドピン10の変位量がF点までの間であった場合には、キャリパボディ6はせん断剛性設定部34の復帰弾性力によって初期位置Eまで復帰される。これによって、インナ側摩擦パッド18とディスクロータ14が当接し、引き摺りを発生させることを防止できる。
また、旋回中においてガイドピン10の変位量がF点を越えてしまっても、キャリパボディ6は、せん断剛性設定部34の復帰弾性力によって初期位置EにF点を越えた変位量を加算した位置、つまり、初期位置Eに対して、F点を越えた変位量分だけ手前の位置まで復帰する。
なお、図8には、参考のため、従来技術のディスクブレーキ装置において、通常制動を実施し、ガイドピン(キャリパボディ)を作動させた場合のブーツの他端部のガイドピンに対する摩擦力−ガイドピンストローク特性(破線)が載せてある。これをみて判るように、本発明品におけるガイドピン10がガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44を摺動し始めるときの静摩擦力および摺動し始めたのちの動摩擦力が、従来技術品の特性と同じになるよう設定してある。これにより、従来と同様の構成を有するディスクブレーキ装置に適用し易くなる。
また、参考のため、図8には、ガイドピン10が、強めのブレーキ制動時にガイドピン10(キャリパボディ6)が500μm変位しても、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44がガイドピン10上を摺動しないようせん断剛性設定部34によるせん断剛性が設定された場合における、摩擦力−ガイドピンストローク特性(2点鎖線)が載せてある。なお、作用については発明品と同様であるので、詳細な説明は省略する。
次に、ガイドピン10をガイドピン嵌合部33に組み付けた場合における、ガイドピン10とガイドピン嵌合部33との接触面圧およびガイドピン組み付け荷重について、図9および図10のグラフに基づき説明する。いずれの図も、発明者によって実際に評価された結果となっている。なお、嵌合延在部44はガイドピン嵌合部33よりも明らかに面圧が低いので、本評価においては、嵌合延在部44の評価は行なわずガイドピン嵌合部33の評価結果のみグラフに載せてある。
図9のグラフでは縦軸がガイドピン嵌合部33のガイドピン10との接触面圧であり、横軸がガイドピン嵌合部33のガイドピン10との接触位置を示している。図9のグラフによれば、ガイドピン嵌合部33の全長に亘り、許容値に対してガイドピン10に対するガイドピン嵌合部33の面圧が小さくなっていることが判る。
また、図10のグラフでは縦軸がガイドピン組み付け荷重であり、発明品の組み付け荷重の最大値を示している。図10のグラフによれば、ガイドピン10をガイドピン嵌合部33の入口側から挿入していったときの組み付け荷重、即ち、押込み荷重が許容値に対して明らかに小さくなっていることが判る。なお、いずれの許容値も、事前に発明者によって決定された値であり、ひっかかりなくガイドピン10をガイドピン嵌合部33に組み付けていくための基準とする値である。よって設定値は任意に決定すればよい。
つまり、せん断剛性設定部34は、外周固定部32とガイドピン嵌合部33との間に設けているので、ガイドピン10の組み付け時においては、従来技術のようにガイドピン嵌合部33に半径方向の切り欠きを設ける必要がない。これにより、ガイドピン嵌合部33は連続面で形成できるので、面圧が突出して高くなる部分を設けず形成できる。このため、ガイドピン10をガイドピン嵌合部33に組み付ける際、ガイドピン10はガイドピン嵌合部33で引っかかることなくスムーズに挿入される。なお、ガイドピン嵌合部33に接続される嵌合延在部44も連続面で形成されているので、面圧が突出して高くなる部分はなく、ガイドピン10をスムーズに挿入できる。
そして、先端部に振動防止部材48が嵌合されたガイドピン10をガイドピン嵌合部33に組み付ける際にも、振動防止部材48がガイドピン嵌合部33にひっかかり組み付けが困難になることがない。これも発明者により実験によって確認されている。
また、本実施形態においては、ガイドピン導入部35を備えている。このため、ガイドピン10挿入時には、ガイドピン導入部35を経由してガイドピン嵌合部33に進入するので、さらにスムーズに組み付けが行える。ただし、図11に示す変形例1のように、ガイドピン導入部35を廃止してもよく、これによってもガイドピン10をスムーズに組み付けるという効果は充分得られる。
さらに、本実施形態においては、車両が左旋回中である場合における左前輪に設けられたディスクブレーキ装置2の作動について説明した。しかし、車両が右旋回中で有る場合における右前輪に設けられたディスクブレーキ装置2の作動についても、上記で説明した作動と同様となる。
また、右旋回中の車両における左前輪のディスクブレーキ装置2、および左旋回中の車両における右前輪のディスクブレーキ装置2の作動については、倒れたディスクロータ14がインナ側の摩擦パッド18を押すことになる。これにより、ディスクロータ14は、ガイドピン10(キャリパボディ6)をガイド穴12から抜け出る方向に変位させる。しかし、このときにもガイドピン10はガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44との間で摺動することはない。そして、ガイドピン10(キャリパボディ6)がディスクロータ14によって押され変位した後に、変位した分だけせん断剛性設定部34の作用により初期位置まで好適に復帰される。これにより、旋回終了後に、アウタ側の摩擦パッド16とディスクロータ14とが当接し、引き摺りを発生させることが防止される。
なお、本実施形態に係るディスクブレーキ装置2では、構造上、車両旋回時に、ディスクロータ14がアウタ側の摩擦パッド16を押したことにより変位されるガイドピン10(キャリパボディ6)の変位量よりも、ディスクロータ14がインナ側の摩擦パッド18を押したことにより変位されるガイドピン10(キャリパボディ6)の変位量のほうが小さくなる。これは、ディスクロータ14がインナ側の摩擦パッド18を押した場合には、摩擦パッド18の変位によって押されるピストン20が単独で変位可能なためである。これにより、ガイドピン10(キャリパボディ6)の変位量が吸収され、変位量は小さくなる。このため、本実施形態で説明したディスクロータ14がアウタ側の摩擦パッド16を押したときの旋回時変位量に基づき、せん断剛性を設定しておけば、左右の車両旋回方向における左右前輪のディスクブレーキ装置2の全ての作動に対して対応可能となる。
上述の説明から明らかなように、本実施形態においては、ガイド穴固定部28は、外周固定部32とガイドピン嵌合部33との間に、伸縮部30と反対側の端面に開口する環状凹部46により形成されるガイドピン10の軸線方向のせん断剛性が設定可能なせん断剛性設定部34を有している。せん断剛性設定部34では、車両が旋回されキャリパボディ6が旋回時変位量変位しても、ガイドピン嵌合部33がガイドピン10との静摩擦力でガイドピン10を摺動しないせん断剛性に設定されている。
これにより、キャリパボディ6が旋回時変位量変位しても、ガイドピン嵌合部33が静摩擦力によってガイドピン10上を摺動しないとともに、車両旋回後には、せん断剛性設定部34の弾性力によってキャリパボディ6(ガイドピン10)をトルクメンバ4に対して初期位置まで、良好に復帰させることができる。
また、せん断剛性設定部34は環状凹部46の底面46aとガイド穴固定部28の伸縮部30側の端面との間で形成されている。そして、環状凹部46は、ガイド穴固定部28の伸縮部30と反対側の端面に形成されている。これにより、環状凹部46は、型抜きがしやすいので、簡易にせん断剛性設定部34を形成できるとともにブーツ26を低コストで製造できる。
また、せん断剛性設定部34は、外周固定部32とガイドピン嵌合部33との間に設けているので、従来技術のようにガイドピン嵌合部33に半径方向に切り欠きを設ける必要がない。これにより、ガイドピン嵌合部33では面圧が突出して高くなる部分を設けず形成できるので、ガイドピン10をガイドピン嵌合部33に組み付ける時には、ガイドピン10がガイドピン嵌合部33で引っかかることなくスムーズに挿入できる。
また、本実施形態によれば、せん断剛性は、摩耗パッド16,18が摩耗してキャリパボディ6が旋回時変位量より大きい追随変位量変位された場合に、ガイドピン嵌合部33がガイドピン10との静摩擦力に抗してガイドピンを摺動するよう設定されている。このため、摩耗パッド16,18が旋回時変位量をこえてもディスクロータ14に接触しない程度に摩耗した場合には、摩耗した分だけガイドピン嵌合部33がガイドピン10を摺動し、その後、キャリパボディ6は、せん断剛性設定部34の弾性力によって初期位置に摺動した距離を加算した位置まで復帰される。これにより、摩耗パッド16,18とディスクロータ14との間の間隔が適正な値を越えることのないよう規制できる。
また、本実施形態によれば、ガイドピン嵌合部33から伸縮部30側にガイドピン導入部35が形成されている。このため、ガイドピン10の引っかかりが発生しやすい、ガイドピン嵌合部33の入口部への導入をスムーズなものとすることができる。
また、本実施形態によれば、ガイドピン10の先端部には振動防止部材48が嵌合されているので、車両の振動によって、ガイドピン10と、ガイドピン10が挿入されるガイド穴12との衝突が発生したときの衝突音、つまり異音の発生を抑制できる。また、上述のとおり、ガイドピン嵌合部33を、面圧が突出して高くなる部分を設けず形成できる。これにより、ガイドピン10をガイドピン嵌合部33に嵌合させるため、挿入していっても振動防止部材48がガイドピン嵌合部33にひっかかることなく、スムーズに組み付けが行える。
なお、上記実施形態においては、環状凹部46を連続した円環形状で形成した。しかし、この形状に限らず、環状凹部46を図12に示す断続した形状によって形成してもよい。
また、本実施形態においては、ブーツ26のガイド穴固定部28の形状を図6に示す形状とした。しかしこの形状に限らず、変形例として図13(変形例2)および図14(変形例3)に示すような形状としてもよい。図13(変形例2)では、外周延在部52の方が嵌合延在部54よりも図面左方向に向かって長くなるよう形成されている。また図14(変形例3)では、嵌合延在部64の方が外周延在部62よりも図面左方向に向かって長くなるよう形成されている。これによっても効果は得られる。
また、本実施形態においては、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44,54,64を連続面とした。しかし、この態様に限らず、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44,54,64の少なくとも一方の内周面全周に亘って潤滑油を保持するための窪みを設けてもよい。また、その窪みは、連続して環状を形成せず断続的に形成されていてもよい。
なお、このとき、環状の窪みの大きさは、窪みが形成されることによって、ガイドピン10と密着する、ガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44,54,64の少なくとも一方の密着面の面圧を所定値以下とすることが条件である。そして、当該所定値以下の面圧とは、ガイドピン10をガイドピン嵌合部33および嵌合延在部44に挿入および摺動させたときに、ひっかかりのない面圧の大きさであり、事前に実験等によって任意に設定すればよい。
2・・・ディスクブレーキ装置、 3・・・支持部材(ナックル)、 4・・・トルクメンバ、 6・・・キャリパボディ、 10・・・ガイドピン、 12・・・ガイド穴、 14・・・ディスクロータ、 16,18・・・摩擦パッド、 20・・・ピストン、 22・・・シリンダ室、 24・・・ピストンシール、 26・・・ブーツ、 27・・・ガイドピン固定部、 28・・・ガイド穴固定部、 30・・・伸縮部、 32・・・外周固定部、 33・・・ガイドピン嵌合部、 34・・・せん断剛性設定部、 35・・・ガイドピン導入部、 42,52,62・・外周延在部、 44,54,64・・嵌合延在部、 46・・・環状凹部、 48・・・振動防止部材。
Claims (4)
- 車体に支持された支持部材(3)に回転可能に支承された車輪と共に回転するディスクロータ(14)に摩擦パッド(16,18)を押し付けるピストン(20)を備え、前記支持部材に固定されるトルクメンバ(4)と係合して前記ディスクロータの平面に対し直交方向に移動可能なキャリパボディ(6)と、前記トルクメンバおよび前記キャリパボディの一方に固定され前記直交方向に延在するガイドピン(10)と、前記トルクメンバおよび前記キャリパボディの他方に設けられ前記ガイドピンと摺動可能に嵌合するガイド穴(12)と、前記ガイドピン側にガイドピン固定部(27)で固定され前記ガイド穴側にガイド穴固定部(28)で固定され両固定部間に形成された伸縮部(30)で前記ガイドピンの外周を保護するブーツ(26)と、が備えられたディスクブレーキ装置(2)であって、
前記ブーツのガイド穴固定部は、前記ガイド穴に圧着される外周固定部(32)と、前記外周固定部の内周側で前記ガイドピンと密着嵌合するガイドピン嵌合部(33)と、前記外周固定部と前記ガイドピン嵌合部との間に設けられ前記ガイド穴固定部の前記伸縮部と反対側の端面に開口する環状凹部(46)により形成される前記ガイドピンの軸線方向のせん断剛性を設定可能なせん断剛性設定部(34)と、を有し、
前記せん断剛性設定部は、車両が旋回され前記ディスクロータが前記支持部材に対して変位することで前記キャリパボディが車両直進時の変位量より大きく変位される旋回時変位量変位しても、前記ガイドピン嵌合部が前記ガイドピンとの静摩擦力で前記ガイドピンを摺動しないせん断剛性に設定されているディスクブレーキ装置。 - 請求項1において、
前記せん断剛性設定部は、前記パッドが摩耗することにより前記キャリパボディが前記旋回時変位量より大きい追随変位量変位されると、前記ガイドピン嵌合部が前記ガイドピンとの静摩擦力に抗して前記ガイドピンを摺動するように、前記せん断剛性が設定されているディスクブレーキ装置。 - 請求項1または2において、
前記ブーツは、前記ガイドピン嵌合部から前記伸縮部側にガイドピン導入部(35)が形成されているディスクブレーキ装置。 - 請求項1乃至3のいずれか1項において、前記ガイドピンの先端部には振動防止部材(48)が嵌合されているディスクブレーキ装置。
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