本発明は、クランクと、走行補助用電動機と、変速機とを有する自転車、を制御する自転車用制御装置に関する。
人の踏力に加え、モータ駆動力で走行補助を行う電動アシスト自転車が、最近では普及してきている。この電動アシスト自転車に変速機が装備されている場合、その変速機による変速動作がスムーズに行われるように、特許文献1で所定の制御が示されている。この制御は、変速指示の操作があったときに、走行補助用モータからの補助動力の供給を一時的に停止し、短い所定時間の後に補助動力の供給を再開するという制御である。この制御によれば、補助動力の供給が停止している間に変速動作を実行させるため、変速機が変速しやすくなる。
特許文献1に示される制御によって変速機がある程度は変速しやすくなると思われるが、電動アシスト自転車において、よりスムーズな変速動作が望まれている。
本発明の課題は、電動機で走行補助を行う自転車においてショックの少ないスムーズな変速動作を実現することにある。
発明1に係る自転車用制御装置は、クランクと、走行補助用電動機と、変速機とを有する自転車を制御する装置であって、出力制御部と、変速可否判断部と、変速制御部とを備える。出力制御部は、走行補助用電動機の出力を制御する。変速可否判断部は、クランクの出力条件が、変速可能条件を満たすか否か、を判断する。変速制御部は、変速の要求を受け、出力制御部に出力の停止あるいは低下を行わせ、変速可否判断部が変速可能条件を満たすと判断しているときに変速機に変速動作を行わせる。
ここでは、クランクの出力に関係するパラメータであるクランクの出力条件が変速可能条件を満たさないときには変速機の変速動作が行われず、クランクの出力条件が変速可能条件を満たしているときに変速動作が行われ、更に、変速動作時には走行補助用電動機の出力が停止あるいは低下しているので、変速機の変速がスムーズに行われることになる。
発明2に係る自転車用制御装置は、発明1の制御装置であって、クランクの出力条件はクランクの位置に関する。
クランクの位置が上死点と下死点との中間ぐらいにあって自転車に乗っている人の踏力による大きな力が変速機の部品に作用しているような場合、変速機によっては変速動作がスムーズに行われないこともある。しかし、ここではクランクの位置に関するクランクの出力条件が変速可能条件を満たすときに変速動作が行われるため、変速機の変速がスムーズに行われる。
発明3に係る自転車用制御装置は、発明1の制御装置であって、クランクの出力条件は変速機の変速トルクに関する。
変速機の部品に掛かる変速トルクが比較的大きいときに変速機に変速動作を行わせようとした場合、変速機によっては変速動作がスムーズに行われないこともある。しかし、ここでは変速機の変速トルクに関するクランクの出力条件が変速可能条件を満たすときに変速動作が行われるため、変速機の変速がスムーズに行われる。
発明4に係る自転車用制御装置は、発明1の制御装置であって、クランクの出力条件は後輪トルクに関する。
自転車の後輪の軸に掛かる後輪トルクが比較的大きいときに変速機に変速動作を行わせようとした場合、変速機によっては変速動作がスムーズに行われないこともある。しかし、ここでは後輪トルクに関するクランクの出力条件が変速可能条件を満たすときに変速動作が行われるため、変速機の変速がスムーズに行われる。
発明5に係る自転車用制御装置は、発明1の制御装置であって、クランクの出力条件はクランク軸のトルクに関する。
クランク軸に掛かるトルクが比較的大きいときに変速機に変速動作を行わせようとした場合、変速機によっては変速動作がスムーズに行われないこともある。しかし、ここではクランク軸のトルクに関するクランクの出力条件が変速可能条件を満たすときに変速動作が行われるため、変速機の変速がスムーズに行われる。
発明6に係る自転車用制御装置は、発明2の制御装置であって、クランクの位置を検出するクランク位置検出部をさらに備える。そして、変速可否判断部は、クランクの位置がクランクの上下死点近傍にあるときに、変速可能条件を満たすと判断する。
ここでは、クランクの位置が上死点あるいは下死点の近傍にあると、踏力によるクランク軸のトルクが小さく、変速機の変速がスムーズに行われることに鑑み、クランクの上下死点近傍にクランクの位置があるときに変速可能条件を満たすと判断している。
発明7に係る自転車用制御装置は、発明5の制御装置であって、クランク軸のトルクを測るクランク軸トルク測定部をさらに備える。そして、変速可否判断部は、クランク軸のトルクが所定範囲にあると判断するときに、変速可能条件を満たすと判断する。
ここでは、変速機の部品に掛かるトルクに影響を及ぼすクランク軸のトルクが、所定範囲にあって比較的小さいと判断されると、変速可能条件を満たすとして変速機の変速動作が行われる。クランク軸のトルクが小さい、すなわちチェーンの張力が小さいときに変速機の変速動作が行われるため、変速動作がスムーズになる。
発明8に係る自転車用制御装置は、発明1〜7のいずれかの制御装置であって、変速機は変速用電動機を有している。そして、変速制御部は、変速用電動機を駆動させることで、変速機に変速動作を行わせる。
ここでは、変速用電動機の駆動によって変速動作が行われるが、変速動作がスムーズであるため、変速用電動機を小型のものにしたり、その消費電力を抑制したりすることができる。
発明9に係る自転車用制御装置は、発明1〜8のいずれかの制御装置であって、走行補助用電動機によってチェーンが駆動される。
ここでは、人の踏力がクランクを介して伝えられるチェーンを、走行補助用電動機によっても直接または間接的に駆動している。チェーンの張力が本発明によって小さくなるため、変速機の変速動作がスムーズになる。
発明10に係る自転車用制御装置は、発明1〜9のいずれかの制御装置であって、変速機は内装変速機である。
内装変速機は、歯車を用いた変速機であり、その取付位置によって、後輪ハブ変速機と呼ばれるものや、クランク軸変速機と呼ばれるものがある。この内装変速機では、伝達するトルクが小さいときのほうが大きいときよりも変速動作が一般にスムーズであるが、本発明では変速動作時に変速機に掛かるトルクが小さくなるため、スムーズな変速動作が実現される。
発明11に係る自転車用制御装置は、発明1〜9のいずれかの制御装置であって、変速機は、外装変速機である。
外装変速機は、ディレーラによってチェーンをスプロケット間で移動させることで変速を行う変速機である。クランク軸のスプロケット間でチェーンを掛けかえるフロントディレーラ、及び/又は、後輪のスプロケット間でチェーンを掛けかえるリアディレーラを、シフターから延びるワイヤー(ケーブル)または電動モータで動かすことで、変速が行われる。この外装変速機では、ある程度の張力がチェーンに掛かっていても変速動作に悪影響が出ることは少ないが、過度の張力がチェーンに掛かっていると変速しにくい。しかし、本発明によれば、変速動作時にチェーンに過度の張力が掛かることがなくなるので、変速動作がスムーズになる。
本発明によれば、変速の要求があったときに走行補助用電動機の出力が停止あるいは低下し、且つ、クランクの出力条件が変速可能条件を満たすときに変速機の変速動作が行われるため、スムーズな変速動作が実現される。
本発明の一実施形態に係る自転車用制御装置を採用する自転車の側面図。
クランク位置センサを示す図。
ハンドルに装着された変速操作ユニットを示す図。
自転車用制御装置のブロック図。
クランクアームの位置の判断を示す図。
変速制御のフローチャート。
<全体構成>
本発明の一実施形態に係る自転車用制御装置を採用した自転車101を図1に示す。自転車101は、主として、フロントフォーク102aを含むフレーム102と、ハンドル104と、駆動部105と、前輪106と、後輪107とを備えている。
<駆動部>
駆動部105は、チェーン110と、ペダル111が装着されたクランク112と、後述する走行アシスト用モータ116(図4参照)を含むアシスト機構115と、アシスト機構115の電源としての着脱可能な充電池117とを有しており、それぞれがフレーム102に支持されている。充電池117は、例えばニッケル水素電池およびリチウムイオン電池等を用いた蓄電池であり、フレーム102に着脱可能に搭載される。
(駆動部のクランク)
クランク112は、水平に延びるクランク軸112aと、その軸方向の両端に設けられ180度位相の異なる左右のクランクアーム112bと、を備える。クランクアーム112bの先端部には、ペダル111が装着されている。クランク軸112aは、フレーム102に回転自在に支持されている。チェーン110は、クランク軸112aに固定されているフロントスプロケットと、後述する内装変速ハブ120に設けられるリアスプロケットとに掛け渡されている。
(駆動部のクランク位置センサ)
クランク112のクランクアーム112bの位置を検出するために、自転車101には図2に示すクランク位置センサ39が装着されている。クランク位置センサ39は、クランクアーム112bに設けられる磁石45と、フレーム102に設けられる第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと、を有する。
磁石45は、環状に形成され、周方向にS極45aとN極45bとが隣接して配置される。磁石45は、固定部材48によって、クランクアーム112bに固定される。固定部材48は、例えば複数のネジによって実現される。S極45aとN極45bとは、クランク軸112aの外周に配置され、ここでは、それぞれが半円環の形状を有する。たとえば、クランク軸112aの中心を通る平面によって分割される磁石45の一方をS極45aとし、他方をN極45bとしている。S極45aとN極45bとは隣接するので2つの境界を有する。各境界は、クランク軸112aまわりに180°離れている。S極45aとN極45bとの境界となる第1境界線45cおよび第2境界線45dは、それぞれクランクアーム112bの長手方向に沿って配置される。より好ましくは、第1境界線45cおよび第2境界線45dは、クランク軸112aの回転軸線を含み、かつペダル111の取り付け孔の中心軸線を含む平面N(図2参照)上に設けられる。第1境界線45cでは、時計まわりの上流側にN極45bが配置され、下流側にS極45aが配置される。第2境界線45dでは、時計まわりの上流側にS極45aが配置され、下流側にN極45bが配置される。
第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bは、磁石45に対向する位置で、フレーム102に装着される。磁石45は、クランク軸112aの軸線方向で、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bに対向する。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bは、右のクランクアーム112bの下死点または左のクランクアーム112bの下死点(右のクランクアーム112bの上死点)を含む所定領域αに対応して配置される。所定領域αは、クランクアーム112bが下死点または上死点に配置される基準位置から、クランクアーム112bが周方向の両側に例えば15度ずつ回転した位置までの範囲である。所定領域αに対応するクランクアーム112bの回転角度は例えば30度である。所定領域αに対応するクランクアーム112bの回転角度は、20度から40度の範囲が好ましい。
(駆動部のアシスト機構)
アシスト機構115は、人の踏力によりクランク112のクランク軸112aに作用するトルクに応じた特定のトルク(例えば、クランク軸112aに作用するトルクの所定倍のトルク)を、走行アシスト用モータ116で補助的に発生させる。その走行アシスト用モータ116のトルクは、パワーアシスト用スプロケットを介して、チェーン110に直接または間接的に伝えられる。たとえば前記のパワーアシスト用スプロケットは、クランク軸に結合されていてもよく、またフロントスプロケットに結合されていてもよい。すなわち、駆動部105は、クランク軸112aに伝達された人の踏力、及び、走行補助用電動機である走行アシスト用モータ116の出力を、チェーン110を介して内装変速ハブ120のスプロケットに伝達する。
<後輪に組み込まれる内装変速ハブ>
後輪107には、内装変速機を構成する内装変速ハブ120が組み込まれている。内装変速ハブ120は、後輪107の中心に配置される、例えば8段変速のハブである。内装変速ハブ120には、遊星歯車機構を備える変速機構を電動駆動するための変速用モータ123が連結されている。変速用モータ123も、内装変速ハブ120とともに内装変速機を構成する。また、内装変速ハブ120には、例えば、ローラブレーキ、バンドブレーキ、ディスクブレーキ等のリアブレーキ装置が連結されている。
<ハンドルに装着される変速操作ユニット>
図3に示すように、ハンドル104のグリップ104aの近傍に、変速操作ユニット20が装着されている。変速操作ユニット20は、第1変速操作ボタン21、第2変速操作ボタン22および操作ダイヤル23を1つにまとめたユニットである。第1および第2変速操作ボタン21,22および操作ダイヤル23は、図3に示すように、ハンドル104のグリップ104aを握りながら人の手で操作できる位置にある。
第1および第2変速操作ボタン21,22は、押しボタンである。第1変速操作ボタン21は、低速段から高速段への変速を行うためのボタンである。第2変速操作ボタン22は、高速段から低速段への変速を行うためのボタンである。操作ダイヤル23は、2つの変速モードとパーキング(P)モードとを切り換えるためのダイヤルであり、3つの停止位置P,A,Mを有している。ここで2つの変速モードとは、自動変速(A)モードと手動変速(M)モードである。自動変速モードは、後述する車速センサ41からの車速信号に基づいて内装変速ハブ120を自動変速するモードである。また、手動変速モードは、第1および第2変速操作ボタン21,22の操作により、所望の変速段に内装変速ハブ120を変速するモードである。パーキングモードは、内装変速ハブ120をロックして後輪107の回転を規制するモードである。
<自転車用制御装置>
自転車101で採用する自転車用制御装置は、マイクロコンピュータ12を有し、接続された電装品を制御する。フレーム2に設けられるマイクロコンピュータ12は、CPU(Central processing unit),RAM(random access memory),ROM(read only memory),I/Oインターフェイスを含み、幾つかの機能部を備える。図4に示すように、マイクロコンピュータ12は、その機能部として、走行アシスト用モータ116の出力を制御するアシスト出力制御部13と、内装変速ハブ120に変速動作をさせる変速用モータ123を制御する変速制御部14と、変速用モータ123に変速動作を行わせてもよい状況であるか否かを判断する変速可否判断部16と、を備えている。
マイクロコンピュータ12には、各種センサからの情報および人の操作指示が入力される。具体的には、マイクロコンピュータ12に、第1変速操作ボタン21、第2変速操作ボタン22、操作ダイヤル23、クランク位置センサ39、車速センサ41、踏力センサ43などが電気的に接続されている。第1および第2変速操作ボタン21,22および操作ダイヤル23は、上述のように、ハンドル104のグリップ104aを握りながら人の手で操作できる位置に装着されている。クランク位置センサ39は、上述のように、クランクアーム112bおよびフレーム102に装着されている。車速センサ41は、前輪106に設けられている発電ハブ109(図1参照)に内蔵されている。交流発電機である発電ハブ109内の車速センサ41は、前輪106が回転することによって車速に応じた交流信号をマイクロコンピュータ12に送る。踏力センサ43は、クランク軸112aのトルクを、非接触で、或いは、クランク軸112aまたはクランクアーム112bに接触して検出する。たとえば踏力センサ43は、たとえばクランク軸112aに設けられる磁歪素子とその磁歪素子に対向して配置される検出コイルを備える磁歪センサ、クランク軸112aまたはクランクアーム112bに設けられる歪ゲージ、またはクランク軸112aを支持する支持部に設けられる歪ゲージによって実現される。踏力センサ43は、これらの構成に限られず、クランク軸112aに生じるトルクに応じて出力が変化するセンサであればよい。踏力センサ43は、クランク軸112aに作用する踏力に応じて変化する信号を、トルク値を表す情報としてマイクロコンピュータ12に送る。第1および第2変速操作ボタン21,22および操作ダイヤル23は、人の操作指示をマイクロコンピュータ12に伝える。
マイクロコンピュータ12のアシスト出力制御部13は、アシストモードのとき、乗り手の踏力の所定倍のアシスト力が発生するように、走行アシスト用モータ116を制御する。アシスト出力制御部13は、複数のアシストモードで走行アシスト用モータ116を制御する。具体的には、アシストモードとして、踏力の最大2倍のアシスト力で補助する強アシストモード、最大1.5倍のアシスト力で補助する中アシストモード、および最大1倍のアシスト力で補助する弱アシストモードの3つのアシストモードを、アシスト出力制御部13は有している。また、アシスト出力制御部13は、アシストを行わないオフモードも有している。アシストモードの切換は、ハンドル104に設けられる図示しないスイッチによって行ってもよく、また前記の操作ダイヤル23によって行われても良い。
さらに、アシスト出力制御部13は、変速制御部14からの要求を受けて、アシスト力を一時的にゼロにする。詳しくは、後述する。
マイクロコンピュータ12の変速制御部14は、第1および第2変速操作ボタン21,22の操作に応じて変速用モータ123を動かして内装変速ハブ120の段数を変更するか、或いは、車速に応じて自動的に、変速用モータ123を動かして内装変速ハブ120の段数を変更する。但し、図6を参照して後述するように、変速制御部14は、内装変速ハブ120の段数を変更する前に、アシスト力を一時的にゼロにする指令をアシスト出力制御部13に送る。また、変速可否判断部16が変速可能と判断していないときには、変速可否判断部16の判断が変速可能に変わるまで、変速制御部14は変速用モータ123への動作指令を送らずに待機させる。
操作ダイヤル23が停止位置Mにあって、手動変速モードが人によって選択されているときには、変速制御部14は、第1変速操作ボタン21が押されたときに低速段から高速段への変速を行わせ、第2変速操作ボタン22が押されたときに高速段から低速段への変速を行わせる。
操作ダイヤル23が停止位置Aにあって、自動変速モードが選択されているときには、変速制御部14は、車速センサ41からの車速信号に基づく車速情報から、変速が必要だと判断したときに、その変速指令を内装変速ハブ120の変速用モータ123に送る。変速制御部14は、自動変速のための2種類のテーブルを保持しており、踏力センサ43で検出した踏力値(クランク軸112aのトルク)に応じていずれのテーブルを使用するかを決定する。具体的には、高トルクモードおよびノーマルモードの各テーブルを保持しており、各テーブルには自動変速モード時のシフトアップ及びシフトダウンの車速しきい値が記憶されている。高トルクモードにおける車速しきい値は、踏力値が所定値以上になっているときの車速しきい値であり、ノーマルモードにおける車速しきい値は、踏力値が所定値に達していない場合の車速しきい値である。
マイクロコンピュータ12の変速可否判断部16は、内装変速ハブ120に変速動作をさせてもよいか否かを判断する。この変速可否判断部16が、内装変速ハブ120に変速動作をさせてはいけない、すなわち変速可能条件を満たしていないと判断しているときには、変速要求がある場合でも上述の変速制御部14は内装変速ハブ120の変速用モータ123に動作指令を送らず待機する(後述する図6のステップS4を参照)。
変速可否判断部16が保持する変速可能条件16aは、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランクアーム112bの位置に関するものである。具体的には、変速可能条件16aは、クランク112のクランクアーム112bの位置が、その上下死点の近傍にあるという条件である。変速可否判断部16は、クランク112のクランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあるときに、変速可能条件16aを満たすと判断する。
そのクランク112のクランクアーム112bの位置は、上述のクランク位置センサ39の出力から検出される。変速可否判断部16は、クランク位置センサ39の検出結果に基づいて、左右の各クランクアーム112bのいずれかが下死点を含む所定領域αにあるか否かを判断する。変速可否判断部16は、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力の組み合わせにより、右のクランクアーム112bおよび左のクランクアーム112bが4つの領域のいずれにあるのかを判断する。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力は、S極45aが対向しているときに「L (Low)」レベルとなり、N極45bが対向しているときに「H (High)」レベルとなる。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bから出力される信号の組み合わせを、それぞれ、第1の組み合わせA1、第2の組み合わせA2、第3の組み合わせA3および第4の組み合わせA4とする。
図5(A)は、第1の組み合わせA1のときの、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと磁石45との位置の一例を示す。第1の組み合わせA1では、第1ホール素子46aの出力は、「L (Low)」レベルとなり、第2ホール素子46bの出力は、「H (High)」レベルとなる。右のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αにあるときは、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第1の組み合わせA1となる。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第1の組み合わせA1のとき、自転車101の側面から見て、図5(A)に示すように、第1ホール素子46aと第2ホール素子46b間に磁石45の第1境界線45cが位置する。
図5(B)は、第2の組み合わせA2のときの、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと磁石45との位置の一例を示す。第2の組み合わせA2では、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力は、ともに「H」レベルとなる。右のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αから矢印Bで示す方向(自転車101の右側から見て時計回り)に回転し、磁石45の第1境界線45cが第1ホール素子46aを超え、かつ左のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αに入る直前までの領域にあるときには、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第2の組み合わせA2となる。
図5(C)は、第3の組み合わせA3のときの、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと磁石45との位置の一例を示す。第3の組み合わせA3では、第1ホール素子46aの出力は、「H」レベルとなり、第2ホール素子46bの出力は、「L」レベルとなる。左のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αにあるときの第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第3の組み合わせA3となる。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第3の組み合わせA3のとき、自転車101の側面から見て、図5(C)に示すように、第1ホール素子46aと第2ホール素子46b間に磁石45の第2境界線45dが位置する。
図5(D)は、第4の組み合わせA4のときの、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと磁石45との位置の一例を示す。第4の組み合わせA4では、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力は、ともに「L」レベルとなる。左のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αから矢印Bで示す方向(自転車101の右側から見て時計回り)に回転し、磁石45の第2境界線45dが第1ホール素子46aを超え、かつ右のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αに入る直前までの領域にあるときには、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第4の組み合わせA4となる。
変速可否判断部16は、第1の組み合わせA1のときに、右のクランクアーム112bの位置が下死点の近傍にある(左のクランクアーム112bの位置が上死点の近傍にある)と、第3の組み合わせA3のときに、左のクランクアーム112bの位置が下死点の近傍にある(右のクランクアーム112bの位置が上死点の近傍にある)と、判断し、クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあるという変速可能条件16aを満たすと判断する。
次に、図6を参照して、上記の変速制御部14による変速制御の主要点を整理して説明する。手動変速モードであっても、自動変速モードであっても、図6のフローに従って変速制御が行われる。
内装変速ハブ120の段数を変更したいという変速要求があると、ステップS1からステップS2に移行する。ステップS2では、車速センサ41からの信号に基づいて算出した車速がゼロであるか否かを判断する。車速がゼロの場合には、ステップS2からステップS5に移行し、直ちに変速用モータ123に動作指令を送って変速動作を実行させる。車速がゼロであれば、内装変速ハブ120の内部部品にトルクが殆ど作用していないため、変速動作がスムーズに行われる。ステップS2で車速がゼロではないと判断したときには、ステップS3に移行する。ステップS3では、どのアシストモードになっているかに関わらず、走行アシスト用モータ116によるアシスト力を低下させる。ここでは、ステップS3において、アシスト出力制御部13が走行アシスト用モータ116の出力をゼロにして、一時的に走行アシストがない状態にする。次に、ステップS4に移行し、クランク112のクランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあるという変速可能条件16aを満たすか否かを、変速可否判断部16が判断する。クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍になければ、クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にくるまでステップS4を繰り返す。クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあれば(或いは、クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にくれば)、ステップS5に移行して変速動作を実行させる。ここでは、走行アシストがなく、且つ、クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあるため、内装変速ハブ120の内部部品に掛かるトルクが非常に小さく、変速動作がスムーズに行われる。ステップS5の変速動作が完了すると、ステップS6に移行する。ステップS6では、ステップS3で走行アシスト用モータ116の出力を低下させていた場合、この実施の形態ではゼロにしていた場合に、その出力低下状態を解除して、元のアシストモードに基づく出力に戻す。ステップS6では、ステップS5で変速動作を実行してから所定時間後に、走行アシスト用モータ116の出力低下状態を解除してもよく、またたとえば変速機または変速モータに現在の変速段を検出するためのセンサを設けておき、このセンサからの出力に基づいて変速が完了したと判断したときに、走行アシスト用モータ116の出力低下状態を解除してもよい。
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態に係る自転車用制御装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(a)ハンドル104にタッチパネルを有する表示入力装置を固定し、アシストモードの選択、車速や変速段数の表示、充電池117の残量表示などを可能にしてもよい。
(b)上記実施形態では、ステップS3において、アシスト出力制御部13が制御する走行アシスト用モータ116の出力をゼロにして、変速動作が行われるときに一時的に走行アシストがない状態にしている。これに代えて、ステップS3において、走行アシスト用モータ116の出力を、そのときのアシストモードに基づく出力値よりも小さくなるように低下(例えば、半減)させて、変速動作が行われるときの走行アシスト力を一時的に小さくしてもよい。走行アシストが多少あっても、出力が小さければ、変速動作はスムーズになる。
(c)上記実施形態では、変速可否判断部16が保持する変速可能条件16aとして、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランクアーム112bの位置に関するものを採用している。これに代えて、変速可能条件として、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランク軸112aのトルクに関するものを採用してもよい。具体的には、踏力センサ43で検出したクランク軸112aのトルクが、所定範囲にある場合(所定の閾値よりも小さい場合)に、変速可能条件を満たすと判断することでもよい。この場合にも、走行アシストが低下した状態、あるいは走行アシストがない状態で、且つ、クランク112に掛かる踏力が小さいため、内装変速ハブ120の内部部品に掛かるトルクが小さく、変速動作がスムーズに行われる。
(d)上記実施形態では、変速可否判断部16が保持する変速可能条件16aとして、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランクアーム112bの位置に関するものを採用している。これに代えて、変速可能条件として、クランク112の出力条件の1つである後輪107のトルクに関するものを採用してもよい。具体的には、後輪107のトルクを検出するセンサを設ける。そして、そのセンサの検出トルクが所定の閾値よりも小さい場合に、変速可能条件を満たすと判断することでもよい。この場合にも、走行アシストが低下した状態、あるいは走行アシストがない状態で、且つ、内装変速ハブ120が装着される後輪107のトルクが小さいときに変速動作が行われるため、内装変速ハブ120の内部部品に掛かるトルクが小さく、変速動作がスムーズに行われる。後輪107のトルクは、クランク軸トルクと、ギア比とに基づいて求められても良い。
(e)上記実施形態では、変速可否判断部16が保持する変速可能条件16aとして、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランクアーム112bの位置に関するものを採用している。これに代えて、変速可能条件として、クランク112の出力条件の1つである内装変速ハブ120の変速トルクに関するものを採用してもよい。具体的には、チェーンからスプロケットを介して内装変速ハブ120に入力されるトルクを直接検出あるいは演算して求める。そして、そのトルクが所定の閾値よりも小さい場合に、変速可能条件を満たすと判断することでもよい。内装変速ハブ120には、予め変速可能な入力トルクが設定されているので、この設定されている入力トルクを閾値とすればよい。この場合にも、走行アシストが低下した状態、あるいは走行アシストがない状態で、且つ、内装変速ハブ120のトルクが小さいときに変速動作が行われるため、内装変速ハブ120の内部部品に掛かる力が小さい状態で変速動作がスムーズに行われる。
(f)上記実施形態では、内装変速機を構成する内装変速ハブ120を後輪107に装着した自転車101に本発明を適用している。これに代えて、クランク軸に付けた遊星歯車機構によって変速を行う変速機を持つ自転車に本発明を適用してもよい。
(g)上記実施形態では、内装変速機を構成する内装変速ハブ120を後輪107に装着した自転車101に本発明を適用している。これに代えて、電動駆動されるフロントディレーラまたはリアディレーラを有する外装変速機を備える自転車に本発明を適用してもよい。この場合、外装変速機に過度の力が掛かった状態で変速動作が行われることがなくなり、変速動作がスムーズになる。外装変速機の場合、図6のステップS2で、車速センサ41からの信号に基づいて算出した車速がゼロであるか否かを判断し、車速がゼロではないと判断すると、ステップS3に移り、ステップS2で車速がゼロ以上となるまでは、ステップS3以降の処理を待機する構成とする。すなわち、ステップS2で車速がゼロであると判断すると、ステップS2の判断を繰り返し、車速がゼロ以上となるまでステップS3以降の処理(ステップS3〜S6の処理)を待機する。
(h)上記実施形態では、クランク軸112aの近傍にアシスト機構115を配備し、走行アシスト用モータ116のトルクを、パワーアシスト用スプロケットを介して、チェーン110に伝えている。このアシスト機構115に代えて、前輪106に走行アシスト用のモータユニットを装着してもよい。このモータユニットの内部には、走行アシスト用モータ、インバータ、車速センサなどを配置することが好ましい。
(i)上記実施形態では、クランク軸112aの近傍にアシスト機構115を配備し、走行アシスト用モータ116のトルクを、パワーアシスト用スプロケットを介して、チェーン110に伝えている。このアシスト機構115に代えて、後輪107に走行アシスト用のモータユニットを装着してもよい。この場合、モータユニットは変速機の出力側に設けられる。
(j)クランク位置検出センサ39は、上記構成に限らず、ロータリーエンコーダによって実現されてもよい。
(k)上記実施形態では、クランク軸に作用するトルクを検出する踏力センサ43の出力に基づいて、アシスト出力制御部13が、走行アシスト用モータ116を制御しているが、この踏力センサ43に代えて、ペダルの踏力を検出するセンサを設けてもよく、またチェーンのテンションを検出するセンサを設けてもよい。アシスト出力制御部13は、これらのセンサからの情報に基づいて、走行アシスト用モータ116を制御する。
(l)上記実施形態では、ステップS2で車速がゼロか否かを判断しているが、ステップS2では、クランクが回転しているか否かを判断してもよい。たとえばクランク位置センサを、クランクの回転を検出するセンサとして用いることができる。クランク位置センサで検出されるクランクの位置が変化しない場合には、変速制御部においてクランクが回転していないと判断する。ステップS2において、変速制御部は、クランク位置センサから出力される信号が所定時間内に変化する場合に、クランクが回転していると判断して、ステップS3に移る。またステップS2において、変速制御部は、クランク位置センサから出力される信号が所定時間内に変化ない場合に、クランクが回転していないと判断して、ステップS5に移る。クランクの回転を検出するセンサは、上記の構成に限らず、磁石と、リードスイッチとによって実現してもよい。外装変速機においては、図6のステップS2で、クランク位置センサから出力される信号が所定時間内に変化する場合に、クランクが回転していると判断して、ステップS3に移り、ステップS2でクランクが回転していないと判断すると、クランクが回転していると判断するまでは、ステップS3以降の処理を待機する構成とする。
(m)上記実施形態では、ステップS2で車速がゼロか否かを判断しているが、ステップS2では、踏力センサにおいて踏力が検出されるか否かを判断してもよい。ステップS2において、変速制御部は、踏力センサから出力される信号に基づいて、踏力が与えられていると判断すると、ステップS3に移り、踏力が与えられていないと判断すると、ステップS5に移る。外装変速機においては、図6のステップS2で、踏力が与えられていると判断すると、ステップS3に移り、踏力が与えられていないと判断すると、踏力を検出するまでは、ステップS3以降の処理を待機する構成とする。
(n)上記各実施形態において、ステップS2を省略して、ステップS1で変速要求があると判断すると、ステップS3に移行する構成としてもよい。
12 マイクロコンピュータ
13 アシスト出力制御部
14 変速制御部
16 変速可否判断部
39 クランク位置センサ
43 踏力センサ
101 自転車
110 チェーン
112 クランク
112a クランク軸
115 アシスト機構
116 走行アシスト用モータ
120 内装変速ハブ
123 変速用モータ
本発明は、クランクと、走行補助用電動機と、変速機とを有する自転車、を制御する自転車用制御装置に関する。
人の踏力に加え、モータ駆動力で走行補助を行う電動アシスト自転車が、最近では普及してきている。この電動アシスト自転車に変速機が装備されている場合、その変速機による変速動作がスムーズに行われるように、特許文献1で所定の制御が示されている。この制御は、変速指示の操作があったときに、走行補助用モータからの補助動力の供給を一時的に停止し、短い所定時間の後に補助動力の供給を再開するという制御である。この制御によれば、補助動力の供給が停止している間に変速動作を実行させるため、変速機が変速しやすくなる。
特許文献1に示される制御によって変速機がある程度は変速しやすくなると思われるが、電動アシスト自転車において、よりスムーズな変速動作が望まれている。
本発明の課題は、電動機で走行補助を行う自転車においてショックの少ないスムーズな変速動作を実現することにある。
発明1に係る自転車用制御装置は、クランクと、走行補助用電動機と、変速機とを有する自転車を制御する装置であって、出力制御部と、変速可否判断部と、変速制御部とを備える。出力制御部は、走行補助用電動機の出力を制御する。変速可否判断部は、クランクの出力条件が、変速可能条件を満たすか否か、を判断する。変速制御部は、変速の要求を受け、出力制御部に出力の停止あるいは低下を行わせ、変速可否判断部が変速可能条件を満たすと判断しているときに変速機に変速動作を行わせる。
ここでは、クランクの出力に関係するパラメータであるクランクの出力条件が変速可能条件を満たさないときには変速機の変速動作が行われず、クランクの出力条件が変速可能条件を満たしているときに変速動作が行われ、更に、変速動作時には走行補助用電動機の出力が停止あるいは低下しているので、変速機の変速がスムーズに行われることになる。
また、発明1に係る自転車用制御装置は、クランクの出力条件は変速機の変速トルクに関する。
変速機の部品に掛かる変速トルクが比較的大きいときに変速機に変速動作を行わせようとした場合、変速機によっては変速動作がスムーズに行われないこともある。しかし、ここでは変速機の変速トルクに関するクランクの出力条件が変速可能条件を満たすときに変速動作が行われるため、変速機の変速がスムーズに行われる。
発明2に係る自転車用制御装置は、発明1の制御装置であって、変速機は変速用電動機を有している。そして、変速制御部は、変速用電動機を駆動させることで、変速機に変速動作を行わせる。
ここでは、変速用電動機の駆動によって変速動作が行われるが、変速動作がスムーズであるため、変速用電動機を小型のものにしたり、その消費電力を抑制したりすることができる。
発明3に係る自転車用制御装置は、発明1又は2の制御装置であって、走行補助用電動機によってチェーンが駆動される。
ここでは、人の踏力がクランクを介して伝えられるチェーンを、走行補助用電動機によっても直接または間接的に駆動している。チェーンの張力が本発明によって小さくなるため、変速機の変速動作がスムーズになる。
発明4に係る自転車用制御装置は、発明1〜3のいずれかの制御装置であって、変速機は内装変速機である。
内装変速機は、歯車を用いた変速機であり、その取付位置によって、後輪ハブ変速機と呼ばれるものや、クランク軸変速機と呼ばれるものがある。この内装変速機では、伝達するトルクが小さいときのほうが大きいときよりも変速動作が一般にスムーズであるが、本発明では変速動作時に変速機に掛かるトルクが小さくなるため、スムーズな変速動作が実現される。
発明5に係る自転車用制御装置は、発明1〜3のいずれかの制御装置であって、変速機は、外装変速機である。
外装変速機は、ディレーラによってチェーンをスプロケット間で移動させることで変速を行う変速機である。クランク軸のスプロケット間でチェーンを掛けかえるフロントディレーラ、及び/又は、後輪のスプロケット間でチェーンを掛けかえるリアディレーラを、シフターから延びるワイヤー(ケーブル)または電動モータで動かすことで、変速が行われる。この外装変速機では、ある程度の張力がチェーンに掛かっていても変速動作に悪影響が出ることは少ないが、過度の張力がチェーンに掛かっていると変速しにくい。しかし、本発明によれば、変速動作時にチェーンに過度の張力が掛かることがなくなるので、変速動作がスムーズになる。
本発明によれば、変速の要求があったときに走行補助用電動機の出力が停止あるいは低下し、且つ、クランクの出力条件が変速可能条件を満たすときに変速機の変速動作が行われるため、スムーズな変速動作が実現される。
本発明の一実施形態に係る自転車用制御装置を採用する自転車の側面図。
クランク位置センサを示す図。
ハンドルに装着された変速操作ユニットを示す図。
自転車用制御装置のブロック図。
クランクアームの位置の判断を示す図。
変速制御のフローチャート。
<全体構成>
本発明の一実施形態に係る自転車用制御装置を採用した自転車101を図1に示す。自転車101は、主として、フロントフォーク102aを含むフレーム102と、ハンドル104と、駆動部105と、前輪106と、後輪107とを備えている。
<駆動部>
駆動部105は、チェーン110と、ペダル111が装着されたクランク112と、後述する走行アシスト用モータ116(図4参照)を含むアシスト機構115と、アシスト機構115の電源としての着脱可能な充電池117とを有しており、それぞれがフレーム102に支持されている。充電池117は、例えばニッケル水素電池およびリチウムイオン電池等を用いた蓄電池であり、フレーム102に着脱可能に搭載される。
(駆動部のクランク)
クランク112は、水平に延びるクランク軸112aと、その軸方向の両端に設けられ180度位相の異なる左右のクランクアーム112bと、を備える。クランクアーム112bの先端部には、ペダル111が装着されている。クランク軸112aは、フレーム102に回転自在に支持されている。チェーン110は、クランク軸112aに固定されているフロントスプロケットと、後述する内装変速ハブ120に設けられるリアスプロケットとに掛け渡されている。
(駆動部のクランク位置センサ)
クランク112のクランクアーム112bの位置を検出するために、自転車101には図2に示すクランク位置センサ39が装着されている。クランク位置センサ39は、クランクアーム112bに設けられる磁石45と、フレーム102に設けられる第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと、を有する。
磁石45は、環状に形成され、周方向にS極45aとN極45bとが隣接して配置される。磁石45は、固定部材48によって、クランクアーム112bに固定される。固定部材48は、例えば複数のネジによって実現される。S極45aとN極45bとは、クランク軸112aの外周に配置され、ここでは、それぞれが半円環の形状を有する。たとえば、クランク軸112aの中心を通る平面によって分割される磁石45の一方をS極45aとし、他方をN極45bとしている。S極45aとN極45bとは隣接するので2つの境界を有する。各境界は、クランク軸112aまわりに180°離れている。S極45aとN極45bとの境界となる第1境界線45cおよび第2境界線45dは、それぞれクランクアーム112bの長手方向に沿って配置される。より好ましくは、第1境界線45cおよび第2境界線45dは、クランク軸112aの回転軸線を含み、かつペダル111の取り付け孔の中心軸線を含む平面N(図2参照)上に設けられる。第1境界線45cでは、時計まわりの上流側にN極45bが配置され、下流側にS極45aが配置される。第2境界線45dでは、時計まわりの上流側にS極45aが配置され、下流側にN極45bが配置される。
第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bは、磁石45に対向する位置で、フレーム102に装着される。磁石45は、クランク軸112aの軸線方向で、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bに対向する。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bは、右のクランクアーム112bの下死点または左のクランクアーム112bの下死点(右のクランクアーム112bの上死点)を含む所定領域αに対応して配置される。所定領域αは、クランクアーム112bが下死点または上死点に配置される基準位置から、クランクアーム112bが周方向の両側に例えば15度ずつ回転した位置までの範囲である。所定領域αに対応するクランクアーム112bの回転角度は例えば30度である。所定領域αに対応するクランクアーム112bの回転角度は、20度から40度の範囲が好ましい。
(駆動部のアシスト機構)
アシスト機構115は、人の踏力によりクランク112のクランク軸112aに作用するトルクに応じた特定のトルク(例えば、クランク軸112aに作用するトルクの所定倍のトルク)を、走行アシスト用モータ116で補助的に発生させる。その走行アシスト用モータ116のトルクは、パワーアシスト用スプロケットを介して、チェーン110に直接または間接的に伝えられる。たとえば前記のパワーアシスト用スプロケットは、クランク軸に結合されていてもよく、またフロントスプロケットに結合されていてもよい。すなわち、駆動部105は、クランク軸112aに伝達された人の踏力、及び、走行補助用電動機である走行アシスト用モータ116の出力を、チェーン110を介して内装変速ハブ120のスプロケットに伝達する。
<後輪に組み込まれる内装変速ハブ>
後輪107には、内装変速機を構成する内装変速ハブ120が組み込まれている。内装変速ハブ120は、後輪107の中心に配置される、例えば8段変速のハブである。内装変速ハブ120には、遊星歯車機構を備える変速機構を電動駆動するための変速用モータ123が連結されている。変速用モータ123も、内装変速ハブ120とともに内装変速機を構成する。また、内装変速ハブ120には、例えば、ローラブレーキ、バンドブレーキ、ディスクブレーキ等のリアブレーキ装置が連結されている。
<ハンドルに装着される変速操作ユニット>
図3に示すように、ハンドル104のグリップ104aの近傍に、変速操作ユニット20が装着されている。変速操作ユニット20は、第1変速操作ボタン21、第2変速操作ボタン22および操作ダイヤル23を1つにまとめたユニットである。第1および第2変速操作ボタン21,22および操作ダイヤル23は、図3に示すように、ハンドル104のグリップ104aを握りながら人の手で操作できる位置にある。
第1および第2変速操作ボタン21,22は、押しボタンである。第1変速操作ボタン21は、低速段から高速段への変速を行うためのボタンである。第2変速操作ボタン22は、高速段から低速段への変速を行うためのボタンである。操作ダイヤル23は、2つの変速モードとパーキング(P)モードとを切り換えるためのダイヤルであり、3つの停止位置P,A,Mを有している。ここで2つの変速モードとは、自動変速(A)モードと手動変速(M)モードである。自動変速モードは、後述する車速センサ41からの車速信号に基づいて内装変速ハブ120を自動変速するモードである。また、手動変速モードは、第1および第2変速操作ボタン21,22の操作により、所望の変速段に内装変速ハブ120を変速するモードである。パーキングモードは、内装変速ハブ120をロックして後輪107の回転を規制するモードである。
<自転車用制御装置>
自転車101で採用する自転車用制御装置は、マイクロコンピュータ12を有し、接続された電装品を制御する。フレーム2に設けられるマイクロコンピュータ12は、CPU(Central processing unit),RAM(random access memory),ROM(read only memory),I/Oインターフェイスを含み、幾つかの機能部を備える。図4に示すように、マイクロコンピュータ12は、その機能部として、走行アシスト用モータ116の出力を制御するアシスト出力制御部13と、内装変速ハブ120に変速動作をさせる変速用モータ123を制御する変速制御部14と、変速用モータ123に変速動作を行わせてもよい状況であるか否かを判断する変速可否判断部16と、を備えている。
マイクロコンピュータ12には、各種センサからの情報および人の操作指示が入力される。具体的には、マイクロコンピュータ12に、第1変速操作ボタン21、第2変速操作ボタン22、操作ダイヤル23、クランク位置センサ39、車速センサ41、踏力センサ43などが電気的に接続されている。第1および第2変速操作ボタン21,22および操作ダイヤル23は、上述のように、ハンドル104のグリップ104aを握りながら人の手で操作できる位置に装着されている。クランク位置センサ39は、上述のように、クランクアーム112bおよびフレーム102に装着されている。車速センサ41は、前輪106に設けられている発電ハブ109(図1参照)に内蔵されている。交流発電機である発電ハブ109内の車速センサ41は、前輪106が回転することによって車速に応じた交流信号をマイクロコンピュータ12に送る。踏力センサ43は、クランク軸112aのトルクを、非接触で、或いは、クランク軸112aまたはクランクアーム112bに接触して検出する。たとえば踏力センサ43は、たとえばクランク軸112aに設けられる磁歪素子とその磁歪素子に対向して配置される検出コイルを備える磁歪センサ、クランク軸112aまたはクランクアーム112bに設けられる歪ゲージ、またはクランク軸112aを支持する支持部に設けられる歪ゲージによって実現される。踏力センサ43は、これらの構成に限られず、クランク軸112aに生じるトルクに応じて出力が変化するセンサであればよい。踏力センサ43は、クランク軸112aに作用する踏力に応じて変化する信号を、トルク値を表す情報としてマイクロコンピュータ12に送る。第1および第2変速操作ボタン21,22および操作ダイヤル23は、人の操作指示をマイクロコンピュータ12に伝える。
マイクロコンピュータ12のアシスト出力制御部13は、アシストモードのとき、乗り手の踏力の所定倍のアシスト力が発生するように、走行アシスト用モータ116を制御する。アシスト出力制御部13は、複数のアシストモードで走行アシスト用モータ116を制御する。具体的には、アシストモードとして、踏力の最大2倍のアシスト力で補助する強アシストモード、最大1.5倍のアシスト力で補助する中アシストモード、および最大1倍のアシスト力で補助する弱アシストモードの3つのアシストモードを、アシスト出力制御部13は有している。また、アシスト出力制御部13は、アシストを行わないオフモードも有している。アシストモードの切換は、ハンドル104に設けられる図示しないスイッチによって行ってもよく、また前記の操作ダイヤル23によって行われても良い。
さらに、アシスト出力制御部13は、変速制御部14からの要求を受けて、アシスト力を一時的にゼロにする。詳しくは、後述する。
マイクロコンピュータ12の変速制御部14は、第1および第2変速操作ボタン21,22の操作に応じて変速用モータ123を動かして内装変速ハブ120の段数を変更するか、或いは、車速に応じて自動的に、変速用モータ123を動かして内装変速ハブ120の段数を変更する。但し、図6を参照して後述するように、変速制御部14は、内装変速ハブ120の段数を変更する前に、アシスト力を一時的にゼロにする指令をアシスト出力制御部13に送る。また、変速可否判断部16が変速可能と判断していないときには、変速可否判断部16の判断が変速可能に変わるまで、変速制御部14は変速用モータ123への動作指令を送らずに待機させる。
操作ダイヤル23が停止位置Mにあって、手動変速モードが人によって選択されているときには、変速制御部14は、第1変速操作ボタン21が押されたときに低速段から高速段への変速を行わせ、第2変速操作ボタン22が押されたときに高速段から低速段への変速を行わせる。
操作ダイヤル23が停止位置Aにあって、自動変速モードが選択されているときには、変速制御部14は、車速センサ41からの車速信号に基づく車速情報から、変速が必要だと判断したときに、その変速指令を内装変速ハブ120の変速用モータ123に送る。変速制御部14は、自動変速のための2種類のテーブルを保持しており、踏力センサ43で検出した踏力値(クランク軸112aのトルク)に応じていずれのテーブルを使用するかを決定する。具体的には、高トルクモードおよびノーマルモードの各テーブルを保持しており、各テーブルには自動変速モード時のシフトアップ及びシフトダウンの車速しきい値が記憶されている。高トルクモードにおける車速しきい値は、踏力値が所定値以上になっているときの車速しきい値であり、ノーマルモードにおける車速しきい値は、踏力値が所定値に達していない場合の車速しきい値である。
マイクロコンピュータ12の変速可否判断部16は、内装変速ハブ120に変速動作をさせてもよいか否かを判断する。この変速可否判断部16が、内装変速ハブ120に変速動作をさせてはいけない、すなわち変速可能条件を満たしていないと判断しているときには、変速要求がある場合でも上述の変速制御部14は内装変速ハブ120の変速用モータ123に動作指令を送らず待機する(後述する図6のステップS4を参照)。
変速可否判断部16が保持する変速可能条件16aは、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランクアーム112bの位置に関するものである。具体的には、変速可能条件16aは、クランク112のクランクアーム112bの位置が、その上下死点の近傍にあるという条件である。変速可否判断部16は、クランク112のクランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあるときに、変速可能条件16aを満たすと判断する。
そのクランク112のクランクアーム112bの位置は、上述のクランク位置センサ39の出力から検出される。変速可否判断部16は、クランク位置センサ39の検出結果に基づいて、左右の各クランクアーム112bのいずれかが下死点を含む所定領域αにあるか否かを判断する。変速可否判断部16は、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力の組み合わせにより、右のクランクアーム112bおよび左のクランクアーム112bが4つの領域のいずれにあるのかを判断する。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力は、S極45aが対向しているときに「L (Low)」レベルとなり、N極45bが対向しているときに「H (High)」レベルとなる。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bから出力される信号の組み合わせを、それぞれ、第1の組み合わせA1、第2の組み合わせA2、第3の組み合わせA3および第4の組み合わせA4とする。
図5(A)は、第1の組み合わせA1のときの、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと磁石45との位置の一例を示す。第1の組み合わせA1では、第1ホール素子46aの出力は、「L (Low)」レベルとなり、第2ホール素子46bの出力は、「H (High)」レベルとなる。右のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αにあるときは、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第1の組み合わせA1となる。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第1の組み合わせA1のとき、自転車101の側面から見て、図5(A)に示すように、第1ホール素子46aと第2ホール素子46b間に磁石45の第1境界線45cが位置する。
図5(B)は、第2の組み合わせA2のときの、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと磁石45との位置の一例を示す。第2の組み合わせA2では、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力は、ともに「H」レベルとなる。右のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αから矢印Bで示す方向(自転車101の右側から見て時計回り)に回転し、磁石45の第1境界線45cが第1ホール素子46aを超え、かつ左のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αに入る直前までの領域にあるときには、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第2の組み合わせA2となる。
図5(C)は、第3の組み合わせA3のときの、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと磁石45との位置の一例を示す。第3の組み合わせA3では、第1ホール素子46aの出力は、「H」レベルとなり、第2ホール素子46bの出力は、「L」レベルとなる。左のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αにあるときの第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第3の組み合わせA3となる。第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第3の組み合わせA3のとき、自転車101の側面から見て、図5(C)に示すように、第1ホール素子46aと第2ホール素子46b間に磁石45の第2境界線45dが位置する。
図5(D)は、第4の組み合わせA4のときの、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bと磁石45との位置の一例を示す。第4の組み合わせA4では、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力は、ともに「L」レベルとなる。左のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αから矢印Bで示す方向(自転車101の右側から見て時計回り)に回転し、磁石45の第2境界線45dが第1ホール素子46aを超え、かつ右のクランクアーム112bが下死点を含む所定領域αに入る直前までの領域にあるときには、第1ホール素子46aおよび第2ホール素子46bの出力が第4の組み合わせA4となる。
変速可否判断部16は、第1の組み合わせA1のときに、右のクランクアーム112bの位置が下死点の近傍にある(左のクランクアーム112bの位置が上死点の近傍にある)と、第3の組み合わせA3のときに、左のクランクアーム112bの位置が下死点の近傍にある(右のクランクアーム112bの位置が上死点の近傍にある)と、判断し、クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあるという変速可能条件16aを満たすと判断する。
次に、図6を参照して、上記の変速制御部14による変速制御の主要点を整理して説明する。手動変速モードであっても、自動変速モードであっても、図6のフローに従って変速制御が行われる。
内装変速ハブ120の段数を変更したいという変速要求があると、ステップS1からステップS2に移行する。ステップS2では、車速センサ41からの信号に基づいて算出した車速がゼロであるか否かを判断する。車速がゼロの場合には、ステップS2からステップS5に移行し、直ちに変速用モータ123に動作指令を送って変速動作を実行させる。車速がゼロであれば、内装変速ハブ120の内部部品にトルクが殆ど作用していないため、変速動作がスムーズに行われる。ステップS2で車速がゼロではないと判断したときには、ステップS3に移行する。ステップS3では、どのアシストモードになっているかに関わらず、走行アシスト用モータ116によるアシスト力を低下させる。ここでは、ステップS3において、アシスト出力制御部13が走行アシスト用モータ116の出力をゼロにして、一時的に走行アシストがない状態にする。次に、ステップS4に移行し、クランク112のクランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあるという変速可能条件16aを満たすか否かを、変速可否判断部16が判断する。クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍になければ、クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にくるまでステップS4を繰り返す。クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあれば(或いは、クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にくれば)、ステップS5に移行して変速動作を実行させる。ここでは、走行アシストがなく、且つ、クランクアーム112bの位置が上下死点の近傍にあるため、内装変速ハブ120の内部部品に掛かるトルクが非常に小さく、変速動作がスムーズに行われる。ステップS5の変速動作が完了すると、ステップS6に移行する。ステップS6では、ステップS3で走行アシスト用モータ116の出力を低下させていた場合、この実施の形態ではゼロにしていた場合に、その出力低下状態を解除して、元のアシストモードに基づく出力に戻す。ステップS6では、ステップS5で変速動作を実行してから所定時間後に、走行アシスト用モータ116の出力低下状態を解除してもよく、またたとえば変速機または変速モータに現在の変速段を検出するためのセンサを設けておき、このセンサからの出力に基づいて変速が完了したと判断したときに、走行アシスト用モータ116の出力低下状態を解除してもよい。
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態に係る自転車用制御装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(a)ハンドル104にタッチパネルを有する表示入力装置を固定し、アシストモードの選択、車速や変速段数の表示、充電池117の残量表示などを可能にしてもよい。
(b)上記実施形態では、ステップS3において、アシスト出力制御部13が制御する走行アシスト用モータ116の出力をゼロにして、変速動作が行われるときに一時的に走行アシストがない状態にしている。これに代えて、ステップS3において、走行アシスト用モータ116の出力を、そのときのアシストモードに基づく出力値よりも小さくなるように低下(例えば、半減)させて、変速動作が行われるときの走行アシスト力を一時的に小さくしてもよい。走行アシストが多少あっても、出力が小さければ、変速動作はスムーズになる。
(c)上記実施形態では、変速可否判断部16が保持する変速可能条件16aとして、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランクアーム112bの位置に関するものを採用している。これに代えて、変速可能条件として、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランク軸112aのトルクに関するものを採用してもよい。具体的には、踏力センサ43で検出したクランク軸112aのトルクが、所定範囲にある場合(所定の閾値よりも小さい場合)に、変速可能条件を満たすと判断することでもよい。この場合にも、走行アシストが低下した状態、あるいは走行アシストがない状態で、且つ、クランク112に掛かる踏力が小さいため、内装変速ハブ120の内部部品に掛かるトルクが小さく、変速動作がスムーズに行われる。
(d)上記実施形態では、変速可否判断部16が保持する変速可能条件16aとして、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランクアーム112bの位置に関するものを採用している。これに代えて、変速可能条件として、クランク112の出力条件の1つである後輪107のトルクに関するものを採用してもよい。具体的には、後輪107のトルクを検出するセンサを設ける。そして、そのセンサの検出トルクが所定の閾値よりも小さい場合に、変速可能条件を満たすと判断することでもよい。この場合にも、走行アシストが低下した状態、あるいは走行アシストがない状態で、且つ、内装変速ハブ120が装着される後輪107のトルクが小さいときに変速動作が行われるため、内装変速ハブ120の内部部品に掛かるトルクが小さく、変速動作がスムーズに行われる。後輪107のトルクは、クランク軸トルクと、ギア比とに基づいて求められても良い。
(e)上記実施形態では、変速可否判断部16が保持する変速可能条件16aとして、クランク112の出力条件の1つであるクランク112のクランクアーム112bの位置に関するものを採用している。これに代えて、変速可能条件として、クランク112の出力条件の1つである内装変速ハブ120の変速トルクに関するものを採用してもよい。具体的には、チェーンからスプロケットを介して内装変速ハブ120に入力されるトルクを直接検出あるいは演算して求める。そして、そのトルクが所定の閾値よりも小さい場合に、変速可能条件を満たすと判断することでもよい。内装変速ハブ120には、予め変速可能な入力トルクが設定されているので、この設定されている入力トルクを閾値とすればよい。この場合にも、走行アシストが低下した状態、あるいは走行アシストがない状態で、且つ、内装変速ハブ120のトルクが小さいときに変速動作が行われるため、内装変速ハブ120の内部部品に掛かる力が小さい状態で変速動作がスムーズに行われる。
(f)上記実施形態では、内装変速機を構成する内装変速ハブ120を後輪107に装着した自転車101に本発明を適用している。これに代えて、クランク軸に付けた遊星歯車機構によって変速を行う変速機を持つ自転車に本発明を適用してもよい。
(g)上記実施形態では、内装変速機を構成する内装変速ハブ120を後輪107に装着した自転車101に本発明を適用している。これに代えて、電動駆動されるフロントディレーラまたはリアディレーラを有する外装変速機を備える自転車に本発明を適用してもよい。この場合、外装変速機に過度の力が掛かった状態で変速動作が行われることがなくなり、変速動作がスムーズになる。外装変速機の場合、図6のステップS2で、車速センサ41からの信号に基づいて算出した車速がゼロであるか否かを判断し、車速がゼロではないと判断すると、ステップS3に移り、ステップS2で車速がゼロ以上となるまでは、ステップS3以降の処理を待機する構成とする。すなわち、ステップS2で車速がゼロであると判断すると、ステップS2の判断を繰り返し、車速がゼロ以上となるまでステップS3以降の処理(ステップS3〜S6の処理)を待機する。
(h)上記実施形態では、クランク軸112aの近傍にアシスト機構115を配備し、走行アシスト用モータ116のトルクを、パワーアシスト用スプロケットを介して、チェーン110に伝えている。このアシスト機構115に代えて、前輪106に走行アシスト用のモータユニットを装着してもよい。このモータユニットの内部には、走行アシスト用モータ、インバータ、車速センサなどを配置することが好ましい。
(i)上記実施形態では、クランク軸112aの近傍にアシスト機構115を配備し、走行アシスト用モータ116のトルクを、パワーアシスト用スプロケットを介して、チェーン110に伝えている。このアシスト機構115に代えて、後輪107に走行アシスト用のモータユニットを装着してもよい。この場合、モータユニットは変速機の出力側に設けられる。
(j)クランク位置検出センサ39は、上記構成に限らず、ロータリーエンコーダによって実現されてもよい。
(k)上記実施形態では、クランク軸に作用するトルクを検出する踏力センサ43の出力に基づいて、アシスト出力制御部13が、走行アシスト用モータ116を制御しているが、この踏力センサ43に代えて、ペダルの踏力を検出するセンサを設けてもよく、またチェーンのテンションを検出するセンサを設けてもよい。アシスト出力制御部13は、これらのセンサからの情報に基づいて、走行アシスト用モータ116を制御する。
(l)上記実施形態では、ステップS2で車速がゼロか否かを判断しているが、ステップS2では、クランクが回転しているか否かを判断してもよい。たとえばクランク位置センサを、クランクの回転を検出するセンサとして用いることができる。クランク位置センサで検出されるクランクの位置が変化しない場合には、変速制御部においてクランクが回転していないと判断する。ステップS2において、変速制御部は、クランク位置センサから出力される信号が所定時間内に変化する場合に、クランクが回転していると判断して、ステップS3に移る。またステップS2において、変速制御部は、クランク位置センサから出力される信号が所定時間内に変化ない場合に、クランクが回転していないと判断して、ステップS5に移る。クランクの回転を検出するセンサは、上記の構成に限らず、磁石と、リードスイッチとによって実現してもよい。外装変速機においては、図6のステップS2で、クランク位置センサから出力される信号が所定時間内に変化する場合に、クランクが回転していると判断して、ステップS3に移り、ステップS2でクランクが回転していないと判断すると、クランクが回転していると判断するまでは、ステップS3以降の処理を待機する構成とする。
(m)上記実施形態では、ステップS2で車速がゼロか否かを判断しているが、ステップS2では、踏力センサにおいて踏力が検出されるか否かを判断してもよい。ステップS2において、変速制御部は、踏力センサから出力される信号に基づいて、踏力が与えられていると判断すると、ステップS3に移り、踏力が与えられていないと判断すると、ステップS5に移る。外装変速機においては、図6のステップS2で、踏力が与えられていると判断すると、ステップS3に移り、踏力が与えられていないと判断すると、踏力を検出するまでは、ステップS3以降の処理を待機する構成とする。
(n)上記各実施形態において、ステップS2を省略して、ステップS1で変速要求があると判断すると、ステップS3に移行する構成としてもよい。
12 マイクロコンピュータ
13 アシスト出力制御部
14 変速制御部
16 変速可否判断部
39 クランク位置センサ
43 踏力センサ
101 自転車
110 チェーン
112 クランク
112a クランク軸
115 アシスト機構
116 走行アシスト用モータ
120 内装変速ハブ
123 変速用モータ