JP2014013355A - 電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂及びそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、耐摩耗性に優れ、表面滑り性と高硬度とを両立した電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂及びそれを用いた電子写真感光体に関する。
電子写真感光体分野において、感光層のバインダーポリマーとしてポリカーボネート樹脂が主に使用されている。近年の画質の向上要求に伴い、バインダーポリマーに対して、高感度且つ良好な静電気特性の維持等の高性能化が求められている。
そこで、特許文献1、2では、電気的に高感度な電子写真感光体を提供するためにバインダーポリマーとしてハロゲン化ポリカーボネート樹脂を使用することが提案されている。
そこで、特許文献1、2では、電気的に高感度な電子写真感光体を提供するためにバインダーポリマーとしてハロゲン化ポリカーボネート樹脂を使用することが提案されている。
一方近年、廃棄物削減による環境保護の観点からも電子写真感光体の長寿命化要求が高まっている。長寿命化の方策としては、耐磨耗性や表面滑り性、高硬度といった特性の強化が考えられる。このような要求に対し、先述の特許文献記載のハロゲン化ポリカーボネート樹脂は、分子量が低く、機械特性(フィルムの折り曲げ割れ特性)及び耐摩耗性に関しては十分満足出来るものではなく、しかも表面の滑り性に関する知見に至っては全く言及されていなかった。
本発明は上記の長寿命化の問題を解決するために、機械特性(フィルムの折り曲げ割れ特性)及び耐摩耗性に優れ、さらに表面滑り性と高硬度とを高度に両立したポリカーボネート樹脂及び電子写真感光体を提供しようというものである。
本発明者は、上記の目的を達成すべく、鋭意検討を行った結果、特定の繰り返し構造を有するポリカーボネート樹脂が上記特性を兼ね備える上、実用性に富んでいることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下に示す高分子量ハロゲン化ポリカーボネート樹脂及び電子写真感光体に関する。
前述の特定の繰り返し構造を有する高分子量ポリカーボネート樹脂は、機械特性(フィルムの折り曲げ割れ特性)及び耐摩耗性に優れ、さらに表面滑り性と高硬度とを高度に両立しており、各種光学材料、特に電子写真感光体バインダー用樹脂として好適に用いられ、その奏する工業的効果は格別である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<高分子量ハロゲン化ポリカーボネート樹脂>
本発明において、該ポリカーボネート樹脂は、下記式(I)で表される繰り返し単位を含有する。
<高分子量ハロゲン化ポリカーボネート樹脂>
本発明において、該ポリカーボネート樹脂は、下記式(I)で表される繰り返し単位を含有する。
本発明の高分子量ポリカーボネート樹脂として、重量平均分子量(Mw)が210,000〜900,000の範囲であり好ましくは、210,000〜600,000の範囲であり、さらに好ましくは、350,000〜600,000の範囲である。Mwが210,000より小さい場合、フィルムが割れる等、機械強度の低下や耐摩耗性が不足し、電子写真感光体用のバインダーフィルムとして使用することができない。
割れが発生するフィルムは、機械強度が低下しており感光体用途に用いた場合、耐摩耗性が低下する。
また、Mwが900,000より大きい場合は、電子写真感光体用途を想定した場合、粘度が高すぎて均一な膜厚の形成が困難となるなど塗工性が悪化する。
また、Mwが900,000より大きい場合は、電子写真感光体用途を想定した場合、粘度が高すぎて均一な膜厚の形成が困難となるなど塗工性が悪化する。
Mwは、乾燥した試料40mgをクロロホルム5mlに溶解し、下記条件としたGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)装置に、200μlを導入して測定する。
装置;島津製作所(株)製GPCシステム(LC−10A)
検出器;RID−10A
カラム;Shodex KF−801+KF−802+KF805L
標準物質;TSK標準ポリスチレン
溶離液;クロロホルム、40℃、1ml/min
装置;島津製作所(株)製GPCシステム(LC−10A)
検出器;RID−10A
カラム;Shodex KF−801+KF−802+KF805L
標準物質;TSK標準ポリスチレン
溶離液;クロロホルム、40℃、1ml/min
つぎに、本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂のさらに好ましい態様について、以下詳述する。
本発明に係るポリカーボネート樹脂の比粘度は、好ましくは、該ポリカーボネート樹脂0.7gを100ccの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.55〜1.55の範囲であり、より好ましくは0.55〜1.40の範囲である。
比粘度が0.55未満であると樹脂としての機械強度が低下し耐摩耗性が不足することがある。また、比粘度が、1.55より大きいと、キャストフィルムを適当な膜厚に塗布して作製することが困難となり好ましくない。
本発明に係るポリカーボネート樹脂の比粘度は、好ましくは、該ポリカーボネート樹脂0.7gを100ccの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.55〜1.55の範囲であり、より好ましくは0.55〜1.40の範囲である。
比粘度が0.55未満であると樹脂としての機械強度が低下し耐摩耗性が不足することがある。また、比粘度が、1.55より大きいと、キャストフィルムを適当な膜厚に塗布して作製することが困難となり好ましくない。
また本発明の目的を損なわない範囲で、下記式(II)で示される公知の共重合成分などを含んでも良い。
(式(II)中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12のアリール基またはハロゲン原子を表し、a及びbは0〜4の整数である。また、Xは単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO2−,9,9−フルオレニリデン基、下記式(II−a)で表される群より示されるいずれかの結合基である。)
そのような観点から、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位の50モル%以上が上記式(I)から選択されることが好ましく、さらに70モル%以上が選択されることがより好ましい。
本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂は、感光体の表面層とした時の表面鉛筆硬度がH以上であることが好ましい。表面鉛筆硬度が、Hより小さい場合は、クリーニングブレード等感光体に当接している部材との圧接によりストレスクラックが入りやすくなる。
本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂は、それを用いて作製したキャストフィルムの住友スリーエム(株)社製ラッピングフィルムシート(研磨材3μAl2O3)を用いた荷重1.96Nで1200回往復磨耗後のスガ試験磨耗体積量が0.9mm3以下であることが好ましく、0.8mm3以下がより好ましい。
キャストフィルムのスガ試験磨耗量が、0.9mm3より大きい場合は、感光体用途を想定した場合、高耐久性化が困難となるため好ましくない。
キャストフィルムのスガ試験磨耗量が、0.9mm3より大きい場合は、感光体用途を想定した場合、高耐久性化が困難となるため好ましくない。
また、本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂は、それを用いて作製したキャストフィルムの新東科学(株)社製平面性測定器(HEIDON14型)を用いた荷重1.96N、直径10mmのステンレス製ボール圧子による静摩擦係数が好ましくは0.30以下、より好ましくは0.27以下、さらに好ましくは0.24以下であり、その動摩擦係数が、好ましくは0.18以下、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.12以下である。
前述の特定の繰り返し構造を有する高分子量ポリカーボネート樹脂を用いることにより、これまで達成できなかった機械特性(フィルムの折り曲げ割れ特性)及び耐摩耗性に優れ、さらに表面滑り性と高硬度との高度な両立が可能となることを見出したのが本発明である。
<高分子量ハロゲン化ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂は、それぞれ通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば二価フェノール成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
本発明のポリカーボネート樹脂は、それぞれ通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば二価フェノール成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
具体的な二価フェノール成分としては、上記式(I)のカーボネートを誘導させる2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称テトラブロモビスフェノールA)が必須成分として挙げられる他、上記式(II)のカーボネートを誘導させる4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,3’−ビフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジメチル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、2,2’−ジフェニル−4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルジフェニルスルフィド、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらの二価フェノール成分の中でも、特に1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が、所望の耐摩耗性と表面滑り性、さらに高硬度とをより高度に両立し易い点から好ましい。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
また、反応時に末端停止剤として、通常使用される公知のp−t−ブチルフェノールを含む単官能フェノール類が使用される。末端停止剤の使用量は、上述の好ましい重量平均分子量範囲に分子量調整を実施するためにテトラブロモビスフェノールA1モルに対して、0.0015〜0.0065モルが好ましく、さらに好ましくは0.0020〜0.0065である。
例えば、界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、水に不溶性の有機溶媒と酸結合剤の存在下、得られたオリゴマー含有溶液に、上記の末端停止剤を添加、重合し得られることを特徴としている。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。また、反応中の二価フェノールのアルカリ塩の酸化防止を目的として、例えばハイドロサルファイト等の酸化防止剤を添加したり、窒素を液相又は、気相に通したりすることが好ましい。さらに、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
かかる重合反応によって得られる反応液から有機溶媒溶液を分離し、該有機溶媒により希釈後水洗作業を行う。この際、残留モノマーの洗浄を強化する目的に、適宜水酸化ナトリウム水溶液で洗浄してもよい。さらに、酸洗浄及び水洗等によって残留触媒や無機塩等不純物を除去した後有機溶媒を除去することによって本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂が得られる。
<電子写真感光体>
次に、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンターに用いられ、導電性基体とその上に形成された感光層よりなり、この感光層中に上記本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂を含有させたものである。本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に電荷発生層と電荷輸送層を順次積層した積層負帯電型、この積層負帯電型の電荷輸送層上に保護層を形成した負帯電型、導電性基体上に電荷輸送層と電化発生層を順次積層した正帯電型、バインダー樹脂中に電荷輸送物質と電荷発生物質を分散させた単層構造の感光層を導電性基体上に形成した単層正帯電型のいずれにも適用できる。具体的には、積層負帯電型の場合は電荷輸送層や保護層に上記電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂を含有させ、積層正帯電型の場合には電荷発生層に上記電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂を含有させ、単層構造の感光層の場合には電荷発生輸送層中に上記電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂を含有させる。
次に、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンターに用いられ、導電性基体とその上に形成された感光層よりなり、この感光層中に上記本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂を含有させたものである。本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に電荷発生層と電荷輸送層を順次積層した積層負帯電型、この積層負帯電型の電荷輸送層上に保護層を形成した負帯電型、導電性基体上に電荷輸送層と電化発生層を順次積層した正帯電型、バインダー樹脂中に電荷輸送物質と電荷発生物質を分散させた単層構造の感光層を導電性基体上に形成した単層正帯電型のいずれにも適用できる。具体的には、積層負帯電型の場合は電荷輸送層や保護層に上記電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂を含有させ、積層正帯電型の場合には電荷発生層に上記電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂を含有させ、単層構造の感光層の場合には電荷発生輸送層中に上記電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂を含有させる。
<電子写真感光体の製造方法>
次に、具体的に電子写真感光体の製造方法について説明すると、積層負帯電型の場合、電荷発生層は電荷発生物質を溶媒中で粉砕分散し、好ましくは平均粒径を0.3ミクロン以下にして、導電性基体上に膜厚0.05〜5ミクロン程度に製膜する。また、分散液にバインダー樹脂を配合する代わりに、導電性基体と電荷発生層の間にバインダー樹脂層を設けてもよい。次いで電荷発生層の上に膜厚5〜50ミクロン程度の電荷輸送物質と本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂との樹脂組成物からなる電荷輸送層を、電荷発生層と同様にして製膜する。この際、本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂10重量部に対して電荷輸送物質5〜10重量部になる割合が好ましい。また製膜方法としては例えば浸漬法、スプレー法、ロール法等任意の方法が採用される。保護層を形成するときは保護層の樹脂として膜厚0.5〜10ミクロン程度の上記本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂からなる層を設ける。
次に、具体的に電子写真感光体の製造方法について説明すると、積層負帯電型の場合、電荷発生層は電荷発生物質を溶媒中で粉砕分散し、好ましくは平均粒径を0.3ミクロン以下にして、導電性基体上に膜厚0.05〜5ミクロン程度に製膜する。また、分散液にバインダー樹脂を配合する代わりに、導電性基体と電荷発生層の間にバインダー樹脂層を設けてもよい。次いで電荷発生層の上に膜厚5〜50ミクロン程度の電荷輸送物質と本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂との樹脂組成物からなる電荷輸送層を、電荷発生層と同様にして製膜する。この際、本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂10重量部に対して電荷輸送物質5〜10重量部になる割合が好ましい。また製膜方法としては例えば浸漬法、スプレー法、ロール法等任意の方法が採用される。保護層を形成するときは保護層の樹脂として膜厚0.5〜10ミクロン程度の上記本発明の電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂からなる層を設ける。
積層正帯電型の場合、電荷発生層が表層にあるので、上記ポリカーボネート樹脂を電荷発生層に含有させる。電荷発生物質を溶媒中で粉砕分散した後上記ポリカーボネート樹脂を配合するかまたは電荷発生物質と上記ポリカーボネート樹脂を溶媒中粉砕分散し、膜厚5〜50ミクロン程度の電荷輸送層の上に膜厚0.5〜10ミクロン程度の電荷発生層を形成する。この際上記ポリカーボネート樹脂10重量部に対して電荷発生物質2〜10重量部になる割合が好ましい。なお、電荷輸送層には電荷輸送物質と共に該ポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として用いる。
単層正帯電型の場合、上記ポリカーボネート樹脂10重量部に対して電荷輸送物質0.5〜5重量部になる割合で用いるのが好ましい。導電性基体上に形成される感光層は、単層構造であっても、電荷発生層と電荷輸送層とに機能分離された積層構造であってもよい。積層構造の場合、電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は任意でよい。
感光層は、電荷発生物質、電化輸送物質、又はそれ等両者がバインダー樹脂中に含有された塗膜により構成される。電荷発生物質としては、例えば非晶質セレン、結晶性セレン、セレンーテルル合金、セレンーヒ素合金等セレンを主成分とした各種合金材料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電体、フタロシアニン系、スクエアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラセン系、ピレン系、ピリチウム塩、チアピリリウム塩等の有機顔料及び染料が使用される。
また、電荷輸送物質としては、例えばカルバゾール、インドール、イミダゾール、チアゾール、ピラゾール、ピラゾリン等の複素環化合物、アニリン誘導体、スチルベン誘導体又はこれらの化合物からなる基本側鎖を有する重合体等の電子供与性物質が使用され、特にヒドラゾン誘導体、アニリン誘導体、スチルベン誘導体が好ましい。
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。なお評価は下記の方法に従った。
(1)折り曲げ割れ
塩化メチレンに該ポリカーボネート樹脂5gを溶解させ、固形分濃度10重量%の溶液を調製した。その溶液を150mmφのシャーレ内に流し込み、一晩室温、40℃で3時間、60℃で3時間、溶媒を除去した後、100℃で24時間乾燥し、約100μm厚の透明キャストフィルムを得た。該キャストフィルムを手で折り曲げた際の割れの有無を確認した。
塩化メチレンに該ポリカーボネート樹脂5gを溶解させ、固形分濃度10重量%の溶液を調製した。その溶液を150mmφのシャーレ内に流し込み、一晩室温、40℃で3時間、60℃で3時間、溶媒を除去した後、100℃で24時間乾燥し、約100μm厚の透明キャストフィルムを得た。該キャストフィルムを手で折り曲げた際の割れの有無を確認した。
(2)耐磨耗性
(1)と同様にして得られたキャストフィルムを直径120mmの円盤状に切り出したものを使用し、スガ試験機(株)社製スガ摩耗試験機NUS−ISO−3型を用いて摩耗評価を行った。試験条件は23℃、50%RHの雰囲気下、住友スリーエム(株)社製ラッピングフィルムシート(研磨材3μAl2O3)を用いて荷重1.96Nで1200回往復磨耗後の摩耗体積量を試験前後の重量および該ポリカーボネート樹脂の比重を考慮、比較することにより測定した。
(1)と同様にして得られたキャストフィルムを直径120mmの円盤状に切り出したものを使用し、スガ試験機(株)社製スガ摩耗試験機NUS−ISO−3型を用いて摩耗評価を行った。試験条件は23℃、50%RHの雰囲気下、住友スリーエム(株)社製ラッピングフィルムシート(研磨材3μAl2O3)を用いて荷重1.96Nで1200回往復磨耗後の摩耗体積量を試験前後の重量および該ポリカーボネート樹脂の比重を考慮、比較することにより測定した。
(3)鉛筆硬度(樹脂)
(1)と同様にして得られたキャストフィルムを使用し、JIS K5700(鉛筆:三菱Uni、鉛筆角度:45度、荷重:7.35N)に準じて鉛筆引っかき試験により測定した。
(1)と同様にして得られたキャストフィルムを使用し、JIS K5700(鉛筆:三菱Uni、鉛筆角度:45度、荷重:7.35N)に準じて鉛筆引っかき試験により測定した。
(4)鉛筆硬度(電子写真感光体)
次に下記式(III)で示されるTPD10部及びバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂10部をテトラヒドロフラン80部に溶解し、この溶液を電荷発生層の上に浸漬法によって塗布し、乾燥して約20ミクロンの電荷輸送層を形成した電子写真感光体を得た。JIS K5600(鉛筆:三菱Uni、鉛筆角度:45度、荷重:7.35N)に準じて鉛筆引っかき試験により測定した。
次に下記式(III)で示されるTPD10部及びバインダー樹脂としてポリカーボネート樹脂10部をテトラヒドロフラン80部に溶解し、この溶液を電荷発生層の上に浸漬法によって塗布し、乾燥して約20ミクロンの電荷輸送層を形成した電子写真感光体を得た。JIS K5600(鉛筆:三菱Uni、鉛筆角度:45度、荷重:7.35N)に準じて鉛筆引っかき試験により測定した。
(5)摩擦係数
(1)と同様にして得られたキャストフィルムを使用し、新東科学(株)社製平面性測定器(HEIDON14型)を用いて摩擦係数の測定を行った。なお圧子は直径10mmのステンレス製ボール圧子を用い、荷重を1.96Nとした。
(1)と同様にして得られたキャストフィルムを使用し、新東科学(株)社製平面性測定器(HEIDON14型)を用いて摩擦係数の測定を行った。なお圧子は直径10mmのステンレス製ボール圧子を用い、荷重を1.96Nとした。
[実施例1]
ホスゲン吹込管、温度計及び攪拌機を備えたフラスコに2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下TBAと称する)130g(0.239モル)、7.0%水酸化ナトリウム水溶液161ml(水酸化ナトリウム0.299モル)、塩化メチレン393ml及びトリエチルアミン0.2ml(0.002モル)を仕込んで溶解し、攪拌下20〜25℃に保持し、ホスゲン28.5g(0.289モル)を60分要して吹込み、ホスゲン吹き込み終盤には25%水酸化ナトリウム水溶液5ml(水酸化ナトリウム0.041モル)を加えながら反応混合液のpHを、10.5〜11.0に維持してホスゲン化反応させた。ホスゲン化反応終了後p−tert−ブチルフェノール0.09g(0.0006モル)、およびトリエチルアミン0.8ml(0.008モル)を加え、25%水酸化ナトリウム水溶液44ml(水酸化ナトリウム0.363モル)を約60分かけて加え、35〜40℃の温度で90分間反応させた。分離した塩化メチレン相を無機塩類及びアミン類がなくなるまで酸洗浄及び水洗した後、塩化メチレンを除去してポリカーボネート樹脂を得た。このポリカーボネート樹脂は、比粘度0.95、Mw498,000であった。
ホスゲン吹込管、温度計及び攪拌機を備えたフラスコに2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下TBAと称する)130g(0.239モル)、7.0%水酸化ナトリウム水溶液161ml(水酸化ナトリウム0.299モル)、塩化メチレン393ml及びトリエチルアミン0.2ml(0.002モル)を仕込んで溶解し、攪拌下20〜25℃に保持し、ホスゲン28.5g(0.289モル)を60分要して吹込み、ホスゲン吹き込み終盤には25%水酸化ナトリウム水溶液5ml(水酸化ナトリウム0.041モル)を加えながら反応混合液のpHを、10.5〜11.0に維持してホスゲン化反応させた。ホスゲン化反応終了後p−tert−ブチルフェノール0.09g(0.0006モル)、およびトリエチルアミン0.8ml(0.008モル)を加え、25%水酸化ナトリウム水溶液44ml(水酸化ナトリウム0.363モル)を約60分かけて加え、35〜40℃の温度で90分間反応させた。分離した塩化メチレン相を無機塩類及びアミン類がなくなるまで酸洗浄及び水洗した後、塩化メチレンを除去してポリカーボネート樹脂を得た。このポリカーボネート樹脂は、比粘度0.95、Mw498,000であった。
[実施例2]
仕込みのp−tert−ブチルフェノール量を0.20g(0.0013モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度0.59、Mw214,000であった。
仕込みのp−tert−ブチルフェノール量を0.20g(0.0013モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度0.59、Mw214,000であった。
[実施例3]
仕込みのp−tert−ブチルフェノール量を0.06g(0.0004モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度1.15、Mw595,000であった。
仕込みのp−tert−ブチルフェノール量を0.06g(0.0004モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度1.15、Mw595,000であった。
[実施例4]
仕込みの二価フェノールをTBA65g(0.12モル)、および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン27g(0.12モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度1.27、Mw360,000であった。
仕込みの二価フェノールをTBA65g(0.12モル)、および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン27g(0.12モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度1.27、Mw360,000であった。
[実施例5]
仕込みの二価フェノールをTBA65g(0.12モル)、および2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン31g(0.12モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度1.38、Mw372,000であった。
仕込みの二価フェノールをTBA65g(0.12モル)、および2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン31g(0.12モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度1.38、Mw372,000であった。
[比較例1]
特開平2−146047の実施例1記載分と同程度の重量平均分子量のポリカーボネート樹脂の重合を試みた。
仕込みのp−tert−ブチルフェノール量を0.61g(0.0041モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度0.31、Mw28,000であった。
特開平2−146047の実施例1記載分と同程度の重量平均分子量のポリカーボネート樹脂の重合を試みた。
仕込みのp−tert−ブチルフェノール量を0.61g(0.0041モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度0.31、Mw28,000であった。
[比較例2]
仕込みのp−tert−ブチルフェノール量を0.24g(0.0016モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度0.52、Mw182,000であった。
以上、得られた各樹脂の物性を下記表1に示す。
仕込みのp−tert−ブチルフェノール量を0.24g(0.0016モル)に変更した以外は、実施例1における手順を繰り返した。このポリカーボネート樹脂は、比粘度0.52、Mw182,000であった。
以上、得られた各樹脂の物性を下記表1に示す。
本発明の高分子量ハロゲン化ポリカーボネート樹脂は、機械特性(フィルムの折り曲げ割れ特性)及び耐摩耗性に優れ、さらに表面滑り性と高硬度とを高度に両立させており、各種光学材料、特に電子写真感光体用バインダー樹脂として好適に用いられ、その奏する工業的効果は格別である。
Claims (3)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012151468A JP2014013355A (ja) | 2012-07-05 | 2012-07-05 | 電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂及びそれを用いた電子写真感光体 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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JP2014013355A true JP2014013355A (ja) | 2014-01-23 |
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ID=50109063
Family Applications (1)
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JP2012151468A Pending JP2014013355A (ja) | 2012-07-05 | 2012-07-05 | 電子写真感光体バインダー用ポリカーボネート樹脂及びそれを用いた電子写真感光体 |
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-
2012
- 2012-07-05 JP JP2012151468A patent/JP2014013355A/ja active Pending
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