JP2014012896A - 硬質皮膜被覆部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来、耐摩耗性、密着性といった機械的強度に優れるばかりではなく、耐高温酸化性、耐アルカリ性や離型性などの化学的安定性にも優れる硬質皮膜被覆部材は得られていなかった。
【解決手段】本発明の硬質皮膜被覆部材は、基材と、この基材上に順次に形成した厚さ1〜30μmの窒素含有クロム皮膜と、厚さ0.1〜3μmのクロム酸化皮膜とより成る。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐摩耗性、密着性、さらには高温酸化や金型における離型性に優れた硬質皮膜被覆部材に関し、特に、表面に硬質皮膜として窒素含有クロム皮膜が形成された部材に関する。さらにはアルミダイカスト用や樹脂成形用の金型表面に前記硬質皮膜が形成されたものに関する。
従来、耐摩耗性や耐焼き付き性が必要とされる自動車などの摺動部品や機械部材の他、高面圧下で使用される金型などの表面に、スパッタリングなどの物理的蒸着によって窒素含有クロム皮膜を形成して、耐摩耗性や耐焼き付き性を向上させる方法が知られている(特許文献1)。
また、例えば樹脂成形装置用部材である金型として、金属性母材の樹脂と接する表面に炭素およびフッ素を最表面にイオン注入した改質層を有する、優れた離型性と耐磨耗性を有し、その離型性を長期間にわたって維持できる金型が提案されている(特許文献2)。また、金型上にイオンプレーティングにより窒化クロム膜を形成し、その後に酸化クロム膜を形成し、耐磨耗性に優れた被膜を得る方法について提案されている(特許文献3)。
特開平11−217666号公報 特開2000−61952号公報 特開平8−296033号公報
しかし、アルミダイカストや樹脂成形の金型などに求められる特性である耐摩耗性、密着性、耐高温酸化性、離型性など全てを満足する表面処理皮膜を単純な系で解決するのは困難である。また、複合処理や多元素添加などで前記特性を全て満足することを図る手法が提案されてきたが、例えば前記特許文献の方法で要求特性の全てを満たすことは困難であった。
従来技術である窒素含有クロム皮膜はアモルファス構造を有し、明確な粒界が存在しないため、高耐食性、耐アルカリ性を有しているとされるが、金型に適用した場合、さらなる高寿命化に向けて成形される金属の溶湯や樹脂との濡れ性がよすぎて問題となっていた(例えば特許文献1)。
また、特許文献2の被膜は最表面の被膜の強度が比較的小さいために、負荷の高い前記金型用途においては被膜の早期剥離、摩滅のおそれがある。特許文献3の方法はイオンプレーティングによるもので、被膜を形成するためには金型を少なくとも300℃以上に加熱する必要があり、基材が軟化するおそれがある。
さらに、従来技術は装置・工程が複雑となり製造コストの高いものであった。また、再処理・局所的な処理ができないなどの生産性にも問題があるものであった。その他TiAlN皮膜を施した金型も知られているが、アルカリ水溶液に対して化学的に不安定であり、金型のメンテナンスにおいて不具合が生じるおそれがあった。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、耐摩耗性、密着性といった機械的強度に優れるばかりではなく、耐高温酸化性、耐アルカリ性や離型性などの化学的安定性にも優れる硬質皮膜部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、基材上に窒素含有クロム皮膜を形成し、この窒素含有クロム皮膜の上にクロム酸化皮膜を形成することにより、良好な耐摩耗性、密着性といった機械的特性と、耐高温酸化性、耐アルカリ性や離型性などの化学的安定性にも優れた高硬度の硬質皮膜で被覆された硬質皮膜被覆部材を得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による硬質皮膜被覆部材は、基材と、この基材上に順次に積層される厚さ1〜30μmの窒素含有クロム皮膜と、厚さ0.1〜3μmのクロム酸化皮膜とより成ること特徴とする。
本発明の硬質皮膜被覆部材は、基材と、この基材上に順次に積層される厚さ0.01〜3μmのクロム皮膜と、厚さ1〜30μmの窒素含有クロム皮膜と、厚さ0.1〜3μmのクロム酸化皮膜とより成ることを特徴とする。
本発明の硬質皮膜被覆部材は、前記窒素含有クロム皮膜と前記クロム酸化皮膜の間に、前記窒素含有クロム皮膜と前記クロム酸化皮膜の中間的な組成の厚さ0.01〜1μmの傾斜組成層を有することを特徴とする。
本発明の硬質皮膜被覆部材は、前記クロム酸化皮膜の表面にディンプルが形成されていることを特徴とする。
本発明の硬質皮膜被覆部材は、金型又は摺動部品として使用されることを特徴とする。
なお、本明細書中において、「窒素含有クロム皮膜」とは、クロム皮膜中に窒素または窒化クロムの少なくとも一方が分散した皮膜をいう。
本発明によれば、耐摩耗性、密着性といった機械的強度に優れ、耐高温酸化性、耐アルカリ性や離型性などの化学的安定性にも優れる硬質皮膜部材、および低コストで硬質皮膜の形成を可能とする前記硬質皮膜被覆部材を提供することができる。この硬質皮膜被覆部材は、金型、機械部品、自動車部品などに使用することができ、特に金型に適用することが好ましい。
本発明による硬質皮膜被覆部材の断面図である。 本発明による硬質皮膜被覆部材を製造するための処理装置の概略図である。
以下、添付図面を参照して、本発明による硬質皮膜被覆部材について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明による硬質皮膜被覆部材は、基材1と、この基材1上に形成される下地層2としてのクロム皮膜と、この下地層2上に形成された窒素含有クロム皮膜3と、この窒素含有クロム皮膜3の上に形成された傾斜組成層4と、この傾斜組成層4上に形成されたクロム酸化皮膜5とを備えている。上記傾斜組成層4は窒素含有クロム皮膜3とクロム酸化皮膜5の中間的な組成を持つ組成層であり、クロム皮膜中に、窒素または窒化クロムの少なくとも一方と、酸素または酸化クロムの少なくとも一方が、分散した皮膜をいう。
このように、機械的強度の高い硬質層である窒素含有クロム皮膜3の上に化学的に安定な硬質層であるクロム酸化皮膜5を形成することにより基材に耐磨耗性、密着性および耐アルカリ性に優れた高硬度の硬質皮膜を被覆して成る硬質皮膜被覆部材を得ることができる。またクロム酸化皮膜は既に酸化しており安定であるから、高温酸化が進む心配は少ない。さらに例えばアルミニウム溶湯や樹脂に対する濡れ性が低いためにこれらを成形する金型として用いた場合、優れた離型性を有する。
すなわち、基材1上に硬質で機械的な強度の高い窒素含有クロム皮膜3を形成し、その上に硬質で化学的に安定なクロム酸化皮膜5を形成することにより、耐磨耗性、密着性、耐高温酸化性、耐アルカリ性および離型性を向上させることができ、さらに下地層2と傾斜組成層4を形成することにより、基材と窒素含有クロム皮膜間、窒素含有クロム皮膜とクロム酸化皮膜間等に生じる応力を緩和してより高い密着力を確保することができる。
良好な耐磨耗性を得るためには、窒素含有クロム皮膜3の厚さは、1〜30μmであるのが好ましく、1〜20μmであるのがさらに好ましく、2〜15μmであるのが最も好ましい。また、良好な耐高温酸化性、耐アルカリ性、離型性を得るにはクロム酸化皮膜5の厚さは0.1〜3μmが好ましく、0.2〜2μmであるのがさらに好ましい。
また、基材と皮膜の密着力をさらに向上させるために、基材1上に下地層2として厚さ0.01〜3μmのクロム皮膜を形成するのが好ましく、この厚さは0.1〜2μmであるのがさらに好ましい。
さらに、基材と皮膜および窒素含有クロム皮膜とクロム酸化皮膜の密着性をさらに向上させるために、前記傾斜組成層4を前記窒素含有クロム皮膜3と前記クロム酸化皮膜5の間に形成することが好ましく、その厚さは0.01〜1μmが好ましく、さらには0.05〜0.5μmであることが好ましい。
下地層2としてのクロム皮膜と窒素含有クロム皮膜3は、クロムターゲットを使用してスパッタリングする装置の処理室内で連続的に形成することができる。すなわち、下地層2としてのクロム皮膜を形成する際には、例えば処理室内をアルゴンガス雰囲気とし、窒素含有クロム皮膜3を形成する際には、処理室内をアルゴンガスと窒素ガスを含む雰囲気にして、下地層2としてのクロム皮膜と窒素含有クロム皮膜3を連続的に形成することができる。
また、本発明の皮膜は表面にクロム酸化皮膜を有し、アルミニウムの溶湯に対して濡れが悪く、すなわち金型に適用した場合、離型性が良い。また、酸・アルカリに不溶で化学的に安定である。
上記スパッタリングは、DCマグネトロンスパッタリング法によって行うことができ、基材として使用する鋼材の焼き戻し温度以下の低温で成膜することができるため(例えば250℃以下)、鋼材の軟化や熱歪を抑制することができ、また、他の物理的蒸着と比べて生産性が高い。また、このスパッタリングでは、イオンプレーティング法によって成膜する場合のように皮膜の材料が溶融した塊(ドロップレット)が発生しないので、平滑な表面の皮膜を形成することができる。さらに、このスパッタリングでは、クロム皮膜と窒素含有クロム皮膜を形成するため、他の材料(元素)の中間層を排除することができるので、従来のスパッタリング装置に単一のターゲットを使用して、処理室内への窒素ガスの導入をON/OFFの切り替えにより行なって皮膜を形成することができる。そのため、高硬度を確保しながら応力を緩和層により応力を緩和して優れた密着性を有する窒素含有クロム皮膜を得ることができる。また、バイアス電圧を一定にしてスパッタリングを行うことができるので、皮膜の割れを防止することができる。
本発明による硬質皮膜被覆部材の実施の形態は、例えば、図2に示す処理装置10を使用して製造することができる。この処理装置10は、真空処理室12と、この真空処理室12内を減圧して真空にするための真空ポンプ14と、真空処理室12内の底部の中心部に配設された回転テーブル16と、この回転テーブル16上に治具18を介して載置された被処理部材としての基材20と、この基材20を取り囲むように配置された蒸発源としてのターゲット22と、これらのターゲット22の各々に接続された直流のスパッタ電源24と、回転テーブル16に接続された直流のイオンボンバードおよびバイアス電源26と、真空処理室12内にアルゴンガスおよび窒素ガスを導入するためのガス導入パイプ28とを備えている。以下、この処理装置10を使用して、本発明による硬質皮膜被覆部材を製造する方法について説明する。
(イオンボンバード処理工程)
まず、処理装置10のターゲット22としてクロムターゲットを配置し、真空ポンプ14を作動させて真空処理室12内を真空排気した後、ガス導入パイプ28を介して真空処理室12内にアルゴンガスを導入して真空処理室12内をアルゴンガス雰囲気にして、イオンボンバード処理を行って、基材20の表面を活性化する。また、基材は図示しないヒーターなどにより、250℃以下、好ましくは200℃〜130℃に加熱される。基材の加熱は後工程のスパッタリングが終了するまで続けられる。なお、膜形成時(スパッタリング時)の加熱は、粒子イオンの衝突エネルギーにより行われる部分が大きく、ヒーターが不要なことがある。
(下地層形成工程・・・クロム皮膜形成工程)
次に、アルゴンガスの導入を一旦停止し、真空処理室12内を真空排気した後、ガス導入パイプ28を介して真空処理室12内にアルゴンガスを導入して真空処理室12内をアルゴンガス雰囲気にする。その後、ターゲット22にスパッタ電源24から所定の電圧を印加して、ターゲット22の近傍にグロー放電(低温プラズマ)を生じさせる。これにより、放電領域内のアルゴンガスがイオン化してターゲット22に高速で衝突し、この衝突によってターゲット22からクロム原子が叩き出され、このクロム原子が基材20の表面に叩き付けられて、基材20の表面に下地層としてのクロム皮膜が形成される。
(窒素含有クロム皮膜形成工程)
次に、ガス導入パイプ28を介して真空処理室12内にアルゴンガスと窒素ガスを導入して真空処理室12内をアルゴンガスと窒素ガスの雰囲気にする。その後、ターゲット22にスパッタ電源24から所定の電圧を印加して、ターゲット22の近傍にグロー放電(低温プラズマ)を生じさせる。これにより、放電領域内のアルゴンガスがイオン化してターゲット22に高速で衝突し、この衝突によってターゲット22からクロム原子が叩き出され、このクロム原子が真空処理室12内の雰囲気中の窒素原子とともに基材20上のクロム皮膜の表面に叩き付けられて、基材20上のクロム皮膜の表面に窒素を含有するクロム皮膜(硬質層)が形成される。この窒素含有クロム皮膜はクロム中にNが固溶あるいは、クロム中にアモルファス構造の窒化クロム、クロム中に微細な結晶の窒化クロムの少なくとも1つ以上を有する皮膜となる。
なお、上記のスパッタリングでは、皮膜の厚さを均一にするために且つ基材20の温度をその焼戻し温度以下に維持するために、ターゲット22と基材20の間隔を、例えば、70〜80mmに保持するのが好ましい。
(クロム酸化皮膜形成工程)
次に、前記窒素含有クロム皮膜を形成した基材をスパッタ処理装置から取り出し、レーザー加工装置において、大気中で所定出力のレーザーを窒素含有クロム皮膜に一定時間照射する。この結果窒素含有クロム皮膜内の窒素は熱拡散を生じ、皮膜内のクロムはポテンシャンルの高い酸素と結合する。このときの照射時間と照射エネルギーで所望の厚さのクロム酸化皮膜を得ることができる。
レーザーによるクロム酸化皮膜形成処理は、例えばフェムト秒レーザーにより極短時間に光エネルギーを集中させ、すなわちその照射時間を短くすることで、熱影響が基材にほとんどないようにすることができる。
通常の窒素含有クロム皮膜の酸化温度である700〜900℃での加熱処理をガスの燃焼による加熱や電気ヒーターによる加熱などにより行なうことなく、安定なクロム酸化皮膜を所望の厚さに形成することができ、さらに通常の加熱処理で見られるような変態に伴う歪の発生や、硬度の軟化を防ぐことができる。
さらにレーザーによるクロム酸化皮膜形成の特徴として、一般に行われる、レーザをパルス的に照射し、且つ走査することで、凹状のディンプル構造を表面の全面にわたり付与することができる。このディンプルは、離型材、潤滑剤の保持性に優れ、すなわち金型に適用した場合離型性や耐久性を向上させ、構造的にも優れた皮膜を提供することができる。また、自動車等の摺動部品に適用した場合、ディンプルが潤滑油を保持し、部品の耐久性を向上させる。
このようにして作製された窒素含有クロム皮膜とクロム酸化皮膜は窒素含有クロム皮膜とクロム酸化皮膜の界面に傾斜した窒素と酸素の拡散層を有するため、窒素含有クロム皮膜とクロム酸化皮膜間の密着力が優れており、窒素含有クロム皮膜のアモルファス構造に由来した化学的安定性をも持ち合わせている。
なお、レーザーを用いなくとも、予め所定温度に加熱した炉内に、前記窒素含有クロム皮膜を形成した基材を短時間投入し、その後冷却するという熱処理によっても、基材に与える熱影響を最小限にとどめ、且つクロム酸化皮膜を形成することができる。
ダイス鋼SKD11に浸炭焼入れ焼き戻しを施した後に鏡面研磨した基材を用意した。この基材をクロムターゲットが設置された処理装置(DCマグネトロンスパッタリング装置)の真空処理室に入れて、到達真空度5×10-4Pa以下に真空排気した後、真空処理室内が圧力5×10-1Paのアルゴンガス雰囲気になるように制御してアルゴンガスを真空処理室内に導入し、基材をヒーターで加熱し200℃とし、1000V×2Aでイオンボンバード処理を約180分間施して、基材の表面を活性化した。
次に、アルゴンガスの導入を一旦停止し、真空処理室内を排気して真空にした後、真空処理室内の雰囲気中のアルゴンガスの分圧が0.061Paになるようにアルゴンガスを真空処理室内に導入しながら、投入電力4kW、バイアス電圧を−100Vとして、スパッタリングを約40秒間行って、基材上に下地層としてビッカース硬度HV500程度、厚さ50nm(0.05μm)程度のクロム皮膜を形成した。なお、スパッタリングする前に、前記ヒーターをオフにし、以降の処理はヒーターの加熱を停止したが、スパッタリング処理中基材の温度は200℃に保たれた。
次に、真空処理室内の雰囲気中のアルゴンガスの分圧が0.042Paになるようにアルゴンガスを真空処理室内に導入するとともに、窒素ガスの分圧が0.054Paになるように窒素ガスを真空処理室内に導入しながら、投入電力4kW、バイアス電圧を−100Vとして、スパッタリングを40分間行って、基材上に厚さ約3.2μmの窒素含有クロム皮膜を形成した(窒素含有クロム皮膜形成工程)。
次に、前記窒素含有クロム皮膜形成した基材をスパッタ処理装置から取り出し、レーザー加工装置において、大気中で所定出力のレーザーを窒素含有クロム皮膜に一定時間照射した。レーザー照射はパルス的に行われ、且つ表面の全面を走査することで、表面に凹状のディンプル構造を有するクロム酸化皮膜を形成した(クロム酸化皮膜形成工程)。
このようにして得られた本発明の硬質皮膜被覆部材の表面状態をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、またEDS(エネルギー分散分光法)により表面の元素マッピングを実施した。さらにGDS(グロー放電発光分光分析)により硬質皮膜被覆部材の深さ方向の元素プロファイルを測定した。
また、硬質皮膜被覆部材の深さ方向のビッカース硬さを測定、および表面のX線回折分析を実施した。
SEMで硬質皮膜被覆部材の表面を観察したところ、表面に直径1μm程度の大きさ及び深さののディンプルが、約1μm間隔で全面にわたって形成されていた。またEDS分析により、該表面にO(酸素)が表面の全面に検出された。
次にGDSにより硬質皮膜被覆部材を表面から深さ方向の元素プロファイルを測定した。その結果表面から約0.2μmの範囲にクロムと酸素の強度の高いクロム酸化皮膜の存在が確認された。また、わずかに窒素も検出された。
また、酸素と窒素とクロムの元素が共存する層が前記クロム酸化皮膜と前記窒素含有クロム皮膜の間に約0.2μm認められ、酸素とクロムが漸減、窒素が漸増した領域となっており、傾斜組成層を呈している。
この傾斜組成層より深い部分は窒素とクロムが存在する窒素含有クロム皮膜となっていた。
塑性変形硬さとしてのビッカース硬さは、フィッシャー硬度計(超微小硬さ試験機)(株式会社フィッシャー・インストルメント製のFISCHERSCOPEH100CXY-P)を使用して、バーコビッチ圧子により測定荷重100mN/10sを加えて室温で測定した塑性変形硬さに基づいて算出した。その結果、ビッカース硬さHVは770であった。
X線回折によりCrのピークとCrN、Cr23 のピークが確認された。またCrNのピークはブロードであり窒素含有クロム皮膜はCr中にアモルファス構造のCrNあるいは微細な結晶のCrNの少なくとも一方を有していると推定される。また表面に酸化皮膜Cr23 が形成されたことを確認した。
(比較例1)
前記クロム酸化皮膜形成工程を実施しない以外は、実施例1と同様の方法で硬質皮膜被覆部材を作製し、同様の方法で評価した。
SEMで硬質皮膜被覆部材の表面を観察したところ、約0.1〜数μmの粒状の形成が見られた。また、EDSによるとクロムと窒素が確認された。
次にGDSにより硬質皮膜被覆部材を表面から深さ方向の元素プロファイルを測定した。その結果クロムと窒素が検出され、窒素含有クロム皮膜であることが確認できた。
X線回折によりCrのピークとCrNピークが確認され、Cr23 のピークは認められなかった。またCrNのピークはブロードでありCr中にアモルファス構造のCrNあるいは微細な結晶のCrNの少なくとも一方を有していると推定される。
上記実施例1と比較例1で処理した部材の皮膜の強度を調べるため、また耐摩耗性の評価としてビッカース硬度HVを測定した。この結果、部材表面のビッカース硬度HVは両者ともに760程度であった。
上記実施例1と比較例1で処理した部材について、アルミニウム用の金型に適用した場合の離型性、耐久性、さらには耐高温酸化性を調べるために各部材を700℃のアルミニウムの溶湯に1分間浸漬した後取り出した。実施例1の部材にアルミニウムの付着は見られなかったが、比較例1の部材にはアルミニウムの付着が見られた。すなわち、実施例1は離型性、耐久性に優れていることが判明した。
金型に適用したときのメンテナンスを想定して、実施例1の部材を水酸化ナトリウムのアルカリ水溶液中に浸漬したが、皮膜は溶解することなく、化学的に安定であった。
1 基材
2 下地層
3 窒素含有クロム皮膜
4 傾斜組成層
5 クロム酸化皮膜
10 処理装置
12 真空処理室
14 真空ポンプ
16 回転テーブル
18 治具
20 基材
22 ターゲット
24 スパッタ電源
26 バイアス電源
28 ガス導入パイプ

Claims (5)

  1. 基材と、この基材上に順次に積層される厚さ1〜30μmの窒素含有クロム皮膜と、厚さ0.1〜3μmのクロム酸化皮膜とより成ること特徴とする硬質皮膜被覆部材。
  2. 基材と、この基材上に順次に積層される厚さ0.01〜3μmのクロム皮膜と、厚さ1〜30μmの窒素含有クロム皮膜と、厚さ0.1〜3μmのクロム酸化皮膜とより成ることを特徴とする硬質皮膜被覆部材。
  3. 前記窒素含有クロム皮膜と前記クロム酸化皮膜の間に、前記窒素含有クロム皮膜と前記クロム酸化皮膜の中間的な組成の厚さ0.01〜1μmの傾斜組成層を有することを特徴とする請求項1または2記載の硬質皮膜被覆部材。
  4. 前記クロム酸化皮膜の表面にディンプルが形成されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の硬質皮膜被覆部材。
  5. 金型又は摺動部品として使用されることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の硬質皮膜被覆部材。
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