本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側および下側とし、逆に図の上側を他方側および上側として定義する。
本実施形態の緩衝器は、図1に示すように、いわゆる複筒式の油圧緩衝器で、円筒状のシリンダ1と、このシリンダ1よりも大径でシリンダ1を覆うように同心状に設けられる外筒2とを有している。これらシリンダ1と外筒2との間はリザーバ室3となっている。
シリンダ1内には、ピストン5が摺動可能に嵌装されている。このピストン5は、シリンダ1内を上室(室)6および下室(室)7の二室に区画している。シリンダ1内の上室6および下室7内には、作動流体としての油液が封入され、シリンダ1と外筒2との間のリザーバ室3内には、作動流体としての油液と、高圧(20〜30気圧程度)のガスとが封入される。
シリンダ1内には、一端がシリンダ1の外部へと延出されるピストンロッド10の他端が挿入されており、ピストン5は、このピストンロッド10のシリンダ1内の他端に連結されている。ピストンロッド10は、シリンダ1の一端開口部に装着されたロッドガイド11、摩擦部材12およびシール部材13に挿通されてシリンダ1の外部へ延出されている。ロッドガイド11は、外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしており、下部においてシリンダ1の上端の内周部に嵌合し上部において外筒2の上端の内周部に嵌合する。これにより、シリンダ1の上部が外筒2に対して位置決めされる。外筒2の上端部は、内側に加締められており、シール部材13およびロッドガイド11をシリンダ1とで挟持する。
ピストンロッド10は、シリンダ1内への挿入先端側に、ピストン5を取り付けるための取付軸部15が形成されており、他の部分が取付軸部15よりも大径の主軸部16となっている。この主軸部16には、径方向外側に広がるリテーナ23が固定されており、リテーナ23のピストン5とは反対には円環状の弾性材料からなる緩衝体28が設けられている。
ピストン5には、上室6と下室7とを連通させ、ピストン5の上室6側への移動、つまりピストンロッド10がシリンダ1から伸び出る伸び行程において、上室6および下室7の一方である上室6から他方である下室7に向けて油液が流れ出す複数(図1では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30aと、ピストン5の下室7側への移動、つまりピストンロッド10がシリンダ1内に進入する縮み行程において、上室6および下室7の他方である下室7から一方である上室6に向けて油液が流れ出す複数(図1では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30bとが設けられている。
これらのうち半数を構成する通路30aは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30bを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン5の軸方向一側(図1の上側)が径方向外側に、軸方向他側(図1の下側)が径方向内側に開口している。そして、これら半数の通路30aに、減衰力を発生する減衰力発生機構31aが設けられている。減衰力発生機構31aは、ピストン5の軸線方向の下室7側に配置されている。通路30aは、ピストンロッド10がシリンダ1外に伸び出る伸び側にピストン5が移動することにより油液が上室6から流れ出す伸び側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構31aは、伸び側の通路30aの油液の流動を抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
また、残りの半数を構成する通路30bは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30aを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン5の軸方向他側(図1の下側)が径方向外側に、軸方向一側(図1の上側)が径方向内側に開口している。そして、これら残り半数の通路30bに、減衰力を発生する減衰力発生機構31bが設けられている。減衰力発生機構31bは、ピストン5の軸線方向の上室6側に配置されている。通路30bは、ピストンロッド10がシリンダ1内に入る縮み側にピストン5が移動することにより油液が下室7から流れ出す縮み側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構31bは、縮み側の通路30bの油液の流動を抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。
ピストンロッド10には、主軸部16のピストン5の近傍位置に、径方向に沿う通路穴40が形成されており、この通路穴40に連通し取付軸部15側の先端部に開口する、通路穴40より大径の通路穴41が軸方向に沿って形成されている。これら通路穴40,41が、ピストンロッド10に設けられるロッド内通路42を構成しており、このロッド内通路42は上室6に常時連通している。
ピストンロッド10には、そのシリンダ1内にある一端側の取付軸部15のピストン5よりもさらに端側に、ロッド内通路42に連通するように減衰力可変機構45が取り付けられている。
外筒2は、円筒状の円筒部材47と、円筒部材47の下端に嵌合してその下端の開口部を閉塞する底蓋部材48とからなっている。底蓋部材48は、外周部で円筒部材47の内周部に嵌合されることになり、この状態で、円筒部材47に溶接により密閉状態となるように固定されている。底蓋部材48の外側には、緩衝器を車両に取り付けるための取付部材49が溶接により固定されている。
シリンダ1の下端部には、シリンダ1内の下室7と、上記したリザーバ室3とを画成するボトムバルブ50が設けられている。ボトムバルブ50は、上記した伸び行程においてリザーバ室3から下室7内に実質的に減衰力を発生させずに油液を流すサクションバルブ51aと、縮み行程において下室7からリザーバ室3側に、減衰力を発生させながら油液を流す減衰バルブ51bとを有している。
ボトムバルブ50は、シリンダ1に嵌装されて下室7およびリザーバ室3の2室を仕切る略円板状のボトムバルブ部材55を有している。ボトムバルブ部材55は、上部が下部よりも小径となる段差状をなしており、上部においてシリンダ1の下端の内周部に嵌合し下部において外筒2の底蓋部材48に当接して、シリンダ1の下部を外筒2に対して位置決めする。
ボトムバルブ部材55には、径方向の外側において軸方向に貫通する通路57aが周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。また、ボトムバルブ部材55には、径方向の内側において軸方向に貫通する通路57bが、周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。これら通路57a,57bによって下室7とリザーバ室3との間で油液が流通可能となっている。
ボトムバルブ50には、ボトムバルブ部材55の軸方向の下室7側に、外側の通路57aを開閉可能となるように上記したサクションバルブ51aが設けられており、ボトムバルブ部材55の軸方向の下室7とは反対側に、内側の通路57bを開閉可能となるように上記した減衰バルブ51bが設けられている。
下室7側のサクションバルブ51aは、ピストンロッド10が伸び側に移動しピストン5が上室6側に移動して下室7の圧力が下降するとボトムバルブ部材55から離座して通路57aを開く。つまり、通路57aには、ピストンロッド10が伸び側に移動したときに油液がリザーバ室3から下室7に向け流通することになる。なお、サクションバルブ51aは、ピストン5に設けられた伸び側の減衰力発生機構31aとの関係から、主としてピストンロッド10のシリンダ1からの突出に伴う油液の不足分を補うようにリザーバ室3から下室7に油液を実質的に抵抗なく(減衰力が出ない程度に)流す機能を果たす。
下室7とは反対側の減衰バルブ51bは、ピストンロッド10が縮み側に移動しピストン5が下室7側に移動して下室7の圧力が上昇すると、ボトムバルブ部材55から離座して内側の通路57bを開く。つまり、通路57bには、ピストンロッド10が縮み側に移動したときに油液が下室7からリザーバ室3に向け流通することになり、減衰バルブ51bは、この通路57bを開閉し減衰力を発生する縮み側の減衰バルブとなっている。なお、減衰バルブ51bは、ピストン5に設けられた縮み側の減衰力発生機構31bとの関係から、主としてピストンロッド10のシリンダ1への進入により生じる液の余剰分を排出するように下室7からリザーバ室3に液を流す機能を果たす。
上述の緩衝器の例えば一方側は車体により支持され、上記緩衝器の他方側に車輪側が固定される。具体的には、ピストンロッド10にて車体側に連結され、シリンダ1のピストンロッド10の突出側とは反対側に取り付けられた取付部材49にて車輪側に連結される。なお、上記とは逆に、緩衝器の他方側が車体により支持され緩衝器の一方側に車輪側が固定されるようにしても良い。
車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ1とピストンロッド10との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン5に形成された通路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン5に形成された通路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ1とピストンロッド10との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ1とピストンロッド10との間に作用する。以下で説明するとおり、本実施形態の緩衝器は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
図2に示すように、ピストン5は、略円板状のピストン本体61と、ピストン本体61の外周面に装着されて、シリンダ1内に摺接する摺接部材62とを有している。ピストン本体61には、径方向の中央に、ピストンロッド10の取付軸部15を挿通させる挿通穴63が軸方向に貫通するように形成されている。また、このピストン本体61に、上記した通路30a,30bが形成されている。
ピストン本体61の軸方向の下室7側の端部には、伸び側の通路30aの一端開口位置の外側に、減衰力発生機構31aを構成するシート部71aが、円環状に形成されている。ピストン本体61の軸方向の上室6側の端部には、縮み側の通路30bの一端の開口位置の外側に、減衰力発生機構31bを構成するシート部71bが、円環状に形成されている。
ピストン本体61において、シート部71aの挿通穴63とは反対側は、シート部71aよりも軸線方向高さが低い環状の段差部72bとなっており、この段差部72bの位置に縮み側の通路30bの他端が開口している。また、同様に、ピストン本体61において、シート部71bの挿通穴63とは反対側は、シート部71bよりも軸線方向高さが低い環状の段差部72aとなっており、この段差部72aの位置に伸び側の通路30aの他端が開口している。
減衰力発生機構31aは、上記したシート部71aと、シート部71aの全体に同時に着座可能な環状のディスク75aとからなっており、ディスクバルブとなっている。ディスク75aは複数枚の環状の単体ディスクが重ね合わせられることで構成されている。ディスク75aのピストン本体61とは反対側には、ディスク75aよりも小径の環状のバルブ規制部材77aが配置されている。
減衰力発生機構31aには、シート部71aとディスク75aとの間に、これらが当接状態にあっても通路30aを下室7に連通させる固定オリフィス78aが、シート部71aに形成された溝あるいはディスク75aに形成された開口によって形成されている。ディスク75aは、シート部71aから離座することで通路30aを開放し、その際に、バルブ規制部材77aはディスク75aの開方向への規定以上の変形を規制する。減衰力発生機構31aは、通路30aに設けられ、ピストン5の上室6側への摺動によって通路30aに生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
同様に、減衰力発生機構31bは、上記したシート部71bと、シート部71bの全体に同時に着座可能な環状のディスク75bとからなっており、ディスクバルブとなっている。ディスク75bも複数枚の環状の単体ディスクが重ね合わせられることで構成されている。ディスク75bのピストン本体61とは反対側には、ディスク75bよりも小径の環状のバルブ規制部材77bが配置されている。バルブ規制部材77bは、ピストンロッド10の主軸部16の取付軸部15側の端面に当接している。
減衰力発生機構31bには、シート部71bとディスク75bとの間に、これらが当接状態にあっても通路30bを上室6に連通させる固定オリフィス78bが、シート部71bに形成された溝あるいはディスク75bに形成された開口によって形成されている。ディスク75bは、シート部71bから離座することで通路30bを開放し、その際に、バルブ規制部材77bはディスク75bの開方向への規定以上の変形を規制する。減衰力発生機構31bは、通路30bに設けられ、ピストン5の下室7側への摺動によって通路30bに生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
本実施形態では、減衰力発生機構31a,31bが内周クランプのディスクバルブである例を示したが、これに限らず、減衰力を発生する機構であればよく、例えば、ディスクバルブをコイルバネで付勢するリフトタイプのバルブとしてもよく、また、ポペット弁であってもよい。
ピストンロッド10の取付軸部15の先端には、オネジ80が形成されており、このオネジ80に、周波数(振動状態)により外部から制御されることなく減衰力を可変とする周波数感応部である上記した減衰力可変機構45が螺合されている。減衰力可変機構45は、オネジ80に螺合された状態で、上記したバルブ規制部材77a、ディスク75a、ピストン5、ディスク75bおよびバルブ規制部材77bをピストンロッド10の主軸部16の端面との間に挟持することになり、ナットを兼用している。
減衰力可変機構45は、ピストンロッド10の一端側のオネジ80に螺合されるメネジ81が形成された蓋部材82と、この蓋部材82にその一端開口側が閉塞されるように取り付けられる略円筒状のハウジング本体83とからなるハウジング85と、このハウジング85内に摺動自在に挿入されるフリーピストン87と、フリーピストン87とハウジング85の蓋部材82との間に介装されてフリーピストン87がハウジング85に対し軸方向の蓋部材82側へ移動したときに圧縮変形する縮み側の弾性体であるOリング(他方の弾性リング)88と、フリーピストン87とハウジング85のハウジング本体83との間に介装されてフリーピストン87がハウジング85に対し上記とは反対側へ移動したときに圧縮変形する伸び側の弾性体であるOリング(一方の弾性リング)89とで構成されている。なお、図2においては便宜上自然状態のOリング88,89を図示している。特にOリング89は、シールとしても機能するので、取り付けられた状態で常時、変形(断面非円形)しているように配置されることが望ましい。上記したOリング88はフリーピストン87が一方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっており、Oリング89はフリーピストン87が他方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっている。
蓋部材82は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状の蓋内筒部91と、この蓋内筒部91の軸方向の一端部から径方向外側に延出する有孔円板状の蓋基板部92と、蓋基板部92の外周側から蓋内筒部91と同方向に延出する蓋外筒部(他方の小径部)93と、蓋外筒部93の軸方向の蓋基板部92と同側から径方向外側に突出する環状の嵌合凸部94とを有している。
蓋内筒部91の内周部には、上記したメネジ81が形成されている。蓋外筒部93の内周面は、蓋基板部92側から順に、円筒面部96および傾斜面部97を有している。円筒面部96は一定径をなしており、円筒面部96に繋がる傾斜面部97は、円筒面部96から軸方向に離れるほど大径となる円環状となっている。傾斜面部97は蓋部材82の中心軸線を含む断面が略円弧状をなしている。
ハウジング本体83は、切削加工を主体として形成されるもので、軸方向一側に径方向内方に突出する内側環状突起(一方の小径部)100が形成された略円筒状をなしている。ハウジング本体83の内周面には、軸方向一側から順に、小径円筒面部101、傾斜面部102、大径円筒面部103および嵌合円筒面部104が形成されている。小径円筒面部101は一定径をなしており、小径円筒面部101に繋がる傾斜面部102は、小径円筒面部101から離れるほど大径となる円環状となっており、傾斜面部102に繋がる大径円筒面部103は、小径円筒面部101より大径の一定径をなしている。傾斜面部102はハウジング本体83の中心軸線を含む断面が略円弧状をなしている。小径円筒面部101と傾斜面部102とは、内側環状突起100に形成されている。なお、ハウジング本体83を円筒状と記述しているが、内周面は断面円形となることが望ましいが、外周面は、多角形等断面非円形であってもよい。
このようなハウジング本体83は、嵌合円筒面部104が軸方向の内側環状突起100とは反対側の端部まで延在する状態で、嵌合円筒面部104に、蓋部材82の嵌合凸部94が嵌合され、その後、ハウジング本体83の嵌合凸部94よりも軸方向の内側環状突起100とは反対側の部分が内側に折り曲げられることで、これらが一体化されてハウジング85となる。蓋部材82の蓋外筒部93は、ハウジング85において大径円筒面部103よりも径方向内側に突出する円環状の小径部を構成しており、この部分に傾斜面部97が形成されている。また、ハウジング本体83の内側環状突起100は、ハウジング85において大径円筒面部103よりも径方向内側に突出する円環状の小径部を構成しており、この部分に傾斜面部102が形成されている。これら傾斜面部97と傾斜面部102とが軸方向に対向するように配置されている。
フリーピストン87は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状のピストン筒部108と、このピストン筒部108の軸方向の一側を閉塞するピストン閉板部109とを有しており、ピストン筒部108には、他の部分より大径であって径方向外方に突出する円環状の外側環状突起(中間大径部)110が軸方向の中間位置に形成されている。外側環状突起110は、フリーピストン87の軸方向の中央位置より若干ピストン閉板部109とは反対側にずれて形成されている。
ピストン筒部108の外周面には、軸方向のピストン閉板部109側から順に、テーパ面部112、小径円筒面部113、傾斜面部114、大径円筒面部115、傾斜面部116、小径円筒面部117およびテーパ面部118が形成されている。傾斜面部114、大径円筒面部115および傾斜面部116は、外側環状突起110に形成されている。
テーパ面部112は、軸方向の小径円筒面部113とは反対側ほど小径となるテーパ状をなしている。テーパ面部112の大径側に繋がる小径円筒面部113は一定径となっており、この小径円筒面部113に繋がる傾斜面部114は小径円筒面部113から軸方向に離れるほど大径となる円環状となっている。傾斜面部114に繋がる大径円筒面部115は、小径円筒面部113より大径の一定径をなしている。傾斜面部114はフリーピストン87の中心軸線を含む断面が略円弧状をなしている。
大径円筒面部115に繋がる傾斜面部116は、大径円筒面部115から離れるほど小径となる円環状をなしている。傾斜面部116に小径円筒面部117が繋がっており、この小径円筒面部117は、小径円筒面部113と同径の一定径となっている。小径円筒面部117に繋がるテーパ面部118は、軸方向の小径円筒面部117とは反対側ほど小径となるテーパ状をなしている。傾斜面部116はフリーピストン87の中心軸線を含む断面が略円弧状をなしている。外側環状突起110はその軸線方向の中央位置を通る平面に対して対称形状をなしている。フリーピストン87は、外側環状突起110の軸方向の中央位置に、外側環状突起110を径方向に貫通する通路穴119がフリーピストン87の周方向に間隔をあけて複数箇所形成されている。
フリーピストン87は、ピストン閉板部109を軸方向の内側環状突起100側に配置するようにして、ハウジング85内に配置されることになる。ハウジング85内に配置された状態で、フリーピストン87は、大径円筒面部115がハウジング本体83の大径円筒面部103の位置を軸方向に移動し、一側のテーパ面部112および小径円筒面部113がハウジング本体83の小径円筒面部101の位置を軸方向に移動し、他側の小径円筒面部117およびテーパ面部118が蓋部材82の蓋外筒部93の円筒面部96の位置を軸方向に移動する。
フリーピストン87がハウジング85内に配置された状態で、ハウジング本体83の傾斜面部102とフリーピストン87の傾斜面部114とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、ハウジング本体83の傾斜面部102と、フリーピストン87の傾斜面部114とがフリーピストン87の移動方向で対向する。加えて、蓋部材82の蓋外筒部93の傾斜面部97とフリーピストン87の傾斜面部116とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、蓋部材82の傾斜面部97と、フリーピストン87の傾斜面部116とがフリーピストン87の移動方向で対向する。
そして、フリーピストン87の小径円筒面部113および傾斜面部114と、ハウジング本体83の傾斜面部102および大径円筒面部103との間に、言い換えれば、フリーピストン87の外側環状突起110とハウジング85の内側環状突起100との間に、Oリング89(図2において自然状態を図示)が配置されている。このOリング89は、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなし、内径がフリーピストン87の小径円筒面部113よりも小径で、外径がハウジング本体83の大径円筒面部103よりも大径となっている。つまり、Oリング89は、フリーピストン87およびハウジング85の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
また、ハウジング85の大径円筒面部103および傾斜面部97と、フリーピストン87の傾斜面部116および小径円筒面部117との間に、言い換えれば、フリーピストン87の外側環状突起110とハウジングの蓋外筒部93との間に、Oリング88(図2において自然状態を図示)が配置されている。このOリング88は、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなしており、内径がフリーピストン87の小径円筒面部117よりも小径で、外径がハウジング85の大径円筒面部103よりも大径となっている。つまり、Oリング88も、フリーピストン87およびハウジング85の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
両方のOリング88,89は、同じ大きさのものであり、フリーピストン87をハウジング85に対して軸方向の所定の中立位置に保持するように付勢するとともにフリーピストン87のハウジング85に対する軸方向両側の移動を許容する。
フリーピストン87においては、Oリング88が小径円筒面部117、傾斜面部116に接触することになり、これらのうち傾斜面部116は、フリーピストン87の移動方向に対し傾斜している。また、ハウジング85においては、Oリング88がハウジング85の大径円筒面部103および傾斜面部97に接触することになり、これらのうち傾斜面部97は、フリーピストン87の移動方向に対し傾斜している。
言い換えれば、フリーピストン87の外周部に外側環状突起110を設け、この外側環状突起110の軸方向両面は、傾斜面部114と傾斜面部116とを構成し、ハウジング85の内周における、外側環状突起110の両側の位置に、傾斜面部102を有する内側環状突起100と、傾斜面部97を有する蓋外筒部93とを設け、外側環状突起110と、内側環状突起100および蓋外筒部93との間にそれぞれOリング89およびOリング88を設けている。
なお、減衰力可変機構45を組み立てる場合には、例えば、ハウジング本体83内に傾斜面部102の位置までOリング89を挿入し、これらハウジング本体83およびOリング89の内側にフリーピストン87を嵌合する。その際に、フリーピストン87は、大径円筒面部115が、ハウジング本体83の大径円筒面部103に案内され、その後、テーパ面部112が小径側からハウジング本体83の小径円筒面部101に挿入される。次に、ハウジング本体83とフリーピストン87との間に傾斜面部116の位置までOリング88を挿入し、蓋部材82をハウジング本体83に嵌合させてハウジング本体83を加締める。そして、このように予め組み立てられた減衰力可変機構45が、ピストンロッド10の取付軸部15のオネジ80にメネジ81を螺合させて取り付けられることになり、その際に、ハウジング85の蓋基板部92がバルブ規制部材77aに当接することになる。減衰力可変機構45の外径つまりハウジング85の外径は、シリンダ1の内径よりも流路抵抗とならない程度に小さく設定されている。
ピストンロッド10には、上記したように上室6に常時連通するロッド内通路42が形成されており、ハウジング85内には、ロッド内通路42に常時連通するハウジング内通路121が形成されている。ロッド内通路42およびハウジング内通路121がロッド側通路(第2通路)122を構成している。よって、ハウジング85には、内部にロッド側通路122の一部の通路としてのハウジング内通路121が形成されており、フリーピストン87は、このハウジング85内に移動可能に設けられてロッド側通路122を上流側と下流側とに画成する。ロッド側通路122は、シリンダ1内の上室6および下室7のうちの一方である上室6に連通されており、ピストン5の上室6側への移動により上室6の圧力が上昇すると上室6から油液が流れ出すことになる。つまり、ピストン5の上室6側への移動により、上室6から、上記した通路30aと、これとは別系統のロッド側通路122とに油液が流れ出す。
ハウジング内通路121は、Oリング89とフリーピストン87とハウジング85とによって、上室6に連通する上室側通路部123と、下室7に連通する下室側通路部124とに画成されている。上室側通路部123は、ロッド内通路42が開口する、蓋部材82とフリーピストン87とOリング88とで囲まれた室125と、この室125に一端が開口するようにフリーピストン87に形成された通路穴119と、この通路穴119の他端が開口する、ハウジング本体83とOリング88とOリング89とフリーピストン87とで囲まれた室126とからなっている。また、下室側通路部124は、ハウジング本体83の内側環状突起100側とOリング89とフリーピストン87とで囲まれた部分からなっている。
伸び行程でのピストン5の上室6側への移動により上室6の油液がロッド内通路42および上室側通路部123に流れると、フリーピストン87が下室側通路部124の油液を下室7に排出しながらハウジング85に対して軸方向の蓋部材82とは反対側へ移動する。すると、フリーピストン87とハウジング85との間に設けられた一方のOリング89が、フリーピストン87の外周部のOリング88,89間に位置する外側環状突起110の傾斜面部114と、ハウジング85の内周部の内側環状突起100の傾斜面部102とに当接し、これらで挟まれて弾性変形させられる。つまり、この一方のOリング89は、伸び行程でのフリーピストン87の一方への移動に対し弾性力を発生する。
縮み行程でのピストン5の下室7側への移動により下室7の油液がフリーピストン87を押圧すると、フリーピストン87が下室側通路部124へ油液を注入しながらハウジング85に対して軸方向の蓋部材82側へ移動する。すると、フリーピストン87とハウジング85との間に設けられた他方のOリング88が、フリーピストン87の外周部の外側環状突起110の傾斜面部116と、ハウジング85の内周部の蓋外筒部93の傾斜面部97とに当接し、これらで挟まれて弾性変形させられる。つまり、この他方のOリング88は、縮み行程でのフリーピストン87の他方への移動に対し弾性力を発生する。
次に、以上に述べた緩衝器の作動について説明する。
ピストンロッド10が伸び側に移動する伸び行程では、上室6から通路30aを介して下室7に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、上室6から通路30aに導入された油液が、基本的に、シート部71aとシート部71aに当接するディスク75aとの間に形成された常時開口の固定オリフィス78aを介して下室7に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、上室6から通路30aに導入された油液が、基本的にディスク75aを開きながらディスク75aとシート部71aとの間を通って下室7に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
ピストンロッド10が縮み側に移動する縮み行程では、下室7から通路30bを介して上室6に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、下室7から通路30bに導入された油液が、基本的に、シート部71bとシート部71bに当接するディスク75bとの間に形成された常時開口の固定オリフィス78bを介して上室6に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、下室7から通路30bに導入された油液が、基本的にディスク75bを開きながらディスク75bとシート部71bとの間を通って上室6に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
ここで、ピストン速度が遅いとき、つまり微低速域(例えば0.05m/s)の周波数が比較的高い領域(例えば7Hz以上)は、例えば路面の細かな表面の凹凸から生じる振動であり、このような状況では減衰力を下げるのが好ましい。また、同じくピストン速度が遅いときであっても、上記とは逆に周波数が比較的低い領域(例えば2Hz以下)は、いわゆる車体のロールによるぐらつき等の振動であり、このような状況では減衰力を上げるのが好ましい。
これに対応して、上記した減衰力可変機構45が、ピストン速度が同じように遅い場合でも、周波数に応じて減衰力を可変とする。つまり、ピストン速度が遅い時、ピストン5の往復動の周波数が高くなると、その伸び行程では、上室6の圧力が高くなって、ピストンロッド10のロッド内通路42を介して減衰力可変機構45のハウジング内通路121の上室側通路部123に上室6から油液を導入させながら、フリーピストン87が軸方向の下室7側にあるOリング89の付勢力に抗してハウジング85に対して軸方向の下室7側に移動する。このようにフリーピストン87が軸方向の下室7側に移動することにより、ハウジング内通路121に上室6から油液を導入することになり、上室6から通路30aに導入され減衰力発生機構31aを通過して下室7に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
続く縮み行程では、下室7の圧力が高くなるため、ピストンロッド10のロッド内通路42を介して減衰力可変機構45のハウジング内通路121の上室側通路部123から上室6に油液を排出させながら、それまで軸方向の下室7側に移動していたフリーピストン87が軸方向の上室6側にあるOリング88の付勢力に抗してハウジング85に対して軸方向の上室6側に移動する。このようにフリーピストン87が軸方向の上室6側に移動することにより、下室7の容積を拡大することになり、下室7から通路30bに導入され減衰力発生機構31bを通過して上室6に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
ピストン5の周波数が高い領域では、フリーピストン87の移動の周波数も追従して高くなり、その結果、上記した伸び行程の都度、上室6からハウジング内通路121の上室側通路部123に油液が流れ、縮み行程の都度、下室7の容積がフリーピストン87の移動の分拡大することになって、上記のように、減衰力が下がった状態に維持されることになる。
他方で、ピストン速度が遅い時、ピストン5の周波数が低くなると、フリーピストン87の移動の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、上室6からハウジング内通路121の上室側通路部123に油液が流れるものの、その後はフリーピストン87がOリング89を圧縮してハウジング85に対して軸方向の下室7側で停止し、上室6からハウジング内通路121の上室側通路部123に油液が流れなくなるため、上室6から通路30aに導入され減衰力発生機構31aを通過して下室7に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
続く縮み行程でも、その初期に、下室7の容積がハウジング85に対するフリーピストン87の移動の分拡大することになるものの、その後はフリーピストン87がOリング88を圧縮してハウジング85に対し軸方向の上室6側で停止し、下室7の容積に影響しなくなるため、下室7から通路30bに導入され減衰力発生機構31bを通過して上室6に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
ピストン5が停止して、上室6と下室7との圧力が同等になると、ゴム材料からなるOリング88,89の弾性力によって、フリーピストン87が図2に示す中立位置に配置される。このようにフリーピストン87が中立位置にあるとき、Oリング88が、ハウジング85の大径円筒面部103と傾斜面部97とフリーピストン87の小径円筒面部117と傾斜面部116とに接触しており、Oリング89が、ハウジング85の大径円筒面部103と傾斜面部102とフリーピストン87の小径円筒面部113と傾斜面部114とに接触している。よって、これらOリング88,89が相互対向方向にフリーピストン87を押圧する。
フリーピストン87が中立位置にあるとき、ハウジング85の内側環状突起100の小径円筒面部101と、フリーピストン87のテーパ面部112および小径円筒面部113とが、軸方向位置を重ね合わせており、径方向に対向している。このときの小径円筒面部101とテーパ面部112および小径円筒面部113との間の隙間(第1の隙間)131は、その径方向断面積αが、小径円筒面部101の内径を直径とする円の面積から、小径円筒面部113の外径を直径とする円の面積を減算したものとなる。
なお、フリーピストン87が中立位置から蓋部材82とは反対側に移動すると、ハウジング85の小径円筒面部101に対して、フリーピストン87のテーパ面部112が軸方向位置をずらすことになり、ハウジング85の小径円筒面部101はフリーピストン87の小径円筒面部113のみと軸方向位置を重ね合わせて、径方向に対向することになる。よって、径方向断面積αは中立状態と同様の一定に維持される。他方、フリーピストン87が中立位置から蓋部材82側に移動すると、ハウジング85の小径円筒面部101に対して、フリーピストン87の小径円筒面部113が軸方向位置をずらすことになる。すると、ハウジング85の小径円筒面部101は、フリーピストン87のテーパ面部112のみと軸方向位置を重ね合わせて径方向に対向し、最終的にフリーピストン87とは径方向に対向しない状態となる。よって、径方向断面積αは中立状態よりも徐々に大きくなった後、一気に拡大する。
フリーピストン87が中立位置にあるとき、ハウジング85の大径円筒面部103と、フリーピストン87の外側環状突起110の大径円筒面部115とが、軸方向位置を重ね合わせており、径方向に対向している。このときの大径円筒面部103と大径円筒面部115との間の隙間(第2の隙間)132は、その径方向断面積βが、大径円筒面部103の内径を直径とする円の面積から、大径円筒面部115の外径を直径とする円の面積を減算したものとなる。
なお、フリーピストン87が中立位置から軸方向のいずれの方向に移動しても、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の大径円筒面部115とが、軸方向位置を重ね合わせており、径方向に対向している。よって、径方向断面積βは常時一定に維持される。
フリーピストン87が中立位置にあるとき、ハウジング85の蓋外筒部93の円筒面部96と、フリーピストン87のテーパ面部118とが、軸方向位置を重ね合わせており、径方向に対向している。このときの円筒面部96とテーパ面部118との間の隙間(第3の隙間)133は、径方向断面積γが、円筒面部96の内径を直径とする円の面積から、テーパ面部118において円筒面部96の傾斜面部97側の端部と軸方向位置が合う部分の外径を直径とする円の面積を減算したものとなる。
なお、フリーピストン87が中立位置から蓋部材82とは反対側に移動すると、ハウジング85の円筒面部96に対して、フリーピストン87のテーパ面部118が軸方向位置を徐々にずらすことになり、最終的にハウジング85の円筒面部96はフリーピストン87とは軸方向位置を重ね合わせることがなくなる。よって、径方向断面積γは中立状態よりも徐々に大きくなった後、一気に拡大する。他方、フリーピストン87が中立位置から蓋部材82側に移動すると、ハウジング85の円筒面部96に対して、フリーピストン87のテーパ面部118が軸方向位置を徐々にずらすことになり、最終的にフリーピストン87の小径円筒面部117が軸方向位置を重ね合わせて、径方向に対向することになる。よって、径方向断面積γは中立状態よりも徐々に小さくなり、その後、一定となる。
そして、本実施形態において、フリーピストン87が中立位置にある状態で、上記した隙間131と隙間132と隙間133とは、径方向断面積が、隙間131の径方向断面積αが隙間132の径方向断面積βおよび隙間133の径方向断面積γよりも小さくされている。つまり、径方向断面積α<径方向断面積β、かつ、径方向断面積α<径方向断面積γとなっている。より詳しくは、径方向断面積α<径方向断面積β<径方向断面積γとなっている。言い換えれば、フリーピストン87が中立位置にある状態で、隙間131の径方向最小値が、隙間132の径方向最小値および隙間133の径方向最小値よりも小さくなっており、隙間132の径方向最小値が隙間133の径方向最小値よりも小さくなっている。さらに言い換えれば、フリーピストン87が中立位置にある状態で、隙間131が最も径方向隙間が狭い部分となり、隙間132が次に径方向隙間が狭い部分となり、隙間133が次に径方向隙間が狭い部分となる。
ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の外側環状突起110の大径円筒面部115との間の隙間132は、通路穴119の外側出口での圧力損失を下げることができるように設定されている。これにより、上室6に圧力変化が生じても、フリーピストン87の内側の室125と外側の室126との圧力を円滑に同等にすることができる。よって、フリーピストン87およびOリング88の挙動安定化を図ることができる。
フリーピストン87は、伸び行程において上室6の油液が高くなってハウジング85に対して蓋部材82とは反対側に移動すると、ハウジング85の小径円筒面部101とフリーピストン87の小径円筒面部113との間の隙間131が、隙間131〜133の中で最も径方向隙間が狭い部分となり、その径方向断面積αは、小径円筒面部101の内径を直径とする円の面積から小径円筒面部113の外径を直径とする円の面積を減算したものとなる。この状態では、小径円筒面部101と小径円筒面部113とが当接することで、ハウジング85に対するフリーピストン87の径方向の相対移動が規制されることになる。また、上室側通路部123の室126と下室側通路部124との間にあって、伸び行程において隙間131に向けて移動する方向の差圧が発生するOリング89が、フリーピストン87の外側環状突起110による押圧に加えて、この差圧によって隙間131側へさらに移動させられることがあっても、小径円筒面部101と小径円筒面部113との隙間131の径方向断面積αが狭いことから、隙間131に挟まる喰われの発生を抑制することができる。したがって、信頼性を維持することができる。
また、フリーピストン87は、縮み行程において下室7の油液が高くなってハウジング85に対して蓋部材82側に移動すると、ハウジング85の小径円筒面部101とフリーピストン87の小径円筒面部113とが軸方向に位置をずらすことになり、ハウジング85の大径円筒面部103とフリーピストン87の大径円筒面部115との間の隙間132が、隙間131〜133の中で最も径方向隙間が狭い部分となって、その径方向断面積βは、大径円筒面部103の内径を直径とする円の面積から大径円筒面部115の外径を直径とする円の面積を減算したものとなる。この状態では、大径円筒面部103と大径円筒面部115とが当接することで、ハウジング85に対するフリーピストン87の径方向の相対移動が規制されることになる。このとき、Oリング89には、上記とは逆向きの隙間132に向けて移動する方向の差圧が生じることになるが、フリーピストン87から受ける力が少ないため、Oリング89の隙間132側へ移動は抑制され、隙間132の径方向断面積βが若干広くても喰われの発生は抑制される。したがって、信頼性を維持することができる。
また、ピストン5が停止しフリーピストン87が中立位置にある状態で、上記した隙間131〜133は、隙間131の径方向断面積αが隙間132の径方向断面積βおよび隙間133の径方向断面積γよりも小さくされている。このように、隙間131〜133の径方向断面積α〜γに大小関係を付けることにより、フリーピストン87のこれら隙間131〜133を形成するテーパ面部112、小径円筒面部113、大径円筒面部115、小径円筒面部117およびテーパ面部118の同軸度を緩めることができる。
以上により、信頼性を維持しつつ生産性を改善できる。
上記実施形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、シリンダの外周に外筒を設けないモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。また、上記実施形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
以上の実施形態の緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を二室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記シリンダ内の一方の室から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる減衰力発生機構と、内部に前記第2通路の少なくとも一部の通路が形成されるハウジングと、前記ハウジング内に移動可能に設けられて前記第2通路を上流側と下流側とに画成するフリーピストンと、前記フリーピストンと前記ハウジングとの間に設けられ、前記フリーピストンの一方への移動に対し弾性力を発生する一方の弾性リングと、前記フリーピストンと前記ハウジングとの間に設けられ、前記フリーピストンの他方への移動に対し弾性力を発生する他方の弾性リングと、を有し、前記ハウジングの内周部には、伸び行程での前記フリーピストンの移動時に前記一方の弾性リングに当接する一方の小径部と、縮み行程での前記フリーピストンの移動時に前記他方の弾性リングに当接する他方の小径部とが設けられ、前記フリーピストンの外周部には、前記一方の弾性リングと前記他方の弾性リングとの間に位置する中間大径部が設けられ、前記フリーピストンが中立位置にある状態で、前記一方の小径部と前記フリーピストンとの間の第1の隙間と、前記中間大径部と前記ハウジングとの間の第2の隙間と、前記他方の小径部と前記フリーピストンとの間の第3の隙間とは、前記ピストンの停止時における径方向断面積が、前記第1の隙間が前記第2の隙間および前記第3の隙間よりも小さいことを特徴とする。
これにより、ピストンの停止時における径方向断面積は、伸び行程でのフリーピストンの移動時に一方の弾性リングに当接する一方の小径部とフリーピストンとの間の第1の隙間が、フリーピストンの一方の弾性リングと他方の弾性リングとの間に位置する中間大径部とハウジングとの間の第2の隙間、および、縮み行程でのフリーピストンの移動時に他方の弾性リングに当接する他方の小径部とフリーピストンとの間の第3の隙間よりも小さくなっている。よって、一方の小径部とフリーピストンとの間の第1の隙間に一方の弾性リングが挟まれることを抑制できる。また、第1〜第3の隙間の径方向断面積に大小関係を付けることにより、フリーピストンのこれら第1〜第3の隙間を形成する部分の同軸度を緩めることができる。したがって、信頼性を維持しつつ生産性を改善可能となる。