JP2014008041A - 胞子への物質導入方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間に、広範囲の属種の胞子に対して適用可能な、胞子への物質導入方法及びこれを用いた発芽活性のある胞子の数の測定方法の提供。
【解決手段】対象となる胞子に対して5℃〜70℃の温度下で、1秒〜60分間、10MPa〜400MPaで加圧する加圧処理工程と、上記胞子と、上記胞子に導入する物質とを混合する物質混合工程と、を備え、上記物質混合工程は、上記加圧処理工程の前であっても後であってもよい、胞子への物質導入方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、胞子への物質導入方法、及びこれを用いた発芽活性のある胞子の測定方法に関する。
バチルス属及びクロストリジウム属等の芽胞菌、並びに、アスペルギルス属及びペニシリウム属等のカビ等が形成する胞子は、耐熱性、耐薬品性、耐乾燥性等が高く、殺菌が困難である。そのため、食品製造業、医薬品製造業等において、上記胞子による汚染がしばしば問題となる。
食品、医薬品等の製造においては、製品、中間製品、原料又は製造環境等に存在する胞子の数(以下、胞子数という場合がある)をモニタリングし、製品の殺菌及び製造環境の洗浄が適切になされていること、並びに、原料が胞子等によって過度に汚染されていないこと等が確認されている。
特開2006−174751号公報 特開2007−209223号公報 特開平6−165667号公報
西賢司、加藤良、富田守、「バチルス属芽胞の圧力による活性化と殺菌」、日本食品科学工学会 41 p.542-549 1994 Aoyama, Y., Shigeta, Y., Okazaki, T., Hagura, Y. and Suzuki, K,"Germination and Inactivation of Bacillus subtilis Spores under Combined Conditions of Hydrostatic Pressure and Medium Temperature", Food Sci. Technol. Res.,11 (1), p.101-105. 2005 J. G. CLOUSTON AND PAMELA A. WILLS, "Initiation of Germination and Inactivation of Bacillus pumilus Spores by Hydrostatic Pressure", JOURNAL OF BACTERIOLOGY, Feb. 1969, p.684-690
通常、胞子数のモニタリングは、培地を用いて胞子を培養し、培養した胞子によって形成したコロニーの数を確認する培養法で行われている。胞子の培養には長時間を要するため、培養法においては、結果が判明するまでに2〜14日間の期間が必要となる。したがって、モニタリングの結果、製品が胞子によって汚染されている等の異常が発覚した場合、結果が判明する期間の分だけ洗浄、殺菌等の改善措置の対応が遅れるということから、より迅速な胞子数の測定方法の開発が望まれている。
特許文献1では、以下のような方法によって胞子数を計測することが開示されている。まず、液体培地で2時間培養、又は2℃〜25℃で6時間〜20時間静置することによって固い外壁を有する胞子を発芽させて、固い外壁がない栄養細胞に変化させる。その後、蛍光色素で上記栄養細胞を染色して、染色された栄養細胞をカウントすることによって胞子数を測定する。さらに、特許文献1では、胞子に60℃〜100℃のヒートショック処理を施して発芽させた後に蛍光色素によって栄養細胞を染色してカウントすることで胞子数を測定する方法が開示されている。
しかしながら、試料にはどのような属種の微生物が含まれているか不明であるため、特許文献1に記載の液体培地で胞子を培養する方法では、様々な属種の胞子を選択的に栄養細胞に変化させることは困難となる傾向がある。液体培地に添加する抗菌物質等の選択が適切でない場合、胞子が発芽せず、栄養細胞に変化しない可能性がある。また、この方法では、胞子を発芽させるには数時間という時間を要するため、測定に時間を要するだけでなく、試料に含まれる胞子及び胞子以外の微生物が増殖して、正確な胞子数及び微生物数が測定できなくなる傾向がある。
さらに、ヒートショック処理は発芽誘導効果が低いため、多くの場合ヒートショック処理を施しただけでは速やかに発芽が誘導されず、蛍光色素を胞子の内部に導入して正確な胞子数を測定することは困難となる傾向がある。
一方、特許文献1及び2では胞子にアラニン等の発芽誘導物質を添加して発芽させ、栄養細胞に変化させることが開示されている。特許文献1では、その後、蛍光色素によって栄養細胞を染色して胞子数を測定している。また、特許文献2では、その後、栄養細胞を溶解して遺伝子抽出及び遺伝子分析を行っている。
しかしながら、アラニン等の発芽誘導物質についても発芽誘導効果が低く、又、胞子の属種によって各発芽誘導物質の効果が異なるため、どのような属種の胞子が含まれているか分からない試料中の胞子数を測定する場合、適切な発芽誘導物質を選択することが困難となる傾向がある。
加圧することによって胞子の発芽が誘導されることも知られている。発芽した胞子は、外壁を失うことで耐熱性、耐薬品性等を喪失して容易に殺菌可能となることから、加圧による胞子の発芽を利用した殺菌方法が報告されている(非特許文献1〜3)。
しかしながら、胞子に加圧するのは胞子の殺菌を目的とすることから、加圧することによる胞子及びその他の微生物の生死は考慮されておらず、また、発芽によって胞子の内部に物質を導入するという試みもない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、短時間に、広範囲の属種の胞子に対して適用可能な、胞子への物質導入方法及びこれを用いた発芽活性のある胞子の数の測定方法の提供を目的とする。
本発明は、対象となる胞子に対して5℃〜70℃の温度下で、1秒〜60分間、10MPa〜400MPaで加圧する加圧処理工程と、
上記胞子と、上記胞子に導入する物質とを混合する物質混合工程と、
を備え、上記物質混合工程は、上記加圧処理工程の前であっても後であってもよい、胞子への物質導入方法を提供する。
このような加圧の圧力及び温度条件であれば、広範囲の属種の胞子の物質透過性を短時間に向上させ、目的の物質を胞子の内部に導入することができる。すなわち、圧力と温度とを適切に設定することで様々な属種の胞子の発芽を短時間で効率的に誘導でき、胞子の内部への物質導入効果が著しく向上する。
上記物質は、色素、タンパク質、オリゴヌクレオチド、プラスミド、放射性同位体を含む化合物、又は、イオンであることが好ましい。
上記物質導入方法は、胞子に対する発芽誘導物質の存在下で、加圧処理工程を行うことが好ましい。発芽誘導物質の存在下で加圧処理を行うことによって、胞子の発芽率が更に向上し、物質導入効果も更に向上する。
上記物質導入方法は、上記加圧処理工程の後に、上記胞子を大気圧下、5℃〜70℃の温度下で、1〜60分間保持する大気圧処理工程を更に備えることが好ましい。これにより、胞子の発芽率が更に高まり、物質導入効果も更に向上する。
また、本発明は、上記物質導入方法によって、マーカーとなる物質を対象となる胞子に導入する工程を備える、発芽活性のある胞子の測定方法を提供する。
このような方法によれば、広範囲の属種の胞子の内部に、マーカーとなる物質を短時間に導入し、発芽活性のある胞子の数を測定することができる。本発明において発芽活性のある胞子は、生きている胞子のみであるため、殺菌処理済みの食品等において、死滅した胞子の数ではなく、流通過程において発育し得る生きている残存胞子数のみを測定できる。
本発明によれば、短時間に、広範囲の属種の胞子に対して適用可能な、胞子への物質導入方法及びこれを用いた発芽活性のある胞子の数の測定方法の提供が可能である。
本実施形態に係る加圧加熱装置の模式図である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る胞子への物質導入方法は、対象となる胞子に対して5℃〜70℃の温度下で、1秒〜60分間、10〜400MPaで加圧する加圧処理工程と、上記胞子と、上記胞子に導入する物質とを混合する物質混合工程と、を備える。上記物質混合工程は、上記加圧処理工程の前であっても後であってもよい。上述のような加圧処理を胞子に施すことによって、胞子内部への蛍光色素等の物質の透過性を向上させることが可能になる。
本実施形態に係る胞子とは、食品又は自然環境に存在する一般的な芽胞菌又はカビが生成する胞子を意味する。上記胞子としては、例えば、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)及びバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属(Bacillus)、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)、パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)及びパエニバチルス・アルベイ(Paenibacillus alvei)等のパエニバチルス属(Paenibacillus)、ゲオバチルス・ステアロサーモフラス(Geobacillus stearothermophulus)等のゲオバチルス属(Geobacillus)、及び、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)及びクロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)等のクロストリジウム属(Clostridium)等の芽胞菌が生成する胞子、並びに、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)等のアスペルギルス属(Aspergillus)及びペニシリウム・デジタータム(Penicillium digitatum)等のペニシリウム属(Penicillium)等のカビが生成する胞子が挙げられる。上記胞子は、そのまま用いてもよいが、適当な緩衝溶液等に懸濁させた状態で用いることが好ましい。
本実施形態に係る加圧処理工程において、加圧処理の温度は、5℃〜70℃である。装置のコスト低減、加圧処理による胞子の不活性化防止等の点から、温度は5℃〜50℃であることが好ましく、30℃〜50℃であることがより好ましい。温度が5℃未満であると胞子の発芽を促すことが十分にできない結果、物質導入効果(物質透過性)が不十分となる傾向がある。温度が70℃を超えると比較的耐性の低い胞子が一部死滅する傾向がある。
本実施形態に係る加圧処理工程において、加圧処理の圧力は、10MPa〜400MPaであり、10MPa〜200MPaであることが好ましく、50MPa〜100MPaであることがより好ましい。圧力をこのような範囲とし、温度を上述の範囲とすることによって、広範囲の属種の胞子を短時間に効果的に発芽させることが可能になる。その結果、胞子の外壁の物質透過性が向上し、胞子の内部に目的の物質を容易に導入できる。圧力が10MPa未満であると胞子の発芽を促すことが十分にできない結果、物質導入効果(物質透過性)が不十分となる傾向がある。圧力が400MPaを超えると比較的耐性の低い胞子が一部死滅する傾向がある。加圧の方法としては、例えば、静水圧、並びに、ガス圧、油圧等の媒体を介する圧力を用いる方法が挙げられ、静水圧を用いる方法が好ましい。加圧の方式は、例えばバッチ式、半バッチ式及び連続式が挙げられる。遠心処理によって加圧してもよい。
本実施形態に係る加圧処理工程において、加圧処理の時間は、1秒〜60分間であり、1分〜60分間であることが好ましく、1分〜15分間であることがより好ましい。時間が60分を超えると一部の胞子が死滅する傾向があり、迅速性が低下する傾向がある。
本実施形態に係る加圧処理工程は、例えば図1に示される装置を用いて行われる。図1は、本実施形態に係る加圧加熱装置の模式図である。この加圧加熱装置10は、加圧処理する試料を入れる耐圧容器1と、耐圧容器1の内部の温度を制御するヒーター2と、耐圧容器1の内部の圧力を制御する加圧ポンプ3と、耐圧容器1の内部の温度をモニターする温度センサー4と、耐圧容器1の内部の圧力をモニターする圧力計5とを備えている。耐圧容器1は、例えば内径が100mmの円筒状の密閉容器であって壁厚寸法は150mmに設定されている。ヒーター2は、例えば、耐圧容器1の内部の温度を90℃まで上昇させることができるとともに、耐圧容器1の内部を任意の温度に設定することができる。加圧ポンプ3は、例えば、耐圧容器1の内部を500MPaまで任意の圧力に調節することができる。さらに、温度センサー4によって耐圧容器1の内部の温度を、圧力計5によって耐圧容器1の内部の圧力を検出して表示する。
加圧処理は例えば以下の様にして行われる。まず、耐圧容器1の内部に、柔軟性のある容器に胞子を含む試料液を密封したものを入れる。次に、この耐圧容器1の内部に清水を満たし、静水圧によって加圧処理を行う。胞子を充填する容器は、ポリエチレン製、フッ素樹脂製等の種々の素材を用いることができる。また、少なくとも充填する容器の一部分が可塑性を有していればその形状及び密封方式は特に限定されない。
本実施形態に係る物質混合工程における胞子に混合する物質は、胞子以外の通常の細胞の内部に浸透する物質であれば特に制限されない。上記物質としては、例えば、蛍光色素等の色素、抗体等のタンパク質、オリゴヌクレオチド、プラスミド、及び、放射性同位体を含む化合物が挙げられる。放射性標識されていないK、Ca2+等のイオンも挙げられる。
蛍光色素としては、例えば、DAPI、Propidium Iodide、Acridine Orange、SYBRGreen、Hoechst33342、TOTO−1、CFDA、Calcein−AM、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、ローダミン6G、ローダミングリーン(商標)、ローダミンレッド(商標)、オレゴングリーン(登録商標)488、テキサスレッド(登録商標)、ボディパイ(登録商標)(FL、R6G、TMR、TR及び630/650)、Cy(登録商標)(2、3、5及び7)、並びに、Alexa Fluor(登録商標)(350、405、430、488、532、546、555、568、594、633、647、680、700及び750)が挙げられる。
タンパク質及びオリゴヌクレオチドは、そのまま用いてもよいし、上記色素で標識されたものを用いてもよい。オリゴヌクレオチドとしては、例えば、EUB338等のFISH法に用いられるプローブ、並びに、Taqmanプローブ、Hybprobe及びQ primer等のRT−PCRに用いられるプローブが挙げられる。プラスミドとしては、GFP等の標識タンパク質をコードした遺伝子を有するプラスミド等が挙げられる。放射性同位元素としては、例えば、トリチウム、14C、40K、131I等が挙げられる。
胞子と、上記物質とを混合する方法としては、特に制限はないが、例えば、緩衝溶液に上記胞子が懸濁している試料液において、上記物質を混合する方法が挙げられる。この場合、上記物質を試料液に添加する時期は、加圧処理工程の前であってもよいし、加圧処理工程の後であってもよい。加圧処理工程の前に上記物質を試料液に添加することで、加圧による発芽と、胞子への物質導入とを同時に行うことが可能である。一般に加圧には溶質を対象物に含侵させる作用があるため、上記物質が加圧、加熱に安定であれば、加圧処理工程の前に上記物質を試料液に添加することで胞子への物質導入効果を高めることができる。一方、上記物質が加圧、加熱に不安定な場合は、加圧処理工程の後に物質を試料液に添加することが好ましい。
本実施形態において、耐熱性の胞子のみを対象とするのであれば加圧処理工程の前又は加圧処理工程の後にヒートショック処理を行ってもよい。
本実施形態に係る胞子への物質導入方法は、発芽誘導物質の存在下で、加圧処理工程を行うことが好ましい。発芽誘導物質を添加した後に加圧処理を行うことで、胞子の物質導入効果を更に向上させることができる。上記発芽誘導物質は、例えば、アラニン及びアスパラギン等のアミノ酸、グルコース及びフラクトース等の糖、並びに、カリウム等の金属イオンが挙げられる。発芽誘導物質の濃度は発芽を誘導する濃度であれば特に制限はないが、例えば10mM等が挙げられる。また、発芽誘導物質を併用することで胞子への物質導入効果が高まるため、加圧処理工程時の圧力及び時間を低減できる。
本実施形態に係る胞子への物質導入方法は、上記加圧処理工程の後に、上記胞子を大気圧下、5℃〜70℃の温度下で、1〜60分間保持する大気圧処理工程を更に備えることが好ましい。胞子の物質導入効果を更に向上させることができる。これは、加圧処理によって代謝経路が活性化された胞子が、大気圧下に戻しても発芽が進行する為である。また、大気圧処理工程を備えることで、本実施形態に係る胞子への物質導入方法における処理時間を低減できる傾向がある。上記大気圧処理工程は、特に発芽誘導物質の存在下で加圧処理工程を行った場合に効果が高い。大気圧処理工程において、保持温度は5℃〜70℃であり、保持時間は1分〜60分間であることが好ましく、保持温度は25℃〜50℃であり、保持時間は1分〜15分であることがより好ましい。この条件であれば、発芽がより短時間で進行するため、発芽した胞子及び胞子以外の微生物の増殖をさらに抑制できる傾向がある。さらに、加圧処理工程において50℃〜70℃の温度によって発芽した胞子が部分的に死滅することを抑制することができる。上記保持時間が1分未満であると胞子の物質導入効果が低下する傾向がある。上記保持時間が60分を超えると胞子及び胞子以外の微生物が増殖する傾向がある。保持温度が5℃未満であると発芽促進効果が低下する傾向がある。保持温度が70℃を超えると耐熱性の低い胞子が一部死滅する傾向がある。
以上に述べたように、本実施形態に係る胞子への物質導入方法によれば、特定の圧力と温度を負荷することで、広範囲の属種の胞子に対して、目的の物質を短時間に効率よく導入することが可能になる。
次に、本実施形態に係る発芽活性のある胞子の測定方法について説明する。本実施形態に係る発芽活性のある胞子の測定方法は、上記胞子への物質導入方法によって、マーカーとなる物質を対象となる胞子に導入する工程を備える。
このような工程を備えることで、発芽活性を有する胞子、すなわち生きている胞子のみにマーカーとなる物質を導入することが可能になる。その結果、短時間で、生きている胞子と死滅している胞子とを区別することが可能になる。また、加圧には微生物の増殖を阻害する作用があることから、マーカーとなる物質を胞子に導入する過程において、胞子及びその他の微生物が増殖することがない。そのため、増殖による測定誤差を防ぐことができる。マーカーは、1種類を単独で使用してもよいし、複数種類を組み合わせて使用してもよい。複数種類のマーカーを用いる場合、各マーカーの発芽による導入効率の違いを利用して胞子数を求めてもよい。
本実施形態に係る発芽活性のある胞子の測定方法において、加圧処理の条件は、本実施形態に係る胞子への物質導入方法における加圧処理工程の条件がそのまま適用されるが、温度が5℃〜50℃であり、圧力が10MPa〜200MPaであることがより好ましい。このような条件であれば、胞子に比べて耐熱性又は耐圧性の低い栄養細胞形態などの微生物に対する影響が少なく、胞子数及び胞子以外の微生物数の測定の誤差要因が低減される傾向がある。一方、200MPa以上の圧力は胞子に対し殺菌作用を示す場合もあるが、発芽初期に活性化されるエステラーゼ活性により発色するCFDAなどの色素を用いれば、発芽した胞子が圧力によって一部死滅しても染色することは可能であるため、必要であれば200MPa以上の圧力をかけてもよい。
胞子にマーカーとなる物質を添加する時期(物質混合工程)は、加圧処理工程の前であっても、加圧処理工程の後であってもよいが、加圧処理工程の後であることが好ましい。マーカーとなる物質の加熱又は加圧よる劣化が抑制できる傾向がある。一方、胞子と共に胞子以外の微生物も測定する場合では、胞子にマーカーとなる物質を添加する時期は、加圧処理工程の前であることが好ましい。
本実施形態に係る発芽活性のある胞子の測定方法において、発芽活性のある胞子を検出する方法は、特に制限されない。マーカーとなる物質が蛍光色素である場合、例えば、フローサイトメーター方式、メンブランろ過方式及びCCDカメラを利用した方法が挙げられる。利用できる蛍光色素としては上述した色素が例として挙げられる。また、発芽による蛍光色素の透過性向上を利用し、加圧処理工程の前及び加圧処理工程の後に胞子を蛍光染色し、加圧処理工程の前後の染色率の増加量を比較して菌数を求める方法も挙げられる。本実施形態に係る発芽活性のある胞子の測定方法は胞子の内部に試薬を導入するものであれば、PCRを利用した方法など蛍光染色法以外の方法であっても構わない。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る胞子への物質導入方法は、放射性同位体を含む化合物及び蛍光色素等の導入による胞子の細胞内構造の解析、プラスミド導入による胞子の遺伝子改変、並びに、PCRによる胞子の検出及び定量に利用することが可能である。
次に、本発明を、以下の実施例によって更に詳しく説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
検討1:胞子数の迅速測定における加圧処理の効果(圧力条件)
B.subtilis(IAM 12118)の胞子を0.1〜400MPa、40℃、15分間の条件で加圧処理した後に蛍光染色法で胞子数を求めた際の結果を表1に示す。すなわち、10CFU/mlの濃度になるようB.subtilis(IAM 12118)の胞子を1/15M リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、ポリエチレン製の袋に無菌的に密封充填した。胞子の懸濁液が充填されたポリエチレン製の袋を、図1に示す加圧加熱装置(光高圧機器(株)製)に入れて加圧処理した。加圧処理が施された胞子の懸濁液を無菌的に反応容器に移した。続いて、150μg/mlの濃度となるよう6−Carboxyfluorescein diacetate:CFDA(Sigma−Aldrich社製)溶液を上記反応容器に添加し、25℃で10分間反応させて発芽した胞子を染色した。染色した胞子の懸濁液をφ13mm、孔径0.2μmのポリカーボネート製メンブランフィルター(アドバンテック東洋(株)製)でろ過した。1000倍の倍率でメンブラン上の蛍光染色された胞子を落射型蛍光顕微鏡(オリンパス(株)製)で観察した。観察した視野の中から20視野を無作為に選んで蛍光染色された胞子を計数した。蛍光染色法における胞子数は以下の式に従って算出した。
蛍光染色された胞子数(cells/mL)=(1視野当たりの蛍光染色された胞子数の平均値)×(メンブランフィルターのろ過面積)/(1視野当たりの面積)/(染色した胞子の懸濁液のろ過量)・・・[1]
また、蛍光染色法で使用した胞子の懸濁液について培養法でも胞子数を求め、蛍光染色法の結果と比較した。培養法は以下の方法により行った。すなわち、胞子の懸濁液を70℃で、20分間加熱した後、適宜希釈して標準寒天培地(日水製薬(株)製)を用いて混釈平板で35℃、48時間の条件で培養し、形成されたコロニーを計数した。培養法における胞子数は以下の式に従って算出した。
胞子数(CFU/mL)=(コロニー数の平均値)×(希釈倍率)・・・[2]
Figure 2014008041
表1に示されるように、10〜400MPa、特に50〜400MPaの加圧処理によって胞子を発芽させることができ、その後、蛍光染色法によって胞子数が測定できることが分かった。一方、0.1MPaで処理したものは胞子が染色されず、胞子数を測定することができなかった。なお、200MPa以上の圧力であっても胞子数にはあまり変化がなかった。
検討2:胞子数の迅速測定における加圧処理の効果(温度条件)
B.subtilis(IAM 12118)の胞子を100MPa、10〜70℃、15分間の条件で加圧処理したこと以外は検討1と同様の方法で染色された胞子を計数した。併せて、検討1と同様の培養法によって胞子数を求めた。これらの結果を表2に示す。なお、蛍光染色法及び培養法による胞子数は、上述した式[1]及び式[2]によって算出した。
Figure 2014008041
表2に示されるように、5〜70℃、特に25〜55℃の温度において効率的に胞子を発芽させることができ、その後、蛍光染色法によって胞子数が測定できることが分かった。
検討3:胞子数の迅速測定における加圧処理の効果(処理時間)
B.subtilis(IAM 12118)の胞子を100MPa、40℃、1〜60分間の条件で加圧処理したこと以外は検討1と同様の方法で染色された胞子を計数した。併せて、検討1と同様の培養法によって胞子数を求めた。これらの結果を表3に示す。なお、蛍光染色法及び培養法による胞子数は、上述した式[1]及び式[2]によって算出した。
Figure 2014008041
表3に示されるように、1〜60分間の処理時間において胞子を発芽させることができ、その後、蛍光染色法によって胞子数が測定できることが分かった。
検討4:様々な属種の胞子の迅速測定における加圧処理の効果
胞子として、様々な属種の胞子を用いたこと、及び100MPa、40℃、15分間の条件で加圧処理したこと以外は、検討1と同様の方法で染色された胞子を計数した。併せて、検討1と同様の培養法によって胞子数を求めた。これらの結果を表4に示す。なお、蛍光染色法及び培養法による胞子数は、上述した式[1]及び式[2]によって算出した。
Figure 2014008041
表4に示されるように、加圧処理によって広範囲の属種の胞子について、蛍光染色法により、短時間で胞子数を測定できることが分かった。
検討5:発芽誘導物質の併用効果
食材から分離した胞子(16sRDNAによる遺伝子同定結果:Bacillus pumilus)を約10CFU/mlの濃度になるように1/15M リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、L−Alaを添加せずに、又は、10mMとなるよう添加した後に、50MPa、40℃、5分間の条件で加圧処理した。その後、蛍光染色法によって、染色された胞子を計数した。また、上記胞子の懸濁液にL−Alaを10mMとなるよう添加して大気圧下(0.1MPa)で40℃、15分間の条件で処理した。併せて、検討1と同様の培養法で胞子数を求めた。その後、蛍光染色法によって、染色された胞子を計数した。これらの結果を表5に示した。なお、蛍光染色法及び培養法による胞子数は、上述した式[1]及び式[2]によって算出した。
Figure 2014008041
表5に示されるように、発芽誘導物質であるL−Alaの添加により、加圧処理による蛍光色素の導入効果をより高め、胞子数の測定値をより正確にできることがわかった。また、発芽誘導物質の存在下で、加圧処理を行うことで加圧処理における圧力を低減し、処理時間を短縮できることが分かった。
食材から分離した胞子(16sRDNAによる遺伝子同定結果:Bacillus pumilus)を約10CFU/mlの濃度になるように1/15M リン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、L−Alaを10mMとなるよう添加した後に、50MPa、40℃、5分間の条件で加圧処理した。加圧処理した懸濁液の一部は、大気圧下で40℃、30分間の条件で保持した。その後、蛍光染色法によって、染色された胞子を計数した。併せて、検討1と同様の培養法で胞子数を求めた。これらの結果を表6に示す。
Figure 2014008041
表6に示されるように、加圧処理をした後に大気圧下で保持することによって蛍光試薬の導入効果をさらに高められることが分かった。また、大気圧下で保持する工程(大気圧処理工程)を付加することによって、加圧処理における圧力を低減し、処理時間を短縮できることが分かった。
1…耐圧容器、2…ヒーター、3…加圧ポンプ、4…温度センサー、5…圧力計。

Claims (5)

  1. 対象となる胞子に対して5℃〜70℃の温度下で、1秒〜60分間、10MPa〜400MPaで加圧する加圧処理工程と、
    前記胞子と、前記胞子に導入する物質とを混合する物質混合工程と、
    を備え、前記物質混合工程は、前記加圧処理工程の前であっても後であってもよい、胞子への物質導入方法。
  2. 前記物質が、色素、タンパク質、オリゴヌクレオチド、プラスミド、放射性同位体を含む化合物、又は、イオンである、請求項1に記載の物質導入方法。
  3. 前記胞子に対する発芽誘導物質の存在下で、前記加圧処理工程を行う、請求項1又は2に記載の物質導入方法。
  4. 前記加圧処理工程の後に、前記胞子を大気圧下、5℃〜70℃の温度下で、1〜60分間保持する大気圧処理工程を更に備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の物質導入方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の物質導入方法によって、マーカーとなる前記物質を対象となる胞子に導入する工程を備える、発芽活性のある胞子の測定方法。
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