JP4950433B2 - 簡易迅速培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法 - Google Patents
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Description
(1)高さのある外枠付きメンブレンフィルター
メンブレンフィルターの少なくとも表側の面に、その外部に高さのある外枠(以下外枠と言う。)を設ける。
従来のメンブレンフィルターに代え、(1)「外枠付きメンブレンフィルター」を使用することにより、外枠付きメンブレンフィルター上に微生物を捕集し、当該外枠付きメンブレンフィルター上に微生物を保持したまま、微生物を培養し、固定化し、蛍光プローブとハイブリダイゼーション、洗浄し、蛍光顕微鏡で観察することができる。
以下、外枠を円柱状とした外枠を用いた場合について、具体的に説明する。他の形状でも同様である。
外枠付きメンブレンフィルターを吸引濾過用フィルターベースに置き、試料液を濾過する。このとき、従来のメンブレンフィルターでの吸引濾過では事前に必要だったフィルターホルダー、メンブレンフィルター、吸引濾過用フィルターベース、クランプから構成される吸引濾過フィルターユニット一式の組立作業、また、濾過後の分解作業が不要となり、試料液の濾過が簡易にできる。
次にベース上の外枠付きメンブレンフィルターを固形の培地(ゲル状培地、あるいは液体培地を含む繊維状パット)の上に置き、フィルターの他方の面(裏側面)と培地を接触させる。所定条件で培養し、マイクロコロニーをフィルターの表側の面上に形成させる。例えば、外枠つきメンブレンフィルターを寒天培地上で、6時間程度培養することにより、マイクロコロニーをメンブレンフィルターの表側に形成させることができる。
次に外枠付きメンブレンフィルターを適切な固定液(エタノールなど)に浸す。その後乾燥させる。このとき従来、試料濾過後のメンブレンフィルターは、外枠がないために、丸まる性質があり、固定後の乾燥において丸まらないように対応しなければならず、作業が煩雑で熟練を要していたが、枠を取り付けたメンブレンフィルターは丸まることがないので、簡易にできる。
次に高さのある外枠付きフィルター上に特定細菌検出用プローブとハイブリダイゼーション緩衝液を添加し、所定の温度で反応させる。このとき枠はハイブリダイゼーション緩衝液をフィルター内に容量を維持できる効果を有する。従来は、メンブレンフィルターを、ピンセットを用いて、専用の容器に移し、その中でフィルターをハイブリダイゼーション緩衝液とプローブに浸して行う必要があった。
次に高さのある外枠付きフィルター上に洗浄液を添加し、所定の温度で反応させる。このとき枠は洗浄液をフィルター内にとどめる効果を有する。従来は、メンブレンフィルターを、ピンセットを用いて、専用の容器に移し、その中でフィルターを洗浄液に浸して行う必要があった。
従来標本作成は、フィルターが丸まらず、平滑にするために必須で、その作業は手間だった。従来法では、フィルターをスライドガラス上に置き、その上に封入剤を加え、次いでカバーガラスを被せこれを標本としていた。しかし、本手法では、その作業は不要となる。
外枠付きメンブレンフィルターを取り出し、これを蛍光観察装置(蛍光顕微鏡など)に供し特定細菌の検出・計数する。
(1)使い捨て濾過器
本発明の使い捨て濾過器は、上記1.(1)の「外枠付きメンブレンフィルター」が着脱可能で、該外枠付きメンブレンフィルターを取り付けることにより微生物を捕集できるものであればいずれの使い捨て濾過器であってもよい。さらに、本発明の使い捨て濾過器に、培地保持材を前記メンブレンフィルター下部に密接するように取り付け、本使い捨て濾過器の下部から培養液を注入することにより、メンブレンフィルター上に捕集し微生物を培養できる構造のものとすることもできる。例えば、外枠付きメンブレンフィルター及び該外枠付きメンブレンフィルターの裏面に密接するように培地保持材を収納でき(31)、さらに使い捨て濾過器に下部(32)に開口部を有し、該下面が培地保持材と液通可能である構造とすることができる。前記使い捨て濾過器下部の開口部は、蓋部材(33)により開閉可能に構成することが望ましい(図3)。
従来のメンブレンフィルターに代え、2.(1)の「使い捨て濾過器」を使用することにより、使い捨て濾過器内の外枠付きメンブレンフィルター上に微生物を捕集し、使い捨て濾過器内の当該外枠付きメンブレンフィルター上に微生物を保持したまま、微生物を培養し、固定化し、蛍光プローブとハイブリダイゼーション、洗浄し、該外枠付きメンブレンフィルターを使い捨て濾過器から取り外して蛍光顕微鏡で観察することができる。
試料液を、使い捨てフィルター濾過器を用いて、濾過する。このとき、従来のメンブレンフィルターの吸引濾過前に必要だったフィルターホルダー、メンブレンフィルター、吸引濾過フィルターベース、クランプから構成される吸引濾過フィルターユニット一式の組立作業が不要となり、試料液の濾過が簡易にできる。
使い捨て濾過器の底辺部から培地成分を注入し、パットに培地をしみ込ませ所定条件で培養し、マイクロコロニーをフィルターの表の面に形成させる。その後、培地成分を吸引除去する。このとき従来は、フィルターホルダー、メンブレンフィルター、ベース、クランプから構成される吸引濾過フィルターユニット一式の分解作業、ならびにその後のメンブレンフィルターの寒天培地上への移動において、フィルターにしわが発生しないように行う慎重さが必要でこれらは作業がやりづらく手間がかかり、熟練が必要だが、これらは不要となる。
次に使い捨て濾過器の上部から適切な固定液(エタノールなど)を含ませ、その後乾燥させる。このとき従来、メンブレンフィルターを別容器に移し、その場において実施する必要があったが、使い捨て濾過器の場合は、フィルターの移動の必要がない。
次に使い捨て濾過器に蛍光標識オリゴDNAヌクレオチドからなる特定細菌検出用プローブとハイブリダイゼーション緩衝液を含ませ、所定の温度で反応させる。従来は、メンブレンフィルターを専用の容器に移し、その中でフィルターをハイブリダイゼーション緩衝液とプローブに浸して行う必要があった。使い捨て濾過器の場合は、フィルターの移動の必要がない。
次に使い捨て濾過器に洗浄液を添加し、所定の温度で洗浄させる。従来は、メンブレンフィルターを専用の容器に移し、その中でフィルターを洗浄液に浸して行う必要があった。使い捨て濾過器の場合は、フィルターの移動の必要がない。
使い捨て濾過器から外枠付きメンブレンフィルターを取り出し、これを蛍光観察装置(蛍光顕微鏡など)に供し特定細菌の検出・計数する。このとき従来は、標本作成の工程が必要だったが、その作業は不要となる。
(1)方法
(イ)供試菌株 腸内細菌科細菌としてEscherichia coli ATCC11775を用いた。
(ロ)供試食品試料として、水産食品(タイ、イカ、ホタテ、スモークサーモン、すり身、マグロ)、食肉製品(豚肉、鳥カツレツ、ハム)野菜(キャベツ、レタス)、飲料水(ビール、オレンジジュース、サイダー)を用いた。飲料水を除く各食品試料の場合、試料10gに滅菌生理食塩水90ml加え(10倍希釈)、ストマッカーで懸濁後、これに供試菌株Escherichia coli ATCC11775を添加し、食品試料調製液として調製した。飲料水の場合は、試料を希釈せず、供試菌株Escherichia coli ATCC11775を直接添加して食品試料調製液として調製した。
クロモカルトコリフォーム寒天培地(メルク社)を使用した。食品試料調製液1mlをシャーレに入れ、次に、煮沸溶解後50℃に保温したクロモカルトコリフォーム寒天培地をシャーレに注ぎ、混和し固化後、37℃、24時間培養後、紫コロニーを大腸菌として計数した。
外枠付きメンブレンフィルターとして、パーミアブルサポート(corning社)を用いた。食品試料調製液1mlを、メンブレンの直径が25mm、ポアサイズが0.4μmであるメンブレンフィルターを有するトランスウェルインサートで吸引濾過後、トランスウェルインサートを寒天培地上に置き、37℃,6時間、培養し、フィルター表面上にコロニーを形成させた。培養後、トランスウェルインサートを100%エタノールで浸潤させたろ紙上に置き、室温で細胞固定を5分間行った。次にトランスウェルインサートをマルチプルウェルに装着し、トランスウェルインサート内にハイブリダイゼーションバッファー(0.9M NaCl、20% formamide、200mM Tris-HCl (pH7.4)、0.01% SDS)900μlを静かに注入し60℃でプレハイブリダイゼーションを10分間行った。その後さらにTAMRA(N,N,N',N'-Tetramethyl-6-6carboxyrhodamine)で標識したオリゴDNAヌクレオチドからなる腸内細菌科細菌検出用プローブ[5'-TGCTCTCGCGAGGTCGCTTCTCTT-3'](特開2001−136969)を50 pmol添加し、60℃でハイブリダイゼーションを45分間行った。トランスウェルインサートを傾けてハイブリダイゼーションバッファーを除去後、洗浄用バッファー((20mM Tris HCl (pH7.4)、180mM NaCl、0.01% SDS))5mlを加え60℃、15分間静置した。トランスウェルインサートを傾け洗浄用バッファーを除き、蒸留水で同様の洗浄操作後(ただし、静置時間を数秒内とする)、トランスウェルインサートを蛍光顕微鏡ステージに直接置き、プローブ特有の赤色蛍光を発するコロニーを計数した。なお、蛍光顕微鏡観察は対物レンズ4倍を用いて行った。
(イ)外枠付きメンブレンフィルターを用いる簡易な培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法と培養法との測定結果比較
表題について、各種の食品試料調製液を用いて、行った。その結果(表1)、培養法での生菌数と外枠付きメンブレンフィルターを利用した培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション 法での生菌数には有意な差は認められなかった(P>0.05またはP>0.01)。従って、外枠付きメンブレンフィルターを用いる培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法は、正確な生菌数測定ができた。また、その操作は従来の培養蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法に比べ熟練の必要なく簡易に行うことができた。
表題についての実施例を以下に示す。
(イ)供試食品試料として、ひき肉を用いた。試料10gに滅菌生理食塩水90ml加え、ストマッカーで懸濁後、これに供試菌株Clostridium perfringens ATCC3624またはClostridium perfringens NCTC8679を添加し、ひき肉10倍希釈懸濁液を調製した。
非選択培地にGAM寒天培地(日水製薬),選択培地にカナマイシン含CW寒天基礎培地(日水製薬)を使用した。Cl. perfringens懸濁液を10倍段階希釈し、0.1mlを寒天平板上に塗沫し37℃,24時間嫌気培養(アエロパック嫌気ジャー,三菱ガス化学)を行い、コロニーを計数した。
ひき肉10倍希釈懸濁液1mlを簡易濾過器(例えば、外枠付きメンブレンフィルター(直径37mm,孔径0.45μm)を装着できるように改造した37mmモニター(ADVANTEC社)で濾過し、37mmモニターの底面側からGAM液体培地1mlを静かに注入した。これを37℃,7時間嫌気培養(アエロパック嫌気ジャー,三菱ガス化学)し、フィルター表面上にコロニーを形成させた。培養後、モニター内に残存する液体培地を吸引除去し、37mmモニター上部から100%エタノールを静かに注入し、室温で細胞固定を20分間行った。エタノールを吸引除去した後、ハイブリダイゼーションバッファー(0.9M NaCl、20% formamide、200mM Tris-HCl (pH7.4)、0.01% SDS)900μlを37mmモニター上部から静かにを注入し46℃でプレハイブリダイゼーションを10分間行った。その後さらにTAMRA(N,N,N',N'-Tetramethyl-6-6carboxyrhodamine)で標識したオリゴDNAヌクレオチドからなるCl. perfringens検出用プローブCLP-180[5'-AATGATGATGCCATCTTTCAACA-3'](特願2004−336584)を50pmol添加し、46℃でハイブリダイゼーションを45分間行った。ハイブリダイゼーションバッファーを吸引除去後、洗浄用バッファー((20mM Tris HCl (pH7.4)、180mM NaCl、0.01% SDS))900μlを加え15分間静かに吸引洗浄した。乾燥後、37mmモニターから取り出した外枠付きメンブレンフィルターを蛍光顕微鏡ステージに直接置き、プローブ特有の赤色蛍光を発するコロニーを計数した。なお、蛍光顕微鏡観察は対物レンズ4倍を用いて行った。
(イ)使い捨て濾過器を用いる簡易な培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法と培養法との比較
使い捨て濾過器を用いる簡易な培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法と公定法に準拠した培養法として寒天平板塗抹法でのコロニー数の比較を、試料にClostridium perfringens添加ひき肉を用いて、行った。その結果(表2)、培養法での生菌数と37mmモニターシステムを利用した培養併用FISH (FISH-FC-Broth)法での生菌数には有意な差は認められなかった(P>0.05)。従って、使い捨て濾過器を用いる簡易な培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法は、正確な生菌数測定ができた。また、その操作は従来の培養蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法に比べ熟練の必要なく簡易に行うことができた。
Claims (4)
- 外枠付きメンブレンフィルター上に微生物を捕集し、当該外枠付きメンブレンフィルター上に微生物を保持したまま、微生物を培養、固定化、蛍光プローブとハイブリダイゼーション、洗浄及び蛍光顕微鏡による観察をすることを特徴とする培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法。
- 外枠付きメンブレンフィルターが、蛍光顕微鏡観察において使用する対物レンズと接触しない外枠の高さを有する外枠付きメンブレンフィルターである請求項1記載の培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法。
- 使い捨て濾過器に着けられた外枠付きメンブレンフィルター上に微生物を捕集し、使い捨て濾過器の当該外枠付きメンブレンフィルター上に微生物を保持したまま、微生物を培養し、固定化し、蛍光プローブとハイブリダイゼーションし、洗浄した後、該外枠付きメンブレンフィルターを使い捨て濾過器から取り外して蛍光顕微鏡で観察することを特徴とする培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法。
- 外枠付きメンブレンフィルターが、蛍光顕微鏡観察において使用する対物レンズと接触しない外枠の高さを有する外枠付きメンブレンフィルターである請求項3記載の培養併用蛍光インサイチューハイブリダイゼーション法。
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