JP2014006322A - ディップコート用レンズ保持部材 - Google Patents

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Yuka Kono
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Abstract

【課題】レンズにハードコート液をディップする際にレンズに液溜まりが発生しないディップコート用レンズ保持部材を提供すること。
【解決手段】 ディップコート用レンズ保持部材であって、左右の支持部材は、該レンズの中心よりも上方のコバ部を支持するようにし、かつコバ部と接触する接触部から下方に傾斜する傾斜面を有し、下部及び左右の支持部材のコバ部と接触する接触部は、円弧状または楕円弧状の凹部であって、円弧または楕円弧の両端を結ぶ直線の距離(a)に対する、円弧または楕円弧の長さを2等分する点から該直線と垂直に交わる点までの距離(b)との比(b/a)が0.05以上1未満であることを特徴とするディップコート用レンズ保持部材である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、レンズをコート液に浸漬し引き上げるために使用する、新規なディップコート用レンズ保持部材に関する。
通常、レンズは、その表面に様々な性能を持たせるため、コートが施される。例えば、レンズ表面の耐擦傷性を改善するために、ハードコート液でコートが施される。該ハードコート液でレンズ全面をコートする際には、通常、ディップコート法が採用されている。
レンズ全面にディップコートを行う場合、レンズのコバ部(レンズ側面)を何点か、例えば、左右、下部の3点で支持するディップコート用レンズ保持部材にレンズを装着し、その保持部材ごとコート液中に浸漬(ディップ)して引き上げるという方法がとられている。
この方法においては、コバ部の何点かを支持している支持部材とレンズとの隙間(接点部分)にコート液が溜まってしまうと、外観を低下させたり、レンズの有効径を小さくしてしまうという問題があった。このような液溜まりの発生を防ぐために、接触部を点状、針状にするなど、レンズと支持部材の接点をできるだけ点に近づけるような改良がなされてきた。
しかしながら、コバ部を点(針)状で支持しようとすると、液溜まりの改善は可能であるが、レンズをディップコート用レンズ保持部材で支持すること自体が難しく、作業性を低下させる問題があった。特に、コバ部が薄い(コバ厚が薄い)レンズにおいては、生産性が低下するという問題が顕著になった。
このような問題を解決するために、レンズ着脱の作業性に優れ、しかも液溜まりが生じ難いものとして、以下のディップコート用レンズ保持部材が提案されている。具体的には、レンズコバ部と接触してレンズを支持する支持部材の接触面を、線状の面にするか、隆起部を有する線状の面にしたディップコート用レンズ保持部材である(特許文献1参照)。
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献1に記載されたディップコート用レンズ保持部材であっても、液溜まりを抑制するためには、さらなる改良が必要であることが分かった。特に、粘度が高いコート液を使用した場合には、特許文献1に記載のディップコート用レンズ保持部材では、液溜まりが大きくなる傾向にあり、改善の余地があった。
特開平7−234301号公報
近年、レンズには、高度な機能を持たせるため、様々な仕様のコート液によりコートが施される。例えば、ハードコート液は、耐擦傷性をより一層向上させるため、コート膜を厚膜化できるものが望まれている。このようなハードコート液は、コート液に含まれる固形分濃度を高くする必要があり、どうしてもコート液の粘度が高くなる傾向にある。その結果、粘度の高いコート液を使用した場合には、従来のディップコート用レンズ保持部材では、液溜まりを抑制することが困難であった。
したがって、本発明の目的は、液溜まりの発生、及び液溜まりの大きさを低減することができ、作業性にも優れたディップコート用レンズ保持部材を提供することにある。特に、コート液の粘度が高い場合に、有効に使用できるディップコート用レンズ保持部材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を行った。そして、(i)左右二箇所の支持部材で支持したコバ部付近に発生する液溜まりは、レンズを装着した保持部材を浸漬し引き上げる際に、レンズ上部からコバ部を伝って流れ落ちる液が原因であること、(ii)コバ部と接する支持部材の接触部が特定の円弧状または楕円弧状の凹部であることにより、液溜まりが少なく、作業性(着脱、及び取り付け後の保持)が良好になるという知見を得た。その結果、左右の支持部材は、レンズの中心よりも高い位置を支持するようにし、かつレンズ上部から流れ落ちる液を逃がすための傾斜面を有するものとし、さらに、支持部材の接触部を特定の円弧状または楕円状とすれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第一の本発明は、
円形レンズの光軸を横方向に向けて該レンズをコート液に浸漬する際に、該レンズのコバ部を、下部及び左右の3カ所の支持部材で支持するディップコート用レンズ保持部材であって、
左右の支持部材は、該レンズの中心よりも上方のコバ部を支持するようにし、かつコバ部と接触する接触部から下方に傾斜する傾斜面を有し、
下部及び左右の支持部材のコバ部と接触する接触部は、円弧状または楕円状の凹部であり、
円弧または楕円の両端を結ぶ直線の距離(a)に対する、円弧または楕円の長さを2等分する点から該直線と垂直に交わる点までの距離(b)との比(b/a)が、0.05以上1未満であることを特徴とするディップコート用レンズ保持部材である。
また、本発明のディップコート用レンズ保持部材は、前記コート液の粘度が25℃において1.5〜20.0mPa.secである場合に、特に優れた効果を発揮する。
また、本発明のディップコート用レンズ保持部材は、下部の支持部材において、コバ部と接する接触部の円弧または楕円弧の端部から下方へ傾斜する傾斜部を有することが好ましい。
本発明のディップコート用レンズ保持部材を使用することにより、作業性が低下することなく、液溜まりの発生を抑制することができる。そのため、コート液の粘度が高い場合、例えば、25℃において1.5〜20.0mPa.secのコート液を使用した場合に、特に優れた効果を発揮する。また、本発明のディップコート用レンズ保持部材は、作業性の低下が少ないため、コバ厚の薄いレンズをコートする際にも、有効に使用することができる。
本発明のディップコート用レンズ保持部材でレンズを支持した際の正面図(光軸方向から見た図)である。 本発明のディップコート用レンズ保持部材でレンズを支持した際の平面図である(ただし、保持部材の取手部、外枠は省略)。
左右の支持部材を拡大した平面図である。 左右の支持部材の位置を示す正面図である。 図1における(I)−(I’)断面図である。 図1における(I)−(I’)断面図であって、下部の支持部材のみを拡大した図である。 液溜まりが発生したレンズの概略図(正面図:光軸方向から見た図)である。
本発明は、円形レンズの光軸を横方向に向けて該レンズをコート液に浸漬する際に、該レンズのコバ部を、下部及び左右の3カ所の支持部材で支持するディップコート用レンズ保持部材である。なお、本発明において、円形レンズの光軸とは、該レンズを使用する際に光が透過する方向を指す。
(円形レンズ)
本発明において、円形レンズは、特に制限されるものではなく、ディップコート用レンズ保持部材に装着し、ディップコートが可能である円形のレンズ全般が対象となる。通常のレンズは、直径が50〜90mmの円形レンズである。また、該レンズの材質も、特に制限されるものではなく、プラスチック、無機ガラスなど、公知のものが挙げられる。本発明のディップコート用レンズ保持部材は、作業性を低下させることなく、液溜まりを抑制することができる。そのため、ディップコート用レンズ保持部材に装着が難しい、コバの厚みが薄い円形レンズを使用した場合に、特に、優れた効果を発揮する。円形レンズのコバの厚みは、特に制限されるものではないが、通常、0.5〜10mmであり、特に本発明の効果が顕著に発揮されるのは、コバの厚みが0.5〜3mmである。
(コート液)
本発明において、円形レンズをコートするコート液は、特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができる。例えば、レンズの耐擦傷性を向上させるためのハードコート液、機能性を発揮させるための重合性単量体を含むコート液など、公知のものが使用できる。本発明で使用するコート液の粘度は、特に制限されるものではない。中でも、25℃において1.5〜20.0mPa・secの粘度のコート液を使用する場合に、本発明のディップコート用レンズ保持部材は優れた効果を発揮する。本発明のディップコート用レンズ保持部材は、液溜まりを効率よく抑制することができるため、比較的粘度の高いコート液を使用した際に、特に優れた効果を発揮する。そのため、液切れが悪く、液溜まりの生じ易い、粘度が25℃において2.0〜20.0mPa・secのコート液を使用する場合、さらには25℃において2.0〜10.0mPa・secのコート液を使用する場合に、本発明のディップコート用レンズ保持部材は特に優れた効果を発揮する。好適なコーティング剤として、TS−56−RX2,TS−56−RX2−E((株)トクヤマ製)を挙げることができる。
(ディップコート用レンズ保持部材)
本発明のディップコート用レンズ保持部材は、円形レンズのコバ部を、下部及び左右の3カ所の支持部材で支持する。図1に、本発明のディップコート用レンズ保持部材の1例を示す。図1は、レンズを保持部材に装着した際の正面図(光軸方向から見た図)である。次に、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
本発明のディップコート用レンズ保持部材は、左右の支持部材2、下部の支持部材3により、円形レンズ4のコバ部1の3カ所を支持する。本発明においては、3カ所の支持部材で円形レンズを支持すればよく、その他、例えば、外枠の構造等は、特に制限されるものではない。図1には、三角形状の外枠に3つの支持部材を備えた保持部材を例示しているが、本発明はこの構造に限定されるものではない。例えば、特許文献1に記載されているように、下部の支持部材を備えた水平方向に延在する支持レール、及び、左右の支持部材を備え、該支持部材がレンズ上方のコバ部を支持できるように上方に延在する支持アームを有する構造としてもよい。また、図1には、1枚の円形レンズを保持する保持部材の例を示したが、3カ所の支持部材を有する保持部材を複数備えた構造としてもよい。なお、図1には、3角形状の外枠の上部に屈曲部を有する取手部を備えた保持部材を例示している。
本発明のディップコート用レンズ保持部材の材質は、支持部材の部分を含め、コート液となんら相互作用しない材質であればよい。中でも、保持部材の化学的安定性や繰り返し使用寿命の観点からステンレススチール(SUS)が好ましい。
本発明においては、左右の支持部材2の位置、形状、及び、下部の支持部材3の形状に特徴がある。次に、これら支持部材について説明する。
(左右の支持部材)
図2は、円形レンズ4を本発明のディップコート用保持部材で保持した際の平面図であり、円形レンズ4のコバ部を左右の支持部材2で支持している図である(ただし、図1の取手部、外枠は省略している)。この時、円形レンズ4のコバ部が、左右の支持部材2の接触部6と接触して円形レンズ4を支持するようにする。この左右の支持部材2は、コバ部の上部から流れてくるコート液を逃がすために、接触部6から下方に傾斜した傾斜面5を有する(図4参照)。なお、図3は、左右の支持部材を拡大した平面図である。
左右の支持部材2は、図1に示すように、円形レンズ4の中心よりも上方のコバ部を支持しなければならない。この支持部材が下方に存在すると、液溜まりが生じ易くなる。左右の支持部材2の位置は、レンズ中心を通る水平線と、レンズ中心と支持部材の接触部6とを結ぶ直線とがなす角(図4におけるγ)が10°〜70°となることが好ましく、さらに、20°〜50°となることが好ましい。該角(γ)が上記範囲を満足することにより、液溜まりを抑制し易くなる。なお、左右の支持部材2の位置は、同じ高さ(即ち、両支持部材と該水平線とがなす角(γ)が同じである)であってもよいし、なす角(γ)が上記範囲であれば異なる高さであってもよい。ただし、安定した作業性を確保するためには、同じ高さになることが好ましい。
左右の支持部材2において、傾斜面6は、コバ部の上方から流れてきたコート液をレンズ下部のコバ部へ付着しないように、該コート液を逃がすためのものである。傾斜面6は下方へ傾斜していればよいが、効率よく液溜まりを抑制し、作業性を向上するためには、傾斜面6の延長線と、レンズ中心を通る水平線とがなす角(図4におけるα)10°〜80°とすることが好ましく、さらに、20°〜70°とすることが好ましい。
さらに、コート液として粘度が2.0〜20.0mPa・secのものを使用した場合には、支持部材2の位置とも関係するが、γを20°〜50°、αを20°〜70°とすることが、特に、優れた効果を発揮する。
なお、傾斜面6の長さ(接触部の端(円弧または楕円弧の端)から傾斜面の端までの長さ)は、特に制限されるものではないが、ディップコート用レンズ保持部材の作製のし易さ、レンズ着脱のし易さ等を考慮すると、5mm〜20mmである。
左右の支持部材2において、レンズのコバ部4と接触する接触部6は、円弧状または楕円弧状の凹部でなければならない。そして、円弧または楕円弧の両端を結ぶ直線の距離(a)に対する、円弧または楕円弧の長さを2等分する点から該直線と垂直に交わる点までの距離(b)との比(b/a)が0.05以上1未満でなければならない(図3参照)。なお、円弧または楕円弧の長さを2等分する点は、凹状の接触部6の最も下に位置する点と同じになることが好ましい。また、この2等分する点、またはその点の近傍で円形レンズ4のコバ部4が接触することが好ましい。
b/aの値が0.05未満の場合には、レンズを保持することが難しくなり、作業性が低下するため好ましくない。一方、b/aの値が1以上の場合には、液溜まりを抑制する効果が低下するため、好ましくない。作業性を維持し、液溜まりをより抑制するためには、b/aは、0.05〜0.7とすることが好ましく、さらに、0.1〜0.5とすることが好ましい。なお、このb/aの値は、左右の支持部材2において、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。ただし、円形レンズを安定して支持するという観点から、左右の支持部材におけるb/aの値は同じ値であることが好ましい。
なお、円弧または楕円の両端を結ぶ直線の長さ(a)の絶対値は、コートの対象となるレンズの大きさに応じて、適宜決定すればよい。中でも、作業性、及び液溜まり抑制効果を考慮すると、aは、コバの厚みに対して、1.5〜20倍の長さであることが好ましい。
左右の支持部材2は、接触部6においてコバ部と接触してレンズを支持する。この支持する際の力は、コートの対象となるレンズの強度に応じて適宜決定すればよい。すなわち、レンズ、およびそのコバ部が変形しない弾性力で支持すればよい。弾性力を調整する方法は、特に制限されるものではなく、材質による調整、構造的なものによる調整等により行えばよい。材質そのもののヤング率としては180GPa〜200GPaが好ましい。
また、左右の支持部材2において、正面から見た(光軸方向から見た)支持部材(接触部6)の厚みは、レンズの形状に応じて適宜決定すればよい。中でも、ディップコート用レンズ支持部材の作製のし易さ、作業性、液溜まりの抑制の点を考慮すると、該厚みは、0.3〜0.8mmとすることが好ましい。
(下部の支持部材)
図5は、図1におけるI−I’断面図である。図5は、下部の支持部材3において、円形レンズ4のコバ部が接触部9において支持されている図である。図6は、下部の支持部材3のみを拡大したものである。
本発明において、下部の支持部材2は、左右の支持部材2と共に下部からレンズを支持できる位置にあれば、特に制限されるものではないが、円形レンズ4の最下点を支持する位置にあることが好ましい。
下部の支持部材2においても、レンズのコバ部と接触する接触部9は、円弧状または楕円弧状の凹部でなければならない。また、円弧または楕円弧の両端を結ぶ直線の距離(a)に対する、円弧または楕円弧の長さを2等分する点から該直線と垂直に交わる点との距離(b)との比(b/a)が0.05以上1未満でなければならない(図6参照)。なお、円弧または楕円弧の長さを2等分する点は、凹状の接触部6の最も下に位置する点と同じになることが好ましい。また、この2等分する点、またはその点の近傍で円形レンズ4のコバ部4が接触することが好ましい。
b/aの値が0.05未満の場合には、レンズを保持することが難しく作業性が低下し、さらに液溜まりを生じやすくなるため、好ましくない。一方、b/aの値が1以上の場合には、液溜まりを抑制する効果が低下するため、好ましくない。作業性を維持し、液溜まりをより抑制するためには、b/aは、0.05〜0.7とすることが好ましく、さらに、0.1〜0.5とすることが好ましい。なお、このb/aの値は、左右の支持部材2と同じであってもよいし、異なる値であってもよい。
なお、円弧または楕円弧の両端を結ぶ直線の長さ(a)の絶対値は、コートの対象となるレンズの大きさに応じて、適宜決定すればよい。中でも、作業性、及び液溜まり抑制効果を考慮すると、aは、コバの厚みに対して、1.5〜20倍の長さであることが好ましい。
下部の支持部材3は、接触部9においてコバ部と接触し、レンズを支持する。この支持する際の力は、左右の支持部材と同じく、コートの対象となるレンズの強度に応じて適宜決定すればよい。
また、下部の支持部材3において、正面から見た(光軸方向から見た)支持部材(接触部9)の厚みは、レンズの形状に応じて適宜決定すればよい。中でも、ディップコート用レンズ支持部材の作製のし易さ、作業性、液溜まりの抑制の点を考慮すると、該厚みは、0.3〜0.8mmとすることが好ましい。
また、下部の支持部材3において液溜まりを効率よく抑制するためには、下部の支持部材3は、接触部9の凹部を形成する円弧または楕円弧の両端を頂点とし、そこから下方へ傾斜する傾斜部8を有することが好ましい。この傾斜部8が水平線となす角(図6におけるβ)は、特に制限されるものではないが、液溜まりの抑制効果を考慮すると20°〜80°であることが好ましい。また、傾斜部8の長さは、特に制限されるものではないが、液溜まり抑制効果を考慮すると、2mm〜10mmであることが好ましい。この際、傾斜部8は、外枠と同じ面まで存在する必要はなく、図5、6に示す通り、途中で垂直方向に切断されていてもよい。また、支持部材3において、円弧または楕円弧の端から外枠までの高さは、特に制限されるものではないが、通常、5mm〜20mmである。
以上の通り、本発明のディップコート用レンズ保持部材について説明したが、これら説明以外の部分については、公知の部材を適用することができる。次に、本発明のディップコート用レンズ保持部材を使用した際のコート法について説明する。
(コート法)
本発明のディップコート用レンズ保持部材を使用して、円形レンズをコートする方法特に制限されるものではなく、公知の方法が採用できる。次に、コート方法の代表的な例を説明する。
先ず、円形レンズを、例えば、図1に記載するディップコート用レンズ保持部材に取り付ける。この際、円形レンズは、コート液の種類に応じて、前処理等を行ったレンズを使用することができる。
次いで、円形レンズを支持したディップコート用レンズ保持部材を、そのままコート液へ浸漬する。コート液へ浸漬する時間、コート液の温度等は、使用するコート液に応じて適宜決定すればよい。
さらに、コート液からディップコート用レンズ保持部材を取出し、円形レンズの表面をコートする。その後、コート液を乾燥、または硬化させることにより、円形レンズの表面にコート膜を形成する。コート液の乾燥、または硬化は、使用するコート液に応じて、その時間、温度を適宜決定すればよい。コート液の乾燥、または硬化は、円形レンズをディップコート用レンズ保持部材で保持したまま行うことができる。
図7にコートした後のレンズの概略図を示した(コーティングレンズ10において、液溜まりが発生した場合の概略図である。液溜まりの1例が、液溜まり11である。)。液溜まりが生じる場合は、図7に示すように、支持部材で支持していた部分の外観が低下する。このような部分が生じると、レンズの有効面積が低下する。本発明のディップコート用レンズ保持部材を使用すれば、粘度の高いコート液を使用した場合でも、このような液溜まりの発生を効率よく抑制できる。
次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
図1に示したディップコート用レンズ支持部材を使用した。
(左右の支持部材)
左右の支持部材2は、レンズ中心を通る水平線と、レンズ中心と支持部材の接触部6(円弧状の凹部)とを結ぶ直線とがなす角(図4におけるγ)が20°になるように配置した。そして、傾斜面5の延長線と、レンズ中心を通る水平線とがなす角(図4におけるα)が70°になるよう傾斜面6を設けた。円弧の端から傾斜面の端までの長さは10mmとした。
さらに、接触部6は、円弧状の凹部であって、円弧の両端を結ぶ直線の距離(a)に対する、円弧の長さを2等分する点から該直線と垂直に交わる点との距離(b)との比(b/a)を0.1とした(aの長さは10mmとした。)。なお、左右の支持部材2ともに同じ形状、同じ大きさのものを使用した。
(下部の支持部材)
下部の支持部材7は、コバ部4と接する接触部9は、前記左右の支持部材2と同じ形状、同じ大きさのものを使用した。また、支持部材7は、コバ部と接する接触部9の端部を頂点とし、そこから下方へ図6におけるβが45°となるように傾斜部8を設けた。傾斜部8の長さは5mmとした。また、円弧の端から外枠までの高さは10mmとした。
なお、下部の支持部材7は、円形レンズ4の最下点を支持できる位置に配置した。
以上のような支持部材を備えたディップコート用レンズ保持部材を準備した。これらの構造を表1に示した。
(円形レンズ4のコート、作業性の評価)
まず、プラスレンズの前処理を行うために、20%NaOH水溶液にレンズ(直径60mm、コバの厚み1mm)を浸漬し、5分間超音波洗浄を行った。次いで、蒸留水にて洗浄し風乾した。前処理後のプラスレンズを、前記の構造を有するディップコート用レンズ保持部材に装着(接触部6、9の円弧の長さを2等分する点でコバ部を支持するように装着)した。そして、粘度が3.0 mPa.secのコート液の入ったディップ槽に浸漬し、引き上げ速度30cm/minにてレンズを引き上げた。レンズ上部に左右支持部材が位置しているため、支持部材よりも上部にあるレンズのコバ部を伝い流れ落ちる液がレンズと支持部材の隙間にたまることはなかった。レンズを引き上げた後70℃、15分にて予備硬化後、110℃、2時間で本硬化を行った。
このコート作業において、以下の評価基準にて作業性を評価した。すなわち、ディップコート用レンズ保持部材にレンズを取り付けた後、前記コートの一連の作業中にディップコート用レンズ保持部材からレンズがはずれる枚数で作業性を評価した。10枚のレンズを対象として、以下のA、B、Cの評価基準で判断した。
A:10枚中 はずれたレンズの枚数が0枚。
B:10枚中 はずれたレンズの枚数が1〜3枚。
C;10枚中 はずれたレンズが4枚以上。
(コーティングレンズの評価)
硬化後のレンズを目視にて確認を行ったところ、液溜まりはほとんど確認できなかった。作業性の評価結果、コーティングレンズの評価結果を表2にまとめた。
実施例2〜15
比較例1〜12
実施例1で使用したディップコート用レンズ保持部材において、左右の支持部材の位置(γ)、左右の支持部材(傾斜面5)の傾斜角度(α)、左右支持部材(接触部6)の形状(円弧または楕円弧、b/a)、下部の支持部材(接触部9)の形状(円弧または楕円弧、b/a)、下部の支持部材の傾斜部8の傾斜角度(β)を、表1(実施例2〜15)、表3(比較例1〜12)に示すように変更したディップコート用レンズ保持部材を使用した。なお、表1、表3に示した構造以外の部分は、実施例1と同じ構造のものを使用した。また、各実施例、比較例において使用したコート液の粘度を表1、表3に示した。
表1、表3に示す構造のディップコート用レンズ保持部材、及びコート液を使用して、実施例1と同様の方法で作業性の評価、コーティングレンズの評価を行った。その結果を表2(実施例2〜15)、表4(比較例1〜5)に示した。
Figure 2014006322
Figure 2014006322
Figure 2014006322
Figure 2014006322
表2、表4から明らかなように、実施例1〜15における保持部材を用いた場合にはほとんど液溜まりは発生しなかった。一方、比較例1〜5は支持部材における接触部の形状が直線状であるため、レンズ取り付けに時間を要したり、取り付け後もレンズが落下したりするなど、作業性が低下した。また下部の支持部材における接触部の形状が直線状である場合、接触部に溜まった液が逃げにくいため、支持部材が接触するレンズ下部に液が溜まりやすい。その結果硬化後のレンズには支持部材との接点に液溜まり11(図7)が確認された。
1 コバ部
2 左右の支持部材
3 下部の支持部材
4 円形レンズ
5 傾斜面(左右の支持部材における傾斜面)
6 接触部(左右の支持部材における接触部)
7 下部の支持部材(レンズの光軸に対して垂直方向から見た下部の支持部材)
8 傾斜部
9 接触部(下部の支持部材における接触部)
10 コーティングレンズ
11 液溜まり

Claims (3)

  1. 円形レンズの光軸を横方向に向けて該レンズをコート液に浸漬する際に、該レンズのコバ部を、下部及び左右の3カ所の支持部材で支持するディップコート用レンズ保持部材であって、
    左右の支持部材は、該レンズの中心よりも上方のコバ部を支持するようにし、かつコバ部と接触する接触部から下方に傾斜する傾斜面を有し、
    下部及び左右の支持部材のコバ部と接触する接触部は、円弧状または楕円弧状の凹部であり、
    円弧または楕円の両端を結ぶ直線の距離(a)に対する、円弧または楕円弧の長さを2等分する点から該直線と垂直に交わる点までの距離(b)との比(b/a)が、0.05以上1未満であることを特徴とするディップコート用レンズ保持部材。
  2. 25℃における粘度が1.5〜20.0mPa・secであるコート液に円形レンズを浸漬する際に使用することを特徴とする請求項1に記載のディップコート用レンズ保持部材。
  3. 下部の支持部材が、コバ部と接する接触部の円弧または楕円弧の端部から下方へ傾斜する傾斜部を有することを特徴とする請求項1に記載のディップコート用レンズ保持部材。
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