態様の説明
定義
「治療する」なる用語は、疾患(例えば、本明細書に記載の疾患または障害)の発生もしくは進行を低減、抑制、減弱、減少、停止、もしくは安定化する、疾患の重症度を低下させる、または疾患に関連する1つもしくは複数の症状の重症度を改善もしくは低下させることを意味する。
「疾患」とは、細胞、組織、または器官の正常な機能を損傷または妨害する、任意の状態または障害を意味する。
合成化合物において、合成に用いる化学材料の起源に応じて、天然同位体存在度のいくらかの変動が起こることが理解されるであろう。したがって、クリゾチニブの製剤は本質的に少量の重水素化同位体置換体を含むことになる。天然に多く存在する安定な水素および炭素同位体の濃度は、この変動にもかかわらず、本発明の化合物の安定同位体置換の程度に比べると小さく、微々たるものである。例えば、Wada, E et al., Seikagaku, 1994, 66:15;Gannes, LZ et al., Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol, 1998, 119:725参照。
本発明の化合物において、特定の同位体と具体的に明示されていない任意の原子は、その原子の任意の安定な同位体を表すことが意図される。特に記載がないかぎり、位置が「H」または「水素」と具体的に明示されている場合、その位置はその天然存在度同位体組成の水素を有すると理解される。同様に特に記載がないかぎり、位置が「D」または「重水素」と具体的に明示されている場合、その位置は、重水素の天然存在度、すなわち0.015%よりも少なくとも3000倍高い存在度の重水素を有する(すなわち、少なくとも45%の重水素取り込み)と理解される。
本明細書において用いられる「同位体濃縮係数]なる用語は、指定の同位体の同位体存在度と天然存在度との間の比を意味する。
他の態様において、本発明の化合物は、それぞれの明示する重水素原子について、少なくとも3500(それぞれの明示する重水素原子で52.5%の重水素取り込み)、少なくとも4000(60%の重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素取り込み)、少なくとも5000(75%の重水素)、少なくとも5500(82.5%の重水素取り込み)、少なくとも6000(90%の重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素取り込み)、少なくとも6600(99%の重水素取り込み)、または少なくとも6633.3(99.5%の重水素取り込み)の同位体濃縮係数を有する。
「同位体置換体」なる用語は、化学構造が本発明の特定の化合物と、その同位体組成においてのみ異なる種を意味する。
「化合物」なる用語は、本発明の化合物に言及する場合、分子の構成原子の間で同位体変動がありうることを除き、同じ化学構造を有する分子の集まりを意味する。したがって、示した重水素原子を含む特定の化学構造で表される化合物は、その構造内の明示する重水素の位置の1つまたは複数で水素原子を有する、より少ない量の同位体置換体も含むことが、当業者には明らかであろう。本発明の化合物におけるそのような同位体置換体の相対量は、化合物を作成するために用いる重水素化試薬の同位体純度および化合物を調製するために用いる様々な合成段階における重水素の取り込み効率を含む、いくつかの因子に依存することになる。しかし、前述のとおり、全体としてのそのような同位体置換体の相対量は、化合物の49.9%未満であろう。他の態様において、全体としてのそのような同位体置換体の相対量は、化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、または0.5%未満であろう。
本発明は、本発明の化合物の塩も提供する。
本発明の化合物の塩は、酸とアミノ官能基などの化合物の塩基性基との間、または塩基とカルボキシル官能基などの化合物の酸性基との間で形成される。別の態様によれば、提供される化合物の塩は薬学的に許容される酸付加塩である。
本明細書において用いられる「薬学的に許容される」なる用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わず、ヒトおよび他の哺乳動物の組織と接触して用いるのに適し、妥当な損益比に見合った成分を意味する。「薬学的に許容される塩」とは、受容者への投与後に、本発明の化合物を直接または間接的のいずれかで提供することが可能な、任意の非毒性塩を意味する。「薬学的に許容される対イオン」は、受容者への投与後に塩から放出された時に、毒性でない塩のイオン性部分である。
薬学的に許容される塩を形成するために一般に用いられる酸には、硫化水素(hydrogen bisulfide)、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、ならびにパラトルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、酒石酸水素酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸などの有機酸、ならびに関連する無機酸および有機酸が含まれる。したがってそのような薬学的に許容される塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩および他の塩が含まれる。一つの態様において、薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸と形成されるもの、ならびに特にマレイン酸などの有機酸と形成されるものが含まれる。
特に記載がないかぎり、開示する化合物が、立体化学を指定しない構造によって命名または表示され、かつ1つまたは複数のキラル中心を有する場合、化合物のすべての可能な立体異性体を表していると理解される。
本明細書において用いられる「対象」なる用語は、ヒトまたはマウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル(例えば、アカゲザル)、チンパンジー、もしくはヒヒなどの、非ヒト動物を含む。一つの態様において、対象は非ヒト動物である。別の態様において、対象はヒトである。
本発明の化合物(例えば、式Iの化合物)は、例えば、重水素置換またはその他の結果として、不斉炭素原子を含んでいてもよい。したがって、本発明の化合物は個々の鏡像異性体、または2つの鏡像異性体の混合物のいずれとして存在することができる。したがって、本発明の化合物はラセミ混合物もしくはスケールミック(scalemic)混合物のいずれかとして、または別の可能な立体異性体を実質的に含まない、それぞれ個々の立体異性体として存在してもよい。本明細書において用いられる「他の立体異性体を実質的に含まない」なる用語は、25%未満の他の立体異性体、好ましくは10%未満の他の立体異性体、より好ましくは5%未満の他の立体異性体、およびもっとも好ましくは2%未満の他の立体異性体が存在することを意味する。所与の化合物の個々の立体異性体を得る、または合成する方法は、当技術分野において公知であり、最終化合物に対し、または出発原料もしくは中間体に対し実行可能であるとして適用してもよい。
特に記載がないかぎり、開示する化合物が、立体化学を指定しない構造によって命名または表示され、かつ1つまたは複数のキラル中心を有する場合、化合物のすべての可能な立体異性体を表していると理解される。
本明細書において用いられる「安定な化合物」なる用語は、それらの製造を可能にするのに十分な安定性を有し、本明細書に詳細に記載する目的(例えば、治療用製品への製剤、治療用化合物の生産に使用する中間体、単離または保存可能な中間体化合物、治療薬に反応する疾患または状態の治療)にとって有用であるのに十分な期間その化合物の完全性を維持する化合物を意味する。
「D」および「d」はいずれも重水素を意味する。「立体異性体」とは、鏡像異性体およびジアステレオマーの両方を意味する。「Tert」および「t-」はそれぞれ三級を意味する。「US」とは、アメリカ合衆国を意味する。
「重水素による置換」とは、1つまたは複数の水素原子の、対応する数の重水素原子による置き換えを意味する。
本明細書の全体を通して、変数は一般に言及(例えば、「各R」)することもあり、または具体的に言及(例えば、R1、R2、R3、など)することもある。特に記載がないかぎり、変数を一般に言及する場合、変数は、その特定の変数のすべての具体的態様を含むことが意図される。
治療用化合物
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する:
式中:
R
1およびR
2はそれぞれCl、CH
3およびCD
3から独立に選択され;
R
3はCH
3またはCD
3であり;
X
1a、X
1b、X
2a、X
2b、X
3a、X
3b、X
4a、X
4b、およびX
5はそれぞれ水素および重水素から独立に選択され;
Y
1は水素または重水素であり;かつ
Y
2は水素または重水素であり;
ただしR
1およびR
2のそれぞれがClであり、X
1a、X
1b、X
2a、X
2b、X
3a、X
3b、X
4a、X
4b、およびX
5のそれぞれが水素であり、かつY
1およびY
2のそれぞれが水素であるとき、R
3はCD
3である。
式Iの化合物の一つの態様において、R1およびR2のそれぞれがClであり、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4a、X4b、およびX5のそれぞれが水素であり、かつY1が水素であるとき、R3はCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、R1およびR2のそれぞれがClであり、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4a、およびX4bのそれぞれが水素であり、かつY1およびY2のそれぞれが水素であるとき、R3はCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、R1およびR2のそれぞれがClであり、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4a、およびX4bのそれぞれが水素であり、Y1が水素であり、かつX5が重水素であるとき、R3はCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、R1およびR2がそれぞれClであり、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4a、およびX4bのそれぞれが水素であり、Y1が水素であり、かつY2が重水素であるとき、R3はCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、R1およびR2がそれぞれClであり、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4a、およびX4bのそれぞれが水素であり、Y1が水素であり、かつX5およびY2がそれぞれ重水素であるとき、R3はCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、R1およびR2がそれぞれClおよびCH3から独立に選択され、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4a、X4b、およびX5のそれぞれが水素であり、かつY1およびY2のそれぞれが水素であるとき、R3はCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1aおよびX1bは同じであり、X2aおよびX2bは同じであり、X3aおよびX3bは同じであり、かつX4aおよびX4bは同じである。本態様の一つの局面において、R1およびR2はClおよびCD3から独立に選択される。本態様のさらなる局面において、R1およびR2は同じで、それぞれClである。本態様の別のさらなる局面において、R1およびR2は同じで、それぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1a、X1b、X2aおよびX2bは同じであり、X3a、X3b、X4aおよびX4bは同じであり、かつR1およびR2はClおよびCD3から独立に選択される。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり;かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり;かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。本態様の一つの局面において、R1およびR2は同じで、それぞれClである。本態様の一つの局面において、R1およびR2は同じで、それぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素であり、R1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択され、かつR3はCH3である。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれClである。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素であり、R1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択され、かつR3はCD3である。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれClである。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素であり、R1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択され、かつR3はCH3である。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれClである。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素であり、R1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択され、かつR3はCD3である。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれClである。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素であり、R1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択され、かつR3はCH3である。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれClである。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素であり、R1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択され、かつR3はCD3である。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれClである。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素であり、R1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択され、かつR3はCH3である。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれClである。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素であり、R1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択され、かつR3はCD3である。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれClである。一つの局面において、R1およびR2はそれぞれCD3である。
式Iの化合物の一つの態様において、X5は水素であり、Y1は水素であり、Y2は水素であり、かつR1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択される。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、X5は水素であり、Y1は重水素であり、Y2は水素であり、かつR1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択される。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、X5は水素であり、Y1は水素であり、Y2は重水素であり、かつR1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択される。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、X5は水素であり、Y1は重水素であり、Y2は重水素であり、かつR1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択される。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、X5は重水素であり、Y1は水素であり、Y2は水素であり、かつR1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択される。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、X5は重水素であり、Y1は重水素であり、Y2は水素であり、かつR1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択される。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、X5は重水素であり、Y1は水素であり、Y2は重水素であり、かつR1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択される。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、X5は重水素であり、Y1は重水素であり、Y2は重水素であり、かつR1およびR2は同じで、ClおよびCD3から選択される。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2a、X2b、X3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは重水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。一つの局面において、X1a、X1b、X2aおよびX2bのそれぞれは重水素であり、かつX3a、X3b、X4aおよびX4bのそれぞれは水素である。本局面の一つの例において、R3はCH3である。本局面の別の例において、R3はCD3である。本局面の一つの例において、Y2は水素である。本局面の別の例において、Y2は重水素である。
任意の前述の態様の一つの例において、化合物は、重水素と明示されていない任意の原子がその天然同位体存在度で存在する、上で定義した式Iの化合物である。
一つの態様において、化合物は、重水素と明示されていない任意の原子がその天然同位体存在度で存在する、表1(下記)に示す化合物(Cmpd)またはその薬学的に許容される塩の任意の1つから選択される。
一つの態様において、化合物は、重水素と明示されていない任意の原子がその天然同位体存在度で存在する、表2(下記)に示す化合物(Cmpd)またはその薬学的に許容される塩の任意の1つから選択される。
一つの態様において、化合物は、重水素と明示されていない任意の原子がその天然同位体存在度で存在する、表3(下記)に示す化合物(Cmpd)またはその薬学的に許容される塩の任意の1つから選択される。
式Iの化合物の合成は、当業者である合成化学者であれば、本明細書に開示する例示的合成および実施例を参照することにより、容易に達成しうる。式Iの化合物およびその中間体を調製するために用いられるものに類似の関連手順は、例えば、Cui, J.、国際公開公報第2006/021881号、Cui, J.、国際公開公報第2006/021884号、Lui, J.、国際公開公報第2010/108103号、O'Donnell, C. J.; J. Med. Chem. 2010, 53, 1222-1237、およびShimizu, H. Tetrahedron Lett. 2006, 47, 5927-5931に開示されている。
そのような方法は、本明細書に記載の化合物を合成するための、対応する重水素化され、任意に他の同位体を含有する試薬および/もしくは中間体を用いて、または化学構造に同位体原子を導入するための当技術分野において公知の標準的合成プロトコルを実行して、行うことができる。
例示的合成
式Iの化合物を合成するための好都合な方法をスキーム1に示す。
スキーム1a:式Iの化合物(R
1
およびR
2
=Cl)の合成経路
スキーム1b:式Iの化合物(R
1
およびR
2
=CD
3
)の合成経路
式Iに対応する新しい化学実体を、当業者によって日常的に実施されている多段階有機合成により、上のスキームIaおよびIbに示すとおりに、入手することができる。市販の2',6'-ジクロロ-3'-フルオロアセトフェノン10aをまず重水中、塩化重水素存在下で、水素-重水素交換にかけて、R3=CD3の実体を得てもよい。
または、10aをトリジュウテロメチルボロン酸(市販)との鈴木-宮浦クロスカップリングにかけて、R1=R2=CD3のケトン10bを得てもよい。ケトン10aまたは10bの水素化ホウ素または重水素化ホウ素によるカルボニル還元の後、得られたラセミベンジルアルコールを無水酢酸でアセチル化する。鏡像異性体の混合物の酵素分割を、ブタ肝臓エステラーゼ(PLE)により達成して、キラルアルコール11aまたは11bを97.5%を超える鏡像異性体過剰率(ee)で得てもよい。
二級アルコールの2-ニトロピリジン-3-オール(Y1=HまたはDの12)による光延反転を、アジドジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)およびトリフェニルホスフィンにより達成して、ビアリールエーテル13aまたは13bを得てもよい。ニトロ基の還元を含む二官能基相互変換およびピリジンの5位でのヨウ素導入後、骨格は複素環15との結合の準備が整う。
適切に重水素化されたボロン-ピナコラート15をヨウ化アリール13aまたは13bと、アルカリ性の二相性条件下、パラジウム触媒クロスカップリングにより結合してもよい。tert-ブチルカルバメート(BOC)保護基を濃塩酸で除去して、所望の活性薬学的成分を遊離塩基で得る。適切な薬学的等級の塩の調製が必要となり、標準的慣習を用いて達成してもよい。
高いレベルの同位体存在度を含む、16a、16b、ならびに16cおよび16dへの前駆体などの官能基化ピペリジンの調製は、以前に国際公開公報第2010/108103号に開示されている。中間体16cおよび16dは、ケトン前駆体からそれぞれNaBD
4またはNaBH
4による還元を通じて調製しうる。
二級アルコールの対応するメシレートへの変換により、アニオン条件下での直接置換による3-ヨード-1-H-ピラゾール部分の導入が可能となる。15を得るための、18のヨード部分のボロンピナコラートへの加工は、パラジウム触媒存在下、ジオキソボラランの反応により達成される。
16または17(スキーム2)の適切に重水素化された例を、以下のスキーム2b〜2dに開示するとおりに調製してもよい。
スキーム2bに示すとおり、21を22などの塩基およびCDCl
3で処理して、23を得る。C=O基のNaBH
4での還元により16bを得る。16bを塩化メシルにより17bに変換する。同様に、16fおよび17f(以下に示す)を、C=O還元段階でNaBH
4の代わりにNaBD
4を用いて調製してもよい。
スキーム2cに示すとおり、JLCR, 2007,50, 131-137に記載のとおりに24をアリルトリメチルシランおよびベンジルアミンで処理して25を得る。25をPd/Cおよびギ酸で処理し、続いて同じJLCRの論文に記載のとおりに(Boc)2Oで保護して16dを得、これを塩化メシルで処理して17dを得る。
スキーム2dに示すとおり、16d(スキーム2c参照)のデス-マーチン酸化により26を得、これを22およびCDCl
3で処理して27を得る。C=O基のNaBH
4での還元により16gを得、これを塩化メシルで処理して17gを得る。同様に、16hおよび17h(以下に示す)を、C=O還元段階でNaBH
4の代わりにNaBD
4を用いて調製してもよい。
Y1=Dの12bなどの、2-ニトロピリジン-3-オールの同位体置換体を、O'Donnell(J. Med. Chem. 2010, 53, 1222-1237)によって報告されたとおり、2-ニトロピリジン-3-オール12aの位置選択的臭素化によって調製してもよい。次いで、ハロゲン金属交換と、続く適切な同位体含有求電子試薬による低温停止を行い、正しい位置に所望の同位体を挿入する。または、アルカリ性条件下、重水による直接の水素から重水素への交換により、12aから直接12bを得る。
前述の特定のアプローチおよび化合物は限定的であるとは意図されない。本明細書中のスキームにおける化学構造は、同じ変数名(すなわち、R1、R2、R3、など)により特定されるか、されないかにかかわらず、本明細書中の化合物の式における対応する位置の化学基の定義(部分、原子など)に相応に本明細書により定義される、変数を記載する。別の化合物の合成に使用するための化合物の構造における化学基の適合性は当業者の知識の範囲内である。
本明細書中のスキームに明示的に示していない経路の範囲内のものを含む、式Iの化合物およびそれらの合成前駆体のさらなる合成法は、当業者である化学者の手段の範囲内である。適用可能な化合物を合成する際に有用な合成化学変換および保護基の方法論(保護および脱保護)は当技術分野において公知であり、例えば、Larock R, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989);Greene, TW et al., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999);Fieser, L et al., Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);およびPaquette, L, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)ならびにその以降の版に記載されるものを含む。
本発明によって構想される置換基および変数の組み合わせは安定な化合物の形成を生ずるもののみである。
組成物
本発明はまた、式I(例えば、本明細書中の任意の式を含む)の化合物、または該化合物の薬学的に許容される塩の有効量;および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物も提供する。担体は、製剤の他の成分と適合性であるという意味で、また薬学的に許容される担体の場合、薬剤中で使用される量ではその受容者にとって有毒でないという意味で、「許容される」。
いくつかの態様において、本発明は、式I(例えば、本明細書中の任意の式を含む)の化合物、または化合物もしくは互変異性体の薬学的塩の有効量;および薬学的に許容される担体を含む、発熱物質を含まない薬学的組成物を提供する。
本発明の薬学的組成物において用いうる、薬学的に許容される担体、補助剤および媒体には、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ロウ、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
必要ならば、薬学的組成物における本発明の化合物の溶解度およびバイオアベイラビリティを当技術分野において周知の方法により増強してもよい。一つの方法には製剤における脂質賦形剤の使用が含まれる。''Oral Lipid-Based Formulations: Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs (Drugs and the Pharmaceutical Sciences),'' David J. Hauss, ed. Informa Healthcare, 2007;および''Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery: Basic Principles and Biological Examples,'' Kishor M. Wasan, ed. Wiley-Interscience, 2006参照。
バイオアベイラビリティを増強する別の公知の方法は、LUTROL(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)などのポロキサマー、または酸化エチレンおよび酸化プロピレンのブロックコポリマーと共に任意に製剤した本発明の化合物のアモルファス形態を使用することである。米国特許第7,014,866号;および米国特許公報第20060094744号および第20060079502号参照。
本発明の薬学的組成物には、経口、直腸、鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与に適したものが含まれる。特定の態様において、本明細書中の式の化合物を経皮(例えば、経皮パッチまたはイオン導入技術を用いて)投与する。他の製剤は、単位剤形、例えば、錠剤、徐放性カプセル、およびリポソームで都合よく提供してもよく、薬学の分野において周知の任意の方法により調製してもよい。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD (20th ed. 2000)参照。
そのような調製法は、投与する分子と、1つまたは複数の補助成分を構成する担体などの成分とを連合させる段階を含む。一般に、組成物は、活性成分を液体担体、リポソームもしくは微粒子状の固体担体、またはその両方と均質かつ密接に連合させること、および必要であれば次いで生成物を成形することにより調製する。
特定の態様において、化合物を経口投与する。経口投与に適した本発明の組成物は、それぞれ所定の量の活性成分を含む、カプセル剤、サシェ剤、もしくは錠剤;散剤もしくは顆粒剤;水性液体もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤;油中水液体乳剤;水中油液体乳剤;リポソーム中に充填されたものなどの分離した単位で、またはボーラスなどとして提供してもよい。ゼラチン軟カプセル剤は、そのような懸濁剤を含むために有用でありえ、化合物の吸収速度を有益に高めうる。
経口で用いるための錠剤の場合、一般に使用される担体には、乳糖およびトウモロコシデンプンが含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に加えられる。カプセル剤形での経口投与のために、有用な希釈剤には、乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。水性懸濁剤を経口投与する場合、活性成分を乳化剤および懸濁化剤と混合する。望まれる場合には、特定の甘味料および/または着香料および/または着色料を加えてもよい。
経口投与に適した組成物には、着香基剤、通常はショ糖およびアカシアまたはトラガカント中に成分を含むロゼンジ剤;ならびにゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含む香錠が含まれる。
非経口投与に適した組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬および製剤を意図される受容者の血液と等張にする溶質を含んでいてもよい、水性および非水性の滅菌注射液剤;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含んでいてもよい水性および非水性の滅菌懸濁剤が含まれる。製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば、密封アンプルおよびバイアル中で提供してもよく、使用直前に注射用の滅菌液体担体、例えば、水を添加することだけが必要なフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時注射液剤および懸濁剤は滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製してもよい。
そのような注射液剤は、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁剤の形態であってもよい。この懸濁剤は、適切な分散化剤または湿潤剤(例えば、Tween 80などの)および懸濁化剤を用いて、当技術分野において公知の技術に従って製剤してもよい。滅菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口で許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用液剤または懸濁剤、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。使用しうる許容される媒体および溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌の固定油は、溶媒または懸濁媒として慣用的に用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油を用いてもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にポリオキシエチル化された形のオリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様、注射剤の調製において有用である。これらの油性液剤または懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含んでいてもよい。
本発明の薬学的組成物は、直腸投与用の坐剤の形で投与してもよい。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって直腸内で融解して活性成分を放出する、適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより、調製することができる。そのような材料には、カカオ脂、蜜ロウおよびポリエチレングリコールが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
本発明の薬学的組成物は鼻エアロゾルまたは吸入により投与してもよい。そのような組成物は薬学的製剤の分野で周知の技術に従って調製し、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当技術分野において公知の他の可溶化剤もしくは分散化剤を用いて、食塩水中の液剤として調製してもよい。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationへと譲渡された、Rabinowitz JD and Zaffaroni AC、米国特許第6,803,031号参照。
所望の治療が、局所適用により容易に接近できる領域または器官に及ぶ場合、本発明の薬学的組成物の局所投与は特に有用である。皮膚に対して局所的な局所適用のために、薬学的組成物を、担体中に懸濁または溶解した活性成分を含む適切な軟膏により製剤すべきである。本発明の化合物の局所投与のための担体には、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウ、および水が含まれるが、それらに限定されるわけではない。または、薬学的組成物を、担体中に懸濁または溶解した活性成分を含む適切なローションまたはクリームにより製剤することもできる。適切な担体には、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルロウ、セテアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の薬学的組成物は、直腸坐剤製剤により、または適切な浣腸製剤で、下部腸管へと局所適用してもよい。局所経皮パッチおよびイオン導入投与もまた本発明に含まれる。
関心対象の部位に投与するために、本発明の治療薬物の適用は局所的であってもよい。注射、カテーテル、トロカール、発射物、プルロニックゲル、ステント、薬物徐放性ポリマーまたは内部への接近を提供する他の装置の使用などの、様々な技術を、本発明の組成物を関心対象部位へと提供するために用いることができる。
したがって、さらに別の態様によれば、本発明の化合物を、人工装具、人工弁、人工血管、ステント、またはカテーテルなどの、移植可能な医療装置をコーティングするための組成物に組み込んでもよい。適切なコーティングおよびコーティングした移植可能な装置の一般的調製は当技術分野において公知であり、米国特許第6,099,562号;第5,886,026号;および第5,304,121号に例示されている。コーティングは、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、酢酸エチレンビニル、およびその混合物などの、典型的に生体適合性のポリマー材料である。コーティングは、組成物に制御放出特性を与えるために、フルオロシリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、リン脂質またはその組み合わせの適切なトップコートにより任意にさらに覆われていてもよい。侵襲性装置のためのコーティングは、以下の用語が本明細書中で用いられるのと同様に、薬学的に許容される担体、補助剤または媒体の定義の範囲内に含まれることになる。
別の態様によれば、本発明は、前記装置を前述のコーティング組成物と接触させる段階を含む、移植可能な医療装置をコーティングする方法を提供する。当業者であれば、装置のコーティングが哺乳動物への移植の前に行われることは明らかである。
別の態様によれば、本発明は、前記薬物放出装置を本発明の化合物または組成物と接触させる段階を含む、移植可能な薬物放出装置に含浸させる方法を提供する。移植可能な薬剤放出装置には、生分解性ポリマーのカプセルまたは弾丸状物、非分解性で拡散性のポリマーのカプセルおよび生分解性ポリマーのカシェ剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
別の態様によれば、本発明は、化合物が治療上活性であるように、本発明の化合物または化合物を含む組成物でコーティングした移植可能な医療装置を提供する。
別の態様によれば、本発明は、化合物が装置から放出され、治療上活性であるように、本発明の化合物または化合物を含む組成物を含浸した、または含む移植可能な薬物放出装置を提供する。
対象から摘出したために器官または組織が接近可能である場合、そのような器官または組織を本発明の組成物を含む媒質に浸してもよく、本発明の組成物を器官上に塗布してもよく、または本発明の組成物を任意の他の便宜的な様式で適用してもよい。
別の態様において、本発明の組成物は第二の治療薬または第二の治療薬の組み合わせをさらに含む。第二の治療薬は、クリゾチニブと同じ作用機構を有する化合物とともに投与したとき、有利な性質を有することが知られているか、または有利な性質を示す、任意の化合物または治療薬から選択してもよい。そのような薬剤には、米国特許第2011003805号、およびCN10186991に記載されるものを含むが、それらに限定されるわけではない、クリゾチニブとの組み合わせにおいて有用であると示されるものが含まれる。
好ましくは、第二の治療薬は、がん、より具体的には前立腺癌、骨肉腫、肺癌、特に非小細胞肺癌、乳癌、子宮内膜癌、神経膠芽腫、結腸直腸癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、小腸癌、食道癌または胃癌の治療または予防において有用な薬剤である。
一つの態様において、第二の治療薬はキナーゼ阻害剤から選択される。本態様の一つの局面において、キナーゼ阻害剤はエルロチニブ、ソラフェニブ、米国特許出願第11/957,442号および米国特許出願第12/413,510号に開示されているエルロチニブの重水素化形態、PCT特許出願第PCT/US2009/053595号)に開示されているソラフェニブの重水素化形態、PF-00299804およびN-{2-[4-({3-クロロ-4-[3-(トリフルオロメチル)フェノキシ]フェニル}アミノ)-5H-ピロロ[3,2-d]ピリミジン-5-イル]エチル}-3-ヒドロキシ-3-メチルブタンアミドから選択される(米国特許公報第2011/0003805号参照)。より具体的態様において、エルロチニブの重水素化形態は化合物Aである。
別のより具体的態様において、エルロチニブの重水素化形態は化合物Bである。
一つのより具体的態様において、ソラフェニブの重水素化形態は化合物Cである。
一つの局面において、キナーゼ阻害剤はエルロチニブまたはソラフェニブである。一つの局面において、キナーゼ阻害剤はエルロチニブの重水素化形態(上で引用した特許出願に開示)またはソラフェニブの重水素化形態(上で引用した特許出願に開示)である。
一つの態様において、本発明の組成物は、式Iの化合物とキナーゼ阻害剤から選択される2つの第二の治療薬との組み合わせを含む。本態様の一つの局面において、組み合わせはエルロチニブまたは米国特許出願第11/957,442号および米国特許出願第12/413,510号に開示されているエルロチニブの重水素化形態、ならびにソラフェニブまたはPCT特許出願第PCT/US2009/053595号に開示されているソラフェニブの重水素化形態とである。本態様のより具体的局面において、組み合わせはエルロチニブまたは化合物A、およびソラフェニブまたは化合物Cとである。本態様の別のより具体的局面において、組み合わせはエルロチニブまたは化合物B、およびソラフェニブまたは化合物Cとである。本態様の一つの局面において、組み合わせはエルロチニブおよびソラフェニブである。本態様の一つの局面において、組み合わせはエルロチニブの重水素化形態およびソラフェニブの重水素化形態である。本態様の一つの局面において、組み合わせはエルロチニブの重水素化形態およびソラフェニブである。本態様の一つの局面において、組み合わせはエルロチニブおよびソラフェニブの重水素化形態である。
別の態様において、本発明は、本発明の化合物および1つまたは複数の任意の前述の第二の治療薬の別々の剤形を提供し、ここで化合物および第二の治療薬は互いに連合している。本明細書において用いられる「互いに連合している」なる用語は、別々の剤形が一緒に包装されること、または、そうでなければ、別々の剤形が一緒に販売され、投与される(連続または同時に、互いの24時間以内に)ことが意図されることが容易に明らかであるように、互いに付随していることを意味する。
本発明の薬学的組成物において、本発明の化合物は有効量で存在する。本明細書において用いられる「有効量」なる用語は、適切な投薬法で投与する場合、標的の障害を治療するのに十分な量を意味する。
動物およびヒトに対する投薬量の相互関係(体表面の平方メートルあたりのミリグラムに基づく)は、Freireich et al., (1966) Cancer Chemother. Rep, 1966, 50: 219に記載されている。体表面積は対象の身長および体重から概算しうる。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, N.Y., 1970, 537参照。
一つの態様において、本発明の化合物の有効量は、治療ごとに25mgから500mgの範囲でありうる。治療は典型的には1日1回から2回投与する。より具体的態様において、有効量は以下の量または範囲の1つでありうる:
300mg、好ましくは1日2回経口投与;
250mg、好ましくは1日2回経口投与;
200mg、好ましくは1日2回、または1日1回経口投与;
100mg、好ましくは1日1回経口投与;
50mg、好ましくは1日1回経口投与;
200から300mg、好ましくは1日2回経口投与;または
50〜200mg、好ましくは1日1回経口投与。
有効用量もまた、当業者には理解されるとおり、治療する疾患、疾患の重症度、投与経路、対象の性別、年齢および全身の健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療との併用の可能性、および治療する医師の判断に応じて変動することになる。例えば、有効用量を選択するための指標は、クリゾチニブの処方情報を参照することにより調べることができる。
第二の治療薬を含む薬学的組成物について、第二の治療薬の有効量は、その薬剤のみを使用する単剤療法において通常使用する投薬量の約20%から100%の間である。好ましくは、有効量は通常の単剤療法での用量の約70%から100%の間である。これらの第二の治療薬の通常の単剤療法での投薬量は当技術分野において周知である。例えば、Wells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition,Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)を参照されたく、これらの参考文献はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
上で参照した第二の治療薬のいくつかは本発明の化合物と相乗的に作用すると予想される。相乗作用が起こる場合、第二の治療薬および/または本発明の化合物の有効投薬量を、単剤療法において必要とされる量より減らすことが可能となる。このことは、本発明の化合物の第二の治療薬のいずれかの毒性副作用を最少化する、有効性における相乗的改善、投与もしくは使用の容易さの改善、および/または化合物の調製もしくは製剤の全体の費用減少という利点を有する。
治療法
別の態様において、本発明は、細胞における未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)および肝細胞成長因子受容体(c-met/HGFR)キナーゼの活性を調節する方法であって、細胞を1つまたは複数の本明細書中の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩と接触させる段階を含む方法を提供する。
別の態様によれば、本発明は、それを必要としている対象において、ALKおよびc-met/HGFRを阻害すること、例えば、クリゾチニブにより有益に治療される疾患の治療法であって、本発明の化合物または組成物の有効量を対象に投与する段階を含む方法を提供する。一つの態様において、対象はそのような治療を必要としている患者である。そのような疾患は当技術分野において周知であり、国際公開公報第2006/021884号に開示されている。そのような疾患には、がん、特に肺癌、非小細胞肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚もしくは眼内の黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸直腸癌、結腸癌、胃癌、乳癌、子宮内膜癌、卵管の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺の癌、慢性もしくは急性の白血病、リンパ腫、軟部組織の肉腫、膀胱の癌、腎臓もしくは尿管の癌、腎細胞癌、腎盤の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍、神経膠芽腫、脳幹神経膠腫、神経芽腫、下垂体腺腫、固形腫瘍または前述のがんの1つもしくは複数の組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのような疾患には、疾患が、乾癬、良性前立腺肥大症および再狭窄を含むが、それらに限定されるわけではない、良性増殖性疾患である、異常な細胞成長障害も含まれる。
別の態様によれば、本発明は、哺乳動物の異常な細胞成長の治療法を提供する。
一つの特定の態様において、本発明の方法を、それを必要としている対象においてリンパ腫、神経芽腫、固形腫瘍および非小細胞肺癌から選択される疾患または状態を治療するために用いる。
そのような治療を必要としている対象を特定することは、対象または健康管理の専門家の判断によるものでありえ、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、検査または診断法により評価可能)でありうる。
別の態様において、任意の前述の治療法は、それを必要としている対象に1つまたは複数の第二の治療薬を同時投与する段階をさらに含む。第二の治療薬の選択はクリゾチニブとの同時投与のために有用であることが公知の任意の第二の治療薬から行ってもよい。第二の治療薬の選択はまた、治療する特定の疾患または状態にも依存する。本発明の方法において使用しうる第二の治療薬の例は、本発明の化合物および第二の治療薬を含む組み合わせ組成物において用いるための、前述のものである。
特に、本発明の組み合わせ療法は、以下の状態の治療のために、それを必要としている対象に、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、および第二の治療薬を同時投与する段階を含む(特定の第二の治療薬は適応症の後に括弧内に示す:非小細胞肺癌(PF-00299804)。
本明細書において用いられる「同時投与する」なる用語は、第二の治療薬を、単一の剤形(前述の本発明の化合物および第二の治療薬を含む本発明の組成物など)の一部として、または別々の複数剤形として、本発明の化合物と一緒に投与しうることを意味する。または、追加の薬剤は、本発明の化合物の投与の前に、連続して、または投与後に投与してもよい。そのような組み合わせ治療において、本発明の化合物および第二の治療薬はいずれも通常の方法により投与する。本発明の化合物および第二の治療薬の両方を含む、本発明の組成物の対象への投与は、治療経過中の別の時点で、その同じ治療薬、任意の他の第二の治療薬、または任意の本発明の化合物を前記対象に別々に投与することを妨げない。
これらの第二の治療薬の有効量は当業者には周知であり、投薬のための手引きは、本明細書中で引用する特許および公開特許出願において、ならびにWells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)、および他の医学テキストにおいて見出しうる。しかし、第二の治療薬の最適な有効量の範囲を決定することは、当業者の技術の十分な範囲内である。
本発明の一つの態様において、対象に第二の治療薬を投与する場合、本発明の化合物の有効量は、第二の治療薬を投与しない場合のその有効量より少ない。別の態様において、第二の治療薬の有効量は、本発明の化合物を投与しない場合のその有効量より少ない。この様式で、いずれかの薬剤の高い用量に関連する望まれない副作用を最少化しうる。他の可能性のある利点(投薬法改善および/または薬物価格の低下を含むが、それらに限定されるわけではない)は、当業者には明らかであろう。
さらに別の局面において、本発明は、前述の疾患、障害または症状の対象における治療または予防のための薬剤の製造において、単一の組成物または別々の剤形のいずれかとして、式Iの化合物を単独で、または1つもしくは複数の前述の第二の治療薬と一緒に使用することを提供する。本発明の別の局面は、本明細書中に記載の疾患、障害または症状の対象における治療または予防において用いるための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
実施例1. 化合物212:
臭化ビアリール34a(69mg、0.182mmol)を水(0.455mL)およびアセトニトリル(1.3mL)に溶解し、15c(83.0mg、0.218mmol)、K
2CO
3(63.0mg、0.165mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(63mg、0.055mmol)を加えた。得られた溶液を80℃で15時間撹拌し、その時点でLCNSにより所望の生成物への完全な変換が示された。反応混合物を減圧下で濃縮し、ISCO Combiflash精製システムで、0〜10%メタノール/ジクロロメタン勾配によるシリカゲルクロマトグラフィに直接かけた。所望の生成物を含む分画を合わせ、濃縮して、無色油状物を得た(75mg、0.141mmol、77%)。
得られた油状物を、イソプロパノール中の塩酸の溶液(4M、0.1mL)に溶解して、2時間撹拌し、その時点でLCMSにより所望の生成物への完全な変換が示された。反応混合物を酢酸エチルおよび水で希釈した。相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を塩酸水溶液(1M)で洗浄した。次いで、合わせた水相を水酸化ナトリウム水溶液(3N)で塩基性化した。次いで、所望の生成物を酢酸エチル(3×)で抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、無色油状物を得、これを2成分のベンゼン/メタノール溶媒対に溶解した。溶液をドライアイス/アセトン浴で-78℃に冷却し、得られた固体を凍結乾燥にかけて、化合物212を白色粉末で得た(39mg、0.086mmol、収率61%)。
(R)-3-(1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エトキシ)-5-(1-(2,2,6,6-テトラジュウテロピペリジン-4-イル)-1H-ピラゾル-4-イル)ピリジン-2-アミン212。
実施例2. 化合物211:
化合物211を上の実施例1に開示したものと類似の手順を用いて調製した。
(R)-3-(1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エトキシ)-5-(1-(3,3,5,5-テトラジュウテロピペリジン-4-イル)-1H-ピラゾル-4-イル)ピリジン-2-アミン211、白色粉末で得た(41mg、0.087mmol)
実施例3. 化合物215:
化合物215を上の実施例1に開示したものと類似の手順を用いて調製した。
(R)-5-(1-(2,2,6,6-テトラジュウテロピペリジン-4-イル)-1H-ピラゾル-4-イル)-3-(2,2,2-トリジュウテロ-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エトキシ)ピリジン-2-アミン215、オフホワイト粉末で得た(11mg、0.024mmol)
実施例4. 化合物214:
化合物214を上の実施例1に開示したものと類似の手順を用いて調製した。反応生成物をそれ以上精製せずに
1H NMRをとり(以下に開示)、これは214が混合物の主成分であることを示唆している。
(R)-5-(1-(3,3,5,5-テトラジュウテロピペリジン-4-イル)-1H-ピラゾル-4-イル)-3-(2,2,2-トリジュウテロ-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エトキシ)ピリジン-2-アミン214
本明細書中の化合物の調製において用いうる例示的臭化ビアリール(実施例1で用いた34aなど)を以下に開示する。
臭化ビアリール34a〜dの合成
実施例5. 34dの調製:
中間体10cの調製
市販の1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エタノン10a(3.4g、16.4mmol)をD
2O(10mL)中、還流温度で、炭酸カリウム(250mg)によるH-D交換にかけた。重水素濃縮は
1H NMRにより85%と検定された。反応混合物をHCl水溶液で中和し、生成物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮した。材料をCDCl
3(16mL)中で1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(0.2g)を触媒としてのさらなるH-D交換にかけた。溶液を周囲温度および圧で終夜撹拌した。12時間後、
1H NMRにより重水素濃縮が十分(>99%)であることが示された。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、塩酸水溶液(1M)および食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、2,2,2-トリジュウテロ-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エタノン(10c)を無色油状物で得た(2.84g、収率82%)。この材料をそれ以上いかなる精製もせずに酵素反応に持ち越した。
中間体11dの調製
2,2,2-トリジュウテロ-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エタノン(10a、1.29g)を30%トリエタノールアミン水溶液(pH7)およびd
1-イソプロパノール(5g)に溶解した。ケトレダクターゼ酵素(KRED-P1-H08、50mg)およびNADP
+(50mg)を一度に加えた。反応混合物を、オイルバブラーに排出針を取り付けることにより判断して、窒素のプラスの気流下で撹拌した。所望物への変換をLCMSで定量し、3日後、さらなる酵素(50mg)、NADP
+(50mg)およびd
1-イソプロパノール(5g)を追加した。反応をさらに4日間進行させ、その時点でLCMSにより所望の生成物への完全な変換が示された。反応混合物をヘプタン(20mL)で希釈し、40℃で1時間加熱した。得られた懸濁液を酢酸エチルおよび水で希釈し、セライトの短いパッドを通してろ過した。得られた二相性混合物を分離し、水相を酢酸エチルで逆抽出した。合わせた有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液、塩化アンモニウム、および食塩水で逐次洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、1-ジュウテロ-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)-2,2,2-トリジュウテロエタノール11dを無色油状物で得た(1.1g、収率86%、同位体濃縮>99%)。この材料をそれ以上いかなる精製もせずに酵素反応に持ち越した。
中間体13dの調製
1-ジュウテロ-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)-2,2,2-トリジュウテロエタノール(1.00g、4.76mmol)、3-ヒドロキシアミノピリジン(733mg、5.23mmol)、およびトリフェニルホスフィン(1.87g、7.14mmol)のテトラヒドロフラン溶液(43mL)を周囲温度で調製し、次いで氷浴により0℃に冷却した。次いで、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.0mL)をシリンジで加えた。反応混合物を12時間かけて周囲温度まで加温し、その時点でLCMSによりキラルアルコールのビアリールエーテルへの変換が確認された。反応混合物を減圧下で濃縮し、ISCO Combiflash精製システムで、0〜30%酢酸エチル/ヘプタン勾配によるシリカゲルクロマトグラフィに直接かけた。所望のビアリールエーテルを含む分画を合わせ、濃縮して、(R)-3-(1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)-1,2,2,2-テトラジュウテロオエトキシ)ニトロピリジン(13d)を白色固体で得た(0.89g、56%)。
中間体34dの調製
(R)-3-(1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)-1,2,2,2-テトラジュウテロエトキシ)ニトロピリジン(13d)(0.889mg、2.66mmol)をエタノールおよび酢酸の溶液(133mL、1:1.15)に溶解した。鉄粉末(1.49g)を固体部分で加えた。懸濁液を緩やかに還流するまで1時間加熱し、その時点でLCMSによりアミノピリジンへの完全な変換が見られた。反応混合物を冷却し、ジエチルエーテルで希釈し、氷中で炭酸カリウム水溶液により注意深く中和した。次いで、二相性溶液を水酸化ナトリウムにより塩基性pHとし、その時点で生成物をジエチルエーテルで抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、(R)-3-(1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)-1,2,2,2-テトラジュウテロオエトキシ)ピリジン-2-アミンをオフホワイト固体で得た(1.0g)。この材料をそれ以上精製せずに持ち越した。
(R)-3-(1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)-1,2,2,2-テトラジュウテロオエトキシ)ピリジン-2-アミン(2.66mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、氷浴で0℃に冷却した。N-ブロモスクシンイミド(2.66mmol)のアセトニトリル溶液(1mL)をシリンジで加えた。1時間後、LCMSにより所望の臭化物への完全な変換が示された。反応混合物を減圧下で濃縮し、ISCO Combiflash精製システムで、0〜100%酢酸エチル/ヘプタン勾配によるシリカゲルクロマトグラフィに直接かけた。所望の臭化物を含む分画を合わせ、濃縮して、(R)-5-ブロモ-3-(1-ジュウテロ-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)-2,2,2-トリジュウテロエトキシ)ピリジン-2-アミン(34d)を黄褐色固体で得た(820mg、2.12mmol)。
実施例6. 34aの調製:
(R)-5-ブロモ-3-(1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エトキシ)ピリジン-2-アミン(34a)を、Koning, P. D. et al. Org. Res. Process Dev. 2011, 15, 1018-1026によって記載された手順に従って調製した。
実施例7. 34bの調製:
(R)-5-ブロモ-3-(1-ジュウテロ-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)-エトキシ)ピリジン-2-アミン(34b)を、臭化ビアリール34dの合成(実施例5)について開示したものに類似の手順を用いて調製しうる。したがって、実施例5を、市販の1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エタノン10aのメチル基水素をあらかじめH-D交換することなく、10aを酵素的還元にかけることにより改変する。
実施例8. 34cの調製:
(R)-5-ブロモ-3-(1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)-2,2,2-トリジュウテロエトキシ)ピリジン-2-アミン(34c)を、臭化ビアリール34d(実施例5)について開示したものに類似の手順を用いて調製した。したがって、実施例5を、10cの還元においてd
1-イソプロパノールをイソプロパノールで置き換えることにより改変して、最終的に34cを単一の立体異性体として良好な収率で得た。
実施例9. 16b〜16hの調製:
15b〜hなどのピペリジン-ピラゾールボロキサランの調製のために有用な例示的重水素化4-Boc-ピペリジン-1-オール16b〜16hを、以下のスキーム4に示すとおりに調製しうる。
23の調製
3,3,5,5-テトラジュウテロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(23):1-Boc-4-ピペリジン(10g、50.2mmol)をCDCl3(100mL)に溶解した。1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(0.5g)を一度に加え、溶液を周囲温度および圧で終夜撹拌した。重水素濃縮を1H NMRにより検定し、カルボニルのアルファのプロトンに割り付けられた共鳴が1H NMRで見られなくなれば、反応が完了したと考えた。反応混合物を塩酸水溶液(1M)で中和し、生成物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、3,3,5,5-テトラジュウテロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル23を無色油状物で得た(8.72g、43.0mmol、収率86%、>99%のD4)1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.71 (s, 4H), 1.47 (s, 9H)。
16bの調製
3,3,5,5-テトラジュウテロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル16b:3,3,5,5-テトラジュウテロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル23(1.1g、5.41mmol)をメタノール(10mL)に溶解し、氷浴で0℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(0.2g)を一度に加え、溶液を周囲温度および圧で12時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液で中和し、揮発性物質を濃縮し、次いで水および酢酸エチルで再分配した。生成物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、3,3,5,5-テトラジュウテロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル16bを無色油状物で得た(0.955g、4.65mmol、収率86%、>99%のD
4)
16fの調製
3,3,4,5,5-ペンタジュウテロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル16f:3,3,5,5-テトラジュウテロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル23(2.0g、9.84mmol)をメタノール(16mL)に溶解し、氷浴で0℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(0.4g)を一度に加え、溶液を周囲温度および圧で12時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液で中和し、揮発性物質を濃縮し、次いで水および酢酸エチルで再分配した。生成物を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、3,3,4,5,5-ペンタジュウテロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル16fを無色油状物で得た(1.75g、8.53mmol、収率87%、>99%のD
5)
16dの調製
2,2,6,6-テトラジュウテロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル16dを、Hesk, D. et al. J. Label Compd Radiopharm. 2007; 50: 131-137による記載のとおりに調製した。
26の調製
2,2,6,6-テトラジュウテロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル26:ジクロロメタン(41mL)中で炭酸水素ナトリウム(4.0g)、4Åモレキュラーシーブス(4.0g)および16d(1.66g、8.1mmol)の懸濁液を調製した。次いで、デス-マーチンペルヨージナン(3.82g、8.9mmol)を固体部分で加えた。反応を12時間進行させ、その時点でTLCにより完了していると考えられた。チオ硫酸ナトリウム(4g)を加え、共蒸留によりヘプタンとの溶媒交換を行った。得られたスラリーをセライトの短いパッドを通してろ過し、セライトを30%酢酸エチル/ヘプタンの溶媒対で洗浄した。次いで、ろ液を10%亜硫酸ナトリウム、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウムおよび食塩水で逐次洗浄した。分配した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、2,2,6,6-テトラジュウテロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル26を白色粉末で得た(8.1mmol、収率99%、>99%のD
4)
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ: 2.43 (s, 4H), 1.47 (s, 9H)。残留ペルヨージナンの共鳴は
1H NMRでは検出不可能であった。この材料は持ち越すために十分純粋であると考えられた。
27の調製
2,2,3,3,5,5,6,6-オクタジュウテロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル27:重水素濃縮を、3,3,5,5-テトラジュウテロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル23について記載したとおりに、CDCl
3(40mL)中のケトン26(8.1mmol)およびTBD触媒(0.2g)の直接H-D交換により達成した。2,2,3,3,5,5,6,6-オクタジュウテロ-4-オキソピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル27を無色油状物で得た(1.54g、7.44mmol、収率92%、>99%のD
8。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ: 1.47 (s, 9H)。
16gの調製
2,2,3,3,5,5,6,6-オクタジュウテロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル16gを、アルコール16bについて記載したとおりに、メタノール中、ケトン27(0.55g、2.68mmol)の水素化ホウ素ナトリウム(0.1g)との反応から調製し、16g(0.35g、1.65mmol、収率62%)を無色油状物で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ: 3.81 (br s, 1H), 1.47 (s, 9H)。
16hの調製
2,2,4,3,3,5,5,6,6-ノナジュウテロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル16hを、アルコール16fについて記載したとおりに、メタノール中、ケトン27(0.55g、2.68mmol)の重水素化ホウ素ナトリウム(0.12g)との反応から調製し、16h(0.39g、1.84mmol、収率66%)を無色油状物で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ: 1.47 (s, 9H)。
16cの調製
2,2,4,6,6-ペンタジュウテロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル16cを、アルコール16fの調製について記載したとおりに、ケトン26および重水素化ホウ素ナトリウムから調製する。
16eの調製
4-ジュウテロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル16eを、アルコール16fの調製について記載したとおりに、市販のケトン21および重水素化ホウ素ナトリウムから調製する。
本明細書中の化合物の調製において用いうる例示的ピペリジン-ピラゾールボロキサランを以下に開示する。
実施例10. 15cの調製:
スキーム5:15cの調製:
中間体17cの調製
2,2,6,6-テトラジュウテロ-4-((メチルスルホニル)オキシ)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル17c:アルコール16c(0.78g、3.81mmol)およびN-メチルモルホリン(0.46mL)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、次いで氷浴で0℃に冷却した。次いで、塩化メタンスルホニル(0.3mL)をシリンジで一度に加えた。10分後、浴を取り除き、反応混合物を周囲温度まで2時間加温し、その時点で反応はTLCにより完了していると考えられた。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、次いで塩酸水溶液(1M)で反応停止した。相を分離し、次いで有機相を塩酸水溶液、食塩水、および水で洗浄した。合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、オフホワイト固体を得た(3.81mmol、収率>95%)。2,2,6,6-テトラジュウテロ-4-((メチルスルホニル)オキシ)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル17c:
中間体18cの調製
2,2,6,6-テトラジュウテロ-4-(4-ヨード-1H-ピラゾル-1-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル18c:炭酸セシウム(1.63g)をN-メチルピロリジノン(NMP、3.5mL)中の4-ヨード-ピラゾール(0.81g、4.17mmol)の溶液に加える。溶液を80℃まで加熱し、この時点でメシレート17c(3.81mmol)のNMP溶液を一度に加え、反応混合物を12時間撹拌し、この時点で反応はLCMSにより完了していると考えられる。反応混合物を冷却し、減圧下で濃縮し、ISCO Combiflash精製システムで、0〜40%アセトン/ヘプタン勾配によるシリカゲルクロマトグラフィに直接かけた。所望の生成物を含む分画を合わせ、濃縮して、無色油状物を得た(0.45g、1.19mmol、32%)。2,2,6,6-テトラジュウテロ-4-(4-ヨード-1H-ピラゾル-1-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル18c:
15cの調製
2,2,6,6-テトラジュウテロ-4-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾル-1-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル15c:ヨウ化ピラゾール18c(0.45g、1.2mmol)をテトラヒドロフラン(5mL)に溶解し、次いで0℃に冷却した。次いで、2-メチル-THF中の塩化イソプロピルマグネシウムの溶液(0.74mL、2.4M)を滴加した。15分後、2-メトキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(0.41mL)をシリンジで加えた。反応混合物を12時間かけて周囲温度まで加温し、その時点でLCMSにより完了していると考えられた。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応停止し、揮発性物質を減圧下で除去した。次いで、反応混合物を酢酸エチルと水との間で分配した。有機相を飽和塩化アンモニウムおよび食塩水で逐次洗浄した。合わせた有機物を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮し、ISCO Combiflash精製システムで、0〜50%酢酸エチル/ヘプタン勾配によるシリカゲルクロマトグラフィで精製した。所望の生成物を含む分画を合わせ、濃縮して、無色油状物を得た(0.34g、0.89mmol、75%)。2,2,6,6-テトラジュウテロ-4-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾル-1-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル15c:
15a、15bおよび15d〜hなどのピペリジン-ピラゾールボロキサランを、上の実施例10で15cについて記載したとおりに、対応する4-ヒドロキシピペリジンから調製しうる。例えば、化合物15aは、実施例10に記載のとおり、市販の4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(CAS 109384-19-2)から調製しうる。化合物15bは、実施例10に記載のとおり、化合物16eから調製しうる。化合物15dは、実施例10に記載のとおり、化合物16dから調製しうる。化合物15eは、実施例10に記載のとおり、化合物16cから調製しうる。化合物15fは、実施例10に記載のとおり、化合物16fから調製しうる。化合物15gは、実施例10に記載のとおり、化合物16gから調製しうる。化合物15hは、実施例10に記載のとおり、化合物16hから調製しうる。
生物学的検定:
実施例11. 代謝安定性の評価:
ミクロソーム検定:ヒト肝臓ミクロソーム(20mg/mL)はXenotech, LLC (Lenexa, KS)から入手する。β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元体(NADPH)、塩化マグネシウム(MgCl2)およびジメチスルホキシド(DMSO)はSigma-Aldrichから購入する。
代謝安定性の判定:試験化合物の7.5mM保存溶液をDMSO中で調製する。7.5mM保存溶液をアセトニトリル(ACN)中で12.5〜50μMに希釈する。20mg/mLヒト肝臓ミクロソームを3mM MgCl2を含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.4中で0.625mg/mLに希釈する。希釈したミクロソームを深型96穴ポリプロピレンプレートのウェルに三つ組で加える。12.5〜50μM試験化合物の10μLの一定量をミクロソームに加え、混合物を10分間予備加温する。予備加温したNADPH溶液を加えて反応を開始する。最終反応量は0.5mLで、0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.4および3mM MgCl2中に0.5mg/mLヒト肝臓ミクロソーム、0.25〜1.0μM試験化合物、および2mM NADPHを含む。反応混合物を37℃でインキュベートし、50μLの一定量を0、5、10、20、および30分に取り出し、内部標準を含む氷冷ACN 50μLを含む浅型96穴プレートに加えて、反応を停止する。プレートを4℃で20分間保存し、その後水100μLをプレートのウェルに加えた後、遠心沈降して、沈澱タンパク質をペレットとする。上清を別の96穴プレートに移し、Applied Bio-systems API 4000質量分析計を用い、LC-MS/MSにより残存する親化合物の量について分析する。式Iの化合物の非重水素化体および陽性対照、7-エトキシクマリン(1μM)について、同じ手順に従う。試験は三つ組で行う。
データ分析:試験化合物のインビトロt1/2を、残存親化合物%(ln)対インキュベーション時間の関係の線形回帰の傾きから計算する。
インビトロt1/2=0.693/k
k=-[残存親化合物%(ln)対インキュベーション時間の線形回帰の傾き]
データ分析はMicrosoft Excel Softwareを用いて行う。
実施例12. IC50シフトの評価法:
ヒト肝臓ミクロソーム(0.25mg/mL)を、浅型96穴プレート内で、100、50、25、12.5、6.25、3.125、1.563、0.781、0.391、0.195、0.098、および0mMのクリゾチニブと、2mM NADPH存在下、0および30分間予備インキュベートした。予備インキュベーション後の残存するCYP3A4酵素活性を測定するために、反応混合物の一定量を別の浅型96穴プレート内で、3mM MgCl2を含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.4で1:10希釈した。テストステロン(最終濃度50mM)を加え、2mM NADPHを加えて反応を開始した。これらの反応混合物をさらに10分間インキュベートし、次いで内部標準を含むアセトニトリルを加えて反応停止した。プレートを遠心沈降して沈澱タンパク質をペレットとし、上清をLC-MS/MSにより生成した6β-OH-テストステロンの量について分析した。
同じ検定をさらに二回、各回クリゾチニブの代わりに異なる代表的試験化合物を用いて行った:二回の試験化合物はそれぞれ化合物212および化合物211であった。
前述のIC50シフトの評価検定の結果を、試験した3つの化合物-クリゾチニブ、化合物212および化合物211のそれぞれについて図1A、1Bおよび1Cに示す。プロットで明らかなとおり、クリゾチニブ存在下でのCYP3A4によるテストステロンの代謝のIC50シフトは7.5倍(11.2から1.5μM)であった。対照的に、化合物212および化合物211存在下でのCYP3A4によるテストステロンの代謝のIC50シフトは、それぞれ3.0倍(9.8から3.3μM)および3.3倍(13.7から4.1μM)にすぎなかった。したがって、化合物212または化合物211いずれかの存在下で、CYP3A4によるテストステロンの代謝はクリゾチニブ存在下よりも有意に少ないシフトを示す。
さらなる説明なしで、当業者であれば、前述の説明および例示となる実施例を用いて、本発明の化合物を作成および利用し、特許請求する方法を実施することができると考えられる。前述の考察および実施例は単に、特定の好ましい態様の詳細な説明を提示しているに過ぎないことが理解されるべきである。当業者には、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変および等価物が作成され得ることが明らかであろう。