JP2014004621A - 銅の溶接肉盛り方法 - Google Patents

銅の溶接肉盛り方法 Download PDF

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Abstract

【課題】銅の溶接は通常TIG溶接やMIG溶接で行い、シールドガスがArやHeのような原子ガスに限定されるため、シールドガスの分子解離熱によるアーク電圧、アーク温度をアップすることができない。銅は放熱量が大きいため入熱量不足を電流アップで補おうとするとスパッタが発生し品質低下となる。そのため予熱温度を500℃近辺まで高めて溶接しているが作業者の熱負荷が大きい。
【解決手段】溶接電流値を上げることなくアーク温度をアップするための方法は以下である。(1)ArやHeなどの原子イナートガスに、温度上昇効果の高い分子イナートガスを混合する混合器を応用する。(2)混合イナートガスと液体フラックスを気化せしめた気体フラックスを混合した気化フラックスに帯電するために帯電装置を応用する。(3)回転羽根を備えた溶接トーチを使用して気化フラックスに回転を付与する方法を応用する。
【選択図】図1

Description

本発明は銅の溶接肉盛り方法において、複数のシールドガスを混合した混合シールドガスに静電気を帯電させた帯電混合シールドガスや、混合シールドガスと気体フラックスを混合した気化フラックスに静電気を帯電させた帯電気化フラックスを、溶接部に吹き付けながら溶接する方法に関する。シールドガスや気化フラックスを帯電させることによりアーク電圧やアーク温度が上昇し、溶接速度が向上しスパッタの発生が低減する。また、銅の予熱温度を低減できることから作業者の熱負荷が抑制され作業効率が向上する。
下敷きで髪の毛をこすった時に髪の毛は下敷きに引き付けられる。髪の毛は+で下敷きは−のため静電気で引き合うからである。下敷きが髪の毛から遠のくと静電気力は減衰し髪の毛は離れる。この距離の差による静電気力の差を電位差という。強磁場の中に溶接シールドガスを強制的に送り出すと電界磁場を作るため電磁誘導起電力を帯びる。つまり多量の静電気を帯びることになる。電流が多く流れると磁気も強くなり磁気の変化が大きくなると電流も多く流れる。このことを電磁誘導という。発電機やモータやトランスなど様々にこの原理は利用されており、本発明では溶接用シールドガスを帯電させるのに応用したものである。
様々な金属の電気伝導率と熱伝導率の間には類似点がありお互いに比例する。この事実は2つが密接に関係していることを示し実際金属の電子論では熱伝導とは金属の熱せられた部分から熱の低い部分への自由電子の拡散を意味する。金属中の自由電子は熱いところより低いところに流れる熱運動に比例する。入熱より放熱が多くなれば母材温度は上がらす溶接はできないということであり、銅のように熱伝導率の大きな材料の溶接では予熱を素早く、しかも高めの温度に行うことが重要である。つまるところ、溶接の難易度は材料の入熱量と放熱量の差に左右される。例えば、銅は放熱量が大きいため500℃近い予熱を必要とする。銅の溶接は通常TIG溶接やMIG溶接で行うことから、シールドガスがArやHeのような原子ガスに限定されるため、シールドガスの分子解離熱によるアーク電圧、アーク温度をアップすることができない。従って、銅溶接の場合は放熱量をカバーするため予熱温度を高めることでアーク入熱量不足を補いながら溶接しているのである。
通常ガスシールドアーク溶接及びレーザ溶接に使用されるシールドガスは、TIG溶接の単独ガスとしてArやHe、CO2溶接に使われるCO2、MAG溶接に使われるAr+CO2、レーザ溶接や切断に使われるH2+N2+CO2+Heの4種又はH2+N2+Ar+CO2+O2+Heの6種類の混合ガスである。原子ガスとしてのイナートガスはArやHeであるが、それ以外は分子ガスであり主力はCO2溶接である。CO2溶接は、(1)アーク安定化に優れている、(2)垂降特性が強く出るため溶け込みが深い、(3)安価である、(4)分子ガスの解離を利用できるため予熱を抑えかつ電流電圧を抑えることができる利点がある。しかしながらCO2溶接はスパッタが多く発生する問題があり溶接欠陥や溶接後手入れに多大な労力を要している。
CO2溶接は自動溶接法としてばかりでなく、半自動アーク溶接としても簡便に適用され、溶接速度が速く、しかも溶接部の諸性質が優れコストが安いので、生産性向上とコスト低減に効果的な溶接法である。しかしながら、裸電極鋼線を用いる方法においては、スパッタの著しいことがその大なる欠点とされている。そのスパッタの発生機構としては、溶滴が非接触移行する場合に、(1)アーク力の押し上げによって溶接棒溶融金属がスパッタとなるもの、(2)溶接棒端から離脱した溶滴が再度アーク中に突入して電極−溶滴−母材間に直列アークを形成してスパッタとなるもの、(3)溶滴が接触移行する場合に、瞬間的短絡が破れる際のフェーズ作用によってスパッタとなるもの、(4)大塊となった溶接棒溶融金属が短絡しアーク再生時の大電流によるアーク力によって移行金属がスパッタとなるもの、(5)いわゆる埋もれアーク状態において短絡してアークが再生し溶融池全体が大きく盛り上がってスパッタとなるものなどがあげられる。
このような種々の発生機構を有するスパッタを抑止するため、従来方法としては、適当な動的特性の溶接機を用い、細径電極鋼線(直径0.8mm〜1.2mm)でアーク電圧(17〜20V)を著しく下げてアーク長を精密にコントロールして溶接するものがある。この溶接は、電極鋼線の溶融金属滴が溶融池に接触して重力と表面張力で適当にくびれた時に短絡電流が流れ、溶融金属滴が溶融池に移行し、アークが再点弧するという短絡移行のサイクルをスムースに繰り返しスパッタを抑止しているものである。しかし、この方法は細径電極鋼線を用いた低電圧の条件のもとでのみスパッタ抑止が達せられるものでその適用範囲は極めて制限されていた。
分子ガス配合比80%Ar+20%CO2のアタールガスは、ArとCO2の比重が比較的近似しているため一緒にボンベ充填しても分離しにくいので多用されている。アタールガスはある程度の溶け込みも確保でき、スパッタが少なく溶接後の手入れの時間が省けるメリットがある。HeやH2を混合した複合シールドガスは比重差が大きすぎるためボンベ内分離が発生しそれぞれのガス特性を生かせない問題がある。Ar、He、N2の3種混合ガスは互いにアーク電圧を高くできるが、Heを1とした場合の比重差は、Arが10、N2が7となり、従来市場に出回っているガス混合器ではこれらのガスを完全に混合するのは困難である。この大きな比重差のあるガスを均一に混合して、分子状態からプラズマ状態にするのは100%無理である。そのため銅のTIG溶接では、100%He又は100%Arを使って、500℃近傍まで予熱温度を高めて溶接していた。
表1にシールドガスごとの比重、密度kg/m、20℃における熱伝導率(10−4cal/cm.sec.℃)を示す。
シールドガスの物性値
Figure 2014004621
純銅はタフピッチ銅(酸素入り)と無酸素銅と脱酸銅の3種に分類される。タフピッチ銅は酸化銅(Cu2O)の状態で酸素を0.02〜0.05%含む99.90%以上の純銅である。電気・熱の伝導性に優れているが、還元性雰囲気中で高温加熱すると水素脆化を起こす場合がある。無酸素銅は0.002%以下の酸素でオーディオ機器の配線などに適する。脱酸銅は燐、リチウム、ホウ酸もしくはカルシウムのような金属又は非金属の脱酸剤を含み、酸化銅を含まない銅である。本発明における銅の溶接肉盛りでは主として脱酸銅の鋳造品や鍛造、圧延品を対象としている。銅は面心立方格子構造であり合金化が簡単であり低温脆性が起こりにくく熱伝導性がよく銅イオンによる抗菌性も強いため幅広い用途に使用される金属である。しかし、銅製品製造の最大のネックは熱伝導性がよいため予熱温度が500℃以上でないと溶接ができないことである。純銅や脱酸銅でできた高炉羽口、炉壁水冷盤、銅ステーブ、炉底冷却盤、転炉のランス羽口、サンプル回収用ランス、熱風弁などの水冷構造を必要とする装置は、通常単体重量が50kg以上であり吸熱容量が大きいものが多く500±50℃の予熱を必要とする。このような銅溶接作業は、連続20〜30分の作業が限界のため1クルー3名程度のグループで交代体制を敷いて休憩を取りながら溶接しているのが現状である。銅溶接作業は高温予熱の輻射熱に耐えながら作業しなければならないため体力を要していた。溶接従事者の熱疲労は極端に厳しいものとなっている。
従来の銅溶接は不活性ガスAr+Heが主である。電子殻はエネルギ準位の低い方からL殻、M殻、N殻、O殻、P殻と呼ばれており、収納電子数は2,8、18、32個となる。Ar、Heなどの不活性ガスは最外殻の電子が充満(閉殻)しているので価電子0の電子配置をもつ原子(分子)であり、科学的に最も安定していて自然の状態では他の原子と結び付くことはない。このようなイナートガスは電離しにくいことからプラズマ状態になってアーク電圧をアップすることはできない。そのため銅溶接は予熱でカバーするしか方法がなかった。
銅は含有炭素があっても焼きが入らないためN2を混合したシールドガスで溶接が可能である。N2→N+Nと分離する際、解離エネルギは15eVから30eVとなり2倍となる。Heの解離エネルギは25eVである。N2はHeと比較すると安価であるも100%電離は困難なためHeとN2は50:50の割合で混合して使用する場合がある。この混合割合でようやくHeの電離エネルギ25eVが20%アップして30eVとなる。逆に、N2を単独でシールドガスとして使用する場合は、N2の電離エネルギを20%アップするのに、99.999%の高純度のN2が必要となり、高価なシールドガスとなる。分子ガスは原子ガスとなる際の分子解離エネルギを放出するためアーク電圧がアップすることは明白であるが、分子ガスを100%分離することは不可能であり、アーク温度を5000℃から7000℃に高めるのは容易ではない。
アーク電圧を高めアーク温度を高めるためにはアークプラズマの活性化が必要である。プラズマとは正電気を帯びた粒子と負電気を帯びた電子とがほぼ同じ密度で、ほぼ電気的中性を保って分布している粒子集団のことである。プラズマは荷電粒子と中性粒子とにより構成され、集団的ふるまいをする。気体エネルギを加えて気体中の分子を原子に解離し、原子をさらに陽イオンと電子に電離することによってプラズマをつくることができる。そのため、プラズマを活性化するにはイオン化しやすい元素をアーク柱に注入する必要がある。NaやKのようなアルカリ金属は最外殻の電子が不安定のため電離が起こりやすいが気体として取り扱うのは困難である。また、フッ素(F)のようなハロゲンガスは単体ではイオン化しやすいガスであるが、簡単に他の電子と結合し化合物体の中に組み込まれてしまうので陰イオンとして取り扱うことは困難である。また、ホウ素(B)のような半金属は単体で使用されることは少なく、化合物や合金の形で使用される。このようなアルカリ金属、半金属、ハロゲンなどの元素を混合してガス体としてフラックスに使用する技術はなかった。不活性ガスの元素Ar、He、Neなどは常温でも単原子として電子が安定のため高温でも電離は起こりにくいが、NaやKなどのアルカリ金属やハロゲンや半金属などの元素をシールドガスと混合して使用できれば溶接特性の向上だけでなくアーク電圧アップとなり、銅溶接においては予熱温度を低減できることになる。
本発明者は、特願2010−165565号広報「液体フラックス」において、フッ素化合物を溶解せしめた液体フラックスを生成し、この液体フラックス中に混合ガスを通すことで気体の中にフッ素成分を含有させることに成功した。フッ素化合物は固形フラックスとして被覆溶接棒や複合ワイヤやロウ付け用に応用されているがTIG溶接、MIG溶接、MAG溶接、CO2溶接などのシールドガス中に混合する技術はなかった。
原子間結合はイオン結合と共有結合と金属結合に種別される。これらの原子間結合の強さはイオン結合で140〜250kcal/mol、共有結合で15〜170kcal/mol、金属結合で27〜83kcal/molのエネルギを与えると原子解離となる。従来のHe、Ar、Neなどは不活性ガスであるため分子間エネルギは変化しない。分子ガス(CO2とN2)を混入したシールドガス中に、化学結合したフラックスをイオン結合の形で入れることで、アーク電圧はガスの熱解離エネルギを与えられる。アーク電圧(20〜30eV)で加速されたシールドガスの平均エネルギは15〜25eVであり、このエネルギはアーク中で分子ガスを解離する際熱エネルギとして吸収され、溶接面でまた分子ガスにもどる時熱解離エネルギとして一瞬にして吐出されるためアーク電圧はアップする。MAG溶接でイナートガス(CO2+ArもしくはCO2+He)にCO2を混合する理由は熱解離エネルギを増大させるためである。他のシールドガス溶接においても熱解離エネルギを増大するために、単純にArやHeなどのイナートガスにN2、CO2、O2などの分子ガスを入れているだけである。熱解離エネルギを増大するために、シールドガス中にフッ化水素やフッ化ナトリウムのようにイオン結合したフラックス成分を混入できれば、アーク電圧、アーク温度が高まることから、その分銅溶接の予熱温度を低下させることが可能となる。
多原子分子は個々の原子に解離するのに大きなエネルギを必要とする。多原子分子の解離式は例えば次のようになる。CO2→CO+O、CO→C+O、H2O→H+OH、H2→H+H、N2→N+N、O2→O+Oである。シールド機能や解離熱効果及びコスト面から、従来シールドガス溶接法としては、CO2アーク溶接が主力である。CO2は安価で、比重がシールドガス中で最も重く、アークに対する空気の遮蔽効果が大きいことがその理由である。CO2は高温になると次のようにガス分解する。CO2→CO+O、CO+O→CO2、解離したCO+Oは弱酸性を持ち溶融鋼と次のように反応する。Fe+O→FeO、FeO→Fe+O。さらにFeOの一部は溶融鋼中の炭素と結合してFeO+C→Fe+CO、Fe+CO→FeO+Cとなる。COを発生するが溶接棒中の脱酸元素と化合して、FeO+Mn→Fe+MnO、2FeO+Si→2Fe+SiO2となる。FeOは鋼に還元され、脱酸元素であるSiやMnは酸化物スラグとしてビード上の表面に張り付く。銅の溶接にもCO2は最大5v%程度混合するが、銅のワイヤにもSi:0.1〜0.4%wt%、Mn:0.2〜0.5wt%の脱酸元素が入っているのでCOは脱酸される。
このように、CO2は650℃以上になるとCO2→CO+Oに分離し、溶融部のFeを酸化させCと反応し気孔となるため溶接品質上は好ましくない。しかしながらシールドガスとしてCO2を使うのは溶接ワイヤに脱酸剤としてSi、Mn、AL、Tiなどが入っており、これらの元素がSiO2、MnO、AL2O3、TiO2となって溶融金属の脱酸機能を果たしてくれるからである。脱酸銅はもともとSi、Pなどを入れることで銅母材鋳造中の脱酸を図り結晶粗大化を防いでいる。銅の溶接では、溶接ワイヤに脱酸剤が入っており、シールドガスで大気中の酸素をシールドガスしながら、溶融銅の脱酸を確実に行いタフピッチ銅が形成されないようにしている。しかしながら、銅母材を500℃以上に予熱することで空気によって酸化されやすくなりタフピッチ銅の部分的な形成は避けがたいものとなる。タフピッチ銅はCu2Oの状態で酸素を0.02〜0.05wt%含む銅であり、電気や熱の伝導性に優れているが、還元性雰囲気中で高温加熱すると水素脆性を起こす問題がある。そのため結晶粒粗大化と軟化部分形成のため2番割れを起こす原因となる。銅は電気伝導率が銀の次に高く高電流を流すことが可能であるが、ワイヤ径1.6mmでせいぜい400Aである。これ以上溶接電流を増大するとスパッタを防止するためにアークカットの機能が必要となり正常な溶接出来ない問題がある。銅母材を500℃に予熱して溶接する場合は、MIG溶接でも溶接電流を250A以上にするとスパッタ増加につながり、溶接面が粗くなり品質が低下する。溶接電流を低減し、かつアーク温度を上げるためには、イナートガス(シールドガス)電圧を上げることが効果的であるがイナートガスによる電圧アップは限界がある。各種ガスの比重、密度、熱伝導率を表2に示す。
被包ガスの諸性質(アーク溶接の物理、石崎敬三、アグネ技術センター)
Figure 2014004621
溶接電流は抵抗発熱に最も重要な影響を与える最大の要素である。僅かな増減が溶接部に異常発熱を生じる。高いと散り(重ね抵抗溶接において、母材が溶融して飛び散る現象をいう)などの発生の原因となり、低いと十分な発熱が得られず溶け込み不良で強度が得られない。溶接する母材の諸性質、材質、成分、融点、熱伝導率、比熱、比抵抗、熱膨張率、表面の状態(酸化物、油脂、塗料)表面粗さを考慮して適切な条件を出す必要がある。W:溶接性指数、P:材料の比抵抗(μΩcm)、λ:熱伝導率(cal/cm.s.℃)、T:融点(℃)とすると、W=P/(Tλ)×100の関係がある。表2に金属材料ごとのW、P、λ、Tを示す。銅と鉄を比較すると銅は27倍も溶接が困難なことがわかる。熱伝導率は如何に予熱が必要かを物語る。銅の予熱温度が500℃以上となると輻射熱が大きく溶接作業者が耐熱服を着ていても20〜30分間が限界であり、作業者は高温にひたすら耐えて溶接するしかなかった。表3に各金属材料のW、P、λ、Tの値を示す。
各金属材料のW、P、λ、Tの値
Figure 2014004621
特開63−123571号広報「ガスシールドアーク溶接法」において、シールドガスとして帯電ガスを用いたガスシールドアーク溶接法によってスパッタを減少させる方法が示されている。この方法によればある程度のスパッタの減少は認められる。しかしながら、配設されている磁石は2000〜3000ガウス/個のフェライト磁石が60〜100個程度であり、トータルの磁力はせいぜい30万ガウスレベルにしかならず、シールドガス(CO2)に十分な帯電量を付与できないためにスパッタの減少は限定的であった。また、シールドガスはCO2もしくはCO2に複数のシールドガスを混合したもの使用する記載はあるが具体的なシールドガスの混合方法は示されていない。CO2やArやHeをそれぞれ1種類だけでシールドガスとして使用する場合は、帯電効果は認められるが、複数のシールドガスを混合した場合は、混合が不完全であると混合シールドガスの不意均一さのためにシールドガスのガス密度や帯電量にバラつきが生じるためアーク電圧が安定せず逆にスパッタを激しくする問題がある。しかしながら、Ar、Heの混合シールドガスを使用するTIG溶接、CO2を使うCO2溶接、80%Ar+20%CO2のMAG溶接、4〜6種(H2+N2+CO2+He+O2+Ar)の混合シールドガスを用いるレーザ溶接などは、複数のガスを混合することで個々のガスの持つ優れた性質を総合的に利用すするものであるが、100%の能力を出し切っていない。単独ガスのArやHeやCO2を帯電装置に通すことですでに+αとしての加算エネルギをもらうためアークピンチ効果が増加しスパッタが減少し従来溶接の15%〜20%の能力アップとなる。例えば、CO2溶接においてCO2に帯電させることで、25kg/7時間の溶接速度が可能となる。シールドガスを複数混合して帯電させることにより、さらなるスパッタ減少や溶接速度向上につなげることができる。
ガス帯電を効率化するために本発明者は、特願2012−133565号広報「帯電装置」を発明した。この帯電装置は、ネオジ磁石を回転円板と固定円板に取り付け、お互いに相対運動させることにより磁力線の交差回数を増加させたり、ガスを強力に撹拌したりしてガスの帯電効率を向上させるものである。この帯電装置でシールドガスや気化フラックスに帯電させることによりアーク電圧をアップし、アーク温度をアップすることにより銅の予熱温度を低減できる。
本発明者は、特願2012−11853号広報「TIG溶接による肉盛り方法」において、硬化肉盛り材をTIG溶接する方法において、シールドガスはCO2を50〜80v%含有し、残りはAr又はHe又はN2又はこれらを混合器で混合したガスを20〜50v%含有した混合シールドガスを気化装置に充填した液体フラックスに吹き込んで、気化フラックスを生成し、該気化フラックスをトーチに導いて溶接面に吹き付けながら溶接するTIG溶接方法を発明した。気化装置から溶接トーチまで気化フラックスを気送する間に、気化フラックスが配管内に析出しないようにネオジ磁石を組み込んだ中継器を配設している。この中継器は、特開2010−269370号広報「厚板材の切断方法」に示した中継器と同様なものであり、中継器には少なくとも30kガウス以上の磁力を有するように複数のネオジ磁石を配置し、磁石ネオジ磁石と溶断ガスの接触面積を広げるために、中継器の中に多くの折り返しを設けたり螺旋形にしたりして中継器の中の溶断ガス流路をできるだけ長くしている。溶断ガスは気化装置に充填した液体フラックス中に吹き込んだものであり、液体フラックスが気化した気化フラックスを含有していることから、気化装置から切断トーチまでの配管中に気化フラックスが析出しないようにしたものである。特開63−123571号広報や特願2012−133565号広報の帯電装置と同様に気化フラックスに帯電せしめてアーク電圧をアップしスパッタを減少させる効果とともに溶接トーチまでの配管内に気化フラックスが析出しないようにする効果がある。しかしながら、中継器の磁力は高々30kガウスであり、シールドガスに帯電せしめてアーク電圧を高めるためのものではなかった。また、特願2012−11853号広報記載の混合器は縮径のベンチュリー部に同時に複数のシールドガスを注入する構造であり圧力損失が大きく、一度に大量のガス注入ができない問題があった。
特開63−123571号広報「ガスシールドアーク溶接法」 特願2012−133565号広報「帯電装置」 特願2012−11853号広報「TIG溶接による肉盛り方法」 特開2010−269370号広報「厚板材の切断方法」 特開2009−233741号広報「液体フラックス気化装置」 特願2011−246151号広報「半自動アーク溶接」 特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」 特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」 特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」 特開2011−088180号広報「溶接用フラックスと溶接法」 特開2011−098367号広報「溶接肉盛り用フラックスと溶接肉盛り法」 特願2010−165565号広報「液体フラックス」
分子の世界、(株)化学同人 先端溶接工学、共立出版(株) 触媒の働き、(株)化学同人 電波読本、(株)クリエイト・クルーズ アーク溶接の物理、(株)アグネ 溶接接合技術入門、産報出版(株)
CO2溶接、MIG溶接、MAG溶接、TIG溶接、レーザ切断などは単独のArやHeのようなイナートガスもしくはN2、H2、O2、CO2のような分子ガスもしくはこれらの混合ガスを使用する。混合ガスを使用する最大の理由は、分子が原子に解離する際の分子解離熱にてアーク電圧が上昇するためである。通常数種のシールドガスを同じボンベに入れて貯蔵すると比重の差にて分離する欠点がある。また、従来のガス混合方式ではがスの比重差のため十分に混合できずアーク電圧上昇効果が低かった。即ち、アーク電圧やアーク温度を上昇させるには複数のシールドガスを均一に混合し、この混合シールドガスにあらかじめ帯電させることが必要である。また、銅の溶接においては、500℃以上の予熱温度が必要であり、輻射熱が大きく溶接作業者が耐熱服を着ていても20〜30分間が限界であり、作業者は高温にひたすら耐えて溶接するしかなかった。銅の予熱温度を抑えるには溶接入熱を多くするため溶接電流を上げてアーク温度を上げる方法があるが、溶接電流値は400Aが限界であった。
溶接電流値を上げることなくアーク温度をアップするための課題は以下である。(1)アーク温度上昇効果の少ないArやHeなどの原子イナートガスに、温度上昇効果の高い分子イナートガスを混合する混合器を応用する。また、Heのような比重の小さなイナートガスとCO2のような比重の大きなイナートガスを均一に混合するために混合器を応用する。(2)イナートガスと混合するために、帯電性がよくプラズマになりやすい液体フラックスのガス化方法を応用する。(3)銅溶接に最適な液体フラックスの成分の配合比を具現化する。(4)イナートガスと液体フラックスを気化せしめた気体フラックスを混合した気化フラックスに効率よく帯電するために帯電装置を応用する。(5)気化フラックスの水分を効率よく除去する方法を具現化する。(6)回転羽根を備えた溶接トーチを使用して気化フラックス(イナートガスと気体フラックスの混合ガス)に回転を付与する方法を応用する。本発明は以上の課題を解決し、アーク電圧、アーク温度を上昇させることにより、スパッタの低減、溶接速度の向上、銅の予熱温度低減を実現することにある。
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを比重の大きな順に注入するようにした混合器で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、ネオジ磁石を回転可能に配設した帯電装置に通し帯電せしめた後に、溶接トーチに導いて溶接することを特徴とするガスシールドアーク溶接法である。
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを請求項1記載の混合器で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、液体フラックスを充填した気化装置に吹き込んで、前記液体フラックスを気化せしめて気体フラックスとし、該気体フラックスと前記混合シールドガスが混合した気化フラックスを、請求項1記載の帯電装置に通し帯電せしめた後に、溶接トーチに導いて溶接することを特徴とする銅の溶接肉盛り方法である。
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを請求項1記載の混合器で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、請求項2記載の液体フラックスを充填した請求項2記載の気化装置に吹き込んで、前記液体フラックスを気化せしめて気体フラックスとし、該気体フラックスと前記混合シールドガスが混合した気化フラックスを、除湿器に通し水分を除去した後、請求項1記載の帯電装置に通し帯電せしめた後に、溶接トーチに導いて溶接することを特徴とする銅の溶接肉盛り方法である。
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを請求項1記載の混合器で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、請求項2記載の液体フラックスを充填した請求項2記載の気化装置に吹き込んで、前記液体フラックスを気化せしめて気体フラックスとし、該気体フラックスと前記混合シールドガスが混合した気化フラックスを、請求項3記載の除湿器に通し水分を除去した後、請求項1記載の帯電装置に通し帯電せしめた後に、前記気化フラックスに旋回力を付与するための旋回羽根を配設した溶接トーチに導いて溶接することを特徴とする銅の溶接肉盛り方法である。
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、請求項1記載の混合器は、シールドガスの流れ方向に対して、上流から下流に向けて口径が小さくなる異口径の複数の注入室を有し、それぞれの前記注入室に注入されたシールドガスを混合する1次混合室と、該1次混合室と捩じれ角を持つ複数の拡散流路を介して連結される2次混合室と、該2次混合室と捩じれ角を持つ複数の収束流路を介して連結される3次混合室と円筒形ネオジ磁石を配設していることを特徴とする混合器である。
第1の解決手段による効果は、(1)比重の異なる複数のシールドガスを効率よく混合できる、(2)どのような種類のシールドガスの組み合わせでも効率よく混合し帯電可能である、(3)シールドガスに静電気を帯電せしめることによりアーク電圧をアップできるので溶接速度が向上する、(4)シールドガスが静電気を帯電しているのでアーク柱のピンチ力がアップしスパッタが減少することである。
第2の解決手段による効果は、(1)気化フラックスのフラックス機能により溶融金属の表面張力減少や清浄化作用や酸化防止作用が生まれきれいなビードを得ることができる、(2)気化フラックス(混合シールドガスと気体フラックスの混合ガス)が静電気を帯電することによりアーク電圧がアップし溶接速度が向上する、(3)アーク柱のピンチ力がアップしスパッタが減少することである。
第3の解決手段による効果は、除湿器を通すことで液体フラックスの溶媒に含有されている水分を吸収できるので、溶接面の気孔発生や水素による脆化を防止できる。
第4の解決手段による効果は、シールドガスに回転力を付与できるので直進性がアップしシールド機能を高めることができる。
第5の解決手段による効果は、混合器に、比重の大きなシールドガスから順に比重の小さなシールドガスを吹き込むことにより、比重の異なる混合シールドガスを効率よく混合できることである。
はガスシールドアーク溶接法の全体フロー図である。 は混合器である。 は帯電装置である。 は回転板のネオジ磁石取り付け図である。 は気化装置である。 は気化装置のネオジ磁石の取り付け図である。 はアーク溶接の正極性と逆極性を示す。 は除湿器の断面図を示す。 は溶接トーチの断面図を示す。
本発明の実施形態を、図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7、図8、図9に基づいて説明する。
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを比重の大きな順に注入するようにした混合器10で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、ネオジ磁石80を回転可能に配設した帯電装置20に通し帯電せしめた後に、溶接トーチ200に導いて溶接するガスシールドアーク溶接法である。
図1において、複数のシールドガスは混合器10で混合され混合シールドガスとなる。シールドガスはガスボンベ40やガス基地から配管で混合器10に供給される。ガスボンベ40(41、42、43、44)のシールドガスは比重の大きな順に混合器10に注入される。例えば、ガスボンベ41はCO2、ガスボンベ42はN2、ガスボンベ43はAr、ガスボンベ44はHeとなる。比重の小さなガスと大きなガスを一度に注入すると比重の小さなガスが優先的に多く流れる問題があり各ガス特性が生かされない問題が生じる。従って、一番比重の大きなガスボンベ41のシールドガスが最上流に注入され、小さな比重のガスボンベ44のシールドガスが最下流に注入される。混合するシールドガスの種類が増えたら、ガスボンベ40や混合器10への注入口11、12、13、14を追加すればよい。
混合器10を出た混合シールドガスは、複数のルートで帯電装置20に導かれる。(1)第1の手段においては、配管100、バルブ110、配管101を経由して帯電装置に導かれる。あるいは、(2)第2の手段においては、配管100、バルブ111、配管102を経由して気化装置50に導かれ、配管103、バルブ112、配管104、バルブ113、バルブ114を経由して帯電装置20に導かれる。あるいは、(3)第3の手段においては、配管100、バルブ111、配管102、気化装置50、配管103、バルブ112、配管105、バルブ115を経由して除湿器60に導かれ、バルブ114、配管101を経由して帯電器20に導かれる。
複数のシールドガスをそれぞれ直接帯電器20に入れて混合しながら帯電させてもある程度は従来に比べ混合率や帯電率はアップする。しかし、本発明の混合器10は、複数のシールドガスを比重の大きいものから順に注入することにより、比重の大きなシールドガスが比重の小さなシールドガスを吸引するので強制的に撹拌され、比重差が均一になる。混合シールドガスの比重差(Ar:He:N2=10:1:7)が解消されるので、アーク電圧はアップし安定する。そのため銅などのように窒化の心配のない母材の溶接は、N2を含む混合シールドガス(N2:60%、Ar:20%、He:20%)を使用できるので従来のHe単一のシールドガスと比較すると30%近い低コストのシールドガスを用いた溶接が可能となる。混合器10で完全に混合した混合シールドガスを次に帯電器20に注入する。帯電器20の中には、ネオジ磁石(3.5kガウス/個)を1000個以上配設して強磁場を形成している。ネオジ磁石80は回転円板24と固定円板25に配設されている。回転円板24が回転することにより、混合シールドガスが強力に撹拌されると同時に、ネオジ磁石80が次々にシールドガスの分子を断ち切りながら荷電するので効率的に帯電できる。シールドガス中の分子ガスを原子状態とすることでアーク電圧を強制的にアップさせることができる。
帯電装置20の中に、給気口20aからシールドガスを強制的に送り出すと、混合シールドガスが+、−の強磁場を直角に横切り、磁界が分子ガスのCO2、N2、O2の分子間に割って入ることで分子結合力を寸断し、CO2→CO+O、N2→N+N、O2→O+Oの原子ガスとなる。帯電した混合シールドガスがアーク柱で再分子ガスとなる際に分子解離エネルギを放出してアーク電圧を上昇させるが、イナートガスのArやHeの原子ガスと混合をさせることで、軽いArやHeによる強制対流効果によりアークを強制的に冷却してアーク柱を絞る作用で熱的ピンチ効果が生まれ、一段とアーク電圧は上昇する。回転板24は混合シールドガスに回転力を付与するので、混合シールドガスは遠心力によりケーシング26側に飛ばされる。さらに、固定円板25が邪魔板となりケーシング26側に飛ばされた混合シールドガスは回転軸21側に押し戻され次の間隙20cに入る。このような運動を繰り返しながらシールドガスは強力に撹拌されながら帯電して排気口20bから排出される。表4に解離反応と各エネルギ値を示す。
解離反応と各エネルギ値 (eV)
Figure 2014004621
図3に帯電装置20の断面図を示す。帯電装置20は本発明者が特願2012−133565号広報に開示したものを使用できる。混合シールドガスや気化フラックスは給気口20aから帯電装置20に注入される。例えば、混合シールドガスは回転円板24と固定円板25の間をジグザグに通って排気口20bから排出され溶接トーチ200に供給される。回転円板24は回転軸21にキー21aとスペーサ27によって固定されている。固定円板25は円筒タンク26に固定されている。回転円板24と固定円板25にはそれぞれネオジ磁石80が取り付けられている。ネオジ磁石80の総数は800〜1200個である。ネオジ磁石80は3.5kガウス/個である。回転円板24の回転数は10〜1800回転である。回転軸21は駆動装置23により回転される。駆動装置23は速度可変モータやモータと減速機とプーリなどの変速機構の組み合わせで変速することができるが、回転円板24を10〜1800rpmの範囲内で所定の回転数で回転できる方法であればよい。
図4は回転円板24のA−A断面図である。ネオジ磁石80は回転円板24に埋め込んで蓋29をして皿ネジ29aで固定している。固定円板25のネオジ磁石80の取り付け方法も回転円板24と同様にする。ネオジ磁石80は回転円板24の中心部の取り付け密度を大きくして遠心力の影響をできるだけ小さくするのがよい。回転円板24や固定円板25はAL2017−T高力アルミニウム板やステンレス、チタン、鋼板などが使用できる。回転円板24は高速回転するので軽量化してGD2を軽減するのがよい。
図7はアーク溶接の極特性を示している。アーク溶接は通常交流、直流のいずれかによって行われるがその極性によって溶接に少なからぬ影響を与える。電極(溶接棒)側を−とし母材300側を+とする正極性はアーク集中性がよく溶け込み深さも深いため厚板の溶接に有効である。また陰極から熱電子が放出される時、離脱に必要なエネルギをとるため電極の発熱が少なく消耗しにくい特性があるため一般のCO2溶接やMIG溶接に適している。対して逆極性は溶接棒が+で母材が−である。溶け込みが浅いため比較的薄板の溶接に向いている。溶融幅は広く交流の+、−のサイクル変換は母材表面の酸化膜の浮上作用として働くためアルミニウム合金の溶接に用いられる。電極は陽極となり加熱されやすくホットワイヤになりやすいため消耗が早い。TIG溶接のように交流でアルミニウムやアルミニウム合金を溶接する場合は+、−の反転による磁気風の原因を作るため酸化膜の浮上が簡単となる。交流は直流と比較すると正極性と逆極性が常に反転するためすべて中間程度の溶け込みとビード幅となる。帯電装置20は、シールドガスを+や−に自由に変化できるので、正極性(溶接棒)の場合はシールドガスを−に、逆極性(溶接棒)の場合はシールドガスを+にしてアーク電圧と溶接速度をアップしスパッタの少ない溶接ができる。混合シールドガスもしくは気化装置50を通過した気化フラックスは3.5kガウス/個のネオジ磁石を800〜1200個配設した帯電装置20の中に入り、回転円板24と固定円板25のネオジ磁石80が相対運動することによりフレミングの左手の法則で静電気が溜まっていく。帯電装置20の最終固定円板28のネオジ磁石80のN−Sの向きにて正極、逆極が決まる。固定円板25の極と出口固定円板28の極をN―Nとすることで逆極性となり、溶接棒ワイヤ71が+でシールドガスが+のため反磁場によるピンチ効果にてスパッタ発生が極端に減少し、溶け込みの深い溶接面を得ることができる。また、固定円板25の極と出口固定円板28の極をN−Sとすることで正極性となり、溶接棒ワイヤ71が−でシールドガスが−となり反磁場のピンチ効果にてスパッタが減少する。出口固定円板28の表と裏を反転させることで正極性と逆極性に対応可能である。
静電気を帯電装置20で帯電した後、導体に接触して静電気が逃げないようにすることにより帯電効果を高めることができる。そのため帯電装置20の内面や溶接トーチ200までの配管106内面を絶縁体で被覆する。絶縁体は絶縁性のある塗料でもよい。電気絶縁塗料にはJISC2350(1983)で規定されているエナメル導線用ワニスWS40や変性エポキシ樹脂を主成分とするEP−21などがある。帯電装置20から溶接トーチ200までの配管63をゴムホースや樹脂ホースにすることで絶縁性を確保してもよい。帯電装置20の回転板24や固定板25やスペーサ27の表面にも絶縁塗料を塗布することでさらにシールドガスの帯電率をアップできる。混合シールドガスに静電気を帯びさせてアーク電圧をアップさせる方法は初めてである。
混合シールドガスとしては、100%CO2、80%Ar+20%CO2、Ar+N2、He+N2、100%Ar、100%Heなどがある。レーザ切断ガスとして、N2+CO2+N2+He+O2などがあるが分子ガスを使うのはアーク電圧をアップさせるためである。分子ガスを原子に解離するためには、表3のようにかなりのエネルギを要する。不活性ガスとしてのArとHeは単独シールドガスとしてはアーク電離も高いため溶接性はよいが銅やアルミなどのように比熱の大きい材料の溶接は熱伝導率が高いので溶接時の抜熱を補うためにアーク電圧を上昇させたいニーズがある。従来、溶接作業においては、混合シールドガスに分子ガスをいれてアーク電圧アップを図っている。
溶接性指数が最も大きい部類の銅の溶接は従来、予熱500℃前後、シールドガスはHeかN2であった。これはアーク電圧を高くできるためであるが、アーク電圧を高くしても、N2→15.6eV→29.6eV、He→24.3eV→54.4eV、Ar→15.7eV→27.6eVとすることは100%無理である。混合シールドガスに分子ガスが入ってもプラズマ状態となるのは10〜15%である。アーク温度は500〜7000℃の高温中であるが、太陽のように高温、高圧、高磁場でようやく分子は100%原子となる。通常使用している最大15%のプラズマ原子ガスではアーク電圧は分子ガスを入れてもHe単独で24.3×1.15=27.9eV(約28eV)である。予熱温度を500℃から425℃に下げられる程度である。予熱温度を300℃とするためにはHe+N2の混合ガスを用いて34eVまで上昇させる必要がある。3.5kG/個のネオジ磁石を800〜1200個使用して、1800rpmの高速回転にて初めて可能になった。図2の混合器10の出口の混合シールドガスの静電気は0.3kVであるが、帯電装置20の出口では5〜20kVを一瞬に振り切る帯電量である。アーク電圧をアップするには5kV以上あれば十分であるが安定的に10kV以上の静電気を帯電している。静電気測定器は測定範囲0〜20kV仕様の市販品を使用した。
シールドガスの混合比をN2:60%、Ar:20%、He:20%とすると、N2→1665×0.6=999、Ar→2085×0.2=417、He→1860×0.2=372であり、999+417+372=1788となり比較的粘性が高い。そのため高磁場、高速回転中での帯電が比較的簡単である。シールドガスの粘性を表5に示す。
シールドガスの粘性 P(ポアズ)=gcm−1−1
Figure 2014004621
各種シールドガスの自己拡散係数は温度が一定ならば密度と圧力に反比例する。シールドガスの混合比をN2:60%、Ar:20%、He:20%とすると、(1)T/Kを計算する。N2→298.2×0.6=178.9、Ar→298.2×0.2=59.6、He→296×0.2=59.2であり、T/K=178.9+59.6+59.2=297.74である。(2)自己拡散係数D/cm−1を計算する。N2→0.212×0.6=0.1272、Ar→0.178×0.2=0.0356、He→1.56×0.2=0.312であり、自己拡散係数D/cm−1=0.1272+0.0356+0.312=0.4748となる。表6に気体の自己拡散係数を示す。
気体の自己拡散係数 760mmHg=101325Pa
Figure 2014004621
溶接シールドガスは溶接アーク柱を周囲の空気からシールドし、かつ熱伝導体となって相手溶接金属の熱保持を図る。水素は熱伝導率が高いことから良好な熱伝導体となるが、溶接金属に侵入すると水素脆性などの水素特有の欠陥を生じるので使用できない。水素を100%還元反応できないため溶融金属への侵入を遮断するのは極めて困難なことから、Heがシールドガスの主力として使用される。3種混合のシールドガスの熱伝導率は約600でありArやCO2の約3倍である。3種混合ガスでは、N2を60%、Heを20%、Arを20%混合したものが多用される。従って、325.2×0.6(N2)+1794×0.2+223.3×0.2=598.78→約600K/10−4Wm−1−1となる。
各種ガス単体の気体の熱伝導率を表7に示す。
各種ガス単体の熱伝導率(K/10−4Wm−1−1
Figure 2014004621
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを請求項1記載の混合器10で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、液体フラックス90を充填した気化装置50に吹き込んで、前記液体フラックスを気化せしめて気体フラックスとし、該気体フラックスと前記混合シールドガスが混合した気化フラックスを、請求項1記載の帯電装置20に通し帯電せしめた後に、溶接トーチ20に導いて溶接することを特徴とする銅の溶接肉盛り方法である。
図5は液体フラックス90の気化装置50である。気化装置50は特開2009−233741号広報「液体フラックス気化装置」や特願2011−246151号広報「半自動アーク溶接」に記載しているものと同じ原理である。気化装置50は気化容器51と気化容器51にシールドガスを供給する給気管(配管)102と、生成した気化フラックスを取り出す排気管(配管)103及び複数の磁石80を配設した構成である。排気管103を出た気化フラックスはゴムホースや配管で帯電装置20に送られる。磁石80は気化容器51内で気化フラックスの流れ方向に対して横断する方向に配設されている。磁石80はネオジ磁石80を用いている。気化容器51には複数の貫通孔52aが設けられた整流板52が取り付けられ、気化装置50に吹き込まれた混合シールドガスや気体フラックスを整流する。整流板52には支持棒53が取り付けられ、支持棒53にはネオジ磁石80を取り付けるための複数のホルダー54が取り付けられている。ホルダー54はスペーサ55により適宜間隔に配設されている。図6に示すように、ホルダー54には複数の突起54aがあり、突起54aの間をシールドガスや気体フラックスが通過する。ホルダー54の突起54aはお互いに重なり合わないようにすることにより、シールドガスや気体フラックスが気化容器51内をジグザグに通り抜けて上昇するようにしている。気化フラックスはネオジ磁石80を通り過ぎる間に励起され帯電する。整流板52にはSUS製の極細ネット56を載置して気化フラックスを整流するとともに水滴状の粒を捕集して液体フラックス90に戻して再気化するようにする。液体フラックス90は充填管57から充填される。気化容器51に残留した液体フラックス90はドレン抜き管58から排出する。気化装置50にはレベル計、温度計、圧力計、ヒーターなどを使用状況に応じて付加してもよい。
液体フラックス90は、本発明者が発明した各種液体フラックス90を使用することができる。液体フラックス90はアルコールやアセトンの溶媒に磁界かけ電流を流しながら電解質を溶解したものであり、溶接母材、溶接棒、溶接方法など様々な溶接条件に応じて作り分けることが可能である。
液体フラックス90は、例えば、特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」における、「ロウ付けなどに使用するフラックスを適宜混合して前処理した混合フラックスを、アルコールやアセトンの溶媒に8〜25重量%混合して、超臨界装置内において温度300〜400℃、圧力34.3〜44.1MPaで溶解し液体フラックスとし、該液体フラックスに気体を吹き込んで気化させるガス切断用気化フラックス」を使用できる。ガス切断用の気化フラックスであるが、切断と溶接は金属を溶融させる点で共通しており、冶金的な表面張力の低減や清浄化作用、酸化防止作用が必要であり溶接にも応用可能である。特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」における、「アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Zn、Seなどの原子の内、少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールやアセトンなどの溶媒中で磁場をかけるとともに、該溶媒を攪拌しながら溶解する液体フラックス」を使用できる。特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」における、「アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Znの原子の内、少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールなどの溶媒を入れた容器中で、磁場をかけるとともに該溶媒を回転しながら溶解する液体フラックスの製造方法において、溶媒中に電極を挿入し電圧を付加するとともにパルス電圧を付加する液体フラックス」を使用できる。特開2011−088180号広報「溶接用フラックスと溶接法」における、「アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Zn、Seなどの原子の内少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールやアセトンなどの溶媒に溶解して生成した液体フラックス」を使用できる。特開2011−098367号広報「溶接肉盛り用フラックスと溶接肉盛り法」における、「前記液体フラックスはアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Zn、Seの原子の内少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールやアセトンの溶媒に溶解して生成した液体フラックス」を使用できる。特願2010−165565号広報「液体フラックス」における、「カリウム(K)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、窒素(N)のいずれかを含むフッ化物の中から1種もしくは2種以上の前記フッ化物を選択し、フッ素(F)含有量が30〜70重量%となるように調合した調合フッ化物をアルコールもしくはアセトンの溶媒に溶解した液体フラックス」を使用できる。
銅の溶接で最大の効果が出るのはガスアーク電圧をアップすることである。以下に各ガスの電子をはぎ取る際の解離エネルギを示す。eVは電子1個をはぎ取る際の必要なエネルギ、eVは電子2個をはぎ取る際に必要なエネルギである。He:25eV、54eV、Ar:16eV、28eV、N:15eV、30eV、C:11eV、24eV、O:14eV、35eV、B:8eV、25eV、Na:5eV、47eV、K:4eV、32eV、Li:75eV、F:17eV、35eVである。溶接金属にあったフラックスを液体フラックスとして作ることが可能である。1つのフラックスで万能なものはなく金属の主成分と融点に合わせて作りメタノール+アセトン中に最大30wt%程度の濃度にて溶解させる。銅溶接用フラックスは、H、B、C、O、K、Na、Liなどの入った電解質をアルコールやアセトン中に最大濃度35wt%で溶解している。液体フラックス90に混合シールドガスを吹き込んで気体フラックスを生成する。この気体フラックスと混合シールドガスが混合したものが気化フラックスである。この気化フラックスを帯電装置20に通して気化フラックスに帯電させる。帯電装置20は3.5kガウス/個のネオジ磁石を配設した回転円板24と固定円板25を対向させて、回転円板24を最大1800rpmで高速回転することで600万ガウスの強磁場帯を形成する。Na2B4O7・10H2O、H3BO3、KHF2、KBF4、KFなどの多原子分子でできた電解質を混合しアルコールやアセトンなどの溶媒中に磁界をかけ電流を流しながら溶解する。電解質が最大濃度35wt%溶解した液体フラックス90中に混合シールドガスが通ることで、気体フラックスが最大5vt%分離イオン化して混合する。600万ガウス強磁場帯で電磁帯電した気化フラックスにてアーク柱を絞ることで従来の2倍以上の35eV電圧の手溶接が可能となった。従来の溶接シールドガスとして使えるのはCO2、O2、N2、Ar、Heが主であり単体または混合ガス中に分子ガスを入れて帯電装置20を通した場合、eVまでの上昇はアップするもそこまでである。気化フラックスを使うことはH、B、C、O、K、Na、Liなどの単品イオン化電離エネルギを加熱できる。
図5に示す気化装置50に充填された液体フラックス90に混合シールドガスを吹き込むと、液体フラックス90は気化して気体フラックスとなる。この気体フラックスとシールドガスが混合したものが気化フラックスである。気化フラックスはシールドガスに最大5v%の気体フラックスを混合している。気体フラックス中のNaやKは最外殻に1個の電子を持ち不安定なためこの帯電装置20の中を通ることで簡単に電離が起こり、Na:5.1eV、K:4.3eVのように電離エネルギをシールドガス中に出す。不活性ガスとしてのArやHeは単体のシールドガスとしての電離エネルギは高いが、分子が原子になるときのような電離エネルギはない。そこで、ArやHeにN2、CO2、H2、O2などの分子ガスを入れ混合シールドガスとして帯電装置20に注入することで、解離誘導起電力を与えられ積乱雲状態の混合シールドガスとなる。また、混合シールドガスと気体フラックス(NaやKなどの元素を含有)が混合した気化フラックスを帯電装置20に注入することで、解離誘導起電力により気体フラックスの溶媒であるアルコールに含有されているラジカル水酸基OHがO+Hに再分離する際、H→15.4eVの解離エネルギを放出する。
帯電装置20で帯電させた気化フラックスを吹き付けながら溶接することにより従来の溶接の問題点を解決できる。(1)液体フラックスはAL、Si、Ti、Bなどの脱酸機能を有する元素を含有するため溶接中の金属酸化と脱炭を低減できる、(2)銅と炭素鋼、ステンレスと炭素鋼などの異種金属の溶接性が向上する。(3)液体フラックスはPH7の中性のものも製造可能であり、しかもフッ化物などの添加により溶融金属の表面張力除去ができるため肉盛り厚みを薄く平滑に出来る効果が生まれる。(4)磁場によるピンチ効果、気化フラックス吹き付け効果で表面張力除去による円滑なスプレイ移行となるためスパッタが低減するとともに、落降中の溶滴一粒ずつにフラックスコーティングされるため美しくビードが重なり欠陥のない溶接ビードとなる。(5)複合ワイヤには脱酸剤としてAL、Si、Mnを含有しているため、CO2溶接では、CO2が分解して酸素が発生するのでテルミット反応によるスパッタが生じるが、気化フラックス中のホウ酸(H3BO3)が溶滴をガラスコーティングするのでテルミット反応を抑えスパッタを低減する。(6)厚板溶接ではフラックス巻き込みによる欠陥が出ないようにするため、第1層〜第3層目までは通常TIG溶接やMIG溶接を使用するが、気化フラックスを吹きつけながら炭酸ガス溶接することでフラックスを巻き込まない無欠陥溶接が可能となるのでTIG溶接やMIG溶接の代用が可能である。しかもTIG溶接やMIG溶接に比べて溶接速度を数倍に向上させることができる。(7)CO2溶接でTIG溶接やMIG溶接の代用が可能となるので、イナートガスに高価なアルゴンガスを使用する場合に比べて炭酸ガス溶接で代用することにより大幅なコスト削減となる。(8)腐食環境にあるボイラチューブにインコネルやハステロイの肉盛りをすると3〜4年の寿命が10〜12年となるように極めて効果が大きいが、このような肉盛り溶接では登り溶接が多いため溶接効率が極めて悪くなる。しかしながら、液体フラックスを吹きつけながら溶接することにより作業能率が15〜20%向上する。
帯電装置20でネオジ磁石80を高速回転させ混合シールドガスや気化フラックスを強力に混合、撹拌しながら、電磁誘導起電力を分子や原子ガスに乗せる。混合シールドガスや気化フラックスが同極電子を帯びると互いに反発し励起エネルギとなって溶接トーチ200先端部まで流れる。溶接ワイヤ側マイナス(−)に対して、混合シールドガスや気化フラックスにプラス(−)の電子を印加するとスプレイ移行溶滴となりかつ溶接電圧をアップさせるため溶接棒71の溶け込み率や溶接スピードがアップしスパッタの少ない溶接ができる。従来のように高価なArやHeのように第18族のイナートガスを大量に使用する必要はなく、安価なCO2に+αとしてHeやArを加算するだけで溶接効率がアップしスパッタが低減できるので品質向上に繋がり溶接コストを低減できる。多層肉盛りなどの際の酸化スケールの浮き上がりを磁気風で効果的に浮上させることが可能となった。
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを請求項1記載の混合器10で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、請求項2記載の液体フラックス90を充填した請求項2記載の気化装置50に吹き込んで、前記液体フラックスを気化せしめて気体フラックスとし、該気体フラックスと前記混合シールドガスが混合した気化フラックスを、除湿器60に通し水分を除去した後、請求項1記載の帯電装置20に通し帯電せしめた後に、溶接トーチ200に導いて溶接することを特徴とする銅の溶接肉盛り方法である。
図8は除湿機60である。液体フラックス90はアルコールやアセトンの溶媒に化学結合した各種のイオン結合物(電解質)を強磁場中で励起エネルギと電離エネルギを与えて最大35wt%溶解している。アルコールを溶媒として使用する場合は、例えばメタノールは1級品のためメーカーにもよるが3〜5%の水分を含有している。メタノールを溶媒とする気化フラックスを溶接シールドガスとして使用する場合は、過剰水分は、H2O→H+OHに分離するため巣やピンホールの原因となる。従って、気化装置50を出た気化フラックスを、配管103を経由して除湿器60に通して、気化フラックス中に含有される水分を除去した後、配管104を経由して帯電装置20に導く。除湿器60は除湿剤61の交換を容易にするために、容器62をボルト66などで複数に分割できるようにするのがよい。下部と上部に多孔板64を備えた複数のバスケット63中に除湿剤(シリカゲル)61を入れて、バスケット63を順次通過させることにより気化フラックス中の水分を完全に除去する。除湿剤61を入れたバスケット63を通過することにより圧力損失を生じるので、気化フラックスを軸流ファン65で除湿機60内に押し込む。
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを請求項1記載の混合器10で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、請求項2記載の液体フラックス90を充填した請求項2記載の気化装置50に吹き込んで、前記液体フラックス90を気化せしめて気体フラックスとし、該気体フラックスと前記混合シールドガスが混合した気化フラックスを、請求項3記載の除湿器60に通し水分を除去した後、請求項1記載の帯電装置20に通し帯電せしめた後に、前記気化フラックスに旋回力を付与するための旋回羽根を配設した溶接トーチ200に導いて溶接することを特徴とする銅の溶接肉盛り方法である。
図9に示す溶接トーチ200は、本発明者が発明した特願2012−54465号広報「溶接トーチ」を使用できる。シールドガスを用いるアーク溶接用の既存の溶接トーチ201先端近傍をフード222に収納し、該フード222は前記溶接トーチ200に固定されたスリーブ220に取り付けた支持体220で支持されている。該スリーブ220に軸受213を嵌挿し、該軸受213に回転円筒214を嵌挿し、該回転円筒214の外周部に複数の駆動羽根211を配設し、前記回転円筒214の内周部に複数の旋回羽根210を設けている。前記フード222にエア配管212を貫通せしめ、該エア配管212から前記駆動羽根211に向けてエアを噴射し前記駆動羽根211に回転力を付加することにより、前記回転円筒214と前記旋回羽根210を回転せしめる溶接トーチ200である。
スリーブ220は既存の溶接トーチ201に取り付けたサポート221で支持されている。スリーブ220には軸受213を嵌挿している。軸受213は2個装着し、嵌挿した回転円筒214の安定性を高めている。回転円筒214の外周部には駆動羽根211を取り付けている。回転円筒214の内周部には旋回羽根210が取り付けられている。エア配管212からエアを吹き付けることにより駆動羽根211が回転し、その回転力で回転円筒214や旋回羽根210が回転する。旋回羽根210が回転することにより噴出孔230から噴出してくる気化フラックスに旋回力を付与する。旋回力を付与された気化フラックスは直進力を与えられるので溶接面に強く押し付けられ、旋回しながら大気をシールドする。
旋回羽根210を有する溶接トーチの効果は以下である。(1)フード222を吸引装置に連結することにより溶接ヒュームを吸引できる。(2)エア配管212から吹き出したエアの吸引力や吸引装置によって吸引された溶接ヒュームやシールドガスが駆動羽根211に衝突し駆動羽根211を回転させるので回転筒214が回転し、旋回羽根210が回転する。(3)エアの圧力や流量を変化させることにより駆動羽根211の回転数や回転トルクを調整できるので、溶接ヒュームの吸い込み量を調整できる。(4)シールドガスの旋回力を調整することによりシールドガスを溶接面に強く吹き付けることができるのでフードの吸引力に負けることがなくなり溶接面を確実にシールドできる。(5)シールドガスに運動エネルギを付加することにより、溶接面のシールド効果がアップするのでシールドガスの使用量を削減できる。(6)溶接ヒュームが効率的に吸引されると同時に金属溶融池表面の表面張力を除去し流動性を向上し、フラックス膜で金属溶融池表面を保護しながら金属溶融池表面を清浄化する。
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、請求項1記載の混合器10は、シールドガスの流れ方向に対して、上流から下流に向けて口径が小さくなる異口径の複数の注入室(10a、10b、10c)を有し、それぞれの前記注入室(10a、10b、10c)に注入されたシールドガスを混合する1次混合室と、該1次混合室10dと捩じれ角を持つ複数の拡散流路10eを介して連結される2次混合室19fと、該2次混合室10fと捩じれ角を持つ複数の収束流路10gを介して連結される3次混合室10hと円筒形ネオジ磁石16を配設していることを特徴とする混合器10である。
図2にガス混合器10の断面を示す。銅溶接を例にして説明する。銅溶接の場合のシールドガスはN2、Ar、Heが主である。主力のN2は比重が1番大きいのでガスボンベ41から圧力調整器(ボンベ標準装備のため図示せず)にて1.2気圧程度に減圧されて注入口11から供給され注入室10aに入る。N2は注入室10aで圧力を回復してから速度をアップし注入室10bに入る。注入室10bには注入口12から2番目に比重の大きいArがガスボンベ42から注入される。ArはN2が形成するベンチュリー効果により注入室10bに吸い込まれN2と完全に混合する。N2とArの混合シールドガスはさらに速度をアップし注入室10bに入る。注入室10bには注入口13からHeが供給される。HeはN2とArが形成するベンチュリー効果により注入室10cに吸い込まれN2とArとHeが完全に混合する。ガス流路15aには円筒形のネオジ磁石16が配設されており、強い磁力で混合シールドガスを励起し帯電させるので混合シールドガスの混合状態が維持される。混合シールドガスは流路15よりも断面積の大きい1次混合室10dで圧力を回復し混合状態を維持し、捩じれ角を有する複数の拡散流路10eを介して末広がりに2次混合室10fに入り圧力を回復する。拡散流路10eの捩じれ角により混合シールドガスは旋回力を付与され2次混合室10fに吹き込まれるので、2次混合室10fでは強い旋回流が発生し混合シールドガスはさらに混合される。2次混合室10fは1次混合室10dよりも断面積が大きいのでここで混合シールドガスは圧力を回復し混合状態が維持される。混合シールドガスは2次混合室10fから捩じれ角を有する収束流路10gを介して3次混合室10hに入る。収束通路10gの捩じれ角により混合シールドガスは強い旋回力を付与され3次混合室10hに吹き込まれるので、3次混合室10hでは強い旋回流が発生し混合シールドガスはさらに混合される。混合シールドガスは3次混合室10hで圧力を回復してからネオジ磁石16を介して流路15bを通り配管100を経由して帯電装置20や気化装置50に送り出される。
10:混合器
10a:注入室
10b:注入室
10c:注入室
10d:1次混合室
10e:拡散流路
10f:2次混合室
10g:収束流路
10h:3次混合室
11:注入口
12:注入口
13:注入口
14:注入口
15:ガス流路
15a:ガス流路
15b:流路
16:ネオジ磁石
20:帯電装置
20a:給気口(混合シールドや気化フラックスの入り口)
20b:排気口(混合シールドや気化フラックスの出口)
20c:隙間
21:回転軸
21a:キー
22:軸受
23:駆動装置
24:回転円板
25:固定円板
26:ケーシング
27:スペーサ
28:出口固定円板
29:蓋
29a:皿ネジ
30:電源
31:ガスバーナ
32:酸素ボンベ
33:プロパンボンベ
40:ガスボンベ
41:ガスボンベ
42:ガスボンベ
43:ガスボンベ
44:ガスボンベ
50:気化装置
51:気化容器
52:整流板
52a:貫通孔
53:支持棒
54:ホルダー
54a:突起
55:スペーサ
55a:貫通孔
56:SUS製極細ネット
57: 充填管
58:ドレン抜き管
60:除湿器
61:除湿剤
62:容器
63:バスケット
64:多孔板
65:軸流ファン
66:ボルト
70:ワイヤリール
71:ワイヤ
80:液体フラックス
81:ホルダー
81a:突起
90:液体フラックス
100:配管
101:配管
102:給気管(配管)
103:排気管(配管)
104:配管
105:配管
106:配管
110:バルブ
111:バルブ
112:バルブ
113:バルブ
114:バルブ
115:バルブ
200:溶接トーチ
201:既存の溶接トーチ
210:旋回羽根
211:駆動羽根
212:エア配管
213:軸受
214:回転円筒
220:スリーブ
221:サポート
222:フード
230:噴出孔
300:母材(電極ホルダ)

Claims (5)

  1. ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを比重の大きな順に注入するようにした混合器で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、ネオジ磁石を回転可能に配設した帯電装置に通し帯電せしめた後に、溶接トーチに導いて溶接することを特徴とするガスシールドアーク溶接法。
  2. ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを請求項1記載の混合器で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、液体フラックスを充填した気化装置に吹き込んで、前記液体フラックスを気化せしめて気体フラックスとし、該気体フラックスと前記混合シールドガスが混合した気化フラックスを、請求項1記載の帯電装置に通し帯電せしめた後に、溶接トーチに導いて溶接することを特徴とする銅の溶接肉盛り方法。
  3. ガスシールドアーク溶接法において、ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを請求項1記載の混合器で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、請求項2記載の液体フラックスを充填した請求項2記載の気化装置に吹き込んで、前記液体フラックスを気化せしめて気体フラックスとし、該気体フラックスと前記混合シールドガスが混合した気化フラックスを、除湿器に通し水分を除去した後、請求項1記載の帯電装置に通し帯電せしめた後に、溶接トーチに導いて溶接することを特徴とする銅の溶接肉盛り方法。
  4. ガスシールドアーク溶接法において、複数のシールドガスを請求項1記載の混合器で混合し、混合シールドガスを生成し、該混合シールドガスを、請求項2記載の液体フラックスを充填した請求項2記載の気化装置に吹き込んで、前記液体フラックスを気化せしめて気体フラックスとし、該気体フラックスと前記混合シールドガスが混合した気化フラックスを、請求項3記載の除湿器に通し水分を除去した後、請求項1記載の帯電装置に通し帯電せしめた後に、前記気化フラックスに旋回力を付与するための旋回羽根を配設した溶接トーチに導いて溶接することを特徴とする銅の溶接肉盛り方法。
  5. 請求項1記載の混合器は、シールドガスの流れ方向に対して、上流から下流に向けて口径が小さくなる異口径の複数の注入室を有し、それぞれの前記注入室に注入されたシールドガスを混合する1次混合室と、該1次混合室と捩じれ角を持つ複数の拡散流路を介して連結される2次混合室と、該2次混合室と捩じれ角を持つ複数の収束流路を介して連結される3次混合室と円筒形ネオジ磁石を配設していることを特徴とする混合器。
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