JP2014002242A - 制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】動的な制御を簡易な構成により行うことができる制御装置を提供する。
【解決手段】光路制御装置100は、所定の入力ポートから入射した光ビームを任意の出力ポートに出射する光スイッチに適用される光路制御装置であって、印加電圧に応じて角度を変化させて光ビームを反射して任意の出力ポートに出射するMEMSミラー10と、MEMSミラー10に対して直流電圧を印加する直流電圧源20及び交流電圧を印加する交流電圧源30と、MEMSミラー10に流れる電流の直流成分及び交流成分を検出する電流計40と、検出された電流の直流成分と交流成分との比を演算し、比に基づいて直流電圧源20が印加する直流電圧を制御する調整量演算部50と、を備える。光路制御装置100は、この構成により、MEMSミラー10の静電容量と印加電圧との関係式又は対応表を不要とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、光スイッチで使用され、光路を制御する制御装置に関する。
近年、通信ネットワークの高速化・大容量化に伴い、波長多重ネットワークにおける光挿入・分岐装置であるROADM(Reconfigurable Optical Add-Drop Multiplexer)の開発が進められている。そして、このROADMにおいて光を分波させたり合波させたりするためのデバイスとして、MEMS(Micro Electrical Mechanical System)ミラーを用いた光スイッチの開発が盛んに行われている。
このような光スイッチでは、MEMSミラーの角度制御を介して光路の切り替えや光減衰機能が実現される。MEMSミラーの角度制御には、種々の方式が採用されている。例えば、下記の特許文献1に記載の技術では、MEMSミラーの角度に応じて静電容量が変化するMEMSミラーを含んだLC発振回路を構成し、このLC発振回路から出力された周期的信号の周期に基づいてコントローラ及びMEMSドライバがMEMSミラーに駆動電圧を出力することにより、MEMSミラーの角度を補正する。また、下記の特許文献2に記載の技術では、ミラー角度を設定する直流印加電圧に所定の周波数の交流摂動電圧を重畳してミラーを駆動し、出力ポートにおける出力光強度を検出して、検出結果に基づいてミラーの角度を調整する。
特許第4695342号公報 特許第4828571号公報
しかしながら、特許文献1,2に記載の技術には、それぞれ次のような問題点がある。特許文献1に記載の技術の場合、LC発振回路の出力に基づいてMEMSミラーの静電容量に対応する発振周波数を検出しているが、MEMSミラーの静電容量は可制御量でも可観測量でもない。このため、MEMSミラーを駆動するための印加電圧の調整量を決定するためには、制御系内に印加電圧と静電容量との間の関係式または対応表を用意する必要があり、動的な制御を行う上で制約がある。
また、特許文献2に記載の技術の場合、出力光強度を検出するための構成として出力ポートの周辺に光検出器を配置することが考えられるが、この光検出器が迷光を検出することにより、MEMSミラーの角度の変位として誤検出してしまう可能性がある。この問題を解決するためには光学系や信号処理を工夫する必要があり、光学系の大型化や信号処理の複雑化に繋がる。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、動的な制御を簡易な構成により行うことができる制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る制御装置は、印加された電圧に応じて角度を変化させるMEMSミラーと、MEMSミラーに対して直流電圧を印加する直流電圧源と、MEMSミラーに対して交流電圧を印加する交流電圧源と、MEMSミラーに流れる電流の直流成分及び交流成分を検出する検出器と、検出器により検出された電流の直流成分と電流の交流成分との比を演算し、その比に基づいて直流電圧源が印加する直流電圧を制御する制御部と、を備えることを特徴としている。
この制御装置は、MEMSミラーと、MEMSミラーに対して直流電圧を印加する直流電圧源及び交流電圧を印加する交流電圧源とを備え、これらの直流電圧源及び交流電圧源によってMEMSミラーに流れる電流の直流成分と交流成分の比に基づいて、直流電圧源が印加する直流電圧を制御する。したがって、MEMSミラーの静電容量と印加電圧とを対応付ける関係式又は対応表を用意せずにMEMSミラーの印加電圧の制御を行うことができるため、動的な制御を簡易な構成により行うことが可能となる。
上記の制御装置では、制御部は、電流の直流成分と電流の交流成分との比に、交流電圧源が印加する交流電圧の振幅及び角周波数並びに検出器の測定時間を乗算した値を電圧調整量とし、電圧調整量に基づいて直流電圧源が印加する直流電圧を制御するようにしてもよい。
また、上記の制御装置では、制御部は、0より大きく1より小さい実数である調整係数を電圧調整量に乗算し、乗算した結果を直流電圧源が印加する直流電圧に加算することにより、直流電圧源が印加する直流電圧を制御するようにしてもよい。この場合、調整係数を乗算することにより電圧調整量が小さめに設定されるので、MEMSミラーの角度がオーバーシュートを起こすことを防止できる。
また、上記の制御装置では、直流電圧源、交流電圧源、MEMSミラー、及び検出器は直列に接続されていてもよい。この場合には、MEMSミラーに流れる電流の直流成分と交流成分とを分離して検出することが容易となる。
また、上記の制御装置では、交流電圧源が印加する交流電圧の周波数は、MEMSミラーの共振周波数の10倍以上であってもよい。この場合には、交流電圧をMEMSミラーに印加することによって生じるMEMSミラーの振動が実用上の問題を生じない程度に小さくなり、MEMSミラーの角度制御を動的に行った場合にも、光出力を安定に維持することが可能となる。
また、上記の制御装置では、直流電圧源はD/Aコンバータを有し、交流電圧源はダイレクト・デジタル・シンセサイザを有していてもよい。この場合には、D/Aコンバータを交流電圧の周波数に対応した高速・高精度なものとする必要がなく、制御装置の低コスト化、省電力化を図ることができる。
また、上記の制御装置では、検出器はA/Dコンバータを有していてもよい。この場合には、検出器によって検出されたMEMSミラーの電流の直流成分と交流成分とがA/DコンバータによってA/D変換されるため、直流成分と交流成分との分離をデジタルフィルタによって行うことが可能となり、調整の容易化を図ることができ、また、経年劣化による特性変化を防止することができる。
また、上記の制御装置では、直流電圧源が出力する直流電圧と、交流電圧源が出力する交流電圧とを重畳してMEMSミラーに印加するバイアスティーをさらに備えていてもよい。この場合には、直流電圧と交流電圧との重畳が、バイアスティーを用いてアナログ領域で行われるため、直流電圧と交流電圧をデジタル領域で加算した場合と比べて、高速・高精度なD/Aコンバータが不要となり、制御装置の低コスト化、省電力化を図ることができる。
本発明によれば、動的な制御を簡便な構成により行うことができる制御装置を提供することができる。
本実施形態に係る光スイッチを模式的に示す図である。 本実施形態に係る光路制御装置の機能構成を示すブロック図である。 光路制御装置の回路構成を示す回路図である。 MEMSミラーのモデルを示す図である。 MEMSミラーの振動の周波数特性を示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
本発明の実施形態に係る光路制御装置100(制御装置)は、所定の入力ポートから入射した光ビームを任意の出力ポートに射出する光スイッチに適用される。図1は、この光スイッチを模式的に表す図である。
光スイッチ1は、入力ポートP1から入射した光ビームをMEMSミラー10によって反射することにより出力ポートP2に結合させて射出させる。なお、図1では1個の入力ポートP1および1個の出力ポートP2のみを示しているが、入力ポートP1及び出力ポートP2の個数は1個には限られない。そして、MEMSミラー10は光スイッチ制御装置100によって角度を調節することができるように構成されている。MEMSミラー10の角度を適宜調節することにより、入力ポートP1から入射した光ビームはMEMSミラー10で反射されて出力ポートP2に結合される。また、光スイッチ1は、MEMSミラー10の角度の調整により入力ポートP1と出力ポートP2の光学結合を弱くすることで光減衰機能を実現する。
次に、光路制御装置100の機能構成について、図2を参照しつつ説明する。図2は、本実施形態に係る光路制御装置100の機能構成を示すブロック図である。光スイッチ制御装置100は、MEMSミラー10、直流電圧源20、交流電圧源30、電流計40(検出器)、及び調整量演算部50(制御部)を含んで構成される。MEMSミラー10、直流電圧源20、交流電圧源30、及び電流計40は、直列に接続されている。
なお、本明細書においては、直流という語を、周波数がMEMSミラー10の共振周波数よりも低いことを表すために用いる。また、交流という語を、周波数がMEMSミラー10の共振周波数よりも高いことを表すために用いる。
MEMSミラー10は、静電型MEMSミラーである。静電型MEMSミラーとは、印加された電圧に応じて電極間に発生する静電気力を変化させ、この静電気力の変化により、角度を変化させることができるように構成されたミラーである。MEMSミラー10は、ミラー部と、固定部電極と、固定部電極に対して揺動可能に設けられた可動部電極とを有して構成されている。ミラー部は、光を反射するためのミラーを備えている。このミラー部は可動部電極に対して固定されており、可動部電極と連動して動くことができる。そして、固定部電極と可動部電極との間には、これらの両電極間に印加された電圧に応じて静電気力が生じ、この静電気力の大きさに応じてMEMSミラー10のミラー面の角度を変化させることが可能となっている。また、MEMSミラー10は、固有の共振角周波数ωを有している。したがって、MEMSミラー10の共振周波数は、ω/2πである。
直流電圧源20は、直流電圧を発生し、この直流電圧をMEMSミラー10に対して印加する。直流電圧源20が発生する直流電圧の大きさは、調整量演算部50が出力する値V+δVに等しい。
交流電圧源30は、交流電圧を発生し、この交流電圧をMEMSミラー10に対して印加する。交流電圧源30が発生する交流電圧の振幅及び角周波数は、外部から指令値として与えられる振幅V及び角周波数ωにそれぞれ等しい。
電流計40は、直流電圧源20及び交流電圧源30がMEMSミラー10に印加した電圧によってMEMSミラー10に流れる電流を検出する。電流計40は、検出した電流値を直流成分Iと交流成分Iとに分離して出力する。
調整量演算部50は、電流計40が出力する電流値の直流成分Iと交流成分I、それに外部から指令値として与えられる直流電圧指令値V、電流計40の測定時間Δt、交流電圧振幅V、交流角周波数ωに基づいて、電圧調整量δVを演算する部分である。このδVは、次の数式(1)により求められる。なお、数式(1)において、αは調整係数である。このαは0より大きく1より小さい実数である。
Figure 2014002242
次に、光路制御装置100の機能構成を実現する回路構成を、図3を参照しながら説明する。
直流電圧源20は、D/Aコンバータ21及びアンプ22を含んで構成されている。D/Aコンバータ21は、調整量演算部50から入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。アンプ22は、D/Aコンバータ21が出力したアナログ信号を増幅して、D/Aコンバータ21に入力されたデジタル信号の値に対応する直流電圧を出力する。
交流電圧源30は、ダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)31及びアンプ32を含んで構成されている。ダイレクト・デジタル・シンセサイザ31は、外部から入力された電圧振幅を示すデジタル指令値及び周波数を示すデジタル指令値に対応するアナログ電圧信号を生成する。アンプ32は、ダイレクト・デジタル・シンセサイザ31が出力するアナログ電圧信号を増幅して、ダイレクト・デジタル・シンセサイザ31に入力された電圧振幅を示すデジタル指令値及び周波数を示すデジタル指令値に対応する交流電圧を出力する。
ここで、直流電圧源20の出力にはインダクタ61の一端が接続されている。また、交流電圧源30の出力にはコンデンサ62の一端が接続されている。そして、インダクタ61の他端とコンデンサ62の他端とが接続されている。このインダクタ61の他端及びコンデンサ62の他端は、抵抗41を介してMEMSミラー10に接続されている。このようにして、直流電圧源20が出力する直流電圧と交流電圧源30が出力する交流電圧とがMEMSミラー10に印加される。なお、インダクタ61及びコンデンサ62に替えて、バイアスティーを用いて、直流電圧源20が出力する直流電圧と交流電圧源30が出力する交流電圧を重畳してMEMSミラー10に印加するようにしてもよい。
電流計40は、抵抗41、差動増幅器42、A/Dコンバータ43、デジタルフィルタ44を含んで構成されている。抵抗41の一端はインダクタ61及びコンデンサ62の他端に接続され、抵抗41の他端はMEMSミラー10に接続されている。このようにして、抵抗41は、MEMSミラー10に流れる電流に比例する電圧をその両端に発生させる。
抵抗41の一端は、差動増幅器42の2つの入力の一方に接続され、抵抗41の他端は差動増幅器42の2つの入力の他方に接続されている。差動増幅器42は、抵抗41の両端間に発生する電圧を増幅する。差動増幅器42の出力はA/Dコンバータ43の入力に接続されている。A/Dコンバータ43は、入力されたアナログ電圧信号をデジタル電圧信号に変換して出力する。A/Dコンバータ43の出力は、デジタルフィルタ44に接続されている。デジタルフィルタ44は、A/Dコンバータ43から入力されたデジタル電圧信号を直流成分と交流成分に分離する。より具体的には、デジタルフィルタ44の周波数特性は、例えばMEMSミラー10の共振角周波数ωをカットオフ角周波数とするローパスフィルタ及びハイパスフィルタとされている。ローパスフィルタは、MEMSミラー10に流れる電流の直流成分Iを出力し、ハイパスフィルタは、MEMSミラー10に流れる電流の交流成分Iを出力する。
調整量演算部50は、例えばマイクロプロセッサ51を用いて構成されている。このマイクロプロセッサ51には、デジタルフィルタ44からMEMSミラー10の電流の直流成分I及び交流成分Iが入力される。また、マイクロプロセッサ51には、外部からの指令値として、MEMSミラー10の直流電圧指令値V、電流計40の測定時間Δt、交流電圧振幅V、交流角周波数ωが入力される。マイクロプロセッサ51は、上記の数式(1)により、MEMSミラー10の電圧調整値δVを演算する。
次に、本実施形態に係るMEMSミラー10の制御手法の導出過程について説明する。なお、以下の説明において、虚数単位としてj=−iを採用する。
まず、MEMSミラー10のモデル化について図4を用いて説明する。MEMSミラー10は静電型MEMSミラーである。この静電型MEMSミラーの駆動部に注目すると、駆動部の回転角が小さいので、MEMSミラー10は、図4に示す直線振動系としてモデル化できる。
この直線振動系は、可動部10aと固定部10bとバネ10cと電源Vとから構成される。可動部10aは、質量mを有する。可動部10aは、固定部10bに対してx軸方向に移動可能に構成されている。可動部10aは、バネ定数kのバネ10cを介して固定部10bに固定されている。可動部10aと固定部10bとは、それぞれ平板形状の電極であり、可動部10aと固定部10bとは、それぞれの一部が重なるように構成されている。可動部10aと固定部10bとの間には、電圧源Vにより電圧vが印加される。可動部10aと固定部10bとは、電圧源Vにより印加される電圧vが0である場合に、重なり長がxであり、このときの可動部10aと固定部10bとの間の静電容量はCである。
上記の直線振動系において、可動部10aの運動方程式は、次の数式(2)により表せる。ただし、x、m、γ、kは、それぞれ可動部10aの変位、可動部10aの質量、減衰定数、バネ10cのバネ定数であり、qは、可動部10aまたは固定部10bのいずれか一方に誘起された電荷であり、vは可動部10aと固定部10bとの間に印加された電圧である。
Figure 2014002242
一般に、静電型MEMSミラーは電圧制御であるため、数式(2)は次の数式(3)に変形でき、数式(3)について考えればよい。
Figure 2014002242
光の偏光制御を目的としたMEMSミラーでは、駆動力を得るために電極を櫛歯構造にしているが、この櫛歯構造を単純化すると、図4のような、平板電極の一部が重なり合うモデルで表現できる。したがって、可動部10aと固定部10bとの間の静電容量は、一般に次の数式(4)で近似できる。ただし、xはバイアス電圧0でかつ可動部10aが停止しているときの可動部10aと固定部10bとの間の重なり長、Cは、同条件下での可動部10aと固定部10bとの間の静電容量で、Cは可動部10aと固定部10bとの重なり以外により生じる背景の静電容量である。
Figure 2014002242
数式(4)を数式(3)に代入して両辺をmで割ると、電圧制御時の運動方程式として次の数式(5)が得られる。
Figure 2014002242
ここで、数式(5)を一般化して、MEMSミラーに周波数Ω/2πの外力Fが加わった場合の可動部10aの応答について考える。
Figure 2014002242
光スイッチでは、MEMSミラーの減衰定数γは十分小さいので、次の数式(7)で固有周波数Ω/2πが定義できる。
Figure 2014002242
初期条件として、可動部10aが原点において完全に停止している場合を考えると、数式(6)の解として数式(8)を得る。
Figure 2014002242
数式(8)から次の2点がわかる。第1に、MEMSミラー10の振動は、外力Fによる強制振動開始から減衰定数γの逆数の4倍程度の時間が経過すれば、強制振動に同期する成分が支配的となる。第2に、MEMSミラー10は、固定角周波数Ωの10倍程度以上に高い角周波数Ωによる強制振動には、ほとんど追従できない。この様子を表すグラフを図5に表す。図5のグラフの横軸は、規格化周波数Ω/ωである。図5のグラフの縦軸は、規格化振幅kX/Fである。
上記の数式(8)に基づく考察からわかる2点を踏まえて数式(5)について考えると、静電駆動力は印加電圧vの2乗に比例するので、角周波数がMEMSミラー系の固有角周波数の5倍程度以上高ければ、交流駆動が可能であることがわかる。また、静電容量Cの測定のために、MEMSミラー系の固有角周波数より10倍以上高い交流を重畳しても問題ないことがわかる。
次に、以上で説明したMEMSミラー10のモデルに基づいて、MEMSミラー10の角度を制御するための手法について考える。
直流も含めて一定角周波数ωの正弦波電圧vによってMEMSミラー10を駆動する場合において、MEMSミラー10に流れる電流iは、次の数式(9)で表すことができる。
Figure 2014002242
なお、正弦波電圧vは、次の数式(10)で表される。
Figure 2014002242
上記の数式(9)において、右辺の第1項はMEMSミラー10の角度変化(可動部10aの速度)に対応する電流である。右辺の第2項は制御電圧vの振幅変化に対応する電流である。右辺の第3項は定常電流である。なお、角度保持動作中には、制御電圧vの振幅を原則として固定する。このため、角度保持動作中は、数式(9)の右辺第2項は0である。
MEMSミラー10を直流電圧で駆動する場合、定常電流が0となるので、電流の測定時間Δtで生じた変位Δxは、数式(9)のdx/dtをΔx/Δtで置き換え、Δxについて解くことにより、数式(11)で与えられる。
Figure 2014002242
したがって、変位Δxを打ち消すのに必要な電圧ΔVは、次の数式(12)で与えられる。
Figure 2014002242
ここで、数式(12)の右辺において、静電容量Cは、可制御量でも可観測量でもない。このため、数式(12)に基づいて電圧調整量ΔVを決定するためには、制御系内に電圧Vと静電容量Cとの関係式又は対応表を用意する必要がある。
なお、制御の安定性の観点から、電圧の調整量δVは、数式(12)で求められるΔVより小さい方が望ましい。そこで、電圧の調整量δVを、数式(12)のΔVに、0より大きく1より小さい実数である調整係数αを乗算して、数式(13)のように決定する。
Figure 2014002242
この場合、関係式又は対応表を介して与えられる静電容量C及び電流の測定時間Δtに関する誤差を補正係数αにより吸収することができる。したがって、静電容量C及び電流の測定時間Δtの値は、近似値で十分である。
MEMSミラー10を交流電圧駆動する場合、電流iは数式(14)で近似できる。
Figure 2014002242
ここで、ωは以下の数式(15)の条件を満たす。
Figure 2014002242
ただし、Ωは、外乱によって励振された振動の支配的な角周波数である。したがって、MEMSミラー10の可動部10aがΔxだけ変位したときの電流の振幅Iは、次の数式(16)で表せる。
Figure 2014002242
したがって、変位Δxを打ち消すのに必要な電圧の調整量ΔVは、数式(17)で与えられる。
Figure 2014002242
ここで、数式(17)の静電容量Cは定常状態での値であり、可制御量でも可観測量でもない。したがって、MEMSミラー10を直流駆動する場合と同様に、電圧Vと静電容量Cとの関係式又は対応表を制御系内に保持しておき、参照する必要がある。
一方、数式(14)を参照すると、交流電流iを測定することで静電容量Cを測定できることがわかる。そこで、MEMSミラー10を駆動するための直流電圧源と、交流電流を測定するための交流電圧源とを直列に接続した系を考える。この系の角度保持動作中に外乱が加わったときに流れる電流は、数式(18)で表せる。ここで、V及びωは、それぞれ測定用電圧の振幅及び角周波数である。また、I及びIは、それぞれ電流iの直流成分及び交流成分である。
Figure 2014002242
測定角周波数ωは、MEMSミラー10の角度保持動作に影響を与えないように十分に高くとる。この場合、直流成分Iと交流成分Iとは容易に分離することができる。数式(12)及び数式(14)を参照すると、電圧調整量ΔVは、以下の数式(19)で与えればよいことがわかる。
Figure 2014002242
この数式(19)の右辺には、可制御量又は可観測量しか含まれていない。したがって、このようにMEMSミラー10を駆動するための直流電圧源20と、MEMSミラー10に流れる電流を観測するための交流電圧源30とを直列に接続する方式では、上記のMEMSミラー10を直流電圧または交流電圧のいずれかで駆動する方式と異なり、印加電圧と静電容量との関係式や対応表が必要でないことがわかる。
そして、数式(19)に数式(13)と同様の調整係数αを乗算することにより、上記の実施形態で使用した数式(1)が導かれる。
以上で説明した本実施形態の光路制御装置100によれば、MEMSミラー10と、MEMSミラー10に対して直流電圧を印加する直流電圧源20及び交流電圧を印加する交流電圧源30とを備え、これらの直流電圧源20及び交流電圧源30によってMEMSミラー10に流れる電流の直流成分と交流成分の比に基づいて、直流電圧源20が印加する直流電圧が制御される。したがって、MEMSミラー10の静電容量と印加電圧とを関係づける関係式又は対応表を用意せずにMEMSミラー10の印加電圧の制御が行われるため、動的な制御が簡易な構成により行われる。
また、光路制御装置100では、調整量演算部50により、MEMSミラー10を流れる電流の直流成分と交流成分との比に、交流電圧源30が印加する交流電圧の振幅及び角周波数並びに電流計40の測定時間を乗算した値が電圧調整量として演算される。そして、調整量演算部50により、0より大きく1より小さい実数である調整係数αが電圧調整量に乗算され、乗算された結果が、直流電圧源20が印加する電圧に加算される。このため、調整係数を乗算することにより電圧調整量が小さめに設定されるため、MEMSミラー10の角度がオーバーシュートを起こすことが防止される。
また、光路制御装置100では、MEMSミラー10、直流電圧源20、交流電圧源30、及び電流計40が直列に接続されている。このため、MEMSミラー10に流れる電流の直流成分と交流成分とを分離して検出することが容易となっている。
また、光路制御装置100では、電流計40はA/Dコンバータ43を有している。このため、電流計40によって検出されたMEMSミラー10の電流の直流成分と交流成分とがA/Dコンバータ43によってA/D変換される。したがって、直流成分と交流成分との分離をデジタルフィルタ44によって行うことが可能となり、調整の容易化が図られ、また、経年劣化による特性変化が防止される。
なお、光路制御装置100では、直流電圧源20が出力する直流電圧と、交流電圧源30が出力する交流電圧とを重畳してMEMSミラー10に印加するバイアスティーをさらに備えていてもよい。この場合、バイアスティーは、図3に示したインダクタ61及びコンデンサ62に代えて用いられ、直流電圧源20のアンプ22の出力、交流電圧源30のアンプ32の出力、及び電流計40の抵抗41の一端に接続される。この場合には、直流電圧と交流電圧との重畳が、バイアスティーを用いてアナログ領域で行われるため、直流電圧と交流電圧とをデジタル領域で加算した場合と比べて、高速・高精度なD/Aコンバータが不要となる。したがって、光路制御装置100の低コスト化、省電力化を図ることができる。
また、電流計40において、A/Dコンバータ43の出力を直流成分Iと交流成分Iとに分離するために、デジタルフィルタ44に代えてアナログフィルタを用いてもよい。さらに、調整量演算部50においては、マイクロプロセッサ51に代えて、数値計算を行うことができる公知の各種のデバイスを使用してもよい。
また、MEMSミラー10に印加される直流電圧と交流電圧とを重畳するために、調整量演算部50のデジタル出力値とダイレクト・デジタル・シンセサイザ31のデジタル出力値とをデジタル加算器によってデジタル領域で加算し、このデジタル加算器の出力をD/Aコンバータによって出力するようにしてもよい。ただし、この場合には、マイクロプロセッサ51の出力レンジに比してダイレクト・デジタル・シンセサイザ31の出力する信号の振幅が小さい。このため、マイクロプロセッサ51の広い出力レンジとダイレクト・デジタル・シンセサイザ31の振幅の小さい出力とに対応するために、高精度のA/Dコンバータが必要となる。また、A/Dコンバータの出力がダイレクト・デジタル・シンセサイザ31の出力する交流信号に追従できる必要があるため、A/Dコンバータは高速なものとしなければならない。
1…光スイッチ、10…MEMSミラー、20…直流電圧源、21…D/Aコンバータ、30…交流電圧源、31…ダイレクト・デジタル・シンセサイザ、40…電流計、43…A/Dコンバータ、50…調整量演算部、P1…入力ポート、P2…出力ポート。

Claims (8)

  1. 印加された電圧に応じて角度を変化させるMEMSミラーと、
    前記MEMSミラーに対して直流電圧を印加する直流電圧源と、
    前記MEMSミラーに対して交流電圧を印加する交流電圧源と、
    前記MEMSミラーに流れる電流の直流成分及び交流成分を検出する検出器と、
    前記検出器により検出された前記電流の直流成分と前記電流の交流成分との比を演算し、前記比に基づいて前記直流電圧源が印加する直流電圧を制御する制御部と、
    を備えることを特徴とする制御装置。
  2. 前記制御部は、前記電流の直流成分と前記電流の交流成分との比に、前記交流電圧源が印加する交流電圧の振幅及び角周波数並びに前記検出器の測定時間を乗算した値を電圧調整量とし、前記電圧調整量に基づいて前記直流電圧源が印加する直流電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記制御部は、0より大きく1より小さい実数である調整係数を前記電圧調整量に乗算し、前記乗算した結果を前記直流電圧源が印加する直流電圧に加算することにより、前記直流電圧源が印加する直流電圧を制御することを特徴とする請求項2に記載の制御装置。
  4. 前記直流電圧源、前記交流電圧源、前記MEMSミラー、及び前記検出器は直列に接続されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の制御装置。
  5. 前記交流電圧源が印加する交流電圧の周波数は、前記MEMSミラーの共振周波数の10倍以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の制御装置。
  6. 前記直流電圧源はD/Aコンバータを有し、
    前記交流電圧源はダイレクト・デジタル・シンセサイザを有することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の制御装置。
  7. 前記検出器はA/Dコンバータを有することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の制御装置。
  8. 前記直流電圧源が出力する直流電圧と、前記交流電圧源が出力する交流電圧とを重畳して前記MEMSミラーに印加するバイアスティーをさらに備えることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016073045A (ja) * 2014-09-29 2016-05-09 富士電機株式会社 回転型アクチュエータ

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